説明

フレキシブル積層基板の製造方法

【課題】品質のばらつきを抑え、かつ寸法安定性に優れたフレキシブル積層基板の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリイミド前駆体樹脂溶液を導体上に直接塗布、乾燥した後、熱処理により硬化させて導体層とポリイミド樹脂層とからなるフレキシブル積層基板を製造する方法において、ポリイミド前駆体樹脂が、テトラカルボン酸又はその酸無水物(イ)とジアミノ化合物(ロ)とを(イ)/(ロ)のモル比が0.98±0.01の範囲に調整して得られるものとし、ポリイミド樹脂層の線膨張係数を10×10-6/K以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル積層基板の製造方法に係り、詳しくはポリイミド前駆体樹脂溶液を導体上に直接塗布してフレキシブル積層基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル積層基板は、可とう性を有するフレキシブル回路基板に用いられるが、中でも、絶縁樹脂層にポリイミド樹脂層を有するフレキシブル積層基板は、優れた耐熱性を有することから広く使用されている。
絶縁樹脂層にポリイミド樹脂層を設ける手段としては、銅箔等の導体にポリイミド樹脂層を接着層を介して加熱圧着により積層する方法が知られている。
しかし、接着層の存在は、ポリイミド樹脂を用いたフレキシブル積層基板の種々の特性を低下させる要因になっていた。例えば、従来のフレキシブル積層基板は、エポキシ樹脂やウレタン樹脂等の接着剤を用いてポリイミドフィルムを導体上に貼り合わせていたが、接着剤の耐熱性が劣り、ハンダで高温に加熱した際にふくれや剥がれを生じたり、あるいは、回路の難燃性を低下させるという問題があった。また、高温に加熱する際に寸法が変化したり、回路に加工する際に使用される種々の薬品により接着剤が侵されてその接着力が低下したりするというような問題もあった。
【0003】
そこで、ポリイミド前駆体樹脂溶液を銅箔等の導体上に直接塗布してフレキシブル積層基板を製造する方法が考案された。
その際、ポリイミド前駆体樹脂溶液を塗布して硬化させた後に導体と樹脂の線膨張係数の差により生じるカールを矯正する方法としては、低線膨張樹脂を塗布し導体と絶縁層との線膨張係数の差を小さくする方法(特許文献1参照。)、硬化反応を進める前にある範囲の温度で一定量以上の溶剤を乾燥することにより、カールを防止する方法(特許文献2参照。)、複数のポリイミド前駆体樹脂溶液を順次塗布して、前駆体樹脂層を熱処理により硬化してフレキシブル積層基板を製造する方法(特許文献3参照。)などが提案された。
【0004】
しかし、近年、益々、電子機器の高性能化、特に半導体素子の高集積化、高機能化が進み、プリント配線板においては配線の高密度化が求められるようになり、上記のような従来の方法だけでは、要求されるような寸法安定性に優れたフレキシブル積層基板を製造することは難しくなってきた。
一方、絶縁層に使用されるポリイミド樹脂層は、酸二無水物とジアミンを、通常、仕込みモル比1で重合して得られたポリイミド前駆体樹脂溶液を加熱処理することにより得られ、その際、分子量制御のために多少モル比を調整することもある。しかし、その分子量制御は、積層基板への絶縁層の形成やポリイミドフィルム製造の際の樹脂粘度を調整し、それらの製造を容易にするためになされることがほとんどであり、そのモル比をごく限られた範囲とすることで、ポリイミドの寸法安定性に寄与する特性を制御することは知られていなかった。また、上記モル比を変更することは品質のばらつきにつながるため好ましくない一面も有していた。
【特許文献1】特開昭60-243120号公報
【特許文献2】特開平1-245587号公報
【特許文献3】特開平8-250860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来の技術では、フレキシブル積層基板の品質のばらつきが大きく、かつ寸法安定性の制御が十分でないという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、ポリイミド前駆体樹脂溶液を導体上に直接塗布して乾燥・硬化することにより得られるフレキシブル積層基板の品質のばらつきを抑え、かつ寸法安定性に優れたフレキシブル積層基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、フレキシブル積層基板を製造するにあたり、ポリイミド前駆体樹脂溶液中の原料モル比を中心に製造条件を制御することで課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリイミド前駆体樹脂溶液を導体上に直接塗布、乾燥した後、熱処理により硬化させて、導体層とポリイミド樹脂層とを有するフレキシブル積層基板を製造する方法において、ポリイミド前駆体樹脂が、テトラカルボン酸又はその酸無水物(イ)とジアミノ化合物(ロ)とを(イ)/(ロ)のモル比が0.98±0.01の範囲に調整して得られるものであり、そのポリイミド前駆体樹脂を硬化して形成されるポリイミド樹脂層の線膨張係数を10×10−6/K以下とすることを特徴とするフレキシブル積層基板の製造方法である。
【0009】
ここで、ポリイミド前駆体樹脂としては、下記一般式(1)
【化1】

(但し、式中Ar1は芳香環を一個以上有する4価の有機基であり、Yは直結合、−CONH−、−CO−、−O−、−COO−、−SO2−、−CH2のいずれかであり、またX1、X2はH、炭素数1〜5の低級アルキル基又は低級アルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基のいずれかであり、それぞれ異なるものであってもよい。)で示される構成単位を主成分とすることが好ましい。また、硬化後のポリイミド樹脂層の厚みは、10〜50μmであることが有利である。
【0010】
更に、本発明のフレキシブル積層基板の製造方法においては、ポリイミド前駆体樹脂溶液の粘度を、10,000〜40,000cPの範囲とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリイミド樹脂の特徴である耐熱性やその他の物性を保持したまま、寸法安定性に優れたフレキシブル積層基板を品質のばらつきなく製造することができ、近年の高耐熱、ファインパターン加工性の要求に応えたフレキシブル積層基板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
本発明では、ポリイミド前駆体樹脂溶液を導体上に直接塗布する。ポリイミド前駆体樹脂溶液が塗布される導体は、導電性を有する金属箔であることが望ましい。金属箔としては、銅箔、ステンレス箔、合金箔等がある。ここで、合金箔とは銅箔を必須として含有し、クロム、ニッケル、亜鉛、珪素等の元素を少なくとも一種以上含有する金属箔を示し、銅含有率90%以上の金属箔をいう。金属箔を使用する場合、亜鉛メッキ、ニッケルメッキ、シランカップリング材等による表面処理を施してもよい。
【0014】
近年、金属配線のファインピッチ化に伴い、薄い金属箔が好まれて使用されている。そのような観点から、好ましい金属箔の厚みは5〜35μm、更に好ましくは8〜18μmの範囲である。また、使用する金属箔は、ポリイミド樹脂層と接する面の表面粗度(Rz)が0.5〜2.0μmの範囲であることが好ましい。表面粗度(Rz)が0.5μm未満の場合、金属箔とポリイミド樹脂層との接着性が不足するおそれがあり、2.0μm以上の場合、近年のファインピッチ化に対応するに好ましくない傾向となり、また、回路加工時に発生するポリイミド樹脂層への金属成分の根残りも懸念される。
【0015】
本発明において、ポリイミド前駆体樹脂溶液は、公知のジアミノ化合物とテトラカルボン酸又はその無水物を適宜選定し、これらを組み合わせて有機溶剤中で反応させて得ることができる。その際、テトラカルボン酸又はその酸無水物(イ)とジアミノ化合物(ロ)との仕込みモル比(イ)/(ロ)は0.98±0.01の範囲にすることが必要であり、0.98±0.005の範囲が好ましい。
この範囲をはずれると、硬化後のポリイミド樹脂層の線膨張係数が10×10-6/Kよりも大きくなる傾向にあるため、寸法安定性に優れたフレキシブル積層基板を得るためには好ましくない。同時に、モル比が0.97未満では、ポリイミド前駆体樹脂溶液の分子量が低くなりすぎてしまい、硬化させてポリイミド樹脂層としたときに、十分な性能が得られない場合がある。また、モル比が0.99を超えると、分子量が大きく高粘度となるため、導体上に塗布する際に気泡を巻き込む等、操作性が悪くなる場合がある。
更に、ポリイミド前駆体樹脂溶液を導体上に塗布する際の粘度は、10,000〜40,000cP、より好ましくは20,000〜40,000cPの範囲とすることが有利である。
【0016】
本発明において、特に好ましいポリイミド樹脂層を与えるポリイミド前駆体樹脂としては、下記一般式(1)で示される構成単位を主成分とするポリイミド前駆体樹脂である。
【化2】

【0017】
一般式(1)中、Ar1は芳香環を一個以上有する4価の有機基であり、Yは直結合、−CONH−、−CO−、−O−、−COO−、−SO2−、−CH2のいずれかであり、またX1、X2はH、炭素数1〜5の低級アルキル基又は低級アルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基のいずれかであり、X1、X2はそれぞれ異なるものであってもよい。ここで、ポリイミド樹脂層の耐熱性、線膨張係数に代表される寸法安定性、その他の諸物性とのバランスを考慮すると、以下に示す酸無水物残基及びジアミン残基を与えるものが好ましい。
【0018】
一般式(1)中、Ar1は、テトラカルボン酸又はその無水物の残基を示し、芳香環を一個以上有する4価の有機基である。代表的なテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独で使用することも、又は2種以上併用することもできる。これらの中でも、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が好ましい酸二無水物として挙げられる。
【0019】
また、一般式(1)中、Yは直結合又は-CO-,-O-,-CONH-のいずれかがより好ましく、
X1、X2はH、-CH3,-0CH3のいずれかがより好ましい。これらのジアミン残基を与える好ましいジアミノ化合物を例示すると、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノベンズアニリド,2’-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリド等が挙げられ、これらを単独で使用することも、又は2種以上併用することもできる。
【0020】
本発明においては、ポリイミド前駆体樹脂溶液に使用されるポリイミド前駆体樹脂としては、上記一般式(1)で示した構成単位を主成分とするものを使用することが好ましく、更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上を一般式(1)に示した構成単位を有するものとすることがよい。一般式(1)で示したポリイミド前駆体以外の構成単位のものを使用する場合も公知のテトラカルボン酸又はその酸無水物とジアミノ化合物とを適宜組み合わせて本発明で用いるポリイミド前駆体樹脂とすることができる。
【0021】
ポリイミド前駆体樹脂溶液は、通常適当な溶媒に溶解された状態で導体上に塗布される。このポリイミド前駆体樹脂溶液を直接導体上に塗布することで、導体−ポリイミド樹脂層の安定した接着強度を得ることができる。
塗布する手段は特に限定されるものではなく、例えば、バーコード方式、グラビアコート方式、ロールコート方式、ダイコート方式等が挙げられるが、樹脂溶液に泡が巻き込まれないことからダイコート方式が好ましい。
ポリイミド前駆体樹脂溶液に含まれる溶剤を例示すると、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ダイグライムなどが挙げられる。
【0022】
導体上に塗布する際のポリイミド前駆体樹脂層の厚みは、硬化後のポリイミド樹脂層の厚みが10〜50μm、より好ましくは20〜40μmとなるように塗布する。ポリイミド樹脂層の厚みが10μm以下では、ポリイミド樹脂層としての性能を充分に発揮できない場合があり、50μm以上では、近年の電子機器の薄型化に反するため不利な設計となり、また線膨張係数も大きくなるおそれがあり、その場合、寸法安定性に劣るものとなる。
【0023】
導体上に塗布されたポリイミド前駆体樹脂層は、溶媒をある程度除去するために適当な範囲まで乾燥される。この際の乾燥温度は、ポリイミド前駆体樹脂層のイミド化が進行しない程度の温度で行うことが好ましく、具体的には、150℃以下であることがよく、110〜140℃の範囲が好ましい。また、この際の乾燥時間が短すぎると、乾燥が不十分となり硬化後の線膨張係数が大きくなる傾向にあるため、この乾燥工程でポリイミド前駆体樹脂層に含まれる溶媒量をポリイミド前駆体樹脂100質量部に対して、50質量部以下となるようにしておくことが望ましい。
【0024】
以上のように、導体上にポリイミド前駆体樹脂溶液を塗布、乾燥したら、導体上のポリイミド前駆体樹脂層は更に加熱処理され熱硬化される。ここでいう硬化とは、イミド化反応を強制的に進めて樹脂の硬化を促す工程をいう。
このイミド化反応は、通常150℃を越える温度、特に160℃を越える温度で速やかに進行する。上記のように一定量以上の溶媒を蒸発させた後、150℃を越える温度で硬化を行うわけであるが、この硬化工程において、温度を急激に上昇させると樹脂の発泡が起こるおそれがあるので、多段階熱処理もしくは連続昇温処理を行うのが好ましい。イミド化反応を充分行うために、最高硬化温度は250℃以上、好ましくは300℃以上である。なお、硬化温度は高すぎると樹脂の分解を招くため、450℃以下で行うことが好ましい。また、イミド化に要する時間は5分〜60分、好ましくは5〜30分の範囲が適切である。
【0025】
このような乾燥工程、硬化工程は任意のプロセスを採用することができるが、塗布された導体が、装置に接触しないフローティング形式のものを使用することが好ましい。フローティング形式とは、導体を気流中に浮遊させた状態で乾燥及び硬化を行うものであり、導体を連続的に走行させつつ、導体面に対して上又は下に配置したノズルから均一に気流を導体面に向けて吹き出し、走行する導体を浮遊させると共に、波を打つように湾曲しながら走行させるものである。加熱は熱風を気流として吹き出すことにより行うことが好ましいが、赤外線加熱、電磁誘導加熱等を使用又は併用してもよい。加熱雰囲気としては空気や、窒素、炭素ガス、アルゴン等の不活性ガス等のいずれも選択可能である。
【0026】
このようにして製造されたフレキシブル積層基板上のポリイミド樹脂層は、線膨張係数が10×10-6/K以下、有利には10×10-7〜10×10-6/Kとなるように制御される。ポリイミド樹脂層の線膨張係数の範囲を、10×10-6/K以下とするには、テトラカルボン酸又はその酸無水物(イ)とジアミノ化合物(ロ)とを(イ)/(ロ)のモル比が0.98±0.01の範囲とし、必要に応じてポリイミド前駆体樹脂の種類や前駆体樹脂の粘度や分子量の範囲を適当な範囲に制御することによって可能となる。ここで、使用されるポリイミド前駆体樹脂としては上記したポリイミド前駆体が好ましいが、その粘度は、10,000〜40,000cP、重量平均分子量は、1万〜15万の範囲とすることが好ましい。また、ポリイミド樹脂層の厚みが厚くなりすぎると、線膨張係数の制御が困難となるおそれがあるため、硬化後の厚みで10〜50μmの範囲が適切な厚みとなる。
【0027】
本発明によって得られるフレキシブル積層基板の絶縁樹脂層は上記ポリイミド樹脂層のみによって形成されていることが望ましいが、本発明の目的に反しない範囲で、ポリイミド樹脂層の上に他の層を設けてもよい。
他の層としては、上記以外のポリイミド樹脂層が好ましい。構成される層構造としては、M/PI-a、M/
PI-a /PI-b、M/PI-a/M、 M/ PI-a /PI-b/Mが例示される。ここで、Mは金属箔を、PI-aは線膨張係数が10×10-6/K以下のポリイミド樹脂層を、PI-bはその他のポリイミド樹脂層を示す。イミド化が完了した樹脂層の上には、必要に応じて金属箔を積層してもよい。この場合、金属箔は、加熱圧着など公知の方法を適用することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されないことは勿論である。なお、本発明の製造方法によって得られたフレキシブル積層基板の各特性の評価は下記の測定法によるものである。
[粘度]
粘度は、恒温水槽付のコーンプレート式粘度計(トキメック社製)にて、25℃で測定した。
[分子量]
分子量は、GPC(HLC-8020、東ソー株式会社製)にて、カラム温度40℃で測定し、ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。
た。
[線膨張係数(CTE)]
線膨張係数(CTE)は、3mm ×15mmのサイズのポリイミドフィルムを、熱機械分析(TMA)装置にて5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から260℃の温度範囲で引張り試験を行った。温度に対するポリイミドフィルムの伸び量から線膨張係数を測定した。
【0029】
なお、各例における略号はそれぞれ以下のものである。
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:
3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
m-TB:2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル
TPE-R:
1,3-ビス-(4-アミノフェノキシ)ベンゼン
DMAc:ジメチルアセトアミド
【0030】
(合成例1)
TPE-R 0.1モルとm-TB 0.9モルをDMAc255gに溶解した後、PMDA
0.748モルとBPDA0.187モルを徐々に加えて、反応させ、粘調なポリイミド前駆体樹脂溶液(ポリアミック酸A)を得た。得られた樹脂の粘度は550cP、重量平均分子量は36,953であった。
(合成例2〜合成例8)
原料のモノマーの仕込みモル比を表1に示す割合に変化させた以外は、合成例1と同様の方法でポリイミド前駆体樹脂溶液(ポリアミック酸B〜ポリアミック酸H)を得た。
【0031】
【表1】

【0032】
(実施例1)
電解銅箔(厚さ18μm)の鏡面上にポリアミック酸Cを、硬化後の樹脂層の厚みが約25μmとなるように塗布し、循環式熱風オーブン中で130℃で14分間乾燥した。ついで、160℃で4分、200℃で2分、230℃で2分、280℃で2分、320℃で2分、及び、380℃で2分、順次熱処理して硬化させフレキシブル積層基板を得た。得られたフレキシブル積層基板の銅箔をエッチングし、単層のポリイミドフィルムとし、CTEを測定したところ7.9ppm/Kであった。
(実施例2〜実施例5、比較例1〜比較例3)
表2に示すポリアミック酸を各々使用した以外は、実施例1と同様の方法でフレキシブル積層基板を得た。結果を表2にまとめた。
【0033】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体樹脂溶液を導体上に直接塗布、乾燥した後、熱処理により硬化させて、導体層とポリイミド樹脂層とを有するフレキシブル積層基板を製造する方法において、ポリイミド前駆体樹脂が、テトラカルボン酸又はその酸無水物(イ)とジアミノ化合物(ロ)とを(イ)/(ロ)のモル比が0.98±0.01の範囲に調整して得られるものであり、ポリイミド樹脂層の線膨張係数を10×10−6/K以下とすることを特徴とするフレキシブル積層基板の製造方法。
【請求項2】
ポリイミド前駆体樹脂が下記一般式(1)
【化1】

(但し、式中Ar1は芳香環を一個以上有する4価の有機基であり、Yは直結合、−CONH−、−CO−、−O−、−COO−、−SO2−、−CH2のいずれかであり、またX1、X2はH、炭素数1〜5の低級アルキル基又は低級アルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基のいずれかであり、それぞれ異なるものであってもよい。)で示される構成単位を主成分とすることを特徴とする請求項1記載のフレキシブル積層基板の製造方法。
【請求項3】
ポリイミド樹脂層の厚みが10〜50μmであることを特徴とする請求項1又は2記載のフレキシブル積層基板の製造方法。
【請求項4】
ポリイミド前駆体樹脂溶液の粘度が10,000〜40,000cPであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフレキシブル積層基板の製造方法。

【公開番号】特開2006−272626(P2006−272626A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92252(P2005−92252)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】