説明

プリプレグ、金属箔張積層板、及びプリント配線板

【課題】ボイドが発生せず、耐熱性、難燃性、クラック耐性に優れたプリプレグ、プリント配線板を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂と、特定構造のアルコキシシラン化合物とからなり、前記アルコキシシラン化合物は、(B)R1として、少なくとも1つの環状エーテル基を有するアルコキシシラン化合物と、(C)R1として、少なくとも1つのアリール基を有するアルコキシシラン化合物と、を含み、かつ、(B)及び(C)の混合比率が特定の割合である樹脂組成物と、硬化剤と、基材と、を含有するプリプレグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ、金属張箔積層板、及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器用のプリント配線板材料には、熱的及び電気的特性に加え、化学的及び物理的特性に優れることが要求され、このようなプリント配線板材料としてエポキシ樹脂が広く使用されてきた。さらに、プリント配線板には、火災に対する安全性も求められる。そのため、エポキシ樹脂として、例えば、ハロゲン化処理を施したエポキシ樹脂が使用されていた。しかしながら、火災やリサイクル加熱工程時において有害ガスを発生する恐れがあるため、環境負荷低減を目的とし、ハロゲン元素を含有していないエポキシ樹脂への要求が高まっているのが実情である。
【0003】
更に、プリント配線板へ半田付けする際に使用する半田として、鉛フリー半田を利用することが急速に広まっている。しかしながら、鉛フリー半田を用いる際には、従来の半田付け温度よりも高温にする必要がある。そのため、プリント配線板材料が軟化し、膨張率が大きくなり、膨れを生じる現象や、プリント配線板材料の熱分解によってガスが発生し、膨れを生じる現象が見られるようになり、例えば、プリント配線板の回路が断線するといった問題が生じる。
【0004】
一方で、近年の電気・電子材料分野の急速な発展に伴い、電子機器には、小型化、高機能化が求められており、プリント配線板としては、高集積化が求められている。ところが、高集積化したことにより、単位面積当たりの発熱量が増加し、通電時にプリント配線板にかかる温度が一層高温化する。そのため、通電時と切電時との温度差が大きくなり、例えば、剥離やクラックが発生するといった問題が生じる。
【0005】
これらの問題を解決するために、プリント配線板を構成する材料の一つであるエポキシ樹脂を改良する方法が提案されている。その一例として、エポキシ樹脂と、シリコーン樹脂を併用する方法がある。例えば、特許文献1〜3にはエポキシ樹脂とアルコキシシラン部分縮合物を脱アルコール縮合反応せしめて得られるアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を使用する方法が提案されている。特許文献4には、エポキシ樹脂と4官能アルコキシシラン化合物を含有したワニスを使用する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−212262号公報
【特許文献2】特開2003−037368号公報
【特許文献3】特開2003−048955号公報
【特許文献4】特開2004−335661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2,4に記載されているアルコキシル基含有エポキシ樹脂を、アルコキシル基とエポキシ樹脂を結合させるような化合物の添加をせずに積層板を作製した場合、エポキシ樹脂とアルコキシシラン間での結合形成が不十分となり、難燃性が低下する傾向にある。
【0008】
また、特許文献1,3に記載されているアルコキシル基含有エポキシ樹脂を使用した場合、例えば、鉛フリー半田を用いての半田付けにおいて、樹脂中に含有されるアルコキシル基が脱アルコール反応を起こし、これによって発生した揮発性ガスが基板に膨れを生じさせ、回路が切断し、しばしば電気的なショート不良を生じさせる場合がある。
【0009】
特許文献2,4に記載されているアルコキシル基含有エポキシ樹脂を使用した場合、例えば、硬化工程において樹脂中に含有されるアルコキシル基が脱アルコール反応を起こすことで揮発性ガスを生じ、ボイド(気泡)が発生する傾向にある。そのため、プリント配線板とした際には、前記ボイドが層間の導通を担うスルーホールを形成するための穴と絶縁されるべき配線パターンとの間を跨ぎ、この穴の壁面に析出する銅めっきがボイド内まで析出することで、スルーホールと配線パターンとの間で、電気的なショート不良を生じる傾向にある。
【0010】
特許文献4に記載されているエポキシ樹脂と4官能アルコキシシランの混合物を使用する場合、硬化工程前にエポキシ樹脂とアルコキシシランを混合しただけでは、エポキシ樹脂と4官能アルコキシシラン間での結合形成が不十分となり、クラックを生じる傾向にある。このように、従来公知の技術では、硬化時のボイドが発生せず、耐熱性、難燃性、クラック耐性を全て満足するプリント配線板材料は得られていなかった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、硬化時のボイドが発生せず、耐熱性、難燃性、クラック耐性に優れたプリプレグ、金属箔張積層板、及びプリント配線板を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、特定のアルコキシシラン化合物を、ある特定の比率で混合し、エポキシ樹脂と共に、共加水分解縮合することによって得られる樹脂組成物と、硬化剤と、基材と、を含有するプリプレグとすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0013】
即ち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
(A)エポキシ樹脂と、下記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物と、を共加水分解縮合させて得られる樹脂組成物であって、
【化1】

(式中、nは0〜3の整数を表し、R1は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は有機基を表す。また、R2は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
前記アルコキシシラン化合物は、
(B)前記式(1)において、nは1〜2の整数であり、R1として、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C)前記式(1)において、nは1〜2の整数であり、R1として、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
を含み、かつ、下記式(2)で表される(B)及び(C)の混合指標αが、0.001〜19である樹脂組成物と、
硬化剤と、
基材と、
を含有するプリプレグ;
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
(式中、αb:(B)成分の含有量(mol%)、αc:(C)成分の含有量(mol%))。
〔2〕
前記(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100〜600g/eqであり、かつ、前記(A)エポキシ樹脂の25℃における粘度は、1000Pa・s以下である、〔1〕に記載のプリプレグ。
〔3〕
前記(A)エポキシ樹脂は、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂である、〔1〕又は〔2〕に記載のプリプレグ。
〔4〕
前記アルコキシシラン化合物として、
(D)前記式(1)において、nが0である、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物を、更に含む〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のプリプレグ。
〔5〕
下記式(3)で表される前記アルコキシシラン化合物の混合指標β1が、0.01〜1.4である、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のプリプレグ;
混合指標β1={(βn2)/(βn0+βn1)} (3)
(式中、
βn2:前記式(1)において、nが2であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
βn0:前記式(1)において、nが0であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
βn1:前記式(1)において、nが1であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
ここで、0≦{β2=(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}≦0.1である)。
〔6〕
下記式(4)で表される、前記(A)エポキシ樹脂と前記アルコキシシラン化合物との混合指標γが、0.02〜15である、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載のプリプレグ;
混合指標γ=(γa)/(γs) (4)
(式中、
γa:エポキシ樹脂の質量(g)、
γs:前記式(1)において、nが0〜2の整数であるアルコキシシラン化合物の質量(g))
〔7〕
〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載のプリプレグと、
前記プレプリグに積層された金属箔と、
を少なくとも備える、金属箔張積層板。
〔8〕
〔7〕記載の金属箔張積層板の前記金属箔がエッチング処理された、プリント配線板。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、硬化時のボイドが発生せず、耐熱性、難燃性、クラック耐性に優れた、プリプレグ、金属箔張積層板、及びプリント配線板を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0016】
(プレプリグ)
本実施形態のプレプリグは、
(A)エポキシ樹脂と、下記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物と、を共加水分解縮合させて得られる樹脂組成物であって、
【化2】

(式中、nは0〜3の整数を表し、R1は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は有機基を表す。また、R2は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
前記アルコキシシラン化合物は、
(B)nは1〜2の整数を表し、R1として、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C)nは1〜2の整数を表し、R1として、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
を含み、かつ、下記式(2)で表される(B)及び(C)の混合指標αが、0.001〜19である樹脂組成物と、
硬化剤と
基材と
を含有するプレプリグ;
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
(式(2)中、αb:前記(B)成分の含有量(mol%)、αc:前記(C)成分の含有量(mol%))、である。
【0017】
本発明者は、エポキシ樹脂と、特定のアルコキシシラン化合物とを、共加水分解縮合することによって得られる樹脂組成物と、硬化剤と、基材とを含有するプリプレグ、それにより成型された金属箔張積層板、及びプリント配線板は、ボイド発生によるショート不良を起こす恐れのない優れた信頼性を有し、さらに、耐熱性、難燃性、クラック耐性に優れていることから、一層高い信頼性を達成できることを見出した。
【0018】
((A)エポキシ樹脂)
本実施形態の(A)エポキシ樹脂とは、後述のアルコキシシラン化合物とその縮合物を除く、分子内にオキシラン環、通常は2個以上のオキシラン環を有する化合物を指し、上述の要件を満たすものであれば、特に限定されない。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
エポキシ樹脂のエポキシ当量(WPE)は、100〜600g/eqであることが好ましく、より好ましくは100〜500g/eq、さらに好ましくは100〜300g/eqである。エポキシ樹脂と、前記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物と、の組成バランスによっては、エポキシ当量(WPE)を100g/eq以上とすることで、未反応の環状エーテル基が残留することを抑制できるため、難燃性がさらに優れる場合があり、600g/eqを以下とすることで、樹脂組成物の流動性が向上し、生産性を向上できる傾向にある。
さらに、金属箔張積層板、及びプリント配線板とした際の耐熱性が一層優れる傾向にあるため、エポキシ樹脂のエポキシ当量は100〜300g/eqであることが特に好ましい。
【0020】
エポキシ樹脂は、25℃における粘度が1000Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは500Pa・s以下、さらに好ましくは100Pa・s以下である。エポキシ樹脂の25℃における粘度が1000Pa・s以下であることで、液体としての流動性が向上し、後述するアルコキシシラン化合物との相溶性が良くなる傾向にある。また、25℃における粘度が500Pa・s以下とすることで、基材へ含浸させる効率が向上するため、生産性が良くなる傾向にあり、さらに好ましくは100Pa・s以下である。
【0021】
エポキシ樹脂の種類は、特に限定されず、例えば、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂の核水素化物、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂等が挙げられる。それらの中でも、入手が容易であり、目的とする本実施形態の金属張積層板、及びプリント配線板のクラック耐性が良好である観点から、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂が好ましく、それらの中でもビスフェノールA骨格を持つタイプがより好ましい。また、これらのエポキシ樹脂は、単独で使用しても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
(多官能エポキシ樹脂)
ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ジメチル−4,4’−ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、2,6−ジ(t−ブチル)ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエンのポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0023】
上記の中でも、流動性に優れるタイプのものが多く市販され、安価に入手できることや、目的とする本実施形態の金属箔張積層板、及びプリント配線板の耐熱性に優れる傾向にあるため、ビスフェノールA骨格、又はビスフェノールF骨格を有するフェノール類のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂が好ましい。それらの中でも、特に、ビスフェノールA骨格を有するフェノール類のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂が好ましい。
【0024】
ビスフェノール骨格を有するフェノール類のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂の代表的な例を下記に示す。
【0025】
【化3】

【0026】
エポキシ樹脂として、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂を使用する場合、これらの繰り返し単位(上記代表的な例を示す化学式中のn)は、特に限定されるものではないが、好ましくは20未満、より好ましくは0.001〜10、さらに好ましくは0.01〜2である。繰り返し単位を0.001以上とすることで、エポキシ樹脂とアルコキシシラン化合物とが反応し、耐熱性が向上する傾向にあり、20以下とすることで、エポキシ樹脂の流動性が向上し、アルコキシシラン化合物との相溶性が向上する傾向にある。上述の耐熱性と流動性のバランスの観点から、繰り返し単位は0.01〜2であることが特に好ましい。
【0027】
(脂環式エポキシ樹脂)
脂環式エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではなく、例えば、シクロヘキセンオキサイド基、トリシクロデセンオキサイド基、シクロペンテンオキサイド基等を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
【0028】
脂環式エポキシ樹脂の具体例としては、単官能脂環式エポキシ化合物として、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシルが挙げられる。2官能脂環式エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオクチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、1,2,8,9−ジエポキシリモネンが挙げられる。多官能脂環式エポキシ化合物としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキセン付加物等が挙げられる。多官能脂環式エポキシ化合物としては、エポリードGT401、EHPE3150(ダイセル化学工業社製)等が挙げられる。それらの中でも、入手が容易であることや反応性の観点から、2官能脂環式エポキシ化合物が好ましい。具体的には、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートが特に好ましい。
【0029】
脂環式エポキシ樹脂の代表的な例を下記に示す。
【0030】
【化4】

【0031】
【化5】

【0032】
(ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂)
ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物等が挙げられる。それらの中でも、入手が容易である観点から、フェノール又はクレゾール類等を原料とするノボラック樹脂が好ましい。
【0033】
ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂の代表的な例を下記に示す。
【0034】
【化6】

【0035】
(芳香族エポキシ樹脂の核水素化物)
芳香族エポキシ樹脂の核水素化物としては、特に限定されるものではなく、例えば、フェノール化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェノール等)のグリシジルエーテル化物、又は各種フェノール(フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等)の芳香環を核水素化したものや、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物の核水素化物等が挙げられる。
【0036】
(複素環式エポキシ樹脂)
複素環式エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、イソシアヌル環、ヒダントイン環等の複素環を有する複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0037】
(グリシジルエステル系エポキシ樹脂)
グリシジルエステル系エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のカルボン酸類からなるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0038】
(グリシジルアミン系エポキシ樹脂)
グリシジルアミン系エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、アニリン、トルイジン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン誘導体、ジアミノメチルベンゼン誘導体等のアミン類をグリシジル化したエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0039】
(ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂)
ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のハロゲン化フェノール類をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0040】
上述したエポキシ樹脂は、ポリオールを併用することができる。ポリオールとしては、分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物であれば、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0041】
(アルコキシシラン化合物)
本実施形態におけるアルコキシシラン化合物とは、1〜4個のアルコキシル基を有するケイ素化合物であり、下記式(1)で表される。
【0042】
【化7】

【0043】
式(1)中、nは0〜3の整数を表し、R1は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は有機基を表す。また、R2は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
【0044】
式(1)におけるR1は、複数の場合、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は有機基を表し、特に限定されないが、有機基としては、後述する環状エーテル基を有する有機基、アリール基を有する有機基の他に、例えば、アルキル基、ビニル基、メタクリル基、メルカプト基、イソシアネート基を有する有機基等が挙げられる。それらの中でも、安価に入手できることから、アルキル基が好ましい。
【0045】
ここで、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基(n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、sec−ブチル)、ペンチル基(n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル等)、ヘキシル基(n−ヘキシル、i−ヘキシル等)、ヘプチル(n−ヘプチル、i−ヘプチル等)、オクチル基(n−オクチル、i−オクチル、t−オクチル等)、ノニル(n−ノニル、i−ノニル等)、デシル基(n−デシル、i−デシル等)、ドデシル基(n−ドデシル、i−ドデシル等)が挙げられる。これらは、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基のいずれでもよい。
【0046】
それらの中でも、入手が容易であることから、炭素数10以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基がより好ましい。また、これらアルキル基の、水素原子又は主鎖骨格の一部又は全部が、エーテル基、エステル基、カルボニル基、シロキサン基、フッ素等のハロゲン原子、メタクリル基、アクリル基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロキシル基からなる群から選択された少なくとも1種の基で置換されていてもよい。
【0047】
また、上述の式(1)におけるR2は、複数の場合、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。R2としては、上述の要件を満たすものであれば特に限定されないが、加水分解反応により生じるアルコール類の除去が容易であることから、好ましくは、メチル基、エチル基である。
【0048】
((B)成分)
前記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物の(B)成分は、式(1)において、nは1〜2の整数であり、R1として、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物である。
【0049】
【化8】

【0050】
環状エーテル基とは、環状の炭化水素の炭素を酸素で置換したエーテルを有する有機基を指し、通常は3〜6員環の構造を持つ環状エーテル基を意味する。中でも、環歪みエネルギーが大きく、反応性の高い3員環又は4員環の環状エーテル基が好ましく、特に好ましいのは3員環のエーテル基である。
【0051】
環状エーテル基の具体例としては、例えば、β−グリシドキシエチル、γ−グリシドキシプロピル、γ−グリシドキシブチル等の炭素数4以下のオキシグリシジル基が結合したグリシドキアルキル基、グリシジル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘプチル)エチル基、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ペンチル基等のオキシラン基を持った炭素数5〜8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基等が挙げられる。
【0052】
上記の中でも、反応性の観点から、β−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等のC1〜C3のアルキル基にオキシグリシジル基が結合したグリシドキシアルキル基、オキシラン基を持ったC5〜C8のシクロアルキル基で置換された炭素数3以下のアルキル基が好ましい。
【0053】
(B)成分の具体例としては、例えば、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(フェニル)ジエトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(フェニル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリメトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。それらの中でも、入手の容易さとエポキシ樹脂との相溶性の観点から、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが好ましい。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
((C)成分)
前記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物の(C)成分は、式(1)において、nが1〜2の整数であり、R1として、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物である。
【0055】
【化9】

【0056】
アリール基とは、芳香族炭化水素(単純芳香環又は多環芳香族炭化水素)から誘導された官能基又は置換基を指す。アリール基としては、これに合致するものであれば、特に限定するものではないが、高次構造における立体障害を考慮すると、フェニル基やベンジル基等が好ましい。
【0057】
(C)成分の具体例としては、例えば、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシ[3−(フェニルアミノ)プロピル]シラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。それらの中でも、入手の容易さと流動性の観点から、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランが好ましい。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
上述した「(B)式(1)において、nが1〜2の整数であり、R1として、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物」と、「(C)式(1)において、nが1〜2の整数であり、R1として、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物」の混合比率は、以下の式(2)で算出される混合指標αで表される。
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
なお、式(2)中、
αb:(B)成分の含有量(mol%)、
αc:(C)成分の含有量(mol%)、をそれぞれ表す。
【0059】
本実施形態においては、混合指標αを0.001〜19の範囲とする。混合指標αが0.001未満であると、金属箔張積層板、及びプリント配線板とした際に、耐熱性、及び難燃性が悪化する傾向にある。19を超えると、樹脂組成物の流動性が低下し、エポキシ樹脂との相溶性が悪化する傾向にあり、金属箔張配線板、及びプリント配線板とした際の、耐熱性、及びクラック耐性が悪化する傾向にある。特に、高い耐熱性、難燃性、クラック耐性が要求される場合には、混合指標αは、0.2〜5がより好ましく、0.3〜2がさらに好ましい。
【0060】
((D)成分)
また、本実施形態における樹脂組成物は、上述した(A)〜(C)成分に加え、(D)成分として、上記式(1)におけるR1の個数を表すnがn=0、つまり(OR2)を4個有するアルコキシシラン化合物を更に共加水分解縮合させてもよい。(D)成分としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等が挙げられる。それらの中でも、比較的安価であることから、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
(その他のアルコキシシラン化合物)
本実施形態における樹脂組成物は、上述した(B)〜(D)成分以外の式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を更に共加水分解縮合させてもよい。そのような化合物としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ヒドロキシメチルトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メトキシジメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、ビス(2−クロロエトキシ)メチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、クロロメチルジエトキシメチルシラン、メチルトリス(エチルメチルケトオキシム)シラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメトキシイソプロポキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、3−[ジメトキシ(メチル)シリル]プロパン−1−チオール、トリメトキシ(プロピル)シラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ブトキシトリメチルシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メトキシルトリエトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジメトキシルジプロポキシシラン、エチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキシロキシトリメチルシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、メトキシトリプロピルシラン、ジブトキシジメチルシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、オクチルオキシトリメチルシラン、ペンチルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルオキシトリメチルシラン、ジエトキシドデシルメチルシラン等が挙げられる。
【0062】
本実施形態において、アルコキシシラン化合物の「nが2であるアルコキシシラン化合物」、「nが1であるアルコキシシラン化合物」及び「nが0であるアルコキシシラン化合物」の混合比率は、以下の式(3)で算出される混合指標β1で表される。
混合指標β1={(βn2)/(βn0+βn1)} (3)
なお、上記式(3)中、
βn2:式(1)において、nが2であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
βn0:式(1)において、nが0であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
βn1:式(1)において、nが1であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
をそれぞれ示し、0≦{β2=(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}≦0.1である。
【0063】
本実施形態における樹脂組成物において、混合指標β1は、好ましくは0.01〜1.4、より好ましくは0.03〜1.2、さらに好ましくは0.05〜1.0である。混合指標β1を0.01以上とすることで、樹脂組成物の流動性が向上し、樹脂組成物と硬化剤の混合物をより効率的に基材へ含浸させることができるため、生産性が良くなる傾向にある。また、混合指標β1を1.4以下とすることで、金属箔張積層板、及びプリント配線板とした際、耐熱性、クラック耐性が向上する傾向にある。特に、樹脂組成物の流動性、耐熱性、及びクラック耐性のバランスを良くするには、混合指標β1が、0.03〜1.2であることがより好ましく、0.05〜1.0であることがさらに好ましい。なお、β2を0以上0.1以下とすることで、樹脂組成物の粘度が極度に上昇することを抑制でき、樹脂組成物の取り扱い性を向上させることができる。β2の値が小さいほど、樹脂組成物の粘度が低減する傾向にある。
【0064】
本実施形態における(A)エポキシ樹脂とアルコキシシラン化合物の「nが0〜2の整数であるアルコキシシラン化合物」の混合比率は、以下の式(4)で算出される混合指標γで表される。
混合指標γ=(γa)/(γs) (4)
なお、上記式(4)中、
γa:エポキシ樹脂の質量(g)、
γs:式(1)において、nが0〜2の整数であるアルコキシシラン化合物の質量(g)、である。
【0065】
混合指標γは、好ましくは0.02〜15であり、より好ましくは0.04〜7、さらに好ましくは0.08〜5である。混合指標γを0.02以上とすることで、金属箔張積層板、及びプリント配線板とした際の、クラック耐性が向上する傾向にあり、15以下とすることで、金属箔張積層板、及びプリント配線板とした際の、耐熱性、及び難燃性が向上する傾向にある。特に、耐熱性、難燃性、及びクラック耐性のバランスを良くするには、混合指標γが、0.04〜7であることがより好ましく、0.08〜5であることがさらに好ましい。
【0066】
上述した(A)エポキシ樹脂と、上述した式(1)で表されるアルコキシシラン化合物とを共加水分解縮合させて得られる、本実施形態における樹脂組成物のエポキシ当量(WPE)は、100〜700g/eqであることが好ましく、より好ましくは120〜500g/eq、さらに好ましくは150〜400g/eqである。エポキシ当量(WPE)100g/eq以上とすることで、未反応の環状エーテル基が残留することを抑制することができるため、難燃性に優れる傾向にあり、700g/eq以下とすることで、硬化物の架橋構造を密に形成できるため、クラック耐性に優れる傾向にある。また、エポキシ当量が120〜500g/eqとすることで、金属箔張積層板、及びプリント配線板とした際の耐熱性が一層優れる傾向にあり、より好ましくは150〜400g/eqである。
【0067】
本実施形態において、上述した(A)エポキシ樹脂と、上述した式(1)で表されるアルコキシシラン化合物とを共加水分解縮合させて得られる樹脂組成物の25℃における粘度は1000Pa・s以下の液体であることが好ましく、より好ましくは500Pa・s以下、さらに好ましくは100Pa・s以下の液体である。25℃における粘度が1000Pa・s以下であることで、液体としての流動性が向上し、後述する硬化剤や添加剤等の他の物質との混合性が良くなる傾向にある。また、25℃における粘度が500Pa・s以下であることで、基材へ含浸させる効率が向上するため、生産性が良くなる傾向にあり、さらに好ましくは100Pa・s以下である。
【0068】
(共加水分解縮合工程)
本実施形態において、まず、上述した(A)エポキシ樹脂と、上述した式(1)で表されるアルコキシシラン化合物とを共加水分解縮合させて樹脂組成物を得ることができる。本実施形態における「共加水分解縮合」とは、エポキシ樹脂存在下で行う加水分解縮合反応を意味し、エポキシ樹脂非共存下における反応とは明確に区別される。
【0069】
本実施形態における「共加水分解縮合」とは、脱水を伴わない還流工程と、それに続く脱水縮合工程との、少なくとも2つの工程により構成されている。「脱水を伴わない還流工程」とは、共加水分解のために配合した水や溶媒、及び、反応中に生じる、アルコキシシラン化合物由来の水や溶媒を、反応溶液に戻しながら反応を行う工程である。その方法は特に限定されないが、通常は、反応容器上部に冷却管を取り付け、生じた水や溶媒をリフラックスさせながら、反応を行う。「脱水縮合工程」とは、配合した水や溶媒、及び、上記「脱水を伴わない還流工程」で生じた水や溶媒を、除去しながら縮合反応を行う工程である。その方法は特に限定されないが、通常は、ロータリーエバポレータ等を用いて減圧蒸留することで、反応を行う。
【0070】
共加水分解縮合反応時の加熱温度は、好ましくは130℃以下、より好ましくは0〜120℃、さらに好ましくは0〜100℃である。130℃以下とすることで、樹脂組成物の変質を抑制できる傾向にある。また、共加水分解縮合の反応時間は、加熱温度により適宜選択されるが、未反応物質の残留量を低減させるためには、0.5時間以上であることが好ましく、より好ましくは1時間以上である。また、樹脂組成物の変性を抑えるためには、24時間以下であることが好ましく、より好ましく12時間以下である。
【0071】
本実施形態の樹脂組成物は、上述した(A)エポキシ樹脂とアルコキシシラン化合物との共加水分解縮合の際、加水分解縮合触媒を加えて行ってもよい。加水分解縮合触媒とは、従来公知の加水分解縮合反応を促進させるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウム、ホウ素、カドミウム、マンガン、ビスマス等)、有機金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウム、ホウ素、カドミウム、マンガン、ビスマス等の有機酸化物、有機酸塩、有機ハロゲン化物、アルコキシド等)、無機塩基(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、有機塩基(アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム等)等が挙げられる。それらの中でも、反応促進効果と樹脂の保存安定性のバランスの観点から、チタン又は錫の有機金属が好ましい。上記有機金属の中でも、有機錫が好ましい。
【0072】
有機錫とは、錫原子に少なくとも一つの有機基が結合しているものを指し、構造としては、モノ有機錫、ジ有機錫、トリ有機錫、テトラ有機錫等が挙げられ、それらの中でも、ジ有機錫が好ましい。
【0073】
有機錫としては、例えば、モノブチル錫トリクロライド、モノブチル錫オキサイド、モノオクチル錫トリクロライド、テトラn−オクチルチン、テトラn−ブチルチン、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジバーサテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキシラウレート、ジブチル錫ステアレート、ジブチル錫ジオレート、ジブチル錫・ケイ素エチル反応物、ジブチル錫塩とシリケートの化合物、ジオクチル錫塩とシリケートの化合物、ジブチル錫ビス(アセチルアセトネート)、ジブチル錫ビス(エチルマレート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレート)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレート)、ジブチル錫ビス(ベンジルマレート)、ジブチル錫ビス(ステアリルマレート)、ジブチル錫ビス(オレイルマレート)、ジブチル錫マレート、ジブチル錫ビス(O−フェニルフェノキサイド)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルメルカプトアセテート)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルメルカプトプロピオネート)、ジブチル錫ビス(イソノニル3−メルカプトプロピオネート)、ジブチル錫ビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチル錫ビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジオクチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジドデシルメルカプト、ジオクチル錫バーサテート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ビス(エチルマレート)、ジオクチル錫ビス(オクチルマレート)、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫ビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジオクチル錫ビス(2−エチルヘキシルメルカプトアセテート)、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ジエトキサイド、ジブチル錫ジブトキサイド、ジオクチル錫ジメトキサイド、ジオクチル錫ジエトキサイド、ジオクチル錫ジブトキサイド、オクチル酸錫、ステアリン酸錫等が挙げられる。上記の中でも、反応促進効果の観点から、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ジエトキサイド、ジブチル錫ジブトキサイド、ジオクチル錫ジメトキサイド、ジオクチル錫ジエトキサイド、ジオクチル錫ジブトキサイドが好ましい。
【0074】
これらの加水分解縮合触媒は単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。例えば、有機酸錫とアルカリ系有機錫を組み合わせて使用したり、錫等の有機酸塩で反応させた後に、無機塩基で処理したりすることも可能である。この場合の無機塩基としては、必要に応じ、樹脂組成物から固液分離による除去が容易であることから、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等の多価カチオンの水酸化物が好ましい。
【0075】
加水分解縮合触媒の添加量は特に限定されるものではないが、好ましい添加量は、上述の式(1)における(OR2)に対する比率である混合指標δから求めることができる。ここで、混合指標δは、以下の式(5)で表される。
混合指標δ=(δe)/(δs) (5)
式(5)中、
δe:加水分解縮合触媒の添加量(mol数)、
δs:式(1)における(OR2)の量(mol数)、をそれぞれ表す。
【0076】
混合指標δは、好ましくは0.0005〜5、より好ましくは0.001〜1、さらに好ましくは0.005〜0.5である。樹脂組成物の組成によっては、混合指標δが0.0005以上とすることで、加水分解縮合の促進効果を得ることができ、5以下とすることで、環状エーテル基の開環を抑制できる傾向にある。
【0077】
本実施形態の樹脂組成物を共加水分解縮合により得る工程において、水の添加量は特に限定されるものではないが、好ましい添加量は、上述の式(1)における(OR2)に対する比率である混合指標εから求めることができる。
ここで、混合指標εは、以下の式(6)で表される。
混合指標ε=(εw)/(εs) (6)
式(6)中、
εw:水の添加量(mol数)、
εs:式(1)における(OR2)の量(mol数)を、それぞれ表す。
【0078】
混合指標εは、好ましくは0.1〜5、より好ましくは0.2〜3、さらに好ましくは0.3〜1.5である。混合指標εを0.1以上とすることで、加水分解反応が進行しない現象を抑制することができ、混合指標εを5以下とすることで、環状エーテル基の開環を抑制できる傾向にある。上述した共加水分解縮合における水の添加は、アルコキシシラン化合物の加水分解が主たる目的であるので、「脱水を伴わない還流工程」で行う必要がある。その添加のタイミングは、特に限定されず、最初に添加してもよいし、フィードポンプ等を用いて、反応中に徐々に添加してもよい。
【0079】
本実施形態の共加水分解縮合反応は、無溶剤でも、溶剤中でも行うことができる。溶媒としては、エポキシ樹脂とアルコキシシラン化合物を溶解可能であり、これらに対して非活性である有機溶媒であれば、特に限定されず、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アニソール等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン等の芳香族水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上の混合物として用いることもできる。
【0080】
それらの中でも、反応中のエポキシ基の開環を抑制する観点から、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒が好ましく、エーテル系溶媒を50質量%以上含む溶媒がより好ましく、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の混合溶媒がさらに好ましく、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランが特に好ましい。また入手が容易であることから、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶媒も好ましい。
【0081】
溶剤の添加量は、共加水分解縮合反応に供されるエポキシ樹脂とアルコキシシラン化合物の合計質量に対して、好ましくは0.01〜20倍量、より好ましくは0.02〜15倍量、さらに好ましくは0.03〜10倍量である。溶剤の添加量により樹脂組成物の分子量を制御することが可能であるため、上述の添加量の範囲とすることで、適正な分子量、ひいては適性粘度の樹脂組成物を得ることができる。
【0082】
(硬化剤)
本実施形態の硬化剤としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、アミン系硬化剤、イミダゾール類、ジシアンジアミド及びその誘導体、酸及び酸無水物系硬化剤、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、ビスフェノール類、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒドとの重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物との重合物、フェノール類と芳香族ジメチロールとの重縮合物、又はビスメトキシメチルビフェニルとナフトール類若しくはフェノール類との縮合物等、ビフェノール類及びこれらの変性物、3フッ化ホウ素−アミン錯体、グアニジン誘導体等を用いることができる。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。これら硬化剤の中には、硬化速度や硬化条件等について相乗効果を示す組み合わせが多く、硬化促進及び配合量の低減のためには、複数を組み合わせて使用することが好ましい。それらの中でも、分子内に活性水素を有するものが適しているとの観点から、ノボラック型フェノール樹脂、アミン系硬化剤、イミダゾール類、ジシアンジアミド及びその誘導体がより好ましく、ノボラック型フェノール樹脂が特に好ましい。さらに、ノボラック型フェノール樹脂を使用する場合は、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン等と併用すると、更に優れた効果が得られる可能性がある。
【0083】
ノボラック型フェノール樹脂は、軟化点が100〜150℃で、水酸基当量が95〜110g/eqのものが好ましい。軟化点が150℃以下とすることで、樹脂組成物と硬化剤の混合液を効率よく基材へ含浸させることができ、100℃以上とすることで、金属箔張積層板、及びプリント配線板に優れた耐熱性、難燃性を付与できる。また、水酸基当量をかかる範囲とすることで、金属箔張積層板、及びプリント配線板に優れた耐熱性を付与できる。
【0084】
また、ノボラック型フェノール樹脂の添加量は、樹脂組成物に含まれる環状エーテル基1当量に対して、好ましくは0.2〜2当量、より好ましくは0.5〜1.5当量、さらに好ましくは0.7〜1.3当量である。添加量を0.2当量以上とすることで、未反応の環状エーテル基が残留することを抑制できるため、耐熱性を向上させることができ、2当量以下とすることで、未反応のノボラック型フェノール樹脂が残留することを抑制できるため、耐熱性を向上させることができる。
【0085】
アミン系硬化剤の具体例としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、メンセンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、N−アミノエチルピペラジン、メタキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、芳香族ジアミン共融混合物、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ポリアミンエポキシ樹脂アダクト、ポリアミン−エチレンオキシド−プロピレンオキシドアダクト、シアノエチル化ポリアミン、ケチミン化合物、直鎖状ジアミン、直鎖状第3アミン、テトラメチルグアニジン、アルキル−tert−モノアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールのトリ−2−エチルヘキシル酸塩、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、ジメチルアミノp−クレゾール等が挙げられる。それらの中でも、他の硬化剤との相乗効果の観点から、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールが好ましい。
【0086】
イミダゾール類の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1')〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1')〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。それらの中でも、入手が容易であることから、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾールが好ましい。
【0087】
ジシアンジアミドの誘導体の具体例としては、例えば、o−トリルビグアニリド、α−2,5−ジメチルビグアニド、α,ω−ジフェニルビグアニド、5−ヒドロキシナフチル−1−ビグアニド、α,α‘−ビスグアニルグアニジノジフェニルエーテル、フェニルビグアニド、p−クロルフェニルビグアニド、α−ベンジルビグアニド、α,ω−ジメチルビグアニド、α,α’−ヘキサメチレンビス〔ω−(p−クロルフェニル)〕ビグアニド、o−トリルビグアニド亜鉛塩、ジフェニルビグアニド鉄塩、フェニルビグアニド銅塩、ビグアニドニッケル塩、エチレンビスビグアニド塩酸塩、ラウリルビグアニド塩酸塩、フェニルビグアニドオキサレート等が挙げられる。
【0088】
酸及び酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、「4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30(質量比)」、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、「メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物/ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物」、テトラプロペニル無水コハク酸、オクテニルコハク酸無水物、2,5−ジケトテトラヒドロフラン等が挙げられる。それらの中でも、ポットライフが長く発熱が少ないため、脂環式酸無水物が好ましい。脂環式酸無水物の具体例としては、例えば、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0089】
(基材)
本実施形態の基材は、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを使用することができる。例えば、Fガラス、Dガラス、Sガラス、NEガラス、Tガラス、Eガラス、Qガラス等のガラス繊維、アルミナ、アスベスト、ボロン、シリカアルミナガラス、チラノ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア等の無機繊維、ポリアミド、芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド等のポリアミド繊維、ポリエステル、芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステル等のポリエステル繊維、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、カーボン、セルロース、テトラフルオロエチレン、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙等の有機繊維及びそれらの混合物等が挙げられる。それらの中でも、強度、吸水率、入手が容易である観点から、ガラス繊維が好ましい。
【0090】
基材の形状は、特に限定されず、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等が挙げられる。また、上記材質及び形状は、目的とする成型物の用途や性能により選択され、必要により単独もしくは2種類以上の材質及び形状からの使用が可能である。基材の厚みには特に限定はないが、通常は0.01〜0.5mm程度のものを、目的の積層板の厚さに合わせて使用することができる。また、基材は樹脂成分との親和性を高めるためシランカップリング剤、シリコーン化合物などで表面処理したものや機械的に開繊処理を施したものが耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。
【0091】
(添加剤)
本実施形態の樹脂組成物、樹脂組成物と硬化剤の混合物、及びその硬化物には、本実施形態の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、各種有機樹脂、無機充填剤、着色剤、レベリング剤、滑剤、界面活性剤、シリコーン系化合物、希釈剤(反応性希釈剤、非反応性希釈剤等)、酸化防止剤、光安定剤等を適宜添加することができる。また、その他に樹脂用の添加剤(可塑剤、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、耐衝撃強化剤、発泡剤、抗菌・防カビ剤、導電性フィラー、防曇剤、架橋剤等)として供される物質を、配合してもよい。
【0092】
ここで、有機樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。それらの中でも、エポキシ樹脂等の反応性の高い有機基を有するものが好ましい。
【0093】
無機充填材としては、例えば、シリカ類(溶融破砕シリカ、結晶破砕シリカ、球状シリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、沈降性シリカ等)シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン等が挙げられる。それらの中でも、シリカ類、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム等が好ましく、硬化物の物性を更に考慮すると、シリカ類がより好ましい。これらの無機充填材は単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
着色剤としては、着色を目的に使用される物質であれば特に限定されず、例えば、フタロシアニン、アゾ、ジスアゾ、キナクリドン、アントラキノン、フラバントロン、ペリノン、ペリレン、ジオキサジン、縮合アゾ、アゾメチン系の各種有機系色素、酸化チタン、硫酸鉛、クロムエロー、ジンクエロー、クロムバーミリオン、弁殻、コバルト紫、紺青、群青、カーボンブラック、クロムグリーン、酸化クロム、コバルトグリーン等の無機顔料等が挙げられる。これらの着色剤は単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
レベリング剤としては、特に限定されず、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリレート類からなる分子量4000〜12000のオリゴマー類、エポキシ化大豆脂肪酸、エポキシ化アビエチルアルコール、水添ひまし油、チタン系カップリング剤等が挙げられる。これらのレベリング剤は単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
滑剤としては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸系滑剤、ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の高級脂肪酸アミド系滑剤、硬化ひまし油、ブチルステアレート、エチレングリコールモノステアレート、ペンタエリスリトール(モノ−,ジ−,トリ−,又はテトラ−)ステアレート等の高級脂肪酸エステル系滑剤、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール等のアルコール系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リシノール酸、ナフテン酸等のマグネシウム、カルシウム、カドミウム、バリウム、亜鉛、鉛等の金属塩である金属石鹸類、カルナウバロウ、カンデリラロウ、ミツロウ、モンタンロウ等の天然ワックス類等が挙げられる。これらの滑剤は単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
界面活性剤とは、その分子中に溶媒に対して親和性を持たない疎水基と、溶媒に対して親和性を持つ親媒基(通常は親水基)を持つ、両親媒性物質を指す。また、その種類は特に限定されるものではなく、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
シリコーン系化合物としては、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン縮合物、シリコーン部分縮合物、シリコーンオイル、シランカップリング剤、シリコーンオイル、ポリシロキサン等が挙げられ、その両末端、片末端、あるいは側鎖に有機基を導入して変性したものも含まれる。その変性の方法も特に限定されず、例えば、アミノ変性、エポキシ変性、脂環式エポキシ変性、カルビノール変性、メタクリル変性、ポリエーテル変性、メルカプト変性、カルボキシル変性、フェノール変性、シラノール変性、ポリエーテル変性、ポリエーテル・メトキシ変性、ジオール変性等が挙げられる。
【0099】
反応性希釈剤としては、特に限定されず、例えば、アルキルグリシジルエーテル(アルキルモノグリシジルエーテル、アルキルコグリシジルエーテル等)、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェノールのモノグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリジジルエーテル、オルソクレジルグリシジルエーテル、メタパラクレジルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、アルカン酸グリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリジジルエーテル、脂肪酸変性エポキシ、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、1,2:8,9ジエポキシリモネン等が挙げられる。
【0100】
非反応性希釈剤としては、特に限定されず、例えば、ベンジルアルコール、ブチルジグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の高沸点溶剤等が挙げられる。
【0101】
その他希釈剤としては、特に限定されず、例えば、任意の有機溶媒、グリセリン、ポリオール、水、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0102】
酸化防止剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、トリフェニルホスフェート、フェニルイソデシルホスファイト等の有機リン系酸化防止剤、ジステアリル−3,3’−チオジプロピネート等の有機イオウ系酸化防止剤、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0103】
光安定剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリルレート系、ニッケル系、トリアジン系等の紫外線吸収剤や、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0104】
本実施形態の樹脂組成物、樹脂組成物と硬化剤の混合物、及びその硬化物には、さらに下記の物質を添加してもよい。例えば、溶剤、油脂、油脂加工品、天然樹脂、合成樹脂、顔料、染料、色素、剥離剤、防腐剤、接着剤、脱臭剤、凝集剤、洗浄剤、脱臭剤、pH調整剤、感光材料、インク、電極、めっき液、触媒、樹脂改質剤、可塑剤、柔軟剤、農薬、殺虫剤、殺菌剤、医薬品原料、乳化剤・界面活性剤、防錆剤、金属化合物、フィラー、化粧品・医薬品原料、脱水剤、乾燥剤、不凍液、吸着剤、着色剤、ゴム、発泡剤、着色剤、研磨剤、離型剤、凝集剤、消泡剤、硬化剤、還元剤、フラックス剤、皮膜処理剤、鋳物原料、鉱物、酸・アルカリ、ショット剤、酸化防止剤、表面被覆剤、添加剤、酸化剤、火薬類、燃料、漂白剤、発光素子、香料、コンクリート、繊維(カーボンファイバー、アラミド繊維、ガラス繊維等)、ガラス、金属、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、懸濁化剤、粘稠剤等が挙げられる。
【0105】
(プリプレグ)
本実施形態の樹脂組成物と、硬化剤の混合物を、基材に含浸させ、乾燥させることでプリプレグを製造することができる。混合物の基材への含浸には、直接、もしくは溶剤で希釈することで粘度を低くしたワニスを塗布、浸漬させる方法を用いることができ、混合物の粘度が高い場合には、効率的に含浸させるためワニスを用いることが好ましい。
【0106】
ワニスを作るための溶剤は、樹脂と相溶するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶剤、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどのケトン系溶剤、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジエチルアセトアミドなどのアミド系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素溶剤、酢酸エチル、メチルセロソルブアセテートなどのエステル系溶剤、アセトニトリル、ブチルニトリルなどのニトリル系溶剤、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶剤があり、これらは単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
塗布、浸漬させる方法としては、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター等を用いる方法や、混合物を溜めたバスに、基材を通過させた後、スリット、又はマングルで余剰な混合物を掻き落とす方法などが挙げられる。
【0108】
プリプレグにおいて基材の占める割合は、20〜80質量%であることが好ましい。割合を20質量%以上とすることで、優れた寸法安定性及び強度を付与することができ、80質量%以下とすることで、優れた耐熱性、難燃性、クラック耐性を付与することができる。
【0109】
ワニスにより含浸された基材を乾燥する方法としては、公知の方法、例えば熱風又は電磁波、が使用可能である。加熱乾燥時の温度は、100〜250℃であることが好ましい。250℃以下とすることで、組成物の熱分解、熱劣化を抑制できる傾向にあり、100℃以上とすることで、溶剤を効率的に蒸発させることができるため、生産性が良くなる傾向にある。また、加熱乾燥時間は乾燥時の温度により適宜選択されるが、溶剤の残留量を低減させるためには20秒以上が好ましく、組成物の熱分解、熱劣化を抑制するためには60分以下であることが好ましい。
【0110】
(金属箔張積層板)
上記のプリプレグ少なくとも1枚と金属箔を積層させ、加熱、加圧成型することにより金属箔張板を製造することができる。すなわち、本実施形態に係る金属箔張積層板は、前記プレプリグと、前記プレプリグに積層された金属箔と、を少なくとも備える、金属箔張積層板とすることができる。プリプレグが1枚の場合は、その上下両面もしくは片面に金属箔を積層させ、プリプレグが2枚以上の場合は、積層させたプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。加熱、加圧成型する方法としては、各種公知の方法を適宜選択して行えばよく、好ましくは温度100〜250℃、時間1分間〜10時間、圧力0.01〜100MPa、より好ましくは温度120〜200℃、時間1分間〜5時間、圧力0.1〜50MPaである。かかる温度、時間範囲とすることで、組成物の熱分解、熱劣化を抑制しながら、完全硬化状態とすることができる。また、かかる圧力範囲とすることで、基材が硬化樹脂表面から露出しない状態でありながら、所望の厚みを達成することができる。
【0111】
金属箔としては、各種公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、銅及び銅系合金、アルミ及びアルミ系合金、銀及び銀系合金、金及び金系合金、亜鉛及び亜鉛系合金、ニッケル及びニッケル系合金、錫及び錫系合金、鉄及び鉄系合金等が挙げられ、それらの中でも、電気導電性に優れ、樹脂との密着性に優れる点から、銅及び銅系合金が好ましい。
【0112】
また、金属箔として、キャリア箔付き極薄金属箔を用いることもできる。キャリア箔付き極薄金属箔とは、剥離可能なキャリア箔と極薄金属箔とを張り合わせた金属箔であることから、積層板の両面又は片面に極薄金属箔層を形成することができるため、例えば、セミアディティブ法などで回路を形成する場合、無電解メッキを行うことなく、極薄金属箔を直接給電層として電解メッキすることで、回路を形成後、フラッシュエッチングすることができる。
【0113】
キャリア箔付き極薄金属箔のキャリア箔としては、各種公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、銅及び銅系合金、アルミ及びアルミ系合金、銀及び銀系合金、金及び金系合金、亜鉛及び亜鉛系合金、ニッケル及びニッケル系合金、錫及び錫系合金、鉄及び鉄系合金等が挙げられる。また、金属箔としては、各種公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、銅及び銅系合金、アルミ及びアルミ系合金、銀及び銀系合金、金及び金系合金、亜鉛及び亜鉛系合金、ニッケル及びニッケル系合金、錫及び錫系合金、鉄及び鉄系合金等が挙げられ、それらの中でも、電気導電性に優れ、樹脂との密着性に優れる観点から、銅及び銅系合金が好ましい。
【0114】
(プリント配線板)
上記の積層板に対し、各種公知の方法を適宜選択することによりプリント配線板を製造することができる。すなわち、本実施形態に係るプリント配線基板は、前記金属箔張積層板の前記金属箔がエッチング処理された、プリント配線基板とすることができる。エッチング処理の方法等については、特に限定されず、公知の方法を採用してもよい。例えば、サブトラクティブ法によって配線パターン形成を行い、必要に応じてスルーホール等を形成することで、製造することができる。
【実施例】
【0115】
以下に本実施形態を具体的に説明した実施例を例示するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における物性の評価は以下の通りに行った。
【0116】
<エポキシ当量(WPE)>
「JIS K7236:2001(エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方)」に従って測定した。
【0117】
<粘度>
以下の条件で、測定を行った。
回転式E形粘度計:東機産業社製、「TV−22形」
ローター:3°×R14(必要に応じ、他のローターを選択してもよい。)
測定温度:25℃
サンプル量:0.4mL
【0118】
<混合指標αの算出>
混合指標αは、以下の式(2)から算出した。
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
ここで、
αb:(B)式(1)において、nが1〜2であり、R1として、少なくとも1つの環状エーテル基を有するアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
αc:(C)式(1)において、nが1〜2であり、R1として、少なくとも1つのアリール基を有するアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)。
【0119】
<混合指標β1の算出>
混合指標β1は、以下の式(3)から算出した。
混合指標β1={(βn2)/(βn0+βn1)} (3)
ここで、
βn2:式(1)において、nが2であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
βn0:式(1)において、nが0であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
βn1:式(1)において、nが1であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
なお、β2={(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}の値についても算出した。
【0120】
<混合指標γの算出>
混合指標γは、以下の式(4)から算出した。
混合指標γ=(γa)/(γs) (4)
ここで、
γa:エポキシ樹脂の質量(g)、
γs:式(1)において、nが0〜2であるアルコキシシラン化合物の質量(g)。
【0121】
<混合指標δの算出>
混合指標δは、以下の式(5)から算出した。
混合指標δ=(δe)/(δs) (5)
ここで、
δe:加水分解縮合触媒の添加量(mol数)、
δs:式(1)における(OR2)の量(mol数)。
【0122】
<混合指標εの算出>
混合指標εは、以下の式(6)から算出した。
混合指標ε=(εw)/(εs) (6)
ここで、
εw:水の添加量(mol数)、
εs:式(1)における(OR2)の量(mol数)。
【0123】
<ノボラック型フェノール樹脂の軟化点測定>
「JIS K6910:2007(フェノール樹脂試験方法)」の5.8項に従って、測定した。
【0124】
<ノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量測定>
「JIS K0070:1002(化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法)」に従って、水酸基価を測定し、水酸基当量に換算した。
【0125】
<ボイド評価>
表2に示す配合で、攪拌、混合された組成物を、フッ素コーティングされた容器(直径×高さ=7cmφ×5mm)に注ぎ、100℃で1時間加熱した。得られた半硬化サンプルを拡大鏡の下で、ボイドの有無を目視確認し、ボイドが確認されなかった場合、ボイド評価は良好と判断した。
【0126】
<耐熱性評価>
各実施例、各比較例の両面銅張積層板をそれぞれ10枚用い、オートクレーブにて、121℃で2時間加熱した後に、288℃に設定したハンダ浴に20秒含浸させて、板の膨れをみた。10枚の内、6〜8枚に膨れが生じなかった場合、耐熱性が良好と判断し、9枚以上膨れを生じなかった場合、耐熱性が特に良好と判断した。
【0127】
<難燃性評価>
各実施例、各比較例の両面銅張積層板の両面をエッチングして難燃性測定用の試料を作製し、得られた試料を用いて、UL94規格(Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances、UL94、Fifth Edition)に基づき、垂直法により評価し、V−0である場合、難燃性が良好と判断した。
【0128】
<クラック耐性>
各実施例、各比較例の両面銅張積層板を、長さ50mm、幅25mmに切断することで試験片を作製した。この試験片を10個用いて、気相冷熱衝撃試験(−40℃と120℃で各10分間処理することを1サイクルとし、合計1000サイクル)を行い、クラックの有無を目視で評価し、6〜8試験片にクラックが生じなかった場合、クラック耐性が良好と判断し、9試験片以上クラックが生じなかった場合、クラック耐性が特に良好と判断した。
【0129】
実施例及び比較例の樹脂組成物について、ボイドの発生がなく、耐熱性、難燃性、クラック耐性が良好、又は特に良好である場合、総合判定として合格「○」と判断した。そのなかでボイド、耐熱性、難燃性、クラック耐性のうち2項目以上が特に良好である場合を、総合判定として「◎」と判断した。
【0130】
実施例及び比較例で使用した原材料について、以下の(1)〜(10)に示す。
(1)エポキシ樹脂A:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(以下、「Bis−Aエポキシ樹脂」という)
・商品名:旭化成エポキシ社製、「AER2600」
また、上述の方法で測定した、エポキシ当量(WPE)及び粘度は、以下の通りであった。
・エポキシ当量(WPE):187g/eq
・粘度(25℃):14.3Pa・s
【0131】
(2)アルコキシシラン化合物H:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以下、「GPTMS」という)
・商品名:信越化学工業社製、「KBM−403」
(3)アルコキシシラン化合物I:フェニルトリメトキシシラン(以下、「PTMS」という)
・商品名:信越化学工業社製、「KBM−103」
(4)アルコキシシラン化合物J:ジメチルジメトキシシラン(以下、「DMDMS」という)
・商品名:信越化学工業社製、「KBM−22」
(5)アルコキシシラン化合物K:テトラエトキシシラン(以下、「TES」という)
・商品名:信越化学工業社製、「KBE−04」
(6)アルコキシシラン化合物L:ポリメトキシシロキサン(以下、「P−MS」という)
・商品名:扶桑化学工業社製、「メチルシリケート51」
【0132】
(7)溶剤
(7−1)テトラヒドロフラン(和光純薬工業社製、安定剤不含タイプ、以下、「THF」という)
(7−2)2−ブタノン(和光純薬工業社製、以下、「MEK」という)
【0133】
(8)加水分解縮合触媒:ジブチル錫ジラウレート(和光純薬工業社製、以下、「DBTDL」という)
(9)硬化剤
(9−1)硬化剤A:ノボラック型フェノール樹脂(DIC社製、商品名「PHENOLITE」;水酸基当量104g/eq、軟化点100℃)(以下、「NP樹脂」という)、
(9−2)硬化剤B:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(サンアプロ社製、商品名「DBU」)(以下、「DBU」という)、
(10)基材:ガラスクロス(旭シェーベル社製、商品名「2116」)
【0134】
(合成例1)
樹脂組成物A:樹脂組成物Aを以下の手順で製造し、評価した。
(1)準備:循環恒温水槽を5℃にセットし、冷却管に還流させた。更に、マグネチックスターラーの上に、80℃のオイルバスを載せた。
(2)表1の組成比率に従って、25℃の雰囲気下で、エポキシ樹脂、アルコキシシラン化合物及びTHFを、攪拌子を投入したフラスコに入れて混合攪拌後、更に、水と加水分解縮合触媒を添加して、混合攪拌した。
(3)続いて、フラスコに冷却管をセットし、速やかに、80℃のオイルバスに浸して攪拌を開始し、リフラックスさせながら10時間反応させた。
(4)反応終了後、25℃まで冷却後、フラスコから冷却管を外し、還流工程終了後サンプル溶液を採取した。
(5)還流工程終了後の溶液を、エバポレーターを使用して、400Pa、50℃で1時間留去した後、更に、80℃で5時間留去しながら、脱水縮合反応を行った。
(6)反応終了後、25℃まで冷却し、樹脂組成物Aを得た。
(7)この樹脂組成物における、混合指標α〜εを、表3に示した。
(8)更に、上述の方法に従って、上記(6)で得た樹脂組成物Aの、エポキシ当量(WPE)を測定した。樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=275g/eqであり、適正な値を示した。粘度は80.1Pa・sと流動性のある液体であった。
【0135】
(合成例2)
樹脂組成物B:表1の組成比率に従って、合成例1と同様の方法で、樹脂組成物Bを合成し、評価した。樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=231g/eqであり、適正な値を示した。粘度は13.2Pa・sと流動性のある液体であった。
【0136】
(合成例3)
樹脂組成物C:表1の組成比率に従って、合成例1と同様の方法で、樹脂組成物Cを合成し、評価した。樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=210g/eqであり、適正な値を示した。粘度は15.3Pa・sと流動性のある液体であった。
【0137】
(合成例4)
樹脂組成物D:表1の組成比率に従って、合成例1と同様の方法で、樹脂組成物Dを合成し、評価した。樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=204g/eqであり、適正な値を示した。粘度は9.8Pa・sであり、流動性のある液体であった。
【0138】
(合成例5)
樹脂組成物E:表1の組成比率に従って、合成例1と同様の方法で、樹脂組成物Eを合成し、評価した。樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=191g/eqであり、適正な値を示した。粘度は10.1Pa・sであり、流動性のある液体であった。
【0139】
(合成例6)
樹脂組成物F:表1の組成比率に従って、合成例1と同様の方法で、樹脂組成物Fを合成し、評価した。樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=311g/eqであり、適正な値を示した。粘度は200Pa・sであり、流動性のある液体であった。
【0140】
(合成例7)
樹脂組成物G:表1の組成比率に従って、合成例1と同様の方法で、樹脂組成物Gを合成し、評価した。樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=361g/eqであり、適正な値を示した。粘度は380Pa・sであり、流動性のある液体であった。
【0141】
(合成例8)
樹脂組成物H:表1の組成比率に従って、合成例1と同様の方法で、樹脂組成物Gを合成し、評価した。樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=221g/eqであり、適正な値を示した。粘度は99.3Pa・sであり、流動性のある液体であった。
【0142】
(比較合成例1)
樹脂組成物I:表1の組成比率に従って、合成例1と同様の方法で、樹脂組成物Hを合成し、評価した。樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=183g/eqであり、適正な値を示した。粘度は9.2Pa・sであり、流動性のある液体であった。
【0143】
(比較合成例2)
樹脂組成物J:表1の組成比率に従って、合成例1と同様の方法で、樹脂組成物Iを合成し、評価した。樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=389g/eqであり、適正な値を示した。粘度は1000Pa・s以上と計測上限を超えており、流動性のないものであった。
【0144】
(比較合成例3)
樹脂組成物K:表1の組成比率に従って、反応容器に添加し、85℃のオイルバスに浸して攪拌・溶解した。更に、窒素パージを行いながら、オイルバスの温度を105℃に上げて8時間、脱アルコール反応を行った。次に、60℃まで冷却の後、12000Paに減圧し、溶存アルコールを除去し、樹脂組成物Hを合成し、評価した。樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=250g/eqであり、適正な値を示した。粘度は3.2Pa・sであり、流動性のある液体であった。
【0145】
(実施例1)
合成例1の樹脂組成物Aを使用し、表2の組成に従って原料を配合し、攪拌、混合された組成物を、フッ素コーティングされた容器(直径×高さ=7cmφ×5mm)に注ぎ、100℃で1時間加熱した。得られた半硬化サンプルを拡大鏡の下で、ボイドの有無を目視確認したところ、ボイドの発生はなく、ボイド評価は良好と判断した。
合成例1の樹脂組成物Aを使用し、表2の組成に従って原料を配合し、さらに有機溶剤としてMEKを固形分が50%となるように配合することで、樹脂ワニスAを調整した。
上記樹脂ワニスAを樹脂分約40%になるようガラスクロスに含浸させた後、120℃で30分間、乾燥させて、プリプレグAを作製した。プリプレグAを4枚重ね、その上下に厚み35μmの銅箔を重ね合わせたものを温度180℃、3MPa、150分間加熱、加圧して両面銅張り積層板Aを作製した。
【0146】
積層板Aを10枚用い、オートクレーブにて、121℃で2時間加熱した後に、288℃に設定したハンダ浴に20秒含浸させたところ、10枚/10枚で膨れを生じなかったことから、耐熱性が特に良好と判断した。積層板Aの両面をエッチングして難燃性測定用の試料を作製し、得られた試料を用いて、UL94規格(Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances、UL94、Fifth Edition)に基づき、垂直法により評価したところ、V−0であることから、難燃性が良好と判断した。
積層板Aを長さ50mm、幅25mmに切断することで試験片を作製し、この試験片を10個用いて、気相冷熱衝撃試験(−40℃と120℃で30分間処理することを1サイクルとし、合計500サイクル)を行い、クラックの有無を目視で評価し、9個/10個でクラックが生じなかったことから、クラック耐性が特に良好と判断した。
上記の結果から、樹脂組成物Aを用いることで、ボイドの発生がなく、耐熱性、難燃性、クラック耐性が特に良好、又は良好であることから、総合判定として合格であると判断した。
【0147】
(実施例2)
合成例2の樹脂組成物Bを使用し、実施例1と同様の方法で製造し、評価した。評価結果、及び混合指標α〜εを表3に示す。合成例2の樹脂組成物Bを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ボイドの評価をしたところ、ボイドの発生はなく、ボイド評価は良好と判断した。合成例2の樹脂組成物Bを使用した以外は、実施例1と同様の方法で積層板Bを作製した。
積層板Bを用い、実施例1と同様の方法で耐熱性を評価したところ、10枚/10枚で膨れを生じなかったことから、耐熱性が特に良好と判断した。
積層板Bを用い、実施例1と同様の方法で難燃性を評価したところ、V−0であることから、難燃性が良好と判断した。
積層板Bを用い、実施例1と同様の方法でクラック耐性を評価したところ、9個/10個でクラックが生じなかったことから、クラック耐性が特に良好と判断した。
上記の結果から、樹脂組成物Bを用いることで、ボイドの発生がなく、耐熱性、難燃性、クラック耐性が特に良好、又は良好であることから、総合判定として合格であると判断した。
【0148】
(実施例3)
合成例3の樹脂組成物Cを使用し、実施例1と同様の方法で製造し、評価した。評価結果、及び混合指標α〜εを表3に示す。
合成例3の樹脂組成物Cを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ボイドの評価をしたところ、ボイドの発生はなく、ボイド評価は良好と判断した。
合成例3の樹脂組成物Cを使用した以外は、実施例1と同様の方法で積層板Cを作製した。
上記積層板Cを用い、実施例1と同様の方法で耐熱性を評価したところ、10枚/10枚で膨れを生じなかったことから、耐熱性が良好と判断した。
積層板Cを用い、実施例1と同様の方法で難燃性を評価したところ、V−0であることから、難燃性が良好と判断した。
積層板Cを用い、実施例1と同様の方法でクラック耐性を評価したところ、9個/10個でクラックが生じなかったことから、クラック耐性が良好と判断した。
上記の結果から、樹脂組成物Cを用いることで、ボイドの発生がなく、耐熱性、難燃性、クラック耐性が特に良好、又は良好であることから、総合判定として合格であると判断した。
【0149】
(実施例4)
合成例4の樹脂組成物Dを使用し、実施例1と同様の方法で製造し、評価した。評価結果、及び混合指標α〜εを表3に示す。合成例4の樹脂組成物Dを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ボイドの評価をしたところ、ボイドの発生はなく、ボイド評価は良好と判断した。
合成例4の樹脂組成物Dを使用した以外は、実施例1と同様の方法で積層板Dを作製した。
積層板Dを用い、実施例1と同様の方法で耐熱性を評価したところ、8枚/10枚で膨れを生じなかったことから、耐熱性が良好と判断した。
積層板Dを用い、実施例1と同様の方法で難燃性を評価したところ、V−0であることから、難燃性が良好と判断した。
積層板Dを用い、実施例1と同様の方法でクラック耐性を評価したところ、9個/10個でクラックが生じなかったことから、クラック耐性が特に良好と判断した。
上記の結果から、樹脂組成物Dを用いることで、ボイドの発生がなく、耐熱性、難燃性、クラック耐性が特に良好、又は良好であることから、総合判定として合格であると判断した。
【0150】
(実施例5)
合成例5の樹脂組成物Eを使用し、実施例1と同様の方法で製造し、評価した。評価結果、及び混合指標α〜εを表3に示す。
合成例5の樹脂組成物Eを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ボイドの評価をしたところ、ボイドの発生はなく、ボイド評価は良好と判断した。
合成例5の樹脂組成物Eを使用した以外は、実施例1と同様の方法で積層板Eを作製した。
積層板Eを用い、実施例1と同様の方法で耐熱性を評価したところ、6枚/10枚で膨れを生じなかったことから、耐熱性が良好と判断した。
積層板Eを用い、実施例1と同様の方法で難燃性を評価したところ、V−0であることから、難燃性が良好と判断した。
積層板Eを用い、実施例1と同様の方法でクラック耐性を評価したところ、10個/10個でクラックが生じなかったことから、クラック耐性が特に良好と判断した。
上記の結果から、樹脂組成物Eを用いることで、ボイドの発生がなく、耐熱性、難燃性、クラック耐性が特に良好、又は良好であることから、総合判定として合格であると判断した。
【0151】
(実施例6)
合成例6の樹脂組成物Fを使用し、実施例1と同様の方法で製造し、評価した。評価結果、及び混合指標α〜εを表3に示す。
合成例6の樹脂組成物Fを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ボイドの評価をしたところ、ボイドの発生はなく、ボイド評価は良好と判断した。
合成例6の樹脂組成物Fを使用した以外は、実施例1と同様の方法で積層板Fを作製した。
積層板Fを用い、実施例1と同様の方法で耐熱性を評価したところ、7枚/10枚で膨れを生じなかったことから、耐熱性が良好と判断した。
積層板Fを用い、実施例1と同様の方法で難燃性を評価したところ、V−0であることから、難燃性が良好と判断した。
積層板Fを用い、実施例1と同様の方法でクラック耐性を評価したところ、8個/10個でクラックが生じなかったことから、クラック耐性が良好と判断した。
上記の結果から、樹脂組成物Fを用いることで、ボイドの発生がなく、耐熱性、難燃性、クラック耐性が全て良好であることから、総合判定として合格であると判断した。
【0152】
(実施例7)
合成例7の樹脂組成物Gを使用し、実施例1と同様の方法で製造し、評価した。評価結果、及び混合指標α〜εを表3に示す。
合成例7の樹脂組成物Gを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ボイドの評価をしたところ、ボイドの発生はなく、ボイド評価は良好と判断した。
合成例7の樹脂組成物Gを使用した以外は、実施例1と同様の方法で積層板Gを作製した。
積層板Gを用い、実施例1と同様の方法で耐熱性を評価したところ、7枚/10枚で膨れを生じなかったことから、耐熱性が良好と判断した。
積層板Gを用い、実施例1と同様の方法で難燃性を評価したところ、V−0であることから、難燃性が良好と判断した。
積層板Gを用い、実施例1と同様の方法でクラック耐性を評価したところ、6個/10個でクラックが生じなかったことから、クラック耐性が良好と判断した。
上記の結果から、樹脂組成物Gを用いることで、ボイドの発生がなく、耐熱性、難燃性、クラック耐性が全て良好であることから、総合判定として合格であると判断した。
【0153】
(実施例8)
合成例8の樹脂組成物Hを使用し、実施例1と同様の方法で製造し、評価した。評価結果、及び混合指標α〜εを表3に示す。
合成例8の樹脂組成物Hを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ボイドの評価をしたところ、ボイドの発生はなく、ボイド評価は良好と判断した。
合成例8の樹脂組成物Hを使用した以外は、実施例1と同様の方法で積層板Hを作製した。
上記積層板Hを用い、実施例1と同様の方法で耐熱性を評価したところ、10枚/10枚で膨れを生じなかったことから、耐熱性が良好と判断した。
積層板Hを用い、実施例1と同様の方法で難燃性を評価したところ、V−0であることから、難燃性が良好と判断した。
積層板Hを用い、実施例1と同様の方法でクラック耐性を評価したところ、9個/10個でクラックが生じなかったことから、クラック耐性が良好と判断した。
上記の結果から、樹脂組成物Hを用いることで、ボイドの発生がなく、耐熱性、難燃性、クラック耐性が特に良好、又は良好であることから、総合判定として合格であると判断した。
【0154】
(比較例1)
比較合成例1の樹脂組成物Iを使用し、実施例1と同様の方法で製造し、評価した。評価結果、及び混合指標α〜εを表3に示す。
比較合成例1の樹脂組成物Iを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ボイドの評価をしたところ、ボイドの発生はなく、ボイド評価は良好と判断した。
比較合成例1の樹脂組成物Iを使用した以外は、実施例1と同様の方法で積層板Iを作製した。
積層板Iを用い、実施例1と同様の方法で耐熱性を評価したところ、5枚/10枚で膨れを生じており、耐熱性は不良と判断した。
積層板Iを用い、実施例1と同様の方法で難燃性を評価したところ、V−0でないことから、難燃性は不良と判断した。
積層板Iを用い、実施例1と同様の方法でクラック耐性を評価したところ、10個/10個でクラックが生じなかったことから、クラック耐性が特に良好と判断した。
上記の結果から、樹脂組成物Iを用いることで、ボイドの発生はなく、クラック耐性が特に良好であるものの、耐熱性、難燃性が不良であることから、総合判定として不合格であると判断した。
【0155】
(比較例2)
比較合成例2の樹脂組成物Jを使用し、実施例1と同様の方法で製造し、評価した。評価結果、及び混合指標α〜εを表3に示す。
上記比較合成例2の樹脂組成物Jを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ボイドの評価をしたところ、ボイドの発生はなく、ボイド評価は良好と判断した。
比較合成例2の樹脂組成物Jを使用した以外は、実施例1と同様の方法で積層板Jを作製した。
積層板Jを用い、実施例1と同様の方法で耐熱性を評価したところ、4枚/10枚で膨れを生じており、耐熱性は不良と判断した。
積層板Jを用い、実施例1と同様の方法で難燃性を評価したところ、V−0であることから、難燃性が良好と判断した。
積層板Jを用い、実施例1と同様の方法でクラック耐性を評価したところ、2個/10個でクラックが生じなかったことから、クラック耐性は不良と判断した。
上記の結果から、樹脂組成物Iを用いることで、ボイドの発生はなく、難燃性が良好であるものの、耐熱性、クラック耐性が不良であることから、総合判定として不合格であると判断した。
【0156】
(比較例3)
比較合成例3の樹脂組成物Kを使用し、実施例1と同様の方法で製造し、評価した。
比較合成例3の樹脂組成物Kを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ボイドの評価をしたところ、ボイドの発生はなく、ボイド評価は良好と判断した。
比較合成例3の樹脂組成物Kを使用した以外は、実施例1と同様の方法で積層板Kを作製した。
積層板Kを用い、実施例1と同様の方法で耐熱性を評価したところ、4枚/10枚で膨れを生じており、耐熱性は不良と判断した。
積層板Kを用い、実施例1と同様の方法で難燃性を評価したところ、V−0でないことから、難燃性は不良と判断した。
積層板Kを用い、実施例1と同様の方法でクラック耐性を評価したところ、0個/10個でクラックが生じなかったことから、クラック耐性は不良と判断した。
上記の結果から、樹脂組成物Kを用いることで、ボイドの発生はないものの、耐熱性、難燃性、クラック耐性が不良であることから、総合判定として不合格であると判断した。
【0157】
(比較例4)
表2の組成に従って、樹脂組成物Aの代わりに、Bis−Aエポキシ樹脂、GPTMS、PTMSを使用して、実施例1と同様の方法で製造し、評価した。結果を表3に示す。
樹脂組成物Aの代わりに、Bis−Aエポキシ樹脂、GPTMS、PTMSを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ボイドの評価をしたところ、ボイドが確認され、ボイド評価は不良と判断した。
また、ボイドが発生したことから、耐熱性、難燃性、クラック耐性を評価するための積層板を製造することが困難であった。
【0158】
(比較例5)
表2の組成に従って、樹脂組成物Aの代わりに、Bis−Aエポキシ樹脂を使用して、実施例1と同様の方法で製造し、評価した。結果を表3に示す。
樹脂組成物Aの代わりに、Bis−Aエポキシ樹脂を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ボイドの評価をしたところ、ボイドの発生はなく、ボイド評価は良好と判断した。
樹脂組成物Aの代わりに、Bis−Aエポキシ樹脂を使用した以外は、実施例1と同様の方法で積層板Lを作製した。
積層板Lを用い、実施例1と同様の方法で耐熱性を評価したところ、1枚/10枚で膨れを生じており、耐熱性は不良と判断した。
積層板Lを用い、実施例1と同様の方法で難燃性を評価したところ、V−0でないことから、難燃性は不良と判断した。
積層板Lを用い、実施例1と同様の方法でクラック耐性を評価したところ、10個/10個でクラックが生じなかったことから、クラック耐性が特に良好と判断した。
上記の結果から、樹脂組成物Aの代わりに、Bis−Aエポキシ樹脂を用いることで、ボイドの発生はなく、クラック耐性は特に良好であるものの、耐熱性、難燃性が不良であることから、総合判定として不合格であると判断した。
【0159】
【表1】

【0160】
【表2】

【0161】
【表3】

【0162】
表1〜表3に示すように、各実施例では、硬化時のボイドが発生せず、耐熱性、難燃性、クラック耐性に優れており、高い信頼性を有することが確認された。一方、各比較例では、ボイド、耐熱性、難燃性、及びクラック耐性の少なくともいずれかが不合格であった。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明に係るプリプレグ、金属張箔張積層板、及びプリント配線板は、電気材料分野の基板材料等として好適に用いることができ、例えば、テレビ、デジタルカメラ、パーソナルコンピューター、プリンター、オーディオ機器、電子レンジ、冷蔵庫等の家電製品の基板材料や、観測機器、電磁波発生器、発振器、太陽電池等の基板材料としての産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、下記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物と、を共加水分解縮合させて得られる樹脂組成物であって、
【化1】

(式中、nは0〜3の整数を表し、R1は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は有機基を表す。また、R2は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
前記アルコキシシラン化合物は、
(B)前記式(1)において、nは1〜2の整数であり、R1として、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C)前記式(1)において、nは1〜2の整数であり、R1として、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
を含み、かつ、下記式(2)で表される(B)及び(C)の混合指標αが、0.001〜19である樹脂組成物と、
硬化剤と、
基材と、
を含有するプリプレグ;
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
(式中、αb:(B)成分の含有量(mol%)、αc:(C)成分の含有量(mol%))。
【請求項2】
前記(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100〜600g/eqであり、かつ、前記(A)エポキシ樹脂の25℃における粘度は、1000Pa・s以下である、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
前記(A)エポキシ樹脂は、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂である、請求項1又は2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記アルコキシシラン化合物として、
(D)前記式(1)において、nが0である、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物を、更に含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項5】
下記式(3)で表される前記アルコキシシラン化合物の混合指標β1が、0.01〜1.4である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプリプレグ;
混合指標β1={(βn2)/(βn0+βn1)} (3)
(式中、
βn2:前記式(1)において、nが2であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
βn0:前記式(1)において、nが0であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
βn1:前記式(1)において、nが1であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
ここで、0≦{β2=(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}≦0.1である)。
【請求項6】
下記式(4)で表される、前記(A)エポキシ樹脂と前記アルコキシシラン化合物との混合指標γが、0.02〜15である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリプレグ;
混合指標γ=(γa)/(γs) (4)
(式中、
γa:エポキシ樹脂の質量(g)、
γs:前記式(1)において、nが0〜2の整数であるアルコキシシラン化合物の質量(g))
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のプリプレグと、
前記プレプリグに積層された金属箔と、
を少なくとも備える、金属箔張積層板。
【請求項8】
請求項7記載の金属箔張積層板の前記金属箔がエッチング処理された、プリント配線板。

【公開番号】特開2011−126977(P2011−126977A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285621(P2009−285621)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】