説明

フレーバーカプセルを含有するインスタント食品

本発明は、酵母、及び、この中に封じ込められた、賦香性成分及び/又は組成物を含有するフレーバーカプセルを含有するインスタント食品であって、その際このインスタント食品が13質量%以下の水含有量を有するインスタント食品に関する。このインスタント食品は、スープ、麺、又はシーズニング又はトッピングであってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、フレーバーカプセルを含有するインスタント食品、賦香性インスタント食品の製造方法、及び、フレーバーカプセルを含有するトッピングに関する。
【0002】
背景技術及び先行技術
インスタント食品は一般的には、比較的長い貯蔵時間を有するが、極めて短期間の間に、例えば数分間の間に調製されてよい製品である。
【0003】
フレーバーは、他方では、一般的に揮発性の化合物又は揮発性の化合物を含有する組成物であって、従って、論理的には、長期間の貯蔵に適しない。数日後には、食品中のフレーバーは食品から蒸発し、この食品の消費の間にもはや知覚されない。更に、フレーバーは、酸素暴露に対して時がたつにつれ感受性である可能性があり、従って分解する可能性がある。
【0004】
フレーバーのカプセル封入は、このような状況において利点をもたらす。しかしながら、長い貯蔵時間を有する食品中で封入されたフレーバーを用いる際には、数々の制限が満たされなくてはならない。重要なことは、フレーバーは、調製及び/又は消費の前に放出されてはならないことである。更に、湿ったインスタント食品の短い調製時間を考慮すれば、フレーバーは比較的短期間に、インスタント食品が調製された瞬間に放出される必要があり、これにより、新鮮さを消費者に印象付ける。加えて、少なくとも幾つかのフレーバーはこの調製時間の間にはすぐさま放出されないが、代わりに、消費の間に放出されることが重要であり、さもなければ、調製の間に高いフレーバーの影響が得られるものの、消費の間にはもはやフレーバーは得られない。
【0005】
フレーバー付与されたインスタント食品を、調製及び/又は消費まで、フレーバーが損なわれずに残り、かつ、揮発したり消失したりしないような様式で提供することが所望される。インスタント食品の調製、例えば温水の添加による調製の間に特定のフレーバーを放出させ、かつ、消費の間にこのフレーバーの増加した知覚を有することが特に所望される。
【0006】
多くのフレーバー系は、インスタント食品中での使用のために現在評価されている。しかしながら、既に市販されている比較可能な製品よりも、より良好な風味を消費者に提供することが不変の目的である。
【0007】
本発明は、1つ以上の前述の問題に取り組むこと、及び/又は、1つ以上の前述の利益を供給することに努める。
【0008】
発明の要旨
これに応じて、本発明は、酵母、及び、この中に封じ込められた賦香性成分又は組成物を含有するフレーバーカプセルを含有するインスタント食品であって、前記インスタント食品が20℃で測定して0.5を下回る水分活性を有するインスタント食品を提供する。
【0009】
他の観点において、本発明は、
a)酵母と水を混合して水性混合物を得る工程、
b)フレーバーを前記水性混合物に添加する工程、
c)フレーバーを含む前記水性混合物を、少なくとも一部のフレーバーが前記酵母中に導通されるまで撹拌する工程、
d)この生じる混合物を乾燥する工程、
e)この乾燥したカプセルを乾燥したインスタント食品に添加して、20℃で測定して0.5以下の水分活性を有するインスタント食品を製造する工程
を含有するインスタント食品の製造方法を提供する。
【0010】
また別の観点において、本発明は、乾燥した野菜及び/又はスパイス、及び、上記で定義したフレーバーカプセルを含有するトッピングであって、20℃で測定して0.5以下の水分活性を有するトッピングを提供する。
【0011】
更なる一観点において、本発明は、乾燥したインスタント麺と上記で定義した乾燥したトッピングを含有するインスタント食品を提供する。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、インスタント食品に関する。「インスタント食品」、「インスタント製品」、又は「食品」との用語は、本明細書中で、本発明のインスタント食品を示すために相互に交換可能にも使用される。
【0013】
インスタント食品は、迅速な調製のために設計された食料又は飲料である。迅速とは、本発明の目的のためには、10分間以内の調製時間を指す。
【0014】
インスタント食品は、液体を用いた再構成前には乾燥製品である。「乾燥食品」とは、本発明の目的のためには、0.5を下回る、有利には0.45を下回る、より有利には0.4を下回る、更に一層有利には0.35を下回る、更には0.3を下回る水分活性を有する食品である。最も有利には、この水分活性は0.25、0.2、0.15を下回り、又は0.1を下回りさえもする。
【0015】
これは本発明にとって鍵であり、というのは、本発明者らは、食品が極めて乾燥している場合に、インスタント食品の一部であるフレーバーカプセルのより良好な安定性が達成されることができることを見出したからである。
【0016】
水分活性は、Aqualab CX-2装置(Decagon Devices, Inc., Pullman, Washington, USA)を用いて測定される。前記装置は、使用者マニュアルに従って使用されるべきである。特に、前記装置に対して連結される恒温水槽は、20℃に調節される。この手順は、このために予定されるチャンバー中で試料が恒温になった際に開始され、この手順の終了時に、温度がまだ20±0.5℃であることを確認すべく確かめられる。
【0017】
乾燥インスタント食品は、有利には、13質量%以下、より有利には12質量%以下、更に一層有利には11質量%以下の水含有量を有する。例えば、インスタント食品は、この製品の全質量に対して3〜10質量%の範囲内の水含有量を有する。
【0018】
本発明の文脈において、パーセンテージ又は部は一般的には、特に記載がなければ、乾燥材料の質量に対するパーセンテージ又は部であり、例えば、水溶液又は固形物のパーセンテージが参照され、この場合にはパーセンテージは、水を含めた全溶液の部を指す。
【0019】
有利な一実施態様において、インスタント食品は、温水をインスタント食品に添加することにより調製される。温水とは、本発明の目的のためには、50℃より高い、より有利には60℃より高い、更に一層有利には70℃、80℃、90℃よりも高い温度を有する水である。この水の添加後に、この製品は次いで、0.5〜10分後に、有利には2〜8分後に消費のための準備が整う。
【0020】
又は、本発明のインスタント食品は、このインスタント食品を水中で上記した期間にわたり沸騰させることにより消費のための準備が整ってよい。
【0021】
本発明のインスタント食品は、任意の乾燥食料であってよい。例えば、インスタント食品は、デンプン源、野菜及び/又は果物、脂質及び/又はタンパク質源、例えば動物、魚類及び/又は植物由来のもの、を含む完成した料理又は食べ物であってよい。食品が完成した料理である場合には、これは最も有利にはインスタントスープである。
【0022】
又は、インスタント食品は、即座に調製されることができる単離された食品材料であってよく、例えば、インスタントマッシュポテト、純粋なインスタント米、インスタント麺及び他の任意の即時に調製可能な成分であってよい。インスタント麺が有利である。
【0023】
インスタント食品がインスタント麺である場合には、これは揚げられたか又は空気乾燥されたインスタント麺を含んでよい。揚げられたインスタント麺は、原材料、例えば穀粉、水及び場合により他の成分の混合及び混練、このようにして得られたドウのロール処理及び圧延により一般的に調製される。更なる工程は一般的に、この圧延されたドウを麺ストリップに切断及び成形すること、この麺ストリップを糊化すること、例えば蒸気加熱により糊化すること、及び、脱水処理することを含み、この場合には、短期間の揚げ処理工程において、乾燥麺がより迅速に再構成される。脱水された麺は次いで、インスタント食品の他の成分との選択的な混合及び包装前に冷却されてよい。
【0024】
明瞭化のために、「麺」との用語は、これらのドウを基礎とする食品の形に関していかなる制限を含むことを意図するものでないことを述べておく。にもかかわらず、「麺」が乾燥していることは重要である。
【0025】
空気乾燥したインスタント麺にとっては、上述した揚げ処理工程が、乾燥製品を調製するために、より長期間の蒸気処理工程及び高められた温度での乾燥工程、例えば50〜95℃、一般的には20〜130分間での乾燥工程により置き換えられる。
【0026】
無論、インスタント麺は、更なる原材料を含有してよく、前記原材料は、このインスタント食品の感触特性を変更するために、穀粉及び水に添加されてよい。例は、膨張剤、酵素、化工デンプン、塩、フレーバー及びフレーバー促進剤を含む。
【0027】
まだ更なる一実施態様によれば、インスタント食品は、インスタントシーズニング、トッピング、ドレッシング、ソース及び/又はグレービーであってよい。インスタントトッピング又はシーズニングは有利である。インスタントトッピングは最も有利である。
【0028】
インスタント食品がインスタントトッピングである場合には、これは、揚げ処理により調製されてよいか、空気乾燥又は凍結乾燥トッピングであってよい。例えば、野菜を含有するトッピングは、小さい部分(例えば、約0.1〜10mmの長さ及び幅を有する)へ野菜を切断し、かつ、上述された様式でこの細断された野菜を揚げ処理又は空気乾燥することにより調製される。野菜は、任意の慣用の様式において凍結乾燥されてもよい。
【0029】
凍結乾燥されたインスタント食品が特に所望され、というのは、この乾燥方法は、他の脱水方法よりもより少ない損傷をこの物質に与えるからである。特に、この方法を使用する場合には、感受性のフレーバー成分、特に揮発性成分を破壊又は蒸発させる危険が減少する。更に、凍結乾燥した製品は、昇華する氷の結晶により作成される微視的な細孔を含有するので、これによりこの乾燥した食品のより迅速かつより容易な再水和が可能になる。これは、インスタント食品の文脈において明らかに所望される。
【0030】
インスタント食品中で使用されるフレーバーカプセルは、有利にはマイクロカプセルであって、平均サイズ1〜10μm、有利には2〜8μm、例えば約5μmを有する。
【0031】
このフレーバーカプセルは、酵母を含有し、この中に賦香性成分又は組成物が封じ込められている。フレーバーを封じ込める酵母の調製物は、当分野において開示されていて、例えば、WO 03/041509及びEP 0528466中に開示されていて、これらの刊行物は、チューイングガム中でのこのようなカプセルの使用を開示し、またWO 2005/067733中にも開示される。
【0032】
「賦香性成分又は組成物」は、本明細書中で使用される場合に「フレーバー」とも呼ばれ、天然の及び合成の両者の由来の、食品産業において現在使用されるフレーバー成分又は組成物を一般的に包含する。これには、単一化合物及び混合物が含まれる。本発明において使用されるカプセルは、揮発性の又は不安定性の成分を液状の形態で封じ込むことができ、有利には−2〜7、有利には2〜6の範囲内のlogPでもって封じ込むことができる。このような成分の特定の例は、最近の文献、例えば、Fenaroli's Handbook of flavour ingredients, 1975, CRC Press; Synthetic Food adjuncts, 1947 、M. B. Jacobs著, Van Nostrand編;又はPerfume and Flavor Chemicals、S. Arctander, 1969, Montclair, New Jersey (USA)中に見出してよい。このような物質は、消費者製品にフレーバー付与するか又はこれを芳香化する、即ち、典型的にフレーバー付けされる消費者製品に匂い又はフレーバー又は風味を付与する、又は、前記消費者製品の風味を変更する分野において当業者に良く知られている。天然の抽出物は、本発明の製品をフレーバー付与する系中に封じ込められることもできる。これは、柑橘類抽出物、例えばレモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、又はマンダリンオイル、又は、コーヒー、紅茶、ミント、ココア、又は、特にハーブ及びスパイスのエッセンシャルオイルを含む。
【0033】
フレーバー成分又は組成物の例は従って、天然の又は合成の由来のフレーバーである。例えば、合成のフレーバーオイル、フレーバー付与する芳香物質、オイル、エッセンシャルオイル、含油樹脂及び植物由来の、例えば、葉、花、果実、根、根茎、茎、及びその他からの抽出物。
【0034】
このフレーバーは、溶媒、アジュバント、助剤及び/又は他の成分、例えば、フレーバー及び/又は食品産業で現在使用される成分との混合物の形にあってよい。
【0035】
有利には、フレーバー成分又は組成物は、40℃で、より有利には30℃で、最も有利には25℃で、1気圧で液体である。
【0036】
有利には、フレーバーカプセルは、アリウムフレーバーを含む。アリウムフレーバーは、有利にはニンニク、タマネギ、チャイブ、ネギ、ワケギ及びこれらの組み合わせから選択された材料を含む。有利には、アリウム材料は、オイル、含油樹脂、抽出物、エッセンス、ピュレ、単離された化合物及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。「単離された化合物」は、上述したアリウム材料中に含有される化合物であり、かつ、これらは合成により製造されたか又は単離された化合物としてアリウムフレーバーとして又はアリウムフレーバーの一部として添加される。
【0037】
本発明のインスタント食品において特に有利な他のフレーバー成分又は組成物の例は、例えば、ショウガ、カレー、バジル、オレガノ、オリーブ、エビ、カニ、ゴマ、ホタテ、ダイズ、カツオブシ、海草、ブタ、トリ、ウシのフレーバー組成物である。このようなフレーバー組成物は市販されている。
【0038】
有利な一実施態様において、フレーバーカプセルは、
a)酵母と水を混合して水性混合物を得る工程、
b)フレーバー成分又は組成物を前記水性混合物に添加する工程、
c)フレーバーを含む前記水性混合物を、少なくとも一部のフレーバーが前記酵母中に導通されるまで混合する工程、
d)この生じる混合物を、20℃で測定して0.5以下の水分活性及びまた有利には13質量%以下の水含有量に乾燥する工程、
を含有する方法により得られる。
【0039】
有利には、酵母及び水を含有する水性混合物は、使用する生物及び装置の種類に依存して、10〜30質量%、有利には15〜25質量%の固形物の懸濁液である。
【0040】
本発明の有利な一実施態様によれば、この酵母の細胞壁は、この細胞中にフレーバーを効果的に封じ込めかつ保持させるべく、無傷である。更に、リン脂質二重層は、一般的に疎水性であるフレーバー化合物を引き寄せ、酵母細胞の内部中に拡散させるべく、細胞壁の内部に有利に存在する。
【0041】
工程b)によれば、少なくとも1種のフレーバーが、この水性混合物に添加される。無論、このフレーバーはより早期に、例えば酵母及び水と一緒に添加されることもできる。このフレーバーは通常は、疎水性溶媒、例えばエッセンシャルオイル中に存在するか、又はオイル中に溶解されている。従って、フレーバーの添加は、エマルションの形成を伴ってよい。これに応じて、乳化剤、界面活性剤及び/又は安定剤が、この水性の液体に添加されてもよい。有利には、水性液体中での酵母とフレーバーの乾燥質量比は、1:1〜5:1、有利には1.4:1〜4:1の範囲内にある。
【0042】
工程c)によれば、酵母、水及び封じ込められるべき材料を含有する水性混合物は次いで混合され、有利には1〜6時間混合される。工程c)の完了後に、封じ込められるべき材料の相当の量が、この酵母中へと細胞壁を通じて導通する。従って、一実施態様においては、この封じ込められたフレーバーは、この酵母の細胞壁内に存在する。
【0043】
この方法の工程d)は、生じる混合物の乾燥を提供し、この結果、乾燥されたインスタント食品が最終的に得られる。
【0044】
有利な一実施態様において、カプセルを得るための方法は、マトリックス成分を水性混合物に添加する更なる工程を含む。この工程は、様々な段階で実施されてよい。例えば、マトリックス成分は、工程c)の後に添加されてよい。この場合には、乾燥されるべき生じる混合物は、より高い乾燥材料含有量を有し、これは、この乾燥工程のコストを減少させてよい。更に、酵母の細胞上のこのマトリックス成分のコーティングが得られる。
【0045】
又は、マトリックス成分は、水性混合物から、少なくとも一部のフレーバーを含有する酵母を除去する更なる工程に引き続き、前記水性混合物に添加されてよい。酵母は、例えばデカンテーション及び/又は遠心分離により水性混合物から除去されてよい。この選択的な方法に引き続き、マトリックス成分が添加されるべき水性混合物は、酵母をほとんど含有せず、かつ、次いで、この形において乾燥されてよく、例えば噴霧乾燥により乾燥されてよい。後者の工程において、乾燥されたカプセル及び乾燥されたマトリックス成分は、所望される場合には、再び組み合わせられてよい。
【0046】
前述の任意の段階でのマトリックス成分の添加の利点は、酵母の細胞により閉じこめられていないフレーバー化合物が、マトリックス成分により回収されてよいことである。これは、数々の異なるフレーバー化合物を含有する複雑なフレーバー組成物が封じ込められるべき場合に特に関連する。このマトリックス成分は次いで、酵母の細胞により一般的にはより低い効率で封じ込められる親水性化合物により多く結合するために適していてよい。
【0047】
有利には、マトリックス成分は、ガラス状マトリックスを形成することができる。ガラス状マトリックスは、約1010〜1012Pa.sの範囲内のオーダーの粘度及び極めて低い分子移動度により特徴付けられる無定形の固体である。ガラス状態のよい理解は、Dominique Champion et al 、"Towards an improved understanding of glass transition and relaxations in foods: molecular mobility in the glass transition range", Trends in Food Science and Technology 11 (2000) 41-55により提供される。
【0048】
マトリックス成分は選択されてよく、例えばポリマー、例えばタンパク質、ポリマー状炭水化物、及び他のポリマー材料から選択されてよい。このポリマー状材料は有利には、効果的な酸素バリヤを提供すべく、親水性ポリマーを含む。従って、前記マトリックスは、親水コロイドを含んでよい。加えて、水中にあまり溶解しないポリマーが、つまり、より疎水性のポリマーが、このガラス状マトリックスにいくばくかの親油性特性を提供すべく、そして従って、湿分に対する保護を提供すべく、前記マトリックス中に存在してもよい。加えて、マトリックスは、ポリマー状でない更なる成分を含有してよいが、前記成分は、密なガラス状マトリックスの形成において補助するか、又は、他の目的のために添加されてよい。
【0049】
本発明のフレーバーカプセルと場合により関連するか又はその一部である適したマトリックス成分は、従って、例えばタンパク質、例えばカゼイン、乳漿タンパク質、大豆タンパク質、及び/又はゼラチンを含有してよい。これらのタンパク質は良好な乳化及び皮膜形成特性を有し、かつ従って、ポリマーマトリックスのための基礎を形成することができる。有利には、マトリックス成分は、炭水化物を含有する。
【0050】
このマトリックス成分は、モノ−、ジ−、トリ−及び/又はオリゴサッカリドを含有してよい。
【0051】
有利には、マトリックス成分は、10個より多い単糖単位を一分子あたり含有するポリサッカリドを含有する。同様に、マトリックス成分は、ゴム及び/又は親水コロイド、例えばアラビアガム、及び類似物を含有してよい。
【0052】
より有利には、マトリックス成分は、デンプン及び/又はデンプン誘導体、例えば予備糊化したデンプン、シン−又はシックボイリングデンプン(thin- or thick-boiling starch)、デキストリン、又は、マルトデキストリンの、様々な分子量のものを含む。マトリックス成分として適するデンプン及び生じる誘導体の他の可能性のある修飾は、オクテニル−コハク酸化デンプン、デンプンエーテル(即ち、カルボキシメチルデンプン)、デンプンエステル(即ち、デンプンモノホスファート)、架橋したデンプン及び/又は酸化処理デンプンを含む。
【0053】
有利には、マトリックス成分は、マルトデキストリン及び/又はコーンシロップを含む。最も有利には、マトリックス成分は、平均デキストロース当量5〜25、有利には6〜20、より有利には10〜18を有するマルトデキストリン及び/又はコーンスターチシロップを含む。
【0054】
有利な一実施態様において、マトリックス成分は、ガラス状マトリックスだけの乾燥質量につき、マルトデストリン(有利には上述した範囲内でのDE値を有する)60〜95質量%、及び、化工デンプン、例えばアルケニル−コハク酸化デンプン(特に、オクテニル−コハク酸化デンプン)5〜40質量%を含有する。
【0055】
このカプセルは、本発明の乾燥したインスタント食品に乾燥状態で添加される。これに応じて、カプセル、有利には、粉末化されたか又は粒状の組成物の形態で存在するカプセルは、フレーバー付与されていないか又は不完全にフレーバー付与されたインスタント食品に添加される。これは、インスタント食品の包装の最終的な密閉の直前に為されてよく、例えば、インスタント食品の最後の製造工程の1つとして為されてよい。本発明のフレーバーカプセルの、インスタント食品への乾燥状態での添加は、フレーバーの熱への暴露又は他の製造工程のために被るフレーバー損失がない利点を提供する。
【0056】
インスタント食品の更なる一実施態様によれば、フレーバーカプセルは、消費のためのインスタント食品の調製直前又は間にインスタント食品へと別個に添加されることを意図して、別個のサシェ中に存在する。この実施態様においては、乾燥したインスタント食品は、トッピング、シーズニング又はこの類似物である。
【0057】
この別個のサシェは、インスタント食品を更に収容する容器中に配置されていてよい。消費のためにインスタント食品を調製する前に、サシェは有利には前記容器から取り除かれ、一般的には温水が添加され、かつサシェの内容物が、再構成されたインスタント食品中に注がれてよい。このサシェは、任意の適した材料、例えばプラスチックからなっていてよい。このサシェは、水溶性であってもよい。この場合には、このサシェをインスタント食品を収容する容器から除去する必要はなく、しかしながら、温水が直接的に、水溶性サシェを含有するインスタント食品中に注がれる。
【0058】
このカプセルは、消費者の嗜好に応じて、及び、カプセル中のフレーバー負荷に依存してインスタント食品に添加されてよい。
【0059】
様々なフレーバー成分が、同じカプセル中に存在することができる。例えば、様々なフレーバー成分及び/又は化合物が、酵母の細胞中への封入前に、上述した1つのバッチ中で予備混合されることができる。又は、個々のフレーバー成分が、別個に封じ込められてよい。
【0060】
インスタント食品は、乾燥した野菜及び/又はスパイスを含有するトッピング、及び、酵母ベースのフレーバーカプセルであることができる。これらのトッピングは、上で定義したとおりの乾燥製品である。乾燥した野菜及び/又はスパイスは、乾燥したタマネギ、ニンニク、ネギ、レッドペッパー、ズッキーニ、ブロッコリー、コショウ、トウガラシ、カリフラワー、ショウガ、及びその他であってよい。有利な一実施態様によれば、前記野菜は、ネギ、タマネギ、ニンニク、及びこれらの任意の野菜の混合物からなる群から選択されている。より有利には、野菜は、ネギである。
【0061】
野菜は有利には、約0.001〜100mm、有利には0.01〜10mmの範囲内の寸法(長さ、幅、高さ)を有する小片に切断される。この後でこの野菜は乾燥され、例えば熱風を用いて又は凍結乾燥により乾燥される。この後で、この野菜は、本発明のトッピングを得るべく、フレーバーカプセルと乾燥状態で混合されてよい。
【0062】
このトッピングは無論、代わりとなる方法において調製されてよい。例えば、野菜は、乾燥前にフレーバー及び酵母を含む水性混合物に添加されてよい。この場合には、乾燥された野菜は、マトリックス成分の一部を形成してよい。
【0063】
本発明はいまや、以下の実施例を参照して説明される。
【0064】
実施例
例1
酵母、マルトデキストリン及び封じ込められたフレーバーを基礎とするカプセルの調製
噴霧乾燥した酵母(Aventine Renewable Energy Company, USA)150gを、水375g中に分散した。フレーバー組成物(タマネギエッセンシャルオイル50質量%及びトリアセチン50質量%からなる)75gを添加し、この混合物を、ブレードスターラー中で150rpmでの一定の撹拌下で4時間50℃に維持した。
【0065】
この後で、マルトデキストリン(DE18)150gを添加し、均質になるまで混合した。
【0066】
この混合物を次いで、Niro mobile minor(R)を用いて、入口温度210℃かつ出口温度90℃で10ml/分の供給速度で噴霧乾燥し、粉末化したカプセルを生じた。このプロセスの終了時に、フレーバーカプセルは、酵母40質量%、マルトデキストリン40質量%及び液体フレーバー20質量%(このうち、10質量%は溶媒、そして10質量%はタマネギの天然エッセンスである)を含有した。
【0067】
この同じ手順を2回繰り返し、但し、マスタードオイルの他のフレーバー成分を使用した。これに応じて、フレーバー組成物混合物(アリルイソチオシアナート20質量%及びトリアセチン80質量%)75gを、上記したのと同じ手順で使用し、マスタードフレーバーを含有するカプセルを得た。このカプセルは、酵母40質量%、マルトデキストリン40質量%及び液体のフレーバー20質量%を含有し、このため純粋な液体のフレーバーと比較して5倍より少ないフレーバーを含有した。
【0068】
このタマネギ及びマスタードフレーバーカプセルを、更に「希釈」し、食品における適用前にマルトデキストリンと混合した。これに応じて、上記で得られるフレーバーカプセルを含有するネギフレーバー粉末化組成物を、タマネギフレーバー付与されたカプセル10質量%、マスタードフレーバー付与されたカプセル5質量%、及び、マルトデキストリン85質量%を混合することにより調製し、この両者のカプセルは上記のとおりに得た。
【0069】
例2
食品中での使用のための乾燥フレーバートッピングの調製
ネギベースの乾燥したトッピングを、新鮮なネギを、0.1〜100mmの範囲内の平均的な寸法(長さ、幅)を有する小片に切断し、このネギを凍結乾燥して乾燥したネギを得ることにより調製した。
【0070】
酵母を基礎とするカプセルを含有するこの粉末化したネギフレーバー組成物(例1)を、乾燥したネギに5質量%で添加し、食品、例えばインスタント食品を賦香するために使用可能なトッピングを得た。
【0071】
例3
乾燥状態で添加されたフレーバーカプセルを含有する揚げ処理したインスタント麺の調製
揚げ処理したインスタント麺を、次の処方を基礎として調製する:
インスタント麺穀粉(Bogasary Flour Mill, Singapore) 87.00%
化工デンプン−Elastigel 4000N(例えばNational Starch) 13.00%
水 36.00%
塩 1.50%
炭酸カリウム 0.15%
炭酸ナトリウム 0.10%
トリポリリン酸ナトリウム(STPP) 0.10%
CMC 0.10%
ドウミキサーを使用して、均質なドウを調製し、これをプラスチックの袋に入れる。麺棒を用いてドウをプレス処理し、長方形のブロックを作成する。
【0072】
10分間の休み後に、このドウを広げ、圧延し、かつ、麺類製造器を用いて切断する。この後に、この麺を蒸し器中で完全に糊化させ、かつ、蒸気処理後に、160℃で60秒間揚げ処理した。揚げ処理後に、麺を冷却させた。
【0073】
最初の試料中で、酵母を基礎とする、例1のフレーバーカプセル(ネギフレーバー粉末化組成物)を、0.3質量%で前記麺に乾燥状態で添加し、かつ、プラスチックの袋中に密閉した。
【0074】
第2の試料において、例2において得られるトッピング(乾燥したネギ及びフレーバーカプセルを含有する)を、1質量%で、上述したインスタント麺に乾燥状態で添加した。
【0075】
上述の両者の試料を、消費のために温水(100℃)300gをインスタント麺150gに対して注ぐこと、そして、この麺が消費のために準備が整うまで約3〜4分間待つことにより調製した。
【0076】
これに応じて、消費する準備の整った(RTC)、供給サイズ450gの食事が得られる。
【0077】
例4
乾燥状態で添加したフレーバーカプセルを含有する空気乾燥したインスタント麺の調製
例3の手順に従って麺を調製し、但し、揚げ処理の代わりに、麺の蒸気処理の工程後に、乾燥を2時間60℃で、空気乾燥器中で実施した点が異なる。
【0078】
最初の試料中では、例1のフレーバーカプセル(ネギフレーバー粉末化組成物)を、0.3質量%で前記麺に乾燥状態で添加し、プラスチックの袋中に密閉した。第2の試料中で、例2のトッピングを、1質量%で、空気乾燥により得られる麺に添加した。
【0079】
例5
インスタント揚げ処理麺への、フレーバーカプセルのドウ中での添加
例3を繰り返したが、但し、例1のネギフレーバー粉末化組成物を0.3質量%で、揚げ処理した麺に乾燥状態で添加する代わりにドウに添加し、かつ、例1の希釈されたカプセルを含有するドウを更に、このカプセルが十分分散されるまで混合する。この残りの工程は、例3の工程のものと同一である。
【0080】
このようにして、麺のドウ中に、酵母を基礎とするフレーバーカプセルを含有するインスタントの揚げ処理した麺を得る。
【0081】
例6
インスタント空気乾燥麺への、フレーバーカプセルのドウ中での添加
例4を繰り返したが、但し、例1のネギフレーバー粉末化組成物を0.3質量%で、空気乾燥した麺に乾燥状態で添加する代わりにドウに添加し、かつ、例1の希釈されたカプセルを含有するドウを更に、このカプセルが十分分散されるまで混合する。この残りの工程は、例3の工程のものと同一である。
【0082】
このようにして、麺のドウ中に、酵母を基礎とするフレーバーカプセルを含有するインスタントの空気乾燥した麺を得る。
【0083】
例7
サシェ中のフレーバーカプセルの添加
例1中で得られる、タマネギ−及びマスタードのフレーバー付与されたカプセルを、2:1の質量比で混合し、このカプセル混合物を1質量%で、小さなプラスチックの袋中の食用のオイルに添加し(10gのオイル及びフレーバーカプセル)、インスタント麺のカップを密閉するためにフタを置く前に、乾燥したインスタント麺(インスタント麺150gの供給サイズ)のカップに添加した。
【0084】
このようにして得られるカップを、カップからフタ及びサシェを取り除き、沸騰水をこのインスタント麺に添加し、このサシェの内容物をこのインスタント麺に添加し、このフレーバー付与されたインスタント麺の消費前に3分間待つことにより調製する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母と、この中に封じ込められた賦香性成分又は組成物を含有するフレーバーカプセルを含有するインスタント食品であって、このインスタント食品が、20℃で測定して0.5以下の水分活性を有する乾燥した形態にある、インスタント食品。
【請求項2】
フレーバーカプセルが20℃で測定して13質量%以下の水含有量を有する、請求項1記載のインスタント食品。
【請求項3】
ドウを基礎とする製品を含有し、かつその際、フレーバーカプセルが、このドウを基礎とする製品のドウ中に存在する、請求項1記載のインスタント食品。
【請求項4】
フレーバーカプセルが、調製の直前又は間にインスタント食品に別個に添加されることを意図して、別個のサシェ中に存在する、請求項1記載のインスタント食品。
【請求項5】
インスタント麺、インスタントスープ、インスタント米ベースの食べ物及びインスタントパスタベースの食べ物の群から選択される、請求項1記載のインスタント食品。
【請求項6】
インスタント麺を含む、請求項5記載のインスタント食品。
【請求項7】
フレーバーカプセルが、マトリックス成分により被覆される、請求項1記載のインスタント食品。
【請求項8】
マトリックス成分が炭水化物を含む、請求項7記載のインスタント食品。
【請求項9】
a)酵母と水を混合して水性混合物を得る工程、
b)フレーバーを前記水性混合物に添加する工程、
c)フレーバーを含む前記水性混合物を、少なくとも一部のフレーバーが前記酵母中に導通されるまで撹拌する工程、
d)この生じる混合物を乾燥する工程、
e)この乾燥したカプセルを乾燥したインスタント食品に添加して、20℃で測定して0.5以下の水分活性を有するインスタント食品を製造する工程
を含むインスタント食品の製造方法。
【請求項10】
乾燥工程前に前記水性混合物にマトリックス成分を添加する更なる工程を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
乾燥した野菜及び/又はスパイス、及び、請求項1に記載のフレーバーカプセルを含有する、20℃で測定して0.5以下の水分活性を有するトッピング。
【請求項12】
野菜がネギである、請求項11記載のトッピング。
【請求項13】
乾燥したインスタント麺及び請求項11又は12記載の乾燥したトッピングを含有するインスタント食品。

【公表番号】特表2009−518029(P2009−518029A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543978(P2008−543978)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【国際出願番号】PCT/IB2006/054619
【国際公開番号】WO2007/066295
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】