説明

プラットホーム用ドア装置の扉体

【課題】 扉体の軽量化を図ることにより、扉体支持部を必要以上に堅牢化することがないプラットホーム用ドア装置を提供する。
【解決手段】プラットホーム用ドア装置の扉体を遮蔽面部と、扉支持部とで構成するとともに、該扉支持部には扉体を戸袋部に収納した際、戸袋内部に設けた該扉体の駆動装置を収容する収容空間部を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅のプラットホームに設置されるプラットホーム用ドア装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駅のプラットホームの線路側縁部に沿って立設され、左右の戸袋部から突出した扉体がプラットホームと線路側とを区画することにより、線路内への転落や走行中の車輌への接触による危険を防止し、一方、車輌の停車時には該車輌の乗降口に対面する上記扉体を戸袋内に収納することにより、該車輌への乗降路を開放して安全に乗り降りができるように構成したプラットホーム用ドア装置が知られている。
【特許文献1】特開2006−82627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に示すプラットホーム用ドア装置の開閉扉は、スチール材から成る上部枠と、前部枠と、下部枠と、片持ち支持固定フレーム板とを略矩形状に組み合わせ固定した骨格枠体の前後に表面板を貼り付け、上記片持ち支持固定フレーム板の上側中間部と底部に設けた駆動側固定部に開閉扉を横方向に開閉移動させる開閉駆動用動力源を取り付けるようにしている。
ところが、プラットホーム用ドア装置は、扉体を左右の戸袋内に収納して車輌への乗降路を開放した状態で、乗降時のつまずき等の危険を防止するためプラットホーム上には扉体をガイドするためのレール部材や溝部等による凹凸部が生じないよう配慮がなされ、いわゆるバリアフリーに構成されている。このため扉体が戸袋部から突出した乗降路の閉鎖状態では、該扉体は戸袋内部側で支持された片持支持状態となるため、扉体には、軽量化が望まれるところであるが、上記特許文献1のものは上記したように扉体に駆動部材が組み込まれているので、該扉体は重量化したものとなってしまい扉支持部に過度の負担がかかり扉の戸先側が垂れ下がって安定した開閉動ができなくなってしまったり、或いは扉支持部を堅牢にする必要があって、製造コストの上昇を招くものである。
そこで、駆動部材を戸袋部に設けることも創案されるが、この場合は、扉体戸尻と駆動部材との衝突を回避するため戸袋幅寸法を大きくする必要があり、特に、隣接する乗降口間の距離による規制を受けるこの種ドア装置の戸袋においては、
該戸袋の先端側が乗降路側にはみ出してしまって乗降路の幅が十分確保できなくなってしまう可能性がある。
本発明は、扉体を可及的に軽量化すると共に、戸袋幅を必要以上に大きくなることがなく、円滑な開閉動作を行なうことが出来るようなプラットホーム用ドア装置の扉体を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、叙述の如き実情に鑑み、これらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1に記載の発明は、プラットホームの線路側縁部に沿って立設され、停車した鉄道車輌の乗降口に対面する扉体を左右に配設した戸袋内に収納することにより、該車輌への乗降路を開放するように構成したプラットホーム用ドア装置において、前記扉体は戸袋から突出して乗降路を閉鎖する遮蔽面部と、常時戸袋内部に位置し遮蔽面部を支持する扉支持部とで構成するとともに、前記扉支持部には扉体を戸袋に収納した際、戸袋内部に設けた該扉体の駆動装置が収容される収容空間部が形成されていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、上記扉支持部は、遮蔽面部の戸尻側から戸袋の奥壁側に向けて突成した上下の延出フレーム部で形成され、該上下延出フレーム部に扉体の支持機構を設けると共に、上下延出フレーム部間に上記収容空間部が形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項3記載の発明は、請求項2の延出部の内、上側に突成した上部延出部には扉体の前後方向の振れを規制して該扉体を垂直姿勢に保持するする規制体を設けると共に、下側に突成した下部延出部には、扉体を摺動自在に支持する支持体が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明とすることにより、扉体の軽量化が図れるので戸袋部から扉体が突出した閉鎖状態でも戸先側が垂れ下がることがなく常に円滑な開閉動作を行なうことができ、また扉体の支持部を必要以上に堅牢化しなくてもよいものである。
請求項2、請求項3に記載の発明とすることにより、表面板の板幅を最小限に抑制することができ、扉体の軽量化と材料費の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プラットホーム用ドア装置の閉鎖状態を示す外観正面図である。
【図2】(A)は、戸袋内部を示すプラットホーム用ドア装置の概略正面図で ある。 (B)は、同上の上面図、(C)は、同上の側面図である。
【図3】戸袋の内部構造を示す要部縦断面図である。
【図4】扉体の構造を示す斜視図である。
【図5】(A)は、扉体の正面図である。 (B)は、同上の上面図、(C)は、同上の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
つぎに、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図において、1は、プラットホーム用ドア装置であって、該プラットホーム用ドア装置1は、左右方向に所定間隔を存して離間対設した戸袋2,2と、該戸袋2から対向方向にそれぞれ出没自在に支持される扉体3とで構成されており、これによって扉体3が戸袋2から突出して左右の扉体3,3の戸先が当接した閉鎖姿勢と、扉体3,3が戸袋2,2の内部に収納された開放姿勢とに変姿可能になっている。
このように構成されたプラットホーム用ドア装置1は、電車等のプラットホームの線路側縁部に沿って複数個を連設することでプラットホームの長手方向略全長に亘って設置されており、上記の閉鎖姿勢ではプラットホーム側と線路側とが完全に区画されるようになっている。
また、扉体3は各車輌の乗降口にそれぞれ対面する位置に設置されており、プラットホームに入線した車輌が停車した状態においては、乗降用扉の開放に伴って各扉体3が戸袋2,2の内部に収納された開放姿勢となることにより乗降路が開放され、車輌への乗降が可能となるように構成されている。
【0008】
戸袋2は、扉体3を出没自在に収納するものであって、該戸袋2は、鋼板製の長尺材を組み付けて形成される骨部4の外面側に、化粧鋼板等の外装板5を貼設して縦長の箱体に形成されており、一方側の側面には縦長の開口部6が開設され、該開口部6から扉体3が出し入れ可能に構成されている。
戸袋2内の骨材4には、戸袋2の幅寸法より僅かに短寸に設定された長尺状のレール材7と、振れ止めレール8がそれぞれ水平状に横設されており、レール材7は、ホーム側に位置する骨材4の下方部位に設けられたレール取り付けアングル9に載置した状態でネジ10により固定されている。
一方、振れ止めレール8は、下方側が開口した断面略コ字状に形成された長尺材であって、該振れ止めレール8は、戸袋2の上部の骨材4の下面に設けられており、扉体3の上部側の振れを規制して扉体3の出没動作を円滑にするものである。
【0009】
また、戸袋2の奥壁側(戸袋2の開口部6に対向する奥側の壁部)には、駆動装置Kが設けられており、該駆動装置Kには、扉体3を出没駆動させる駆動モータ11や、車輌の入線や乗降扉の開閉情報に基づいて駆動モータ11の起動・停止を制御する制御部等が含まれている。
12は、駆動モータ11の動力により回転駆動する駆動側プーリである。
一方、戸袋2の内部側で開口部6近傍位置には、従動側プーリ13が前記駆動側
プーリ12と略水平状に取り付け部材14を介して骨材4に取り付けられており、これら駆動側プーリ12と従動側プーリ13は、同一垂直面上に位置して配設されると共に、駆動側プーリ12と従動側プーリ13には無端ベルト15が懸架され、駆動モータ11の回転駆動を受けて無端ベルト15が左右方向に移動するように構成されている。
戸袋2の正面側(プラットホーム側)には、着脱自在に構成した点検パネル16が左右に装着されており、該点検パネル16を取り外すことで扉体3を開閉するための駆動装置や開閉制御部等、戸袋2内の点検・修理を容易にすることができるようになっている。
【0010】
一方、扉体3は、戸袋2から突出して乗降路を閉鎖する遮蔽面部Cと、常時戸袋2内部に位置して扉体3を出没自在に支持する扉支持部Hとで構成されており、遮蔽面部Cは、鋼板製の上フレーム17、下フレーム18、戸先フレーム19および戸尻フレーム20とで矩形状に形成した空間部にハニカムコア等の芯材3aを介装し、その表裏面に化粧鋼板製の面板3bが貼設されている。
扉支持部Hは、遮蔽面部Cの戸尻側から戸袋2の奥壁側に向けて突成した上下の延出部で構成されており、上方の延出部は遮蔽面部Cの上フレーム17端部に延設した上部延出フレーム21で形成され、下方の延出部は下フレーム18端部に延設した下部延出フレーム22と、戸尻フレーム20に直交して突設され該下部延出フレーム22と所定間隔を存して離間対設される中間フレーム23および下部延出フレーム22と中間フレーム23の端部同志を連結する連結フレーム24とで区画される空間に平板状の支持体取り付け板25を貼設することで構成されている。
【0011】
中間フレーム23には、ベルト固定金具26が上方に向けて突成されており、該ベルト固定金具26を無端ベルト15の適位置に固定することにより、駆動モータ11の回転駆動に伴う無端ベルト15の移動を受けて、扉体3が戸袋2内に収納された乗降路の開放姿勢と、戸袋2から突出した乗降路の閉鎖姿勢との間で移動可能に構成されている。
また、上部延出フレーム21および中間フレーム23には、補強部材27が戸尻フレーム20に対して筋交状にそれぞれ跨設されている。
このようにして、上部延出フレーム21と中間フレーム23との間には、戸袋2の奥壁側に取り付けられた駆動装置Kを収容可能な収容空間部Sが形成されている。
尚、遮蔽面部Cの幅寸法は、扉体3が戸袋2から突出して遮蔽面部Cが乗降路を閉鎖する姿勢において、戸尻フレーム20が戸袋2内部で開口部6の近傍に位置するように設定されており、また、遮蔽面部Cと扉支持部Hとの幅寸法を含む扉体3の全体幅寸法は、戸袋2の幅寸法より若干短寸に設定されている。
また、上部延出フレーム21には、左右方向に離間して規制体28がそれぞれ取り付けられ、該規制体28は、上部延出フレーム21の上面から上方に突成した支軸28aの先端に、戸袋2の上部に横設された振れ止めレール8の内寸より僅かに小径に形成した円形のローラー28bが水平面内回転自在に軸承されており、これによって扉体3上部の前後方向への振れを規制して該扉体3の起立姿勢を保持するようになっている。
【0012】
一方、扉支持部Hの下方に設けられた支持体取り付け板25には、扉体3を吊持支持する支持体29が取着されており、該支持体29は、レール材7上を摺動自在に移動する摺動部材31が断面略L字状の取付金具30を介して取り付けられており、該摺動部材31をレール材7に対して上方から被嵌して装着されている。
このように、扉体3は、支持体29とレール材7とで吊持支持されて、その下端部とプラットホームとの間に間隙を有した状態で出没するようになっている。
尚、上記の実施形態において、上下の延出フレーム21,22は、遮蔽面部Cの上下フレーム17,18を延長して、それぞれ一本のフレームで構成されていても良いものである。
【0013】
上記実施形態に示したものは、離間対設した一対の戸袋2,2からそれぞれ突出した扉体3,3の戸先部同志が当接してホーム側と線路側とを遮蔽する状態から、駆動装置Kが車輌停車や乗降用扉の開放信号を受けて駆動モータ11の駆動による無端ベルト15の移動に伴って扉体3,3は、それぞれ戸袋2,2内部に収納されて車輌への乗降路が開放されることとなるが、図2(A)に示すように
戸袋2の奥壁側に取り付けられた駆動装置Kは、扉体3の戸尻側に形成した収容空間部Sに収容されるよう構成されているので、戸袋2の幅寸法は扉体3の幅寸法より僅かに大きいものでよく、戸袋2をコンパクトなものにすることができる結果、車輌の乗降口や隣接する乗降口間の寸法に対して戸袋2の幅寸法の設定が容易となる。
また、扉体3は、戸袋2から突出する部位のみに面板3bを貼設したので扉体3の軽量化が図れ、戸袋2から扉体3が突出した閉鎖状態でも戸先側が垂れ下がることがなく常に円滑な開閉動作を行なうことができて扉体の支持部を必要以上に堅牢化しなくてもよい。
【符号の説明】
【0014】
1 プラットホーム用ドア装置
2 戸袋
3 扉体
7 レール材
8 振れ止めレール
11 駆動モータ
15 無端ベルト
28 規制体
29 支持体
31 摺動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームの線路側縁部に沿って立設され、停車した鉄道車輌の乗降口に対面する扉体を左右に配設した戸袋内に収納することにより、該車輌への乗降路を開放するように構成したプラットホーム用ドア装置において、前記扉体は戸袋から突出して乗降路を閉鎖する遮蔽面部と、常時戸袋内部に位置し遮蔽面部を支持する扉支持部とで構成するとともに、前記扉支持部には扉体を戸袋に収納した際、戸袋内部に設けた該扉体の駆動装置が収容される収容空間部が形成されていることを特徴とするプラットホーム用ドア装置の扉体。
【請求項2】
上記扉支持部は、遮蔽面部の戸尻側から戸袋の奥壁側に向けて突成した上下の延出部で形成され、該延出部に扉体の支持機構を設けると共に、上下延出部間に上記収容空間部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のプラットホーム用ドア装置の扉体。
【請求項3】
上記延出部の内、上側に突成した上部延出部には扉体の前後方向の振れを規制して該扉体を垂直姿勢に保持する規制体を設けると共に、下側に突成した下部延出部には扉体を摺動自在に支持する支持体が設けられていることを特徴とする請求項2記載のプラットホーム用ドア装置の扉体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−173517(P2010−173517A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19423(P2009−19423)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(307038540)三和シヤッター工業株式会社 (273)
【Fターム(参考)】