説明

フレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法およびはんだペースト印刷用凹版

【課題】凹版印刷により一回の印刷工程にてフレキシブルプリント基板のランド上のはんだペースト量を変更すること。
【解決手段】はんだペースト印刷用凹版1は、フレキシブルプリント基板10のランド11,12とはんだペースト印刷時に対応する位置に複数の凹部2,3を備え、これら凹部2,3は、凹部3の方が凹部2よりも容積が大きくなるように形成されている。はんだペースト印刷用凹版1の凹部2,3の開口側にはんだペーストを充填してスキージ等により掻き出し、凹部2,3内にはんだペースト4a,4bを充填する。これら凹部2,3の位置をフレキシブルプリント基板10のランド11,12の位置と対応するようにはんだペースト印刷用凹版1を配置して、凹版グラビア印刷方式によりはんだペースト4a,4bをランド11,12に転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法およびはんだペースト印刷用凹版に関し、特に凹版印刷により一回の印刷工程にてフレキシブルプリント基板のランド上のはんだペースト量を変更することができるフレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法およびはんだペースト印刷用凹版に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント基板には、部品実装や基板間接続のためにその表面のランド上に印刷によってはんだペーストを搭載することが多く行われている。搭載されるはんだペーストの量(はんだペースト量)は、実装部品の形状等により異なり、また、基板間接続のためのはんだペーストは、余剰はんだの飛散等を防止するため、部品実装用に搭載されるはんだペーストと比較して薄く(すなわち、はんだペースト量を少なく)印刷されることが要求される。
【0003】
このように、ランド上のはんだペーストの厚みを調整して印刷するものとして、クリームはんだ印刷方法(例えば、特許文献1(第3−6頁、第1−6,8−12図)参照)が知られている。この印刷方法では、はんだ増量が必要な大きなランド銅箔の周囲にはんだ量制御用突起部を設け、その上からはんだマスクを基板に重ねてクリームはんだを印刷する。
【0004】
これにより、はんだ量制御用突起部の高さが大きなランド銅箔に対する実効的なマスク厚を増加させるため、はんだマスク自体が小さなランド銅箔に適した薄さで形成されていても、一回の印刷工程にて大きなランド銅箔に搭載されるはんだペースト量を増加させることができるとされている。
【0005】
また、メタルマスクの厚みを部分的に変更することで対応するメタルマスクの製造方法(例えば、特許文献2(第2−3頁、第1−4図)参照)も知られている。これによると、メタルマスクの一部をハーフエッチングにより薄膜化し、メタルマスクとその一部にそれぞれレーザにより開口を形成する。これにより、厚膜部よりも薄膜部の方がスキージ印刷によるはんだペースト充填量が減るため、上記特許文献1と同様に一回の印刷工程にて搭載するはんだペースト量を調整することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−270837号公報
【特許文献2】特開平7−251493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されている印刷方法では、はんだペースト印刷の前に基板に各突起部を設け、はんだペースト印刷後に各突起部を除去する必要があるため、全体の工数が増えてしまうという問題がある。また、上述した特許文献2に開示されている製造方法により製造された部分的に厚みの異なるメタルマスクを用いてスキージ印刷を行う場合、スキージが平坦な形状であれば凹凸のあるメタルマスクに追従することが難しく、追従させるために硬度の低いスキージを用いると開口面積の大きいランドにおいてははんだペーストを抉ってしまうなど、スキージ印刷によりはんだペーストを供給することは技術的に大変困難であるという問題がある。
【0008】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解決するため、凹版印刷により一回の印刷工程にてフレキシブルプリント基板のランド上のはんだペースト量を変更することができるフレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法およびはんだペースト印刷用凹版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかるフレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法は、フレキシブルプリント基板のランド上に凹版印刷によりはんだペーストを印刷するフレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法において、複数の凹部が形成され、各凹部の容積が他の凹部の容積と適宜同一または異なるように構成されたはんだペースト印刷用凹版の前記各凹部にはんだペーストを充填する工程と、前記はんだペースト印刷用凹版の各凹部に充填されたはんだペーストを前記フレキシブルプリント基板のランドに接触させて該ランド上に転写する工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかるフレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法は、フレキシブルプリント基板のランド上に凹版印刷によりはんだペーストを印刷するフレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法において、複数の凹部が形成され、各凹部の容積が他の凹部の容積と適宜同一または異なるように構成されたはんだペースト印刷用凹版の前記各凹部にはんだペーストを充填する工程と、前記はんだペースト印刷用凹版の各凹部に充填されたはんだペーストをオフセットブランケットの表面またはその表面に形成された凹部の縁に接触させて、前記表面または凹部内に転写する工程と、前記オフセットブランケットに転写されたはんだペーストを前記フレキシブルプリント基板のランドに接触させて該ランド上に再転写する工程とを備えたことを特徴とする。
【0011】
なお、前記はんだペースト中のはんだの粒径は、例えば15μm以下であることが好ましい。
【0012】
さらに、この発明にかかるはんだペースト印刷用凹版は、フレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷工程において用いられるはんだペースト印刷用凹版であって、複数の凹部が形成され、各凹部の容積が他の凹部の容積と適宜同一または異なるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、凹版印刷により一回の印刷工程にてフレキシブルプリント基板のランド上のはんだペースト量を変更することができるフレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法およびはんだペースト印刷用凹版を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかるフレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法を説明するための説明図である。
【図2】本発明の他の実施形態にかかるフレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、添付の図面を参照して、この発明にかかるフレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法およびはんだペースト印刷用凹版の好適な実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかるフレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法を説明するための説明図である。
【0016】
図1(a)に示すように、はんだペースト印刷用凹版1は、例えばステンレス等の金属板からなり、はんだペースト印刷の際に、フレキシブルプリント基板10の部品実装用のランド11,12(同図(c)参照)の位置に対応するように形成された凹部2,3を有して構成されている。各凹部2,3は、その容積が他の凹部の容積と適宜同一または異なるように構成されている。
【0017】
これら凹部2,3は、その開口径Hが100μm以上1mm以下で、その深さDが30μm以上200μm以下となるように形成され、ここでは凹部2よりも凹部3の方が深さDが深くなるように形成されている。したがって、凹部3の方が凹部2よりも大きな容積をもち、内部に充填されるはんだペースト量を多くすることができる構成となっている。
【0018】
フレキシブルプリント基板10は、同図(c)に示すように、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、またはガラスエポキシ樹脂等からなる絶縁性および可撓性を有するベースフィルム(図示せず)を備える。
【0019】
そして、フレキシブルプリント基板10は、このベースフィルム上に、例えば耐熱性のある熱可塑性ポリイミド樹脂等からなる接着剤を介して銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の金属導体を貼り付けた銅張積層板をエッチング等によりパターン形成して構成された回路(図示せず)を有して構成されている。この回路の先端部や中間部には、半導体装置等の電子部品を実装するための部品実装用のランド11,12が形成されている。
【0020】
このように構成されたフレキシブルプリント基板10のランド11,12上にはんだペーストを印刷する場合、次のような工程により行われる。すなわち、まず、図1(a)に示すようなはんだペースト印刷用凹版1を用意し、このはんだペースト印刷用凹版1の凹部2,3の開口側の表面にはんだペースト(図示せず)を載せる。このはんだペーストは、例えば錫や銀を含む複数の金属の合金からなり、はんだ粉末とフラックス樹脂とを混合して構成されている。
【0021】
次に、図示しないスキージなどでこのはんだペーストを掻き出して、同図(b)に示すように、はんだペースト印刷用凹版1の凹部2,3内にはんだペースト4a,4bを充填し、これら凹部2,3内にのみはんだペーストがある状態にする。なお、このはんだペースト4a,4bは、その中のはんだの粒径が5μm〜15μmのものが用いられ、従来例において通常使用される粒径が30μm〜40μmのものよりもさらに小径に構成されている。このため、はんだペーストの凹部2,3の内部への充填性を良好にすることができる。
【0022】
はんだペースト印刷用凹版1へはんだペーストを充填したら、同図(c)に示すように、フレキシブルプリント基板10のランド11,12とはんだペースト印刷用凹版1の凹部2,3とをそれぞれ対向するように、例えば公知の画像認識装置を用いて位置合わせする。このときの各ランド11,12および各凹部2,3に充填されたはんだペースト4a,4b間の距離は、それぞれが接触しない距離に保たれており、各ランド11,12の高さは同一に形成されている。そして、公知の凹版グラビア印刷方式により凹部2,3内のはんだペースト4a,4bをフレキシブルプリント基板10のランド11,12に接触させ、これらランド11,12上に転写する。この接触に際しては、各ランド11,12とはんだペースト4a,4bとの接触面積をできるだけ広くさせるようにした方が好ましい。
【0023】
これにより、同図(d)に示すような厚さ(高さ)の異なるはんだペースト21,22を、フレキシブルプリント基板10のランド11,12上に一回の印刷工程により形成することができる。このように、はんだペースト印刷用凹版1において凹部2,3の深さDを任意に調整した上ではんだペーストを印刷することにより、フレキシブルプリント基板10のランド11,12の仕様に応じて搭載するはんだペースト量を適宜調整することができ、一回の印刷工程にて厚さの異なるはんだペースト4a,4bの印刷が可能となる。
【0024】
また、上述したようなはんだペースト印刷用凹版1を一度作製すれば、このはんだペースト印刷用凹版1は繰り返し使用することができる。このため、フレキシブルプリント基板10のランドの高さを異ならせる等の各種前処理や、回路の設計変更ごとにはんだペースト印刷用凹版1を作り直す加工等が不要となり、フレキシブルプリント基板10へのはんだペースト印刷にかかるコストを抑えることが可能となる。
【0025】
さらに、後述する凹版オフセット印刷方式によるはんだペーストの印刷に比べて、凹版グラビア印刷方式を採用した本実施形態によれば、フレキシブルプリント基板10のランド11,12上に搭載するはんだペースト21,22の量を多くすることができるので、比較的大型の電子部品を実装することも可能となる。
【0026】
図2は、本発明の他の実施形態にかかるフレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法を説明するための説明図である。なお、以降において、既に説明した部分と重複する箇所には同一の符号を付して説明を省略し、本発明に特に関連のない部分については明記しないことがあるとする。
【0027】
本実施形態にかかるはんだペースト印刷方法は、公知の凹版オフセット印刷方式を用いる点が先の実施形態にて説明した内容と相違している。すなわち、図2(a)に示すように、凹部2,3が形成されたはんだペースト印刷用凹版1にはんだペースト4a,4bを充填し、同図(b)に示すように、凹部2よりも深さDが深い凹部3と対応する位置に凹み部8が形成されたオフセットブランケット7に対し、凹部3が凹み部8に対向するようにはんだペースト印刷用凹版1を配置する。このオフセットブランケット7は、例えば円柱状あるいは円筒状に成形されたシリコーンゴムからなり、凹み部8が形成されることによって、表面に凹凸が形成された構造を備え、回転動作されることによって凹版オフセット印刷を実現する構成となっている。
【0028】
なお、はんだペースト印刷用凹版1の凹部が複数形成されている場合は、オフセットブランケット7の凹み部は、例えば最も容積の小さな凹部の容積よりも大きな容積の凹部と対向するように設けられ、かつ該大きな容積の凹部の開口面積よりも小さな開口面積を有するように形成されたり、この大きな容積の凹部に凹み部の縁が接触可能なように形成されているとよい。
【0029】
すなわち、同図(b)に示すように、本例では凹み部8の開口径Hbは、凹部3の開口径H(図1(a)参照)よりも小さくなるように形成されている。これにより、はんだペースト印刷用凹版1の凹部3からはんだペースト4bを凹み部8に良好かつ確実に転写することができる。はんだペースト印刷用凹版1をオフセットブランケット7に向けて配置したら、同図(c)に示すように凹部2,3のはんだペースト4a,4bをオフセットブランケット7の表面や凹み部8に転写する。このとき、転写されたはんだペースト4a,4bのオフセットブランケット7の表面からの高さは、同一となるように設定されている。
【0030】
こうして、オフセットブランケット7にはんだペースト4a,4bを転写したら、同図(d)に示すように、フレキシブルプリント基板10のランド11,12とオフセットブランケット7に転写されたはんだペースト4a,4bとをそれぞれ対向するように、上記のような画像認識装置を用いて位置合わせする。このとき、各ランド11,12および転写されたはんだペースト4a,4b間の距離は、実際の印刷箇所においてそれぞれが接触しない距離に保たれており、各ランド11,12の高さは同一に形成されている。そして、公知の凹版オフセット印刷方式により上記距離を縮めてはんだペースト4a,4bをフレキシブルプリント基板10のランド11,12に接触させ、これらランド11,12上に再転写する。この接触に際しては、各ランド11,12とはんだペースト4a,4bとの接触面積をできるだけ広くさせるようにする。
【0031】
これにより、同図(e)に示すような厚さの異なるはんだペースト21,22を、フレキシブルプリント基板10のランド11,12上に一回の印刷工程により形成することができ、先の実施形態における効果と同様の効果を奏することが可能となる。なお、本実施形態のように凹版オフセット印刷方式において表面に凹凸のあるオフセットブランケット7を用い、各ランド11,12とはんだペースト4a,4bとの間の距離を凹版オフセット印刷可能なように適宜調節して印刷を行えば、凹凸のあるフレキシブルプリント基板10に対してもはんだペースト4a,4bの印刷が可能となる。
【0032】
なお、本実施形態の凹版オフセット印刷方式によれば、上述した凹版グラビア印刷方式によるはんだペーストの印刷に比べて、比較的大型の電子部品の実装は難しくなるが、印刷するはんだペースト量を精度よく調整することができるので、比較的小型の電子部品や基板間接続など、はんだペースト量の制御の要求が厳しい場合のはんだペースト印刷には有用である。また、平板状のオフセットブランケット7を用いて印刷を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 はんだペースト印刷用凹版
2,3 凹部
4a,4b はんだペースト
7 オフセットブランケット
8 凹み部
10 フレキシブルプリント基板
11,12 ランド
21,22 はんだペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルプリント基板のランド上に凹版印刷によりはんだペーストを印刷するフレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法において、
複数の凹部が形成され、各凹部の容積が他の凹部の容積と適宜同一または異なるように構成されたはんだペースト印刷用凹版の前記各凹部にはんだペーストを充填する工程と、
前記はんだペースト印刷用凹版の各凹部に充填されたはんだペーストを前記フレキシブルプリント基板のランドに接触させて該ランド上に転写する工程とを備えた
ことを特徴とするフレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法。
【請求項2】
フレキシブルプリント基板のランド上に凹版印刷によりはんだペーストを印刷するフレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法において、
複数の凹部が形成され、各凹部の容積が他の凹部の容積と適宜同一または異なるように構成されたはんだペースト印刷用凹版の前記各凹部にはんだペーストを充填する工程と、
前記はんだペースト印刷用凹版の各凹部に充填されたはんだペーストをオフセットブランケットの表面またはその表面に形成された凹部の縁に接触させて、前記表面または凹部内に転写する工程と、
前記オフセットブランケットに転写されたはんだペーストを前記フレキシブルプリント基板のランドに接触させて該ランド上に再転写する工程とを備えた
ことを特徴とするフレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法。
【請求項3】
前記はんだペースト中のはんだの粒径は、15μm以下である
ことを特徴とする請求項1または2記載のフレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷方法。
【請求項4】
フレキシブルプリント基板へのはんだペースト印刷工程において用いられるはんだペースト印刷用凹版であって、
複数の凹部が形成され、各凹部の容積が他の凹部の容積と適宜同一または異なるように構成されている
ことを特徴とするはんだペースト印刷用凹版。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−114114(P2011−114114A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268423(P2009−268423)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】