説明

プラスチック材料からハウジングを製造する方法

【課題】本発明はワークピース、特に電気スイッチのハウジング(6)及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ワークピースは少なくとも二つの部分(7、8)からなり、おそらく熱可塑材から形成され、レーザービーム(11)によって接合部分(10)で互いに溶接される。二つの部分(7、8)は少なくとも部分的にレーザービーム(11)のスペクトルに対して互いに異なる透過及び吸収係数を有している。第一部分(8)は、レーザービーム(11)が第一部分(8)に接触する第一結合部分(12)から接合部分(10)までレーザービーム(11)を少なくとも部分的に透過するようになされ、それによりレーザービーム(11)の一部は第一部分(8)を貫通し、第二部分(7)の第二結合部分(13)に侵入可能である。接合部分(10)の第二結合部分(13)の領域において第二部分(7)は少なくとも部分的にレーザービーム(11)を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワークピース、特に、特許請求項1のプレアンブルに記載の電気スイッチのハウジング、及び特許請求項7のプレアンブルに記載のワークピース部の溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気スイッチのプラスチックからなるハウジングは、固定接点、スイッチ接点等の電気部品、及びその他の部品を収容することができる。ハウジングは、一般に複雑な空間形状の複数のハウジング部から通常、形成されている。ハウジング部は、スイッチの組立時に組み付けられ、ハウジング部間はしばしば確実に接続されなければならない。このような接続は、ハウジング部の輪郭に合わせてなされなければならないので、三次元空間の形状を有する。
【0003】
特にハウジングを外側から密閉する必要がある場合、ハウジング部は超音波溶接によって互いに接続されることが知られている。この場合、電気部品のはんだ接続及び電気部品自体が超音波振動によって破壊され、スイッチが使用不可能になるという問題がある。従って、電気部品に悪影響をもたらすことなく電気スイッチのハウジング部を溶接する方法の必要性がある。
【0004】
ドイツ特許公報3621030からレーザービームによってプラスチックフィルムを互いに溶接することが周知である。この目的で、プラスチックフィルムは層状に積載されている。次に集束されたレーザービームがフィルムを通過し、フィルムは溶融状態になるように接合部分で加熱され、冷却後、接合部分で固着される。
【0005】
フィルムは薄い部分なので、レーザービームの通過時、接合部分全体の加熱が可能である。通常、それによりフィルム間に受け入れ可能な溶接接続が達成される。電気スイッチのハウジングのように厚いワークピースの場合は、しかしながら周知の接合方法によってワークピースの表面のみが加熱可能なので、二つのワークピース部の使用可能な溶接接続が達成できない。特に設計上の理由で電気スイッチのハウジング部の場合、接合部分はしばしば、ハウジングの内側に設けられる。このように内側で溶接される接続は周知の接合方法では明らかに不可能である。
【0006】
さらに、レーザービームによるプラスチックシートの溶接方法はEP−A2−0159169から周知である。この方法の場合、第二シートが第一シートの上に設けられ、プラスチックに添加剤を使用することによってレーザービームを吸収するようになされている。添加剤として使用されるのは黒い染料、多くの場合カーボンブラックである。第二シートのプラスチックは添加剤を含まないので、第二シートはかなりレーザービームを透過させる。
【0007】
次に、レーザービームは第二シートに作用し、レーザービームは第二シートを通過後、第一シートに吸収され、その結果、互いに隣接している二枚のシートの接触面は溶融され、次の冷却工程で互いに結合される。
【0008】
この方法では、第二シートが添加剤を含むことができないので、着色できず、乳白色である一方、第一シートは黒い染料で着色されるという問題がある。それにより製造されたワークピースは従って、非常に異なる色の部分から形成されるので、全体的な視覚的印象が損なわれる。しかしながら、電気スイッチのハウジングの場合、ハウジング全体が特に
色に関して均一の視覚印象を与える必要がある。さらに公報に示されているシートは平面上の互いに溶接される平面を形成する。しかしながら、一般にハウジング部は、特に電気スイッチ等の場合、複雑な形状を有し、ハウジング部が互いに接続される接合部分はこの形状に沿っていなければならないので、一面に限定されない。公報の明細書には複雑な空間の接合部分の製造に関しては何も述べられていない。従って、周知の方法は、特に電気スイッチのハウジング部の溶接に適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ワークピース部が特に内側の三次元空間の接合部分においてレーザービームによって互いに接続可能であるように複数のワークピース部から形成されるワークピースを設計し、且つ、このようなワークピースの製造方法を特定する目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は請求項1記載の特徴に属するワークピース及び請求項7記載の特徴に属する方法によって達成される。
本発明は、レーザービームは、レーザービーム源に最も近い位置で、実質上、妨げられることなく第一ワークピース部を通過し、第二ワークピース部にかなり吸収され、それにより接合部分において二つのワークピース部が溶融されるという概念に基づく。この目的で、第一ワークピース部は少なくともレーザービームが接触した部分において、かなりレーザービームを透過するようになされ、第二ワークピース部は適切な割合で添加剤を添加することによって、かなりレーザービームを吸収するようになされる。このため、第一ワークピース部は第二ワークピース部と比べて高い透過係数及び低い吸収係数を有する。即ち第一ワークピース部は第二ワークピース部よりも透過係数が高く、第二ワークピース部は第一ワークピース部よりも吸収係数が高い。しかしながら、ワークピース部は両方とも添加剤を含むので、人間の目の可視範囲の光線に対して不透過性を有し、それにより実質上、均一な印象を与えるという利点がある。溶接後、個々のワークピース部は実質上、視覚による識別が不可能である。
【0011】
本発明の更なる改善点が従属項の要旨である。
特に、第二ワークピース部は、レーザービームが第二ワークピース部をわずかにしか透過できないように表面で吸収するようになされることができる。従って、低いレーザー出力でさえ、溶接時、よい結果が得られる。二つのワークピース部の透過係数は透過の程度を示し、吸収係数は吸収の程度を示しているが、これらはプラスチックに例えば顔料の添加剤を加えることによって調節可能である。第一ワークピース部が60%以上の透過率T、30%以下の吸収率Aに調節され、第二ワークピース部が90%以上の吸収率A、特にごくわずかな透過率Tに調節されると好都合であることが発見された。
【0012】
特に複雑な形状のワークピースの場合、接合部分はワークピースの内部においても、3次元空間に設けられ、その結果、ワークピースは各々の意図された使用に最適になされることができる。ワークピースの内側を十分にシールするために、互いに隣接しているワークピース部の壁を重ね合うことができるので、接合部分において、角、貫通孔等のような臨界部分をレーザービームによって区分状の溶接で十分に接合可能である。互いに接続するべきワークピース部は接合部分において多様な形状の重なり接合部を有することができる。
【0013】
接合部分の接合度は、冷却されるまで接合部分に圧力を加えることによってさらに増加させることができる。圧力は好ましくはレーザービームの焦点に沿って作用し、その結果、レーザービームのワークピースへの透過は妨げられない。しかしながら、レーザービームを透過させるクランプ手段を使用することによってレーザービームの作用領域に圧力が
直接、作用するようにすることができる。好適には、圧力は接合部分に沿ってレーザービームの動きを追跡するように作用する。レーザービームのこのような動きは、例えば、ロボット又は多軸処理装置が使用される場合、空間的にプログラム可能な方法で容易に達成することができる。特に、ワークピースの個々の位置で区分状の溶接を容易に行うことができる。さらに製造方法は、レーザービーム源の操作パラメータを、圧力及び温度のような接合部分における測定工程パラメータに相当する方法で自動的に制御することによって最適化することができる。
【0014】
本発明によって特に、レーザービームによって、重なり合う又は隣接している形状に溶接を行う場合に、高品質の溶接が達成可能であり、特に壁が厚いワークピースでさえ、内部において少なくとも部分的に溶接が行われるという利点が達成される。従来の超音波溶接と異なり、溶接の形状は設計上の要件に自由に合わせることができる。即ち、所望によりハウジングにおいて空間的に溶接が可能である。溶接経路は、レーザービームのビーム経路をプログラムし、ワークピースを移動させることによって形成することができるので、多様なワークピースの製造が可能である。ワークピース部は加熱するだけで溶接可能であり、実際の溶接において、さらに添加剤は必要ではない。特に電気スイッチの製造において、電気部品の破壊を心配する必要がないので、廃棄物は回避される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電気スイッチハウジングの溶接装置の略図。
【図2】ハウジングの長手方向断面図。
【図3】図1のX部の拡大図。
【図4】更なる実施例のハウジングの一部の長手方向断面図。
【図5】更なる実施例のハウジングの一部の長手方向断面図。
【図6】別の実施例のハウジングの壁の長手方向断面図。
【図7】更に別の実施例のハウジングの壁の長手方向断面図。
【図8】また別の実施例のハウジングの壁の長手方向断面図。
【図9】複雑な空間設計のハウジングの断面図。
【図10】図9の線10−10に沿っている断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な実施例を以下に詳細に述べ図面に示す。
本発明による方法でレーザービームによってワークピース部を溶接するための装置の概略が図1に示されている。装置はレーザービーム源1、例えばNd:YAGレーザー、光システム3に可撓性光ガイド2によって接続されている光の出口を備え、その結果、レーザービーム源1は所望の空間位置に設けることができる。光システム3はワークピースホルダ4上に設けられ、例えば図1の方向矢印5によって示されているように駆動装置による制御装置によって移動可能である。当然、光システム3を可動に設計することもできる。
【0017】
ワークピースホルダ4には互いに溶接するべきワークピース部、即ちハウジング6の部品が好適に設けられ、ハウジング6は本実施例において電気スイッチのハウジングである。ハウジング6は二つのハウジング部、即ち第二ワークピース部を形成しているポット形状のハウジングベース7及び第一ワークピース部であるハウジングカバー8を備える。ハウジングベース7及びハウジングカバー8は両方ともプラスチック、好ましくは熱可塑材からなる。図2に詳細に示されているように、ハウジングベース7は環状に取り囲むショルダ9を有し、ショルダ9上にハウジングカバー8が載置されている。ショルダ9で、ハウジングカバー8は連続して環状に取り囲む接合部分10に沿ってレーザービームによって、ハウジングベース7に溶接され、その結果、電気スイッチのハウジング6は密閉されているので、特にほこりから保護されている。
【0018】
さらに、図1からわかるように、ハウジングカバー8及びハウジングベース7はレーザービーム11によって加熱される。レーザービームは、ハウジングベース7及びハウジングカバー8が接合部分10において溶融状態になるように、光システム3からハウジング6に、接合部分10に沿って放射される。このことにより接合部分10においてハウジングベース7及びハウジングカバー8は結合され、次の冷却工程で固化し、溶接が形成される。その後、必要な場合は、接合部分10における溶接応力を軽減するために焼鈍を行うことができる。ワークピースホルダ4及び/又は光システム3又はレーザービーム源1を移動させることによって、ハウジング6に細長く環状に取り囲む接合部分10が形成される。適切な場合は、ハウジング6は個々の位置で溶接することもできるので、連続していないが断面が区分状である接合部分が得られる。好適に、区分状の溶接の場合、溶接応力が低いので、次に焼鈍を行う必要がない。
【0019】
レーザービーム源1又は光システム3及びワークピース部7、8を相対的に移動させることによって、ハウジング6において任意に配向可能な、三次元空間に接合部分10を設けることができる。この目的で、例えばワークピースホルダ4は矢印5に従って三次元に可動である多軸処理装置として設計されている。同様にロボットを使用することもでき、又は光システム3を移動させることができる。ワークピースホルダ4の所望の空間移動はプログラム可能なので、溶接時、各々、対応の空間形状を有する接合部分10が形成される。好適に、特に電気スイッチハウジング6の場合に、複雑な形状の接合部分10が取り扱い易く、可撓性を備えるように形成可能である。
【0020】
特に図2に示されているように、設計上の理由で接合部分10はハウジング6の内部に位置し、接合部分10はショルダ9に重なりジョイントを有する。図4に示されている更なる実施例において、ハウジングカバー8及びハウジングベース7に隣接重なりジョイント17が形成される。図5に示されている実施例ではハウジングベース7及びハウジングカバー8はくさび形状の重なりジョイント18を有する。これらの実施例でも接合部分10はハウジング6の内部に少なくとも部分的に設けられている。
【0021】
図6に示されている実施例では、さらにショルダ形状の重なりジョイント19が設けられている。ワークピース7、8は各々、実際の壁から突出しているショルダ20、20´を有し、接合部分10は突出しているショルダ20と20´の間の移行部に設けられている。レーザービーム11は、この実施例では、突出ショルダ20´と反対側の突出ショルダ20に対してほぼ垂直に作用する。ショルダ形状のジョイントのその他の形状が図7、8に示されている。図7のショルダ形状のジョイント21の場合、ワークピース部7には段状の受容部が設けられ、ここにワークピース部8の壁が挿入される。図8において、最後に、ワークピース部7に設けられている階段形状の受容部に、ワークピース部8の対応している壁が、ショルダ状のジョイント22を形成するように挿入される。
【0022】
最後に図10に示されている溝状の重なりジョイント23も特に、ハウジング6へのほこりの侵入に対するラビリンスシールとして優れたシーリング効果を発揮する。この目的でワークピース部8の壁に形成されている溝24に、ワークピース部7の壁に対応して設けられている突縁25が嵌合している。レーザービーム11は溝24の領域においてワークピース部8の表面にほぼ垂直に接触し、それにより突縁25と溝24との間でワークピース部8のこの面と向き合う側に接合部分10が形成される。
【0023】
図9の幾分、複雑に設計されているワークピース部6の断面図に示されているように、壁26が有する3次元空間における外郭は各々の意図された使用に適合している。このような複雑なハウジング6は例えば、電気工具の電気スイッチに使用され、内部に空胴27がワークピース部8の壁26によって画定され、電気スイッチの機能部分を収容する。空胴27をほこりから保護するために、図10に関して説明したように、壁26に設けられている溝24にワークピース部7の突縁25が嵌合する。
【0024】
さらに図9に示されているように、溝24に区分状の接合部分28が設けられているので、二つのワークピース部7、8はその互いに接続している表面で溶接されている。区分状の接合部分28はフック形状またはジグザグ形状の経路を有し、これはプログラム可能に三次元空間でレーザービーム11及びワークピース部7、8を相対的に移動させることによって形成される。接合部分28は連続的な空間からなるのではなく、個々の区分からなる。これらは特に壁26の角の部分または溶接の方向が突然変化する曲がり点である。さらに、区分状の接合部分は、貫通部分等、図示されていないが例えば軸、押ロッド等がハウジング6の空胴27に外側から突入している領域に設けることもできる。このような領域は特に密閉する必要があるが、区分状の接合部分28によって確実にシールされてい
る。
【0025】
接合部分28の個々の区分の間は単に直線状なので、あまり複雑な方法でシールする必要はない。この場合、ワークピース部7、8の壁26上で溝24と突縁25とを溶接しないで重ね合うだけで十分、シーリング溝が形成される。これを支えるために、接合部分28の区分間に、さらにスナップ接続29等を設けることによって、二つのワークピース部7、8の壁26の接続面は、これらの領域においてシーリングされた状態で互いに押し付けられる。この実施例では区分状の接合部分28だけが設けられているので、ワークピース部7、8を溶接する際、時間が削減される。
【0026】
接合部分10を十分に加熱するために、ハウジングベース7及びハウジングカバー8は、少なくとも小区域においてレーザービーム11のスペクトルに対する特性が異なる。例えばレーザービーム11の透過係数はハウジングベース7よりもハウジングカバー8の方が大きい一方で、逆に吸収係数はハウジングカバー8よりもハウジングベース7の方が大きい。二つのワークピース部即ちハウジングベース7及びハウジングカバー8と、レーザービーム源1の光システム3とは、図3に示されているように接合部分10と反対側である第一結合部分12においてレーザービーム11がハウジングカバー8に当たるように、互いに相対的に位置する。第一ワークピース部、即ちハウジングカバー8は、透過係数が高いので、第一結合部分12から接合部分10までの領域において、少なくとも部分的にレーザービーム11のスペクトルを透過するようになされている。その結果、レーザービーム11の少なくとも一部がハウジングカバー8を透過する。第二結合部分13で図3に示されているように、レーザービーム11の透過部分が第二ワークピース部、即ちハウジングベース7に侵入する。図示されているように、第一結合部分12及び第二結合部分13はレーザービーム11によって形成されている直線に実質上、位置している。特にこの直線は結合部分12、13に対してほぼ垂直である。
【0027】
ハウジングベース7は、吸収係数が高いので、接合部分10の第二結合部分13の領域において、少なくとも部分的にレーザービーム11のスペクトルを吸収するようになされている。その結果、第二結合部分13に接触するレーザービーム11の少なくとも一部によって吸収領域14においてハウジングベース7が加熱される。この実施例ではハウジングベース7が第二結合部分13の表面で吸光するようになされるか又は使用されるレーザービーム11の波長が、レーザービーム11がハウジングベース7にわずかに、好ましくは数ミクロンのみ侵入するように選択されれば十分であり、それにより吸収領域14は図3に示されているようにハウジングベース7の表面にのみ形成される。吸収領域14から、隣接しているハウジングカバー8に熱が透過されるので、ハウジングカバーは熱伝導領域15において同様に加熱される。吸収領域14及び熱伝導領域15を加熱することによって、プラスチックが溶融され、それにより、冷却後、固化された接合部分10が、これら二つの部分14、15に共通に形成される。
【0028】
上述したように、ハウジング6はプラスチックからなる。スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド等を使用することは本実施例では特に電気スイッチのハウジングとして適切であることが証明されている。レーザービーム11のスペクトルに対するハウジングカバー8の部分透過性及びハウジングベース7の部分吸収性、即ち透過係数及び吸収係数を調節するために、顔料、ガラス繊維等がプラスチックに使用される。この場合、二つのワークピース部7、8における添加剤の割合を違えることによって調節が行われる。割合は可視光線のスペクトルに対する二つのワークピース部7、8の反射率が実質上、同じになるように選択される。特に黒の顔料によってハウジングベース7の吸収係数を高くすることが好適であることが発見された。上述した型のプラスチックをテストすることによって、ハウジングベース7の部分吸収プラスチックには、1%〜2%、顔料を追加する一方、部分透過ハウジングカバー8のプラスチックには、より低い率の顔料を添加するか
、特別な場合は、顔料を添加しないことが好都合であることが示された。従って、二つのワークピース部7、8は実質上、可視光線を通さず、ほぼ均等な視覚効果を与えるために黒く着色される。従って、好都合なことにハウジング6の二つのワークピース部7、8は視覚上、同じ印象を与えるので、プラスチック毎に調節を変えていることは目には見えない。
【0029】
上述した型のプラスチックに特に適している約1.06μmの波長でレーザービームを出す10W出力のNd:YAGレーザーによって、光システム3に対するハウジング6の前進速度を3m/minでテストを行ったところ、以下のパラメータを維持すれば溶接のよい結果がえられることがわかった。Nd:YAGレーザービームのスペクトルに対して、ハウジングカバー8は60%以上の透過率T、30%以下の吸収率A、必要な場合は、20%以下の反射率Rを備えている必要がある。さらに、ハウジングベース7は90%以上の吸収率、特に、ごく僅かな透過率T、必要な場合は、10%以下の反射率Rを備えている必要がある。このパーセンテージは本実施例の場合、結合部分12、13に接触するレーザービーム11に関する。各々の場合に、
T+A+R=100%
各結合部分12、13で反射されるレーザービーム11の割合は、接合部分10の加熱にあまり影響がないので、プラスチックを調節することによって、できるだけ少なくしておく必要があることも強調しておかなければならない。
【0030】
溶接の質を改善するために、レーザービーム11によって接合部分10を加熱し溶融している時、又はその後、接合部分10に圧力を作用させることができる。この目的で図1に示されているように、圧力ローラ16が接合部分10の領域においてハウジングカバー8の上部に作用する。圧力ローラー16は、方向矢印5′へのワークピースホルダ4の前進に合わせてレーザービーム11を追跡するようになされている。従って、圧力ローラー16の圧力は接合部分10が冷却するまで作用し、それにより接合部分10からの溶解の逃げが妨げられ、接合部分10にボイドが形成される危険性が防がれる。図1に示されているように、この圧力はレーザービーム11の焦点に沿って作用するので、ハウジングカバー8の結合部分12においてレーザービーム11は妨げられない。言うまでもなく、圧力ローラー16の代わりに、図示しないが、それ自体、周知である水圧、空気圧その他の押え装置も使用可能であり、これらは任意にビームを配向させることができるので、レーザービーム11の経路の外側に設けてもよい。これらの押え装置がレーザービーム11のスペクトルをかなり透過させる材料からなる場合、これらの押え装置はレーザービームの経路内に位置させることができる。
【0031】
レーザービーム源1の操作パラメータが、接合部分10の工程パラメータの関数として連続的に自動制御されるという点で溶接の質はさらに肯定的な影響を受ける。これらの工程パラメータは温度、圧力等である。レーザービーム源1の操作パラメータは、連続的に測定され、設定値から偏差が生じた場合は、所望の設定値に再び達するまで偏差に応じて変更される。
【0032】
本発明は記載し、図示した実施例に限定されない。むしろ発明概念の範囲内の当業者による開発すべてを含む。例えば、本発明は電気スイッチの製造に使用されるだけではなく、例えば家庭用品、包装等のためのプラスチックからなる、いかなる所望のワークピース、ハウジング等にも使用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1: レーザービーム源
2: 光ガイド
3: 光システム
4: ワークピースホルダ
5、5´:方向矢印
6: ハウジング
7: ハウジングベース(第二ワークピース部分)
8: ハウジングカバー(第一ワークピース部分)
9: ショルダ
10: 接合部分
11: レーザービーム
12: 第一結合部分
13: 第二結合部分
14: 吸収領域
15: 熱伝導領域
16: 圧力ローラー
17: 隣接重なりジョイント(更なる形状)
18: くさび形状のジョイント(更なる形状)
19: ショルダ形状の重なりジョイント(更なる形状)
20、20´:突出ショルダ
21: ショルダ形状のジョイント(更なる形状)
22: ショルダ形状のジョイント(更なる形状)
23: 溝状の重なりジョイント
24: 溝
25: 突縁
26: 壁
27: 空胴
28: 区分状の接合部分
29: スナップ接続

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース、特に電気スイッチのハウジング(6)であって、接合部分(10)に沿ってレーザービーム(11)により溶接される、プラスチック、好ましくは熱可塑材からなる二つのワークピース部(7、8)が設けられ、二つのワークピース部(7、8)はレーザービーム(11)のスペクトルに対して、少なくとも小区域において、互いに異なる透過係数及び吸収係数を有し、第一ワークピース部(8)は第一結合部分(12)の領域においてレーザービーム(11)を少なくとも部分的に透過するようになされ、レーザービーム(11)は第一ワークピース部(8)の接合部分(10)に侵入し、それによりレーザービーム(11)の一部が第一ワークピース部(8)を貫通し、第二結合部分(13)で第二ワークピース部(7)に侵入し、さらに、第二ワークピース部(7)は接合部分(10)の第二結合部分(13)の領域においてレーザービーム(11)を少なくとも部分的に吸収するようになされているワークピース。
【請求項2】
第二ワークピース部(7)が第二結合部分(13)の表面で吸収するようになされ及び/又はレーザービーム(11)の波長が、レーザービーム(11)が第二ワークピース部(7)にわずかに、好ましくは数ミクロンのみ侵入するように選択される請求項1記載のワークピース。
【請求項3】
二つのワークピース部(7、8)が同じプラスチック、例えばスチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド等からなり、第一ワークピース部(8)の透過係数及び第二ワークピース部(7)の吸収係数は好ましくはプラスチックにおけるガラス繊維、顔料、特に黒の顔料等の添加剤の割合によって調節され、特に吸収プラスチックの場合、1%〜2%の染料で着色を行い、透過プラスチックの場合、より低い率の着色を行うか、おそらく着色を行わないで、さらに両方のワークピース部(7、8)のプラスチックは実質上、可視光線のスペクトルを透過しないことが好適である請求項1又は2記載のワークピース。
【請求項4】
ワークピース(7、8)の結合部分(12、13)に接触するレーザービーム(11)に関して各々、第一ワークピース部(8)が60%以上の透過率T、30%以下の吸収率A、必要な場合、20%以下の反射率Rを有し、第二ワークピース部(7)が90%以上の吸収率A、特にごくわずかな透過率T、必要な場合、10%以下の反射率Rを有している請求項1、2又は3記載のワークピース。
【請求項5】
接続するべきワークピース部(7、8)は接合部分(10)において、重なりジョイント(9)、必要な場合はくさび形状の重なりジョイント(18)、溝状の重なりジョイント(23)、ショルダ状の重なりジョイント(9、19、21、22)、隣接重なりジョイント(17)等を備え、接合部分(10)は好ましくはワークピース部(7、8)の接続に沿って三次元空間に設けられ、さらに接合部分(10)の一部がワークピースの内部に位置することが好都合である請求項1から4のいずれかに記載のワークピース。
【請求項6】
内側の空胴(27)の少なくとも一部によって画定されている壁(26)が二つのワークピース部(7、8)に設けられ、好ましくは接合部分(10)が個々の区分(28)からなり、該区分は壁(26)の角、空胴(27)の貫通部分等の領域に設けられ、互いに隣接している壁(26)の接続表面に沿って連続し、さらに、個々の区分(28)の間で壁(26)が互いにスナップ接続(29)、シール溝(24)等で重なり合うことによって、特にほこりから空胴(27)をシールすることが好適である請求項1から5のいずれかに記載のワークピース。
【請求項7】
プラスチック、好ましくは熱可塑材からなる、請求項1から6のいずれかに記載のワークピース部(7、8)、特に電気スイッチのハウジング部等をレーザービーム(11)によ
って溶接する方法であって、第一透過ワークピース部(8)及び第二吸収ワークピース部(7)を互いに接合部分(10)によって接続し、ワークピースを形成し、レーザービーム(11)が最初に第一結合部分(12)で第一ワークピース部(8)に当たるように、二つのワークピース部(7、8)及びレーザービーム源(1)を光システム(3)によって互いに相対的に位置づけ、それによりレーザービーム(11)の一部は第一ワークピース部(8)を貫通し、レーザービーム(11)のこの部分は次に第二ワークピース部(7)の接合部分(10)の第二結合部分(13)の領域に侵入し、それにより第二ワークピース部(7)は第二結合部分(13)の領域が加熱され、その結果、二つのワークピース部(7、8)は接合部分(10)において溶融状態になり、次の冷却時、接合部分(10)は固化され、二つのワークピース部(7、8)は各々、添加剤、特に顔料を含み、第一ワークピース部(8)が第一結合部分(12)から接合部分(10)までの領域において、少なくとも部分的にレーザービーム(11)のスペクトルを透過するように、添加剤の割合を変えることによってワークピース部(7、8)は調節され、第二ワークピース部(7)は第二結合部分(13)の領域において、少なくとも部分的にレーザービーム(11)のスペクトルを吸収し、可視光線のスペクトルに対する二つのワークピース部(7、8)の反射率は実質上、同じである方法。
【請求項8】
二つのワークピース部(7、8)で第一結合部分(12)及び第二結合部分(13)が実質上、レーザービーム(11)によって形成されている直線上に、特に該線に対してほぼ垂直に位置するように、光システム(3)によってレーザービーム(11)が向けられるようにレーザービーム源(1)が位置し、細長い接合部分(10)が形成され、任意に配向可能で、ワークピースにおいて三次元空間に個々の位置で区分状(28)に設けられるように、レーザービーム源(1)もしくはレーザービーム源(1)の光システム(3)及びワークピース部(7、8)が好ましくは互いに相対的に、特にロボット、多軸取扱装置等のようなプログラム可能な動きで移動する請求項7記載のワークピース部の溶接方法。
【請求項9】
レーザービーム(11)による接合部分(10)の加熱及び溶融時、又はその後、圧力が接合部分(10)の領域に、特に接合部分(10)の冷却まで作用され、好ましくは圧力はレーザービーム(11)の焦点に沿って、特にレーザービーム(11)を追跡し又はレーザービーム(11)の経路の外側でワークピース部(7、8)に作用し、好ましくは水圧、空気圧、ローラ状(16)その他のレーザービーム(11)を透過することができる押え装置によって圧力作用がもたらされる請求項7又は8記載のワークピース部の溶接方法。
【請求項10】
レーザービーム源(1)、好ましくはNd:YAGレーザーの操作パラメータが接合部分(10)における温度、圧力等の工程パラメータの関数として自動制御され、ワークピースが好ましくは溶接後、焼鈍されることによって溶接応力が軽減される請求項7、8又は9記載のワークピース部の溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−105005(P2011−105005A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2496(P2011−2496)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【分割の表示】特願2006−131580(P2006−131580)の分割
【原出願日】平成7年3月23日(1995.3.23)
【出願人】(592097392)マルクアルト ゲーエムベーハー (4)
【氏名又は名称原語表記】MARQUARDT GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】