説明

フレキシブル多層配線板、フレキシブル半導体装置及びフレキシブル多層配線板の製造方法

【課題】半導体素子をワイヤを用いて電極パッドに圧着させる際に、接続強度を十分に確保できるフレキシブル多層配線板を提供する。
【解決手段】フレキシブル多層配線板30は、第1主面M及び第1主面Mに対向する第2主面Mを備える接着剤層1Aと、接着剤層1A上に配置された、第2主面Mと接する第3主面M及び第3主面Mに対向する第4主面Mを備える低弾性率素材で形成された絶縁性基材層2Aとを有する基材10Aを有する。フレキシブル多層配線板30は、基材10Aと同様の構成を備える基材10B,10Cと、最外郭基材10Dをさらに有する。最外郭基材10Dの接着剤層1D中には、接着剤層1Dよりも弾性率が高いビア層9A,9Bが埋設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル多層配線板、フレキシブル半導体装置及びフレキシブル多層配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップと配線基板との電気的な接続において、従来から微細なワイヤを用いて接続するワイヤーボンディング工法が用いられている。このワイヤーボンディング工法による接続において、一般的にワイヤ材料にAuが用いられ、電極材料に金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等の金属が用いられる。この金属ワイヤを電極金属に熱圧着することで接続する。このとき、例えば、Au−Au接合においては、熱圧着のみでは300℃程度まで温度上昇する必要があることから、この温度領域では、樹脂基板は適用できない。このため、超音波による振動(振動エネルギー)を与えることで金属表面を活性化させ、100℃〜200℃の低温での接続を可能にしている。この熱・荷重・超音波により、金属表面の水分等の不純物の除去や金属ワイヤと電極間の原子拡散を促進することで固相接合する。このため、超音波の伝達や荷重の負荷を十分に行うために比較的弾性率の高いガラスエポキシ樹脂を用いたリジット基板が用いられてきた。
【0003】
ところが、近年、電子機器の高機能化・高速伝送を実現するために、ガラスエポキシ樹脂よりも低誘電率のポリイミドを用いたフレキシブル多層配線板が採用される傾向にある。ポリイミドを用いた多層配線板は、ポリイミドからなる絶縁性基材及び接着剤層を備える基材を複数備える。ポリイミドは一般的にガラスエポキシ樹脂に比べて弾性率が低い。ガラスエポキシ樹脂の弾性率が約20GPaであるのに対して、ポリイミドの弾性率は約5GPaである。また接着剤層の弾性率は数GPa〜数百MPaである。
【0004】
絶縁性基材として低弾性率材料であるポリイミドを用いた多層配線板は、ワイヤーボンディング時の荷重により、基板表面が容易に変形するため、荷重の負荷が不十分となり、ワイヤと電極間の接続強度が低下する。弾性率が数GPa〜数百MPaの接着材がダンパのように作用し、超音波を十分に伝達できていないことも、接続強度低下の要因のひとつと推測されている。
【0005】
上述の課題を解決する手段として、例えば、ワイヤーボンディング接続による接続強度不足を補うために、ワイヤーボンディング電極パッドの厚さを厚くする方法や接着材の改良(弾性率増加)等の対策がとられている(例えば、特許文献1等参照。)。
【0006】
しかし、上記ワイヤーボンディング電極パッドは主としてスパッタ法や電解めっき法により形成されることから、厚膜化することでコスト上昇やプロセスの複雑化にもつながる。また、接着材の改良も開発コストや時間の増加を避けられない。そのため、ワイヤとワイヤーボンディング電極パッドの接続強度を十分に確保できるフレキシブル多層配線板が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−318546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、半導体素子をワイヤを用いてワイヤーボンディング電極パッドに圧着させる際に、接続強度を十分に確保できるフレキシブル多層配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、第1主面及び第1主面に対向する第2主面を備える接着剤層と、接着剤層上に配置された、第2主面と接する第3主面及び第3主面に対向する第4主面を備える低弾性率素材で形成された絶縁性基材層とを有する基材を複数有し、接着剤層と絶縁性基材層とが交互に積層されたフレキシブル多層配線板であって、最外郭基材の第4主面の一部にワイヤーボンディング電極パッドが設けられ、最外郭基材の接着剤層中に接着剤層よりも弾性率が高いビア層が埋設されていることを特徴とするフレキシブル多層配線板を要旨とする。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1主面及び第1主面に対向する第2主面を備える接着剤層と、接着剤層上に配置された、第2主面と接する第3主面及び第3主面に対向する第4主面を備える低弾性率素材で形成された絶縁性基材層とを有する基材を複数有し、接着剤層と絶縁性基材層とが交互に積層されたフレキシブル半導体装置であって、最外郭基材の第4主面の一部にワイヤーボンディング電極パッドが設けられ、最外郭基材の接着剤層中にワイヤーボンディング電極パッドよりも弾性率が高いビア層が埋設され、最外郭基材の第4主面の一部に半導体素子が配置され、半導体素子とワイヤーボンディング電極パッドがワイヤにより電気的に接続されていることを特徴とするフレキシブル半導体装置を要旨とする。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1主面及び第1主面に対向する第2主面を備える接着剤層上に、第3主面及び第3主面に対向する第4主面を備える低弾性率素材で形成された絶縁性基材層を配置して複数の基材を製造する工程と、基材の少なくとも1つに、ワイヤーボンディング電極パッドが形成される真下に当たる部分に孔を設け、孔にワイヤーボンディング電極パッドよりも弾性率が高い材料を充填してビア層を形成する工程と、接着剤層と絶縁性基材層とが交互になるように複数の基材を積層させて仮基板を製造する工程と、ビア層の上部に当たる最外郭基材の第4主面の一部にワイヤーボンディング電極パッドを設ける工程とを有する多層配線板の製造方法を要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体素子をワイヤを用いてワイヤーボンディング電極パッドに圧着させる際に、接続強度を十分に確保できるフレキシブル多層配線板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るフレキシブル多層配線板の断面図である。
【図2】実施形態に係るフレキシブル多層配線板を用いたフレキシブル半導体装置の一部切り欠き上面図(a)、断面図(b)である。
【図3】実施形態に係るフレキシブル多層配線板の製造工程図(その1)である。
【図4】実施形態に係るフレキシブル多層配線板の製造工程図(その2)である。
【図5】実施形態に係るフレキシブル多層配線板の製造工程図(その3)である。
【図6】実施形態に係るフレキシブル多層配線板の製造工程図(その4)である。
【図7】実施形態に係るフレキシブル多層配線板の製造工程図(その5)である。
【図8】実施形態に係るフレキシブル多層配線板の製造工程図(その6)である。
【図9】実施形態に係るフレキシブル多層配線板の製造工程図(その7)である。
【図10】実施形態に係るフレキシブル多層配線板の製造工程図(その8)である。
【図11】実施形態に係るフレキシブル多層配線板の製造工程図(その9)である。
【図12】有限要素法解析法による多層配線板の表面沈み込み解析結果を示す。
【図13】実施形態の変形例1に係るフレキシブル多層配線板を用いたフレキシブル半導体装置の上面図(a)、断面図(b)である。
【図14】実施形態の変形例2に係るフレキシブル多層配線板を用いたフレキシブル半導体装置の断面図である。
【図15】実施形態の変形例3に係るフレキシブル多層配線板を用いたフレキシブル半導体装置の断面図である。
【図16】実施形態の変形例4に係るフレキシブル多層配線板を用いたフレキシブル半導体装置の上面図(a)、断面図(b)である。
【図17】実施形態の変形例5に係るフレキシブル多層配線板を用いたフレキシブル半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。尚、図中同一の機能又は類似の機能を有するものについては、同一又は類似の符号を付して説明を省略する。
【0015】
[第1の実施形態]
[フレキシブル多層配線板]
図1に示すように、第1の実施形態にかかるフレキシブル多層配線板30は、第1主面M及び第1主面Mに対向する第2主面Mを備える接着剤層1Aと、接着剤層1A上に配置された、第2主面Mと接する第3主面M及び第3主面Mに対向する第4主面Mを備える低弾性率素材で形成された絶縁性基材層2Aとを有する基材10Aを有する。フレキシブル多層配線板30は、基材10Aと同様の構成を備える基材10B,10Cと、最外郭基材10Dをさらに有する。複数の基材10A…10C及び最外郭基材10Dは、基礎基板300上に、接着剤層1A、絶縁性基材層2A、…接着剤層1D、絶縁性基材層2Dという具合に、接着剤層1A…1Dと絶縁性基材層2A…2Dとが交互に積層されている。最外郭基材10Dの第4主面Mの一部にはワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bが設けられている。最外郭基材10Dの接着剤層1D中には、接着剤層1Dよりも弾性率が高いビア層9A,9Bが埋設されている。ここでは、最外郭基材10Dの第4主面Mから最外郭基材10Dの第1主面Mに至る貫通孔が設けられ、貫通孔にビア層9A,9Bが埋設されている。最外郭基材10Dの接着剤層1D中に、接着剤層1Dよりも弾性率が高いビア層9A,9Bを埋設することで、沈み込みが防止される。また接着剤層1Dにより決定される沈み込み量を減少できるために、基板表面のたわみが抑制される。
【0016】
基材10Aの第1主面M上には配線12Aが形成され、基材10B,10C,最外郭基材10Dの第1主面Mにおいてもそれぞれ配線12B,12C,12Dが形成されている。配線12Aと配線12Bは基材10Aの第1主面Mから第4主面Mの貫通孔に埋設された配線ビア15A、15A、15A、15Aを介して電気的に接続されている。同様にして配線12Bと配線12Cは、配線ビア15B、15B、15Bを介して電気的に接続され、配線12Cと配線12Dは、配線ビア15C、15C、15Cを介して電気的に接続され、配線12Dと電極パッド5A,5Bは、配線ビア15D、15Dを介して電気的に接続されている。
【0017】
ビア層9A,9Bの材質としては、接着剤層1Dよりも弾性率の高い材料が好ましい。沈み込みを効果的に防止してくれるからである。また弾性率が高いビア層9A,9Bを用いることで、超音波の振動伝達効率が上昇するからである。ビア層9A,9Bとしては、接着剤層1A…1Dよりも1桁以上弾性率が高い材料が好ましく、2桁以上弾性率が高い材料がより好ましい。なお、ビア層9A,9Bは、最外郭基材10Dの接着剤層1D中に配置されるのであれば特に制限はないが、より沈み込み防止効果が期待できるので、ワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bの真下に配置することが好ましい。
【0018】
ビア層9A,9Bとしては、例えば、金属材料もしくは無機材料を用いることができる。金属材料としては、銅(Cu)、銀(Ag)、錫(Sn)や、Agペースト等の導電ペーストを用いることができる。無機材料としては、焼結セラミック、無機フィラー入り樹脂、無機フィラー入り焼結ペースト等を用いることができる。
【0019】
ビア層9A,9Bは、電気的に接続される配線であっても、電気的に接続されないダミー配線であっても構わない。ビア層9A,9Bは、配線12A…12Dや、配線ビア15A…15Dと同一素材であっても構わない。生産工程の簡略化が図れるという観点からは、ビア層9A,9Bと、配線12A…12D、配線ビア15A…15Dと同一素材とすることが好ましい。ビア層9A,9Bの形状は特に制限されないが、後に図2(a)を用いて説明するように円柱状のものを用いることができる。
【0020】
絶縁性基材層2A…2Dとしては、低弾性率素材で形成された基材を用いることができる。具体的には全芳香族ポリイミド(API)等によるポリイミドフィルムやポリエステルフィルム等の可撓性を有する樹脂フィルムを用いることができる。なかでもポリイミドフィルムを用いることが好ましい。可撓性があり曲げられるからである。またガラスエポキシ樹脂よりも誘電率が低く、高速伝送特性が高いからである。なお、ポリイミドフィルム以外にも、エポキシ系、イミド系のプリプレグなどを絶縁性基材層2A…2Dとして使用することも可能である。
【0021】
接着剤層1A…1Dは、接着剤の塗布以外に、熱可塑性ポリイミド、もしくは熱可塑性ポリイミドに熱硬化機能を付与したフィルムの貼り付けにより形成することができる。
【0022】
[フレキシブル半導体装置]
上述の通り、フレキシブル多層配線板30は、沈み込みが防止される。かかる特性を生かす用途としては、図2(a)に示すような、半導体素子20Aと、半導体素子20Aの周囲に配置されたワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bがワイヤ3A,3Bにより電気的に接続されたフレキシブル半導体装置31が挙げられる。図2(b)に示すように、フレキシブル半導体装置31は、第1主面M及び第1主面Mに対向する第2主面Mを備える接着剤層1A…1Dと、接着剤層1A…1D上に配置された、第2主面Mと接する第3主面M及び第3主面Mに対向する第4主面Mを備える低弾性率素材で形成された絶縁性基材層2A…2Dとを有する基材を複数有する。接着剤層1A…1Dと絶縁性基材層2A…2Dとが交互に、複数の基材10A…10Cと最外郭基材10Dが、積層されている。フレキシブル半導体装置31の最外郭基材10Dの第4主面Mの一部にはワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bが設けられている。図2(a)の一部切り欠きの上面図に示すように、最外郭基材10Dの接着剤層1D中に接着剤層1Dよりも弾性率が高いビア層9A,9Bが埋設されている。ここではビア層9A,9Bは円柱状の形状をしている。最外郭基材10Dの第4主面Mの一部には半導体素子20Aが配置され、半導体素子20Aとワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bがワイヤ3A,3Bにより電気的に接続されている。ワイヤ3A,3Bをワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bに熱圧着させても、フレキシブル半導体装置31においては、沈み込みが防止されるので、ワイヤ3A,3Bとワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bの接続強度が確保される。また最外郭基材10Dの第4主面Mから最外郭基材10Dの第1主面Mに至る貫通孔が設けられ、貫通孔にビア層9A,9Bが埋設されている。そのため、ビア層9A、9Bを配線ビアとして、使用してワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bとビア層9A、9Bを電気的に接続させることで、半導体素子20Aからの信号を最短距離で基材10Cに送ることができる(この逆の経路も同様)。そのため、配線抵抗を最小にでき、信号伝送速度が速くなる。また、従来、LVH構造においては、LVH直上にボンディングすることが困難であり、ワイヤーボンディング電極パッドを引き回す必要があったが、これにより、ワイヤーボンディング電極パッドを引き回す必要が無くなる。
【0023】
[フレキシブル多層配線板の製造方法]
以下に、フレキシブル多層配線板30(フレキシブル半導体装置31)の製造方法について説明する。
【0024】
(イ)図3に示すように、第3主面M及び第3主面Mに対向する第4主面Mを備える低弾性率素材で形成された絶縁性基材層102Aを用意する。ここではポリイミドで形成されたものを用意する。第4主面M上には、例えば銅からなる導電材料112Aを付しておく。
【0025】
(ロ)図4に示すように、絶縁性基材層102A上に、第1主面M及び第1主面Mに対向する第2主面Mを備える接着剤層101Aを配置する。ここでは、第3主面Mに接する面が第2主面Mとなる。図5に示すように導電材料112A上に所望のパターンの開口部(図示せず)を備えるマスク200を配置する。接着剤層101Aの第1主面M上に所望のパターンの開口部(図示せず)を備えるマスク201を配置する。
【0026】
(ハ)エッチングにより図6に示すように配線12Aを形成する。レーザビーム照射により図7に示すように孔15Ah、15Ah、15Ah、15Ahを形成する。レーザビーム照射の他にも、エッチングや、レーザビーム照射とエッチングとの組み合わせによっても孔15Ah…15Ahを形成してもよい。図8に示すように、スキージSを用いたスキージ印刷法等により孔15Ah…15Ahに金属からなる導電ペーストを埋め込んで配線ビア15A…15Aを形成して基材10Aを製造する。なお、スキージ印刷法の他に、ビア層の形成方法としては、電解めっき法、無電解めっき法、スクリーン印刷、スパッタ法等を用いてもよい。
【0027】
(ニ)上述の(イ)〜(ハ)工程を繰り返して、基材10B、10C、最外郭基材10Dを形成する。基材10A…10C、最外郭基材10Dの少なくとも1つに、ワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bが形成される真下に当たる部分に孔を設ける。ここでは、図7と同様にして最外郭基材10Dの第4主面Mから最外郭基材10Dの第1主面Mに至る孔を設ける。そして、図8と同様にして孔に接着剤層1Dよりも弾性率が高いビア層9A,9Bを埋設してビア層9A,9Bを形成する。接着剤層1A…1Dと絶縁性基材層2A…2Dとが交互になるように、複数の基材10A…10C、最外郭基材10Dを積層させて図9に示すような仮基板130を得る。なお、ビア層9A,9Bは配線ビア15D、15Dの作製よりも前(先)に作製しても良い。
【0028】
(ホ)図10に示すように、最外郭基材10Dの第4主面Mに導電性材料114を設ける。その後、図11に示すように、導電性材料114上にマスク202を配置する。マスク202はワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bが形成される部分に開口部(図示せず)を備える。そしてエッチングにより、ビア層9A,9Bの上部に当たる最外郭基材10Dの第4主面Mの一部にワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bを設ける。以上により図1に示す、フレキシブル多層配線板30が製造される。
【0029】
(ヘ)さらに、最外郭基材10Dの第4主面Mに半導体素子20Aを配置し、ワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bと半導体素子20Aをワイヤ3A,3Bを用いて電気的に接続することにより、図2に示すようなフレキシブル半導体装置31が製造される。
【0030】
第1の実施形態によれば、最外郭基材10Dの接着剤層1D中に、接着剤層1Dよりも弾性率が高いビア層9A,9Bを形成することで、沈み込みが防止される。また、沈み込みが防止されるだけでなく、相対的にビア層9A,9B直上のワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bのたわみを抑制してくれるので、ボンディング荷重面の平坦性が向上する。ビア層9A、9Bを用いることで、超音波の振動伝達効率が上昇する。さらに、スクリーン印刷、電解めっき法等の既存技術で対応可能であり、配線ビア15D,15Dとビア層9A、9Bを同時に形成可能できることから、工程数の増加、生産コストを抑えることができる。
【0031】
[第2の実施形態]
[フレキシブル半導体装置]
以下に第1の実施形態との相違点を中心に、フレキシブル半導体装置31の説明を通して第2の実施形態について説明する。なお、フレキシブル半導体装置31の説明を行うことで、第2の実施形態に係る配線基板の説明を行うことにもなる。
【0032】
第1の実施形態においては、ワイヤーボンディング時のワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bの沈み込みを防止することにより、フレキシブル半導体装置31のワイヤ3A,3Bとワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bの接続強度を確保した。しかし、その他にもフレキシブル多層配線板30の有する基板表面のたわみ抑制効果によっても、ワイヤ3A,3Bとワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bの接続強度を確保することができる。
【0033】
第1の実施形態においては、最外郭基材10Dの接着剤層1D中に接着剤層1Dよりも弾性率が高いビア層9A,9Bが埋設されていた。第2の実施形態においては、最外郭基材10Dの接着剤層1D中にワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bよりも弾性率が高いビア層9A,9Bが埋設されている。このように構成することで、基板表面のたわみを抑制することができる。ビア層9A,9Bが最外郭基材10Dの接着剤層1D中に配置されるのであれば特に制限はないが、ワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bの真下に配置することが好ましい。
【0034】
ワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bとしては、銀(Ag)、銅(Cu)等を用いることができる。銀の弾性率は80GPa程度である。よって、ワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bとして銀を用いたときは、ビア層9A,9Bとしては弾性率が80GPaよりも大きいものを用いることが好ましい。
【0035】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1、第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0036】
例えば、第1、第2の実施形態においては、ビア層9A、9Bは金属材料で形成した。しかし、金属材料に限定されることなく、ビア層9A、9Bを無機材料で形成されたものに置き換えても構わない。例えば、図2(b)のように基板10Cとビア層9A、9Bとを電気的に接続すると、基材10Cの絶縁性基材層2C上に配線を形成できない等の不都合が生じる場合に有効である。
【0037】
また第1、第2の実施形態のそれぞれにおいて、ビア層9A,9Bは最外郭基材10Dの接着剤層1D中に埋設され、所定の弾性率を有するのであれば形状は特に制限されない。例えば、図2(a)ではビア層9A,9Bは円柱状としたが、図13(a)の上面図に示すように、ドーナツ状のビア層19A,19Bを用いたフレキシブル半導体装置32としてもよい。なお、ビア層9A,9B、19A,19Bはワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bの径より大きくてもよい。また、図14に示すように、最外郭基材10Dの第2主面M2から最外郭基材10Dの第1主面M1に至る貫通孔を設け、貫通孔にビア層29A,29Bを埋設したフレキシブル半導体装置33としてもよい。例えば、図2(b)に示すように基材10Cとビア層9A、9Bとを電気的に接続したくない場合、無機材料を用いることなく、配線ビア15D,15Dと同一の金属材料からなるビア層29A、29Bを用いることができるので、材料の管理が容易になる等で有利である。またワイヤーボンディング電極パッド4A径が小さく、レーザー加工技術の精度の問題等でワイヤーボンディング電極パッド4A径よりも小さい径を備えるビア層を設けることができず絶縁性基材層2Dを貫通することが困難な場合であっても、図14の構成であれば、課題を解消できるからである。
【0038】
また図16(a)の上面図に示すように、ビア層はワイヤーボンディング電極パッド4A,4Bのそれぞれの下方に、図1のビア層9A,9Bよりも小径のビア層を1層の基材中に複数配置したフレキシブル半導体装置35としてもよい。基材間の線膨張係数差による熱応力を緩和できるという作用効果が得られるからである。
【0039】
第1、第2の実施形態のそれぞれにおいて、さらに、図17に示すように半導体素子20Aの真下に埋設半導体素子20Bをさらに配置してもよい。半導体素子20A,埋設半導体素子20B間の配線距離を短くすることで演算速度が向上するからである。
【0040】
第1、第2の実施形態において、ビア層は1層に限られず、図15に示すように、最外郭基材10Dと接する基材10Cにビア層39A、39Bを設け、2層としたフレキシブル半導体装置34としてもよい。ビア層を2層とすることで、沈み込みや、たわみを効果的に防止できるからである。
【0041】
第1、第2の実施形態においては、図2(b)に示すように基礎基板300上に基材10A…10Dを積層させることとした。しかし、接着剤層1Aの図面下方に、基礎基板300の代わりに、絶縁性基材層2Dと同様の構成を備える新たな絶縁性基材層を設け、配線基板30の主両面に電極を形成する構成としても構わない。
【0042】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0043】
三次元解析モデルを用いて弾性解析を行った。図12に、有限要素法解析法(アンシス社製、商品名「アンシス(ANSYS)11.0」の汎用プログラム)による多層配線板の表面の沈み込み解析結果を示す。
【0044】
本解析では、絶縁性基材としてポリイミドを想定し、接着剤層としてエポキシ樹脂系接着剤を想定した。(1)実施例として、ワイヤーボンディング電極パッド直下に金属ビア層を形成した多層配線板、(2)比較例1としてワイヤーボンディング電極パッドの厚みを通常の2倍厚くした多層配線板、(3)比較例2として通常の多層配線板の3種類について解析した。
【0045】
実施例では、ビア径を100μmとし、ビア層の弾性率を80GPa(Agの弾性率)とした。解析条件として、ボンディング加圧面積を40μmとし、250MPa(荷重40gfに相当)をワイヤーボンディング電極パッドに負荷した。また、評価条件として、多層配線基板表面の法線方向(垂直方向)の変位を用いた。
【0046】
図12から、ビア層をワイヤーボンディング電極パッド直下に形成することで、ワイヤーボンディング電極パッド直下にビア層を形成しない多層配線基板に比べて、多層配線基板表面の法線方向変位を1/3にまで低減できた。この結果から、平坦性を向上でき、ボンディング圧力の分布も抑制できることが確認できた。
【0047】
また、ワイヤーボンディング電極パッドを2倍に厚くした多層配線基板と比べても、ワイヤーボンディング電極パッド直下にビア層を形成した多層配線基板では、多層配線基板表面の法線方向変位を50%低減できることが確認できた。
【0048】
以上より、実施例によれば、ワイヤーボンディング電極パッドの厚膜化よりもボンディング信頼性が向上した。また金属ビア層により、超音波の振動伝達効率も向上した。よって、ワイヤーボンディング電極パッドの厚膜化や接着材の高弾性率化よりもボンディング性能が向上するものと期待できる。
【0049】
また、プロセス面において、ワイヤーボンディング電極パッド直下に形成するビア層は、Cuめっき法、ペースト印刷、スパッタ法等により形成できる。いずれの方法であっても、通常の基板プロセスで対応でき、既存の配線ビア層と同時に形成可能であることから、コスト上昇や工程数増加につながらないというメリットがある。
【符号の説明】
【0050】
30…フレキシブル多層配線板、
31…フレキシブル半導体装置、
10A、10B、10C…基材、10D…最外郭基材、
1A…接着剤層、M…第1主面、M…第2主面
2A…絶縁性基材、M…第3主面、M…第4主面
4A,4B…ワイヤーボンディング電極パッド、
9A,9B…ビア層、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び前記第1主面に対向する第2主面を備える接着剤層と、
前記接着剤層上に配置された、前記第2主面と接する第3主面及び前記第3主面に対向する第4主面を備える低弾性率素材で形成された絶縁性基材層とを有する基材を複数有し、
前記接着剤層と前記絶縁性基材層とが交互に積層されたフレキシブル多層配線板であって、
最外郭基材の第4主面の一部にワイヤーボンディング電極パッドが設けられ、前記最外郭基材の前記接着剤層中に前記接着剤層よりも弾性率が高いビア層が埋設されていることを特徴とするフレキシブル多層配線板。
【請求項2】
前記ビア層が前記ワイヤーボンディング電極パッドの真下に埋設されていることを特徴とする請求項1記載のフレキシブル多層配線板。
【請求項3】
前記最外郭基材の第4主面から前記最外郭基材の第1主面に至る貫通孔が設けれ、前記貫通孔にビア層が埋設されていることを特徴とする請求項2記載のフレキシブル多層配線板。
【請求項4】
前記最外郭基材の第2主面から前記最外郭基材の第1主面に至る貫通孔が設けれ、前記貫通孔にビア層が埋設されていることを特徴とする請求項2記載のフレキシブル多層配線板。
【請求項5】
前記ビア層が金属材料もしくは無機材料であることを特徴とする請求項1記載のフレキシブル多層配線板。
【請求項6】
前記絶縁性基材が、ポリイミドで形成されたことを特徴とする請求項1記載のフレキシブル多層配線板。
【請求項7】
第1主面及び前記第1主面に対向する第2主面を備える接着剤層と、
前記接着剤層上に配置された、前記第2主面と接する第3主面及び前記第3主面に対向する第4主面を備える低弾性率素材で形成された絶縁性基材層とを有する基材を複数有し、
前記接着剤層と前記絶縁性基材層とが交互に積層されたフレキシブル半導体装置であって、
最外郭基材の第4主面の一部にワイヤーボンディング電極パッドが設けられ、前記最外郭基材の前記接着剤層中に前記ワイヤーボンディング電極パッドよりも弾性率が高いビア層が埋設され、
前記最外郭基材の第4主面の一部に半導体素子が配置され、前記半導体素子と前記ワイヤーボンディング電極パッドがワイヤにより電気的に接続されていることを特徴とするフレキシブル半導体装置。
【請求項8】
前記フレキシブル半導体装置内に埋設半導体素子が埋設され、前記最外郭基材の第4主面から前記埋設半導体素子の表面に至る貫通孔が設けられ、前記貫通孔にビア層が埋設され、前記ワイヤーボンディング電極パッドと前記埋設半導体素子が電気的に接続されていることを特徴とする請求項7記載のフレキシブル半導体装置。
【請求項9】
第1主面及び前記第1主面に対向する第2主面を備える接着剤層上に、第3主面及び前記第3主面に対向する第4主面を備える低弾性率素材で形成された絶縁性基材層を配置して複数の基材を製造する工程と、
前記基材の少なくとも1つに、ワイヤーボンディング電極パッドが形成される真下に当たる部分に孔を設け、前記孔に前記ワイヤーボンディング電極パッドよりも弾性率が高い材料を充填してビア層を形成する工程と、
前記接着剤層と前記絶縁性基材層とが交互になるように前記複数の基材を積層させて仮基板を製造する工程と、
前記ビア層の上部に当たる最外郭基材の第4主面の一部に前記ワイヤーボンディング電極パッドを設ける工程
とを有することを特徴とするフレキシブル多層配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−9560(P2012−9560A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142964(P2010−142964)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】