説明

ブラシレスモータ及び電動パワーステアリング装置用モータ

【課題】軸方向の小型化を図るとともに、回転検出センサの検出精度の低下を抑制することができるブラシレスモータを提供する。
【解決手段】モータ2は、有底円筒状のハウジングケース11、固定子12、回転軸31を有する回転子13、回転軸31を軸支する一対の軸受15a,15b、及びレゾルバ53を備える。一方の軸受15aは、ハウジングケース11の底部11aに配置されている。また、ハウジングケース11の開口部11cには、鉄鋼材料よりなる板材に、軸方向に並ぶとともに同軸状をなすセンサステータ保持部42及び軸受保持部43を形成してなるホルダプレート41が固定されている。更に、他方の軸受15bは鉄鋼材料よりなるとともに軸受保持部43に収容保持され、レゾルバ53を構成するセンサステータ51はセンサステータ保持部42に収容保持され、軸受15b及びセンサステータ51は軸方向に隣り合っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブラシレスモータ、及び車載の電動パワーステアリング装置に用いられる電動パワーステアリング装置用モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシレスモータには、回転子の回転状態(固定子に対する回転位置、回転速度等)を検出するために、回転検出センサが設けられている。この回転検出センサは、回転子の回転軸に固定され該回転軸と一体回転する環状のセンサロータと、該センサロータと径方向に対向するように配置される環状のセンサステータとから構成されるものがある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されているブラシレスモータにおいては、回転子の回転軸は、有底円筒状のハウジングケースの底部、及び該ハウジングケースの開口部に取着されたフランジ部材にそれぞれ配置された一対の軸受によって軸支されている。そして、センサステータは、略円筒状のセンサホルダの内周面に固定されるとともに、該センサホルダが前記フランジ部材に固定されることにより、回転軸に固定されたセンサロータと径方向に対向される。
【0004】
また、特許文献2に記載されているブラシレスモータでは、回転子の回転軸は、有底円筒状のハウジングケースの底部、及び該ハウジングケースの開口部を閉塞するエンドフレームにそれぞれ配置された一対の軸受によって軸支されている。そして、センサステータは、エンドフレームにおいて軸受が固定された一端面(外面)と逆側の他端面(内面)に固定されており、該軸受と該センサステータとは、軸方向に互いに離れた状態となっている。因みに、このようなエンドフレームは、一般的にアルミニウム製であり、軸受が収容される収容凹部及びセンサステータが収容される収容凹部は、切削加工により形成される。
【特許文献1】特開2003−88081号公報
【特許文献2】特開2006−87277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のブラシレスモータにおいては、センサステータは、軸受が固定されたフランジ部材に対して、センサホルダを介して固定されることから、当該軸受により軸支された回転軸に固定されたセンサロータの中心軸線と、センサステータの中心軸線とがずれやすい。
【0006】
また、特許文献2に記載のブラシレスモータでは、エンドフレームにおいて軸受及びセンサステータがそれぞれ収容される収容凹部は、切削加工により形成される。従って、エンドフレームの2つの端面に収容凹部をそれぞれ形成するためには、エンドフレームとなる板材を、切削加工を行う工作機械のチャックで固定して、該板材の一端面に一方の収容凹部を形成した後に、該板材の向きを変えて該板材を再度チャックで固定し、該板材の他端面に他方の収容凹部を形成することになる。そのため、2つの収容凹部の中心軸線を互いに一致させることが困難となる。その結果、一方の収容凹部に収容された軸受により軸支された回転軸に固定されたセンサロータの中心軸線と、他方の収容凹部に収容されたセンサステータの中心軸線とがずれやすい。
【0007】
これらのことから、特許文献1及び特許文献2に記載されたブラシレスモータにおいては、センサロータとセンサステータとの相対的な位置ずれによって、回転検出センサを用いて検出した回転子の回転状態と、実際の回転子の回転状態とにずれが生じる虞がある。即ち、回転検出センサにおける検出精度が低下される虞がある。
【0008】
更に、特許文献2に記載のブラシレスモータにおいては、エンドフレームがアルミニウム製であることから、同エンドフレームは、その強度を確保するために軸方向に厚く形成される。そのため、該エンドフレームを有するブラシレスモータの軸方向の小型化が困難となっていた。また更に、特許文献2に記載のブラシレスモータにおいて、エンドフレームに配置される軸受が鉄鋼材料により形成されている場合には、ブラシレスモータが高温時になると、アルミニウム製のエンドフレームと当該軸受との線膨張差により、当該エンドフレームと当該軸受の外周面との間に隙間が生じる虞がある。従って、特許文献1にブラシレスモータが、特に高温になり易い電動パワーステアリング装置用モータとして用いられる場合には、該モータの駆動時に、エンドフレームと該エンドフレームに配置された軸受の外周面との間に隙間が生じ易いという問題があった。
【0009】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、軸方向の小型化を図るとともに、回転検出センサの検出精度の低下を抑制することができるブラシレスモータ及び電動パワーステアリング装置用モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、有底円筒状のハウジングケースと、前記ハウジングケースの内側に固定された固定子と、前記固定子の内側に配置され回転軸を有する回転子と、前記回転軸を軸支する一対の環状の軸受と、前記回転軸に固定され前記回転軸と一体回転するセンサロータ、及び前記センサロータと径方向に対向するように配置される環状のセンサステータからなり、前記回転子の回転状態を検出するための回転検出センサと、を備えたブラシレスモータであって、前記一対の軸受のうち一方の前記軸受は、前記ハウジングケースの底部に配置され、前記ハウジングケースの開口部には、鉄鋼材料よりなる板材に、軸方向に並ぶとともに同軸状をなす第1の収容部及び第2の収容部を形成してなるホルダプレートが固定され、前記一対の軸受のうち他方の前記軸受は鉄鋼材料よりなるとともに前記第1の収容部に収容保持され、前記センサステータは前記第2の収容部に収容保持され、他方の前記軸受及び前記センサステータは軸方向に隣り合うことをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、他方の軸受及びセンサステータを保持するホルダプレートは、鉄鋼材料よりなる板材から形成されている。従って、従来のようにアルミニウム材を用いてホルダプレート(エンドフレーム)を形成するわけではないため、強度確保のためにホルダプレートを軸方向に厚く形成しなくてもよい。その結果、ホルダプレートの軸方向の厚さを薄くすることにより、ブラシレスモータの軸方向の小型化を図ることができる。また、センサステータは、他方の軸受が保持されたホルダプレートに対して直接固定される。従って、他方の軸受の中心軸線と、センサステータの中心軸線とが一致しやすくなることから、当該軸受にて軸支される回転軸に固定されたセンサロータの中心軸線と、センサステータの中心軸線とが一致しやすくなる。これらのことから、回転検出センサの検出精度の低下を抑制することができる。更に、ホルダプレートは、他方の軸受と同様に鉄鋼材料から形成されているため、該ホルダプレートと該軸受とは線膨張率が略同一となる。その結果、ブラシレスモータが高温となった場合に、ホルダプレートと他方の軸受の外周面との間に隙間が生じることが抑制される。
【0012】
尚、本発明において、「同軸状」とは、2つ以上の部材において、各部材の中心軸線が互いに一致する状態を意味する。
請求項2に記載の発明は、有底円筒状のハウジングケースと、前記ハウジングケースの内側に固定された固定子と、前記固定子の内側に配置され回転軸を有する回転子と、前記回転軸を軸支する一対の環状の軸受と、前記回転軸に固定され前記回転軸と一体回転するセンサロータ、及び前記センサロータと径方向に対向するように配置される環状のセンサステータからなり、前記回転子の回転状態を検出するための回転検出センサと、を備えたブラシレスモータであって、前記一対の軸受のうち一方の前記軸受は、前記ハウジングケースの底部に配置され、前記ハウジングケースの開口部には、鉄鋼材料よりなる板材に軸方向に沿った一方向からプレス加工を施して、軸方向に並ぶとともに同軸状をなす第1の収容部及び第2の収容部を形成してなるホルダプレートが固定され、前記一対の軸受のうち他方の前記軸受は前記第1の収容部に収容保持され、前記センサステータは前記第2の収容部に収容保持され、他方の前記軸受及び前記センサステータは軸方向に隣り合うことをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、他方の軸受及びセンサステータを保持するホルダプレートは、鉄鋼材料よりなる板材から形成されている。従って、従来のようにアルミニウム材を用いてホルダプレート(エンドフレーム)を形成するわけではないため、強度確保のためにホルダプレートを軸方向に厚く形成しなくてもよい。その結果、ホルダプレートの軸方向の厚さを薄くすることにより、ブラシレスモータの軸方向の小型化を図ることができる。また、センサステータは、他方の軸受が保持されたホルダプレートに対して直接固定される。従って、他方の軸受の中心軸線と、センサステータの中心軸線とが一致しやすくなることから、当該軸受にて軸支される回転軸に固定されたセンサロータの中心軸線と、センサステータの中心軸線とが一致しやすくなる。更に、軸受を収容保持するための第1の収容部及びセンサステータを収容保持するための第2の収容部は、ホルダプレートとなる板材に対して、軸方向に沿った一方向からプレス加工(深絞り加工を含む)を施すことにより形成される。従って、第1及び第2の収容部を形成するためには、プレス加工を行う工作機械に対して、ホルダプレートとなる板材を一度固定すれば、第1及び第2の収容部を形成することができる。よって、第1の収容部の中心軸線と第2の収容部の中心軸線とがずれることが抑制され、第1の収容部に収容された他方の軸受の中心軸線と、第2の収容部に収容されたセンサステータの中心軸線とがずれることが抑制される。これらのことから、回転検出センサの検出精度の低下を抑制することができる。
【0014】
尚、本発明において、「同軸状」とは、2つ以上の部材において、各部材の中心軸線が互いに一致する状態を意味する。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のブラシレスモータにおいて、前記固定子は、複数の電機子コイルを有し、該固定子における前記ハウジングケースの開口部側の端部には、導電性を有するとともに湾曲した帯状をなし、所定の前記電機子コイルの端部同士をそれぞれ電気的に接続する複数の導電板が、その板厚方向が径方向と一致するように環状に配置されており、前記第1の収容部及び前記第2の収容部は、前記ハウジングケースの開口部側から底部側に向かって突出するとともに、該第1及び第2の収容部の少なくとも一部が、前記導電板の径方向内側に配置されていることをその要旨としている。
【0015】
同構成によれば、固定子に備えられる複数の電機子コイルのうち、所定の電機子コイルの端部同士をそれぞれ電気的に接続する複数の導電板は、その板厚方向が径方向と一致するように環状に配置されている。このように、導電板を、その板厚方向が径方向と一致するように環状に配置すると、導電板の配置に要するスペースが径方向に小さくなるとともに、環状に配置された複数の導電板の径方向内側にスペースができる。そして、導電板の径方向内側のスペースに、ハウジングケースの開口部側から底部側に向かって突出するように形成された第1の収容部及び第2の収容部の少なくとも一部が配置されることにより、ブラシレスモータの更なる軸方向の小型化が図られる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のブラシレスモータにおいて、一方の前記軸受は、前記ハウジングケースの底部の中央に配置され、前記第1の収容部及び前記第2の収容部は、その中心軸線が、前記ホルダプレートの中心軸線と一致するように形成され、前記ホルダプレートは、軸方向に沿って前記ハウジングケース側に延びるとともに、軸方向から見て該ホルダプレートの中心をその中心とし前記ハウジングケースの開口部における内径と等しい直径を有する円上にその外周面が位置するインロー部を有することをその要旨としている。
【0017】
同構成によれば、インロー部は、軸方向から見て、ホルダプレートの中心をその中心としハウジングケースの開口部における内径と等しい直径を有する円上にその外周面が位置するように形成されている。従って、ホルダプレートは、該インロー部の外周面がハウジングケースの開口部における内周面に当接するようにハウジングケースに対して固定されることにより、ホルダプレートとハウジングケースとをより精度良く同軸状態とすることができる。よって、ハウジングケースの底部の中央に配置された軸受と、ホルダプレートの第1の収容部内に収容された軸受とは、より精度の良い同軸状となる。その結果、2つの軸受にて軸支された回転軸に固定されたセンサロータの中心軸線と、ホルダプレートに形成された第2の収容部内に収容されたセンサステータの中心軸線とがより一致し易くなる。従って、回転検出センサの検出精度の低下をより抑制することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のブラシレスモータにおいて、前記回転検出センサが出力する前記回転子の回転位置に応じた回転検出信号に基づいて前記固定子への通電を制御する駆動回路を収容した回路収容部を備え、前記回路収容部は、前記ホルダプレートと軸方向に隣り合う位置に配置されていることをその要旨としている。
【0019】
同構成によれば、従来に比べて他方の軸受及びセンサステータを保持するホルダプレートが軸方向に薄型化されていることから、当該ホルダプレートと軸方向に並ぶように回路収容部を配置することにより、ブラシレスモータの軸方向の大型化の抑制及び径方向の小型化が可能となる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のブラシレスモータにおいて、前記ハウジングケースは、その開口部に径方向外側に延びるハウジング側フランジ部を有し、該ハウジング側フランジ部の周方向の複数箇所を第1の固定螺子にて螺子止めすることにより前記回路収容部に固定され、当該ブラシレスモータを固定する相手側ハウジングにおける周方向の複数箇所が、前記相手側ハウジング側から螺合される第2の固定螺子にて前記回路収容部に螺子止めされることをその要旨としている。
【0021】
同構成によれば、固定子及び回転子が収容されたハウジングケースは、回路収容部を介して相手側ハウジングに固定されている。一般的に、相手側ハウジングに対して直接ハウジングケースを固定する場合、相手側ハウジングにおいてハウジングケースが固定される部位は、ハウジング側フランジ部の外径に合わせて大きくなってしまう。そこで、本構成のように、回路収容部を介してハウジングケースを相手側ハウジングに固定する構成とすることにより、相手側ハウジングにおいてブラシレスモータが固定される部位の大きさをハウジング側フランジ部の外径よりも小さくすることが可能となる。即ち、相手側ハウジングにおいてブラシレスモータが固定される部位の小型化を図ることが可能となる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のブラシレスモータにおいて、軸方向から見て、複数の前記第2の固定螺子の中心を通る第1の円の直径は、複数の前記第1の固定螺子の中心を通る第2の円の直径以下の大きさであることをその要旨としている。
【0023】
同構成によれば、複数の第2の固定螺子の中心を通る第1の円の直径を、複数の第1の固定螺子の中心を通る第2の円の直径以下の大きさとすることにより、相手側ハウジングにおいてブラシレスモータが固定される部位の径方向の大きさを、ハウジング側フランジ部の外径以下の大きさとすることが可能となる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載のブラシレスモータにおいて、前記回路収容部は、軸方向から見て、前記ハウジング側フランジ部の外周円が内接する正方形状の範囲内に収まっていることをその要旨としている。
【0025】
同構成によれば、回路収容部は、ハウジング側フランジ部の外周円が内接する正方形状の範囲内に収まる大きさであることから、ブラシレスモータの径方向の大型化が抑制される。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載のブラシレスモータにおいて、車載の電動パワーステアリング装置に備えられる電動パワーステアリング装置用モータであることをその要旨としている。
【0027】
同構成によれば、電動パワーステアリング装置に備えられる電動パワーステアリング装置用モータにおいて、その軸方向の小型化を図るとともに、回転検出センサの検出精度の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、軸方向の小型化を図るとともに、回転検出センサの検出精度の低下を抑制可能なブラシレスモータ及び電動パワーステアリング装置用モータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明をコラム型電動パワーステアリング装置用モータに具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、コラム型電動パワーステアリング装置1は、車室内のステアリングコラム(図示略)内に、電動パワーステアリング装置用モータ2(以下モータ2とする)を備え、運転者のステアリング操作に対しその操舵トルクや車速等に応じたパワーアシストを行う。
【0030】
詳述すると、コラム型電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール3が連結されるステアリングシャフト4と、減速機構5を介して該ステアリングシャフトに連結される前記モータ2とを備えている。このモータ2は、該モータ2の駆動回路(図示略)によって、減速機構5に設けられたトルクセンサ(図示略)により検出される操舵トルク等に応じて制御され、運転者のステアリングホイール3の操作についてパワーアシストを行う。
【0031】
図3に示すように、モータ2は、有底円筒状のハウジングケース11と、該ハウジングケース11の内周面に固定された固定子12と、該固定子12の内側に配置された回転子13とを備えている。
【0032】
前記ハウジングケース11の底部11aの中央には、内側に開口する軸受収容部11bが形成されるとともに、該軸受収容部11b内には軸受15aが収容されている。尚、軸受15aは、円環状のボールベアリングである。
【0033】
図4に示すように、ハウジングケース11の開口部11cには、径方向外側に延びるハウジング側フランジ部11dが形成されるとともに、ハウジング側フランジ部11dには、周方向の複数個所に、軸方向に沿ってハウジングケース11の底部11aと逆側に延びるかしめピン11eが設けられている。これらかしめピン11eは、その先端に切欠き部11fが形成されることにより、先端が二股形状をなしている(図2参照)。更に、ハウジング側フランジ部11dには、周方向の複数個所(本実施形態では4箇所)に径方向外側に突出した挿通部11gが形成されるとともに、これら挿通部11gには、それぞれ螺子挿通孔11hが形成されている。
【0034】
図3に示すように、前記固定子12を構成するステータコア21は、径方向に沿って放射状に延びる複数(例えば12個)のティース21a(図3においては2つのみ図示)の内周側の端部を周方向に連結してなり、環状をなしている。そして、ステータコア21には、軸方向の両側から、各ティース21aの先端面及び該ステータコア21の内周面以外の部分を覆う絶縁性のインシュレータ22が装着されるとともに、各ティース21aには、このインシュレータ22の上から導線(図示略)が複数回巻回されている。導線は、例えば集中巻にて巻回され、各ティース21aに巻回された導線によって、複数(例えばティース21aと同数の12個)の電機子コイル23が形成されている。
【0035】
また、ステータコア21におけるハウジングケース11の開口部11c側の端部には、絶縁性の樹脂材料よりなるターミナルホルダ25が配置されるとともに、該ターミナルホルダ25は、前記ステータコア21と内径及び外径が略等しい円環状をなしている。このターミナルホルダ25には、その周縁部の複数個所に、ステータコア21側に延びる係合部25aが形成されるとともに、該係合部25aを前記インシュレータ22に対して係合させることにより、ターミナルホルダ25はインシュレータ22を介してステータコア21に固定されている。
【0036】
また、図5に示すように、ターミナルホルダ25には、外周寄りの位置に、軸方向に貫通する複数(本実施形態では24個)のコイル挿通孔25bが形成されるとともに、これらコイル挿通孔25bの内側に、ステータコア21と反対側に開口する複数の収容溝25cが形成されている。各コイル挿通孔25bの直径は、各電機子コイル23(図3参照)を構成する導線の直径と等しいか若干大きく形成されている。また、複数の収容溝25cは、軸方向から見た形状が、円弧状をなすとともに、ステータコア21の中心軸線L1を中心とする同心形状となっている。更に、各収容溝25cは、その周方向の端部が複数のコイル挿通孔25bのうち所定のコイル挿通孔25bと径方向に対向するようにその周方向の長さが設定されている。そして、各収容溝25cには、所定の電機子コイル23(図3参照)の端部23a同士を短絡するための導電板27がそれぞれ収容されている。
【0037】
各導電板27は、導電性板材よりなるとともに、それぞれ収容される収容溝25cに応じた形状をなしている。詳述すると、図6(a)及び図6(b)に示すように、各導電板27は、帯状の板材を円弧状に湾曲して形成されている。そして、各導電板27の周方向の長さは、それぞれが収容される収容溝25cの周方向の長さと等しいか若干短く形成されるとともに(図5参照)、各導電板27の軸方向の幅は、収容溝25cの深さよりも若干短く形成されている(図3参照)。また、各導電板27の周方向の両端部には、該導電板27の幅方向の一端(収容溝25cの開口部側の端部)から径方向外側に向かって延びる接続片27aがそれぞれ形成されている。図5に示すように、各接続片27aは、前記コイル挿通孔25bまで径方向に沿って延びるとともに、その先端部に接続孔27bがそれぞれ形成されている。接続孔27bは、軸方向にコイル挿通孔25bと重なる位置に形成されている。そして、各導電板27が対応する収容溝25cに収容された状態では、径方向に隣り合う収容溝25cと収容溝25cとの間に存在する絶縁壁25dによって、径方向に隣り合う導電板27同士の短絡が防止されている。
【0038】
図3及び図5に示すように、各電機子コイル23の両端部23aは、周方向に隣り合う2つのコイル挿通孔25bにそれぞれ挿通されるとともに、当該2つのコイル挿通孔25bと軸方向に重なる接続孔27bに挿通される。この状態で各電機子コイル23の両端部23aは、かしめ等により接続片27aに接続されるとともに、これにより、所定の電機子コイル23同士が短絡される。
【0039】
図3に示すように、前記回転子13を構成する回転軸31は、前記ハウジングケース11の底部11a側の端部が前記軸受15aによって軸支されるとともに、該回転軸31には、略円筒状のロータヨーク32が固定されている。このロータヨーク32の外周には、複数の永久磁石33が配置されるとともに、これら永久磁石33は、当該永久磁石33の外周に装着された円筒状のカバー34によって、ロータヨーク32の外周面に当接した状態に保たれている。尚、カバー34は、その両端が径方向内側に向かって屈曲されることにより、ロータヨーク32に対して固定されている。このような回転子13は、ハウジングケース11の内部で、永久磁石33とステータコア21とが径方向に対向する位置に配置されている。
【0040】
前記ハウジングケース11の開口部11cには、略円板状のホルダプレート41が固定されている。図4に示すように、ホルダプレート41を構成する平板状のホルダ本体41aの周縁部には、軸方向に沿ってハウジングケース11側に突出した側壁41bが該ホルダ本体41aと一体に設けられるとともに、該側壁41bの先端部には、径方向外側に延びるプレート側フランジ部41cが一体に形成されている。このプレート側フランジ部41cは、前記ハウジングケース11のハウジング側フランジ部11dと外径が等しく形成されるとともに、該プレート側フランジ部41cにおいて前記ハウジング側フランジ部11dのかしめピン11eと対応する周方向の複数個所(本実施形態では4箇所)には、内周側に向かって切り欠かれた固定切欠き部41dが形成されている。固定切欠き部41dは、周方向に等角度間隔となる位置に形成されている。また、プレート側フランジ部41cには、ハウジング側フランジ部11dに形成された挿通部11gと対応する周方向の複数個所(本実施形態では4箇所)に、径方向外側に突出した挿通部41eが設けられるとともに、これら挿通部41eには、それぞれ螺子挿通孔41fが形成されている。
【0041】
更に、前記側壁41bの先端部には、軸方向に沿って延びる複数のインロー部41gが形成されている。これらインロー部41gは、周方向に等角度間隔となる位置に形成されるとともに、軸方向から見てホルダプレート41の中心O1をその中心としハウジングケース11の開口部11cにおける内径と等しい直径を有する円上にその外周面41hが位置している。
【0042】
図3に示すように、ホルダ本体41aの中央部には、後述する円環状のセンサステータ51を収容保持するセンサステータ保持部42が設けられるとともに、該センサステータ保持部42の底部42a中央には、ハウジングケース11の底部11aに設けられた一方の軸受15aと対をなす鉄鋼材料よりなる他方の軸受15bを収容保持する軸受保持部43が設けられている。
【0043】
センサステータ保持部42は、軸方向に沿ってハウジングケース11の底部11a側へ突出するように形成され、略円筒状をなすとともに、センサステータ51の外形に応じて開口部側に比べて底部42a側の直径が若干小さく形成されている。また、軸方向の長さは、センサステータ51よりも若干短く形成されている。
【0044】
前記軸受保持部43は、軸方向に沿って底部11a側へ突出するように形成されるとともに、センサステータ51よりも外径の小さい前記軸受15bに応じてセンサステータ保持部42よりもその直径が小さい有底円筒状をなしている。そして、軸受保持部43は、その内径が軸受15bの外形と略等しく形成されるとともに、その軸方向の長さが軸受15bと略等しく形成されている。また、軸受保持部43の底部43aの中央には、貫通孔43bが形成されるとともに、該貫通孔43bの直径は、前記回転軸31の外径よりも若干大きく形成されている。そして、この軸受保持部43と前記センサステータ保持部42とは、その中心軸線L2,L3が一致しているとともに、中心軸線L2,L3は、ホルダプレート41の中心軸線L5と一致している(図4参照)。
【0045】
上記のように構成されたホルダプレート41は、ハウジング側フランジ部11dのかしめピン11eがプレート側フランジ部41cの固定切欠き部41dに挿通されるように、且つ、挿通部11g及び挿通部41eが軸方向に重なるようにハウジングケース11に対して配置されている。更に、ホルダプレート41は、プレート側フランジ部41cがハウジング側フランジ部11dに当接するように、ハウジングケース11に対して配置されている。そして、かしめピン11eの先端部(二股の部分)が、切欠き部11fが広がるように押し広げられることにより、ホルダプレート41はハウジングケース11に対してかしめ固定されている(図2参照)。尚、図2においては、切欠き部11fが押し広げられる前の状態を二点鎖線にて図示し、かしめられた状態を実線にて図示している。
【0046】
そして、ホルダプレート41がハウジングケース11に対して固定された状態では、これらセンサステータ保持部42の中心軸線L2及び軸受保持部43の中心軸線L3は、ハウジングケース11内に配置された回転軸31の回転軸線L4に一致する。また、同状態では、ハウジングケース11の底部11a側に突出するように形成されたセンサステータ保持部42の一部及び軸受保持部43は、環状に配置された導電板27の径方向内側(ターミナルホルダ25の内側)に位置している。更に、同状態では、各インロー部41gの外周面41hは、それぞれハウジングケース11の開口部11cにおける内周面11kに当接している。
【0047】
また、上記のホルダプレート41は、ホルダプレート41となる鉄鋼材料よりなる板材にプレス加工を施してセンサステータ保持部42及び軸受保持部43を形成してなる。そして、軸受保持部43の底部43aに形成される貫通孔43bは、絞り加工によりセンサステータ保持部42及び軸受保持部43を形成した後に、プレス加工により形成される。
【0048】
前記軸受保持部43内に収容された前記軸受15bは、鉄鋼材料よりなるとともに、軸受15aと同様の円環状のボールベアリングである。そして、軸受15bは、その軸方向の一端面が軸受保持部43の底面に当接するとともに、その外周面が軸受保持部43の内周面に当接することにより該軸受保持部43によって保持されている。この軸受15bは、前記軸受15aとともに回転軸31を軸支する。詳述すると、回転軸31のハウジングケース11側の端部が、ホルダプレート41の貫通孔43bを通ってハウジングケース11及びホルダプレート41にて形成される空間の外部に突出しており、軸受15bは、回転軸31における外部に突出した部位を回転可能に支持している。
【0049】
前記センサステータ保持部42内に収容された前記センサステータ51は、前記回転軸31に固定されたセンサロータ52とともに回転検出センサとしてのレゾルバ53を構成している。
【0050】
センサロータ52は、磁性鋼板を複数枚積層して環状に形成されるとともに、前記回転軸31においてセンサステータ51と径方向に対向する位置に固定されている。
前記センサステータ51は、円環状のセンサ用コア51aと、該センサ用コア51aに巻装された複数のレゾルバ巻線51bとを備えている。センサ用コア51aは、複数枚の磁性鋼板を積層して形成されており、その外周に周方向に並ぶ複数のティース(図示略)が形成されている。また、センサ用コア51aは、その外径がセンサステータ保持部42における開口部側の内径と等しく形成されるとともに、その軸方向の長さがセンサステータ保持部42における開口部側の外径が大きい方の部位の軸方向の長さと略等しく形成されている。そして、このセンサ用コア51aには、該センサ用コア51aの内周面及び外周面以外の部位を被覆する絶縁性のインシュレータ51cが装着されるとともに、該インシュレータ22の上から前記レゾルバ巻線51bが巻装されている。レゾルバ巻線51bは、励磁電圧が印加される一相の励磁巻線と、該励磁巻線の励磁に基づいてセンサロータ52の回転に応じた位相の異なる回転検出信号を出力する二相の出力巻線とからなり、センサ用コア51aにおいてそれぞれ所定位置のティースに巻回されている。
【0051】
このようなセンサステータ51は、センサステータ保持部42の内周面にセンサ用コア51aの外周面を当接させた状態でセンサステータ保持部42内に収容されるとともに、該センサステータ保持部42によって周方向及び軸方向に移動不能に保持されている。また、センサステータ保持部42と軸受保持部43とは、その中心軸線L2,L3が一致するように形成されていることから、センサステータ保持部42に収容された円環状のセンサステータ51と、軸受保持部43に収容された円環状の軸受15bとは、互いにその中心軸線が一致する。そして、センサステータ51及び軸受15bは、センサステータ保持部42及び軸受保持部43にそれぞれ収容保持されることにより、軸方向に並んでいる。尚、本実施形態では、センサステータ51と軸受15bとの間には若干の隙間が形成されており、互いに非接触となっている。
【0052】
尚、前記ホルダプレート41には、センサステータ保持部42の開口部を略閉塞するカバープレート61が固定されている。該カバープレート61の中央部には、回転軸31におけるハウジングケース11側の端部が挿通される挿通孔61aが形成されるとともに、回転軸31におけるハウジングケース11側の端部は、該挿通孔61aからセンサステータ保持部42の外に突出している。
【0053】
図7に示すように、上記のように構成されたモータ2は、固定子12への通電を制御する駆動回路71を収容する回路収容部72を介して、前記減速機構5を収容するギヤハウジング81に固定されている。
【0054】
回路収容部72は中空状の略直方体形状をなすとともに、その内部に前記駆動回路71が収容されている。駆動回路71には、複数の前記導電板27のうち所定の導電板27が電気的に接続されるとともに、前記レゾルバ53が電気的に接続されている。そして、この回路収容部72に対して、ハウジングケース11は該回路収容部72との間に前記ホルダプレート41を介在させた状態で固定されている。詳述すると、回路収容部72に対し、ハウジングケース11は、該ハウジングケース11に固定されたホルダプレート41を、該回路収容部72の所定位置に当接させて配置される。即ち、回路収容部72とホルダプレート41とが軸方向に隣り合うように配置される。この状態で、ハウジングケース11側から、ハウジング側フランジ部11dに形成された4つの螺子挿通孔11h及びプレート側フランジ部41cに形成された4つの螺子挿通孔41fにモータ固定螺子91がそれぞれ挿通され、これらモータ固定螺子91が回路収容部72に対して螺合されることにより、ハウジングケース11は回路収容部72に対して固定される。即ち、ホルダプレート41は、ハウジングケース11を回路収容部72に固定するためのモータ固定螺子91によって回路収容部72に対して共締め固定されている。そして、図8(a)に示すように、ハウジングケース11が回路収容部72に固定された状態では、回路収容部72は、モータ2の軸方向から見ると、ハウジング側フランジ部11dの外周円が内接する正方形状の範囲A内に収まっている。
【0055】
図7に示すように、前記ギヤハウジング81は、該ギヤハウジング81を回路収容部72に対して固定するための固定部82と、該固定部82と一体に形成されたウォーム軸収容部84と、該ウォーム軸収容部84と一体に形成されたウォームホイール85を収容するホイール収容部86とから構成されている。
【0056】
前記固定部82は、その外径が前記ハウジング側フランジ部11dの外径と略等しい円環状の板状をなしている。図8(b)に示すように、固定部82の周方向の複数個所(本実施形態では4箇所)には、径方向外側に突出した挿通部82aが形成されるとともに、これら挿通部82aには、それぞれ螺子挿通孔82bが形成されている。そして、ギヤハウジング81を軸方向から見ると、4つの螺子挿通孔82bの中心を通る円C1は、前記ハウジング側フランジ部11dに形成された4つの螺子挿通孔11hの中心を通る円C2(図8(a)参照)よりも、その直径が小さく形成されている。
【0057】
図7に示すように、前記ウォーム軸収容部84は、モータ2の軸方向に沿って延びる略有底円筒状をなすとともに、該ウォーム軸収容部84の内部には、前記減速機構5を構成するウォーム軸83が収容されている。ウォーム軸83は、モータ2側の一端がジョイント87により前記回転軸31と連結され、該回転軸31と一体回転可能となっている。
【0058】
前記ホイール収容部86は、ウォーム軸収容部84の側方に形成されるとともに、モータ2の径方向から見た形状が円形状をなしている。ホイール収容部86の内部には、前記ウォーム軸83とともに減速機構5を構成するウォームホイール85が回転可能に収容されている。そして、ホイール収容部86の内部空間とウォーム軸収容部84の内部空間とは、ウォーム軸収容部84の軸方向の中央部で繋がっており、ホイール収容部86内のウォームホイール85と、ウォーム軸収容部84内のウォーム軸83とは、2つの内部空間が繋がる部分で噛合している。また、ウォームホイール85は、前記ステアリングシャフト4に連結される。
【0059】
上記のように構成されたギヤハウジング81は、前記回路収容部72におけるハウジングケース11が固定された側とは反対側の所定部位に固定部82が当接した状態で、固定部82側から、4つの螺子挿通孔82bにハウジング固定螺子92がそれぞれ挿通され、これらハウジング固定螺子92が回路収容部72に対して螺合されることにより、回路収容部72に対して固定されている。この時、図8(a)及び図8(b)に示すように、軸方向(ハウジングケース11の軸方向)から見て、4つの螺子挿通孔82bの中心を通る円C1は、前記ハウジング側フランジ部11dに形成された4つの螺子挿通孔11hの中心を通る円C2よりも、その直径が小さく形成されていることから、螺子挿通孔82bに挿入されたハウジング固定螺子92の中心(軸方向から見た場合の中心)を通る円(即ち円C1)は、螺子挿通孔11hに挿通されたモータ固定螺子91の中心(軸方向から見た場合の中心)を通る円(即ち円C2)よりもその直径が小さい。
【0060】
上記のように構成されたモータ2では、所定の電機子コイル23への通電により回転子13が回転されると、回転軸31とともにセンサロータ52が回転する。そして、レゾルバ53はセンサロータ52の回転状態、即ち回転子13の回転状態に応じた回転検出信号を駆動回路71へ出力する。駆動回路71は、レゾルバ53から入力される回転検出信号に基づいて、電機子コイル23への通電の制御を行う。また、回転軸31の回転は、ウォーム軸83に伝達されるとともに、該ウォーム軸83及びウォームホイール85により減速される。
【0061】
上記したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を有する。
(1)ホルダプレート41は、他方の軸受15bと同様に鉄鋼材料から形成されているため、該ホルダプレートと該軸受15bとは線膨張率が略同一となる。その結果、モータ2が高温となった場合に、ホルダプレート41と他方の軸受15bの外周面との間に隙間が生じることが抑制される。その結果、モータ2における振動や異音の発生を抑制することができる。
【0062】
(2)軸受15b及びセンサステータ51を保持するホルダプレート41は、鉄鋼材料よりなる板材から形成されている。従って、従来のようにアルミニウム材を用いてホルダプレート(エンドフレーム)を形成するわけではないため、強度確保のためにホルダプレート41を軸方向に厚く形成しなくてもよい。その結果、ホルダプレート41の軸方向の厚さを薄くすることにより、モータ2の軸方向の小型化を図ることができる。また、センサステータ51は、軸受15bが保持されたホルダプレート41に対して直接固定される。従って、軸受15bの中心軸線と、センサステータ51の中心軸線とが一致しやすくなることから、当該軸受15bにて軸支される回転軸31に固定されたセンサロータ52の中心軸線と、センサステータの中心軸線とが一致しやすくなる。更に、軸受15bを収容保持するための軸受保持部43及びセンサステータを収容保持するためのセンサステータ保持部42は、ホルダプレート41となる板材に対して、軸方向に沿った一方向からプレス加工を施すことにより形成される。従って、軸受保持部43及びセンサステータ保持部42を形成するためには、プレス加工を行う工作機械に対して、ホルダプレート41となる板材を一度固定すれば、軸受保持部43及びセンサステータ保持部42を形成することができる。よって、軸受保持部43の中心軸線L3とセンサステータ保持部42の中心軸線L2とがずれることが抑制され、軸受保持部43に収容された軸受15bの中心軸線と、センサステータ保持部42に収容されたセンサステータ51の中心軸線とがずれることが抑制される。これらのことから、レゾルバ53の検出精度の低下を抑制することができる。
【0063】
(3)固定子12に備えられる複数の電機子コイル23のうち、所定の電機子コイル23の端部23a同士をそれぞれ電気的に接続する複数の導電板27は、その板厚方向が径方向と一致するように環状に配置されている。このように、導電板27を、その板厚方向が径方向と一致するように環状に配置すると、導電板27の配置に要するスペースが径方向に小さくなるとともに、環状に配置された複数の導電板27の径方向内側にスペースができる。そして、導電板27の径方向内側のスペースに、ハウジングケース11の開口部11c側から底部11a側に向かって突出するように形成された軸受保持部43及びセンサステータ保持部42の一部が配置されているため、モータ2の更なる軸方向の小型化を図ることができる。
【0064】
(4)インロー部41gは、軸方向から見て、ホルダプレート41の中心O1をその中心としハウジングケース11の開口部11cにおける内径と等しい直径を有する円上にその外周面41hが位置するように形成されている。従って、ホルダプレート41は、該インロー部41gの外周面41hがハウジングケース11の開口部11cにおける内周面11kに当接するようにハウジングケース11に対して固定されることにより、ホルダプレート41とハウジングケース11とをより精度良く同軸状態とすることができる。よって、ハウジングケース11の底部11aの中央に配置された軸受15aと、ホルダプレート41の軸受保持部43内に収容された軸受15bとは、より精度の良い同軸状となる。その結果、2つの軸受15a,15bにて軸支された回転軸31に固定されたセンサロータ52の中心軸線と、ホルダプレート41に形成されたセンサステータ保持部42内に収容されたセンサステータ51の中心軸線とがより一致し易くなる。従って、レゾルバ53の検出精度の低下をより抑制することができる。
【0065】
(5)従来に比べて軸受15b及びセンサステータ51を保持するホルダプレート41が軸方向に薄型化されていることから、当該ホルダプレート41と軸方向に並ぶように回路収容部72を配置することにより、モータ2の軸方向の大型化の抑制及び径方向の小型化が可能となる。
【0066】
(6)固定子12及び回転子13が収容されたハウジングケース11は、回路収容部72を介してギヤハウジング81に固定されている。一般的に、ギヤハウジング81に対して直接ハウジングケース11を固定する場合、ギヤハウジング81においてハウジングケース11が固定される部位(例えば固定部82)は、ハウジング側フランジ部11dの外径に合わせて大きくなってしまう。そこで、本実施形態のように、回路収容部72を介してハウジングケース11をギヤハウジング81に固定する構成とすることにより、ギヤハウジング81においてモータ2(固定子12及び回転子13が収容されたハウジングケース11、及び駆動回路71が収容された回路収容部72)が固定される部位の大きさをハウジング側フランジ部11dの外径よりも小さくすることが可能となる。即ち、ギヤハウジング81においてモータ2が固定される部位の小型化を図ることが可能となる。
【0067】
更に、本実施形態では、4つのハウジング固定螺子92の中心を通る円C1の直径が、4つのモータ固定螺子91の中心を通る円C2の直径よりも小さいため、ギヤハウジング81においてモータ2が固定される固定部82の径方向の大きさを、ハウジング側フランジ部11dの外径以下の大きさとすることができる。
【0068】
(7)回路収容部72は、モータ2の軸方向から見て、ハウジング側フランジ部11dの外周円が内接する正方形状の範囲A内に収まる大きさであることから、モータ2の径方向の大型化が抑制される。
【0069】
(8)軸受15b及びセンサステータ51は、ホルダプレート41に直接固定されることから、部品点数の増大を抑制することができる。
(9)ホルダプレート41は、かしめピン11eをかしめることにより、ハウジングケース11に固定されている。従って、ハウジングケース11に対するホルダプレート41の固定を容易に行うことができる。
【0070】
(10)ホルダプレート41は、ハウジングケース11を回路収容部72に固定するためのモータ固定螺子91によって回路収容部72に対して共締め固定されている。従って、板状のホルダプレート41の強度が確保される。
【0071】
(11)ホルダプレート41は、ホルダプレート41となる鉄鋼材料よりなる板材にプレス加工を施してセンサステータ保持部42及び軸受保持部43を形成してなる。従って、センサステータ保持部42及び軸受保持部43を形成するためのプレス型を高精度に形成することにより、該プレス型を用いて形成されるセンサステータ保持部42及び軸受保持部43を容易に同軸状とすることができる。
【0072】
(12)ホルダプレート41は、1つの部材にセンサステータ保持部42、軸受保持部43及びインロー部41gを形成してなるため、これらセンサステータ保持部42、軸受保持部43及びインロー部41gを同軸状に形成し易い。従って、ホルダプレート41を用いることにより、回転子13とセンサステータ51との同軸性が向上し、その結果センサロータ52とセンサステータ51との同軸性が向上する。また、ホルダプレート41は、ホルダプレート41となる鉄鋼材料よりなる板材にプレス加工を施すことによりセンサステータ保持部42、軸受保持部43及びインロー部41gを一体に形成してなる。従って、これらセンサステータ保持部42、軸受保持部43及びインロー部41gを形成するためのプレス型を高精度に形成することにより、該プレス型を用いて形成されるセンサステータ保持部42、軸受保持部43及びインロー部41gを更に容易に同軸状とすることができる。
【0073】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、回路収容部72は、モータ2の軸方向から見て、ハウジング側フランジ部11dの外周円が内接する正方形状の範囲A内に収まるように形成されている。しかしながら、回路収容部72は、モータ2の軸方向から見て、範囲A以上の大きさとなるように形成されてもよい。
【0074】
・上記実施形態では、固定部82は、4つのハウジング固定螺子92の中心を通る円C1の直径が、4つのモータ固定螺子91の中心を通る円C2の直径よりも小さくなるように形成されている。しかしながら、固定部82は、円C1の直径が円C2の直径と同じ大きさとなるように形成されてもよい。このようにしても、上記実施形態の(5)と同様の作用効果を得ることができる。また、固定部82は、円C1の直径が円C2の直径よりも大きくなるように形成されてもよい。
【0075】
・上記実施形態では、回路収容部72は、ホルダプレート41と軸方向に並ぶ位置に配置されているが、回路収容部72の配置位置はこれに限らない。例えば、回路収容部72は、ハウジングケース11と径方向に並ぶ位置に配置されてもよい。この場合、ホルダプレート41が固定されたハウジングケース11はギヤハウジング81に直接固定される。
【0076】
・上記実施形態のホルダプレート41は、インロー部41gを備えているが、インロー部41gを備えない構成であってもよい。
・上記実施形態では、導電板27の径方向内側のスペースには、軸受保持部43及びセンサステータ保持部42の一部が配置されている。しかしながら、導電板27の径方向内側のスペースには、軸受保持部43及びセンサステータ保持部42の少なくとも一部が配置されていればよい。例えば、導電板27の径方向内側のスペースには、軸受保持部43の少なくとも一部のみが配置されてもよいし、センサステータ保持部42の少なくとも一部のみが配置されてもよい。このようにすると、上記実施形態の(2)と同様の作用効果を得ることができる。また、軸受保持部43及びセンサステータ保持部42は、導電板27の径方向内側のスペースに配置されなくてもよい。この場合、導電板27の形状及び配置の態様は、上記実施形態のものに限らない。
【0077】
・上記実施形態では、センサステータ保持部42及び軸受保持部43は、ハウジングケース11の底部11a側に向かって突出するように形成されているが、ハウジングケース11の底部11aと反対側に突出するように形成されてもよい。
【0078】
・上記実施形態では、ホルダプレート41は、かしめピン11eをかしめることにより、ハウジングケース11に固定されている。しかしながら、ホルダプレート41は、かしめ固定以外に、溶接や螺子止めによってハウジングケース11に固定されるものであってもよい。
【0079】
・上記実施形態では、ホルダプレート41は、モータ固定螺子91によって回路収容部72に共締め固定されている。しかしながら、ホルダプレート41は、ハウジングケース11に固定されていれば、回路収容部72に対して共締め固定されなくてもよい。
【0080】
・上記実施形態では、ホルダプレート41は、ホルダプレート41となる鉄鋼材料よりなる板材にプレス加工を施してセンサステータ保持部42及び軸受保持部43を形成してなる。しかしながら、ホルダプレート41は、ホルダプレート41となる鉄鋼材料よりなる板材を該板材の板厚方向(軸方向に相当)の一方向に押圧して加工するのであれば、該板材に深絞り加工にてセンサステータ保持部42及び軸受保持部43を形成してなるものであってもよい。また、ホルダプレート41は、プレス加工以外の方法で形成されてもよい。
【0081】
・上記実施形態では、ホルダプレート41にて保持される軸受15bとセンサステータ51との外径が異なることから、センサステータ保持部42及び軸受保持部43の内径は互いに異なっている。しかしながら、センサステータ保持部42及び軸受保持部43は、モータ2に使用される軸受及びセンサステータの外径に応じてその大きさが設定されればよい。例えば、モータ2に使用される軸受及びセンサステータの外径が等しい場合には、センサステータ保持部42及び軸受保持部43は、その内径が等しく形成される。
【0082】
・上記実施形態では、ハウジングケース11は、底部11aが一体に形成された有底円筒状をなしている。しかしながら、ハウジングケース11は、底部11aと円筒状の部位(円筒部とする)とが別体に形成され、円筒部の一端に該底部11aが固定されることにより有底円筒状をなすものであってもよい。
【0083】
・上記実施形態では、本発明を、コラム型電動パワーステアリング装置1に備えられる電動パワーステアリング装置用モータ2に具体化して説明した。しかしながら、コラム型電動パワーステアリング装置1に備えられるモータ2以外のブラシレスモータに対して本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】電動パワーステアリング装置の概略構成図。
【図2】ハウジングケースに対するホルダプレートの固定部分を示す部分拡大図。
【図3】電動パワーステアリング装置用モータの断面図。
【図4】ハウジングケース及びホルダプレートの斜視図。
【図5】電動パワーステアリング装置用モータの断面図。
【図6】(a)は導電板の正面図、(b)は導電板の側面図。
【図7】ギヤハウジング及び該ギヤハウジングに固定された電動パワーステアリング装置用モータの正面図。
【図8】(a)及び(b)ギヤハウジングに固定された電動パワーステアリング装置用モータの側面図。
【符号の説明】
【0085】
1…電動パワーステアリング装置、2…ブラシレスモータとしての電動パワーステアリング装置用モータ、11…ハウジングケース、11a…ハウジングケースの底部、11c…ハウジングケースの開口部、11d…ハウジング側フランジ部、12…固定子、13…回転子、15a…一方の軸受としての軸受、15b…他方の軸受としての軸受、23…電機子コイル、23a…電機子コイルの端部、27…導電板、31…回転軸、41…ホルダプレート、41g…インロー部、41h…外周面、42…第2の収容部としてのセンサステータ保持部、43…第1の収容部としての軸受保持部、51…センサステータ、52…センサロータ、53…回転検出センサとしてのレゾルバ、71…駆動回路、72…回路収容部、81…相手側ハウジングとしてのギヤハウジング、91…第1の固定螺子としてのモータ固定螺子、92…第2の固定螺子としてのハウジング側固定螺子、A…範囲、C1…第1の円としての円、C2…第2の円としての円、L2…第2の収容部としてのセンサステータ保持部の中心軸線、L3…第1の収容部としての軸受保持部の中心軸線、L5…ホルダプレートの中心軸線、O1…軸方向から見たホルダプレートの中心。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒状のハウジングケースと、
前記ハウジングケースの内側に固定された固定子と、
前記固定子の内側に配置され回転軸を有する回転子と、
前記回転軸を軸支する一対の環状の軸受と、
前記回転軸に固定され前記回転軸と一体回転するセンサロータ、及び前記センサロータと径方向に対向するように配置される環状のセンサステータからなり、前記回転子の回転状態を検出するための回転検出センサと、
を備えたブラシレスモータであって、
前記一対の軸受のうち一方の前記軸受は、前記ハウジングケースの底部に配置され、
前記ハウジングケースの開口部には、鉄鋼材料よりなる板材に、軸方向に並ぶとともに同軸状をなす第1の収容部及び第2の収容部を形成してなるホルダプレートが固定され、
前記一対の軸受のうち他方の前記軸受は鉄鋼材料よりなるとともに前記第1の収容部に収容保持され、前記センサステータは前記第2の収容部に収容保持され、他方の前記軸受及び前記センサステータは軸方向に隣り合うことを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項2】
有底円筒状のハウジングケースと、
前記ハウジングケースの内側に固定された固定子と、
前記固定子の内側に配置され回転軸を有する回転子と、
前記回転軸を軸支する一対の環状の軸受と、
前記回転軸に固定され前記回転軸と一体回転するセンサロータ、及び前記センサロータと径方向に対向するように配置される環状のセンサステータからなり、前記回転子の回転状態を検出するための回転検出センサと、
を備えたブラシレスモータであって、
前記一対の軸受のうち一方の前記軸受は、前記ハウジングケースの底部に配置され、
前記ハウジングケースの開口部には、鉄鋼材料よりなる板材に軸方向に沿った一方向からプレス加工を施して、軸方向に並ぶとともに同軸状をなす第1の収容部及び第2の収容部を形成してなるホルダプレートが固定され、
前記一対の軸受のうち他方の前記軸受は前記第1の収容部に収容保持され、前記センサステータは前記第2の収容部に収容保持され、他方の前記軸受及び前記センサステータは軸方向に隣り合うことを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のブラシレスモータにおいて、
前記固定子は、複数の電機子コイルを有し、該固定子における前記ハウジングケースの開口部側の端部には、導電性を有するとともに湾曲した帯状をなし、所定の前記電機子コイルの端部同士をそれぞれ電気的に接続する複数の導電板が、その板厚方向が径方向と一致するように環状に配置されており、
前記第1の収容部及び前記第2の収容部は、前記ハウジングケースの開口部側から底部側に向かって突出するとともに、該第1及び第2の収容部の少なくとも一部が、前記導電板の径方向内側に配置されていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のブラシレスモータにおいて、
一方の前記軸受は、前記ハウジングケースの底部の中央に配置され、
前記第1の収容部及び前記第2の収容部は、その中心軸線が、前記ホルダプレートの中心軸線と一致するように形成され、
前記ホルダプレートは、軸方向に沿って前記ハウジングケース側に延びるとともに、軸方向から見て該ホルダプレートの中心をその中心とし前記ハウジングケースの開口部における内径と等しい直径を有する円上にその外周面が位置するインロー部を有することを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のブラシレスモータにおいて、
前記回転検出センサが出力する前記回転子の回転位置に応じた回転検出信号に基づいて前記固定子への通電を制御する駆動回路を収容した回路収容部を備え、
前記回路収容部は、前記ホルダプレートと軸方向に隣り合う位置に配置されていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項6】
請求項5に記載のブラシレスモータにおいて、
前記ハウジングケースは、その開口部に径方向外側に延びるハウジング側フランジ部を有し、該ハウジング側フランジ部の周方向の複数箇所を第1の固定螺子にて螺子止めすることにより前記回路収容部に固定され、
当該ブラシレスモータを固定する相手側ハウジングにおける周方向の複数箇所が、前記相手側ハウジング側から螺合される第2の固定螺子にて前記回路収容部に螺子止めされることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項7】
請求項6に記載のブラシレスモータにおいて、
軸方向から見て、複数の前記第2の固定螺子の中心を通る第1の円の直径は、複数の前記第1の固定螺子の中心を通る第2の円の直径以下の大きさであることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載のブラシレスモータにおいて、
前記回路収容部は、軸方向から見て、前記ハウジング側フランジ部の外周円が内接する正方形状の範囲内に収まっていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載のブラシレスモータにおいて、
車載の電動パワーステアリング装置に備えられる電動パワーステアリング装置用モータであることを特徴とするブラシレスモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−104321(P2008−104321A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286109(P2006−286109)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】