説明

プラスチックで被覆した厚紙のカップにマウスロールを作る方法およびこの方法で作ったカップ

この発明は、プラスチックで被覆した厚紙で作ったカップにマウスロールを作る方法およびこの方法によって作ったマウスロールを備えるカップに関する。このカップを補剛するためのマウスロールは、カップの口でこの厚紙を曲げる適当な打撃工具で作る。この発明によれば、このマウスロールを、この厚紙の対向する面がこのロールの領域でヒートシールによって互いに接着するように、熱を受けてこの厚紙のプラスチック被覆(8)を溶融することによって付加的に安定化する。溶融は、例えば、このマウスロールにその生産段階で向ける高温空気吹付けで行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プラスチックで被覆した厚紙で作ったカップにマウスロールを作る方法に関する。この発明は、この方法を実行することによってもたらされ、プラスチックで被覆した厚紙で作ってあり且つこのカップを補剛するためのマウスロールを備えるカップにも関する。この発明は、主として自動販売機の中で積重ねるのに適した使い捨て飲用カップに関する。
【背景技術】
【0002】
厚紙で作った飲用カップは、一方で剛性をもたらするために、および他方でこのカップから飲むユーザに所望の口当りを与えるためにマウスロールが必要である。マウスロールは、厚紙を曲げおよび/または圧縮するための成形工具によってこのカップの最終製造段階で作る。成形工具は、典型的にこの厚紙をカップの口で外方に曲げ、更にそれをロールの形に巻き、その場合にこの厚紙を約1〜1.5巻きに巻く。恒久的マウスロールを実現するために、この厚紙を湿らして成形性を向上しながら加熱した成形工具を使ってこの厚紙を加熱している。その上、成形性は、シリコンオイルのような、摩擦低減滑動剤を使って改善してある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本出願人の見解では、マウスロール形成の成功が厚紙カップの剛性と操作可能性に関して最も重要である。この発明は、マウスロールによって飲用カップの剛性を更に増加できるようにする解決策を提供するという目的を有する。この発明に従って修正したマウスロールは、自動販売機で使うカップの特性を向上し、用途によっては、これらのカップの材料として以前より薄い厚紙の使用を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の目的を達成するための解決策を提供する、この発明の方法は、厚紙を曲げることによってこのカップの口でマウスロールを作ること、およびこの厚紙の対向する面がこのロールの領域で互いにヒートシールされるようにこの厚紙のプラスチック被覆を熱で溶融することによってこのマウスロールを安定化することに特徴がある。
【0005】
防水断熱プラスチック被覆が厚紙で作った飲用カップの内面に、この厚紙の濡れを防ぐために特に必要である。コールドドリンクがその上室内空気に含まれる湿気をカップの外面に凝結させるので、このカップ厚紙は、大抵の場合この厚紙を湿気から守るプラスチック被覆を両側に備える。この発明によれば、このプラスチック被覆を今度はこのマウスロールを、従ってこのカップ構造全体を補剛するために使う。
【0006】
厚紙で作った飲用カップの被覆プラスチックは、典型的には低密度ポリエチレン(LDPE)で、それは、この厚紙に十分な湿気障壁をもたらし、また容易にヒートシール可能である。実際、このカップのスカートおよび底は、この厚紙のシール可能プラスチック被覆によって封止してある。この発明によれば、類似のヒートシール状態をこのマウスロールの領域にも設けることができ、すると1巻きを超えるだけ巻込んである対向する厚紙面のプラスチック被覆が溶融し、続いて冷却する間に互いに接着する。このマウスロールを安定化し且つ十分な接着を保証するためには、この厚紙をこのロールで少なくとも1.2巻きだけ、最も都合よくは少なくとも1.3巻きだけ巻込むのが好ましい。
【0007】
このカップの口を巻込むために成形工具を使うとき、通常は湿潤を伴う、加熱によってこのカップ厚紙の成形性を改善しようとした。この厚紙のプラスチック被覆を溶融するための連続生産として実行する急速成形では、現在の工具の加熱効果は十分でなく、本出願人が知る限りでは、マウス巻込みがこれまでプラスチックの溶融をねらっていなかった。実際、プラスチック被覆厚紙で作った現在のカップのマウスロールを材料への損傷なしに巻きほぐすことが可能で、これは、ヒートシールが何もないしるしである。それでこの発明は、実際の巻込み工程中に被覆プラスチックにより高い加熱効果を要求するか、またはより推賞に値するのは、被覆プラスチックが溶融するように巻込み工程後にマウスロールを加熱することを要求する。後者の作業は、溶融したプラスチックが成形工具に付着する危険を避け、それはこの封止工程がそれほどきわどくなく、それで制御が容易なことを意味する。
【0008】
被覆プラスチックの溶融に基づくマウスロールのヒートシールは、例えば、高温空気吹きつけ、超音波手段、レーザ放射または火炎密封機によって行ってもよい。
【発明の効果】
【0009】
マウスロールがより剛性であるために、薄いカップ厚紙を使うことができ、それで、特にコールドドリンク用を意図した飲用カップ用の材料の節約を達成し、その場合このカップスカートの断熱性能の減少がユーザに何の問題も生じない。もし、このカップが取っ手を備えるか、さもなければホットドリンクがユーザの指を火傷させないような設計になっていれば、同じ利益をホットドリンクの場合にも得ることができる。
【0010】
上に説明したようにプラスチック被覆厚紙で作った、この発明のカップは、この厚紙の対向する面が被覆プラスチックによりこのカップマウスロールの領域でヒートシールによって互いに接着していることに特徴がある。このマウスロールに作ったヒートシールは、このカップの口を連続的に囲んでもよく、またはこの口の周囲の一部だけに広がるように不連続であってもよい。
【実施例】
【0011】
以下に添付の図面を参照してこの発明を例によって詳細に説明する。
【0012】
図1で、厚紙で作った使い捨て飲用カップ1が最後の工程でマウスロール2を成形するために固定基板3上に支持してある。このマウスロール2は、垂直に往復運動する打撃工具4によって成形し、その工具は、カップ1の口に合うような寸法になっている環状溝5を備える。この成形中、厚紙をロール2として巻込むようにカップ1の口で外方に曲げ、そのときこの厚紙を少なくとも約1.2巻き、好ましくは1.2〜1.5巻きだけ巻込み、言換えれば、このロールは、少なくとも0.2巻きの距離に亘って二つの連続する厚紙層を含む。このマウスロールは、厚紙の蒸気給湿、シリコンオイルのような滑動剤およびこの打撃工具の加熱の助けにもよって作ることができる。
【0013】
マウスロール2は、通常打撃工具4によって行う複数の成形運動によって段階的に作る。図2ないし図4は、そのような手順の例を示し、そこではマウスロール2を3工程で成形する。カップ1を大量生産で作るとき、これらのカップを基板3として作用する円盤によって支持してもよく、その上をカップが一つずつこの円盤に対して静止している連続する成形ステーションへ動き、そこでこの垂直に動く打撃工具4がこのマウスロールの成形を行う。マウスロールを加工するためのこの種の装置は、米国特許明細書第5,992,489号に開示してある。
【0014】
図2は、マウスロール成形の第1工程を示し、そこでは第1成形ステーションの打撃工具4’がこの工具の溝5に嵌り込む厚紙の縁6を約0.3巻きだけ外方に曲げている。図3では、カップが次の成形ステーションへ動いていて、そこでは、打撃工具4”の衝撃の結果として、厚紙の縁6が約0.7巻きだけ外方に巻いてある。図4では、カップが第3成形ステーションに位置し、そこでは打撃工具4”’が厚紙の縁6を約1.2巻きだけロール2に巻込むようにこのマウスロールの成形を完了している。
【0015】
飲用カップ1用に使う厚紙7は、図5に関係する完成カップの断面部分拡大図で分るように、両面にプラスチック被覆8を備える。底厚紙7は、例えば、重量約200〜300g/mの3層カップ厚紙から成ってもよく、およびこのカップの内および外被覆層8は、層重量が、例えば、20〜40g/mの低密度ポリエチレン(LDPE)で作ってもよい。この発明によれば、このプラスチック被覆8は、対向する被膜層8を巻込み中にヒートシールすることによって互いに接着することによってマウスロール2を補強するために利用している。このため、図4に対応する第3成形ステーションは、図1に示す可動高温空気ブロワ9を備え、そこから高温空気流を、被覆した厚紙が丸めてある、先に完成したマウスロール2のベースへ向けることができる。この高温空気流は、対向する被覆層8が互いに溶着してこのカップの口を取巻く連続ヒートシール10を形成するように、この被覆プラスチックの局部溶融を生じる。
【0016】
高温空気吹きつけの代りに、この被覆プラスチックを、例えば、このロールのベースに向けた超音波手段またはレーザビームによって、このマウスロール2を封止するために溶融することができる。レーザ密封機は、COレーザヘッドを含むことができ、それは、カップとこのレーザヘッドの相互回転運動中に封止を行い、またはこのカップを複数の静止レーザヘッドで取囲んでもよく、それは、その円周の全長に亘る選択した位置でだけこのマウスロールを継ぎ合せる。点レーザヘッドから得たレーザビームを適当な可動ミラーによって封止中に導くこともできる。
【0017】
当業者には、この発明の用途が上記の実施例に限定されず、以下の請求項の範囲内で変動してもよいことが明白である。それで、例えば、上に説明したようなロールの成形に組合わせたヒートシールに加えて、このマウスロールを予め曲げたマウスロールに行う別の作業でヒートシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】マウスロールをヒートシールするための高温空気ノズルを備える成形ステーションで打撃工具を使う、この発明による厚紙飲用カップのマウスロール成形を示す。
【図2】このマウスロールの成形の連続する加工工程を示す。
【図3】このマウスロールの成形の連続する加工工程を示す。
【図4】このマウスロールの成形の連続する加工工程を示す。
【図5】マウスロールを備えるこの発明の飲用カップを示し、この図は、ヒートシールしたマウスロールの部分拡大図を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックで被覆したカップ厚紙で作ったカップにマウスロール(2)を作るための方法であって、この厚紙(6)を曲げることによってこのカップ(1)の口にロール(2)を作り出し、且つ、この厚紙の対向する面がこのロールの領域で互いにヒートシールされるように熱で被覆プラスチックを溶融することによってロール(2)が安定化されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、上記被覆プラスチック(8)を溶融する上記加熱を上記巻込み工程中に上記厚紙へ向けることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、上記被覆プラスチック(8)を溶融する上記加熱を上記巻込み工程後に上記厚紙へ向けることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れかに記載の方法であって、上記厚紙の上記被覆(8)が低密度ポリエチレン(LDPE)であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れかに記載の方法であって、上記被覆プラスチック(8)を溶融する上記加熱は熱風吹き付けにより行なわれる、方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4の何れかに記載の方法であって、上記被覆プラスチック(8)を溶融する上記加熱は超音波により行なわれる、方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項4の何れかに記載の方法であって、上記被覆プラスチック(8)を溶融する上記加熱はレーザー照射により行なわれる、方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れかに記載の方法によって作ったカップ(1)で、このカップがプラスチックで被覆(8)した厚紙(7)で作られ且つこのカップを補剛するためにマウスロール(2)を備えるカップであって、この厚紙の対向する面がこの被覆プラスチック(8)によるヒートシールでこのマウスロール(2)の領域で互いに接着されていることを特徴とするカップ。
【請求項9】
請求項8に記載のカップであって、上記厚紙の縁(6)を少なくとも1.2巻きだけ上記マウスロール(2)に巻込んであることを特徴とするカップ。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載のカップであって、上記マウスロール(2)が上記カップ(1)の上記口を囲む連続ヒートシール(10)を備えることを特徴とするカップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−507458(P2008−507458A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523094(P2007−523094)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【国際出願番号】PCT/FI2005/000339
【国際公開番号】WO2006/010787
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(501239516)
【Fターム(参考)】