説明

フルオロポリマー分散液の製造方法

【課題】本発明は、実質的にフッ素化界面活性剤、特にフッ素系イオン性界面活性剤がない水性フルオロポリマー分散液の製造方法の開発を課題とする。
【解決手段】以下の工程:
a) フルオロポリマー分散液への、1以上の非フッ素化アニオン性界面活性剤の添加;
b) 分散液とアニオン性高分子電解質との接触;
c) アニオン交換体からの分散液の分離と、実質的にフッ素化アニオン性界面活性剤がない分散液の回収;
を含む、フルオロポリマー分散液からの、フッ素化アニオン性界面活性剤を実質的に除去する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的にフッ素化界面活性剤、特にフッ素系イオン性界面活性剤がない水性フルオロポリマー分散液の製造方法に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、酸またはその塩の形態にあるペルフルオロオクタノエートが実質的にない、フルオロポリマーの分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フッ素化アニオン性界面活性剤が実質的にないフルオロポリマーの水性分散液の状態にとっては、フルオロポリマー重量に対するフッ素化界面活性剤の含有量は、100ppmより下、とりわけ50ppmより下、更にとりわけ5ppmより下であることを意味する。
【0004】
フッ素化ポリマーの製造にとって、2種類の異なる重合方法:懸濁重合と乳化重合があることが、先行技術では周知である。懸濁重合において、ミリメーターサイズを有するポリマー顆粒が得られる。乳化重合においては、数ナノメーターから、一般に10nmから、数百ナノメーターまで、100nm〜400nmのオーダーの粒径を有する、コロイド状水性分散液が得られる。
【0005】
フルオロポリマー乳化重合法は、穏やかな撹拌で、かつ低分子量のフルオロポリマー、それ故の乏しい開会的特性を有することを得ることを避けるために連鎖移動剤として作用しない界面活性剤の存在下に行なわれる、該界面活性剤は非テロゲン性界面活性剤と呼ばれ、例えば米国特許第2,559,752号を参照されたい。ペルフルオロアルカン酸の塩、特にペルフルオロオクタン酸(以後PFOAと表示される)のアンモニウム塩および/またはアルカリ金属塩は、産業的には非常に多く使用されている。他のアニオン性(ペル)フッ素化界面活性剤もまた使用され、例えば米国特許第3,271,341号、米国特許第4,380,618号、米国特許第4,864,006号、米国特許第5,789,508号を参照されたい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PFOAは、テロゲンではなく、従って高分子量を有するフッ素化ポリマーの分散液を得ることができ、また長時間安定な分散液を得ることができるから、乳化重合において、工業的に最も利用される界面活性剤である。コーティングあるいは繊維、特にガラス繊維の含浸としてのフルオロポリマー分散液の用途において、前記フッ素化界面活性剤は、例えば洗浄廃水を通して、あるいは乾燥および/または焼成工程中に大気中における分散で、環境に到達できることもまた知られている。
【0007】
しかしながら、前記界面活性剤のいくつかは、ヒトの体内からの低い生物的排出速度で特徴付けられるので、環境に対して危険として分類されている。例えばPFOAは、ヒトにおいて長い残留時間を有し、環境にとって極めて危険な界面活性剤に属すると思われている。したがって、そのため、実質的にフッ素化アニオン性界面活性剤がない、特にPFOAがないフルオロポリマー分散液の、ユーザーからの要求がある。
【0008】
フルオロポリマー分散液は、分散液100重量部に対して、20%〜35重量%の間のフッ素化ポリマーの濃度を用いる乳化重合方法から得られる。
【0009】
重合工程から得られるフルオロポリマー分散液は、75重量%に至るまで濃縮されたフルオロポリマー分散液を得るために、後処理の付され得る。その濃縮方法は、例えば米国特許第3,037,953号、米国特許第3,704,272号および米国特許第3,301,807号に開示されているように、例えばデカンテーション法により行なわれ得る。
【0010】
フルオロポリマー分散液のもう一つの濃縮方法は、いわゆる限外ろ過法であり、例えば米国特許第4,369,266号および米国特許第6,136,893号に開示されている。米国特許第4,369,266号には、限外ろ過法の変法が開示されており、実質的にフッ素化アニオン性界面活性剤がない、例えばPFOAがない水性フルオロポリマー分散液を得ることを可能にする。
【0011】
この方法はフルオロポリマー分散液の透析に基づいており、浸透はアニオン性交換樹脂を用いることで、PFOAから精製される。この方法は、工業的に実施可能である。欠点は、特に、ポリマー重量に対して10ppmより低い、非常に低いPFOA含量のフルオロポリマー分散液を得るための透析方法が遅いことである。
【0012】
非イオン性界面活性剤で安定化された分散液のアニオン性交換樹脂との直接接触により、実質的にPFOAがないポリマー性分散液を得るための方法も公知である。例えば米国特許第3,536,643号、欧州特許第1,155,055号、国際特許公開第03/051988号、米国特許公開第2003/0220442号を参照されたい。
【0013】
米国特許第6,794,550号には、1〜3の間のpHを有する分散液の蒸留によって、実質的にPFOAがない分散液を得るための方法が記載されている。この方法は、分散液の強い不安定性および凝塊形成の高い可能性を包含する欠点を持っている。その上、工業的方法の操作の間に問題を生じる、著しい泡の量が形成されるという欠点がある。
【0014】
エマルジョンまたはマイクロエマルジョン重合方法によって得られるフルオロポリマー分散液は、一般に、以下の特徴:
− 10nm〜400nm、好ましくは20nm〜300nmの粒径;
− 10%〜45重量%、好ましくは20%〜35%のフルオロポリマー濃度;
− ポリマー重量に対して800ppm〜200,000ppm、好ましくは1,200ppm〜6,000ppmの範囲にあるフッ素化アニオン性界面活性剤の量;
を有する。
【0015】
工業的観点から、乳化重合方法によって得ることができるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液は、典型的には180nm〜400nm、好ましくは200nm〜300nm、更により好ましくは220nm〜280nmの平均粒径を有する。フッ素化アニオン性界面活性剤の量は、ポリマー重量に対して約2,500ppm〜約5,000ppm、好ましくは3,000ppm〜4,000ppmである。
【0016】
例えばマイクロエマルジョン重合によって、10nm〜100nm、好ましくは20nm〜80nm、更に好ましくは30nm〜70nmの間の直径を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液を得る方法は、先行技術で公知である。例えば米国特許第6,297,334号を参照されたい。典型的に前記分散液は、ポリマー重量に対して約800ppm〜約200,000ppm、好ましくは1,200ppm〜40,000ppmの範囲でフッ素化アニオン性界面活性剤の量を含有する。
【0017】
工業的用途のため、前記分散液は、例えば非イオン性界面活性剤の存在下、加熱によって、または限外ろ過によって、フルオロポリマーの固形分含量75%に至るまで濃縮される。上記の文献を参照されたい。
【0018】
本出願人は、米国特許第3,536,643号、欧州特許第1,155,055号および国際出願第03/051988号に記載されるように、非イオン性界面活性剤、例えばトリトン(Triton、登録商標)X100およびジェナポール(Genapol、登録商標)X−080で安定化された分散液をアニオン系交換樹脂と直接接触させることにより実質的にPFOAを含まないポリマー分散液を得る方法を用いることにより、プラント、取り扱いおよびポンピングライン、ならびにプロセスが連続様式で行なわれる場合はイオン交換カラムにおいて泡の形成の問題があることを見出している。
【0019】
よって、イオン交換樹脂によりフルオロポリマー分散液からフッ素化アニオン性界面活性剤を実質的に除き、方法を行う間の泡の形成がない方法に対する必要性が感じられていた。
【課題を解決するための手段】
【0020】
実質的にフッ素化アニオン性界面活性剤がなく、凝固可能な、有用なフルオロポリマー分散液を入手できるための、切実な要求があった。
本発明者らによって、上述の技術的問題を解決する方法が見出された。
【発明の効果】
【0021】
本発明によるフルオロポリマー分散液は、実質的にフッ素化アニオン性界面活性剤がなく、表面のコーティング用、繊維の含浸用、キャストフィルム成形用およびポリマーまたは無機材料の添加用に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の目的は、 以下の工程:
a) フルオロポリマー分散液への、1以上の非フッ素化アニオン性界面活性剤の添加;
b) 分散液とアニオン交換体との接触;
c) アニオン交換体からの分散液の分離と、実質的にフッ素化アニオン性界面活性剤がない分散液の回収;
を含む、フルオロポリマー分散液からの、フッ素化アニオン性界面活性剤を実質的に除去する方法である。
【0023】
好ましくは、工程a)の前に、フルオロポリマー分散液のpH値が、7〜12、好ましくは8〜10の範囲に調節される。使用される塩基は、強または弱塩基、有機または無機塩基であり得;無機塩基、更により好ましくは、アンモニア水溶液が好適に用いられる。
【0024】
本発明の方法において用いられるフルオロポリマー分散液は、エマルジョンあるいはマイクロエマルジョン重合方法によって得られる。フルオロポリマー濃度は、一般に10%〜45%、好ましくは20%〜35%の範囲である。
【0025】
本発明のアニオン性高分子電解質は、非イオン性界面活性剤、例えばトリトン(登録商標)X100およびジェナポール(登録商標)X−080に比べて、アニオン性交換樹脂を用いてPFOAを除去するためのフルオロポリマー分散液の処理の時間の間に、本発明のプロセスを行う容器中に泡を実質的に産生しないことを特徴とする。一方、上記の非イオン性界面活性剤が用いられる場合、かなりの量の泡が形成され、方法の管理をより困難にする。
【0026】
高分子電解質は、一般的に、水性溶液中での減少された界面活性を有することを特徴とする。この性質は、実際、界面活性剤とは異なり、高分子電解質に典型的である。後者、例えば非イオン性界面活性剤は、水性溶液の表面張力を実質的に減少させる。実際、高分子電解質は、コロイド分散系の凝集剤としてしばしば用いられる。界面活性剤は、そうではなく、通常、コロイド分散形を安定させるために用いられる。
【0027】
本発明の方法により得ることができる分散液の表面張力の値は、25℃において35dyne/cmより高く、好ましくは40dyne/cmより高く、さらにより好ましくは45dyne/cmより高い。
本発明の方法の工程a)において使用できるアニオン性高分子電解質は、ポリマー鎖に沿って分布し、鎖の末端基にも任意に存在するアニオン基を有し、直鎖状または分枝鎖状の構造を有するアニオン性ポリマーである。高分子電解質は、通常、150より高く、好ましくは200より高く、さらにより好ましくは250より高い、分子量/(高分子中に存在するアニオン性の基の数)として定義される当量を有する。通常、本発明の方法において使用できるアニオン性高分子電解質の当量は、50,000より低く、好ましくは10,000より低く、より好ましくは3,000より低く、さらにより好ましくは1500より低い。
【0028】
アニオン性高分子電解質の数平均分子量は500より高く、より好ましくは1000より高い。本発明によるアニオン性高分子電解質の分子量は、通常、1,000,000より低い。
本発明の方法において使用できるアニオン性高分子電解質は、分子内に、2以上、通常5以上のアニオン性官能基の数を有する。アニオン性高分子電解質の分子内に存在するアニオン性基は、好ましくはカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩から選択され、より好ましくはカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、さらにより好ましくはカルボン酸塩から選択される。
【0029】
通常、該アニオン性高分子電解質は、フッ素原子を含有しない。
好ましくは、本発明の方法において使用できる高分子電解質は、上記で規定する当量を与え得るアニオン性ホモポリマー、または上記のアニオン性基の数を有するアクリルモノマーもしくはビニルモノマーから選択されるモノマーのアニオン性ホモポリマーまたはコポリマーから選択される。
【0030】
アクリルコモノマーとしては、例えば(メタ)アクリルアミド;対応する塩の形の(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸の直鎖状または分枝鎖状のC1〜C4ヒドロキシエステル、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;C1〜C12アルキル(メタ)アクリレート(ここで、アルキルは直鎖状または分枝鎖状であり得る)、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ならびに次の一般式:
【0031】
【化1】

[式中、R1はHまたはCH3であり;
2およびR3は等しいかまたは異なって、Hまたは任意に分岐していてもよいC1〜C8アルキルであり;
Mはアルカリもしくはアルカリ土類金属またはアンモニウムであり;かつ
AはNH、OまたはNCH3である]
の化合物が挙げられる。
【0032】
ビニルコポリマーのうち、次のモノマーを挙げることができる。ビニル芳香族モノマー、例えばスチレンおよび芳香環の1以上の水素原子をヒドロキシルまたはメチルで置換するかおよび/またはビニルの水素原子の1以上をメチルで置換することにより得られるスチレンの誘導体、例えばα−メチルスチレン;C1〜C12アルキルビニルエーテル、例えばメチル−、エチル−、n−プロピル、イソプロピル−、n−ブチル、イソブチル−および2−エチルヘキシル−ビニルエーテル;C1〜C18脂肪族モノカルボン酸のビニルエステル、例えばビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニル−2−エチル−ヘキサノエート、ビニルステアレート。
【0033】
上記のホモポリマーまたはアクリルモノマーもしくはビニルモノマーから選択される1種以上のモノマーのコポリマーは、従来技術の公知の方法によるラジカルまたはイオン付加による水性懸濁重合により得ることができる。例えば、Kirk Othmer “Encyclopedia of Chemical Technology”、第3版、第18巻、第720〜744頁を参照。水性懸濁液中のラジカル重合の場合、ラジカル開始剤として、モノマー中に可溶性のものが好ましく用いられ、より好ましくは沈殿防止剤、界面活性剤が用いられる。
【0034】
ラジカル開始剤としては、例えば脂肪族および芳香族過酸化物、例えばt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、t−ブチルペルオキシジエチルアセテートまたは不安定なアゾ化合物、例えばアゾジイソブチロニトリルが用いられる。
モノマー混合物においては、連鎖移動剤も任意に用いることができる。メルカプタン化合物、例えばメルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンを例えば挙げることができる。
【0035】
重合温度は、開始剤の分解が起こる温度であり、通常、50〜120℃である。
沈殿防止剤については、EP457,356号を参照。
使用できる他のアニオン性高分子電解質は、ポリアミン酸、好ましくは芳香族ポリアミン酸またはポリアミドアミン酸(polyamidoamic acid)である。これらのポリマーの繰り返し単位の例は:
【0036】
− アミド-アミン酸:
【化2】

【0037】
− アミドイミド単位:
【化3】

[式中、RIIは二価のアリーレン基である]
である。例えばUS6,479,581号を参照。
これらのポリマーの製造については、米国特許第6,479,581号を参照。
使用できる他のアニオン性高分子電解質は、カルボキシアルキルセルロース(ここで、アルキルは1〜5、好ましくは1〜3の炭素原子を含む)であり、例えばカルボキシメチルセルロースを挙げることができる。
本発明の方法において使用できる高分子電解質は、例えば、クレイムル(Craymul、登録商標)8212(クレイバレー(Cray Valley))、トーロン(Torlon、登録商標)AI30、トーロン(登録商標)AI50(ソルヴェイアドバンストポリマーズ)、エルヴァサイト(Elvacite、登録商標)2669、エルヴァサイト(登録商標)2776(ルサイトインターナショナル(Lucite International))、ジョンクリル(Joncryl、登録商標)DFC 3025(ジョンソンポリマー)の商品名で知られるものである。
本発明の高分子電解質は、通常、水に可溶であり、アルコールのように水と混和可能な補助溶剤、例えばイソプロピルアルコール、ケトン、例えばN−メチルピロリドンを任意に加えることができる。
工程a)において、高分子電解質は、フルオロポリマー重量に対して、通常、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、さらにより好ましくは0.5〜3重量%の量で加えられる。高分子電解質の量は、通常、用いられる高分子電解質の種類に依存する。ルーチンの試験により、本発明の結果を得、かつ凝塊の現象を実質的に有さないのに充分な最少量を容易に決定することができる。
【0038】
本発明の方法の工程b)において使用できるアニオン性交換樹脂(アニオン性交換体)のうち、「Kirk -Othmer - Encyclopedia of Chemical Technology」第14巻、第737〜783頁、J. Wiley & Sons、1995、に記載のアニオン性交換樹脂が挙げられる。好ましいアニオン性交換樹脂のうち、第三級または第四級アンモニウム基を含有する樹脂が挙げられる。好ましい市販の樹脂の中では、アンバージェット(Amberjet、登録商標)4400 OH(ローム&ハース)およびダウエックス(Dowex、登録商標)MSA1−C(ダウ)が挙げられる。本発明の方法において使用されるイオン交換樹脂は、強塩基性、中塩基性、弱塩基性型であり得る。好ましくは、強塩基性樹脂が用いられる。
【0039】
工程b)は連続的または非連続的方法、好ましくは非連続的方法で行なわれ得る。例えば工程b)は、約300〜400μmのサイズを有する顆粒の形成下に、アニオン交換体の添加により、遂行され得る。一般に、添加される量は、分散液重量に対して、1%〜10重量%のオーダーである。
【0040】
非連続的方法において、本発明の界面活性剤を含むフルオロポリマー分散液とイオン交換樹脂とで形成された混合物は、例えばタンクの中で、例えば5ppmより低い所望の値に至るまで、フッ素化界面活性剤を取り除くのに充分な時間の間撹拌され、次いで、例えばろ過法により、樹脂からフルオロポリマー分散液が分離される。
【0041】
ホン発明の方法のもう一つの態様は、工程b)のイオン交換樹脂で充填したカラムに、フルオロポリマー分散液を通過させることである。この態様においては、連続的方法が好ましく用いられる。
【0042】
連続的方法において、フッ素化界面活性剤が除去されるべきフルオロポリマー分散液は、イオン交換樹脂で充填されたカラム通すか、または連続するより多くのカラムを通して供給される。この方法は、所望のフッ素化界面活性剤の値になるまで、1回以上繰り返され得る。半連続的方法で操作することも可能であるが、そこでは、撹拌下にタンク内に供給される本発明のフルオロポリマーの分散液とイオン交換樹脂とで形成された混合物は、所望の値でのフッ素化界面活性剤を除去するのに充分な時間の間、撹拌下に維持される。次いで、フルオロポリマー分散液は、タンクから排出され、例えばろ過により、樹脂から同時に分離され、そして処理されるべき新しい分散液がタンクに添加される。
【0043】
工程b)において、ポリマー性分散液とアニオン性交換体の接触時間は、一般に24時間より短く、好ましくは8時間より短く、更により好ましくは4または2時間より短い。
【0044】
本発明の方法は、通常、5〜45℃の間に含まれる温度で行われる。上記のクラスの1種以上の電解質を用いることができる。
本発明の方法が、フルオロポリマー重合に用いられたフッ素化アニオン性界面活性剤が実質的にないフルオロポリマー分散液を得ることを可能にすることが、本出願人により驚くべきことにかつ予期せぬことに見出された。
さらに、生産性が高い。本発明の方法の利点は、方法の間に泡の形成がないことである。本発明の方法においては、驚くべきことに、凝塊の形成によるフルオロポリマーの損失が実質的にない。用いられた高分子電解質は、フルオロポリマー分散液中に実質的に残存する。
【0045】
本発明の方法を用いて得られる結果は、アニオン性界面活性剤は、アニオン性交換樹脂との接触の間に分散液から除去され、それ故に、分散液の凝固が得られると予期されていたから、驚くべきことであり、予期できないことである。
【0046】
上記のように、本発明の方法での、実質的にフッ素化アニオン性界面活性剤がない、特に酸または塩の形態のパーフルオロオクタノエートがない水性フルオロポリマー分散液が得られる。実質的にフッ素化界面活性剤がない水性フルオロポリマー分散液にとっては、フッ素化界面活性剤の含量が、フルオロポリマー重量に対して100ppmより低い、特に50ppmより低い、更にとりわけ5ppmより低いことを意味する。
【0047】
本発明の方法において使用できるフルオロポリマー分散液を得るための重合方法は、エマルジョンまたはマイクロエマルジョン重合方法である。
そのエマルジョン重合方法は、以下の特許:米国特許第2,559,752号、米国特許第4,380,618号、米国特許第5,789,508号、米国特許第6,479,591号、米国特許第6,576,703号、および米国公開特許第2003/01534674号
に記載されている。
【0048】
マイクロエマルジョン重合方法は、本出願人の名前で以下の:米国特許第4,864,006号および米国特許第6,297,334号、に記載されている。マイクロエマルジョン重合方法の中で使用されるマイクロエマルジョンは、米国特許第4,864,006号および米国特許第4,990,283号に記載されている。
【0049】
本発明の方法において使用される分散液フルオロポリマー類は、例えば:
− テトラフルオロエチレン(TFE)ホモポリマー類、および、エチレンタイプの少なくとも1つの不飽和を有するモノマーとのTFEコポリマー類;
− PFA、MFA、FEPおよびETFEのようなTFEに基づく熱加工可能なフルオロポリマー類(溶融状態から)
− VDFを基本とするホモポリマー類およびコポリマー類;
− CTFEを基本とするホモポリマー類およびコポリマー類、例えばPCTFEおよびE/CTFEコポリマー;
【0050】
− VDFを基本とするフルオロエラストマー類:
−任意にエチレンおよびプロピレンのような水素化オレフィン類を含有しても良い;ペルフルオロビニルエーテル類および/またはペルフルオロアルコキシアルキルビニルエーテル類から選択される、任意にTFEおよび/またはビニルエーテル類を含有してもよいVDF/HFP;
【0051】
− TFEを基本とする(ペル)フルオロエラストマー類:
− ペルフルオロアルキルビニルエーテル類および/またはペルフルオロアルコキシアルキルビニルエーテル類から選択される、ビニルエーテルとのTFEコポリマー類;特に、TFE/PMVE、TFE/PEVE、TFE/PPVE;
− 水素化オレフィン類、好ましくはエチレンおよび/またはプロピレンとの、TFEコポリマー類;
【0052】
− 5〜7原子を有するジオキソール環を含む、TFEおよび/またはVDF非晶性および/または結晶性フルオロポリマー類、特に(ペル)フルオロジオキソール類、または環化によりジオキソール環を生じるジエン性モノマー類との共重合のより得られるもの
である。
【0053】
エチレンタイプの少なくとも1つの不飽和を有するモノマー類とのテトラフルオロエチレン(TFE)コポリマー類は、水素化およびフッ素化タイプのコモノマー類を含む。このコモノマー量は、非熱加工性コポリマー類を得るためには、好ましくは3重量%より低く、好ましくは1重量%より低い(いわゆる改質PTFE)。
【0054】
水素化コモノマー類、すなわち、フッ素を含有しないコノモマー類のうち、エチレン、プロピレン、アクリルモノマー類、例えばメチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチレンアクリレート、スチレンモノマー類、例えばスチレンが挙げられる。
【0055】
フッ素化コモノマーのうち:
− ヘキサフルオロプロペン(HFP)のような、C3−C8ペルフルオロオレフィン類;
− ビニルフルオライド(VF)、ビニリデンフルオライド(VDF)、トリフルオロエチレン、CH2=CH−Rf0ペルフルオロアルキルエチレン(ここで、Rf0はC1−C6ペルフルオロアルキルである)のような、C2−C8水素化ペルフルオロオレフィン類;
− クロロトチフルオロエチレン(CTFE)のような、C2−C6塩化-および/または臭化-および/またはヨウ化-フルオロオレフィン類;
− CF2=CFORf0(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル類(PAVE)(ここで、Rf0はC1−C6(ペル)フルオロアルキル、例えばCF3、C25、C37である);
− CF2=CFOX0(ペル)フルオロオキシアルキルビニルエーテル類(ここで、X0はC1−C12アルキル、またはC1−C12オキシアルキル、または1以上のエーテル基を有するC1−C12(ペル)フルオロオキシアルキル、例えばペルフルオロ−2−プロポキシプロピルである);
− フルオロジオキソール類、好ましくはペルフルオロジオキソール類
が挙げられ得る。
【0056】
本発明の方法で使用可能な、エマルジョンまたはマイクロエマルジョン重合により得ることができる分散液の好ましいフルオロポリマー類は、TFEコポリマー類またはTFEホモポリマー類である。本発明の方法で除去されるフッ素化アニオン性界面活性剤は、好ましくはPFOAである。
【0057】
出発する分散液は、単頂性または2頂性または多頂性であり得る。2頂性または多頂性分散液については、例えば米国特許第6,576,703号、米国特許第6,518,352号の本出願人名義の特許を参照されたい。
【0058】
上記のように、本発明の方法は、高い生産性と実質的にフルオロポリマーの損失がないことにより特徴付けられる。
本発明の方法で得られる、本質的にフッ素化アニオン性界面活性剤がないフルオロポリマー分散液は、良好な貯蔵安定性で特徴付けられ、通常のフルオロポリマー用途において用いられ得る。本発明の方法で得ることのできる本分散液は、そのままであるいは処方されて、有機および/または無機ポリマー類、金属またはセラミック類の表面のコーティング用;繊維、好ましくはガラス繊維の含浸用、キャストフィルムの製造用、ポリマーまたは無機物質用の添加剤用などに使用することもできる。
【0059】
本発明の方法によって得ることのできる分散液は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、両性界面活性剤と一緒に;有機もしくは無機化合物および/または例えば無機タイプの充填剤と一緒に;溶媒;揺変性剤;殺生物剤;樹脂、例えばアクリル、シリコン、ポリアミドイミド樹脂;ポリエチレングリコール、およびその他の当業者に公知の添加剤と一緒に処方され得る。
【0060】
本発明の方法で得ることのできる分散液は、例えば限外ろ過やクラウディング(clouding)方法による濃縮のような、従来の後処理方法に付され得る。米国特許第4,369,266号、米国特許第3,037,953号、米国特許第3,704,272号、米国特許第3,301,807号の特許を参照されたい。
【0061】
本発明の更なる目的は、本発明による非フッ素化アニオン性界面活性剤を含み、本発明の方法で得ることのでき、実質的にフッ素化アニオン性界面活性剤がないフルオロポリマー分散液である。これらの分散液は安定である。エトキシル化アルキルフェノール類およびエトキシル化アルコール類のような非イオン性界面活性剤は、たとえ必要がなくても任意に添加され得る。これらの分散液は、上記のように処方することができる。
【0062】
以下の実施例は、非制限的な目的で、本発明を説明する。
【実施例】
【0063】
実施例で記載されているパーセントは、別に示していなくても重量パーセント(%)である。
【0064】
表面張力測定
表面張力は、25℃において、Kruess K10張力計で、De NouyリングおよびHarkins-Jordan校正係数を用いて測定した。
PFOA測定
PFOAは、対応するメチルエステルに変換した後に、スプリット/スプリットレスインジェクター、キャピラリーカラムCP-SIL 5 CB (Chrompack、登録商標))およびフィードディテクターを備えた装置を用いて、ガスクロマトグラフィにより測定する。この方法の検出限界は、5ppmである。
【0065】
当量(EW)測定
分子量/(高分子電解質分子内に存在するアニオン性基の数)の比として定義される当量(EW)は、次の式を用いて酸価(AN)から算出した。
EW=(56/AN)×103
ここで、酸価はKOH(当量56)を用いる滴定により測定され、mgKOH/100gの高分子電解質とされる。
高分子電解質の分子量(MW)は、製造業者のプロダクトデータシートに報告されるものである。
【0066】
亀裂臨界厚さ測定
焼結フィルムの亀裂臨界厚さ(Critical Cracking thickness)は、水平面に対して45°の一定傾斜に保持されたアルミニウム板上への流延により、長さ18cmで0〜10μmの厚さ勾配を得るように塗布したフィルムへの光学顕微鏡(倍率:×100)により測定する。
室温で乾燥後、堆積物を400℃で10分間焼結した。フィルムの亀裂臨界厚さは、亀裂および表面の不具合が見出されないフィルムの最大厚さである。
【0067】
ガラス織物含浸試験
ガラス織物への含浸試験は、次の方法により行った。
− ガラス織物を処方中に1.2m/分のドラッグ速度で浸す。
− 含浸織物を、2つの絞りロールの間を通して過剰の処方を除く。
− 含浸し、絞ったガラス織物を120℃で乾燥させ、350℃で約30秒間焼結させる。
− 上記の工程を6回繰り返す。
【0068】
堆積したPTFEの量(g)を、焼結後の試料の重量と塗被していない試料織物の重量との違いを、ガラス織物の表面(m2)に対して算出して測定した。よって、見出されたPTFE堆積量は、グラム/(m2ガラス織物)として表される。
塗被されたガラス織物の表面は、割れの存在についても光学顕微鏡(倍率:×100)の下で調べた。
【0069】
実施例1
エマルジョン重合
100g/リットルの濃度のアンモニウム ペルフルオロオクタノエート水溶液11gと、注意深く脱気した脱塩水31リットルを、機械的撹拌器を備え、予め真空下に置かれた50リットルのオートクレーブ中に導入する。この反応器中に、52℃〜54℃の間の軟化点を有するパラフィン140gも予め導入しておいた。このオートクレーブを機械的撹拌下に、68℃の温度で、20バールに至るまでTFEで加圧した。この時点で、(NH4)228(APS)400mgとジスクシニック ペルオキシド(DSAP)2,000mgに相当する、APSとDSAPの溶液500mlを、オートクレーブの中に供給する。
【0070】
反応器の中の圧力が0.5バール下がったら、反応器内が20バールの一定圧力を保つようにコンプレッサーを用いてTFEの供給を開始する。その間、反応器の内部温度を、0.5℃/分の速度で78℃まで昇温する。反応の間、アンモニウム ペルフルオロオクタノエートの100g/リットルの水溶液50.6gをオートクレーブ内に供給する。90分後に、TFEの供給を中断し、15,800gのTFEが反応した時、反応器を通気して冷却した。排出されたラテックスは、30重量%に等しい固形分含有量を有し、pHは3.9に等しい。
レーザー光散乱(LLS)により測定されたポリマー一次粒子の平均直径は240nmに等しい。
POAF含有量は、ポリマーに対し3,900ppmである。
【0071】
実施例2−a
アクリル系高分子電解質(クレイムル(登録商標)8212−クレイバレー)の水性溶液の製造
アクリル系高分子電解質(クレイムル(登録商標)8212)の市販の40重量%の水性分散液(pH3.0〜4.0)を用いて、アンモニア水溶液を加え、水で希釈することにより透明で均質な溶液を製造する。
アクリル系高分子電解質の分子量(MW)は約100,000であり、40重量%の市販の水性分散液の当量は1,000であり、これは純粋な高分子電解質の当量450に相当する。該溶液のpHは約9である。
【0072】
実施例2−b
ポリアミドイミド系高分子電解質(トーロン(登録商標)AI−30−ソルヴェイ)の水性溶液の製造
分子量約3,000および当量350であるポリアミドイミド系高分子電解質(トーロン(登録商標)AI−30)の30重量%での市販の粉末から出発して、水およびトリエチルアミン水溶液の添加により、攪拌および40〜50℃での緩やかな加熱の下で、5重量%の透明で均質な溶液を製造する。該溶液のpHは約10である。
【0073】
実施例2−c
ポリアミドイミド系高分子電解質(トーロン(登録商標)AI−50−ソルヴェイ)の水性溶液の製造
分子量約3,000および当量370であるポリアミドイミド系高分子電解質(トーロン(登録商標)AI−50)の30重量%での市販の粉末から出発して、水およびトリエチルアミン水溶液の添加により、攪拌および40〜50℃での緩やかな加熱の下で、5重量%の透明で均質な溶液を製造する。該溶液のpHは約10である。
【0074】
実施例2−d(比較例)
ポリスチレンスルホネート−マレエート(スチレン/マレイン酸のモル比=1:1)の水溶液の製造
分子量約20,000および当量100である高分子電解質の粉末の形のナトリウム塩の市販の物質から出発して、攪拌および40〜50℃での緩やかな加熱の下で水を添加することにより5重量%の透明で均質な溶液を製造する。該溶液のpHは約7である。
【0075】
実施例2−e(比較例)
ポリスチレンスルホネート−マレエート(スチレン/マレイン酸のモル比=3:1)の水溶液の製造
分子量約20,000および当量1030である高分子電解質の粉末の形のナトリウム塩の市販の物質から出発して、攪拌および40〜50℃での緩やかな加熱の下で水を添加することにより5重量%の透明で均質な溶液を製造する。該溶液のpHは約7である。
【0076】
実施例2−f(比較例)
アクリル系高分子電解質(アクマー(Acumer、登録商標)2200、ローム&ハース)の水溶液の製造
分子量約2,200および当量80であるアクリル系高分子電解質(アクマー(登録商標)2200)を55重量%でpH3.5〜4.5を有する市販の水溶液から出発して、水およびNaOH水溶液を加えることにより攪拌下に製造した。該溶液のpHは約7である。
【0077】
実施例2−g(比較例)
アクリル系高分子電解質(アクマー(登録商標)9210、ローム&ハース)の水溶液の製造
高分子電解質(分子量約2,000および当量72)の57重量%の溶液の形のナトリウム塩の市販の物質から出発して、水およびNaOH水溶液を加えることにより攪拌下に製造した。該溶液のpHは約7である。
【0078】
実施例2−h(比較例)
アクリル系高分子電解質(アクマー(登録商標)9300、ローム&ハース)の水溶液の製造
高分子電解質(分子量約4,500および当量72)の45重量%の溶液の形のナトリウム塩の市販の物質から出発して、水およびNaOH水溶液を加えることにより攪拌下に製造した。該溶液のpHは約7である。
【0079】
実施例3(比較例)
本発明の方法による樹脂でのポリマー性分散液の処置
実施例1により得られ、アンモニア水でpHを約9に調節した分散液500gに、試料重量に対して5重量%のイオン交換樹脂アンバージェット(登録商標)4400 OHを添加する。この混合物を、二枚羽根の機械的撹拌機での穏やかな撹拌下に置く。処置の開始1時間後には既に、分散液に凝固が見られた。
【0080】
実施例4
実施例1により得られ、アンモニア水でpHを約9に調節した分散液500gから、そして実施例2−aにより得られたクレイムル(登録商標)8212の水溶液から出発して、PTFE重量に対してクレイムル(登録商標)8212を1%含有する分散液試料をビーカー中で撹拌して調製する。こうして得られた試料中のPTFE含有量は、28.3重量%に等しい。この試料に、試料重量に対して5重量%のイオン交換樹脂アンバージェット(登録商標)4400 OHを添加する。この混合物を、二枚羽根の機械的撹拌機を用いて8時間穏やかな撹拌下に保持する。最後に、フルオロポリマー凝固がないと思われる分散液を、150μmメッシュのネットでのろ過により、樹脂から分離する。得られた分散液のPTFE含有量は28.3重量%に等しい。PTFE重量に対するPFOA含有量は、5ppmより低い。
【0081】
実施例5
実施例1により得られ、アンモニア水でpHを約9に調節した分散液500gから、そして実施例2−aにより得られたクレイムル(登録商標)8212の水溶液から出発して、PTFE重量に対してクレイムル(登録商標)8212を0.5%含有する分散液試料をビーカー中で撹拌して調製する。こうして得られた試料中のPTFE含有量は、29.1重量%に等しい。この試料に、試料重量に対して5重量%のイオン交換樹脂アンバージェット(登録商標)4400 OHを添加する。この混合物を、二枚羽根の機械的撹拌機を用いて4時間穏やかな撹拌下に保持する。最後に、フルオロポリマー凝固がない分散液を、150μmメッシュのネットでのろ過により、樹脂から分離する。試料中には泡がないことが判った。得られた分散液のPTFE含有量は29.1重量%に等しい。PTFE重量に対するPFOA含有量は、5ppmより低い。
【0082】
実施例6
実施例1により得られ、アンモニア水でpHを約9に調節した分散液40kgから、そして実施例2−aにより得られたクレイムル(登録商標)8212の水溶液から出発して、PTFE重量に対してクレイムル(登録商標)8212を0.25%含有する分散液試料をビーカー中で撹拌して調製する。こうして得られた試料中のPTFE含有量は、29.6重量%に等しい。この試料に、試料重量に対して5重量%のイオン交換樹脂アンバージェット(登録商標)4400 OHを添加する。この混合物を、二枚羽根の機械的撹拌機を用いて8時間穏やかな撹拌下に保持する。最後に、フルオロポリマー凝固がない分散液を、150μmメッシュのネットでのろ過により、樹脂から分離する。試料中には泡がないことが判った。得られた分散液のPTFE含有量は29.6重量%に等しい。PTFE重量に対するPFOA含有量は、5ppmより低い。
得られた分散液の表面張力は、62dyne/cmである。
【0083】
実施例6a
本発明の方法により得られたポリマー分散液の限外濾過による濃縮
実施例6の分散液30Lに、25重量%のテルジトール(Tergitol、登録商標)TMN−100X 1800gと、次いで5重量%のシュウ酸溶液200gを添加する。分散液を、61重量%のPTFEの濃度まで、200,000ダルトンの分子量カットを有するチューブ状膜を用いて限外濾過装置で濃縮する。
このようにして得られた分散液は、分散液に対して2.8重量%のテルジトール(登録商標)TMN−100Xを含有する。PTFEに対するPFOA含量は、5ppmより低い。
【0084】
実施例6b
本発明の方法により得られたポリマー分散液の曇りによる濃縮
底に排出バルブを備える3Lの温度制御可能な反応器中に、実施例6の分散液1,800gを導入し、ここに25重量%のトリトン(登録商標)X−100および10重量%の重硫酸アンモニウム溶液9gを加える。混合物を攪拌下に67℃の温度に加熱する。この温度に一旦到達したら、攪拌を停止し、混合物を同温度で1時間、デカントさせる。反応器の下部にポリマーの濃縮された相と、上部に界面活性剤トリトン(登録商標)X−100に富み、PTFEを実質的に含有しない相との分離が観察される。最後に、混合物を室温に冷却させ、反応器の下部から濃縮された分散液を排出し、これは66重量%のポリマー含量と2.8重量%に等しいトリトン(登録商標)X−100含量を有する。PTFEに対するPFOA含量は、5ppmより低い。
【0085】
実施例7
アンモニア水溶液でpHを約9に調整した実施例1に従って得られた分散液500gと、実施例2−bに従って得られたトーロン(登録商標)AI−30の水溶液とから出発して、PTFE重量に対して5%のトーロン(登録商標)AI−30を含有する分散液試料を、ビーカー中で混合することにより製造する。このようにして得られた試料のPTFE含量は、23.1重量%に等しい。この試料に、試料重量に対して5重量%のイオン交換樹脂アンバージェット(登録商標)4400OHを加える。混合物を、2枚羽機械的攪拌機を用いて緩やかな攪拌下に8時間維持する。最後に、フルオロポリマーの凝塊がない分散液を、150μmメッシュネットを通して濾過することにより樹脂から分離する。試料中に泡の存在は確認されなかった。PTFE重量に対するPFOA含量は、5ppmより低い。
【0086】
実施例8
アンモニア水溶液でpHを約9に調整した実施例1に従って得られた分散液500gと、実施例2−cに従って得られたトーロン(登録商標)AI−50の水溶液とから出発して、PTFE重量に対して5%のトーロン(登録商標)AI−50を含有する分散液試料を、ビーカー中で混合することにより製造する。このようにして得られた試料のPTFE含量は、23.1重量%に等しい。この試料に、試料重量に対して5重量%のイオン交換樹脂アンバージェット(登録商標)4400OHを加える。混合物を、2枚羽機械的攪拌機を用いて緩やかな攪拌下に8時間維持する。最後に、フルオロポリマーの凝塊がない分散液を、150μmメッシュネットを通して濾過することにより樹脂から分離する。試料中に泡の存在は確認されなかった。PTFE重量に対するPFOA含量は、5ppmより低い。
【0087】
実施例9
アンモニア水溶液でpHを約9に調整した実施例1に従って得られた分散液500gと、実施例2−cに従って得られたトーロン(登録商標)AI−50の水溶液とから出発して、PTFE重量に対して2%のトーロン(登録商標)AI−50を含有する分散液試料を、ビーカー中で混合することにより製造する。このようにして得られた試料のPTFE含量は、26.8重量%に等しい。この試料に、試料重量に対して5重量%のイオン交換樹脂アンバージェット(登録商標)4400OHを加える。混合物を、2枚羽機械的攪拌機を用いて緩やかな攪拌下に2時間維持する。最後に、フルオロポリマーの凝塊がない分散液を、150μmメッシュネットを通して濾過することにより樹脂から分離する。試料中に泡の存在は確認されなかった。PTFE重量に対するPFOA含量は、5ppmより低い。
得られた分散液の表面張力は64dyne/cmである。
【0088】
実施例10(比較例)
当量100の高分子電解質を用いるポリマー分散液の処理
アンモニア水溶液でpHを約9に調整した実施例1に従って得られた分散液500gと、実施例2−dに従って得られたナトリウム−ポリスチレンスルホネート−マレエート(スチレン/マレイン酸のモル比=1:1)の水溶液とから出発して、PTFE重量に対して1%のナトリウム−ポリスチレンスルホネート−マレエートを含有する分散液試料を、ビーカー中で混合することにより製造する。このようにして得られた試料のPTFE含量は、28.3重量%に等しい。この試料に、試料重量に対して5重量%のイオン交換樹脂アンバージェット(登録商標)4400OHを加える。混合物を、2枚羽機械的攪拌機を用いて緩やかな攪拌下におく。処理の開始から1時間後に、分散液は凝固したとみなされる。
【0089】
実施例11(比較例)
アンモニア水溶液でpHを約9に調整した実施例1に従って得られた分散液500gと、実施例2−dに従って得られたナトリウム−ポリスチレンスルホネート−マレエート(スチレン/マレイン酸のモル比=1:1)の水溶液とから出発して、PTFE重量に対して5%のナトリウム−ポリスチレンスルホネート−マレエートを含有する分散液試料を、ビーカー中で混合することにより製造する。このようにして得られた試料のPTFE含量は、23.1重量%に等しい。この試料に、試料重量に対して5重量%のイオン交換樹脂アンバージェット(登録商標)4400OHを加える。混合物を、2枚羽機械的攪拌機を用いて緩やかな攪拌下におく。処理の開始から1時間後に、分散液は凝固したとみなされる。
【0090】
実施例12(比較例)
当量130の高分子電解質を用いるポリマー分散液の処理
アンモニア水溶液でpHを約9に調整した実施例1に従って得られた分散液500gと、実施例2−eに従って得られたナトリウム−ポリスチレンスルホネート−マレエート(スチレン/マレイン酸のモル比=3:1)の水溶液とから出発して、PTFE重量に対して1%のナトリウム−ポリスチレンスルホネート−マレエートを含有する分散液試料を、ビーカー中で混合することにより製造する。このようにして得られた試料のPTFE含量は、28.3重量%に等しい。この試料に、試料重量に対して5重量%のイオン交換樹脂アンバージェット(登録商標)4400OHを加える。混合物を、2枚羽機械的攪拌機を用いて緩やかな攪拌下におく。処理の開始から1時間後に、分散液は凝固したとみなされる。
【0091】
実施例13(比較例)
アンモニア水溶液でpHを約9に調整した実施例1に従って得られた分散液500gと、実施例2−eに従って得られたナトリウム−ポリスチレンスルホネート−マレエート(スチレン/マレイン酸のモル比=3:1)の水溶液とから出発して、PTFE重量に対して5%のナトリウム−ポリスチレンスルホネート−マレエートを含有する分散液試料を、ビーカー中で混合することにより製造する。このようにして得られた試料のPTFE含量は、23.1重量%に等しい。この試料に、試料重量に対して5重量%のイオン交換樹脂アンバージェット(登録商標)4400OHを加える。混合物を、2枚羽機械的攪拌機を用いて緩やかな攪拌下におく。処理の開始から1時間後に、分散液は凝固したとみなされる。
【0092】
実施例14(比較例)
当量80の高分子電解質を用いるポリマー分散液の処理
アンモニア水溶液でpHを約9に調整した実施例1に従って得られた分散液500gと、実施例2−fに従って得られたアクマー(登録商標)2200の水溶液とから出発して、PTFE重量に対して1%のアクマー(登録商標)2200を含有する分散液試料を、ビーカー中で混合することにより製造する。このようにして得られた試料のPTFE含量は、28.3重量%に等しい。この試料に、試料重量に対して5重量%のイオン交換樹脂アンバージェット(登録商標)4400OHを加える。混合物を、2枚羽機械的攪拌機を用いて緩やかな攪拌下におく。処理の開始から1時間後に、分散液は凝固したとみなされる。
【0093】
実施例15(比較例)
実施例14(比較例)を、アンモニア水溶液でpHを約9に調整した実施例1に従って得られた分散液500gにPTFE重量に対して5重量%のアクマー(登録商標)2200を加えることにより繰り返す。処理の開始から1時間後に、分散液は凝固したとみなされる。
【0094】
実施例16(比較例)
当量72の高分子電解質を用いるポリマー分散液の処理
アンモニア水溶液でpHを約9に調整した実施例1に従って得られた分散液500gと、実施例2−gに従って得られたアクマー(登録商標)9210の水溶液とから出発して、PTFE重量に対して1%のアクマー(登録商標)9210を含有する分散液試料を、ビーカー中で混合することにより製造する。このようにして得られた試料のPTFE含量は、28.3重量%に等しい。この試料に、試料重量に対して5重量%のイオン交換樹脂アンバージェット(登録商標)4400OHを加える。混合物を、2枚羽機械的攪拌機を用いて緩やかな攪拌下におく。処理の開始から1時間後に、分散液は凝固したとみなされる。
【0095】
実施例17(比較例)
実施例16(比較例)を、アンモニア水溶液でpHを約9に調整した実施例1に従って得られた分散液500gにPTFE重量に対して5重量%のアクマー(登録商標)9210を加えることにより繰り返す。処理の開始から1時間後に、分散液は凝固したとみなされる。
【0096】
実施例18(比較例)
当量72の高分子電解質を用いるポリマー分散液の処理
アンモニア水溶液でpHを約9に調整した実施例1に従って得られた分散液500gと、実施例2−hに従って得られたアクマー(登録商標)9300の水溶液とから出発して、PTFE重量に対して1%のアクマー(登録商標)9300を含有する分散液試料を、ビーカー中で混合することにより製造する。このようにして得られた試料のPTFE含量は、28.3重量%に等しい。この試料に、試料重量に対して5重量%のイオン交換樹脂アンバージェット(登録商標)4400OHを加える。混合物を、2枚羽機械的攪拌機を用いて緩やかな攪拌下におく。処理の開始から1時間後に、分散液は凝固したとみなされる。
【0097】
実施例19(比較例)
実施例18(比較例)を、アンモニア水溶液でpHを約9に調整した実施例1に従って得られた分散液500gにPTFE重量に対して5重量%のアクマー(登録商標)9300を加えることにより繰り返す。処理の開始から1時間後に、分散液は凝固したとみなされる。
【0098】
実施例20(比較例)
本発明の方法における高分子電解質に代えて非イオン性界面活性剤の使用
実施例9を、トーロン(登録商標)AI−50に代えてトリトン(登録商標)X−100を同じ量(PTFEに対して2重量%)で用いて繰り返す。PTFE重量に対するPFOA含量は、5ppmより低い。しかし、分散液の表面に、実質的な量の持続性の泡が確認される。
得られた分散液の表面張力は、33dyne/cmである。
【0099】
実施例21
アクリル系高分子電解質(ジョンクリル(登録商標)DFC 3025(ジョンソンポリマー))の水溶液の製造
分子量約5,800および当量260であるアクリル系高分子電解質(ジョンクリル(登録商標)DFC 3025)の34重量%のpH8.5の市販の水溶液から出発して、水およびアンモニア水溶液の添加により、攪拌下に5重量%の透明で均質な溶液を製造する。該溶液のpHは約9である。
【0100】
実施例22
本発明の方法による樹脂を用いたポリマー分散液の処理
実施例1に従って得られた分散液500gから出発して、実施例21のアクリルポリマー水溶液を用いて実施例6を繰り返す。最後に、凝塊を含まない分散液を、150μmメッシュネットを通して濾過することにより樹脂から分離する。試料中に泡の存在は確認されない。得られた分散液のPTFE含量は、29.6重量%に等しい。最後に、PTFE重量に対するPFOA含量は、5ppmより低い。
【0101】
実施例23
アクリル系高分子電解質(エルヴァサイト(登録商標)2669(ルサイトインターナショナル))の水溶液の製造
分子量約58,000および当量450であるアクリル系高分子電解質(エルヴァサイト(登録商標)2669)の市販の試料から出発して、水およびアンモニア水溶液の添加により、ポリマーを攪拌下に溶解して5重量%の透明で均質なポリマー溶液を製造する。最終pHは約10.3である。
【0102】
実施例24
本発明の方法による樹脂を用いたポリマー分散液の処理
実施例1に従って得られた分散液500gから出発して、実施例23のアクリルポリマー水溶液を用いて実施例6を繰り返す。最後に、凝塊を含まない分散液を、150μmメッシュネットを通して濾過することにより樹脂から分離する。試料中に泡の存在は確認されない。得られた分散液のPTFE含量は、29.6重量%に等しい。最後に、PTFE重量に対するPFOA含量は、5ppmより低い。
【0103】
実施例25
アクリル系高分子電解質(エルヴァサイト(登録商標)2776(ルサイトインターナショナル))の水溶液の製造
分子量約16,000および当量700であるアクリル系高分子電解質(エルヴァサイト(登録商標)2776)の市販の試料から出発して、水およびアンモニア水溶液の添加により、ポリマーを攪拌下に溶解して2.5重量%の透明で均質なポリマー溶液を製造する。最終pHは約10.3である。
【0104】
実施例26
本発明の方法による樹脂を用いたポリマー分散液の処理
実施例1に従って得られた分散液500gから出発して、実施例25のアクリルポリマー水溶液を用いて実施例6を繰り返す。最後に、凝塊を含まない分散液を、150μmメッシュネットを通して濾過することにより樹脂から分離する。試料中に泡の存在は確認されない。得られた分散液のPTFE含量は、29.6重量%に等しい。最後に、PTFE重量に対するPFOA含量は、5ppmより低い。
【0105】
実施例27
本発明の方法による樹脂を用いたポリマー分散液の処理
アンモニア水溶液でpHを約9に調整した実施例1に従って得られた分散液500gと、実施例21に従って得られたジョンクリル(登録商標)DFC 3025の水溶液とから出発して、PTFE重量に対して1%のジョンクリル(登録商標)DFC 3025を含有する分散液試料を、ビーカー中で混合することにより製造する。このようにして得られた試料のPTFE含量は、29.8重量%に等しい。この試料に、試料重量に対して5重量%のイオン交換樹脂アンバージェット(登録商標)4400OHを加える。混合物を、2枚羽機械的攪拌機を用いて緩やかな攪拌下に4時間維持する。最後に、フルオロポリマーの凝塊がない分散液を、150μmメッシュネットを通して濾過することにより樹脂から分離する。試料中に泡の存在は確認されなかった。得られた分散液のPTFE含量は、29.8重量%に等しい。PTFE重量に対するPFOA含量は、5ppmより低い。
【0106】
実施例28
本発明の方法による樹脂を用いた処理および工業的スケールでのポリマー分散液の濃縮
ポリマー33重量%の工業用PTFE分散液7600kgを、1羽根車2枚羽根の攪拌機を備える20m3のリザーバーに投入する。分散液のpHを、アンモニア水溶液で約9に調整する。クレイムル(登録商標)8212の10.2%溶液61Kgを加え、PTFE重量に対する高分子電解質の量を約0.25重量%にする。このようにして得られた分散液のPTFE含量は、32.7重量%に等しい。分散液に対して5重量%に相当するイオン交換アンバージェット(登録商標)4400OH 380Kgをリザーバーに加え、混合物を攪拌下に6時間維持する。泡の形成は確認されなかった。最後に、分散液を、200μmメッシュネットを通して濾過することにより樹脂から分離し、その後、以下に記載のようにして濃縮する。
【0107】
処理された分散液3600Kgを、温度制御可能な反応器に投入し、25重量%のテルジトール(登録商標)TMN−100X 720Kgおよび10重量%重硫酸アンモニウム水溶液18Kgを加える。混合物を攪拌下に69℃の温度に加熱する。69℃の温度で攪拌を停止し、混合物を69℃で1時間、デカントさせる。ポリマーに富む下相と、界面活性剤テルジトール(登録商標)TMN−100Xに富み、PTFEを実質的に含有しない上相との分離が観察される。室温に冷却後、ポリマー濃縮相を反応器の下部から排出する。該分散液は、68.5重量%のポリマー含量と2.2重量%のテルジトール(登録商標)TMN−100X含量を有した。
PTFEに対するPFOA含量は、5ppmより低い。
【0108】
実施例29
適用可能な例:分散液のアルミニウム板への流延およびガラス織物の含浸
実施例28で得られた濃縮PTFE分散液を、乾燥ポリマー含量を60重量%およびPTFEに対するテルジトール(登録商標)TMN−100Xの濃度を5重量%に調整することにより処方する。
アルミニウム板への流延は、上記の「分析方法」の部分に記載されたようにして行った。焼結されたフィルムは、全勾配の厚さにわたっていずれの割れも示さなかった(亀裂臨界厚さ>10μm)。
上記の処方は、上記のような含浸試験にも用いた。含浸試験の最後に、堆積したPTFEのグラム/塗被されたガラス織物のm2は、210であることがわかった。コーティングは、フィルムの形成または浸潤の問題による割れ、フィッシュアイまたはその他の不具合がないことがわかった。さらに、コーティングは光沢があり、白色であった。含浸されたガラス織物の特徴は、表1にまとめる。
【0109】
実施例30(比較例)
トリトン(登録商標)X−100を用いる濃縮PTFE分散液の製造
実施例1で得られたPTFE分散液を、PFOA含量を減少させるいずれの処理も行わずに、実施例6bに記載の曇りの手順に従って濃縮した。濃縮されたPTFE分散液を、乾燥ポリマー含量を60重量%およびPTFEに対するトリトン(登録商標)X−100の濃度を5重量%に調整することにより処方する。
PFOA含量は、400ppmであった。
このようにして製造された濃縮分散液を用いて、ガラス織物含浸試験を繰り返した。堆積したPTFEのグラム/(塗被されたガラス織物のm2)は、150であった。コーティングは黄色に着色していた。塗被された織物の表面を、「分析方法」に記載されたようにして顕微鏡で調べた。わずかに割れの存在が認められた。
【0110】
実施例31(比較例)
テルジトール(登録商標)TMN−100Xを用いる濃縮PTFE分散液の製造
実施例1で得られたPTFE分散液を、界面活性剤トリトン(登録商標)X−100の代わりにテルジトール(登録商標)TMN−100Xを用いて実施例30に記載の曇りの手順に従って濃縮した。
このようにして製造された濃縮分散液を用いて、ガラス織物含浸試験を繰り返した。堆積したPTFEのグラム/(塗被されたガラス織物のm2)は、154であった。コーティングは白色であった。塗被された織物の表面には、割れが見られなかった。
【0111】
実施例32(比較例)
実施例31に従って処方されたPTFE分散液に、ガラス織物に堆積されるPTFEの量を増加させるために、PTFEに対して0.2重量%のポリマー性増粘剤フメキソール(Fumexol、登録商標)ND(チバガイギースペシャリティ)(tert-ブチルホスフェート中にエトキシル化されたアルコール)の水溶液をさらに加えた。この技法は、当該技術において公知である。
このようにして製造された濃縮分散液を用いて、ガラス織物含浸試験を繰り返した。堆積したPTFEのグラム/(塗被されたガラス織物のm2)は、200であった。コーティングは黄色であり、「分析方法」に記載されたようにして塗被された織物の表面を光学顕微鏡で調べると、多くの割れが確認された。
【0112】
実施例33
適用可能な例:金属コーティング
実施例28で得られた処方に、以下の成分(湿潤ベースで)を加えることによりアクリル処方を製造した。
− 5重量%のアクリル樹脂ポリマーロドパス(Rhodopas、登録商標)D906;
− 0.8重量%のラウリル酸のナトリウム塩;
− 2重量%のキシレン;
− 2重量%のブチルセロソルブ。
上記の処方を、ポリアミノイミド樹脂ベースのブラックプライマーで予め処理したアルミニウム板に噴霧して、約30μmの厚さを得た。室温で乾燥後、堆積したフィルムを400℃で10分間焼結させた。このようにして得られた焼結フィルムは、いずれの割れも示さなかった(亀裂臨界厚さ>30μm)。
【0113】
表1の結果に対するコメント
表は、ガラス織物に塗布された本発明の分散液が、非イオン性界面活性剤を含有するが高分子電解質を含有しない比較例のPTFE分散液を用いて得られたものに比べて、高い品質のコーティングを与え、特にコーティングが黄色の着色を示さず、割れを有さず、より多いPTFEが堆積された(g−PTFE/(ガラス織物m2))ことを示す。
【0114】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明によれば、実質的にフッ素化アニオン性界面活性剤がないフルオロポリマー分散液は、表面のコーティング用、繊維の含浸用、キャストフィルム成形用およびポリマーまたは無機材料の添加用に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a) フルオロポリマー分散液への、アニオン性高分子電解質の添加;
b) 分散液とアニオン性高分子電解質との接触;
c) アニオン交換体からの分散液の分離と、実質的にフッ素化アニオン性界面活性剤がない分散液の回収;
を含む、フルオロポリマー分散液から、フッ素化アニオン性界面活性剤を実質的に除去する方法。
【請求項2】
工程a)の前に、フルオロポリマー分散液のpH値が、7〜12、好ましくは8〜10の範囲に調節される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)で使用可能なアニオン性高分子電解質は、
ポリマー鎖に沿って分布し、鎖の末端基にも任意に存在するアニオン性の基を有し、直鎖状または分枝鎖状の構造を有するアニオン性ポリマー類である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
高分子電解質が、150より高く、好ましくは200より高く、さらにより好ましくは250より高い、分子量/界面活性剤中に存在するアニオン性の基の数として定義される当量を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法において使用できるアニオン性高分子電解質の当量が、50,000より低く、好ましくは10,000より低く、より好ましくは3,000より低く、さらにより好ましくは1500より低い、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
アニオン性高分子電解質の数平均分子量が、500より高く、より好ましくは1000より高く、1,000,000より低い、請求項3〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
アニオン性高分子電解質が分子内に、2以上、一般に5以上のアニオン性の基の数を含み、このアニオン性の基がカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩から選択され;より好ましくはカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、さらにより好ましくはカルボン酸塩から選択される、請求項3〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
アニオン性高分子電解質がフッ素原子を含まない、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
アニオン性高分子電解質が、アクリルモノマーもしくはビニルモノマーから選択されるモノマーのアニオン性ホモポリマーまたはコポリマーから選択される、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
アクリルコモノマーが、(メタ)アクリルアミド、対応する塩の形の(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸の直鎖状または分枝鎖状のC1〜C4ヒドロキシエステル、C1〜C12アルキル(メタ)アクリレート(ここで、アルキルは直鎖状または分枝鎖状であり得、次の一般式:
【化1】

[式中、R1はHまたはCH3であり;R2およびR3は等しいかまたは異なって、Hまたは任意に分岐していてもよいC1〜C8アルキルであり;Mはアルカリもしくはアルカリ土類金属またはアンモニウムであり、かつAはNH、OまたはNCH3である]
の化合物であり得る)
から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ビニルモノマーが、ビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレンおよび芳香環の1以上の水素原子をヒドロキシルまたはメチルで置換するかおよび/またはビニルの水素原子の1以上をメチルで置換することにより得られるスチレンの誘導体;C1〜C12アルキルビニルエーテル;C1〜C18脂肪族モノカルボン酸のビニルエステル;
から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ポリアミン酸、またはポリアミドアミン酸がアニオン性高分子電解質として用いられる、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
ポリアミン酸が、以下の単位:
− アミド-アミン酸:
【化2】

− アミドイミド単位:
【化3】

[式中、RIIは二価のアリーレン基である]
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アニオン性高分子電解質が、カルボキシアルキルセルロース(ここで、アルキルは1〜5、好ましくは1〜3の炭素原子を含む)である、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
工程a)において、高分子電解質が、フルオロポリマー重量に対して、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、さらにより好ましくは0.5〜3重量%の量で加えられる、請求項1〜14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
工程b)が、連続的または非連続的方法で、好ましくは非連続的方法で行なわれる、請求項1〜15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜16の方法に従って得ることができ、実質的にフッ素化アニオン性界面活性剤がないフルオロポリマー分散液。
【請求項18】
繊維の含浸、表面のコーティングおよびポリマーの添加用の、請求項17に記載の分散液の使用。

【公開番号】特開2006−188704(P2006−188704A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379680(P2005−379680)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(503023047)ソルヴェイ ソレクシス エス.ピー.エー. (40)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Solexis S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Turati 12 − MILANO,Italy
【Fターム(参考)】