プライ材料製造方法、およびプライ材料を用いた空気入りタイヤ
【課題】ホーリングを施すことなくコードプライ間の空気溜まりを抑制する。
【解決手段】コード並列体3を未加硫のゴムGでトッピングすることによりプライ材料4を形成するプライ材料製造方法であって、成形口13を有するダイプレート6を前端に設けた押出しヘッド7の前記成形口13に、前記ゴムGとコード並列体3とをコード長さ方向に通すことにより所定断面形状のプライ材料4を得るトッピング・押出し成形工程を含む。前記ダイプレート6は、成形口13の上下の壁面20a、20bに、該壁面20a、20bから小高さで突出しかつコード長さ方向にのびる凸条突起22を1本以上具えることにより、前記トッピング・押出し成形工程は、前記プライ材料4の上下の表面4a、4bに、コード間をコード長さ方向にのびる排気用の凹溝23を1本以上形成した。
【解決手段】コード並列体3を未加硫のゴムGでトッピングすることによりプライ材料4を形成するプライ材料製造方法であって、成形口13を有するダイプレート6を前端に設けた押出しヘッド7の前記成形口13に、前記ゴムGとコード並列体3とをコード長さ方向に通すことにより所定断面形状のプライ材料4を得るトッピング・押出し成形工程を含む。前記ダイプレート6は、成形口13の上下の壁面20a、20bに、該壁面20a、20bから小高さで突出しかつコード長さ方向にのびる凸条突起22を1本以上具えることにより、前記トッピング・押出し成形工程は、前記プライ材料4の上下の表面4a、4bに、コード間をコード長さ方向にのびる排気用の凹溝23を1本以上形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーカスプライ、ベルトプライ、バンドプライ等のタイヤ用コードプライのトップ反として好適であり、ホーリング(プリッキング)を施すことなくタイヤ内での空気溜まりを抑制しうるプライ材料の製造方法、およびそのプライ材料を用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤでは、生タイヤ成形工程において、カーカスプライ、ベルトプライ、バンドプライなどの種々のコードプライが重ね合わせて貼着されている。従って、内外に重なるコードプライ間には、空気溜まりが発生しやすく、完成タイヤの外観性能や耐久性を低下させる原因となっている。
【0003】
そのために、従来、ホーリング針を具えた種々のホーリング装置を用い、コードプライに空気抜き用の複数の貫通孔を穿孔することが行われている(例えば特許文献1、2参照。)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コードプライに貫通孔を設けるものは、この貫通孔を起点としてコードプライのゴムがのびるため、貫通孔の近傍に、コード間隔が局部的に増大する不均一部分が発生するなど、タイヤのユニフォミティーを低下させる傾向がある。又穿孔の際、ホーリング針がコードを突き刺して該コードにダメージを与えるという恐れも生じる。
【0005】
他方、近年においては、ダイプレートを前端に設けたゴム押出機を用い、前記ダイプレートの成形口からゴムとコード並列体とを同時に吐出させることにより、コード並列体をゴムトッピングした所定断面形状のプライ材料を得るトッピング・押出し成形方法が提案されている(例えば特許文献3参照。)。この方法では、得られた長尺なプライ材料を所望の角度および間隔で順次切断し、かつその切断片を、非切断縁間で順次連結することにより、タイヤの種類やサイズに応じてコード角度やサイズを違えた種々のコードプライを、タイヤ1本分づつ形成できる。そのため、従来的な中間在庫の発生を抑制でき、多品種少量生産の傾向が強いタイヤを、効率よく生産することができる。
【0006】
本発明は、上記トッピング・押出し成形方法に着目してなされたものであり、ダイプレートの成形口の上下の壁面に凸条突起を設けることを基本として、押出し成形されたプライ材料の上下の表面に、コード長さ方向にのびる排気用の凹溝を形成でき、ホーリングを施すことなく、即ちユニフォミティーの低下やコードのダメージを招くことなく、コードプライ間の空気溜まりを抑制しうるプライ材料製造方法、およびプライ材料を用いた空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【特許文献1】特開2000−301626号公報
【特許文献2】特開2003−154579号公報
【特許文献3】特開平8−103972号公報
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、複数本のコードを平行に並列させたコード並列体を未加硫のゴムでトッピングすることにより長尺帯状のプライ材料を形成するプライ材料製造方法であって、
成形口を有するダイプレートを前端に設けた押出しヘッドの前記成形口に、前記ゴムとコード並列体とをコード長さ方向に通すことにより所定断面形状のプライ材料を得るトッピング・押出し成形工程を含むとともに、
前記ダイプレートは、前記成形口の上下の壁面に、該壁面から小高さで突出しかつコード長さ方向にのびる凸条突起を1本以上具えることにより、前記トッピング・押出し成形工程は、前記プライ材料の上下の表面に、コード間をコード長さ方向にのびる排気用の凹溝を1本以上形成したことを特徴としている。
【0008】
又請求項2の発明では、前記凸条突起は、前記上下の壁面に、それぞれコード2本毎に1本の割合で形成され、しかも上の壁面に配される凸条突起と、下の壁面に配される凸条突起とを千鳥状に位置ズレさせたことを特徴としている。
【0009】
又請求項3の発明では、前記凸条突起は、前記壁面からの突出高さHaを、前記上下の壁面間の距離である成形口高さHcの0.1〜0.5倍、しかも前記コードの直径Dbの1/6倍以上であることを特徴としている。
【0010】
又請求項4の発明では、前記凸条突起は、断面略三角形状をなすことを特徴としている。
【0011】
又請求項5の発明は、空気入りタイヤであって、請求項1〜4にて形成されたプライ材料を用いて製造されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は叙上の如く、ダイプレートの成形口の上下の壁面に、コード長さ方向にのびる凸条突起を設け、これにより、押出し成形されたプライ材料の上下の表面に、コード間をコード長さ方向にのびる凹溝を形成している。この凹溝は、生タイヤ成形時、コードプライ間における空気溜まりを、外部に排気できる。従って、前述のトッピング・押出し成形方法が有するメリットを生かしながら、空気溜まりによる外観性能や耐久性の低下を防止することができる。又ホーリング装置が不要となるため、設備コストを低減でき、しかもホーリングに起因するユニフォミティーの低下やコードへのダメージを抑制することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1は、本発明のプライ材料製造方法を実施するプライ材料製造装置の一例を概念的に示す斜視図である。
【0014】
図1において、プライ材料製造装置1は、複数本のコード2を平行に並列させたコード並列体3を未加硫のゴムGでトッピングすることにより長尺帯状のプライ材料4を形成する装置であって、ゴム押出機本体5の先端部に、押出しヘッド7を取り付けている。
【0015】
前記コード並列体3は、本例では、周知構造のリールスタンド8から供給される。このリールスタンド8は、コード2を巻取った複数のリール9を回転自在に保持するスタンド部8Aと、各リール9から巻き戻されるコード2を平行に引き揃えてコード並列体3を形成するコード引き揃え部8Bとを具える。前記コード引き揃え部8Bとしては、コード位置決め用の複数の周方向溝を並設した案内ローラ8B1を含むことができる。
【0016】
次に、前記ゴム押出機本体5は、ゴム投入口を設けたシリンダ5A内に、スクリュー軸を収納した周知構造をなし、前記スクリュー軸の回転駆動により、投入されるゴムGを可塑化しながらシリンダ5A前端の押出口5A1(図3に示す)から押し出ししうる。
【0017】
又前記押出しヘッド7は、図2、3に示すように、シリンダ5Aの前端に固定されるヘッド本体10に、前記リールスタンド8からのコード並列体3の各コード2を挿入するコード挿入孔11を有するバッフル12、前記挿入されたコード並列体3とゴム押出機本体5からのゴムGとが通る成形口13を有するダイプレート6、および前記ゴム押出機本体5からのゴムGを予備成形しながら前記成形口13に案内する案内流路15を形成するプリフォーマ16を取り付けている。
【0018】
前記バッフル12は、図3、4に示すように、先細状に傾斜する上下のテーパ面17a、17bを有する断面略三角形状の基体部17と、その後端に設けられかつ前記ヘッド本体10の側壁間に跨って支持される横枠部18とを具える。又バッフル12に形成される前記コード挿入孔11は、コード2と略同径をなし該コード2を精度良く整列させるとともに、該コード挿入孔11からのゴムGの流出を防止する。又コード挿入孔11の後方側には、コード2を非接触で挿入させる遊挿溝14が配される。
【0019】
次に、前記プリフォーマ16は、前記バッフル12の上下のテーパ面17a、17bと対抗する上下のテーパ面16a、16bとを有し、前記上のテーパ面16a、17a間、および下のテーパ面16b、17b間に、それぞれ前記押出口5A1に連通し、ゴム押出機本体5からのゴムGを前記成形口13に案内する上下の案内流路15a、15bを形成する。なおバッフル12の一方のテーパ面(本例では上のテーパ面17a)の前端は、他方のテーパ面(本例では下のテーパ面17a)の前端よりも後方側で終端している。これにより、本例では上の案内流路15aからのゴムGが、下の案内流路15bからのゴムGよりも先にコード並列体3と接触でき、かつこの接触時においては、まだコード並列体3がバッフル12に支持されている。従って、ゴム流れによるコード2の配列乱れを低減しうる。
【0020】
又前記プリフォーマ16の前端には、ダイプレート6が取り付く。該ダイプレート6は、図5に示すように、矩形板状をなし、その中央には、プライ材料4の断面形状を決定する成形口13を形成している。従って、本実施形態の装置1では、前記成形口13に、前記ゴムGとコード並列体3とをコード長さ方向に通すことにより、前記成形口13によって定まる断面形状のプライ材料4を得るトッピング・押出し成形工程を行いうる。
【0021】
ここで、前記成形口13は、互いに平行な上下の壁面20a、20bを少なくとも含み、本例では、成形口13が、前記上下の壁面20a、20bと、その両端間を互いに継ぐ側の壁面21c、21dとからなる平行四辺形状をなす場合が示されている。このような成形口13にて押出し成形されたプライ材料4は、その断面形状も、側面4c、4dが傾斜する平行四辺形状をなす。従って、プライ材料4は、図9に示すように、隣り合う側面4c、4d間を上下に重ね合わせて接合でき、高い接合強度を確保しながら、接合に起因する段差の形成を防止することが可能となる。なお接合強度の観点から、前記壁面21c、21dと壁面20a、20bとの間の鋭角側の角度αは、30〜60°の範囲が好ましい。
【0022】
そして本発明では、前記成形口13の上下の壁面20a、20bに、該壁面20a、20bから小高さで突出しかつコード長さ方向にのびる凸条突起22を1本以上設けている。従って、前記トッピング・押出し成形工程において、押出し成形されたプライ材料4の上下の表面4a、4bに、コード2、2間をコード長さ方向にのびる排気用の凹溝23を1本以上形成することができる。なお前記凸条突起22は、断面略三角形状にて形成するのが好ましい。
【0023】
このような凹溝23は、排気溝として機能でき、生タイヤ成形時にコードプライ間に空気溜まりが生じた場合、その空気を外部に排気することができる。
【0024】
又前記凸条突起22は、コード2、2間の領域Yに形成されることが必要であり、より好ましくは、コード2、2間の中央位置に形成される。前記領域Yは、隣り合うコード2の側縁から立ち上がる法線N、N間の領域を意味する。この領域Yから外れた場合、前記凸条突起22の前記壁面20a(又は20b)からの突出高さHaを充分に確保することができなくなる。即ち、前記凹溝23の容積が過小となって、充分な排気効果を得ることができなくなる。
【0025】
前記突出高さHaは、前記上下の壁面20a、20b間の距離である成形口高さHcの0.1〜0.5倍の範囲、かつ前記コード2の直径Dbの1/6倍以上であることが好ましい。もし前記突出高さHaが成形口高さHcの0.1倍未満、およびコード2の直径Dbの1/6倍未満では、排気効果を充分に確保することができなくなる。又突出高さHaが成形口高さHcの0.5倍を超えると、プライ材料4の強度が過度に減じ、前記凹溝23の位置でコード間隔が不均一に増加する等、ユニフォミティーの悪化を招く。従って、突出高さHaの下限値は、成形口高さHcの0.2倍以上がさらに好ましく、又上限値は、成形口高さHcの0.4倍以下がさらに好ましい。
【0026】
又前記凸条突起22を、各コード2、2間に均等に形成するのが好ましい。即ち、
(1) 図6に示すように、前記上下の壁面20a、20bにおいて、それぞれ、コード一本毎に凸条突起22を形成し、各コード2、2間に上下の凸条突起22a、22bをそれぞれ形成する、或いは
(2) 図2、5に示すように、前記上下の壁面20a、20bに、それぞれコード二本毎に一本の割合で凸条突起22を形成し、しかも上の壁面20aに配される凸条突起22aと、下の壁面20bに配される凸条突起22bとを千鳥状に位置ズレさせる
ことが好ましい。
【0027】
このように凸条突起22を形成した場合には、前記凸条突起22によって、コード2に対するセンタリングの機能が発揮されることが、本発明者の研究の結果判明した。即ち、前記凸条突起22を、各コード2、2間に均等に形成した場合、成形口13を通過する時で、コード2がセンタリングされてコード間隔のバラ付きが抑制され、タイヤのユニフォミティーを一層向上させることが可能となる。
【0028】
なおコード並列体3は、トッピングの際、その後端側は前記バッフル12に拘束されて均一なコード間隔が維持される。しかし、前記バッフル12から離れて成形口13に至る間では、コード並列体3は、上下の案内流路15a、15bからのゴム流れによって種々な圧力を受け、成形口13を通過する時点でコード間隔がバラ付く傾向がある。これに対して、本例では、前記凸条突起22がコード2をセンタリングするため、コード間隔を均一化させることが可能となる。
【0029】
なお、前記(1)の場合、上下の凹溝23が接近するためプライ材料4が強度不足となり、コード2、2間の距離が変化しやすくなって、ユニフォミティーの向上効果が減じる傾向となる。従って、ユニフォミティーの観点から、前記(2)の場合がより好ましい。
【0030】
次に、図7〜9に、前記プライ材料製造装置1が、生タイヤ成形ラインTLに設置され、前記プライ材料4からタイヤ用のコードプライP(本例ではカーカスプライPC)が形成される場合が示される。
【0031】
具体的には、生タイヤ成形ラインTLは、
(a) 前記プライ材料製造装置1と、
(b) このプライ材料製造装置1からの長尺帯状のプライ材料4を、フェスツーン31を介してその長さ方向Fxに搬入する搬入コンベヤ33と、
(c) 搬入されるプライ材料4を、所望の切断長さに切断して切断片34を順次形成する切断手段35と、
(d) この切断片34を受け渡し位置Q1まで長さ方向Fxに搬送する第1の搬送コンベヤ36と、
(e) 前記受け渡し位置Q1の切断片34を受け取って第2の搬送コンベヤ37上の切断片接合体34Pに貼着する貼着手段38と、
を含んで構成されている。
【0032】
前記搬入コンベヤ33および第1の搬送コンベヤ36は、乗り継ぎ可能に一直線状に連設されるベルトコンベアであって、前記搬入コンベヤ33は、前記フェスツーン31からプライ材料4を引き出し、前記搬入コンベヤ33と第1の搬送コンベヤ36との間に配される切断手段35に、前記プライ材料4を切断長さ毎に間欠的に搬入する。
【0033】
前記切断手段35は、前記搬入コンベヤ33と第1の搬送コンベヤ36との間の切断位置Q3に配されるカッタ35Aを具える。このカッタ35Aは、前記切断位置Q3を超えて前記第1の搬送コンベヤ36側に搬入されるプライ材料4の搬入部分を、前記切断位置Q3で切断することにより、該搬入部分によって切断片34を形成する。前記カッタ35Aは、本例では円盤状の回転刃であって、長さ方向Fxに対して角度θ(ラジアルカーカスの場合では略90°)で傾く切断方向に沿って走行することにより、プライ材料4を角度θで切断する。なお切断手段35の構造としては、特に規制させることがなく、従来的な種々の構造のものが採用しうる。
【0034】
次に、第2の搬送コンベヤ37は、前記第1の搬送コンベヤ36とは、前記角度θと同角度で交わるベルトコンベヤであって、搬送面上の切断片接合体34Pを、所定の距離Lwづつ搬送方向Fyに向かって間欠的に搬送する。なお前記プライ材料4の巾をWとしたとき、前記距離Lwは、次の式で表される。
【0035】
Lw≒W/sinθ
又前記貼着手段38は、図9に示すように、本例では、前記受け渡し位置Q1と前記第2の搬送コンベヤ37上の貼り着位置Q2との間を前記搬送方向Fyに往復移動しうる移動台40と、前記切断片34を吸着できかつ前記移動台40に昇降手段41を介して支持される吸着体42とを具える。なお昇降手段41として本例ではシリンダが使用される。又吸着体42としては、未加硫のゴムが有する粘着性を利用して切断片34を吸着させる他、例えば真空パッドなどを用いて吸着させることもできる。
【0036】
従って、貼着手段38は、昇降手段41による吸着体42の下降、上昇により、前記受け渡し位置Q1の切断片34を吸着して保持するとともに、前記移動台40の移動により、前記保持した切断片34を貼り着位置Q2の上方まで移送しうる。しかる後、昇降手段41の下降により、吸着体42は、保持した切断片34を、第2の搬送コンベヤ37上の貼り着位置Q2に押し付ける。このとき、保持した切断片34の移送方向前方側の側面4cと、先に移送された第2の搬送コンベヤ37上の切断片34の移送方向後方側の側面4dとが重なり合うため、切断片34同士を互いに接合させることができる。
【0037】
そしてこれを繰り返し、所定枚数の切断片34を順次接合することにより、その接合体であるコードプライP(本例ではカーカスプライPC)が形成される。又このコードプライPを、例えばタイヤ構成部材とともにタイヤ成形ドラム等に搬入し、生タイヤを形成する。図10は、前記コードプライPをカーカスプライとして使用した空気入りタイヤTを示す断面図である。
【0038】
図10において、空気入りタイヤTは、トレッド部52からサイドウォール部53を経てビード部54のビードコア55に至るカーカス56と、このカーカス56の半径方向外側に配されるベルト層57とを含んで形成される。前記カーカス56は、タイヤの骨格をなし、コード(カーカスコード)を周方向に対して75〜90°の角度で配列する1枚以上のカーカスプライ56Aからなる。又ベルト層57は、コード(ベルトコード)を周方向に対して10〜40°の角度で配列する1枚以上、本例では2枚のベルトプライ57Aからなり、トレッド部52をタガ効果を有して強固に補強する。
る。
【0039】
又ベルト層57の外側には、高速性能の向上を目的として、コード(バンドコード)を周方向に配列した1枚以上のバンドプライ58Aからなるバンド層58が配される。又前記ビード部54に、コード(ビード補強コード)を周方向に対して20〜90°の角度で配列する1枚以上のビード補強プライ(図示しない)からなるビード補強層を設けることもできる。
【0040】
そして本例では、前記カーカスプライ56Aを、前述のプライ材料4からなるコードプライPを用いて形成している。なおコード材料、コード間隔、切断角度θ等を適宜選択することにより、プライ材料4からなるコードプライPを用いてベルトプライ57A、ビード補強プライ等を形成することができる。又バンドプライ58Aに対しては、プライ材料4をそのまま適用することができる。
【0041】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0042】
表1の仕様を有しかつ図6に示すダイプレートを使用したトッピング・押出し成形方法にてプライ材料を形成するとともに、このプライ材料をカーカスプライに用いて、乗用車用空気入りタイヤ(215/45ZR17)を試作した。そして各試供タイヤのユニフォミティー、および空気溜まりに起因した不良品の発生率を比較した。
【0043】
比較例2では、凹溝に代え、ローラ面に複数のホーリング針を突設した周知のホーリングローラを用いてプライ材料にホーリングを施している。又比較例1では、凹溝もホーリングも施していない。なおホーリングは、図11に示すように、各コード間に、1m間隔Pcで貫通孔を形成している。
【0044】
又カーカスプライは、コード(ポリエステル:1670dtex/2)、コード角度90°、コードエンド数(50本/5cm)で、各タイヤともに同仕様である。
【0045】
<ユニフォミティー>
フォースバリエイション(FV)試験機を用い、JASO C607の規格に基づいてRFV(O.A.)を測定し、各50本の試作タイヤの平均値を記載している。
【0046】
<不良品の発生率>
タイヤ50本を作成し、空気溜まりに起因した不良タイヤの発生率を算出した。なお不良タイヤは、タイヤをCTスキャナで撮影し、空気残りの有無を検出した。
【0047】
【表1】
表に示されるように、本発明に係わる実施例は、空気溜まりに起因した不良タイヤの発生を抑えながら、タイヤのユニフォミティーを向上しうるのが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のプライ材料製造方法を実施するプライ材料製造装置の一例を概念的に示す斜視図である。
【図2】プライ材料製造装置の主要部を拡大して示す斜視図である。
【図3】押出しヘッドの断面図である。
【図4】バッフルの斜視図である。
【図5】ダイプレートをその成形口とともに示す正面図である。
【図6】ダイプレートの他の例を示す正面図である。
【図7】プライ材料製造装置を有する生タイヤ成形ラインを概念的に示す平面図である。
【図8】生タイヤ成形ラインにおけるフェスツーン、搬入コンベヤ、切断手段、第1の搬送コンベヤを概念的に示す側面図である。
【図9】生タイヤ成形ラインにおける貼着手段、第2の搬送コンベヤを概念的に示す側面図である。
【図10】本発明に係わるプライ材料を用い空気入りタイヤを示す断面図である。
【図11】比較例2におけるホーリングの状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0049】
2 コード
3 コード並列体
4 プライ材料
4a、4b プライ材料の上下の表面
6 ダイプレート
7 押出しヘッド
13 成形口
20a、20b 成形口の上下の壁面
22 凸条突起
23 凹溝
G ゴム
T 空気入りタイヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーカスプライ、ベルトプライ、バンドプライ等のタイヤ用コードプライのトップ反として好適であり、ホーリング(プリッキング)を施すことなくタイヤ内での空気溜まりを抑制しうるプライ材料の製造方法、およびそのプライ材料を用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤでは、生タイヤ成形工程において、カーカスプライ、ベルトプライ、バンドプライなどの種々のコードプライが重ね合わせて貼着されている。従って、内外に重なるコードプライ間には、空気溜まりが発生しやすく、完成タイヤの外観性能や耐久性を低下させる原因となっている。
【0003】
そのために、従来、ホーリング針を具えた種々のホーリング装置を用い、コードプライに空気抜き用の複数の貫通孔を穿孔することが行われている(例えば特許文献1、2参照。)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コードプライに貫通孔を設けるものは、この貫通孔を起点としてコードプライのゴムがのびるため、貫通孔の近傍に、コード間隔が局部的に増大する不均一部分が発生するなど、タイヤのユニフォミティーを低下させる傾向がある。又穿孔の際、ホーリング針がコードを突き刺して該コードにダメージを与えるという恐れも生じる。
【0005】
他方、近年においては、ダイプレートを前端に設けたゴム押出機を用い、前記ダイプレートの成形口からゴムとコード並列体とを同時に吐出させることにより、コード並列体をゴムトッピングした所定断面形状のプライ材料を得るトッピング・押出し成形方法が提案されている(例えば特許文献3参照。)。この方法では、得られた長尺なプライ材料を所望の角度および間隔で順次切断し、かつその切断片を、非切断縁間で順次連結することにより、タイヤの種類やサイズに応じてコード角度やサイズを違えた種々のコードプライを、タイヤ1本分づつ形成できる。そのため、従来的な中間在庫の発生を抑制でき、多品種少量生産の傾向が強いタイヤを、効率よく生産することができる。
【0006】
本発明は、上記トッピング・押出し成形方法に着目してなされたものであり、ダイプレートの成形口の上下の壁面に凸条突起を設けることを基本として、押出し成形されたプライ材料の上下の表面に、コード長さ方向にのびる排気用の凹溝を形成でき、ホーリングを施すことなく、即ちユニフォミティーの低下やコードのダメージを招くことなく、コードプライ間の空気溜まりを抑制しうるプライ材料製造方法、およびプライ材料を用いた空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【特許文献1】特開2000−301626号公報
【特許文献2】特開2003−154579号公報
【特許文献3】特開平8−103972号公報
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、複数本のコードを平行に並列させたコード並列体を未加硫のゴムでトッピングすることにより長尺帯状のプライ材料を形成するプライ材料製造方法であって、
成形口を有するダイプレートを前端に設けた押出しヘッドの前記成形口に、前記ゴムとコード並列体とをコード長さ方向に通すことにより所定断面形状のプライ材料を得るトッピング・押出し成形工程を含むとともに、
前記ダイプレートは、前記成形口の上下の壁面に、該壁面から小高さで突出しかつコード長さ方向にのびる凸条突起を1本以上具えることにより、前記トッピング・押出し成形工程は、前記プライ材料の上下の表面に、コード間をコード長さ方向にのびる排気用の凹溝を1本以上形成したことを特徴としている。
【0008】
又請求項2の発明では、前記凸条突起は、前記上下の壁面に、それぞれコード2本毎に1本の割合で形成され、しかも上の壁面に配される凸条突起と、下の壁面に配される凸条突起とを千鳥状に位置ズレさせたことを特徴としている。
【0009】
又請求項3の発明では、前記凸条突起は、前記壁面からの突出高さHaを、前記上下の壁面間の距離である成形口高さHcの0.1〜0.5倍、しかも前記コードの直径Dbの1/6倍以上であることを特徴としている。
【0010】
又請求項4の発明では、前記凸条突起は、断面略三角形状をなすことを特徴としている。
【0011】
又請求項5の発明は、空気入りタイヤであって、請求項1〜4にて形成されたプライ材料を用いて製造されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は叙上の如く、ダイプレートの成形口の上下の壁面に、コード長さ方向にのびる凸条突起を設け、これにより、押出し成形されたプライ材料の上下の表面に、コード間をコード長さ方向にのびる凹溝を形成している。この凹溝は、生タイヤ成形時、コードプライ間における空気溜まりを、外部に排気できる。従って、前述のトッピング・押出し成形方法が有するメリットを生かしながら、空気溜まりによる外観性能や耐久性の低下を防止することができる。又ホーリング装置が不要となるため、設備コストを低減でき、しかもホーリングに起因するユニフォミティーの低下やコードへのダメージを抑制することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1は、本発明のプライ材料製造方法を実施するプライ材料製造装置の一例を概念的に示す斜視図である。
【0014】
図1において、プライ材料製造装置1は、複数本のコード2を平行に並列させたコード並列体3を未加硫のゴムGでトッピングすることにより長尺帯状のプライ材料4を形成する装置であって、ゴム押出機本体5の先端部に、押出しヘッド7を取り付けている。
【0015】
前記コード並列体3は、本例では、周知構造のリールスタンド8から供給される。このリールスタンド8は、コード2を巻取った複数のリール9を回転自在に保持するスタンド部8Aと、各リール9から巻き戻されるコード2を平行に引き揃えてコード並列体3を形成するコード引き揃え部8Bとを具える。前記コード引き揃え部8Bとしては、コード位置決め用の複数の周方向溝を並設した案内ローラ8B1を含むことができる。
【0016】
次に、前記ゴム押出機本体5は、ゴム投入口を設けたシリンダ5A内に、スクリュー軸を収納した周知構造をなし、前記スクリュー軸の回転駆動により、投入されるゴムGを可塑化しながらシリンダ5A前端の押出口5A1(図3に示す)から押し出ししうる。
【0017】
又前記押出しヘッド7は、図2、3に示すように、シリンダ5Aの前端に固定されるヘッド本体10に、前記リールスタンド8からのコード並列体3の各コード2を挿入するコード挿入孔11を有するバッフル12、前記挿入されたコード並列体3とゴム押出機本体5からのゴムGとが通る成形口13を有するダイプレート6、および前記ゴム押出機本体5からのゴムGを予備成形しながら前記成形口13に案内する案内流路15を形成するプリフォーマ16を取り付けている。
【0018】
前記バッフル12は、図3、4に示すように、先細状に傾斜する上下のテーパ面17a、17bを有する断面略三角形状の基体部17と、その後端に設けられかつ前記ヘッド本体10の側壁間に跨って支持される横枠部18とを具える。又バッフル12に形成される前記コード挿入孔11は、コード2と略同径をなし該コード2を精度良く整列させるとともに、該コード挿入孔11からのゴムGの流出を防止する。又コード挿入孔11の後方側には、コード2を非接触で挿入させる遊挿溝14が配される。
【0019】
次に、前記プリフォーマ16は、前記バッフル12の上下のテーパ面17a、17bと対抗する上下のテーパ面16a、16bとを有し、前記上のテーパ面16a、17a間、および下のテーパ面16b、17b間に、それぞれ前記押出口5A1に連通し、ゴム押出機本体5からのゴムGを前記成形口13に案内する上下の案内流路15a、15bを形成する。なおバッフル12の一方のテーパ面(本例では上のテーパ面17a)の前端は、他方のテーパ面(本例では下のテーパ面17a)の前端よりも後方側で終端している。これにより、本例では上の案内流路15aからのゴムGが、下の案内流路15bからのゴムGよりも先にコード並列体3と接触でき、かつこの接触時においては、まだコード並列体3がバッフル12に支持されている。従って、ゴム流れによるコード2の配列乱れを低減しうる。
【0020】
又前記プリフォーマ16の前端には、ダイプレート6が取り付く。該ダイプレート6は、図5に示すように、矩形板状をなし、その中央には、プライ材料4の断面形状を決定する成形口13を形成している。従って、本実施形態の装置1では、前記成形口13に、前記ゴムGとコード並列体3とをコード長さ方向に通すことにより、前記成形口13によって定まる断面形状のプライ材料4を得るトッピング・押出し成形工程を行いうる。
【0021】
ここで、前記成形口13は、互いに平行な上下の壁面20a、20bを少なくとも含み、本例では、成形口13が、前記上下の壁面20a、20bと、その両端間を互いに継ぐ側の壁面21c、21dとからなる平行四辺形状をなす場合が示されている。このような成形口13にて押出し成形されたプライ材料4は、その断面形状も、側面4c、4dが傾斜する平行四辺形状をなす。従って、プライ材料4は、図9に示すように、隣り合う側面4c、4d間を上下に重ね合わせて接合でき、高い接合強度を確保しながら、接合に起因する段差の形成を防止することが可能となる。なお接合強度の観点から、前記壁面21c、21dと壁面20a、20bとの間の鋭角側の角度αは、30〜60°の範囲が好ましい。
【0022】
そして本発明では、前記成形口13の上下の壁面20a、20bに、該壁面20a、20bから小高さで突出しかつコード長さ方向にのびる凸条突起22を1本以上設けている。従って、前記トッピング・押出し成形工程において、押出し成形されたプライ材料4の上下の表面4a、4bに、コード2、2間をコード長さ方向にのびる排気用の凹溝23を1本以上形成することができる。なお前記凸条突起22は、断面略三角形状にて形成するのが好ましい。
【0023】
このような凹溝23は、排気溝として機能でき、生タイヤ成形時にコードプライ間に空気溜まりが生じた場合、その空気を外部に排気することができる。
【0024】
又前記凸条突起22は、コード2、2間の領域Yに形成されることが必要であり、より好ましくは、コード2、2間の中央位置に形成される。前記領域Yは、隣り合うコード2の側縁から立ち上がる法線N、N間の領域を意味する。この領域Yから外れた場合、前記凸条突起22の前記壁面20a(又は20b)からの突出高さHaを充分に確保することができなくなる。即ち、前記凹溝23の容積が過小となって、充分な排気効果を得ることができなくなる。
【0025】
前記突出高さHaは、前記上下の壁面20a、20b間の距離である成形口高さHcの0.1〜0.5倍の範囲、かつ前記コード2の直径Dbの1/6倍以上であることが好ましい。もし前記突出高さHaが成形口高さHcの0.1倍未満、およびコード2の直径Dbの1/6倍未満では、排気効果を充分に確保することができなくなる。又突出高さHaが成形口高さHcの0.5倍を超えると、プライ材料4の強度が過度に減じ、前記凹溝23の位置でコード間隔が不均一に増加する等、ユニフォミティーの悪化を招く。従って、突出高さHaの下限値は、成形口高さHcの0.2倍以上がさらに好ましく、又上限値は、成形口高さHcの0.4倍以下がさらに好ましい。
【0026】
又前記凸条突起22を、各コード2、2間に均等に形成するのが好ましい。即ち、
(1) 図6に示すように、前記上下の壁面20a、20bにおいて、それぞれ、コード一本毎に凸条突起22を形成し、各コード2、2間に上下の凸条突起22a、22bをそれぞれ形成する、或いは
(2) 図2、5に示すように、前記上下の壁面20a、20bに、それぞれコード二本毎に一本の割合で凸条突起22を形成し、しかも上の壁面20aに配される凸条突起22aと、下の壁面20bに配される凸条突起22bとを千鳥状に位置ズレさせる
ことが好ましい。
【0027】
このように凸条突起22を形成した場合には、前記凸条突起22によって、コード2に対するセンタリングの機能が発揮されることが、本発明者の研究の結果判明した。即ち、前記凸条突起22を、各コード2、2間に均等に形成した場合、成形口13を通過する時で、コード2がセンタリングされてコード間隔のバラ付きが抑制され、タイヤのユニフォミティーを一層向上させることが可能となる。
【0028】
なおコード並列体3は、トッピングの際、その後端側は前記バッフル12に拘束されて均一なコード間隔が維持される。しかし、前記バッフル12から離れて成形口13に至る間では、コード並列体3は、上下の案内流路15a、15bからのゴム流れによって種々な圧力を受け、成形口13を通過する時点でコード間隔がバラ付く傾向がある。これに対して、本例では、前記凸条突起22がコード2をセンタリングするため、コード間隔を均一化させることが可能となる。
【0029】
なお、前記(1)の場合、上下の凹溝23が接近するためプライ材料4が強度不足となり、コード2、2間の距離が変化しやすくなって、ユニフォミティーの向上効果が減じる傾向となる。従って、ユニフォミティーの観点から、前記(2)の場合がより好ましい。
【0030】
次に、図7〜9に、前記プライ材料製造装置1が、生タイヤ成形ラインTLに設置され、前記プライ材料4からタイヤ用のコードプライP(本例ではカーカスプライPC)が形成される場合が示される。
【0031】
具体的には、生タイヤ成形ラインTLは、
(a) 前記プライ材料製造装置1と、
(b) このプライ材料製造装置1からの長尺帯状のプライ材料4を、フェスツーン31を介してその長さ方向Fxに搬入する搬入コンベヤ33と、
(c) 搬入されるプライ材料4を、所望の切断長さに切断して切断片34を順次形成する切断手段35と、
(d) この切断片34を受け渡し位置Q1まで長さ方向Fxに搬送する第1の搬送コンベヤ36と、
(e) 前記受け渡し位置Q1の切断片34を受け取って第2の搬送コンベヤ37上の切断片接合体34Pに貼着する貼着手段38と、
を含んで構成されている。
【0032】
前記搬入コンベヤ33および第1の搬送コンベヤ36は、乗り継ぎ可能に一直線状に連設されるベルトコンベアであって、前記搬入コンベヤ33は、前記フェスツーン31からプライ材料4を引き出し、前記搬入コンベヤ33と第1の搬送コンベヤ36との間に配される切断手段35に、前記プライ材料4を切断長さ毎に間欠的に搬入する。
【0033】
前記切断手段35は、前記搬入コンベヤ33と第1の搬送コンベヤ36との間の切断位置Q3に配されるカッタ35Aを具える。このカッタ35Aは、前記切断位置Q3を超えて前記第1の搬送コンベヤ36側に搬入されるプライ材料4の搬入部分を、前記切断位置Q3で切断することにより、該搬入部分によって切断片34を形成する。前記カッタ35Aは、本例では円盤状の回転刃であって、長さ方向Fxに対して角度θ(ラジアルカーカスの場合では略90°)で傾く切断方向に沿って走行することにより、プライ材料4を角度θで切断する。なお切断手段35の構造としては、特に規制させることがなく、従来的な種々の構造のものが採用しうる。
【0034】
次に、第2の搬送コンベヤ37は、前記第1の搬送コンベヤ36とは、前記角度θと同角度で交わるベルトコンベヤであって、搬送面上の切断片接合体34Pを、所定の距離Lwづつ搬送方向Fyに向かって間欠的に搬送する。なお前記プライ材料4の巾をWとしたとき、前記距離Lwは、次の式で表される。
【0035】
Lw≒W/sinθ
又前記貼着手段38は、図9に示すように、本例では、前記受け渡し位置Q1と前記第2の搬送コンベヤ37上の貼り着位置Q2との間を前記搬送方向Fyに往復移動しうる移動台40と、前記切断片34を吸着できかつ前記移動台40に昇降手段41を介して支持される吸着体42とを具える。なお昇降手段41として本例ではシリンダが使用される。又吸着体42としては、未加硫のゴムが有する粘着性を利用して切断片34を吸着させる他、例えば真空パッドなどを用いて吸着させることもできる。
【0036】
従って、貼着手段38は、昇降手段41による吸着体42の下降、上昇により、前記受け渡し位置Q1の切断片34を吸着して保持するとともに、前記移動台40の移動により、前記保持した切断片34を貼り着位置Q2の上方まで移送しうる。しかる後、昇降手段41の下降により、吸着体42は、保持した切断片34を、第2の搬送コンベヤ37上の貼り着位置Q2に押し付ける。このとき、保持した切断片34の移送方向前方側の側面4cと、先に移送された第2の搬送コンベヤ37上の切断片34の移送方向後方側の側面4dとが重なり合うため、切断片34同士を互いに接合させることができる。
【0037】
そしてこれを繰り返し、所定枚数の切断片34を順次接合することにより、その接合体であるコードプライP(本例ではカーカスプライPC)が形成される。又このコードプライPを、例えばタイヤ構成部材とともにタイヤ成形ドラム等に搬入し、生タイヤを形成する。図10は、前記コードプライPをカーカスプライとして使用した空気入りタイヤTを示す断面図である。
【0038】
図10において、空気入りタイヤTは、トレッド部52からサイドウォール部53を経てビード部54のビードコア55に至るカーカス56と、このカーカス56の半径方向外側に配されるベルト層57とを含んで形成される。前記カーカス56は、タイヤの骨格をなし、コード(カーカスコード)を周方向に対して75〜90°の角度で配列する1枚以上のカーカスプライ56Aからなる。又ベルト層57は、コード(ベルトコード)を周方向に対して10〜40°の角度で配列する1枚以上、本例では2枚のベルトプライ57Aからなり、トレッド部52をタガ効果を有して強固に補強する。
る。
【0039】
又ベルト層57の外側には、高速性能の向上を目的として、コード(バンドコード)を周方向に配列した1枚以上のバンドプライ58Aからなるバンド層58が配される。又前記ビード部54に、コード(ビード補強コード)を周方向に対して20〜90°の角度で配列する1枚以上のビード補強プライ(図示しない)からなるビード補強層を設けることもできる。
【0040】
そして本例では、前記カーカスプライ56Aを、前述のプライ材料4からなるコードプライPを用いて形成している。なおコード材料、コード間隔、切断角度θ等を適宜選択することにより、プライ材料4からなるコードプライPを用いてベルトプライ57A、ビード補強プライ等を形成することができる。又バンドプライ58Aに対しては、プライ材料4をそのまま適用することができる。
【0041】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0042】
表1の仕様を有しかつ図6に示すダイプレートを使用したトッピング・押出し成形方法にてプライ材料を形成するとともに、このプライ材料をカーカスプライに用いて、乗用車用空気入りタイヤ(215/45ZR17)を試作した。そして各試供タイヤのユニフォミティー、および空気溜まりに起因した不良品の発生率を比較した。
【0043】
比較例2では、凹溝に代え、ローラ面に複数のホーリング針を突設した周知のホーリングローラを用いてプライ材料にホーリングを施している。又比較例1では、凹溝もホーリングも施していない。なおホーリングは、図11に示すように、各コード間に、1m間隔Pcで貫通孔を形成している。
【0044】
又カーカスプライは、コード(ポリエステル:1670dtex/2)、コード角度90°、コードエンド数(50本/5cm)で、各タイヤともに同仕様である。
【0045】
<ユニフォミティー>
フォースバリエイション(FV)試験機を用い、JASO C607の規格に基づいてRFV(O.A.)を測定し、各50本の試作タイヤの平均値を記載している。
【0046】
<不良品の発生率>
タイヤ50本を作成し、空気溜まりに起因した不良タイヤの発生率を算出した。なお不良タイヤは、タイヤをCTスキャナで撮影し、空気残りの有無を検出した。
【0047】
【表1】
表に示されるように、本発明に係わる実施例は、空気溜まりに起因した不良タイヤの発生を抑えながら、タイヤのユニフォミティーを向上しうるのが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のプライ材料製造方法を実施するプライ材料製造装置の一例を概念的に示す斜視図である。
【図2】プライ材料製造装置の主要部を拡大して示す斜視図である。
【図3】押出しヘッドの断面図である。
【図4】バッフルの斜視図である。
【図5】ダイプレートをその成形口とともに示す正面図である。
【図6】ダイプレートの他の例を示す正面図である。
【図7】プライ材料製造装置を有する生タイヤ成形ラインを概念的に示す平面図である。
【図8】生タイヤ成形ラインにおけるフェスツーン、搬入コンベヤ、切断手段、第1の搬送コンベヤを概念的に示す側面図である。
【図9】生タイヤ成形ラインにおける貼着手段、第2の搬送コンベヤを概念的に示す側面図である。
【図10】本発明に係わるプライ材料を用い空気入りタイヤを示す断面図である。
【図11】比較例2におけるホーリングの状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0049】
2 コード
3 コード並列体
4 プライ材料
4a、4b プライ材料の上下の表面
6 ダイプレート
7 押出しヘッド
13 成形口
20a、20b 成形口の上下の壁面
22 凸条突起
23 凹溝
G ゴム
T 空気入りタイヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のコードを平行に並列させたコード並列体を未加硫のゴムでトッピングすることにより長尺帯状のプライ材料を形成するプライ材料製造方法であって、
成形口を有するダイプレートを前端に設けた押出しヘッドの前記成形口に、前記ゴムとコード並列体とをコード長さ方向に通すことにより所定断面形状のプライ材料を得るトッピング・押出し成形工程を含むとともに、
前記ダイプレートは、前記成形口の上下の壁面に、該壁面から小高さで突出しかつコード長さ方向にのびる凸条突起を1本以上具えることにより、前記トッピング・押出し成形工程は、前記プライ材料の上下の表面に、コード間をコード長さ方向にのびる排気用の凹溝を1本以上形成したことを特徴とするプライ材料製造方法。
【請求項2】
前記凸条突起は、前記上下の壁面に、それぞれコード2本毎に1本の割合で形成され、しかも上の壁面に配される凸条突起と、下の壁面に配される凸条突起とを千鳥状に位置ズレさせたことを特徴とする請求項1記載のプライ材料製造方法。
【請求項3】
前記凸条突起は、前記壁面からの突出高さHaを、前記上下の壁面間の距離である成形口高さHcの0.1〜0.5倍、しかも前記コードの直径Dbの1/6倍以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のプライ材料製造方法。
【請求項4】
前記凸条突起は、断面略三角形状をなすことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のプライ材料製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4にて形成されたプライ材料を用いて製造されたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項1】
複数本のコードを平行に並列させたコード並列体を未加硫のゴムでトッピングすることにより長尺帯状のプライ材料を形成するプライ材料製造方法であって、
成形口を有するダイプレートを前端に設けた押出しヘッドの前記成形口に、前記ゴムとコード並列体とをコード長さ方向に通すことにより所定断面形状のプライ材料を得るトッピング・押出し成形工程を含むとともに、
前記ダイプレートは、前記成形口の上下の壁面に、該壁面から小高さで突出しかつコード長さ方向にのびる凸条突起を1本以上具えることにより、前記トッピング・押出し成形工程は、前記プライ材料の上下の表面に、コード間をコード長さ方向にのびる排気用の凹溝を1本以上形成したことを特徴とするプライ材料製造方法。
【請求項2】
前記凸条突起は、前記上下の壁面に、それぞれコード2本毎に1本の割合で形成され、しかも上の壁面に配される凸条突起と、下の壁面に配される凸条突起とを千鳥状に位置ズレさせたことを特徴とする請求項1記載のプライ材料製造方法。
【請求項3】
前記凸条突起は、前記壁面からの突出高さHaを、前記上下の壁面間の距離である成形口高さHcの0.1〜0.5倍、しかも前記コードの直径Dbの1/6倍以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のプライ材料製造方法。
【請求項4】
前記凸条突起は、断面略三角形状をなすことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のプライ材料製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4にて形成されたプライ材料を用いて製造されたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−143022(P2010−143022A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321469(P2008−321469)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】
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