説明

フリーラジカルを抑制する薬草組成物および該薬草組成物を含む健康食品

【課題】フリーラジカルを抑制することのできる薬草組成物を提供する。
【解決手段】本発明によるフリーラジカルを抑制することのできる薬草組成物は、イタドリおよびノジスミレのうちの1つを有効量含んでなる。該薬草組成物は哺乳類の対象に適用される。イタドリは生のイタドリ全草から選ばれ、ノジスミレは生のノジスミレ全草から選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬草組成物(herbal composition)に関し、より詳細にはフリーラジカルを抑制することのできる薬草組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フリーラジカルは、その活発な化学特性によって細胞およびDNAと反応し易く、老化や癌を引き起こすおそれのあるものである。
【0003】
例えばビタミンE、ビタミンC、カロチノイド、微量元素、フラボノイドまたはフェノール物質などの抗酸化剤は、フリーラジカルによって誘発される脂質過酸化反応を有効に抑制することができる。これら抗酸化剤は、ラジカル停止剤、還元剤、キレート剤、脱酸素剤、酵素型抗酸化剤(enzyme-type anti-oxidants)、および過酸化物分解剤として作製される。抗酸化剤は、疾病から身を守るために人体にとっては重要なものである。
【0004】
現在、フリーラジカルを抑制できる様々な合成化合物の開発がなされているが、そのほとんどが環境汚染の問題を生じさせるため、天然抗酸化剤を開発することの重要さが増してきている。そのような天然抗酸化剤のソースとしては、野菜、植物、漢方薬または発酵食品等がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、フリーラジカルを抑制することのできる薬草組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、イタドリ(虎杖、Polygonum cyspidatum)およびノジスミレ(紫花地丁、Viola yedoensis)のうちの1つを有効量含む、フリーラジカルを抑制できる薬草組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、環境に影響を与えることのない、フリーラジカルを抑制可能な天然の薬草組成物が提供される。さらに、かかる本発明の薬草組成物をローションに用いれば、皮膚の質の改善が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明を実施する上で最良であると考えられる形態を記載する。この記載は、本発明の主な原理の説明を目的になされたものであり、限定の意味で解されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによって決定されることが最も望ましい。
【0009】
本発明は、イタドリ(虎杖、Polygonum cyspidatum)およびノジスミレ(紫花地丁、Viola yedoensis)のうちの1つを有効量含む、フリーラジカルを抑制できる薬草組成物を提供するものである。イタドリの濃度は約0.01〜10wt%、好ましくは0.01〜1wt%である。ノジスミレの濃度は約0.01〜10wt%、好ましくは0.01〜1wt%である。また、本発明は、有効量のイタドリおよび有効量のノジスミレの混合物を含む、フリーラジカルを抑制できる薬草組成物も提供する。該混合物において、イタドリの濃度は約0.01〜10wt%、好ましくは0.01〜1wt%あり、ノジスミレの濃度は約0.01〜10wt%、好ましくは0.01〜1wt%である。
【0010】
本発明にかかわる薬草組成物は、哺乳類の対象、好ましくはヒトに適用される。イタドリは生のイタドリ全草から選ばれ、ノジスミレは生のノジスミレ全草から選ばれる。
【0011】
本発明にかかわる薬草組成物は、抽出後、水、炭素数1〜20のアルコール、炭素数1〜20のエステル、または澱粉中に分散させることによって得られた液体薬草組成物であって、さらに、その液体薬草組成物を凍結乾燥して粉末として得られたものである。
【0012】
イタドリを含む該薬草組成物のフリーラジカル抑制率は約90〜100%、ノジスミレを含む該薬草組成物のフリーラジカル抑制率は約90〜100%、イタドリおよびノジスミレの混合物を含む該薬草組成物のフリーラジカル抑制率は約80〜100%である。
【0013】
本発明にかかわる薬草組成物は、経口型または外用型とすることができるが、これらのみに限定はされない。経口型の薬草組成物には健康食品が含まれ、外用型の薬草組成物には、例えばトリートメントマスク、ローションまたはジェルなどの化粧品が含まれる。
【0014】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【実施例】
【0015】
実施例1
イタドリ全草600gをエタノール2lで60℃にて4時間熱抽出し、これを2〜3回繰り返してから、その抽出液を再度濃縮(re-concentrate)して200mlにした。続いて、水800mlおよびn−ヘキサン300mlを加えて3回抽出し、水層とn−ヘキサン層に分けた。そして、n−ヘキサン層を再度濃縮(60℃、2時間)し、その抽出物を得た。
【0016】
次に、その水層をジクロロメタン300mlで3回抽出して水層とジクロロメタン層に分けてから、ジクロロメタン層を再度濃縮(35℃、2時間)し、その抽出物を得た。
【0017】
次に、その水層をn−ブタノール300mlで3回抽出して水層とn−ブタノール層に分けてから、n−ブタノール層を再度濃縮(70℃、2時間)し、その抽出物を得た。最終的な水層にはイタドリ薬草組成物が含まれ、イタドリの濃度は2000μg/mlであった。
【0018】
最後に、その水層を再度濃縮(80℃、2時間)してから、3日間凍結乾燥し、粉末にした。そして、この薬草組成物粉末を−20℃で保存した。
【0019】
<フリーラジカル抑制率実験>
イタドリ抽出液0.05mlおよびエタノール0.05mlを、25℃恒温下で、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)10mM、ゼラチン1%、ポリ(アルファ−メチルスチレン)(PMS)0.2mg/ml、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)4mg/ml、キサンチン1mM、およびリン酸緩衝液(pH7.8)0.1Mを含有した溶液0.2mlにそれぞれ加えた。次いで、キサンチンオキシダーゼ溶液0.05mlおよびリン酸緩衝液(0.1M、pH7.8)0.05mlを、イタドリ含有溶液とエタノール含有溶液にそれぞれ添加した。完全に混ざった後で、各溶液の540nmにおける吸光値をELISAリーダーにより測定した。その吸光値をA、B、CおよびDで表す。Aはイタドリとキサンチンオキシダーゼを含有する溶液の吸光値を表し、Bはイタドリとリン酸緩衝液を含有する溶液の吸光値を表し、Cはエタノールとキサンチンオキシダーゼを含有する溶液の吸光値を表し、Dはエタノールとリン酸緩衝液を含有する溶液の吸光値を表す。
【0020】
そして、イタドリ抽出液のフリーラジカル抑制率を下式により求めた。
【0021】
【数1】

【0022】
実施例2
ノジスミレ全草600gをエタノール2lで60℃にて4時間熱抽出し、これを2〜3回繰り返してから、その抽出液を再度濃縮して200mlにした。続いて、水800mlおよびn−ヘキサン300mlを加えて3回抽出し、水層とn−ヘキサン層に分けた。そして、n−ヘキサン層を再度濃縮(60℃、2時間)し、その抽出物を得た。
【0023】
次に、その水層をジクロロメタン300mlで3回抽出して水層とジクロロメタン層に分けてから、ジクロロメタン層を再度濃縮(35℃、2時間)し、その抽出物を得た。
【0024】
次に、その水層をn−ブタノール300mlで3回抽出して水層とn−ブタノール層に分けてから、n−ブタノール層を再度濃縮(70℃、2時間)し、その抽出物を得た。最終的な水層にはノジスミレ薬草組成物が含まれ、ノジスミレの濃度は2000μg/mlであった。
【0025】
最後に、その水層を再度濃縮(80℃、2時間)してから、3日間凍結乾燥し、粉末にした。そして、この薬草組成物粉末を−20℃で保存した。
【0026】
<フリーラジカル抑制率実験>
ノジスミレ抽出液0.05mlおよびエタノール0.05mlを、25℃恒温下で、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)10mM、ゼラチン1%、ポリα−メチルスチレン(PMS)0.2mg/ml、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)4mg/ml、キサンチン1mM、およびリン酸緩衝液(pH7.8)0.1Mを含有した溶液0.2mlにそれぞれ加えた。次いで、キサンチンオキシダーゼ溶液0.05mlおよびリン酸緩衝液(0.1M、pH7.8)0.05mlを、ノジスミレ含有溶液とエタノール含有溶液にそれぞれ添加した。完全に混ざった後で、各溶液の540nmにおける吸光値をELISAリーダーにより測定した。その吸光値をA、B、CおよびDで表す。Aはノジスミレとキサンチンオキシダーゼを含有する溶液の吸光値を表し、Bはノジスミレとリン酸緩衝液を含有する溶液の吸光値を表し、Cはエタノールとキサンチンオキシダーゼを含有する溶液の吸光値を表し、Dはエタノールとリン酸緩衝液を含有する溶液の吸光値を表す。
【0027】
そして、ノジスミレ抽出液のフリーラジカル抑制率を下式により求めた。
【0028】
【数2】

【0029】
実施例3
イタドリ全草600gおよびノジスミレ全草600gをエタノール2リットルで60℃にて4時間熱抽出し、これを2〜3回繰り返してから、その抽出液を再度濃縮して200mlにした。続いて、水800mlおよびn−ヘキサン300mlを加えて3回抽出し、水層とn−ヘキサン層に分けた。そして、n−ヘキサン層を再度濃縮(60℃、2時間)し、その抽出物を得た。
【0030】
次に、その水層をジクロロメタン300mlで3回抽出して水層とジクロロメタン層に分けてから、ジクロロメタン層を再度濃縮(35℃、2時間)し、その抽出物を得た。
【0031】
次に、その水層をn−ブタノール300mlで3回抽出して水層とn−ブタノール層に分けてから、n−ブタノール層を再度濃縮(70℃、2時間)し、その抽出物を得た。最終的な水層にはイタドリおよびノジスミレ薬草組成物が含まれていた。
【0032】
最後に、その水層を再度濃縮(80℃、2時間)してから、3日間凍結乾燥し、粉末にした。そして、この薬草組成物粉末を−20℃で保存した。
【0033】
<フリーラジカル抑制率実験>
イタドリおよびノジスミレ含有抽出液0.05mlおよびエタノール0.05mlを、25℃恒温下で、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)10mM、ゼラチン1%、ポリ(アルファ−メチルスチレン)(PMS)0.2mg/ml、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)4mg/ml、キサンチン1mM、およびリン酸緩衝液(pH7.8)0.1Mを含有した溶液0.2mlにそれぞれ加えた。次いで、キサンチンオキシダーゼ溶液0.05mlおよびリン酸緩衝液(0.1M、pH7.8)0.05mlを、イタドリおよびノジスミレ含有溶液とエタノール含有溶液にそれぞれ添加した。完全に混ざった後で、各溶液の540nmにおける吸光値をELISAリーダーにより測定した。その吸光値をA、B、CおよびDで表す。Aはイタドリ、ノジスミレおよびキサンチンオキシダーゼを含有する溶液の吸光値を表し、Bはイタドリ、ノジスミレおよびリン酸緩衝液を含有する溶液の吸光値を表し、Cはエタノールとキサンチンオキシダーゼを含有する溶液の吸光値を表し、Dはエタノールとリン酸緩衝液を含有する溶液の吸光値を表す。
【0034】
そして、イタドリおよびノジスミレ含有抽出液のフリーラジカル抑制率を下式により求めた。
【0035】
【数3】

【0036】
実施例4
本実施例は本発明の薬草組成物で作られる健康食品を提供する。その成分には、植物抽出物(イタドリおよびノジスミレ)、セルロース(avicel 102)、第二リン酸カルシウム、乳糖およびコーンスターチが含まれる。
【0037】
実施例5
本実施例は本発明の薬草組成物で作られるローションを提供する。その成分には、純水、キサンタンガム、水添ポリイソブテン(hydrogenated polyisobutene)、イソステアリン酸イソプロピル、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、セステアリルアルコール(cestearyl alcohol)、ヒアルロン酸、ステアレス−21、ステアレス−2、ジメチコン、植物抽出物(イタドリおよびノジスミレ)、酢酸トコフェリル、レチニルパルミテート、2−フェノキシエタール、イミダゾリジニル尿素、プロピルパラベン、メチルパラベン、EDTA二ナトリウムおよび香料が含まれる。
【0038】
<皮膚の分析>
30〜50歳の健康な女性を選び、皮膚の分析を、顔左側に上述のローションを付け、もう一方の側には何も付けないようにすることにより行った。各種機器によって5週間、毎週皮膚を分析した。この分析では皮膚の質の改善を、角質(cuticle)の含水量、水分喪失率、弾力性、皮脂分泌、黒斑、毛穴の数、およびメラニンにより評価した。
【0039】
分析結果を表1に示す。この結果より、本発明が提供するローションは、黒斑、毛穴の数、メラニン、水分喪失率および皮脂分泌を有効に低減させ、かつ、角質の含水量および弾力性を増加させることが示された。
【0040】
【表1】

【0041】
以上、好適な実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれら実施例に限定はされないと解されるべきである。本発明は、当業者には自明な種々の変更および類似の構成を含むのである。上に掲げた実施例は、本発明の原理を説明するための最良の態様を提示すべく選択し記載したものである。すなわち、添付の特許請求の範囲は、かかる各種変更および均等なアレンジが全て包含されるように、最も広い意味に解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のイタドリを含むフリーラジカルを抑制する薬草組成物であって、
水、炭素数1〜20のアルコール、炭素数1〜20のエステル、または澱粉中に分散している粉末である
ことを特徴とするフリーラジカルを抑制する薬草組成物。
【請求項2】
前記イタドリの濃度が約0.01〜10wt%である請求項1記載のフリーラジカルを抑制する薬草組成物。
【請求項3】
前記薬草組成物のフリーラジカル抑制率が約90〜100%である請求項1記載のフリーラジカルを抑制する薬草組成物。
【請求項4】
前記薬草組成物が経口型または外用型の薬草組成物であって、当該経口型の薬草組成物に健康食品が含まれ、当該外用型の薬草組成物に化粧品が含まれる請求項1記載のフリーラジカルを抑制する薬草組成物。
【請求項5】
前記化粧品が皮膚のメラニンを約10〜30%減少させ、皮膚の弾力性を約1〜5%増加させ、角質の含水量を約20〜40%増加させる請求項4記載のフリーラジカルを抑制する薬草組成物。
【請求項6】
有効量のノジスミレを含むフリーラジカルを抑制する薬草組成物であって、
水、炭素数1〜20のアルコール、炭素数1〜20のエステル、または澱粉中に分散している粉末である
ことを特徴とするフリーラジカルを抑制する薬草組成物。
【請求項7】
前記ノジスミレの濃度が約0.01〜10wt%であり、フリーラジカル抑制率が約90〜100%である請求項6記載のフリーラジカルを抑制する薬草組成物。
【請求項8】
前記薬草組成物のフリーラジカル抑制率が約90〜100%である請求項6記載のフリーラジカルを抑制する薬草組成物。
【請求項9】
前記薬草組成物が経口型または外用型の薬草組成物であって、前記経口型の薬草組成物に健康食品が含まれ、前記外用型の薬草組成物に化粧品が含まれる請求項6記載のフリーラジカルを抑制する薬草組成物。
【請求項10】
前記化粧品が皮膚のメラニンを約10〜30%減少させ、皮膚の弾力性を約1〜5%増加させ、角質の含水量を約20〜40%増加させる請求項9記載のフリーラジカルを抑制する薬草組成物。
【請求項11】
請求項1または6記載の薬草組成物を含んでなる健康食品。

【公開番号】特開2007−182420(P2007−182420A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222466(P2006−222466)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】