説明

フレキシブル基板の実装構造、液滴吐出ヘッド。

【課題】フレキシブル基板の端子部と接続部品の電極とを、狭小な接合幅で接合可能なフレキシブル基板の実装構造を提供する。
【解決手段】フレキシブル基板500の端子部512は、溝部700の底面F、即ち圧電素子300のZ方向における上面に沿って、X、Y方向に広がる上電極膜(電極)80に対して、フレキシブル基板500の一面500Aが略垂直方向に交差するように、端子部512と上電極膜(電極)80とが電気的に接続されてなる。即ち、上電極膜(電極)80の一面(上面)80aに対して、フレキシブル基板500の厚み方向における端面500aが接するように、フレキシブル基板500が液滴吐出ヘッド1に実装される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板の実装構造、およびこうした実装構造を備えた液滴吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロデバイスを製造する方法の1つとして液滴吐出法(インクジェット法)が知られている。この液滴吐出法は、デバイスを形成するための材料を含む液状体を液滴状にして液滴吐出ヘッドより吐出するものである。例えば、特許文献1には、液滴吐出ヘッド(インクジェット式記録ヘッド)に関する技術の一例が開示されている。この特許文献1に開示されている液滴吐出ヘッドにおいては、駆動回路部(ICドライバ)と駆動素子(圧電素子)とがワイヤボンディングの手法によって接続されている。
【0003】
ところで、液滴吐出法に基づいてマイクロデバイスを製造する際、マイクロデバイスの更なる微細化の要求に応えるために、液滴吐出ヘッドに設けられたノズル開口部どうしの間の距離(ノズルピッチ)はできるだけ小さい(狭い)ことが好ましい。上記圧電素子はノズル開口部に対応して複数形成されるため、ノズルピッチを小さくすると、そのノズルピッチに応じて圧電素子どうしの間の距離も小さくする必要がある。ところが、圧電素子どうしの間の距離が小さくなると、それら複数の圧電素子のそれぞれとICドライバとをワイヤボンディングの手法によって接続することが困難となる。
【0004】
このため、例えば特許文献2には、液滴吐出ヘッドの溝部に形成された圧電素子の電極とICドライバとを、フレキシブル基板を介して接続した液滴吐出装置が記載されている。この特許文献2に開示されている液滴吐出装置によれば、溝の深さ方向に向けて下がるフレキシブル基板の端部(端子部)を水平方向に折り曲げて、圧電素子の電極の広がり面と平行にフレキシブル基板の端子部を面接触させて接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−127379号公報
【特許文献2】特開2006−68989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、液滴吐出ヘッドがますます小型化されるなかで、こうしたフレキシブル基板の端子部と圧電素子の電極とを水平方向に沿って対面させて接合する構造では、液滴吐出ヘッドの幅方向(水平方向)のサイズを小型化する際の障害となる虞がある。
【0007】
本発明にかかるいくつかの態様は、上記事情に鑑みてなされたものであり、フレキシブル基板の端子部と接続部品の電極とを、狭小な接合幅で接合可能なフレキシブル基板の実装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のいくつかの態様は次のようなフレキシブル基板の実装構造、および液滴吐出ヘッドを提供した。
すなわち、本発明のフレキシブル基板の実装構造は、溝部の底面に沿って広がる電極に対して、接合材を用いてフレキシブル基板を接続したフレキシブル基板の実装構造であって、
前記フレキシブル基板の一端側には、前記フレキシブル基板の一面に沿って延びる複数の配線を備えた端子部が形成され、前記底面に対して前記フレキシブル基板の一面が略垂直方向に交差するように、前記端子部と前記電極とを接続したことを特徴とする。
【0009】
こうしたフレキシブル基板の実装構造によれば、電極の一面に対して、フレキシブル基板の一面が略垂直になるように接続することによって、電極にフレキシブル基板が接する部分が、フレキシブル基板の厚みに対応する端面だけに限定される。これによって、従来のような、フレキシブル基板の端子部と圧電素子の電極とを水平方向に沿って対面させて接合する構造と比較して、溝部の幅をフレキシブル基板の厚みよりも僅かに大きい程度にまで小さくすることができる。その結果、フレキシブル基板の端子部と圧電素子の電極とを最小限のサイズで接合することが可能になる。
【0010】
前記配線は、前記端子部において、前記フレキシブル基板の一面から屈曲し、前記フレキシブル基板の厚み方向を成す端面に沿って延びることが好ましい。これによって、フレキシブル基板に形成された配線の端面、即ち配線の厚み分で電極に接するよりも更に広い接触面で、配線を電極と接することができるので、より一層確実に、かつ低抵抗でフレキシブル基板の配線と電極とを最小限のサイズで接続することが可能になる。
【0011】
前記接合材は、導電性材料であることが好ましい。これによって、接合時に過大な接合力をフレキシブル基板の端子部に印加しなくても、配線と電極とを確実に導通させることができる。
【0012】
前記溝部は、更に樹脂材料で封止されてなることが好ましい。これによって、溝部に異物やホコリが侵入して導通不良や電流リークなどが生じることを確実に防止できる。
【0013】
本発明の液滴吐出ヘッドは、前記各項記載のフレキシブル基板の実装構造によって、液滴吐出ヘッドを駆動する集積回路が形成された前記フレキシブル基板と、圧電素子の前記電極とが接続されたことを特徴とする。こうした液滴吐出ヘッドによれば、フレキシブル基板の端子部と圧電素子の電極とを最小限のサイズで接合することができるので、液滴吐出ヘッドの小型化を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のフレキシブル基板の実装構造を備えた液滴吐出ヘッドの一例を示す外観斜視図である。
【図2】液滴吐出ヘッドを下側から見た斜視図である。
【図3】図1のA−A線断面矢視図である。
【図4】本発明のフレキシブル基板の実装構造を示す要部拡大断面図である。
【図5】図4に示す本発明のフレキシブル基板の実装構造を実現する製造方法を示す説明図である。
【図6】図4に示す本発明のフレキシブル基板の実装構造を実現する製造方法を示す説明図である。
【図7】本発明の別な実施形態のフレキシブル基板の実装構造を示す要部拡大断面図である。
【図8】図7に示す本発明のフレキシブル基板の実装構造を実現する製造方法を示す説明図である。
【図9】図7に示す本発明のフレキシブル基板の実装構造を実現する製造方法を示す説明図である。
【図10】本発明のフレキシブル基板の実装構造によって形成した液滴吐出ヘッドの一適用例である液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係るフレキシブル基板の実装構造、および液滴吐出ヘッドの一実施形態について説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0016】
まず、本発明のフレキシブル基板の実装構造を備えた液滴吐出ヘッドの概要について、図1〜図4を参照しながら説明する。
図1は液滴吐出ヘッドの一実施形態を示す外観斜視図、図2は液滴吐出ヘッドを下側から見た斜視図の一部破断図、図3は図1のA−A線断面矢視図である。
液滴吐出ヘッド1は、機能液(例えばインク)の液滴を吐出するものであって、液滴が吐出されるノズル開口部15を備えたノズル基板16と、ノズル基板16の上面に接続され、液滴が流れる流路を形成する流路形成基板10と、流路形成基板10の上面に接続され、圧電素子300の駆動によって変位する振動板400と、振動板400の上面に接続され、リザーバ100を形成するためのリザーバ形成基板20と、可撓性を有するフレキシブル基板500と、フレキシブル基板500の一面500Aに設けられ、圧電素子300を駆動するための駆動回路部(集積回路)200と、フレキシブル基板500の一面500Aに設けられ、駆動回路部200と圧電素子300とを電気的に接続する複数の配線(導電体)510とを備えている。配線510は、例えば、Cu(銅)などの導電性材料からなる配線であって、数μmの厚さに形成されたものである。
【0017】
この液滴吐出ヘッド1の動作は、外部コントローラCTによって制御される。そして、流路形成基板10と、ノズル基板16と、振動板400とで囲まれた空間によって、ノズル開口部15より吐出される前の機能液が配置される圧力発生室12が形成されている。また、リザーバ形成基板20と流路形成基板10とで囲まれた空間によって、圧力発生室12に供給される前の機能液を予備的に保持するリザーバ100が形成されている。
【0018】
流路形成基板10の下面側は開口しており、その開口を覆うようにノズル基板16が流路形成基板10の下面に接続されている。流路形成基板10の下面とノズル基板16とは、例えば接着剤や熱溶着フィルム等を介して固定されている。そのノズル基板16には、液滴を吐出するノズル開口部15が設けられている。
【0019】
図2に示すように、ノズル開口部15はノズル基板16に複数設けられている。具体的には、ノズル基板16には、Y軸方向に複数並んで設けられたノズル開口部15によって構成された、第1ノズル開口群15A、第2ノズル開口群15B、第3ノズル開口群15C、及び第4ノズル開口群15Dのそれぞれが設けられている。第1ノズル開口群15Aと第2ノズル開口群15BとはX軸方向に関して互いに対向するように配置されている。第3ノズル開口群15Cは第1ノズル開口群15Aの+Y側に設けられており、第4ノズル開口群15Dは第2ノズル開口群15Bの+Y側に設けられている。これら第3ノズル開口群15Cと第4ノズル開口群15DとはX軸方向に関して互いに対向するように配置されている。
【0020】
なお図2では、各ノズル開口群15A〜15Dのそれぞれは6個のノズル開口部15によって構成されているように示されているが、実際には、例えば720個程度のノズル開口部15によって構成されている。
【0021】
流路形成基板10の内側には複数の隔壁11が形成されている。流路形成基板10はシリコンによって形成されており、複数の隔壁11は、流路形成基板10の母材であるシリコン単結晶基板を異方性エッチングすることにより形成される。そして、複数の隔壁11を有する流路形成基板10と、ノズル基板16と、振動板400とで囲まれた空間によって、複数の圧力発生室12が形成される。圧力発生室12は、複数のノズル開口部15に対応するように複数形成されている。すなわち、圧力発生室12は、第1〜第4ノズル開口群15A〜15Dのそれぞれを構成する複数のノズル開口部15に対応するように、Y軸方向に複数並んで設けられている。
【0022】
そして、第1ノズル開口群15Aに対応して複数形成された圧力発生室12によって第1圧力発生室群12Aが構成され、第2ノズル開口群15Bに対応して複数形成された圧力発生室12によって第2圧力発生室群12Bが構成され、第3ノズル開口群15Cに対応して複数形成された圧力発生室12によって第3圧力発生室群12Cが構成され、第4ノズル開口群15Dに対応して複数形成された圧力発生室12によって第4圧力発生室群12Dが構成されている。第1圧力発生室群12Aと第2圧力発生室群12BとはX軸方向に関して互いに対向するように配置されており、それらの間には隔壁10Kが形成されている。同様に、第3圧力発生室群12Cと第4圧力発生室群12Dとの間にも隔壁10Kが形成されており、それらはX軸方向に関して互いに対向するように配置されている。隔壁10Kを含む流路形成基板10は、例えばシリコン単結晶によって形成されていればよい。
【0023】
第1圧力発生室群12Aを形成する複数の圧力発生室12のうち、−X側の端部は上述した隔壁10Kによって閉塞されているが、+X側の端部は互いに接続するように集合しており、リザーバ100と接続している。リザーバ100は、機能液導入口25より導入され、圧力発生室12に供給される前の機能液を一時的に保持するものであって、リザーバ形成基板20にY軸方向に延びるように形成されたリザーバ部21と、流路形成基板10にY軸方向に延びるように形成され、リザーバ部21と各圧力発生室12のそれぞれとを接続する連通部13とを備えている。すなわち、リザーバ100は、第1圧力発生室群12Aを構成する複数の圧力発生室12の共通の機能液保持室(インク室)となっている。機能液導入口25より導入された機能液は、導入路26を経てリザーバ100に流れ込み、供給路14を経て、第1圧力発生室群12Aを構成する複数の圧力発生室12のそれぞれに供給される。
【0024】
また、第2、第3、第4圧力発生室群12B、12C、12Dのそれぞれを構成する圧力発生室12のそれぞれにも、上述と同様のリザーバ100が接続されている。
【0025】
流路形成基板10とリザーバ形成基板20との間に配置された振動板400は、流路形成基板10の上面を覆うように設けられた弾性膜50と、弾性膜50の上面に設けられた下電極膜60とを備えている。弾性膜50は、例えば厚み1〜2μm程度の二酸化シリコンによって形成されている。下電極膜60は、例えば厚み0.2μm程度の金属によって構成されている。本実施形態において、下電極膜60は、複数の圧電素子300の共通電極となっている。
【0026】
振動板400を変位するための圧電素子300は、下電極膜60の上面に設けられた圧電体膜70と、その圧電体膜70の上面に設けられた上電極膜(電極)80とを備えている。圧電体膜70は例えば厚み1μm程度、上電極膜80は例えば厚み0.1μm程度である。
【0027】
なお、圧電素子300の概念としては、圧電体膜70及び上電極膜(電極)80に加えて、下電極膜60を含むものであってもよい。すなわち、本実施形態における下電極膜60は、圧電素子300としての機能と、振動板400としての機能とを兼ね備えている。また、本実施形態では、弾性膜50及び下電極膜60が振動板400として機能するが、弾性膜50を省略した構造とし、下電極膜60が弾性膜(50)を兼ねるようにしてもよい。
【0028】
圧電体膜70及び上電極膜80、すなわち圧電素子300は、複数のノズル開口部15及び圧力発生室12のそれぞれに対応するように複数設けられている。すなわち、圧電体膜70及び上電極膜80からなる圧電素子300は、各ノズル開口部15毎(圧力発生室12毎)に設けられている。そして、上述したように、下電極膜60は複数の圧電素子300の共通電極として機能し、上電極膜80は複数の圧電素子300の個別電極として機能する。
【0029】
また、第1ノズル開口群15Aを構成するノズル開口部15のそれぞれに対応するようにY軸方向に複数並んで設けられた圧電素子300によって、第1圧電素子群300Aが構成されており、第2ノズル開口群15Bを構成するノズル開口部15のそれぞれに対応するようにY軸方向に複数並んで設けられた圧電素子300によって、第2圧電素子群300Bが構成されている。これら第1圧電素子群300Aと第2圧電素子群300BとはX軸方向に関して互いに対向するように配置されている。
【0030】
同様に、第3、第4ノズル開口群15C、15Dを構成するノズル開口部15のそれぞれに対応するようにY軸方向に複数並んで設けられた圧電素子300によって、第3、第4圧電素子群300C、300Dが構成されており、それら第3、第4圧電素子群300C、300Dどうしは、X軸方向に関して対向するように配置されている(なお、第3、第4圧電素子群300C、300Dは図3の紙面奥側に形成されているものであって、図示されていない)。
【0031】
リザーバ形成基板20には、封止膜31と固定板32とを有するコンプライアンス基板30が接合されている。封止膜31は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚み6μm程度のポリフェニレンスルフィドフィルム)からなり、この封止膜31によってリザーバ部21の上部が封止されている。また、固定板32は、金属等の硬質の材料(例えば、厚み30μm程度のステンレス鋼)で形成される。この固定板32のうち、リザーバ100に対応する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部33となっているため、リザーバ100の上部は、可撓性を有する封止膜31のみで封止され、内部圧力の変化によって変形可能な可撓部22となっている。
【0032】
通常、機能液導入口25からリザーバ100に機能液が供給されると、例えば、圧電素子300の駆動時の機能液の流れ、あるいは、周囲の熱などによってリザーバ100内に圧力変化が生じる。しかしながら、上述のように、リザーバ100の上部が封止膜31のみよって封止されて可撓部22となっているため、この可撓部22が撓み変形してその圧力変化を吸収する。したがって、リザーバ100内は常に一定の圧力に保持される。なお、その他の部分は固定板32によって十分な強度に保持されている。
【0033】
そして、リザーバ100の外側のコンプライアンス基板30上には、リザーバ100に機能液を供給するための機能液導入口25が形成されており、リザーバ形成基板20には、機能液導入口25とリザーバ100の側壁とを連通する導入路26が設けられている。
【0034】
リザーバ形成基板20のうち、X軸方向における中央部には、Y軸方向に沿って延びるスリット状の細長い溝部700が形成されている。溝部700によって、リザーバ形成基板20は、第1圧力発生室群12Aに対応して設けられた第1圧電素子群300Aを封止する第1封止部20Aと、第2圧力発生室群12Bに対応して設けられた第2圧電素子群300Bを封止する第2封止部20Bとに分けられる(図3参照)。同様に、溝部700によって、第3圧力発生室群12Cに対応して設けられた第3圧電素子群300Cを封止する第3封止部20Cと、第4圧力発生室群12Dに対応して設けられた第4圧電素子群300Dを封止する第4封止部20Dとに分けられる(なお、第3、第4封止部20C、20Dは図3の紙面奥側に形成されているものであって、図示されていない)。
【0035】
つまり、リザーバ形成基板20のうち、圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を確保した状態で、その空間を密封可能な圧電素子保持部24が設けられている。圧電素子保持部24は、第1〜第4封止部20A〜20Dのそれぞれに形成されており、第1〜第4圧電素子群300A〜300Dを覆う大きさで形成されている。また、圧電素子300のうち、少なくとも圧電体膜70は、この圧電素子保持部24内に密封されている。
【0036】
このように、リザーバ形成基板20は、圧電素子300を外部環境と遮断して、圧電素子300を封止するための封止部材としての機能を有している。リーザバ形成基板20によって圧電素子300を封止することで、水分等の外部環境による圧電素子300の破壊を防止する。また、本実施形態では、圧電素子保持部24の内部を密封状態にしただけであるが、例えば、圧電素子保持部24内の空間を真空にしたり、あるいは窒素又はアルゴン雰囲気等とすることにより、圧電素子保持部24内を低湿度に保持することができ、圧電素子300の破壊をさらに確実に防止することができる。
【0037】
また、リザーバ形成基板20は剛体であって、そのリザーバ形成基板20を形成する材料としては、例えば、ガラス、セラミック材料等の流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板が用いられている。
【0038】
図3に示すように、第1封止部20Aの圧電素子保持部24によって封止されている圧電素子300のうち、上電極膜80の−X側の端部は、第1封止部20Aの外側まで延びており、溝部700における流路形成基板10上に配置されている。また図3に示すように、溝部700における流路形成基板10上に下電極膜60の一部が配置されている場合においては、上電極膜80と下電極膜60との間の電気的な接続を防止するための絶縁膜600が、上電極膜80と下電極膜60との間に設けられる。
【0039】
同様に、第2封止部20Bの圧電素子保持部24によって封止されている圧電素子300のうち、上電極膜80の+X側の端部が、第2封止部20Bの外側まで延びて、溝部700における流路形成基板10上に配置されている。同様に、不図示ではあるが、第3、第4封止部20C、20Dで封止されている圧電素子300のうち、上電極膜80の一部が、第3、第4封止部20C、20Dの外側まで延びでおり、第3、第4封止部20C、20Dどうしの間に設けられた溝部700における流路形成基板10上に配置されている。
【0040】
圧電素子300を駆動するための駆動回路部(集積回路)200は、例えば回路基板あるいは駆動回路を含む半導体集積回路(IC)を含んで構成されており、フレキシブル基板500の一面500Aに接続(形成)されている。圧電素子300は駆動回路部200により駆動される。フレキシブル基板500は可撓性を有しており、例えばポリイミドからなる絶縁性のフィルム状部材によって構成されている。また、フレキシブル基板500の一面500Aには、銅などの導電性材料からなる導電性の配線(導電部)510が、プリント方式により、メッキやエッチングなどの手法によって設けられている。
【0041】
このような構成の液滴吐出ヘッド1より機能液の液滴を吐出する際には、外部コントローラCTは、機能液導入口25に接続された不図示の外部機能液供給装置を駆動する。外部機能液供給装置から送出された機能液は、機能液導入口25を介してリザーバ100に供給された後、ノズル開口部15に至るまでの液滴吐出ヘッド1の内部流路を満たす。また、外部コントローラCTは、フレキシブル基板500に設けられた外部信号入力部580を介して、駆動回路部200等に駆動電力や指令信号を送る。
【0042】
フレキシブル基板500の一面500Aには配線510が設けられており、外部信号入力部580からの指令信号等は、その配線510を介して駆動回路部200に送られる。駆動回路部200は、外部コントローラCTからの指令に基づいて、端子部512を含む配線510を介して、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、下電極膜60及び圧電体膜70を変位させることにより、各圧力発生室12内の圧力を高めて、ノズル開口部15より液滴を吐出する。
【0043】
フレキシブル基板500の端子部512と圧電素子300の電極(上電極膜80)との接続部分の構成、即ち本発明のフレキシブル基板500の実装構造について詳述する。
図4は、フレキシブル基板と圧電素子の電極との接続部分を示す要部拡大断面図である。
フレキシブル基板500は、その一端側が細長いスリット状の溝部700(図1も参照)に入り込み、フレキシブル基板500の一端側に形成された端子部512で圧電素子300の上電極膜(電極)80と電気的に接続される。即ち、フレキシブル基板500の一面500Aに形成されている配線(導電部)510が上電極膜(電極)80に対して導通可能に接続されている。
【0044】
このフレキシブル基板500の端子部512は、溝部700の底面F、即ち圧電素子300のZ方向における上面に沿って、X、Y方向に広がる上電極膜(電極)80に対して、フレキシブル基板500の一面500Aが略垂直方向に交差するように、端子部512と上電極膜(電極)80とが電気的に接続されてなる。即ち、上電極膜(電極)80の一面(上面)80aに対して、フレキシブル基板500の厚み方向における端面500aが接するように、フレキシブル基板500が液滴吐出ヘッド1に実装される。
【0045】
フレキシブル基板500の端子部512と、上電極膜(電極)80とは、接合材85によって固定(接合)されている。こうした接合材85は、例えば、ハンダペースト、Agペーストなどの導電性ペーストを用いることが好ましい。これ以外にも、金属ハンダ、異方性導電膜(ACF:anisotropic conductive film)や異方性導電ペースト(ACP:anisotropic conductive paste)などの導電性材料や、ペースト状のNCP(Non Conductive Polymer)やフィルム状のNCF(Non Conductive Film)などの絶縁性材料を接合材85として用いても良い。
【0046】
このようなフレキシブル基板500の実装構造を備えた液滴吐出ヘッド1によれば、上電極膜(電極)80の一面(上面)80aに対して、フレキシブル基板500の一面500Aが略垂直になるように接続することによって、上電極膜(電極)80にフレキシブル基板500が接する部分が、フレキシブル基板500の厚みに対応する端面500aだけに限定される。
【0047】
これによって、従来のような、フレキシブル基板の端子部と圧電素子の電極とを水平方向に沿って対面させて接合する構造と比較して、溝部700のX方向における幅をフレキシブル基板500の厚みよりも僅かに大きい程度にまで小さくすることができる。その結果、こうしたフレキシブル基板500の実装構造をもつ液滴吐出ヘッド1は、図1に示すように、液滴吐出ヘッド1のX方向に沿った幅Wを大幅に小さくすることができ、液滴吐出ヘッド1の小型化を実現することが可能になる。
【0048】
なお、このスリット状の溝部700を埋めるように、更に樹脂(樹脂材料:モールド材)を充填して、フレキシブル基板500の端子部512を溝部700に強固に固定することも好ましい。これによって、スリット状の溝部700に異物やホコリが侵入して導通不良や電流リークなどが生じることを確実に防止できる。
【0049】
また、この実施形態では、フレキシブル基板500の全体が上電極膜(電極)80の一面(上面)80aに対して略垂直方向に延びるように、即ち水平方向に対して立った状態で実装されているが、これ以外にも、例えば、フレキシブル基板500が溝部700の開口端から飛び出した先の部分を屈曲させて、駆動回路部(IC)200(図3参照)の実装部分を、リザーバ形成基板20の上面に沿うようにモールド材等で固定しておいても良い。これによって、液滴吐出ヘッド1のZ方向に沿った高さも小さくすることができる。
【0050】
また、この実施形態では、1つのフレキシブル基板500と駆動回路部(IC)200とで、その端子部512の両側にある第1圧電素子群300Aと第2圧電素子群300B(図3参照)とを駆動している。このため、第1圧電素子群300Aから延びる上電極膜(電極)80と、第2圧電素子群300Bから延びる上電極膜(電極)80とが、溝部700において交互に千鳥配列となるように形成されていれば良い。また、これに対応するように、フレキシブル基板500の配線510が形成されていれば良い。
【0051】
次に、上述したような実施形態のフレキシブル基板の実装構造を備えた液滴吐出ヘッドの製造方法について説明する。
図5、図6は、液滴吐出ヘッドの製造方法におけるフレキシブル基板の実装工程を段階的に示した要部拡大断面図である。
本発明のフレキシブル基板の実装構造によってフレキシブル基板の端子部と圧電素子の上電極膜(電極)とを接続させる際には、図5(a)に示すように、フレキシブル基板500の他面500B側を、例えば吸着ツール800を用いて吸着保持する。吸着ツール800は、例えばフレキシブル基板500の他面500Bに密着する一面800Aに多数の穴801が形成され、この穴の内側領域を減圧にできるものであればよい。
【0052】
次に、図5(b)に示すように、この吸着ツール800に保持されたフレキシブル基板500を、液滴吐出ヘッド1の溝部700の内部へ挿入する。この時、液滴吐出ヘッド1を所定の温度まで加熱しておくことが好ましい。また、吸着ツール800の先端部分は、フレキシブル基板500とともにこの溝部700に挿入可能な程度に薄厚に形成されているのが好ましい。
【0053】
図6(a)に示すように、液滴吐出ヘッド1の溝部700の底面、即ち上電極膜(電極)80の一面(上面)80aには、予め接合材85、例えばハンダなとをデイップしておく。そして、フレキシブル基板500を溝部700に挿入する際に液滴吐出ヘッド1を所定の温度まで加熱し、この接合材85を軟化させる。
【0054】
そして、図6(b)に示すように、軟化させた接合材85に、フレキシブル基板500の端子部512を挿入し、フレキシブル基板500の端面500aを上電極膜(電極)80の一面(上面)80aに接触させる。そして、接合材85を冷却、固化させる。この後、吸着ツール800によるフレキシブル基板500の吸着を解除して、吸着ツール800を溝部700から退避させれば、フレキシブル基板500の一面500Aが上電極膜(電極)80の一面(上面)80aに対して略垂直方向に延びるように実装される。
【0055】
図7は、フレキシブル基板の実装構造の別な実施形態である、圧電素子の電極との接続部分を示す要部拡大断面図である。
フレキシブル基板550は、その一端側が液滴吐出ヘッド1のスリット状の溝部700に入り込み、フレキシブル基板550の一端側に形成された端子部562で圧電素子300の上電極膜(電極)80と電気的に接続される。即ち、フレキシブル基板550の一面550Aに形成されている配線(導電部)560が上電極膜(電極)80に対して導通可能に接続されている。フレキシブル基板550の端子部562は、溝部700の底面F、即ち圧電素子300の上電極膜(電極)80に対して、フレキシブル基板550の一面550Aが略垂直方向に交差するように液滴吐出ヘッド1に実装されている。
【0056】
この実施形態におけるフレキシブル基板550の端子部562は、一面550Aに沿って延びる配線560がフレキシブル基板550の端部で屈曲し、フレキシブル基板550の厚み方向における端面550aに沿って延びている。そして、この端面550aに沿って(厚み方向に沿って)延びている領域Qで、上電極膜(電極)80と電気的に接続される。
【0057】
このような形態のフレキシブル基板の実装構造によれば、フレキシブル基板に形成された配線の端面、即ち配線の厚み分で電極に接する実施形態よりも更に広い接触面となる、端面550aに沿って延びる領域Qで、配線560が上電極膜(電極)80と接することができるので、より一層確実に、かつ低抵抗でフレキシブル基板550の配線560と上電極膜(電極)80と電気的に接続することが可能になる。
【0058】
図8、図9は、上述したような形状のフレキシブル基板の製造方法を示す説明図、要部拡大断面である。
フレキシブル基板550を製造する際には、予め配線等が形成された大きなシート状のフレキシブル基板シート910から、例えば図8に示す打抜機900を用いて、多数のフレキシブル基板550を形成する。こうした打抜機900は、例えば、フレキシブル基板シート910を載置するステージ920と、個々のフレキシブル基板の形状を象った打抜面935が形成され、ステージ920の下型925の穴925aに挿脱されるように上下動する上型930とを備えている。
【0059】
こうした打抜機900を用いて、フレキシブル基板シート910から個々のフレキシブル基板550を打ち抜く際に、図9(a)に示すように、下型925のエッジE1と、上型930のエッジE2との間を所定の間隔(クリアランス)Δtだけ開けるように設定する。そして、図9(b)に示すように、下型925と上型930との間隔をΔtに保って打ち抜くと、延性の高い金属で形成された配線560は、下型925のエッジE1に沿って鋭利に切断されずに、フレキシブル基板550の厚み方向の端面550aに沿って延びてから引きちぎられる。
【0060】
このように、打抜機900の下型925のエッジE1と、上型930のエッジE2との間を所定の間隔(クリアランス)Δtだけ開けて打ち抜くことで、図9(c)に示すように、配線560はフレキシブル基板550の端面550aに沿ってダレた形状となり、配線560がフレキシブル基板550の端面550aに沿って延びた領域Qを形成することができる。
【0061】
次に、本発明の圧着方法によって形成した液滴吐出ヘッドの適用例として、液滴吐出装置IJを図10を参照しながら説明する。図10は液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。
【0062】
図10において、液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と、駆動軸4と、ガイド軸5と、コントローラCTと、ステージ7と、クリーニング機構8と、基台9と、ヒータ6とを備えている。ステージ7は液滴吐出ヘッド1より機能液を吐出される基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。液滴吐出ヘッド1のノズル開口部からは、ステージ7に支持されている基板Fに対して機能液が吐出される。
【0063】
駆動軸4には駆動モータ2が接続されている。駆動モータ2はステッピングモータ等であり、コントローラCTからY軸方向の駆動信号が供給されると、駆動軸4を回転させる。駆動軸4が回転すると、液滴吐出ヘッド1はY軸方向に移動する。ガイド軸5は基台9に対して動かないように固定されている。ステージ7は、駆動モータ3を備えている。駆動モータ3はステッピングモータ等であり、コントローラCTからX軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をX軸方向に移動する。
【0064】
コントローラCTは液滴吐出ヘッド1に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。更に、コントローラCTは、駆動モータ2に対して液滴吐出ヘッド1のY軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給するとともに、駆動モータ3に対してステージ7のX軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0065】
クリーニング機構8は液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものであって、図示しない駆動モータを備えている。この駆動モータの駆動により、クリーニング機構8はガイド軸5に沿ってX軸方向に移動する。クリーニング機構8の移動もコントローラCTにより制御される。ヒータ6はここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に塗布された機能液に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ6の電源の投入及び遮断もコントローラCTにより制御される。
【0066】
そして、液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ7とを相対的に走査しつつ基板Pに対して液滴を吐出する。
【0067】
なお、上述した実施形態において、液滴吐出ヘッド1より吐出される機能液としては、液晶表示デバイスを形成するための液晶表示デバイス形成用材料、有機EL表示デバイスを形成するための有機EL形成用材料、電子回路の配線パターンを形成するための配線パターン形成用材料などを含むものとする。これにより、液滴吐出装置IJは、液滴吐出法に基づいて吐出した機能液によって、上記各デバイスを製造することができる。
【符号の説明】
【0068】
1…液滴吐出ヘッド、15…ノズル開口部、15A〜15D…ノズル開口群、20…リザーバ形成基板(封止部材)、70…圧電体膜(圧電素子)、80…上電極膜(電極)、85…接合材、200…駆動回路部(集積回路)、300…圧電素子(駆動素子)、300A、300B…圧電素子群(駆動素子群)、500…フレキシブル基板、500a…端面(フレキシブル基板の厚み方向に沿った)、510…配線(導電部)、512…端子部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝部の底面に沿って広がる電極に対して、接合材を用いてフレキシブル基板を接続したフレキシブル基板の実装構造であって、
前記フレキシブル基板の一端側には、前記フレキシブル基板の一面に沿って延びる複数の配線を備えた端子部が形成され、
前記底面に対して前記フレキシブル基板の一面が略垂直方向に交差するように、前記端子部と前記電極とを接続したことを特徴とするフレキシブル基板の実装構造。
【請求項2】
前記配線は、前記端子部において、前記フレキシブル基板の一面から屈曲し、前記フレキシブル基板の厚み方向を成す端面に沿って延びることを特徴とする請求項1記載のフレキシブル基板の実装構造。
【請求項3】
前記接合材は、導電性材料であることを特徴とする請求項1または2記載のフレキシブル基板の実装構造。
【請求項4】
前記溝部は、更に樹脂材料で封止されてなることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載のフレキシブル基板の実装構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載のフレキシブル基板の実装構造によって、液滴吐出ヘッドを駆動する集積回路が形成された前記フレキシブル基板と、圧電素子の前記電極とが接続されたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−222645(P2011−222645A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88380(P2010−88380)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】