説明

プリント装置の制御方法およびプリント装置

【課題】 メンテナンスで使用するシートの消費量の増大を抑える。
【解決手段】 プリントヘッドのメンテナンスパターンを形成して読み取った後に、メンテナンスパターンの少なくとも一部が上流側に残るようにシートを切断してシートを送り戻す。前記シート供給部から再びシートを供給する際には、送り出すシートの先端部付近に形成されているすでに形成済みのメンテナンスパターンの領域を前記プリントヘッドのメンテナンスのために使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートにプリントを行なうプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロールシートを用いたインクジェットプリント装置において、プリントヘッドのノズルの不吐検出の手法を開示する。メンテナンスのための不吐検出パターンをシートにプリントして、これをフォトセンサで読み取って不吐を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−297728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、不吐検出パターンを読み取った後は、その領域は再利用することなくカッタで切断して捨てる。そのため、メンテナンスの頻度が高くなるほど、メンテナンスで使用するシートの消費量が増えてランニングコストが増大するとともに、本来の画像プリントに利用できる領域が減ってしまう。
【0005】
本発明は上記課題の認識に基づいてなされたものである。本発明の目的は、メンテナンスパターンをシート上にプリントしてプリントヘッドのメンテナンスを行なうにあたって、メンテナンスで使用するシートの消費量の増大を抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プリントヘッドを有するプリント部と、前記プリント部にシートを供給するシート供給部と、シート上に形成されたメンテナンスパターンを読み取る検査部とを有するプリント装置の制御方法であって、前記プリントヘッドを用いてシート上に前記メンテナンスパターンを形成する; 形成された前記メンテナンスパターンを前記検査部で読み取る; 前記読み取りに基づいて前記プリントヘッドを検査または調整する;
前記読み取りを行なった後に、切断位置の上流にメンテナンスパターンの少なくとも一部が位置するようにシートを切断する; 前記切断したシートを前記シート供給部に送り戻す; 前記シート供給部から再びシートを供給する際には、送り出すシートの先端近傍に形成されているすでに形成済みの前記メンテナンスパターンの領域の少なくとも一部を前記プリントヘッドのメンテナンスのために使用するように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プリントヘッドのメンテナンスパターンを形成した領域を即時に廃棄するのではなく、少なくとも一部を再利用するようにしたので、メンテナンスで使用するシートの消費量の増大を抑えることができる。ひいては、ランニングコストの低減、環境負荷低減を実現するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プリント装置の内部構成を示す概略図
【図2】制御部のブロック図
【図3】片面プリントモード、両面プリントモードでの動作を説明するための図
【図4】基本的な動作シーケンスを示すフローチャート
【図5】プリント再開時の動作シーケンスを示すフローチャート
【図6】メンテナンスパターンを形成してメンテナンスする手順を示す概念図
【図7】図6の変形例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、インクジェット方式を用いたプリント装置の実施形態を説明する。本例のプリント装置は、長尺で連続したシート(搬送方向において繰り返しのプリント単位(1ページあるいは単位画像という)の長さよりも長い連続したシート)を使用し、片面プリントおよび両面プリントの両方に対応した高速ラインプリンタである。例えば、プリントラボ等における大量の枚数のプリントの分野に適している。なお、本明細書では、1つのプリント単位(1ページ)の領域内に複数の小さな画像や文字や空白が混在していたとしても、当該領域内に含まれるものをまとめて1つの単位画像という。つまり、単位画像とは、連続したシートに複数のページを順次プリントする場合の1つのプリント単位(1ページ)を意味する。なお、単位画像といわずに単に画像という場合もある。プリントする画像サイズに応じて単位画像の長さは異なる。例えばL版サイズの写真ではシート搬送方向の長さは135mm、A4サイズではシート搬送方向の長さは297mmとなる。
【0010】
本発明はプリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置、各種デバイスの製造装置など、インクを用いて乾燥が必要なプリント装置に広く適用可能である。また、本発明は感光材料が付与されたシートにレーザ等で潜像を描画して液体現像方式でプリントを行なうプリント装置にも適用可能である。また、本発明はプリント処理に限らず連続したシートに乾燥が必要な種々の処理(記録、加工、塗布、照射、読取、検査など)を行なうシート処理装置にも適用可能である。
【0011】
図1はプリント装置の内部構成を示す断面の概略図である。本実施形態のプリント装置は、ロール状に巻かれたシートを用いて、シートの第1面と第1面の背面側の第2面に両面プリントすることが可能となっている。プリント装置内部には、大きくは、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、プリント部4、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12、制御部13の各ユニットを備える。排出部12はソータ部11を含んで排出処理を行なうユニットを指す。シートは、図中の実線で示したシート搬送経路に沿ってローラ対やベルトからなる搬送機構で搬送され、各ユニットで処理がなされる。なお、シート搬送経路の任意の位置において、シート供給部1に近い側を「上流」、その逆側を「下流」という。
【0012】
シート供給部1は、ロール状に巻かれた連続シートを保持して供給するためのユニットである。シート供給部1は、2つのロールR1、R2を収納することが可能であり、択一的にシートを引き出して供給する構成となっている。なお、収納可能なロールは2つであることに限定はされず、1つ、あるいは3つ以上を収納するものであってもよい。また、連続したシートであれば、ロール状に巻かれたものに限らない。例えば、単位長さごとのミシン目が付与された連続したシートがミシン目ごとに折り返されて積層され、シート供給部1に収納されるものでもよい。
【0013】
デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートのカール(反り)を軽減させるユニットである。デカール部2では、1つの駆動ローラに対して2つのピンチローラを用いて、カールの逆向きの反りを与えるようにシートを湾曲させて通過させることでデカール力を作用させてカールを軽減させる。
【0014】
斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの斜行(本来の進行方向に対する傾き)を矯正するユニットである。基準となる側のシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される。
【0015】
プリント部4は、搬送されるシートに対して上方からプリントヘッド14によりシート上にプリント処理を行なって画像を形成するシート処理部である。つまり、プリント部4はシートに所定の処理を行なう処理部である。プリント部4は、シートを搬送する複数の搬送ローラも備えている。プリントヘッド14は、使用が想定されるシートの最大幅をカバーする範囲でインクジェット方式のノズル列が形成されたライン型プリントヘッドを有する。プリントヘッド14は、複数のプリントヘッドが搬送方向に沿って平行に並べられている。本例ではC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、LC(ライトシアン)、LM(ライトマゼンタ)、G(グレー)、K(ブラック)の7色に対応した7つのプリントヘッドを有する。なお、色数およびプリントヘッドの数は7つには限定はされない。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、インクタンクからそれぞれインクチューブを介してプリントヘッド14に供給される。
【0016】
検査部5は、プリント部4でシートにプリントされたメンテナンスパターンや画像をスキャナによって光学的に読み取って、プリントヘッドのノズルの状態、シート搬送状態、画像位置等を検査して画像が正しくプリントされたかを判定するためのユニットである。スキャナは、使用するシートの幅をカバーする範囲を読取可能であるライン型またはエリア型のイメージセンサ(CCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ)を有する。イメージセンサは、メンテナンスパターンや画像に使用される複数色、すなわち7色のインク色に感応するようになっている。
【0017】
カッタ部6は、プリント後のシートを所定長さに切断する機械的なカッタ20を備えたユニットである。カッタ部6はさらに、シート上に記録されているカットマークを光学的に検出するカットマークセンサ19とシートを次工程に送り出すための複数の搬送ローラも備えている。カッタ部6の近傍にはゴミ箱17が設けられている。ゴミ箱17は、カッタ部6で切り落とされゴミとして排出される小さなシート片を収容するものである。カッタ部6には、切断したシートをゴミ箱17に排出するか、本来の搬送経路に移行させるかの振り分け機構が設けられている。
【0018】
情報記録部7は、切断されたシートの非プリント領域にプリントのシリアル番号や日付などのプリント情報(固有の情報)を記録するユニットである。記録はインクジェット方式、熱転写方式などで文字やコードをプリントすることで行なわれる。情報記録部7の上流側且つカッタ部6の下流側には、切断されたシートの先端エッジを検知するエッジセンサ21が設けられている。つまり、エッジセンサ21はカッタ部6と情報記録部7による記録位置との間でシートの端部を検知する、エッジセンサ21の検知タイミングに基づいて情報記録部7で情報記録するタイミングが制御される。
【0019】
乾燥部8は、プリント部4でプリントされたシートを加熱して、付与されたインクを短時間に乾燥させるためのユニットである。乾燥部8の内部では通過するシートに対して少なくとも下面側から熱風を付与してインク付与面を乾燥させる。なお、乾燥方式は熱風を付与する方式に限らず、電磁波(紫外線や赤外線など)をシート表面に照射する方式であってもよい。
【0020】
以上のシート供給部1から乾燥部8までのシート搬送経路を第1経路と称する。第1経路はプリント部4から乾燥部8までの間にUターンする形状を有し、カッタ部6はUターンの形状の途中に位置している。
【0021】
反転部9は両面プリントを行う際に表面プリントが終了した連続シートを一時的に巻き取って表裏反転させるためのユニットである。反転部9は、乾燥部8を通過したシートを再びプリント部4に供給するための、乾燥部8からデカール部2を経てプリント部4に到る経路(ループパス)(第2経路と称する)の途中に設けられている。反転部9はシートを巻き取るための回転する巻取回転体(ドラム)を備えている。表面のプリントが済んで切断されていない連続シートは巻取回転体に一時的に巻き取られる。巻き取りが終わったら、巻取回転体が逆回転して巻き取り済みシートは巻き取りのときとは逆順に送り出されてデカール部2に供給され、プリント部4に送られる。このシートは表裏反転しているのでプリント部4で裏面にプリントを行うことができる。両面プリントのより具体的な動作については後述する。
【0022】
排出搬送部10は、カッタ部6で切断され乾燥部8で乾燥させられたシートを搬送して、ソータ部11までシートを受け渡すためのユニットである。排出搬送部10は、反転部9が設けられた第2経路とは異なる経路(第3経路と称する)に設けられている。第1経路を搬送されてきたシートを第2経路と第3経路のいずれか一方に選択的に導くために、経路の分岐位置(「排出分岐位置」と呼ぶ。)には可動フラッパを有する経路切替機構が設けられている。
【0023】
ソータ部11を含む排出部12は、シート供給部1の側部で且つ第3経路の末端に設けられている。ソータ部11は必要に応じてプリント済みシートをグループ毎に仕分けるためのユニットである。仕分けられたシートは排出部12が有する複数のトレイに排出される。このように、第3経路はシート供給部1の下方を通過して、シート供給部1を挟んでプリント部4や乾燥部8とは逆側にシートを排出するレイアウトとなっている。
【0024】
以上のように、シート供給部1から乾燥部8までが第1経路に順に設けられている。乾燥部8の先は第2経路と第3経路に分岐され、第2経路は途中に反転部9が設けられ反転部9の先は第1経路に合流する。第3経路の末端には排出部12が設けられている。
【0025】
制御部13は、プリント装置全体の各部の制御を司るユニットである。制御部13は、CPU、記憶装置、各種制御部を備えたコントローラ、外部インターフェース、およびユーザーが入出力を行なう操作部15を有する。プリント装置の動作は、コントローラまたはコントローラに外部インターフェースを介して接続されるホストコンピュータ等のホスト装置16からの指令に基づいて制御される。
【0026】
図2は制御部13の概念を示すブロック図である。制御部13に含まれるコントローラ(破線で囲んだ範囲)は、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、画像処理部207、エンジン制御部208、個別ユニット制御部209から構成される。CPU201(中央演算処理部)はプリント装置の各ユニットの動作を統合的に制御する。ROM202はCPU201が実行するためのプログラムやプリント装置の各種動作に必要な固定データを格納する。RAM203はCPU201のワークエリアとして用いられたり、種々の受信データの一時格納領域として用いられたり、各種設定データを記憶させたりする。HDD204(ハードディスク)はCPU201が実行するためのプログラム、プリントデータ、プリント装置の各種動作に必要な設定情報を記憶読出することが可能である。操作部15はユーザーとの入出力インターフェースであり、ハードキーやタッチパネルの入力部、および情報を提示するディスプレイや音声発生器などの出力部を含む。
【0027】
高速なデータ処理が要求されるユニットについては専用の処理部が設けられている。画像処理部207は、プリント装置で扱うプリントデータの画像処理を行う。入力された画像データの色空間(たとえばYCbCr)を、標準的なRGB色空間(たとえばsRGB)に変換する。また、画像データに対し解像度変換、画像解析、画像補正等、様々な画像処理が必要に応じて施される。これらの画像処理によって得られたプリントデータは、RAM203またはHDD204に格納される。エンジン制御部208は、CPU201等から受信した制御コマンドに基づいてプリントデータに応じてプリント部4のプリントヘッド14の駆動制御を行なう。エンジン制御部208は更にプリント装置内の各部の搬送機構の制御も行なう。個別ユニット制御部209は、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12の各ユニットを個別に制御するためのサブコントローラである。CPU201による指令に基づいて個別ユニット制御部209によりそれぞれのユニットの動作が制御される。外部インターフェース205は、コントローラをホスト装置16に接続するためのインターフェース(I/F)であり、ローカルI/FまたはネットワークI/Fである。以上の構成要素はシステムバス210によって接続されている。
【0028】
ホスト装置16は、プリント装置にプリントを行わせるための画像データの供給源となる装置である。ホスト装置16は、汎用または専用のコンピュータであってもよいし、画像リーダ部を有する画像キャプチャ、デジタルカメラ、フォトストレージ等の専用の画像機器であってもよい。ホスト装置16がコンピュータの場合は、コンピュータに含まれる記憶装置にOS、画像データを生成するアプリケーションソフトウェア、プリント装置用のプリンタドライバがインストールされる。なお、以上の処理の全てをソフトウェアで実現することは必須ではなく、一部または全部をハードウェアによって実現するようにしてもよい。
【0029】
次に、プリント時の基本動作について説明する。プリントは、片面プリントモードと両面プリントモードとでは動作が異なるので、それぞれについて説明する。
【0030】
図3(a)は片面プリントモードでの動作を説明するための図である。シート供給部1から供給され、デカール部2、斜行矯正部3でそれぞれ処理されたシートは、プリント部4において表面(第1面)のプリントがなされる。長尺の連続シートに対して、搬送方向における所定の単位長さの画像(単位画像)を順次プリントして複数の画像を並べて形成していく。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において単位画像ごとに切断される。切断されたカットシートは、必要に応じて情報記録部7でシートの裏面にプリント情報が記録される。そして、カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され乾燥が行なわれる。その後、排出搬送部10を経由して、ソータ部11の排出部12に順次排出され積載されていく。一方、最後の単位画像の切断でプリント部4の側に残されたシートはシート供給部1に送り戻されて、シートがロールR1またはR2に巻き取られる。
【0031】
このように、片面プリントにおいては、シートは第1経路と第3経路を通過して処理され、第2経路は通過しない。以上をまとめると、片面プリントモードにおいては制御部13の制御により、以下(1)〜(6)のシーケンスが実行される。
(1)シート供給部1からシートを送り出してプリント部4に供給する;
(2)供給されたシートの第1面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(3)第1面にプリントした単位画像ごとにカッタ部6でシートの切断を繰り返す;
(4)単位画像ごとに切断されたシートを1枚ずつ乾燥部8を通過させる;
(5)1枚ずつ乾燥部8を通過したシートを、第3経路を通して排出部12に排出する;
(6)最後の単位画像を切断してプリント部4の側に残されたシートをシート供給部1に送り戻す。
【0032】
図3(b)は両面プリントモードでの動作を説明するための図である。両面プリントでは、表(おもて)面(第1面)プリントシーケンスに次いで裏面(第2面)プリントシーケンスを実行する。最初の表面プリントシーケンスでは、シート供給部1から検査部5までの各ユニットでの動作は上述の片面プリントの動作と同じである。カッタ部6では切断動作は行わずに、連続シートのまま乾燥部8に搬送される。乾燥部8での表面のインク乾燥の後、排出搬送部10の側の経路(第3経路)ではなく、反転部9の側の経路(第2経路)にシートが導かれる。第2経路においてシートは、順方向(図面では反時計回り方向)に回転する反転部9の巻取回転体に巻き取られていく。プリント部4において、予定された表面のプリントが全て終了すると、カッタ部6にて連続シートのプリント領域の後端が切断される。切断位置を基準に、搬送方向下流側(プリントされた側)の連続シートは乾燥部8を経て反転部9でシート後端(切断位置)まで全て巻き取られる。一方、この巻取りと同時に、切断位置よりも搬送方向上流側(プリント部4の側)に残された連続シートは、シート先端(切断位置)がデカール部2に残らないように、シート供給部1に巻き戻されて、シートがロールR1またはR2に巻き取られる。この巻き戻しによって、以下の裏面プリントシーケンスで再び供給されるシートとの衝突が避けられる。
【0033】
上述の表面プリントシーケンスの後に、裏面プリントシーケンスに切り替わる。反転部9の巻取回転体が巻き取り時とは逆方向(図面では時計回り方向)に回転する。巻き取られたシートの端部(巻き取り時のシート後端は、送り出し時にはシート先端になる)は、図の破線の経路に沿ってデカール部2に送り込まれる。デカール部2では巻取回転体で付与されたカールの矯正がなされる。つまり、デカール部2は第1経路においてシート供給部1とプリント部4の間、ならびに第2経路において反転部9とプリント部4の間に設けられて、いずれの経路においてもデカールの働きをする共通のユニットとなっている。シートの表裏が反転したシートは、斜行矯正部3を経て、プリント部4に送られて、シートの裏面にプリントが行なわれる。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎に切断される。カットシートは両面にプリントされているので、情報記録部7での記録はなされない。カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され、排出搬送部10を経由して、ソータ部11の排出部12に順次排出され積載されていく。
【0034】
このように、両面プリントにおいてはシートは第1経路、第2経路、第1経路、第3経路の順に通過して処理される。以上をまとめると、両面プリントモードにおいては制御部13の制御により、以下(1)〜(11)のシーケンスが実行される。
(1)シート供給部1からシートを送り出してプリント部4に供給する;
(2)供給されたシートの第1面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(3)第1面にプリントされたシートを乾燥部8を通過させる;
(4)乾燥部8を通過したシートを第2経路に導いて、反転部9が有する巻取回転体に巻き取っていく;
(5)第1面への繰返しのプリントが済んだら最後にプリントした単位画像の後ろでカッタ部6でシートを切断する;
(6)切断したシートの端部が乾燥部8を通過して巻取回転体に達するまで巻取回転体に巻き取る。これと共に、切断してプリント部4の側に残されたシートをシート供給部1に送り戻す;
(7)巻取りが済んだら巻取回転体を逆回転させて、第2経路から再びプリント部4にシートを供給する;
(8)第2経路から供給されるシートの第2面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(9)第2面にプリントした単位画像ごとにカッタ部6でシートの切断を繰り返す;
(10)単位画像ごとに切断されたシートを1枚ずつ乾燥部8を通過させる;
(11)1枚ずつ乾燥部8を通過したシートを、第3経路を通して排出部12に排出する。
【0035】
次に、プリント装置におけるプリントヘッド14のメンテナンスを実行するための制御方法について説明する。基本的なメンテナンス手順は、プリントヘッド14を用いてシート上にメンテナンスパターンを形成して検査部5で読み取り、プリントヘッド14を検査または調整するものである。メンテナンスパターンとは、プリントヘッドのノズルの不吐検出パターン、プリントヘッドの調整パターンのいずれかを含む。
【0036】
図4は、メンテナンスを含む基本的な動作シーケンスを示すフローチャートである。ステップS11では、上述した手順にしたがって、片面プリントモードまたは両面プリントモードの第1面へのプリント(表面プリント)を実行する。
【0037】
ステップS12では、連続したシートの片面にプリントすべき複数のページのうち最終ページの画像(最終画像)のプリントが済んだかを判断する。判断がNOの場合はステップS11の処理を続け、判断がYESの場合はステップS13に移行する。
【0038】
ステップS13では、プリントヘッド14を用いて、画像形成領域100の最終画像の後にカッタ部でシートを切断するための位置基準となるカットマーク101を形成する。さらに続けてメンテナンスパターン102をプリントして形成する。
【0039】
図6はメンテナンスパターンを形成してメンテナンスする手順を示す概念図である。画像形成領域100には最終的にプリントすべき複数の画像が形成される。それに続けて、カットマーク101とメンテナンスパターン102が形成される。メンテナンスパターン102は、プリントヘッドのノズルの不吐検出パターン、またはプリントヘッドの調整パターンである。未使用領域103はまだプリントがされていない領域である。図6(a)は、最終画像に続けてカットマーク101およびメンテナンスパターン102が形成された状態を示す。
【0040】
図4に戻って、ステップS14では、検査部5でメンテナンスパターン102の読み取りを行なう。検査部5のセンサで読み取って画像データをとして取得する。
【0041】
ステップS15では、ステップS14で読み取って取得した画像データを解析して、プリントヘッドの状態を判断する。検査のための処理は検査部5が内蔵する処理部で行なうか、あるいはプリント装置の制御部13で行なう。
【0042】
メンテナンスパターンがノズルの不吐検出パターンである場合には、画像を解析することで各ノズルについて正常(吐出状態)か異常(不吐出状態)かを判断する。判断の結果、異常であったら、操作部15のディスプレイにプリントヘッドのメンテナンスが必要であることを表示して、ユーザにメンテナンス作業を指示する。メンテナンスパターンがプリントヘッドの調整パターンである場合には、画像を解析することで、自動レジスト調整等のメンテナンス処理を実行する。
【0043】
ステップS16では、シートをさらに下流側に送って、シート上に形成したカットマーク101を基準にしてカッタ部6でシートを切断する。カッタ部6のカットマークセンサ19がカットマーク101を検出して、カッタ20でシートを切断する。図6(b)はこのときの状態を示す。カットマークは画像形成領域100とメンテナンスパターン102の間に形成されているので、シートはメンテナンスパターン102の下流側の端部で切断される。つまり、切断位置の上流にメンテナンスパターン102が位置するようにシートが切断される。
【0044】
ステップS17では、切断位置よりも上流側に残されたシート(連続シート)を、さらに下流側に搬送して、少なくとも先端を乾燥部8にまで送る。なお、これに先立って、切断位置よりも下流側に残されたシートは経路から排出する。片面プリントモードの場合は、下流側にあるのは最終画像がカットされた完成品なので、乾燥部8を経て排出部12に排出させる。両面プリントモードの第1面へのプリントの場合は、下流側にあるのは第1面に複数の画像が並べてプリントされた連続シートなので、上述したように反転部9に巻き取らせる。切断位置よりも上流側に残されたシートの先端にはメンテナンスパターン102が形成されており、この領域が乾燥部8を通過することでインクが乾燥した状態となる。
【0045】
ステップS18では、シートを逆方向に搬送してシート供給部1のロールに巻き取っていく。シート先端は乾燥部8から抜けて第1経路を戻ってシート供給部1まで送り戻される。なお、ステップS17の乾燥は必須ではなく、ステップS16でのシート切断の後、ステップS17は省略して直ちに切断位置より上流側のシートをシート供給部1に送り戻すようにしてもよい。
【0046】
以上が、基本的な動作シーケンスである。片面プリントモードであればプリントを終了する。両面プリントモードの第1面プリントであれば、反転部9からシートを再び送り出して第2面のプリントを開始する。
【0047】
次に、再びプリントを行なうプリント再開時の動作シーケンスを説明する。基本的な考え方は、シート供給部1から再びシートを供給する際には、送り出すシートの先端近傍に形成されているすでに形成済みのメンテナンスパターン102の領域をプリントヘッド14のメンテナンスのために使用するものである。
【0048】
図5のフローチャートを用いて説明する。片面プリントモード、両面プリントモード(第1面プリント)ともに同じ動作となる。
【0049】
ステップS21では、シート供給部1からシートを再供給する。ロールに巻き取られているシートの先端近傍には、上述のようにして形成されたメンテナンスパターン102が形成されている。図6(c)はこのときの状態を示す。
【0050】
ステップS22では、すでに形成済みのメンテナンスパターン102の領域を、プリントヘッド14のメンテナンスのために使用する。具体的には、メンテナンスパターン102の領域を含むシート先端領域104(図6(c)参照)がプリントヘッド14のプリント位置を通過する際に、シートに対してプリントヘッド14の予備吐出動作を行なう。予備吐動作はノズルの乾燥や目詰まりを解消するメンテナンス動作の一つである。予備吐出動作でメンテナンスパターン102の上にさらにインクが付与されてパターン情報が失われたとしても、メンテナンスパターン102はすでにステップS14で読み取りが済んでいるので問題はない。なお、メンテナンスのためのシート先端領域104はメンテナンスパターン102と同じ領域としても設定してもよいし、メンテナンスパターン102の一部の領域をシート先端領域104として設定してもよい。
【0051】
別の形態として、すでに形成済みのメンテナンスパターンの領域に、最終的なプリント画像とは相違し且つ検査部5での検査は不要な画像またはパターンを形成するようにしてもよい。この場合も、メンテナンスパターン102の上にさらにインクが付与されてパターン情報が失われたとしても、メンテナンスパターン102はすでにステップS14で読み取りが済んでいるので問題はない。
【0052】
さらに別の形態として、メンテナンスパターン102の領域に、すでに形成済みのメンテナンスパターン102とは分離して読み取ることが可能な形態で新しいメンテナンスパターンを形成するようにしてもよい。すでに形成済みのメンテナンスパターンの個々のパターンとは位置をずらして新しいメンテナンスパターンを形成する。検査部5で取得した画像データを解析して、新しいメンテナンスパターンを分離して読み取ることができる。
【0053】
いずれの形態にせよ、すでに形成済みのメンテナンスパターン102の影響を受けずに、同領域の少なくとも一部を再利用してプリントヘッドのさらなるメンテナンスを行なうことができる。
【0054】
ステップS23では、ステップS22でのメンテナンスの後に、シートに対して複数の画像を順次形成していく。そして、最後の画像のプリントの後に上述したようにメンテナンスパターンを形成して、同じシーケンスを繰り返す。
【0055】
図7は、図6の変形例を説明するための図である。この例では、メンテナンスパターン102は図6の形態に較べて大きな領域に形成されている(図7(a)参照)。例えば、プリントヘッドのレジスト調整用のパターンではこのような大きな領域が必要になる場合がある。メンテナンスパターン102の領域は、プリント再開時に実行するプリントヘッドのメンテナンスのために必要な領域よりも大きいので、すべてをシート供給部1に巻き戻しても利用し切れない。
【0056】
そこで、カットマーク101とは別に、メンテナンスパターン102の内部の領域にも別のカットマーク105を形成して、この位置においてもシートを切断する(図7(b)参照)。なお、この例ではカットマーク105はシート搬送方向の幅が大きいので、両側2箇所で切断してシート片をゴミ箱17に排出する。カットマーク105はカットマーク101と同様の細いマークとして一度の切断で済むようにしてもよい。こうして、カッタの切断位置の上流側のシート(連続シート)の先端には適切な大きさのメンテナンスパターン102が形成され、シート搬送部1に巻き戻される(図7(c)参照)。
【0057】
以上の実施形態によれば、プリントヘッドのメンテナンスパターンを形成した領域を即時に廃棄するのではなく、少なくとも一部を再利用するようにしたので、メンテナンスで使用するシートの消費量の増大を抑えることができる。ひいては、ランニングコストの低減、環境負荷低減を実現するものである。
【0058】
また、以上の実施例では、形成したメンテナンスパターン102の領域をシート供給部1に送り戻す前にいったん乾燥部8に送ってインクを乾燥させるようにしている。メンテナンスパターン102の領域をプリントヘッドのメンテナンスのために再利用する際に、より多くのインクをシートが受容することでき、念入りなメンテナンスを行なうことができる。なお、乾燥を省略するようにした場合には、その分の搬送が必要がなくなるので、トータルのスループットが向上する。
【符号の説明】
【0059】
1 シート供給部
4 プリント部
5 検査部
6 カッタ部
9 シート巻取部
13 制御部
14 プリントヘッド
15 操作部
100 画像形成領域
101 カットマーク
102 メンテナンスパターン
103 未使用領域
104 シート先端領域
105 カットマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントヘッドを有するプリント部と、前記プリント部にシートを供給するシート供給部と、シート上に形成されたメンテナンスパターンを読み取る検査部と、プリントされたシートを切断するカッタ部とを有するプリント装置の制御方法であって、
前記プリントヘッドを用いてシート上に前記メンテナンスパターンを形成する;
形成された前記メンテナンスパターンを前記検査部で読み取る;
前記読み取りに基づいて前記プリントヘッドを検査または調整する;
前記読み取りを行なった後に、切断位置の上流にメンテナンスパターンの少なくとも一部が位置するようにシートを前記カッタ部で切断する;
前記切断したシートを前記シート供給部に送り戻す;
前記シート供給部から再びシートを供給する際には、送り出すシートの先端近傍に形成されているすでに形成済みの前記メンテナンスパターンの領域の少なくとも一部を前記プリントヘッドのメンテナンスのために使用する
ように制御することを特徴とするプリント装置の制御方法。
【請求項2】
前記プリント装置は乾燥部を有し、前記切断したシートを前記シート供給部に送り戻す前に、前記メンテナンスパターンが形成された領域を前記乾燥部に送ることを特徴とする、請求項1記載のプリント装置の制御方法。
【請求項3】
前記メンテナンスパターンは、前記プリントヘッドのノズルの不吐検出パターン、前記プリントヘッドの調整パターンのいずれかを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のプリント装置の制御方法。
【請求項4】
前記すでに形成済みのメンテナンスパターンの領域において、前記プリントヘッドの予備吐出動作を行なうことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のプリント装置の制御方法。
【請求項5】
前記すでに形成済みのメンテナンスパターンの領域に、プリント画像とは相違し且つ前記検査部での検査は不要な画像またはパターンを形成することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のプリント装置の制御方法。
【請求項6】
前記すでに形成済みのメンテナンスパターンの領域に、前記すでに形成済みのメンテナンスパターンとは分離して読み取ることが可能な形態で新しいメンテナンスパターンを形成することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のプリント装置の制御方法。
【請求項7】
連続したシートに前記プリントヘッドを用いて複数の画像を順次プリントし、前記複数の画像のうち最後の画像のプリントの後に、前記メンテナンスパターンを形成することを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のプリント装置の制御方法。
【請求項8】
連続したシートの第1面に複数の画像を順次プリントし、前記第1面にプリント済みのシートを反転部で表裏反転させて前記第1面の背面側の第2面に複数の画像を順次プリントして、両面プリントするものであって、
前記第1面にプリントする最後の画像のプリントの後に前記メンテナンスパターンを形成し、
前記切断したシートのうち上流側のシートは前記シート供給部に送り戻し、且つ下流側のシートは前記反転部に送ることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のプリント装置の制御方法。
【請求項9】
前記プリントヘッドはインクジェット方式でインクを吐出する複数のノズルを有することを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載のプリント装置の制御方法。
【請求項10】
プリントヘッドを有するプリント部と、
前記プリント部にシートを供給するシート供給部と、
シート上に形成されたメンテナンスパターンを読み取る検査部と、
プリントされたシートを切断するカッタ部と、
制御部と、
を有し、前記制御部により、
前記プリントヘッドを用いてシート上に前記メンテナンスパターンを形成する;
形成された前記メンテナンスパターンを前記検査部で読み取る;
前記読み取りに基づいて前記プリントヘッドを検査または調整する;
前記読み取りを行なった後に、切断位置の上流にメンテナンスパターンの少なくとも一部が位置するように前記カッタ部でシートを切断する;
前記切断したシートを前記シート供給部に送り戻す;
前記シート供給部から再びシートを供給する際には、送り出すシートの先端近傍に形成されているすでに形成済みの前記メンテナンスパターンの領域の少なくとも一部を前記プリントヘッドのメンテナンスのために使用する
ように制御されることを特徴とするプリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−177949(P2011−177949A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42345(P2010−42345)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】