説明

フルオロエラストマーの製造方法

【課題】フルオロエラストマーの製造方法を提供すること。
【解決手段】過フッ素化アルカンスルホン酸若しくはカルボン酸又はその塩、硬化部位を含む液体フッ素化モノマー、および、任意に不活性液体の高フッ素化炭化水素化合物から得られる水性マイクロエマルジョン。本水性マイクロエマルジョンは、水、過フッ素化アルカンスルホン酸若しくはカルボン酸又はその塩、任意に不活性液体の高フッ素化炭化水素化合物、および硬化部位を有する液体フッ素化モノマーを一緒に混合することによって生成されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロエラストマーの製造方法に関する。特に、本発明は、1種類以上の
フッ素化モノマーと、硬化部位を有する1種類以上の液体フッ素化モノマーとの水系乳化
重合方法に関する。このように調製されるフルオロポリマーは、フルオロエラストマーの
調製に好適であり、以下フルオロエラストマーゴムとも呼ばれる。
【背景技術】
【0002】
フルオロエラストマー、および、特に、(非特許文献1)に記載されるものなどのパー
フルオロエラストマーは、高い使用温度に対する優れた防御を提供し、様々な化学試薬に
対する耐性がある。フルオロエラストマーは、高温や腐食性の化学薬品に耐える能力、並
びに標準的なエラストマー加工装置を使用して加工されるフルオロエラストマーガムの能
力のため、多くの用途に成功裡に使用されてきた。例えば、フルオロエラストマーは、自
動車の燃料ホース、補給孔ホース、およびインジェクタOリングなどの燃料管理系に使用
されてきた。燃料管理の用途には、低燃料蒸気浸透性と合わせて、良好な低温特性、シー
ル能力、および可撓特性が必要である。また更に、フルオロエラストマーは、半導体産業
において、フルオロエラストマーがチップ製造装置でシールとして使用される場合がある
チップ製造プロセスで使用されてきた。チップ製造中、フルオロエラストマーは、高温お
よび腐食性の化学薬品に暴露され得る。また更に、フルオロエラストマーは、電気ケーブ
ル絶縁体として使用されている。
【0003】
フルオロエラストマーは、1つ以上のフッ素原子を含有するモノマー、又はこのような
モノマーと他のモノマーとのコポリマー(フルオロモノマーの質量が最も多い)から製造
されるフルオロエラストマー前駆体(「フルオロエラストマーガム」)を硬化させること
によって調製されるエラストマーである。フルオロエラストマー前駆体は、所望の弾性特
性を有するフルオロエラストマーを調製するのに好適なフルオロポリマーである。典型的
には、フルオロエラストマー前駆体は、無定形フルオロポリマー、又は融点をほとんど示
さないフルオロポリマーである。フルオロポリマーが過フッ素化主鎖を有するときは、パ
ーフルオロエラストマーとなるが、同様に部分フッ素化された主鎖を有するポリマーも使
用される。
【0004】
フルオロポリマーの調製に通常使用される方法は水系乳化重合であり、水系乳化重合は
、環境上の利点が溶媒中での重合に勝る。一般に、フッ素化モノマーの水系乳化重合は、
フッ素化界面活性剤の存在下で実施されるが、重合系にフッ素化界面活性剤が添加されな
い技術も開発されてきた。
【0005】
当該技術は、更に、一定の態様を改善するための、又は特定の目的を達成するための、
水系乳化重合方法の様々な変更で激減している。例えば、当該技術分野では、1種類以上
のフッ素化モノマーを予備乳化することが一般に認識されている。
【0006】
当該技術分野では、フッ素化モノマーの水系乳化重合にマイクロエマルジョンを使用す
ることも提案されてきた。マイクロエマルジョンは、原料の接触の際に、自然に生成する
、油、水、および界面活性剤の安定な等方性混合物である。塩又は補助界面活性剤(アル
コール、アミン、又は他の両親媒性分子)などの他の成分もマイクロエマルジョン配合物
の一部であってもよい。油および水は、界面活性剤が多く含まれる界面層によって分離さ
れる別個の領域に存在する。油又は水の領域は小さいため、マイクロエマルジョンは、視
覚的には透明又は半透明に見える。エマルジョンおよび前記参考文献中に開示されるエマ
ルジョン前駆体とは異なり、マイクロエマルジョンは平衡相である。
【0007】
フルオロポリマーが、三次元網目構造を形成する硬化反応に関与する、いわゆる硬化部
位を含有する場合、水系乳化重合により製造されたフルオロポリマーを硬化してフルオロ
エラストマーを得てもよい。フルオロポリマーを加硫するのに使用される周知の硬化反応
には過酸化物の使用が必要であり、ここで、フルオロポリマーは、過酸化物硬化反応に関
与できるハロゲン、例えば、臭素又はヨウ素を含有する。これらのハロゲンは、典型的に
は、1種類以上のフッ素化モノマーを、このようなハロゲンを含有するフッ素化モノマー
と共重合することによってフルオロポリマー中に導入される。
【0008】
或いは、フルオロポリマーは、ニトリル基を有するフッ素化モノマーから誘導される1
つ以上の単位を有してもよい。このようなニトリル基を使用し、アンモニア発生化合物、
又はニトリル基の硬化を引き起こすことができる他の硬化剤若しくは触媒の存在下でフル
オロポリマーを硬化することができる。
【0009】
1つ以上の硬化部位を有する相当するモノマーから誘導される前述の硬化部位を有する
フルオロポリマーが、水系乳化重合によって調製されるとき、得られるフルオロエラスト
マーは、フルオロポリマーの硬化後、光沢のある、濡れているように見える表面を示す場
合があることが、現在分かっている。更に、フルオロエラストマーから抽出できる有機物
質の量は望ましくないほど多い場合がある。光沢のある、濡れているように見える表面、
並びに抽出可能な多量の有機物質があると、フルオロエラストマーは一定の用途、特に、
要求の厳しい用途に好適でない場合がある。この効果は、低濃度、例えば1モル%以下の
硬化部位モノマーが使用されるとき、特に顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,285,002号明細書
【特許文献2】米国特許第5,266,650号明細書
【特許文献3】米国特許第4,259,463号明細書
【特許文献4】米国特許第3,752,787号明細書
【特許文献5】米国特許第5,677,389号明細書
【特許文献6】米国特許第5,565,512号明細書
【特許文献7】米国特許第5,668,221号明細書
【特許文献8】国際公開第00/09603号パンフレット
【特許文献9】欧州特許出願公開第0 661 304 A1号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第0 784 064 A1号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第0 769 521 A1号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「現代フルオロポリマー(Modern Fluoropolymers)」ジョン・シャイアーズ(John Scheirs)編、ウィリー・サイエンス(Wiley Science)、1997年
【非特許文献2】一般化学誌(Zh.Obs.Khimii)、36巻5号862〜71頁、1966年
【非特許文献3】CA65 12206c
【非特許文献4】有機化学誌(J.Org.Chem.)、30巻、3724頁(1965年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、引き続き、フルオロエラストマーの特性を改善する必要があり、特に、水系乳
化重合方法により製造されるフルオロポリマーから製造されるフルオロエラストマーの特
性を改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
水性マイクロエマルジョンは、過フッ素化アルカンスルホン酸若しくはカルボン酸又は
その塩、硬化部位を含む液体フッ素化モノマー、および、任意に不活性液体の高フッ素化
炭化水素化合物から得ることができるということが分かった。前記水性マイクロエマルジ
ョンは、水、過フッ素化アルカンスルホン酸若しくはカルボン酸又はその塩、任意に不活
性液体の高フッ素化炭化水素化合物、および硬化部位を有する液体フッ素化モノマーを一
緒に混合することによって生成されてもよい。成分を穏やかに撹拌すると、および/又は
任意に混合物を加熱すると、マイクロエマルジョンが生成する。加熱を使用するとき、混
合物は、典型的には、清澄で透明な混合物が生成する温度まで加熱され、その後、混合物
は周囲温度まで冷却される。
【0014】
別の態様では、本発明は、フルオロエラストマーに硬化され得るフルオロポリマーの製
造方法を提供し、本方法は、1種類以上のフッ素化モノマー、および硬化部位を有する1
種類以上の液体フッ素化モノマーの水系乳化重合を含み、ここで、前記液体フッ素化モノ
マーの少なくとも一部は、前記水系乳化重合プロセスの少なくとも初期段階中に、前述の
水性マイクロエマルジョンとして提供される。
【0015】
更に別の態様では、本発明は、前述の方法によるフルオロポリマーを提供するステップ
、および、前記フルオロポリマーの前記硬化部位成分を通して前記フルオロポリマーの硬
化を実施できる1種類以上の化合物を含む硬化組成物と前記フルオロポリマーを混合する
ステップを含む、硬化性フルオロエラストマー組成物の製造方法を提供する。
【0016】
更に別の態様では、本発明は、前述の硬化性フルオロエラストマー組成物が硬化される
、フルオロエラストマーの製造方法も提供する。
【0017】
また、別の態様において本発明は、硬化部位を有する液体フッ素化モノマーから誘導さ
れる単位を含むフルオロポリマーを硬化することによって誘導可能な硬化フルオロポリマ
ーも提供し、ここで、20時間のソックスレー(Soxhlet)抽出する間にパーフル
オロベンゼンを用いて前記硬化フルオロポリマーから抽出可能な有機成分の量は、前記硬
化フルオロポリマーの重量を基準にして5重量%未満である。
【0018】
硬化部位を有する前記液体フッ素化モノマーのマイクロエマルジョンの使用により、フ
ルオロポリマーを製造する前記水系乳化重合プロセスの少なくとも初期段階で、硬化時に
、このようなフルオロポリマーから製造できるフルオロエラストマーが実質的に改善され
ることが分かった。特に、フルオロエラストマーは、加硫後、濡れて光沢のある外観を示
さず、また、フルオロポリマーから抽出可能な有機成分の量が減少することが分かった。
また、製造されるフルオロエラストマーは、良好な物理的および機械的特性を示し、この
フルオロエラストマーは、要求のより厳しい用途でも好適な場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に関するマイクロエマルジョンは、液体フッ素化モノマー、任意に不活性液体の
高フッ素化炭化水素化合物、水、およびフッ素化界面活性剤の安定な等方性混合物である
。マイクロエマルジョンは、典型的には、原料の接触又は穏やかな撹拌および/又は任意
の加熱で、自然に生成する。一般に、加熱を使用する場合、マイクロエマルジョンが生成
する、即ち、清澄で透明な混合物が得られる温度は、40〜90℃の範囲である。冷却時
に混合物は清澄で透明な状態を維持する。液体フッ素化モノマーと、任意に不活性液体の
高フッ素化炭化水素との混合物は、界面活性剤の多く含まれる界面層によって分離されて
いる水性媒体中に別個の油領域を形成する。油又は水の領域は非常に小さいため、マイク
ロエマルジョンは視覚的には透明又は半透明に見える。エマルジョンとは異なり、マイク
ロエマルジョンは平衡相である。マイクロエマルジョンは、フッ素化界面活性剤と、硬化
部位を有する液体フッ素化モノマーとの間でのみ生成するが、マイクロエマルジョンの形
態で得ることができる液体フッ素化モノマーの量は、不活性液体の高フッ素化炭化水素化
合物を添加することによって多くなる。
【0020】
「液体」の用語は、フッ素化モノマー、又は不活性の高フッ素化炭化水素に関して使用
される場合、各成分が周囲温度および周囲圧力条件で、即ち、約20℃および約1atm
の圧力で液体であることを意味する。
【0021】
本発明に関する「高フッ素化」の用語は、ほとんどの、および好ましくは全ての水素原
子がフッ素原子で置換された化合物、並びに、大部分の水素原子がフッ素原子で置換され
、残りの水素原子のほとんど又は全てが臭素、塩素、又はヨウ素で置換された化合物を示
すのに使用される。典型的には、本発明に関する高フッ素化化合物は、水素原子が少しし
か、例えば、水素原子が1個又は2個しかフッ素原子以外のハロゲンで置換されておらず
、および/又は水素原子が1個又は2個しか残っていない。全ての水素原子がフッ素又は
別のハロゲンで置換されてはいないとき、即ち、化合物が過フッ素化されていないとき、
水素原子は、化合物上に、そこに実質的に連鎖移動が生じないような、即ち、化合物が重
合中に不活性物質として挙動する、即ち、化合物がフリーラジカル重合に関与しないよう
な位置に存在しなければならない。全ての水素がフッ素および/又は他のハロゲン原子で
置換された化合物は、本明細書では、「過フッ素化」と称される。
【0022】
マイクロエマルジョンの調製に使用できるフッ素化界面活性剤は、典型的には炭素原子
4〜15、好ましくは炭素原子8の過フッ素化アルカンスルホン酸若しくはカルボン酸又
はその塩である。好ましくは、フッ素化界面活性剤は、次式、
(Y−Rf−Z)n−M (I)
(式中、YはCl又はFを表し、Rfは炭素原子3〜15、好ましくは炭素原子4〜10
の直鎖又は分枝鎖過フッ素化アルキレンを表し、ZはCOO-又はSO3-を表し、Mは一
価および多価のカチオンを含むカチオンを表し、nはMの原子価に相当する)に相当する
。カチオンの例には、アンモニウム、アルカリ金属カチオン(ナトリウム、カリウム、お
よびリチウムなど)およびアルカリ土類金属カチオン(カルシウム又はマグネシウムなど
)が挙げられる。
【0023】
マイクロエマルジョンの調製に使用できる不活性液体の高フッ素化炭化水素化合物は、
典型的には、炭素原子3〜25、好ましくは炭素原子5〜20であり、酸素、イオウ、又
は窒素から選択されるヘテロ原子を最大2個含有してもよい。好ましくは、高フッ素化炭
化水素化合物は、過フッ素化炭化水素化合物である。好適な過フッ素化炭化水素には、過
フッ素化飽和直鎖、分枝鎖、および/又は環状脂肪族化合物(過フッ素化直鎖、分枝鎖又
は環状アルカンなど)、過フッ素化芳香族化合物(過フッ素化ベンゼン、又は過フッ素化
テトラデカヒドロフェナントレンなど)が挙げられる。これは、過フッ素化トリアルキル
アミンなどの過フッ素化アルキルアミンとすることもできる。これは、更に、過フッ素化
環状脂肪族化合物(デカリンなど)、好ましくは環中に酸素又はイオウを含有する複素環
式脂肪族化合物(パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフランなど)とすることができ
る。
【0024】
過フッ素化炭化水素の具体例には、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、パ
ーフルオロデカリン、パーフルオロメチルデカリン、パーフルオロメチルシクロヘキサン
、パーフルオロ(1,3−ジメチルシクロヘキサン)、パーフルオロジメチルデカヒドロ
ナフタレン、パーフルオロフルオレン、パーフルオロ(テトラデカヒドロフェナントレン
)、パーフルオロテトラコサン、パーフルオロケロシン、オクタフルオロナフタレン、ポ
リ(クロロトリフルオロエチレン)のオリゴマー、パーフルオロ(トリアルキルアミン)
(パーフルオロ(トリプロピルアミン)、パーフルオロ(トリブチルアミン)、又はパー
フルオロ(トリペンチルアミン)など)、およびオクタフルオロトルエン、ヘキサフルオ
ロベンゼン、および市販のフッ素化溶媒(フルオリナート(Fluorinert)FC
−75、FC−72、FC−84、FC−77、FC−40、FC−43、FC−70、
FC−5312又はFZ348(全て3M社(3M Company)製)など)が挙げ
られる。更に、当業者には、過フッ素化炭化水素の混合物を使用してマイクロエマルジョ
ンを調製できることが明らかである。好適な不活性液体の高フッ素化炭化水素化合物は、
37−O−CF(CF3)−CF2−O−CHF−CF3
である。
【0025】
マイクロエマルジョン中に使用される液体フッ素化モノマーは、硬化部位、即ち、水系
乳化重合で製造されるフルオロポリマーの硬化に後で使用できる官能基を含有するフッ素
化モノマーである。典型的には、硬化部位は、過酸化物硬化反応に関与できるハロゲン(
塩素、臭素又はヨウ素など)であるか、又は硬化部位はニトリル基とすることができる。
好ましい実施形態では、硬化部位を有するフッ素化モノマーは、過フッ素化されている。
硬化部位を有する液体フッ素化モノマーの例には、1つ以上のニトリル基を有する(過)
フッ素化ビニルエーテル、1つ以上のニトリル基を有する(過)フッ素化オレフィン、塩
素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される1つ以上のハロゲン原子を有する(過)
フッ素化オレフィン、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される1つ以上のハロ
ゲン原子を有する(過)フッ素化ビニルエーテルが挙げられる。液体フッ素化モノマーの
混合物も同様に使用できる。
【0026】
本発明の一実施形態では、硬化部位を有する液体フッ素化モノマーは、次式、
CF2=CF−CF2−O−Rf−CN
CF2=CFO(CF2lCN
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]g(CF2vOCF(CF3)CN
CF2=CF[OCF2CF(CF3)]kO(CF2uCN
(式中、lは2〜12の整数を表し、gは0〜4の整数を表し、kは1又は2を表し、v
は0〜6の整数を表し、uは1〜6の整数を表し、Rfはパーフルオロアルキレン又は2
価のパーフルオロエーテル基である)の1つに相当するニトリル含有モノマーである。ニ
トリル含有液体フッ素化モノマーの具体例には、パーフルオロ(8−シアノ−5−メチル
−3,6−ジオキサ−1−オクテン)、CF2=CFO(CF25CN、およびCF2=C
FO(CF23OCF(CF3)CNが挙げられる。
【0027】
別の実施形態によれば、硬化部位を有する液体フッ素化モノマーは、次式の1つに相当
する。
(a)次式、
Z−Rf−O−CF=CF2
(式中、ZはBr又はIであり、Rfは任意に塩素および/又はエーテル酸素原子を含有
する(パー)フルオロアルキレンC2−C12である)を有するブロモ−又はヨード−(パ
ー)フルオロアルキル−パーフルオロビニルエーテル、例えば、BrCF2CF2−O−C
F=CF2、BrCF2CF2CF2−O−CF=CF2、およびCF3CFBrCF2−O−
CF=CF2など。
(b)次式、
Z’−R’f−CF=CF2
(式中、Z’はBr又はIであり、R’fは任意に塩素原子を含有する(パー)フルオロ
アルキレンC1−C12である)を有するものなどのブロモ−又はヨード−(パー)フルオ
ロオレフィン、例えば、ブロモトリフルオロエチレン、および4−ブロモ−パーフルオロ
ブテン−1など、又は4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1などのブ
ロモフルオロオレフィン。
【0028】
マイクロエマルジョンは、追加の原料を含有してもよいが、必ずしも含有しなくてもよ
い。例えば、それに連鎖移動剤を添加することができる、および/又は他の液体(フッ素
化)モノマーを同様に添加してもよい。例えば、硬化部位を含有しない液体フッ素化ビニ
ルエーテルをマイクロエマルジョンに添加してもよい。しかし、マイクロエマルジョンに
添加される原料はどれも、マイクロエマルジョンを破壊しないように選択されなければな
らないことが分かるであろう。
【0029】
初期マイクロエマルジョンを構成する成分の量は、典型的には次のように選択される(
パーセンテージは全て、マイクロエマルジョンの総重量を基準にする重量%として表され
る)。パーフルオロアルカンカルボン酸若しくはスルホン酸又はその塩5〜50%、不活
性液体の高フッ素化、好ましくは過フッ素化炭化水素化合物0〜15%、および硬化部位
を有する液体フッ素化モノマー5〜30%。好ましい範囲は、パーフルオロアルカンカル
ボン酸若しくはスルホン酸又はその塩10〜30%、不活性液体の高フッ素化、好ましく
は過フッ素化炭化水素化合物0.2〜10%、および硬化部位を有する液体フッ素化モノ
マー8〜20%である。更に、初期マイクロエマルジョンは、例えば、重合開始前に重合
媒体にマイクロエマルジョンを添加することによって、使用前に1〜1000倍希釈され
てもよい。このような希釈が、本発明の利点に影響を及ぼすようには見えない。
【0030】
前述のマイクロエマルジョンを水系乳化重合に使用し、フルオロエラストマーに硬化さ
れ得るフルオロポリマーを製造する。フルオロポリマーの製造方法により、1種類以上の
フッ素化モノマー、および硬化部位を有する1種類以上の液体フッ素化モノマーが水系乳
化重合で共重合され、ここで液体フッ素化モノマーの少なくとも一部は前述の水性マイク
ロエマルジョンとして提供される。液体フッ素化モノマーの水性マイクロエマルジョンは
、少なくとも重合プロセスの初期段階中に提供される。従って、水性マイクロエマルジョ
ンは、典型的には、重合を開始する前、又はその直後もしくはその直ぐ後に重合媒体に仕
込まれる。本明細書で使用される場合、重合の初期段階は、重合開始後の最初の5〜10
分を意味する。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、硬化部位を有する液体フッ素化モノマーを全て、前述の
ように調製されるマイクロエマルジョンの形態で添加してもよい。しかし、これは、必要
でない場合もあり、従って、代替の実施形態によれば、液体フッ素化モノマーの一部はマ
イクロエマルジョン以外の形態で添加されてもよい。一般に、硬化部位を有する液体フッ
素化モノマーの総重量の少なくとも2重量%、好ましくは硬化部位を有する液体フッ素化
モノマーの総重量を基準にして少なくとも10重量%をマイクロエマルジョンの形態で添
加する。硬化部位を有する液体フッ素化モノマーをマイクロエマルジョン以外の形態で添
加するとき、好ましくはフッ素化界面活性剤で予備乳化され、従って水性エマルジョンと
して添加される。このようなエマルジョンは、水中の液体フッ素化モノマーをフッ素化界
面活性剤で、好ましくはマイクロエマルジョンに使用されるのと同じもので、ウルトラ・
ターラックス(Ultra−turrax)装置および/又はマイクロフルイダイザーな
どの乳化装置(国際公開第1/49752号パンフレットに記載される)を使用して乳化
することにより調製できる。典型的には、このように生成されるエマルジョンは、外観が
乳白色又は不透明であり、通常、平均粒径が200nm〜1μmである。水系重合に使用
される硬化部位を有する液体フッ素化モノマーの総量は、典型的には、生じるフルオロポ
リマー中に所望の量の硬化部位成分が得られるように選択される。一般に、硬化部位を有
する液体フッ素化モノマーから誘導されるフルオロポリマー中の繰返し単位の量は、フル
オロポリマーを生成するのに使用されるモノマーから誘導される繰返し単位の総量を基準
にして0.1モル%〜5モル%である。好ましくは、その量は、0.5モル%〜3モル%
である。硬化部位を有する液体フッ素化モノマーから誘導される繰返し単位の量が低い、
例えば、1.5モル%以下のとき、特にその量が1モル%以下のとき、本発明は最も有効
である。
【0032】
硬化部位を有する液体フッ素化モノマーとの共重合に使用される1種類以上のフッ素化
モノマーは、典型的には、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチ
レン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、およびフッ化ビニリデン(V
DF)などの少なくとも1種類のフッ素化オレフィンを含む。1種類以上の前述のフッ素
化オレフィンと組合せて典型的に使用される他のフッ素化モノマーには、(過)フッ素化
ビニルエーテルおよび(過)フッ素化アリルエーテルが挙げられる。また、重合には、エ
チレン(E)およびプロピレン(P)などの非フッ素化モノマーが含まれてもよい。特に
好ましい実施形態では、製造されるフルオロポリマーは過フッ素化主鎖を有する。このよ
うな過フッ素化ポリマーは、重合において過フッ素化モノマーだけを使用することによっ
て製造できる。それにも関わらず、本発明は、部分フッ素化された主鎖を有するポリマー
の製造にも有用であるが、一般に、フルオロポリマーの主鎖中のフッ素含有量は少なくと
も35重量%、更に好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも65重
量%である。
【0033】
過フッ素化ビニルエーテルモノマーの例には、次式、
CF2=CF−O−Rf
(式中、Rfは1つ以上の酸素原子を含有してもよい過フッ素化脂肪族基を表す)に相当
するものが挙げられる。好ましくは、パーフルオロビニルエーテルは、次式、
CF2=CFO(RfO)n(R’fO)mR”f
(式中、RfおよびR’fは炭素原子2〜6の異なる直鎖又は分枝鎖パーフルオロアルキレ
ン基であり、mおよびnは独立に0〜10であり、R”fは炭素原子1〜6のパーフルオ
ロアルキル基である)に相当する。上式のパーフルオロビニルエーテルの例には、パーフ
ルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE−2)、パーフルオロ−3−
メトキシ−n−プロピルビニルエーテル、パーフルオロ−2−メトキシ−エチルビニルエ
ーテル、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、パーフルオロ−n−プロピル
ビニルエーテル(PPVE−1)、およびCF3−(CF22−O−CF(CF3)−CF
2−O−CF(CF3)−CF2−O−CF=CF2が挙げられる。
【0034】
本発明の方法で製造できるフルオロポリマーの特定の例には、フッ化ビニリデン(VD
F)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)およびCSM;TFE、VDFおよびCSM
;TFE、PおよびCSM;TFE、CSMおよびパーフルオロビニルエーテル(例えば
、PMVE、PPVE−1、PPVE−2、又はPPVE−1とPPVE−2との組合せ
);VDF、CSMおよびパーフルオロビニルエーテル(例えば、PMVE、PPVE−
1、PPVE−2、又はPPVE−1とPPVE−2との組合せ);TFE、E又はP、
CSMおよびパーフルオロビニルエーテル(例えば、PMVE、PPVE−1、PPVE
−2、又はPPVE−1とPPVE−2との組合せ);TFE、CSM、HFPおよびパ
ーフルオロビニルエーテル(例えば、PMVE、PPVE−1、PPVE−2、又はPP
VE−1とPPVE−2との組合せ);TFE、VDF、HFP、CSM、および任意に
CTFE;TFE、VDF、CSM、およびパーフルオロビニルエーテル(例えば、PM
VE、PPVE−1、PPVE−2、又はPPVE−1とPPVE−2との組合せ);並
びに、TFE、E又はP、HFP、CSMおよびパーフルオロビニルエーテル(例えば、
PMVE、PPVE−1、PPVE−2、又はPPVE−1とPPVE−2との組合せ)
を含むモノマーの組合せから誘導される繰返し単位の組合せを含むものが挙げられる。前
記では、CSMは液体フッ素化硬化部位モノマーの略語として使用され、好ましくはニト
リル含有フッ素化ビニルエーテルである。
【0035】
マイクロエマルジョンの使用とは別に、水系乳化重合方法は、一般に、通常既知の方式
で実施される。好ましい重合温度は、10〜100℃、好ましくは30℃〜80℃、圧力
は4〜30バール、特に6〜15バールである。
【0036】
一般に、フリーラジカル生成開始剤を使用して重合を開始する。開始剤として、フッ素
化モノマーの重合に通常使用される既知の開始剤のいずれかを使用することができる。例
えば、過酸化物をフリーラジカル開始剤として使用できる。過酸化物開始剤の具体例には
、過酸化水素、過酸化ナトリウム又はバリウム、ジアシルパーオキシド(ジアセチルパー
オキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジブチリルパーオキシド、ジベンゾイルパーオ
キシド、ベンゾイルアセチルパーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド(digluta
ric acid peroxide)、およびジラウリルパーオキシドなど)、並びに
更に水溶性過酸およびその水溶性塩(例えば、アンモニウム、ナトリウム、又はカリウム
塩など)が挙げられる。過酸の例には、過酢酸が挙げられる。過酸のエステルも同様に使
用することができ、その例には、t−ブチルパーオキシアセテート、およびt−ブチルパ
ーオキシピバレートが挙げられる。使用できる別の部類の開始剤は、水溶性アゾ化合物で
ある。開始剤として使用するのに好適なレドックス系には、例えば、ペルオキソ二硫酸塩
と亜硫酸水素塩又は二亜硫酸水素塩との組合せ、チオ硫酸塩とペルオキソ二硫酸塩との組
合せ、ペルオキソ二硫酸塩とヒドラジン又はアゾジカルボキサミドとの組合せ(その塩、
好ましくはアルカリ又はアンモニウム塩を含む)が挙げられる。更に、使用できる開始剤
には、過マンガン酸又はマンガン酸のアンモニウム塩、アルカリ金属塩、若しくはアルカ
リ土類金属塩、又はマンガン酸がある。
【0037】
特に好ましい開始系には、フリーラジカル開始剤、例えば、過マンガン酸又はその塩(
過マンガン酸カリウムなど)又は過硫酸塩、および塩化物塩(次式の塩化物塩など)の使
用が含まれる。
MCln
(式中、Mは1価又は多価のカチオンを表し、nはカチオンの原子価に相当する)。好適
なカチオンMには、有機および無機のカチオンが挙げられる。特に有用なカチオンは、ア
ンモニウム、並びに1価のカチオン(ナトリウムおよびカリウムなど)および2価のカチ
オン(カルシウムおよびマグネシウムなど)を含む金属カチオンである。アンモニウムク
ロライド塩の例には、テトラブチルアンモニウムクロライドなどのテトラアルキルアンモ
ニウムクロライドが挙げられる。このような重合系を使用する利点は、製造されるフルオ
ロポリマー中のイオン性末端基の数を好都合に減少できることである。一般に、塩化物塩
の量を増大することによって、イオン性末端基の数が減少する。開始系に塩化物塩を使用
するとCF2Cl末端基が生成すると考えられる。一般に、塩化物塩の量は、塩化物イオ
ン対開始剤(例えば、過マンガン酸塩)のモル比が1:0.1〜0.1:10、好ましく
は1:0.5〜0.1:5になるように選択される。
【0038】
フルオロポリマー中のイオン性末端基の量を低下させる代替の方法には、(特許文献1
)に開示されるように、フルオロ脂肪族スルフィナートと、該スルフィナートをスルホニ
ル基に酸化できる酸化剤との組合せの使用が含まれる。好適な酸化剤には、例えば、過硫
酸アンモニウムなどの過硫酸塩が挙げられる。
【0039】
従って、特定の実施形態によれば、フルオロポリマーがパーフルオロポリマーであると
き、得られるパーフルオロポリマー中のイオン性末端基の量が、パーフルオロポリマーの
フーリエ変換赤外スペクトルの1840cm-1〜1620cm-1の範囲内の積分ピーク強
度、対、2740cm-1〜2220cm-1の範囲内の積分ピーク強度を計算することによ
って決定される吸光度比が0.1未満となる量であるように、開始剤系およびその量が選
択される。
【0040】
使用される開始剤系の量は、典型的には、重合混合物の総重量を基準にして、0.01
〜2重量%、好ましくは0.03〜1重量%である。重合の開始時に開始剤の全量を添加
してもよく、又は、70〜80%の転換が達成されるまで、重合中に連続的な方法で開始
剤を重合に添加することができる。また、開始時に開始剤の一部を添加し、残りを重合中
に1回で、又は複数回に分割し追加して添加することができる。特に、レドックス系を開
始剤として使用するとき、好ましくは、促進剤(例えば、鉄、銅、および銀の水溶性塩な
ど)を添加してもよい。
【0041】
更に、水系乳化重合系は、緩衝剤、および必要に応じて錯生成剤又は連鎖移動剤などの
他の物質を含んでもよい。マイクロエマルジョンの調製に使用されるフッ素化界面活性剤
の量、および重合系に添加されるマイクロエマルジョンの量に応じて、水性重合媒体に更
にフッ素化界面活性剤を添加しても、又は必ずしも添加しなくてもよい。例えば、マイク
ロエマルジョンの希釈時に、追加のフッ素化界面活性剤が必要なとき、一般に、マイクロ
エマルジョンの調製に使用されるのと同じフッ素化界面活性剤を使用することが好ましい
か、又は、代わりに、同様の性質を有するフッ素化界面活性剤を使用できる。典型的には
、水系乳化重合に使用されるフッ素化界面活性剤の総量は、製造されるフルオロポリマー
の重量を基準にして0.1重量%〜5重量%である。
【0042】
本発明の方法で製造されるフルオロポリマーは、それを用いるフルオロエラストマーの
製造に好適である。フルオロエラストマーを得るため、フルオロポリマーおよび硬化組成
物を含む硬化性フルオロエラストマー組成物を硬化させる。当業者に既知の方法のいずれ
かで硬化性フルオロエラストマー組成物を硬化してもよい。硬化組成物は、典型的には、
フルオロポリマー鎖を互いに結合させ、それによって三次元網目構造を形成する1種類以
上の成分を含む。このような成分には、触媒、硬化剤、および/又は助剤を挙げてもよい

【0043】
フルオロポリマーが、過酸化物硬化反応に関与できるハロゲンを含む硬化部位を含むと
き、硬化組成物は、典型的には有機過酸化物を含む。好適な有機過酸化物は、硬化温度で
フリーラジカルを発生するものである。ジアルキルパーオキシド、又は50℃より高温で
分解するビス(ジアルキルパーオキシド)がとりわけ好ましい。多くの場合、ペルオキシ
酸素に結合している三級炭素原子を有するジ−t−ブチルパーオキシドを使用することが
好ましい。この種の最も有用な過酸化物には、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチ
ルパーオキシ)ヘキシン−3、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオ
キシ)ヘキサンがある。他の過酸化物は、ジクミルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキ
シド、t−ブチルパーベンゾエート、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロ
ピルベンゼン)、およびジ[1,3−ジメチル−3−(t−ブチルパーオキシ)−ブチル
]カーボネートなどの化合物から選択することができる。一般に、フルオロポリマー10
0部当り過酸化物約1〜3部を使用する。
【0044】
フルオロポリマーがニトリル含有硬化部位成分を含むとき、1種類以上のアンモニア発
生化合物を含む触媒を使用して硬化を引き起こしてもよい。「アンモニア発生化合物」に
は、周囲温度で固体又は液体であるが硬化条件下でアンモニアを発生させる化合物が挙げ
られる。このような化合物には、例えば、ヘキサメチレンテトラミン(ウロトロピン)、
ジシアンジアミド、および、次式、
w+(NH3vw-
(式中、Aw+はCu2+、Co2+、Co3+、Cu+、およびNi2+などの金属カチオンであ
り、wは金属カチオンの原子価に等しく、Yw-は対イオン、典型的にはハロゲン化物イオ
ン、硫酸イオン、硝酸イオン、又は酢酸イオンなどであり、vは1〜約7の整数である)
の金属含有化合物が挙げられる。
【0045】
また、次式、
【化1】

(式中、Rは水素、又は、炭素原子1〜約20の置換若しくは非置換アルキル基、アリー
ル基、若しくはアラルキル基である)のものなどの置換および非置換トリアジン誘導体も
アンモニア発生化合物として有用である。具体的な有用なトリアジン誘導体には、ヘキサ
ヒドロ−1,3,5−s−トリアジン、およびアセトアルデヒドアンモニア三量体が挙げ
られる。アンモニア発生化合物は、ニトリル基を有するフルオロポリマーの硬化を実施す
るのに使用されるとき、典型的にはフルオロポリマー100重量部当り0.1〜10重量
部(phr)の量で使用され、フルオロポリマーを所望の物理的および機械的特性を有す
るエラストマーに硬化させる。
【0046】
ニトリル含有フルオロポリマーの硬化に使用できる別の成分には、次式、
【化2】

(II)
(式中、HA1基は無機又は有機酸、例えば、HCl、HNO3、C715COOHであり
、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、炭素原子1〜約20の同じ又は異なるアルキル
基であり、それらは環状又は複素環式であってもよく、替わりにR基の1つは、窒素がア
ルケニル基、シクロアルケニル基若しくは芳香族基に結合し、又はその一部であるように
、別のR基との結合であってもよい)の化合物が挙げられる。置換基はまた、オレフィン
系、例えば、モノアルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、およびトリアルキルアミン塩
、並びにピリジン塩などであってもよい。上式(II)の化合物の例には、次式、
【化3】

(IIA)
(式中、mおよびnは、独立に2〜20である)の化合物が挙げられる。
【0047】
式(IIA)の化合物の好ましい例には、m=3且つn=5のもの、並びにm=4且つ
n=2のものが挙げられる。これには、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]
ウンデカ−7−エン(DBU)、および1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5
−エン(DBN)の塩が挙げられる。これらの塩は、例えば、メタノール又はアセトンな
どの有機溶媒中で、DBU又はDBNを有機酸又は無機酸と反応させることにより調製さ
れてもよく、又はその場で(in situ)調製されてもよい。酸は、有機酸又は無機
酸、例えば、C715COOH、又はいずれかの炭化水素若しくはフッ素含有カルボン酸
、スルホン酸など、およびHCl、HNO3などの無機酸とすることができ、これらは安
定な塩を生成する。式IIAの別の好ましい化合物は、ピリジン塩酸塩である。ニトリル
含有フルオロポリマーの硬化を引き起こすため、式(II)又は(IIA)の化合物をフ
ルオロポリマーの0.05〜10phrの量で、好ましくはフルオロポリマーの0.5〜
5phrの量で使用してもよい。
【0048】
前述の式(II)又は(IIA)の化合物は、好都合に、式、RaC(ORb)=NH(
式中、RaおよびRbは独立に置換又は非置換C1〜C20(好ましくはC1〜C10、更に好ま
しくはC1〜C7)のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、シクロアル
キル基、又はシクロアルケニル基を表す)を有するもの、およびその塩を含むイミデート
と組合せられる。「置換」は、所望の生成物に干渉しない置換基で置換されていることを
意味する。好適な置換基の例には、ハロゲン(例えば、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素)基
、シアノ基、アルコキシ基、およびカルボキシ基が挙げられる。更に、1つ以上の炭素原
子が酸素又は窒素などのヘテロ原子で置換されていてもよい。イミデートは、(非特許文
献2)、(非特許文献3)および(非特許文献4)に記載のように調製されてもよく、こ
れらの文献は参照により本明細書に組込まれる。RaおよびRbに有用な基の例には、フル
オロアルキル基、パーフルオロアルキル基、およびパーフルオロポリエーテル基が挙げら
れる(例えば、(特許文献2)に記載されている)。更に、化合物中に2つ以上のイミデ
ート基が含まれてもよい。有用なイミデートの例には、例えば、CF3O(CF2mOC
F(CF3)C(NH)OCH3(式中、mは1〜4の整数である)、およびC37(O(
CF3)CF2nOCF(CF3)C(NH)OCH3(式中、n=0〜3)が挙げられる

【0049】
ニトリル含有フルオロポリマーの硬化に使用できる更に他の硬化剤には、次式、
{RdA}(-){ORck(+) (III)
(式中、Rdは炭素原子1〜20のアルキル若しくはアルケニル基、炭素原子3〜20の
シクロアルキル若しくはシクロアルケニル、又は、炭素原子6〜20のアリール若しくは
アルカリールであり、Rdは部分フッ素化又は完全フッ素化されていてもよく、および/
又はRdは基の水素原子が1つ以上Cl、Br又はIで置き換わっているように置換され
ていてもよい)の化合物が挙げられる。
更に、Rdには、O、P、S、又はNなどの1つ以上のヘテロ原子が含まれていてもよい
。過フッ素化基のRdの例としては、式Cn2n+1(式中、nは1〜20である)のパーフ
ルオロアルキル基、式Cm2m-1(式中、mは3〜20である)のパーフルオロシクロア
ルキル基、C6〜C20パーフルオロアリール基、およびC2〜C20パーフルオロアルケニル
基が挙げられる。
【0050】
Aは、酸アニオン、又は酸誘導体アニオンであり、例えば、Aは、COO、SO3、S
2、S、SO2NH、PO3、CH2OPO3、(CH2O)2PO2、C64O、OSO3
O(Rdがアリール又はアルキルアリールである場合)、
【化4】


【化5】


および、
【化6】

とすることができ、好ましくは、COO、O、C64O、SO3、OSO3、又は
【化7】

とすることができ、最も好ましくは、COO、O、SO3、およびOSO3とすることがで
き、R’は後述のRcの意味の1つを有することができるか、又は前記のRdに関して列記
される過フッ素化基とすることができ、RはRcに対して後述される意味の1つを有する
ことができ、R’の特定の選択は、Rdと同じであっても又は異なってもよく、1つ以上
のA基がRdに結合していてもよい。
【0051】
Qは、リン(P)、イオウ(S)、窒素(N)、砒素(As)、又はアンチモン(Sb
)であり、kはQの原子価である。
【0052】
各Rcは、独立に、水素、又は置換若しくは非置換C1〜C20のアルキル基、アリール基
、アラルキル基、若しくはアルケニル基である。本明細書で使用される場合、「置換」は
、所望の生成物に干渉しない置換基で置換されていることを意味する。好適な置換基の例
には、ハロゲン(例えば、Cl、F、Br、I)基、シアノ基、ORe基、およびCOO
e基(式中、Reは、水素、又は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属から選択され
る基であり、このうち、H、K、Na、および、NH4が好ましい)、C1〜C20のアルキ
ル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、およびそれらのフッ素化又は過フッ素
化類似体が挙げられる。更に、前記Re基のいずれかの対が、互いにおよびQ原子に結合
し、複素環を形成してもよい。
【0053】
上式(III)のアニオンRdAの例には、C49SO3、C37COO、C715CO
O、C817SO3、C49SO2NSO249、CF3CF(CF3)CH2O、およびCn
2n+1CH2O(式中、nは2〜100、好ましくは2〜20、更に好ましくは2〜10
である)が挙げられる。他のアニオンには、次の一般式、
x−Phy−(−(CH2n−D)m
(式中、Phはフェニルであり、各Rxは炭素原子1〜10の同じ又は異なるアルケニル
又はアルキルであり、置換されていても又は置換されていなくてもよく、xは0〜5であ
り、yは0又は1であり、nは0〜10であり、mは1〜5であり、DはCOO、OSO
3、SO3およびO(yが1のとき)から選択されるが、但し、xとmの合計は6以下であ
る)のアニオンが挙げられる。有用なアニオンの例には、Ph−COO、Ph−O、CH
3−(CH2p−O−SO3(pが1〜10のとき)、および、一般式、R−COOのカル
ボン酸イオン(式中、Rは炭素原子1〜10のアルケニル、アルキル(例えば、酢酸イオ
ン若しくはプロピオン酸イオン)、又は炭素原子6〜20のアリールである)が挙げられ
る。多価カルボン酸イオン、多価硫酸イオン、および多価スルホン酸イオン、例えば、(-
)OOC−(CH2p−COO(-)又は(-)OOC−(CF2p−COO(-)(式中、pは0
〜10である)、およびPh−((CH2p−COO(-)q(式中、pおよびqは独立に
1〜4である)も同様に有用である。二官能性カルボン酸の好ましい種は、シュウ酸であ
る。更に、前述の2種類以上の化合物のブレンドを式(III)のRdAに使用すること
ができる。
【0054】
代表的な芳香族ポリオキシ化合物には、ジオキシベンゼン、トリオキシベンゼン、およ
びテトラオキシベンゼン、ナフタレン、およびアントラセン、並びに次式、
(-)z−Ph−Gy−Ph−Oz(-)
(式中、Gは結合、又は炭素原子1〜13の二官能性脂肪族基、環状脂肪族基、若しくは
芳香族基、又はチオ基、オキシ基、カルボニル基、スルフィニル基、若しくはスルホニル
基であり、Gおよび/又はPhは任意に、少なくとも1つの塩素又はフッ素原子で置換さ
れており、yは0又は1であり、zは1又は2である)のビスフェノールが挙げられ、ポ
リオキシ化合物のいずれかの芳香族環は、任意に少なくとも1つの塩素、フッ素若しくは
臭素原子、又は、カルボキシル基若しくはアシル基(例えば、−COR(式中、RはH、
又はC1〜C8のアルキル基、アリール基、若しくはシクロアルキル基である))、又は、
例えば炭素原子1〜8のアルキル基で置換されている。前記ビスフェノールの式中、酸素
原子は、どちらかの環の(1番以外の)どの位置でも結合することができる。このような
化合物の2種類以上のブレンドを使用することもできる。好ましい部類の物質には、一般
式、(-)O−Ph−C(CX32−Ph−O(-)(式中、XはH、Cl又はFである)を有
するものなどのビスフェノール(例えば、ビスフェノールAF)が挙げられる。多官能性
酸を使用するとき、モノ錯体、ビス錯体、およびマルチ錯体を使用することができる。
【0055】
当該技術分野で既知のように、有機オニウムは、ルイス塩基(例えば、ホスフィン、ア
ミン、およびスルフィド)の共役酸であり、前記ルイス塩基を好適なアルキル化剤(例え
ば、ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アシル)と反応させ、ルイス塩基の電子供与原子
の原子価を拡大させ、有機オニウム化合物に正電荷を生じることによって、生成すること
ができる。式(III)の化合物に好ましい有機オニウム化合物は、少なくとも1つのヘ
テロ原子、即ち、有機部分に結合しているP、S、Nなどの非炭素原子を含有する。
【0056】
特に有用な四級有機オニウム化合物の一部類は、相対的な正イオンと相対的な負イオン
を広く含み、リン、イオウ、又は窒素が一般に正イオンの中心原子を構成し、負イオンは
アルキル酸アニオン又はシクロアルキル酸アニオンであり、これは、部分フッ素化されて
いてもよい、即ち、少なくとも1つの水素原子がフッ素で置換されているが、但し少なく
とも1つの非フッ素原子が残っている。
【0057】
Qがリンのとき、好適な前駆体化合物の例には、テトラメチルホスホニウム、トリブチ
ルアリルホスホニウム、トリブチルベンジルホスホニウム、ジブチルジフェニルホスホニ
ウム、テトラブチルホスホニウム、トリブチル(2−メトキシ)プロピルホスホニウム、
トリフェニルベンジルホスホニウム、およびテトラフェニルホスホニウムが挙げられる。
これらのホスホニウムは、水酸化物、塩化物、臭化物、アルコキシド、フェノキシドなど
とすることができる。水酸化テトラアルキルホスホニウム、およびテトラアルキルホスホ
ニウムアルコキシドが好ましい。
【0058】
別の部類のホスホニウム化合物には、アミノ−ホスホニウム、ホスホラン(例えば、ト
リアリールホスホラン)、およびリン含有イミニウム化合物からなる群から選択されるも
のが挙げられる。使用できるアミノ−ホスホニウム化合物には、当該技術分野で、例えば
、(特許文献3)(モギー(Moggi)ら)に記載されているものが挙げられる。
【0059】
本発明で有用な部類のホスホニウム化合物には、ホスホラン化合物(トリアリールホス
ホラン化合物など)が挙げられ、後者の化合物の幾つかは既知であり、当該技術分野で記
載されており、例えば、その記載内容が参照により本明細書に組込まれる(特許文献4)
(デ・ブラナー(de Brunner))を参照されたい。
【0060】
Qが窒素のとき、好ましい正イオンは、一般式、NRc4又はHNRc3(式中、Rcは前
述の通りである)を有する。前駆体化合物として有用な、代表的な四級有機オニウムには
、フェニルトリメチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラプロピルアン
モニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、テトラメチルア
ンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリブチルベンジルアンモニウム、トリブチル
アリルアンモニウム、テトラベンジルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム、ジフ
ェニルジエチルアミノアンモニウム、トリフェニルベンジルアンモニウム、8−ベンジル
−1,8−ジアゾビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム、ベンジルトリス(ジメ
チルアミノ)ホスホニウム、およびビス(ベンジルジフェニルホスフィン)イミニウムが
挙げられる。これらのアンモニウムは、水酸化物、塩化物、臭化物、アルコキシド、フェ
ノキシドなどとすることができる。これらの正イオンのうち、テトラブチルアンモニウム
、およびテトラフェニルアンモニウムが好ましい。
【0061】
QがAs又はSbのとき、好ましい正イオンには、塩化テトラフェニルアルソニウム、
および塩化テトラフェニルスチボニウムが挙げられる。全体的に、テトラアルキルホスホ
ニウム化合物は、式(III)で表される成分の正イオンに更に好ましい。有機オニウム
化合物の混合物も有用である。
【0062】
前述の前駆体は、一般に市販されているか(例えば、ウィスコンシン州ミルウォーキー
、アルドリッチケミカルズ(Aldrich Chemicals,Milwaukee
,WI)から)、又は当該技術分野で記載されている手順で調製されてもよい。
【0063】
式(III)の成分を調製するのに有用な炭化水素の酸又は塩は、典型的には、一般式
、RdCOOM、RdSO3M、RdOSO3M、又はRdOMを有する。これらの式中、Rd
は式(III)に関して前述されるとおりであり、Mは水素、又は、アルカリ金属若しく
はアルカリ土類金属である。代表的な物質は、前述のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸
塩、およびフェノール塩である。更に、2つ以上のRdA基および/又は2つ以上のQRc
k基のブレンドを含む、前述の式(III)の2種類以上の化合物のブレンドを使用でき
る。
【0064】
式(III)の化合物を含む組成物は、いずれかの好適な方法で調製できる。例えば、
式(III)の活性錯体の2つの成分を酸又は塩、例えば、RdAX(式中、Xは水素、
又は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属から選択され、この中でH、K、Na、N
4が好ましい)、およびQRckZ(式中、Zは有機又は無機であってよいアニオン、好
ましくはCl、Br、OH、OR3、又はSO4から選択される)として別々に組込むこと
ができる。2つの成分は、フルオロエラストマーゴムに別々に、又は混合物として添加す
ることができる。この方法では、活性錯体は、加工、加熱、および硬化中にその場で(i
n situ)生成される。汚染および金属塩の含有を回避するため(これは清浄な用途
(例えば、半導体)ではとりわけ重要である)、錯体は、硬化性フルオロエラストマー組
成物に組込まれる前に、調製されるべきであり、また、得られる塩XZは、活性錯体が硬
化性フルオロエラストマー組成物に組込まれる前に、ろ過又は洗浄されるべきである。当
該技術分野で既知の他の好適な方法を使用して、式(III)の化合物を調製してもよい
。例えば、得られる塩XZを沈殿させ、ろ過する前に、式(III)の触媒組成物の2つ
の成分を好適な溶媒(例えば、アルコール)中に溶解することができる。オニウム成分を
オニウム−ヒドロキシド又はオニウム−アルコキシドとして、触媒組成物の酸成分と反応
させる(例えば、Bu4NOHをRCOOHと反応させる)ことにより、塩の生成を回避
できる。溶媒中に溶解される時、又は乾燥化合物として、活性錯体を硬化性フルオロエラ
ストマー組成物に組込むことができる。過剰量のQRck物質(例えば、塩化テトラアルキ
ルホスホニウム)又は遊離酸(例えば、RdAH)は、ポリマーの特性に悪影響を与えな
い。
【0065】
式(III)の化合物をフルオロポリマーの0.1〜10phr、好ましくは0.5〜
5phrの量で使用し、フルオロポリマーを、所望の物理的および機械的特性を有するフ
ルオロエラストマーに硬化させてもよい。
【0066】
式(III)の化合物を、一般式、R2−OH(式中、R2は炭素原子1〜20、更に好
ましくは炭素原子6〜12のアルキル基である)を有する任意のアルコールと組合せて好
都合に使用してもよい。R2は、例えばRf−CH2−OH、又はRf−CH2CH2−OH(
式中、Rfは過フッ素化アルキル基などの過フッ素化炭化水素基である)のように部分フ
ッ素化されたものとすることができる。アルコールの添加は必要ではないが、硬化性フル
オロエラストマー組成物の粘度および硬化特性を調整するのに役立つ場合がある。アルコ
ールは、典型的には、全組成物中で相溶性となるように選択されるべきである。また、ア
ルコールは、練り操作中に、フルオロポリマーと式(III)の化合物との混合物中に残
存し、次いで、後硬化操作中、更に高温で後の加工をする間に蒸発するべきである。現在
のところ好ましいアルコールの例には、オクタノールおよびデカノールが挙げられる。有
効量のアルコールが硬化系に使用される。この量は、アルコールと式(III)の化合物
との所望の割合、選択される特定のアルコール、および練り温度を含む幾つかの要因によ
って決定される。例えば、低沸点アルコールの所望の割合が大きいほど、また、練り温度
が高いほど、練りプロセスに含まれる量が多くなる。選択される組成物のための特定の程
度(level)は、普通は、通常の実験の問題である。一般に、この量はフルオロポリ
マー100重量部当り、アルコール0.01〜10重量部(更に好ましくは0.5〜5重
量部)の範囲である。
【0067】
ニトリル含有フルオロポリマーを硬化するため、使用できる更に他の化合物には、アミ
ノフェノール((特許文献5))、アンモニア塩((特許文献6))、アミドキシン((
特許文献7))、および他のアンモニア発生化合物((特許文献8))又はイミデートが
挙げられる。
【0068】
また、1種類以上の過酸化物硬化剤を使用して、ニトリル含有硬化部位成分を含むフル
オロポリマーを硬化することもできる。この目的に好適な過酸化物硬化剤には、前記に列
記したものが挙げられる。更に、硬化性フルオロエラストマーは、ニトリル含有硬化部位
と、過酸化物硬化反応に関与できるハロゲンを含む硬化部位との混合などの、硬化部位成
分の混合を含んでもよいことが当業者には分かるであろう。後者の場合、一般に、ニトリ
ル成分の硬化を引き起こすのに好適な1種類以上の化合物と過酸化物との混合物が使用さ
れる。
【0069】
有機過酸化物および/又はニトリル含有硬化部位成分をベースにする硬化組成物中に通
常含まれる別の成分は、過酸化物と協働して有用な硬化を提供できる多価不飽和化合物か
ら構成される助剤である。これらの助剤をフルオロポリマー100部当り0.1〜10部
、好ましくはフルオロポリマー100部当り2〜5部に等しい量で添加することができる
。有用な助剤の例には、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリア
リルトリメリテート、トリ(メチルアリル)イソシアヌレート、トリス(ジアリルアミン
)−s−トリアジン、トリアリルホスフィット、N,N−ジアリルアクリルアミド、ヘキ
サアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’−テトラアルキルテトラフタルアミド、N
,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,
6−トリビニルメチルトリシロキサン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジア
リル−フタレート、およびトリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレートが挙げ
られる。トリアリルイソシアヌレートが特に有用である。他の有用な助剤には、(特許文
献9)、(特許文献10)、および(特許文献11)に開示されているビス−オレフィン
が挙げられる。
【0070】
硬化性フルオロエラストマー組成物は、カーボンブラック、安定剤、可塑剤、潤滑剤、
充填材、およびフルオロポリマー配合に通常使用される加工助剤などの添加剤を更に含有
してもよく、これらを本発明の組成物に組込むことができるが、但し、それらが意図され
る使用条件に十分な安定性を有することを条件とする。更に、フルオロポリマー粒子など
の有機充填材を添加してもよい。例えば、TFEと、PPVE(PFA)などのパーフル
オロビニルエーテルとの共重合から誘導されるパーフルオロアルコキシコポリマーを添加
してもよく、又はTFEとHFPとの共重合から誘導されるフッ素化エチレン/プロピレ
ンコポリマー(FEP)を添加することができる。
【0071】
硬化性フルオロエラストマー組成物は、フルオロポリマー、硬化組成物、および他の添
加剤を慣用的なゴム加工装置中で混合することにより調製されてもよい。このような装置
には、ゴム用ミル、密閉式混合機(バンバリーミキサーなど)、および混練押出機などが
挙げられる。
【0072】
次の実施例を参照して本発明を更に説明するが、本発明はそれらに限定されるものでは
ない。別途表示されない限り、部は全て重量部である。
【実施例】
【0073】
別途記載されない限り、表示される結果は、次の試験方法を使用して得られた。
【0074】
硬化レオロジー:モンサント移動式ダイレオメータ(Monsanto Moving
Die Rheometer)(MDR)モデル2000を使用して、ASTM D5
289−93aに従い、177℃、予備加熱なし、経過時間30分、0.5°アークで、
非硬化の配合サンプルについて試験を行った。最小トルク(ML)と、プラトー又は最大
トルクが得られないときには特定時間内に達成される最高のトルク(MH)の両方を測定
した。また、トルクがMLより2単位増大する時間(「ts2」)、トルクがML+0.5
(MH−ML)に等しい値に達する時間(「t’50」)、およびトルクがML+0.9(
H−ML)に達する時間(「t’90」)も測定した。
【0075】
加圧硬化:150×150×2.0mmのサンプルシートを準備し、別途記載されない
限り、約6.9メガパスカル(MPa)で30分間、177℃で加圧することによって、
物理的特性を決定した。
【0076】
後硬化:加圧硬化されたサンプルシートを窒素下で、次の6段階の条件、即ち、6時間
にわたり25℃から200℃まで、200℃で16時間、2時間にわたり200℃から2
50℃まで、250℃で8時間、2時間にわたり250℃から300℃まで、および30
0℃で16時間、を使用して熱に暴露した。サンプルは、試験する前に周囲温度に戻した

【0077】
ビス−(テトラブチルホスホニウム)−パーフルオロアジペートの調製
2リットル(L)の丸底フラスコに磁気撹拌、温度プローブ、および窒素通気装置への
接続を装備した。フラスコにパーフルオロアジピン酸(3M社(3M Company)
から入手可能なフッ化パーフルオロアジポイルから製造)188g(0.65モル)、お
よび蒸留水488gを仕込んだ。撹拌しながら、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
(アルドリッチ(Aldrich)から入手可能)の40重量%水溶液898g(1.3
モル)を1時間にわたり添加した。僅かな発熱反応が観察された。混合物を室温で更に1
時間撹拌した。フラスコを15トール(2Kpa)の減圧下で65℃に加熱し、水を除去
すると、523g(0.65モル)の(C494POCO(CF24COOP(C49
4が定量的に得られた。ビス−(テトラブチルホスホニウム)−パーフルロアジペート
の融点は121〜123℃であり、FNMRで構造と2対1のモル比が確認された。
【0078】
実施例1
CF2=CF−O−(CF25CN(NVE)40g、パーフルオロオクタン酸アンモ
ニウムの重量を基準にして、3M社(3M Company)からFZ348として入手
可能な炭素原子5〜15の過フッ素化炭化水素化合物の混合物を1.5重量%含有する、
30%パーフルオロオクタン酸アンモニウム溶液(FX1006,3M)410gを僅か
に撹拌しながら50℃まで加熱した。混合物(pH=4)は、室温で安定な、透明なマイ
クロエマルジョンを生成した。
【0079】
更に、ウルトラ・ターラックス(Ultra−turrax)(IKA−ラボテクニッ
ク(Labortechnik))およびマイクロフルイダイザー(マイクロフルーイッ
ズ(Microfluids)M−110Y)を使用して、FX1006(30%溶液)
10gの存在下、水中でNVE0.28kgを乳化することによって、水中のNVEの水
性エマルジョンを調製し、平均粒径約250nmを達成した。
【0080】
40Lの反応釜に水26L、水300mL中に溶解させたパーフルオロブチルスルフィ
ン酸Na(NaO2S−C49)60gを仕込み、マイクロエマルジョンを調製した。次
いで、無酸素状態の反応釜にTFE400gとパーフルオロメチルビニルエーテル(PM
VE)1160gを仕込んだ。反応釜を71℃(圧力10バール)まで加熱した後、水中
に溶解させた過硫酸アンモニウム(APS)45g(10%溶液(sol.))を30分
間反応釜に供給することによって重合を開始した。6.25時間内で、TFE6.1kg
、PMVE5.14kg、および前述のように調製したNVEの水性エマルジョンを10
バールの定圧で反応釜に連続的に供給した。得られるラテックスは、固体含有量32%、
粒径70nmであり、凝固したポリマーは、組成がTFE65モル%、PMVE34.2
モル%、およびNVE0.8モル%であり、ムーニー粘度10+1、121℃が58であ
った。
【0081】
実施例2
CF2=CF−O−(CF25CN(NVE)35g、パーフルオロオクタン酸アンモ
ニウムの重量を基準にして、3M社(3M Company)からFZ348として入手
可能な炭素原子5〜15の過フッ素化炭化水素化合物の混合物を1.5重量%含有する、
30%パーフルオロオクタン酸アンモニウム溶液(APFO、FX1006,3M)43
0gを実施例1に記載のようにマイクロエマルジョンに転換した。このマイクロエマルジ
ョン、水25L、および水300mL中のパーフルオロブチルスルフィン酸Na60gを
無酸素状態下で、TFE470gとPMVE1360gと共に仕込んだ。APS45gを
供給することによって、73℃、12バールで重合を開始した。5.0時間の間、TFE
6.0kg、PMVE5.0kg、および実施例1に記載のように水1300g中で予備
乳化されたNVE0.45kgを連続的に供給した。凝固したポリマーは、次の組成、即
ち、TFE64.5モル%、PMVE34.2モル%、およびNVE1.3モル%を示し
、ムーニー粘度10+1、121℃が72であった。
【0082】
比較例C1、C2
NVEを全て水性エマルジョンとして添加したこと以外、即ち、マイクロエマルジョン
としてではなく、実施例1に記載されるように予備乳化したこと以外、実施例1および2
を繰り返した。
【0083】
【表1】

【0084】
ニトリル含有ポリマーを全て、N990(カーボンブラック)20phr、エアロシル
(Aerosil)R972(コロイダルシリカ)2phr、およびビス(テトラブチル
ホスホニウム−パーフルオロアジペート錯体)1.5phrと共に2本ロールミルで配合
した。(実施例1は、次の硬化レオロジーを示した:ML0.83(ポンド単位)、MH
12.92(ポンド単位)、ts2=4.79分、t50=7.14分、t’90=13.2
分)。
【0085】
後硬化したシートを高温のC66を用いてソックスレー(Soxhlet)装置中で一
晩(20時間)抽出した。冷却したC66中に、次の量の抽出物が見い出された。
【0086】
【表2】

【0087】
C1のシートだけでなくC2のシートも(より少量であるが)、光沢のある、濡れてい
るように見える表面を示した。実施例1又は実施例2のフルオロポリマーを使用して調製
されたフルオロエラストマーは、光沢のある、濡れているように見える表面を示さなかっ
た。
【0088】
実施例3
NVE40g、および高精製パーフルオロ−オクタン酸アンモニウムの30重量%溶液
390gを、清澄で透明なマイクロエマルジョンが得られるまで、室温で穏やかに撹拌し
た。マイクロエマルジョンをpH=4に調整した。実施例1に記載のマイクロエマルジョ
ンの替わりに、この実施例3に記載のように調製されるマイクロエマルジョンを使用して
、実施例1に記載される重合を繰り返した。次いで、このようにして得られるフルオロポ
リマーを前記実施例に記載のように配合し、硬化した。得られる硬化パーフルオロポリマ
ーは、光沢のある、濡れているように見える表面を示さず、抽出物の量は3.3%(前記
実施例に記載のように測定した場合)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過フッ素化アルカンスルホン酸若しくはカルボン酸又はその塩、硬化部位を含む液体フ
ッ素化モノマー、および、任意に不活性液体の高フッ素化炭化水素化合物を含む水性マイ
クロエマルジョン。
【請求項2】
前記過フッ素化アルカンスルホン酸若しくはカルボン酸又はその塩が、次式、
(Y−Rf−Z)n−M (I)
(式中、YはCl又はFを表し、Rfは炭素原子3〜15の直鎖又は分枝鎖過フッ素化ア
ルキレンを表し、ZはCOO-又はSO3-を表し、Mは一価および多価のカチオンを含む
カチオンを表し、nはMの原子価に相当する)に相当する、請求項1に記載の水性マイク
ロエマルジョン。
【請求項3】
前記液体フッ素化モノマーは、1つ以上のニトリル基を有するフッ素化ビニルエーテル
、1つ以上のニトリル基を有するフッ素化オレフィン、塩素、臭素およびヨウ素からなる
群から選択される1つ以上のハロゲン原子を有するフッ素化オレフィン、塩素、臭素およ
びヨウ素からなる群から選択される1つ以上のハロゲン原子を有するフッ素化ビニルエー
テル、並びにこれらの混合物の群から選択される、請求項1に記載の水性マイクロエマル
ジョン。
【請求項4】
前記液体フッ素化モノマーが、次式、
CF2=CF−CF2−O−Rf−CN
CF2=CFO(CF2lCN
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]g(CF2vOCF(CF3)CN
CF2=CF[OCF2CF(CF3)]kO(CF2uCN
(式中、lは2〜12の整数を表し、gは0〜4の整数を表し、kは1又は2を表し、v
は0〜6の整数を表し、uは1〜6の整数を表し、Rfはパーフルオロアルキレン基又は
2価のパーフルオロエーテル基である)の1つに相当する、請求項1に記載の水性マイク
ロエマルジョン。
【請求項5】
前記不活性液体の高フッ素化炭化水素化合物が過フッ素化炭化水素化合物を含む、請求
項1に記載の水性マイクロエマルジョン。
【請求項6】
水、過フッ素化アルカンスルホン酸若しくはカルボン酸又はその塩、任意に不活性液体
の高フッ素化炭化水素化合物、および硬化部位を有する液体フッ素化モノマーを一緒に混
合するステップを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の水性マイクロエマルジョンの製
造方法。
【請求項7】
フルオロエラストマーに硬化され得るフルオロポリマーの製造方法であって、1種類以
上のフッ素化モノマーと、硬化部位を有する1種類以上の液体フッ素化モノマーとの水系
乳化重合を含む方法において、前記液体フッ素化モノマーの少なくとも一部が、前記水系
乳化重合プロセスの少なくとも初期段階中に、請求項1〜5のいずれかに記載の水性マイ
クロエマルジョンとして提供されることを特徴とする、方法。
【請求項8】
硬化部位を有する液体フッ素化モノマーの総重量を基準にして、前記硬化部位を有する
液体フッ素化モノマー少なくとも2重量%が、前記重合の初期段階中に提供される、請求
項7に記載の方法。
【請求項9】
前記重合が、フルオロ脂肪族スルフィナートと、前記スルフィナートをスルホニル基に
酸化できる酸化剤との組合せ、および、フリーラジカル開始剤と水溶性塩化物塩との組合
せから選択される開始剤系を用いて開始される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記フルオロポリマーがパーフルオロポリマーであり、得られるパーフルオロポリマー
中のイオン性末端基の量が、前記パーフルオロポリマーのフーリエ変換赤外スペクトル中
の1840cm-1〜1620cm-1の範囲内の積分ピーク強度、対、2740cm-1〜2
220cm-1の範囲内の積分ピーク強度を計算することによって決定される吸光度比が0
.1未満となる量であるように、前記開始剤系およびその量が選択される、請求項9に記
載の方法。
【請求項11】
前記重合方法の終了時に得られる水性分散体から、前記フルオロポリマーを単離するス
テップを更に含む、請求項7〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法によるフルオロポリマーを提供するステップと、前記フルオロ
ポリマーを、前記フルオロポリマー中に含有される前記硬化部位成分により前記フルオロ
ポリマーの硬化を実施できる1種類以上の化合物を含む硬化組成物と混合するステップを
含む、硬化性フルオロエラストマー組成物の製造方法。
【請求項13】
前記硬化組成物が多価不飽和助剤を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の方法による硬化性フルオロエラストマー組成物を提供する
ステップと、このようにして得られる前記硬化性フルオロエラストマー組成物を硬化させ
るステップとを含む、フルオロエラストマーの製造方法。
【請求項15】
硬化部位を有する液体フッ素化モノマーから誘導される単位を含むフルオロポリマーの
硬化から誘導可能な硬化フルオロポリマーであって、パーフルオロベンゼンを用いて20
時間のソックスレー抽出を行う間、前記硬化フルオロポリマーから抽出可能な有機成分の
量は、前記硬化フルオロポリマーの重量を基準にして5重量%未満である、硬化フルオロ
ポリマー。

【公開番号】特開2010−202888(P2010−202888A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141955(P2010−141955)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【分割の表示】特願2004−524923(P2004−524923)の分割
【原出願日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】