説明

フロントサスペンションメンバ

【課題】車体の幅方向に亘って配置され、その幅方向に延在するステアリングギアボックスが取り付けられるフロントサスペンションメンバに関し、左ハンドル用のステアリングギアボックスでも、右ハンドル用のステアリングギアボックスでも取り付けられるようにする。
【解決手段】ステアリングギアボックス取付け用の複数の取付部1151〜1154を有し、複数の取付部1151〜1154が、幅方向に間隔をあけて設けられ、その幅方向中央における所定の基準Lに対して対象になるように配置されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の幅方向に亘って配置され、その幅方向に延在するステアリングギアボックスが取り付けられるフロントサスペンションメンバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、四輪車には、一種のサブフレームとしてサスペンションメンバが用いられている(例えば、非特許文献1等参照)。このサスペンションメンバにはサスペンションを構成する各種の部材等が取り付けられ、サスペンションメンバは車体に取り付けられる。サスペンションメンバを用いることにより、各種部材の取付部の剛性が高まり、サスペンションジオメトリィの精度が向上する。また、生産上も組み付け精度や生産効率の向上につながる。
【0003】
図1は、従来のフロントサスペンションメンバを示す図である。
【0004】
図1に示すフロントサスペンションメンバ8は、車体の幅方向に亘って配置されるものであり、図1では、右手前側が車体前側になる。以下、車体前側を向いて左右を呼び分ける。この図1では、左手前側が右側になり、右奥側が左側になる。このフロントサスペンションメンバ8は、鉄製のプレス成形品であるベース部81と取付アーム82を有する。取付アーム82は、ベース部81の左右それぞれに溶接されたパイプ状のものであり、左右の取付アーム82それぞれが不図示の車体に取り付けられる。なお、ベース部81の、車体後側の左隅と右隅それぞれにも、車体取付用の取付孔83が設けらている。また、このフロントサスペンションメンバ8の左右それぞれには、不図示のロアアームが取り付けられる。ベース部81の左右それぞれには、クレビス構造のロアアーム取付部84も設けられている。さらに、ベース部81には、車体幅方向に延在する不図示のスタビライザを取り付けるバンド部材をボルト止めするためのボルト孔85も設けられている。
【0005】
また、ベース部81の左右それぞれには、ここでは不図示のステアリングギアボックスを取り付けるギアボックス取付部861,862も溶接されている。図1に示すベース部81の右側には、先端に取付孔8611が1つ設けられたアーム状のギアボックス取付部861が溶接されており、左側には、先端に取付孔8621が2つ設けられた台座状のギアボックス取付部862が溶接されている。
【0006】
ステアリングギアボックスはラックとピニオンを有する。ラックは車体幅方向に延びるラックハウジングに内蔵されており、ピニオンは車体幅方向から突出したピニオンハウジングに内蔵されている。このピニオンハウジングは、ステアリングシャフトジョイントを介してステアリングシャフトに連結している。ステアリングギアボックスは、左ハンドル用と右ハンドル用で、このピニオンハウジングの位置が異なっている。このため、従来では、フロントサスペンションメンバは、左ハンドル用のステアリングギアボックスを取り付けられるようにしたものと、右ハンドル用のステアリングギアボックスを取り付けられるようにしたものとの2種類が用意されている。図1に示すフロントサスペンションメンバ8は、右ハンドル用のステアリングギアボックスを取り付けられるようにしたものである。
【0007】
図2は、左ハンドル用のステアリングギアボックスを取り付けられるようにしたフロントサスペンションメンバを示す図である。
【0008】
図2では、右奥側が車体前側になり、右手前側が右側になり、左奥側が左側になる。また、この図2には、フロントサスペンションメンバ8’よりも車体前側に、車体前後方向に延在するメンバーマウンチング91と、車体幅方向に延在するクロスメンバーフロントロア92も図示されている。図2に示すメンバーマウンチング91およびクロスメンバーフロントロア92も、鉄製のプレス成形品である。図2に示すメンバーマウンチング91の後端はフロントサスペンションメンバ8’に接続され、前端はクロスメンバーフロントロア92に接続される。このメンバーマウンチング91にはエンジンが載置され、メンバーマウンチング91の前端部分と後端部分それぞれには、メンバーマウンチング91にエンジンを固定するためのボルト孔が設けられている。また、図2に示すクロスメンバーフロントロア92の左右それぞれには、ラジエタを取り付けるためのラジエタ取付部921がボルト止めされている。
【0009】
ここでは不図示の左ハンドル用のステアリングギアボックスを取り付けられるようにした図2に示すフロントサスペンションメンバ8’は、アーム状のギアボックス取付部861と台座状のギアボックス取付部862の位置が、図1に示すフロントサスペンションメンバ8と反対であることを除いて、その図1に示すフロントサスペンションメンバ8と同じである。
【0010】
図3は、図1に示すフロントサスペンションメンバに、各種の部材を取り付けた様子を示す図である。
【0011】
図3では、左奧側が車体前側になり、右奧側が右側になり、左手間側が左側になる。また、図3に示すフロントサスペンションメンバ8には、右ハンドル用のステアリングギアボックス93が取り付けられている。図3には、ステアリングギアボックス93に設けられたピニオンハウジング931が図示されている。また、図3に示すフロントサスペンションメンバ8の左右それぞれには、ロアアーム94が取り付けられている。このロアアーム94にはステアリングナックル941が接続している。図3に示すステアリングナックル941には、ハブ942が取り付けられている。このハブ942には、ドライブシャフト947が不図示のベアリングを介して連結している。また、このステアリングナックル941はショックアブソーバ943に連結しており、そのショックアブソーバ943を周回するようにコイルスプリング944が配置されている。さらに、ステアリングナックル941にはタイロッド945が連結している。加えて、図3に示すフロントサスペンションメンバ8のベース部81には、車体幅方向に延在するスタビライザ946が、ボルト9461止めされたバンド部材9462によって取り付けられている。
【非特許文献1】永田元輔編集、「モータファン別冊 ニューモデル速報 No.375 SUZUKI SX4のすべて」、株式会社三栄書房、平成18年8月26日発行、第47頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上説明したように、従来のフロントサスペンションメンバは、右ハンドル用のステアリングギアボックスを取り付けられるようにした図1に示すフロントサスペンションメンバ8と、左ハンドル用のステアリングギアボックスを取り付けられるようにした図2に示すフロントサスペンションメンバ8’との2種類の形状のものを用意しておく必要があり、同じ形状のものを大量生産してコストダウンを図るといったことができない問題点がある。
【0013】
本発明は上記事情に鑑み、左ハンドル用のステアリングギアボックスでも、右ハンドル用のステアリングギアボックスでも取り付けられるようにしたフロントサスペンションメンバを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を解決する本発明のフロントサスペンションメンバは、車体の幅方向に亘って配置され、その幅方向に延在するステアリングギアボックスが取り付けられるフロントサスペンションメンバにおいて、
上記ステアリングギアボックス取付け用の複数の取付部を有し、
上記複数の取付部が、上記幅方向に間隔をあけて設けられ、その幅方向中央における所定の基準に対して対象になるように配置されたものであることを特徴とする。
【0015】
ここにいう、幅方向中央における所定の基準に対して対象とは、その基準を幅方向に直交する基準線とした場合には線対称の意味になり、その基準を基準点とした場合には点対称の意味になる。また、上記複数の取付部には、上記幅方向中央に設けられた取付部も含まれる。この幅方向中央に設けられた取付部では、その取付部自身が上記基準に対して対象になる。
【0016】
本発明のフロントサスペンションメンバによれば、上記のような複数の取付部を設けたことにより、左ハンドル用のステアリングギアボックスでも、右ハンドル用のステアリングギアボックスでも取り付けられる。
【0017】
また、本発明のフロントサスペンションメンバにおいて、上記複数の取付部が、上記幅方向の中央を除く位置に4以上の偶数個設けられたものであることが好ましい。
【0018】
ここにいう4以上の偶数個設けられた取付部は、上記幅方向中央における所定の基準に対して対象の位置関係になるように配置されたものである。上記取付部を4以上の偶数個設けることで、上記ステアリングギアボックスはこのフロントサスペンションメンバにより安定した状態で取り付けられる。
【0019】
さらに、本発明のフロントサスペンションメンバにおいて、上記幅方向に間隔をあけて上記ステアリングギアボックスに設けられた取付箇所が、上記複数の取付部から1つの取付部を除いた残りの取付部に取り付けられる態様であってもよい。
【0020】
この態様によれば、左ハンドル用のステアリングギアボックスでも、右ハンドル用のステアリングギアボックスでも無理なく取り付けられる
また、本発明のフロントサスペンションメンバにおいて、上記複数の取付部が、上記幅方向の中央に1つ設けられた取付部と、その中央に1つ設けられた取付部のその幅方向両側それぞれに1つ以上設けられた取付部とからなるものであってもよい。
【0021】
こうすることでも、上記ステアリングギアボックスはこのフロントサスペンションメンバにより安定した状態で取り付けられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のフロントサスペンションメンバによれば、左ハンドル用のステアリングギアボックスでも、右ハンドル用のステアリングギアボックスでも取り付けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図4は、本発明のフロントサスペンションメンバの一実施形態を斜め上方から見た斜視図である。
【0025】
図4に示すフロントサスペンションメンバ1は、四輪車の車体の幅方向に亘って配置されるものである。この図4では、左奧側が車体前側になり、左手前側が左側になり、右奥側が右側になる。このフロントサスペンションメンバ1は、アルミニウム合金の鋳物で一体成形されたベース部11を有する。このベース部11は、高真空ダイカスト法によって一体鋳造されたものである。図4に示すベース部11は大物であるが、高真空ダイカスト法を用いることによって薄肉に成形することができる。しかも、ベース部11はアルミニウム合金製であるため、軽量化されている。本実施形態では、ダイカスト用アルミニウム合金材料を用いて、溶湯の射出速度を3m/s以上にするとともに増圧を300kg/cm以上にして鋳造する。
【0026】
図4に示すベース部11は、左右それぞれに車体取付アーム部111を有する。車体取付アーム部111は車体幅方向中央側から外側に向けて漸次高くなるアーム状のものである。この車体取付アーム部111の先端には、車体取付用の取付孔1111が設けらている。また、車体取付アーム部111先端の下方には、ロアアーム取付用の筒状のリンク構造112が設けられている。
【0027】
また、フロントサスペンションメンバ1は、ロアアーム取付用のブラケット12を有する。図4では、ブラケット12が左側に1つしか図示されていないが、ブラケット12はベース部11の裏面側の左右端部分それぞれに、ボルト止めされる。本実施形態のフロントサスペンションメンバ1は、これらベース部11とブラケット12によって、図1に示すフロントサスペンションメンバ8や図2に示すフロントサスペンションメンバ8’と同等の機能を有するものになる。また、本実施形態のフロントサスペンションメンバ1は、アルミニウム合金製のため、図1に示すフロントサスペンションメンバ8や図2に示すフロントサスペンションメンバ8’よりも軽量化されている。
【0028】
図5は、図4に示すベース部を斜め左側から見たときの図であり、図6は、図4に示すベース部を下方から見たときの図である。
【0029】
図4に示すブラケット12は、アルミニウム合金の板材(例えば展伸材)をプレス加工して得られたものであり、略三角形の形状である。この略三角形のブラケット12の各頂点付近には取付孔121〜123が設けられている。図5に示すように、最も大きな取付孔121には、ベース部11の、車体後側の左右の隅それぞれに設けられたボルト孔1101に通される不図示のボルトが挿通される。また、車体中央側の小さな取付孔122には、図6に示すベース部11の裏面に設けられた車体中央側に寄ったボルト孔1102に通される不図示のボルトが挿通される。さらに、車体前側の小さな取付孔123には、図6に示すベース部11の裏面に設けられた車体前側のボルト孔1103に通される不図示のボルトが挿通される。図4や図5に示すように、ブラケット12は、ベース部11に向けて突出した円錐台形の突部125を有する。この突部125には、挿通孔1251が設けられている。また、ベース部11には、その突部125の真上になる位置に、挿通孔1104が設けられており、これら2つの挿通孔1251,1104は対向してクレビス構造を形成している。本実施形態のフロントサスペンションメンバ1では、鋳造方案を容易にし、低コストにベース部11を鋳造するために、ベース部11にはクレビス構造を設けず、ブラケット12と組み合わせることによって、クレビス構造を形成している。
【0030】
図3に示すロアアーム94は、リンク構造とクレビス構造を有するものであり、ロアアーム94のリンク構造は、ベース部11とブラケット12の間に入れ込まれ、ロアアーム94のクレビス構造は、ベース部11に設けられた筒状のリンク構造112を挟み込む。
【0031】
また、図5に示すように、ベース部11の裏面側には、多数のリブ113がはりめぐらされている。これらのリブ113も、鋳造によって一体成形されたものである。
【0032】
さらに、図4や図5に示すように、ベース部11には、図3に示すスタビライザ946を取り付ける不図示のバンド部材の一端が係合する係合孔1105と、その不図示のバンド部材の他端をボルト止めするためのボルト孔1106も設けられている。
【0033】
また、図4には、クロスメンバーフロントロア2が示されている。このクロスメンバーフロントロア2も、フロントサスペンションメンバ1のベース部11と同じように、高真空ダイカスト法によって一体鋳造されたアルミニウム合金製のものであり、図2に示すクロスメンバーフロントロア92よりも軽量化されている。図4に示すクロスメンバーフロントロア2には、ラジエタを取り付けるためのラジエタ取付部21が一体成形されている。また、ここに示す例では、車体前後方向に延在する図3に示すメンバーマウンチング91を省略し、クロスメンバーフロントロア2とフロントサスペンションメンバ1のベース部11にエンジンが載置される。クロスメンバーフロントロア2の車体後側中央部分と、ベース部11の車体前側中央部分それぞれには、エンジンを固定するためのボルト孔22,114が設けられている。
【0034】
さらに、図4には、右ハンドル用のステアリングギアボックス3が示されている。図4に示すステアリングギアボックス3は、車体幅方向に延在するものであり、ラックハウジング31とピニオンハウジング32を有する。ラックハウジング31は、車体幅方向に延びるものであり、ラックが内蔵されている。ピニオンハウジング32は、車体幅方向から突出したものであり、ピニオンが内蔵されている。不図示のステアリングシャフトは、同じく不図示のステアリングシャフトジョイントを介してピニオンハウジング32に連結している。ステアリングギアボックスは、左ハンドル用と右ハンドル用で、このピニオンハウジング32の位置が異なっている。図4に示す右ハンドル用のステアリングギアボックス3では、ピニオンハウジング32は、車体幅方向中央より右側に設けられている。また、このステアリングギアボックス3は、左側に2つの取付部33,34を有するとともに、右側に1つの取付部35を有する。これらの取付部33〜35は、車体幅方向に間隔をあけて設けられたものである。左側の2つの取付部33,34のうち、一方の取付部33は左側に向かって相対的に高い位置で延在するものであり、もう一方の取付部34は車体後側に向かって相対的に低い位置で延在するものである。これら左側の2つの取付部33,34はいずれも、先端に下方に向けて開口したボルト孔331,341を有する。また、右側の取付部35も、先端に下方に向けて開口したボルト孔351を有し、このボルト孔351は、左側に向かって延在する取付部33のボルト孔331と、車体幅方向に沿った同一直線上に存在するとともに同じ高さ位置に存在する。したがって、相対的に低い位置で延在する左側に設けられた取付部34は、他の取付部33,35に比べて下方に延びた脚部342を有するものである。
【0035】
一方、フロントサスペンションメンバ1のベース部11には、ステアリングギアボックス取付け用のボルト孔1151〜1154が左右に2つずつ、合計4つ設けられている。すなわち、これら4つのボルト孔1151〜1154は、車体幅方向に間隔をあけて、その幅方向の中央を除く位置に設けられたものである。また、図4に示す4つのボルト孔1151〜1154は、車体幅方向中央を基準にして線対象になる位置関係にある。すなわち、これら4つのボルト孔1151〜1154は、左右に2つずつ設けられ、車体幅方向中央を通る、その幅方向に直交する基準線(車体前後方向に延びる基準線)Lに対して左右対称となる位置に設けられたものである。これら4つのボルト孔1151〜1154は、本発明にいう複数の取付部の一例に相当する。左右に2つずつ設けられたボルト孔のうち、車体幅方向中央側のボルト孔1152,1153は、車体幅方向に沿った同一直線上に存在し、相対的に車体後側かつ低い位置に設けられている。一方、外側のボルト孔1151,1154も車体幅方向に沿った同一直線上に存在するが、これらのボルト孔1151,1154は、相対的に車体前側かつ高い位置に設けられている。
【0036】
図4に示す右ハンドル用のステアリングギアボックス3の、左側に向かって延在する取付部33のボルト孔331は、フロントサスペンションメンバ1のベース部11の左側に設けられた、相対的に車体前側かつ高い位置のボルト孔1151に一致させ、両ボルト孔331,1151に不図示のボルトを通してボルト締めする。また、そのステアリングギアボックス3の、車体後側に向かって延在する取付部34のボルト孔341は、フロントサスペンションメンバ1のベース部11の左側に設けられた、相対的に車体後側かつ低い位置のボルト孔1152に一致させ、両ボルト孔341,1152に不図示のボルトを通してボルト締めする。さらに、そのステアリングギアボックス3の、右側に設けられた取付部35のボルト孔351は、フロントサスペンションメンバ1のベース部11の右側に設けられた、相対的に車体前側かつ高い位置のボルト孔1154に一致させ、両ボルト孔351,1154に不図示のボルトを通してボルト締めする。図4に示す右ハンドル用のステアリングギアボックス3は、ベース部材11に3箇所で取り付けられるため、ベース部材11に安定した状態で取り付けられる。なお、フロントサスペンションメンバ1のベース部11の右側に設けられた、相対的に車体後側かつ低い位置のボルト孔1153はボルト締めに用いられない。すなわち、図4に示す右ハンドル用のステアリングギアボックス3に、車体幅方向に間隔をあけて設けられた3つの取付部33〜35は、ベース部11の4つのボルト孔1151〜1154から1つのボルト孔1153を除いた残りの取付部1151,1152,1154に取り付けられる。
【0037】
ステアリングギアボックス3が取り付けられたベース部11では、ステアリングギアボックス3のラックハウジング31との間に、ある程度の間隔が確保される。この間隔は、不図示のエキゾーストパイプや同じく不図示の四輪駆動用のドライブシャフトを通す間隔になる。
【0038】
図7は、図4に示すフロントサスペンションメンバと左ハンドル用のステアリングギアボックスを示す図である。
【0039】
この図7でも、左奧側が車体前側になり、左手前側が左側になり、右奥側が右側になる。図7には、左ハンドル用のステアリングギアボックス4が示されている。この左ハンドル用のステアリングギアボックス4が、図4に示す右ハンドル用のステアリングギアボックス3と異なる点は、ピニオンハウジング42の位置と、3つの取付部43〜45の位置関係である。図7に示す左ハンドル用のステアリングギアボックス4では、ピニオンハウジング42は車体幅方向中央より左側に設けられている。また、この左ハンドル用のステアリングギアボックス4は、左側に1つの取付部43を有するとともに、右側に2つの取付部44,45を有する。すなわち、図4に示す右ハンドル用のステアリングギアボックス3の3つの取付部33〜35を左右逆にしたのと同じである。したがって、これら3つの取付部43〜45のうち一つの取付部44は、他の2つの取付部43,45よりも低い位置で延在するものであり、それら他の取付部43,45に比べて下方に延びた脚部442を有するものである。
【0040】
図7に示す左ハンドル用のステアリングギアボックス4の、左側に設けられた取付部43のボルト孔431は、フロントサスペンションメンバ1のベース部11の左側に設けられた、相対的に車体前側かつ高い位置のボルト孔1151に一致させ、両ボルト孔431,1151に不図示のボルトを通してボルト締めする。また、そのステアリングギアボックス4の、車体後側に向かって延在する取付部44のボルト孔441は、フロントサスペンションメンバ1のベース部11の右側に設けられた、相対的に車体後側かつ低い位置のボルト孔1153に一致させ、両ボルト孔441,1153に不図示のボルトを通してボルト締めする。さらに、そのステアリングギアボックス3の、右側に向かって延在する取付部45のボルト孔451は、フロントサスペンションメンバ1のベース部11の右側に設けられた、相対的に車体前側かつ高い位置のボルト孔1154に一致させ、両ボルト孔451,1154に不図示のボルトを通してボルト締めする。図7に示す左ハンドル用のステアリングギアボックス4も、図4に示す左ハンドル用のステアリングギアボックス3と同じく、ベース部材11に3箇所で取り付けられるため、ベース部材11に安定した状態で取り付けられる。なお、左ハンドル用のステアリングギアボックス4を取り付ける際には、フロントサスペンションメンバ1のベース部11の左側に設けられた、相対的に車体後側かつ低い位置のボルト孔1152はボルト締めに用いられない。すなわちここでも、ステアリングギアボックス4に設けられた3つの取付部43〜45は、ベース部11の4つのボルト孔1151〜1154から1つのボルト孔1152を除いた残りの取付部1151,1153,1154に取り付けられる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態のフロントサスペンションメンバ1では、線対称の位置関係にある4つのボルト孔1151〜1154を設けたことにより、図4に示す右ハンドル用のステアリングギアボックス3でも、図7に示す左ハンドル用のステアリングギアボックス4でも取り付けられる。しかも、4つのボルト孔1151〜1154のうち、相対的に車体後側かつ低い位置に設けられた2つのボルト孔1152,1153のうちのいずれか一方のボルト孔を用いないことにすることで、右ハンドル用のステアリングギアボックス3でも、左ハンドル用のステアリングギアボックス4でも無理なく取り付けられる。
【0042】
図8は、ベース部に設けられた、ステアリングギアボックス取付け用のボルト孔の位置関係を示す図である。
【0043】
この図8では、図の左右方向が車体幅方向に相当し、図の上方向が車体前側になり、下方向が車体後側になる。
【0044】
図8(a)は、ステアリングギアボックス取付け用のボルト孔が6つ設けられた場合の、それら6つのボルト孔511〜516の位置関係を示す図である。
【0045】
この図8(a)には、車体幅方向中央における所定の基準として、車体前後方向に延びる基準線Lが示されている。図8(a)に示すボルト孔511〜516は、左右に3つずつ設けられたものであり、基準線Lを基準にした線対称の位置関係にある。
【0046】
図8(b)は、ステアリングギアボックス取付け用のボルト孔が4つ設けられた場合の、それら4つのボルト孔521〜524の位置関係を示す図である。
【0047】
この図8(b)には、車体幅方向中央における所定の基準として、車体幅方向中央に設けられた基準点Pが示されている。図8(b)に示すボルト孔521〜524は、左右に2つずつ設けられたものであり、基準点Pを基準にした点対称の位置関係にある。
【0048】
図8(c)は、ステアリングギアボックス取付け用のボルト孔が3設けられた場合の、それら3のボルト孔531〜533置関係を示す図である。
【0049】
この図8(c)にも、車体幅方向中央における所定の基準として、図8(b)と同じく、車体幅方向中央に設けられた基準点Pが示されている。図8(c)は、この基準点Pよりも左側に設けられたボルト孔531と、基準点P上に設けられたボルト孔532と、基準点Pよりも右側に設けられたボルト孔533が示されている。基準点P上に設けられたボルト孔532は、基準点Pに対して、ボルト孔532自身が対象になる。また、左右にそれぞれ設けられたボルト孔531,533は、基準点Pを基準にした点対称の位置関係にある。なお、車体幅方向中央における所定の基準として、図8(a)に示す基準線Lを用いた場合にも、図8(c)に示す3つのボルト孔531は、その基準線Lに対して対象になる位置関係に設けられているといえる。このように、車体幅方向中央にボルト孔532を設けると、右ハンドル用のステアリングギアボックス3と左ハンドル用のステアリングギアボックス4で、ステアリングギアボックスの取付部を共通化することができ好ましい。なお、この場合には、不図示のエキゾーストパイプや同じく不図示の四輪駆動用のドライブシャフトを、車体幅方向中央を避けて通す必要が生じる。
【0050】
以上、図8を用いて説明した3種類のボルト孔の位置関係であっても、右ハンドル用のステアリングギアボックス3でも、左ハンドル用のステアリングギアボックス4でも取り付けられる。
【0051】
なお、本発明におけるボルト孔の位置関係は、これまでに説明した位置関係に限られない。また、本実施形態では、フロントサスペンションメンバ1をアルミニウム合金製のものとしたが、本発明のフロントサスペンションメンバは材質に関係なく、例えば、鉄製であってもよい。さらに、本実施形態におけるフロントサスペンションメンバ1のベース部11は一体成形された鋳造品であったが、展伸材をプレス加工して成型されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】従来のフロントサスペンションメンバを示す図である。
【図2】左ハンドル用のステアリングギアボックスを取り付けられるようにしたフロントサスペンションメンバを示す図である。
【図3】図2に示すフロントサスペンションメンバに、各種の部材を取り付けた様子を示す図である。
【図4】本発明のフロントサスペンションメンバの一実施形態を斜め上方から見た斜視図である。
【図5】図4に示すベース部を斜め左側から見たときの図である。
【図6】図4に示すベース部を下方から見たときの図である。
【図7】図4に示すフロントサスペンションメンバと左ハンドル用のステアリングギアボックスを示す図である。
【図8】ベース部に設けられた、ステアリングギアボックス取付け用のボルト孔の位置関係を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 フロントサスペンションメンバ
11 ベース部
111 車体取付アーム部
1151,1152,1153,1154 ボルト孔
12 ブラケット
3 右ハンドル用のステアリングギアボックス
33,34,35 取付部
331,341,351 ボルト孔
4 左ハンドル用のステアリングギアボックス
43,44,45 取付部
431,441,451 ボルト孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の幅方向に亘って配置され、該幅方向に延在するステアリングギアボックスが取り付けられるフロントサスペンションメンバにおいて、
前記ステアリングギアボックス取付け用の複数の取付部を有し、
前記複数の取付部が、前記幅方向に間隔をあけて設けられ、該幅方向中央における所定の基準に対して対象になるように配置されたものであることを特徴とするフロントサスペンションメンバ。
【請求項2】
前記複数の取付部が、前記幅方向の中央を除く位置に4以上の偶数個設けられたものであることを特徴とする請求項1記載のフロントサスペンションメンバ。
【請求項3】
前記幅方向に間隔をあけて前記ステアリングギアボックスに設けられた取付箇所が、前記複数の取付部から1つの取付部を除いた残りの取付部に取り付けられることを特徴とする請求項1又は2記載のフロントサスペンションメンバ。
【請求項4】
前記複数の取付部が、前記幅方向の中央に1つ設けられた取付部と、該中央に1つ設けられた取付部の該幅方向両側それぞれに1つ以上設けられた取付部とからなるものであることを特徴とする請求項1記載のフロントサスペンションメンバ。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−69965(P2010−69965A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237231(P2008−237231)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000116873)旭テック株式会社 (144)
【Fターム(参考)】