プリプレグの検査方法
【課題】 プリプレグを正確に検査することができるプリプレグの検査方法を提供する。
【解決手段】 繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸乾燥して得られるプリプレグ1のボイド2の存在を観測することにより、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態を検査するプリプレグの検査方法に関する。プリプレグ1に光3を照射してボイド2の像5をプリプレグ1の表面に現出する。検査対象のボイド2の像5の幅寸法の2/3以上の分解能を有するカメラ4でプリプレグ1の表面を撮像する。撮像により得られるプリプレグ1の表面の撮像データを二値化処理する。二値化処理により得られる二値画像に基づいてボイド2の像5の面積を算出する。プリプレグ1の所定面積に占めるボイド2の像5の面積比率を算出する。
【解決手段】 繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸乾燥して得られるプリプレグ1のボイド2の存在を観測することにより、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態を検査するプリプレグの検査方法に関する。プリプレグ1に光3を照射してボイド2の像5をプリプレグ1の表面に現出する。検査対象のボイド2の像5の幅寸法の2/3以上の分解能を有するカメラ4でプリプレグ1の表面を撮像する。撮像により得られるプリプレグ1の表面の撮像データを二値化処理する。二値化処理により得られる二値画像に基づいてボイド2の像5の面積を算出する。プリプレグ1の所定面積に占めるボイド2の像5の面積比率を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔張り積層板やプリント配線板などを製造する際に用いられるプリプレグの検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリプレグの製造は、ガラスクロスなどの繊維基材にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸し、乾燥後に加熱等により繊維基材中の熱硬化性樹脂をBステージ状態にまで硬化するようにして行なわれている。このようなプリプレグには、熱硬化性樹脂の含浸時に繊維基材中に残存する空気や繊維基材中の溶剤の蒸発などにより、多数のボイドが発生することがあり、このボイドによりプリント配線板等の電気絶縁性などが低下する恐れがある。そこで、プリプレグを製品として出荷する前やプリント配線板等に成形する前に、ボイドの存在状況を観測して繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態を検査することが行なわれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、繊維基材の縦横糸ストランドの交差部位のボイド数を顕微鏡で拡大しながら計測するプリプレグの樹脂含浸性評価方法が記載されている。しかし、この方法では、ボイドの発生数を測定するだけであり、ボイドの大きさを考慮していないために、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態を検査する方法としては不充分であった。
【0004】
そこで、プリプレグをカメラで撮像し、そのプリプレグの画像中にあるボイドの画像の面積を算出し、プリプレグの一定の面積に占めるボイドの画像の面積の比率に基づいて繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態を検査する方法が提案されている。この方法によると、ボイドの発生数を測定するだけの場合よりも熱硬化性樹脂の含浸状態が定量的に、より正確に検査できるのである。
【0005】
このようにボイドの画像の面積を算出してプリプレグを検査する方法は、以下のようにして行なう。まず、リング型蛍光灯やハロゲン灯などを用いてプリプレグ1に光を照射し、プリプレグの表面にボイドの像を現出させる。ここで、ボイドは球状あるいは円柱状であるために、図3に示すように、ボイド2の中央部を通過する光は直進するが、ボイド2の表面近傍を通過する光3は屈折や拡散されることになる。従って、ボイド2の像5は、中央部分が明るい明部5aと、明部5aの周辺が明部5aよりも暗い暗部5bとで構成されることになる。図4において、(a)は球状のボイド2の像5であって略円形になり、(b)は円柱状のボイド2の像5であって略長円形となるが、いずれも、明部5aが中抜けとなった環状の像5となる。また、暗部5bの周辺部分は明部5aと略同等の明るさを有する周辺明部10となる。
【0006】
次に、プリプレグ1に光を照射した状態でプリプレグ1の表面をCCDカメラなどのカメラで撮像する。一般的に、カメラの分解能は大きいほど正確な形状に撮像することができるために、従来では確実に計測したい大きさのボイド2を3画素以上で撮像できるようにカメラの分解能を設定しており、より精度良くボイド2の形状を撮像するにはカメラの分解能を大きくする、すなわち、一個あたりの画素を小さくしてカメラの単位面積当たりの画素数を増やすようにしている。
【0007】
次に、撮像されたプリプレグ1の表面の撮像データをコンピュータなどの画像処理装置に入力して二値化処理を行なう。この二値化処理はカメラの各画素の明るさが所定のしきい値に達しているか否かに基づいて行なわれる。従って、像5の明部5a及び周辺明部10を撮す画素と、ボイド2の像5の暗部5bを撮す画素とはそれぞれ異なる値が設定されることになり、プリプレグ1の表面の二値画像は、図12に示すように、明部5a及び周辺明部10に相当する明画像部11と、暗部5bに相当する暗画像部12とで構成される。この二値画像は、例えば、明画像部11を白色で、暗画像部12を黒色で表すことができる。また、明部5aと明画像部11は同形状となり、暗部5bと暗画像部12は同形状となる。
【0008】
次に、上記の二値画像を用いてボイド2の像5の面積を画像処理装置にて算出する。ここで、暗画像部12の面積のみを算出すると、暗画像部12の内側の明画像部11の面積が算出されず、正確なボイド2の像5の面積を得ることができない。そこで、画像処理装置にて暗画像部12の内側の明画像部11に穴埋め処理などの改善処理を施し、暗画像部12の内側の明画像部11の面積も算出するようにし、暗画像部12とその内側の明画像部11の面積の合計を一つのボイド2の像5の面積として算出するようにしている。
【0009】
このようにして各ボイド2の像5の面積を算出すると共にプリプレグ1の所定面積内にある全てのボイド2の像5の合計面積を算出し、プリプレグ1の所定面積に占めるボイド2の像5の合計面積の比率を求める。そして、ボイド2の像5の合計面積の比率が大きい場合は、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態が不良であるとして処理し、ボイド2の像5の合計面積の比率が小さい場合は、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態が良好であるとして処理し、良品と不良品のプリプレグを検査することができるものである。
【特許文献1】特開平5−271441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記の画像処理装置による穴埋め処理などの改善処理は、暗画像部12で囲まれる部分を明画像部11と認識して行なわれるために、図12に示すような複数のボイド2の像5で囲まれたエリアSも周辺明部10に相当する部分であるにもかかわらず、暗画像部12の内側の明画像部11として認識されてしまい、エリアSの面積もボイド2の像5の面積として加算されることになり、プリプレグ1の所定面積に占めるボイド2の像5の合計面積の比率が大きく算出されやすい傾向にあった。従って、熱硬化性樹脂の含浸状態が良好であるプリプレグ1であるにもかかわらず、不良品として処理されることがあり、プリプレグ1を正確に検査することができないことがあった。特に、繊維基材として、縦糸と横糸の織成により形成されるガラスクロス等のクロスを用いた場合、縦糸と横糸に沿って円柱状のボイド2が発生するために、図12に示すようなエリアSが多く発生しやすく、プリプレグ1を正確に検査しにくかった。
【0011】
そこで、本発明者等は、ボイド2の像5を撮像するカメラのハード的な改良により、改善処理を行なう前の段階に得られる二値画像において、暗画像部12の内側に明画像部11を生じにくくし、これにより、画像処理装置によるソフト的な穴埋め処理などの改善処理を不要にし、上記問題を解決するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、複数のボイドにより囲まれるエリアが存在しても、そのエリアの面積がボイドの像の面積として加算されないようにして、プリプレグを正確に検査することができるプリプレグの検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のプリプレグの検査方法は、繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸乾燥して得られるプリプレグ1のボイド2の存在を観測することにより、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態を検査するプリプレグの検査方法であって、プリプレグ1に光3を照射してボイド2の像5をプリプレグ1の表面に現出し、検査対象のボイド2の像5の幅寸法の2/3以上の分解能を有するカメラ4でプリプレグ1の表面を撮像し、撮像により得られるプリプレグ1の表面の撮像データを二値化処理し、二値化処理により得られる二値画像に基づいてボイド2の像5の面積を算出し、プリプレグ1の所定面積に占めるボイド2の像5の面積比率を算出することを特徴とするものである。
【0014】
本発明においては、検査対象のボイド2の像5の幅寸法の2/3以上の分解能を有するカメラ4によりボイド2の像5を撮像することにより、カメラ4の1画素又は2画素でボイド2の像5をその幅方向において撮像することができ、検査対象のボイド2の像5の明部5aを認識しない状態でプリプレグ1の表面の撮像データを得ることができるものであり、撮像データを二値化処理して得られるボイド2の像5の二値画像に対して穴埋め処理などの改善処理を不要にすることができる。従って、複数のボイド2により囲まれるエリアSが存在しても、そのエリアSがボイド2の像5の面積として加算されないようにすることができ、プリプレグ1を正確に検査することができるものである。
【0015】
本発明において、カメラ4の分解能を繊維基材のヤーンの像6の幅寸法の2倍以上にすることが好ましい。この場合、ヤーンの像6を認識しない状態でプリプレグ1の表面の撮像データを得ることができ、撮像データを二値化処理する際にヤーンの像6がボイド2の像5と誤認されないようにすることができて、ボイド2の像5の面積の精度を向上させることができるものである。
【0016】
また、本発明において、カメラ4によりプリプレグ1の表面を撮像する前に、プリプレグ1を熱硬化性樹脂の軟化点以上の温度で加熱するのが好ましい。この場合、プリプレグ1の表面の凹凸、クラック、カット粉などの不良部分を加熱により低減させることができ、プリプレグ1の表面を撮像する際に不良部分のノイズを少なくすることができて、ボイド2の像5の面積の精度を向上させることができるものである。
【0017】
また、本発明において、カメラ4による撮像範囲内における繊維基材7の縦糸8と横糸9の交差部位30の数を撮像毎に一定にするのが好ましい。この場合、撮像毎にボイド2の発生密度が異なる部分が撮像されるのを少なくすることができ、均質な検査を行うことができるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数のボイドにより囲まれるエリアが存在しても、そのエリアの面積がボイドの像の面積として加算されないようにして、プリプレグを正確に検査することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0020】
本発明は、プリプレグ1のボイド2の存在を観測することにより、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態を検査する方法に関するものである。
【0021】
本発明において、検査対象となるプリプレグ1は、繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸乾燥した後、繊維基材中の熱硬化性樹脂を加熱等によりBステージ状態にまで硬化したものである。繊維基材としては縦糸と横糸とを織成して形成されるクロスを用いることができ、縦糸と横糸としてガラス繊維を用いたガラスクロスを例示することができる。また、縦糸と横糸としてポリエステル繊維などの合成繊維を用いたクロスであっても良い。熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂やフェノール樹脂などのプリプレグ用として汎用されている熱硬化性樹脂を例示することができる。この熱硬化性樹脂はワニスの状態で繊維基材に含浸することができる。
【0022】
プリプレグ1には熱硬化性樹脂の含浸時に繊維基材中に残存する空気や繊維基材中の溶剤の蒸発などによりボイド2が発生している。ボイド2としては球状のものと円柱状のものとがある。球状のボイド2はその外径(外径サイズ)が10〜200μm程度である。また、円柱状のボイド2は縦糸や横糸を構成する多数本のヤーンの間に生じるものであり、ヤーンの繊維方向(長手方向)と平行に長く形成されるものである。また、円柱状のボイド2の長手方向の寸法は一定ではないが、その外径はヤーンの外径の2倍程度になるという規則性がある。例えば、ヤーンの外径が8μmであれば、円柱状のボイド2の外径は16μm程度となる。従って、ヤーンの外径が一定の繊維基材を用いたプリプレグ1ではその全体に生じる円柱状のボイド2の外径が略一定になる。
【0023】
図1に本発明で使用する画像計測システムの一例を示す。この画像計測システムは、光源40とカメラ4及び画像処理装置41を備えるものである。光源40はバックライトとして使用する面光源であって、リング型蛍光灯やハロゲン灯などの照明器具を用いることができる。カメラ4としてはCCDカメラなどの電荷結合素子などの固体撮像素子を用いたカメラを使用することができる。画像処理装置41としてはコンピュータ(電子計算機)を用いることができる。
【0024】
上記カメラ4は検査対象のボイド2の像5の幅寸法の2/3以上の分解能を有するものである。ここで、カメラ4の分解能はカメラ4の一個の画素4aの幅寸法に対応するものである。カメラ4の分解能の基準となる検査対象のボイド2の像5とは、円柱状のボイド2の像5である。上記のように球状のボイド2の外径は一定でなく、広い範囲でばらついている。従って、球状のボイド2の像5の幅寸法(外形寸法)もばらつくことになり、カメラ4の分解能の基準とすることはできない。一方、円柱状のボイド2の外径はヤーンの外径が決まればほぼ一定となるために、図2に示すように、円柱状のボイド2の像5の幅寸法Hは円柱状のボイド2の外径と同等で一定となり、従って、円柱状のボイド2の像5の幅寸法Hをカメラ4の分解能の基準とする。カメラ4の分解能の上限は検査対象のボイド2の像5の幅寸法Hの2倍以下とするのが好ましく、これ以上になると、検査対象のボイド2の像5をカメラ4で認識できなくなる恐れがある。より好ましくは、カメラ4の分解能の上限は検査対象のボイド2の像5の幅寸法Hと同等にするものであり、カメラ4の分解能がボイド2の像5の幅寸法Hよりも大きくなると、複数のボイド2が近接して存在した場合に、正確に一つのボイド2の像5を認識することができなくなる恐れがある。
【0025】
そして、本発明ではプリプレグの検査を以下のようにして行なう。まず、光源40とカメラ4との間にプリプレグ1を配置する。このプリプレグ1は製品から一部を切り取って検査試料として得たものである。次に、プリプレグ1に対してその下方から光源40により光3を照射する。この光3は平行光であって、プリプレグ1の全体に均一に照射されるものであり、この光の照射によりプリプレグ1の表面(上面)にはボイド2の像5が明瞭に現出される。図3に示すように、プリプレグ1の下面に垂直に入射した光3は、ボイド2の無い部分及びボイド2の中央部分を通過する場合は直進する(矢印ロで示す)ためにその部分は明るく映るが、ボイド2の表面近傍では光の屈折、散乱が起こり、光3は直進せずに外側に進んだり遮断されるため(矢印イで示す)、その部分は暗い影として映る。従って、ボイド2の像5は上記のように、中央部分が明るい明部5aと、明部5aの周辺が明部5aよりも暗いドーナツ状の暗部5bとで構成されることになる。また、図4(a)のように、球状のボイド2の像5は略円形になり、図4(b)のように円柱状のボイド2の像5は略長円形となるが、いずれも、明部5aが中抜けとなった環状の像5となる。
【0026】
ここで、ボイド2の像5の明部5aの幅寸法hはボイド2の像5の幅寸法Hの1/3程度となる。球状のボイド2の像5の場合、ボイド2の像5の幅寸法Hはボイド2の像5の暗部5bの直径(外径)となり、ボイド2の像5の明部5aの幅寸法hはボイド2の像5の明部5aの直径(暗部5bの内径)となる。また、円柱状のボイド2の像5の場合、ボイド2の像5の幅寸法Hはボイド2の像5の暗部5bの短手方向の寸法(外形寸法)となり、ボイド2の像5の明部5aの幅寸法hはボイド2の像5の明部5aの短手方向の寸法(暗部5bの短手方向の内寸法)となる。尚、ボイド2の像5の明部5aの幅寸法hはボイド2の像5の幅寸法Hの1/3程度となるため、上記カメラ4の分解能は、検査対象のボイド2の像5の明部5aの幅寸法hの2倍以上ということもできる。
【0027】
次に、上記のように光を照射しながらプリプレグ1の上面をカメラ4で撮像して撮像データを得る。すなわち、プリプレグ1を透過した透過光をカメラ4で捕らえて画像化するものであり、これにより、プリプレグ1の表面に現出したボイド2の像5も撮像される。次に、カメラ4の撮像データを画像処理装置41に入力し、画像処理装置41でボイド2の像5を含むプリプレグ1の表面の撮像データが二値化処理される。この二値化処理は、カメラ4の一つの画素4aの持つ明るさデータに基づいて、すなわち、カメラ4の一つの画素4aの持つ明るさデータが所定のしきい値(二値化レベル)を超えているか否かを判定して行なわれる。従って、プリプレグ1の表面の明るい部分に対応する撮像データとプリプレグ1の表面の暗い部分に対応する撮像データとにはそれぞれ異なる値(例えば、白色と黒色)が設定される。
【0028】
ここで、カメラ4は検査対象のボイド(円柱状のボイド)2の像5の幅寸法Hの2/3以上の分解能を有するので、図5(a)(b)に示すように、このボイド2の像5は幅方向においてカメラ4の一個又は二個の画素4aで撮像される。また、図6(a)(b)のように、一つの画素4aに占めるボイド2の像5の暗部5bの面積比率が1/3以上であれば、その画素4aの持つ明るさデータが所定のしきい値を超えていないと判定され、図6(c)のように、一つの画素4aに占めるボイド2の像5の暗部5bの面積比率が1/3未満であれば、その画素4aの持つ明るさデータが所定のしきい値を超えていると判定されるように、二値化レベル(しきい値)を設定している。従って、検査対象のボイド2の像5を撮像している画素4aは明部(中抜け部分)5aを撮していても明るさデータが所定のしきい値を超えていないと判定され、この結果、上記二値化処理により、図7(a)(b)に斜線で示すように、明部5aが無い状態のボイド2の画像31を得ることができるものである。
【0029】
次に、上記二値化処理により得られるプリプレグ1の表面の二値画像からボイド2の画像31を抽出し、ボイド2の画像31の面積を算出し、これをボイド2の像5の面積とする。次に、プリプレグ1の表面の二値画像に所定範囲を設定し、この範囲内にある全てのボイド2の像5の面積を合計する。次に、プリプレグ1の上記所定範囲の面積に対するボイド2の像5の合計面積の比率を算出する。そして、ボイド2の像5の合計面積の比率が所定のしきい値より大きい場合は、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態が不良であるとして処理し、ボイド2の像5の合計面積の比率が所定のしきい値より小さい場合は、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態が良好であるとして処理し、良品と不良品のプリプレグを検査することができるものである。
【0030】
このように本発明では、カメラ4の撮像データを二値化処理して得られるボイド2の像5の二値画像に対して穴埋め処理などの改善処理を不要にすることができる。従って、図12に示すような、複数の円柱状のボイド2により囲まれるエリアSが存在しても、そのエリアSがボイド2の像5の面積として加算されないようにすることができ、プリプレグ1を正確に検査することができるものである。
【0031】
尚、球状のボイド2は、サイズ(直径)にバラツキがあり、検査対象の円柱状のボイド2の幅寸法より小さいものは認識できない場合がある。また、検査対象のものよりも幅寸法Hの大きい球状のボイド2は、明部5aが認識された中抜けの二値画像となる場合がある。この球状のボイド2の像5(ボイド2の像5の幅寸法Hが5画素以上のもの)については、外径が5画素以上の球状のボイド2の像5を円形抽出機能により抽出し、外径を計測し、その外径の1/3の直径の円の面積を求める。これにより明部5aの部分の面積を求め、これを加算することで中抜けによるボイド2の像5の合計面積の不足に対応することができる。図8にはプリプレグ1の表面の撮像データの画像処理装置40への入力から二値化処理や円形抽出機能による抽出などを経てボイド2の像5の面積比率を算出するまでのブロック図を示す。
【0032】
本発明においては、カメラ4の分解能を繊維基材のヤーンの像6の幅寸法Tの2倍以上にするのが好ましい。すなわち、繊維基材の縦糸及び横糸は多数本のヤーンで構成されているが、上記のようにプリプレグ1に光を照射した場合に、プリプレグ1の表面に図9に示すような、明部6aとその両側の暗部6bからなるヤーンの像6が現出することがあり、このヤーンの像6がボイド2の像5と同等にカメラ4で検出(認識)されてノイズ成分となり、ボイド2の像5の正確な面積を算出できない場合がある。そこで、本発明では、繊維基材のヤーンの像6が検出(認識)されないようにするために、カメラ4の分解能(カメラ4の一個の画素4aの幅寸法)をヤーンの像6の幅寸法Tの2倍以上にすることが好ましい。この場合、ヤーンの像6を認識しない状態でプリプレグ1の表面の撮像データを得ることができ、撮像データを二値化処理する際にヤーンの像6がボイド2の像5と誤認されないようにすることができる。
【0033】
ここで、ヤーンの外径が8μmの時、ヤーンの像6の幅寸法Tも8μmとなり、また、検査対象の円柱状のボイド2の像5の幅寸法Hは16μmとなる。この場合、カメラ4の分解能は、検査対象のボイド2の像5の幅寸法Hの2/3以上という条件から16×2/3=10.7μm以上となり、検査対象のボイド2の像5の幅寸法Hの2倍以下という条件から16×2=32μm以下となり、ヤーンの像6の幅寸法Tの2倍以上という条件から8×2=16μm以上となり、従って、これらの条件を満たすカメラ4の分解能は16μm以上で32μm以下の範囲で設定することができる。
【0034】
本発明において、カメラ4によりプリプレグ1の表面を撮像する前に、プリプレグ1を熱硬化性樹脂の軟化点以上の温度で一定時間保持して加熱するのが好ましい。この場合、プリプレグ1の製造過程等で発生する表面の凹凸、クラックや検査試料として切り取る際のカット粉などの不良部分を加熱により低減させることができ、プリプレグ1の表面を撮像する際に不良部分のノイズを少なくすることができて、ボイド2の像5の面積の精度を向上させることができるものである。尚、上記の加熱温度はプリプレグ1中に含まれている溶剤の沸点以下にするのが好ましい。プリプレグ1の加熱温度を溶剤の沸点より高くすると、溶剤の沸騰現象によりボイド2が増加してしまう恐れがある。また、熱硬化性樹脂の軟化点未満の温度で加熱すると、上記不良部分が残存してしまう恐れがある。また、加熱時間は、プリプレグ1の厚みやカット寸法に影響されるために、プリプレグ1の厚みやカット寸法に応じて適正時間を設定する必要がある。加熱時間が短いと不良部分が残存するが、加熱時間が長すぎても悪影響は生じない。
【0035】
例えば、厚み0.2mmで100mm×100mmサイズのFR−4タイプのプリプレグ1の場合、プリプレグ1に含まれている溶剤の沸点はMEK(80℃)、PC(125℃)、DMF(160℃)であるが、MEKは製造の乾燥工程でほとんど揮発しており、プリプレグ1中に残っている溶剤はPCとDMFであり、温度の低い方の沸点は125℃である。また、プリプレグ1中の熱硬化性樹脂の軟化点は110℃である。従って、上記温度範囲である120℃に加熱温度を設定し、60秒間オーブンで加熱することにより、クラック、キズ、凹凸、カット粉を除去することができた。
【0036】
プリプレグ1に発生する円柱状のボイド2は、図10に示す繊維基材7の縦糸部位8a、横糸部位9a、縦糸8と横糸9の交差部位30ごとに発生密度が異なるため、複数枚のプリプレグ1を順次撮像していく場合に、撮像毎に繊維基材7の図柄配置を一定にして合わせ、撮像毎に同じ撮像範囲(撮像視野)で上記各部位が同じ面積を占めるようにするのが好ましい。そこで、本発明では、図11に示すように、カメラ4による撮像範囲内における繊維基材7の縦糸8と横糸9の交差部位30の数を撮像毎に一定にするのが好ましい。この場合、撮像毎にボイド2の発生密度が異なる部分が撮像されるのを少なくすることができ、誤差の少ない均質な検査を行うことができるものである。また、図10に示すように、プリプレグ1をカメラ4と光源40との間に配置する際に、縦糸8と略平行な縦糸方向ラインLxと、縦糸方向ラインLxに交わるカメラ4の撮像範囲の一辺を構成する画像エリアラインLyとを、撮像毎に所定角度bに合わせると共に、繊維基材7の所定のポイントaがカメラ4の撮像範囲内の所定の位置に写るように撮像毎に合わせるようにするのが好ましい。この場合も、撮像毎に繊維基材7の図柄配置を一定にして合わせ、撮像毎に同じ撮像範囲(撮像視野)で上記各部位が同じ面積を占めるようにすることができ、撮像毎にボイド2の発生密度が異なる部分が撮像されるのを少なくすることができ、誤差の少ない均質な検査を行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図2】同上の円柱状のボイドの像を示す説明図である。
【図3】同上のプリプレグを示す断面図である。
【図4】同上の(a)は球状のボイドの像を示す説明図、(b)は円柱状のボイドの像を示す説明図である。
【図5】同上の(a)はボイドの像を一つの画素で撮像する状態を示す説明図、(b)はボイドの像を二つの画素で撮像する状態を示す説明図である。
【図6】同上の(a)(b)(c)はボイドの像を画素で撮像する状態を示す説明図である。
【図7】同上の(a)(b)は二値画像におけるボイドの像を示す説明図である。
【図8】同上のボイドの像の面積比率を算出する過程の一例を示すブロック図である。
【図9】同上のヤーンの像を示す説明図である。
【図10】同上のプリプレグの撮像方法の一例を示す概略図である。
【図11】同上のプリプレグの撮像方法の他例を示す概略図である。
【図12】従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 プリプレグ
2 ボイド
3 光
4 カメラ
5 像
6 像
7 繊維基材
8 縦糸
9 横糸
30 交差部位
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔張り積層板やプリント配線板などを製造する際に用いられるプリプレグの検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリプレグの製造は、ガラスクロスなどの繊維基材にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸し、乾燥後に加熱等により繊維基材中の熱硬化性樹脂をBステージ状態にまで硬化するようにして行なわれている。このようなプリプレグには、熱硬化性樹脂の含浸時に繊維基材中に残存する空気や繊維基材中の溶剤の蒸発などにより、多数のボイドが発生することがあり、このボイドによりプリント配線板等の電気絶縁性などが低下する恐れがある。そこで、プリプレグを製品として出荷する前やプリント配線板等に成形する前に、ボイドの存在状況を観測して繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態を検査することが行なわれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、繊維基材の縦横糸ストランドの交差部位のボイド数を顕微鏡で拡大しながら計測するプリプレグの樹脂含浸性評価方法が記載されている。しかし、この方法では、ボイドの発生数を測定するだけであり、ボイドの大きさを考慮していないために、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態を検査する方法としては不充分であった。
【0004】
そこで、プリプレグをカメラで撮像し、そのプリプレグの画像中にあるボイドの画像の面積を算出し、プリプレグの一定の面積に占めるボイドの画像の面積の比率に基づいて繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態を検査する方法が提案されている。この方法によると、ボイドの発生数を測定するだけの場合よりも熱硬化性樹脂の含浸状態が定量的に、より正確に検査できるのである。
【0005】
このようにボイドの画像の面積を算出してプリプレグを検査する方法は、以下のようにして行なう。まず、リング型蛍光灯やハロゲン灯などを用いてプリプレグ1に光を照射し、プリプレグの表面にボイドの像を現出させる。ここで、ボイドは球状あるいは円柱状であるために、図3に示すように、ボイド2の中央部を通過する光は直進するが、ボイド2の表面近傍を通過する光3は屈折や拡散されることになる。従って、ボイド2の像5は、中央部分が明るい明部5aと、明部5aの周辺が明部5aよりも暗い暗部5bとで構成されることになる。図4において、(a)は球状のボイド2の像5であって略円形になり、(b)は円柱状のボイド2の像5であって略長円形となるが、いずれも、明部5aが中抜けとなった環状の像5となる。また、暗部5bの周辺部分は明部5aと略同等の明るさを有する周辺明部10となる。
【0006】
次に、プリプレグ1に光を照射した状態でプリプレグ1の表面をCCDカメラなどのカメラで撮像する。一般的に、カメラの分解能は大きいほど正確な形状に撮像することができるために、従来では確実に計測したい大きさのボイド2を3画素以上で撮像できるようにカメラの分解能を設定しており、より精度良くボイド2の形状を撮像するにはカメラの分解能を大きくする、すなわち、一個あたりの画素を小さくしてカメラの単位面積当たりの画素数を増やすようにしている。
【0007】
次に、撮像されたプリプレグ1の表面の撮像データをコンピュータなどの画像処理装置に入力して二値化処理を行なう。この二値化処理はカメラの各画素の明るさが所定のしきい値に達しているか否かに基づいて行なわれる。従って、像5の明部5a及び周辺明部10を撮す画素と、ボイド2の像5の暗部5bを撮す画素とはそれぞれ異なる値が設定されることになり、プリプレグ1の表面の二値画像は、図12に示すように、明部5a及び周辺明部10に相当する明画像部11と、暗部5bに相当する暗画像部12とで構成される。この二値画像は、例えば、明画像部11を白色で、暗画像部12を黒色で表すことができる。また、明部5aと明画像部11は同形状となり、暗部5bと暗画像部12は同形状となる。
【0008】
次に、上記の二値画像を用いてボイド2の像5の面積を画像処理装置にて算出する。ここで、暗画像部12の面積のみを算出すると、暗画像部12の内側の明画像部11の面積が算出されず、正確なボイド2の像5の面積を得ることができない。そこで、画像処理装置にて暗画像部12の内側の明画像部11に穴埋め処理などの改善処理を施し、暗画像部12の内側の明画像部11の面積も算出するようにし、暗画像部12とその内側の明画像部11の面積の合計を一つのボイド2の像5の面積として算出するようにしている。
【0009】
このようにして各ボイド2の像5の面積を算出すると共にプリプレグ1の所定面積内にある全てのボイド2の像5の合計面積を算出し、プリプレグ1の所定面積に占めるボイド2の像5の合計面積の比率を求める。そして、ボイド2の像5の合計面積の比率が大きい場合は、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態が不良であるとして処理し、ボイド2の像5の合計面積の比率が小さい場合は、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態が良好であるとして処理し、良品と不良品のプリプレグを検査することができるものである。
【特許文献1】特開平5−271441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記の画像処理装置による穴埋め処理などの改善処理は、暗画像部12で囲まれる部分を明画像部11と認識して行なわれるために、図12に示すような複数のボイド2の像5で囲まれたエリアSも周辺明部10に相当する部分であるにもかかわらず、暗画像部12の内側の明画像部11として認識されてしまい、エリアSの面積もボイド2の像5の面積として加算されることになり、プリプレグ1の所定面積に占めるボイド2の像5の合計面積の比率が大きく算出されやすい傾向にあった。従って、熱硬化性樹脂の含浸状態が良好であるプリプレグ1であるにもかかわらず、不良品として処理されることがあり、プリプレグ1を正確に検査することができないことがあった。特に、繊維基材として、縦糸と横糸の織成により形成されるガラスクロス等のクロスを用いた場合、縦糸と横糸に沿って円柱状のボイド2が発生するために、図12に示すようなエリアSが多く発生しやすく、プリプレグ1を正確に検査しにくかった。
【0011】
そこで、本発明者等は、ボイド2の像5を撮像するカメラのハード的な改良により、改善処理を行なう前の段階に得られる二値画像において、暗画像部12の内側に明画像部11を生じにくくし、これにより、画像処理装置によるソフト的な穴埋め処理などの改善処理を不要にし、上記問題を解決するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、複数のボイドにより囲まれるエリアが存在しても、そのエリアの面積がボイドの像の面積として加算されないようにして、プリプレグを正確に検査することができるプリプレグの検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のプリプレグの検査方法は、繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸乾燥して得られるプリプレグ1のボイド2の存在を観測することにより、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態を検査するプリプレグの検査方法であって、プリプレグ1に光3を照射してボイド2の像5をプリプレグ1の表面に現出し、検査対象のボイド2の像5の幅寸法の2/3以上の分解能を有するカメラ4でプリプレグ1の表面を撮像し、撮像により得られるプリプレグ1の表面の撮像データを二値化処理し、二値化処理により得られる二値画像に基づいてボイド2の像5の面積を算出し、プリプレグ1の所定面積に占めるボイド2の像5の面積比率を算出することを特徴とするものである。
【0014】
本発明においては、検査対象のボイド2の像5の幅寸法の2/3以上の分解能を有するカメラ4によりボイド2の像5を撮像することにより、カメラ4の1画素又は2画素でボイド2の像5をその幅方向において撮像することができ、検査対象のボイド2の像5の明部5aを認識しない状態でプリプレグ1の表面の撮像データを得ることができるものであり、撮像データを二値化処理して得られるボイド2の像5の二値画像に対して穴埋め処理などの改善処理を不要にすることができる。従って、複数のボイド2により囲まれるエリアSが存在しても、そのエリアSがボイド2の像5の面積として加算されないようにすることができ、プリプレグ1を正確に検査することができるものである。
【0015】
本発明において、カメラ4の分解能を繊維基材のヤーンの像6の幅寸法の2倍以上にすることが好ましい。この場合、ヤーンの像6を認識しない状態でプリプレグ1の表面の撮像データを得ることができ、撮像データを二値化処理する際にヤーンの像6がボイド2の像5と誤認されないようにすることができて、ボイド2の像5の面積の精度を向上させることができるものである。
【0016】
また、本発明において、カメラ4によりプリプレグ1の表面を撮像する前に、プリプレグ1を熱硬化性樹脂の軟化点以上の温度で加熱するのが好ましい。この場合、プリプレグ1の表面の凹凸、クラック、カット粉などの不良部分を加熱により低減させることができ、プリプレグ1の表面を撮像する際に不良部分のノイズを少なくすることができて、ボイド2の像5の面積の精度を向上させることができるものである。
【0017】
また、本発明において、カメラ4による撮像範囲内における繊維基材7の縦糸8と横糸9の交差部位30の数を撮像毎に一定にするのが好ましい。この場合、撮像毎にボイド2の発生密度が異なる部分が撮像されるのを少なくすることができ、均質な検査を行うことができるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数のボイドにより囲まれるエリアが存在しても、そのエリアの面積がボイドの像の面積として加算されないようにして、プリプレグを正確に検査することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0020】
本発明は、プリプレグ1のボイド2の存在を観測することにより、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態を検査する方法に関するものである。
【0021】
本発明において、検査対象となるプリプレグ1は、繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸乾燥した後、繊維基材中の熱硬化性樹脂を加熱等によりBステージ状態にまで硬化したものである。繊維基材としては縦糸と横糸とを織成して形成されるクロスを用いることができ、縦糸と横糸としてガラス繊維を用いたガラスクロスを例示することができる。また、縦糸と横糸としてポリエステル繊維などの合成繊維を用いたクロスであっても良い。熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂やフェノール樹脂などのプリプレグ用として汎用されている熱硬化性樹脂を例示することができる。この熱硬化性樹脂はワニスの状態で繊維基材に含浸することができる。
【0022】
プリプレグ1には熱硬化性樹脂の含浸時に繊維基材中に残存する空気や繊維基材中の溶剤の蒸発などによりボイド2が発生している。ボイド2としては球状のものと円柱状のものとがある。球状のボイド2はその外径(外径サイズ)が10〜200μm程度である。また、円柱状のボイド2は縦糸や横糸を構成する多数本のヤーンの間に生じるものであり、ヤーンの繊維方向(長手方向)と平行に長く形成されるものである。また、円柱状のボイド2の長手方向の寸法は一定ではないが、その外径はヤーンの外径の2倍程度になるという規則性がある。例えば、ヤーンの外径が8μmであれば、円柱状のボイド2の外径は16μm程度となる。従って、ヤーンの外径が一定の繊維基材を用いたプリプレグ1ではその全体に生じる円柱状のボイド2の外径が略一定になる。
【0023】
図1に本発明で使用する画像計測システムの一例を示す。この画像計測システムは、光源40とカメラ4及び画像処理装置41を備えるものである。光源40はバックライトとして使用する面光源であって、リング型蛍光灯やハロゲン灯などの照明器具を用いることができる。カメラ4としてはCCDカメラなどの電荷結合素子などの固体撮像素子を用いたカメラを使用することができる。画像処理装置41としてはコンピュータ(電子計算機)を用いることができる。
【0024】
上記カメラ4は検査対象のボイド2の像5の幅寸法の2/3以上の分解能を有するものである。ここで、カメラ4の分解能はカメラ4の一個の画素4aの幅寸法に対応するものである。カメラ4の分解能の基準となる検査対象のボイド2の像5とは、円柱状のボイド2の像5である。上記のように球状のボイド2の外径は一定でなく、広い範囲でばらついている。従って、球状のボイド2の像5の幅寸法(外形寸法)もばらつくことになり、カメラ4の分解能の基準とすることはできない。一方、円柱状のボイド2の外径はヤーンの外径が決まればほぼ一定となるために、図2に示すように、円柱状のボイド2の像5の幅寸法Hは円柱状のボイド2の外径と同等で一定となり、従って、円柱状のボイド2の像5の幅寸法Hをカメラ4の分解能の基準とする。カメラ4の分解能の上限は検査対象のボイド2の像5の幅寸法Hの2倍以下とするのが好ましく、これ以上になると、検査対象のボイド2の像5をカメラ4で認識できなくなる恐れがある。より好ましくは、カメラ4の分解能の上限は検査対象のボイド2の像5の幅寸法Hと同等にするものであり、カメラ4の分解能がボイド2の像5の幅寸法Hよりも大きくなると、複数のボイド2が近接して存在した場合に、正確に一つのボイド2の像5を認識することができなくなる恐れがある。
【0025】
そして、本発明ではプリプレグの検査を以下のようにして行なう。まず、光源40とカメラ4との間にプリプレグ1を配置する。このプリプレグ1は製品から一部を切り取って検査試料として得たものである。次に、プリプレグ1に対してその下方から光源40により光3を照射する。この光3は平行光であって、プリプレグ1の全体に均一に照射されるものであり、この光の照射によりプリプレグ1の表面(上面)にはボイド2の像5が明瞭に現出される。図3に示すように、プリプレグ1の下面に垂直に入射した光3は、ボイド2の無い部分及びボイド2の中央部分を通過する場合は直進する(矢印ロで示す)ためにその部分は明るく映るが、ボイド2の表面近傍では光の屈折、散乱が起こり、光3は直進せずに外側に進んだり遮断されるため(矢印イで示す)、その部分は暗い影として映る。従って、ボイド2の像5は上記のように、中央部分が明るい明部5aと、明部5aの周辺が明部5aよりも暗いドーナツ状の暗部5bとで構成されることになる。また、図4(a)のように、球状のボイド2の像5は略円形になり、図4(b)のように円柱状のボイド2の像5は略長円形となるが、いずれも、明部5aが中抜けとなった環状の像5となる。
【0026】
ここで、ボイド2の像5の明部5aの幅寸法hはボイド2の像5の幅寸法Hの1/3程度となる。球状のボイド2の像5の場合、ボイド2の像5の幅寸法Hはボイド2の像5の暗部5bの直径(外径)となり、ボイド2の像5の明部5aの幅寸法hはボイド2の像5の明部5aの直径(暗部5bの内径)となる。また、円柱状のボイド2の像5の場合、ボイド2の像5の幅寸法Hはボイド2の像5の暗部5bの短手方向の寸法(外形寸法)となり、ボイド2の像5の明部5aの幅寸法hはボイド2の像5の明部5aの短手方向の寸法(暗部5bの短手方向の内寸法)となる。尚、ボイド2の像5の明部5aの幅寸法hはボイド2の像5の幅寸法Hの1/3程度となるため、上記カメラ4の分解能は、検査対象のボイド2の像5の明部5aの幅寸法hの2倍以上ということもできる。
【0027】
次に、上記のように光を照射しながらプリプレグ1の上面をカメラ4で撮像して撮像データを得る。すなわち、プリプレグ1を透過した透過光をカメラ4で捕らえて画像化するものであり、これにより、プリプレグ1の表面に現出したボイド2の像5も撮像される。次に、カメラ4の撮像データを画像処理装置41に入力し、画像処理装置41でボイド2の像5を含むプリプレグ1の表面の撮像データが二値化処理される。この二値化処理は、カメラ4の一つの画素4aの持つ明るさデータに基づいて、すなわち、カメラ4の一つの画素4aの持つ明るさデータが所定のしきい値(二値化レベル)を超えているか否かを判定して行なわれる。従って、プリプレグ1の表面の明るい部分に対応する撮像データとプリプレグ1の表面の暗い部分に対応する撮像データとにはそれぞれ異なる値(例えば、白色と黒色)が設定される。
【0028】
ここで、カメラ4は検査対象のボイド(円柱状のボイド)2の像5の幅寸法Hの2/3以上の分解能を有するので、図5(a)(b)に示すように、このボイド2の像5は幅方向においてカメラ4の一個又は二個の画素4aで撮像される。また、図6(a)(b)のように、一つの画素4aに占めるボイド2の像5の暗部5bの面積比率が1/3以上であれば、その画素4aの持つ明るさデータが所定のしきい値を超えていないと判定され、図6(c)のように、一つの画素4aに占めるボイド2の像5の暗部5bの面積比率が1/3未満であれば、その画素4aの持つ明るさデータが所定のしきい値を超えていると判定されるように、二値化レベル(しきい値)を設定している。従って、検査対象のボイド2の像5を撮像している画素4aは明部(中抜け部分)5aを撮していても明るさデータが所定のしきい値を超えていないと判定され、この結果、上記二値化処理により、図7(a)(b)に斜線で示すように、明部5aが無い状態のボイド2の画像31を得ることができるものである。
【0029】
次に、上記二値化処理により得られるプリプレグ1の表面の二値画像からボイド2の画像31を抽出し、ボイド2の画像31の面積を算出し、これをボイド2の像5の面積とする。次に、プリプレグ1の表面の二値画像に所定範囲を設定し、この範囲内にある全てのボイド2の像5の面積を合計する。次に、プリプレグ1の上記所定範囲の面積に対するボイド2の像5の合計面積の比率を算出する。そして、ボイド2の像5の合計面積の比率が所定のしきい値より大きい場合は、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態が不良であるとして処理し、ボイド2の像5の合計面積の比率が所定のしきい値より小さい場合は、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態が良好であるとして処理し、良品と不良品のプリプレグを検査することができるものである。
【0030】
このように本発明では、カメラ4の撮像データを二値化処理して得られるボイド2の像5の二値画像に対して穴埋め処理などの改善処理を不要にすることができる。従って、図12に示すような、複数の円柱状のボイド2により囲まれるエリアSが存在しても、そのエリアSがボイド2の像5の面積として加算されないようにすることができ、プリプレグ1を正確に検査することができるものである。
【0031】
尚、球状のボイド2は、サイズ(直径)にバラツキがあり、検査対象の円柱状のボイド2の幅寸法より小さいものは認識できない場合がある。また、検査対象のものよりも幅寸法Hの大きい球状のボイド2は、明部5aが認識された中抜けの二値画像となる場合がある。この球状のボイド2の像5(ボイド2の像5の幅寸法Hが5画素以上のもの)については、外径が5画素以上の球状のボイド2の像5を円形抽出機能により抽出し、外径を計測し、その外径の1/3の直径の円の面積を求める。これにより明部5aの部分の面積を求め、これを加算することで中抜けによるボイド2の像5の合計面積の不足に対応することができる。図8にはプリプレグ1の表面の撮像データの画像処理装置40への入力から二値化処理や円形抽出機能による抽出などを経てボイド2の像5の面積比率を算出するまでのブロック図を示す。
【0032】
本発明においては、カメラ4の分解能を繊維基材のヤーンの像6の幅寸法Tの2倍以上にするのが好ましい。すなわち、繊維基材の縦糸及び横糸は多数本のヤーンで構成されているが、上記のようにプリプレグ1に光を照射した場合に、プリプレグ1の表面に図9に示すような、明部6aとその両側の暗部6bからなるヤーンの像6が現出することがあり、このヤーンの像6がボイド2の像5と同等にカメラ4で検出(認識)されてノイズ成分となり、ボイド2の像5の正確な面積を算出できない場合がある。そこで、本発明では、繊維基材のヤーンの像6が検出(認識)されないようにするために、カメラ4の分解能(カメラ4の一個の画素4aの幅寸法)をヤーンの像6の幅寸法Tの2倍以上にすることが好ましい。この場合、ヤーンの像6を認識しない状態でプリプレグ1の表面の撮像データを得ることができ、撮像データを二値化処理する際にヤーンの像6がボイド2の像5と誤認されないようにすることができる。
【0033】
ここで、ヤーンの外径が8μmの時、ヤーンの像6の幅寸法Tも8μmとなり、また、検査対象の円柱状のボイド2の像5の幅寸法Hは16μmとなる。この場合、カメラ4の分解能は、検査対象のボイド2の像5の幅寸法Hの2/3以上という条件から16×2/3=10.7μm以上となり、検査対象のボイド2の像5の幅寸法Hの2倍以下という条件から16×2=32μm以下となり、ヤーンの像6の幅寸法Tの2倍以上という条件から8×2=16μm以上となり、従って、これらの条件を満たすカメラ4の分解能は16μm以上で32μm以下の範囲で設定することができる。
【0034】
本発明において、カメラ4によりプリプレグ1の表面を撮像する前に、プリプレグ1を熱硬化性樹脂の軟化点以上の温度で一定時間保持して加熱するのが好ましい。この場合、プリプレグ1の製造過程等で発生する表面の凹凸、クラックや検査試料として切り取る際のカット粉などの不良部分を加熱により低減させることができ、プリプレグ1の表面を撮像する際に不良部分のノイズを少なくすることができて、ボイド2の像5の面積の精度を向上させることができるものである。尚、上記の加熱温度はプリプレグ1中に含まれている溶剤の沸点以下にするのが好ましい。プリプレグ1の加熱温度を溶剤の沸点より高くすると、溶剤の沸騰現象によりボイド2が増加してしまう恐れがある。また、熱硬化性樹脂の軟化点未満の温度で加熱すると、上記不良部分が残存してしまう恐れがある。また、加熱時間は、プリプレグ1の厚みやカット寸法に影響されるために、プリプレグ1の厚みやカット寸法に応じて適正時間を設定する必要がある。加熱時間が短いと不良部分が残存するが、加熱時間が長すぎても悪影響は生じない。
【0035】
例えば、厚み0.2mmで100mm×100mmサイズのFR−4タイプのプリプレグ1の場合、プリプレグ1に含まれている溶剤の沸点はMEK(80℃)、PC(125℃)、DMF(160℃)であるが、MEKは製造の乾燥工程でほとんど揮発しており、プリプレグ1中に残っている溶剤はPCとDMFであり、温度の低い方の沸点は125℃である。また、プリプレグ1中の熱硬化性樹脂の軟化点は110℃である。従って、上記温度範囲である120℃に加熱温度を設定し、60秒間オーブンで加熱することにより、クラック、キズ、凹凸、カット粉を除去することができた。
【0036】
プリプレグ1に発生する円柱状のボイド2は、図10に示す繊維基材7の縦糸部位8a、横糸部位9a、縦糸8と横糸9の交差部位30ごとに発生密度が異なるため、複数枚のプリプレグ1を順次撮像していく場合に、撮像毎に繊維基材7の図柄配置を一定にして合わせ、撮像毎に同じ撮像範囲(撮像視野)で上記各部位が同じ面積を占めるようにするのが好ましい。そこで、本発明では、図11に示すように、カメラ4による撮像範囲内における繊維基材7の縦糸8と横糸9の交差部位30の数を撮像毎に一定にするのが好ましい。この場合、撮像毎にボイド2の発生密度が異なる部分が撮像されるのを少なくすることができ、誤差の少ない均質な検査を行うことができるものである。また、図10に示すように、プリプレグ1をカメラ4と光源40との間に配置する際に、縦糸8と略平行な縦糸方向ラインLxと、縦糸方向ラインLxに交わるカメラ4の撮像範囲の一辺を構成する画像エリアラインLyとを、撮像毎に所定角度bに合わせると共に、繊維基材7の所定のポイントaがカメラ4の撮像範囲内の所定の位置に写るように撮像毎に合わせるようにするのが好ましい。この場合も、撮像毎に繊維基材7の図柄配置を一定にして合わせ、撮像毎に同じ撮像範囲(撮像視野)で上記各部位が同じ面積を占めるようにすることができ、撮像毎にボイド2の発生密度が異なる部分が撮像されるのを少なくすることができ、誤差の少ない均質な検査を行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図2】同上の円柱状のボイドの像を示す説明図である。
【図3】同上のプリプレグを示す断面図である。
【図4】同上の(a)は球状のボイドの像を示す説明図、(b)は円柱状のボイドの像を示す説明図である。
【図5】同上の(a)はボイドの像を一つの画素で撮像する状態を示す説明図、(b)はボイドの像を二つの画素で撮像する状態を示す説明図である。
【図6】同上の(a)(b)(c)はボイドの像を画素で撮像する状態を示す説明図である。
【図7】同上の(a)(b)は二値画像におけるボイドの像を示す説明図である。
【図8】同上のボイドの像の面積比率を算出する過程の一例を示すブロック図である。
【図9】同上のヤーンの像を示す説明図である。
【図10】同上のプリプレグの撮像方法の一例を示す概略図である。
【図11】同上のプリプレグの撮像方法の他例を示す概略図である。
【図12】従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 プリプレグ
2 ボイド
3 光
4 カメラ
5 像
6 像
7 繊維基材
8 縦糸
9 横糸
30 交差部位
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸乾燥して得られるプリプレグのボイドの存在を観測することにより、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態を検査するプリプレグの検査方法であって、プリプレグに光を照射してボイドの像をプリプレグの表面に現出し、検査対象のボイドの像の幅寸法の2/3以上の分解能を有するカメラでプリプレグの表面を撮像し、撮像により得られるプリプレグの表面の撮像データを二値化処理し、二値化処理により得られる二値画像に基づいてボイドの像の面積を算出し、プリプレグの所定面積に占めるボイドの像の面積比率を算出することを特徴とするプリプレグの検査方法。
【請求項2】
カメラの分解能を繊維基材のヤーンの像の幅寸法の2倍以上にすることを特徴とする請求項1に記載のプリプレグの検査方法。
【請求項3】
カメラによりプリプレグの表面を撮像する前に、プリプレグを熱硬化性樹脂の軟化点以上の温度で加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載のプリプレグの検査方法。
【請求項4】
カメラによる撮像範囲内における繊維基材の縦糸と横糸の交差部位の数を撮像毎に一定にすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプリプレグの検査方法。
【請求項1】
繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸乾燥して得られるプリプレグのボイドの存在を観測することにより、繊維基材に対する熱硬化性樹脂の含浸状態を検査するプリプレグの検査方法であって、プリプレグに光を照射してボイドの像をプリプレグの表面に現出し、検査対象のボイドの像の幅寸法の2/3以上の分解能を有するカメラでプリプレグの表面を撮像し、撮像により得られるプリプレグの表面の撮像データを二値化処理し、二値化処理により得られる二値画像に基づいてボイドの像の面積を算出し、プリプレグの所定面積に占めるボイドの像の面積比率を算出することを特徴とするプリプレグの検査方法。
【請求項2】
カメラの分解能を繊維基材のヤーンの像の幅寸法の2倍以上にすることを特徴とする請求項1に記載のプリプレグの検査方法。
【請求項3】
カメラによりプリプレグの表面を撮像する前に、プリプレグを熱硬化性樹脂の軟化点以上の温度で加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載のプリプレグの検査方法。
【請求項4】
カメラによる撮像範囲内における繊維基材の縦糸と横糸の交差部位の数を撮像毎に一定にすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプリプレグの検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−64531(P2006−64531A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247341(P2004−247341)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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