説明

ブラシレスモータの電気角推定方法およびブラシレスモータ

【課題】ブラシレスモータの電気角を、高分解能エンコーダを要することなく、モータの構成に不可欠な機能を利用して低コストで精度よく推定することができる電気角の推定方法および高精度に回転制御を行うことができるブラシレスモータを提供する。
【解決手段】回転子を目標回転速度で回転させるPWM駆動電圧の演算に用いる電気角を、PWM駆動電圧における周期を利用して推定する。また、回転子と、固定子と、回転子位置検知センサと、PWM駆動信号を印加する駆動回路と、回転速度検出器と、電流検出器と、制御部とを有するブラシレスモータにおいて、制御部は、前記推定方法で電気角を推定し、少なくとも回転速度検出器および電流検出器の検出結果を受けて回転子の目標回転速度に応じてPWM駆動電圧を生成するための指令信号を電気角を用いて演算し、指令信号を駆動回路に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PWMを演算する際に用いる電気角を精度よく推定する方法および該電気角の推定を精度よく行うことができるブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気機器や電気自動車などの分野において、消費電力の低減、装置の小型化のために、動力源であるモータの小型化、効率向上は重要な課題の一つである。小型のモータには種々のものがあるが、特にブラシレスモータは、ノイズが少ないうえに寿命が長いという特性からOA機器に多く用いられている。
【0003】
ブラシレスモータは、その回転子に永久磁石が用いられ、固定子には多相の駆動電圧の印加により励磁されるコイルが配置されている。したがって、駆動電圧を多相で印加する際には、固定子に対する回転子の相対的な位置を把握することが必要になる。この回転子の位置を検知するセンサとしてホール素子を用いるものが一般的である。ホール素子は磁気センサとして磁界の強弱や磁極の判別作用があり、ホール素子を回転方向に沿って配置しておくことで、駆動電圧の多相切り換えを行うために必要な回転子の回転位置を検知することができる。
【0004】
また、ブラシレスモータは、回転子の回転を制御するために、磁界を発生するコイルに流れる電流をPWMによって制御している。そして、その電流値を求めるときに回転子の回転角度すなわち電気角をパラメータの一つとして用いている。
特に画像形成装置の感光体などを駆動するモータでは、精度の高い回転制御(例えば0.数%程度の回転精度)が必要とされており、回転を制御するPWM演算においても正確な電気角の推定が望ましい。
【0005】
電気角を求める方法としては、高分解能エンコーダを設置し該高分解能エンコーダの検知結果に基づいて、回転子の回転角度すなわち電気角を推定する方法が一般的である。
この他に、回転子が回転する際にコイルに発生する誘起電圧の変化を利用した統計的手法により、電気角を算出する方法(カルマンフィルタ推定法など)が知られている。
【0006】
また、この他に、回転子の電気角及び位置センサの周期に対応する位相差並びに電圧位相指令を演算パラメータとしてROMに格納しておき、位置センサの変化周期に基づいてカウント周期が決定された時間カウンタのカウント値を読出して、該カウント値に対応する前記演算パラメータをROMから読み出し電圧位相を演算により求めることが可能な装置が提案されている(特許文献1参照)。該電圧位相の決定により前記コイルに流れる電流が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−74790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、電気角の推定のために、高分解能エンコーダを用いる方法では、高価な高分解能エンコーダを必要とするため、モータコストが上昇してしまうという問題があり、また、エンコーダを取り付けるためのスペースが必要になり、小型化の障害になるという問題もある。
また、コイルの誘起電圧を利用した統計的手法の演算によって電気角を求める方法では、複雑な演算処理機能が要求されるため高価な演算装置を設けることが必要になり、コストが上昇してしまう問題がある。また、この演算装置を設置するためのスペースが必要であり、小型化の障害になる。さらに、小型モータに見られる磁極の多極構造では、磁極が一セクタを通過する時間が極めて短いため、演算結果の精度にも問題がある。例えば、3相DCブラシレスモータで、16極、回転速度3000rpmの場合、電気角1周期は、1/3000rpm/60sec/(16極/2)/6セクタ =1.157e−7sec となる。ベクトル制御を行う場合、この時間に対してさらに分割された角度補正が必要となり、上記演算によって精度の高い結果を得ることは難しい。
【0009】
さらに、特許文献1に示される電圧位相の演算方法では、電圧位相は時間の変化に応じて線形に変化することを前提としており、相当に高価なモータでなければこの条件を満たすことは困難である。実際には、モータの負荷が変動すると、特に小型のモータでは回転にはムラが生じることがあるため、上記線形の関係を満足することは難しく、実用化に適していない。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ブラシレスモータの電気角を、高分解能エンコーダを要することなく、モータの構成に不可欠な機能を利用して低コストで精度よく推定することができる電気角の推定方法および該推定により高精度に回転制御を行うことができるブラシレスモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明のブラシレスモータの電気角推定方法では、回転子を目標回転速度で回転させるPWM駆動電圧の演算に用いる電気角を、前記PWM駆動電圧における周期を利用して推定することを特徴とする。
【0012】
本発明のブラシレスモータは、永久磁石により形成される複数の磁極を有する回転子と、駆動電圧の印加により励磁される複数のコイルを備える固定子と、前記回転子の、前記固定子に対する相対的な位置を検知する回転子位置検知センサと、前記コイルに、PWMキャリアを用いた多相のPWM駆動信号を印加する駆動回路と、前記回転子の回転速度を検出する回転速度検出器と、前記コイルに通電される電流値を検出する電流検出器と、前記回転子の回転を制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記回転子位置検知センサの検知結果を受けて複数のセクタからなる励磁シーケンスを決定するとともに、前記PWM駆動電圧における周期を利用して前記回転子の電気角を推定し、少なくとも前記回転速度検出器および前記電流検出器の検出結果を受けて前記回転子の目標回転速度に応じて前記PWM駆動電圧を生成するための指令信号を前記電気角を用いて演算し、該指令信号を前記駆動回路に送信することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、固定子に対する回転子の位置が回転子位置検知センサによって検知され、該検知結果に基づいて制御部により複数のセクタからなる励磁シーケンスが決定される。さらに制御部によって、PWM駆動電圧における周期を利用して回転子の電気角を推定することで、モータに高精度エンコーダなどの格別な構成要素を設けることなくPWM駆動電圧を生成するための演算を行うことができる。これにより、実電気角度と、推定される電気角との差を最小にすることができ、精度の高い回転制御が可能になる。
【0014】
PWM駆動電圧は、モータの制御部で演算された指令信号に基づいて、駆動回路において所定周波数のPWMキャリアを用いて生成される。すなわち、PWMキャリアの周期がPWM駆動電圧における周期としてそのまま引き継がれるため、制御部では、PWM駆動電圧の周期を格別なパラメータとして用意することなく既に制御に使用されている周期パラメータを利用することができる。したがって、複雑な演算処理機能、すなわち高価な演算処理装置を設けることを要さずに電気角の推定が可能になる。
なお、特定の周期を利用して電気角を推定する方法として、タイマの周期を利用することも考えられる。しかし、この場合、タイマを特別に用意することが必要であり、コスト増を招き、また、タイマ設置のために高機能な演算手段が必要になってしまうという問題がある。これに対し本発明は、PWM制御に用いるPWM駆動電圧の周期を利用することで、格別に構成要素を必要とすることなく電気角を推定できるという点で、上記タイマに対し、格別な利点を有している。
【0015】
PWM駆動電圧は、固定子に設けられたコイルにおいて所望の電流が得られるように、制御部においてデューティーが決定される。例えば、コイルに正弦波電流が流れるように、回転子の回転位置(電気角)に従って、デューティーを設定する。したがって、電気角を精度よく推定することで、回転子の回転を精度よく制御することが可能になる。
【0016】
PWM駆動電圧はパルスの幅を変調した信号であり、パルスは、一定の周期毎に、パルス幅に応じた位置内に繰り返し、立ち上がりおよび立ち下がりのエッジが出現する。したがって、前記エッジ、特に一定の周期間隔で出現する基準となるエッジを電気角を推定するタイミングに用いることで、PWM駆動電圧の周期の利用を容易にする。
【0017】
また、電気角は、電気角分解能をパラメータとして含むことで、より正確な推定が可能になる。したがって、電気角分解能をモータの回転速度や負荷の状態などに拘わらず適切に把握することでモータの回転制御をより精度よく行うことができる。本発明では、前記PWM駆動電圧における周期を利用して電気角分解能を求めて電気角を推定することができる。この電気角分解能をパラメータとして電気角を推定する際には、既知の方法を採用することができる。電気角分解能を決定する際に、PWM駆動電圧のエッジをタイミングに用いることができる。これにより結果的にPWM駆動電圧のエッジをタイミングに用いて電気角が推定される。
【0018】
電気角分解能としては、PWM駆動電圧における一周期の間に前記回転子が目標回転速度において回転する回転角度を用いることができる。上記周期は、PWM駆動電圧のエッジにより容易に把握が可能であり、該エッジの検知等により電気角分解能を容易に知ることができる。電気角分解能としては、モータが負荷の変動がなく理想的に回転することを想定して定めることができ、これを基準電気角分解能として位置付けすることができる。
【0019】
前記基準電気角分解能は、前記回転子の目標回転速度における回転数をN、前記PWM駆動電圧における周期をTとして、下記式を用いて、算出することができる。
基準電気角分解能=2π/((1/N)/T)
【0020】
また、前記基準電気角分解能は、励磁シーケンスの一または二以上のセクタ単位で算出することができる。この場合、前記励磁シーケンスの一または二以上のセクタが切り替わる間の、前記PWM駆動電圧のパルスの立ち上がりまたは立ち下がりのエッジ数を求め、該エッジ数と前記切り替わりの間に回転子が目標回転速度で回転する回転角度とを用いて、基準電気角分解能を算出する。
このため、PWM駆動電圧における周期は、良好な再現性が得られるように、回転子が目標回転速度において一つまたは二以上のセクタを通過する時間の1/m倍(mは1以上の整数)の関係となるように設定するのが望ましい。PWM駆動電圧における周期は、PWMキャリアの周波数を調整することにより設定が可能であり、上記関係を満たすようにPWMキャリアの周波数を調整するのが望ましい。
【0021】
なお、制御部はフィードバック制御により、少なくとも、回転速度とコイルに通電される電流値とを検知結果として受け、P制御、PI制御、PD制御、PID制御などにより目標回転速度を維持するようにPWM演算を行う。これにより周期的な回転変動などの解消や負荷に応じた通電制御が行われる。しかし、画像形成装置の感光体ドラムを駆動する場合のように、短時間で負荷変動が生じるような場合には、通常のフィードバック制御では短時間での追随が難しく回転むらが生じてしまう。また、通常のフィードバック制御では高精度な回転制御を行うことが難しい。
【0022】
そこで、本発明の他の形態では、回転子が回転している際のPWM駆動電圧の変化に基づいて上記基準電気角分解能を補正した補正電気角分解能により電気角の推定を行うものとしている。PWM駆動電圧は、上記した回転速度、コイルへの通電電流などに従って迅速に調整されるため、PWM駆動電圧の変化によりモータの駆動状態を容易かつ直ちに把握することができる。このPWM駆動電圧の変化に基づいて電気角分解能を補正することでモータの駆動状態に応じた高精度な回転制御が可能になる。
【0023】
PWM駆動電圧の変化は、目標回転速度を得るために決定された理論上のPWM駆動電圧を基準にして判断することができ、特に、PWM駆動電圧のデューティーの変化をPWM駆動電圧の変化として捉えることができる。
補正電気角分解能は、デューティーの変化に応じて基準電気角分解能を補正することにより算出することができる。デューティーの変化は、一または二以上のセクタに亘る平均デューティーの変化により容易に把握することができる。
例えば、回転子が回転した際のPWM駆動電圧のデューティーをA、目標回転速度を得るために必要とされる理論上の前記PWM駆動電圧の基準デューティーをB、基準電気角分解能をθrsとして、下記式により補正電気角分解能を算出することができる。
補正電気角分解能=A/B×θrs
【0024】
PWM駆動電圧は、所定のデューティーが得られるように制御部において作成された指令信号に基づいて駆動回路において生成される。したがって、変化の観察対象となるPWM駆動電圧のデューティーの情報は、制御部において容易に取得することができる。該デューティーの変化は、PWM駆動電圧の周期を利用して基準電気角分解能を導出可能な一または二以上のセクタのn周期前(nは1以上の整数)の同じセクタにおける平均デューティーを求めることにより得ることができる。この過去のデューティーは、制御部に備えるRAMなどの記憶部に格納しておき、これを必要に応じて読み出すようにすることで演算に用いることができる。基準となるデューティーは、基準電気角分解能を導出可能な一または二以上のセクタの理論上の平均デューティーを算出することにより得られる。
【0025】
また、補正電気角分解能の導出は以下の方法により行うこともできる。すなわち、変化したデューティーに基づいて、所定の一または二以上のセクタを回転子が通過する時間を推定し、この時間内でPWM駆動電圧の周期が繰り返し可能な数をカウントし、前記セクタの範囲角度を前記カウント数で除することで補正電気角分解能の算出を行うことができる。上記推定通過時間は、デューティーの変化に応じて変化するため、上記補正電気分解能は、モータの運転状態に応じて適切に補正されたものとなる。
【0026】
本発明は、種々の用途におけるブラシレスモータに適用が可能であり、特定の用途に限定をされるものではないが、特に高精度の回転制御が要求される画像形成装置(特に感光体ドラム)の駆動において顕著に有用である。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、PWM駆動電圧における周期を用いることで、新たな機構を設けることなく、容易かつ正確に永久磁石型の多相ブラシレスモータの電気角を推定することができる。また、設定回転数や負荷が異なっても、安価に高い精度で電気角を推定することができ、低コストで低消費電力の小形な高精度のブラシレスモータとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態の制御ブロック図である。
【図2】同じく、ブラシレスモータの回路図である。
【図3】同じく、ブラシレスモータの概略構造を示す図である。
【図4】同じく、または120度通電の場合の、回転子位置検知センサであるホール素子の検知結果および各相の電流の流れ方向、セクタ切り替わりを示す座標系を示す図である。
【図5】同じく、回転子位置検知センサであるホール素子の検知結果と、一定周期のPWM駆動電圧パルスの繰り返しを示す図である。
【図6】同じく、PWM駆動電圧における周期の繰り返し数のカウント手順を示す図である。
【図7】同じく、推定された電気角を利用したPWM演算の手順を示すフローチャートである。
【図8】同じく、電気角の推定手順を示すフローチャートである。
【図9】同じく、PI制御におけるClark変換を示すベクトル図である。
【図10】同じく、PI制御におけるPark変換を示すベクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。
図1にブラシレスモータの制御ブロック、図2に同ブラシレスモータの回路図、図3に同ブラシレスモータの概略構造を示す。
【0030】
ブラシレスモータ1は、永久磁石によって複数の磁極2a、2bが形成された回転子3を有し、該回転子3の磁極に対峙可能に複数の鉄心が配置され、該鉄心にコイル4が巻線された固定子5が配置されている。この例では、便宜上、磁極を4個、固定子鉄心を6個で図示しているが、本発明としてはこれらの数は特に限定をされるものではない。
【0031】
さらに、ブラシレスモータ1には、回転子3の回転方向に沿って120度間隔で3つのホール素子Hu、Hv、Hwが配置されており、該ホール素子Hu、Hv、Hwによって本発明の回転子位置検知センサが構成されている。本発明としては、回転子位置センサの種別がホール素子に限定されるものではないが、センサの設置スペースを考慮して、ホール素子のような磁気センサが好適である。
【0032】
また、図では、回転子3の外周側に固定子5が配置されているものとして示しているが、これらの配置関係は特に限定されるものではなく、固定子が内周側にあって、その外周側に回転子が位置するものであってもよく、また、固定子と回転子とが軸方向に間隔を置いて平面状に対峙するように配置されるものであってもよい。
【0033】
該ブラシレスモータ1では、上記各コイル4がデルタ結線またはスター結線により3相に接続され(図ではスター結線)、図1に示すように駆動回路10が接続されている。駆動回路10は、U相、V相、W相の3相でスイッチングしてコイル4に駆動電流を与えるようにブリッジ回路12を有している。該ブリッジ回路12は、上記鉄心の数に合わせた数のトランジスタを備え、フルブリッジ回路、ハーフブリッジ回路などにより構成されている。ブリッジ回路12には既知の構成を採用することができる。
【0034】
図1は、ブラシレスモータの制御ブロックを示すものであり、ブラシレスモータ1の制御を行う制御部20が前記駆動回路10に指令信号を送出するように接続されている。ブラシレスモータ1では、モータの回転速度を検出する回転速度検出器6が配置されており、該回転速度検出器6の検知結果および前記ホール素子Hu、Hv、Hwの検知結果が制御部20に入力されている。また、上記駆動回路10からU相、V相、W相としてコイル4に通電される電流を検知する電流検出器7が設けられており、該電流検出器7の検出結果は制御部20に入力されている。
【0035】
制御部20では、ホール素子Hu、Hv、Hwの検出結果を受けて、励磁シーケンスのセクタ位置を決定して該励磁シーケンスが得られるようにU相、V相、W相の通電を切り替え、回転速度検出器6および電流検出器7の検出結果を受けて回転子3の回転が目標の回転数となるように演算をして指令信号を生成する。この例では、上記回転速度および電流検知結果を受けて、PI制御が行われる。
また、上記演算では、推定した電気角がパラメータとして用いられ、電気角の推定では、電気角分解能がパラメータとして用いられる。
【0036】
駆動回路10は、PWM駆動電圧を生成するPWM回路11を有しており、前記指令信号に基づいて所定周波数のPWMキャリアを用いてPWM駆動電圧が生成される。制御部20では、PWMキャリアの周波数を調整可能とするのが望ましい。
前記ブリッジ回路12は、PWM回路11によって生成されるPWM駆動電圧に応じて、スイッチが切り替わり、各相のコイル4に電流を流す。各相のコイル4は、電流が流れることで磁界を発生する。そして、永久磁石により形成された回転子3は、コイルの磁界の作用を受けて目標回転速度で回転する。
【0037】
次に、本発明のブラシレスモータの電気角推定方法および該方法を含むブラシレスモータの動作について以下に具体的に説明する。
【0038】
先ず、制御部20では、ホール素子Hu、Hv、Hwの検知結果を受けて励磁シーケンスを決定する。
図4(a)は、各ホール素子Hu、Hv、Hwの検知結果と、U相を基準にして、回転子3の位置が60°回転するごとにコイル4を流れる電流の向きが変わる120度通電時の励磁シーケンスを示している。
【0039】
120度通電時には、ホール素子Hu、Hv、Hwは、回転子3の回転に伴って、それぞれ60度の位相差で180度毎にHi、Loを出力する。したがって、制御部20では、ホール素子Hu、Hv、Hwの出力結果に基づいて、回転子が60度回転する毎に通電を切り替える励磁シーケンスを決定する。この切り替え指令を指令信号に含ませることで、ブリッジ回路12が動作して、通電を切り替える。これにより図に示すように各相のコイルに流れる電流の方向が切り換えられ、励磁シーケンスのセクタが決定される。
該励磁シークエンスにより、例えば、セクタ1は、ホール素子からの信号が(101)の場合で、U相、W相でON、V相でOFFの状態であり、それに伴って、各相のコイルに電流が流れる。電流の方向は、V相からU相およびV相からW相へと流れることで、各コイルの磁極(010)は、V相側がN極、U相側及びW相側がS極に、それぞれ励磁される。
【0040】
120度通電の場合、上記のようにホール素子Hu、Hv、Hwの検知タイミングに合わせ、U、V、Wの各相の電流ベクトルを決めている。一方、電気角を用いたベクトル制御では、回転子の位置を電気角で推定し、U、V、Wの各相の電流ベクトルを決めている。
この実施形態では、ベクトル制御が用いられる。図4(b)は、ベクトル制御における回転子の電気角とU、V、Wの各相の出力ベクトルとの関係を示しており、例えば、セクタ1の場合、回転子の位置から電流ベクトルは、U相:−Vdd、V相:Vdd、W相:−Vddの条件である。
ベクトル制御では、各セクタ間0〜60度の範囲で回転子位置を推定し、それぞれの相の電流値を基に、clarke/park変換、及び目標位置に対するPI制御、その後、inverse clarke/park変換を行い、算出された電圧ベクトルを基に、Space Vector変換を行い、U、V、Wの各相のON/OFFパターンを制御する。各セクタを決めるものとして、この実施形態ではホール素子Hu、Hv、Hw信号が用いられる。この実施形態では、回転子の位置は、例えば、前記0〜60度の範囲でPWMキャリア信号のエッジを用いて推定し、また、セクタ1の切り替わり目でエッジ信号のカウンタをクリアする。上記電気角の推定は360度毎に行ってもよく、この場合、セクタ1のエッジのカウンタのみをクリアすればよい。
【0041】
次に、図5を用いて電気角の推定のために、基準電気角分解能を求める手順を説明する。
この図には、ブラシレスモータ1におけるホール素子Hu、Hv、Hwからの信号およびPWM駆動電圧のパルスが示されている。
この例では、PWM駆動電圧における周期は、一つのセクタを通過する時間の1/m倍(mは1以上の整数)の関係となるように設定されており、ここではm=9の例を示している。
【0042】
PWM駆動電圧は一定周期のパルスであり、PWM駆動電圧の基準となる側のパルスのエッジ(この例では立ち上がり)をタイミングにして一つのセクタにおける周期の繰り返し数をカウントする。この際に、セクタの切り替わり検知とともに、最初のエッジの検知によって、一旦カウントをクリアにして、セクタ内における周期の繰り替えし数をカウントする。この例では、最初のエッジがクリアされるため、エッジが8にカウントされるが、エッジ数は9であるため、これをカウント数にする。このカウント数によってセクタの範囲角度(60度)を除し、これをラジアンに変換すると、下記式により基準電気角分解能が算出される。
基準電気角分解能=60/9×2π/360=0.116355rad
【0043】
該基準電気角分解能を用いて電気角を推定し、PWM演算を行うことができる。
上記基準電気角分解能は、2以上のセクタを用いて算出することも可能である。
上記算出は、PWM駆動電圧が1パルス発生する間に、回転子が目標回転速度において回転する回転角度を基準電気角分解能にするという観点で算出されたものであり、回転子の目標回転速度における回転数をN、PWM駆動電圧の周期をTとして、下記式を用いて算出することもできる。
基準電気角分解能=2π/((1/N)/T)
【0044】
また、異なるセクタで同様に基準電気角分解能を算出することで、セクタ間でPWM駆動電圧の周期の個数が異なる場合にも電気角を推定することができる。
各セクタで上記周期の個数をカウントする手順の例を図6のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、U相のホール素子Huで立ち上がりエッジが検出されたか否かを判定する(ステップU1)。立ち上がりエッジが検知されていなければ(ステップU1、NO)、次フローへ移行する。立ち上がりエッジが検知されれば(ステップU1、YES)、他相のホール素子におけるエッジカウント数を制御部20の記憶部に記憶した後、PWMエッジカウントをクリアし(ステップU2)、セクタNo.4として、PWMエッジのカウントを開始し、次フローに移行する。
【0045】
次フローでは、V相のホール素子Hvで立ち上がりエッジが検出されたか否かを判定する(ステップV1)。立ち上がりエッジが検知されていなければ(ステップV1、NO)、次フローへ移行する。立ち上がりエッジが検知されていれば(ステップV1、YES)、V相のホール素子におけるエッジカウント数を制御部20の記憶部に記憶した後、PWMエッジカウントをクリアし(ステップV2)、セクタNo.6として、PWMエッジのカウントを開始し、次フローに移行する。
次フローでは、W相のホール素子Hwで立ち上がりエッジが検出されたか否かを判定する(ステップW1)。立ち上がりエッジが検知されていなければ(ステップW1、NO)、次フローへ移行する。立ち上がりエッジが検知されていれば(ステップW1、YES)、W相のホール素子におけるエッジカウント数を制御部20の記憶部に記憶した後、PWMエッジカウントをクリアし(ステップW2)、セクタNo.2として、PWMエッジのカウントを開始し、次フローに移行する。
【0046】
また、次フローでは、U相のホール素子Huで立ち下がりエッジが検出されたか否かを判定する(ステップU10)。立ち下がりエッジが検知されていなければ(ステップU10、NO)、次フローへ移行する。立ち下がりエッジが検知されていれば(ステップU10、YES)、U相のホール素子におけるエッジカウント数を制御部20の記憶部に記憶した後、PWMエッジカウントをクリアし(ステップU11)、セクタNo.1として、PWMエッジのカウントを開始し、次フローに移行する。
次フローでは、V相のホール素子Hvで立ち下がりエッジが検出されたか否かを判定する(ステップV10)。立ち下がりエッジが検知されていなければ(ステップV10、NO)、次フローへ移行する。立ち下がりエッジが検知されていれば(ステップV10、YES)、V相のホール素子におけるエッジカウント数を制御部20の記憶部に記憶した後、PWMエッジカウントをクリアし(ステップV11)、セクタNo.3として、PWMエッジのカウントを開始し、次フローに移行する。
【0047】
次フローでは、W相のホール素子Hwで立ち下がりエッジが検出されたか否かを判定する(ステップW10)。立ち下がりエッジが検知されていなければ(ステップW10、NO)、次フローへ移行する。立ち下がりエッジが検知されていれば(ステップW10、YES)、W相のホール素子におけるエッジカウント数を制御部20の記憶部に記憶した後、PWMエッジカウントをクリアし(ステップW11)、セクタNo.5として、PWMエッジのカウントを開始し、次フローに移行する。
【0048】
上記によりカウントされたエッジ数は、必要に応じて記憶部から読み出され、基準電気角分解能の算出に利用することができる。この場合、セクタでのPWM駆動電圧の繰り返し周期が、該セクタにおける回転子の回転時間と正に一致している再現性のあるセクタを選択して基準電気角分解能とすることができる。これにより最も誤差の小さい基準電気角分解能を選択することができる。
【0049】
電気角の推定に際し使用される電気角分解能としては、上記基準電気角分解能を用いることができるが、PWM駆動電圧の変化を観察して、この変化に基づいて基準電気角分解能が補正された補正電気角分解能を用いることができる。この例では、PWM駆動電圧の変化として、デューティーの変化を用いた例を説明する。
【0050】
一または二以上のセクタにおける理論平均デューティーを基準にして、n(nは1以上の整数)周期前のいずれかの周期における同じセクタでの平均デューティーを比較する。該平均デューティーの情報は、PWM演算に際し、制御部20において記憶部に記憶しておき、必要に応じて読み出すことで取得することができる。
【0051】
例えば、理論平均デューティーが64%である場合に、n周期前の同じセクタの平均デューティーが65%であるとすると、デューティーが基準よりも大きくなっており、これはそのセクタ付近では負荷が大きく、回転数変化が微視的にマイナス側になっている可能性がある。このため、基準電気角分解能をデューティーの偏差で補正することにより制御精度を上げることができる。具体的には、基準デューティーに対する平均デューティーの比(65/64)を求め、この比に前記で求めた基準電気角分解能を乗ずることで、下記式により補正電気角分解能が求められる。
補正電気角分解能=65/64×0.116355rad
=0.118173046875rad
この補正電気角分解能を用いて電気角を推定し、PWM演算を行うことで、負荷の変動に際しても適正なPWM駆動電圧を印加して精度よく回転制御を行うことができる。
【0052】
また、この他に、PWM駆動電圧の変化である平均デューティーを用いて、基準電気角分解能を使用することなく補正電気角分解能を求める方法について説明する。
n周期前の平均デューティーの情報を取得し、該平均デューティーによって回転子が回転する際に、平均デューティーが与えられたセクタを前記回転子が通過する時間を推定する。平均デューティーが理論デューティーよりも大きくなっていれば、推定時間は理論値よりも大きくなる。この推定時間内に、PWM駆動電圧における周期が繰り返し可能な数を算出し、前記セクタの範囲角度を算出した数で除する。この値が補正電気角分解能を示す。平均デューティーを求める際のタイミングとして、PWM駆動電圧におけるエッジを用いることができる。
【0053】
次に、本発明の電気角推定方法を用いた制御部によるPWM演算の手順について、図7のフロー図を用いて説明する。
まず、一または二以上のセクタを回転子が通過する際のPWM駆動電圧のパルスのエッジをカウントして基準電気角分解能を求める。一セクタの場合には、図6に示すフローチャートにしたがって、各セクタでの周期カウントを行うことができる。
PWM駆動電圧のパルスのエッジカウントがなされると(ステップ1、YES)、最初のエッジ検知においてカウント数のクリアを行っているため、カウント数に一を加算して(ステップs2)、カウント数とする。次いで、電気角の推定を行う(ステップs3)。
【0054】
電気角の推定は、図8に示すフロー図に示す手順により制御部によって行われる。
先ず、n周期前(nは1以上の整数)の一または二以上のセクタの平均デューティーを算出する。過去のデューティーは、制御部20の記憶部に格納されており、上記セクタに該当するデューティーを読み出して平均デューティーを算出することができる(ステップs30)。
【0055】
次いで、同じセクタにおいて速度変動が無い場合の理論デューティーを、目標回転速度から算出する(ステップs31)。そして、平均デューティーをA、理論デューティーをB、ステップs1、2で取得したエッジカウントから求められた基準電気角分解能をθrsとして、該基準電気角分解能を補正する(ステップs32)。補正電気角分解能は、A/B×θrsにより求められる。この補正された電気角分解能を用いて、電気角を推定する(ステップs33)。電気角の推定では、電気角分解能をパラメータとして既知の方法により電気角を算出することができる。該方法は、既知のものであり、ここではその詳細な記述は省略する。
【0056】
このように、過去のデューティーに基づいて基準電気角分解能を補正し、その補正電気角分解能を用いて、電気角を推定することで、実電気角との差異が小さくなるように精度良く電気角を推定することができる。
また、パラメータとして使用するPWM駆動電圧のデューティーは、制御部の記憶部に記憶されているデータであるため、過去のデータを読み出して演算に用いることは容易であり、複雑な演算装置を必要としない。そのため、低コストで高精度に回転を制御することができる。
【0057】
電気角を推定した後は、既知の方法により制御部20により演算が行われる。
先ず、電流検出器7により検知され、制御部20に入力された、各コイル4に流れるU相、V相、W相の電流をClarke変換により、二相に変換する(ステップ4)。
図9はClarke変換におけるベクトル図を示すものであり、固定子の各コイルに流れる電流iu、iv、iwを、図9中の行列式を用いて、α、β軸上のisに変換している。この例では、V相およびW相からU相に流れる電流が示されている。
このように、固定子の各コイルを流れる三相の電流をα、β軸上の二相(iα、iβ)に変換して、電流値算出の際の計算を容易にしている。
【0058】
続いて、Park変換により、固定子を基準とした座標を回転子を基準とした座標(d−q座標)に変換する(ステップ5)。図10はPark変換におけるベクトル図を示したものである。Park変換では、Clarke変換された電流isを、図10中の行列式を用いて、d−q座標へと変換する。このとき、座標軸がθ回転していることがわかる。Clarke変換されたisは、コイルに流れる電流であるため、固定子側を基準とした座標上で変換されたものである。しかし、回転子の回転を制御するためには、例えば、励磁シーケンスの各セクタにおける回転子の回転角度を回転子側の座標を用いて算出する必要がある。そこで、図10のように、Park変換により、座標軸がθ回転した回転子座標に変換している。
【0059】
そして、d−q座標において、推定した電気角を用いてコイルの電流値を算出し、その電流値と目標電流値とを比較して、d−q PI制御によって電流制御値を求める(ステップ6)。続いて、回転子の回転速度を制御するタイミングか否かを判断し(ステップ7)、タイミングの場合、回転子の回転速度を目標回転速度と比較して、回転子の回転速度をspeed PI制御するための電流制御値を求める(ステップ8)。その後、座標を固定子側に戻すために、逆Park変換を行う(ステップ9)。そして、回転子の目標回転速度に応じたコイルの電流値となるように、space Vector Modulationによってコイルへの3相の印加電圧を演算により求める(ステップ10)。該演算結果は、指令信号として駆動回路10に送信され、PWM駆動電圧が生成され、ブラシレスモータの回転制御が高精度に行われる。
【0060】
なお、上記実施形態では、3相のブラシレスモータについて詳細に説明したが、本発明としては、相数、回転子の磁極数、固定子の磁極数について特に限定されるものではない。また、上記電気角の推定では、目標回転速度が異なる場合にも同様に、電気角の推定を行って高精度な回転制御が可能であり、電流ベクトル演算や、空間ベクトル変換に用いる速度が変化したときには、PWMキャリア周期を変化させて対応することができる。
【0061】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 ブラシレスモータ
2a、2b 磁極
3 回転子
4 コイル
5 固定子
6 回転速度検出器
7 電流検出器
Hu、Hv、Hw ホール素子
10 駆動回路
11 PWM回路
12 ブリッジ回路
20 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子を目標回転速度で回転させるPWM駆動電圧の演算に用いる電気角を、前記PWM駆動電圧における周期を利用して推定することを特徴とするブラシレスモータの電気角推定方法。
【請求項2】
前記PWM駆動電圧のパルスの立ち上がりまたは立ち下がりのエッジを前記電気角を推定するタイミングに用いることを特徴とする請求項1に記載のブラシレスモータの電気角推定方法。
【請求項3】
前記PWM駆動電圧における一周期の間に前記回転子が前記目標回転速度において回転する回転角度を基準電気角分解能とし、該基準電気角分解能を用いて、前記電気角の推定を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のブラシレスモータの電気角推定方法。
【請求項4】
前記PWM駆動電圧のパルスの立ち上がりまたは立ち下がりのエッジを前記基準電気角分解能を決定する際のタイミングに用いることを特徴とする請求項3記載のブラシレスモータの電気角推定方法。
【請求項5】
前記回転子の目標回転速度における回転数をN、前記PWM駆動電圧における周期をTとして、下記式を用いて、前記基準電気角分解能を算出することを特徴とする請求項3または4に記載のブラシレスモータの電気角推定方法。
基準電気角分解能=2π/((1/N)/T)
【請求項6】
前記基準電気角分解能を励磁シーケンスの一または二以上のセクタ単位で算出することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のブラシレスモータの電気角推定方法。
【請求項7】
前記励磁シーケンスの一または二以上のセクタが切り替わる間の、前記PWM駆動電圧のパルスの立ち上がりまたは立ち下がりのエッジ数を求め、該エッジ数と前記切り替わりの間に前記回転子が前記目標回転速度で回転する回転角度とを用いて、前記基準電気角分解能を算出することを特徴とする請求項6記載のブラシレスモータの電気角推定方法。
【請求項8】
前記回転子が回転している際のPWM駆動電圧の変化に基づいて前記基準電気角分解能を補正した補正電気角分解能を求め、該補正電気角分解能を用いて、前記電気角の推定を行うことを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載のブラシレスモータの電気角推定方法。
【請求項9】
前記PWM駆動電圧の変化は、前記回転子を前記目標回転速度で回転させる際に必要とされる理論上のPWM駆動電圧を基準とするものであることを特徴とする請求項8記載のブラシレスモータの電気角推定方法。
【請求項10】
前記PWM駆動電圧の変化は、該PWM駆動電圧のデューティーの変化であることを特徴とする請求項8または9に記載のブラシレスモータの電気角推定方法。
【請求項11】
前記回転子が回転している際のPWM駆動電圧のデューティーを用いて、該デューティーにおいて前記一または二以上のセクタを前記回転子が回転して通過する推定の通過時間を算出し、該推定通過時間内で前記PWM駆動電圧における周期が繰り返し可能な数を求め、該繰り返し数と前記一または二以上のセクタに亘る回転角度とを用いて、前記補正電気角分解能を算出することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のブラシレスモータの電気角推定方法。
【請求項12】
前記回転子が回転している際のPWM駆動電圧のデューティーから前記一または二以上のセクタを前記回転子が回転して通過する推定の通過時間を算出し、前記回転子が前記目標回転速度で回転する際に前記一または二以上のセクタを通過する際の基準通過時間を求め、前記推定通過時間と前記基準通過時間との偏差に基づいて前記補正電気分解能を算出することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のブラシレスモータの電気角推定方法。
【請求項13】
前記目標回転速度を得るために必要とされる理論上の基準平均デューティーと、前記回転子が回転している際の平均デューティーとの偏差に基づいて前記補正電気分解能を算出することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のブラシレスモータの電気角推定方法。
【請求項14】
前記基準平均デューティーは、前記基準電気角分解能を算出した一または二以上のセクタに亘って前記回転子が回転する際のPWM駆動電圧のデューティーの平均値であり、前記平均デューティー値が、前記一または二以上のセクタのn周期前(nは1以上の整数)の同じセクタに亘って前記回転子が回転した際のPWM駆動電圧のデューティーの平均値であることを特徴とする請求項13記載のブラシレスモータの電気角推定方法。
【請求項15】
前記回転子が回転した際のPWM駆動電圧のデューティーをA、前記目標回転速度を得るために必要とされる理論上の前記PWM駆動電圧の基準デューティーをB、前記基準電気角分解能をθrsとして、下記式を用いて、前記補正電気角分解能を算出することを特徴とする請求項13または14に記載のブラシレスモータの電気角推定方法。
補正電気角分解能=A/B×θrs
【請求項16】
前記PWM駆動電圧における周期は、前記回転子が目標回転速度において一つのセクタを通過する時間の1/m倍(mは1以上の整数)の関係となるように設定されることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のブラシレスモータの電気角推定方法。
【請求項17】
永久磁石により形成される複数の磁極を有する回転子と、
駆動電圧の印加により励磁される複数のコイルを備える固定子と、
前記回転子の、前記固定子に対する相対的な位置を検知する回転子位置検知センサと、
前記コイルに、PWMキャリアを用いた多相のPWM駆動信号を印加する駆動回路と、
前記回転子の回転速度を検出する回転速度検出器と、
前記コイルに通電される電流値を検出する電流検出器と、
前記回転子の回転を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記回転子位置検知センサの検知結果を受けて複数のセクタからなる励磁シーケンスを決定するとともに、前記PWM駆動電圧における周期を利用して前記回転子の電気角を推定し、少なくとも前記回転速度検出器および前記電流検出器の検出結果を受けて前記回転子の目標回転速度に応じて前記PWM駆動電圧を生成するための指令信号を前記電気角を用いて演算し、該指令信号を前記駆動回路に送信することを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項18】
前記制御部は、前記PWM駆動電圧のパルスの立ち上がりまたは立ち下がりのエッジを前記電気角を推定する際のタイミングに用いることを特徴とする請求項17に記載のブラシレスモータ。
【請求項19】
前記制御部は、前記PWM駆動電圧における一周期の間に前記回転子が前記目標回転速度において回転する回転角度を基準電気角分解能とし、該基準電気角分解能を用いて、前記電気角の推定を行うことを特徴とする請求項17または18に記載のブラシレスモータ。
【請求項20】
前記制御部は、前記PWM駆動電圧のパルスの立ち上がりまたは立ち下がりのエッジを前記基準電気角分解能を決定する際のタイミングに用いることを特徴とする請求項19に記載のブラシレスモータ。
【請求項21】
前記制御部は、前記回転子の目標回転速度における回転数をN、前記PWM駆動電圧における周期をTとして、下記式を用いて、前記基準電気角分解能を算出することを特徴とする請求項19または20に記載のブラシレスモータ。
基準電気角分解能=2π/((1/N)/T)
【請求項22】
前記制御部は、前記基準電気角分解能を前記励磁シーケンスの一または二以上のセクタ単位で算出することを特徴とする請求項19〜21のいずれかに記載のブラシレスモータ。
【請求項23】
前記制御部は、前記励磁シーケンスの一または二以上のセクタが切り替わる間の、前記PWM駆動電圧のパルスの立ち上がりまたは立ち下がりのエッジ数を求め、該エッジ数と前記切り替わりの間に前記回転子が前記目標回転速度で回転する回転角度とを用いて、前記基準電気角分解能を算出することを特徴とする請求項22に記載のブラシレスモータ。
【請求項24】
前記制御部は、前記回転子が回転している際のPWM駆動電圧の変化に基づいて前記基準電気角分解能を補正した補正電気角分解能を求め、該補正電気角分解能を用いて、前記電気角の推定を行うことを特徴とする請求項19〜23のいずれかに記載のブラシレスモータ。
【請求項25】
前記PWM駆動電圧の変化は、前記回転子を前記目標回転速度で回転させる際に必要とされる理論上のPWM駆動電圧を基準とするものであることを特徴とする請求項24記載のブラシレスモータ。
【請求項26】
前記PWM駆動電圧の変化は、該PWM駆動電圧のデューティーの変化であることを特徴とする請求項24または25に記載のブラシレスモータ。
【請求項27】
前記制御部は、前記回転子が回転している際のPWM駆動電圧のデューティーを用いて、該デューティーにおいて前記一または二以上のセクタを前記回転子が回転して通過する推定の通過時間を算出し、該推定通過時間内で前記PWM駆動電圧における周期が繰り返し可能な数を求め、該繰り返し数と前記一または二以上のセクタに亘る回転角度とを用いて、前記補正電気角分解能を算出することを特徴とする請求項24〜26のいずれかに記載のブラシレスモータ。
【請求項28】
前記制御部は、前記回転子が回転している際のPWM駆動電圧のデューティーから前記一または二以上のセクタを前記回転子が回転して通過する推定の通過時間を算出し、前記回転子が前記目標回転速度で回転する際に前記一または二以上のセクタを通過する際の基準通過時間を求め、前記推定通過時間と前記基準通過時間との偏差に基づいて前記補正電気分解能を算出することを特徴とする請求項24〜26のいずれかに記載のブラシレスモータ。
【請求項29】
前記制御部は、前記目標回転速度を得るために必要とされる理論上の基準平均デューティーと、前記回転子が回転している際の平均デューティーとの偏差に基づいて前記補正電気分解能を算出することを特徴とする請求項24〜26のいずれかに記載のブラシレスモータ。
【請求項30】
前記基準平均デューティーは、前記基準電気角分解能を算出した一または二以上のセクタに亘って前記回転子が回転する際のPWM駆動電圧のデューティーの平均値であり、前記平均デューティー値が、前記一または二以上のセクタのn周期前(nは1以上の整数)の同じセクタに亘って前記回転子が回転した際のPWM駆動電圧のデューティーの平均値であることを特徴とする請求項29記載のブラシレスモータ。
【請求項31】
前記制御部は、前記回転子が回転した際のPWM駆動電圧のデューティーをA、前記目標回転速度を得るために必要とされる理論上の前記PWM駆動電圧の基準デューティーをB、前記基準電気角分解能をθrsとして、下記式を用いて、前記補正電気角分解能を算出することを特徴とする請求項29または30に記載のブラシレスモータ。
補正電気角分解能=A/B×θrs
【請求項32】
前記PWM駆動電圧における周期は、前記回転子が目標回転速度において一つのセクタを通過する時間の1/m倍(mは1以上の整数)の関係となるように設定されることを特徴とする請求項17〜31のいずれかに記載のブラシレスモータ。
【請求項33】
前記制御部は、前記PWM駆動電圧の変化を記憶する記憶部を備えることを特徴とする請求項23〜32のいずれかに記載のブラシレスモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−30371(P2011−30371A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173985(P2009−173985)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】