説明

プリント基板

【課題】導体パターンの腐食防止効果を高めることができるプリント基板を提供する。
【解決手段】プリント基板1において、絶縁基板2と、絶縁基板2の表面に形成された導体パターン3と、絶縁基板2と導体パターン3とを覆う位置に形成され、回路部品7が接続される導体パターン3の接続部8を露出させた絶縁性を有するレジスト層4と、レジスト層4の表面の全面に亘って形成され、接続部8を露出させた第1印刷層5と、第1印刷層5の表面にこの第1印刷層5と異なる色で形成され、導体パターン3のエッジ部の上方を覆うエッジ被覆部6aと文字や記号等の標章を表示する標章表示部6bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に関し、特に、空気調和機の室外機の制御装置のように高湿状態、海岸等での塩分を含む雰囲気、ホコリやチリの堆積に曝されることがあるプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の室外機の制御装置において使用されるプリント基板は、高湿状態、海岸等での塩分を含む雰囲気、ホコリやチリの堆積に曝されることが頻発するので、プリント基板に設けられている導体パターンの腐食防止の対策を講じる必要がある。
【0003】
導体パターンの腐食防止の対策を講じたプリント基板の一例としては、下記特許文献1に記載されたものが知られている。
【0004】
特許文献1に記載されたプリント基板は、絶縁基板の表面に導体パターンが形成され、絶縁基板と導体パターンとを覆うレジスト層が形成され、レジスト層の表面に保護層が形成されている。この保護層には、文字を表示する部分が穴状に形成され、この穴状部分を除いた部分がレジスト層の表面を覆っている。そして、これらのレジスト層と保護層とにより、導体パターンの腐食防止が図られている。
【特許文献1】特開2006−319031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この保護層には文字を表示するための穴状部分が形成されているため、この穴状部分に水分や塩分の浸入、ホコリやチリの堆積が発生し易い。保護層に形成された穴状部分に入り込んだ水分等はその穴状部分内に長時間滞留し、レジスト層に存在するピンホールなどに浸透して導体パターンに到達する。このため、導体パターンの腐食防止を図るという目的を十分に達成することができない。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、導体パターンの腐食防止効果を高めることができるプリント基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、プリント基板において、絶縁基板と、前記絶縁基板の表面に形成された導体パターンと、前記絶縁基板と前記導体パターンとを覆う位置に形成され、回路部品が接続される前記導体パターンの接続部を露出させた絶縁性を有するレジスト層と、前記レジスト層の表面を覆う位置に形成された第1印刷層と、前記第1印刷層の表面にこの第1印刷層と異なる色で形成され、前記導体パターンのエッジ部の上方を覆うエッジ被覆部と文字や記号等の標章を表示する標章表示部とを有する第2印刷層と、を備えることである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レジスト層と第1印刷層と第2印刷層とにより導体パターンが覆われており、導体パターンの腐食防止効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態に係るプリント基板を図面を用いて説明する。図1はプリント基板1の一部を示す平面図、図2はプリント基板1を示す縦断側面図である。
【0010】
このプリント基板1は、空調機の室外機の制御装置において使用されるものであり、絶縁基板2と、導体パターン3と、レジスト層4と、第1印刷層5と、第2印刷層6とを有している。
【0011】
絶縁基板2は、紙基材フェノール基板やガラスエポキシ基板などからなる長方形の板状部材であり、その表面に導体パターン3が形成されている。
【0012】
導体パターン3は、絶縁基板2の表面全体に銅膜を形成し、この銅膜をエッチング処理することにより必要なパターンに形成されている。なお、導体パターン3の一部は、プリント基板1に実装される回路部品7と電気的に接続される接続部8とされ、この接続部8はレジスト層4、第1印刷層5、第2印刷層6により覆われずに露出されている。
【0013】
レジスト層4は、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などを用いて形成された絶縁性を有する層であり、絶縁基板2と導体パターン3とを覆う位置に、導体パターン3の一部である接続部8を除いた部分の全面に形成されている。レジスト層4は、導体パターン3へのハンダの付着防止や、導体パターン3の絶縁性の確保のために設けられている。
【0014】
第1印刷層5は、スクリーン印刷により形成された層であり、レジスト層4の表面にその全面の一部を除いた範囲に形成されている。第1印刷層5は、白色、黄色、水色、薄緑色などの薄色のシルクインクを用いて形成されている。なお、第1印刷層5が形成されていない部分とは、1.25×2.00mm以下の回路部品7の電極9に接続される2つの接続部8の間の部分である。
【0015】
図3は、1.25×2.00mm以下の回路部品7と、この回路部品7の電極9が接続される2つの接続部8との間のレジスト層4の表面に第1印刷層5が形成されていない状態を示す縦断側面図である。この図3及び図1において、Aで示す部分が、2つの接続部8の間であってレジスト層4の表面に第1印刷層5が形成されていない部分である。なお、この回路部品7は、2つの接続部8の間のレジスト層4の上(Aの部分)に滴下した接着剤10により接着されてプリント基板1に実装され、それぞれの電極9が接続部8に接続されている。
【0016】
第2印刷層6は、第1印刷層5の表面にスクリーン印刷により形成された層であり、導体パターン3のエッジ部の上方を覆うエッジ被覆部6aと、文字や記号等の標章を表示する標章表示部6bとを備えている。
【0017】
エッジ被覆部6aは、導体パターン3のエッジ部、特に、プリント基板1の使用時に42V以上の直流電圧又は30V以上の交流電圧が印加される導体パターン3のエッジ部、又は、0.5A以上の電流が流れる導体パターン3のエッジ部の上方を覆う位置に形成されている。
【0018】
第2印刷層6は、黒色、青色、赤色、緑色などの濃色のシルクインクを用いて形成され、第1印刷層5に対して標章を視認可能なコントラストを有している。
【0019】
このプリント基板1の製造は、図4に示す方法で行なわれる。まず、第1ステップS1においてプリント基板1の元になる絶縁基板が形成される。
【0020】
第2ステップS2では、絶縁基板2の表面に導体パターン3が形成される。この導体パターン3の形成では、まず、絶縁基板2の表面の全面に銅膜が形成され、この銅膜の不要な部分がエッチング処理して除去されることにより導体パターン3が形成される。なお、もともとの基板材料を大きく作成しておき、導体パターン3の形成後に、所定のサイズに切断することで必要とする絶縁基板2を形成してもよい。
【0021】
第3ステップS3では、レジスト層4が形成される。このレジスト層4の形成は、所謂写真法もしくは印刷法により行なわれる。すなわち、写真法では絶縁基板2と導体パターン3との表面にレジスト層4を構成するレジスト溶液が塗布され、このレジスト溶液が感光されることによりレジスト層4が形成される。このとき、接続部8の上方のレジスト溶液が感光しないように処理されることにより、接続部8の上方にはレジスト層4が形成されない。なお、印刷法では、接続部8の上方以外の絶縁基板2と導体パターン3との表面にレジスト溶液が塗布され、感光されることによりレジスト層4が形成される。
【0022】
第4ステップS4では、第1印刷層5が形成される。この第1印刷層5は、薄色のシルクインクを用いて図3及び図1においてAで示した部分と接続部8の上方部分以外にスクリーン印刷することによりレジスト層4の表面にシルクインク層を形成し、このシルクインク層を感光もしくは熱硬化させることにより形成される。
【0023】
第5ステップS5では、第2印刷層6が形成される。この第2印刷層6は、濃色のシルクインクを用いて導体パターン3のエッジ部の上方を覆う部分と、文字や記号等の標章を表示する部分とにスクリーン印刷することにより第1印刷層5の表面にシルクインク層を形成し、このシルクインク層を感光もしくは熱硬化させることにより形成される。
【0024】
このような構成において、このプリント基板1は、絶縁基板2と導体パターン3とを覆うレジスト層4が形成され、このレジスト層4を覆う第1印刷層5が形成され、この第1印刷層5の上に第2印刷層6が形成されている。
【0025】
第1印刷層5は、レジスト層4の表面のほぼ全面に形成されている。このため、第1印刷層5は水分がレジスト層4に存在するピンホールなどに浸入することの防止を有効に行なうことができ、レジスト層4のピンホールなどに浸透した水分が導体パターン3に到達することを防止することができる。これにより、レジスト層4への水分の浸入による導体パターン3の腐食防止を図ることができる。
【0026】
さらに、第1印刷層5の表面に第2印刷層6が形成され、この第2印刷層6は、レジスト層4や第1印刷層5における導体パターン3のエッジ部の上方を覆う部分を被覆している。このため、通電時における導体パターン3への電界集中による化学反応が導体パターン3のエッジ部に集中しても、このエッジ部を覆っているレジスト層4や第1印刷層5が劣化することを抑制することができる。これにより、レジスト層4や第1印刷層5における導体パターン3のエッジ部を覆っている部分が劣化し、その劣化が原因となる第1印刷層5内やレジスト層4内への水分の浸入を防止することができ、導体パターン3の腐食防止を図ることができる。
【0027】
特に、プリント基板1の使用時に42V以上の直流電圧又は30V以上の交流電圧が印加される導体パターン3、又は、0.5A以上の電流が流れる導体パターン3は、電界集中による化学反応が顕著になる。このため、これらの導体パターン3のエッジ部の上方にエッジ被覆部6aを設けることにより、導体パターン3の腐食防止効果を高めることができる。
【0028】
第1印刷層5と第2印刷層6とは、第2印刷層6の標章表示部6bに表示された標章を視認可能なコントラストを有するため、プリント基板1に形成された標章の視認を容易に行なうことができる。
【0029】
また、1.25×2.00mm以下の回路部品7を図3に示すように接着剤10を用いて実装する場合、接着剤10を滴下する2つの接続部8の間のA部に第1印刷層5が存在すると、1.25×2.00mm以下の回路部品7は小さく軽いため、滴下した接着剤10を押し付けることができず、接着剤が盛り上がったままとなり、当該回路部品7が傾いた状態で実装され、電極9と接続部8とが接続不良となることがある。これに対し、このA部に第1印刷層5を形成しないことにより、滴下した接着剤10による盛り上がりを小さくできる。このため、接着剤10を用いた回路部品7の実装時においても回路基板7の傾きを防止することができ、電極9と接続部8との電気的な接続を良好に行なうことができ、プリント基板1の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態のプリント基板の一部を示す平面図である。
【図2】プリント基板の一部を拡大して示す縦断側面図である。
【図3】接着剤を用いた回路部品の実装状態をさらに示す拡大して示す縦断側面図である。
【図4】プリント基板の製造方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1…プリント基板、2…絶縁基板、3…導体パターン、4…レジスト層、5…第1印刷層、6…第2印刷層、6a…エッジ被覆部、6b…標章表示部、7…回路部品、8…接続部、9…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板の表面に形成された導体パターンと、
前記絶縁基板と前記導体パターンとを覆う位置に形成され、回路部品が接続される前記導体パターンの接続部を露出させた絶縁性を有するレジスト層と、
前記レジスト層の表面を覆う位置に形成された第1印刷層と、
前記第1印刷層の表面にこの第1印刷層と異なる色で形成され、前記導体パターンのエッジ部の上方を覆うエッジ被覆部と文字や記号等の標章を表示する標章表示部とを有する第2印刷層と、
を備えることを特徴とするプリント基板。
【請求項2】
前記第1印刷層は、1.25×2.00mm以下の前記回路部品の電極が接続される前記接続部の間の部分を除く前記レジスト層の表面の全面に形成されていることを特徴とする請求項1記載のプリント基板。
【請求項3】
前記第1印刷層と前記第2印刷層とは、前記標章を視認可能なコントラストを有することを特徴とする請求項1又は2記載のプリント基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−98177(P2010−98177A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268815(P2008−268815)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(505461072)東芝キヤリア株式会社 (477)
【Fターム(参考)】