説明

プラズマ源、処理装置及び処理方法

【課題】プラズマ中に不要なガスが混入しないようにすることにある。
【解決手段】プラズマを発生するプラズマ発生部と、液体カーテンを形成する液体供給部を備え、プラズマを液体カーテンで覆う、プラズマ源にあり、又は、プラズマを液体カーテンで覆う液体供給部と、液体供給部に対向して配置され、被処理物を保持する保持部と、を備え、液体カーテンで覆われたプラズマで被処理物を処理する、処理装置にあり、又は、液体カーテンを形成し、液体カーテン内に液体又はミストを供給し、液体カーテン内にプラズマを形成し、被処理物を処理する、処理方法にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを発生するプラズマ源と、プラズマを利用した被処理物の処理装置とその処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマ源を冷却する場合、冷却水や冷却ガスを循環させる方法と、例えば図10(A)のように冷却ガス70を噴出する方法がある。冷却ガス70は、プラズマ発生部16の前方に移送されたプラズマ30を包囲している。図10(B)のようにプラズマ30の前面に処理したい被処理物44を配置した場合、冷却ガス70を噴出すると、冷却ガス70は、広がった形状となり、その中にプラズマ30が配置される。この場合、冷却ガス70は、乱流や拡散のためプラズマ30中に混合する。また、冷却ガス70を噴出しない場合もしくは別の方向に噴出する場合には、周囲の大気ガスがプラズマ30中に混入し、プラズマ30の純度を低下させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
(1)本発明は、プラズマ中に周囲の不要なガスが混入しないようにすることにある。
(2)また、本発明は、不要なガスの混入の少ないプラズマで被処理物を処理する装置と方法を提供することにある。
(3)また、本発明は、プラズマでドライ処理をし、液体でウエット処理をする処理装置と処理方法を提供することにある。
(4)また、本発明は、プラズマとガスと液体とミストの全てもしくは2種もしくは3種の相互作用を利用する方法を提供することにある。
(5)また、本発明は、プラズマとガスと液体とミストを同時もしくは交互に利用する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(1)本発明は、プラズマを発生するプラズマ発生部と、液体カーテンを形成する液体供給部を備え、プラズマを液体カーテンで覆う、プラズマ源にある。
(2)また、本発明は、プラズマを液体カーテンで覆う液体供給部と、液体供給部に対向して配置され、被処理物を保持する保持部と、を備え、液体カーテンで覆われたプラズマで被処理物を処理する、処理装置にある。
(3)また、本発明は、液体カーテンを形成し、液体カーテン内に液体又はミストを供給し、液体カーテン内にプラズマを形成する、処理方法にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
(プラズマ源)
プラズマ源は、アルゴン、ヘリウムなどのガスをプラズマ発生部でプラズマにするものである。プラズマ源は、プラズマ中に移送した試料の被処理物を分析したり、半導体ウエハなどの被処理物の表面を処理したり、又は、PCB、フロンなどの被処理物の分解処理などに使用される。プラズマ源は、プラズマが発生でき、プラズマが利用できるものであればどのような構造でも良い。プラズマ源10は、例えば図1に示すようにトーチ状の構造であり、キャリアガス筒体20、プラズマガス筒体12、液体用筒体22を備え、プラズマガス筒体12の内部にプラズマ発生部16を有している。キャリアガス筒体20は、分析用の試料や表面処理等の材料や処理物質などの試料をプラズマの中に移送するものである。これらの試料を移送するキャリアガスは、プラズマガスと同一もしくは異なったガスを使用することができる。また、キャリアガスを使用せずに、液体やミスト(霧)や気体状の物質をプラズマ中に移送することもできる。液体状の物質の場合は、霧吹き等によってエアロゾル状にして移送しても、あらかじめ気化して移送しても、液体のまま移送しても構わない。プラズマ源10は、低気圧から大気圧以上の高気圧で利用できるプラズマを作成できる。なお、本発明では、プラズマとは、大部分が電離している状態でも、或いは、大部分が中性粒子で、一部が電離している状態をも含む。また、キャリアガス筒体20、プラズマガス筒体12、液体用筒体22は、石英ガラスやセラミックスなどの材料で作製することができる。また、プラズマガス及びキャリアガスには、アルゴン、ヘリウムなどの希ガスのほかに、酸素、水素、窒素、メタン、フロン、空気、水蒸気など各種の気体若しくはこれらの混合物を用いることができる。
【0006】
(プラズマガス筒体)
プラズマガス筒体12は、例えば、キャリアガス筒体20の外周に配置され、一部にプラズマ発生部16を形成する。プラズマガス筒体12は、円筒状の場合、キャリアガス筒体20と同心円状に配置される。プラズマガス筒体12は、プラズマガスをプラズマ発生部16に移送する。プラズマガスは、プラズマ発生部16で円筒の内壁面に沿って回転するように移送すると良い。そのために、プラズマガスを導入するプラズマガス導入管14を図1に示すようにプラズマガス筒体12の円周の接線方向に配置する。プラズマガスの流速をプラズマ発生部16の導入部で速めるために、キャリアガス筒体20とプラズマガス筒体12の間隙を狭くする。そのために、キャリアガス筒体20のプラズマ発生部16側の部分を太径にするか、又は、図示していないがキャリアガス筒体12の外周を全体に太径にしてもよい。プラズマガス筒体12は、開口部18を備えている。開口部18は、プラズマ発生部16の端に設けられる。プラズマは、開口部18からプラズマ発生部16の外部に送り出される。
【0007】
(プラズマ発生部)
プラズマ発生部16は、例えば、プラズマガス筒体12の内部に形成され、一端がキャリアガス筒体20の端部であり、他端は、キャリアガス筒体20の開口部18である。プラズマは、開口部18から前方に排出される。プラズマガス筒体12を液体により冷却すると、プラズマガス筒体12の溶融を回避できるので、プラズマ発生部16を長くすることができる。これにより、サンプリング深さを長く形成でき、分析感度を高めることができ、また、質量分析においては、分析感度を下げる原因となっている二次放電の影響を小さくすることができる。なお、プラズマ発生部16は、本実施の形態では、プラズマガス筒体12の内部の発生室を示しているが、室に限らず、プラズマを発生できれば、どのような空間でもよい。その場合、開口部18は、発生したプラズマがその場所から移動する最初の箇所とする。
【0008】
(液体用筒体)
液体用筒体22は、例えば、液体をプラズマガス筒体12の周囲に供給するものである。液体用筒体22は、プラズマガス筒体12の外周に配置される。液体用筒体22は、円筒状の場合、プラズマガス筒体12に同心円状に配置される。液体は、液体導入管24から注入され、液体用筒体22とプラズマガス筒体12との間の空間を流れ、プラズマガス筒体12を冷却することができる。液体用筒体22は、プラズマガス筒体12を覆うように配置される。液体は、プラズマガス筒体12の外周を回転するように移送されると良い。そのために、液体導入管24は、図1に示すように液体用筒体22の円周の接線方向に配置される。液体導入管24とプラズマガス導入管14のなす角は、適当な角度を設けて、液体導入管24とプラズマガス導入管14が接近することなく、接続する配管の接続を容易にするとよい。液体の種類は、プラズマガス筒体12を効率よく冷却でき、プラズマの安定を乱さないものであればよく、取り扱いが容易で、安価なものとしては水が適している。更には、液体として洗浄用化学薬品を用いることも出来る。洗浄用化学薬品とは、酸、アルカリ、アルコール、フロン系の薬品や水溶液のことを指す。または、必要に応じて、気液2相のガスと液体の混合体を用いても良い。
【0009】
(液体供給部)
液体供給部32は、液体の膜である液体カーテン34を形成するものである。液体カーテン34は、プラズマ発生部16で形成されたプラズマを覆うものである。液体カーテン34は、一種のチャンバとすることができる。プラズマは、液体カーテン34内に形成することもできる。液体供給部32は、例えば、液体用筒体22を利用することができる。液体供給部32は、液体用筒体22の端部、即ち、プラズマ発生部16の開口部18付近に排出口26を有している。排出口26は、液体が液体用筒体22から前方に噴出できる構造を有している。液体は、開口部18の軸の周りを回転しながら排出口26から排出されると良い。なお、液体供給部32は、液体カーテン34でプラズマを覆う構造であればよいので、液体用筒体22を使用しない構成を取ることも可能である。液体供給部32は、例えば、プラズマの周囲に液体カーテン34を形成すると、プラズマ中に不要なガスの混入を防ぎ、プラズマの純度の低下を防止できる。なお、プラズマを覆うとは、プラズマの周囲全部を包囲する場合も、プラズマの周囲の一部を覆う場合もある。このようにプラズマを覆うことにより、外部の不要なガスが、プラズマ中に入り込むのを防止し、不要なガスの混合割合を低下することができる。また、液体カーテン34として、場合によっては、霧やミストの膜で形成する場合も含めることができる。これにより、不要なガスの混合割合を低下することができる。
【0010】
図2は、対向部材36がプラズマ発生部16に対向して配置されたプラズマ源10の一部を示している。プラズマ30は、一部、プラズマ発生部16の外部の前方に存在する。液体供給部32は、対向部材36に向けて液体を噴出する。液体供給部32は、プラズマ発生部16の開口部18の周囲から液体を噴出して、プラズマ30の周囲に液体カーテン34を形成する。液体カーテン34と対向部材36により、プラズマ30を外気から遮蔽し、プラズマ30中に不要なガスが混入するのを防止できる。液体供給部32は、2種類以上の薬品を用いる場合には、液体供給部32が2重構造となっていてもよいし、このためには、液体導入管24が2箇所以上有っても構わない。また、液体供給部内で、2種類以上の薬品がミキシングできるようになっていてもよい。
【0011】
(プラズマガス筒体の開口部と液体用筒体の排出口の形状)
排出口26の形状は、液体カーテン34の形状やプラズマ30の安定性に重要な役割を演じている。図1のプラズマガス筒体12の端部と液体用筒体22の端部は、中心軸の同一位置で切断された形状になっている。これにより、液体は、軸方向に向けて外部に排出される。液体を液体用筒体22の内周に沿って回転すると、排出口26から排出される液体は、筒体の中心軸の回りの回転による遠心力、液体の表面張力、プラズマガスの圧力、外気圧など力のバランスにより、液体カーテン34の形状が決まるものと考えられる。液体用筒体22における液体の種類、流量、流速、回転速度、排出口の形状などにより、液体カーテン34の形状を求めることができる。
【0012】
プラズマガス筒体12と液体用筒体22の筒体端部は、用途に応じて種々の形状を取ることができる。図3は、プラズマトーチの液体供給部32の端部の構造を示している。液体供給部32の端部は、プラズマガス筒体12と液体用筒体22の筒体端部から構成される。液体供給部32の端部は、例えば図3(A)のように液体用筒体22の端部がプラズマガス筒体12の端部より突出するように形成することができる。この構成により、液体カーテン34は、軸方向に沿って形成される。又は、図3(B)のようにプラズマガス筒体12の端部が液体用筒体22の端部より突出し、外周方向に傾斜しながら曲がるように形成することができる。又は、図3(C)のように液体用筒体22の端部とプラズマガス筒体12の端部が共に外周方向に傾斜しながら曲がるように形成することができる。図3(D)のように液体用筒体22の端部はプラズマガス筒体12の端部より突出し、内周方向に直角に曲がるように形成することができる。又は、図3(E)のようにプラズマガス筒体12の端部が液体用筒体22の端部より突出するように形成することができる。又は、図3(F)のように液体用筒体22の端部がプラズマガス筒体12の端部より突出し、液体用筒体22の端部が内周方向に傾斜しながら曲がるように形成することができる。又は、図3(G)のように液体用筒体22の端部とプラズマガス筒体12の端部が共に外周方向に傾斜しながら曲がり、更に、液体用筒体22の端部とプラズマガス筒体12の端部が軸平行に突出するように形成することができる。なお、図3(B)において、プラズマガス筒体12の端部は、ひさしと見ることができる。ひさしは、筒体端部から外側に広がるロート状の形状にする。広がる角度は、プラズマの安定性を乱すことなく、液体をプラズマから離す方向に排出する。同様に、他の図3の突出部もひさしと見ることができる。このようにプラズマガス筒体12と液体用筒体22の筒体端部の形状を各種の形状にすることにより、液体カーテン34の形状を任意の形状に形成することができる
【0013】
(プラズマ発生装置)
プラズマ発生装置28は、プラズマガスをプラズマ状態にするものである。プラズマ発生装置28は、例えば、液体用筒体22の外周にロードコイルである誘導コイルを巻き、誘導コイルに高周波発振器を接続し、誘導コイルに高周波を印加する。プラズマ発生装置28は、誘導結合プラズマ法の他に、空胴共振器などを用いたマイクロ波プラズマ法、平行平板や同軸型などの電極法など種々の方法を利用することができる。プラズマを発生するための電力は、直流から交流、高周波、マイクロ波以上まで、様々な形態で印加する事ができる。また、プラズマ発生部の外部からレーザー等の光を導入してプラズマを発生してもよい。また、プラズマは可燃ガス、可燃液体、可燃固体等の燃焼によって発生させてもよい。また、プラズマはこれらの方法を組み合わせることで発生させてもよい。
【0014】
(各種プラズマ源の構造)
図4と図5は、各種プラズマ源の構造を示している。図4(A)は、左方向からプラズマガスをプラズマ発生部に流し、電極50、50間で電圧を印加して、プラズマ160を形成する。液体カーテン34は、液体供給部34で形成される。プラズマ160は、プラズマジェットとなり、液体カーテン34内を右方向に流れる。プラズマ160は、右方向に行くと、中性粒子が多くなり、電離している粒子の数が少なくなる。図4(B)は、左方向からプラズマガスをプラズマ発生部に流し、空洞共振器52、52でプラズマ160を形成する。プラズマ160は、マイクロ波プラズマであり、右方向の下流側に流れる。図4(C)は、左方向からプラズマガスをプラズマ発生部に流し、同軸電極54、54でプラズマ160を形成する。プラズマ発生室16の開口部18付近に網目状やメッシュ状電極56を配置する。プラズマ160は、同軸プラズマであり、右方向の下流側に流れる。図4(D)は、左方向からプラズマガスをプラズマ発生部に流し、平行平板電極50、50でプラズマ160を形成する。プラズマ160は、平行平板プラズマである。図4(E)は、左方向からプラズマガスをプラズマ発生部に流し、プラズマニードルの電極50でプラズマ160を形成する。針状電極50は絶縁体58の内部に固定されている。図4(F)は、左方向からプラズマガスをプラズマ発生部に流し、レーザー60でプラズマ160を形成する。図4(G)は、左方向から連続の液体のビームである連続液体ターゲット62をプラズマ発生部に流し、レーザー60でプラズマ160を形成する。図4(H)は、左方向から間欠的に液体の粒である間欠液体ターゲット64をプラズマ発生部に流し、レーザー60でプラズマ160を形成する。図4(I)は、左方向から固体の固体ターゲット66を供給し、プラズマ発生部においてレーザー60でプラズマ160を形成する。図4(J)は、左方向から燃料を供給し、火炎により燃焼プラズマ162を形成する。なお、左方向からプラズマ発生部に試料のガスやミストを流しても良い。ガスは可燃ガスの他、ガス論などの可燃液体や固体を噴出、もしくは噴霧して燃焼しても良い。
【0015】
図5(A)は、プラズマ160から遠く離れて、液体カーテン34が形成されるプラズマ源10を示している。液体カーテン34は、プラズマ160と一体ではなく、プラズマ発生装置28の周囲を広く包囲する状態で形成しても良い。図5(B)は、液体カーテン34とプラズマ160の間の空間にガス・ミストガス供給部300により、他のガス、液体、液体ミストをプラズマ160に流している。図5(C)は、別のノズルのプラズマガス導入管14やガス・ミストガス供給部300によりガス、ミスト、液体、別のプラズマなどを供給する。図5(D)は、液体カーテン34を一種のチャンバとして、液体カーテン34の内部において、プラズマ発生装置28のコイルによりプラズマ160を形成する。
【0016】
(液体カーテンの例)
図6は、液体用筒体22の排出口26から桶の底に向けて水を噴出して液体カーテン34を形成する実施例を示している。液体用筒体22から噴出した液体カーテン34は、桶の底にある水面に到達する。図6の実施例は、プラズマ発生部16からガスの導入を行わない例である。液体カーテン34は、排出口26付近で一旦広がり、再び収束する形状を有している。この現象は、水を液体用筒体22の内周に沿って回転させているので、排出口26から噴出した水は、回転の遠心力により外周方向に広がり、その後、水の表面張力により内周方向に収束すると考えられる。この場合、水の流量は、3.3L(リットル)/分とした。液体用筒体22の内径(直径)は18mmであり、プラズマガス筒体12の外径(直径)は16mmである。従って、液体の流路の厚さは、(18mm−16mm)/2=1mmとなる。
【0017】
図7は、図6と同様に、液体用筒体22の排出口26から水を噴出して液体カーテン34を形成しているが、プラズマ発生部16から液体カーテン34の内側にプラズマもしくはガスを導入する実施例を示している。図7の液体カーテン34は、端部が釣り鐘状に広がった形状になり、桶の底にある水面に到達する。図7の液体カーテン34は、一旦外周方向に広がると、ガスの供給を止めても、釣り鐘状に広がった形状を保持している。この現象は、ガスが液体カーテン34と桶の水面で閉じ込められていることを示していると考えられる。
【0018】
図7の実施例において、液体用筒体22の排出口26と桶の水面の距離を約20cm以上にすると、釣り鐘が割れて、図6の実施例の液体カーテンの形状に戻る。このことから、液体用筒体22を用い、水を液体カーテン34として利用する場合、液体用筒体22の排出口26と桶の水面の距離を約20cmまでにすると、プラズマ30に外気のガスの混入を遮断することができる。この場合、図6の実施例と同様に、水の流量は、3.3L(リットル)/分とした。液体用筒体22の内径(直径)は18mmであり、プラズマガス筒体12の外径(直径)は16mmである。従って、液体の流路の厚さは、(18mm−16mm)/2=1mmとなる。
【0019】
以下に、プラズマ源の使用例を説明する。
【0020】
(処理装置)
図8は、プラズマ源10を用いた処理装置40を示している。処理装置40は、シリコンウエハなどの被処理物44を処理するものであり、チャンバ46と、チャンバ46内にプラズマ源10と被処理物44を保持する保持部42とを備えている。プラズマ源10は、プラズマ30をプラズマ発生部16から前方の外部に移送し、液体カーテン34で外部のプラズマ30を覆う。プラズマ30は、被対象物44のレジスト除去など表面を処理する。被処理物44とその処理内容に応じて、プラズマガスの種類が決められる。また、被処理物44をウエット処理する場合、液体は、処理の為の薬液とすることができ、処理内容に応じて薬液の種類が決められる。薬液は、液体供給部30の代わりに、独立した薬液注入装置により、被処理部44に注入しても良い。このように独立した薬液注入装置48を使用すると、処理工程の自由度が増して、プラズマ30によるドライ処理と、薬液によるウエット処理を同時に、又は並行して、又は、時系列に行うことができる。
【0021】
保持部42は、被処理物44を保持し、必要に応じて被処理物44を回転軸の周りで回転する。プラズマ源10は、被処理物44と対向して配置され、被処理物44に対して相対的に離間運動と接近運動を行うことができる。また、プラズマ源10は、被処理物44に対して一定間隔を保ち、相対的に平行運動を行うことができる。この運動により、大きな被処理物44に対してもプラズマ処理ができ、また、薬液処理ができる。
【0022】
(処理方法)
プラズマ源10を処理方法に利用すると、種々の処理が可能となる。プラズマ源10は、例えば、プラズマとガスと液体とミストの全てを利用することができ、又は、これらの2種もしくは3種の相互作用を利用することができる。プラズマ源10は、プラズマとガスと液体とミストを同時もしくは交互に利用することもできる。プラズマ源10は、プラズマ160が点火していない状態で液体カーテン34だけを形成し、液体カーテン34内に別のガスやミストを導入したり、又は、液体カーテン34で試料を冷却することもできる。
【0023】
図9は、被処理物44の処理方法を説明する。まず、プラズマ源10と保持部42をチャンバ46内に配置する。次に、被処理物44を保持部42に載置して、固定する(S1)。プラズマ源10を被処理物44に対向して配置する(S2)。保持部42を回転する(S3)。プラズマ30を液体カーテン34で覆う(S4)。これにより、外気など不要なガスがプラズマ30内に混合するのを防止できる。プラズマ30と薬液で被処理物44の表面処理を行う(S5)。この表面処理は、プラズマ30によるドライ処理と、薬液によるウエット処理を同時に、又は並行して、又は、時系列に行うことができる。
【0024】
(質量分析)
質量分析は、例えば、プラズマ源10と、図示していないがサンプラーと質量分析装置を用いて行われる。質量分析の方法は、分析すべき試料の被処理物をキャリアガスに乗せてプラズマ発生部16に輸送して行われる。その際、プラズマガスは、プラズマガス導入管14を通してプラズマガス筒体12内を回転しながらプラズマ発生部16に導入される。プラズマガスは、プラズマ発生部16内で、一部がプラズマ発生装置によりプラズマになる。試料は、プラズマ発生部16内に輸送されると、プラズマにより活性化された状態になり、プラズマと共にプラズマ発生部16の開口部18から前方に排出される。試料は、主に、プラズマ発生部16の円筒状の中心部に存在しながら、開口部18から前方に排出されるので、サンプラーの孔を通過し、質量分析装置に向かい、質量分析される。プラズマ発生部16の大部分のガスやプラズマは、サンプラーで遮られて外周方向に排出される。液体は、プラズマガス筒体12を冷却し、外周方向に排出され、液体カーテン34となる。液体カーテン34、プラズマに不要なガスが混入するのを防止する。
【0025】
(分光分析)
分光分析は、例えば、プラズマ源10と、図示しないが、レンズなどの集光装置と分光分析装置を用いて行われる。分光装置は、主に、プラズマ源10の側部に配置され、プラズマ中の試料の被処理物が発する光を集光装置で集め、分光分析を行う。分光分析の方法は、分析すべき試料をキャリアガスに乗せてプラズマ発生部16に輸送して行われる。その際、プラズマガスは、プラズマガス導入管14を通してプラズマガス筒体12内を回転しながらプラズマ発生部16に導入され、プラズマ発生部16内で、一部がプラズマ発生装置28によりプラズマになる。試料は、プラズマ発生部16内に輸送されると、プラズマにより活性化された状態になり、プラズマと共にプラズマ発生部16の開口部18から前方に排出される。試料は、主に、プラズマ発生部16の円筒状の中心部に存在し、固有の光を発生しながら、開口部18から外部に排出される。排出されても、試料は、プラズマ発生部16の外部で固有の光を発生しながら、所定の間、プラズマガスと共に存在する。そこで、試料の固有の光を集光装置で集めて分光分析装置に送り、分光分析を行う。液体は、プラズマガス筒体12を冷却し、外周方向に排出され、液体カーテン34となる。液体カーテン34は、プラズマに不要なガスが混入するのを防止する。
【0026】
(分解処理)
プラズマ源10は、PCBやフロンなど物質の分解処理を行うことができる。被処理物の物質をキャリアガス又はプラズマガスに混入させて、高温プラズマ中に導入することにより、物質を分解し、無害化することができる。液体は、プラズマガス筒体12を冷却し、外周方向に排出され、液体カーテン34となる。液体カーテン34は、プラズマに不要なガスが混入するのを防止できる。
【0027】
以上のように、本発明の実施の形態は、液体カーテン34によりプラズマを包囲し、気体を遮断するので、大気中で高純度の処理が可能となる。また、本発明の実施の形態は、試料を容易にかつ簡単に冷却でき、また、被処理物に対して、ウエット処理とドライ処理を連続的に、同時に、又は時系列的に行うことができ、また、使用するプラズマガスを低減することができ、また、プラズマを安定化でき、また、プラズマトーチを長くでき、また、冷却トーチ部の形状を単純かつ安価にできるなど、有用な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】液体カーテンを形成するプラズマ源の概略図
【図2】液体の排出口に対向して配置された対向部材を備えるプラズマ源の説明図
【図3】液体供給部の端部の概略図
【図4】他のプラズマ源の概略図
【図5】他のプラズマ源の概略図
【図6】プラズマ発生部からガスを導入しない場合の液体カーテンの写真の図
【図7】プラズマ発生部からガスを導入する場合の液体カーテンの写真の図
【図8】プラズマ源を利用した処理装置の説明図
【図9】プラズマ源を利用した処理方法の流れ図
【図10】従来の冷却ガスを利用したプラズマ源の説明図
【符号の説明】
【0029】
10・・・プラズマ源
12・・・プラズマガス筒体
14・・・プラズマガス導入管
16・・・プラズマ発生部
160・・プラズマ
162・・燃焼プラズマ
18・・・開口部
20・・・キャリアガス筒体
22・・・液体用筒体
24・・・液体導入管
26・・・排出口
28・・・プラズマ発生装置
30・・・ガス・ミスト
300・・ガス・ミスト供給部
32・・・液体供給部
34・・・液体カーテン
36・・・対向部材
40・・・処理装置
42・・・保持部
44・・・被処理物
46・・・チャンバ
48・・・薬液注入装置
50・・・電極
52・・・空洞共振器
54・・・同軸電極
56・・・メッシュ状電極
58・・・絶縁体
60・・・レーザー
62・・・連続液体ターゲット
64・・・間欠液体ターゲット
66・・・固体ターゲット
70・・・冷却ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを発生するプラズマ発生部と、
液体カーテンを形成する液体供給部を備え、
プラズマを液体カーテンで覆う、プラズマ源。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ源において、
液体供給部は、プラズマ発生部の下流にあるプラズマを液体カーテンで覆う、プラズマ源。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマ源において、
プラズマ内又は周囲に、気体又はミストを供給する気体・ミスト供給部を備えている、プラズマ源。
【請求項4】
請求項1に記載のプラズマ源において、
プラズマ発生部は、開口部を有し、
液体供給部は、開口部の周囲から液体を放出し、開口部前方にあるプラズマを液体カーテンで覆う、プラズマ源。
【請求項5】
請求項1に記載のプラズマ源において、
プラズマ発生部は、開口部を有し、
開口部に対向して配置される対向部材を備え
液体供給部は、開口部の周囲から液体を対向部材に向けて放出し、開口部前方にあるプラズマを液体カーテンと対向部材で覆う、プラズマ源。
【請求項6】
請求項1に記載のプラズマ源において、
プラズマを発生し、開口部を有するプラズマ発生部を備え、
液体供給部は、プラズマ発生部の周囲に液体を流してプラズマ発生部を冷却し、開口部の周囲から液体を放出し、開口部前方にあるプラズマを液体カーテンで覆う、プラズマ源。
【請求項7】
プラズマを液体カーテンで覆う液体供給部と、
液体供給部に対向して配置され、被処理物を保持する保持部と、を備え、
液体カーテンで覆われたプラズマで被処理物を処理する、処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の処理装置において、
被処理物をプラズマでドライ処理し、液体でウエット処理する、処理装置。
【請求項9】
請求項7に記載の処理装置において、
保持部は、被処理物を回転する、処理装置。
【請求項10】
請求項7に記載の処理装置において、
プラズマを発生し、開口部を有するプラズマ発生部を備え、
液体供給部は、開口部の周囲から液体を放出し、開口部前方にあるプラズマを液体カーテンで覆う、処理装置。
【請求項11】
請求項7に記載の処理装置において、
プラズマを発生し、開口部を有するプラズマ発生部と、
プラズマ発生部と液体供給部と保持部を収容するチャンバと、を備えている、処理装置。
【請求項12】
液体カーテンを形成し、液体カーテン内に液体又はミストを供給し、液体カーテン内にプラズマを形成し、被処理物を処理する、処理方法。
【請求項13】
液体カーテンで覆われたプラズマにより被処理物をドライ処理し、液体又はミストで被処理物をウエット処理する、処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−27657(P2008−27657A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196931(P2006−196931)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(503421128)リバーベル株式会社 (10)
【Fターム(参考)】