説明

プリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物

【課題】高いガラス転移温度を有し、低線膨張係数のプリプレグが得られるプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】下記の(A)〜(E)成分を含有するプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物。
(A):フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミン由来の構造を有するポリアミド化合物
(B):エポキシ樹脂
(C):エポキシ樹脂硬化剤
(D):充填剤
(E):溶剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造中の特定の部位にフェノール性水酸基を有するポリアミド化合物を含むプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物に関し、詳しくは、該ポリアミド化合物を硬化剤成分とすることにより、線膨張係数が低いプリプレグ、さらにはプリント配線板が得られるプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板にはその特性からエポキシ樹脂が広く用いられており、近年の小型軽量化に伴う高密度化においてもエポキシ樹脂による対応が検討されている。
【0003】
特に、プリプレグ等に用いられるエポキシ樹脂は、種々の無機フィラーを大量に配合することで線膨張を低減して、温度による変形を抑制することが行われている。しかし、無機フィラーを大量に配合すると引張強度や伸びが低下したり、凝集によりショートして回路の信頼性を損なうなどの場合があり、調製が困難である。
【0004】
エポキシ樹脂としては、特許文献1には、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパンと酸無水物による硬化物が記載されている。また、特許文献2、特許文献3及び特許文献4には、フェノール性水酸基を有するポリアミドを配合したエポキシ樹脂が記載されている。
【0005】
しかし、特許文献2、特許文献3及び特許文献4には、フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有するヒドロキシ置換芳香族ジアミンを原料とする本発明の化合物は、特に優れたものとして具体的に記載されておらず、ガラス転移温度や線膨張係数において特異的な効果を示すことはなんら記載されていない。
【0006】
【特許文献1】ドイツ特許107798号明細書
【特許文献2】特開2001−31784号公報の特許請求の範囲及び第6頁左欄40行目から第8頁末尾までの実施例
【特許文献3】特開2001−49082号公報の特許請求の範囲
【特許文献4】特開2005−29720号公報の特許請求の範囲
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、高いガラス転移温度を有し、低線膨張係数のプリプレグが得られるプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記の現状に鑑み鋭意検討を行った結果、フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有するヒドロキシ置換芳香族ジアミン由来の構造を有するポリアミド化合物を用いることで、高いガラス転移温度を有し、低線膨張係数のプリプレグが得られるエポキシ樹脂硬化性組成物が得られることを見出し本発明に到達した。
【0009】
すなわち本発明は、下記の(A)〜(E)成分を含有するプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物を提供するものである。
(A):フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミン由来の構造を有するポリアミド化合物
(B):エポキシ樹脂
(C):エポキシ樹脂硬化剤
(D):充填剤
(E):溶剤
【0010】
また本発明は、前記(A)成分のポリアミド化合物が、その繰り返し単位中に、下記の一般式(I)又は一般式(II)で表されるフェノール性水酸基を有する構造を有する前記プリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物を提供するものである。
【0011】
【化1】

(式中、環Aは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよく、Rは炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基、アリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。)
【0012】
【化2】

(式中、環Bは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。)
【0013】
また本発明は、前記(A)成分のポリアミド化合物が、下記の一般式(III) 又は一般式(IV)で表されるフェノール性水酸基を有する構造である前記プリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物を提供するものである。
【0014】
【化3】

(式中、環Aは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよく、Rは炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基、アリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。nは正数である。)
【0015】
【化4】

(式中、環Bは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。mは正数である。)
【0016】
また本発明は、前記プリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物から得られるプリプレグを提供するものである。
【0017】
また本発明は、前記プリプレグから得られるプリント配線板を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高いガラス転移温度を有し、低線膨張係数のプリプレグを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明を詳細に説明する。
まず本発明の(A)成分について説明する。
本発明の(A)成分は、フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミン由来の構造を有するポリアミド化合物である。本発明でいうフェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミンとは、その塩も含む。すなわちポリアミド中に、フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミンまたはその塩を由来とする構造が存在する。
【0020】
また本ポリアミド化合物は、フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミン(またはその塩)と、ジカルボン酸類(各種芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、またはそれらの酸クロライド、エステル等)を原料として、構成されるポリアミド化合物である。アミノ基と隣接する位置につく、フェノール性水酸基の数は、特に限定されず、例えば芳香族ジアミン1分子について、1個〜4個である。
【0021】
もちろん本ポリアミド化合物は、フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有するジアミン以外のジアミン化合物(各種芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、またはそれらの塩等)をさらに原料として、さらなる構成成分となってもよいし、さらにフェノール性水酸基を含有するジカルボン酸類(またはそれらの酸クロライドやエステル等)を使用してもよい。
【0022】
フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミンの例としては、特に限定されないが、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−トリレンジアミン、4,4' −ジアミノジフェニルエーテル、3,3' −ジメチル−4,4' −ジアミノジフェニルエーテル、3,4' −ジアミノジフェニルエーテル、4,4' −ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3' −ジメチル−4,4' −ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3' −ジエトキシ−4,4' −ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3' −ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4' −ジアミノベンゾフェノン、3,3' −ジメチル−4,4' −ジアミノベンゾフェノン、3,3' −ジアミノジフェニルメタン、4,4' −ジアミノジフェニルメタン、3,4' −ジアミノジフェニルメタン、3,3' −ジメトキシ−4,4' −ジアミノジフェニルチオエーテル、2,2' −ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2' −ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4' −ジアミノジフェニルスルフォキサイド、4,4' −ジアミノジフェニルスルフォン、ベンチジン、3,3' −ジメチルベンチジン、3,3' −ジメトキシベンチジン、3,3' −ジアミノビフェニル、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、o−キシリレンジアミン、2,2' −ビス(3−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2' −ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ベンゼン、1,3' −ビス(3−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−エチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−プロピルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジプロピルフェニル)メタン、2,2' −ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2' −ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン等の芳香族ジアミンの、アミノ基と隣接する位置に、水酸基が1個〜4個結合しているものが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。またこれらは1種又は2種以上混合して用いても良いし、水酸基の結合していない芳香族ジアミンと併用してもよい。フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミンの塩の例としては、上記のジアミンの塩が挙げられる。水酸基の結合していない芳香族ジアミン(またはそれらの塩)の例は上記したものが挙げられる。
【0023】
また、フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミンと反応し、本ポリアミド化合物を構成する、ジカルボン酸類の例としては、特に限定されないが、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4' −オキシ二安息香酸、4,4' −ビフェニルジカルボン酸、3,3' −、メチレン二安息香酸、4,4' −メチレン二安息香酸、4,4' −チオ二安息香酸、3,3' −カルボニル二安息香酸、4,4' −カルボニル二安息香酸、4,4' −スルフォニル二安息香酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシイソフタル酸、3−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸、2,2' −ビス(3−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2' −ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。またこれらは1種又は2種以上混合して用いても良い。ジカルボン酸類の酸クロライドまたはエステルの例としては、上記のジカルボン酸類の酸クロライドまたはエステルが挙げられる。
【0024】
本発明の(A)成分のポリアミド化合物の好ましい構造の特徴としては、その繰り返し単位中に、下記の一般式(I)又は(II)で表される構造を有し、その構造中にはアミノ基と隣接する位置に、フェノール性水酸基を有していることに特徴がある。
【0025】
【化5】

(式中、環Aは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよく、Rは炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基、アリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。)
【0026】
【化6】

(式中、環Bは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。)
【0027】
前記一般式(I)における環A又は前記一般式(II)における環Bで表される、炭素原子数6〜18のアリーレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,5−ナフチレン基、2,5−ナフチレン基、アントラセン−ジイル、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−p−ターフェニレン基、4,4’−m−ターフェニレン基、2−フル−1,4−オロフェニレン基、2,5−ジメチル−1,4−フェニレン基などが挙げられる。
【0028】
前記一般式(I)における環A又は前記一般式(II)における環Bで表される、炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基としては、メチリデンジフェニレン基、エチリデンジフェニレン基、プロピリデンジフェニレン基、イソプロピリデンジフェニレン基、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェニレン基、プロピリデン−3,3’,5,5’−テトラフルオロジフェニレン基、フルオレン−9−イリデンジフェニレン基などが挙げられる。
【0029】
前記一般式(I)におけるRで表される炭素原子数2〜10のアルキレン基としては、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレンなどが挙げられる。
【0030】
前記一般式(I)におけるRで表される炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基としては、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビシクロヘキサン、ジシクロヘキサンなどの2価の基が挙げられる。
【0031】
前記一般式(I)におけるRで表されるアリーレン基としては、前記の環Aにおけるものと同様の基が挙げられる。
【0032】
前記一般式(I)におけるRで表されるアルキリデンジアリール基としては、前記の環Aにおけるものと同様の基が挙げられる。
【0033】
また本発明の(A)成分のポリアミド化合物の好ましい構造として、繰り返し単位中に、前記一般式(I)または前記一般式(II)の構造のみを含む、下記一般式(III) 又は下記一般式(IV)の構造を有するものが挙げられる。
【0034】
【化7】

(式中、環Aは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよく、Rは炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基、アリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。nは正数である。)
【0035】
【化8】

(式中、環Bは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。mは正数である。)
【0036】
前記一般式(III) における環Aで表されるアリーレン基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0037】
前記一般式(III) における環Aで表されるアルキリデンジアリーレン基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0038】
前記一般式(III) におけるRで表される炭素原子数2〜10のアルキレン基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0039】
前記一般式(III) におけるRで表される炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0040】
前記一般式(III) におけるRで表されるアリーレン基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0041】
前記一般式(III) におけるRで表されるアルキリデンジアリーレン基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0042】
前記一般式(IV)における環Bで表されるアリーレン基としては、前記一般式(II)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0043】
前記一般式(IV)における環Bで表されるアルキリデンジアリーレン基としては、前記一般式(II)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0044】
本発明の(A)成分のポリアミド化合物の好ましいより具体的な構造としては、例えば、以下のNo.1〜20の構造が挙げられる。ただし、本発明は以下の構造によりなんら制限を受けるものではない。
【0045】
【化9】

【0046】
【化10】

【0047】
【化11】

【0048】
【化12】

【0049】
【化13】

【0050】
【化14】

【0051】
【化15】

【0052】
【化16】

【0053】
【化17】

【0054】
【化18】

【0055】
【化19】

【0056】
【化20】

【0057】
【化21】

【0058】
【化22】

【0059】
【化23】

【0060】
【化24】

【0061】
【化25】

【0062】
【化26】

【0063】
【化27】

【0064】
【化28】

【0065】
本発明のプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物中の、前記(A)成分のポリアミド化合物の含有量は、硬化物の物性の点から、1〜98質量%が好ましく、1〜90質量%が特に好ましい。
【0066】
次に、本発明の(B)成分であるエポキシ樹脂について説明する。
前記(B)成分のエポキシ樹脂としては、特に制限されず、公知の芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などが用いられる。芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ノボラック、テトラブロモビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,6−ジヒドロキシナフタレンなどの多価フェノールのグリシジルエーテル化合物が挙げられる。脂環族エポキシ化合物としては、少なくとも1個以上の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテルまたはシクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。例えば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルへキシルなどが挙げられる。脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー等が挙げられる。代表的な化合物として、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル、またプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。さらに、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、また、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0067】
本発明のプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物中の、前記(B)成分のエポキシ樹脂の含有量は、硬化物の物性の点から、1〜90質量%が好ましく、1〜50質量%が特に好ましい。
【0068】
次に本発明の(C)成分のエポキシ樹脂硬化剤について説明する。
前記(C)成分のエポキシ樹脂硬化剤としては、潜在性硬化剤、ポリアミン化合物、ポリフェノール化合物およびカチオン系光開始剤などが挙げられ、また硬化促進剤といわれるものも含まれる。
【0069】

潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド、ヒドラジド、イミダゾール化合物、アミンアダクト、スルホニウム塩、オニウム塩、ケチミン、酸無水物、三級アミンなどが挙げられる。これら潜在性硬化剤は、一液型の硬化性組成物を与え、取り扱いが容易なので好ましい。
【0070】
酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物などが挙げられる。
【0071】
ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどの脂環族ポリアミン、m−キシレンジアミンなどの芳香環を有する脂肪族アミン、m−フェニレンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどの芳香族ポリアミンが挙げられる。
【0072】
ポリフェノール化合物としては、例えば、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、テルペンジフェノール、テルペンジカテコール、1,1,3−トリス(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)ブタン、ブチリデンビス(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。フェノールノボラックは得られるエポキシ樹脂の電気特性、機械強度が積層板に適しているので好ましい
【0073】
イミダゾール化合物としては、例えば2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール (1') )エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール (1') )エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル,4−メチルイミダゾール (1') )エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール (1') )エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類、及び、それらのイミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類が挙げられる。
【0074】
本発明で使用し得るカチオン系光開始剤とは、エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出させることが可能な化合物であり、特に好ましいものは、照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩またはその誘導体である。かかる化合物の代表的なものとしては、下記の一般式、
[A]m+[B]m-
で表される陽イオンと陰イオンの塩を挙げることができる。
【0075】
ここで陽イオン[A]m+はオニウムであるのが好ましく、その構造は、例えば、下記の一般式、
[(R1a Q]m+
で表すことができる。
【0076】
更にここで、R1 は炭素原子数が1〜60であり、炭素原子以外の原子をいくつ含んでもよい有機の基である。aは1〜5なる整数である。a個のR1 は各々独立で、同一でも異なっていてもよい。また、a個のR1 の少なくとも1つは、芳香環を有する上記の如き有機の基であることが好ましい。QはS、N、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、F、N=Nからなる群から選ばれる原子あるいは原子団である。また、陽イオン[A]m+中のQの原子価をqとしたとき、m=a−qなる関係が成り立つことが必要である(但し、N=Nは原子価0として扱う)。
【0077】
また、陰イオン[B]m-は、ハロゲン化物錯体であるのが好ましく、その構造は、例えば、下記一般式、
[LXbm-
で表すことができる。
【0078】
更にここで、Lはハロゲン化物錯体の中心原子である金属または半金属(Metalloid) であり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xはハロゲン原子である。bは3〜7なる整数である。また、陰イオン[B]m-中のLの原子価をpとしたとき、m=b−pなる関係が成り立つことが必要である。
【0079】
上記一般式で表される陰イオン[LXbm-の具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4- 、ヘキサフルオロフォスフェート(PF6- 、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6- 、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6- 、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6- 等が挙げられる。
【0080】
また、陰イオンBm-は、
[LXb-1 (OH)]m-
で表される構造のものも好ましく用いることができる。L、X、bは上記と同様である。また、その他用いることができる陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO4- 、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3 SO3- 、フルオロスルホン酸イオン(FSO3- 、トルエンスルホン酸陰イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸陰イオン等が挙げられる。
【0081】
本発明では、この様なオニウム塩の中でも、下記のイ)〜ハ)の芳香族オニウム塩を使用するのが特に有効である。これらの中から、その1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0082】
イ)フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メトキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのアリールジアゾニウム塩
【0083】
ロ)ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアリールヨードニウム塩
【0084】
ハ)トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4−[4’−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4’−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェートなどのトリアリールスルホニウム塩等が好ましい。
【0085】
また、その他好ましいものとしては、(η5 −2,4−シクロペンタジエン−1−イル)〔(1,2,3,4,5,6,−η)−(1−メチルエチル)ベンゼン〕−アイアン−ヘキサフルオロホスフェート等の鉄−アレーン錯体や、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(エチルアセトナトアセタト)アルミニウム、トリス(サリチルアルデヒダト)アルミニウムなどのアルミニウム錯体とトリフェニルシラノールなどのシラノール類との混合物なども挙げられる。
【0086】
これらの中でも実用面と光感度の観点から、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、鉄−アレーン錯体を用いることが好ましい。
これらの光開始剤は安息香酸系または第三級アミン系などの公知の光重合促進剤の1種または2種以上と組み合わせて用いても良い。
【0087】
光開始剤を用いる場合の重合に用いる光源としては、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプなどの公知の光源を用い、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波などの活性エネルギー線の照射により上記光開始剤からルイス酸を放出することで、上記エポキシ化合物を効果させる。これら光源としては、400nm以下の波長を有する光源が有効である。
【0088】
これら(C)成分の硬化剤のうち、どの硬化剤を用いるかは適宜選択すればよい。特に好ましいのは潜在性硬化剤であり、特にイミダゾール化合物が好ましい。
【0089】
本発明のプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物中の、前記(C)成分のエポキシ樹脂硬化剤の含有量は、硬化物の物性の点から、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。上記硬化剤は2種以上を混合して用いることもできる。
【0090】
次に本発明の(D)成分である充填剤について説明する。
前記(D)成分の充填剤(フィラー)としては、従来公知のものが使用でき特に限定されないが、ガラス繊維、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ホウ素ウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、酸化チタンウィスカーなどの繊維状充填剤や、シリカ、溶融シリカ、アルミナなどの球状充填剤を用いることが好ましく、特に、硬化物の物性(低線膨張係数)の点から球状シリカまたは球状の溶融シリカが好ましい。もちろん、繊維状、球状の形態に限らず、シリカ(溶融シリカ、結晶性シリカ)、アルミナ、ホウ酸アルミ、窒化アルミ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、チタン酸カリウム、酸化チタン等も用いることもでき、その他、充填剤として、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ケイ酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、マグネシア、フェライト、各種金属微粒子、黒鉛、カーボンや、炭素繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイト繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維などの無機系繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、炭素繊維などの有機系繊維などが挙げられる。
【0091】
繊維状充填剤は長軸方向の長さやアスペクト比を用途に応じて適宜選択することが好ましく、球状充填剤は真球状で粒径が小さいものが好ましく、特に平均粒径が0.1〜20μmの範囲内のものが好ましい。
【0092】
本発明のプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物中の、前記(D)成分の充填剤の含有量は、硬化物の物性の点から、0.1〜97質量%が好ましく、1〜95質量%が特に好ましい。
【0093】
次に本発明の(E)成分の溶剤について説明する。
前記(E)成分の溶剤としては、例えばγ−ブチロラクトン類、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。なかでも、溶解性と、乾燥の容易さから、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤が好ましい。
【0094】
本発明のプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物中の、前記(E)成分の溶剤の含有量は、0.01〜80質量%が好ましく、10〜70質量%が特に好ましい。
【0095】
本発明のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物は、(A)〜(E)成分の他に、必要に応じて任意の成分を含んでいてもよい。
任意成分としては、例えば、天然ワックス類、合成ワックス類および長鎖脂肪族酸の金属塩類等の可塑剤、酸アミド類、エステル類、パラフィン類などの離型剤、ニトリルゴム、ブタジエンゴム等の応力緩和剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化錫、水酸化錫、酸化モリブデン、硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、赤燐、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム等の無機難燃剤、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモベンゼン、ブロム化フェノールノボラック等の臭素系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、リン酸アミド系難燃剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤、染料や顔料等の着色剤、酸化安定剤、光安定剤、耐湿性向上剤、チキソトロピー付与剤、希釈剤、消泡剤、他の各種の樹脂、粘着付与剤、帯電防止剤、滑剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0096】
次に本発明のプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物を用いてプリプレグにする場合に使用する基材について説明する。
【0097】
プリプレグの基材は、従来から使用されている基材が使用でき、例えば、ガラス繊維、全芳香族ポリエステル繊維、フェノール樹脂繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、炭素繊維、ポリベンザゾール(PBZ)繊維等からなる織布、または不織布が挙げられ、得られるプリプレグの線膨張係数の低さから、アラミド繊維から成る織布、不織布、ポリベンザゾール繊維から成る織布、不織布が好ましい。
【0098】
本発明のプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物を、基材に塗布・含浸させ、加熱するという通常の方法によりプリプレグを製造することができる。また、このプリプレグを複数枚重ね合わせ、その積層構造の片面又は両面に銅箔を重ね合わせた後、これを通常の条件で加熱・加圧することにより、銅張積層板を得ることができる。このとき、銅箔を用いなければ、積層板が得られる。また、該銅張積層板(内層板)に回路を形成し、ついで銅箔をエッチング処理した後、内層板の少なくとも片面にプリプレグ及び銅箔を重ね合わせ、これを例えば170℃、40kg/cm2 の圧力で90分間加熱・加圧するという通常の方法により、多層板を製造することができる。さらに、該銅張積層板もしくは該多層板にスルーホールを形成し、スルーホールメッキを行った後、所定の回路を形成するという通常の方法により、プリント配線板を製造することができる。
【実施例】
【0099】
実施例により本発明を詳細に説明する。ただし、以下の実施例により本発明はなんら制限を受けるものではない。
【0100】
〔合成例1〕前記No.1の構造を有する前記(A)成分のポリアミド化合物の合成
2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン16.48g(0.045モル)をN−メチルピロリドン(NMP)40g及びピリジン15.33gの混合物に溶かした溶液に、イソフタロイルクロライド10.05g(0.0495モル)をNMP40gに溶かした溶液を−15〜0℃で滴下した。−15〜0℃を保持したまま2時間反応し、さらに室温で2時間反応した。約2リットルのイオン交換水で再沈後、ろ過して150℃で3時間減圧乾燥して白色粉末17.9g(収率80.1%)(下記の実施ポリマー1)を得た。
得られた白色粉末の化合物は、赤外吸収スペクトルよりアミド結合の形成を確認し、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより重量平均分子量の20000のポリマーであることを確認した。また、分析により粘度は50cps(25℃、30重量%NMP溶液) でOH当量は250g/eqであった。
【0101】
【化29】

【0102】
〔合成例2〜20〕
合成例1と同様にして下記の実施ポリマー2〜20を合成した。得られた実施ポリマーの重量平均分子量、粘度、OH当量を下記に示す。
【0103】
【化30】

【0104】
【化31】

【0105】
【化32】

【0106】
【化33】

【0107】
【化34】

【0108】
【化35】

【0109】
【化36】

【0110】
【化37】

【0111】
【化38】

【0112】
【化39】

【0113】
【化40】

【0114】
【化41】

【0115】
【化42】

【0116】
【化43】

【0117】
【化44】

【0118】
【化45】

【0119】
【化46】

【0120】
【化47】

【0121】
【化48】

【0122】
〔実施例1〜24及び比較例1〜6〕
前記合成例で得られた実施ポリマー又は後記の比較ポリマーを用いて表1〜表5に記載の配合によりプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物をそれぞれ調製した。これらのエポキシ樹脂硬化性組成物と表1〜表5に記載の基材を用いてプリプレグを作成し、このプリプレグを4枚積層して表面に5μmの銅箔を張り合わせ、真空下180℃、50kg/cm2 で90分プレスしたものについて、ガラス転移温度と線膨張係数を測定した。その結果を表1〜表5に示す。
【0123】
ガラス転移温度は、幅5mm長さ40mmの短冊状に切り出したサンプルを用いて動的粘弾性法で測定した。
線膨張係数は、幅3mm長さ10mmの短冊状に切り出したサンプルを用いてTMAにて測定した。
【0124】
【表1】

【0125】
【表2】

【0126】
【表3】

【0127】
【表4】

【0128】
【表5】

【0129】
表1〜表5中、球状シリカのvol%は配合物中の球状シリカの体積比率のことを示す。また、表1〜表5中の*1〜*8は下記の通りである。
【0130】
【化49】

【0131】
*2:球状シリカ 平均粒径0.1〜20μm
*3:二酸化チタンウィスカー
*4:イミダゾール系硬化剤 2−フェニル−4, 5−ジヒドロキシメチルイミダゾール
*5:PGM プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0132】
【化50】

【0133】
【化51】

【0134】
【化52】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(E)成分を含有するプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物。
(A):フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミン由来の構造を有するポリアミド化合物
(B):エポキシ樹脂
(C):エポキシ樹脂硬化剤
(D):充填剤
(E):溶剤
【請求項2】
前記(A)成分のポリアミド化合物が、その繰り返し単位中に、下記の一般式(I)又は一般式(II)で表されるフェノール性水酸基を有する構造を有する請求項1記載のプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物。
【化1】

(式中、環Aは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよく、Rは炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基、アリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。)
【化2】

(式中、環Bは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。)
【請求項3】
前記(A)成分のポリアミド化合物が、下記の一般式(III) 又は一般式(IV)で表されるフェノール性水酸基を有する構造である請求項1記載のプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物。
【化3】

(式中、環Aは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよく、Rは炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基、アリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。nは正数である。)
【化4】

(式中、環Bは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。mは正数である。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグ用エポキシ樹脂硬化性組成物から得られるプリプレグ。
【請求項5】
請求項4記載のプリプレグから得られるプリント配線板。

【公開番号】特開2007−246668(P2007−246668A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71417(P2006−71417)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】