説明

プラズマアークトーチの切断品質を改善する方法および装置

金属材料の切断又はマーキングに広く使用されているプラズマアークトーチシステムにおいて、二次ガスの流動を制御することが、二次ガスとプラズマアークを形成するプラズマガスとのエントレインメントを低減する。二次ガスとプラズマアークを形成するプラズマガスとのエントレインメントを低減することは、プラズマアークトーチを用いてなされる切断の品質を向上させる。二次ガスの密度を制御して、二次ガスとプラズマガスとの間の密度差を低減することにより、この目標が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、プラズマアークトーチシステム及びプロセスの分野に関する。特に、本発明は、プラズマアークトーチシステム、動作方法、材料を切断するシステム、及びプラズマアークトーチにおいて二次ガスを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマアークトーチは、金属材料の切断又はマーキングにおいて広く使用されている。全般的に、プラズマトーチには電極が取り付けられており、トーチ本体内部には中心出口開口を有するノズルが取り付けられており、トーチは、電気的接続、冷却通路、アーク制御流体、及び電源を含む。いくつかの実施形態では、トーチは、プラズマ・チャンバ内の流体流パターンを制御する渦巻リングを含む。プラズマ・チャンバは、電極とノズルとの間に形成されている。トーチはプラズマアークを生成し、プラズマアークは、高温及び高運動量を有するプラズマガスの圧縮されたイオン化ジェットである。トーチで使用されるガスは、非反応性(例えば、アルゴン)又は反応性(例えば、酸素又は空気)とすることができる。
【0003】
動作において、例えば、プラズマアークが金属の被加工物を切断するプロセスでは、最初に、電極(陰極)とノズル(陽極)との間にパイロットアークが生成される。パイロットアークの生成は、DC電源及びトーチに接続されている高周波数で高電圧の信号又は種々の接触開始方法の任意のものを用いてもよい。パイロットアークは、ノズル出口開口を通過するガスをイオン化する。イオン化ガスが電極と被加工物との間の電気抵抗を低減した後、アークはノズルから被加工物へと移行する。トーチは、被加工物を切断するための、電極から被加工物までのイオン化ガスの伝導流を特徴とする移行式プラズマアークモードで動作する。
【0004】
プラズマアークトーチの既知の一構成には、二次キャップ(シールドとも呼ばれる)に対する関係で取り付けられている電極及びノズルが含まれる。ノズルは、二次キャップに取り囲まれている。比較的大きな二次ガス流(シールドガス流とも呼ばれる)は、ノズルと二次キャップとの間の空間を通過する。プラズマアーク流が長手方向軸に沿ってノズル出口開口を通過する一方、二次ガス流は、ノズルと二次キャップとの間の空間を通過する。二次ガス流は、一定の方向(例えば、時計回り)に二次ガスを旋回させる二次ガス渦巻リングを通過することが多い。一般に、二次ガス流は界面においてプラズマガス流に接触し、この接触はプラズマアークを乱す可能性があり、それにより切断品質に不完全性を生じる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
いくつかの実施形態では、二次ガスは、プラズマアークの長手方向軸に対し角度をなして、ノズルと二次キャップとの間の空間を通過し、二次流はプラズマアーク流に衝突する。衝突後、二次ガス流及びプラズマアークは、共に二次キャップ出口開口を通過する。プラズマアークへの二次ガスの衝突はプラズマアークを乱す可能性があり、切断性能の劣化をもたらす可能性がある。本発明の目的は、プラズマアーク及び/又はプラズマガスとの二次ガス流の干渉を生じながら切断性能を向上させる、プラズマアークトーチ動作の改良された方法及び改良されたプラズマアークトーチを提供することである。
【0006】
エントレインメントは、二次ガスの勢力がプラズマアーク内に進入した場合に生じる物質移動機構である。理論に基づくものではないが、エントレインメントは、プラズマアーク二次ガスの界面における流体不安定性に起因して生じると考えられる。プラズマアークにおける二次ガスエントレインメントの不均一性の増大が切断角度の変動の増大に繋がることが、最近の研究により示されている。プラズマガス及び/又はプラズマアーク内への二次ガスのエントレインメントは、二次ガスとプラズマガスとの間の密度差の関数である。また、流体エントレインメントの割合が、プラズマアークに対する二次ガスの向き、例えば角度、及び/又は速度の関数である可能性があると考えられる。このように、本発明の目的は、二次ガスの流動を制御して、プラズマガス内への二次ガスのエントレインメントを低減及び/又は最小限にして、切断角度の変動を低減する二次ガスを提供することである。更に、二次ガスが適切な熱伝導性を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、二次ガス流は、プラズマアークを形成するプラズマガス内への二次ガスのエントレインメントを低減する二次ガス密度を提供するように制御される。例えば、(例えば、二次ガスが2つ以上のガスの混合物である場合)二次ガス組成を制御することにより、及び/又は二次ガス密度を制御する二次ガス温度を制御することにより、プラズマガス内への二次ガスのエントレインメントを低減するように二次ガス密度を制御することができる。また、例えば、二次ガスとプラズマアークを形成するプラズマガスとの界面を改善するトーチ構造を選択することにより、二次ガスのエントレインメントを制御することもできる。
【0008】
エントレインメントを低減する制御された二次ガス密度は、切断角度の変動を低減することができ、それにより、プラズマアークトーチの切断品質を向上させることができる。記載した方法に基づく、記載したプラズマアークトーチを利用する材料(例えば、被加工物)切断における期待される向上には、表面粗さの低減、トップドロスの低減、及び上縁部の丸まりの低減の1つ以上が含まれる。更に、プラズマガス内への二次ガスのエントレインメントを低減する向きで二次ガス出口開口を通して、二次ガスの流動を方向付けるようにトーチを設計することができる。
【0009】
本発明は、プラズマ切断トーチ、プラズマ(移行式)切断アークを動作させる方法、二次ガスを制御する方法、及び材料を切断するシステムに関する。材料を切断するシステムは、プラズマアークを形成するプラズマガスとの二次ガス流のエントレインメントを低減し、それにより、切断性能を向上させるシステムである。一般に、二次ガスの流動は、例えばプラズマアークトーチの第1の端部に配置されているプラズマ出口開口の外側の位置において、プラズマガス内への二次ガスのエントレインメントを低減するように制御される。プラズマアークを形成するプラズマガス内への二次ガスのエントレインメントを低減する二次ガス密度を実現するように二次ガスを制御することができる。一般に、切断モードにおいて、プラズマ切断アークは、それがノズルを出た場合、極めて圧縮された左右対称の安定したプラズマアークである。
【0010】
例えば、一実施形態では、二次ガスの密度を制御することは、二次ガス流の密度を制御して、二次ガス出口開口の領域においてプラズマガスと二次ガスとの間の密度差を低減することを含む。別の実施形態では、制御することは、二次ガス流がプラズマアークに接触するときに、二次ガス流の密度を制御してプラズマアークと二次ガス流との間の密度差を低減することを含む。別の実施形態では、材料を切断するシステムは、二次ガス流がプラズマアークに接触するときに二次ガス流の密度を制御してプラズマ出口開口を通って延びるプラズマアークと二次ガス流との間の密度差を低減するコントローラを含む。
【0011】
更に別の実施形態では、二次ガスの密度は、プラズマガス内への二次ガスのエントレインメントを最小限にする二次ガス密度を実現するように制御される。例えば、二次ガス流の密度は、プラズマガス及び/又はプラズマアークと二次ガス流との間の密度差を最小限にするように制御される。
【0012】
プラズマアークトーチを用いて材料を切断するシステムは、二次ガス流がプラズマアークに接触するときに二次ガス流の密度を制御してプラズマアークと二次ガス流との間の密度差を低減するコントローラを含むことができる。一実施形態では、適切なコントローラは、二次ガス流の温度を制御する加熱器を含むことができる。加熱器を用いて二次ガスの温度を制御することにより、二次ガス流とプラズマアークとの間のエントレインメントを低減することができる。二次ガスの温度制御を利用して、二次ガス流がプラズマアークの少なくとも一部に接触する前に、二次ガス流とプラズマアークとの間の密度差を低減することができる。
【0013】
別の実施形態では、二次ガスは、プラズマガス密度と二次ガス密度との間の密度差を低減するように制御される。一実施形態では、周囲条件における二次ガス密度は、周囲条件における窒素ガス密度より低い。例えば、二次ガスは、周囲条件における窒素ガス密度の約70%より低い周囲条件における密度を有する。一実施形態では、例えば、二次ガスが少なくとも20%の不活性ガス、例えばヘリウムなどを含む場合、二次ガスは2つ以上のガスの混合物である。別の変形では、二次ガスは、例えばヘリウムなどの不活性ガスに関し約70%未満である。
【0014】
二次ガスの流動を制御することは、プラズマガス内への二次ガスのエントレインメントを低減する向きで二次ガス出口開口を通して、二次ガスの流動を方向付けることを含むことができる。一実施形態では、エントレインメントを低減する向きは、二次ガス流がプラズマアークトーチのプラズマアーク内に流入する角度であり、該角度は、プラズマアーク内への二次ガスのエントレインメントを最小限にするように選択される。プラズマアークトーチによっては、二次ガス流が、一定の方向(例えば、反時計回り)で二次ガスを旋回させる二次ガス渦巻リングを通過するものもある。二次ガスが渦巻リングを通過した場合、二次ガス流は、少なくとも3つの方向成分、即ち二次ガス旋回成分、二次ガス軸方向成分、及び二次ガス放射方向成分、を有する。そのような実施形態では、例えば、二次ガス流の角度は、二次ガス軸方向成分と二次ガス放射方向成分との組合せに関連する。適切な二次ガス混合物は、例えばヘリウムを含む。
【0015】
一実施形態では、二次ガスは、約−90°から約89°まで、約0°から約89°まで、約0°から約85°まで、約0°から約80°まで、約0°から約75°まで、又は約0°から約50°までに及ぶ値を有する、プラズマアークの長手方向軸に対する角度で二次ガス出口開口を出る。別の実施形態では、二次ガスは、プラズマアークに対して実質的に同軸である。したがって、二次ガスは、プラズマアークの長手方向軸に対し約0°の角度で二次ガス出口開口を出る。別の実施形態では、二次ガス流路は、ノズル内の1つ以上の流体通路を含む。例えば、1つ以上の流体通路は、二次ガス出口開口を出る二次ガスの少なくとも一部の流体路を画定することができる。1つ以上の流体通路は、プラズマアークに対して収束する角度の流れ、プラズマアークに対して発散する角度の流れを生成することができ、及び/又はプラズマアークに実質的に平行である。ノズルは、プラズマガスバイパスチャネルを画定することができる。一実施形態では、プラズマガスの一部は、プラズマガスバイパスチャネル経由でプラズマアークトーチシステムを出る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明自体と同様に、本発明の前述の且つ他の目的、特徴、及び利点は、添付図面と共に読むと、以下の例示的記載からより深く理解されるであろう。添付図面は必ずしも縮尺通りではない。
【0017】
プラズマ切断は、一般的に、圧縮された電気アークを使用してガス流をプラズマ状態まで加熱することにより実行される。高温プラズマ流からのエネルギーが、被加工物を局所的に溶融する。適切な被加工物材料には、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、軟鋼、及び/又は非鉄材料が含まれる。そのようなプラズマ切断プロセスは、シールドガス流とも呼ばれる二次ガス流を含むことができる。二次ガス流は、トーチを保護し切断プロセスにおいて補助するように使用される。高温プラズマ流及び二次ガス流の運動量は共に、切断切り口(cut kerf)として知られるチャネルをその中に残して、被加工物から融解物質を除去する。プラズマトーチと被加工物との間の相対運動は、プロセスが被加工物を効果的に切断することを可能にする。
【0018】
図1Aは、プラズマアーク出口開口34を有するノズル14を含むプラズマアークトーチ10を示す。プラズマアーク30、例えば、イオン化ガスジェットは、トーチ先端100にある開口34を通ってトーチ10を出て、処理されている被加工物70に付着する。トーチ10は、金属被加工物、特に軟鋼、又は他の材料を移行式アークモードで穿孔し切断するようになされている。被加工物を切断することにおいて、トーチ10は、流体、例えばプラズマガス20、を用いて動作する。該プラズマガスは、移行式プラズマアーク30を形成する。一般に、切断モードでは、プラズマ切断アーク30は、それがノズル14の開口34を出る時、極めて圧縮された左右対称の安定したプラズマアーク30である。
【0019】
プラズマアークトーチ10は、接触開始プロセスを使用することができるが、本発明の範囲から逸脱することなく、他の開始プロセスを利用することができる。簡潔に、接触開始プロセスでは、電極12がノズル14に接触し、電極とノズルとの間に電気的短絡を作る。プラズマアークの応用では、アークは、電極12(例えば、陰極)とノズル14(例えば、陽極)との間に相対的な電位をもたらすことにより、電極12とノズル14との間の空間を渡って引き寄せられる。電極12は、プラズマ・チャンバが電極12とノズル14との間に形成されるように、プラズマ・チャンバの少なくとも一部分を形成することができる。いくつかの実施形態では、トーチ10は、流体の流動を制御する1つ以上の渦巻リングを特徴とする。該渦巻リングは、プラズマ・チャンバ内に入る流体の流動を制御する。渦巻リングを使用するプラズマアークトーチは、本明細書に参照により援用されている米国特許第6,207,923号明細書に開示されている。トーチはまた、二次ガス渦巻リングを含み、二次ガス流を旋回させることができる。二次ガス渦巻リングを使用するプラズマアークトーチは、本明細書に参照により援用されている米国特許第5,396,043号明細書に開示されている。
【0020】
二次ガスは、プラズマアーク切断プロセスにおいて貴重な役割を果たす。二次ガスは、プラズマアーク30及び被加工物70の表面と相互作用する。更に詳細には、二次ガスは、プラズマアーク30を形成するプラズマガス20と密着しており且つそれと接触する。或いは、又は更に、二次ガスは、被加工物70と接触している。ここで図1A及び2A並びにアイテム60を参照すると、ノズル出口開口34の下流で、プラズマアーク30と二次ガス流40及び50とが接触し、熱移動及び物質移動を可能にする。
【0021】
二次ガス流40、50の一部は、プラズマアーク30による切断切り口に進入し、切断アークと被加工物70表面との間に境界層を形成する。この境界層の組成(例えば、境界層の熱伝導性)は、プラズマアーク30から被加工物70表面までの熱伝達に影響を及ぼす。更に、境界層の組成は、境界層と被加工物70表面との間に生じる任意の化学反応に影響を与える。
【0022】
適切な二次ガス(類)40、50を選択することにより、プラズマガス20内への二次ガス40、50のエントレインメントを低減及び/又は最小限にして、切断角度の変動を低減することができる。プラズマガス20及び/又はプラズマアーク30内への二次ガス40、50のエントレインメントは、二次ガス40、50(比較的高い密度を有する)とプラズマガス20(比較的低い密度を有する)との間の密度差の働きである。つまり、二次ガス(類)40、50の密度を低下させることにより、プラズマガス20と二次ガス(類)40、50との間の密度差を低減することができ、結果として、エントレインメントの低減、並びに切断角度の変動、表面粗さ、トップドロス、及び/又は上端部の丸まりの低減をもたらすことができる。このようにして、制御された二次ガス密度は、プラズマアークを形成するプラズマガスとの二次ガスのエントレインメントを低減することができる。エントレインメントを低減するために、適切な二次ガス40、50は、比較的低い密度を有する。ガス密度及び/又は熱伝導性に基づいて、二次ガス40、50を選択することができる。或いは、又は更に、例えば加熱により温度を制御することなどにより、ガス密度及び/又はガスの熱伝導性を最適にする条件に、二次ガス40、50を暴露することができる。
【0023】
一般に、単独で又はガス混合物において使用される適切な二次ガス40、50は、周囲の窒素ガスと比較して、ガス密度及び/又は熱伝導性の向上をもたらす。適切な二次ガス混合物は、アルゴン、窒素、酸素、ヘリウム、水素、メタン、及び二酸化炭素のうちの1つ以上を含むことができる。一実施形態では、二次ガス混合物の選択は、該混合物が周囲条件における窒素ガス密度(例えば、周囲温度下且つ周囲圧力下で測定される窒素密度)より低い密度(周囲条件における)を有するようになされる。別の実施形態では、周囲条件における二次ガスは、周囲条件における窒素ガス密度の約90%、約80%、約70%、約60%、又は約50%より低い密度を有するように選択される。一応用では、不活性ガスは、それがプラズマアーク切断プロセス中に暴露される温度条件に関わらずその原子状態を保つので、ヘリウムなどの1つ以上の不活性ガスの使用が好ましい可能性がある。不活性ガスは、特定の温度に暴露されても、例えば再結合エネルギーに起因する熱伝導性の突然の上昇を示さない。対照的に、不活性でない(二原子の)窒素ガス及び酸素ガスはその原子状態にはなく、特定の温度条件に暴露されると、これらのガスは、その再結合エネルギーに起因する熱伝導性の上昇を示す。熱伝導性におけるこのスパイクは、例えば軟鋼及びアルミニウムに上端部の丸まりを生じることなどにより、切断品質に影響を与えると考えられる。ヘリウムなどの不活性ガスを二次ガスとして又は二次ガス混合物の一部として使用することは、上端部の丸まりを低減及び又は最小限にすることにより、切断品質を向上させることが予測される。二次ガスにおける不活性ガス(類)の使用は、熱伝導性に影響を及ぼし、それにより切断品質を低下させる気相反応を回避する。
【0024】
前述した通り、ヘリウムは、本応用の二次ガス40、50としての所望の特性を呈示する可能性がある。ヘリウムはまた、プラズマガス20と二次ガス40、50との間の密度差を低減することにより、プラズマガス20と二次ガス40、50との間のエントレインメントの低減において、利点を呈示する可能性もある。その比較的低い密度の故に、ヘリウムは、窒素、酸素、アルゴン、水素、メタン、及び二酸化炭素などの任意の数のガスと組み合わせられて、比較的低密度の二次ガス40、50を生成してもよい。そのような実施形態では、比較的低密度のヘリウムの存在が、二次ガス40、50混合物の総体的な全体の密度を低下させる。ヘリウムは、例えば、より高密度の窒素ガス(0℃で1.251g/Lの窒素密度)又はより高密度の酸素ガス(0℃で1.429g/Lの酸素密度)と比較して、低密度(0℃で0.17847g/L)の低分子量ガスである。したがって、ヘリウムを他のガスと組み合わせることにより、現在使用されているヘリウムを含まない混合物に対して二次ガス40、50の全体的な密度を低下させることができ、エントレインメントも同様に低減することができる。例えば、ヘリウム及び窒素を含有する二次ガスでは、周囲条件におけるその混合物の全体的な密度は、同様の条件における窒素密度より低いと考えられる。同様に、二次ガス混合物における窒素に対するヘリウムの比率は、窒素密度の約90%、約80%、約70%、約60%、又は約50%より低い密度を有する二次ガス40、50を生成するように選択することができる(二次ガス密度及び窒素ガス密度は共に周囲条件で測定される)。
【0025】
二次ガスの組合せのテストでは、以下により詳細に説明する通り、約20%から約80%までのヘリウムを含有する二次ガスが、切断品質に顕著な向上を示すことが分かった。約20%未満のヘリウム及び約80%を超えるヘリウムを含有する二次ガス混合物もまた、現在のシステムを凌ぐ切断品質の向上を示すことが分かった。異なるヘリウム百分率を有するガスの組合せは、約0.01%から約99.9%までのヘリウム、約0.1%から約50%までのヘリウム、約5%から約80%までのヘリウム、約30%から約70%までのヘリウム、約15%から約50%までのヘリウム、又は約40%から約60%までのヘリウムに及ぶ可能性がある。一当業者は、プラズマアーク30と二次ガス40、50との間の密度差を低減する、二次ガス混合物として使用することができると考えられるガスの種々の組合せ及び混合物を理解するであろう。更に、所望の量のヘリウムと共に二次ガス40、50混合物における酸化ガスの使用は、例えば軟鋼を含む特定の切断用途において望ましい。
【0026】
また、プラズマガス及び/又は二次ガスの選択を、被加工物70に含有される金属により導くことができる。例えば、被加工物が軟鋼を含有する場合、プラズマガスは反応性ガス(例えば酸素又は空気)であり、シールドガスは、反応性ガス(例えば、酸素又は空気)、非反応性ガス(例えば、ヘリウム又は窒素)、又は反応性ガスと非反応性ガスとの組合せとすることができる。軟鋼に使用される適切なシールドガスには、例えば、He、He/N混合物、H/N/O混合物、及びH/O混合物が含まれる。別の実施形態では、40%のHe、50%のO、及び10%のNを含有するガス混合物が、軟鋼の切断において効果的であることが分かった。被加工物がステンレス鋼及び/又はアルミニウムを含有する場合、プラズマガスは、例えばH35(35%のH及び65%のArを含有する)、Nで希釈されたH35、N/Ar/H混合物、95%のN及び5%のHを含有するN/H混合物、又はNなどの非酸化プラズマガスである。被加工物がステンレス鋼及び/又はアルミニウムを含有する場合、シールドガスは、例えば、ヘリウム又はHe/N混合物などの非酸化ガスとすることができる。該He/N混合物は、40%のHeと60%のNの混合物などである。
【0027】
本システムの別の応用では、プラズマガス20と二次ガス40、50との間のエントレインメントを、二次ガス40、50を加熱することにより低減することができる。十分に理解されているように、ガスの密度は、その温度又は内部エネルギーの関数として低下する。一応用では、プラズマガス20に接触する前に二次ガス40、50が加熱され、その結果、プラズマガス20と二次ガス40、50との間の密度差が低減する。そのような二次ガス加熱実施形態は、どんな特定の二次ガス又はガスの組合せにも限定されない(例えば、二次ガスが加熱される実施形態はヘリウムを含むことができるか、又はヘリウムを含まないことができる)。しかし、いくつかの応用では、不活性ガス(例えば、ヘリウム)の使用が所望される。そのような加熱器の実施は、以下に更に詳細に説明されるであろう。
【0028】
プラズマアークトーチ10の別の実施形態では、図1A〜1C及び2Aを参照すると、プラズマアーク30が、プラズマアークトーチ10の第1の端部に配置されているプラズマ出口開口34から噴出する。トーチ10は、流体、例えば移行式プラズマアーク30を形成するプラズマガス20、を用いて動作する。随意に、プラズマ出口開口34は最小直径であり、プラズマガス20は、トーチ10本体内での該最小直径を通過する。プラズマ出口開口34の直径を、切断プロセスに使用されているトーチのアンペア数に基づいて選択することができる。約15アンペアから約1200アンペアまで、又は約30アンペアから約400アンペアまでに及ぶアンペア数を有するプラズマアークトーチが使用されてもよい。一実施形態では、80アンペアのノズル有するプラズマアークトーチは、直径0.046インチのプラズマ出口開口を有する。ニューハンプシャー州ハノーバーに所在するハイパーサーム社(Hypertherm, Inc.)により製造されるノズル(部品番号220188)を含む80アンペアのノズルを有するトーチは、プラズマアークを形成するプラズマガス内での二次ガスのエントレインメントを低減及び/又は最小限にすることにおいて、効果的なものであることが分かっている。当然、当業者は、用いることができる広範なプラズマ出口開口の大きさを提供する多数の他のノズル及びトーチ構成要素を理解するであろう。
【0029】
更に、プラズマアーク30並びに二次ガス流40及び50は、プラズマ出口開口34の外側の位置で結合及び/又は混合することができる。例えば、一実施形態では、二次ガス流40及び50は、プラズマ出口開口34の下流の位置で、プラズマアーク30及び/又はプラズマアーク30を形成するプラズマガス20と接触し、熱移動及び物質移動を可能にする。プラズマアークトーチ10は、二次ガス40、50が、プラズマ出口開口34の外側の位置で二次ガス40、50とプラズマガス30とのエントレインメントを低減する密度を有するように、二次ガス密度(例えば、二次ガス40及び/又は50の密度)を制御する制御手段を含むことができる。適切な制御手段は、二次ガス40、50を制御し、二次ガス40、50とプラズマガス20により形成されるプラズマアーク30とのエントレインメントを低減する二次ガス40、50を提供する。
【0030】
一実施形態では、制御手段は、二次ガス流40、50がプラズマアーク30と接触する時、二次ガス流40、50の密度を制御し、プラズマアーク30と二次ガス流40、50との間の密度差を低減する。制御手段は、コンピュータコンソールなどのコントローラ15(図1C参照)とすることができ、該コントローラは、プラズマガス20及び二次ガス40、50のうちの1つ以上のガス流又は混合物を制御する。別の実施形態では、コントローラ15は、プラズマガスコントローラ35及び二次ガスコントローラ25aを制御する制御手段である。コントローラ15は、例えば、プラズマガスコントローラ35及びトーチ10からデータ及び信号を受信し、それらへ信号及びデータを供給するシステムとすることができる。プラズマガスコントローラ35は、プラズマガス流を調節することができ、プラズマガスの組成を制御することができる。例えば、被加工物がステンレス鋼及び/又はアルミニウムを含有する場合、プラズマガスコントローラ35は、ガス流を調節して、H35及びNからプラズマガスを混合することができる。コントローラ15は、トーチ10へのプラズマガス20流を制御することができる。例えば、一実施形態では、酸素及び/又は空気は、プラズマガスコントローラ35を通り、バルブマニフォルド37を通って移動する。該バルブマニフォルドは、例えば、ガスの流動がトーチ10にプラズマガス20を供給できるようにし、且つできないようにする。更に、コントローラ15は、二次ガスコントローラ25からデータ及び信号を受信することができ、且つそこへ信号及びデータを供給することができる。コントローラは、例えば、切断信号及びガス流信号を受信及び/又は供給する。
【0031】
ここで図1Bを参照すると、一実施形態では、二次ガスコントローラ25は二次ガス流40、50の密度を制御するためのものである。二次ガスコントローラ25は、二次ガス40、50の流動を制御し、プラズマアーク30を形成するプラズマガス20内への二次ガス40、50のエントレインメントを低減する密度の二次ガスの混合物を提供する。一実施形態では、二次ガスコントローラ25は、少なくとも約20%のヘリウムガス流を有する二次ガス流40、50を提供する。一実施形態では、材料はアルミニウム及び/又はステンレス鋼を含有し、二次ガスコントローラ25は、二次ガスの密度を制御して、窒素及び少なくとも約20%のヘリウムを含む混合物を提供する。
【0032】
一実施形態では、二次ガスコントローラ25は、二次ガス流40、50の密度を制御し、例えば二次ガス出口開口において、プラズマガス20と二次ガス40、50との間の密度差を低減する。二次ガスコントローラ25は、二次ガス流40、50の密度を制御することができ、例えば二次ガス出口開口において、プラズマアーク30と二次ガス40、50との間の密度差を低減することができる。コントローラ25は、二次ガス流40、50の密度を制御することができ、二次ガス流40、50がプラズマアーク30と接触する時、プラズマアーク30と二次ガス流との間の密度差を低減することができる。一実施形態では、二次ガスの密度を制御することは、二次ガス40、50に二次ガス出口開口を通って流れさせて、二次ガス出口開口において、二次ガス40、50とプラズマガス20との間の密度差を最小限にすることを含むことができる。二次ガス40、50の密度は、当業者に既知の適切な手段により測定されてもよい。一実施形態では、任意のガス混合物が組み合わされた後に、且つプラズマアークトーチ10に進入する前に、二次ガス40、50の密度は位置27で測定される。二次ガスは、略周囲圧力下且つ周囲温度下にある場合に測定される。別の実施形態では、二次ガス40、50は、プラズマガス20の密度と二次ガス40、50の密度との間の密度差を低減するように制御される。一実施形態では、二次ガスは2つ以上のガスの混合物であり、周囲条件における二次ガス密度は周囲条件における窒素ガス密度より低く、二次ガスは、少なくとも20%の、例えばヘリウムなどの不活性ガスを含む。
【0033】
一実施形態では、制御手段は、2つ以上のガスを混合して二次ガス40、50を提供する流動制御モジュールである。例えば、図1A〜1Cを参照すると、二次ガスコントローラ25aは、2つ以上のガスを混合する(例えば、ヘリウムガス、窒素ガス、及び酸素ガスの中の2つ以上を混合する)流動制御モジュールである。流動制御モジュールは、例えば、バルブ、質量流量コントローラ、例えばブカート質量流量コントローラ(Bukert Mass Flow Controllers)(カリフォルニア州アーバインに所在するブカート・コントロマティック社(Bukert Contromatic Corp.))を含むことができる。流動制御モジュールは、40%のヘリウムガスと60%の酸素ガスとのそのような混合物である任意の範囲の二次ガス40、50の組合せを提供することができる。当業者は、ガス量を計測し、所望のガスの組合せに到達する種々の方法及びシステムを理解するであろう。一実施形態では、(図1C参照)二次ガス40、50の密度は、2つ以上のガスが、二次ガス40、50を提供するために質量流量コントローラによって混合される位置27の後の位置で測定される。一実施形態では、二次ガス40、50の密度は、位置27で測定される二次ガス40、50が略周囲圧力下且つ周囲温度下にある時に、測定される。
【0034】
例えば、Hypertherm HT2000 200A酸素プラズマプロセスで実施される最近の数値モデル化計算により、最高プラズマ温度がノズル穴の中心線に沿って生じること、及びこの温度が約30,000℃であることが示されている。プラズマガス温度が、ノズル壁で銅の融点である1000℃より下に低下する急勾配の温度プロフィールがノズル穴に存在する。これらの数値モデル化の結果は、ノズル穴内のプラズマガスの最高質量流量速度が、このノズル壁から僅か約0.016インチである放射方向の位置に位置していること、プラズマガスが約577℃の温度を有することを示している。プラズマアークがノズルを出た直後に、酸素プラズマガスの圧力が大気圧まで低下する。大気圧下且つモデル化温度下で、プラズマガスのこの領域は、0.46g/Lの密度を有する。
【0035】
二次ガスが、15℃の温度下且つ大気圧下で通常の空気のシールドガスである場合、二次ガスは、より高い密度即ち1.225g/Lの密度を有する。プラズマガス密度とシールドガス密度との間の差を低減するために使用することができる2つの基本的な方法がある。1つの方法は、例えば補助加熱器を用いて、空気シールドガスを約480℃の温度まで加熱して、シールドガス密度を約0.46g/Lの密度まで低下させるステップを含む。該密度は、前に提供されたプラズマ密度に近い。或いは、もう1つの方法は、15℃で且つ大気圧下で27%の空気と73%のヘリウムとの混合物である二次ガスを提供し、約0.46g/Lの二次ガス密度を実現するステップを含む。標準的な空気のシールドガスに熱を供給して密度を低下させることと、ガスの混合物を提供して、プラズマガスの密度に実質的に類似する密度を有する二次ガスを達成することとの、両方法を単一のプラズマアークトーチに用いることができることが考えられる。例えば、一実施形態では、ある割合の不活性シールドガスを含む二次ガスを、例えば補助加熱器を用いて温度制御することができ、使用される不活性ガス(例えば、ヘリウム)量の減少を可能にすることができる。
【0036】
様々な応用では、様々なプラズマガス及び様々なシールドガスが使用される。プラズマガスから形成されるプラズマアークとの二次ガスのエントレインメントを低減する二次ガス及び二次ガス密度は、所定のプロセスに基づいて選択される。同様に、二次ガス流とプラズマアークを形成するプラズマガスとの間の密度差は、該プロセス及び被加工物の適用に基づくであろう。当業者は、何らかのテストを使用して、プラズマアークを形成するプラズマガスとのエントレインメントを低減する二次ガス及び二次ガス密度を決定してもよい。
【0037】
プラズマアークを形成するプラズマガスは、例えば、温度、圧力、及びプラズマアークを形成するプラズマガスが測定される点次第で変動する、比較的低い密度を有する。二次ガス流40、50とプラズマアーク30を形成するプラズマガス20との間の密度差を低減することは、比較的低い密度を有し、それにより二次ガス40、50とプラズマアーク30を形成するプラズマガス20との間の密度差を低減する二次ガス40、50を提供することを含む。二次ガス流40、50の密度は、約1.0g/lから約0.07g/lまで、約0.8g/lから約0.09g/lまで、約0.6g/lから約0.15g/lまで、約0.4g/lから約0.2g/lまで、又は約0.3g/lに及ぶ。二次ガス密度の範囲上限は、約15℃1気圧においてN密度の90%、約1.09g/lであり、二次ガス40、50の密度の範囲下限は約0.0714g/lであり、約15℃1気圧におけるヘリウム密度である。現在使用されている二次ガスは、プラズマアークを形成するプラズマガスとのより大きな密度差を有し、約15℃1気圧において測定される約1.215g/lの密度を有するN、約15℃1気圧において測定される約1.226g/lの密度を有する空気、及び約15℃1気圧において測定される約1.388g/lの密度を有するOを含む。
【0038】
一実施形態では、制御手段は、二次ガス流40、50の温度を制御する温度コントローラである(図1C参照)。二次ガスコントローラ25は、温度コントローラ、例えば加熱器29、を含むことができる。一実施形態では、二次ガス40、50は、二次ガス40、50がプラズマアーク30に接触する前に、トーチ10の外部にある加熱器29により予熱される。別の実施形態では、加熱器(例えば、補助加熱器)は、トーチ10上に配置されている。使用されてもよい適切な加熱器には、例えば、オメガラックス(Omegalux)という名でオメガ社(Omega, Inc.)により製造されるもの(型番AHP−3742、AHP−5052、AHP−7562)などのインライン空気加熱器が含まれる。二次ガスコントローラ25は、例えば、二次ガス流の温度を維持することができる。例えば二次ガス40、50を加熱することにより、二次ガス40、50の温度を最適化することによって、二次ガス40、50の密度は低下し、その熱伝導性は増大する。一実施形態では、二次ガス40、50の密度は位置27において測定され、これは、ガス混合物が組み合わせられ且つ温度が加熱器29によって制御された後であり、プラズマアークトーチ10に進入する前である。温度制御された二次ガス40、50が測定される場合、略周囲圧力下である。二次ガス40、50の温度は、トーチ10本体内部で交換される熱により影響を及ぼされる可能性があるが、いくつかの実施形態では、二次ガス密度は、プラズマアークトーチの上流で決定される(例えば、二次ガス40、50流がプラズマアークトーチ10に進入する前に)。二次ガス40、50へのプラズマアークトーチ10内部の予想される熱伝達の影響が、所望の二次ガス40、50の密度範囲を決定することにおいて利用され、例えば、加熱器29を出る二次ガス40、50の温度レベルは、プラズマアークトーチ10内で生じるであろう追加の熱交換を見越し対処することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、図1A〜1Cを更に参照すると、二次ガス40、50は、プラズマアーク30の温度とは異なる温度を有する。例えば、二次ガス40、50は、プラズマアーク30より低い温度を有し得る(例えば、二次ガス40、50は、二次ガス40、50とプラズマアーク30との界面においてプラズマアーク30より低い温度を有する)。多数の切断トーチでは、ノズル14において、二次ガス流40、50を使用して冷却するか又は冷却を補助する。二次ガス40、50をノズル冷却用流体として使用する場合、二次ガス流40、50は、プラズマアークトーチ10及び/又はプラズマアーク30により間接的に予熱される。一実施形態では、二次ガス流40、50は、追加エネルギー源により温度制御される。例えば、二次ガス40、50は、プラズマアーク30に接触する前に、追加エネルギー源(例えば加熱器29)により予熱され、上昇した二次ガス温度に到達する。二次ガスの1つの流動(例えば40)は、プラズマアーク30に接触する二次ガスの別の流動(例えば50)とは異なる温度を有し得る。例えば、二次ガスの1つ流動40は追加エネルギー源により予熱することができ、二次ガスの別の流動50は、周囲温度下で提供される。二次ガス流を周囲温度で又は周囲温度を超える温度即ち周囲温度より高い温度で提供することができる。二次ガス温度は、例えば、略周囲温度から約30,000℃まで、又は略周囲温度から約3,000℃まで、又は略約周囲温度から約1,000℃まで、又は略周囲温度から約500℃まで、又は約500℃から約1000℃までの範囲内の値を有し得る。二次ガス40、50の温度を、例えば位置27で測定することができる。
【0040】
二次ガスエントレインメントの不均一性の増大が被加工物の切断角度の変動を増大することが、研究により示されている。このように、プラズマアーク30内の二次ガス40、50のエントレインメントを制御することは、切断角度の変動を低減し、それにより、プラズマアークトーチの切断品質を向上させることが期待される。期待される向上には、例えば、完成した被加工物における表面粗さの低減、トップドロスの低減、及び上端部の丸まりの低減が含まれる。
【0041】
切断角度の変動は、プラズマアークを用いて切断された被加工物の切り口を調べることにより評価される。切り口は水平軸に沿って見られ、切断角度の変動が存在しない場合、切り口は垂直軸に沿って90°の角度をなす。二次ガス40、50とプラズマアーク30との界面を改善するトーチ構造を選択することにより、切断角度の変動の低減を達成することができることが期待される。一実施形態では、二次ガス40、50の流動を制御することは、プラズマガス20内への二次ガス40、50のエントレインメントを低減する向きで二次ガス出口開口を通して、二次ガス40、50の流動を方向付けることを含む。
【0042】
制御手段はまた、プラズマアーク30内への二次ガス40、50のエントレインメントを低減する向き(例えば、角度)で二次ガス出口開口を通して、二次ガス40、50の流動を制御することができる。図1A及び2Aは、プラズマアークトーチシステムを動作させる方法を示す。方法は、電極12の端部から延びるプラズマアーク30を形成するプラズマガス20を流動させるステップを含む。プラズマアーク30は、ノズル14のプラズマ出口開口34を通って延びる。プラズマアーク30は長手方向軸31を有し、該プラズマアークは、プラズマアークの長手方向軸31の周囲を流動する。トーチ10は、二次ガス出口開口を含む二次ガス流路を有する。方法はまた、プラズマアーク30内への二次ガス40、50のエントレインメントを低減する向き(例えば、角度)で、二次ガス40、50に二次ガス出口開口を通って流れさせるステップを含む。一実施形態では、二次ガス40、50はヘリウムを含む。ここで図2Aを参照すると、二次ガス40は、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して角度αで二次ガス出口開口を出る。角度αは、約89°から約−90°まで、約0°から約89°まで、約0°から約80°まで、約0°から約75°まで、又は約0°から約50°までに及ぶ値を有する。同様に、二次ガス50は、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して角度βで二次ガス出口開口を出る。角度βは、約89°から約−90°まで、約0°から約89°まで、約0°から約80°まで、約0°から約75°まで、又は約0°から約50°までに及ぶ値を有する。プラズマアーク30の長手方向軸31に対して角度α、βの範囲内の1つ以上の値で1つの二次ガス流40、50を提供する多数のトーチ、トーチ先端、及び/又は出口開口の構成の任意のものが、本発明により検討される。
【0043】
ここで図1A及び2Bを参照すると、二次ガス40a、50aが、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して、約89°から約75°まで、更に詳細には約87°から約80°までに及ぶ値を有する角度で、更に詳細には約85°の角度で二次ガス出口開口を通って流れ、そこを出る。二次ガスが渦巻リングを通過した場合、例えば、二次ガス流は少なくとも3つの方向成分、即ち二次ガス旋回成分、二次ガス軸方向成分、及び二次ガス放射方向成分、を有する。そのような実施形態では、例えば、二次ガス流40a、50aとして示されている二次ガス流の角度は、二次ガス軸方向成分と二次ガス放射方向成分との組合せに関連する。二次ガス旋回成分は、図2Bに示す二次ガス流40a、50aには反映されず、この対流は本明細書に例示され記述される二次ガス流に付随する。
【0044】
図3は、プラズマアークトーチ10の先端100の実施形態を示す。そこでは、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して、約89°から約75°まで、更に詳細には約87°から約80°までに及ぶ値を有する角度で、更に詳細には約85°の角度で、二次ガス140a、150aが二次ガス出口開口96a、97aを出る。図3を更に参照すると、トーチ先端100の構成要素には、ノズル本体16、実質的に中空のノズル内側17a、ノズル外側19a、及びプラズマ出口開口34を含むノズル14が含まれる。ノズル14は、プラズマガスバイパスチャネルを画定することができる。一実施形態では、プラズマガスの一部が、プラズマガスバイパスチャネル経由でプラズマアークトーチシステムを出る。電極12はノズル14に接触し、電極12とノズル14との間に電気的短絡を作る。プラズマアーク30は、電極12とノズル14との間の空間を渡って引き寄せられる。プラズマアーク30はプラズマ出口開口34を出る。二次キャップ84aは、本体86aを有し、随意に、通気孔82を有する。二次ガスの全て又は一部を、該通気孔を通してトーチ先端100から排出することができる。二次キャップ84aは、ノズル外側19aと相互に間隔を空けた関係で取り付けられている。ノズル外側19a及び二次キャップ84aは、二次ガス流路92a、93aを形成する。二次ガス流路92a、93aは、二次ガス出口開口96a、97aを含む。二次ガス140aは、プラズマアーク30内への二次ガス140aのエントレインメントを低減する角度で二次ガス出口開口96aを出る。同様に、二次ガス150aは、プラズマアーク30内への二次ガス150aのエントレインメントを低減する角度で二次ガス出口開口97aを出る。一実施形態では、二次ガス150aは、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約85°の角度で二次ガス出口開口97aを出る。二次ガス出口開口96a、97aは、ノズル14と二次キャップ84aとの間の間隙(例えば、二次ガス流路92a、93a)が96a、97aを終端させ且つもはや画定されない場所のあたりに配置されている。二次ガスがプラズマアーク30に接触する前に、二次ガスが二次ガス出口開口96a、97aから流動する方向(例えば、角度)が測定される。
【0045】
図3では、二次ガス140a、150aは、図2Bの二次ガスと同様の態様で、プラズマアーク30の長手方向軸31に対し角度をなして、二次ガス出口開口を通って流れる。図3のトーチ先端10は非限定的な例であり、プラズマアーク30に対する二次ガス流40a、50a(図2B参照)の角度を実現する多数のトーチ、トーチ先端、及び/又は出口開口の構成の任意のものが、本発明により考えられる。図3のトーチ先端100の横断面が2つの二次ガス流路92a、93aを示しているが、任意の適切な数の二次ガス流路が使用されてもよい。各二次ガス流路の数及び/又は大きさは、特定の用途に基づいて選択されてもよい(例えば、二次ガス流路の数及び/又は大きさを選択する場合、トーチ、プラズマアーク、二次ガス、二次ガス温度、並びに/又は被加工物の大きさ及び材料を考慮することができる)。
【0046】
ここで図1A及び2Cを参照すると、二次ガス40b、50bが、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約0°の角度で二次ガス出口開口を通って流れる。つまり、二次ガス40b、50bは、プラズマアーク30に対して実質的に同軸である。二次ガス40b、50bは、プラズマアーク30に対して実質的に円柱状である。同軸の又は平行な二次ガス流40b、50bは、プラズマアーク内への二次ガス40b、50bのエントレインメントを低減及び/又は最小限にすることが期待される。
【0047】
ここで図1A及び2Dを参照すると、二次ガス流40cが、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約0°の角度でその二次ガス出口開口を通って流れ、二次ガス50cは、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約5°から約25°までに及ぶ値を有する角度でその二次ガス出口開口を通って流れる。
【0048】
図4は、プラズマアークトーチ10の先端100の実施形態を示す。そこでは、二次ガス流140c、150cが二次ガス流路92c、93cを通って流れ、それぞれ二次ガス出口開口96c、97cを出る。二次ガス140cは、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約0°の角度で出口開口96cを出て、二次ガス150cは、長手方向軸31に対して約5°から約25°までに及ぶ値を有する角度で出口開口97cを出る。図4を更に参照すると、トーチ先端100の構成要素には、ノズル14が含まれる。該ノズルは、ノズル本体16c、実質的に中空のノズル内側17c、ノズル外側19c、及びプラズマ出口開口34を含む。プラズマアーク30は、電極12とノズル14との間の空間を渡って引き寄せられる。プラズマアーク30はプラズマ出口開口34を出る。二次キャップ84cは本体86cを有する。二次キャップ84cは、相互に間隔を空けた関係でノズル外側19cに取り付けられており、二次ガス流路92c、93cを形成している。二次ガス流路92c、93cは二次ガス出口開口96c、97cを含む。二次ガス140cは、プラズマアーク30内への二次ガス140cのエントレインメントを低減する角度で二次ガス出口開口96cを出る。同様に、二次ガス150cは、プラズマアーク30内への二次ガス150cのエントレインメントを低減する角度で二次ガス出口開口97cを出る。一実施形態では、二次ガス150cは、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約5°から約25°までの角度で二次ガス出口開口97cを出て、二次ガス140cは、長手方向軸31に対して約0°の角度で二次ガス出口開口96cを出る。図4では、二次ガス140c、150cは、図2Dの二次ガスと同様の態様で、プラズマアーク30の長手方向軸31に対し角度をなして二次ガス出口開口を通って流れる。図4に示すトーチ先端10は非限定的な例であり、プラズマアーク30に対する二次ガス流40c、50c(図2D参照)の角度を実現する多数のトーチ、トーチ先端、及び/又は出口開口の構成の任意のものが、本発明により考えられる。
【0049】
ここで図1A及び2Eを参照すると、二次ガス流40dが、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約50°から約80°までの角度でその二次ガス出口開口を通って流れる。二次ガス50dは、長手方向軸31に対して約−50°から約−80°までの角度でその二次ガス出口開口を通って流れる。本実施形態に基づき、二次ガス流40dは、プラズマアーク30に対して収束する角度の流れを提供し、二次ガス流50dは、プラズマアーク30に対して発散する角度の流れを提供する。
【0050】
ここで図1A及び2Fを参照すると、二次ガス流40e、50eの各々が、プラズマアークの長手方向軸31に対して約40°から約50°までの角度でその各二次ガス出口開口を通って流れる。本実施形態に基づき、二次ガス流40e、50eの各々は、プラズマアーク30に対して収束する角度の流れを提供する。
【0051】
図5は、プラズマアークトーチ10の先端100の実施形態を示す。そこでは、二次ガス流140e、150eが二次ガス流路92e、93eを通って流れ、それぞれ二次ガス出口開口96e、97eを出る。二次ガス140eは、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約40°から約50°までの角度で出口開口96eを出て、二次ガス150eは、長手方向軸31に対して約40°から約50°までに及ぶ値を有する角度で出口開口97eを出る。
【0052】
図5を更に参照すると、トーチ先端100の構成要素にはノズル14が含まれる。該ノズルは、ノズル本体16e、実質的に中空のノズル内側17e、ノズル外側19e、及びプラズマ出口開口34を含む。プラズマアーク30は、電極12とノズル14との間の空間を渡って引き寄せられる。プラズマアーク30はプラズマ出口開口34を出る。二次キャップ84eは本体86eを有する。二次キャップ84eは、相互に間隔を空けた関係でノズル外側19eに取り付けられ、二次ガス流路92e、93eを形成する。二次ガス流路92e、93eは二次ガス出口開口96e、97eを含む。二次ガス140eは、プラズマアーク30内への二次ガス140eのエントレインメントを低減する角度で二次ガス出口開口96eを出る。同様に、二次ガス150eは、プラズマアーク30内への二次ガス150eのエントレインメントを低減する角度で二次ガス出口開口97eを出る。一実施形態では、二次ガス150eは、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約40°から約50°までに及ぶ値を有する角度で二次ガス出口開口97eを出て、二次ガス140eは、長手方向軸31に対して約40°から約50°までに及ぶ値を有する角度で二次ガス出口開口96eを出る。図5では、二次ガス140e、150eは、図2Fの二次ガスと同様の態様で、プラズマアーク30の長手方向軸31に対し角度をなして二次ガス出口開口96e、97eを通って流れる。図5に示すトーチ先端10は非限定的な例であり、プラズマアーク30に対する二次ガス流40e、50e(図2F参照)の角度を実現する多数のトーチ、トーチ先端、及び/又は出口開口の構成の任意のものが、本発明により考えられる。
【0053】
別の実施形態では、ノズル14は、実質的に中空のノズル内側及びノズル外側を含むことができる。随意に、ノズル外側は、1つ以上の溝を画定する。方法は、互いに間隔を空けた関係でノズル外側に取り付けられており、1つ以上の溝と二次キャップ(図示せず)との間に1つ以上の二次ガス流路を形成する二次キャップを含むことができる。例えば、一実施形態では、ノズル外側は1つ以上の溝を画定し、二次キャップがノズル外側にぴったり重なって取り付けられた場合、1つ以上の溝は1つ以上の二次ガス流路を形成する。
【0054】
更に別の実施形態では、二次ガス流路は、プラズマアークトーチのノズル内の1つ以上の流体通路を含む。例えば、1つ以上の流体通路は、二次ガス出口開口を出る二次ガスの少なくとも一部の流体路を画定することができる。1つ以上の流体通路は、プラズマアークに対して収束する角度の流れを、プラズマアークに対して発散する角度の流れを生成することができ、及び/又はプラズマアークに実質的に平行である。ノズル内の1つ以上の流体通路を使用する実施形態は、例えば、図1A、6A〜6F、及び7〜9を含む図に関して記載されている。プラズマアークトーチ、及びその中に流体通路が配置されているノズルは、本明細書に参照により援用されている、米国特許出願第60/680184号明細書及び同第11/432282号明細書に記載されている。
【0055】
ここで図1A及び6Aを参照すると、二次ガス流40f、50fの各々が二次ガス出口開口を通って流れ、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約0°の角度で二次ガス出口開口を出る。従って、二次ガス40f、50fは、プラズマアーク30に対して実質的に同軸である。更に、二次ガス40f、50fは、プラズマアーク30に対して実質的に円柱状である。更に詳細には、二次ガス流40f、50fの各々は二次ガス流路92f、93fを通って流れ、二次ガス出口開口を出る。同軸の又は平行な二次ガス40f、50fは、プラズマアーク30内への二次ガス40f、50fのエントレインメントを低減及び/又は最小限にすることが期待される。
【0056】
同様に、ここで図1A及び6Bを参照すると、二次ガス流40g、50gの各々が二次ガス出口開口を通って流れ、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約0°の角度で二次ガス出口開口を出る。従って、二次ガス流40g、50gの各々は、プラズマアーク30に対して実質的に同軸である。二次ガス40g、50gは、プラズマアーク30に対して実質的に円柱状である。更に詳細には、二次ガス流40g、50gの各々は二次ガス流路92g、93gを通って流れ、二次ガス出口開口を出る。二次ガス流40g、50gは、プラズマアーク30内への二次ガス40g、50gのエントレインメントを低減及び/又は最小限にすることが期待される。
【0057】
図7は、プラズマアークトーチ10の先端100の実施形態を示す。そこでは、二次ガス流140g、150gが二次ガス流路192g、193gを通って流れ、それぞれ二次ガス出口開口196g、197gを出る。二次ガス140gは、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約0°の角度で出口開口196gを出て、二次ガス流150gは、長手方向軸31に対して約0°の角度で出口開口197gを出る。図7を更に参照すると、トーチ先端100の構成要素にはノズル14が含まれる。該ノズルは、ノズル本体16g、ノズル本体16g内に配置されている流体通路192g、193g、及びプラズマ出口開口34を含む。該流体通路は、ノズル本体16g内部に配置されている二次ガス流路を提供する。プラズマアーク30はプラズマ出口開口34を出る。各二次ガス流路192g、193g(即ち、流体通路)は、二次ガス出口開口196g、197gを含む。二次ガス140gは、プラズマアーク30内への二次ガス140gのエントレインメントを低減する角度で二次ガス出口開口196gを出る。同様に、二次ガス150gは、プラズマアーク30内への二次ガス150gのエントレインメントを低減する角度で二次ガス出口開口197gを出る。一実施形態では、二次ガス150gは、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約0°の角度で二次ガス出口開口197gを出て、二次ガス140gは、長手方向軸31に対して約0°の角度で二次ガス出口開口196gを出る。流体通路192gは、流体通路193gの直径に対してより大きい直径を有する。図7のトーチ先端100の横断面が2つの流体通路192g、193gを示すが、任意の適切な数の流体通路又は二次ガス流路が使用されてもよい。各二次ガス流路即ち流体通路の数及び/又は大きさは、特定の用途に基づいて選択されてもよい。
【0058】
図7では、二次ガス140g、150gは、図2C及び6Bの二次ガスと同様の態様で、プラズマアーク30の長手方向軸31に対し角度をなして二次ガス出口開口196g、197gを通って流れる。図7に示すトーチ先端10は非限定的な例であり、プラズマアーク30に対する二次ガス流40b、50b(図2C参照)及び40g、50g(図6B参照)の角度を実現する多数のトーチ、トーチ先端、及び/又は出口開口の構成の任意のものが、本発明に基づいて使用されてもよい。
【0059】
ここで図1A及び6Cを参照すると、二次ガス流40h、50hの各々は、二次ガス流40h、50hの各々が約40°から約50°までの角度でプラズマアーク30の長手方向軸31と交差するように、二次ガス出口開口を通って流れる。二次ガス流40h、50hの各々は二次ガス流路92h、93hを通って流れ、二次ガス出口開口を出る。
【0060】
ここで図1A及び6Cを参照すると、二次ガス流40h、50hの各々は、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約40°から約50°までの角度で二次ガス出口開口を通って流れる。二次ガス流40h、50hの各々は二次ガス流路92h、93hを通って流れ、二次ガス出口開口を出る。本実施形態に基づき、二次ガス流40h、50hは、プラズマアーク30に対して収束する角度の流れを提供する。
【0061】
ここで図1A及び6Dを参照すると、二次ガス流40i、50iの各々が、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約−40°から約−50°までの角度で二次ガス出口開口を通って流れる。二次ガス流40h、50hの各々は二次ガス流路92i、93iを通って流れ、二次ガス出口開口を出る。本実施形態に基づき、二次ガス流40i、50iは、プラズマアーク30に対して発散する角度の流れを提供する。
【0062】
ここで図1A及び6Eを参照すると、二次ガス流40j、50jの各々が、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約80°から約90°までの角度で二次ガス出口開口を通って流れる。二次ガス流40j、50jの各々は二次ガス流路92j、93jを通って流れ、二次ガス出口開口を出る。
【0063】
ここで図1A及び6Fを参照すると、二次ガス流40k、50kの各々が、プラズマアーク30の長手方向軸31に対し角度をなして二次ガス出口開口を通って流れる。二次ガス流40kは、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約−40°から約−50°までの角度で二次ガス流路92kを出る。二次ガス流50kは、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約40°から約50°までの角度で二次ガス流路93kを出る。本実施形態に基づき、二次ガス流40kは、プラズマアーク30に対して発散する角度の流れを提供し、二次ガス流50kは、プラズマアーク30に対して収束する角度の流れを提供する。
【0064】
図8は、プラズマアークトーチ10の先端100の実施形態を示す。そこでは、二次ガス流140k、150kが二次ガス流路192k、193kを通って流れ、それぞれ二次ガス出口開口196k、197kを出る。二次ガス140kは、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約−40°から約−50°までの角度で出口開口196kを出る。二次ガス150kは、長手方向軸31に対して約40°から約50°までの角度で出口開口197kを出る。図8を更に参照すると、トーチ先端100の構成要素には、ノズル14が含まれる。該ノズルは、ノズル本体16k、ノズル本体16K内に配置されている流体通路192k、193k、及びプラズマ出口開口34を含む。該流体通路は、二次ガス流路192k、193kである。プラズマアーク30はプラズマ出口開口34を出る。各二次ガス流路192k、193k(即ち、流体通路)は、それぞれ二次ガス出口開口196k、197k含む。二次ガス140kは、プラズマアーク30内への二次ガス140kのエントレインメントを低減する角度で二次ガス出口開口196kを出る。同様に、二次ガス150kは、プラズマアーク30内への二次ガス150kのエントレインメントを低減する角度で二次ガス出口開口197kを出る。一実施形態では、二次ガス150kは、プラズマアーク30の長手方向軸31に対して約45°の角度で二次ガス出口開口197kを出て、二次ガス140kは、長手方向軸31に対して約−45°の角度で二次ガス出口開口196kを出る。
【0065】
流体通路192kの出口開口196kは、流体通路193kの出口開口197kの直径に対して類似した直径を有する。図8のトーチ先端100の横断面図は2つの流体通路192k、193kを示すが、任意の適切な数の流体通路即ち二次ガス流路が使用されてもよい。各二次ガス流路即ち流体通路の数及び/又は大きさは、特定の応用(例えば、被加工物70の材料など)に基づいて選択されてもよい。
【0066】
図8では、二次ガス140k、150kは、図6Fの二次ガスと同様の態様で、プラズマアーク30の長手方向軸31に対し角度をなして二次ガス出口開口196k、197kを通って流れる。図8に示すトーチ先端10は非限定的な例であり、プラズマアーク30に対する二次ガス流40k、50k(図6F参照)の角度を実現する多数のトーチ、トーチ先端、及び/又は出口開口の構成の任意のものが、本発明に基づいて使用されてもよい。
【0067】
図9は、プラズマアークトーチ10の先端100の実施形態を示す。そこでは、二次ガス流140L、150Lが、プラズマアーク30の長手方向軸31に対し角度をなして二次ガス出口開口196L、197Lを通って流れる。二次ガス140Lは、約20°から約30°までに及ぶ値を有する角度で出口開口196Lを出る。二次ガス150Lは、約0°から約−10°までに及ぶ値を有する角度で出口開口197Lを出る。図9を更に参照すると、トーチ先端100の構成要素にはノズル14が含まれる。該ノズルは、ノズル本体16L、ノズル外側19L、及びプラズマ出口開口34を含む。プラズマアーク30は、電極12とノズル14との間の空間を渡って引き寄せられる。プラズマアーク30はプラズマ出口開口34を出る。二次キャップ84Lは本体86Lを有する。二次キャップ84Lは、間隔を空けた関係ではなく外接する関係で、ノズル14に取り付けられている。図示の通り、二次キャップ84Lはノズル14の外側19Lと協働して、流体通路192L、193Lを形成する。流体通路は、それぞれ二次ガス出口開口196L、197Lを含む二次ガス流路192L、193Lを提供する。二次ガス140Lは、プラズマアーク30内への二次ガス140Lのエントレインメントを低減する角度で二次ガス出口開口196Lを出る。同様に、二次ガス150Lは、プラズマアーク30内への二次ガス150Lのエントレインメントを低減する角度で二次ガス出口開口197Lを出る。
【0068】
一実施形態では、二次ガスは、約0.01%から約99.9%までのヘリウム、約0.1%から50%までのヘリウム、約1%から約30%までのヘリウム、約5%から約30%までのヘリウム、約20%から約80%までのヘリウム、又は約30%から約65%までのヘリウムを有する。二次ガスは、例えば、酸化ガスを更に含むことができる。
【0069】
方法はまた、二次ガスの温度を制御するステップを含むことができる。例えば、二次ガスの温度は、二次ガスがプラズマアークに接触する前に制御される。一実施形態では、二次ガスの温度は、トーチにより生成されるプラズマアークの密度に実質的に類似した二次ガスのガス密度を実現するために選択される。例えば、外部加熱源又は外部冷却源により、二次ガスの温度を制御することができる。ここで図9Aを参照すると、プラズマアークトーチ10の外部にある温度コントローラ130が、二次ガス40がプラズマアークトーチ内に導入される前に、二次ガス40の温度を制御する。随意に、適切な二次ガス温度コントローラをプラズマアークトーチ内に組み込むことができる。
【0070】
別の態様では、ここで図1A及び9Aを参照すると、本発明は、プラズマアークトーチ10に関する。プラズマアークトーチは、第1の端部11、第2の端部11、及びトーチ本体の第1の端部にプラズマ出口開口34を有するトーチ本体を含むことができる。プラズマガスは、プラズマ出口開口34を通って延びるプラズマアーク30を形成する。二次ガス流路は、トーチ本体の第1の端部に二次ガス出口開口を含む。プラズマアークトーチは二次ガスを制御して、二次ガス出口開口を出る二次ガスのプラズマガス内へのエントレインメントを低減する二次ガスを提供する手段を含む。一実施形態では、制御する手段は二次ガス密度を制御して、プラズマ出口開口34の外側の位置における二次ガスとプラズマアークとのエントレインメントを低減する二次ガスを提供する。別の実施形態では、制御する手段は、二次ガス出口開口を通って流れる二次ガスの密度を制御し、二次ガス出口開口における二次ガスとプラズマガスとの間の密度差を低減する。制御する手段は二次ガス流の密度を制御することができ、二次ガス流がプラズマアークに接触する時、プラズマアークと二次ガス流との間の密度差を低減することができる。一実施形態では、二次ガスを制御する手段は、二次ガスの温度を制御するための温度コントローラである。或いは、又は更に、二次ガスを制御する手段は、ヘリウム、窒素、酸素、水素、アルゴン、メタン、及び二酸化炭素の群から選択される2つ以上の二次ガスを混合するための2つ以上のバルブを含む。二次ガスを制御する手段は、2つ以上の二次ガスの比率を制御するコントローラとすることができる。別の実施形態では、二次ガスを制御する手段は、プラズマガス内への二次ガスのエントレインメントを低減する向きで二次ガス出口開口を通して、二次ガスの流動を方向付けることを含む。例えば、二次ガスは、プラズマアーク内への二次ガスのエントレインメントを最小限にする角度で二次ガス出口開口を通って流れる。
【0071】
プラズマアークトーチ10のトーチ本体は、電源120に接続することができ、プラズマアークトーチシステムを提供することができる。プラズマアーク30は、切り口71で被加工物70を貫通して切断する。前述のプラズマアークトーチ及びトーチ先端の任意のものを、図9Aのプラズマアークトーチシステムに使用することができる。開示したシステム、装置、及び方法の有効性を検査するために、一連の実験を実施した。それを以下に詳細に説明する。
【0072】
(実施例1)
ヘリウムを含む二次ガス混合物の導入が、プラズマアークトーチの切断品質を向上させることが、実験結果により示されている。切断品質は、表面粗さ、トップドロス、及び上端部の丸まりにより測定され、二次ガスがヘリウムを含み、且つヘリウムを含む二次ガスがプラズマアーク内への二次ガスのエントレインメントを低減する角度で流動する場合、これらの評価指標は全て低減する。
【0073】
酸素、窒素、アルゴン、及びヘリウムの種々の二次ガス混合物と共にプラズマアークトーチを使用して、3/8インチの軟鋼を切断する実験を実施した。プラズマは極めて低い密度及び高い熱伝導性を有する。アルゴン及びヘリウムの両者は化学的不活性ガスであり、被加工物の表面と化学反応することは予想されない。しかし、ヘリウム及びアルゴンは、異なる密度値、熱伝導率値、及び原子量を有する。ヘリウムは、アルゴンより大きな熱伝導性及びより低い密度を有する。詳細には、ヘリウムは、1気圧で273.2ケルビンの温度で1.411mW/(cmK)の熱伝導率を有し、ヘリウムは、0℃で0.17847g/Lの密度を有する。アルゴンは、1気圧で270ケルビンの温度で0.1619mW/(cmK)の熱伝導率を有し、アルゴンは、室温(約25℃)で1.7824g/Lの密度を有する。理論に基づくものではないが、ここで開示する実験により証明されると考えられる通り、ヘリウム及びプラズマの両者は比較的低い密度値を有するので、低密度のヘリウムガスを含む二次ガス混合物は、プラズマと二次ガスとの間の混合率を低減すると考えられる。更に、ヘリウムは高い熱伝導性を有するので、プラズマが被加工物表面を切断する場合、熱伝達を増大する。
【0074】
実験には、同軸二次キャップ又は同軸シールド構造を備えるプラズマアークトーチを使用し、詳細には、実験は、通気孔付きノズル及び同軸シールドを用いて設計されているハイパフォーマンス・トーチ(HyPerformance torch)、並びに消耗部品を備えるHypertherm HD4070システム(ニューハンプシャー州ハノーバー)を使用して実施された。図10は、実験に使用されるプラズマアークトーチ200の概略図示す。二次ガスは、二次ガス渦巻リング250により旋回させられる。二次ガスが渦巻リング250を通過した後、二次ガス流は、少なくとも3つの方向成分、即ち二次ガス旋回成分、二次ガス軸方向成分、及び二次ガス放射方向成分、を有する。同軸シールド構造240は、プラズマアーク内への二次ガスのエントレインメントを低減する角度で、二次ガス(例えば、二次ガス軸方向成分と二次ガス放射方向成分との組合せ)を提供する(例えば、同軸シールド構造は、プラズマアークの長手方向軸に対して約0°の角度で、二次ガスを提供する)。更に、同軸シールド構造240は、プラズマアーク内への二次ガスのエントレインメントを低減及び/又は最小限にする角度及び/又は相対速度で、プラズマアーク及び二次ガスを提供する。
【0075】
実験では、3/8インチ厚さの軟鋼の3平方インチのサンプルを、通気孔付きノズル230及び同軸シールド240を用いて設計されているハイパフォーマンス・トーチ200、並びに消耗部品を備えるHypertherm HD4070システム(ニューハンプシャー州ハノーバー)を使用して切断した。全ての実験に、1分当たり150インチの切断速度、及び0.130インチのトーチ隔離器が用いられた。HD4070ガスコンソールのプラズマガス設定は、プラズマプリフロー(plasma pre−flow)に関しては12%の酸素及び35%の窒素、プラズマ切断流に関しては72%の酸素であった。HD4070ソフトウェアを、二次ガスのプリフローバルブ及び切断流バルブの両方を作動するように修正して、プラズマアークトーチが動作している場合にプリフローバルブ及び切断流バルブの両方が動作しているようにした。したがって、プリフロー及び切断流は共に、切断中にプラズマアークトーチ200が動作している場合、二次ガスの全体的な流速に影響を及ぼす。下の表1は、実施された7つのテストに関するガスコンソールの二次ガス設定を示す。
【0076】
【表1】

【0077】
テスト1の切断サンプルは、鋭い上端を有しドロスを有さなかったが、過剰な湾曲と共に大きな切断角度を有していた。テスト2の切断サンプルは、小さい角度及び極めて少量のドロスと共に鋭い上縁を有していた。テスト3の切断サンプルは、鋭い上縁を有し、3つの側面全てにドロスを有していた。テスト1〜3の結果は、O/Nシールドガス混合物に関しては、少量の窒素が切断角度及び端部の湾曲を低減することができ、窒素濃度を上昇させるとドロスの程度が増大することを示す。
【0078】
テスト4では、二次ガス・プリフロー混合物にアルゴンを使用した。テスト4の切断サンプルは、切断角度が大きく、トップドロスはないものの、切り口の底部にボトムドロスがしっかりと付着して固体状のリップが生じており、非常に質の悪いものであった。切断面は、切り口の上部で酸化していたが、切り口の底部は酸化層を有さなかった。
【0079】
テスト5、6及び7では、二次ガス混合物にヘリウムが使用された。3つのテストは全て、均一な酸化層を有する極めて滑らかな切断面、無トップドロス、極めて鋭い上縁部、及びある程度の縁部湾曲を示した。また3つのサンプルは全て、底面上に緩く付着したある程度のドロスビードを有した。
【0080】
図11は、テスト7、4、2及び1において作り出されたサンプルの切り口示す。テスト7の結果が望ましい。テスト結果は、シールドガス組成と作り出された切断サンプルの品質との間の強い相関関係を説明する。酸素中の少量の窒素が切断角度及び縁部の湾曲を低減する(表1及び図11のテスト2参照)。
【0081】
酸素及び不活性ガスであるヘリウムの二次/シールドガス混合物を用いて作り出された切り口は、極めて滑らかな切り口及び極めて鋭い上端部を有する切断サンプルを作り出す(表1及び図11のテスト7参照)。しかし、窒素を別の不活性ガスであるアルゴンに置き換えると(表1及び図11のテスト4参照)、切り口の利点をもたらさない。理論に基づくものではないが、ヘリウムを含む二次ガスに対するアルゴンを含む二次ガスをでの切断利点の欠如という違いは、ヘリウムに対するアルゴンのより高い密度及びより低い熱伝導性に起因すると考えられる。ヘリウムは特に効果的なシールドガス添加物であると考えられる。プラズマと同様の比較的低いヘリウム密度、ヘリウムの高い熱伝導性、及び不活性ガスであるヘリウムの化学安定性が、ヘリウムを特に効果的なシールドガス添加物とすることが分かる。プラズマアークトーチシステムにおいてプラズマガス内への二次ガスのエントレインメントを低減する角度でヘリウムを含む二次ガスを流動させることが、切断品質の向上をもたらす。該向上は、窒素及び/又はアルゴンを含む二次ガスが使用された場合には達成されないものである。
【0082】
ヘリウムの添加により、任意の材料を切断するようになされた広範なプラズマ切断プロセスの切断性能が向上し得ると考えられる。更に、プラズマアーク内への二次ガスのエントレインメントを低減する角度で、ヘリウムを含有する二次ガスを添加することによっても、切断品質が向上し得る。
【0083】
更に、二次ガス混合物はまた、酸素、窒素、及びヘリウムの混合物を含むことができる。窒素、ヘリウム、及び酸素の二次ガス混合物は、ドロスの形成を制限し、二次ガスがヘリウム及び酸素だけの混合物を含む場合に生成された切断サンプル上に観察された縁部湾曲を解消する可能性があることが予想される。
【0084】
(実施例2)
第2の実験では、ヘリウムを含む二次ガス混合物を導入することによりプラズマアークトーチによる軟鋼内への穿孔品質が向上することを、結果が証明している。プラズマアークトーチにより金属材料内に開かれた貫通孔は、貫通孔の一方の端部で先細りになる可能性がある。貫通孔は、ボルトを材料に固定することを可能にするために金属材料に作られる。貫通孔における先細りは、シリンダ/切断クリアランスにおける困難を含む問題、及び材料の貫通孔を通したボルトの取り付けの困難を含む領域における問題を生じる。また、それを貫通して貫通孔が開けられる材料の厚さが、貫通孔の品質に影響を及ぼす。貫通孔における先細りは、実質的に直線の切り口が作られる用途における上縁部の丸まりに類似している。貫通孔の品質における不完全性は、貫通孔が小さい直径を有する場合に増大する。何故なら、例えば、先細りの影響は、貫通孔が小さい直径を有する場合、貫通孔の有用性(例えば、貫通孔を通してボルトを取り付ける能力)に影響を及ぼす可能性があるからである。例えば、貫通孔の直径対長さの比が1対1比に近ずくにつれて、貫通孔の不完全性は増大する。
【0085】
二次ガスとしての空気を用いて、且つ酸素、窒素、及びヘリウムの二次ガス混合物を用いて、プラズマアークトーチを使用して、1/4インチの軟鋼プレートに貫通孔が開けられる。実験では、HPRトーチ及びHPR80A軟鋼消耗部品を備える、図1Cに示すシールドガス混合システムに類似したプロトタイプのシールドガス混合システムを備えるHypertherm HPR260システム(ニューハンプシャー州ハノーバー)を使用して、1/4インチ厚さの軟鋼のサンプルが切断される。本実験では、1分当たり50インチの切断速度及び0.080インチのトーチ隔離絶縁器を使用した。
【0086】
図12A〜12Cは、1/4インチの軟鋼材料310、並びに材料310を貫通して開けられた貫通孔322及び324の概略図を示す。貫通孔322は、前述のプラズマアークトーチを用いて開けられている。トーチを通って流れるプラズマガスは酸素を含有し、二次ガスは空気である。ここで図12Cを参照すると、貫通孔322の上部322aは、0.336インチの平均直径を有し、貫通孔322の底部322bは、0.250インチの平均直径を有する。
【0087】
ここで図12A〜12Cを参照すると、貫通孔324もまた、前述のプラズマアークトーチを用いて開けられている。トーチを通って流れるプラズマガスは酸素を含有し、二次ガスは、50%のヘリウムガス、45%の酸素ガス、及び5%の窒素ガスの混合物である。ここで図12Cを参照すると、貫通孔324の上部334aは、0.248インチの平均直径を有し、貫通孔324の底部334bは、0.250インチの平均直径を有する。
【0088】
ヘリウムを含む二次ガス混合物を使用する貫通孔324は、ヘリウムを使用しない貫通孔322と比較して先細りを低減している。貫通孔322と比較した貫通孔324の切断品質における向上は、貫通孔322を開けるために使用されている二次ガス混合物(即ち、空気)と比較しての、貫通孔324を開けるために使用されている二次ガス混合物(即ち、50%のヘリウムガス、45%の酸素ガス、及び5%の窒素ガス)に起因する、エントレインメントの悪影響の低減を示す。更に、貫通孔324を開けるために使用されている二次ガス混合物は、周囲条件における窒素ガス密度より低い周囲条件における密度を有する。更に詳細には、貫通孔324を開けるために使用されている二次ガスは、周囲条件における窒素密度の約70%より低い周囲条件における密度を有する。更に、貫通孔324を開けるために使用されている、プラズマアークを形成するプラズマガス内への二次ガスのエントレインメントを低減する二次ガス密度を有する制御された二次ガス流は、貫通孔322を開けるために使用されている二次ガス流よりも更に一貫した穿孔を提供する。
【0089】
実験データに基づき、孔の先細りを低減する上縁部の丸まりの低減は、不活性ガス即ちヘリウムの使用に因ることが分かる。エントレインメントの低減により達成される向上は、二次ガスのより低い密度に起因すると考えられる。二次ガスの低密度は、本実験では、比較的低い密度を有するガスであるヘリウムを含む混合物を使用することにより実現された。
【0090】
本発明を、特に、特定の好適な実施形態に関して示し記載したが、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、形態及び詳細における種々の変更がその中でなされてもよいことが、当業者により理解されるべきである。当業者であれば、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、本明細書に記載されていることの変形、変更、及び他の実施を思いつくであろう。従って、本発明は、先行する例示的記載によってのみ定められるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1A】図1Aは、プラズマアークトーチの横断面図である。
【図1B】図1Bは、プラズマガスコントローラ及び二次ガスコントローラを有するプラズマアークトーチの横断面図である。
【図1C】図1Cは、コントローラの実施形態である。
【図2】図2A〜2Fは、図1Aに示すプラズマアークに対して一定の角度範囲で流動する1つ以上の二次ガス流の図である。
【図3】図3は、1つ以上の二次ガス流それぞれがプラズマアークに対し角度をなして流動している状態での、プラズマアークトーチ先端の横断面図である。
【図4】図4は、1つ以上の二次ガス流それぞれがプラズマアークに対し角度をなして流動している状態での、プラズマアークトーチ先端の横断面図である。
【図5】図5は、1つ以上の二次ガス流それぞれがプラズマアークに対し角度をなして流動している状態での、プラズマアークトーチ先端の横断面図である。
【図6】図6A〜6Fは、それぞれが図1Aに示すプラズマアークに対し角度をなして、1つ以上の流体通路を通って流れる1つ以上の二次ガス流の図である。
【図7】図7は、1つ以上の流体通路がノズル内部に配置されており、且つ1つ以上の二次ガス流それぞれがプラズマアークに対し角度をなして流体通路の出口開口を出ている、プラズマアークトーチ先端の横断面図である。
【図8】図8は、1つ以上の流体通路がノズル内部に配置されており、且つ1つ以上の二次ガス流それぞれがプラズマアークに対し角度をなして流体通路の出口開口を出ている、プラズマアークトーチ先端の横断面図である。
【図9】図9は、ノズル内部に配置されている1つ以上の流体通路の一部を形成する外接構成要素、及びそれぞれがプラズマアークに対し角度をなして流体通路の出口開口を出ている1つ以上の二次ガス流を含む、プラズマアークトーチ先端の横断面図である。
【図9A】図9Aは,プラズマアークトーチシステムの概略図である。
【図10】図10は、プラズマアークトーチの概略図を示す。
【図11】図11は、被加工物のプラズマアーク切断サンプルの切り口を示す。
【図12】図12A〜12Cは、被加工物材料を貫通して開けられた貫通孔を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマアークトーチ本体の端部において二次ガス流路出口開口を出る二次ガスを制御する方法であって、
該二次ガスの流動を制御して、プラズマアークを形成するプラズマガス内への該二次ガスのエントレインメントを低減する二次ガス密度を提供するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記二次ガスは少なくとも約20%のヘリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
周囲条件における前記二次ガスの前記密度は、周囲条件における窒素ガス密度より低い、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
周囲条件における前記二次ガスの前記密度は、周囲条件における前記窒素密度の約70%より低い、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記二次ガスを制御するステップは、前記二次ガスの温度を制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記二次ガスの前記流動を制御するステップは、前記プラズマガス内への前記二次ガスのエントレインメントを最小限にする二次ガス密度を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1の端部及び第2の端部を有するトーチ本体と、
該トーチ本体の該第1の端部におけるプラズマ出口開口であって、プラズマアークが該プラズマ出口開口から噴出する、プラズマ出口開口と、
該トーチ本体の該第1の端部における二次ガス出口開口を含む二次ガス流路と、
該二次ガスを制御して、該プラズマ出口開口の外側の位置における該二次ガスと該プラズマアークとのエントレインメントを低減する制御手段と
を備えている、プラズマアークトーチシステム。
【請求項8】
前記制御手段は温度コントローラを備えている、請求項7に記載のプラズマアークトーチシステム。
【請求項9】
前記制御手段は、2つ以上のガスを混合して、前記プラズマ出口開口の外側の位置における前記二次ガスと前記プラズマアークとのエントレインメントを低減する二次ガス密度を提供する流動制御モジュールを備えている、請求項7に記載のプラズマアークトーチシステム。
【請求項10】
前記二次ガスは、前記プラズマアークに対して実質的に円柱状である、請求項7に記載のプラズマアークトーチシステム。
【請求項11】
前記二次ガス流路は、ノズル内の1つ以上の流体通路を備えている、請求項7に記載のプラズマアークトーチシステム。
【請求項12】
前記制御手段は、少なくとも20%のヘリウムを有する二次ガスを提供する流動制御モジュールを含む、請求項7に記載のプラズマアークトーチシステム。
【請求項13】
前記プラズマ出口開口は、前記トーチ本体内でプラズマガスが通過する最小直径である、請求項7に記載のプラズマアークトーチシステム。
【請求項14】
前記二次ガス流路は、ノズル内の1つ以上の流体通路を備えている、請求項7に記載のプラズマアークトーチシステム。
【請求項15】
前記1つ以上の流体通路は、前記二次ガス出口開口を出る前記二次ガスの少なくとも一部の通路を画定し、該通路は前記プラズマアークに実質的に平行である、請求項14に記載のプラズマアークトーチシステム。
【請求項16】
プラズマ出口開口を含むノズルを有し、かつ二次ガス出口開口を含む二次ガス流路を有するプラズマアークトーチを動作させる方法であって、
プラズマガスを流動させて、該プラズマ出口開口を通って延びるプラズマアークを形成するステップと、
該二次ガス出口開口を通って流れる二次ガスの密度を制御して、該二次ガス出口開口における該二次ガスと該プラズマガスとの間の密度差を低減するステップと
を含む、方法。
【請求項17】
前記二次ガスは2つ以上のガスの混合物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記二次ガスは少なくとも約20%のヘリウムを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
周囲条件における前記二次ガスの前記密度は、周囲条件における窒素ガス密度より低い、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
周囲条件における前記二次ガスの前記密度は、周囲条件における前記窒素ガス密度の70%より低い、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記二次ガスの前記密度を制御するステップは、前記二次ガスの温度を制御することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記二次ガスは、前記プラズマガスに対して実質的に同軸である、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記二次ガスの前記密度を制御するステップは、該二次ガスを前記二次ガス出口開口を通して流し、該二次ガス出口開口において該二次ガスと前記プラズマガスとの間の密度差を最小限にすることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
プラズマアークトーチを用いて材料を切断するシステムであって、
プラズマガス流からプラズマアークを生成するトーチであって、該プラズマアークはプラズマ出口開口を通って延び、該トーチは該プラズマアークと接触する二次ガス流を有する、トーチと、
該二次ガス流の密度を制御して、該二次ガス流が該プラズマアークに接触するときに、該プラズマアークと該二次ガス流との間の密度差を低減するコントローラと
を備えている、システム。
【請求項25】
前記二次ガス流は、前記プラズマアークに実質的に平行である、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記コントローラは、前記トーチへの前記プラズマガス流を制御する、請求項24に記載のシステム。
【請求項27】
前記コントローラは加熱器を備えている、請求項24に記載のシステム。
【請求項28】
前記コントローラは前記二次ガス流の温度を維持管理する、請求項24に記載のシステム。
【請求項29】
前記コントローラは、少なくとも約20%のヘリウムを有する二次ガス流を提供する、請求項24に記載のシステム。
【請求項30】
前記材料はアルミニウム又はステンレス鋼を含み、前記二次ガスは窒素及び少なくとも約20%のヘリウムを含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項31】
プラズマアークを用いて材料を切断するシステムであって、
プラズマガス流からプラズマアークを生成するトーチであって、該トーチの端部あたりの位置で該プラズマアークと接触する二次ガス流を有するトーチと、
該二次ガス流が該プラズマアークの少なくとも一部に接触する前に、該二次ガス流の温度を制御して、該二次ガス流と該プラズマアークとの間のエントレインメントを低減する加熱器と
を備えている、システム。
【請求項32】
前記二次ガス流は前記プラズマアークに対して実質的に同軸である、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記加熱器は前記トーチの外部にある、請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
プラズマアークトーチを動作させる方法であって、
プラズマアークトーチにおいてプラズマガスを用いてプラズマ切断アークを生成するステップと、
該プラズマアークトーチの端部あたりの位置で、二次ガスを該プラズマガスに接触させるステップと、
該二次ガスを制御して、該プラズマガスの密度と該二次ガスの密度との間の差を低減するステップであって、周囲条件における該二次ガス密度は周囲条件における窒素ガス密度より低く、該二次ガスは少なくとも20%の不活性ガスを含む、ステップと
を含む、方法。
【請求項35】
前記不活性ガスはヘリウムである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
周囲条件における前記二次ガス密度は、周囲条件における前記窒素密度の約70%より低い、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記二次ガスは、約30%と約60%の間のヘリウムを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記二次ガスを制御するステップは、該二次ガスの温度を制御することを含む、請求項34に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図9A】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【公表番号】特表2009−524527(P2009−524527A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552486(P2008−552486)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/002413
【国際公開番号】WO2007/089709
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(500036037)ハイパーサーム インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】