説明

フッ素系感光性組成物

【課題】 フォトリソグラフィー法でパターニングが可能な感光性を有する撥液性表面処理剤であり、撥液性と感光性の両立のみならず、基板への密着性、撥液塗膜の硬度、環境対応性のすべてを兼ね備えたものを提供する。
【解決手段】フッ素化合物(A)、加水分解性金属アルコキシド、その加水分解化合物およびその縮合物からなる群から選択された少なくとも一種の金属化合物(B)、溶媒(C)、光酸発生剤(D)を必須成分とするフッ素系感光性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥液性、感光性、基板への密着性、撥液塗膜の硬度、環境対応性が優れた感光性ゾル-ゲル組成物に関する。この表面処理剤で作製されたパターン基板は電子、光学、医療デバイスなどに適用できる。
【背景技術】
【0002】
インクジェット(IJ)技術は特定の位置に必要量の微小液滴を塗布できる特徴を有し、低エネルギーかつ低資源な塗布プロセスとして、デバイス作製への応用が期待されている。一方、IJ技術は、着弾時の液滴径と位置決め精度が数十μmであるので、10μm以下の精度で薄膜を形成するためには、基板を表面処理することによりインクの濡れを制御することが不可欠である。このため、フォトリソグラフィー法でパターニングが可能な感光性を有する撥液性表面処理剤が開発されてきた(例えば、特開JP2005-315983〜6)。しかし、従来技術では、撥液性と感光性の両立のみならず、基板への密着性、撥液塗膜の硬度、環境対応性のすべてを満足するものはなかった。ここで環境対応性とは、炭素数8以上のフルオロアルキル(Rf)基(長鎖Rf基)を含有する化合物の環境、生体への蓄積性に関するものである。最近の研究結果[EPAレポート"Draft Risk Assessment of the Potential Human Health Effects Associated With Exposure to Perfluorooctanoic Acid and Its Salts (PFOA)" (http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoarisk.pdf)]などから、長鎖Rf基含有化合物の一種であるPFOA(perfluorooctanoic acid)に対する人体への蓄積性の懸念が明らかとなってきており、2003年4月14日にEPA(米国環境保護庁)がPFOAに対する科学的調査を強化すると発表した。一方、Federal Register(FR Vol.68, No.73/April 16, 2003[FRL-2303-8], http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafr.pdf)やEPA Environmental News FOR RELEASE: MONDAY APRIL 14, 2003 EPA INTENSIFIES SCIENTIFIC INVESTIGATION OF A CHEMICAL PROCESSING AID(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoaprs.pdf)やEPA OPPT FACT SHEET April 14, 2003(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafacts.pdf)は、テロマーが分解または代謝によりPFOAを生成する可能性があると公表している(テロマーとは長鎖Rf基と同義である)。また、テロマーが、撥水撥油性、防汚性を付与された泡消火剤、ケア製品、洗浄製品、カーペット、テキスタイル、紙、皮革などの多くの製品に使用されていることをも公表している。
【0003】
このような環境問題のために、長鎖Rf基含有化合物の代替物質として、炭素数1〜6の短鎖Rf基を有するRf基含有化合物を撥水撥油剤として利用する必要性が生じてきた。しかし、従来の骨格をそのまま短鎖Rf基に置換しても撥液領域の撥水撥油性が不十分であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォトリソグラフィー法でパターニングが可能な感光性を有する撥液性表面処理剤であり、撥液性と感光性の両立のみならず、基板への密着性、撥液塗膜の硬度、環境対応性のすべてを兼ね備えたものを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
フッ素系感光性組成物は、フッ素化合物(A)、加水分解性金属アルコキシド、その加水分解化合物およびその縮合物の群から選択された少なくとも一つの金属化合物(B)、溶媒(C)、光酸発生剤(D)を必須成分とする。ここで、フッ素化合物(A)は、
(A−1)フルオロアルキル基含有共重合体
(A−2)炭素数1〜6のフルオロアルキル基含有シラン
(A−3)炭素数1〜6のフルオロアルキル基含有シルセスキオキサン不完全縮合物
のいずれかであり、(A−1)フルオロアルキル基含有共重合体は炭素数1〜6のフルオロアルキル基含有モノマー(a)と、不飽和有機酸および/または水酸基含有モノマーを必須成分とする分子量2万以下の共重合体である。
【0006】
さらに、炭素数1〜6のフルオロアルキル基含有モノマー(a)は以下のもの使用することが好ましい。
(a−1)炭素数1〜6のフルオロアルキル基を有するα位置換アクリレートモノマー[α位の置換基:水素元素、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、あるいは炭素数1〜20の直鎖状または分岐状アルキル基]
(a−2)炭素数1〜6のフルオロアルキル基および重合性基を含有する含フッ素シルセスキオキサンモノマー
(a−3)炭素数1〜6のフルオロアルキル基と重合性基が-SO2(CH2)n-(nは1〜10)により連結された重合性モノマー
(a−4)モノマー:(a−1)〜(a−3)の少なくとも1種を繰り返し単位とするポリマーの末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー
【発明の効果】
【0007】
本発明の感光性ゾル-ゲル組成物(表面処理剤)は、撥液性、感光性、基板への密着性、撥液塗膜の硬度、環境対応性が優れている。この表面処理剤で作製されたパターン基板は電子、光学、医療デバイスなどに適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
フッ素系感光性組成物は、フッ素化合物(A)、金属化合物(B)、溶媒(C)、光酸発生剤(D)を必須成分とする。
【0009】
●フッ素化合物(A)
・(A−1)フルオロアルキル基含有共重合体
炭素数1〜6のフルオロアルキル基含有モノマー(a)と、不飽和有機酸および/または水酸基含有モノマーを必須成分とする分子量2万以下の共重合体である。
【0010】
炭素数1〜6のフルオロアルキル基含有モノマー(a)は以下のものが例示される。
(a−1)炭素数1〜6のフルオロアルキル基を有するα位置換アクリレートモノマー
[α位の置換基:水素元素、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、あるいは炭素数1〜20の直鎖状または分岐状アルキル基]
(a−2)炭素数1〜6のフルオロアルキル基および重合性基を含有する含フッ素シルセスキオキサンモノマー
(a−3)炭素数1〜6のフルオロアルキル基と重合性基が-SO2(CH2)n-(nは1〜10)により連結された重合性モノマー
(a−4)モノマー:(a−1)〜(a−3)の少なくとも1種を繰り返し単位とするポリマーの末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー
【0011】
炭素数1〜6のフルオロアルキル基を有するα位置換アクリレート(a−1)、炭素数1〜6のフルオロアルキル基と重合性基が-SO2(CH2)n-(nは1〜10、特に3〜6)により連結された重合性モノマー(a−3)は、
(a)式:
【化1】


[式中、Xは、水素元素、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、あるいは炭素数1〜20の直鎖状または分岐状アルキル基
Yは、直接結合、酸素原子を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族基、酸素原子を有していてもよい炭素数6〜10の芳香族基、環状脂肪族基または芳香脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)、−CH2CH(OY1)CH2−基(但し、Y1は水素原子またはアセチル基である。)、または、-(CH2)nSO2-基(nは1〜10)である。
Rfは炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、または、繰り返し単位:−CO−、−CO−および−CFO−からなる群から選択された少なくとも一種の繰り返し単位の合計数が1〜200のフルオロエーテル基である。]
で示されるフッ素含有基を有する含フッ素単量体であってよい。
【0012】
上記式において、重合性基(例えば、炭素炭素二重結合基)とフルオロアルキル基との間に(すなわち、-O-Y-に代えて)、
−O−Y
(ここで、Yは、直接結合、酸素原子を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族基、酸素原子を有していてもよい炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基または芳香脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−(CH2CH2)a−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、aは0または1である。)、−CH2CH(OR11)CH2−基(但し、R11は水素原子またはアセチル基である。)または、-(CH2)nSO2-基(nは1〜10)である。)、あるいは
−Y2−[−(CH2)m−Z−]p−(CH2)n
(ここで、Y2は、−O−または−NH−であり;Zは、−S−または−SO−であり;mは1〜10、nは0〜10、pは0または1である。)
を有していてもよい。
【0013】
したがって、モノマー(a−1)、(a−3)、(a−4)は、式:
CH=CX−C(=O)−B−Rf
[式中、Bは、−O−Y−または−Y2−[−(CH2)m−Z−]p−(CH2)n
(ここで、Y、Y2、Z、m、n、およびpは上記と同意義である。)
XおよびRfは上記と同意義である。]
で示される化合物であってよい。
【0014】
重合性モノマー(a−3)は、重合性基を有するモノマーである。重合性基は、二重結合で結合された炭素−炭素基(例えば、エテニル基)であってよい。重合性モノマー(a−2)〜(a−3)は、[モノマー(a−1)と同様に]α位が置換されている(すなわち、α位が水素またはアルキル基でない)アクリレートであってもよい。あるいは、α位に水素原子またはメチル基を有するアクリレートであってもよい。
【0015】
上記式(I)において、Rf基の炭素数は、1〜6、例えば1〜5、特に1〜4、好ましくは4である。一般にRf基が長くなるほど撥液性が優れ、短くなるほど相溶性が優れる傾向があり、撥液性と相溶性が両立する炭素数は4である。生体蓄積性の観点でも炭素数6よりも4の方が好ましい。
Rf基の例は、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、−CF(CF3) 2、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF3)2、−C(CF)3、−(CF2)4CF3、−(CF2)2CF(CF3)2、−CF2C(CF3)3、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−(CF2)5CF3、−(CF2)3CF(CF3)2等である。
【0016】
Yは、直接結合、酸素原子を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族基、酸素原子を有していてもよい炭素数6〜10の芳香族基、環状脂肪族基または芳香脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)、−CH2CH(OY1)CH2−基(但し、Y1は水素原子またはアセチル基である。)、または、−(CH2)nSO2−基(nは1〜10)である。脂肪族基はアルキレン基(特に炭素数1〜4、例えば、1または2)であることが好ましい。芳香族基および環状脂肪族基は、置換されていてもあるいは置換されていなくてもどちらでもよい。−CH2CH2N(R1)SO2−基および−(CH2)nSO2−基においてRfに結合する原子は、メチレン基における炭素原子またはスルホン基における硫黄原子のどちらであってもよいが、一般に、スルホン基における硫黄原子であってよい。
【0017】
上記含フッ素単量体の例は、次のとおりである。
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

【0022】
【化7】

Rf-SO2(CH2)3-OCO-CH=CH2
【0023】
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(H)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
【0024】
[式中、Rfは炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
【0025】
炭素数1〜6のフルオロアルキル基および重合性基を含有する含フッ素シルセスキオキサンモノマー(a−2)は、(i)含フッ素不完全縮合シルセスキオキサンと(ii)重合性官能基をもつ反応性シランとを反応することによって得られるものである。
含フッ素不完全縮合シルセスキオキサン(i)は、フルオロアルキル基を有する不完全縮合シルセスキオキサンである。
【0026】
シルセスキオキサンはPOSS(Polyhedral Oligomeric Silsesquioxane)とも呼ばれる。
不完全縮合シルセスキオキサン(i)のシラノール基は反応性が高く、一般に、分子中に1〜3個存在する。
【0027】
不完全縮合シルセスキオキサン(i)の具体例は、例えば次のもの(構造式I)などである。
【化8】

(構造式I)
【0028】
重合性官能基をもつ反応性シラン(ii)は、重合性官能基および反応性基を有する。反応性シラン(ii)において、重合性官能基の例は、(メタ)アクリル基、アルファ置換アクリル基、エポキシ基、ビニル基などである。反応性シラン(ii)において、反応性基の例は、トリクロロシリル基およびトリアルコキシシリル基(アルコキシ基の炭素数は1〜5である。)である。
【0029】
反応性シラン(ii)は、例えば、一般式:
A11−A21−Si(A31)3
[式中、A11は、重合性官能基であり、
A21は、直接結合または炭素数1〜20(例えば、1〜10)のアルキル基であり、
A31は、ハロゲン原子(例えば、塩素原子および臭素原子)またはアルコキシ基(アルコキシ基の炭素数は1〜5である。)である。]
で示される化合物である。
【0030】
含フッ素シルセスキオキサン単量体(a)の例は、次のとおりである。
【化9】

【0031】
フルオロアルキル基含有共重合体(A−1)に用いられる不飽和有機酸含有モノマーは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合、および少なくとも1つの酸基[例えば、カルボキシル基(COOH基)]を有するモノマーである。不飽和有機酸の特に好ましい例は、不飽和カルボン酸、例えば、遊離の不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物である。不飽和有機酸の例は、(メタ)アクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、およびケイ皮酸である。
【0032】
フルオロアルキル基含有共重合体(A−1)に用いられる水酸基含有モノマーは、少なくとも1つの水酸基を含有するモノマーであり、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが例示される。
【0033】
不飽和有機酸および/または水酸基含有モノマーの量は、フルオロアルキル基含有モノマー(a)100重量部に対して5〜50重量部、例えば10〜30重量部であってよい。
不飽和有機酸と水酸基含有モノマーはいずれも、溶媒に対する溶解性、電磁波照射領域における架橋性、および、電磁波非照射領域におけるアルカリ現像液との溶解性をフルオロアルキル基含有共重合体(A−1)に付与する。
【0034】
フルオロアルキル基含有共重合体(A−1)は、炭素数1〜6のフルオロアルキル基含有モノマー(a)と、不飽和有機酸および/または水酸基含有モノマーに加えて、さらに加水分解性金属アルコキシド含有モノマーを共重合したものであっても良い。加水分解性金属アルコキシド含有モノマーは、例えば、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに代表されるシラン基含有モノマーである。加水分解性金属アルコキシド含有モノマーをフルオロアルキル基含有共重合体(A−1)に対して例えば、0.1〜10重量%共重合すると、加水分解性金属アルコキシド、その加水分解化合物およびその縮合物の群から選択された少なくとも一つの金属化合物(B)との架橋性や、基板との密着性が改善される。
【0035】
フルオロアルキル基含有共重合体(A−1)には、必要に応じて他のモノマーも共重合することができ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、3−メチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチル−n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレートなどが例示される。他のモノマーの量は、フルオロアルキル基含有モノマー(a)100重量部に対して10〜200重量部、例えば30〜120重量部であってよい。
【0036】
フルオロアルキル基含有共重合体(A−1)はメルカプタン類、ハロゲン化アルキル類などの連鎖移動剤を添加して、重量平均分子量を2万以下に調整する。重量平均分子量は、例えば1,000〜20,000、特に2,000〜10,000、特別に3,000〜6,000であってよい。重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めたものである(標準ポリスチレン換算)。メルカプタン類としては、n−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2−メルカプトエタノール、メルカプト酸イソオクチル、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸メトキシブチル、シリコーンメルカプタン(信越化学製 KF−2001)などが、ハロゲン化アルキル類としては、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明では、特にカルボン酸または水酸基含有のチオール化合物を連鎖移動剤として用いることで、溶媒に対する溶解性、電磁波照射領域における架橋性、および、電磁波非照射領域におけるアルカリ現像液との溶解性が増強される。
【0037】
・(A−2)炭素数1〜6のフルオロアルキル基含有シラン
(Rf-A)pB (1)
[式中、Rfは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基を有する含フッ素基、Aは、2価、3価または4価の基、Bは加水分解可能なシラン基,pは1〜3である。]
で示される化合物であることが好ましい。Rf基の炭素数は、1〜6、特に1〜4であり、直鎖でも分岐構造でも良い。Rf基としては、具体的には以下のものが例示される。

(直鎖構造) CF3CF2CF2CF2CF2CF2−, CF3CF2CF2CF2−, CF3CF2CF2−, CF3CF2−, CF3−,
(分岐構造) (CF3)2CF−, (CF3)3C−, (CF3)2CFCF2CF2−
【0038】
A基は、Rf基とBとを連結する基である。A基は、2価、3価または4価の基であってよい。A基は、構造の一部に酸素を含む官能基を有する基であるか、あるいは炭素数1〜4のアルキレン基である。そのような官能基としては、エーテル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホンアミド基[-SO2N(R21)R22-(ただし、R21は炭素数1〜4のアルキル基、R22は炭素数1〜4のアルキレン基)]、水酸基、ウレタン基、エステル基などが挙げられる。
酸素原子を含むA基の具体例は、次のとおりである。
【0039】
-O-CH2CH2CH2-
-SO-CH2CH2CH2-
-SO2 -CH2CH2CH2-
-SO2 N(C2H5)CH2CH2-
-CH2 CH(OH)CH2-
-CH2 CH2-OCONH-CH2CH2CH2-
-CH2 CH2-NHCOO-CH2CH2CH2-
-CH2 CH2-OCO-CH2CH2CH2-
-CH2 CH2-COO-CH2CH2CH2-
【0040】
B基は加水分解可能なシラン基であり、
式: [−SiXn3-n(X:水素、ハロゲン原子または炭素数1〜4のアルコキシ基、Y:炭素数1〜4のアルキル基、n=1〜3)]が好ましい。

B基の具体例は次のとおりである。
-Si(OCH3)3
-Si(OC2H5)3
【0041】
・(A−3)炭素数1〜6のフルオロアルキル基含有シルセスキオキサン不完全縮合物
一般式:



[式中、Rfは炭素数1〜6のフルオロアルキル基、
Aは炭素、水素、酸素、窒素元素のいずれかから構成される連結基、
Mは1価のアルカリ金属である。]
で示される。ここで、Rf基の炭素数は、1〜6、特に1〜4であり、直鎖でも分岐構造でも良い。Rf基としては、具体的には以下のものが例示される。
(直鎖構造) CF3CF2 CF2CF2CF2CF2-, CF3CF2CF2CF2-, CF3CF2CF2-, CF3CF2-, CF3-,
(分岐構造) (CF32CF-, (CF33C-, (CF32CFCF2CF2-
【0042】
含フッ素シルセスキオキサン金属塩におけるA基の例は、酸素原子を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族基、酸素原子を有していてもよい炭素数6〜10の芳香族基、環状脂肪族基または芳香脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または−CH2CH(OY1)CH2−基(但し、Y1は水素原子またはアセチル基である。)である。A基は、炭素数1〜6、特に1〜4の直鎖または分岐のアルキレン基であることが好ましい。
Mは一価のアルカリ金属である。Mの例は、カリウム、ナトリウムおよびリチウムである。
【0043】
●金属化合物(B)
金属化合物(B)は、加水分解性金属アルコキシド、その加水分解化合物およびその縮合物からなる群から選択された少なくとも一つである。
金属化合物において、金属の例は、Si、Ti、Al、Zn、SnおよびFeである。
【0044】
加水分解性金属アルコキシドは以下の式で表される化合物であることが好ましい。
(R1)pSi(X)4-p (1)
[一般式(1)中、R1は、炭素数が1〜20(例えば、1〜12)である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。]
一般式(1)中、Xで表される加水分解性基は、通常、無触媒、過剰の水の共存下、室温(25〜100℃の温度範囲内で加熱することにより、加水分解されてシラノール基を生成することができる基、もしくはシロキサン縮合物を形成することができる基を指す。また、一般式(1)中の添え字pは、0〜3の整数であるが、より好ましくは0〜2の整数であり、特に好ましくは1である。
【0045】
ただし、一般式(1)で表される(A)成分において、一部のXが加水分解されていてもよく、その場合は、加水分解性シラン化合物と加水分解物との混合物となる。また、加水分解性シラン化合物の加水分解物というときは、加水分解反応によりアルコキシ基がシラノール基に変わった化合物ばかりでなく、一部のシラノール基同士が縮合した部分縮合物をも意味している。
【0046】
一般式(1)における有機基R1は、非加水分解性である一価の有機基の中から選ぶことができる。このような非加水分解性の有機基として、非重合性の有機基および重合性の有機基あるいはいずれか一方の有機基を選ぶことができる。なお、有機基R1における非加水分解性とは、加水分解性基Xが加水分解される条件において、そのまま安定に存在する性質であることを意味する。
【0047】
ここで、非重合性の有機基R1としては、アルキル基(炭素数例えば1〜6)、アリール基(炭素数例えば6〜18)、アラルキル基(炭素数例えば7〜20)等が挙げられる。これらは、直鎖状、分岐状、環状あるいはこれらの組み合わせであってもよい。さらに、非重合性の有機基R1は、ヘテロ原子を含む構造単位とすることも好ましい。そのような構造単位としては、エーテル、エステル、スルフィド等を例示することができる。また、ヘテロ原子を含む場合、非塩基性であることが好ましい。また、重合性の有機基R1は、分子中にラジカル重合性の官能基およびカチオン重合性の官能基あるいはいずれか一方の官能基を有する有機基であることが好ましい。このような官能基を導入することにより、ラジカル重合やカチオン重合を併用して、感光性組成物をより有効に硬化させることができる。重合性の有機基R1の例は、ビニル基含有の有機基(炭素数例えば1〜6)(例えばビニル基)、グリシジル基含有の有機基(炭素数例えば3〜8)(例えばグリシジル基)である。
【0048】
一般式(1)における加水分解性基Xとしては、水素原子、炭素数1〜12のアルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基およびアシルオキシ基等が挙げられる。
【0049】
次に、一般式(1)で表される加水分解性シラン化合物(単に、「シラン化合物」と称する場合がある。)の具体例を説明する。まず、非重合性の有機基R1を有するシラン化合物としては、テトラクロロシラン、テトラアミノシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラベンジロキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン等の4個の加水分解性基で置換されたシラン化合物が挙げられる。また、同様に、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、d3−メチルトリメトキシシラン、ノナフルオロブチルエチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン等の3個の加水分解性基で置換されたシラン化合物が挙げられる。また、同様に、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジアミノシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン等の2個の加水分解性基で置換されたシラン化合物、及びトリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリブチルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリブチルエトキシシラン等の1個の加水分解性基で置換されたシラン化合物を挙げることができる。
【0050】
また、重合性の有機基R1を有するシラン化合物としては、Xにおける非加水分解性の有機基に重合性の有機基R1を含むシラン化合物、Xにおける加水分解性の有機基に重合性の有機基R1を有するシラン化合物のいずれかを用いることができる。
【0051】
上述したシラン化合物を加水分解または縮合させるための条件は、特に制限されるものではないが、一例として、以下に示す1)〜3)の工程によって実施するのが好ましい。
1)一般式(1)に示す加水分解性シラン化合物と、所定量の水とを、撹拌機付の容器内に収容する。
2)次いで、溶液の粘度を調節しながら、有機溶媒を容器内にさらに収容し、混合溶液とする。
3)得られた混合溶液を、空気雰囲気中、0℃から有機溶媒もしくは加水分解性シラン化合物の沸点以下の温度で、1〜24時間の間加熱撹拌する。なお、加熱撹拌中、必要に応じて蒸留によって混合溶液を濃縮したり、あるいは溶剤を置換することも好ましい。
また、上述したシラン化合物を加水分解、縮合させる際には、触媒を使用することも好ましい。このような触媒の種類としては、金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基等を挙げることができる。なお、これら触媒のうち、金属キレート化合物、有機酸、無機酸が好ましく、より好ましくは、チタンキレート化合物、有機酸を挙げることができる。これらは1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。また、上述した触媒の使用量は、シラン化合物100重量部に対して、通常、0.001〜10重量部の範囲であり、好ましくは0.01〜10重量部の範囲である。
【0052】
加水分解性シラン化合物は、加水分解性基を一部または全部が加水分解した加水分解物であることも好ましい。加水分解物の重量平均分子量を、500〜10,000の範囲内の値とするのが好ましい。加水分解物における重量平均分子量の値が500〜10,000である場合、塗膜の成膜性が高く、光硬化性が高い。さらに、加水分解物における重量平均分子量を、1,000〜5,000の範囲内の値とすることがより好ましい。なお、加水分解物における重量平均分子量は、GPCを用い、ポリスチレン換算の重量平均分子量として測定することができる。
フッ素化合物(A)と金属化合物(B)との重量比が1:99〜90:10、例えば5:95〜50:50であってよい。
【0053】
●溶媒(C)
溶媒を添加することにより、感光性組成物の保存安定性が向上するとともに、適当な粘度を得ることができるため、均一な厚さを有する撥液パターンを形成することができる。溶媒の種類としては、本発明の目的、効果を損なわない範囲で選ぶことができるが、通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内の値を有する有機化合物であって、各構成成分を均一に溶解させる有機化合物であることが好ましい。したがって、エーテル系有機溶媒、エステル系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、芳香族炭化水素系有機溶媒、アルコール系有機溶媒からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を挙げることができる。溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート、乳酸エチル、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、クロロホルム、HFC141b、HCHC225、ハイドロフルオロエーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどが挙げられる。
また、溶媒の添加量を、感光性組成物の全体量を100重量%としたときに、10〜99重量%の範囲内の値とすることが好ましい。かかる溶媒の添加量が10〜99重量%である場合には、感光性組成物の粘度調整が良好であり、十分な厚さを有する撥液パターンを形成することが容易である。
【0054】
●光酸発生剤(D)
光酸発生剤[Photochemical acid generator(PAG)]は光をあてることによって反応し酸を発生する材料である。PAGは、光を吸収する発色団と分解後に酸となる酸前駆体より構成されており、このような構造のPAGに特定波長の光を照射することで、PAGが励起し酸前駆体部分から酸を発生する。PAGは、例えば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、 CF3SO3、 p−CH3PhSO3、 p−NO2PhSO3 (ただし、phはフェニル基)等の塩、有機ハロゲン化合物、オルトキノン−ジアジドスルホニルクロリド、またはスルホン酸エステル等を挙げることができる。
【0055】
前記有機ハロゲン化合物は、ハロゲン化水素酸を形成する化合物であり、かかる化合物は、米国特許第3,515,551号、米国特許第3,536,489号、米国特許第3,779,778号および西ドイツ特許公開公報第2,243,621号等に開示されたものが挙げられる(これらの開示を本明細書の一部とする)。
前記記載の他の光の照射により酸を発生する化合物は、特開昭54−74728号、特開昭55−24113号、特開昭55−77742号、特開昭60−3626号、特開昭60−138539号、特開昭56−17345号および特開昭56−36209号に開示されている(これらの開示を本明細書の一部とする)。
【0056】
PAGの市販品として、和光純薬製のWPAG−145[Bis(cyclohexylsulfonyl)diazomethane]、WPAG−170[Bis(t−butylsulfonyl)diazomethane]、WPAG−199[Bis(p−toluenesulfonyl)diazomethane]、WPAG−281[Triphenylsulfonium trifluoromethanesulfonate]、WPAG−336[Diphenyl−4−methylphenylsulfonium trifluoromethanesulfonate]、WPAG−367[Diphenyl−2,4,6−trimethylphenylsulfonium p−toluenesulfonate]、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のCGI-1397[(5-プロピルスルフォニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)- (2-メチルフェニル)アセトニトリル]、三和ケミカル製のTFE-トリアジン[2-[2-(Furan-2-yl)ethenyl]-4,6-bis(trichloromethyl)-s-triazine]、TME-トリアジン[2-[2-(5-Methylfuran-2-yl)ethenyl]-4,6-bis(trichloromethyl)-s-triazine]、MP-トリアジン[2-(Methoxyphenyl)-4,6-bis(trichloromethyl)-s-triazine]、ジメトキシトリアジン[2-[2-(3,4-Dimethoxyphenyl)ethenyl]-4,6-bis(trichloromethyl)-s-triazine]などを使用することができる。
【0057】
光酸発生剤(D)の量は、フッ素化合物(A)と金属化合物(B)の合計100重量部に対して、0.1〜20重量部、特に1〜10重量部であってよい。
【0058】
●顔料
本発明の感光性組成物には必要に応じて各種顔料を添加しても良い。例えば、黒色顔料としてはカーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、酸化鉄、硫化ビスマス、ペリレンブラックなどである。
顔料の量は、フッ素化合物(A)と金属化合物(B)の合計100重量部に対して、30重量部以下、例えば1〜10重量部であってよい。
【0059】
●酸捕捉剤
本発明の感光性組成物には必要に応じて酸捕捉剤を添加することにより、膜中で酸発生剤から発生した酸の拡散を制御しても良い。酸捕捉剤としては、有機アミン、塩基性のアンモニウム塩、塩基性のスルホニウム塩などが用いられ、昇華やレジスト性能を劣化させないものであればよい。これらの酸捕捉剤の中でも、有機アミンが画像性能が優れる点で好ましい。例えば特開昭63-149640号、特開平5-249662号、特開平5-127369号、特開平5-289322号、特開平5-249683号、特開平5-289340号、特開平5-232706号、特開平5-257282号、特開平6-242605号、特開平6-242606号、特開平6-266100号、特開平6-266110 号、特開平6-317902号、特開平7-120929号、特開平7-146558号、特開平7-319163号、特開平7-508840号、特開平7-333844号、特開平7-219217号、特開平7-92678号、 特開平7-28247号、特開平8-22120号、特開平8-110638号、特開平8-123030号、特開平9-274312号、特開平9-166871号、特開平9-292708号、特開平9-325496号、特表平7-508840号、USP5525453号、USP5629134号、USP5667938号等に記載の塩基性化合物を用いることができる(これら開示を本明細書の一部とする。)。酸捕捉剤としては、好ましくは、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、4−ジメチルアミノピリジン、1−ナフチルアミン、ピペリジン、ヘキサメチレンテトラミン、イミダゾール類、ヒドロキシピリジン類、ピリジン類、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ピリジニウムp−トルエンスルホナート、2,4,6−トリメチルピリジニウムp−トルエンスルホナート、テトラメチルアンモニウムp−トルエンスルホナート、及びテトラブチルアンモニウムラクテート、トリエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。これらの中でも、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、4−ジメチルアミノピリジン、1−ナフチルアミン、ピペリジン、ヘキサメチレンテトラミン、イミダゾール類、ヒドロキシピリジン類、ピリジン類、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の有機アミンが好ましい。
酸捕捉剤の量は、フッ素化合物(A)と金属化合物(B)の合計100重量部に対して、30重量部以下、例えば1〜10重量部であってよい。
【0060】
●その他の添加剤
本発明の感光性組成物には必要に応じてその他の各種添加剤が用いられる。例えば、膜の平滑性を向上させるためのフッ素系、シリコーン系、炭化水素系界面活性剤や、膜の密着性を向上させるためのシランカップリング剤やチタネートカップリング剤、その他、暗反応抑制のための熱重合禁止剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤などが挙げられる。
その他の添加剤の量は、フッ素化合物(A)と金属化合物(B)の合計100重量部に対して、30重量部以下、例えば1〜10重量部であってよい。
【0061】
●基材
本発明の基板に用いる基材は、シリコン、合成樹脂、ガラス、金属、セラミックスなどである。
【0062】
合成樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、例えば、ポリエチレン、ポロプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリル−スチレン共重合体(AS 樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオ共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば2層以上の積層体として)用いることができる。合成樹脂製の基板を用いれば、軽量、透明、安価、曲げられるなどの特徴を基板に付与できる。
【0063】
ガラスとしては、例えば、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。
金属としては、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、白金等が挙げられる。
セラミックとしては、酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ケイ素、ジルコニア、チタン酸バリウム)、窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素)、硫化物(例えば、硫化カドミウム)、炭化物(例えば、炭化ケイ素)等が挙げられ、これらの混合物を使用して良い。
【0064】
いずれの基板を用いる場合でも、プラズマ処理やUVオゾン処理などの前処理を行っても良い。これらの前処理により、基板表面に親液性の官能基(例えば、OH基、COOH基、NH基)を導入できる。
パターン表面の形状は、最終的に製造する素子の目的に応じて適当なものを選択すれば良く、円、四角形、三角形、直線、曲線などが例示される。互いのパターンは接していても離れていても良い。例えば、ライン&スペースの場合、ライン幅およびライン間隔は、0.5〜100μm、例えば、1〜20μmであって良い。ライン幅は等間隔であっても良いし、幅が変化しても良い。ラインの形状は直線でも曲線でも良い。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0066】
合成例1
還流冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた四つ口フラスコ中にフルオロアクリレートCH=C(Cl)COOCHCH(略称α−Cl)60g、メタクリル酸10g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5g、イソボルニルメタクリレート(略称iBMA)25g、3−メルカプトプロピオン酸5g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(略称PGMEA)200gを入れ、70℃に加熱後、30分間窒素気流下で撹拌した。これに2,2'-アゾビスイソブチロニトリル1gを添加し、18時間重合した。反応液中の残存モノマーをガスクロマトグラフィーで分析することより、α−Clの転化率が95%以上であることを確認した。得られた反応液をヘキサンで沈殿、真空乾燥して、フッ素系ポリマーを単離した。得られたフッ素系ポリマーの分子量をGPCで測定すると、重量平均分子量は5,100(ポリスチレン換算)であった。単離したフッ素系ポリマーを再度、PGMEAに溶解して、最終的に固形分30重量%のフッ素系ポリマー溶液を調製した。得られたポリマーのモノマー組成は、仕込みモノマー組成にほぼ一致した。
【0067】
合成例2
攪拌機を備えた容器中に、メチルトリメトキシシラン80g、イオン交換水24g、シュウ酸0.04gを入れ、60℃、6時間の条件で撹拌して、メチルトリメトキシシランの加水分解を行った。次に、容器内にPGMEAを加えた後、加水分解で生成したメタノールをロータリーエバポレータで除去した。最終的に固形分を50重量%に調整したポリシロキサンのPGMEA溶液を調製した。
【0068】
実施例1
合成例1のフッ素系ポリマー溶液10g、合成例2のポリシロキサン溶液100g、CGI-1397[(5-プロピルスルフォニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)- (2-メチルフェニル)アセトニトリル](光酸発生剤、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)1g、トリエチルアミン(酸捕捉剤)0.01gを均一に溶解して、フッ素系感光性ゾル-ゲル組成物を調製した。
【0069】
実施例2
ガラス基板をアセトンで洗浄し、真空紫外光を照射して表面を超親水化した後、実施例1のフッ素系感光性ゾル-ゲル組成物をスピンコートすることにより、膜厚10μmの均一な塗膜を形成する。110℃で3分間加熱後、この膜にライン/スペース=10μm/10μmのフォトマスクを介して、キャノン製マスクアライナPLA-501から365nmの紫外線を積算照度30mJ/cmの条件で照射し、さらにPEB処理として110℃で3分間加熱する。この操作で照射領域は架橋して溶媒に不溶となる。次に、アルカリ現像液P3 disperse M(ヘンケルジャパン社製)の15%水溶液に1分間浸漬することにより現像した後、水洗、乾燥、200℃で1時間加熱して、撥液領域と親液領域から成るパターン基板を作製する。パターンを電界効果型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)で観察したところ、線幅10μmの明瞭なラインパターンが形成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化合物(A)、加水分解性金属アルコキシド、その加水分解化合物およびその縮合物からなる群から選択された少なくとも一種の金属化合物(B)、溶媒(C)、光酸発生剤(D)を必須成分とし、フッ素化合物(A)が
(A−1)炭素数1〜6のフルオロアルキル基含有モノマーと、不飽和有機酸および/または水酸基含有モノマーを必須成分とする分子量2万以下のフルオロアルキル基含有共重合体、
(A−2)炭素数1〜6のフルオロアルキル基含有シラン、および
(A−3)炭素数1〜6のフルオロアルキル基含有シルセスキオキサン不完全縮合物
からなる群から選択された少なくとも一種であるフッ素系感光性組成物。
【請求項2】
フルオロアルキル基含有モノマーが
(a−1)炭素数1〜6のフルオロアルキル基を有するα位置換アクリレートモノマー
[α位の置換基:水素元素、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、あるいは炭素数1〜20の直鎖状または分岐状アルキル基]、
(a−2)炭素数1〜6のフルオロアルキル基および重合性基を含有する含フッ素シルセスキオキサンモノマー、
(a−3)炭素数1〜6のフルオロアルキル基と重合性基が-SO2(CH2)n-(nは1〜10)により連結された重合性モノマー、および
(a−4)モノマー(a−1)〜モノマー(a−3)の少なくとも一種を繰り返し単位とするポリマーの末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー
からなる群から選択された少なくとも一種である請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
フルオロアルキル基含有共重合体(A−1)の必須成分として、さらに加水分解性金属アルコキシド含有モノマーが含まれる請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項4】
フルオロアルキル基含有共重合体(A−1)が、カルボン酸または水酸基含有のチオール化合物を連鎖移動剤の存在下で分子量2万以下になるように製造されたものである請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項5】
金属化合物(B)における金属が、ケイ素(Si)、 チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、鉄(Fe)からなる群から選択された少なくとも一種である請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項6】
溶媒(C)が、1気圧での沸点が50〜200℃の範囲内の値を有する有機化合物である請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項7】
光酸発生剤(D)が、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、 CF3SO3、 p−CH3PhSO3、 p−NO2PhSO3 (ただし、Phはフェニル基)等の塩、有機ハロゲン化合物、オルトキノン−ジアジドスルホニルクロリド、およびスルホン酸エステルからなる群から選択された少なくとも一種である請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項8】
フッ素化合物(A)と金属化合物(B)との重量比が1:99〜90:10であり、
溶媒(C)の量が、感光性組成物に対して10〜99重量%であり、
光酸発生剤(D)の量が、フッ素化合物(A)と金属化合物(B)の合計100重量部に対して、0.1〜20重量部である請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の感光性組成物を用いて、フォトリソグラフィー法により、表面自由エネルギーが異なる複数の領域から構成されるパターンを基板上に形成することを特徴とするパターン基板の製造方法。
【請求項10】
フォトリソグラフィーに用いられる電磁波が、
波長10〜400nmの光、
波長0.1〜10nmのX線、
波長0.001〜0.01nmの電子線、または
波長10〜300nmのレーザー光線
のいずれかである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の製造方法で製造されたパターン基板。
【請求項12】
請求項11に記載のパターン基板上に機能性化合物の溶液または分散液を塗布し、溶媒を除去することを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法によって製造された電子、光学、医療または分析化学用途のデバイス。
【請求項14】
集積回路、ディスプレイ用画素、レンズアレイ、バイオチップまたはマイクロ化学チップである請求項13に記載のデバイス。

【公開番号】特開2008−15084(P2008−15084A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184319(P2006−184319)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】