説明

ブラシレスモータ及びブラシレスモータの駆動方法

【課題】電気角6次及び電気角12次の両成分のトルクリップルを低減させることができるブラシレスモータ及びブラシレスモータの駆動方法を提供する。
【解決手段】ロータコア16は、軸線方向に2つ等分割して分割ロータコア16a,16bを形成した。そして、ロータコア16の磁極とステータの磁極(ティース9)との間で、電気角60度の磁気スキューが保たれているように、分割ロータコア16a,16b間をそれぞれ回転軸の中心軸線を回転中心に6度だけ一方向にずらすように配置した。これによって、ブラシレスモータに発生する電気角12次成分のトルクリップル波は消失させることができる。また、ステータは、2つの異なる3相巻線を電気角で30度のスロットピッチで巻回する。そして、その2つの異なる3相巻線に対して30度位相差をもって通電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータ及びブラシレスモータの駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、モータについてさらなる高出力化が望まれ、その1つとしてステータのSC(セグメントコンダクタ)巻線化が注目され、ステータにSC巻線を施したブラシレスモータが種々提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
SC巻線とは、セグメントと呼ばれる分割導体をステータコアの各スロットに、軸線方向から挿入し、反対側を後工程において溶接等で接続して連続巻線を形成する巻線をいう。これによって、スロットに挿入される分割導体を断面四角形状にできスロット内の巻線の占有率が向上し高出力化に寄与している。
【0004】
そして、特許文献1には、セグメントを36個のスロットに挿入し連結したステータが開示されている。36個と多数のスロットを備え、そのスロットにセグメントを挿入して細かく巻線が形成されることから、トルクリップルを低減できる。
【0005】
しかしながら、EPS(電動パワーステアリング)に使用されるEPSモータ等では、さらなるトルクリップルの低減が求められている。これは、用途に限らず、そもそも、モータはトルクリップルがゼロであることが好ましくそれが常に求められている。
【0006】
一方で、モータは、コスト低減も強く求められている。例えば、特許文献2では、磁石が半分となるコンシクエント型のロータのモータが開示されているが、磁石極と鉄突極が交互に現れるので、トルクリップルが増大してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3303773号公報
【特許文献2】特開平9−327139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、3相交流駆動のブラシレスモータにおける、トルクリップルの基本次数は、極数×相数/1回転であって、一対極当たりでは、6次(電気角6次)となることが知られている。また、モータの端子間電圧たる誘起電圧を歪ませる主たる電気角5次、7次、及び11次、13次成分は、トルクのq軸成分において電気角6次と電気角12次に影響を与えることが知られている。
【0009】
従って、基本次数である電気角6次及び電気角12次の両成分のトルクリップルを低減させることができれば、低騒音低振動モータ、EPS用低騒音低振動モータ、低コスト低騒音低振動モータ、低コストEPS用低騒音低振動モータ等が実現できることになる。
【0010】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、電気角6次及び電気角12次の両成分のトルクリップルを低減させることができるブラシレスモータ及びブラシレスモータの駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、磁極がP(2以上の整数)個周方向に交互に配置されたロータと、前記ロータの外周に、2つの異なるm相巻線が巻回されたs個のスロットを有するステータとを備えたブラシレスモータであって、前記ステータは、2つの異なるm相巻線を電気角で、隣接する前記スロット間の位相差角度((360×P)/(s×2))のスロットピッチで巻回して前記位相差角度で通電するとともに、前記ステータと前記ロータの間が、電気角で前記スロット間の位相差角度の2倍の磁気スキューとなるように設定した。
【0012】
請求項1記載の発明によれば、ステータに、巻回される2つの異なるm相巻線を電気角で、隣接するスロット間の位相差角度((360×P)/(s×2))のスロットピッチで巻回して前記位相差角度で通電(給電)するようにした。このようにすると、ブラシレスモータに発生するトルクリップルの基本電気角6次成分の奇数倍成分を消失させることができる。また、ステータとロータの間が、電気角で前記スロット間の位相差角度の2倍の磁気スキューとなるように設定したことにより、ブラシレスモータに発生するトルクリップルの基本電気角6次成分の偶数倍成分(電気角12次成分及びこの倍数成分)を消失させることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のブラシレスモータにおいて、前記m相巻線は、3相巻線であり、前記位相差角度は30度である。
請求項2記載の発明によれば、m相巻線は、3相巻線であり、前記位相差角度((360×P)/(s×2))は30度であり、前記磁気スキューは60度となる。言い換えると、この構成では、位相差角度(360×P)/(s×2)=30であることからP(磁極の数)/s(スロットの数)=1/6に限定された構成で、請求項1に記載の発明の効果を得ることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、磁極が周方向に交互に配置されたロータと、前記ロータの外周に、2つの異なる3相巻線が巻回されたステータとを備えたブラシレスモータであって、前記ステータは、2つの異なる3相巻線を電気角で30度のスロットピッチで巻回するとともに、前記ステータと前記ロータの間が、電気角60度の磁気スキューとなるように設定した。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、ステータに、巻回される2つの異なる3相巻線を電気角で30度のスロットピッチで巻回した。そして、2つの異なる3相巻線を電気角30度の位相差をもって通電(給電)すれば、ブラシレスモータに発生する電気角6次成分のトルクリップルを消失させることができる。また、ステータとロータの間が、電気角60度の磁気スキューとなるように設定したことにより、ブラシレスモータに発生する電気角12次成分のトルクリップルを消失させることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のブラシレスモータにおいて、前記ステータは、径方向に延び周方向等ピッチに複数設けられるティースを有するコアと前記ティースに装着された3相巻線を有し、前記ステータの巻線は、前記ティース間のスロットを軸方向に貫通するとともに径方向に積層配置される複数の導体部からなり、各相毎に径方向に隣接する導体部間において前記コア側の軸方向外側端部で溶着により電気的に接続され周方向に連なり構成されるSC巻線であり、同一相のSC巻線は、2つあり、各相の受電端子はそれぞれ同一の径方向積層位置にある導体部から軸線方向に引き出した。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、軸方向に小型でトルクリップルの少ないモータを提供することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のブラシレスモータにおいて、前記ステータは、第1導体部と第4導体部を有し前記第1導体部と前記第4導体部が基端部で連結された波巻用の外側導体と、第2導体部と第3導体部を有し前記第2導体部と前記第3導体部が基端部で連結され前記波巻用の外側導体に内包される重ね巻用の内側導体とからなるセグメントを有し、前記第1導体部と前記第2導体部、及び、前記第3導体部と前記第4導体部をそれぞれの組とし、前記各組を互いに隣接する同相のステータコアに形成した各スロットにそれぞれ挿入し、前記各スロットに、前記第1導体部から第4導体部を径方向に内側から第1導体部、第2導体部、第3導体部、第4導体部の順で配置し、隣接する一方のスロットの第1導体部の先端部と隣接する他方のスロットの第2導体部の先端部とを接続するとともに、隣接する一方のスロットの第3導体部の先端部と隣接する他方のスロットの第4導体部の先端部とを接続することによって、SC巻線よりなる3相Y結線巻線が2つ1スロットピッチずれて巻回されたステータである。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、ステータに巻回される2つの異なる3相巻線は、それぞれSC巻線よりなる3相Y結線巻線であるため、スロット内の巻線の占有率が向上しブラシレスモータの高出力化を図ることができ、しかも、ブラシレスモータに発生する電気角6次成分と電気角12次成分のトルクリップルを消失させることができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のブラシレスモータにおいて、前記ロータは、前記ステータに対して、電気角60度の磁気スキューとなるように設定した。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、ロータを、ステータに対して電気角60度の磁気スキューさせることにより、ブラシレスモータに発生する電気角12次成分のトルクリップルを消失させることができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のブラシレスモータにおいて、前記ロータは、軸線方向に複数等分割に区分され、その区分毎に、極対数が5となるようにマグネットが周方向に等角度間隔で10個設けられたリングマグネットが配置されたリングマグネット型のロータである。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、リングマグネット型のロータを、ステータに対して電気角60度の磁気スキューさせることにより、ブラシレスモータに発生する電気角12次成分のトルクリップルを消失させることができる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載のブラシレスモータにおいて、前記ロータは、極対数が5となるようにマグネットが周方向に5個設けられたコンシクエントポール型のロータである。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、コンシクエントポール型のロータを、ステータに対して電気角60度の磁気スキューさせることにより、ブラシレスモータに発生する電気角12次成分のトルクリップルを消失させることができる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のブラシレスモータにおいて、前記コンシクエントポール型のロータは、軸線方向に複数分割して形成した分割ロータコアからなるロータコアを備えた。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、コンシクエントポール型のロータを、ステータに対して電気角60度の磁気スキューさせることにより、ブラシレスモータに発生する電気角12次成分のトルクリップルは消失させることができる。
【0027】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のブラシレスモータにおいて、前記ステータは、前記ロータに対して、電気角60度の磁気スキューとなるように設定した。
【0028】
請求項10に記載の発明によれば、ステータを、ロータに対して、電気角60度の磁気スキューさせることにより、ブラシレスモータに発生する電気角12次成分のトルクリップルは消失させることができる。
【0029】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載のブラシレスモータにおいて、前記ブラシレスモータは、回転軸が電動パワーステアリング装置の減速機に連結され、該減速機を介してステアリングシャフトを駆動するモータである。
【0030】
請求項11に記載の発明によれば、電動パワーステアリング装置に用いられるブラシレスモータは、電気角6次成分及び電気角12次成分のトルクリップルが消失でき、低騒音化、低振動化を図ることがでる。
【0031】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載したブラシレスモータの駆動方法であって、前記ステータに巻回した2つの異なる3相巻線に対して30度位相差をもって通電した。
【0032】
請求項12に記載の発明によれば、2つの異なる3相巻線を電気角30度の位相差をもって通電(給電)することにより、ブラシレスモータに発生する電気角6次成分のトルクリップルを消失させることができる。また、例えばステータとロータの間が、電気角60度の磁気スキューとなるように設定することにより、ブラシレスモータに発生する電気角12次成分のトルクリップルを消失させることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、電気角6次及び電気角12次の両成分のトルクリップルを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態のブラシレスモータの断面図。
【図2】(a)は第1実施形態のステータコアの正面図、(b)は図2(a)のa−a線断面図。
【図3】第1実施形態の3相巻線の一部展開図。
【図4】同じく3相巻線の一部展開図。
【図5】スロット挿入前のセグメントの斜視図。
【図6】スロット挿入後のセグメントの斜視図。
【図7】第1系統のU1相の巻線の一部展開図。
【図8】同じく第1系統のU1相の巻線の一部展開図。
【図9】セグメントの各導体部がスロットに挿入された状態を示す断面図。
【図10】第1系統3相巻線の電気回路図。
【図11】第2系統のU2相の巻線の一部展開図。
【図12】同じく第2系統のU2相の巻線の一部展開図。
【図13】第2系統3相巻線の電気回路図。
【図14】第1実施形態のコンシクエントポーロ型のロータコアの斜視図。
【図15】第2実施形態のロータの正面図。
【図16】第3実施形態のロータの正面図。
【図17】(a)は第4実施形態のステータコアの正面図、(b)は図17(a)のa−a線断面図。
【図18】第4実施形態のロータを示す正面図。
【図19】同じく第4実施形態の別のロータを示す正面図。
【図20】同じく第4実施形態の別のロータコアの斜視図。
【図21】ロータの別例を示すコンシクエント型のロータコアの斜視図。
【図22】ステータとロータとを説明するための軸方向から見た正面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1実施形態)
以下、本発明をブラシレスモータに具体化した第1実施形態を図1〜図14に従って説明する。
【0036】
図1に示すように、ブラシレスモータ1のモータケース2は、有底筒状に形成されたヨーク3と、該ヨーク3のフロント側の開口部を閉塞するフロントエンドプレート4とを有している。また、ヨーク3のリア側の外側には、収容ボックス5が取着されている。
【0037】
ヨーク3の内周面には電機子としてのステータ6が固定されている。ステータ6は、図2に示すように、ヨーク3の内側面に固設したステータコア7を設けている。ステータコア7は、図2(a)に示すように、円筒部8と該円筒部8から径方向内側に延びて周方向に複数設けられたティース9とを有する。ステータコア7は、図2(b)に示すように、複数のコア片7aが積層されて1つのステータコア7を形成している。
【0038】
本実施形態では、ティース9は、60個形成されている。従って、ティース9間に形成されるスロットSは60個形成され、その60個のティース9は、円筒部8の中心軸線から見て機械角で6度の等角度の間隔に配置形成されている。尚、説明の便宜上、個々のスロットSについて個々に特定する必要があるとき、60個のスロットSの周方向に連続した番号であるスロット番号「1」〜「60」を付けて説明する。
【0039】
図3及び図4に示すように、各スロットSには、U相、V相、W相からなる3相巻線が巻回されている。図3及び図4では、周方向にスロットSのスロット番号「1」〜「60」を付している。
【0040】
各スロットSには、軸線方向の一側(リア側)から他側(フロント側)に向かって、図5に示すセグメントSGが挿入される。そして、各セグメントSG同士を所定の規則で接続することによって、3相Y結線のSC巻線を形成している。
【0041】
図5に示すように、スロットSに挿入する前のセグメントSGは、波巻用の外側導体OSと重ね巻用の内側導体ISを有している。外側導体OSと内側導体ISは、表面が絶縁材で被膜され、外側導体OSと内側導体ISが電気的に導通しないようになっている。
【0042】
外側導体OSは、第1導体部OSiと第4導体部OSoを有し、第1導体部OSiの基端部と第4導体部OSoの基端部とが連結導体部OScにて連結されている。第1導体部OSiと第4導体部OSoは、互いに連結導体部OScから離間する方向に拡開するように屈曲形成させた後、互いに平行となるように屈曲形成されている。
【0043】
内側導体ISは、外側導体OSの内側に囲まれて配置される。内側導体ISは、第2導体部ISiと第3導体部ISoを有し、第2導体部ISiの基端部と第3導体部ISoの基端部とが連結導体部IScにて連結されている。第2導体部ISiは、連結導体部IScから外側導体OSの第1導体部OSiに沿って屈曲形成されている。第3導体部ISoは、連結導体部IScから外側導体OSの第4導体部OSoに沿って屈曲形成されている。
【0044】
そして、外側導体OSの内側に内側導体ISを配置することによって、スロットSに挿入する前のセグメントSGが形成される。このように形成されたセグメントSGついて、外側及び内側導体OS,ISの第1及び第2導体部OSi,ISiは同一のスロットSに挿入され、外側及び内側導体OS,ISの第4及び第3導体部OSo,ISoは前記第1及び第2導体部OSi,ISiとは異なる隣接する同相のスロットSに挿入される。
【0045】
例えば、外側及び内側導体OS,ISについて、第1及び第2導体部OSi,ISiをスロット番号「60」のスロットSに挿入したとき、第4及び第3導体部OSo,ISoをスロット番号「6」のスロットSに挿入するようになっている。つまり、1つのセグメントSGの第1及び第2導体部OSi,ISiと第4及び第3導体部OSo,ISoは、6スロットピッチの間隔をおいて挿入されることになる。
【0046】
そして、第4及び第3導体部OSo,ISoを挿入したスロット番号「6」のスロットSには、隣のセグメントSGの外側及び内側導体OS,ISの第1及び第2導体部OSi,ISiが挿入される。さらに、その隣のセグメントSGは、自身の外側及び内側導体OS,ISの第4及び第3導体部OSo,ISoをスロットS番号「12」のスロットSに挿入させる。
【0047】
順次同様な方法で、セグメントSGをスロットSに挿入することによって、10個目のセグメントSGの外側及び内側導体OS,ISの第1及び第2導体部OSi,ISiが、スロット番号「60」のスロットSに挿入されて1周する。周回した10個のセグメントSGを互いに接続することによって1相分の巻線が形成される。
【0048】
従って、スロットSが60個あり6相分の巻線が形成されるため、U相、V相、W相の3相巻線が2つ(第1系統3相巻線と第2系統3相巻線)形成されることになる。ここで、第1系統3相巻線と第2系統3相巻線とをそれぞれ特定して説明するときは、第1系統3相巻線の各相をU1相、V1相、W1相とし、第2系統3相巻線の各相をU2相、V2相、W2相という。
【0049】
第1系統3相巻線と第2系統3相巻線は、それぞれ独立した3相交流電源が供給されている。本実施形態では、第1系統3相巻線に通電(給電)される3相交流と第2系統3相巻線に給電される3相交流は、電気角30度の位相差を有している。
【0050】
本実施形態では、第1系統3相巻線と第2系統3相巻線の各相の巻線が使用するスロットSが、表1で示すように割り当てられている。
【0051】
【表1】

表1から明らかなように、第1系統3相巻線のU1相は、スロット番号が「60」、「6」、「12」、「18」、「24」、「30」、「36」、「42」、「48」、「54」のスロットSに巻線が巻回(セグメントSGが挿入)されることがわかる。
【0052】
そして、第1系統3相巻線のV1相は、第1系統3相巻線のU1相の巻線に対して、2スロットピッチずれた各スロットSに巻線が巻回(セグメントSGが挿入)されることがわかる。また、第1系統3相巻線のW1相は、第1系統3相巻線のU1相の巻線に対して、4スロットピッチずれた各スロットSに巻線が巻回(セグメントSGが挿入)されることがわかる。
【0053】
ちなみに、第2系統3相巻線のU2相は、第1系統3相巻線のU1相の巻線に対して、1スロットピッチずれて、スロット番号が「1」、「7」、「13」、「19」、「25」、「31」、「37」、「43」、「49」、「55」のスロットSに巻線が巻回(セグメントSGが挿入)されることがわかる。
【0054】
同様に、第2系統3相巻線のV2相は、第2系統3相巻線のU2相の巻線に対して、2スロットピッチずれた各スロットSに巻線が巻回(セグメントSGが挿入)されることがわかる。また、第2系統3相巻線のW2相は、第2系統3相巻線のU2相の巻線に対して、4スロットピッチずれた各スロットSに巻線が巻回(セグメントSGが挿入)されることがわかる。
【0055】
そして、上記の条件で60個全てのスロットSに、図5に示す波巻用の外側導体OSと重ね巻用の内側導体ISからなるセグメントSGを挿通する。続いて、全てのスロットSのセグメントSGについて、図6に示すように、外側導体OS及び内側導体ISを折り曲げ形成して各相の巻線を形成する。
【0056】
波巻用の外側導体OSの折り曲げは、スロットSから突出した部分の第1導体部OSi及び第4導体部OSoを互いに離間する方向に折り曲げる。そして、外側導体OSの第1及び第4導体部OSi,OSoについて、スロットSから突出し互いに離間する方向に折り曲げられた部分を第1及び第4溶接部OWi,OWoという。
【0057】
一方、重ね巻用の内側導体ISの折り曲げは、スロットSから突出した部分の第2導体部ISi及び第3導体部ISoを互いに近づく方向に折り曲げる。そして、内側導体ISの第2及び第3導体部ISi,ISoについて、スロットSから突出し互いに近づく方向に折り曲げられた部分を第2及び第3溶接部IWi,IWoという。
(第1系統3相巻線)
次に、第1系統3相巻線について説明する。
【0058】
ここで、10個のセグメントSGを使って、第1系統3相巻線の内のU1相の巻線の巻線方法について、図7及び図8に従って説明する。
第1系統のU1相の巻線に使用されるスロットSは、表1に示すスロット番号のスロットSが割り当てられ、10個のセグメントSG1〜SG10が使用される。
【0059】
ここで、1個目のセグメントSG1はスロット番号「60」及び「6」のスロットSに挿入される。2個目のセグメントSG2はスロット番号「6」及び「12」のスロットSに挿入される。3個目のセグメントSG3はスロット番号「12」及び「18」のスロットSに挿入される。4個目のセグメントSG4はスロット番号「18」及び「24」のスロットSに挿入される。5個目のセグメントSG5はスロット番号「24」及び「30」のスロットSに挿入される。
【0060】
さらに、6個目のセグメントSG6はスロット番号「30」及び「36」のスロットSに挿入される。7個目のセグメントSG7はスロット番号「36」及び「42」のスロットSに挿入される。8個目のセグメントSG8はスロット番号「42」及び「48」のスロットSに挿入される。9個目のセグメントSG9はスロット番号「48」及び「54」のスロットSに挿入される。10個目のセグメントSG10はスロット番号「54」及び「60」のスロットSに挿入される。
【0061】
なお、セグメントSG1〜SG10を各スロットSに挿入する際、後続するセグメントが所定のスロットSに挿入し易いように、外側導体OSの連結導体部OSc及び内側導体ISの連結導体部IScを斜めに捻るように折り曲げ形成して挿入している。
【0062】
今、スロット番号「60」及び「6」には、U1相用の1個目のセグメントSG1が挿入されている。これによって、スロット番号「60」のスロットSには、内側導体ISの第2導体部ISiと外側導体OSの第1導体部OSiが配置され、スロット番号「6」のスロットSには、内側導体ISの第3導体部ISoと外側導体OSの第4導体部OSoが配置されている。
【0063】
スロット番号「6」及び「12」には、U1相用の2個目のセグメントSG2が挿入されている。これによって、スロット番号「6」のスロットSには、内側導体ISの第2導体部ISiと外側導体OSの第1導体部OSiが配置され、スロット番号「12」のスロットSには、内側導体ISの第3導体部ISoと外側導体OSの第4導体部OSoが配置されている。
【0064】
このとき、スロット番号「6」のスロットSには、1個目のセグメントSG1の内側及び外側導体IS,OSの第3及び第4導体部ISo,OSoが配置され、2個目のセグメントSG2の外側及び内側導体OS,ISの第1及び第2導体部OSi,ISiが配置される。
【0065】
つまり、図9に示すように、スロットSに、径方向に内側から第1導体部OSi、第2導体部ISi、第3導体部ISo、第4導体部OSoの順に、4層構造となって配置されている。そして、1個目のセグメントSG1の外側導体OS(スロット番号「6」を貫挿した)の第4溶接部OWoと、2個目のセグメントSG2の内側導体IS(スロット番号「12」を貫挿した)の第3溶接部IWoとを溶接する。
【0066】
なお、スロットSの内周面は、インシュレータ10が形成され、セグメントSGとステータ6のステータコア7との間を電気的に絶縁している。
スロット番号「12」及び「18」には、U1相用の3個目のセグメントSG3が挿入されている。これによって、スロット番号「12」のスロットSには、内側導体ISの第2導体部ISiと外側導体OSの第1導体部OSiが配置され、スロット番号「18」のスロットSには、内側導体ISの第3導体部ISoと外側導体OSの第4導体部OSoが配置されている。
【0067】
このとき、スロット番号「12」のスロットSには、2個目のセグメントSG2の内側及び外側導体IS,OSの第3及び第4導体部ISo,OSoが配置され、3個目のセグメントSG3の外側及び内側導体OS,ISの第1及び第2導体部OSi,ISiが配置される。そして、2個目のセグメントSG2の外側導体OS(スロット番号「12」を貫挿した)の第4溶接部OWoと、3個目のセグメントSG3の内側導体IS(スロット番号「18」を貫挿した)oの第3溶接部IWoとを溶接する。
【0068】
さらにまた、2個目のセグメントSG2の内側導体IS(スロット番号「6」を貫挿した)の第2溶接部IWiと、3個目のセグメントSG3の外側導体OS(スロット番号「12」を貫挿した)の第4溶接部OWoとを溶接する。以後、同様な、4〜10個のセグメントSG4〜SG10について、同様な工程を繰り返すことによって、図7及び図8に示すU1相の巻線が形成される。
【0069】
第1系統3相巻線の他のV1相,W1相の巻線もU1相の巻線と同様な方法で巻回される。また、第1系統3相巻線は3相Y結線で構成されている。従って、各相の巻線について、中性点N1(図10参照)と接続する中性点端子T0u,T0v,T0w及び電力を受電する電力受電端子T1u,T1v,T1wを決めている。
(中性点端子及び電力受電端子の設定)
図7、図3に示すように、本実施形態では、U1相の巻線について、1個目のセグメントSG1の外側導体OS及び内側導体ISの連結導体部OSc,IScを分離する。
【0070】
ここで、外側導体OSの連結導体部OScの分離端であって同外側導体OSの第4導体部OSoに繋がる方と、内側導体ISの連結導体部IScの分離端であって同内側導体ISの第2導体部ISiに繋がる方とを接続する。
【0071】
そして、外側導体OSの連結導体部OScの分離端であって同外側導体OSの第1導体部OSiに繋がる方を、U1相の中性点端子T0uとしている。一方、内側導体ISの連結導体部IScの分離端であって同内側導体ISの第3導体部ISoに繋がる方を、U1相の電力受電端子T1uとしている。
【0072】
つまり、中性点端子T0uは、スロット番号「60」のスロットS内の径方向において最も内側に配置された外側導体OSの第1導体部OSiから引き出された端子である。また、電力受電端子T1uは、スロット番号「6」のスロットS内の径方向において3番目に外側の位置に配置された内側導体ISの第3導体部ISoから引き出された端子である。
【0073】
従って、電力受電端子T1uは、中性点端子T0uよりスロットS内の径方向において外側に配置される。
また、図3に示すように、V1相の巻線について、スロット番号「56」及び「2」に挿入されたセグメントSGの外側導体OS及び内側導体ISの連結導体部OSc,IScを分離する。
【0074】
同様に、外側導体OSの連結導体部OScの分離端であって同外側導体OSの第4導体部OSoに繋がる方と、内側導体ISの連結導体部IScの分離端であって同内側導体ISの第2導体部ISiに繋がる方とを接続する。
【0075】
そして、外側導体OSの連結導体部OScの分離端であって同外側導体OSの第1導体部OSiに繋がる方を、V1相の中性点端子T0vとしている。一方、内側導体ISの連結導体部IScの分離端であって同内側導体ISの第3導体部ISoに繋がる方を、V1相の電力受電端子T1vとしている。
【0076】
つまり、中性点端子T0vは、スロット番号「56」のスロットS内の径方向において最も内側に配置された外側導体OSの第1導体部OSiから引き出された端子である。また、電力受電端子T1vは、スロット番号「2」のスロットS内の径方向において3番目に外側の位置に配置された内側導体ISの第3導体部ISoから引き出された端子である。
【0077】
従って、電力受電端子T1vは、中性点端子T0vよりスロットS内の径方向において外側に配置される。
また、図3に示すように、W1相の巻線について、スロット番号「52」及び「58」に挿入されたセグメントSGの外側導体OS及び内側導体ISの連結導体部OSc,IScを分離する。
【0078】
同様に、外側導体OSの連結導体部OScの分離端であって同外側導体OSの第4導体部OSoに繋がる方と、内側導体ISの連結導体部IScの分離端であって同内側導体ISの第2導体部ISiに繋がる方とを接続する。
【0079】
そして、外側導体OSの連結導体部OScの分離端であって同外側導体OSの第1導体部OSiに繋がる方を、W1相の中性点端子T0wとしている。一方、内側導体ISの連結導体部IScの分離端であって同内側導体ISの第3導体部ISoに繋がる方を、W1相の電力受電端子T1wとしている。
【0080】
つまり、中性点端子T0wは、スロット番号「52」のスロットS内の径方向において最も内側に配置された外側導体OSの第1導体部OSiから引き出された端子である。また、電力受電端子T1wは、スロット番号「58」のスロットS内の径方向において3番目に外側の位置に配置された内側導体ISの第3導体部ISoから引き出された端子である。
【0081】
従って、電力受電端子T1wは、中性点端子T0wよりスロットS内の径方向において外側に配置される。
尚、上記中性点端子T0u,T0v,T0w及び電力受電端子T1u,T1v,T1wは、上記のようにセグメントSGを加工して形成してもよいし、該当する部分のみに専用の(上記セグメントSGとは異なる)セグメントを挿入して設けてもよい。
【0082】
そして、各相の中性点端子T0u,T0v,T0wを互いに中性線L1nにて接続し、各相の電力受電端子T1u,T1v,T1wを受電端とすれば、第1系統の3相Y結線の巻線が形成され、図10に示すような電気回路が形成される。なお、図中、「L1」は、電力受電端子T1u,T1v,T1wからそれぞれの巻線が周回し、それぞれ外側導体OSの連結導体部OScの分離端と内側導体ISの連結導体部IScの分離端との接続点までのインダクタンスを示す。また。「L2」は、それぞれその外側導体OSの連結導体部OScの分離端と内側導体ISの連結導体部IScの分離端との接続点から、それぞれの各中性点端子T0u,T0v,T0wまでのインダクタンスを示す。
(第2系統3相巻線)
次に、第2系統3相巻線について説明する。
【0083】
第2系統3相巻線は、第1系統3相巻線と同様に3相Y結線である。そして、第2系統の3相各巻線は、第1系統の対応する3相各巻線と1スロットピッチずれて各スロットSにそれぞれ巻回される。
【0084】
従って、図11、図12に示すように、第2系統のU2相巻線は、第1系統のU1相巻線に対して、1スロットピッチずれて各スロットSにそれぞれ巻回される。
第2系統のU2相の巻線に使用されるスロットSは、表1に示すスロット番号のスロットSが割り当てられ、10個のセグメントSG1a〜SG10aが使用される。
【0085】
ここで、1個目のセグメントSG1aはスロット番号「1」及び「7」のスロットSに挿入される。2個目のセグメントSG2aはスロット番号「7」及び「13」のスロットSに挿入される。3個目のセグメントSG3aはスロット番号「13」及び「19」のスロットSに挿入される。4個目のセグメントSG4aはスロット番号「19」及び「25」のスロットSに挿入される。5個目のセグメントSG5aはスロット番号「25」及び「31」のスロットSに挿入される。
【0086】
さらに、6個目のセグメントSG6aはスロット番号「31」及び「37」のスロットSに挿入される。7個目のセグメントSG7aはスロット番号「37」及び「43」のスロットSに挿入される。8個目のセグメントSG8aはスロット番号「43」及び「49」のスロットSに挿入される。9個目のセグメントSG9aはスロット番号「49」及び「55」のスロットSに挿入される。10個目のセグメントSG10aはスロット番号「55」及び「1」のスロットSに挿入される。
【0087】
そして、第1系統のU1相巻線と同様に、各セグメントSG1a〜SG10aが結線されて第2系統のU2相の巻線が形成される。また、第2系統3相巻線の他のV2相,W2相の巻線もU2相の巻線と同様な方法で巻回される。
【0088】
さらに、第2系統3相巻線も同様に3相Y結線で構成されている。従って、各相の巻線について中性点N2(図13参照)と接続する中性点端子T0ua,T0va,T0wa及び電力を受電する電力受電端子T2u,T2v,T2wを決めている。
(中性点端子及び電力受電端子の設定)
図3、図4に示すように、本実施形態では、U2相の巻線について、中性点端子T0ua及び電力受電端子T2uは、U1相の中性点端子T0u及び電力受電端子T1uに対して周方向において180度相対向する位置に設けられる。従って、U2相の巻線について、5個目のセグメントSG5aの外側導体OS及び内側導体ISの連結導体部OSc,IScを分離する。
【0089】
ここで、U1相巻線と同様に、図12に示すように、外側導体OSの連結導体部OScの分離端であって同外側導体OSの第4導体部OSoに繋がる方と、内側導体ISの連結導体部IScの分離端であって同内側導体ISの第2導体部ISiに繋がる方とを接続する。
【0090】
そして、外側導体OSの連結導体部OScの分離端であって同外側導体OSの第1導体部OSiに繋がる方を、U2相の中性点端子T0uaとしている。一方、内側導体ISの連結導体部IScの分離端であって同内側導体ISの第3導体部ISoに繋がる方を、U2相の電力受電端子T2uとしている。
【0091】
つまり、中性点端子T0uaは、スロット番号「25」のスロットS内の径方向において最も内側に配置された外側導体OSの第1導体部OSiから引き出された端子である。また、電力受電端子T2uは、スロット番号「31」のスロットS内の径方向において3番目に外側に配置された内側導体ISの第3導体部ISoから引き出された端子である。
【0092】
従って、電力受電端子T2uは、中性点端子T0uaよりもスロットS内の径方向において外側に配置される。そして、U2相の電力受電端子T2u及び中性点端子T0uaは、それぞれU1相の電力受電端子T1u及び中性点端子T0uに対して、ステータコア7の周方向に180度相対向する位置に配置される。
【0093】
次に、V2相の巻線について、中性点端子T0va及び電力受電端子T2vは、V1相の中性点端子T0v及び電力受電端子T1vに対して周方向において242度相対向する位置に設けられる。従って、図3、図4に示すように、V2相の巻線について、スロット番号「33」及び「39」に挿入されたセグメントSGの外側導体OS及び内側導体ISの連結導体部OSc,IScを分離する。
【0094】
同様に、外側導体OSの連結導体部OScの分離端であって同外側導体OSの第4導体部OSoに繋がる方と、内側導体ISの連結導体部IScの分離端であって同内側導体ISの第2導体部ISiに繋がる方とを接続する。
【0095】
そして、外側導体OSの連結導体部OScの分離端であって同外側導体OSの第1導体部OSiに繋がる方を、V2相の中性点端子T0vaとしている。一方、内側導体ISの連結導体部IScの分離端であって同内側導体ISの第3導体部ISoに繋がる方を、V2相の電力受電端子T2vとしている。
【0096】
つまり、中性点端子T0vaは、スロット番号「33」のスロットS内の径方向において最も内側に配置された外側導体OSの第1導体部OSiから引き出された端子である。また、電力受電端子T2vは、スロット番号「39」のスロットS内の径方向において3番目に外側の位置に配置された内側導体ISの第3導体部ISoから引き出された端子である。従って、電力受電端子T2vは、中性点端子T0vaよりスロットS内の径方向において外側に配置される。
【0097】
次に、W2相の巻線について、中性点端子T0wa及び電力受電端子T2wは、W1相の中性点端子T0w及び電力受電端子T1wに対して周方向において138度相対向する位置に設けられる。従って、図3、図4に示すように、W2相の巻線について、スロット番号「29」及び「35」に挿入されたセグメントSGの外側導体OS及び内側導体ISの連結導体部OSc,IScを分離する。
【0098】
同様に、外側導体OSの連結導体部OScの分離端であって同外側導体OSの第4導体部OSoに繋がる方と、内側導体ISの連結導体部IScの分離端であって同内側導体ISの第2導体部ISiに繋がる方とを接続する。
【0099】
そして、外側導体OSの連結導体部OScの分離端であって同外側導体OSの第1導体部OSiに繋がる方を、W2相の中性点端子T0waとしている。一方、内側導体ISの連結導体部IScの分離端であって同内側導体ISの第3導体部ISoに繋がる方を、W2相の電力受電端子T2wとしている。
【0100】
つまり、中性点端子T0waは、スロット番号「29」のスロットS内の径方向において最も内側に配置された外側導体OSの第1導体部OSiから引き出された端子である。また、電力受電端子T2wは、スロット番号「35」のスロットS内の径方向において3番目に外側の位置に配置された内側導体ISの第3導体部ISoから引き出された端子である。従って、電力受電端子T2wは、中性点端子T0waよりスロットS内の径方向において外側に配置される。
【0101】
尚、上記中性点端子T0ua,T0va,T0wa及び電力受電端子T2u,T2v,T2wは、上記のようにセグメントSGを加工して形成してもよいし、該当する部分のみに専用の(上記セグメントSGとは異なる)セグメントを挿入して設けてもよい。
【0102】
そして、各相の中性点端子T0ua,T0va,T0waを互いに中性線L2nにて接続し、各相の電力受電端子T2u,T2v,T2wを引き出せば、第2系統の3相Y結線の巻線が形成され、図13に示すような電気回路が形成される。なお、図中、「L1」は、電力受電端子T2u,T2v,T2wからそれぞれの巻線が周回し、それぞれ外側導体OSの連結導体部OScの分離端と内側導体ISの連結導体部IScの分離端との接続点までのインダクタンスを示す。また。「L2」は、それぞれその外側導体OSの連結導体部OScの分離端と内側導体ISの連結導体部IScの分離端との接続点から、それぞれの各中性点端子T0ua,T0va,T0waまでのインダクタンスを示す。
【0103】
上記のように第1系統3相巻線と第2系統3相巻線が巻回されたステータ6の内側には、図1に示すように、ロータ11が配設されている。ロータ11は回転軸12を有し、該回転軸12はヨーク3の底部及びフロントエンドプレート4に設けられた軸受け14,15により回転可能に支持されている。
【0104】
また、ロータ11の回転軸12には、図14に示すように、コンシクエントポール型構造のロータコア16が外嵌されている。ロータコア16は、軸方向に2つ等分割され、その分割された分割ロータコア16a,16bについて、隣り合う分割ロータコア16a,16b間をそれぞれ回転軸12の中心軸線を回転中心に予め定めたずらし角度θ1だけ一方向にずらしている。
【0105】
各分割ロータコア16a,16bの外周面には、それぞれステータ6、詳しくはティース9の径方向内側端部と相対向するように5個のマグネットMGとロータコア16に形成された5個の突出磁極部18が周方向に等角度ピッチで交互に設けられている。
【0106】
5個のマグネットMGは、ロータコア16に対して、径方向においてN極が内側、S極が外側に配置されて5個の磁極部18がN極となるようになっている。従って、図14に示すように、N極とS極が周方向に交互に配置され、ロータ11の極対数が5個(磁極の数(P)は、10個)に設定されている。
【0107】
従って、ロータ11の極対数が5個であって、60個のティース9を備えていることから、隣り合うティース9とティース9とのピッチは、機械角で6度であるため電気角に換算すると30度となる。
【0108】
図14に示すように、分割ロータコア16a,16b間をそれぞれ回転軸12の中心軸線を回転中心に予め定めたずらし角度θ1だけ一方向にずらし、全体としステータ6の磁極(ティース9)との間で、電気角60度の磁気スキューをもたせている。この電気角60度の磁気スキューをもたせることによって、電気角12次成分のトルクリップル波が低減する。
【0109】
ここで、隣り合う分割ロータコア16a,16b間をずらすためのずらし角度θ1(機械角)は、以下の式で求められる。
θ1×分割数=360(度)/(12(次)×極対数)
そして、極対数が5であるため、
θ1×分割数=360/60=6度
従って、
θ1=6度/分割数
ここで、図14に示すロータコア16は、分割ロータコア16a,16bの数が2個であるため、ずらし角度(機械角)θ1は3度となる。
【0110】
これによってロータコア16の磁極とステータ6の磁極(ティース9)との間で、電気角60度の磁気スキューが保たれている。
ヨーク3のリア側外側に固設した収容ボックス5内には、駆動装置20が収納されている。駆動装置20の回路基板21は、ロータ11の回転制御するための回転センサ22、ECU(電子制御ユニット)23、第1スイッチングトランジスタQ1u,Q1v,Q1w及び第2スイッチングトランジスタQ2u,Q2v,Q2w等の各種の回路素子が実装されている。
【0111】
回転センサ22は、ヨーク3の底部から外側に軸線方向に突出した回転軸12に相対向するように回路基板21に実装されている。回転センサ22は、本実施形態ではホールICからなり、回転軸12の軸端面に固着した回転センサ22と一体回転する検出用マグネット22aの回転角を検出する。
【0112】
ECU(電子制御ユニット)23は、マイクロコンピュータを有している。ECU23は、回転センサ22からの検出信号に基づいて、その時々のブラシレスモータ1の回転角度、回転速度等を検出する。そして、ECU23は、第1系統3相巻線及び第2系統3相巻線の各相へ電力供給タイミング演算する。つまり、ECU23は、第1系統3相巻線に給電する3相交流に対して、第2系統3相巻線に給電する3相交流を、電気角30度の位相差をもって給電する。
【0113】
第1スイッチングトランジスタQ1u,Q1v,Q1wは、例えば、パワーMOSトランジスタからなり、ECU23の制御信号に基づいて、オンオフ制御されるようになっている。第1スイッチングトランジスタQ1u,Q1v,Q1wは、所定のタイミングでオンオフ制御されることによって、各引出線L1u,L1v,L1wを介して、第1系統3相巻線の各相に電力をそれぞれ供給制御する。これによって、第1系統3相巻線による回転磁界がステータ6に生成される。
【0114】
第2スイッチングトランジスタQ2u,Q2v,Q2wは、例えば、パワーMOSトランジスタからなり、ECU23の制御信号に基づいて、オンオフ制御されるようになっている。第2スイッチングトランジスタQ2u,Q2v,Q2wは、所定のタイミングでオンオフ制御されることによって、各引出線L2u,L2v,L2wを介して、第2系統3相巻線の各相に電力をそれぞれ供給制御する。これによって、第2系統3相巻線による回転磁界がステータ6に生成される。
【0115】
そして、本実施形態のブラシレスモータ1は、電動パワーステアリング装置(EPS)に用いられるEPS用モータであって、前記ロータ11の回転軸12が、図示しない減速機に連結され、該減速機を介して被駆動部としての図示しないステアリングシャフト等の相手シャフトに連結され、同ステアリングシャフト等の相手シャフトを駆動するものである。
【0116】
ここで、上記実施の形態は、以下の式等を満たすように設定されている。
即ち、ステータ6は、2つの異なるm相(本実施の形態では3相)巻線を電気角で、隣接する前記スロットS間の位相差角度(360×P)/(s×2)(但し、Pは磁極の数で、sはスロットSの数)のスロットピッチで巻回して、前記位相差角度で通電するように設定されている。そして、具体的には、本実施の形態では、位相差角度は、(360×10)/(60×2)=30度とされている。
【0117】
又、ステータ6とロータ11の間が、電気角でスロットS間の位相差角度(30度)の2倍の磁気スキューとなるように、本実施の形態では電気角60度の磁気スキューとなるように設定されている。
【0118】
次に、上記のように構成したブラシレスモータ1の作用を以下に記載する。
今、ECU23は、第1系統3相巻線に3相交流電源を供給制御する。また、ECU23は、第2系統3相巻線に供給する3相交流電源を、第1系統3相巻線に供給する3相交流電源に対して、電気角30度の位相差をもって給電する。
【0119】
この時、ブラシレスモータ1の第1及び第2系統の3相巻線にそれぞれ発生する電気角6次成分のトルクリップル波と電気角12次成分のトルクリップル波が発生する。
この電気角6次成分の両トルクリップル波は、その1周期の波が60度(=360度(電気角)/6次)である。
【0120】
この場合、第1及び第2系統の3相巻線のスロットSがその半分の30度ずれていることから、隣接する第1系統3相巻線と第2系統3相巻線とで発生するトルクリップル波はそれぞれ上下対称となる。従って、両電気角6次成分のリップル波は相殺される。その結果、ブラシレスモータ1に発生する電気角6次成分のトルクリップルは消失する。
【0121】
一方、コンシクエントポール型構造のロータコア16について、軸線方向に2つ等分割し分割ロータコア16a,16bを形成した。そして、ロータコア16の磁極とステータ6の磁極(ティース9)との間で、電気角60度の磁気スキューが保たれているように、分割ロータコア16a,16b間をそれぞれ回転軸12の中心軸線を回転中心に予め定めた機械角3度だけ一方向にずらすようにした。
【0122】
これによって、ブラシレスモータ1に発生する電気角12次成分のトルクリップル波は消失させることができる。
次に、上記実施の形態の特徴的な作用効果を以下に記載する。
【0123】
(1)本実施形態によれば、ステータ6のステータコア7に60個のスロットSを形成し60個のティース9を設けた。そして、60個のティース9に第1系統3相巻線と第2系統3相巻線を巻回した。この時、第2系統の3相各巻線は、第1系統の3相各巻線に対して1スロットピッチずらして各スロットSに巻回した。
【0124】
そして、第1系統3相巻線に給電する3相交流に対して、第2系統3相巻線に給電する3相交流を電気角30度の位相差をもって給電するようにした。
ブラシレスモータ1の第1及び第2系統の3相巻線にそれぞれ発生する電気角6次成分のトルクリップル波は、第1及び第2系統の3相巻線のスロットSがその半分の30度(電気角)ずれていることから相殺される。その結果、ブラシレスモータ1に発生するトルクリップルの基本電気角成分(=m相巻線交流駆動×2=3×2=6)たる電気角6次成分の奇数倍成分(6次成分、ならびに18次成分、30次成分など)を消失させることができる。
【0125】
(2)本実施形態によれば、ロータコア16について、軸方向に2つ等分割し分割ロータコア16a,16bを形成した。そして、ロータコア16の磁極とステータ6の磁極(ティース9)との間で、電気角60度の磁気スキューが保たれているように、分割ロータコア16a,16b間をそれぞれ回転軸12の中心軸線を回転中心に機械角3度だけ一方向にずらすように配置した。
【0126】
従って、ブラシレスモータ1に発生するトルクリップルの基本電気角成分(=m相巻線交流駆動×2=3×2=6)たる電気角6次成分の偶数倍成分(12次成分、ならびに24次成分、36次成分など、即ち12次成分の倍数次成分)は消失させることができる。
【0127】
(3)本実施形態によれば、電気角6次成分のトルクリップル波及び電気角12次成分のトルクリップル波は消失させることから、モータの低騒音化、低振動化を図ることがでる。そして、ブラシレスモータ1をEPS用モータに使用した場合、低騒音、低振動で駆動することから、快適なステアリング操作が可能となる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図15に従って説明する。
【0128】
本実施形態では、第1実施形態のロータがコンシクエントポール型のロータであったが、本実施形態では、リングマグネット型ロータである点が相違する。そのため、説明の便宜上、特徴部分について詳細に説明し共通部分は省略する。
【0129】
図15に示すように、ロータ30は、ロータコア31の外周面31aを、軸方向に3等分割に区分し、3個のリングマグネット32a,32b,32cを形成している。そして、その区分された各リングマグネット32a,32b,32cは、10個のマグネットMGが周方向にそれぞれ取着されている。10個のマグネットMGは、ロータコア31に対して、径方向にN極とS極が配置されるとともに、周方向に隣り合うマグネットMGがそれぞれ異なる磁極となるように取着されている。
【0130】
そして、図15に示すように、このように構成されたリングマグネット32a,32b,32cについて、ロータコア31の磁極とステータ6の磁極(ティース9)との間で、電気角60度の磁気スキューが保たれているように、隣り合うリングマグネット32a,32b,32c間をそれぞれ回転軸12の中心軸線を回転中心に予め定めたずらし角度θ2だけ一方向にずらしている。
【0131】
この場合、N極とS極が周方向に交互に配置され、ロータ11の極対数が5個であって、60個のティース9を備えていることから、隣り合うティース9とティース9とのピッチは、機械角で6度であるため電気角に換算すると30度となる。
【0132】
ちなみに、リングマグネット32a,32b,32cのずらし角度θ2は、ロータコア31の磁極とステータ6の磁極(ティース9)との間で、電気角60度の磁気スキューをもたせるための角度である。
【0133】
ここで、隣り合うリングマグネット32a,32b,32c間をずらすためのずらし角度θ2(機械角)は、以下の式で求められる。
θ2×リングマグネット数=360(度)/(12(次)×極対数)=360/60=6度
そして、極対数が5であるため、
θ2×リングマグネット数=360/60=6度
従って、
θ2=6度/リングマグネット数
ここで、図15に示すロータコア31は、リングマグネット数が3個であるため、角度(機械角)θ2は機械角2度となる。これによって、ロータ30の磁極とステータ6の磁極(ティース9)との間で、電気角60度の磁気スキューが保たれている。
【0134】
この場合でも、電気角6次及び電気角12次の両成分のトルクリップル波を低減させることができる。そして、第1実施形態の(1)(2)(3)で記載する同様な効果を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を図16に従って説明する。
【0135】
本実施形態では、第1及び第2実施形態のロータと相違する点に特徴を有する。そのため、説明の便宜上、特徴部分について詳細に説明し共通部分は省略する。
図16に示すように、ロータ40の回転軸12には、ロータコア41が外嵌されている。同ロータコア41の外周面41aには、前記ステータ6、詳しくはティース9の径方向内側端部と相対向するように複数のマグネットMGが周方向に等角度間隔で設けられている。本実施形態のマグネットMGは10個取着されている。10個のマグネットMGは、ロータコア41に対して、径方向にN極とS極が配置されるとともに、周方向に隣り合うマグネットMGがそれぞれ異なる磁極となるように取着されて、N極とS極が周方向に交互に配置され、ロータ40の極対数が5に設定されている。
【0136】
そして、図16に示すように、ロータコア41の外周面41aに設けた各マグネットMGについて、回転軸12の軸方向に対して所定の角度θ3だけ傾斜(スキュー)させている。
【0137】
この場合、N極とS極が周方向に交互に配置され、ロータ40の極対数が5個であって、60個のティース9を備えていることから、隣り合うティース9とティース9とのピッチは、機械角で6度であるため電気角に換算すると30度となる。
【0138】
ちなみに、各マグネットMGのスキュー角度θ3は、ロータコア41の磁極とステータ6の磁極(ティース9)との間で、電気角60度の磁気スキューをもたせるための角度である。
【0139】
ここで、各マグネットMGのスキュー角度θ3(機械角)は、以下の式で求められる。
θ3=360(度)/(12(次)×極対数)=360/60=6度
ここで、図16に示すロータ40は、極対数が5であることから、角度(機械角)θ3は6度となる。これによって、ロータ40の磁極とステータ6の磁極(ティース9)との間で、電気角60度の磁気スキューが保たれている。
【0140】
この場合でも、電気角6次及び電気角12次の両成分のトルクリップル波を低減させることができる。そして、第1実施形態の(1)(2)(3)で記載する同様な効果を得ることができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を図17〜図20に従って説明する。
【0141】
本実施形態では、第1〜第3実施形態と相違してステータに特徴を有する。そのため、説明の便宜上、特徴部分のステータとそれに付随するロータについて詳細に説明し共通部分は省略する。
【0142】
図17(a)(b)に示すように、図2(a)(b)に示すステータ6について、ステータコア7に形成したティース9を、回転軸12の軸方向に対して所定の角度θ4だけ傾斜(スキュー)させている。
【0143】
一方、これに対するロータは、図18、図19、図20に示すロータ50,60,70を使用する。ちなみに、図18のロータ50は、回転軸12に取着したロータコア51の外周面51aに、10個のマグネットMGをスキューさせないで周方向に等角度間隔で取着である。10個のマグネットMGは、ロータコア51に対して、径方向にN極とS極が配置されるとともに、周方向に隣り合うマグネットMGがそれぞれ異なる磁極となるように取着されている。
【0144】
また、図19のロータ60は、回転軸12にロータコア61の外周面61aを、軸方向に3等分割に区分し、3個のリングマグネット62a,62b,62cを形成したリングマグネットタイプのロータ60である。そして、各リングマグネット62a,62b、62c間において、それぞれ回転軸12の中心軸線を回転中心にずらさないように構成されている。そして、その区分された各リングマグネット62a,62b,62cは、10個のマグネットMGが周方向にそれぞれ取着されている。10個のマグネットMGは、ロータコア61に対して、径方向にN極とS極が配置されるとともに、周方向に隣り合うマグネットMGがそれぞれ異なる磁極となるように取着されている。
【0145】
さらに、図20のロータ70は、回転軸12にロータコア71を、軸方向に分割区分しない、コンシクエントポール型のロータである。
ロータコア71の外周面には、それぞれ前記ステータ6、詳しくはティース9の径方向内側端部と相対向するように5個のマグネットMGと5個の磁極部18が周方向に等角度間隔に交互に設けられている。
【0146】
5個のマグネットMGは、ロータコア71に対して、径方向においてN極が内側、S極が外側に配置されて5個の磁極部18がN極となるようになっている。従って、図20に示すように、N極とS極が周方向に交互に配置され、ロータ11の極対数が5個に設定されている。
【0147】
従って、図18、図19、図20に示す各ロータ50,60,70は、いずれもが、極対数が5であることから、電気角は30度となって、機械角で6度に相当する。その結果、ステータコア7の隣り合うティース9とティース9との間隔は、機械角で6度であるため電気角に換算すると30度になる。
【0148】
ちなみに、ステータコア7に形成したティース9のスキュー角度θ4は、ロータ50,60,70の磁極とステータ6の磁極(ティース9)との間で、電気角60度の磁気スキューをもたせるための角度である。
【0149】
ここで、ティース9のスキュー角度θ4は、以下の式で求められる。
θ4=360(度)/(12(次)×極対数)
ここで、図18〜図20に示す各ロータ50,60,70の極対数は5であることから、θ4は6度となる。
【0150】
この場合でも、電気角6次及び電気角12次の両成分のトルクリップル波を低減させることができる。そして、第1実施形態の(1)(2)(3)で記載する同様な効果を得ることができる。
【0151】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・第1実施形態では、ロータコア16を、軸方向に2つ等分割し分割ロータコア16a,16bを形成した。そして、ロータコア16の磁極とステータ6の磁極(ティース9)との間で、電気角60度の磁気スキューが保たれているように、分割ロータコア16a,16b間をそれぞれ回転軸12の中心軸線を回転中心に予め定めた6度だけ一方向にずらすように配置した。
【0152】
これを、分割しないで、例えば、図20に示すコンシクエントポール型のロータ70を、図21に示すロータ80にして、図16に示すロータ40のように、回転軸12の軸方向に対して、ロータコア81に配置したマグネットMGとロータコア81に形成した突出磁極部18を所定の角度θ3だけ傾斜(スキュー)させて実施してもよい。この場合も、電気角6次及び電気角12次の両成分のトルクリップル波を低減させることができる。
【0153】
ちなみに、これらコンシクエントポール型のロータのモータにおいては、図22に示すように、2×p極(但し、「p」は極対数)の磁極が周方向に配置されたコンシクエントロータ80(70)と、前記磁極当たり複数個設けられる前記ロータ80(70)と径方向に対向して、ティース9(スロットS)の個数「Z(s)」が、「2×p×m×n(個)」(但し、「m」はステータ巻線の相数、「n」は自然数)を有するステータコア7と前記スロットSに巻回された多相の巻線を有するステータ6とからなる。
【0154】
ちなみに、図22に示す場合では、この数式に基づいて、ティース9の個数「Z」は、
Z=2×5(マグネットMGの個数)×3(相数)×2=60個
となる。
【0155】
また、コンシクエントロータ80(70)のロータコア81(71)は、ステータコア7と同様に、鋼板よりなるロータコア片が積層されて形成されている。また、ロータコア81(71)には、径方向位置に、ロータコア片よりも比重及び磁性の小さい空隙90(小磁性軽量部)が形成されている。
【0156】
これにより、磁気がロータコア81(71)内で移動し易いコンシクエントロータ80(70)においては、空隙90(小磁性軽量部)の磁気移動抑制効果による渦電流抑制効果に加えて、ロータコア片が複数積層されることで、さらに渦電流の発生が抑制される。
【0157】
・第1実施形態では、ロータコア16を、2つ分割したが、分割する数は3個、それ以上であってもよい。
・第2実施形態では、リングマグネットの数は3個であったが、これに限定されることはなく、2個、4個又はそれ以上であってもよい。
【0158】
・第4実施形態では、ステータコア7を構成する各コア片7a全体について、回転軸12を回転中心として連続してずらしたが、各コア片7aのティース9を構成する部分だけを、回転軸12を回転中心として連続してずらして実施してもよい。また、複数個のコア片7aを1組にして、組単位でコア片7aのティース9を構成する部分だけを、回転軸12を回転中心として連続してずらすようにして実施してもよい。
【0159】
・第1〜第4実施形態では、SPM(Surface Permanent Magnet Motor)型ブラシレスモータに具体化したが、IPM(Interior Permanent magnet Motor)型ブラシレスモー
タに応用してもよい。
【0160】
・第1〜第4実施形態では、ブラシレスモータ1は、電動パワーステアリング装置(EPS)に用いられるEPS用モータであっが、それ以外のパワーウィンド用モータ、ワイパ駆動用モータ等、その他のモータに応用してもよい。
【0161】
・上記実施の形態では、電力受電端子及び前記中性点端子を前記波巻用の外側導体OSの連結導体部OSc及び前記重ね巻用の内側導体ISの連結導体部IScでそれぞれ分離し、その一方を前記外側導体OSの前記第4導体部OSoに繋がる分離端と前記内側導体ISの前記第2導体部ISiに繋がる分離端とを電気的に接続するとともに、その他方を用いず、前記内側導体ISの分離した他方のものと同形態であって前記第3導体部ISoに繋がって軸方向に延びる引出し部を一体に形成した第1片側セグメントを用い、その引出し部を各相の前記電力受電端子とし、前記外側導体OSの分離した他方のもとの同形態であって前記第1導体部OSiに繋がって軸方向に延びる引出し部を一体に形成した第2片側セグメントを用い、その引出し部を各相の前記中性点端子としてもよい。
【0162】
・上記実施の形態では、SC巻線について、前記波巻用の外部導体OSと前記重ね巻用の内部導体ISを周方向に交互に連結するものとしたが、波巻用の内側導体ISのみを周方向に連結するものであってもよいし、前記重ね巻用の外側導体OSのみを周方向に連結するものであってもよい。
【0163】
・上記実施の形態と同様に、以下の式等を満たすように各値等を変更してもよい。即ち、ステータは、2つの異なるm相巻線を電気角で、隣接するスロットS間の位相差角度(360×P)/(s×2)(但し、Pは磁極の数で、sはスロットSの数)のスロットピッチで巻回して前記位相差角度で通電するとともに、ステータとロータの間が、電気角でスロットS間の位相差角度の2倍の磁気スキューとなるように適宜変更してもよい。
【0164】
例えば、3相巻線(m=3)で、スロットSの数が48個(s=48)で、磁極の数が8個(P=8)の場合、前記位相差角度が30度(電気角60度の磁気スキュー)となるように設定すればよい。
【0165】
又、例えば、4相巻線(m=4)で、スロットSの数が80個(s=80)で、磁極の数が10個(P=10)の場合、前記位相差角度が22.5度(電気角45度の磁気スキュー)となるように設定すればよい。
【符号の説明】
【0166】
1…ブラシレスモータ(モータ)、2…モータケース、3…ヨーク、4…フロントエンドプレート、5…収容ボックス、6…ステータ、7…ステータコア、7a…コア片、8…円筒部、9…ティース、10…インシュレータ、11…ロータ、12…回転軸、14,15…軸受、16…ロータコア、18…磁極部、20…駆動装置、21…回路基板、22…回転センサ、22a…検出用マグネット、23…ECU(電子制御ユニット)、24,25…挿通穴、30,40,50,60,70…ロータ、90…空隙、31,41,51,61,71,81…ロータコア、31a,41a,51a,61a…外周面、32a,32b,32c…リングマグネット、S…スロット、IS…内側導体、MG…マグネット、N1,N2…中性点、OS…外側導体、SG…セグメント、ISc,OSc…連結導体部、ISi…第2導体部(導体部)、ISo…第3導体部(導体部)、IWi…第2溶接部、IWo…第3溶接部、L1n,L2n…中性線、L1u,L1v,L1w,L2u,L2v,L2w…引出線、O1u,O1v,O1w,O2u,O2v,O2w…出力端子、OSi…第1導体部(導体部)、OSo…第4導体部(導体部)、OWi…第1溶接部、OWo…第4溶接部、Q1u,Q1v,Q1w…第1スイッチングトランジスタ、Q2u,Q2v,Q2w…第2スイッチングトランジスタ、SG1〜SG10,SG1a〜SG10a…セグメント、T0u,T0v,T0w,T0ua,T0va,T0wa…中性点端子、T1u,T1v,T1w,T2u,T2v,T2w…電力受電端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁極がP(2以上の整数)個周方向に交互に配置されたロータと、前記ロータの外周に、2つの異なるm相巻線が巻回されたs個のスロットを有するステータとを備えたブラシレスモータであって、
前記ステータは、2つの異なるm相巻線を電気角で、隣接する前記スロット間の位相差角度((360×P)/(s×2))のスロットピッチで巻回して前記位相差角度で通電するとともに、前記ステータと前記ロータの間が、電気角で前記スロット間の位相差角度の2倍の磁気スキューとなるように設定したことを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシレスモータにおいて、
前記m相巻線は、3相巻線であり、前記位相差角度は30度であることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項3】
磁極が周方向に交互に配置されたロータと、前記ロータの外周に、2つの異なる3相巻線が巻回されたステータとを備えたブラシレスモータであって、
前記ステータは、2つの異なる3相巻線を電気角で30度のスロットピッチで巻回するとともに、前記ステータと前記ロータの間が、電気角60度の磁気スキューとなるように設定したことを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項4】
請求項3に記載のブラシレスモータにおいて、
前記ステータは、径方向に延び周方向等ピッチに複数設けられるティースを有するコアと前記ティースに装着された3相巻線を有し、
前記ステータの巻線は、前記ティース間のスロットを軸方向に貫通するとともに径方向に積層配置される複数の導体部からなり、各相毎に径方向に隣接する導体部間において前記コア側の軸方向外側端部で溶着により電気的に接続され周方向に連なり構成されるSC巻線であり、
同一相のSC巻線は、2つあり、各相の受電端子はそれぞれ同一の径方向積層位置にある導体部から軸線方向に引き出したことを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のブラシレスモータにおいて、
前記ステータは、第1導体部と第4導体部を有し前記第1導体部と前記第4導体部が基端部で連結された波巻用の外側導体と、第2導体部と第3導体部を有し前記第2導体部と前記第3導体部が基端部で連結され前記波巻用の外側導体に内包される重ね巻用の内側導体とからなるセグメントを有し、前記第1導体部と前記第2導体部、及び、前記第3導体部と前記第4導体部をそれぞれの組とし、前記各組を互いに隣接する同相のステータコアに形成した各スロットにそれぞれ挿入し、前記各スロットに、前記第1導体部から第4導体部を径方向に内側から第1導体部、第2導体部、第3導体部、第4導体部の順で配置し、
隣接する一方のスロットの第1導体部の先端部と隣接する他方のスロットの第2導体部の先端部とを接続するとともに、隣接する一方のスロットの第3導体部の先端部と隣接する他方のスロットの第4導体部の先端部とを接続することによって、SC巻線よりなる3相Y結線巻線が2つ1スロットピッチずれて巻回されたステータであることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のブラシレスモータにおいて、
前記ロータは、前記ステータに対して、電気角60度の磁気スキューとなるように設定したことを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項7】
請求項6に記載のブラシレスモータにおいて、
前記ロータは、軸線方向に複数等分割に区分され、その区分毎に、極対数が5となるようにマグネットが周方向に等角度間隔で10個設けられたリングマグネットが配置されたリングマグネット型のロータであることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項8】
請求項6に記載のブラシレスモータにおいて、
前記ロータは、極対数が5となるようにマグネットが周方向に5個設けられたコンシクエントポール型のロータであることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項9】
請求項8に記載のブラシレスモータにおいて、
前記コンシクエントポール型のロータは、軸線方向に複数分割して形成した分割ロータコアからなるロータコアを備えたことを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のブラシレスモータにおいて、
前記ステータは、前記ロータに対して、電気角60度の磁気スキューとなるように設定したことを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のブラシレスモータにおいて、
前記ブラシレスモータは、回転軸が電動パワーステアリング装置の減速機に連結され、該減速機を介してステアリングシャフトを駆動するモータであることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載したブラシレスモータの駆動方法であって、
ステータに巻回した2つの異なる3相巻線に対して30度位相差をもって通電したことを特徴とするブラシレスモータの駆動方法。

【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図17】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−157236(P2012−157236A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209513(P2011−209513)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】