説明

フルオロアルキル基含有シリル化合物、変性無機微粒子、それを含む硬化性組成物及び積層物

【課題】新規なフルオロアルキル基含有シリル化合物と、防汚性、耐擦傷性、透明性、及び耐久性に優れた硬化被膜となる硬化性組成物に好適な変性無機微粒子、その硬化被膜を有する積層物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるフルオロアルキル基含有シリル化合物A;そのシリル化合物Aと他のシリル化合物Bを用いて無機微粒子Cを変性した変性無機微粒子D;その変性無機微粒子Dを含む硬化性組成物;その硬化性組成物の硬化被膜を有する積層物。
化1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフルオロアルキル基含有シリル化合物と、防汚性、耐擦傷性、透明性、及び耐久性に優れた硬化被膜となる硬化性組成物に好適な変性無機微粒子、その硬化被膜を有する積層物に関する。
【背景技術】
【0002】
CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、BD(Blu−ray Disk)などの光ディスク表面は、光学特性を維持するために、耐擦傷性を有する硬化被膜が付与されていることが多い。近年、光ディスクの高密度化、高精細化が進んでいる故、そのディスク表面に指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着した際、従来以上に機能を劣化させる要因となっている。このような汚れは、一度付着すると除去することは容易でなく、付着した汚れによって情報信号の記録及び再生に著しい支障が生じるために、大きな問題となる。
【0003】
また、液晶、プラズマを始めとするFPD(フラットパネルディスプレイ)等の表示デバイスの表面は、様々な環境下に置かれるため非常に傷付きやすく、指紋等の汚れも付着しやすく、表示画像の品位低下の大きな要因となっている。
【0004】
これらの解決方法として、フルオロアルキル基含有シランと、無機微粒子を含有するハードコート樹脂組成物を用いる手法(特許文献1参照)が開示されているが、無機微粒子に直接結合した十分な量の光重合性基を有していないため、硬化被膜の耐擦傷性、耐久性、及び透明性が不良である。また、フルオロアルキル基含有シランの量が少ないため、硬化被膜の防汚性とその耐久性が不足している。これは、フルオロアルキル基含有シランが高い疎水性を示し、相溶性に乏しいため塗工液配合時に制限を受けるためである。
【0005】
さらに、(メタ)アクリロイル基含有シランで無機微粒子を表面修飾した表面修飾無機微粒子、及び架橋性フッ素系化合物を含有する硬化性組成物の硬化被膜(特許文献2参照)が提案されているが、硬化被膜の防汚性についての耐久性が十分でないという問題点がある。
【特許文献1】特開平10−104403号公報
【特許文献2】特開2005−112900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新規なフルオロアルキル基含有シリル化合物を用いて、防汚性、耐擦傷性、透明性、及び耐久性に優れた硬化被膜となる硬化性組成物に好適な変性無機微粒子、その硬化被膜を有する積層物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、下記一般式(1)
【化4】

【0008】
(式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖型もしくは分岐型のフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を示し、Xは炭素数1〜16の直鎖型もしくは分岐型のアルキレン基またはアルキレンオキシ基を示し、Rは炭素数1〜16の直鎖型または分岐型のアルキレン基を示し、mは1以上の整数を表し、Rは水素または下記一般式(2)で示す置換基であって、少なくとも一方は一般式(2)で示す置換基である。)
【化5】

【0009】
(式中、ZはC(O)N(H)、C(O)または直接結合を示し、nは0以上の整数を表し、R、Rは炭素数1〜16の直鎖型または分岐型アルキル基を示し、aは0〜2の整数を表す。)
で示されるフルオロアルキル基含有シリル化合物Aにある。
【0010】
また、本発明の要旨は、前述のフルオロアルキル基含有シリル化合物A、及び下記一般式(3)で示されるシリル化合物B
【化6】

【0011】
(式中、Qは(メタ)アクリロイルオキシ基、スチリル基またはビニル基を示し、Rは直接結合もしくは炭素数1〜16の直鎖型または分岐型アルキレン基を示し、R、Rは炭素数1〜16の直鎖型または分岐型アルキル基を示し、pは1〜3の整数を表し、qは0〜2の整数を表し、p+qは1〜3の整数である。)
を用いて無機微粒子Cを変性した変性無機微粒子Dにある。
【0012】
さらに、本発明の要旨は前述の変性無機微粒子Dを含む硬化性組成物にある。
【0013】
またさらに、本発明の要旨は前述の硬化性組成物の硬化被膜を有する積層物にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の新規なフルオロアルキル基含有シリル化合物で表面修飾された変性無機微粒子を含む硬化性組成物は、防汚性、耐擦傷性、透明性、及び耐久性にも優れる硬化被膜を得ることができ、光ディスク、シート、フィルム等の積層物における硬化被膜に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明の新規なフルオロアルキル基含有シリル化合物Aにて変性された変性無機微粒子Dは、防汚性、耐擦傷性、透明性、及び耐久性に優れた硬化被膜となる硬化性組成物に好適なものである。
【0017】
本発明の変性無機微粒子Dの変性に用いるフルオロアルキル基含有シリル化合物Aは、下記一般式(1)
【化7】

【0018】
(式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖型もしくは分岐型のフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を示し、Xは炭素数1〜16の直鎖型もしくは分岐型のアルキレン基またはアルキレンオキシ基を示し、Rは炭素数1〜16の直鎖型または分岐型のアルキレン基を示し、mは1以上の整数を表し、Rは水素または下記一般式(2)で示す置換基であって、少なくとも一方は一般式(2)で示す置換基である。)
【化8】

【0019】
(式中、ZはC(O)N(H)、C(O)または直接結合を示し、nは0以上の整数を表し、R、Rは炭素数1〜16の直鎖型または分岐型アルキル基を示し、aは0〜2の整数を表す。)
で示されるフルオロアルキル基含有シリル化合物Aである。mの上限は150程度であることが好ましい。nの上限は150程度であることが好ましい。
【0020】
このフルオロアルキル基含有シリル化合物Aは、無機微粒子Cを変性し、硬化被膜としての防汚性能に寄与する成分である。
【0021】
フルオロアルキル基含有シリル化合物Aの合成方法は、特に限定されるものではない。例えば、下記一般式(4)で表されるフルオロアルキル基含有化合物E
【化9】

【0022】
(式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖型もしくは分岐型のフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を示し、Xは炭素数1〜16の直鎖型もしくは分岐型のアルキレン基またはアルキレンオキシ基を示し、Rは炭素数1〜16の直鎖型または分岐型のアルキレン基を示し、mは1以上の整数を表し、Rは水素または脱離基である。)
と、下記一般式(5)で表されるシラン化合物F
【化10】

【0023】
(式中、Rは水素、イソシアネート基、カルボキシル基、カルボキシル基を活性化した基、酸無水物基、水酸基または脱離基を示し、nは0以上の整数を表し、R、Rは炭素数1〜16の直鎖型または分岐型アルキル基を示し、aは0〜2の整数を表す。)
とを反応させて、ウレタン結合、エステル結合、エーテル結合、あるいはSi−O−C結合を形成させることで得られる。mの上限は150程度であることが好ましい。nの上限は150程度であることが好ましい。
【0024】
ウレタン結合、エステル結合、エーテル結合、あるいはSi−O−C結合を形成するRとRの組み合わせとしては、表1に例示するものが挙げられる。
【表1】

【0025】
がイソシアネート基でRが水酸基の場合、0〜100℃程度の温度で溶媒存在下あるいは非存在下において、原料化合物である一般式(4)で示される化合物1モルに対して、原料化合物である一般式(5)で示される化合物を0.1〜10モル、好ましくは0.5〜5モル、より好ましくは1.0〜2.5モルを、10分〜24時間程度混合することにより、ウレタン結合を有するフルオロアルキル基含有シリル化合物Aが得られる。この際、反応を促進させる目的で、塩基、錫系等の触媒を用いてもよい。
【0026】
がカルボキシル基、カルボキシル基を活性化した基(カルボニルジイミダゾール、クロロアセトニトリル等の活性化剤と反応したカルボキシル基、エステル基等が例示される)、あるいは酸無水物基で、Rが水酸基の場合、−10〜150℃程度の温度で溶媒存在下あるいは非存在下において、原料化合物である一般式(4)で示される化合物1モルに対して、原料化合物である一般式(5)で示される化合物を0.1〜10モル、好ましくは0.5〜5モル、より好ましくは1.0〜2.5モルを、10分〜24時間程度混合することにより、エステル結合を有するフルオロアルキル基含有シリル化合物Aが得られる。この際、反応を促進させる目的で、カルボジイミド系、カルボニルジイミダゾール系等の縮合剤、塩基を用いてもよい。
【0027】
が水酸基で、Rが脱離基(塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、p−トルエンスルホニルオキシ、メタンスルホニルオキシ等が例示される)の場合、あるいはRが脱離基で、Rが水酸基の場合、0〜200℃程度の温度で溶媒存在下あるいは非存在下において、原料化合物である一般式(4)で示される化合物1モルに対して、原料化合物である一般式(5)で示される化合物を0.1〜10モル、好ましくは0.5〜5モル、より好ましくは1.0〜2.5モルを、1〜48時間程度混合することにより、エーテル結合を有するフルオロアルキル基含有シリル化合物Aが得られる。この際、通常水素化ナトリウム、ブチルリチウム等の強塩基を用いる。
【0028】
が水素で、Rが水酸基の場合、0〜150℃程度の温度で溶媒存在下あるいは非存在下において、原料化合物である一般式(4)で示される化合物1モルに対して、原料化合物である一般式(5)を0.1〜10モル、好ましくは0.5〜5モル、より好ましくは1.0〜2.5モルを、10分〜24時間程度混合することにより、Si−O−C結合を有するフルオロアルキル基含有シリル化合物Aが得られる。この際、通常酸あるいは塩基等の触媒を用いる。
【0029】
このようにして得られたフルオロアルキル基含有シリル化合物Aは、その分子内にフルオロアルキル基由来の疎水性部分と、アルキレンオキシ基に由来する親水性部分とを有していることから界面活性能を発現し、硬化前の塗膜中においては塗膜表面と空気との界面付近に疎水性部分のフルオロアルキル基が存在しやすくなることから、硬化被膜に高い防汚性を発現することができる。
【0030】
フルオロアルキル基含有シリル化合物Aとともに無機微粒子Cを変性するシリル化合物Bは、下記一般式(3)で示される。
【化11】

【0031】
(式中、Qは(メタ)アクリロイルオキシ基、スチリル基またはビニル基を示し、Rは直接結合もしくは炭素数1〜16の直鎖型または分岐型アルキレン基を示し、R、Rは炭素数1〜16の直鎖型または分岐型アルキル基を示し、pは1〜3の整数を表し、qは0〜2の整数を表し、p+qは1〜3の整数である。)
なお、「(メタ)アクリ」とは「アクリ」と「メタクリ」との総称である。
【0032】
その具体例としては、例えば、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
これらは、併用することができる。
【0034】
これらの中でも、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが、無機微粒子Cを良好に変性できる点、硬化性良好な変性無機微粒子Dを得る点で好ましい。
【0035】
本発明の変性無機微粒子Dは、新規なフルオロアルキル基含有シリル化合物A、及びシリル化合物Bを用いて無機微粒子Cを変性したものである。無機微粒子Cとしては、特に限定されないが、鉄、アルミ、金、銀、銅、珪素、ゲルマニウム等の金属微粒子もしくは半金属微粒子またはその合金微粒子、SiO、Al、TiO、ZrO、SnO、ZnO、Sb、Sb等の金属酸化微粒子もしくは非金属酸化物微粒子、またはその複合酸化物微粒子等が使用可能であり、中でも得られる硬化被膜の透明性と耐擦傷性に優れる点で、SiOが特に好ましい。また、取り扱いの容易さ、変性の容易さから、それらの微粒子を水または有機溶剤に分散させた分散液を使用することが好ましい。
【0036】
無機微粒子Cの分散に使用される分散溶剤の具体例としては、例えば水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコールなどの多価アルコール系溶剤;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどの多価アルコール誘導体;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン系溶剤などが挙げられる。
【0037】
これらの中でも、炭素数3以下のアルコール系溶剤が、種々の溶剤に置換しやすいため、好ましい。
【0038】
本発明において、変性される無機微粒子Cの平均一次粒子径は1〜200nmの範囲であることが好ましい。無機微粒子Cの平均一次粒子径が1nm以上の場合には、フルオロアルキル基含有シリル化合物A、シリル化合物Bによる変性工程においてゲル化を防止することができる。また、平均一次粒子径が200nm以下の場合には、変性無機微粒子Dを含む硬化被膜の透明性が向上する。中でも、特に5〜80nmの範囲が好ましい。
【0039】
無機微粒子Cの変性方法は、特に限定されないが、好ましくは、無機微粒子Cの分散液、フルオロアルキル基含有シリル化合物A、シリル化合物B、及び水を混合し、常温または加熱下で、フルオロアルキル基含有シリル化合物A、及びシリル化合物Bを加水分解した後、無機微粒子Cの表面の活性基と、フルオロアルキル基含有シリル化合物A、及びシリル化合物Bの加水分解生成物のシラノール基とを縮合反応させて、生じる水を反応系外に留去させて、無機微粒子Cを変性し、その表面が修飾された変性無機微粒子Dを合成する方法が挙げられる。
【0040】
フルオロアルキル基含有シリル化合物Aとシリル化合物Bは、好ましくは0.01:99.99〜50:50、より好ましくは1:99〜20:80のモル比となるように混合して用いられる。これらのモル比を満足することによって、防汚性、及び耐擦傷性の効果を十分に発揮させることができる。
【0041】
また、無機微粒子Cの100質量部に対し、フルオロアルキル基含有シリル化合物Aとシリル化合物Bとの合計質量部は、好ましくは60〜10000質量部の範囲、より好ましくは60〜1000質量部の範囲である。フルオロアルキル基含有シリル化合物Aとシリル化合物Bとの合計質量部が、60質量部以上の場合には、硬化被膜の防汚性、及び耐擦傷性が良好となる。10000質量以下の場合には、無機微粒子Cの表面を変性できないシリル化合物Aとシリル化合物Bが少なくなって、硬化被膜の透明性が向上する。
【0042】
以下、変性無機微粒子Dの合成方法について、具体例を挙げて詳細に説明する。
【0043】
無機微粒子Cの分散液、フルオロアルキル基含有シリル化合物A、及びシリル化合物Bの共存下、フルオロアルキル基含有シリル化合物Aとシリル化合物Bの合計1モルに対して、0.5〜6モルの水、あるいは加水分解触媒として塩酸または酢酸を1×10−9〜1×10−2モル含む水溶液等を加え、フルオロアルキル基含有シリル化合物A、及びシリル化合物Bの加水分解生成物を取得する。
【0044】
次いで行われる縮合反応は、以下の如く行えばよい。
【0045】
具体的には、無機微粒子Cとフルオロアルキル基含有シリル化合物A、及びシリル化合物Bの加水分解生成物との縮合反応で生じる水を、反応系外に留去させる。縮合反応で生じる水を反応系外に留去させる方法として、トルエン等の非極性溶媒を加え、この非極性溶媒、水、および無機微粒子Cの分散媒を、ディーンスタークを用いて共沸留出させることで、無機微粒子Cの表面に、フルオロアルキル基含有シリル化合物A、及びシリル化合物Bを十分に脱水縮合させることが重要である。この際、縮合反応を促進させる目的で、酸、塩基、塩等の触媒を用いてもよい。また、このときの反応系内の固形分濃度は、得られる変性無機微粒子Dの安定性の観点から、30〜90質量%、好ましくは50〜80質量%に保持することが好ましい。
【0046】
このようにして、防汚性を発現するフルオロアルキル基含有シリル化合物A、及び光重合性基を有するシリル化合物Bを無機微粒子Cに直接結合させ、無機微粒子Cを変性することで、耐擦傷性を低下させず、またその耐久性が良好な変性無機機微粒子Dを得ることができる。
【0047】
本発明の硬化性組成物は変性無機微粒子Dを含むものであるが、変性無機微粒子Dとともに、硬化被膜を形成するエチレン性不飽和化合物Gを含むことが好ましい。エチレン性不飽和化合物Gは、変性無機微粒子Dと併用することで、硬化性組成物の硬化性を良好とし、基材との密着性を付与し、耐擦傷性を発現する。
【0048】
エチレン性不飽和化合物Gの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリスエトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチルビシクロヘプタン、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのγ−ブチロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジオールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート;
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,3−ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン、1,4−ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネートやこれらの2量体や3量体等のイソシアネート化合物の1種または2種以上の混合物に、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基、および1個のイソシアネート反応性ヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの1種または2種以上の混合物を反応させたウレタンポリ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらの化合物は、併用することができる。
【0049】
これらの中でも、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレ−ト、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタントリ(メタ)アクリレート等が硬化性、及び得られる硬化被膜の耐擦傷性に優れるため特に好ましい。
【0050】
本発明の硬化性組成物において、エチレン性不飽和化合物Gの配合量は、変性無機微粒子Dおよびエチレン性不飽和化合物Gの合計質量部を100質量部としたとき、好ましくは5〜90質量部、より好ましくは25〜80質量部、さらに好ましくは35〜70質量部の範囲である。エチレン性不飽和化合物Gの配合量が、5質量部以上の場合には、硬化性、及び硬化被膜と基材との密着性が良好となり、また、90質量部以下の場合には硬化被膜の耐擦傷性、及び防汚性が良好となる。
【0051】
本発明の硬化性組成物は、さらに、熱重合開始剤、光重合開始剤などの重合開始剤Hを含有することが好ましい。
【0052】
熱重合開始剤の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物、上記過酸化物にN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン等のアミン類を組み合わせたレドックス重合開始剤が挙げられる。
【0053】
また、必要に応じて、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、オクチル酸ニッケル等の金属石鹸類も使用可能である。
【0054】
また、光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノンや、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン等が挙げられる。また、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノン等公知の光増感剤も使用可能である。
【0055】
これらの重合開始剤Hは併用することができる。本発明の変性無機微粒子Dおよびエチレン性不飽和化合物Gの合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部の範囲、特に好ましくは0.1〜10質量部の範囲で配合される。
【0056】
本発明の硬化性組成物には、その他、フッ素系化合物、レベリング剤、消泡剤、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、1−メトキシ−2−プロパノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の希釈溶剤、顔料、染料、シランカップリング剤等、公知の添加剤を用途に応じて適宜使用可能である。
【0057】
本発明の硬化性組成物は、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、シクロオレフィンポリマー等の樹脂からなる基材の表面に塗布して硬化させることによって、防汚性、耐擦傷性、透明性、及び耐久性に優れた硬化被膜を有する積層物を得ることができる。
【0058】
硬化性組成物の塗布方法としては、ワイヤーバー方式、ディップ方式、スピン方式、グラビア方式、マイクログラビア方式等が挙げられる。
【0059】
その硬化性組成物の硬化方法としては、前記硬化性組成物を基材に塗布した後、20〜100℃で、1〜30分間、希釈溶剤を乾燥させた後、活性エネルギー線を照射して硬化する方法等が挙げられる。硬化皮膜の厚みは0.5〜10μmの範囲内が好ましい。
【0060】
本発明の積層物としては、光ディスク、シート、フィルム、光学レンズ、光学フィルター、及び液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プラズマディスプレー、ELディスプレー等の各種表示素子等が挙げられる。それらのなかでも、防汚性、耐擦傷性、透明性、及び耐久性を発現する点から光ディスク、フィルムが好適である。
【実施例】
【0061】
以下、実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、フルオロアルキル基含有シリル化合物の合成において、H−NMRは、日本電子製、JNM GX−270を、赤外吸収(IR)は、Thermo Nicolet社製、NEXUS670を用いてそれぞれ測定した。
【0062】
<実施例1;フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−1)の合成>
フルオロアルキル基含有化合物E(E−1)として、下式(6)で示される化合物
【化12】

【0063】
を19.3質量部(14.1ミリモル)、触媒としてモノブチル錫脂肪酸塩(商品名:S−CAT−24、三共有機合成(株)製)を0.005質量部、窒素雰囲気下、70℃で攪拌し、3―イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(商品名:Y−5187、日本ユニカー(株)製)4.24質量部(20.7ミリモル)を滴下ロートで少しずつ添加し、70℃で2時間攪拌し、フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−1)を23.5質量部得た。
【0064】
<実施例2;フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−2)の合成>
フルオロアルキル基含有化合物E(E−2)として、下式(7)で示される化合物
【化13】

【0065】
を13.0質量部(6.6ミリモル)、触媒としてモノブチル錫脂肪酸塩(商品名:S−CAT−24、三共有機合成(株)製)を0.005質量部、溶媒として脱水テトラヒドロフラン20質量部を加えて窒素雰囲気下、70℃で攪拌し、3―イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(商品名:Y−5187、日本ユニカー(株)製)2.26質量部(11.0ミリモル)を滴下ロートで少しずつ添加し、70℃で2時間攪拌した後、エバポレーターでテトラヒドロフランを留去し、フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−2)を15.2質量部得た。
【0066】
<実施例3;フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−3)の合成>
3―イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(商品名:Y−5187、日本ユニカー(株)製)を2.65質量部(12.9ミリモル)とすること以外は、実施例1<フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−1)の合成>と同様に合成を行い、フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−3)を得た。
【0067】
<実施例4;フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−4)の合成>
3―イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(商品名:Y−5187、日本ユニカー(株)製)を6.63質量部(32.3ミリモル)とすること以外は、実施例1<フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−1)の合成>と同様に合成を行い、フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−4)を得た。
【0068】
<実施例5;変性無機微粒子D−1の合成>
ディーンスターク、攪拌機、温度計、空気導入管、及びコンデンサーを備えたフラスコ内に、メタノール分散シリカゾル(分散媒;メタノール、SiO濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名:MT−ST、日産化学工業(株)製)1200質量部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−503、信越化学工業(株)製)(以下、「KBM−503」と略記する。)227質量部、前記フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−1)18.0質量部、及び純水を29.5質量部仕込み、エアーバブリング中、環流下で2時間加水分解を行った。
【0069】
加水分解終了後、ディーンスタークを用いて、メタノール、水等の揮発成分を留出させ、固形分濃度が約50質量%の時点でトルエン1200質量部を追加し、メタノール、水等をトルエンと一緒に共沸留出させながら、前記シリカゾルとフルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−1)、及びKBM−503の加水分解生成物の脱水縮合反応を行った。この共沸留出を繰り返し、完全に溶媒置換を行って、フラスコ内容物をトルエン分散系とした。このときの固形分濃度は45質量%であった。
【0070】
さらに、トルエンを還流させながら脱水縮合を十分に行い、110℃で3時間反応させて、固形分濃度が50質量%になるようにトルエンを留去して調製した。この後さらに1−メトキシ−2−プロパノール400質量部を追加し、トルエンを留出させて溶媒置換を行い、1−メトキシ−2−プロパノール分散系とした。得られた変性無機微粒子(以下「D−1」と略記する。)は、黄色状で粘稠な液体であった。また、固形分濃度は50質量%であった。
【0071】
なお、固形分濃度は、得られた黄色状で粘稠な液体1gをシャーレに秤量し、恒温器(機器名:SPH−201、エスペック(株)製)にて、130℃、2時間加熱した後、(加熱後の質量部/加熱前の質量部)×100(質量%)で示す。
【0072】
<実施例6;変性無機微粒子D−2の合成>
KBM−503を217.9質量部、フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−1)を54.2質量部とすること以外は、実施例5<変性無機微粒子D−1の合成>と同様に合成を行い、変性無機微粒子D−2を得た。
【0073】
<実施例7;変性無機微粒子D−3の合成>
フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−1)18.0質量部の代わりに、前記フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−2)を18.9質量部用いること以外は、実施例5<変性無機微粒子D−1の合成>と同様に合成を行い、変性無機微粒子D−3を得た。
【0074】
<実施例8;変性無機微粒子D−4の合成>
フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−1)18.0質量部の代わりに、前記フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−3)を18.0質量部用いること以外は、実施例5<変性無機微粒子D−1の合成>と同様に合成を行い、変性無機微粒子D−4を得た。
【0075】
<実施例9;変性無機微粒子D−5の合成>
フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−1)18.0質量部の代わりに、前記フルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−4)を18.0質量部用いること以外は、実施例5<変性無機微粒子D−1の合成>と同様に合成を行い、変性無機微粒子D−5を得た。
【0076】
<合成例1;変性無機微粒子D’−1の合成>
KBM−503を230質量部とし、フルオロアルキル基含有シリル化合物Aを使用しなかったこと以外は、実施例5<変性無機微粒子D−1の合成>と同様に合成を行い、変性無機微粒子D’−1を得た。
【0077】
[実施例10]
変性無機微粒子D−1を100質量部(うち、固形分50質量部)、エチレン性不飽和化合物Gとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:カヤラッドDPHA、日本化薬(株)製)(以下、「DPHA」と略記する。)50質量部、重合開始剤Hとして光重合開始剤(商品名:イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)(以下、「IRG907」と略記する。)を6質量部、及びシリコーン系レベリング剤(商品名:L−7001、日本ユニカー(株)製)を0.1質量部、混合し、固形分濃度が60質量%になるように希釈溶媒として1−メトキシ−2−プロパノールを添加し、硬化性組成物溶液を調製した。
【0078】
該組成物を、プライマー付きの厚さ125μmのPETフィルム(商品名:A−4100、東洋紡(株)製)上のプライマー処理面にバーコータにて塗装し、80℃2分間の条件で希釈溶剤を乾燥させた後に、高圧水銀灯を用いて15cm離れた場所において、積算光量(光量はオーク(株)製UV351を用いて測定)1000mJ/cmの条件で硬化させ、硬化膜厚3μmの硬化被膜付きPETフィルムを製造した。
【0079】
<透明性の評価>
得られた硬化被膜付きPETフィルムについて、ヘーズメータ(商品名:NDH2000、日本電色工業(株)製)を用い、全光線透過率を測定し、以下の基準に従い、透明性の評価をした。その結果、全光線透過率は89.5%で、良好な透明性を有していることが示された。評価結果を表2に示した。
【0080】
○:89.0%以上(良好)
×:89.0%未満(不良)
<耐擦傷性の評価>
得られた硬化被膜付きPETフィルムの硬化皮膜面側について、JIS K5600−5−9(摩耗輪法)に準拠し、摩耗輪CS−10F、荷重500g、回転数500サイクルの条件で耐擦傷性テストを行った後、中性洗剤を用いて洗浄し、ヘーズメータ(商品名:NDH2000、日本電色工業(株)製)で曇価を測定し、テスト前後の曇価の差より、以下の基準に従い、耐擦傷性を評価した。その結果、テスト前の曇価は0.2%、テスト後の曇価は6.5%で、良好な耐擦傷性を有していることが示された。
【0081】
○:増加値が10.0%以下
×:増加値が10.0%を超える場合
<防汚性の評価>
硬化被膜付きPETフィルムの硬化被膜表面への、水や油汚れの付着のしやすさ(防汚性)を、水、及びトリオレイン(和光純薬(株)製)の接触角で評価を行った。接触角が高い程、硬化被膜付きPETフィルムの硬化被膜表面において、水や油汚れが付着しにくく、防汚性が良好であることを示す。
【0082】
<水の接触角>
得られた硬化被膜付きPETフィルムを23℃、相対湿度50%の環境下において、硬化被膜表面へ純水1μLを1滴で滴下し、接触角測定器(商品名:Drop Master300、協和界面科学(株)製)を用いて水と硬化被膜付きPETフィルムの硬化被膜表面の接触角を測定し、以下の基準に従い、防汚性の評価をした。その結果、接触角は102°で良好な防汚性を有していることが示された。評価結果を表2に示した。
【0083】
○:95°以上(良好)
×:95°未満(不良)
<トリオレインの接触角>
純水の代わりにトリオレインを使用すること以外は、水の接触角の測定と同様に、トリオレインと硬化被膜付きPETフィルムの硬化被膜表面の接触角を測定し、以下の基準に従い、防汚性の評価をした。その結果、接触角は72°で良好な防汚性を有していることが示された。評価結果を表2に示した。
【0084】
○:60°以上(良好)
×:60°未満(不良)
<密着性の評価>
得られた硬化被膜付きPETフィルムの硬化被膜面について、JIS K5600−5−6クロスカット法(すきま間隔1mm)により、以下の基準に従い、密着性の評価、評価結果の分類(評価結果の分類は、JIS K5600−5−6中の表1を基準とする)を行った。その結果、分類0〜1に該当し、良好な密着性を有していることが示された。評価結果を表2に示した。
【0085】
○:分類0〜2(良好)
×:分類3〜5(不良)
<耐久性の評価>
硬化被膜付きPETフィルムが、長時間、高温、高湿下の条件にさらされた場合、硬化被膜付きPETフィルムの硬化被膜表面の防汚性(トリオレインの接触角)が、保持されているかどうか確認するため、下記条件で耐久性の評価を行った。
【0086】
得られた硬化被膜付きPETフィルムを、80℃、相対湿度85%、200時間の環境下にさらした後、トリオレインと硬化被膜付きPETフィルムの硬化被膜表面の接触角を測定し、以下の基準に従い、耐久性の評価をした。その結果、70°で良好な耐久性を有していることが示された。評価結果を表2に示した。
【0087】
○:耐久性評価前後の接触角低下が5°以下(良好)
×:耐久性評価前後の接触角低下が5°を超える(不良)
[実施例11〜17]
表2、表3の実施例11〜17の組成物欄に示した硬化性組成物を用いたこと以外は実施例10と同様にし、固形分濃度が60質量%になるように希釈溶媒として1−メトキシ−2−プロパノールを添加し硬化性組成物溶液を調製し、硬化膜厚3μmの硬化被膜付きPETフィルムを製造した。それらを評価した結果を表2、表3の結果欄にそれぞれ示す。なお、表2、表3の組成物欄には、希釈溶剤以外の固形分のみの組成を示した。
【0088】
[実施例18]
変性無機微粒子D−1を100質量部(うち、固形分50質量部)、エチレン性不飽和化合物GとしてDPHA50質量部、重合開始剤HとしてIRG907を8質量部、及びシリコーン系レベリング剤(商品名:ペインタッド29、ダウコーニングアジア(株)製)を5質量部混合し、固形分濃度が60質量%になるように1−メトキシ−2−プロパノールを添加し、硬化性組成物溶液(表3中、実施例18の組成物)を調製した。
【0089】
該組成物を、直径120mmφ、厚さ1.2mmの光ディスク用ポリカーボネート製透明基板上にスピンコータを用いて塗装し、80℃2分間の条件で希釈溶剤を乾燥させた後に、高圧水銀灯を用いてランプ高さ15cm、及び積算光量(光量はオーク(株)製UV351を用いて測定)1000mJ/cmの条件で硬化させ、硬化膜厚2μmの硬化被膜付き光ディスク用透明基板を作製した。
【0090】
その後、実施例10と同様に耐擦傷性、透明性、水の接触角、トリオレインの接触角、密着性、耐久性を評価した結果を表3に示した。
【0091】
[比較例1〜3]
表4の比較例1〜3に示した硬化性組成物を用いたこと以外は実施例10と同様にし、固形分濃度が60質量%になるように希釈溶媒として1−メトキシ−2−プロパノールを添加し硬化性組成物溶液を調製し、硬化膜厚3μmの硬化被膜付きPETフィルムを製造した。それらを評価した結果を表4の結果欄にそれぞれ示す。
【0092】
[比較例4]
基材である厚さ125μmのPETフィルムであって、プライマーを有さない面について、塗装を行わずに、実施例10と同様に評価した結果を表4の結果欄に示す。
【0093】
[比較例5]
表4の比較例5に示した硬化性組成物を用いること以外は、実施例18と同様に評価した結果(耐擦傷性、透明性、水の接触角、トリオレインの接触角、密着性、耐久性について)を表4の結果欄にそれぞれ示す。
【表2】

【表3】

【表4】

【0094】
なお、表2〜4中の略号は、以下の通りである。
【0095】
D−1:実施例5で得た変性無機微粒子
D−2:実施例6で得た変性無機微粒子
D−3:実施例7で得た変性無機微粒子
D−4:実施例8で得た変性無機微粒子
D−5:実施例9で得た変性無機微粒子
D’−1:合成例1で得た変性無機微粒子
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:カヤラッドDPHA、日本化薬(株)製)
U306H:脂肪族系ウレタンアクリレート(商品名:U−306H、共栄社化学(株)製)
A−HD−N:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(商品名:NKエステル A−HD−N、新中村化学(株)製)
IRG907:光重合開始剤(商品名:イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
IRG184:光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
IRG127:光重合開始剤(商品名:イルガキュア127、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
ART4:パーフルオロポリエーテルジアクリレート(商品名:ART4、共栄社化学(株)製)
F470:フッ素系化合物(商品名:メガファックF470、大日本インキ化学工業(株)製)
L−7001:シリコーン系レベリング剤(商品名:L−7001、日本ユニカー(株)製)
P29:シリコーン系レベリング剤(商品名:ペインタッド29、ダウコーニングアジア(株)製)
MT−ST:メタノール分散シリカゾル(商品名:MT−ST、日産化学工業(株)製)
KBM−7803:2−(パーフルオロオクチル)エチルトリメトキシシラン(商品名:KBM−7803、信越化学工業(株)製)
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、実施例1にて製造したフルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−1)のH−NMRスペクトルを示す(測定溶媒:クロロホルム)。
【図2】図2は、実施例1にて製造したフルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−1)の赤外吸収スペクトルを示す。
【図3】図3は、実施例2にて製造したフルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−2)のH−NMRスペクトルを示す(測定溶媒:クロロホルム)。
【図4】図4は、実施例2にて製造したフルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−2)の赤外吸収スペクトルを示す。
【図5】図5は、実施例3にて製造したフルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−3)のH−NMRスペクトルを示す(測定溶媒:クロロホルム)。
【図6】図4は、実施例3にて製造したフルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−3)の赤外吸収スペクトルを示す。
【図7】図5は、実施例4にて製造したフルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−4)のH−NMRスペクトルを示す(測定溶媒:クロロホルム)。
【図8】図4は、実施例4にて製造したフルオロアルキル基含有シリル化合物A(A−4)の赤外吸収スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖型もしくは分岐型のフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を示し、Xは炭素数1〜16の直鎖型もしくは分岐型のアルキレン基またはアルキレンオキシ基を示し、Rは炭素数1〜16の直鎖型または分岐型のアルキレン基を示し、mは1以上の整数を表し、Rは水素または下記一般式(2)で示す置換基であって、少なくとも一方は一般式(2)で示す置換基である。)
【化2】

(式中、ZはC(O)N(H)、C(O)または直接結合を示し、nは0以上の整数を表し、R、Rは炭素数1〜16の直鎖型または分岐型アルキル基を示し、aは0〜2の整数を表す。)
で示されるフルオロアルキル基含有シリル化合物A。
【請求項2】
請求項1に記載のフルオロアルキル基含有シリル化合物A、及び下記一般式(3)で示されるシリル化合物B
【化3】

(式中、Qは(メタ)アクリロイルオキシ基、スチリル基またはビニル基を示し、Rは直接結合もしくは炭素数1〜16の直鎖型または分岐型アルキレン基を示し、R、Rは炭素数1〜16の直鎖型または分岐型アルキル基を示し、pは1〜3の整数を表し、qは0〜2の整数を表し、p+qは1〜3の整数である。)
を用いて無機微粒子Cを変性した変性無機微粒子D。
【請求項3】
請求項2に記載の変性無機微粒子Dを含む硬化性組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の硬化性組成物の硬化被膜を有する積層物。
【請求項5】
請求項4に記載の積層物からなる光ディスク。
【請求項6】
請求項4に記載の積層物からなるフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−99726(P2007−99726A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294416(P2005−294416)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】