説明

ブラシレスDCモータ

【課題】
本発明は、主要構成部材である制御回路の回路基板の共用化に伴う効率犠牲の排除に加え、制御回路を構成する電子部品の実装密度制限を縮少することの実現を目的とする。
【解決手段】
本発明に成るブラシレスDCモータは、固定子鉄芯と巻線とを絶縁するスロットゼツが、外周縁円弧状端面に複数の巻線端接続用ピン嵌着穴を備え、所定の仕様に対応する所期の嵌着穴に前記ピンを嵌着することで、固定子磁極と制御回路を構成する回路基板に搭載された検出素子との相対位置が選択自在であるように、また好ましくは、4個の磁極を有し2相半波もしくは単相全波駆動されるブラシレスDCモータでは、前記複数の巻線端接続用ピン嵌着穴は、隣接する磁極間の中心線上から回転子永久磁石に近接した部位で、検出素子が回転方向に向かって機械角で夫々3±1度,6±1度,9±1度ずれた位置となるように、円弧上に並んだ3個として構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスDCモータ、特に多仕様への対応が容易なブラシレスDCモータに関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、本発明に係る2相半波もしくは単相全波で定速駆動されるブラシレスDCモータ2の使用が一般的な軸流ファン1の例の断面図である。また、図6は図7に対応する固定子2−1と制御回路3を構成する回路基板3−1との接合状態を示す説明略図である。
【0003】
該ブラシレスDCモータ2により駆動される軸流ファン1は、長寿命・高信頼性の面でニーズに適ったことから、実質的に市場を席巻していることは周知の通りである。しかし、用途の多様化が進む中で、冷却効果を高めるための高速化や、駆動電圧の多様化への柔軟性を求める声は強く、特に高速化駆動については、構成、特に回転制御信号を得る回転位置検出手段の共用による部品共用という、対応の柔軟性に着目した、動作時の効率を犠牲とする製品化とその実用が多く見られるものである。
【0004】
これは、所定の定速駆動:第1の定速駆動で最高効率を得ることが出来る、回転位置検出素子3−2の位置を固定した儘、例えば所定の高速駆動:第2の定速駆動を行うように構成するものである。しかし、当然のことながら、この方法では、前記第1の速度において前記回転位置検出信号により制御される通電位相角が最高効率に対応するものであるため、第2の高速状態では、最高効率点から乖離することになる。即ち、部品共用による多仕様対応への柔軟性を取り入れる条件として、効率の低下を黙認しているのが現実であった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−084730号公報
【0006】
上述多用される汎用技術は、主要構成部材である制御回路の回路基板3−1の共用で、多様化対応の柔軟性の実現に伴う省エネルギー化の流れに反した、当該軸流ファン駆動における効率の犠牲を排除することが必須の命題であったため、その改善策として、本願出願人は特開2002−084730号公報に見る技術を提供している。
【0007】
詳細は、同公報に譲るが、該新技術は、主要構成部材である制御回路3の回路基板3−1の共用に伴う効率犠牲の排除は実現しているが、回路基板3−1に複数検出素子嵌着孔(3−2)を形成することから、回路基板3−1のに形成される配線パターン(図示を省略)の制約に繋がり、実装密度の高まるニーズを背景として、更なる改善が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決すべき問題点は、上述の如き従来の構成は、主要構成部材である制御回路の回路基板3−1の共用に伴う効率犠牲の排除に加え、制御回路3を構成する電子部品(図示を省略)の実装密度制限を縮少することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に成るブラシレスDCモータ2は、固定子鉄芯2−11と固定子巻線2−12とを絶縁するスロットゼツ2−14が、外周縁円弧状端面に複数の巻線端接続用ピン2−13の嵌着穴2−141を備え、所定の仕様に対応する所期の嵌着穴2−141に前記ピン2−13を嵌着することで、固定子磁極2−111と制御回路3を構成する回路基板3−1に搭載された検出素子3−2との相対位置が選択自在であるように構成され、好ましくは、
【0010】
前記ブラシレスDCモータ2が4個の磁極を有し2相半波もしくは単相全波
駆動されるもので、前記複数の巻線端接続用ピン2−13の嵌着穴2−141は、隣接する固定子磁極2−111間の中心線上から回転子永久磁石(2−2)に近接した部位で、検出素子3−2が回転方向に向かって機械角で夫々3±1度,6±1度,9±1度ずれた位置となるように、円弧上に並んだ3個として設けられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に成るブラシレスDCモータ2は、回路基板3−1への回転位置検出素子3−2の実装手段の併設による単一部品での仕様の多様化対応の実現と共に、回路基板3−1に形成される配線パターンの制約を縮減して、実装密度の高まるニーズにも応えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面により本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本願発明の実施例を示す固定子2−1の正面図で、周知の通り、所定の姿勢で固定子鉄芯2−11に対向配置される回路基板3−1は、これに搭載される回転位置検出素子3−2と、固定子鉄芯2−11との相関位置を特定するために所定の姿勢維持が求められるが、前記回路基板3−1に穿設される回転位置検出素子嵌着用小孔3−3の形成場所の精度が、当該回転位置検出素子3−2と固定子鉄芯2−11との位置決めを左右するものであることに変わりはなく、対応する本願発明でのスロットゼツ2−14に形成されるピン嵌着穴2−141の配置の精度も同様に影響することに変わりはない。
【0014】
図4に見る回路基板3−1と図5に見る固定子2−1を参照して、上述図1に示す複数のピン嵌着穴2−141が、固定子磁極2−111と回転位置検出素子3−2との位置相関を選択自在とすることは容易に理解されるものである。
【0015】
図2は、図6に見る上述従来技術に成る例の固定された固定子磁極2−111と回転位置検出素子3−2との位置相関に対応して、図1に見る選択自在のピン嵌着穴2−141により、位置相関が変化することを示すものである。
【実施例2】
【0016】
そして、上述引用先願公報に示すものと同じく、ブラシレスDCモータ2が4個の固定子磁極2−111を有し2相半波もしくは単相全波駆動されるものでは、前記複数の巻線端接続用ピンの嵌着穴2−141を、隣接する固定子磁極2−111間の中心線上から回転子永久磁石(2−2)に近接した部位で、検出素子3−2が回転方向に向かって機械角で夫々3±1度,6±1度,9±1度ずれた位置となるように、円弧上に並んだ3個設けることは、駆動電圧で高・中・低の3段階と、高・中・低の3段階の定速駆動の組み合わせによる駆動条件で、2相半波もしくは単相全波駆動ブラシレスDCモータ2について、詳細は省くが、高効率駆動に対応する回転位置検出素子3−2の配置が、3箇所に集約できることを確認した成果に基づくものである。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明に成るブラシレスDCモータ2は、特に多仕様への対応が容易なだけではなく、制御回路3の小型化・性能向上に係る電子部品実装密度向上をも実現するものとして、広く使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に成るブラシレスDCモータの例の固定子正面図である。
【図2】図1の例での基板(位置検出素子)と固定子(磁極)の位置調整説明図である。
【図3】図2に対応する基板と固定子の相関説明図である。
【図4】本発明に係る、共用される基板の例の正面図である。
【図5】本発明に係る固定子の例の断面図(a)と正面図(b)である。
【図6】従来技術での基板と固定子の相関説明図である。
【図7】本発明に係る軸流ファンの例の断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 軸流ファン
2 ブラシレスDCモータ
2−1 固定子
2−11 固定子鉄芯
2−111 固定子磁極
2−12 固定子巻線
2−13 巻線引出し接続ピン
2−14 スロットゼツ
2−141 ピン嵌着穴
3 制御回路
3−1 回路基板
3−2 回転位置検出素子
3−3 検出素子嵌着孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ヨーク及び該環状ヨークと一体の複数個の磁極を有する固定子鉄芯と、前記磁極に巻装される固定子巻線を備える固定子と、該固定子と小空隙を介して対向し回転自在に軸支された永久磁石を主体とする回転子と、該回転子の回転位置を検出するために設けられる検出素子と、該検出素子の信号を得て前記固定子巻線への通電制御を行う制御回路とを備えるブラシレスDCモータにおいて、固定子鉄芯と巻線とを絶縁するスロットゼツが、外周縁円弧状端面に複数の巻線端接続用ピンの嵌着穴を備え、所定の仕様に対応する所期のピン嵌着穴に前記ピンを嵌着することで、固定子磁極と制御回路を構成する回路基板に搭載された検出素子との相対位置が選択自在であるように構成されていること、を特徴とするブラシレスDCモータ。
【請求項2】
前記ブラシレスDCモータが4個の磁極を有し2相半波もしくは単相全波駆動されるブラシレスDCモータで、前記複数の巻線端接続用ピン嵌着穴は、隣接する磁極間の中心線上から回転子永久磁石に近接した部位で、検出素子が回転方向に向かって機械角で夫々3±1度,6±1度,9±1度ずれた位置となるように形成されている、円弧上に並んだ3個であること、を特徴とする請求項1または2に記載のブラシレスDCモータ。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−109601(P2006−109601A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292029(P2004−292029)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000228730)日本サーボ株式会社 (276)
【Fターム(参考)】