説明

ブロック共重合体及びその用途

【課題】水への分散性や溶剤への溶解性に優れるブロック共重合体、分散粒子が小さく、かつ各種基材との付着性、貯蔵安定性、耐候性、耐水性等に優れる水性分散液、及び、各種基材との付着性、耐候性、耐水性、他の樹脂との相溶性に優れる溶剤溶液を提供すること。
【解決手段】オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位2〜25モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜75モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成され、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の重量比が(A)/(B)=70/30〜40/60であるブロック共重合体(C)、前記ブロック共重合体(C)を、前記カルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に含む水性分散液、及び、前記ブロック共重合体(C)の溶剤溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブロック共重合体及びその用途に関する。本発明のブロック共重合体は、水への分散性や溶剤への溶解性に優れ、それ自身、水性分散液或いは溶剤溶液として有用である。本発明の水性分散液は各種基材との付着性、貯蔵安定性、耐候性、耐水性等に優れる。本発明の溶剤溶液は、各種基材との付着性、耐候性、耐水性、他の樹脂との相溶性等に優れる。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂は、加工性、耐水性、耐油性等の樹脂特性が優れる上に安価であることから、家庭電化製品や自動車部品用プラスティックとして多量に使用されており、その付加価値を高めるためにポリオレフィン成形品の表面に塗装を施したり、他の樹脂との積層体を形成することが試みられているが、ポリオレフィンは極性が低く、一般の塗料や他の樹脂との付着性が悪いという問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、あらかじめポリオレフィン成形品の表面をクロム酸、火炎、コロナ放電、プラズマ、溶剤等を用いて処理することにより成形品表面の極性を高め、塗料や他の樹脂との付着性を改善することが従来より試みられてきたが、これらの処理においては、複雑な工程を必要としたり、腐食性の薬剤を多量に使用するため危険を伴ったりするといった問題点があった。
【0004】
このような状況下に、ポリオレフィン成形品の表面を塩素化ポリオレフィン樹脂や変性ポリオレフィン樹脂を主成分とするプライマーで下塗りする方法(特許文献1参照)が提案されたが、これらの樹脂は人体に対して有害なトルエン、キシレン等の芳香族系有機溶媒に溶解させて使用することから、安全性や環境上の問題が生じるおそれが高いといった欠点があった。そこで塩素化ポリオレフィン樹脂や変性ポリオレフィン樹脂を水性分散化する方法(特許文献2参照)が提案されたが、この方法においてもその水性分散液の安定性を向上させるために界面活性剤を多量に含有させなければならず、それに起因して塗布皮膜の密着性や耐水性が悪化するおそれがあった。
【0005】
この問題を解決するために、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)とカルボキシル基または無水カルボン酸基を含むビニル系単量体および該ビニル系単量体と共重合可能なビニル系単量体からなる重合体ブロック(B)とから構成されるブロック共重合体を塩基性水溶液に分散してなる水性分散液が提案されている(特許文献3参照)。この方法では界面活性剤を用いずに水性分散液を調製することが可能であるため、水性分散液の貯蔵安定性および、該水性分散液からなる塗布皮膜の耐水性の向上が期待できる。しかしながらこの方法で得られる水性分散液中の分散粒子は大きく、基材へ塗装した場合の造膜性に欠け、密着性が悪いという問題があった。
【0006】
一方、塗料用のポリオレフィン樹脂として、水性分散液としての形態だけでなく、それ自身単独、溶剤溶液等のいかなる形態でも、塗料、プライマー、接着剤及びインキとして有用であるものに優れるものが期待されていた。特に溶剤溶液とした場合に各種基材との付着性、耐候性、耐水性、他の樹脂との相溶性に優れるものが期待されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−321588号公報
【特許文献2】特開平6−73250号公報
【特許文献3】特開2001−98140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかして、本発明の目的は、水への分散性や溶剤への溶解性に優れ、それ自身、水性分散液或いは溶剤溶液として、塗料、プライマー、インキ、接着剤等の分野で有用な材料を提供することにある。本発明の別の目的は、分散粒子が小さく、かつ各種基材との付着性、貯蔵安定性、耐候性、耐水性等に優れる水性分散液およびその製造方法を提供することにある。本発明のさらに別の目的は、各種基材との付着性、耐候性、耐水性、他の樹脂との相溶性に優れる溶剤溶液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記の目的は、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位2〜25モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜75モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成され、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の重量比が(A)/(B)=70/30〜40/60であるブロック共重合体(C)を提供すること、前記ブロック共重合体(C)を前記カルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に分散してなる水性分散液を提供すること、及び前記ブロック共重合体(C)の溶剤溶液を提供すること、によっていずれも達成される。
【0010】
すなわち本発明は、以下の〔1〕〜〔5〕を提供するものである。
〔1〕オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位2〜25モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜75モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成され、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の重量比が(A)/(B)=70/30〜40/60であるブロック共重合体。
〔2〕オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位2〜25モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜75モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成され、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の重量比が(A)/(B)=70/30〜40/60であるブロック共重合体(C)を、前記カルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に含む水性分散液。
〔3〕オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位2〜25モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜75モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成され、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の重量比が(A)/(B)=70/30〜40/60であるブロック共重合体(C)を、前記カルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に分散する、水性分散液の製造方法。
〔4〕オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位2〜25モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜75モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成され、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の重量比が(A)/(B)=70/30〜40/60であるブロック共重合体(C)の水以外の溶剤溶液。
〔5〕〔1〕に記載のブロック共重合体、〔2〕に記載の水性分散液及び〔4〕に記載の溶剤溶液から選ばれる1又は2以上を含有する、プライマー、塗料、インキまたは接着剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水への分散性や溶剤への溶解性に優れるブロック共重合体が提供される。また、本発明によれば、分散粒子径が小さく、かつ各種基材との付着性、貯蔵安定性、耐候性、耐水性等に優れる水性分散液およびその製造方法が提供される。さらに、本発明によれば、水性分散液において乳化剤の添加量を減らす、または添加しないことができ、各種基材との付着性、貯蔵安定性、耐候性、耐水性等に優れる水性分散液を得ることができる。そして、本発明によれば、各種基材との付着性、耐候性、耐水性、他の樹脂との相溶性に優れる溶剤溶液が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ブロック共重合体(C)と、その水性分散液及び溶剤溶液とに関するものである。本発明の水性分散液は、ブロック共重合体(C)を、塩基性物質の水溶液に含むものである。本発明の溶剤溶液は、ブロック共重合体(C)を、水以外の溶剤に溶かして成る溶剤溶液である。
【0013】
本発明におけるブロック共重合体(C)は、以下に述べる重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)から構成されており、例えば、AB型ジブロック共重合体、ABA型トリブロック共重合体、BAB型トリブロック共重合体などを挙げることができる。これらのなかでも、AB型ジブロック共重合体が好ましい。
【0014】
重合体ブロック(A)は、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロックである。すなわち、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体により構成される重合体ブロックである。重合体ブロック(A)におけるオレフィン系単量体単位の含有量としては、重合体ブロック(A)の全構造単位の合計モル数に基づいて50〜100モル%の範囲内であるのが好ましく、70〜100モル%の範囲内であるのがより好ましく、80〜100モル%の範囲内であるのがさらに好ましい。
【0015】
オレフィン系単量体単位とは、オレフィン系単量体から誘導される単位を意味する。オレフィン系単量体単位としては、例えば、エチレン;プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等のα−オレフィン;2−ブテン;イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等の共役ジエン;ビニルシクロヘキサン;β−ピネンなどのオレフィン系単量体から誘導される単位を挙げることができ、重合体ブロック(A)は、これらのオレフィン系単量体単位のうち1種または2種以上を含有することができる。重合体ブロック(A)は、エチレン、プロピレンから誘導される単位を含むのが好ましい。中でも、プロピレンから誘導される単位からなる重合体ブロック;プロピレンから誘導される単位およびプロピレン以外の他のα−オレフィン(例えば1−ブテン、エチレンなど)から誘導される単位からなる共重合体ブロックであるのがより好ましい。上記のオレフィン系単量体単位がブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等の共役ジエンから誘導される単位の場合には、残存する不飽和結合が水素添加されていてもよい。
プロピレンから誘導される単位およびプロピレン以外の他のα−オレフィンから誘導される単位からなる共重合体ブロック中の、プロピレンから誘導される単位のモル%は、特に限定されるものではないが、60モル%以上が好ましい。60モル%未満である場合、これを含むブロック共重合体や、その水性分散液、溶剤溶液のプロピレン等の基材に対する付着性が低下するおそれがある。
本発明で用いる重合体ブロック(A)の分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量が1,000〜500,000であることが好ましく、更に好ましくは1,000〜300,000である。中でも後述のように1,000〜200,000が好ましく、5,000〜100,000がより好ましい。上記好ましい範囲において、下限は10,000以上であることが好ましく、30,000以上であることがより好ましい。重合体ブロック(A)の重量平均分子量の測定法としては、重合体ブロック(C)を分解して重合体ブロック(A)部分を取り出して測定する方法、重合体ブロック(C)の製造工程における中間体の一例である、末端にメルカプト基などの置換基を有する重合体ブロックの重量平均分子量を測定し、この測定値として得る方法が例示され、後者が好ましい。尚、実施例を含む本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準物質:ポリスチレン)によって測定された値である。
【0016】
重合体ブロック(A)を構成する重合体は、上記したオレフィン系単量体単位から主としてなるものである。従ってオレフィン系単量体単位のほかに、オレフィン系単量体以外の単位を含み得る。例えば必要に応じて、上記のオレフィン系単量体と共重合可能なビニル系単量体から誘導される単位を0〜50モル%の範囲内の割合で含有することができる。該単量体単位の含有量は、0〜30モル%の範囲内であるのが好ましく、0〜20モル%の範囲内であるのがより好ましい。
【0017】
上記のオレフィン系単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、ビバリン酸ビニル等のビニルエステル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド;N−ビニル−2−ピロリドンなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、酢酸ビニルが好ましい。
【0018】
重合体ブロック(A)を構成するオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体は、変性されていてもよい。該変性は、該重合体に対して、塩素化、臭素化等のハロゲン化;クロロスルフォン化;エポキシ化;ヒドロキシル化;無水カルボン酸化;カルボン酸化などの公知の諸法を用いて行なうことができる。
【0019】
重合体ブロック(A)は、上記したオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を減成したものであっても良い。これにより、重合体ブロック(A)を構成するオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体の末端に二重結合を導入し、重合体ブロック(A)の分子量を調整することができる。減成の方法としては、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を無酸素雰囲気中400〜500℃にて熱分解する方法や、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を無酸素雰囲気中、有機過酸化物存在下にて分解する方法が挙げられ、いずれの方法を用いてもよい。前記有機過酸化物としては、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート等が挙げられる。
【0020】
重合体ブロック(B)は、カルボキシル基を有するビニル系単量体および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体からなる重合体ブロックである。
【0021】
重合体ブロック(B)は、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位を重合体ブロック(B)の全構造単位のモル数に基づいて2〜25モル%含有する。該単位の含有量は2〜20モル%の範囲内であるのが好ましい。カルボキシル基を有するビニル系単量体の含有量が25モル%を超える場合は、塗膜の耐水性が低下する場合がある。また、カルボキシル基を有するビニル系単量体の含有量が2モル%を下回る場合は、水性分散液の分散粒子が大きくなり、さらには水性分散液が得られない場合がある。
【0022】
カルボキシル基を有するビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、マレイン酸などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0023】
重合体ブロック(B)は、上記のカルボキシル基を有するビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位を重合体ブロック(B)の全構造単位のモル数に基づいて75〜98モル%含有する。該単位の含有量は、好ましくは80〜98モル%である。上記の他のビニル系単量体とは、カルボキシル基を有するビニル系単量体以外のビニル系単量体を意味し、スチレン、p−スチレンスルホン酸およびそのナトリウム塩、カリウム塩等のスチレン系単量体;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、ビバリン酸ビニル等のビニルエステル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドンなどが例示され、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、酢酸ビニルが好ましい。
【0024】
重合体ブロック(B)は、カルボキシル基を有するビニル単量体、無水カルボン酸基を有するビニル単量体、またはスルホン酸基を有するビニル単量体の単位および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位からなる重合体ブロック(B−I)に置き換えうる。重合体ブロック(B−I)は、前記カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体の単位を、重合体ブロック(B)の全構造単位のモル数に基づいて2〜100モル%有することが好ましく、2〜50モル%有することがより好ましく、2〜30モル%有することがさらに好ましい。重合体ブロック(B−I)は、前記の共重合可能な他のビニル系単量体の単位を、重合体ブロック(B−I)の全構造単位のモル数に基づいて0〜98モル%含有することが好ましく、50〜98モル%含有することが好ましく、70〜98モル%含有することがより好ましい。
【0025】
重合体ブロック(B−I)中のカルボキシル基を有するビニル単量体については、重合体ブロック(B)のカルボキシル器を有するビニル単量体と同様の具体例が例示される。
【0026】
重合体ブロック(B−I)中の無水カルボン酸基(式:−CO−O−CO−で示される基)を有するビニル系単量体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、無水マレイン酸が好ましい。
【0027】
重合体ブロック(B−I)においてスルホン酸基を有するビニル系単量体としては、例えば、4−スチレンスルホン酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−1−スルホン酸などを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。なお、スルホン酸基が、ナトリウムやカリウム等の金属の塩や各種アンモニウム塩となっているビニル単量体を使用することも可能である。
【0028】
重合体ブロック(B−I)におけるカルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体としては、前記重合体ブロック(B)における他のビニル系単量体と同様の具体例が例示される。
【0029】
また重合体ブロック(B)は、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体(B−II−1)の単位、アルキルエステルの鎖長が1〜4である(メタ)アクリル酸アルキルエステル型ビニル系単量体(B−II−2)の単位、および前記ビニル系単量体(B−II−1)および(B−II−2)と共重合可能な他のビニル系単量体(B−II−3)の単位からなる重合体ブロック(B−II)に置き換えうる。重合体ブロック(B−II)は、上記(B−II−1)の単位を、重合体ブロック(B−II)の全構造単位のモル数に基づいて2〜40モル%含有することが好ましく、2〜25モル%含有することがより好ましく、2〜20モル%含有することがさらにより好ましい。同時に上記(B−II−2)の単位を、重合体ブロック(B−II)の全構造単位のモル数に基づいて、60〜98モル%含有することが好ましく、75〜98モル%含有することが好ましく、80〜98モル%含有することがより好ましい。同時に上記(B−II−3)の単位を、重合体ブロック(B−II)の全構造単位のモル数に基づいて0〜38モル%含有することが好ましく、0〜25モル%含有することがより好ましく、0〜20モル%含有することがさらにより好ましい。
【0030】
重合体ブロック(B−II)において、アルキルエステルの鎖長が1〜4である(メタ)アクリル酸アルキルエステル型ビニル系単量体(B−II−2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等が例示され、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0031】
重合体ブロック(B−II)中の、単量体(B−II−3)としては、スチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、ビバリン酸ビニル等のビニルエステル、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド;N−ビニル−2−ピロリドンなどが例示され、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0032】
重合体ブロック(B−II)中の単量体(B−II−1)については、前記重合体ブロック(B−I)について述べたのと同様の具体例が例示される。
【0033】
本発明における重合体ブロック(B)を構成する、カルボキシル基を有するビニル系単量体および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の重合体は、塩素化されていてもよい。塩素化はラジカル付加法など公知の方法を用いて行なうことができる。この塩素化は後述するブロック共重合体(C)を製造した後に重合体ブロック(A)と共に行なうこともできる。なお、本発明において(メタ)アクリレートはアクリレートおよびメタアクリレートを指すものとする。
【0034】
重合体ブロック(B)は、ガラス転移点が10℃以上であることが好ましい。ガラス転移点が10℃未満の場合は、これを含む水性分散液を成分のひとつとして含む塗料にて形成した塗膜は柔軟であるため機械的特性が低く、塗膜としての付着性が発揮し難い。重合体ブロック(B)のガラス転移点は、例えば重合体ブロック(B)が重合体ブロック(B−II)の場合、重合体ブロック(B−II)を構成する各ビニル系単量体のホモポリマーのガラス転移点を資料(例えばポリマーハンドブック)から検索抽出するか或いは測定し、重合体ブロック(B−II)における各ビニル系単量体の使用割合(重量%)に応じて、上記ガラス転移点を下記の式を用いて算出することができる。
〔式〕
100/重合体ブロック(B−II)のガラス転移点={(B−II−1)の使用割合/(B−II−1)のTg}+{(B−II−2)の使用割合/(B−II−2)のTg}+{(B−II−3)の使用割合/(B−II−3)のTg}
【0035】
重合体ブロック(A)の重量平均分子量としては、1,000〜200,000の範囲内であるのが好ましく、5,000〜100,000の範囲内であるのがより好ましい。重合体ブロック(B)の重量平均分子量としては、1,000〜200,000の範囲内であるのが好ましく、5,000〜100,000の範囲内であるのがより好ましい。ブロック共重合体(C)の重量平均分子量としては、5,000〜300,000の範囲内であるのが好ましく、10,000〜200,000の範囲内であるのがより好ましい。なお、本発明でいう重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン検量線から求めた値である。
【0036】
本発明におけるブロック共重合体(C)は、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)から構成されており、それらの構成比は特には限定されないが、重量比にて(A)/(B)=70/30〜40/60であることが好ましい。重量比(A)/(B)が70/30を超える場合((A)の重量比が70を超え、(B)の重量比が30未満となる場合)は、水性分散液の分散体は大きくなり、水性分散液を塗膜とした場合の付着性や耐水性が低下する。重量比(A)/(B)が40/60を下回る場合((A)の重量比が40未満、(B)の重量比が60を超える場合)は、ブロック共重合体(C)中の重合体ブロック(A)に代表されるオレフィン成分の含有量が少ないために、ポリプロピレン等の非極性基材への付着性が低下する。
【0037】
本発明におけるブロック共重合体(C)は、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とから構成されていればよく、その製造方法は特に限定されない。例えば、末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)の存在下に、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分をラジカル重合することにより製造することができる。この方法によれば、目的とする数平均分子量および分子量分布を有するブロック共重合体(C)を簡便かつ効率的に製造することができる。
【0038】
末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)は、各種の方法により製造することができる。例えば、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体の末端に二重結合を導入し、この二重結合を介して、チオ酢酸、チオ安息香酸、チオプロピオン酸、チオ酪酸またはチオ吉草酸などを付加させた後、酸またはアルカリで処理する方法、アニオン重合法によりオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を製造する際の停止剤としてエチレンスルフィドを用いる方法などにより製造することができる。
【0039】
末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)の存在下における、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分のラジカル重合は、公知の方法によって進めることが可能である。例えば、末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)をトルエンに溶解した後、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分を加え、撹拌下ラジカル発生剤を添加する溶液法などが挙げられる。前記ラジカル重合を行う際のラジカル発生剤は、公知のものより適宜選択することができる。特にアゾ系開始剤が好ましく、例えば、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられ、ラジカル重合を行う温度に応じて適切な半減期温度を有するものを選択できる。
【0040】
本発明のブロック共重合体(C)は、様々な基材に対して中間媒体として機能し得る。例えば、接着性の乏しいポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系基材同士の接着剤としても有用であり、基材の表面のプラズマ、コロナ等による表面処理の有無を問わず用いることができる。また、ポリオレフィン系基材の表面に本発明のブロック共重合体(C)をホットメルト方式で積層し、更にその上に塗料等を塗工することにより、塗料の付着安定性等を向上させることができる。さらに、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド等の極性基材に対しても適する。即ち、本発明のブロック共重合体(C)は、接着剤、プライマー、塗料、インキ等として好適に用いることができる。
【0041】
本発明のブロック共重合体を接着剤、プライマー、塗料、インキ等に利用する際の形態は特には限定されず、粉末、ペースト、シート等の形態とすることもできる。また、水に分散させて水性分散液の形態とし、或いは水以外の溶剤に溶解させて溶剤溶液として用いてもよい。
【0042】
ブロック共重合体(C)には、必要に応じてブロック共重合体(C)以外の樹脂をブレンドして用いてもよい。かかるブロック共重合体(C)以外の樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂等などが挙げられ、この中でもアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂がより好ましい。ブロック共重合体(C)へのこれらの樹脂の混合割合は特には限定されないが、ブロック共重合体(C)100重量部に対し1000重量部以下であることが好ましい。
【0043】
ブロック共重合体には、必要に応じて添加剤を配合することができる。添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、無機充填剤等が例示される。
【0044】
本発明の水性分散液は、ブロック共重合体(C)を、ブロック共重合体(C)の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に分散して製造される。詳しくは、ブロック共重合体(C)にブロック共重合体(C)を溶融可能な溶剤を加え、好ましくは50℃〜150℃、より好ましくは60℃〜120℃にて加温溶融したものを、ブロック共重合体(C)の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質を含有する水溶液に分散させた後に、常圧または減圧下にてブロック共重合体(C)を溶融可能な溶剤を留去することにより水性分散液が得られる。
【0045】
ブロック共重合体(C)を溶融可能な溶剤としては、水溶性溶剤、疎水性溶剤、またはそれらの混合溶剤を使用することができる。
【0046】
水溶性溶剤としては、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、アセトン、t−ブチルアルコール、イソプロピルアルコールから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの1種または2種以上を組み合わせて水溶性溶剤として用い得る。これらのうちでも、上記したブロック共重合体を加熱溶融する場合の容易さ、留去の容易さ等の観点から、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、t−ブチルアルコール、イソプロピルアルコールがより好ましい。
【0047】
疎水性溶剤としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、p−メンタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、イソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、脂肪族炭化水素系溶剤と芳香族系溶剤とから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、n−ヘプタン、トルエン、キシレンがさらにより好ましい。
【0048】
塩基性物質は、ブロック共重合体の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基に対して0.05当量以上のものを用い得る。上記の塩基性物質としては、アンモニア、ヒドロキシアミン、水酸化アンモニウム、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、(ジ)メチルアミン、(ジ)エチルアミン、(ジ)プロピルアミン、(ジ)ブチルアミン、(ジ)ヘキシルアミン、(ジ)オクチルアミン、(ジ)エタノールアミン、(ジ)プロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、シクロヘキシルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、モルホリン等のアミン化合物;酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、酸化カリウム、過酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム等の金属酸化物;水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等の金属水酸化物;水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等の金属水素化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム等の炭酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム等の酢酸塩などが例示される。これらのうちでも、入手の容易さ、水性分散液の安定性の観点から、アンモニア、(ジ)メチルアミン、(ジ)エチルアミン、(ジ)プロピルアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、(ジ)ブチルアミン、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、アンモニア、N,N−ジメチルエタノールアミン、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。尚、本発明において「(ジ)」とは、置換基が1または2つあることを意味する。例えば「(ジ)メチルアミン」は、メチルアミンおよびジメチルアミンの両方を意味する。
【0049】
これらの塩基性物質は、水溶液として、ブロック共重合体(C)の中和、分散に用いられる。塩基性物質の使用量は、ブロック共重合体(C)の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基に対して0.05当量以上である。この使用量は、分散粒子径を微細化する観点からは、ブロック共重合体(C)の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基に対して0.2〜5.0当量の範囲内であるのが好ましく、0.3〜1.5当量の範囲内であるのがより好ましい。
【0050】
本発明の水性分散液におけるブロック共重合体(C)と塩基性物質の水溶液との配合割合は、ブロック共重合体(C)5〜70重量部に対して塩基性物質の水溶液95〜30重量部の範囲内であるのが好ましい。本発明の水性分散液中においてブロック共重合体(C)は、重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基のうちの一部、通常は5モル%以上が、塩基性物質によって中和されることにより、塩を形成する。
【0051】
本発明の水性分散液には、水性分散液の貯蔵安定性の向上や各種基材へ塗布した場合の造膜性や塗布皮膜表面のぬれ性向上等を目的に、皮膜の耐水性を低下させない程度に界面活性剤(D)が添加され得る。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤が例示され、何れも使用できる。ノニオン界面活性剤の方が、耐水性低下を引き起こし難いため好ましい。
【0052】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。特に好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルアミンが挙げられる。
【0053】
アニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、メチルタウリル酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられ、好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩等が挙げられる。
【0054】
水性分散液が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の水性分散液への添加量は、ブロック共重合体(C)100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましく、0.1〜10重量部であることがより好ましい。20重量%を超える場合は、塗布皮膜の密着性や耐水性を著しく低下させ、又、乾燥皮膜とした際に可塑効果、ブリード現象を引き起こし、ブロッキングが発生し易いため、好ましくない。
【0055】
本発明の水性分散液は、ブロック共重合体(C)を、重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に分散して製造される。製造条件を一例を挙げて説明すると次の通りである。上記したブロック共重合体(C)にブロック共重合体(C)を溶融可能な溶剤を加えて、好ましくは50℃〜150℃にて加温溶融し、ブロック共重合体の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質を含む水溶液を滴下した後、ブロック共重合体(C)を溶融可能な溶剤を、常圧下にて沸点以上に加温する、または減圧下にて留去することによって得られる。留去の方法としては、常圧下、沸点以上に加温する方法、減圧留去する方法が例示される。
【0056】
本発明の水性分散液は、分散物質の粒子径が小さいため、貯蔵安定性が良好であり、相分離が起こりにくい。本発明の水性分散液の分散物質の粒子径は、通常0.3μm未満、好ましくは、0.2μm以下、より好ましくは0.15μm以下である。下限については小さければ小さいほどよいが、製造可能なのは0.03μm程度である。このため、本発明の水性分散液は、ポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレンに対する付着性に優れており、極性基材に対する付着性にも優れている。これらのことから、本発明の水性分散液は、塗装や接着の際のプライマー、塗料、接着剤として有用である。さらに、本発明の水性分散液は、フィルム、紙、木、金属、プラスティック等のコーティング剤(防水剤用途、離型剤用途、ヒートシール剤用途等)、塗装や接着におけるプライマーおよびアンカーコート剤、水性塗料、水性接着剤、水性インキ等の改質剤(顔料分散、光沢付与、耐摩耗性付与、耐水化等)、インクジェットインキやカラーコピーのバインダー、トナーの改質剤、つやだし剤、金属表面処理剤などとして有用である。
【0057】
本発明の溶剤溶液は、ブロック共重合体(C)を、水以外の溶剤に溶解してなる溶液である。ここで、水以外の溶剤としては、水以外であって、ブロック共重合体(C)が溶解可能な溶剤であれば特に限定されない。具体的には、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン等の脂肪族溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤、あるいは前記の溶剤の混合物が例示される。このうち、環境問題の観点からは芳香族溶剤以外のものが好ましく、脂肪族溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤から選ばれる1種類の溶剤或いは2種以上の溶剤の混合物がより好ましい。脂肪族溶剤としては、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどのシクロヘキサン系溶剤が好ましく、メチルシクロヘキサンがより好ましい。
【0058】
ブロック共重合体(C)と水以外の溶剤との混合割合は、ブロック共重合体(C)100重量部に対して150〜1000重量部であることが好ましく、180〜300重量部であることがより好ましい。
【0059】
本発明の水以外の溶剤溶液は、さらに保存安定性を高めるために、アルコール及び/又はエーテルを含有してもよい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が例示される。エーテルとしては、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール−t−ブチルエーテル等のプロピレン系グリコールエーテルが例示される。上記具体例の中から単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。これらのうちアルコールが好ましく、イソプロパノールがより好ましい。アルコール及び/又はエーテルの添加量は特には限定されないが、上記溶剤に対し1〜20重量%であることが好ましい。
【0060】
本発明の水以外の溶剤溶液の製造条件は、ブロック共重合体(C)を、水以外の溶剤に溶解させればよく、特に限定されないが、50℃以上110℃以下で加温溶解するのが好ましい。
【0061】
本発明の水以外の溶剤溶液は、必要に応じてブロック共重合体(C)以外の樹脂をブレンドして用いてもよい。かかるブロック共重合体(C)以外の樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂等などが挙げられ、この中でも極性樹脂が好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。溶剤溶液への樹脂の混合割合は特には限定されないが、ブロック共重合体(C)100重量部に対し1000重量部以下であることが好ましい。
【0062】
本発明の溶剤溶液は、必要に応じて添加剤をブレンドして用いてもよい。添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、無機充填剤等が例示される。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、下記の実施例および比較例において、分散粒子の平均粒子径測定および、水性分散液を使用したポリプロピレン基材への付着試験については、次のようにして行った。
【0064】
(平均粒子径測定):マルバーン社製「ゼータサイザー」を用いて動的光散乱法により測定した。
【0065】
(塗装板作成方法):表面をイソプロピルアルコールで清拭したポリプロピレン基材に水性分散液を噴霧塗布した。塗布後、試験片を乾燥機中で90℃30分間焼き付けし塗装板を得た。
【0066】
(1次付着試験):塗装板を23℃で24時間放置した後、JIS K 5400に記載されている碁盤目はく離試験の方法に準じて2mm間隔で100マス(10×10)の碁盤目を付けた試験片を作製しセロハンテープを貼り付けた後、90℃方向にはく離させ、100マスの碁盤目のうちはく離されなかった碁盤目数にて評価した。評価としては、はく離されなかったマスの数が多い方が付着性が良好とした。
【0067】
(耐湿付着試験):塗装板を50℃相対湿度95%の状態に1週間放置した後、JIS K 5400に記載されている碁盤目はく離試験の方法に準じて2mm間隔で25マス(5×5)の碁盤目を付けた試験片を作製しセロハンテープを貼り付けた後、90℃方向にはく離させ、25マスの碁盤目のうちはく離されなかった碁盤目数にて評価した。評価としては、はく離されなかったマスの数が多い方が付着性が良好であり、耐湿性・耐水性に優れるとした。
【0068】
(参考例) 末端にメルカプト基を有するポリオレフィンの製造
(1) ポリオレフィン(三井化学株式会社製「タフマーXM5070」、プロピレンおよび1−ブテンを単量体単位とする重合体)を二軸押出機に供給し、420℃で溶融混練して熱分解させて、末端に二重結合を有するポリオレフィンを製造した。
【0069】
(2) 上記(1)で得られた末端に二重結合を有するポリオレフィン100重量部、キシレン300重量部及びチオ酢酸10重量部を反応器に入れて、内部を充分に窒素置換した後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を加えて、90℃で2時間反応させて、末端にチオアセチル基を有するポリオレフィンを製造した。
【0070】
(3) 上記(2)で得られた末端にチオアセチル基を有するポリオレフィン100重量部を、キシレン200重量部とn−ブタノール20重量部の混合溶媒中に溶解し、水酸化カリウムの4%n−ブタノール溶液10重量部を加えて、窒素中110℃で1時間反応させることにより、末端にメルカプト基を有するポリオレフィンを製造した。
【0071】
(実施例1)
参考例で得られた末端にメルカプト基を有するポリオレフィン100重量部をトルエン250重量部に溶解し、これにエチルアクリレート70重量部、アクリル酸10重量部を加えて、窒素中、90℃で、重合速度が1時間あたり約15%になるように2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加え、重合率が95%になった時点で反応を停止した。反応液を冷却後、溶媒を除去し、ポリオレフィンブロック(A)およびエチルアクリレート−アクリル酸ブロック(B)から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(1)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(1)の重合体ブロック(A)の重量平均分子量は約40000、重合体ブロック(B)の重量平均分子量は約27000、ブロック共重合体(1)の重量平均分子量は約67000であり、融点は75℃であった。
【0072】
次に撹拌機を備えた1lのオートクレーブに得られたブロック共重合体(1)100重量部およびテトラヒドロフラン200重量部を入れ、60℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水6.0部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、テトラヒドロフランを100℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.12μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0073】
(実施例2)
参考例で得られた末端にメルカプト基を有するポリオレフィン100重量部をトルエン250重量部に溶解し、これにエチルアクリレート70重量部、アクリル酸2.5重量部を加えて、窒素中、90℃で、重合速度が1時間あたり約15%になるように2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加え、重合率が90%になった時点で反応を停止した。反応液を冷却後、溶媒を除去し、ポリオレフィンブロック(A)およびエチルアクリレート−アクリル酸ブロック(B)から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(2)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(2)の重合体ブロック(A)の重量平均分子量は約40000、重合体ブロック(B)の重量平均分子量は約26000、ブロック共重合体(2)の重量平均分子量は約66000であり、融点は75℃であった。
【0074】
次に撹拌機を備えた1lのオートクレーブに得られたブロック共重合体(2)100重量部およびテトラヒドロフラン200重量部を入れ、60℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水1.5部(ブロック共重合体(2)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、テトラヒドロフランを100℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.08μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0075】
(実施例3)
参考例で得られた末端にメルカプト基を有するポリオレフィン100重量部をトルエン250重量部に溶解し、これにイソブチルアクリレート80重量部、アクリル酸5重量部を加えて、窒素中、90℃で、重合速度が1時間あたり約15%になるように2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加え、重合率が90%になった時点で反応を停止した。反応液を冷却後、溶媒を除去し、ポリオレフィンブロック(A)およびエチルアクリレートーアクリル酸ブロック(B)から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(3)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(3)の重合体ブロック(A)の重量平均分子量は約40000、重合体ブロック(B)の重量平均分子量は約31000、ブロック共重合体(3)の重量平均分子量は約71000であり、融点は75℃であった。
【0076】
次に撹拌機を備えた1lのオートクレーブに得られたブロック共重合体(3)100重量部およびテトラヒドロフラン200重量部を入れ、60℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水3.0部(ブロック共重合体(3)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、テトラヒドロフランを100℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.09μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0077】
(実施例4)
参考例で得られた末端にメルカプト基を有するポリオレフィン100重量部をトルエン250重量部に溶解し、これにメチルメタクリレート60重量部、アクリル酸5重量部を加えて、窒素中、90℃で、重合速度が1時間あたり約15%になるように2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加え、重合率が90%になった時点で反応を停止した。反応液を冷却後、溶媒を除去し、ポリオレフィンブロック(A)およびエチルアクリレートーアクリル酸ブロック(B)から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(4)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(4)の重合体ブロック(A)の重量平均分子量は約40000、重合体ブロック(B)の重量平均分子量は約22000、ブロック共重合体(4)の重量平均分子量は約62000であり、融点は75℃であった。
【0078】
次に撹拌機を備えた1lのオートクレーブに得られたブロック共重合体(4)100重量部およびテトラヒドロフラン200重量部を入れ、60℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水3.0部(ブロック共重合体(4)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、テトラヒドロフランを100℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.13μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0079】
(比較例1)
参考例で得られた末端にメルカプト基を有するポリオレフィン100重量部をトルエン250重量部に溶解し、これにエチルアクリレート70重量部、アクリル酸20重量部を加えて、窒素中、90℃で、重合速度が1時間あたり約15%になるように2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加え、重合率が90%になった時点で反応を停止した。反応液を冷却後、溶媒を除去し、ポリオレフィンブロック(A)およびエチルアクリレート−アクリル酸ブロック(B)から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(比1)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(比1)の重合体ブロック(A)の重量平均分子量は約40000、重合体ブロック(B)の重量平均分子量は約33000、ブロック共重合体(比1)の重量平均分子量は約73000であり、融点は75℃であった。
【0080】
次に撹拌機を備えた1lのオートクレーブに得られたブロック共重合体(比1)100重量部およびテトラヒドロフラン200重量部を入れ、60℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水12部(ブロック共重合体(比1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、テトラヒドロフランを100℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.22μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0081】
(比較例2)
参考例で得られた末端にメルカプト基を有するポリオレフィン100重量部をトルエン250重量部に溶解し、これにエチルアクリレート30重量部、アクリル酸5重量部を加えて、窒素中、90℃で、重合速度が1時間あたり約15%になるように2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加え、重合率が90%になった時点で反応を停止した。反応液を冷却後、溶媒を除去し、ポリオレフィンブロック(A)およびエチルアクリレートーアクリル酸ブロック(B)から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(比2)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(比2)の重合体ブロック(A)の重量平均分子量は約40000、重合体ブロック(B)の重量平均分子量は約13000、ブロック共重合体(比2)の重量平均分子量は約53000であり、融点は75℃であった。
【0082】
次に撹拌機を備えた1lのオートクレーブに得られたブロック共重合体(比2)100重量部およびテトラヒドロフラン200重量部を入れ、60℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水3.0部(ブロック共重合体(比2)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、テトラヒドロフランを100℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.60μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0083】
(比較例3)
参考例で得られた末端にメルカプト基を有するポリオレフィン100重量部をトルエン250重量部に溶解し、これにエチルアクリレート200重量部、アクリル酸10重量部を加えて、窒素中、90℃で、重合速度が1時間あたり約15%になるように2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加え、重合率が90%になった時点で反応を停止した。反応液を冷却後、溶媒を除去し、ポリオレフィンブロック(A)およびエチルアクリレート−アクリル酸ブロック(B)から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(比3)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(比3)の重合体ブロック(A)の重量平均分子量は約40000、重合体ブロック(B)の重量平均分子量は約76000、ブロック共重合体(比3)の重量平均分子量は約116000であり、融点は75℃であった。
【0084】
次に撹拌機を備えた1lのオートクレーブに得られたブロック共重合体(比3)100重量部およびテトラヒドロフラン200重量部を入れ、60℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水3.0部(ブロック共重合体(比3)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、テトラヒドロフランを100℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.34μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0085】
(比較例4)
参考例で得られた末端にメルカプト基を有するポリオレフィン100重量部をトルエン250重量部に溶解し、これにエチルアクリレート70重量部、p−スチレンスルホン酸5重量部を加えて、窒素中、90℃で、重合速度が1時間あたり約15%になるように2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加え、重合率が90%になった時点で反応を停止した。反応液を冷却後、溶媒を除去し、ポリオレフィンブロック(A)およびエチルアクリレート−アクリル酸ブロック(B)から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(比4)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(1)の重合体ブロック(A)の重量平均分子量は約40000、重合体ブロック(B)の重量平均分子量は約27000、ブロック共重合体(比4)の重量平均分子量は約67000であり、融点は75℃であった。
【0086】
次に撹拌機を備えた1lのオートクレーブに得られたブロック共重合体(比4)100重量部およびテトラヒドロフラン200重量部を入れ、60℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水1.3部(ブロック共重合体(比4)のスルホン酸基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、テトラヒドロフランを100℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.08μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0087】
(比較例5)
参考例で得られた末端にメルカプト基を有するポリオレフィン100重量部をトルエン250重量部に溶解し、これにエチルアクリレート70重量部、無水マレイン酸5重量部を加えて、窒素中、90℃で、重合速度が1時間あたり約15%になるように2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加えたが、重合が進行しにくく、目的とするブロック共重合体は得られなかった。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
上記の結果から明らかなように、実施例の水性分散液はいずれも分散粒子の粒子径が小さく、1次付着性試験および耐湿付着性試験の両方において良好な成績を収めたことから基材との付着性、耐候性に優れていた。また、実施例の水性分散液は1週間静置しても分散粒子の粒子径に変化はなかったことから、貯蔵安定性にも優れていた。
【0091】
下記の実施例および比較例において、ブロック共重合体溶液を使用したポリプロピレン基材への付着試験については、次のようにして行った。また、ブロック共重合体溶液にアクリル樹脂などの極性樹脂を加えてワンコート塗料として使用する場合を想定し、アクリル樹脂との相溶性も試験した。
【0092】
(塗装板作成方法):表面をイソプロピルアルコールで清拭したポリプロピレン基材にブロック共重合体溶液を噴霧塗布した。塗布後、試験片を乾燥機中で80℃20分間焼き付けし塗装板を得た。
【0093】
(1次付着試験および耐湿付着試験):水性分散液を使用したポリプロピレン基材への付着試験と同様に行った。
【0094】
(アクリル樹脂との相溶性):アクリル樹脂としてダイヤナールBR−113(三菱レイヨン製)20重量部に対してトルエン80重量部を加えて加温溶解し、アクリル樹脂溶液を調製した。このアクリル樹脂溶液60重量部に対してブロック共重合体溶液40重量部を添加し攪拌後、約0.1gの混合液をガラス板上に滴下して直径約2cmの円状に塗り拡げた。常温にて24時間乾燥後、乾燥皮膜の状態を目視にて評価した。アクリル樹脂との相溶性が不十分である場合、乾燥皮膜は均一な連続相とはならずに、海島状の相分離を起こしていたり、皮膜が白濁していたりする。
【0095】
(実施例5〜8)
実施例1〜4で得られたブロック共重合体((1)〜(4))それぞれ30重量部に対しメチルシクロヘキサン63重量部およびイソプロピルアルコール7重量部を加え加温溶解し、ブロック共重合体溶液を得た。これらの溶液はすべて透明な液体であった。
【0096】
(比較例6)
比較例1で得られたブロック共重合体(比1)30重量部に対してメチルシクロヘキサンを63重量部およびイソプロピルアルコール7重量部を加え加温溶解した。得られたブロック共重合体溶液は白濁していた。
【0097】
(比較例7〜9)
比較例2〜4で得られたブロック共重合体((比2)〜(比4))それぞれ30重量部に対してメチルシクロヘキサンを63重量部およびイソプロピルアルコール7重量部を加え加温溶解し、ブロック共重合体溶液を得た。これらの溶液はすべて透明な液体であった。
【0098】
【表3】

【0099】
表3の結果から明らかなように、実施例の溶剤溶液はいずれも、1次付着性試験および耐湿付着性試験の両方において良好な成績を収めたことから、基材との付着性、耐湿性、耐水性に優れていた。また、実施例の溶剤溶液は透明性に優れ、かつ、アクリル樹脂との相溶性にも優れていたことから、実施例のブロック共重合体はいずれも溶剤溶解性に優れ、かつ、溶剤溶液とした場合に他の樹脂との相溶性、基材との付着性、耐湿性、耐水性にも優れていることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位2〜25モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜75モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成され、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の重量比が(A)/(B)=70/30〜40/60であるブロック共重合体。
【請求項2】
オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位2〜25モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜75モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成され、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の重量比が(A)/(B)=70/30〜40/60であるブロック共重合体(C)を、前記カルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に含む水性分散液。
【請求項3】
オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位2〜25モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜75モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成され、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の重量比が(A)/(B)=70/30〜40/60であるブロック共重合体(C)を、前記カルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に分散する、水性分散液の製造方法。
【請求項4】
オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位2〜25モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜75モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成され、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の重量比が(A)/(B)=70/30〜40/60であるブロック共重合体(C)の水以外の溶剤溶液。
【請求項5】
請求項1に記載のブロック共重合体、請求項2に記載の水性分散液及び請求項4に記載の溶剤溶液から選ばれる1又は2以上を含有する、プライマー、塗料、インキまたは接着剤。

【公開番号】特開2010−84137(P2010−84137A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202317(P2009−202317)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(502368059)日本製紙ケミカル株式会社 (86)
【Fターム(参考)】