説明

ブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物及び油圧ホース

【課題】ブラスめっきワイヤとの接着性及び耐熱性が良好なホース用のブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物及び油圧ホースを提供する。
【解決手段】本発明のブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物は、ホースのブラスめっきワイヤ補強層を接着するゴム組成物であって、有機酸、脂肪酸塩又は有機酸塩から選ばれる少なくとも1種の含有量が1.5質量%以下であるジエン系重合体と、加硫促進剤とを含み、有機酸と脂肪酸塩と有機酸塩とを合わせた含有量が、ジエン系重合体100質量部に対して、1.5質量部以下であり、加硫促進剤の含有量が、ジエン系重合体100質量部に対して、0.1質量部超え1.0質量部以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホース用のブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物及び油圧ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築機械等に用いられる油圧ホース等には、ホースの内管ゴムと外管ゴムとの間に、補強層として、層間ゴム(インシュレーションゴム)とそれを挟んで、補強糸もしくはワイヤを編み上げた編組(ブレード)構造のもの、補強糸もしくはワイヤをスパイラル状に巻き付けたスパイラル構造を有するゴムホース等が用いられている。
【0003】
この油圧ホースは、耐油性等を考慮してクロロプレンゴム(CR)を主成分とする材料が使用されているが、このクロロプレンゴム以外のゴム成分として、溶液重合により調整されるゴム成分に加硫促進剤を添加する油圧ホースが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−291281号公報
【特許文献2】特開2005−291282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ゴム成分に添加する添加剤の添加量は少ない方がゴム特性を発揮する上で好ましいので、特許文献1及び2の更なる改良を図るべく、更に検討した結果、ブラスめっきワイヤとの接着性及び耐熱性が良好なゴム組成物を提案することを見いだした。
【0006】
本発明は、ブラスめっきワイヤとの接着性及び耐熱性が良好なホース用のブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物及び油圧ホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(1)〜(6)を提供する。
(1) ホースのブラスめっきワイヤ補強層を接着するゴム組成物であって、
有機酸、脂肪酸塩又は有機酸塩から選ばれる少なくとも1種の含有量が1.5質量%以下であるジエン系重合体と、加硫促進剤とを含み、
前記有機酸と前記脂肪酸塩と前記有機酸塩とを合わせた含有量が、ジエン系重合体100質量部に対して、1.5質量部以下であり、
前記加硫促進剤の含有量が、前記ジエン系重合体100質量部に対して、0.1質量部超え1.0質量部以下であることを特徴とするブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物。
(2) 前記加硫促進剤が、チウラム系加硫促進剤であり、
加硫促進剤が0.1質量部超え0.5質量部未満であることを特徴とする上記(1)に記載のブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物。
(3) 前記ジエン系重合体に含まれる前記有機酸と前記脂肪酸塩と前記有機酸塩とを合わせた含有量が、1.0質量%以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物。
(4) 前記有機酸がロジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸又はオレイン酸の何れか1つ以上であり、有機酸塩が、ロジン酸ナトリウム、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト又はホウ酸三ネオデカン酸コバルトの何れか1つ以上であることを特徴とする上記(1)から(3)の何れか一項に記載のブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物。
(5) 前記ジエン系重合体が、溶液重合スチレン−ブタジエンゴム(S−SBR)、溶液重合ブタジエンゴム(S−BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)から選ばれる1種および/または2種以上を主成分とすることを特徴とする上記(1)から(4)の何れか一つに記載のブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物。
(6) 上記(1)から(5)の何れか一つに記載のブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物を用いて形成されるゴム層と、該ゴム層に隣接するブラスめっきワイヤ補強層とを有することを特徴とする油圧ホース。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブラスめっきワイヤとの接着性を良好に維持しつつ、耐熱性が良好なホースを得ることができるゴム組成物及び油圧ホースを提供することができる。従って、本発明のゴム積層体は、自動車用エアコンホース、パワーステアリングホース、建設車両の油圧系等に用いられる油圧ホース等として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明のホースの構成を簡略に示す一部切欠斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせても良いし、適宜選択して用いてもよい。
【0011】
本発明の実施の形態に係るホース層間ゴム用ゴム組成物(以下、「本発明のゴム組成物」という。)は、ホースのブラスめっきワイヤ補強層を接着するゴム組成物であって、有機酸、脂肪酸塩又は有機酸塩から選ばれる少なくとも1種の含有量が1.5質量%以下であるジエン系重合体と、加硫促進剤と含み、有機酸と脂肪酸塩と有機酸塩とを合わせた含有量が、ジエン系重合体100質量部に対して、1.5質量部以下であり、加硫促進剤の含有量が、ジエン系重合体100質量部に対して、0.1質量部超え1.0質量部以下である。尚、本明細書において、加硫前のゴム組成物は未加硫のゴム組成物といい、加硫後のゴム組成物は加硫したゴム組成物という。
【0012】
<ジエン系重合体>
本発明のゴム組成物に用いるジエン系重合体は、有機酸、脂肪酸塩、又は有機酸塩から選ばれる少なくとも1種を含む。有機酸には、一般的には脂肪酸が含まれる。有機酸としては、例えば、ロジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸又はオレイン酸などを挙げることができる。脂肪酸塩としては、例えば、脂肪酸カリ石けん、オレイン酸カリ石けん、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アンモニウム等を挙げることができる。有機酸塩としては、例えば、ロジン酸ナトリウム、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト又はホウ酸三ネオデカン酸コバルトなどを挙げることができる。有機酸、脂肪酸塩、有機酸塩は、各々一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いるようにしてもよい。
【0013】
ジエン系重合体としては、溶液重合のゴムを用いるのが好ましい。ジエン系重合体としては、例えば、溶液重合スチレン−ブタジエンゴム(S−SBR)、溶液重合ブタジエンゴム(S−BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)などのゴム成分が挙げられ、これらを主成分として含む。これらのゴム成分を単独で又は2種類以上混合するようにしてもよい。S−SBRとしては、例えば、旭化成ケミカルズ社製の商品名:タフデン2000Rなどがある。S−BRとしては、例えば、日本ゼオン社製の商品名:ニポールBR1220などがある。イソプレンゴム(IR)としては、日本ゼオン社製の商品名:ニポールIR2200などがある。EPDMとしては、例えば、住友化学社製の商品名:ESPRENE505などがある。
【0014】
ジエン系重合体に含まれる有機酸、脂肪酸塩、又は有機酸塩から選ばれる少なくとも1種の含有量は、1.5質量%以下であり、好ましくは1.0質量%以下である。有機酸、脂肪酸塩、又は有機酸塩とから選ばれる少なくとも1種の含有量を1.5質量%以下とすることで、本発明のゴム組成物に要求されるホース用としての諸物性及び混合加工性・圧延加工性を任意の比率とすることができる。
【0015】
本発明のゴム組成物に含まれる有機酸と脂肪酸塩と有機酸塩は、ジエン系重合体に含まれる有機酸と脂肪酸塩と有機酸塩および別途ゴム組成物に配合する有機酸と脂肪酸塩と有機酸塩とを合わせた含有量であり、ジエン系重合体100質量部に対して、1.5質量部以下である。有機酸と脂肪酸塩と有機酸塩とを合わせた含有量が、ジエン系重合体100質量部に対して1.5質量部を超えると、ジエン系重合体中における有機酸、脂肪酸塩又は有機酸塩の添加量が多いため、接着性が阻害される。このため、ジエン系重合体に含まれる有機酸と脂肪酸塩と有機酸塩とを合わせた含有量を1.5質量部以下とすることで、本発明のゴム組成物は、接着性を発揮することができる。
【0016】
本発明のゴム組成物は、ジエン系重合体に、本発明の目的を損なわない範囲で、他のジエン系重合体又はジエン系重合体以外の重合体の何れか一方又は両方を加えることができる。追加可能な他のジエン系重合体又はジエン系重合体以外の重合体は、ジエン系重合体と他のジエン系重合体又はジエン系重合体以外の重合体との重合体混合物中、有機酸、脂肪酸塩又は有機酸塩から選ばれる少なくとも1種の含有量が1.5質量%以下、好ましくは1.0質量%以下となる範囲で有機酸、脂肪酸塩又は有機酸塩を任意の量で含有する。有機酸、脂肪酸塩又は有機酸塩から選ばれる少なくとも1種の含有量を、上記範囲内とすることで、上述と同様、本発明のゴム組成物に要求されるホース用としての諸物性及び混合加工性・圧延加工性に応じて任意の比率とすることができる。
【0017】
他のジエン系重合体、ジエン系重合体以外の重合体としては、例えば、天然ゴム(NR)、乳化重合SBR(E−SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)等が挙げられる。好ましくは、ジエン系重合体である天然ゴム(NR)、乳化重合SBR(E−SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)が本発明のゴム組成物に要求されるホース用としての諸物性を高次元で発揮できるので好ましい。これら他のジエン系重合体又はジエン系重合体以外の重合体を一種または二種以上をジエン系重合体と併用してもよい。
【0018】
このとき、他のジエン系重合体又はジエン系重合体以外の重合体を一種又は二種以上併用する場合でも、他のジエン系重合体又はジエン系重合体以外の重合体に含まれる有機酸、脂肪酸塩、又は有機酸塩から選ばれる少なくとも1種の含有量は、1.5質量%以下であり、好ましくは1.0質量%以下である。他のジエン系重合体又はジエン系重合体以外の重合体に含まれる有機酸、脂肪酸塩又は有機酸塩から選ばれる少なくとも1種の含有量を上記範囲内とすることで、上述と同様、本発明のゴム組成物は接着性を発揮することができる。
【0019】
有機酸、脂肪酸塩又は有機酸塩は、予めジエン系重合体に配合されていてもよく、加硫促進剤など他の配合剤と同時に添加するようにしてもよいが、ジエン系重合体に含まれる有機酸と脂肪酸塩と有機酸塩とを合わせた含有量は、ジエン系重合体100質量部に対して1.5質量部以下であり、且つジエン系重合体に含まれる有機酸と脂肪酸塩と有機酸塩と、添加する有機酸と脂肪酸塩と有機酸塩との配合量を合わせた含有量は、ジエン系重合体100質量部に対して、1.5質量部以下とする。
【0020】
<加硫促進剤>
本発明のゴム組成物においては、本発明のジエン系重合体100質量部に対して、加硫促進剤を0.1質量部超え1.0質量部以下としている。加硫促進剤としては、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤を用いるのが好ましく、チウラム系加硫促進剤を用いるのが特に好ましい。チウラム系加硫促進剤として、具体的には、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT)等を挙げることができる。加硫促進剤としてチウラム系加硫促進剤を用いる場合、チウラム系加硫促進剤の添加量は、ジエン系重合体100質量部に対して、0.1質量部超え0.5質量部未満とするのが好ましく、0.2質量部以上0.4質量部以下とするのがより好ましい。チウラム系加硫促進剤の添加量を0.5質量部未満とするのは、少ない添加量で加硫特性、初期接着性及び耐熱性を全て加味させるためである。
【0021】
また、本発明のゴム組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、充填剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、有機系活性剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、加硫剤、加橋促進助剤、加硫遅延剤、接着助剤が挙げられる。
【0022】
充填剤は、例えば、カーボンブラック、シリカ(ホワイトカーボン)、クレー、タルク、酸化鉄、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、硫酸バリウム、マイカ(雲母)、ケイソウ土などが挙げられる。これらを一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。カーボンブラックとしては、得られる本発明のゴム組成物の極薄シート圧延加工性の観点より、FTF級、GPF級、SRF級等の粒径が大きい、いわゆるソフトカーボンが好ましい。シリカは、特に限定されないが、例えば、結晶性シリカ、沈殿シリカ、非晶質シリカ(例えば、高温処理シリカ)、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカが挙げられる。特に、シリカは、カーボンブラックと同様に、カーボンゲル(バウンドラバー)を生成することが知られており、必要に応じて好適に用いることができる。クレーは、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー等が挙げられる。
【0023】
可塑剤は、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、コハク酸イソデシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、トリメリット酸エステル、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル、ナフテンオイルなどが挙げられる。これらを一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0024】
軟化剤としては、具体的には、例えば、アロマ系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、石油樹脂、植物油、液状ゴム等が挙げられ、これらを一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0025】
老化防止剤としては、例えば、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N,N′−ジナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、スチレン化フェノール(SP)、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物(RD)等が挙げられ、これらを一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0026】
有機系活性剤としては、具体的には、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸亜鉛等が挙げられ、これらを一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0027】
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
【0028】
帯電防止剤は、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
【0029】
難燃剤は、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。また、非ハロゲン系難燃剤として、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、トリクレジル・ホスフェート、ジフェニルクレジル・ホスフェートが挙げられる。
【0030】
加硫剤は、例えば、硫黄系、有機過酸化物系、金属酸化物系、フェノール樹脂、キノンジオキシム等の加硫剤が挙げられる。これらを一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。硫黄系の加硫剤としては、例えば、硫黄、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド(DPTT)、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイドなどの有機含硫黄化合物が挙げられる。硫黄としては、粉末硫黄、沈降性硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄が挙げられる。有機過酸化物系の加硫剤としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)が挙げられる。その他の加硫剤としては、例えば、亜鉛華、酸化マグネシウム、リサージ、フェノール樹脂などの樹脂、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、メチレンジアニリンが挙げられる。
【0031】
加橋促進助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができる。例えば、亜鉛華;ステアリン酸、オレイン酸、これらのZn塩を用いることができる。
【0032】
加硫遅延剤としては、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸などの有機酸;N−ニトロソージフェニルアミン、N−ニトロソーフェニル−β−ナフチルアミン、N−ニトロソ−トリメチル−ジヒドロキノリンの重合体などのニトロソ化合物;トリクロルメラニンなどのハロゲン化物;2−メルカプトベンツイミダゾール、N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド(PVI)等が挙げられる。これらを一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0033】
接着助剤は、トリアジンチオール系化合物(例えば、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、6−ブチルアミノ−2,4−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン)、ナフテン酸コバルト、レゾルシン、クレゾール、レゾルシン−ホルマリンラテックス、モノメチロールメラミン、モノメチロール尿素、エチレンマレイミドが挙げられる。
【0034】
上述した各種添加剤は、それぞれ、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0035】
<ゴム組成物の製造方法>
本発明のゴム組成物の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、上記ジエン系重合体と、必要に応じてその他のジエン系重合体又はジエン系重合体以外の重合体と上記各種添加剤等とを配合させることにより製造することができる。例えば、上記ジエン系重合体に、必要に応じてその他のジエン系重合体又はジエン系重合体以外の重合体と上記各種添加剤等とを、バンバリーミキサー、ニーダー等の密閉式混合機、ロールなどの混練ロール機、押出し機、二軸押出機等を用いて混練することによりゴム組成物を製造する方法が挙げられる。
【0036】
このように、本発明のゴム組成物は、ブラスめっきワイヤとの接着性を良好に維持しつつ、耐熱性が良好なホースを得ることができるゴム組成物及び油圧ホースを提供することができる。
【0037】
<ホース>
本発明のホースは、本発明のゴム組成物を用いて形成されるゴム層と、該ゴム層に隣接する補強層とを有するホースである。本発明のホースの好適な実施態様の一例について図1を用いて説明する。図1は、ホースの各層を切り欠いて示す斜視図である。図1に示すように、油圧ホース11は、ゴム内層12を内管として有し、その上層に補強層13およびゴム外層14を外管として有するものである。本発明のホースを構成するゴム層(ゴム内層、ゴム外層)および補強層について詳述する。
【0038】
<ゴム層>
上記ゴム層は、補強層13に隣接する層であり、本発明のホースは、ゴム内層12およびゴム外層14を具備するものである。本発明においては、上記ゴム層のうち少なくとも一方の層を本発明のゴム組成物を用いて形成するものであり、ホースの耐候性の観点から、少なくともゴム外層14を本発明のゴム組成物を用いて形成するのが好ましい。このように本発明のゴム組成物を用いてゴム層を形成することにより、補強層として繊維材料を用いた場合であっても、補強層13との接着性を良好に維持しつつ、未加硫時の貯蔵安定性および押出し加工性に優れるホースを得ることができる。
【0039】
本発明においては、上記ゴム内層の厚みは、例えば0.2mm以上4.0mm以下であるのが好ましく、0.5mm以上2.0mm以下であるのがより好ましい。同様に、上記ゴム外層の厚みは、例えば0.2mm以上4.0mm以下であるのが好ましく、0.5mm以上2.0mm以下であるのがより好ましい。
【0040】
<補強層>
補強層13は、ゴム内層12の外側に、強度保持の観点から所望により設けられる層である。本発明においては、補強層13は、補強糸もしくはワイヤ等の補強材を編み上げることにより形成される。補強層13は、その網組の方法を特に限定されず、ブレード状で形成されたものであっても、スパイラル状で形成されたものであってもよく、耐圧力により適宜選択すればよい。また、補強層13は、1層単独で形成されていても複数層で形成されていてもよい。補強糸としては例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、ポリケトン繊維、ポリアリレート繊維等が挙げられる。ワイヤとしては、例えば、通常、ホースに用いられる硬鋼線が挙げられる。具体的には、防錆および接着性付与のために、ブラスめっきワイヤまたは亜鉛めっきワイヤを用いるのが好ましく、ブラスめっきワイヤを用いるのがより好ましい。
【0041】
上記ゴム層および補強層13を有する本発明のホースの製造方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、マンドレル上に、ゴム内層12、補強層13およびゴム外層14をこの順に積層させた後に、それらの層を例えば140℃以上190℃下、30分から180分の条件で、プレス加硫、蒸気加硫、オーブン加硫(熱気加硫)または温水加硫することにより加硫接着させて製造する方法等が好適に例示される。
【0042】
従って、本発明の油圧ホースの利用分野は特に限定されるものではなく様々な用途に適用することができるが、例えば、自動車用エアコンホース、パワーステアリングホース、建設車両の油圧系等に用いられる油圧ホース等として好適に用いることができる。
【0043】
また、本実施形態においては、ゴム積層体として油圧ホースを用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばコンベヤベルトなど他のゴム積層体においても同様に用いることができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<1.ゴム組成物の調製>
以下に示される原料をそれぞれ表1、2に示される質量比で密閉式混合機に投入し、表1、2に示される各ゴム組成物を得た。実施例1〜11における各成分と、その添加量(質量部)を「表1」に示す。比較例1〜10における各成分と、その添加量(質量部)を「表2」に示す。また、ジエン系重合体中の有機酸塩の量と、ゴム組成物中における有機酸塩の量とを示す。ジエン系重合体中の有機酸塩の配合量は質量%で示し、ゴム組成物中における有機酸塩の配合量は質量部で示す。
【0045】
また、実施例5は、予めロジン酸石けん(5.38質量%)を含有したE−SBRを、S−SBRに表1に示す割合で配合して、ジエン系重合体中のロジン酸石けんの含有量を0.8質量%とし、ロジン酸石けんを0.8質量部含むゴム組成物とした。また、実施例6は、予めロジン酸石けん(5.38質量%)を含有したE−SBRを、S−SBRに表1に示す割合で配合して、ジエン系重合体中のロジン酸石けんの含有量を1.0質量%とし、ロジン酸石けんを1.0質量部含むゴム組成物とした。また、実施例7は、予めロジン酸石けん(5.38質量%)を含有したE−SBRを、S−SBRに表1に示す割合で配合して、ジエン系重合体中のロジン酸石けんの含有量を1.5質量%とし、ロジン酸石けんを1.5質量部含むゴム組成物とした。また、実施例10は、予めロジン酸石けん(5.38質量%)を含有したE−SBRを、S−SBRに表1に示す割合で配合して、ジエン系重合体中のロジン酸石けんの含有量を1.0質量%とし、ロジン酸Naを添加して有機酸塩を1.5質量部含むゴム組成物とした。
【0046】
[使用した原料]
・S−SBR:タフデン2000R、旭化成ケミカルズ株式会社製
・溶液重合BR(S−BR):Nipol BR 1220、日本ゼオン株式会社製
・EPDM:ESPRENE 505、住友化学株式会社製
・E−SBR:Nipol 1500、日本ゼオン株式会社製
・ロジン酸ナトリウム(ロジン酸Na):Dresinate、HERCULES社製
・ナフテン酸コバルト(ナフテン酸Co):ナフテン酸コバルト10%、DIC株式会社製
・ステアリン酸コバルト(ステアリン酸Co):ステアリン酸コバルト、DIC株式会社製
・カーボンブラック:HTC#G、新日化カーボン株式会社製
・酸化亜鉛(ZnO):酸化亜鉛三種、正同化学工業株式会社製
・アロマ系オイル:ダイアナ プロセスオイル AH−58、出光興産株式会社製
・硫黄:油処理硫黄、細井化学工業株式会社製
・チウラム系加硫促進剤(TS):サンセラー TS−G、三新化学工業株式会社製
・チウラム系加硫促進剤(TT):サンセラー TT−PO、三新化学工業株式会社製
・加硫遅延剤(PVI):N−シクロヘキシルチオフタルイミド、東レ・ファインケミカル株式会社製
【0047】
得られた各ゴム組成物を用いて、ホース状ワイヤ接着試験を行った。加硫条件は148℃で30分行った。
【0048】
<2.ゴム組成物の評価>
上記のようにして得られた各ホース状ワイヤ接着物の未加硫特性、加硫特性、初期接着性及び耐熱性について、各々評価を行った。
【0049】
[未加硫特性]
得られたゴム組成物について、JIS K6300−2(振動式加硫試験機による加硫特性の求め方)に準拠して、未加硫のゴム組成物の加硫を加硫試験機により148℃で行い、レオメータ曲線から最小トルク(ML)と最大トルク(MH)を検出し、t(95)を求めた。試験結果より求められたt(95)は、以下のように評価した。試験結果を表1、2に示す。
○:t(95)が45分以下のもの
×:t(95)が45分を超えるもの
【0050】
[加硫特性]
得られたゴム組成物を148℃のプレス成型機を用いて、面圧3.0MPaで30分間加硫して、2mm厚の加硫シートを作製した。このシートからJIS3号のダンベル状の試験片を打ち抜き、引っ張り速度500mm/分で引張試験を「JIS K6251−2004」に準じて行い、引張強さ(TB)、切断時伸び(EB)、引張応力100%モジュラス(M100)を求め、加硫特性を評価した。試験結果より求められた加硫特性は、以下のように評価した。試験結果を表1、2に示す。引張強さ(TB)は10MPa以上であれば良好であると判断し、切断時伸び(EB)は、170%以上であれば良好であると判断し、引張応力100%モジュラス(M100)は、7MPa上であれば良好であると判断した。
(引張強さ(TB))
二重丸:15MPa以上のもの
○:10MPa以上15MPa未満のもの
×:10MPa未満のもの
(切断時伸び(EB))
二重丸:200%以上のもの
○:170%以上200%未満のもの
×:170%未満のもの
(引張応力100%モジュラス(M100))
二重丸:10MPa以上のもの
○:7MPa以上10MPa未満のもの
×:7MPa未満のもの
【0051】
[耐熱老化性]
耐熱老化性試験として、老化試験(120℃×72hr)を実施し、老化試験機を用いて加硫ゴムを規定温度で規定時間加熱したのち、ΔTB・ΔEB・ΔM100を測定し、加熱処理前に対する値の変化を求め加硫ゴムの老化性を調べ、耐熱性を評価した。試験結果より求められた耐熱性は、以下のように評価した。試験結果を表1、2に示す。ΔTBは、−40%以上−10%以下、10%以上40%以下であれば良好であると判断し、ΔEBは、−50%以上−30%以下、30%以上50%以下であれば良好であると判断し、ΔM100は、−60%以上−30%以下、30%以上60%以下であれば良好であると判断した。
(ΔTB)
二重丸:±10%以下のもの
○:−40%≦ΔTB<−10%、10%<ΔTB≦40%
×:ΔTB<−40%、40%<ΔTB
(ΔEB)
二重丸:±30%以下のもの
○:−50%≦ΔEB<−30%、30%<ΔEB≦50%
×:ΔEB<−50%、50%<ΔEB
(ΔM100)
二重丸:±30%以下のもの
○:−60%≦ΔM100<−30%、30%<ΔM100≦60%
×:ΔM100<−60%、60%<ΔM100
【0052】
[接着性]
接着性は、剥離強さ及びゴム付きにより評価した。
(1)剥離強さ
得られた各ゴム組成物をラボ用ロールにより厚み2.5mmのシート状に成形し、真鍮板と組み合わせ、圧着した。ただし、剥離する際にチャックでつかむ部分にはセロハン紙を配し、接着しないようにした。その後、ラボ用プレス成形機を用いて、142℃で95分間、面圧3.0MPaで加圧加硫し、真鍮とゴムの複合体を得た。この複合体を室温で24時間放置した後、25mm幅に切り出して試験片を得た。JIS K6256−1999「金属片と加硫ゴムの90度はく離試験」の規定に準じて、JIS K6256に規定されている引張試験機を用いて、得られた試験片について引張速度50mm/分の条件で、ゴム組成物と真鍮板間の剥離試験を行い、剥離強さを測定した。
(剥離力)
二重丸:100N/25mm以上のもの
○:80N/25mm以上100未満のもの
×:80N/25mm未満のもの
(2)ゴム付き
上記と同様に剥離試験を行い、JIS K6256−1999により、剥離したサンプルの真鍮板上のゴムの被覆%によってゴム付きを測定した。
【0053】
剥離強さの値が80N/25mm以上かつゴム付きが75%以上である場合、接着性が良好であると言える。
(ゴム付き)
二重丸:90%以上のもの
○:75%以上90%未満のもの
×:75%未満のもの
【0054】
未加硫特性、加硫特性、初期接着性及び耐熱性の結果を総合的に判定して、未加硫特性、加硫特性、初期接着性及び耐熱性の判定を行ない、総合評価をした。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
表1、2に示すように、比較例1乃至10のゴム組成物は、未加硫物性、加硫物性、初期接着性、耐熱性の少なくとも一つは劣り、特に、比較例7以外のゴム組成物は、初期接着性が劣っていた。これに対し、本発明の実施例1乃至11のゴム組成物は、未加硫物性、加硫物性、初期接着性、耐熱性の全てが良好であった。特に、実施例5のゴム組成物については、上述のように、予めロジン酸石けん(5.38質量%)を含有したE−SBRを、S−SBRに配合して、ジエン系重合体中のロジン酸石けんの含有量を0.8質量%とし、ロジン酸石けんを0.8質量部含むゴム組成物に配合したものであるが、未加硫物性、加硫物性、初期接着性、耐熱性は共に良好であった。また、ロジン酸Naを別途0.5質量部又は1.5質量部添加した実施例8、9においても、未加硫物性、加硫物性、初期接着性、耐熱性は共に良好であった。よって、本発明の実施例1乃至11のゴム組成物によれば、少ない加硫促進剤の添加であっても、熱老化性が改良され、ワイヤ接着性は、良好であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明のブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物によれば、熱老化性が改良されたブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物を提供できる。そのため、本発明のブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物は油圧ホース用等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
11 油圧ホース
12 ゴム内層
13 補強層
14 ゴム外層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホースのブラスめっきワイヤ補強層を接着するゴム組成物であって、
有機酸、脂肪酸塩又は有機酸塩から選ばれる少なくとも1種の含有量が1.5質量%以下であるジエン系重合体と、加硫促進剤とを含み、
前記有機酸と前記脂肪酸塩と前記有機酸塩とを合わせた含有量が、ジエン系重合体100質量部に対して、1.5質量部以下であり、
前記加硫促進剤の含有量が、前記ジエン系重合体100質量部に対して、0.1質量部超え1.0質量部以下であることを特徴とするブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物。
【請求項2】
前記加硫促進剤が、チウラム系加硫促進剤であり、
加硫促進剤が0.1質量部超え0.5質量部未満であることを特徴とする請求項1に記載のブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ジエン系重合体に含まれる前記有機酸と前記脂肪酸塩と前記有機酸塩とを合わせた含有量が、1.0質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物。
【請求項4】
前記有機酸がロジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸又はオレイン酸の何れか1つ以上であり、有機酸塩が、ロジン酸ナトリウム、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト又はホウ酸三ネオデカン酸コバルトの何れか1つ以上であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ジエン系重合体が、溶液重合スチレン−ブタジエンゴム(S−SBR)、溶液重合ブタジエンゴム(S−BR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)から選ばれる1種および/または2種以上を主成分とすることを特徴とする請求項1から4の何れ一項に記載のブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載のブラスめっきワイヤ接着用ゴム組成物を用いて形成されるゴム層と、該ゴム層に隣接するブラスめっきワイヤ補強層とを有することを特徴とする油圧ホース。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−51978(P2012−51978A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194022(P2010−194022)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】