説明

ブレード及びブレードの製造方法

【課題】ブレードを製造するための方法及びシステムを提供すること。
【解決手段】ロータブレード(300)が提供される。ロータブレードは、翼形部(302)と、翼形部に結合され且つ残留応力の低減を可能にするために切り出し部(220)を定めたダブテール(304)と、切り出し部内に位置付けられてダブテールに取り付けられるインサート(350)とを含む。 前記切り出し部(220)は、第1の壁部(320)、対向する第2の壁部(322)、並びに前記第1及び第2の壁部を接続する弓形部分(324)によって定めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、全体的にブレードに関し、より詳細には、ブレードを製造するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの公知のガスタービンエンジン圧縮機は、ディスク又はスプールからブレード先端まで半径方向外向きに延びて、エンジンを貫通する空気流路を定めるロータブレードを含む。作動時には、エンジンを流れる空気は、ブレードにかなりの機械応力(例えば、翼弦方向の曲げ応力)を与え、時間の経過に伴ってブレードに亀裂又は他の破損を生じさせるようになる。従って、少なくとも一部の公知のロータブレードは、硬化プロセスを用いて複合材料のパイルで形成され、ブレードに構造的支持を付加する。
【0003】
少なくとも一部の公知の圧縮機ロータブレードは、ブレードの根元に近接してより大きな断面積を有して、ブレードをディスク又はスプールに結合するためのダブテールを形成する。しかしながら、硬化プロセス中に、少なくとも一部の公知のロータブレードにおいては残留応力が誘起される場合がある。このような残留応力は、ガスタービンエンジンの作動中にブレードに与えられる熱及び/又は機械応力の作用によりブレードが破損する可能性が高くなり、少なくとも一部の公知のブレードの寿命及び耐久性が低下する。
【発明の概要】
【0004】
1つの態様において、ロータブレードを製造する方法が提供される。本方法は、複数の複合パイルから翼形部分及びダブテール部分を含むプリフォームを形成する段階と、プリフォームのダブテール部分から切り出し部分を除去し、プリフォーム内に切り出し部を定め、この切り出し部分の除去によりプリフォーム内の残留応力の低減を可能にする段階と、切り出し部分の除去により形成された切り出し部にインサートを挿入する段階と、を含む。
【0005】
別の態様において、ロータブレードが提供される。ロータブレードは、翼形部と、翼形部に結合され且つ切り出し部を定めたダブテールと、を含み、該切り出し部が、複数の複合プライから形成されたプリフォームから切り出し部分を除去することによって形成されて、プリフォーム内の残留応力の低減を可能にし、ロータブレードが更に、切り出し部内に位置付けられてダブテールに取り付けられるインサートを含む。
【0006】
更に別の態様において、構成要素を製造する方法が提供される。本方法は、複数の複合プライからプリフォームを形成する段階と、プリフォームから切り出し部分を除去し、プリフォーム内に切り出し部を定め且つプリフォーム内の残留応力の低減を可能にする段階と、切り出し部分の除去により形成された切り出し部内にインサートを挿入する段階と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ガスタービンエンジンの概略図。
【図2】ロータブレードを形成できる例示的なプリフォームの部分断面図。
【図3】図1に示すガスタービンエンジンと共に使用するための例示的なロータブレードの部分側面図。
【図4】図3に示すロータブレードの部分斜視図。
【図5】構成要素を製造する例示的な方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明は、限定ではなく例証として、ロータブレードのような構成要素を製造する例示的な方法及びシステムを示している。本明細書は、本開示事項を実施する最良の形態であると現在思われるものを含む、本開示事項を当業者が実施し利用するのを可能にし、またその開示の幾つかの実施形態、改造形態、変形形態、代替形態、及び使用法について記述していることが分かるであろう。本開示は、好ましい実施形態、すなわちブレードを製造するための方法及びシステムに適用するものとして説明する。しかしながら、本開示は、広範囲のシステム及び様々な産業及び/又は消費者用途における構成要素の製造に一般的に応用されることも企図される。
【0009】
図1は、ファン組立体102、高圧圧縮機104、及び燃焼器106を含む、ガスタービンエンジン100の概略図である。エンジン100はまた、高圧タービン108及び低圧タービン110を含む。作動時には、空気がファン組立体102を通って流れ、加圧された空気がファン組立体102から高圧圧縮機104に供給される。高度に加圧された空気が燃焼器106に送給される。燃焼器106からの空気流は、回転タービン108及び110を駆動し、排気システム118を通ってガスタービンエンジン100から流出する。
【0010】
図2は、ロータブレード(図2には図示していない)を形成することができる例示的なプリフォーム200の部分断面図である。プリフォーム200は、翼形部分202と、ダブテール部分204とを含む。プリフォーム200は、以下で詳細に説明するように、翼形部分202がロータブレードの翼形部になり、ダブテール部分204がロータブレードのダブテールになる(何れも図2には示さず)ように機械加工される。
【0011】
例示的な実施形態において、プリフォーム200は、モールド(図示せず)中に複合材料のプライ206をスタックしてモールドを加熱(例えば、硬化プロセスを用いて)することにより形成される。モールドは、少なくとも部分的にはプリフォーム200の形状で形成される。硬化プロセス中、冷却段階の間のプライ206の内部収縮に起因して、プリフォーム200内に残留応力が発生する。例えば、プライ206の方向及び/又は向きを含む、プリフォーム200の内部構造によっても残留応力が発生する可能性がある。プリフォーム200のような構成要素において、ダブテール部分204が翼形部分202よりも大きな断面積を有するので、残留応力は一般に、ダブテール部分204の中間点208に集中する。
【0012】
ロータブレードを形成するために、第1の切断ライン212に沿って切断することにより、プリフォーム200から過剰部分210が除去され、第2の切断ライン216に沿って切断することにより、切り出し部分214が除去される。切断は、機械加工及び/又は水ジェットプロセスを用いて行うことができる。或いは、本明細書で説明されるようにロータブレードを形成可能にするあらゆる方法を用いて切断を行うこともできる。切り出し部分214を除去することにより、プリフォーム200及びその結果、ロータブレード内に切り出し部220が生成される。
【0013】
図3は、プリフォーム200(図2に示す)を機械加工することによって形成できるロータブレード300の部分側面図である。図4は、ロータブレード300の部分斜視図である。ロータブレード300は、ガスタービンエンジン100(図1に示す)と共に用いることができる。1つの実施形態において、複数のロータブレード300が、ガスタービンエンジン100の高圧圧縮機段(図示せず)を形成する。ロータブレード300は、翼形部302と、翼形部302をロータディスク(図示せず)に装着するための一体型ダブテール304とを含む。上述のように、翼形部302は、プリフォーム200の翼形部分202から形成され、ダブテール304は、プリフォーム200のダブテール部分204から形成される。ロータブレード300は、第1の表面306と、対向する第2の表面308とを含む。例示的な実施形態において、ブレード300は、ダブテール304において翼形部302よりも大きな断面積を有し、ダブテール304においてブレード300のディスクへの結合を容易にする。
【0014】
ロータブレード300の切り出し部220は、プリフォーム200から切り出し部分214を除去することにより得られる。切り出し部220は、第1の壁部320、第2の壁部322、並びに第1及び第2の壁部320、322を接続する弓形部分324によって定められる。切り出し部220は、ダブテール304のベース340から頂点243まで延びる、深さDを有する。例示的な実施形態において、頂点342は、第1の表面306と、第2の表面308との間のほぼ中間にあるダブテール304の中間点344に位置する。切り出し部220は、ロータブレード300の軸方向長さLに沿って第1の面346から第2の面348まで延びる。或いは、切り出し部220は、軸方向長さLの一部に沿って延びることができる。
【0015】
例示的な実施形態において、第1及び第2の壁部320、322は、ベース340から弓形部分324までテーパが付けられ、ベース340において第1の壁部320と第2の壁部322との間に定められる幅Wが弓形部分324よりも大きいようになる。弓形部分324は、例示的な実施形態において実質的に半円形である。或いは、切り出し部220は、ロータブレード300が本明細書で説明されるように機能することができるあらゆる寸法及び/又は構成を有することができる。
【0016】
ブレード300の構造的完全性を維持するために、インサート350が切り出し部220内に挿入される。インサート350は、切り出し部220と実質的に同じ形状を有し、インサート350が切り出し部220を実質的に充填するようになる。例示的な実施形態において、インサート350は、第1の表面352、対向する第2の表面354、弓形頂部356、及び実質的に平坦な底部358を含む。インサート350が切り出し部220に挿入されると、第1の表面352が第1の壁部320に隣接し、第2の表面354が第2の壁部322に隣接し、弓形頂部356が弓形部分324に隣接し、実質的に平坦な底部358がベース340と実質的に平坦な表面を形成する。切り出し部220と同様に、インサート350は、ブレード300の軸方向長さLに等しい長さを有し、インサート350の前面360が第1の面346と実質的に平坦な表面を形成し、且つインサート350の後面362が第2の面348と実質的に平坦な表面を形成するようになる。
【0017】
例示的な実施形態において、第1及び第2の表面352、354は、実質的に平坦な底部358から弓形頂部356までテーパが付けられ、幅Wが実質的に平坦な底部358において弓形頂部356よりも大きいようになる。弓形頂部356は、例示的な実施形態において実質的に半円形である。或いは、インサート350は、ロータブレード300が本明細書で説明されるように機能することができるあらゆる寸法及び/又は構成を有することができる。インサート350は、ロータブレード300と同じ材料又はロータブレード300とは異なる材料で構成することができる。インサート350を固定するために、例示的な実施形態において、インサート350は、何らかの好適な取り付け及び/又は接合方法を用いてロータブレード300に取り付けられる。
【0018】
図5は、ロータブレード300のような構成要素を製造するための例示的な方法500のフローチャートである。本方法は、プリフォーム200及びパイル206のように、複数の複合パイルからプリフォームを形成する段階(502)を含む。プリフォームから切り出し部分214のような切り出し部分を除去する(504)。切り出し部分を除去する段階504により、プリフォームにおいて発生する残留応力の低減が可能になる。切り出し部分の除去により形成された切り出し部(切り出し部220など)内にインサート(インサート350など)を挿入し、ロータブレード300の構造的完全性の維持を可能にする。インサートを固定するために、インサートを構成要素に接着及び/又は取り付ける(508)。
【0019】
ブレードを製造するための方法及びシステムの例示的な実施形態を上記で詳細に説明した。ブレードを製造するための方法及びシステムは、本明細書で記載される特定の実施形態に限定されるものではなく、むしろ本方法及びシステムの構成要素は、本明細書で記載した他の構成要素とは独立して別個に利用することができる。例えば、本明細書で記載される方法及びシステムは、他の産業及び/又は消費者向けの用途を有することができ、本明細書で記載されるロータブレードでの実施に限定されるものではない。むしろ、本発明は、他の多くの産業に関連して実施し且つ利用することができる。
【0020】
様々な特定の実施形態に関して本発明を説明してきたが、本発明が特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲内の変更で実施することができることは、当業者には分かるであろう。
【符号の説明】
【0021】
100 ガスタービンエンジン
102 ファン組立体
104 高圧圧縮機
106 燃焼器
108 高圧タービン
110 低圧タービン
118 排気システム
200 プリフォーム
202 翼形部分
204 ダブテール部分
206 プライ
208 中間点
210 過剰部分
212 第1の切断ライン
214 切り出し部分
216 第2の切断ライン
220 切り出し部
300 ロータブレード
302 翼形部
304 ダブテール
306 第1の表面
308 第2の表面
320 第1の壁部
322 第2の壁部
324 弓形部分
340 ベース
342 頂点
344 中間点
346 第1の面
348 第2の面
350 インサート
352 第1の表面
354 第2の表面
356 弓形頂部
358 実質的に平坦な底部
360 前面
362 後面
500 方法
502 プリフォームを形成する段階
504 切り出し部分を除去する段階
506 切り出し部にインサートを挿入する段階
508 構成要素にインサートを取り付ける段階

【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼形部(302)と、
前記翼形部(302)に結合され且つ切り出し部(220)を定めたダブテール(304)と、
を備えたロータブレード(300)であって、前記切り出し部が、複数の複合プライ(206)から形成されたプリフォーム(200)から切り出し部分(214)を除去することによって形成されて、前記プリフォーム内の残留応力の低減を可能にし、
前記ロータブレード(300)が更に、
前記切り出し部内に位置付けられて前記ダブテールに取り付けられるインサート(350)を備える、ロータブレード(300)。
【請求項2】
前記切り出し部(220)が、第1の壁部(320)、対向する第2の壁部(322)、並びに前記第1及び第2の壁部を接続する弓形部分(324)によって定められる、請求項1に記載のロータブレード(300)。
【請求項3】
前記第1及び第2の壁部(320、322)が、前記ダブテール(304)のベース(340)から前記弓形部分(324)まで延びており、前記第1及び第2の壁部が、前記ベースから前記弓形部分までテーパが付けられる、請求項2に記載のロータブレード(300)。
【請求項4】
前記切り出し部(220)が、前記プリフォーム(200)の第1の表面(306)と、第2の表面(308)との間のほぼ中間で形成される、請求項1に記載のロータブレード(300)。
【請求項5】
前記インサート(350)及び前記プリフォーム(200)が実質的に同じ材料から構成される、請求項1に記載のロータブレード(300)。
【請求項6】
前記インサート(350)が前記ダブテール(304)の軸方向長さに沿って延びる、請求項1に記載のロータブレード(300)。
【請求項7】
前記インサート(350)が、第1の表面(352)、対向する第2の表面(354)、弓形頂部(356)、及び実質的に平坦な底部(358)を含み、前記第1及び第2の表面が前記実質的に平坦な底部から前記弓形頂部まで延びる、請求項1に記載のロータブレード(300)。
【請求項8】
前記第1及び第2の表面(352、354)が、前記実質的に平坦な底部から前記弓形頂部までテーパにされる、請求項7に記載のロータブレード(300)。
【請求項9】
前記弓形頂部(356)が実質的に半円形である、請求項7に記載のロータブレード(300)。
【請求項10】
構成要素(300)を製造する方法(500)であって、
複数の複合パイル(206)からプリフォーム(200)を形成する段階(502)と、
前記プリフォーム内に切り出し部(220)を定め、且つ前記プリフォーム内の残留応力の低減を可能にするために、前記プリフォームから切り出し部分(214)を除去する段階(504)と、
前記切り出し部分の除去により形成された前記切り出し部内にインサート(350)を挿入する段階(506)と、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−60949(P2013−60949A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−201048(P2012−201048)
【出願日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】