説明

フランジ付き紙カップの製造装置および製造方法

【課題】シート材を焦がすことなく、開口部の外周縁に扁平なフランジ部を形成した紙カップを製造する装置および方法を提供する。
【解決手段】紙カップの側壁内側に嵌合する嵌合部と、嵌合部の外周壁に接続され、紙カップの開口部に当接する円環状の加工面とを有する超音波ホーンと、その内部に紙カップの側壁が嵌合するカップ受け部と、カップ受け部の開口部の上端面に円環状のフランジ受け部とを有する受け治具とを備え、加工面およびフランジ受け部は、互いに接近するにつれて、紙カップの側壁の上端縁近傍に形成されたカーリングを押圧および加熱して押しつぶすことで扁平なフランジ部を形成し、加工面およびフランジ受け部を対向して配置したときに両者の間に形成されるクリアランスは、側壁を構成するシート材を重ねて貼り合わせた貼り合わせ部が配置される部分において、部分的に大きくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙カップの開口部の外周縁をフランジ形状に形成するために用いられる紙カップの製造装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インスタントコーヒー等の粉末状の食品の包装容器として、内容物を簡易に包装した詰め替え用の包装容器が知られている。図4は、特許文献1が開示する、このような包装容器900の縦断面図である。包装容器900は、円筒形状の側壁を有する紙カップ920と、漏斗パーツ930と、シール蓋960とから構成されている。漏斗パーツ930は、紙カップ920内部に嵌め込まれ、紙カップ920の内面に接合されている。紙カップ920の開口部の外周縁には、扁平なフランジ形状を有するフランジ部921が形成されている。紙カップ920の内部には内容物950が充填され、フランジ部921の天面にシール蓋960が貼り付けられることにより、紙カップ920が封止されている。
【0003】
図5は、紙カップ920におけるフランジ部921の製造方法を示す、超音波ホーン、受け治具および紙カップ920の断面図である。紙カップ920の材料としては、紙と熱可塑性フィルム等のシーラント層とを積層したシート材が一般的に使用される。紙カップ920は、シート材を巻いて両側縁を部分的に重ね合わせて加熱および押圧して接合することにより、筒状の側壁を成型し、一方の開口部に底面となる底材を取り付け、加熱およびローレットがけ等により接合し、さらに、他方の開口部上端縁をカールさせてカーリング901を形成することにより、作製する。そして、該紙カップ920を受け治具800で保持し、超音波ホーン700の加工面702を、受け治具800のフランジ受け部801に対向させて接近させ、紙カップ920の側壁の上端縁を超音波ホーン700の加工面702を用いて、カーリング901を加熱しながら押しつぶすと、カーリング901が扁平状に変形した状態で溶着され、フランジ部921が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−184169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紙カップは、シート材を筒状に巻いて両側端を貼り合わせることによって形成されるため、シート材が重なり合う形で貼り合わせ部が存在する。すなわち、この部分は他の部分に比べてかなり厚くなっている。したがって、超音波ホーンと受け治具との間に形成されるフランジ部のうち、この貼り合わせ部は、他の部分に比べてより強い圧力を受けることになる。そのため、貼り合わせ部に超音波のエネルギーが集中して、シート材のシーラント層や紙が焦げやすいという問題があった。この問題は、とくに、シート材の厚さが0.33mm以上の場合に顕著であった。
【0006】
それ故に、本発明の目的は、シート材を焦がすことなく、シール蓋の貼着が容易かつ安定した、開口部の外周縁に扁平なフランジ部を形成した紙カップを製造する装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、紙を含むシート材を筒状に巻いて貼り合わせて形成した側壁を有する紙カップの上端縁近傍を、当該紙カップの外側を取り囲む扁平なフランジ部に形成する、フランジ付き紙カップの製造装置であって、紙カップの開口部の内径に等しい外径を有し、紙カップの側壁内側に嵌合する嵌合部と、嵌合部の外周壁に接続され、紙カップの開口部に当接する円環状の加工面とを有する超音波ホーンと、紙カップの外径に等しい内径を有し、その内部に紙カップの側壁が嵌合するカップ受け部と、カップ受け部の開口部の上端面に円環状のフランジ受け部とを有する受け治具とを備え、加工面およびフランジ受け部は、互いに接近するにつれて、紙カップの側壁の上端縁近傍に形成されたカーリングを押圧および加熱して押しつぶすことで扁平なフランジ部を形成し、加工面およびフランジ受け部を対向して配置したときに両者の間に形成されるクリアランスは、側壁を構成するシート材を重ねて貼り合わせた貼り合わせ部が配置される部分において、部分的に大きくなっている。また、本発明はこのような紙カップの製造方法にも向けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シート材を焦がすことなく、シール蓋の貼着が容易かつ安定した、開口部の外周縁に扁平なフランジ部を形成した紙カップを製造する装置および方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波ホーンを示す図
【図2】本発明の一実施形態に係る受け治具を示す図
【図3】本発明の一実施形態に係る紙カップの製造方法を示す図
【図4】従来の紙カップを示す図
【図5】従来の紙カップの製造方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の一実施形態について説明する。図1は本実施形態に係る超音波ホーン100を示す図である。図1の(a)および(b)は超音波ホーン100の断面図および下面図である。図1の(a)の断面図は、(b)のA−A´線に沿った縦断面を示している。超音波ホーン100は、例えばアルミニウムやチタンなどを材質としており、開口部の周縁に嵌合部102を備え、嵌合部102の外周に接続された円環状の加工面101を備えている。また、超音波ホーン100の内方には通気孔103が形成されている。図1の(c)は、(a)の点線で囲んだ部分を拡大したものである。加工面101は、嵌合部102側(図1(a)の下側)に向かって径が広がるテーパー面よりなる。本実施形態では、超音波ホーンの中心軸に直交する平面に対して加工面101がなす角度は15°(すなわち、加工面101のテーパー頂角は75°)とした。
【0011】
図2は、本実施形態に係る受け治具200を示す図である。図2の(a)および(b)は受け治具200の断面図および天面(上面)図である。図2の(a)の断面図は、(b)のB−B´線に沿った縦断面を示している。受け治具200は、例えばステンレスを材質とし、筒状の内形を有するカップ受け部201、および、カップ受け部201の開口部の外周に接続された円環状のフランジ受け部202とを備えている。フランジ受け部202の一部には、長さ12mmにわたって、凹部203が設けられている。図2の(c)および(d)は、(a)および(b)の点線で囲んだ部分をそれぞれ拡大したものである。フランジ受け部202の上端面は、テーパー状であり、外周縁が内周縁より受け治具200の底部側に位置している。本実施形態では、受け治具200の中心軸に直交する平面に対してフランジ受け部202がなす角度は17°(すなわち、フランジ受け部202の上端面のテーパー頂角は73°)としている。凹部203は、フランジ受け部202の他の部分より、0.3mmほど凹んでいる。これにより、超音波ホーン100の加工面101と受け治具200のカップ受け部201とのクリアランスは、凹部203を設けた箇所では、設けていない箇所より0.3mmほど大きくなっている。また、カップ受け部201の内壁のうち、凹部203に接続する箇所から、底面にかけての部分に、同様に0.3mmほど凹みを持たせてもよい。
【0012】
以下に、これらの超音波ホーン100および受け治具200を用いて、紙カップのフランジを形成する方法について説明する。まず、シート材を巻いて、両側端を貼り合わせ筒状の側壁を形成し、一方の開口部に底面となる底材を取り付け、他方の開口部上端縁にカーリングを形成した紙カップ300を準備する。すなわち紙カップ300は、従来の紙カップ920と同様の製造方法で製造され、カーリングは同様の図5に示す従来の紙カップ920のカーリング901と同様の断面形状を有する。シート材の材質としては、LDPE(低密度ポリエチレン)/紙/LDPE/アルミ/接着剤/PET(ポリエチレンテレフタレート)/接着剤/LDPEを積層したものが挙げられるが、その他、紙にシーラント層を積層したものならばよい。尚、紙カップ300は、上述したようにこの時点で、他方の開口部に、底面となる底シート材を取り付けているが、フランジを形成した後で取付けてもよい。
【0013】
シート材の厚みは0.40mmとし、シート材を重ねて貼り合わせた貼り合わせ部303の幅を10mmとした。また、フランジ部302の仕上がり厚さを、貼り合わせ部303では1.3mmとし、貼り合わせ部303以外の部分で1.0mmとした。
【0014】
次に、紙カップ300を、受け治具200のカップ受け部201の内側に嵌合させる。カップ受け部201の内径は、紙カップ300の外径に略等しくなっている。このとき、紙カップ300の貼り合わせ部303は、受け治具200のフランジ受け部202の凹部203に対向するよう位置合わせを行う。なお、凹部203の12mmの長さは、紙カップ300の貼り合わせ部303の10mmの幅に合わせて定められている。また、凹部203の0.3mmの深さは、紙カップ300のフランジ部302の貼り合わせ部303の1.3mmの厚さと貼り合わせ部303以外の部分の1.0mmの厚さとの差分に合わせて定められている。したがって、凹部203の長さおよび深さは、紙カップ300の貼り合わせ部303の幅およびフランジ部302に形成したときの仕上がり厚さ等に基づいて適宜設計すればよい。
【0015】
次に、超音波ホーン100の嵌合部102を、紙カップ300の内側に嵌合させる。嵌合部102の外径は、紙カップ300の開口部の内径に略等しくなっている。超音波ホーン100の加工面101から、紙カップ300の開口部に一定の圧力をかけると共に、超音波ホーン100の加工面101と受け治具200のフランジ受け部202との間で、超音波ホーン100に接続された超音波発振器(不図示)から超音波を発振させて、超音波ホーン100の加工面101から、紙カップ300のカーリングを加熱する。ここで超音波の発振と略同時に、超音波ホーン100の通気孔103から気体を吹き込む。超音波ホーン100の加工面101からの圧力により、カーリングは、フランジ部302の仕上がり厚さにまで、押しつぶされ扁平状に変形する。そして、この状態で、加熱によりシーラント層が溶け、扁平状の変形が維持された状態で溶着される。これにより紙カップ300のフランジ部302が形成される。なお、気体を吹き込むタイミングは、超音波の発振と略同時に限定されるものではなく、超音波の発振から、紙カップ300を超音波ホーン100から離すまでのいずれの時点で行ってもよい。尚、気体を吹き込むことの効果については後述する。
【0016】
図3は、この状態における超音波ホーン100、受け治具200および紙カップ300を模式的に示した縦断面図である。図3に示すように、紙カップ300のフランジ部302の貼り合わせ部303は、受け治具200のフランジ受け部202の凹部203に収容されるため、フランジ部302は、全周にわたって均等な圧力および加熱を受けるため、貼り合わせ部303の焦げ付きが防止される。なお、凹部203は、受け治具200のフランジ受け部202ではなく、超音波ホーン100の加工面101に設けてもよい。ただし、この場合は、凹部203に収容された紙カップ300のフランジ部302の貼り合わせ部303が、フランジ部302の天面側に凸部を形成することになるため、シール蓋等の貼り付けが困難になるおそれがある。
【0017】
また、フランジ部302の形成後、超音波ホーン100を紙カップ300の開口部から取り外す際の引き上げる力や、フランジ部302がある程度の厚みを有している為、扁平状態から元のカーリングの状態に戻ろうとする力などが働く。超音波ホーンの加工面101および受け治具200のフランジ受け部202に上述の傾斜を設けず水平に形成した場合、これらの力により、フランジ部302が、水平方向から斜め上方に反り上がる形に形成されるなどして、フランジ部302の天面へのシール蓋等の貼り付けが困難となる場合がある。超音波ホーン100の加工面101および受け治具200のフランジ受け部202に上述の傾斜を設けたことにより、フランジ部302の天面が水平に形成され、シール蓋等の貼り付けが困難になるのを防止することができる。なお、本実施形態では、超音波ホーン100の加工面101の傾斜角を15°とし、受け治具200のフランジ受け部202の傾斜角を17°としたが、超音波ホーン100の加工面101の傾斜角が12〜40°の範囲であり、受け治具200のフランジ受け部202の傾斜角が超音波ホーン100の加工面101の傾斜角に対して−2〜5°の範囲であれば、紙カップ300のシート材の厚さが0.38mm以上の場合に、好ましい結果が得られる。
【0018】
最後に超音波ホーン100を、受け治具200から離して、紙カップ300を取り出す。この際、通気孔から気体が吹き込まれたことにより、紙カップ300の内圧が外圧に比べ高くなっており、紙カップ300のフランジ部302と超音波ホーン100の加工面101とが、離れやすくなっている。そのため、紙カップ300が超音波ホーン100ごと持ち上げられてしまうことに起因する製造ラインでの異常が発生しにくくなっている。また、紙カップ300を超音波ホーン100から振り落とすために、再度の超音波発振(アフターバースト)を行う必要がなく、生産速度を向上できるとともに、アフターバーストによる超音波ホーン100の過熱による発振異常を防止できる。
【0019】
以上のように、本実施形態では、紙カップ300のフランジ部302を焦げ付きを防止しつつ平坦に成形できるとともに、成形後の紙カップ300を超音波ホーン100から離れやすくすることができる。また、本実施形態では紙カップ300は筒状のストレートタイプのものとしたが、本発明は、テーパーを有するタイプの紙カップに対しても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、シート材を焦がすことなく、開口部の外周縁に扁平なフランジ部を形成した紙カップ等を製造する装置および方法に有用である。
に有用である。
【符号の説明】
【0021】
100、700 超音波ホーン
101、702 加工面
102 嵌合部
103 通気孔
200、800 受け治具
201 カップ受け部
202、801 フランジ受け部
203 凹部
300、920 紙カップ
302、921 フランジ部
303 貼り合わせ部
900 包装容器
901 カーリング
930 漏斗パーツ
950 内容物
960 シール蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を含むシート材を筒状に巻いて貼り合わせて形成した側壁を有する紙カップに扁平なフランジ部を設けた、フランジ付き紙カップの製造装置であって、
前記紙カップの開口部の内径に等しい外径を有し、当該紙カップの前記側壁内側に嵌合する嵌合部と、当該嵌合部の外周壁に接続され、当該紙カップの開口部に当接する円環状の加工面とを有する超音波ホーンと、
前記紙カップの外径に等しい内径を有し、その内部に当該紙カップの前記側壁が嵌合するカップ受け部と、当該カップ受け部の開口部の上端面に円環状のフランジ受け部とを有する受け治具とを備え、
前記加工面および前記フランジ受け部は、互いに接近するにつれて、前記紙カップの前記側壁の上端縁近傍に形成されたカーリングを押圧および加熱して押しつぶすことで扁平なフランジ部を形成し、
前記加工面および前記フランジ受け部を対向して配置したときに両者の間に形成されるクリアランスは、前記側壁を構成する前記シート材を重ねて貼り合わせた貼り合わせ部が配置される部分において、部分的に大きくなっている、フランジ付き紙カップの製造装置。
【請求項2】
前記超音波ホーンの加工面は、前記受け治具側に向けて径が広がるテーパー面であり、
前記受け治具のフランジ受け部の上端面には、前記加工面に対応するテーパー面が設けられている、請求項1に記載のフランジ付き紙カップの製造装置。
【請求項3】
前記超音波ホーンの開口部より内方に、通気孔が形成されている、請求項1または2に記載のフランジ付き紙カップの製造装置。
【請求項4】
フランジ付き紙カップの製造方法であって、
シート材を巻いて両側縁を部分的に重ね合わせて接合することにより、筒状の側壁を成型し、当該側壁の一方の開口部に底材を接合し、他方の開口部の上端縁をカールさせてカーリングを形成した紙カップを準備する工程と、
前記カーリングを押圧および加熱して、扁平なフランジ部を形成する工程とを含み、
前記フランジを形成する工程において、前記カーリングの前記シート材が貼り合わせられた部分への押圧量および加熱量を、他の部分への押圧量および加熱量と等しくする、フランジ付き紙カップの製造方法。
【請求項5】
前記フランジ部を形成する工程において、超音波ホーンを用いて押圧および加熱を行い、前記紙カップに気体を吹き込み、当該紙カップの内圧を外圧より高くすることによって、当該紙カップの当該超音波ホーンからの離脱を支援する、請求項4に記載のフランジ付き紙カップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−250366(P2012−250366A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122557(P2011−122557)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】