説明

プラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物およびその用途

【課題】本発明は、難接着性のプラスチックフィルムに対しても優れた接着性を発揮し、また、グラビア印刷などの塗工適性、硬化性やシュリンク加工などに対する追従性が良好であり、さらに、硬化後には耐薬品性、耐傷付き性等に優れた強固な樹脂層を形成するプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、オキセタン化合物、エポキシ化合物、及び、酸価が20(mg−KOH/g−resin)以上の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物であって、オキセタン化合物、エポキシ化合物及び熱可塑性樹脂の3成分の混合物の酸価が0.1〜90(mg−KOH/g−resin)であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルムに塗工する用途に用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、該樹脂組成物からなるプラスチックフィルム用の接着剤および印刷インキに関する。また、該樹脂組成物、接着剤または印刷インキを塗工してなるプラスチックラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、お茶や清涼飲料水等の飲料用容器として、PETボトルなどのプラスチック製ボトルや、ボトル缶等の金属製ボトル等が広く用いられている。これらの容器には、表示や装飾性、機能性の付与のため、プラスチックラベルが装着する場合が多く、このプラスチックラベルには、装飾性、加工性(容器への追従性)、広い表示面積等のメリットから、シュリンクラベルやストレッチラベルが広く使用されている。通常これらのラベル表面には、文字やデザインなどの装飾性付与や、傷防止、滑り性などの機能性付与の目的で、インキをはじめとするコーティング剤が、塗布・印刷される。
【0003】
これらのコーティング剤に用いられる樹脂組成物には、シュリンク加工などそれぞれのラベル加工工程に適した加工適性が求められ、また、硬化後のコーティング層としては、流通過程で削れたりして、装飾性や機能が低下することのない強靱性が求められる。特に、シュリンクフィルムの分野では、近年、容器の形状の複雑化に伴って、シュリンク加工時の変形への追従性などの加工性の向上要求はますます厳しくなってきており、加工性と強靱性の高いレベルでの両立が急務である。また、耐薬品性、耐熱性や撥水性など、様々な用途に応じた機能付与の要求も高まってきている。
【0004】
また、これらのコーティング剤が、印刷インキとして用いられる場合等には、優れた印刷性(表現性)を有する観点などから、塗工方法としては、グラビア印刷が一般的に用いられている。グラビアインキは通常多量の有機溶剤を含んでいるため、製造工程において蒸発した溶剤等を処理する必要があり、装置自体や、触媒の交換等の維持費などが高価であるため、コスト面での負担が大きいことが問題となっている。他方、有機溶剤を用いない水性インキの場合には、乾燥に時間を要するため、印刷速度が遅く、生産性の低下を招くという問題があった。このように、グラビア印刷塗工用のコーティング剤には、上記要求に加えて、有機溶剤を用いずに使用できることや、高速印刷が可能な優れた硬化性が求められている。
【0005】
上記の要求を満たすべく、塗工性などに優れるエポキシ樹脂をベースとした実質的に溶剤を用いないコーティング剤の改良が進められている。比較的脆い性質を有するエポキシ樹脂に柔軟性を付与し、塗工性、硬化性と追従性などの両立を図った樹脂組成物として、オキセタン化合物を混合したエポキシ化合物からなるエネルギー線硬化型組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、粘度および硬化物の引張強度といった基礎物性についての検討にとどまっており、実用上のコーティング加工性やシュリンク加工に対する追従性、耐薬品性などの機能については何らの検討もなされておらず、ラベル用途、特に、シュリンクラベル用途に適用するには不十分であった。
【0006】
さらに、上記エポキシ樹脂やオキセタン樹脂などのカチオン重合性樹脂は、通常ラジカル重合性樹脂と比べて、酸素による硬化阻害の影響は受けにくいが、ポリエチレンフィルムなどの一部の種類の基材に対して用いられる場合には、フィルム中の添加剤等が硬化阻害物質となり、硬化速度や接着性が極端に低下する問題が生じる。かかる難接着性の基材フィルムに対して、インキを接着させたり、ラミネートの接着剤や筒状ラベルのセンターシール剤として用いるためには、溶解性の高い溶剤を用いたり、2液硬化型とする必要があり、上記の溶剤含有の問題や品質安定性、生産性の低下を招く問題があった。
【0007】
すなわち、上記の強靱性、硬化性、塗工性などの要求を満たし、なおかつ接着し難い難接着性のフィルムに対しても十分な接着性を示す活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は得られていないのが現状である。
【0008】
【特許文献1】特開平11−140279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、特に難接着性のプラスチックフィルムに対しても優れた接着性を発揮し、また、グラビア印刷などの塗工適性や硬化性が良好であり、さらに、硬化後には耐薬品性、耐傷付き性、耐もみ性やシュリンク加工などに対する追従性等に優れた強固な樹脂硬化物層を形成するプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することにある。また、該樹脂組成物からなるプラスチックフィルム用印刷インキ、プラスチックフィルム用接着剤、および、該樹脂組成物が塗工されてなる耐薬品性や耐傷付き性に優れたプラスチックラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、オキセタン化合物、エポキシ化合物、及び、特定の酸価の熱可塑性樹脂を用い、これらの混合物の酸価を特定の値に制御することにより、難接着性フィルムに対する接着性が飛躍的に向上し、優れた生産性、加工適性と硬化後の強靱性を有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、該樹脂組成物からなる印刷インキ、接着剤、および、該特性を有するプラスチックラベルを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、オキセタン化合物、エポキシ化合物、及び、酸価が20(mg−KOH/g−resin)以上の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物であって、オキセタン化合物、エポキシ化合物及び熱可塑性樹脂の3成分の混合物の酸価が0.1〜90(mg−KOH/g−resin)であることを特徴とするプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、前記酸価が20(mg−KOH/g−resin)以上の熱可塑性樹脂が、酸価が20〜550(mg−KOH/g−resin)の熱可塑性樹脂である前記のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、オキセタン化合物とエポキシ化合物の重量比が2:8〜8:2であって、オキセタン化合物とエポキシ化合物の合計量100重量部に対して、熱可塑性樹脂の添加量が、0.1〜30重量部である前記のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、前記熱可塑性樹脂が、スチレン/無水マレイン酸共重合体またはカルボキシル基含有(メタ)アクリルポリマーである前記のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、グラビア印刷用又はフレキソ印刷用である前記のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、プラスチックフィルムがポリオレフィン系フィルムである前記のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、前記のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなるプラスチックフィルム用接着剤を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、前記のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に、増感剤および顔料を添加してなるプラスチックフィルム用印刷インキを提供する。
【0019】
さらに、本発明は、前記のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物またはプラスチックフィルム用接着剤またはプラスチックフィルム用印刷インキを、プラスチックフィルムに塗工してなるプラスチックラベルを提供する。
【0020】
さらに、本発明は、プラスチックフィルムがシュリンクフィルムである前記のプラスチックラベルを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、プラスチックフィルムとの接着性に優れ、特にポリエチレンフィルムなど接着性が低いフィルムに対しても優れた接着性を示す。また、低粘度であるためグラビア印刷やフレキソ印刷などによるプラスチックフィルムへの塗布性が良好である。さらに、硬化後は、耐傷付き性、耐もみ性や耐薬品性に優れる。このため、本発明の樹脂組成物は印刷インキやプラスチックフィルム用接着剤として特に有用である。これらの特性を反映して、本発明の樹脂組成物を塗工したプラスチックラベルは、ガラス瓶やPETボトルなどのプラスチック容器などに用いられるラベル用途として特に有用である。その上、本発明の樹脂組成物からなる樹脂硬化層は、シュリンク加工などの基材フィルムの変形に対する追従性が良好なため、生産効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物という)、樹脂組成物からなるプラスチックフィルム用印刷インキ、プラスチックフィルム用接着剤、および、プラスチックラベルについて、さらに詳細に説明する。
【0023】
本発明の樹脂組成物は、可視光、紫外線、電子線などの活性エネルギー線によって硬化させることができる活性エネルギー線硬化性の化合物である。熱硬化性の場合と異なり、シュリンクフィルムなどの熱により変形を起こしやすい基材にも好適に用いられる。活性エネルギー線の中でも、特に紫外線硬化性、近紫外線硬化性であることが好ましい。好ましい吸収波長は300〜460nmである。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、オキセタン化合物(以後、成分Aという)とエポキシ化合物(以後、成分Bという)、及び、酸価が20(mg−KOH/g−resin)以上である熱可塑性樹脂(以後、成分Cという)を必須の構成成分として含有する。上記3成分を含まない場合は、本発明の効果は得られない。
【0025】
本発明の樹脂組成物には、上記3成分の他にも、活性エネルギー線硬化性を発現するために光重合開始剤を含有する。また、その他様々な特性付与の目的で、エポキシ基を有するシリコーン(エポキシ変性シリコーン)等の樹脂や、顔料、増感剤、分散剤、酸化防止剤、香料、消臭剤、安定剤などを添加してもよい。
【0026】
本発明の成分Aは、分子内に少なくとも1つのオキセタン環を有する化合物であり、モノマーまたはオリゴマーのいずれでもよい。例えば、特開平8−85775号公報や特開平8−134405号公報に記載されたオキセタン化合物を用いることができ、中でも、1分子中にオキセタン環を1個または2個有する化合物が好ましい。1分子中にオキセタン環を1個有する化合物としては、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタンなどが挙げられる。1分子中にオキセタン環を2個有する化合物としては、1,4−ビス[(3−エチル−3オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)メチル]}エーテルなどが挙げられる。さらにこれらの中でも、コーティング加工適性の観点や、コーティング層の硬化性の観点から、特に好ましくは、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)メチル]}エーテルである。
【0027】
本発明の成分Bは、分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有する公知のエポキシ化合物を用いることができ、例えば、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物や芳香族エポキシ化合物を用いることができる。中でも、高反応速度の観点から、グリシジル基を有する化合物やエポキシシクロヘキサン環を有する化合物が好ましく、2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が好ましい。例えば、脂肪族エポキシ化合物としては、プロピレングリコールグリシジルエーテルなどが挙げられる。また、脂環式エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペートなどが挙げられる。芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノールAグリシジルエーテル、ビスフェノールAのグリシジルエーテル縮合物、ノボラック樹脂やクレゾール樹脂のエピクロルヒドリン変性物などが挙げられる。中でも、特に好ましくは、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである。
【0028】
本発明の樹脂組成物に用いる成分A及び成分Bは、樹脂組成物の接着性、硬化性、塗工性(流動特性)、シュリンク加工などに対する追従性や硬化後の樹脂層(樹脂硬化物層という)の強靱性(耐傷付き性や耐もみ性など)、耐熱性、耐薬品性などの主な特性を担う成分である。本発明の成分Aと成分Bの合計の添加量は、塗布性、硬化性等の観点から、樹脂組成物全体(重量)に対して、30〜95重量%が好ましい。中でも、本発明の樹脂組成物がプラスチックフィルム用接着剤、透明コーティング剤である場合には、60〜95重量%が好ましく、より好ましくは70〜90重量%である。また、本発明の樹脂組成物が顔料を含む印刷インキである場合には、30〜90重量%が好ましく、より好ましく40〜80重量%である。
【0029】
本発明の樹脂組成物における成分Aと成分Bの配合比(成分A:成分B、重量比)は、2:8〜8:2が好ましく、特に本発明の樹脂組成物がグラビア印刷、フレキソ印刷によりコーティングされる場合には、3:7〜8:2が好ましく、より好ましくは4:6〜7:3である。中でも、本発明の樹脂組成物が印刷インキとして用いられる場合は、配合比は、5:5〜8:2が好ましく、より好ましくは6:4〜7:3である。また、本発明の樹脂組成物がプラスチックフィルム用接着剤として用いられる場合には、配合比は、3:7〜7:3が好ましく、より好ましくは4:6〜6:4である。上記範囲よりも成分Aの量が多くなると、樹脂組成物の硬化反応の開始速度が遅くなって、硬化に時間がかかるため生産性が低下したり、通常の硬化工程では未硬化となる場合がある。また、上記範囲よりも成分Bの量が多くなると、樹脂組成物の粘度が大きくなってグラビア印刷やフレキソ印刷などのコーティング法で均一に塗布することが困難となったり、硬化反応の停止反応が起こりやすく、低分子量の硬化物となり、樹脂硬化物層がもろくなる場合がある。
【0030】
本発明において、成分Aは、硬化反応において、生長反応速度が速く停止反応が起こりにくいため、高分子量の硬化物が得られ樹脂硬化物層の強靱性が向上する利点を有し、また、低粘度であるため、グラビア印刷やフレキソ印刷等における塗工性が向上する。反面、開始反応が進みにくいため硬化工程に時間がかかり生産性が低下したり、短い硬化時間では硬化が進まず逆に樹脂硬化物層の強靱性が不足する欠点がある。これに対して、成分Bは、開始反応が速く、生産速度は速くなる利点を有する反面、停止反応が起こりやすいため、硬化物は低分子量となり樹脂硬化物層の強靱性が不足する。これらの両者を、上記の割合で混合することによって、生産性(硬化速度)、塗工性(流動特性)と硬化物の強靱性を併せ持った樹脂組成物を得ることが出来る。
【0031】
本発明の成分Cは酸価が20(mg−KOH/g−resin)以上である熱可塑性樹脂である。成分Cは、本発明の樹脂組成物の接着性を向上し、特にポリエチレンフィルムなど接着性の低いフィルムに対する接着性の低下を抑制し、接着性を維持する役割を担う成分である。成分Cとしては、上記酸価を満たす熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、カルボキシル基又は酸無水物基を含有するビニル系樹脂(以下、カルボキシル基含有ビニル系樹脂という)が好ましく例示される。
【0032】
本発明の成分Cとして用いることができるカルボキシル基含有ビニル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル等のビニル化合物との共重合体等が挙げられる。なお、ここでいう「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び/又は「メタクリル」を表す。上記の中でも、特に好ましくは、スチレン−無水マレイン酸共重合体、カルボキシル基含有(メタ)アクリルポリマーである。
【0033】
本発明の成分Cの酸価(JIS K 5601−2−1に準拠)は、20(mg−KOH/g−resin)以上であり、好ましくは20〜550(mg−KOH/g−resine)、より好ましくは30〜300(mg−KOH/g−resin)、さらに好ましくは40〜280(mg−KOH/g−resin)である。酸価が20(mg−KOH/g−resin)未満の場合には、成分Cの添加効果が得られず、接着性の低いフィルムに対する十分な接着性が得られない。酸価の上限は、成分Cの添加量にもより、特に限定されないが、550(mg−KOH/g−resin)を超えて過剰である場合には、成分A、Bなどとの相溶性が低下し、分散不良が生じて十分な効果が得られない場合がある。また、塗工不良などを生ずる場合がある。
【0034】
本発明の成分A、成分B及び成分Cの混合物の酸価(JIS K 5601−2−1に準拠)は、0.1〜90(mg−KOH/g−resin)が好ましく、より好ましくは1〜80(mg−KOH/g−resin)である。混合物の酸価が0.1未満の場合には、接着性の低いフィルムに対する十分な接着性が得られない。また、混合物の酸価が90を超える場合には、成分Cと成分A、Bなどとの相溶性が低下し、分散不良が生じて十分な効果が得られない場合や、塗工不良などを生ずる場合がある。なお、上記混合物の酸価は、成分Cの酸価や成分A〜Cの添加量などによって制御することができる。
【0035】
本発明の成分Cの重量平均分子量は、2000〜100000が好ましく、より好ましくは3000〜70000である。分子量が2000未満の場合には、成分Cがブリードアウトする等の不具合を生ずる場合があり、分子量が100000を超える場合には、樹脂組成物の粘度が高くなり塗工性が低下する場合がある。
【0036】
本発明の成分Cの添加量は、成分Aと成分Bの合計量(100重量部とする)に対して、0.1〜30重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜28重量部である。添加量が0.1重量部未満の場合には、接着性向上の効果が得られないことがあり、30重量部を超える場合には、樹脂組成物の硬化性が低下することがある。
【0037】
本発明においては、成分A、成分Bの両者のみを混合することによっても、ある程度の硬化速度(生産性)と強靱性を得ることはでき、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの通常の接着性を示すプラスチックフィルムに対して用いる場合には使用可能である。しかしながら、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド等の滑剤や帯電防止剤等を含む系などにおいては、これらのフィルム中の添加剤成分が表面にブリード等して、カチオン重合反応の阻害要因(即ち硬化阻害物質)として作用するためと考えられるが、硬化速度(反応速度)が極端に低下する。本発明の成分Cは成分A、Bと加えて用いることによって、上記硬化阻害物質の働きを抑制し、これらの阻害物質が存在する系においても、硬化速度の低下を防ぐ役割をするものと考えられる。このため、本発明の樹脂組成物は、通常の接着性を示すフィルムにおいても、良好な硬化性が得られ、接着性、密着性が向上するが、特に、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド系滑剤や帯電防止剤等の硬化阻害物質とみなされる添加剤成分がフィルム表面に存在するプラスチックフィルムに対して有効であり、ポリエチレンをはじめとするポリオレフィン系プラスチックフィルムに対して特に優れた効果を示す。
【0038】
なお、上記硬化阻害物質と考えられるものとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ろう、ホホバ油、みつろう、ラノリン、鯨ろう、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、ペトロラタム、フィッシャー・トロプスワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体、硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸アミド、ビスステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等のワックス、カチオン性、ノニオン性界面活性剤による帯電防止剤、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等の添加剤が挙げられる。中でも、特に硬化阻害性が強いと考えられるものとしては、ステアリン酸アミド、ビスステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミドやカチオン性、ノニオン性界面活性剤による帯電防止剤が挙げられる。
【0039】
本発明の樹脂組成物には、硬化速度、耐溶剤性、滑り性、撥水性などを向上させる観点で、分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有するシリコーン(エポキシ変性シリコーン)を添加してもよい。なお、ベースとなるシリコーンは、主鎖がシロキサン結合からなるポリシロキサンであればよい(例えば、全ての側鎖、末端がメチル基からなるジメチルシリコーン、側鎖の一部にフェニル基を含むメチルフェニルシリコーン、側鎖の一部が水素であるメチルハイドロジェンシリコーンなどが挙げられる)。また、エポキシ基は、主鎖の両末端または片末端に有していてもよいし、側鎖に有していてもよく、例えば、下記の構造式で表される化合物が挙げられる。
【0040】
【化1】

【0041】
なお、式中のR1、R2、R3は水素原子または炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基であり、特に好ましくはメチル基である。また、式中のm、nは、1以上の整数である。さらに、式中のX1、X2はエポキシ基であり、例えば、下記の構造式で示すように、エポキシ基の酸素原子が環状脂肪族骨格を含まないもの(左図:脂肪族エポキシ基と称する)であってもよいし、エポキシ基の酸素原子が環状脂肪族骨格を含んで形成されたもの(右図:脂環式エポキシ基と称する)であってもよい。
【0042】
【化2】

【0043】
なお、式中のR4、R5は水素原子または炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。また、例えば、特開平10−259239号公報に記載のエポキシ変性シリコーン化合物を用いることも可能である。
【0044】
上記の中でも、ジメチルシリコーンの側鎖の一部または少なくとも一つの末端基がエポキシ基であるものが特に好ましい。また、シリコーン樹脂中の、エポキシ基の官能基当量は、硬化性の観点から、300〜5000が好ましく、より好ましくは、400〜4000である。
【0045】
上記エポキシ変性シリコーンを添加する場合の含有量は、グラビア、フレキソ印刷でコーティングする場合は、成分Aと成分Bの合計量100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは、0.3〜5重量部である。含有量が0.1重量部未満である場合には、エポキシ変性シリコーン添加の効果が小さく、耐溶剤性や滑り性、撥水性などが低下する場合がある。また、20重量部を超える場合には、樹脂組成物の粘度が高くなり、グラビア、フレキソ印刷で均一に塗布することが困難となる場合がある。
【0046】
本発明の樹脂組成物には、光重合開始剤を添加する。本発明の光重合開始剤としては、特に限定されないが、光カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。前記光カチオン重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、シラノール/アルミニウム錯体、スルホン酸エステル、イミドスルホネートなど公知の化合物を用いることができる。中でも、反応性、安全性の観点から、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩が特に好ましい。また、本発明の樹脂組成物に対する光重合開始剤の添加量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して、0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜7重量%、さらに好ましくは1〜5重量%である。
【0047】
本発明の樹脂組成物を、プラスチックフィルム用印刷インキとして用いる場合には、顔料、染料やその他の添加剤を添加することができる。特に、顔料を含有することが好ましい。顔料としては、有機、無機、有色顔料が使用でき、酸化チタン(二酸化チタン)等の白顔料、銅フタロシアニンブルー等の藍顔料、カーボンブラック、アルミフレーク、雲母(マイカ)等が用途に合わせて選択、使用できる。また、顔料として、その他にも、光沢調製などの目的で、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アクリルビーズ等の体質顔料も使用できる。
【0048】
中でも、本発明の樹脂組成物を、白色印刷インキとして用いる場合には、顔料としては、酸化チタンが好ましく用いられる。酸化チタンとしては、ルチル型(正方晶高温型)、アナターゼ型(正方晶低温型)、ブルッカイト型(斜方晶)のいずれを用いてもよいが、例えば、石原産業(株)製酸化チタン粒子「タイペーク」等が入手可能である。また、酸化チタン粒子の平均粒径(凝集体を形成している場合には、凝集体の粒径、いわゆる2次粒径)は、例えば0.01〜1μm、好ましくは0.1〜0.5μm程度である。平均粒径が0.01μm未満では分散性が悪くなり、1μmを超えるとフィルム表面が粗くなり、外観が悪くなりやすい。
【0049】
本発明の樹脂組成物を、プラスチックフィルム用印刷インキとして用いる場合には、顔料の含有量は、顔料の種類や目的の色の濃度等により任意に設計できるが、樹脂組成物全体に対して、0.1〜70重量%程度が好ましく、白色印刷インキの場合は、隠蔽性と粗大突起形成抑制の観点から、20〜60重量%がより好ましく、さらに好ましくは30〜55重量%である。
【0050】
本発明の樹脂組成物を、プラスチックフィルム用印刷インキとして用いる場合には、生産効率を高める観点から、必要に応じて、増感剤を添加することが好ましい。上記酸化チタン顔料などを用いる場合には、特に有効である。その場合の増感剤は、用いる活性エネルギー線の種類などを勘案して、既存の増感剤から選択することができる。例えば、(1)脂肪族、芳香族アミン、ピペリジンなど窒素を環に含むアミンなどのアミン系増感剤、(2)アリル系、o−トリルチオ尿素などの尿素系増感剤、(3)ナトリウムジエチルジチオホスフェートなどのイオウ化合物系増感剤、(4)アントラセン系増感剤、(5)N,N−ジ置換−p−アミノベンゾニトリル系化合物などのニトリル系増感剤、(6)トリ−n−ブチルホスフィンなどのリン化合物系増感剤、(7)N−ニトロソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物などの窒素化合物系増感剤、(8)四塩化炭素などの塩素化合物系増感剤などの増感剤が挙げられる。上記でも、特に、アントラセン系増感剤は増感作用が強く好ましい。中でも、チオキサントンや9,10−ジブトキシアントラセンなどが好ましく使用される。また、増感剤の含有量としては、特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して、0.1〜10重量%が好ましく、特に好ましくは0.3〜5重量%である。
【0051】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、滑剤を含有してもよい。滑剤としては、公知のものを用いることが可能で、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンワックス等のポリオレフィン系ワックス、脂肪酸アマイド、脂肪酸エステル、パラフィンワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ワックス、カルナウバワックス、フッ素変性ポリエチレン系ワックス等の各種ワックス類が例示される。滑剤の添加量は、樹脂組成物全体に対して、0.1〜10重量%が好ましい。
【0052】
本発明の樹脂組成物中の溶剤の含有量は、樹脂組成物全体に対して、5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下であり、さらに、実質的に溶剤を含有しないことが最も好ましい。なお、ここでいう溶剤とは、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メチルアルコール、エチルアルコールなどの有機溶媒や水のことをいい、グラビア、フレキソ印刷インキ等では、塗工性やコーティング剤中の各成分の相溶性や分散性を改良する目的で通常用いられて、塗工後に乾燥除去されるものである。本発明の樹脂組成物は、無溶剤でも、優れた塗工性、成分同士の分散性を発揮できるため、溶剤の量を極めて少なく(または用いなく)できるため、乾燥工程などによる溶剤の除去が不要となり、高速化、コストダウンが可能となるほか、環境負荷を少なくすることが可能である。
【0053】
本発明の樹脂組成物の粘度(23℃)は、用いられる塗布方式によっても異なり、特に限定されないが、例えば、グラビア印刷によりコーティング層が形成される場合には、100〜2000mPa・sが好ましく、より好ましくは200〜1000mPa・sである。粘度が2000mPa・sを超える場合には、グラビア印刷性が低下し、「かすれ」などが生じて、加飾性が低下する場合がある。また、粘度が100mPa・s未満の場合には貯蔵安定性が低下する場合がある。樹脂組成物の粘度は、オキセタンとエポキシの配合比、増粘剤、減粘剤等によっても制御することが可能である。なお、本明細書中、「粘度」とは、特に限定しない限り、B型粘度計(単一円筒形回転粘度計)を用い、23℃、円筒の回転数60回転の条件下、JIS Z 8803に準じて測定した値を意味している。
【0054】
本発明の樹脂組成物は、コストや生産性、印刷の装飾性などの観点から、グラビア印刷またはフレキソ印刷方式で塗工されることが好ましい。中でも、グラビア印刷方式が特に好ましい。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、塗工性、接着性等の観点から、プラスチックフィルムに塗工する用途に用いられる。特に、他の層を介さずに直接プラスチックフィルムに塗工されていることが好ましい。中でも、強靱性、密着性の観点から印刷インキ、トップコートやアンカーコートなどのコーティング剤や、接着性の観点からプラスチックフィルム用接着剤として特に好ましく用いられる。
【0056】
本発明の樹脂組成物をコーティング剤として用いる場合、コーティング剤は、装飾性付与のための印刷インキ、ラベル表面の滑り性を向上させるための透明コーティング剤(滑りメジウム)や、ラベルのつや消しのためのつや消しコーティング剤(マットニス)などである。本発明の樹脂組成物からなるコーティング剤は、塗工性、硬化性に優れるため、工程速度の高速化が可能となり、生産性が向上する。また、難接着性のプラスチックフィルムに対しても、優れた密着力、接着力を発揮するため、多種多様なプラスチックフィルムに同一のコーティング剤を用いることが可能で、コスト面や工程の簡素化などの観点で有利である。さらに、本発明の樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化層(コーティング層)は、強靱性に優れるため、工程や流通過程での削れなどが生じにくい。
【0057】
本発明の樹脂組成物をプラスチックフィルム用接着剤として用いる場合、プラスチックフィルム用接着剤は、プラスチックフィルム同士(例えば、基材フィルムとシーラントフィルム)、プラスチックフィルムと金属箔、金属蒸着フィルム、不織布、発泡シート、紙等との貼り合わせ等に使用するドライラミネート用接着剤として好ましく用いられる。また、シュリンクラベルのセンターシールに使用する製袋加工用接着剤としても用いることができる。本発明の樹脂組成物からなるプラスチックフィルム用接着剤は、塗工性、硬化性に優れるため、工程速度の高速化が可能となり、生産性が向上する。また、難接着性のプラスチックフィルムに対しても、優れた接着性を発揮するため、多種多様なプラスチックフィルムに同一の接着剤を用いることが可能で、コスト面や工程の簡素化などの観点で有利である。
【0058】
本発明の樹脂組成物が塗工されるプラスチックフィルムの種類は、要求物性、用途、コストなどに応じて、適宜選択することが可能であり、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、アラミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、アクリル等の樹脂を用いることができる。好ましくは、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルムである。中でも、本発明の樹脂組成物は、硬化阻害物質を含む難接着性のフィルムでも優れた接着力を発揮しうる観点から、硬化阻害物質を含むプラスチックフィルムに用いられることが好ましく、一般的に接着性が得られにくいポリオレフィン系フィルムに用いられる場合に、最も顕著な効果を発揮しうるため好ましい。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン等が挙げられる。これらポリオレフィン系フィルムには、用途等に応じて、ステアリン酸アミドやエルカ酸アミドなどの脂肪酸アミド、帯電防止剤、シリカ、タルク、クレー等のアンチブロッキング剤などが添加されており、それらが表面に分布している場合があるが、本発明の樹脂組成物はそのような表面に対しても優れた接着性を発揮する。
【0059】
上記プラスチックフィルムは、単層フィルムであってもよいし、要求物性、用途などに応じて、複数のフィルム層を積層した積層フィルムであってもよい。また、積層フィルムの場合、異なる樹脂からなるフィルム層を積層していてもよい。例えば、中心層と表層部(内層、外層)からなる3層積層フィルムで、中心層がポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂からなり、表層がポリエステル系樹脂からなるフィルム等であってもよい。また、要求物性、用途などに応じて、未延伸フィルム、1軸配向フィルム、2軸配向フィルムのいずれを用いてもよい。特に、シュリンクラベル用途である場合、プラスチックフィルムとしては、シュリンクフィルムが用いられ、1軸または2軸配向フィルムが用いられることが多く、中でも、フィルム幅方向(ラベルを筒状にした場合は、ラベル周方向となる方向)に強く配向しているフィルム(実質的に幅方向に1軸延伸されたフィルム)が一般的に用いられる。
【0060】
上記プラスチックフィルムの厚みは、用途によって異なり、特に限定されないが、10〜200μmが好ましく、例えば、シュリンクラベル用途の場合には、20〜80μmが好ましく、さらに好ましくは30〜60μmである。また、ドライラミネート用途の場合は、10〜130μmが好ましく、さらに好ましくは12〜60μmである。
【0061】
本発明の樹脂組成物をプラスチックフィルムに塗工する際の、樹脂硬化物層の厚み(コーティング層厚み、接着剤層厚み等)は、用途によっても異なり、特に限定されないが、0.1〜30μmが好ましく、特に好ましくは0.2〜20μmである。樹脂硬化物層の厚みの厚みが0.1μm未満である場合には、樹脂硬化物層を均一に設けることが困難である場合があり、印刷層として用いる場合などには、部分的な「かすれ」が起こったりして、装飾性が損なわれたり、デザイン通りの印刷が困難となる場合がある。また、樹脂硬化物層厚みが30μmを超える場合には、樹脂組成物を多量に消費するため、コストが高くなったり、均一に塗布することが困難となったり、また、樹脂硬化物層がもろくなって、剥離しやすくなったりする。中でも、本発明の樹脂硬化物層が白色インキ層である場合には、厚みは、隠蔽性の観点から、5〜10μmが好ましく、他の印刷インキ層の場合には、1〜8μmが好ましい。透明コーティング層である場合には、透明性の観点から、(0.2〜5μmが好ましい。また、ドライラミネート用接着剤層である場合には0.2〜20μmが好ましい。なお、本発明の樹脂硬化層は、硬化前後で厚みは殆ど変化しないため、樹脂組成物の塗布厚みとほぼ等しい厚みである。
【0062】
本発明の樹脂組成物が塗工されたフィルムは、例えば、プラスチックラベルやパウチなどの軟包装材に用いられる。中でも、好ましくは、プラスチックラベルである。
【0063】
上記、本発明の樹脂組成物は、特に印刷インキなどのコーティング剤として用いられる場合には、プラスチックラベル用途に好ましく用いられる。具体的には、ストレッチラベル、シュリンクラベル、ストレッチシュリンクラベル、インモールドラベル、タックラベル、ロールラベル(巻き付け方式の糊付ラベル)、感熱接着ラベル等に用いることができる。中でも、本発明の樹脂組成物の強靱性や加工時の追従性の観点から、ストレッチラベル、ストレッチシュリンクラベル、シュリンクラベル用途として、特に好ましく用いられる。
【0064】
本発明のプラスチックラベルは、本発明の樹脂組成物をプラスチックフィルムに塗工、活性エネルギー線硬化して、プラスチックフィルムに樹脂組成物の硬化物からなる樹脂硬化物層を他の層を介さずに設けてなる。プラスチックラベル中に本発明の樹脂硬化物層は少なくとも1層有しておればよく、樹脂硬化物層はプラスチックフィルムの内面、外面に設けられていてもよいし、プラスチックフィルムとプラスチックフィルムに挟まれて設けられていてもよい。また、用途に応じて、樹脂硬化物層は、プラスチックラベル、全面に設けられていてもよいし、長手方向または幅方向に帯状に設けられるなど一部のみに設けられていてもよい。例えば、本発明の樹脂組成物が印刷インキなどのコーティング剤として用いられる場合には、樹脂硬化物層は、優れた耐傷付き性、強靱性などの観点から、ラベルの最表層にも設けられていてもよく、中でも、ラベルの外側(容器等の被着物に装着した際に、被着物に接触する側と反対側)に設けられることが特に好ましい。このようなプラスチックラベルは、製造工程、搬送工程や市場で使用される際に、表面が傷付きにくく、装飾性が損なわれにくいため好ましい。
【0065】
本発明のプラスチックラベルには、他にも、本発明の樹脂組成物からなる印刷インキとは異なる印刷層が設けられていてもよい。その場合、印刷層は、グラビア印刷やフレキソ印刷等の慣用の印刷方法により形成することができる。該印刷層の形成に用いられる印刷インキは、例えば顔料、バインダー樹脂、溶剤からなり、前記バインダー樹脂としては、アクリル系、ウレタン系、ポリアミド系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系、セルロース系、ニトロセルロース系などの一般的な樹脂が使用できる。印刷層の厚みとしては、特に制限されず、例えば0.1〜10μm程度である。
【0066】
本発明のプラスチックラベルには、他にも、本発明の樹脂硬化物層とは異なるアンカーコート層、プライマーコート層、不織布、紙等の層を必要に応じて設けてもよい。
【0067】
本発明のプラスチックラベルは、容器に装着し、ラベル付き容器として用いられる。このような容器には、例えば、PETボトルなどのソフトドリンク用ボトル、宅配用牛乳容器、調味料などの食品用容器、アルコール飲料用ボトル、医薬品容器、洗剤、スプレーなどの化学製品の容器、カップ麺容器などが含まれる。また容器の材質としても、PETなどのプラスチック製、ガラス製、金属製などが含まれる。中でも、自動販売機などで衝撃を受けやすいソフトドリンク用ボトルや化学薬品に接触する化学製品の容器用のラベルに用いられる場合には、本発明の樹脂硬化物層の耐傷つき性や耐薬品性が顕著に発揮されるため好ましい。なお、被着物は容器に限らない。
【0068】
本発明の樹脂組成物は、特に接着剤として用いられる場合には、パウチや積層ラベル用のラミネートフィルム、筒状ラベルのセンターシール用に好ましく用いられる。具体的には、プラスチックフィルムに対して、同種または異種のプラスチックフィルム、金属蒸着フィルム、金属酸化物蒸着フィルム、アルミ箔、不織布、発泡シート、紙などをドライラミネートしたラミネートフィルム等に用いることができる。中でも、本発明の樹脂組成物の密着性の観点から、プラスチックフィルムに対する同種または異種のプラスチックフィルム、金属蒸着フィルムのラミネート用として、特に好ましく用いられる。上記ラミネートフィルムは、基材フィルムと積層する材料の種類によって、ガスバリア性、防湿性、耐衝撃性、耐ピンホール性、遮光性、耐熱性、耐寒性、保香性、シール性、易開封性等の特性を付与することが可能であり、食品包装用途をはじめ、衛生用品、薬品、電子部品等の包装用、農業用、土木建築用、工業用フィルムなどとして用いることができる。
【0069】
上記ラミネートフィルムは、上記プラスチックフィルムに本発明の樹脂組成物を塗工し、積層する材料を貼付した後、活性エネルギー線硬化することにより得られる。ラミネートフィルム中に本発明の樹脂硬化物層は少なくとも1層有しておればよく、通常樹脂硬化物層はプラスチックフィルムと積層材料に挟まれて設けられている。また、樹脂硬化物層は、ラミネートフィルムの全面に設けられていることが一般的であるが、用途に応じて、一部のみに樹脂硬化物層を設けたものであってもよい。
【0070】
また、同一フィルム中に、上記本発明の樹脂組成物をコーティング剤として用いたコーティング層と、上記本発明の樹脂組成物を接着剤として用いた接着剤層とを共に有している場合であってもよい。
【0071】
本発明の樹脂硬化物層を設けたフィルム(例えば、プラスチックラベル)の、樹脂硬化物層表面を、メチルエチルケトンをしみこませた綿棒で、往復10回こすった(MEKラビング試験という)後にも、樹脂硬化物層が剥がれないことが好ましい。上記MEKラビング試験において、樹脂硬化物層が剥がれる場合には、使用する際に本発明の樹脂組成物層が剥がれやすく、装飾性が低下するなどの場合がある。
【0072】
本発明に用いられるプラスチックフィルムの熱収縮率(90℃、10秒)は、特に限定されないが、例えばシュリンクラベル用途の場合であれば、シュリンク加工性等の観点から、長手方向が−3〜15%、幅方向が20〜80%が好ましい。また、パウチなどの軟包装用途の場合には、実質的に非収縮が好ましい。
【0073】
以下に、本発明の樹脂組成物、及び、プラスチックラベルの製造方法を説明する。なお、ここでは、樹脂組成物として酸化チタンを含有する白色印刷インキ、プラスチックフィルムとして熱収縮性のポリエステルフィルムを用いた筒状シュリンクラベルの例を示すが、製造方法はこれに限定されるものではない。
【0074】
なお、下記説明において、工程順に、延伸後のフィルム原反を「プラスチックフィルム」、これに本発明の樹脂硬化物層を設けたものを「(長尺状)プラスチックラベル」という。さらに容器への装着加工工程では、前記長尺状プラスチックラベルを長尺のまま筒状に加工したものを「長尺筒状プラスチックラベル」と記載する。
【0075】
[樹脂組成物の作製]
本発明の樹脂組成物に用いられる成分Aは、トリメチロールプロパンとジメチルカーボネートなどから製造されるオキセタンアルコールとハロゲン化物(例えば、キシレンジクロライド)によりの既知の方法に従って製造することができる。なお、成分Aとしては、既存のオキセタン化合物を用いてもよく、例えば、東亞合成(株)製「アロンオキセタン OXT−101、121、211、221、212」などが市販品として入手可能である。
【0076】
本発明の樹脂組成物に用いられる成分Bは、エピクロルヒドリンおよびビスフェノールAからの合成など、一般的な方法によって合成されるものを用いることができ、例えば、ダイセル化学工業(株)製「セロキサイド 2021」、「セロキサイド 2080」、「エポリード GT400」やダウケミカル(株)製「UVR6110」などが市販品として入手可能である。
【0077】
本発明の樹脂組成物に用いられる成分Cは、無水マレイン酸やスチレン、アクリルモノマーなどの所定の単量体を、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等の既知の重合方法に従って製造することができるが、フィルムへの塗工の容易さの観点などからは、例えば、溶液重合を用いることができる。主たるモノマー成分、共重合モノマー成分を、所定量、トルエンなどの溶媒に溶解・共重合させ、さらに必要に応じて、架橋剤、可塑剤を添加して、アクリル樹脂ポリマー溶液が得られる。また、塊状重合法を用いる場合には、モノマー成分を高温高圧で連続塊状重合することにより、短時間で無溶媒の低分子量ポリマーを得ることができる。なお、成分Cとしては、例えば、エルフ・アトケム・ジャパン社製「SMA」、ジョンソンポリマー社製「ジョンクリル」などの既存の化合物を用いてもよい。
【0078】
次に、得られた成分A、成分B、成分C、光重合開始剤を混合して本発明の樹脂組成物を製造する。また、顔料などの添加剤を用いる場合には、同時に混合する。混合は、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ポニーミキサー、ディゾルバー、タンクミキサーなどのミキサーや、ロールミル、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、ラインミルなどのミル、ニーダーなどが用いられる。混合の際の混合温度は15〜30℃、混合時間(滞留時間)は10〜120分が好ましい。得られた樹脂組成物は、必要に応じて、濾過してから用いてもよい。
【0079】
[プラスチックフィルムの作製]
本発明のプラスチックフィルムは、溶融製膜または溶液製膜などの方法によって作製することもできるし、または、市場で販売されているポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリオレフィンフィルム等を用いることもできる。
【0080】
例えば、溶融製膜法を用いて、ポリエステルフィルムを作製する場合は、以下のとおりである。
【0081】
フィルム原料は既知の手法を用いて重合する。例えば、ポリエステルはテレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル反応により、低分子量のポリエチレンテレフタレートを得、さらに、3酸化アンチモンなどを触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセスなどが用いられる。必要に応じて、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを共重合してもよい。
【0082】
上記で得られたフィルム原料を1軸または2軸押出機を用いてTダイより押出して、未延伸フィルムを作成する。この際、共押出法などを用いることによって、多種多層に積層された未延伸フィルムを得ることが可能である。
【0083】
未延伸フィルムは用途によっては、さらに延伸を行うことによって、プラスチックフィルムを作製する。延伸は、長手方向(縦方向;MD方向)および幅方向(横方向;TD方向)の2軸延伸でもよいし、長手、または、幅方向の1軸延伸でもよい。また、延伸方式は、ロール方式、テンター方式、チューブ方式の何れの方式を用いてもよい。延伸処理は、用いるポリマーの種類にもよるが、例えば、シュリンクラベル用のプラスチックフィルムの場合は、ポリマーのガラス転移温度(Tg)〜Tg+50℃程度の温度で、必要に応じて長手方向に例えば1.01〜3倍、好ましくは1.05〜1.5倍程度に延伸した後、幅方向に3〜10倍、好ましくは4〜6倍程度延伸することにより行う場合が多い。
【0084】
本発明のプラスチックフィルムの表面には、必要に応じて、コロナ放電処理やプライマー処理等の慣用の表面処理が施されていてもよい。
【0085】
[樹脂組成物の塗布・硬化]
得られたプラスチックフィルムに、上記の樹脂組成物を塗布して、樹脂組成物層(未硬化)を形成する。塗布の方法は、用途によっても異なり、プラスチックフィルムの製造工程中(例えば、未延伸または縦1軸延伸後)に塗布を行うインラインコートによって設けてもよいし、フィルム製膜後に塗布を行うオフラインコートによって設けてもよく、特に限定されないが、生産性、また、硬化処理を含めた加工性の観点から、オフラインコートが好ましく、中でも、グラビア印刷またはフレキソ印刷が最も好ましい。
【0086】
次に、樹脂組成物層の硬化を行う。硬化は、印刷工程と一連の工程で行うことが好ましい。硬化は、プラスチックフィルムの熱収縮による変形トラブルを防止する観点から、紫外線(UV)ランプなどを用いる活性エネルギー線硬化で行う。活性エネルギー線硬化の場合、照射する活性エネルギー線は、樹脂組成物の組成によっても異なり、特に限定されないが、硬化性の観点から、波長は300〜460nmが好ましく、また、照射強度は20mJ/cm2〜1000mJ/cm2、照射時間は0.1〜3秒が好ましい。
【0087】
上記のラベルは、所定の幅にスリットして、ロール状に巻回し、複数個のロール状物として、プラスチックラベルが得られる。
【0088】
なお、以下に得られたプラスチックラベルを容器に装着する加工の一例を示すが、製造方法は、これに限定されるものではない。
[長尺状プラスチックラベルの加工]
次に、上記ロール状物のひとつを繰り出しながら、長尺状プラスチックフィルムの幅方向が円周方向となるように円筒状に成形する。具体的には、長尺状シュリンクラベルを筒状に形成し、ラベルの一方の側縁部に、長手方向に帯状に約2〜4mm幅で、テトラヒドロフラン(THF)などの溶剤や接着剤(以下溶剤等)を内面に塗布し、筒状に丸めて、該溶剤等塗布部を、他方の側縁部から5〜10mmの位置に重ね合わせて外面に接着(センターシール)し、長尺筒状のプラスチックラベル連続体とし、長尺筒状プラスチックラベルを得る。また、上記センターシールする場合には、上記接着剤としては、本発明の樹脂組成物からなる接着剤を用いてもよい。
【0089】
なお、ラベル切除用のミシン目を設ける場合は、所定の長さ及びピッチのミシン目を長手方向に形成する。ミシン目は慣用の方法(例えば、周囲に切断部と非切断部とが繰り返し形成された円板状の刃物を押し当てる方法やレーザーを用いる方法等)により施すことができる。ミシン目を施す工程段階は、印刷工程の後や、筒状加工工程の前後など、適宜選択ことができる。
【0090】
[ラベル付き容器]
最後に、上記で得られた長尺筒状プラスチックラベルを切断後、所定の容器に装着し、加熱処理によって、ラベルを収縮、容器に追従密着させることによってラベル付き容器を作製する。上記長尺筒状プラスチックラベルを、自動ラベル装着装置(シュリンクラベラー)に供給し、必要な長さに切断した後、内容物を充填した容器に外嵌し、所定温度の熱風トンネルやスチームトンネルを通過させたり、赤外線等の輻射熱で加熱して熱収縮させ、容器に密着させて、ラベル付き容器を得る。上記加熱処理としては、例えば、80〜100℃のスチームで処理する(スチームおよび湯気が充満した加熱トンネルを通過させる)ことなどが例示される。
【0091】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
【0092】
(1)酸価
実施例、比較例で用いた成分Cの酸価、及び、成分A、B、Cの3成分の混合物の酸価を、JIS K 5601−2−1に準拠して測定した。
【0093】
(2)グラビア印刷性
実施例、比較例で得られた樹脂組成物を、ポリオレフィン系フィルム(グンゼ(株)製「FL1」、厚み:50μm)に、下記の印刷条件でグラビア印刷を施した。
装置:(株)日商グラビア製卓上グラビア印刷機「GRAVO PROOF MINI」
グラビア版 :175線、版深30μm
工程速度 :50m/分
印刷状態を観察し、版面どおりに印刷できた場合をグラビア印刷性良好(○)、版面どおりに印刷できなかった場合をグラビア印刷性不良(×)と判断した。
【0094】
(3)硬化性(表面タック性)
実施例、比較例で硬化処理を施した直後のプラスチックラベルの、樹脂硬化物層を指で触り、指にインキがつくかどうかを目視にて観察し、指にインキが付かない場合は硬化性良好(○)、指にインキが付く場合には硬化性不良(×)と判断した。
【0095】
(4)接着性(テープ剥離試験)
碁盤目のクロスカットを入れない以外は、JIS K 5600に準じて、試験を行った。実施例、比較例で得られたプラスチックラベルの樹脂層側の表面に、ニチバンテープ(幅18mm)を貼り付け、90度方向に剥離し、5mm×5mmの領域において、樹脂層の残存した面積を観察し、下記の基準で判断した。
95%以上 : 優れた密着性(◎)
90%以上、95%未満 : 密着性良好(○)
80%以上、90%未満 : 密着性はやや不良であるが使用可能なレベル(△)
80%未満 : 密着性不良(×)
【0096】
(5)耐薬品性(耐MEKラビング試験)
プラスチックラベルの樹脂硬化物層の表面を、メチルエチルケトンをしみこませた綿棒でこすり、往復10回こすった後、表面の状態を目視観察し、インキが剥がれていない場合は耐薬品性良好(○)、インキが剥がれている場合には耐薬品性不良(×)と判断した。
【0097】
(6)耐もみ性
実施例で得られたプラスチックラベルから、長さ100mm×幅100mmのサンプル片を採取した。サンプル片の両端を両手でつかみ、10回手でもむ。樹脂硬化物層を設けた側の表面における樹脂硬化物層の残存面積を目視で観察し、残存面積が90%以上であれば、耐もみ性良好(○)、90%未満であれば、耐もみ性不良(×)と判断した。
【0098】
(7)耐傷つき性(スクラッチ試験)
実施例で得られたプラスチックラベルから、長さ100mm×幅100mmのサンプル片を採取した。サンプルを平滑なテーブルの上に置き、樹脂硬化物層側の表面を、手の爪の甲の部分で、10往復(長手方向20mmの区間)こすった後に表面を観察し、下記の基準で判断した。
樹脂硬化物層は全く剥離していない。 : 耐スクラッチ性良好(○)
樹脂硬化物層に一部剥離がみられる。 : 耐スクラッチ性はやや不良であるが使用可能なレベル(△)
樹脂硬化物層が著しく剥離している。 : 耐スクラッチ性不良(×)
【0099】
(8)シュリンク適性
実施例で得られたラベル付き容器からプラスチックラベルを外して、容器胴部に装着されていた部分の樹脂硬化物層の剥離、割れ(大きな割れ)、微細なひび割れによる著しい白化、また、容器側への樹脂硬化物層の転移の有無を観察した。それぞれ容器10本分について観察し、上記の割れなどが観察されなかった場合はシュリンク適性良好(○)、1本でも割れなどが観察された場合はシュリンク適性不良(×)と判断した。
【0100】
(9)ドライラミネート適性
実施例1〜3、5〜9および比較例3で得られた樹脂組成物を、バーコーター(番手:#5)を用いて、基材フィルムに塗工した後、もう1枚の同基材フィルムと貼り合わせた。得られた貼り合わせフィルムに、有極紫外線照射装置(GSユアサライティング(株)製、商品名「4kW UV照射装置」を用いて、コンベア速度50m/分、120W/cmの条件で光照射を行い、サンプルを作製した。なお基材フィルムは下記の3種類のフィルムを用いた。
引張試験機(島津製作所(株)製「島津オートグラフ AG−IS」)を用いて、JIS K 6854−3に準拠して、T型剥離試験(試験速度50m/分、サンプル幅15mm)を行い、剥離接着強さ(N/15mm)を測定した。
3種類の全ての基材フィルムに対して剥離接着強さが8N/15mm以上の場合をドライラミネート性良好(○)、8N/15mm未満のものがある場合をドライラミネート性不良(×)と判断した。
[基材フィルム]
ポリエチレン系フィルム(宇部フィルム(株)製「FJU2K」) 厚み:90μm
ポリエステル系フィルム(東洋紡績(株)製「S7042」) 厚み:50μm
ポリオレフィン系フィルム(グンゼ(株)製「FL1」) 厚み:50μm
【0101】
(10)フィルム層厚み、コーティング層厚み
フィルム厚みは、触針式厚みゲージを用いて測定した。コーティング層厚みは、コーティング層を設けた部分(塗布面)とコーティング層を設けていない部分(非塗布面)の段差を、3次元顕微鏡(キーエンス(株)製VK8510)を用いて測定した。
【0102】
(11)プラスチックフィルム熱収縮率(90℃)
プラスチックフィルムから、測定方向(長手方向または幅方向)に長さ200mm(標線間隔150mm)、幅10mmの長方形のサンプル片を作成した。
サンプル片を90℃の温水中で、10秒熱処理(無荷重下)し、熱処理前後の標線間隔の差を読み取り、以下の計算式で熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%) = (L0−L1)/L0×100
0 : 熱処理前の標線間隔
1 : 熱処理後の標線間隔
(12)粘度
粘度は、東機産業(株)製のB型粘度計(単一円筒形回転粘度計)を用い、23℃、円筒の回転数60回転の条件下、JIS Z 8803に準じて測定を行った。
【実施例】
【0103】
以下に、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
成分Aとして、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成(株)製、商品名「アロンオキセタン OXT−101」)、成分Bとしてエポキシモノマー(ダウケミカル(株)製、商品名「UVR−6110」)、成分Cとしてスチレン−無水マレイン酸共重合体(エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、商品名「SMA樹脂 1000P」、酸価480(mg−KOH/g−resin))、光重合開始剤(ダウケミカル(株)製、商品名「UVI−6992」)及び増感剤(日本化薬(株)製、「KAYACURE CTX」)を、表1に示した配合量(重量部)に従い配合し、分散機にて30分間分散混合して、樹脂組成物を得た。なお、溶剤は使用しなかった。
得られた樹脂組成物を、卓上グラビア印刷機((株)日商グラビア製、商品名「GRAVO PROOF MINI」)および175線、版深30μmのグラビア版を用いて、ポリオレフィン系シュリンクフィルム(グンゼ(株)製「FL1」、厚み50μm)の片面に、工程速度50m/分でグラビア印刷を施し、グラビア印刷性を評価した。
また、上記と同様に、ポリオレフィン系フィルムに樹脂組成物を塗工した後、有電極ランプ型紫外線照射装置(GSユアサライティング(株)製、商品名「4kW(160W/cm)UV照射装置」を用いて、コンベア速度50m/分、120W/cmの条件で光照射を行い、プラスチックラベルを得た。なお、コーティング層の厚みは3μmであった。得られたプラスチックラベルに対して、硬化性と接着性を評価した。
続いて、得られたプラスチックラベルを、樹脂硬化物層が内面になるように円筒状に形成し、PETボトルの胴部に20%熱収縮されて装着されるように周方向の長さを調整した後、両端を溶着し、筒状プラスチックラベルを得た。さらに、500mlPETボトルに装着し、雰囲気温度90℃のスチームトンネルでラベルを収縮させ、ラベル付き容器を得た。
表1に示すように、得られた樹脂組成物は、グラビア印刷性に優れ、硬化性、接着性も良好であった。また、得られたラベル付き容器は優れた仕上がりであった。
なお、実施例1については、シュリンクフィルムとして、ポリオレフィン系フィルムのかわりにポリエステル系シュリンクフィルム(東洋紡績(株)製「S7042」、厚み50μm)を用いたプラスチックラベルも作製、評価を行った。その結果、実施例1の樹脂組成物はポリエステル系フィルムに対しても優れたグラビア印刷性、硬化性、接着性を示した。
【0104】
実施例2〜9
表1に示すように、成分Cの種類や各成分の配合量を変更し、実施例1と同様にして、樹脂組成物、プラスチックラベル及びラベル付き容器を得た。なお、実施例4では樹脂組成物に顔料(酸化チタン:石原産業(株)製、商品名「タイペークPF736」)を加え、白色インキとした。
表1に示すように、得られた樹脂組成物は、グラビア印刷性に優れ、硬化性、接着性も良好であった。また、得られたラベル付き容器は優れた仕上がりであった。
【0105】
実施例1〜9で得られたプラスチックラベルについては、更に、前記の方法に従って、耐薬品性、耐もみ性、耐傷付き性、シュリンク適性の評価を行った。結果、これらのプラスチックラベルは、いずれも、耐薬品性、耐もみ性、耐傷付き性、シュリンク適性が良好(○)であった。
【0106】
比較例1
表1に示すように、成分Aを使用せず、成分B、Cの配合量を変更し、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物は粘度が高く、塗布性に劣り、グラビア印刷すると「かすれ」が生じた。また、硬化性、密着性も劣っていた。
【0107】
比較例2
表1に示すように、成分Bを使用せず、成分A、Cの配合量を変更し、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物は、硬化性が低下し、生産性の劣るものであった。また、接着性の劣るものであった。
【0108】
比較例3
表1に示すように、成分Cを使用しない以外は、実施例1と全く同様にして、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物は、グラビア印刷性、硬化性は基準を満たしたが、接着性が劣っていた。
【0109】
なお、実施例1〜3、5〜9及び比較例3で得られた樹脂組成物については、更に、前記評価方法(9)の方法に従って、ラミネートフィルムを作製し、ドライラミネート適性の評価を行った。結果、実施例で得られた樹脂組成物はいずれもドライラミネート適性が良好(○)であった。しかし、比較例3の樹脂組成物は、(ポリオレフィン系フィルム)に対する接着性に劣り、ドライラミネート適性が不良(×)であった。
【0110】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキセタン化合物、エポキシ化合物、及び、酸価が20(mg−KOH/g−resin)以上の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物であって、オキセタン化合物、エポキシ化合物及び熱可塑性樹脂の3成分の混合物の酸価が0.1〜90(mg−KOH/g−resin)であることを特徴とするプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸価が20(mg−KOH/g−resin)以上の熱可塑性樹脂が、酸価が20〜550(mg−KOH/g−resin)の熱可塑性樹脂である請求項1に記載のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
オキセタン化合物とエポキシ化合物の重量比が2:8〜8:2であって、オキセタン化合物とエポキシ化合物の合計量100重量部に対して、熱可塑性樹脂の添加量が、0.1〜30重量部である請求項1または2に記載のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、スチレン/無水マレイン酸共重合体またはカルボキシル基含有(メタ)アクリルポリマーである請求項1〜3のいずれかの項に記載のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
グラビア印刷用又はフレキソ印刷用である請求項1〜4のいずれかの項に記載のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
プラスチックフィルムがポリオレフィン系フィルムである請求項1〜5のいずれかの項に記載のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの項に記載のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなるプラスチックフィルム用接着剤。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかの項に記載のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に、増感剤および顔料を添加してなるプラスチックフィルム用印刷インキ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの項に記載のプラスチックフィルム塗工用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物またはプラスチックフィルム用接着剤またはプラスチックフィルム用印刷インキを、プラスチックフィルムに塗工してなるプラスチックラベル。
【請求項10】
プラスチックフィルムがシュリンクフィルムである請求項9に記載のプラスチックラベル。

【公開番号】特開2007−211200(P2007−211200A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34903(P2006−34903)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】