ブラシレスモータの駆動制御装置、画像読取装置及び画像形成装置
【課題】本発明の課題は、ブラシレスモータを高速に起動制御できるブラシレスモータの駆動制御装置及びこれを用いた画像読取装置及び画像形成装置を得ることである。
【解決手段】ロータ9と複数相のコイルとを備えたブラシレスモータ3の駆動制御装置1であって、前記ロータ9の回転に同期して回転する被検出部11と、被検出部11に形成され且つ変調情報が埋め込まれたパターン情報と、前記パターン情報を読み取り変調された各出力信号を出力する検出部13と、前記検出部13から出力される各出力信号を復調する復調部15と、前記出力信号の情報を検出する出力信号情報検出部45と、前記ロータの回転を制御する制御部とを備え、前記制御部は前記復調部15で復調した復調情報と前記出力信号情報検出部45で検出された出力信号の情報に基づいて前記ロータ9の絶対角度又は前記ロータ9の磁極位置を検出している。
【解決手段】ロータ9と複数相のコイルとを備えたブラシレスモータ3の駆動制御装置1であって、前記ロータ9の回転に同期して回転する被検出部11と、被検出部11に形成され且つ変調情報が埋め込まれたパターン情報と、前記パターン情報を読み取り変調された各出力信号を出力する検出部13と、前記検出部13から出力される各出力信号を復調する復調部15と、前記出力信号の情報を検出する出力信号情報検出部45と、前記ロータの回転を制御する制御部とを備え、前記制御部は前記復調部15で復調した復調情報と前記出力信号情報検出部45で検出された出力信号の情報に基づいて前記ロータ9の絶対角度又は前記ロータ9の磁極位置を検出している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブラシレスモータの駆動制御装置、画像読取装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシレスDCモータのロータ位置はホール素子等のセンサによって検出して回転制御を行っており、3相のブラシレスDCモータでは各相に計3つのホール素子が必要であった。またロータの磁極位置を検出せず、モータのコイルに誘起する電圧を利用してブラシレスDCモータの回転を制御するモータ駆動方式、いわゆるセンサレスDCモータ駆動方式が知られている。
【0003】
係るモータ駆動方式は、発熱が大きくホール素子が使えない大型機ではすでに使われており、一方でモータを駆動源として利用する種々の電子機器ではコストダウンの要求からホール素子を使わないセンサレスDCブラシレスモータ駆動方式が使われるようになってきている。センサレスDCブラシレスモータ駆動方式はモータのコイルに発生する誘起電圧に基づいてロータの位置を検出しているため、モータの起動時にはコイルに誘起電圧は発生せず、強制的に適宜定められたタイミングで、励磁電流をモータのコイルに順次供給してモータを起動するオープンループ制御が行われている。そしてモータの回転速度が上がってモータコイルに発生する誘起電圧が大きくなった時、誘起電圧信号をもとに励磁切換タイミングを算出してセンサレスDCブラシレスモータを駆動している。
【0004】
また、モータの起動初期はモータの駆動力が伝達駆動される回転体の角度位置検出信号を用いて強制的に各相へ電流を流し、モータの起動時に規定の3箇所にロータを引き込むことで各相の電流切り替えタイミングを角度位置検出信号により基準をとり、基準の計測後はロータの磁極位置を角度検出信号より求めることでホール素子や誘起電圧を利用せずに駆動している。
【0005】
上記の誘起電圧を用いてロータの位置を検出するセンサレスブレシレスDCモータ駆動方式では、モータの停止時に誘起電圧が得られないため、誘起電圧が検出できるレベルになるまで、モータ起動後の一定期間、所定のタイミングで励磁電流をモータのコイルに順次供給することでセンサレスブラシレスDCモータの起動を行っている。このような起動制御は負荷が安定している機器や、回転速度が速くなりすぎても問題が生じ難い機器には有効であった。
【0006】
しかし、レーザビームプリンタや複写機などに従来のセンサレスブラシレスDCモータ駆動方式を適用するためには、(1)トナーカートリッジ内のトナーの状態や量によって、起動時のモータ負荷が一定でないため、起動時のロータ位置によってはトルク不足となって起動不良となる。(2)モータ起動時はオープンループ制御のため、過度の速い回転速度でモータが回転すると、感光体ドラムの劣化の原因となることがあった。
【0007】
係る問題を解決するため、特許文献1に記載の従来技術では、モータのロータの回転位置を検出する第1の検出手段と、モータのコイルに電流が流れていない間にコイルに発生する誘起電圧により前記ロータの回転位置を検出する第2の検出手段とを用い、モータの起動時に第1の検出手段の検出結果に基づいてモータの駆動制御を開始し、その後、所定のタイミングで第1の検出手段及び第2の検出手段の検出結果に基づいてモータの駆動制御を切り換えている。
【0008】
また誘起電圧を利用した検出が可能となるまで、ロータの回転と一体的に回転する被検出部にある一定間隔のタイミングマークを検出部で検出して出力される連続パルスをカウントして強制的に適宜定められたパルスのカウント数を基準に励磁電流をモータのコイルに順次供給してモータの起動を行っている。係る期間はモータの回転角速度を検知して速度制御を行っていないオープンループ制御を行っている。
【0009】
一方、特許文献2に記載の従来技術は、モータの回転子を規定された3つの引き込み角度位置に引き込んで、その角度位置をセンサレスモータからの動力が伝達される駆動対象物に設けられた角度位置検出器からの信号でモータ各相への転流タイミングであると設定し、設定以降は角度位置検出器からの信号で複数相の励磁相を切り換えるようにしている。
【0010】
【特許文献1】特開2003−79184号公報
【特許文献2】特許第3690296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載の従来技術では、モータの回転速度が速くなり誘起電圧を利用できるレベルになるまでは、誘起電圧信号に基づいて励磁切り換えタイミングを算出してセンサレスDCブラシレスモータを駆動することができ難いという問題があった。また、
回転角速度を検知して速度制御を行っていないオープンループ制御であるため、急激な立ち上げ制御を行うフィードバック制御のモードに入る時間が遅れるという問題があった。
【0012】
つまり、立ち上げ時間が遅くなるということは、レーザビームプリンタや複写機などで第1番目のプリント開始時間が遅くなるという問題がある。立ち上げ時間が遅く定着温度がすでに立ち上がった状態でもジョブ指令が来てから用紙が排出されるまでの時間はますます速くすることが望まれており、かかるために駆動系の立ち上げ時間を短縮することが必要となる。更に誘起電圧検出用のアナログ回路が必要となるので、コスト高になるという問題もあった。
【0013】
一方、特許文献2に記載の従来技術では、誘起電圧の計測を行わずにモータの駆動を開始することができるが、起動時に必ず規定された3つの引き込み角度位置を認識しなければならず、立ち上げ時間が遅くなるという問題があった。更に、引き込み角度位置の誤差が摩擦トルクの影響を受けて発生するので、推定磁極位置と実際のロータの磁極位置に誤差が生じて動作が不安定になるという問題があった。更に、電源をOFFしてしまうと正確な磁極の位相が分からなくなってしまうため、再電源ON時に再び引き込み位置への引き込みが必要となり、立上り時間が遅くなってしまうという問題があった。
【0014】
本発明は、ブラシレスモータを高速に起動制御できるブラシレスモータの駆動制御装置及びこれを用いた画像読取装置及び画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、ロータと複数相のコイルとを備えたブラシレスモータの駆動制御装置であって、前記ロータの回転に同期して回転する被検出部と、被検出部に形成され且つ変調情報が埋め込まれたパターン情報と、前記パターン情報を読み取り変調された各出力信号を出力する検出部と、前記検出部から出力される各出力信号を復調する復調部と、前記出力信号の情報を検出する出力信号情報検出部と、前記ロータの回転を制御する制御部とを備え、前記制御部は前記復調部で復調した復調情報と前記出力信号情報検出部で検出された出力信号の情報に基づいて前記ロータの絶対角度又は前記ロータの磁極位置を検出していることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載された発明は、ロータと複数相のコイルとを備えたブラシレスモータの駆動制御装置であって、前記ロータの回転に同期して回転する被検出部と、被検出部に形成され且つ変調情報が埋め込まれたパターン情報と、前記パターン情報を読み取り変調された各出力パルスを出力する検出部と、前記検出部から出力される各出力パルスを復調する復調部と、前記出力パルスの数をカウントするパルスカウント部と、前記復調部で復調した出力パルスの復調情報とパルスカウント部でカウントされた出力パルスのカウント値に基づいて前記ロータの回転を制御する制御部とを備え、前記パターン情報は前記被検出部の異なる位置に対応して出力される出力パルスのパルス幅が異なるように形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載された発明において、前記被検出部から出力される出力パルスは、短周期パルスと長周期パルスとを組み合わせたパルスを1つの単位として、それらを複数単位備えていることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載の発明において、前記短周期パルスと前記長周期パルスとはそれぞれの単位でパルス数の比を異ならせていることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載された発明は、請求項3又は4に記載の発明において、長周期パルス及び短周期パルスを2値化する2値化部を備え、前記復調部は2値化部が2値化した符合の種類に基づき出力パルスが長周期パルスか短周期パルスかを判断していることを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載された発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の発明において、前記検出部は磁気センサであり、前記被検出部には交互に配置されたN極の磁石とS極の磁石とからなるパターン情報が形成されており、一部に配置された磁石の幅が他の部分に配置された磁石の幅と異なることを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載された発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の発明において、前記検出部は反射型フォトセンサであり、前記被検出部には交互に配置された明度の異なる反射部からなるパターン情報が形成されており、一部に配置された反射部のサイズが他の部分に配置された反射部のサイズと異なることを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載された発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の発明において、前記検出部は透過型フォトセンサであり、前記被検出部は複数のスリットから構成されており、一部のスリットのサイズが他のスリットのサイズと異なることを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載された発明は、請求項1〜8の何れか一項に記載の発明において、前記検出部は単数であることを特徴とする。
【0024】
請求項10に記載された発明は、請求項2〜9の何れか一項に記載の発明において、
前記被検出部に形成されたパターン情報から検知される出力パルスが短周期パルスと長周期パルスとを組み合わせたパルスを1つの単位として複数単位備えて前記ロータの磁極位置を検知していることを特徴とする。
【0025】
請求項11に記載された発明は、請求項2〜9の何れか一項に記載の発明において、前記被検出部に形成されたパターン情報から検知される出力パルスが短周期パルスと長周期パルスとを組み合わせたパルスを1つの単位として複数単位備え且つその複数単位間で短周期パルスと長周期パルスとのパルス数の比を異ならせることで前記ロータの絶対角度を検知していることを特徴とする。
【0026】
請求項12に記載された発明は、請求項2〜11の何れか一項に記載の発明において、長周期パルス及び短周期パルスの2値化情報を記憶する2値化情報記憶部と、2値化情報記憶部に記憶した2値化情報と検出されたパルスの2値化情報との差異を判定する誤検知情報検出部とを備えていることを特徴とする。
【0027】
請求項13に記載された発明は、請求項1〜12の何れか一項に記載の駆動制御装置には複数相のコイルが設けられており、一方のコイルに電流が流れている間には、他方のコイルに電流は流れずに誘起電圧が発生しており、他方のコイルに発生する誘起電圧によりロータの回転角度を検出する回転角度検出手段を備えていることを特徴とする。
【0028】
請求項14に記載された発明は、請求項1〜13の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置には複数相のコイルが設けられており、一方のコイルに電流が流れている間には、他方のコイルに電流は流れずに誘起電圧が発生しており、他方のコイルに発生する誘起電圧によりロータの回転角度を検出する回転角度検出手段を備えていることを特徴とする。
【0029】
請求項15に記載された発明は、原稿画像を読み取る画像読取手段を備えた画像読取装置において、画像読取手段は請求項1〜14の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置を備えたことを特徴とする。
【0030】
請求項15に記載された発明は、静電潜像を担持する像担持体と、像担持体上のトナー画像を転写材に転写する転写手段と、転写材を搬送する搬送手段を備えた画像形成装置において、像担持体、転写手段及び搬送手段はそれぞれ請求項1〜14の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、復調部で復調した出力信号の復調情報と出力信号情報検出部で検出された出力信号の情報に基づいてロータの絶対角度又は前記ロータの磁極位置を検出しているので、従来技術のように起動時に規定された引き込み角度位置を認識する必要がなく、ブラシレスモータの駆動の立ち上げを早く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。尚、図1は本発明の第1実施の形態に係るモータ駆動装置の制御回路図、図2は図1に示すコイルの電気回路図、図3は図1に示すロータと角度位置検出器との構成を示す斜視図、図4は図3に示すロータ外周に設けた被検出体の概略図、図5は角度位置検出器でスケールを読み取った時の出力パルスを示すタイムチャート、図6は本発明の第1実施の形態に係るモータ駆動装置の各コイルに流れる電流のタイミングチャートである。
【0033】
図1は本発明に係るモータの駆動制御回路(駆動制御装置)1はセンサレスDCブラシレスモータ(以下単にブラシレスモータという)3の駆動装置に用いている。ブラシレスモータ3は、U相、V相、W相(図中単にU、V、Wと示す)という3つのコイル(固定子巻線)がスター結線された三相ブラシレスモータである。
【0034】
駆動制御回路1はドライバ5とコントローラ7とを備え、ドライバ5の出力端子がそれぞれU相、V相、W相の各端子に接続されている。ドライバ5はブラシレスモータ3を駆動する電源に接続されている。電源側トランジスタ及び接地側トランジスタを接続した組をU相、V相、W相に対応して三組備えた構成をしており、合計6つのトランジスタのオン・オフがコントローラ7から供給されるスイッチング信号によって制御されることにより、コイルの各相が順に励磁されてロータが回転駆動する。
【0035】
ブラシレスモータ3のロータ9(又は回転軸)には、同期して回転する被検出体(被検出部)11が設けられており、被検出体11に形成された着磁パターンを磁気効果型検出器からなる角度位置検出器(検出部)13が検出する。尚、被検出体11はロータ9又はその回転軸と同軸ではなく、ブラシレスモータ3から歯車機構などを伝達して駆動される回転体に設けてあっても良い。
【0036】
コントローラ7は、例えばマイクロコンピュータ、後述の復調回路15、検出した絶対角度情報或いはロータ磁極位置情報と実際のブラシレスモータ3のロータ磁極位置との角度誤差を記録する記憶装置17等を備え、角度位置検出器13より変調された角度位置検出信号がコントローラ7に入力される。
【0037】
コントローラ7には、ドライバ5の各トランジスタのオン・オフを個別に制御する駆動ロジック19を備えられており、上位装置からの指令信号21で指示された回転速度にブラシレスモータ3を回転させるべく、コイル各相の切り換えタイミングに同期してトランジスタのオン・オフ切り換えを行っている。この各相の切り換えをドライバ5に出力することで、ブラシレスモータ3の固定子巻線U相、V相、W相の励磁切り換えが適切に行われ、ブラシレスモータ3の回転が実現される。
【0038】
コントローラ7では、角度位置検出器13から変調された角度位置検出信号が復調回路15に送られ、復調回路(復調部)15から磁極情報23と角度位置情報25とが駆動ロジック19へ出力される。そして、モータの回転角速度情報或いは回転角度情報とロータ9の磁極情報をリアルタイムで計測する。そして、指令信号21で指定される基準角速度或いは基準角度と比較し、その誤差に対応したPWM(パルス幅変調)信号を生成し、この信号と前記ドライバ5の各トランジスタをオン・オフする信号とANDをとってドライバ5をオン・オフ制御してモータを駆動して回転角速度の制御を行う。
【0039】
三相のブラシレスモータ3の駆動は、図2に示すようにコイル(U相27、V相29、W相31)はそれぞれスイッチングトランジスタ33、34、35、36、37、38に接続されており、端子39、40、41は電源プラス側に接続されている。
【0040】
次に2極3相の構成におけるコイル電流の切り換えについて説明する。図6に示すように、U+はU相に接続された電源プラス側のトランジスタの信号であり、図2ではスイッチングトランジスタ33に相当する。また、U-はU相に接続された接地側のトランジスタの信号であり、図2ではスイッチングトランジスタ34に相当する。同様にv+はスイッチングトランジスタ35、v-はスイッチングトランジスタ36、w+はスイッチングトランジスタ37、w-はスイッチングトランジスタ38となる。
【0041】
図6に示すように、まずU相27とV相29が互いに逆向きで励磁される。この時、スイッチングトランジスタ33と36がオンになる。そうすると、電源プラス側と接続された端子39よりスイッチングトランジスタ33からU相27、V相29、スイッチングトランジスタ36を通ってグランドに接続されて電流が流れ、U相27、V相29がそれぞれ励磁される(図6中、モータ回転角度0°〜60°の区間)。
【0042】
次に、スイッチングトランジスタ33と38がオンになる。そうすると、端子39よりスイッチングトランジスタ33からU相27、W相31、スイッチングトランジスタ38を通ってグランドに接続されU相27、W相31が励磁される(図6中、モータ回転角度60°〜120°の区間)。
【0043】
スイッチングトランジスタ35と38がオンになると、端子40よりスイッチングトランジスタ35からV相29、W相31、スイッチングトランジスタ38を通ってグランドに接続され、V相29、W相31が励磁される(図6中、モータ回転角度120°〜180°の区間)。
【0044】
スイッチングトランジスタ35と34がオンになると、端子40よりスイッチングトランジスタ35からV相29、U相27、スイッチングトランジスタ34を通ってグランドに接続され、V相29、U相27が励磁される(図6中、モータ回転角度180°〜240°の区間)。
【0045】
スイッチングトランジスタ34と37がオンになると、端子41よりスイッチングトランジスタ41からW相31、U相27、スイッチングトランジスタ34を通ってグランドに接続され、W相31、U相27が励磁される(図6中、モータ回転角度240°〜300°の区間)。
【0046】
スイッチングトランジスタ36と37がオンになると、端子41よりスイッチングトランジスタ37からW相31、V相29、スイッチングトランジスタ36を通ってグランドに接続され、W相31、V相29が励磁される(図6中、モータ回転角度300°〜360°の区間)。次の区間からはモータが1回転しており、前述の0°〜60°の区間と同じとなる。この6ステップを繰り返してモータは回転する。
【0047】
次に角度位置検出器(検出部)13について説明する。ここでは角度位置検出器13として磁気効果型検出器で代表的なMRセンサを用いた方式について説明する。図3に示すようにロータ9の外周上にNS交互に着磁されたマグネット(被検出部)11を設け、マグネット11に一定の距離で対向するようMRセンサ13を配置した構成としている。MRセンサ13は磁性体磁気抵抗素子より構成されている。
【0048】
MRセンサ13は磁界の強さ変化に応じて抵抗値が変化する強磁性体磁気抵抗素子を用いており、マグネット11の変化に応じて信号を得ている。ここではロータ9の外周上にマグネット11を設ける構成としたがロータ9と同期して回転する部分ならばロータ9の外周上に限定する必要はない。
【0049】
次に、角度位置検出器13でマグネット11を検出した時に出力される出力パルスについて説明する。ロータ9の外周に形成したマグネット11のスケールについて図4に示した。図4に示すように他の部分の磁石11bよりも巾が異なる磁石11aを配置した。係るマグネット11をMRセンサ13で読み取ると、図5に示すような出力パルスとなる。ここで、出力パルスの短周期の時間をTとすると長周期の時間は4Tとなる。
【0050】
パルス周期の計測方法にはパルスの立上りから立上りまでの間隔、或いは立下りから立下がりまでの間隔を計測することが考えられるが、ここでは立上りから立下がりまで、或いはその逆の両エッジ間を計測することで、パルス幅時間を計測する。つまりパルスの立上り又は立下がりが来るたびに、時間計測用カウンタの計測値をデータとして取り込み、データを取り込んだ後すぐに前記時間計測カウンタをクリアし、継続してこのカウンタにより時間計測をする。この時間計測用カウンタは一定周波数のクロックfcによって増加する。つまりパルスの立上り又は立下りが来るたびにパルス周期データの取り込みとパルス周期計測を開始している。
【0051】
以上より図5(a)において、一定回転角速度でモータが回転して出力パルスp1を計測すると、時間計測用カウンタはNx1(自然数)というカウント値を計測する。ここで短周期パルス間隔の時間幅をT0とすると、時間計測用カウンタにはT0・fc0=Nc(自然数)なるカウント値が計測される。つまり時間計測用カウンタでは時間T0の時はNcなる値がカウントされる。一定回転制御している時は、短周期パルス時間幅がどの範囲に入るか、つまり短周期パルスを計測した場合のカウント値がどの範囲に入るかが分かっているので、パルス1を計測することによって得られるカウント値Nx1(自然数)より、パルス1は短周期パルスと判定できる。
【0052】
ところで、速度変動があると、時間T或いはカウント値Nxがばらつく。例えば角速度が±50%ばらついても短周期側は最大2.0Nc(角速度変動−50%のとき)のカウント値となり、長周期側は最小2.7Nc(角速度変動+50%のとき)となるので閾値をこの中間の2.4Nc(近い自然数を選ぶ)に設定すれば正しく判定できる。
【0053】
これらの値は、短周期側はNx=T・fc=k・fc/ω(:定数、ω:モータ回転角速度)の関係があり、ω=0.5ω0(ω0:目標回転角速度)の時、
Nx=k・fc/0.5ω0=2(k・fc/ω0)=2Nc として求まり、
長周期側は、Nx=4T・fc=4k・fc/ω の関係があり、ω=1.5ω0であるので、Nx=4k・fc/1.5ω0=2.7(k・fc/ω0)=2.7Nc と求められる。
【0054】
通常のFM変調では一定回転角速度の時長周期側の周期は短周期の2倍しかないので、長周期側は、Nx=2T・fc=2k・fc/ω の関係より、ω=1.5ω0の時は、Nx=1.3Nc となり、短周期の2Ncより小さくなるので誤判定になる。
【0055】
速度変動が更に大きくても復調しなければならない時は、短周期パルスと長周期パルスの比を1:5或いは5:1というようにし、絶対角度情報或いは磁極情報を変調した形でロータ9の外周上にNS交互に着磁されたマグネット11を設けるようにする。
【0056】
次のパルスp2であるが、パルスp1と比較して立下りから立上りと立上りから立下りという違いはあるが、カウンタの計測は同様に行われるため、一定回転角速度でモータが回転している状態で計測すると、時間計測用カウンタはNx2(自然数)というカウント値を計測する。一定回転制御している時は、短周期パルス時間幅を計測することで得られるカウント値がどの範囲に入るかが分かっているので、カウント値Nx2(自然数)より、パルスp2は短周期パルスと判定できる。
【0057】
次のパルスp3では、前述のパルスp1と同様に立下りから立上りまでのNx3(自然数)というカウント値を計測し、パルスp4では、前述のパルスp2と同様に立上りから立下りまでのNx4(自然数)というカウント値を計測する。これらのカウント値も一定回転制御している時は、短周期パルス時間幅を計測することで得られるカウント値がどの範囲に入るかが分かっているので、パルスp3、パルスp4は短周期パルスと判定できる。ここで、パルスp4の計測が終わった瞬間に、短周期のカウント回数(=クリア回数)が4回カウントした基本周期(=長周期)となるため、パルスp4での立下りエッジを用いてロータの回転角度の計測を行う。またこの基本周期における符号は“1”が設けられる。
【0058】
一方、パルスp5においては、立下りエッジから立上りエッジまでで、時間計測用カウンタはNx5(自然数)なるカウント値を計測する。ここで、一定回転角速度でモータが回転している状態で計測すると短周期パルス間隔をT0とすると長周期パルス間隔は4T0となり、時間計測用カウンタには,4T0・fe=4Neなるカウント値が計測される。つまり時間計測用カウンタでは時間4T0の時は4Neなる値がカウントされる。一定回転制御している時は、長周期パルス時間幅がどの範囲に入るか、つまり長周期パルスを計測した場合のカウント値がどの範囲に入るかが分かっているので、パルスp5を計測することによって得られるカウント値Nx5(自然数)より、パルスp5は長周期パルスであると判定できる。ここで、パルスp5の計測が終わった瞬間に、長周期を計測したことが分かるため、パルスp5の立上りエッジを用いてロータの回転角度の計測を行う。また、この基本周期における符号は“0”が設けられる。
【0059】
同様にパルスp6〜パルスp10においても、パルスp5と同様に、それぞれのパルスをカウントすると時間計測用カウンタにはNx6〜Nx10(自然数)なるカウント値が計測される。一定回転制御している時は、それぞれで計測されるカウント値Nx6〜Nx10(自然数)がどの範囲に入るか分かっているので、パルスp6〜パルスp10は長周期パルスであると判定できる。更に、パルスp6〜パルスp10は長周期パルスであるため、立上り又は立下りエッジを用いてロータの回転角度の計測を行う。また、これらの基本周期における符号は“0”が設けられる。
【0060】
以上の計測を行うことで、各パルスが短周期パルスであるか長周期パルスであるかの判定と同時に、パルスが短周期であった場合には短周期のカウント回数を4回カウントした基本周期において符号“1”、長周期であった場合には長周期の周期において符号“0”を割り当てつつ、前記符号の切り替わりにおける立上り又は立下りエッジを用いて、ロータ9の回転角度情報も得ることができる。図5に示すタイムチャートでは、長周期時間間隔で求めた磁極位置情報或いは絶対角度情報として、“1000000”が得られる。
【0061】
次に、図4(b)に示すスケールを読み取ってパルスp11を計測すると、時間計測用カウンタはNx11(自然数)というカウント値を計測する。一定に回転制御している時は、短周期パルス時間幅を計測することで得られるカウント値がどの範囲に入るかは分かっているため、パルスp11を計測することによって得られるカウント値Nx11(自然数)より、パルスp11は短周期パルスと判定できる。同様にパルスp12も、時間計測用カウンタによりNx12(自然数)というカウント値を計測し、パルスp12は短周期パルスであると判定される。同様にパルスp13及びp14も短周期パルスであると判定される。ここで、パルスp14の計測が終わった瞬間に、短周期のカウント回数(=クリア回数)が4回カウントした基本周期(=長周期)となるため、パルスp14での立下りエッジを用いてロータ9の回転角度の計測を行う。また、この基本周期における符号は“1”が設けられる。
【0062】
同様に、パルスp15〜パルスp18においても、時間計測用カウンタにはNx15〜Nx18(自然数)なるカウント値が計測され、パルスp15〜パルスp18は短周期パルスであると判定できる。ここで、パルスp18の計測が終わった瞬間に、短周期のカウント回数(=クリア回数)が4回カウントした基本周期(=長周期)となるため、パルスp18での立下りエッジを用いてロータ9の回転角度の計測を行う。また、この基本周期における符号は“1”が設けられる。
【0063】
次にパルスp19においては、立下りエッジから立上りエッジまでで、時間計測用カウンタはNx19(自然数)なるカウント値を計測する。一定回転制御している時は、長周期パルス時間幅がどの範囲に入るかが分かっているので、パルスp19を計測することによって得られるカウント値Nx19(自然数)より、パルスp19は長周期パルスであると判定できる。ここで、パルスp19の計測が終わった瞬間に、長周期を計測したことが分かるため、パルスp19の立上りエッジを用いてロータ9の回転角度の計測を行う。また、この基本周期における符号は“0”が設けられる。
【0064】
同様にパルスp20〜パルスp23においても、パルスp19と同様にそれぞれのパルスをカウントすると時間計測用カウンタにはNx20〜Nx23(自然数)なるカウント値が計測される。パルスp20〜パルスp23は長周期パルスであると判定される。更に、パルスp20〜パルスp23は長周期パルスであるため、立上り又は立下りエッジを用いてロータの回転角度の計測を行う。またこれらの基本周期における符号は“0”が設けられる。
【0065】
以上の計測を行うことで、各パルスが短周期パルスであるか長周期パルスであるかの判定と同時に、パルスが短周期であった場合には短周期のカウント回数を4回カウントした基本周期において符号“1”、長周期であった場合には長周期の周期において符号“0”を割り当てつつ、前記符号の切り替わりにおける立上り又は立下りエッジを用いて、ロータ9の回転角度情報も得ることができる。この図5(b)では長周期時間間隔で求めた磁極位置情報或いは絶対角度情報として、“1100000”が得られる。
【0066】
次に、ロータ9の磁極位置の検知方法について説明する。ここでは2極3相の磁極位置を持つロータ9を例に説明する。2極3相の場合、スイッチングトランジスタ33、35、37がONの後、図6に示すロータ回転角60°の全トランジスタがOFFする区間を経て、今度はロータ回転角120°の区間でスイッチングトランジスタ34、36、38がONし逆方向に電流が流れるようになる。そして再度ロータ回転角60°の全トランジスタがOFFする区間を経る。この一周のシーケンスを繰り返して各相のモータコイル端子が駆動されるが、各相モータコイル端子へ駆動されるタイミングは各相端子間でロータ回転角の位相差がある。そのため図6に示すようにロータ回転角が60°ごとに各相のコイルの駆動状態を切り換える構成となっている。
【0067】
従って、ロータ9の磁極位置に基づいて正常にモータが回転するように各相のコイルの駆動状態を切り換える位置(6箇所)が分かるようにロータ9と同期して回転するマグネット11にNS交互に着磁する周期を変えて符号を構成する。
【0068】
各相のコイルの駆動状態を切り換えるロータの磁極位置6箇所が分かるように長周期基準の符号を用いて1語7ビット方式で表示し、連続する6つの各磁極位置情報を以下の表1に示す符号構成にする。
【0069】
【表1】
【0070】
上記符号が検知されると、MSB(最高位ビット)側からLSB(最小位ビット)側へシリアルな信号が検知される。そしてLSB側の符号“0”の検出位置が上記駆動状態の切り換え位置に対応するように構成すればよい。これはロータ回転角60°内に1語だけの構成になるため、7×6=42[パルス/回転]となる。求められる角度情報の分解能が大きい場合、ロータ回転角60°の中に複数語入れることにより角度情報の分解能を十分に確保することができる。例えば、ロータ回転角60°の中に3語を持たせた場合は、下記の表2に示すようになる。この場合、7×6×3=126(パルス/回転)と高い分解能を確保できる。
【0071】
【表2】
【0072】
以上のように決定したデータ列に対して、例えばロータ回転角60°で2値化情報が1語であった場合には、符号“0”から“1”へ変化した時が磁極情報1語の検出開始位置に当たる。つまり新たに同期情報を挿入しなくても、2値化情報1語の開始位置が分かる。そして、この磁極情報1語のLSBを検知し終わると、6つの磁極位置のどれかを判定できるので、LSB検知後、すぐにモータの各相へ流れる電流経路を切り換えることができる。このことにより確実にロータ磁極位置を検出し、正常にモータを回転することが可能になる。
【0073】
つまり1語7ビット構成で、符号が“1”から“0”になった時、7ビット(1語のLSB)を通過するまでは“1”は現れないため、符号が“0”から“1”へ変化した時を1語の先頭ビット(MSB)とすることで確実な同期をとることができる。
【0074】
また、2値化情報が複数語(例えば3語)の場合には、最後(3番目)の1語におけるLSB符号“0”を検知した時をモータ各相へ流れる電流経路を切り換えるタイミングとすればよい。つまり同じ磁極位置を示す3語を検知し、第3番目の1語のLSB符号“0”の検知後に電流経路を切り換える。このとき、繰り返す同じデータ列を3度計測するため、別途設けたカウント手段を使う。起動時は同じデータ列が3つ計測できないことが発生するが、同じデータ列が3つ計測できた時から磁極位置情報に合わせて電流経路を切り換えるようにする。このように構成することで分解能を確保しつつ確実にロータ磁極位置を検出可能となる。ここでは、電流経路の切り換えタイミングと2値化情報の変化位置で同期を取ったが、ロータ9の磁極位置との関係を明確にすることが可能ならば別のタイミングで同期を取る方法でも良い。
【0075】
次にモータ回転の“停止状態からの立上り”或いは“一定速度からの立下り”状態の速度変化が大きい時に有効な復調回路15の動作について図7を用いて説明する。角度位置検出器13から逐次、検出された入力パルス43は、微分回路44においてパルスの立上り部と立下り部が微分される。微分回路44からの前記微分された出力パルスがカウンタ45のリセット端子に入力され、カウンタ45がクリア(カウンタが“0”にセット)される。
【0076】
また微分された出力パルスはレジスタ46へカウンタ出力をセットさせるため、クロック端子へ入力される。カウンタ45は一定の周波数のパルスを生成する発振器出力のクロックによってカウントアップされる。レジスタ46にはカウンタ45がクリアされる直前までにカウントアップされたカウンタ45のデータがセットされる。従ってカウンタ45は入力パルス43のパルス幅の時間幅に応じたカウントがなされる。ここでの第n番目のパルス幅のカウント値をCn(nは自然数)とする。
【0077】
ここでパルス幅の定義について説明する。パルス幅は、(1)立上りから立下がり、及び立下がりから立上りまでの時間の両者を使う。(2)立上りから立上り、或いは立下がりから立下がりまでの時間のどちらかを使う。どちらの手法を用いても良いが、ここでの説明は(1)の立上りから立下がり、及び立下がりから立上りまでの時間両者を使った方法で説明する。
【0078】
次に速度変化が大きい時に有効な復調について説明する。この方式は隣接パルスとのパルス幅比較で行う。ここでは短周期パルスと長周期パルスの比が1:4の場合を説明する。復調方法については、前回のパルス幅の2倍以上ならば“短周期”から“長周期”とし、前回のパルス幅の半分(0.5倍)以下ならば”長周期“から”短周期”とする。
【0079】
カウンタ45からの出力をレジスタ46に出力して保存することで、過去のカウント値を保存でき、第nー1番目のパルス幅のカウント値Cn-1として保存できる。レジスタ46から求められる第nー1番目のパルス幅のカウント値Cn-1を第1乗算器47ではZ倍(ここではZ=2倍)、第2乗算器48ではD倍(ここではD=0.5倍)の乗算計算を行い、計算結果を出力する。
【0080】
次いで、乗算された結果と第n番目のパルス幅のカウント値Cnを第1比較器49において、Cn>Z・Cn-1の判定を行い、第2比較器50ではCn<Z・Cn-1の判定を行う。第1比較器49と第2比較器50からの出力が、ANDゲート51、52、53に入力され、同時に微分回路44からの出力もANDゲート51、52、53へ入力され、ANDゲート51出力には一つ前のカウント値がZ=2以上であった時はパスル幅が短周期側から長周期側へ変化した状態(“短周期”⇒“長周期”)を検知したことを示すパルスが出力される。またANDゲート52には一つ前のカウント値のD=0.5倍以下であった時はパスル幅が長周期側から短周期側へ変化した状態(“長周期”⇒“短周期”)を検知したことを示すパルスが出力される。更にANDゲート53には前述のどちらでもなかった場合に、長周期或いは短周期のパルス幅の遷移維持状態を示すパルスが出力される。
【0081】
図7において、微分回路44の出力パルスの立下り部でカウンタ45の出力をレジスタ46にセットしカウンタ45をクリアする(厳密にはカウンタ45の出力をレジスタ46にセットするタイミングに対してカウンタ45をクリアするタイミングはわずかに遅れるようにして回路を設計する)ように構成すれば狙いの動作を実現できる。
【0082】
モータ駆動における通常の定常駆動時において、速度変動が小さい場合には従来のFM変復調方式でも十分に対応することは可能である。しかし、速度変動が大きい時は情報の誤検出をしてしまう。隣接パルスとのパルス幅比較を行う本方式を用いることで、モータ回転速度変動が大きい場合、更には起動時や停止時においても復調できる。
【0083】
モータの駆動開始時や停止時などの速度が変動している状況で復調する場合、予測される立上りカーブ或いは立下がりカーブに合わせて符号判定の閾値(基準値)を(モータの定常時と比べて)変えることで信頼性の高い復調が可能となる。
【0084】
すなわち、立上り時はパルス周期が短くなる方向に変化し、立下り時はパルス周期が長くなる方向に変化する。そのために、立上り時には図7におけるZとDの値を小さめ(例えば、Z=1.8、D=0.3)に選び、立下り時はZとDの値を大きめ(例えば、Z=2.28、D=0.6)に選ぶ。このようにすれば立上りから立下りまでの速度プロファイルにおいて正確に復調できる範囲が広がる。
【0085】
図7における乗算器47、48の閾値を変える設定は立上り時或いは立下り時の速度プロファイルに合わせて複数回設定しても良い。つまり図7で示した構成で、立上り時においては、ZとDの値を立上り用の値で起動し、立上りプロファイルが終了して定常駆動と切り替わったら、通常のフィードバック制御モードに入り、ZとDの値を等速駆動時の値と変更し、立下り時には立下りプロファイルに基づくZとDの値へと変更する構成とする。また、立上り時及び立上り時のどちらか一方のみと等速駆動時の値との変更だけの構成としても良い。また、図7ではレジスタ46をZ倍とD倍した出力とカウンタ45の出力を比較しているが、カウンタ45とレジスタ46の出力比を求めてその値によって“長周期から短周期”と“短周期から長周期”或いは“状態遷移維持”を判定しても良い。
【0086】
モータの起動時について考えると、本方式はロータ9の絶対角度情報或いは磁極位置情報を時間的にシリアルに検出するためブラシレスモータ3が一定の回転角度以上に回転しないと情報を得ることができない。そのため、最初の立ち上げ時はパルスモータのように駆動位相を変化させて回転させる必要がある。最も基本的な方法としては、検出器出力とは無関係に図6のタイムチャートで示したような通電を行い、一定の回転磁界を発生させてブラシレスモータ3を起動させるという手法がある。ただし、この時にロータ9の磁極位置を検出することができないため、起動可能となる任意のタイミングで駆動位相を変化させる必要がある。このようにモータを起動し、ロータ9の絶対角度情報或いは磁極位置情報が検知可能となるまで回転させる。ブラシレスモータ3のロータ9がわずかに動くことにより、出力パルスの立上がり又は立下がりのエッジが微分回路44によって検出される。そこから時間計測用のカウンタ45がカウントを開始し、立上がりから立下がり、或いは立下りから立上がりまでのカウント値が得られる。実際は時間計測用のカウンタ45を無限には大きくはできないので、起動開始一定時間後にパルス周期計測を開始する。
【0087】
カウンタ45で計測されたカウント値によって、起動開始時のロータ9の位置が短周期パルスか長周期パルスかの判定を行うことができる。起動時の第1番目のカウンタ45によるカウント値は長周期側のパルスか短周期側のパルスかは分からない。最初に“短周期⇒長周期”或いは“長周期⇒短周期”に変化した時から正しい長周期、短周期判定ができる。つまり継続して時間計測のカウントを行い、一つ前に計測したカウント値で生成する前述の起動時の符号判定する閾値で次のカウント値を比較することにより、符号の“短周期⇒長周期”或いは“長周期⇒短周期”の変化があった時長周期或いは短周期の判定をする。
【0088】
ロータ磁極位置を示す符号のデータ列がロータ回転角60°で1語構成され、短周期パルス4個で符号“1”が形成され、長周期1個で符号“0”が構成されている場合、符号の“1”⇒“0”の変化があった場合、以降に連続する“0”の個数を数えることによって、ロータ回転角60°区間のどの部分であるか検知することが可能である。その後、符号が、“0”⇒“1”の変化で、次のロータ回転角60°区間に移ったということが検出できる。また、符号が“0”⇒“1”の変化があった時には、そこがロータ9の回転角60°区間の開始位置であり、その後に連続する“1”の個数を数えることによって、ロータ回転角60°区間のどの部分であるか検知することが可能となる。このように磁極位置が検知された以降は普通のブラシレスモータのように動作させることが可能となる。
【0089】
また、上述したようにロータ回転角60°で2値化情報が3語であった場合、符号の“1”⇒“0”或いは“0”⇒“1”の変化があった時には、その変化から以降に連続する“0”或いは“1”の長周期の符号の個数を検出し、記憶されたデータ列と比較することで、現在のロータ磁極位置をロータ回転角60°範囲内で検出する。その後、継続してロータ9を回転させ、継続して符号の判別を行う。同一の磁極情報を3個検知した後に長周期の符号の“0”から“1”への変化(“0”⇒“1”)を検知した場合、それは次のロータ回転角60°区間へ移行したことを示すため、その時の“0”⇒“1”タイミングが相切り換えタイミングであることが分かり、以降は普通のブラシレスモータのように動作させることが可能となる。
【0090】
また、別途に設けた記憶手段に予測される停止時における磁極位置情報を記憶することにより、次の再起動時において磁極位置情報に合わせた最初の切り換え位相の選択と立上がり速度を見込んだ切り換えタイミングで実行すると、更に早い駆動の立ち上げを行うことができる。
【0091】
更に絶対角度或いはモータ磁極位置判定後は、語長判定“0”から“1”或いは“1”から“0”への切り換え、又は絶対角度或いはモータ磁極位置情報の連続性、或いは連続的に現れる符号が予測でき、常に誤検出を行うことができる。
【0092】
次に磁極位置を誤検出した後の処理方法について説明する。連続したモータ磁極位置データはあらかじめ記憶し、上記の例では磁極位置データ(磁極語)を6ヶ所、長周期パルスを基準周期とした符号を用いて1語7ビットで記憶する。この記憶されたモータ磁極語を順次読み出して検出される磁極語を逐次比較することで誤検出ができる。順次読み出される記憶された磁極語と検出した磁極語が異なった場合、実際にあるべき符号へ修正する。つまり前に正しく検知された磁極情報の次のあるべき磁極情報を使えば良い。
【0093】
また、図7において予測できる短周期パルス或いは長周期パルスの区間でカウンタ45のカウント値が例えば予測されるカウント値の2分の1のところでパルス出力が変化した時は微分回路44の出力が出ないような判定回路とゲート回路を設ける。このようにすれば外部ノイズで誤計測する確率を減らすことができる。
【0094】
また、起動時と停止時においては、完全にモータが停止する瞬間より、ある一定時間前、又は起動開始の瞬間より一定時間は検出パルス幅時間が長くなるので、この一定区間は符号判定を行わないようにして、パルス幅をカウントするカウンタのビット数を減らすことが必要となる。その例として、起動時はオープンループ制御モードにすることで符号判定を行わない時間が存在することで符号判定を行わない区間が設けられる。また停止時は、停止直前にモータ駆動をオフする、或いはモータ駆動のブレーキモードを付加することで停止すればよいので符号判定を行わない区間を設けることができる。
【0095】
ここで、ブレーキモードについて説明する。回転しているモータの誘導起電力を利用して制動力を発生させる方法として2つの方法について説明する。まず短絡制動(ショートブレーキ)についての構成図を図8に示す。3相インバータの接地側のトランジスタ61、63、65を全てONとし、電源プラス側のトランジスタ60、62、64を全てOFFとすることで、モータ巻線を短絡させ、電流をループ66となるようにして回転エネルギーをモータで発熱消費させる方式である。尚、単に短絡するだけであるためブレーキ力の制御はできない。また、回転系のイナーシャが大きい時は、長時間大電流が流れるので、ブラシレスモータ3の発熱やトランジスタの電流許容に注意する必要がある。
【0096】
次に、ブレーキ力を制御したい場合、緩衝制動(ソフトブレーキ)が用いられ、この構成を図9に示す。3相インバータの全てのトランジスタ60、61、62、63、64、65をOFFにして、還流ダイオード67を経由して流れる制動電流69を外部に取り出し、トランジスタ68などで制御することで必要なブレーキ力を制御できる。
【0097】
上述のように、本実施の形態では、ロータ9と複数相のコイル27、29、31とからなるブラシレスモータ3において、ロータ9の外周に形成したマグネット11の構成を、他の部分の磁石11bよりも巾が異なる磁石11aを配置したので、MRセンサ13で短周期パルスと長周期パルスとを検出することで、ロータ9の特定位置(絶対角度)を知ることができる。よって、モータの電源をオフしても、ロータ9の絶対位相が分かっているため、電源ON時からロータ9をすぐに駆動することが可能となり、速くフィードバック制御モードに入ることができ立ち上げ時間が速くなる。ロータ9の絶対角度或いは磁極位置情報と回転角度情報は、符号“1”と“0”の周期比が1:(2+N)又は(2+N):1で構成されており(Nは自然数)、短周期パルスの符号“1”或いは“0”は、(2+N)回繰り返して1つの長周期パルスと同一周期の符号“1”或いは“0”として変調することにより、ロータ9の一定範囲内の回転変動であっても検出誤りなしに“1”と“0”符号を復調でき、かつ一定回転角ごと回転角度情報も検出できる。
【0098】
長周期パルスと短周期パルスの判定を、直前の長周期パルス或いは短周期パルスの符号周期と比較して判定することで、立上り或いは立下りの速度変化、更には定常速度時の速度変化があっても安定して符号の判定ができる。
【0099】
角度位置検出器13として磁気効果型検出器であるMRセンサを用いたので、プリント基板上に櫛歯状のパターンを形成して回転角度情報を検出するFG方式に比べて高い分解能が得られると共にロータ9の絶対角度或いはロータ9の磁極位置情報と回転角度情報を回転直後から検出可能となる。
【0100】
1つのMRセンサ13からの出力値により、ロータ9の絶対角度を求めるので、2つ以上のセンサを用いる場合に比べて消費電流を低減することができる。
【0101】
次に、他の実施の形態を説明するが、以下の説明において、上述した第1実施の形態と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することにより、その部分の詳細な説明を省略し、以下の説明では上述の第1実施の形態と異なる点を主に説明する。図10は第2実施の形態に係るモータの制御回路の構成を示すブロック図である。図10に示す駆動回路1aは、図1に示す駆動制御回路1に、誘起電圧検出手段(回転角度検出手段)6が追加され、コントローラ7に含まれる駆動ロジック19での処理手順が異なること以外は第1の実施形態と同様である。また、図10ではU相より誘起電圧を計測する構成となっているが、V相やW相から計測する構成としても良い。
【0102】
図10は2極3相のモータの場合におけるタイムチャートを示し、励磁電流切り換えタイミングと、各相の電圧を表している。各コイルへ流れる電流は、Hレベルの相からLレベルの相へと流れる。例えば、V相がH、W相がLである区間s1においてはV相(一方のコイル)からW相(一方のコイル)へ電流が流れ、この時0レベルである(電流が流れない)U相(他方のコイル)には誘起電圧が発生する。この時、コントローラ7はPWM制御を行っているため、この時電流が流れているV相の電圧はPWMのスイッチング周波数で振動しており、W相は0レベルであり、U相には誘起電圧が発生する。誘起電圧検出手段6は、例えばコンパレータ等で構成され、例えばモータに印加されるDC電圧の1/2の値に設定しておき、その値と比較することでU相の誘起電圧が発生する任意のタイミングを検出する。同様に区間s2においても同様の手法により誘起電圧を検出することが可能である。
【0103】
ここで2極3相のモータの場合、図6に示すタイムチャートの破線間隔は60°であり前述した誘起電圧の任意のタイミング間隔は180°間隔となる。この誘起電圧の検出タイミングとロータ9の絶対角度検出情報或いは磁極位置情報との差分を求めることにより、誤差を補正して正確な磁極位置を求めることができる。
【0104】
一方、従来のブラシレスモータを複写機に適用する場合には、以下のような問題点があった。すなわち、従来のブラシレスモータはロータの位置をホール素子等のセンサにより検出して回転制御を行っているため、例えば3相のブラシレスモータの場合は、各相に1つずつ計3つのホール素子が必要であった。そしてモータを駆動するためには、ホール素子からの出力を受けてタイミングを計算し、そのタイミングに合わせて各相へ電流を流すドライバが必要となる。また、通常ホール素子からの出力は微小であるため、ホールアンプによってホール素子からの出力を増幅する必要があり、モータのそばにホールアンプを設ける必要があった。これにより、ホールアンプを設けるための基板が必要となるが、そのためだけに基板を設けるのは無駄が多く、各相へ電流を流すタイミングを計算する部分や、ドライバなどを同時に基板に設けるようにしている。その結果、駆動用の電圧、ロジックIC用の電圧、スタート/ストップ信号、回転方向信号、ブレーキ信号、エンコーダ信号など相当数の配線が必要となり、配線数の増加に伴うコストアップや配線作業性の悪化を招いていた。
【0105】
これに対して、本願発明のブラシレスモータ3を複写機に適用する場合には、ブラシレスモータ3のロータ9と一体になって回転するエンコーダ部分(被検出部)に回転情報と磁極情報とが変調されて1つになって検出されるため、上述のホールアンプが不要となり、モータのそばにホールアンプを設置するための基板を設ける必要がなくなり、複写機本体の基板の一部を使用することが可能となる。
【0106】
また、本願発明のブラシレスモータ3ではエンコーダの信号のみを複写機本体側の基板に送信するようにすれば良いので、エンコーダの信号を取り込むための配線と、ブラシレスモータ3へ駆動電流を供給する配線とを行うだけで済む。その結果、必要な配線数を大幅に減少することで配線に必要なコストを大幅に削減することが可能となる。更に、エンコーダ信号とモータ駆動電流は共にノイズに強いため外乱の影響を低減することもでき、駆動制御装置の精度を向上することができる。
【0107】
尚、図10に示す構成では、U相の誘起電圧を検出して各相の励磁電流印加切り換えタイミングと実際のロータ9の回転値との同期を図っているが、V相やW相から誘起電圧を検出する場合においても同様の構成とすることができる。
【0108】
また、誘起電圧を常時計測して、復調回路15から得られる磁極情報23との差分を求めて補正を行ったり、起動時に求めた差分を不揮発メモリなどに記憶しておき、起動後は記憶された差分補正値を求めて励磁電流切り換えを行っても良い。また製造工程などで誘起電圧を計測し、そこで求められた差分を不揮発メモリなどに記憶し、実際の製品にはアナログ回路などで構成される誘起電圧検出手段6を持たずに部品コストを下げる方法でも良い。
【0109】
次に第3実施の形態について説明する。第3実施の形態では、角度位置検出器とし光学検出器を用いる方法について説明する。図12は光学検出器として、反射型フォトセンサを用いた場合、図13は光学検出器として透過型フォトセンサを用いた場合を示す。
【0110】
図12に示す反射型フォトセンサの場合、ロータ9の外周上に光を吸収反射する部分を持つスケール11aを設け、そのスケール11aに対して光学素子13aを対向するように固定して設ける。光学素子13aは発光部と受光部を持ち、発光部から出力された光がスケール11aから反射又は吸収され、受光部に入力されるような位置関係で構成されている。受光部が受け取る光の強弱によりロータ9の情報を得ることができる。
【0111】
一方、図13に示す透過型フォトセンサの場合、ロータ9と同期して回転するスケール11bに対してスリット11cを設けたものを取り付ける。このスケール11bを挟んで発光部13bと受光部13cを対向位置にして設ける。発光部13bから出力される光がスケール11b上のスリット11cを通過して受光部13cに入力される。この受光部13cの出力信号によりロータ9の情報を得ることができる。ここで、ロータ外周上にスケール11a、11bを設けているが、ロータ9と同期して回転する部分ならばどこでもよい。
【0112】
1つの反射型フォトセンサ又は透過型フォトセンサを用いてロータ9の絶対角度を求めるので、2つ以上のセンサを用いる場合に比べて消費電流を低減することができる。
【0113】
次に第4実施の形態について図14を用いて説明する。第4実施の形態では8極3相のモータのタイムチャートを示す。基本的なスイッチングトランジスタの構成は上述の2極3相の時と同様であるが、総計24極のコイルが円周上に配置されることになるため、図14に示す破線1区間が、ロータ9の回転角15°に相当する。つまり、図6のタイムチャートに示すように、2極3相の場合は6区間のスイッチング動作を行うことで360°、1回転するが、8極3相の場合は図14のタイムチャートにおける6区間のスイッチング動作で90°、1/4回転しか行わない。8極3相の場合は6区間を4回繰り返すことで1回転する。
【0114】
次に第5実施の形態について図15を用いて説明する。第5実施の形態では、上述したモータの制御回路を画像形成装置に適用した例を示している。図15に示す画像形成装置100はカラー複写機であり、装置本体71の上部に読取装置78、装置本体71の下部に給紙装置70、装置本体71内にドラム状の感光体(感光体ドラム)72、現像手段としての回転型現像装置73、中間転写ベルト74、搬送ベルト(搬送手段)75、定着装置76、排紙ローラ77等が配置されている。
【0115】
係るカラー複写機においては、転写部に紙が突入する際の感光体(感光体ドラム)72、中間転写ベルト74、搬送ベルト75の負荷変動が最終画像の品質に大きく影響し、より高精度な感光体72、中間転写ベルト74、搬送ベルト75の駆動が望まれる。そこで、本発明のモータの制御回路1を感光体72、中間転写ベルト74、搬送ベルト75の駆動装置に用いている。本実施の形態では、感光体72、中間転写ベルト74、搬送ベルト75の駆動装置に本発明のモータの制御回路1を用いているので、ブラシレスモータ3に最初の記録開始指令が到達してから画像記録の開始時間が短くなり、画像出力の高速化及び画像の高品質化を図ることができる。
【0116】
次に第6実施の形態について図16を用いて説明する。第6実施の形態は上述したモータの制御回路を画像形成装置に適用した例を示している。図16に示すように画像形成装置100はベルト状の感光体(像担持体)81、中間転写ドラム(転写手段)82、転写ベルト(転写手段)83を備えている。
【0117】
このようなカラー複写機においては、転写部に紙が突入する際の負荷変動によって感光体ベルト81や中間転写ドラム82、転写ベルト83の駆動が最終画像の品質に大きく影響し、特に高精度な感光体ベルト81、転写ベルト83の高精度駆動が望まれる。そこで本実施形態では、感光体ベルト81や中間転写ドラム82、転写ベルト83の駆動装置に本発明のモータの制御回路1を用いた。本実施の形態では、感光体ベルト81や中間転写ドラム82、転写ベルト83の駆動装置に本発明のモータの制御回路1を用いているので、ブラシレスモータ3で最初の記録開始指令が到達してから画像記録の開始時間が短くなり、画像出力の高速化及び画像の高品質化を図ることができる。
【0118】
次に第7実施の形態について図17を用いて説明する。第7実施の形態に係る画像形成装置100は装置下部の給紙装置86、装置上部の定着装置87、装置内の画像形成部88等を備える。画像形成部88には感光体85とこれに対向して設けられた搬送直接転写ベルト84を備えている。このようなカラー複写機においては、転写部に紙が突入する際の負荷変動が搬送直接転写ベルト84の最終画像の品質に大きく影響し、より高精度な搬送直接転写ベルト84の駆動が望まれる。そこで本実施形態では、搬送直接転写ベルト84の駆動に本発明のモータの制御回路1を用いた。
【0119】
本実施の形態によれば、搬送直接転写ベルト84を回転させてカラー画像を形成する画像形成装置において搬送直接転写ベルト84の各駆動を本発明のモータの制御回路1を用いて行うので、ブラシレスモータ3で最初の記録開始指令が到達してから画像記録の開始時間が短くなり、画像出力の高速化及び画像の高品質化を図ることができる。
【0120】
次に第8実施の形態について図18を用いて説明する。第8実施の形態は本発明に係るモータの制御回路を画像読取装置に適用した例を示している。図18に示すように、画像読取装置101には原稿が載置される載置台91と、CCD95、レンズ93、ミラー94を備えた光電変換ユニット(画像読取手段)92等を備えている。本実施の形態では、光電変換ユニット92の駆動装置に本発明に係るモータの制御回路1を用いている。
【0121】
本実施の形態では、光電変換ユニット92の駆動を本発明に係るモータの制御回路1を用いて行うので、画像読取装置101の読み取り指令が到達してから、光電変換ユニット92の走行体が実際に駆動を開始する時間が短く且つ高精度な駆動を行うことができる。
【0122】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることは言うまでもない。
【0123】
上述の第1実施形態及び第3実施の形態において、1つの検出部13でロータ9の絶対角度を求めているが、これに限定されず、2つ以上のセンサを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1実施の形態に係るモータ駆動装置の制御回路図である。
【図2】図1に示すコイルの電気回路図である。
【図3】図1に示すロータと角度位置検出器との構成を示す斜視図である。
【図4】図3に示すロータ外周に設けたスケールの概略図である。
【図5】角度位置検出器でスケールを読み取った時の出力パルスを示すタイムチャートである。
【図6】第1実施の形態に係るモータ駆動装置の各コイルに流れる電流のタイミングチャートである。
【図7】第1実施の形態に係るモータ制御回路の復調回路図である。
【図8】第1実施の形態に係るモータ制御回路のブレーキモードを説明する回路図である。
【図9】図8に示すブレーキモードの変形例を説明する回路図である。
【図10】第2実施の形態に係るモータ駆動装置の制御回路図である。
【図11】図10に示すモータ駆動装置の各コイルに流れる電流のタイミングチャートである。
【図12】第3実施の形態に係るモータ駆動装置であり、角度位置検出器として反射型フォトセンサを用いた時の斜視図である。
【図13】第3実施の形態に係るモータ駆動装置であり、角度位置検出器として透過型フォトセンサを用いた時の斜視図である。
【図14】第4実施の形態に係るモータ駆動装置であり、8極3相のモータ駆動装置の各コイルに流れる電流のタイミングチャートである。
【図15】本発明のモータ駆動装置を適用した画像形成装置を示す概略図である。
【図16】本発明のモータ駆動装置を適用した画像形成装置を示す概略図である。
【図17】本発明のモータ駆動装置を適用した画像形成装置を示す概略図である。
【図18】本発明のモータ駆動装置を適用した画像読取装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0125】
1 モータ駆動制御装置
3 ブラシレスモータ
6 誘起電圧検出手段(回転角度検出手段)
9 ロータ
11 被検出部
13 角度位置検出器(検出部)
15 復調回路(復調部、2値化部)
17 記憶部(2値化情報記憶部)
45 カウンタ(出力信号情報検出部、パルスカウント部)
100 画像形成装置
101 画像読取装置
【技術分野】
【0001】
本発明はブラシレスモータの駆動制御装置、画像読取装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシレスDCモータのロータ位置はホール素子等のセンサによって検出して回転制御を行っており、3相のブラシレスDCモータでは各相に計3つのホール素子が必要であった。またロータの磁極位置を検出せず、モータのコイルに誘起する電圧を利用してブラシレスDCモータの回転を制御するモータ駆動方式、いわゆるセンサレスDCモータ駆動方式が知られている。
【0003】
係るモータ駆動方式は、発熱が大きくホール素子が使えない大型機ではすでに使われており、一方でモータを駆動源として利用する種々の電子機器ではコストダウンの要求からホール素子を使わないセンサレスDCブラシレスモータ駆動方式が使われるようになってきている。センサレスDCブラシレスモータ駆動方式はモータのコイルに発生する誘起電圧に基づいてロータの位置を検出しているため、モータの起動時にはコイルに誘起電圧は発生せず、強制的に適宜定められたタイミングで、励磁電流をモータのコイルに順次供給してモータを起動するオープンループ制御が行われている。そしてモータの回転速度が上がってモータコイルに発生する誘起電圧が大きくなった時、誘起電圧信号をもとに励磁切換タイミングを算出してセンサレスDCブラシレスモータを駆動している。
【0004】
また、モータの起動初期はモータの駆動力が伝達駆動される回転体の角度位置検出信号を用いて強制的に各相へ電流を流し、モータの起動時に規定の3箇所にロータを引き込むことで各相の電流切り替えタイミングを角度位置検出信号により基準をとり、基準の計測後はロータの磁極位置を角度検出信号より求めることでホール素子や誘起電圧を利用せずに駆動している。
【0005】
上記の誘起電圧を用いてロータの位置を検出するセンサレスブレシレスDCモータ駆動方式では、モータの停止時に誘起電圧が得られないため、誘起電圧が検出できるレベルになるまで、モータ起動後の一定期間、所定のタイミングで励磁電流をモータのコイルに順次供給することでセンサレスブラシレスDCモータの起動を行っている。このような起動制御は負荷が安定している機器や、回転速度が速くなりすぎても問題が生じ難い機器には有効であった。
【0006】
しかし、レーザビームプリンタや複写機などに従来のセンサレスブラシレスDCモータ駆動方式を適用するためには、(1)トナーカートリッジ内のトナーの状態や量によって、起動時のモータ負荷が一定でないため、起動時のロータ位置によってはトルク不足となって起動不良となる。(2)モータ起動時はオープンループ制御のため、過度の速い回転速度でモータが回転すると、感光体ドラムの劣化の原因となることがあった。
【0007】
係る問題を解決するため、特許文献1に記載の従来技術では、モータのロータの回転位置を検出する第1の検出手段と、モータのコイルに電流が流れていない間にコイルに発生する誘起電圧により前記ロータの回転位置を検出する第2の検出手段とを用い、モータの起動時に第1の検出手段の検出結果に基づいてモータの駆動制御を開始し、その後、所定のタイミングで第1の検出手段及び第2の検出手段の検出結果に基づいてモータの駆動制御を切り換えている。
【0008】
また誘起電圧を利用した検出が可能となるまで、ロータの回転と一体的に回転する被検出部にある一定間隔のタイミングマークを検出部で検出して出力される連続パルスをカウントして強制的に適宜定められたパルスのカウント数を基準に励磁電流をモータのコイルに順次供給してモータの起動を行っている。係る期間はモータの回転角速度を検知して速度制御を行っていないオープンループ制御を行っている。
【0009】
一方、特許文献2に記載の従来技術は、モータの回転子を規定された3つの引き込み角度位置に引き込んで、その角度位置をセンサレスモータからの動力が伝達される駆動対象物に設けられた角度位置検出器からの信号でモータ各相への転流タイミングであると設定し、設定以降は角度位置検出器からの信号で複数相の励磁相を切り換えるようにしている。
【0010】
【特許文献1】特開2003−79184号公報
【特許文献2】特許第3690296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載の従来技術では、モータの回転速度が速くなり誘起電圧を利用できるレベルになるまでは、誘起電圧信号に基づいて励磁切り換えタイミングを算出してセンサレスDCブラシレスモータを駆動することができ難いという問題があった。また、
回転角速度を検知して速度制御を行っていないオープンループ制御であるため、急激な立ち上げ制御を行うフィードバック制御のモードに入る時間が遅れるという問題があった。
【0012】
つまり、立ち上げ時間が遅くなるということは、レーザビームプリンタや複写機などで第1番目のプリント開始時間が遅くなるという問題がある。立ち上げ時間が遅く定着温度がすでに立ち上がった状態でもジョブ指令が来てから用紙が排出されるまでの時間はますます速くすることが望まれており、かかるために駆動系の立ち上げ時間を短縮することが必要となる。更に誘起電圧検出用のアナログ回路が必要となるので、コスト高になるという問題もあった。
【0013】
一方、特許文献2に記載の従来技術では、誘起電圧の計測を行わずにモータの駆動を開始することができるが、起動時に必ず規定された3つの引き込み角度位置を認識しなければならず、立ち上げ時間が遅くなるという問題があった。更に、引き込み角度位置の誤差が摩擦トルクの影響を受けて発生するので、推定磁極位置と実際のロータの磁極位置に誤差が生じて動作が不安定になるという問題があった。更に、電源をOFFしてしまうと正確な磁極の位相が分からなくなってしまうため、再電源ON時に再び引き込み位置への引き込みが必要となり、立上り時間が遅くなってしまうという問題があった。
【0014】
本発明は、ブラシレスモータを高速に起動制御できるブラシレスモータの駆動制御装置及びこれを用いた画像読取装置及び画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、ロータと複数相のコイルとを備えたブラシレスモータの駆動制御装置であって、前記ロータの回転に同期して回転する被検出部と、被検出部に形成され且つ変調情報が埋め込まれたパターン情報と、前記パターン情報を読み取り変調された各出力信号を出力する検出部と、前記検出部から出力される各出力信号を復調する復調部と、前記出力信号の情報を検出する出力信号情報検出部と、前記ロータの回転を制御する制御部とを備え、前記制御部は前記復調部で復調した復調情報と前記出力信号情報検出部で検出された出力信号の情報に基づいて前記ロータの絶対角度又は前記ロータの磁極位置を検出していることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載された発明は、ロータと複数相のコイルとを備えたブラシレスモータの駆動制御装置であって、前記ロータの回転に同期して回転する被検出部と、被検出部に形成され且つ変調情報が埋め込まれたパターン情報と、前記パターン情報を読み取り変調された各出力パルスを出力する検出部と、前記検出部から出力される各出力パルスを復調する復調部と、前記出力パルスの数をカウントするパルスカウント部と、前記復調部で復調した出力パルスの復調情報とパルスカウント部でカウントされた出力パルスのカウント値に基づいて前記ロータの回転を制御する制御部とを備え、前記パターン情報は前記被検出部の異なる位置に対応して出力される出力パルスのパルス幅が異なるように形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載された発明において、前記被検出部から出力される出力パルスは、短周期パルスと長周期パルスとを組み合わせたパルスを1つの単位として、それらを複数単位備えていることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載の発明において、前記短周期パルスと前記長周期パルスとはそれぞれの単位でパルス数の比を異ならせていることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載された発明は、請求項3又は4に記載の発明において、長周期パルス及び短周期パルスを2値化する2値化部を備え、前記復調部は2値化部が2値化した符合の種類に基づき出力パルスが長周期パルスか短周期パルスかを判断していることを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載された発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の発明において、前記検出部は磁気センサであり、前記被検出部には交互に配置されたN極の磁石とS極の磁石とからなるパターン情報が形成されており、一部に配置された磁石の幅が他の部分に配置された磁石の幅と異なることを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載された発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の発明において、前記検出部は反射型フォトセンサであり、前記被検出部には交互に配置された明度の異なる反射部からなるパターン情報が形成されており、一部に配置された反射部のサイズが他の部分に配置された反射部のサイズと異なることを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載された発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の発明において、前記検出部は透過型フォトセンサであり、前記被検出部は複数のスリットから構成されており、一部のスリットのサイズが他のスリットのサイズと異なることを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載された発明は、請求項1〜8の何れか一項に記載の発明において、前記検出部は単数であることを特徴とする。
【0024】
請求項10に記載された発明は、請求項2〜9の何れか一項に記載の発明において、
前記被検出部に形成されたパターン情報から検知される出力パルスが短周期パルスと長周期パルスとを組み合わせたパルスを1つの単位として複数単位備えて前記ロータの磁極位置を検知していることを特徴とする。
【0025】
請求項11に記載された発明は、請求項2〜9の何れか一項に記載の発明において、前記被検出部に形成されたパターン情報から検知される出力パルスが短周期パルスと長周期パルスとを組み合わせたパルスを1つの単位として複数単位備え且つその複数単位間で短周期パルスと長周期パルスとのパルス数の比を異ならせることで前記ロータの絶対角度を検知していることを特徴とする。
【0026】
請求項12に記載された発明は、請求項2〜11の何れか一項に記載の発明において、長周期パルス及び短周期パルスの2値化情報を記憶する2値化情報記憶部と、2値化情報記憶部に記憶した2値化情報と検出されたパルスの2値化情報との差異を判定する誤検知情報検出部とを備えていることを特徴とする。
【0027】
請求項13に記載された発明は、請求項1〜12の何れか一項に記載の駆動制御装置には複数相のコイルが設けられており、一方のコイルに電流が流れている間には、他方のコイルに電流は流れずに誘起電圧が発生しており、他方のコイルに発生する誘起電圧によりロータの回転角度を検出する回転角度検出手段を備えていることを特徴とする。
【0028】
請求項14に記載された発明は、請求項1〜13の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置には複数相のコイルが設けられており、一方のコイルに電流が流れている間には、他方のコイルに電流は流れずに誘起電圧が発生しており、他方のコイルに発生する誘起電圧によりロータの回転角度を検出する回転角度検出手段を備えていることを特徴とする。
【0029】
請求項15に記載された発明は、原稿画像を読み取る画像読取手段を備えた画像読取装置において、画像読取手段は請求項1〜14の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置を備えたことを特徴とする。
【0030】
請求項15に記載された発明は、静電潜像を担持する像担持体と、像担持体上のトナー画像を転写材に転写する転写手段と、転写材を搬送する搬送手段を備えた画像形成装置において、像担持体、転写手段及び搬送手段はそれぞれ請求項1〜14の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、復調部で復調した出力信号の復調情報と出力信号情報検出部で検出された出力信号の情報に基づいてロータの絶対角度又は前記ロータの磁極位置を検出しているので、従来技術のように起動時に規定された引き込み角度位置を認識する必要がなく、ブラシレスモータの駆動の立ち上げを早く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。尚、図1は本発明の第1実施の形態に係るモータ駆動装置の制御回路図、図2は図1に示すコイルの電気回路図、図3は図1に示すロータと角度位置検出器との構成を示す斜視図、図4は図3に示すロータ外周に設けた被検出体の概略図、図5は角度位置検出器でスケールを読み取った時の出力パルスを示すタイムチャート、図6は本発明の第1実施の形態に係るモータ駆動装置の各コイルに流れる電流のタイミングチャートである。
【0033】
図1は本発明に係るモータの駆動制御回路(駆動制御装置)1はセンサレスDCブラシレスモータ(以下単にブラシレスモータという)3の駆動装置に用いている。ブラシレスモータ3は、U相、V相、W相(図中単にU、V、Wと示す)という3つのコイル(固定子巻線)がスター結線された三相ブラシレスモータである。
【0034】
駆動制御回路1はドライバ5とコントローラ7とを備え、ドライバ5の出力端子がそれぞれU相、V相、W相の各端子に接続されている。ドライバ5はブラシレスモータ3を駆動する電源に接続されている。電源側トランジスタ及び接地側トランジスタを接続した組をU相、V相、W相に対応して三組備えた構成をしており、合計6つのトランジスタのオン・オフがコントローラ7から供給されるスイッチング信号によって制御されることにより、コイルの各相が順に励磁されてロータが回転駆動する。
【0035】
ブラシレスモータ3のロータ9(又は回転軸)には、同期して回転する被検出体(被検出部)11が設けられており、被検出体11に形成された着磁パターンを磁気効果型検出器からなる角度位置検出器(検出部)13が検出する。尚、被検出体11はロータ9又はその回転軸と同軸ではなく、ブラシレスモータ3から歯車機構などを伝達して駆動される回転体に設けてあっても良い。
【0036】
コントローラ7は、例えばマイクロコンピュータ、後述の復調回路15、検出した絶対角度情報或いはロータ磁極位置情報と実際のブラシレスモータ3のロータ磁極位置との角度誤差を記録する記憶装置17等を備え、角度位置検出器13より変調された角度位置検出信号がコントローラ7に入力される。
【0037】
コントローラ7には、ドライバ5の各トランジスタのオン・オフを個別に制御する駆動ロジック19を備えられており、上位装置からの指令信号21で指示された回転速度にブラシレスモータ3を回転させるべく、コイル各相の切り換えタイミングに同期してトランジスタのオン・オフ切り換えを行っている。この各相の切り換えをドライバ5に出力することで、ブラシレスモータ3の固定子巻線U相、V相、W相の励磁切り換えが適切に行われ、ブラシレスモータ3の回転が実現される。
【0038】
コントローラ7では、角度位置検出器13から変調された角度位置検出信号が復調回路15に送られ、復調回路(復調部)15から磁極情報23と角度位置情報25とが駆動ロジック19へ出力される。そして、モータの回転角速度情報或いは回転角度情報とロータ9の磁極情報をリアルタイムで計測する。そして、指令信号21で指定される基準角速度或いは基準角度と比較し、その誤差に対応したPWM(パルス幅変調)信号を生成し、この信号と前記ドライバ5の各トランジスタをオン・オフする信号とANDをとってドライバ5をオン・オフ制御してモータを駆動して回転角速度の制御を行う。
【0039】
三相のブラシレスモータ3の駆動は、図2に示すようにコイル(U相27、V相29、W相31)はそれぞれスイッチングトランジスタ33、34、35、36、37、38に接続されており、端子39、40、41は電源プラス側に接続されている。
【0040】
次に2極3相の構成におけるコイル電流の切り換えについて説明する。図6に示すように、U+はU相に接続された電源プラス側のトランジスタの信号であり、図2ではスイッチングトランジスタ33に相当する。また、U-はU相に接続された接地側のトランジスタの信号であり、図2ではスイッチングトランジスタ34に相当する。同様にv+はスイッチングトランジスタ35、v-はスイッチングトランジスタ36、w+はスイッチングトランジスタ37、w-はスイッチングトランジスタ38となる。
【0041】
図6に示すように、まずU相27とV相29が互いに逆向きで励磁される。この時、スイッチングトランジスタ33と36がオンになる。そうすると、電源プラス側と接続された端子39よりスイッチングトランジスタ33からU相27、V相29、スイッチングトランジスタ36を通ってグランドに接続されて電流が流れ、U相27、V相29がそれぞれ励磁される(図6中、モータ回転角度0°〜60°の区間)。
【0042】
次に、スイッチングトランジスタ33と38がオンになる。そうすると、端子39よりスイッチングトランジスタ33からU相27、W相31、スイッチングトランジスタ38を通ってグランドに接続されU相27、W相31が励磁される(図6中、モータ回転角度60°〜120°の区間)。
【0043】
スイッチングトランジスタ35と38がオンになると、端子40よりスイッチングトランジスタ35からV相29、W相31、スイッチングトランジスタ38を通ってグランドに接続され、V相29、W相31が励磁される(図6中、モータ回転角度120°〜180°の区間)。
【0044】
スイッチングトランジスタ35と34がオンになると、端子40よりスイッチングトランジスタ35からV相29、U相27、スイッチングトランジスタ34を通ってグランドに接続され、V相29、U相27が励磁される(図6中、モータ回転角度180°〜240°の区間)。
【0045】
スイッチングトランジスタ34と37がオンになると、端子41よりスイッチングトランジスタ41からW相31、U相27、スイッチングトランジスタ34を通ってグランドに接続され、W相31、U相27が励磁される(図6中、モータ回転角度240°〜300°の区間)。
【0046】
スイッチングトランジスタ36と37がオンになると、端子41よりスイッチングトランジスタ37からW相31、V相29、スイッチングトランジスタ36を通ってグランドに接続され、W相31、V相29が励磁される(図6中、モータ回転角度300°〜360°の区間)。次の区間からはモータが1回転しており、前述の0°〜60°の区間と同じとなる。この6ステップを繰り返してモータは回転する。
【0047】
次に角度位置検出器(検出部)13について説明する。ここでは角度位置検出器13として磁気効果型検出器で代表的なMRセンサを用いた方式について説明する。図3に示すようにロータ9の外周上にNS交互に着磁されたマグネット(被検出部)11を設け、マグネット11に一定の距離で対向するようMRセンサ13を配置した構成としている。MRセンサ13は磁性体磁気抵抗素子より構成されている。
【0048】
MRセンサ13は磁界の強さ変化に応じて抵抗値が変化する強磁性体磁気抵抗素子を用いており、マグネット11の変化に応じて信号を得ている。ここではロータ9の外周上にマグネット11を設ける構成としたがロータ9と同期して回転する部分ならばロータ9の外周上に限定する必要はない。
【0049】
次に、角度位置検出器13でマグネット11を検出した時に出力される出力パルスについて説明する。ロータ9の外周に形成したマグネット11のスケールについて図4に示した。図4に示すように他の部分の磁石11bよりも巾が異なる磁石11aを配置した。係るマグネット11をMRセンサ13で読み取ると、図5に示すような出力パルスとなる。ここで、出力パルスの短周期の時間をTとすると長周期の時間は4Tとなる。
【0050】
パルス周期の計測方法にはパルスの立上りから立上りまでの間隔、或いは立下りから立下がりまでの間隔を計測することが考えられるが、ここでは立上りから立下がりまで、或いはその逆の両エッジ間を計測することで、パルス幅時間を計測する。つまりパルスの立上り又は立下がりが来るたびに、時間計測用カウンタの計測値をデータとして取り込み、データを取り込んだ後すぐに前記時間計測カウンタをクリアし、継続してこのカウンタにより時間計測をする。この時間計測用カウンタは一定周波数のクロックfcによって増加する。つまりパルスの立上り又は立下りが来るたびにパルス周期データの取り込みとパルス周期計測を開始している。
【0051】
以上より図5(a)において、一定回転角速度でモータが回転して出力パルスp1を計測すると、時間計測用カウンタはNx1(自然数)というカウント値を計測する。ここで短周期パルス間隔の時間幅をT0とすると、時間計測用カウンタにはT0・fc0=Nc(自然数)なるカウント値が計測される。つまり時間計測用カウンタでは時間T0の時はNcなる値がカウントされる。一定回転制御している時は、短周期パルス時間幅がどの範囲に入るか、つまり短周期パルスを計測した場合のカウント値がどの範囲に入るかが分かっているので、パルス1を計測することによって得られるカウント値Nx1(自然数)より、パルス1は短周期パルスと判定できる。
【0052】
ところで、速度変動があると、時間T或いはカウント値Nxがばらつく。例えば角速度が±50%ばらついても短周期側は最大2.0Nc(角速度変動−50%のとき)のカウント値となり、長周期側は最小2.7Nc(角速度変動+50%のとき)となるので閾値をこの中間の2.4Nc(近い自然数を選ぶ)に設定すれば正しく判定できる。
【0053】
これらの値は、短周期側はNx=T・fc=k・fc/ω(:定数、ω:モータ回転角速度)の関係があり、ω=0.5ω0(ω0:目標回転角速度)の時、
Nx=k・fc/0.5ω0=2(k・fc/ω0)=2Nc として求まり、
長周期側は、Nx=4T・fc=4k・fc/ω の関係があり、ω=1.5ω0であるので、Nx=4k・fc/1.5ω0=2.7(k・fc/ω0)=2.7Nc と求められる。
【0054】
通常のFM変調では一定回転角速度の時長周期側の周期は短周期の2倍しかないので、長周期側は、Nx=2T・fc=2k・fc/ω の関係より、ω=1.5ω0の時は、Nx=1.3Nc となり、短周期の2Ncより小さくなるので誤判定になる。
【0055】
速度変動が更に大きくても復調しなければならない時は、短周期パルスと長周期パルスの比を1:5或いは5:1というようにし、絶対角度情報或いは磁極情報を変調した形でロータ9の外周上にNS交互に着磁されたマグネット11を設けるようにする。
【0056】
次のパルスp2であるが、パルスp1と比較して立下りから立上りと立上りから立下りという違いはあるが、カウンタの計測は同様に行われるため、一定回転角速度でモータが回転している状態で計測すると、時間計測用カウンタはNx2(自然数)というカウント値を計測する。一定回転制御している時は、短周期パルス時間幅を計測することで得られるカウント値がどの範囲に入るかが分かっているので、カウント値Nx2(自然数)より、パルスp2は短周期パルスと判定できる。
【0057】
次のパルスp3では、前述のパルスp1と同様に立下りから立上りまでのNx3(自然数)というカウント値を計測し、パルスp4では、前述のパルスp2と同様に立上りから立下りまでのNx4(自然数)というカウント値を計測する。これらのカウント値も一定回転制御している時は、短周期パルス時間幅を計測することで得られるカウント値がどの範囲に入るかが分かっているので、パルスp3、パルスp4は短周期パルスと判定できる。ここで、パルスp4の計測が終わった瞬間に、短周期のカウント回数(=クリア回数)が4回カウントした基本周期(=長周期)となるため、パルスp4での立下りエッジを用いてロータの回転角度の計測を行う。またこの基本周期における符号は“1”が設けられる。
【0058】
一方、パルスp5においては、立下りエッジから立上りエッジまでで、時間計測用カウンタはNx5(自然数)なるカウント値を計測する。ここで、一定回転角速度でモータが回転している状態で計測すると短周期パルス間隔をT0とすると長周期パルス間隔は4T0となり、時間計測用カウンタには,4T0・fe=4Neなるカウント値が計測される。つまり時間計測用カウンタでは時間4T0の時は4Neなる値がカウントされる。一定回転制御している時は、長周期パルス時間幅がどの範囲に入るか、つまり長周期パルスを計測した場合のカウント値がどの範囲に入るかが分かっているので、パルスp5を計測することによって得られるカウント値Nx5(自然数)より、パルスp5は長周期パルスであると判定できる。ここで、パルスp5の計測が終わった瞬間に、長周期を計測したことが分かるため、パルスp5の立上りエッジを用いてロータの回転角度の計測を行う。また、この基本周期における符号は“0”が設けられる。
【0059】
同様にパルスp6〜パルスp10においても、パルスp5と同様に、それぞれのパルスをカウントすると時間計測用カウンタにはNx6〜Nx10(自然数)なるカウント値が計測される。一定回転制御している時は、それぞれで計測されるカウント値Nx6〜Nx10(自然数)がどの範囲に入るか分かっているので、パルスp6〜パルスp10は長周期パルスであると判定できる。更に、パルスp6〜パルスp10は長周期パルスであるため、立上り又は立下りエッジを用いてロータの回転角度の計測を行う。また、これらの基本周期における符号は“0”が設けられる。
【0060】
以上の計測を行うことで、各パルスが短周期パルスであるか長周期パルスであるかの判定と同時に、パルスが短周期であった場合には短周期のカウント回数を4回カウントした基本周期において符号“1”、長周期であった場合には長周期の周期において符号“0”を割り当てつつ、前記符号の切り替わりにおける立上り又は立下りエッジを用いて、ロータ9の回転角度情報も得ることができる。図5に示すタイムチャートでは、長周期時間間隔で求めた磁極位置情報或いは絶対角度情報として、“1000000”が得られる。
【0061】
次に、図4(b)に示すスケールを読み取ってパルスp11を計測すると、時間計測用カウンタはNx11(自然数)というカウント値を計測する。一定に回転制御している時は、短周期パルス時間幅を計測することで得られるカウント値がどの範囲に入るかは分かっているため、パルスp11を計測することによって得られるカウント値Nx11(自然数)より、パルスp11は短周期パルスと判定できる。同様にパルスp12も、時間計測用カウンタによりNx12(自然数)というカウント値を計測し、パルスp12は短周期パルスであると判定される。同様にパルスp13及びp14も短周期パルスであると判定される。ここで、パルスp14の計測が終わった瞬間に、短周期のカウント回数(=クリア回数)が4回カウントした基本周期(=長周期)となるため、パルスp14での立下りエッジを用いてロータ9の回転角度の計測を行う。また、この基本周期における符号は“1”が設けられる。
【0062】
同様に、パルスp15〜パルスp18においても、時間計測用カウンタにはNx15〜Nx18(自然数)なるカウント値が計測され、パルスp15〜パルスp18は短周期パルスであると判定できる。ここで、パルスp18の計測が終わった瞬間に、短周期のカウント回数(=クリア回数)が4回カウントした基本周期(=長周期)となるため、パルスp18での立下りエッジを用いてロータ9の回転角度の計測を行う。また、この基本周期における符号は“1”が設けられる。
【0063】
次にパルスp19においては、立下りエッジから立上りエッジまでで、時間計測用カウンタはNx19(自然数)なるカウント値を計測する。一定回転制御している時は、長周期パルス時間幅がどの範囲に入るかが分かっているので、パルスp19を計測することによって得られるカウント値Nx19(自然数)より、パルスp19は長周期パルスであると判定できる。ここで、パルスp19の計測が終わった瞬間に、長周期を計測したことが分かるため、パルスp19の立上りエッジを用いてロータ9の回転角度の計測を行う。また、この基本周期における符号は“0”が設けられる。
【0064】
同様にパルスp20〜パルスp23においても、パルスp19と同様にそれぞれのパルスをカウントすると時間計測用カウンタにはNx20〜Nx23(自然数)なるカウント値が計測される。パルスp20〜パルスp23は長周期パルスであると判定される。更に、パルスp20〜パルスp23は長周期パルスであるため、立上り又は立下りエッジを用いてロータの回転角度の計測を行う。またこれらの基本周期における符号は“0”が設けられる。
【0065】
以上の計測を行うことで、各パルスが短周期パルスであるか長周期パルスであるかの判定と同時に、パルスが短周期であった場合には短周期のカウント回数を4回カウントした基本周期において符号“1”、長周期であった場合には長周期の周期において符号“0”を割り当てつつ、前記符号の切り替わりにおける立上り又は立下りエッジを用いて、ロータ9の回転角度情報も得ることができる。この図5(b)では長周期時間間隔で求めた磁極位置情報或いは絶対角度情報として、“1100000”が得られる。
【0066】
次に、ロータ9の磁極位置の検知方法について説明する。ここでは2極3相の磁極位置を持つロータ9を例に説明する。2極3相の場合、スイッチングトランジスタ33、35、37がONの後、図6に示すロータ回転角60°の全トランジスタがOFFする区間を経て、今度はロータ回転角120°の区間でスイッチングトランジスタ34、36、38がONし逆方向に電流が流れるようになる。そして再度ロータ回転角60°の全トランジスタがOFFする区間を経る。この一周のシーケンスを繰り返して各相のモータコイル端子が駆動されるが、各相モータコイル端子へ駆動されるタイミングは各相端子間でロータ回転角の位相差がある。そのため図6に示すようにロータ回転角が60°ごとに各相のコイルの駆動状態を切り換える構成となっている。
【0067】
従って、ロータ9の磁極位置に基づいて正常にモータが回転するように各相のコイルの駆動状態を切り換える位置(6箇所)が分かるようにロータ9と同期して回転するマグネット11にNS交互に着磁する周期を変えて符号を構成する。
【0068】
各相のコイルの駆動状態を切り換えるロータの磁極位置6箇所が分かるように長周期基準の符号を用いて1語7ビット方式で表示し、連続する6つの各磁極位置情報を以下の表1に示す符号構成にする。
【0069】
【表1】
【0070】
上記符号が検知されると、MSB(最高位ビット)側からLSB(最小位ビット)側へシリアルな信号が検知される。そしてLSB側の符号“0”の検出位置が上記駆動状態の切り換え位置に対応するように構成すればよい。これはロータ回転角60°内に1語だけの構成になるため、7×6=42[パルス/回転]となる。求められる角度情報の分解能が大きい場合、ロータ回転角60°の中に複数語入れることにより角度情報の分解能を十分に確保することができる。例えば、ロータ回転角60°の中に3語を持たせた場合は、下記の表2に示すようになる。この場合、7×6×3=126(パルス/回転)と高い分解能を確保できる。
【0071】
【表2】
【0072】
以上のように決定したデータ列に対して、例えばロータ回転角60°で2値化情報が1語であった場合には、符号“0”から“1”へ変化した時が磁極情報1語の検出開始位置に当たる。つまり新たに同期情報を挿入しなくても、2値化情報1語の開始位置が分かる。そして、この磁極情報1語のLSBを検知し終わると、6つの磁極位置のどれかを判定できるので、LSB検知後、すぐにモータの各相へ流れる電流経路を切り換えることができる。このことにより確実にロータ磁極位置を検出し、正常にモータを回転することが可能になる。
【0073】
つまり1語7ビット構成で、符号が“1”から“0”になった時、7ビット(1語のLSB)を通過するまでは“1”は現れないため、符号が“0”から“1”へ変化した時を1語の先頭ビット(MSB)とすることで確実な同期をとることができる。
【0074】
また、2値化情報が複数語(例えば3語)の場合には、最後(3番目)の1語におけるLSB符号“0”を検知した時をモータ各相へ流れる電流経路を切り換えるタイミングとすればよい。つまり同じ磁極位置を示す3語を検知し、第3番目の1語のLSB符号“0”の検知後に電流経路を切り換える。このとき、繰り返す同じデータ列を3度計測するため、別途設けたカウント手段を使う。起動時は同じデータ列が3つ計測できないことが発生するが、同じデータ列が3つ計測できた時から磁極位置情報に合わせて電流経路を切り換えるようにする。このように構成することで分解能を確保しつつ確実にロータ磁極位置を検出可能となる。ここでは、電流経路の切り換えタイミングと2値化情報の変化位置で同期を取ったが、ロータ9の磁極位置との関係を明確にすることが可能ならば別のタイミングで同期を取る方法でも良い。
【0075】
次にモータ回転の“停止状態からの立上り”或いは“一定速度からの立下り”状態の速度変化が大きい時に有効な復調回路15の動作について図7を用いて説明する。角度位置検出器13から逐次、検出された入力パルス43は、微分回路44においてパルスの立上り部と立下り部が微分される。微分回路44からの前記微分された出力パルスがカウンタ45のリセット端子に入力され、カウンタ45がクリア(カウンタが“0”にセット)される。
【0076】
また微分された出力パルスはレジスタ46へカウンタ出力をセットさせるため、クロック端子へ入力される。カウンタ45は一定の周波数のパルスを生成する発振器出力のクロックによってカウントアップされる。レジスタ46にはカウンタ45がクリアされる直前までにカウントアップされたカウンタ45のデータがセットされる。従ってカウンタ45は入力パルス43のパルス幅の時間幅に応じたカウントがなされる。ここでの第n番目のパルス幅のカウント値をCn(nは自然数)とする。
【0077】
ここでパルス幅の定義について説明する。パルス幅は、(1)立上りから立下がり、及び立下がりから立上りまでの時間の両者を使う。(2)立上りから立上り、或いは立下がりから立下がりまでの時間のどちらかを使う。どちらの手法を用いても良いが、ここでの説明は(1)の立上りから立下がり、及び立下がりから立上りまでの時間両者を使った方法で説明する。
【0078】
次に速度変化が大きい時に有効な復調について説明する。この方式は隣接パルスとのパルス幅比較で行う。ここでは短周期パルスと長周期パルスの比が1:4の場合を説明する。復調方法については、前回のパルス幅の2倍以上ならば“短周期”から“長周期”とし、前回のパルス幅の半分(0.5倍)以下ならば”長周期“から”短周期”とする。
【0079】
カウンタ45からの出力をレジスタ46に出力して保存することで、過去のカウント値を保存でき、第nー1番目のパルス幅のカウント値Cn-1として保存できる。レジスタ46から求められる第nー1番目のパルス幅のカウント値Cn-1を第1乗算器47ではZ倍(ここではZ=2倍)、第2乗算器48ではD倍(ここではD=0.5倍)の乗算計算を行い、計算結果を出力する。
【0080】
次いで、乗算された結果と第n番目のパルス幅のカウント値Cnを第1比較器49において、Cn>Z・Cn-1の判定を行い、第2比較器50ではCn<Z・Cn-1の判定を行う。第1比較器49と第2比較器50からの出力が、ANDゲート51、52、53に入力され、同時に微分回路44からの出力もANDゲート51、52、53へ入力され、ANDゲート51出力には一つ前のカウント値がZ=2以上であった時はパスル幅が短周期側から長周期側へ変化した状態(“短周期”⇒“長周期”)を検知したことを示すパルスが出力される。またANDゲート52には一つ前のカウント値のD=0.5倍以下であった時はパスル幅が長周期側から短周期側へ変化した状態(“長周期”⇒“短周期”)を検知したことを示すパルスが出力される。更にANDゲート53には前述のどちらでもなかった場合に、長周期或いは短周期のパルス幅の遷移維持状態を示すパルスが出力される。
【0081】
図7において、微分回路44の出力パルスの立下り部でカウンタ45の出力をレジスタ46にセットしカウンタ45をクリアする(厳密にはカウンタ45の出力をレジスタ46にセットするタイミングに対してカウンタ45をクリアするタイミングはわずかに遅れるようにして回路を設計する)ように構成すれば狙いの動作を実現できる。
【0082】
モータ駆動における通常の定常駆動時において、速度変動が小さい場合には従来のFM変復調方式でも十分に対応することは可能である。しかし、速度変動が大きい時は情報の誤検出をしてしまう。隣接パルスとのパルス幅比較を行う本方式を用いることで、モータ回転速度変動が大きい場合、更には起動時や停止時においても復調できる。
【0083】
モータの駆動開始時や停止時などの速度が変動している状況で復調する場合、予測される立上りカーブ或いは立下がりカーブに合わせて符号判定の閾値(基準値)を(モータの定常時と比べて)変えることで信頼性の高い復調が可能となる。
【0084】
すなわち、立上り時はパルス周期が短くなる方向に変化し、立下り時はパルス周期が長くなる方向に変化する。そのために、立上り時には図7におけるZとDの値を小さめ(例えば、Z=1.8、D=0.3)に選び、立下り時はZとDの値を大きめ(例えば、Z=2.28、D=0.6)に選ぶ。このようにすれば立上りから立下りまでの速度プロファイルにおいて正確に復調できる範囲が広がる。
【0085】
図7における乗算器47、48の閾値を変える設定は立上り時或いは立下り時の速度プロファイルに合わせて複数回設定しても良い。つまり図7で示した構成で、立上り時においては、ZとDの値を立上り用の値で起動し、立上りプロファイルが終了して定常駆動と切り替わったら、通常のフィードバック制御モードに入り、ZとDの値を等速駆動時の値と変更し、立下り時には立下りプロファイルに基づくZとDの値へと変更する構成とする。また、立上り時及び立上り時のどちらか一方のみと等速駆動時の値との変更だけの構成としても良い。また、図7ではレジスタ46をZ倍とD倍した出力とカウンタ45の出力を比較しているが、カウンタ45とレジスタ46の出力比を求めてその値によって“長周期から短周期”と“短周期から長周期”或いは“状態遷移維持”を判定しても良い。
【0086】
モータの起動時について考えると、本方式はロータ9の絶対角度情報或いは磁極位置情報を時間的にシリアルに検出するためブラシレスモータ3が一定の回転角度以上に回転しないと情報を得ることができない。そのため、最初の立ち上げ時はパルスモータのように駆動位相を変化させて回転させる必要がある。最も基本的な方法としては、検出器出力とは無関係に図6のタイムチャートで示したような通電を行い、一定の回転磁界を発生させてブラシレスモータ3を起動させるという手法がある。ただし、この時にロータ9の磁極位置を検出することができないため、起動可能となる任意のタイミングで駆動位相を変化させる必要がある。このようにモータを起動し、ロータ9の絶対角度情報或いは磁極位置情報が検知可能となるまで回転させる。ブラシレスモータ3のロータ9がわずかに動くことにより、出力パルスの立上がり又は立下がりのエッジが微分回路44によって検出される。そこから時間計測用のカウンタ45がカウントを開始し、立上がりから立下がり、或いは立下りから立上がりまでのカウント値が得られる。実際は時間計測用のカウンタ45を無限には大きくはできないので、起動開始一定時間後にパルス周期計測を開始する。
【0087】
カウンタ45で計測されたカウント値によって、起動開始時のロータ9の位置が短周期パルスか長周期パルスかの判定を行うことができる。起動時の第1番目のカウンタ45によるカウント値は長周期側のパルスか短周期側のパルスかは分からない。最初に“短周期⇒長周期”或いは“長周期⇒短周期”に変化した時から正しい長周期、短周期判定ができる。つまり継続して時間計測のカウントを行い、一つ前に計測したカウント値で生成する前述の起動時の符号判定する閾値で次のカウント値を比較することにより、符号の“短周期⇒長周期”或いは“長周期⇒短周期”の変化があった時長周期或いは短周期の判定をする。
【0088】
ロータ磁極位置を示す符号のデータ列がロータ回転角60°で1語構成され、短周期パルス4個で符号“1”が形成され、長周期1個で符号“0”が構成されている場合、符号の“1”⇒“0”の変化があった場合、以降に連続する“0”の個数を数えることによって、ロータ回転角60°区間のどの部分であるか検知することが可能である。その後、符号が、“0”⇒“1”の変化で、次のロータ回転角60°区間に移ったということが検出できる。また、符号が“0”⇒“1”の変化があった時には、そこがロータ9の回転角60°区間の開始位置であり、その後に連続する“1”の個数を数えることによって、ロータ回転角60°区間のどの部分であるか検知することが可能となる。このように磁極位置が検知された以降は普通のブラシレスモータのように動作させることが可能となる。
【0089】
また、上述したようにロータ回転角60°で2値化情報が3語であった場合、符号の“1”⇒“0”或いは“0”⇒“1”の変化があった時には、その変化から以降に連続する“0”或いは“1”の長周期の符号の個数を検出し、記憶されたデータ列と比較することで、現在のロータ磁極位置をロータ回転角60°範囲内で検出する。その後、継続してロータ9を回転させ、継続して符号の判別を行う。同一の磁極情報を3個検知した後に長周期の符号の“0”から“1”への変化(“0”⇒“1”)を検知した場合、それは次のロータ回転角60°区間へ移行したことを示すため、その時の“0”⇒“1”タイミングが相切り換えタイミングであることが分かり、以降は普通のブラシレスモータのように動作させることが可能となる。
【0090】
また、別途に設けた記憶手段に予測される停止時における磁極位置情報を記憶することにより、次の再起動時において磁極位置情報に合わせた最初の切り換え位相の選択と立上がり速度を見込んだ切り換えタイミングで実行すると、更に早い駆動の立ち上げを行うことができる。
【0091】
更に絶対角度或いはモータ磁極位置判定後は、語長判定“0”から“1”或いは“1”から“0”への切り換え、又は絶対角度或いはモータ磁極位置情報の連続性、或いは連続的に現れる符号が予測でき、常に誤検出を行うことができる。
【0092】
次に磁極位置を誤検出した後の処理方法について説明する。連続したモータ磁極位置データはあらかじめ記憶し、上記の例では磁極位置データ(磁極語)を6ヶ所、長周期パルスを基準周期とした符号を用いて1語7ビットで記憶する。この記憶されたモータ磁極語を順次読み出して検出される磁極語を逐次比較することで誤検出ができる。順次読み出される記憶された磁極語と検出した磁極語が異なった場合、実際にあるべき符号へ修正する。つまり前に正しく検知された磁極情報の次のあるべき磁極情報を使えば良い。
【0093】
また、図7において予測できる短周期パルス或いは長周期パルスの区間でカウンタ45のカウント値が例えば予測されるカウント値の2分の1のところでパルス出力が変化した時は微分回路44の出力が出ないような判定回路とゲート回路を設ける。このようにすれば外部ノイズで誤計測する確率を減らすことができる。
【0094】
また、起動時と停止時においては、完全にモータが停止する瞬間より、ある一定時間前、又は起動開始の瞬間より一定時間は検出パルス幅時間が長くなるので、この一定区間は符号判定を行わないようにして、パルス幅をカウントするカウンタのビット数を減らすことが必要となる。その例として、起動時はオープンループ制御モードにすることで符号判定を行わない時間が存在することで符号判定を行わない区間が設けられる。また停止時は、停止直前にモータ駆動をオフする、或いはモータ駆動のブレーキモードを付加することで停止すればよいので符号判定を行わない区間を設けることができる。
【0095】
ここで、ブレーキモードについて説明する。回転しているモータの誘導起電力を利用して制動力を発生させる方法として2つの方法について説明する。まず短絡制動(ショートブレーキ)についての構成図を図8に示す。3相インバータの接地側のトランジスタ61、63、65を全てONとし、電源プラス側のトランジスタ60、62、64を全てOFFとすることで、モータ巻線を短絡させ、電流をループ66となるようにして回転エネルギーをモータで発熱消費させる方式である。尚、単に短絡するだけであるためブレーキ力の制御はできない。また、回転系のイナーシャが大きい時は、長時間大電流が流れるので、ブラシレスモータ3の発熱やトランジスタの電流許容に注意する必要がある。
【0096】
次に、ブレーキ力を制御したい場合、緩衝制動(ソフトブレーキ)が用いられ、この構成を図9に示す。3相インバータの全てのトランジスタ60、61、62、63、64、65をOFFにして、還流ダイオード67を経由して流れる制動電流69を外部に取り出し、トランジスタ68などで制御することで必要なブレーキ力を制御できる。
【0097】
上述のように、本実施の形態では、ロータ9と複数相のコイル27、29、31とからなるブラシレスモータ3において、ロータ9の外周に形成したマグネット11の構成を、他の部分の磁石11bよりも巾が異なる磁石11aを配置したので、MRセンサ13で短周期パルスと長周期パルスとを検出することで、ロータ9の特定位置(絶対角度)を知ることができる。よって、モータの電源をオフしても、ロータ9の絶対位相が分かっているため、電源ON時からロータ9をすぐに駆動することが可能となり、速くフィードバック制御モードに入ることができ立ち上げ時間が速くなる。ロータ9の絶対角度或いは磁極位置情報と回転角度情報は、符号“1”と“0”の周期比が1:(2+N)又は(2+N):1で構成されており(Nは自然数)、短周期パルスの符号“1”或いは“0”は、(2+N)回繰り返して1つの長周期パルスと同一周期の符号“1”或いは“0”として変調することにより、ロータ9の一定範囲内の回転変動であっても検出誤りなしに“1”と“0”符号を復調でき、かつ一定回転角ごと回転角度情報も検出できる。
【0098】
長周期パルスと短周期パルスの判定を、直前の長周期パルス或いは短周期パルスの符号周期と比較して判定することで、立上り或いは立下りの速度変化、更には定常速度時の速度変化があっても安定して符号の判定ができる。
【0099】
角度位置検出器13として磁気効果型検出器であるMRセンサを用いたので、プリント基板上に櫛歯状のパターンを形成して回転角度情報を検出するFG方式に比べて高い分解能が得られると共にロータ9の絶対角度或いはロータ9の磁極位置情報と回転角度情報を回転直後から検出可能となる。
【0100】
1つのMRセンサ13からの出力値により、ロータ9の絶対角度を求めるので、2つ以上のセンサを用いる場合に比べて消費電流を低減することができる。
【0101】
次に、他の実施の形態を説明するが、以下の説明において、上述した第1実施の形態と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することにより、その部分の詳細な説明を省略し、以下の説明では上述の第1実施の形態と異なる点を主に説明する。図10は第2実施の形態に係るモータの制御回路の構成を示すブロック図である。図10に示す駆動回路1aは、図1に示す駆動制御回路1に、誘起電圧検出手段(回転角度検出手段)6が追加され、コントローラ7に含まれる駆動ロジック19での処理手順が異なること以外は第1の実施形態と同様である。また、図10ではU相より誘起電圧を計測する構成となっているが、V相やW相から計測する構成としても良い。
【0102】
図10は2極3相のモータの場合におけるタイムチャートを示し、励磁電流切り換えタイミングと、各相の電圧を表している。各コイルへ流れる電流は、Hレベルの相からLレベルの相へと流れる。例えば、V相がH、W相がLである区間s1においてはV相(一方のコイル)からW相(一方のコイル)へ電流が流れ、この時0レベルである(電流が流れない)U相(他方のコイル)には誘起電圧が発生する。この時、コントローラ7はPWM制御を行っているため、この時電流が流れているV相の電圧はPWMのスイッチング周波数で振動しており、W相は0レベルであり、U相には誘起電圧が発生する。誘起電圧検出手段6は、例えばコンパレータ等で構成され、例えばモータに印加されるDC電圧の1/2の値に設定しておき、その値と比較することでU相の誘起電圧が発生する任意のタイミングを検出する。同様に区間s2においても同様の手法により誘起電圧を検出することが可能である。
【0103】
ここで2極3相のモータの場合、図6に示すタイムチャートの破線間隔は60°であり前述した誘起電圧の任意のタイミング間隔は180°間隔となる。この誘起電圧の検出タイミングとロータ9の絶対角度検出情報或いは磁極位置情報との差分を求めることにより、誤差を補正して正確な磁極位置を求めることができる。
【0104】
一方、従来のブラシレスモータを複写機に適用する場合には、以下のような問題点があった。すなわち、従来のブラシレスモータはロータの位置をホール素子等のセンサにより検出して回転制御を行っているため、例えば3相のブラシレスモータの場合は、各相に1つずつ計3つのホール素子が必要であった。そしてモータを駆動するためには、ホール素子からの出力を受けてタイミングを計算し、そのタイミングに合わせて各相へ電流を流すドライバが必要となる。また、通常ホール素子からの出力は微小であるため、ホールアンプによってホール素子からの出力を増幅する必要があり、モータのそばにホールアンプを設ける必要があった。これにより、ホールアンプを設けるための基板が必要となるが、そのためだけに基板を設けるのは無駄が多く、各相へ電流を流すタイミングを計算する部分や、ドライバなどを同時に基板に設けるようにしている。その結果、駆動用の電圧、ロジックIC用の電圧、スタート/ストップ信号、回転方向信号、ブレーキ信号、エンコーダ信号など相当数の配線が必要となり、配線数の増加に伴うコストアップや配線作業性の悪化を招いていた。
【0105】
これに対して、本願発明のブラシレスモータ3を複写機に適用する場合には、ブラシレスモータ3のロータ9と一体になって回転するエンコーダ部分(被検出部)に回転情報と磁極情報とが変調されて1つになって検出されるため、上述のホールアンプが不要となり、モータのそばにホールアンプを設置するための基板を設ける必要がなくなり、複写機本体の基板の一部を使用することが可能となる。
【0106】
また、本願発明のブラシレスモータ3ではエンコーダの信号のみを複写機本体側の基板に送信するようにすれば良いので、エンコーダの信号を取り込むための配線と、ブラシレスモータ3へ駆動電流を供給する配線とを行うだけで済む。その結果、必要な配線数を大幅に減少することで配線に必要なコストを大幅に削減することが可能となる。更に、エンコーダ信号とモータ駆動電流は共にノイズに強いため外乱の影響を低減することもでき、駆動制御装置の精度を向上することができる。
【0107】
尚、図10に示す構成では、U相の誘起電圧を検出して各相の励磁電流印加切り換えタイミングと実際のロータ9の回転値との同期を図っているが、V相やW相から誘起電圧を検出する場合においても同様の構成とすることができる。
【0108】
また、誘起電圧を常時計測して、復調回路15から得られる磁極情報23との差分を求めて補正を行ったり、起動時に求めた差分を不揮発メモリなどに記憶しておき、起動後は記憶された差分補正値を求めて励磁電流切り換えを行っても良い。また製造工程などで誘起電圧を計測し、そこで求められた差分を不揮発メモリなどに記憶し、実際の製品にはアナログ回路などで構成される誘起電圧検出手段6を持たずに部品コストを下げる方法でも良い。
【0109】
次に第3実施の形態について説明する。第3実施の形態では、角度位置検出器とし光学検出器を用いる方法について説明する。図12は光学検出器として、反射型フォトセンサを用いた場合、図13は光学検出器として透過型フォトセンサを用いた場合を示す。
【0110】
図12に示す反射型フォトセンサの場合、ロータ9の外周上に光を吸収反射する部分を持つスケール11aを設け、そのスケール11aに対して光学素子13aを対向するように固定して設ける。光学素子13aは発光部と受光部を持ち、発光部から出力された光がスケール11aから反射又は吸収され、受光部に入力されるような位置関係で構成されている。受光部が受け取る光の強弱によりロータ9の情報を得ることができる。
【0111】
一方、図13に示す透過型フォトセンサの場合、ロータ9と同期して回転するスケール11bに対してスリット11cを設けたものを取り付ける。このスケール11bを挟んで発光部13bと受光部13cを対向位置にして設ける。発光部13bから出力される光がスケール11b上のスリット11cを通過して受光部13cに入力される。この受光部13cの出力信号によりロータ9の情報を得ることができる。ここで、ロータ外周上にスケール11a、11bを設けているが、ロータ9と同期して回転する部分ならばどこでもよい。
【0112】
1つの反射型フォトセンサ又は透過型フォトセンサを用いてロータ9の絶対角度を求めるので、2つ以上のセンサを用いる場合に比べて消費電流を低減することができる。
【0113】
次に第4実施の形態について図14を用いて説明する。第4実施の形態では8極3相のモータのタイムチャートを示す。基本的なスイッチングトランジスタの構成は上述の2極3相の時と同様であるが、総計24極のコイルが円周上に配置されることになるため、図14に示す破線1区間が、ロータ9の回転角15°に相当する。つまり、図6のタイムチャートに示すように、2極3相の場合は6区間のスイッチング動作を行うことで360°、1回転するが、8極3相の場合は図14のタイムチャートにおける6区間のスイッチング動作で90°、1/4回転しか行わない。8極3相の場合は6区間を4回繰り返すことで1回転する。
【0114】
次に第5実施の形態について図15を用いて説明する。第5実施の形態では、上述したモータの制御回路を画像形成装置に適用した例を示している。図15に示す画像形成装置100はカラー複写機であり、装置本体71の上部に読取装置78、装置本体71の下部に給紙装置70、装置本体71内にドラム状の感光体(感光体ドラム)72、現像手段としての回転型現像装置73、中間転写ベルト74、搬送ベルト(搬送手段)75、定着装置76、排紙ローラ77等が配置されている。
【0115】
係るカラー複写機においては、転写部に紙が突入する際の感光体(感光体ドラム)72、中間転写ベルト74、搬送ベルト75の負荷変動が最終画像の品質に大きく影響し、より高精度な感光体72、中間転写ベルト74、搬送ベルト75の駆動が望まれる。そこで、本発明のモータの制御回路1を感光体72、中間転写ベルト74、搬送ベルト75の駆動装置に用いている。本実施の形態では、感光体72、中間転写ベルト74、搬送ベルト75の駆動装置に本発明のモータの制御回路1を用いているので、ブラシレスモータ3に最初の記録開始指令が到達してから画像記録の開始時間が短くなり、画像出力の高速化及び画像の高品質化を図ることができる。
【0116】
次に第6実施の形態について図16を用いて説明する。第6実施の形態は上述したモータの制御回路を画像形成装置に適用した例を示している。図16に示すように画像形成装置100はベルト状の感光体(像担持体)81、中間転写ドラム(転写手段)82、転写ベルト(転写手段)83を備えている。
【0117】
このようなカラー複写機においては、転写部に紙が突入する際の負荷変動によって感光体ベルト81や中間転写ドラム82、転写ベルト83の駆動が最終画像の品質に大きく影響し、特に高精度な感光体ベルト81、転写ベルト83の高精度駆動が望まれる。そこで本実施形態では、感光体ベルト81や中間転写ドラム82、転写ベルト83の駆動装置に本発明のモータの制御回路1を用いた。本実施の形態では、感光体ベルト81や中間転写ドラム82、転写ベルト83の駆動装置に本発明のモータの制御回路1を用いているので、ブラシレスモータ3で最初の記録開始指令が到達してから画像記録の開始時間が短くなり、画像出力の高速化及び画像の高品質化を図ることができる。
【0118】
次に第7実施の形態について図17を用いて説明する。第7実施の形態に係る画像形成装置100は装置下部の給紙装置86、装置上部の定着装置87、装置内の画像形成部88等を備える。画像形成部88には感光体85とこれに対向して設けられた搬送直接転写ベルト84を備えている。このようなカラー複写機においては、転写部に紙が突入する際の負荷変動が搬送直接転写ベルト84の最終画像の品質に大きく影響し、より高精度な搬送直接転写ベルト84の駆動が望まれる。そこで本実施形態では、搬送直接転写ベルト84の駆動に本発明のモータの制御回路1を用いた。
【0119】
本実施の形態によれば、搬送直接転写ベルト84を回転させてカラー画像を形成する画像形成装置において搬送直接転写ベルト84の各駆動を本発明のモータの制御回路1を用いて行うので、ブラシレスモータ3で最初の記録開始指令が到達してから画像記録の開始時間が短くなり、画像出力の高速化及び画像の高品質化を図ることができる。
【0120】
次に第8実施の形態について図18を用いて説明する。第8実施の形態は本発明に係るモータの制御回路を画像読取装置に適用した例を示している。図18に示すように、画像読取装置101には原稿が載置される載置台91と、CCD95、レンズ93、ミラー94を備えた光電変換ユニット(画像読取手段)92等を備えている。本実施の形態では、光電変換ユニット92の駆動装置に本発明に係るモータの制御回路1を用いている。
【0121】
本実施の形態では、光電変換ユニット92の駆動を本発明に係るモータの制御回路1を用いて行うので、画像読取装置101の読み取り指令が到達してから、光電変換ユニット92の走行体が実際に駆動を開始する時間が短く且つ高精度な駆動を行うことができる。
【0122】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることは言うまでもない。
【0123】
上述の第1実施形態及び第3実施の形態において、1つの検出部13でロータ9の絶対角度を求めているが、これに限定されず、2つ以上のセンサを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1実施の形態に係るモータ駆動装置の制御回路図である。
【図2】図1に示すコイルの電気回路図である。
【図3】図1に示すロータと角度位置検出器との構成を示す斜視図である。
【図4】図3に示すロータ外周に設けたスケールの概略図である。
【図5】角度位置検出器でスケールを読み取った時の出力パルスを示すタイムチャートである。
【図6】第1実施の形態に係るモータ駆動装置の各コイルに流れる電流のタイミングチャートである。
【図7】第1実施の形態に係るモータ制御回路の復調回路図である。
【図8】第1実施の形態に係るモータ制御回路のブレーキモードを説明する回路図である。
【図9】図8に示すブレーキモードの変形例を説明する回路図である。
【図10】第2実施の形態に係るモータ駆動装置の制御回路図である。
【図11】図10に示すモータ駆動装置の各コイルに流れる電流のタイミングチャートである。
【図12】第3実施の形態に係るモータ駆動装置であり、角度位置検出器として反射型フォトセンサを用いた時の斜視図である。
【図13】第3実施の形態に係るモータ駆動装置であり、角度位置検出器として透過型フォトセンサを用いた時の斜視図である。
【図14】第4実施の形態に係るモータ駆動装置であり、8極3相のモータ駆動装置の各コイルに流れる電流のタイミングチャートである。
【図15】本発明のモータ駆動装置を適用した画像形成装置を示す概略図である。
【図16】本発明のモータ駆動装置を適用した画像形成装置を示す概略図である。
【図17】本発明のモータ駆動装置を適用した画像形成装置を示す概略図である。
【図18】本発明のモータ駆動装置を適用した画像読取装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0125】
1 モータ駆動制御装置
3 ブラシレスモータ
6 誘起電圧検出手段(回転角度検出手段)
9 ロータ
11 被検出部
13 角度位置検出器(検出部)
15 復調回路(復調部、2値化部)
17 記憶部(2値化情報記憶部)
45 カウンタ(出力信号情報検出部、パルスカウント部)
100 画像形成装置
101 画像読取装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと複数相のコイルとを備えたブラシレスモータの駆動制御装置であって、前記ロータの回転に同期して回転する被検出部と、被検出部に形成され且つ変調情報が埋め込まれたパターン情報と、前記パターン情報を読み取り変調された各出力信号を出力する検出部と、前記検出部から出力される各出力信号を復調する復調部と、前記出力信号の情報を検出する出力信号情報検出部と、前記ロータの回転を制御する制御部とを備え、前記制御部は前記復調部で復調した復調情報と前記出力信号情報検出部で検出された出力信号の情報に基づいて前記ロータの絶対角度又は前記ロータの磁極位置を検出していることを特徴とするブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項2】
ロータと複数相のコイルとを備えたブラシレスモータの駆動制御装置であって、前記ロータの回転に同期して回転する被検出部と、被検出部に形成され且つ変調情報が埋め込まれたパターン情報と、前記パターン情報を読み取り変調された各出力パルスを出力する検出部と、前記検出部から出力される各出力パルスを復調する復調部と、前記出力パルスの数をカウントするパルスカウント部と、前記復調部で復調した出力パルスの復調情報とパルスカウント部でカウントされた出力パルスのカウント値に基づいて前記ロータの回転を制御する制御部とを備え、前記パターン情報は前記被検出部の異なる位置に対応して出力される出力パルスのパルス幅が異なるように形成されていることを特徴とするブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項3】
前記被検出部から出力される出力パルスは、短周期パルスと長周期パルスとを組み合わせたパルスを1つの単位として、それらを複数単位備えていることを特徴とする請求項2に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項4】
前記短周期パルスと前記長周期パルスとはそれぞれの単位でパルス数の比を異ならせていることを特徴とする請求項3に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項5】
長周期パルス及び短周期パルスを2値化する2値化部を備え、前記復調部は2値化部が2値化した符合の種類に基づき出力パルスが長周期パルスか短周期パルスかを判断していることを特徴とする請求項3又は4に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項6】
前記検出部は磁気センサであり、前記被検出部には交互に配置されたN極の磁石とS極の磁石とからなるパターン情報が形成されており、一部に配置された磁石の幅が他の部分に配置された磁石の幅と異なることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項7】
前記検出部は反射型フォトセンサであり、前記被検出部には交互に配置された明度の異なる反射部からなるパターン情報が形成されており、一部に配置された反射部のサイズが他の部分に配置された反射部のサイズと異なることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項8】
前記検出部は透過型フォトセンサであり、前記被検出部は複数のスリットから構成されており、一部のスリットのサイズが他のスリットのサイズと異なることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項9】
前記検出部は単数であることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項10】
前記被検出部に形成されたパターン情報から検知される出力パルスが短周期パルスと長周期パルスとを組み合わせたパルスを1つの単位として複数単位備えて前記ロータの磁極位置を検知していることを特徴とする請求項2〜9の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項11】
前記被検出部に形成されたパターン情報から検知される出力パルスが短周期パルスと長周期パルスとを組み合わせたパルスを1つの単位として複数単位備え且つその複数単位間で短周期パルスと長周期パルスとのパルス数の比を異ならせることで前記ロータの絶対角度を検知していることを特徴とする請求項2〜9の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項12】
前記復調部は、出力パルスが長周期パルスか短周期パルスかを判断する基準値を、ロータの加速時又は減速時の場合とロータの定常時の場合とで異ならせていることを特徴とするとする請求項2〜11の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項13】
前記長周期パルス及び前記短周期パルスの2値化情報を記憶する2値化情報記憶部と、該2値化情報記憶部に記憶した2値化情報と前記検出部により検出された出力パルスの2値化情報との差異を判定する誤検知情報検出部とを備えていることを特徴とする請求項2〜12の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置には複数相のコイルが設けられており、一方のコイルに電流が流れている間には、他方のコイルに電流は流れずに誘起電圧が発生しており、他方のコイルに発生する誘起電圧によりロータの回転角度を検出する回転角度検出手段を備えていることを特徴とするブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項15】
原稿画像を読み取る画像読取手段を備えた画像読取装置において、画像読取手段は請求項1〜14の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項16】
静電潜像を担持する像担持体と、像担持体上のトナー画像を転写材に転写する転写手段と、転写材を搬送する搬送手段を備えた画像形成装置において、像担持体、転写手段及び搬送手段はそれぞれ請求項1〜14の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
ロータと複数相のコイルとを備えたブラシレスモータの駆動制御装置であって、前記ロータの回転に同期して回転する被検出部と、被検出部に形成され且つ変調情報が埋め込まれたパターン情報と、前記パターン情報を読み取り変調された各出力信号を出力する検出部と、前記検出部から出力される各出力信号を復調する復調部と、前記出力信号の情報を検出する出力信号情報検出部と、前記ロータの回転を制御する制御部とを備え、前記制御部は前記復調部で復調した復調情報と前記出力信号情報検出部で検出された出力信号の情報に基づいて前記ロータの絶対角度又は前記ロータの磁極位置を検出していることを特徴とするブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項2】
ロータと複数相のコイルとを備えたブラシレスモータの駆動制御装置であって、前記ロータの回転に同期して回転する被検出部と、被検出部に形成され且つ変調情報が埋め込まれたパターン情報と、前記パターン情報を読み取り変調された各出力パルスを出力する検出部と、前記検出部から出力される各出力パルスを復調する復調部と、前記出力パルスの数をカウントするパルスカウント部と、前記復調部で復調した出力パルスの復調情報とパルスカウント部でカウントされた出力パルスのカウント値に基づいて前記ロータの回転を制御する制御部とを備え、前記パターン情報は前記被検出部の異なる位置に対応して出力される出力パルスのパルス幅が異なるように形成されていることを特徴とするブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項3】
前記被検出部から出力される出力パルスは、短周期パルスと長周期パルスとを組み合わせたパルスを1つの単位として、それらを複数単位備えていることを特徴とする請求項2に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項4】
前記短周期パルスと前記長周期パルスとはそれぞれの単位でパルス数の比を異ならせていることを特徴とする請求項3に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項5】
長周期パルス及び短周期パルスを2値化する2値化部を備え、前記復調部は2値化部が2値化した符合の種類に基づき出力パルスが長周期パルスか短周期パルスかを判断していることを特徴とする請求項3又は4に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項6】
前記検出部は磁気センサであり、前記被検出部には交互に配置されたN極の磁石とS極の磁石とからなるパターン情報が形成されており、一部に配置された磁石の幅が他の部分に配置された磁石の幅と異なることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項7】
前記検出部は反射型フォトセンサであり、前記被検出部には交互に配置された明度の異なる反射部からなるパターン情報が形成されており、一部に配置された反射部のサイズが他の部分に配置された反射部のサイズと異なることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項8】
前記検出部は透過型フォトセンサであり、前記被検出部は複数のスリットから構成されており、一部のスリットのサイズが他のスリットのサイズと異なることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項9】
前記検出部は単数であることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項10】
前記被検出部に形成されたパターン情報から検知される出力パルスが短周期パルスと長周期パルスとを組み合わせたパルスを1つの単位として複数単位備えて前記ロータの磁極位置を検知していることを特徴とする請求項2〜9の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項11】
前記被検出部に形成されたパターン情報から検知される出力パルスが短周期パルスと長周期パルスとを組み合わせたパルスを1つの単位として複数単位備え且つその複数単位間で短周期パルスと長周期パルスとのパルス数の比を異ならせることで前記ロータの絶対角度を検知していることを特徴とする請求項2〜9の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項12】
前記復調部は、出力パルスが長周期パルスか短周期パルスかを判断する基準値を、ロータの加速時又は減速時の場合とロータの定常時の場合とで異ならせていることを特徴とするとする請求項2〜11の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項13】
前記長周期パルス及び前記短周期パルスの2値化情報を記憶する2値化情報記憶部と、該2値化情報記憶部に記憶した2値化情報と前記検出部により検出された出力パルスの2値化情報との差異を判定する誤検知情報検出部とを備えていることを特徴とする請求項2〜12の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置には複数相のコイルが設けられており、一方のコイルに電流が流れている間には、他方のコイルに電流は流れずに誘起電圧が発生しており、他方のコイルに発生する誘起電圧によりロータの回転角度を検出する回転角度検出手段を備えていることを特徴とするブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項15】
原稿画像を読み取る画像読取手段を備えた画像読取装置において、画像読取手段は請求項1〜14の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項16】
静電潜像を担持する像担持体と、像担持体上のトナー画像を転写材に転写する転写手段と、転写材を搬送する搬送手段を備えた画像形成装置において、像担持体、転写手段及び搬送手段はそれぞれ請求項1〜14の何れか一項に記載のブラシレスモータの駆動制御装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−252178(P2007−252178A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280909(P2006−280909)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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