説明

プリント配線基板の製造方法及びプリント配線基板

【課題】環境に好ましくない溶液の使用量を低減し、従来よりも簡潔な工程で製造できる、プリント配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の実施の形態によるプリント配線基板の製造方法は、各々が第1のオーバーハング部を有し、互いに配列された複数の第1の線状凸部を含む金型を準備する工程と、金型の表面に、未硬化の樹脂からなる未硬化層を形成する工程と、未硬化層を硬化して、各々が第2のオーバーハング部を有し、互いに配列された複数の第2の線状凸部と、隣り合う第2の線状凸部の間に形成される複数の表面部とを含む絶縁基板を形成する工程と、金型から絶縁基板を離型する工程と、第2の凸部の上面と、表面部とに導電膜を形成する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板の製造方法に関し、さらに詳しくは、基板上に金属配線が形成されるプリント配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板は、電子素子を搭載して電子回路を形成する。プリント配線基板は、電子機器に広く利用されている。
【0003】
一般的に、プリント配線基板は、フォトリソグラフィにより形成される。具体的には、めっき液を用いて基板表面をめっきしてめっき層を形成する。続いて、めっき層上にレジスト層を形成する。レジスト層上にマスクを当て、露光する。続いて、レジスト除去液を用いて現像する。続いて、エッチング液を用いてめっき層をエッチングし、金属配線を形成する。以上の工程により、金属配線を有するプリント配線基板が製造される。
【0004】
上述の従来の方法でプリント配線基板を製造する場合、上述のとおり、露光、現像、エッチングを行う。そのため、製造工程が煩雑である。また、めっき液、レジスト除去液、エッチング液は、環境にとって好ましくない溶媒を含有する場合がある。そのため、これらの溶液(めっき液、レジスト除去液、エッチング液)の使用量はできるだけ抑制される方が好ましい。
【0005】
溶液の使用量を減らすことが可能な配線作製方法として、特開平8−315981号公報(特許文献1)、特開2001−148289号公報(特許文献2)、特開2004−14831号公報(特許文献3)及び特開2007−42657号公報(特許文献4)などが提案されている。これらの特許文献では、基板表面に、オーバーハング部を有する隔壁が形成され、隣り合う隔壁の間に有機ELが配置される。そして、基板の上方から、金属蒸気を基板表面に被着させる。このとき、有機EL上に金属配線が形成される。隣り合う金属配線は、隔壁により分断される。これらの特許文献の製造方法によれば、最後に金属をエッチングせず、そのまま用いるため、金属エッチング工程分の溶液の使用量が削減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−315981号公報
【特許文献2】特開2001−148289号公報
【特許文献3】特開2004―14531号公報
【特許文献4】特開2007−42657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜4では、フォトリソグラフィを利用して、基板上に隔壁を形成する。そのため、基板の製造工程が煩雑になる。また、めっき液、レジスト除去液、エッチング液といった環境に好ましくない溶液の使用量を低減しにくい。
【0008】
本発明の目的は、環境に好ましくない溶液の使用量を低減でき、従来よりも簡潔な工程で製造できる、プリント配線基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の実施の形態によるプリント配線基板の製造方法は、各々が第1のオーバーハング部を有し、互いに配列された複数の第1の線状凸部を含む金型を準備する工程と、金型の表面に、未硬化の樹脂からなる未硬化層を形成する工程と、未硬化層を硬化して、各々が第2のオーバーハング部を有し、互いに配列された複数の第2の線状凸部と、隣り合う第2の線状凸部の間に形成される複数の表面部とを含む絶縁基板を形成する工程と、金型から絶縁基板を離型する工程と、第2の凸部の上面と、表面部とに導電膜を形成する工程とを備える。
【0010】
本実施の形態によるプリント配線基板の製造方法は、環境に好ましくない溶液の使用量を低減でき、従来よりも簡潔な工程でプリント配線基板を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施の形態によるプリント配線基板の平面図である。
【図2】図1中のII−II線での断面図ある。
【図3】図1に示すプリント配線基板の製造工程を示すフロー図である。
【図4】図3中の工程で使用される金型の平面図である。
【図5】図4中のV−V線での断面図である。
【図6】図4に示す金型の製造工程を示す模式図である。
【図7】図6に続く製造工程を示す模式図である。
【図8】図7に続く製造工程を示す模式図である。
【図9A】図8に続き、ネガレジストを用いた露光工程を示す模式図である。
【図9B】図8に続き、ポジレジストを用いた露光工程を示す模式図である。
【図10A】図9Aに続く製造工程を示す模式図である。
【図10B】図9Bに続く製造工程を示す模式図である。
【図11】図10A及び図10Bに続く製造工程を示す模式図である。
【図12】図11に続く製造工程を示す模式図である。
【図13】図3中の製造工程を示す模式図である。
【図14】図13に続く製造工程を示す模式図である。
【図15】第2の実施の形態によるプリント配線基板の断面図である。
【図16】図15のプリント配線基板の製造に利用される金型の断面図である。
【図17】第3の実施の形態によるプリント配線基板の断面図である。
【図18】第4の実施の形態によるプリント配線基板の断面図である。
【図19】第5の実施の形態によるプリント配線基板の断面図である。
【図20】比較例のプリント配線基板の製造に利用される金型の断面図である。
【図21】比較例のプリント配線基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
[第1の実施の形態]
[第1の実施の形態におけるプリント配線基板1の構成]
図1及び図2を参照して、プリント配線基板1の構成を説明する。図1は、プリント配線基板1の平面図であり、図2は、図1中のII−II線における断面図である。プリント配線基板1は、絶縁基板10と、導電膜20、21とを備える。
【0014】
絶縁基板10は、樹脂層11と、複数の線状凸部12と、複数の表面部13とを備える。樹脂層11は、シート状又はフィルム状である。線状凸部12は、樹脂層11の表面に形成される。線状凸部12は線状であり、樹脂層11の表面に沿って延在する。複数の線状凸部12は、互いに配列される。具体的には、複数の線状凸部12は、線状凸部12の幅方向に配列される。表面部13は、樹脂層11の表面の一部であって、隣り合う線状凸部12の間に配置される。
【0015】
絶縁基板10は、樹脂で構成される。樹脂はたとえば、ポリカーボネイト樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等)、アクリル酸系樹脂(メタアクリル酸、ポリアクリルニトリル等)、酢酸ビニルまたはビニルアルコール系樹脂(ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等)、含ハロゲン系樹脂(塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、弗素樹脂等)、スチロール樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体等)、ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ジエン系ゴム(ブタジエン系ゴム、イソプレン系ゴム、クロロプレン系ゴム等)、オレフィン系ゴム(ポリイソブチレン、エチレン−プロピレン共重合体等)、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等である。絶縁基板10の樹脂は上述の複数の樹脂を混合して用いられてもよい。また、樹脂層11と、線状凸部12とで、異なる樹脂が用いられてもよい。
【0016】
好ましくは、線状凸部12を構成する樹脂の曲げ弾性率は、30000kg/cm以下である。
【0017】
線状凸部12は、樹脂層11の表面に形成される。線状凸部12は、オーバーハング部121を有する。オーバーハング部121は、線状凸部12のうち、線状凸部12と隣り合う当該他の線状凸部12に向かって張り出した部分である。図2において、オーバーハング部121では、線状凸部12の幅が、樹脂層11の表面から線状凸部12の頂上に向かうにしたがって徐々に広くなる。オーバーハング部121の側面121Aは平面であり、樹脂層11の表面とは、角度θをなしている。好ましい角度θは、60〜89度である。この場合、後述するように、金型から線状凸部12を含む絶縁基板10を離型しやすい。
【0018】
導電膜20は、線状凸部12の上面に形成される。導電膜21は、表面部13に形成される。なお、オーバーハング部121の側面121Aには、導電膜が形成されない。また、表面部13のうち、平面視において、オーバーハング部121と重複する部分には、導電膜が形成されない。隣り合う導電膜20及び21は、互いに離れて配置される。導電膜20及び/又は21は、配線として利用される。本例では、プリント配線基板1には、平行な配線(導電膜20,21)が形成されているが、これに限定されない。プリント配線基板1には、平行な配線のみでなく、通常の回路配線と同様に垂直方向や斜め方向にも配線が形成されていてもよい。また、それらの配線が互いに交差してもよい。
【0019】
導電膜20,21はたとえば、金属膜や、酸化物膜、窒化物膜、有機導電膜及びそれらの複合物等である。金属膜はたとえば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)等の金属からなる。酸化物膜はたとえば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)等である。窒化物膜はたとえば、窒化チタン(TiN)、窒化クロム(CrN)等である。有機導電膜はたとえば、ヨウ化銅(CuI)、インジウムスズ酸化物(ITO)等である。
【0020】
[プリント配線基板1の製造方法]
本実施の形態によるプリント配線基板1の製造方法では、絶縁基板10は、金型を用いて製造される。さらに、絶縁基板10は、オーバーハング部121を有する線状凸部12を備えるため、蒸着法(ベーパーディポジション)により導電膜20及び21を容易に製造できる。そのため、フォトリソグラフィにより金属配線を製造したり、フォトリソグラフィにより絶縁基板10を製造したりする従来の製造方法と比較して、プリント配線基板1を簡潔に製造できる。また、フォトリソグラフィに利用されるめっき液やレジスト除去液、エッチング液といった、環境に好ましくない溶液の使用量を低減できる。以下、本実施の形態によるプリント配線基板1の製造方法を詳述する。
【0021】
図3は、プリント配線基板1の製造工程を示すフロー図である。初めに、絶縁基板10を製造するための金型を準備する(ステップS1)。図4及び図5は、図3中のステップS1で準備される金型の平面図及び断面図である。図4及び図5を参照して、金型2は、複数の線状凸部22を備える。線状凸部22は線状であり、金型2の表面に沿って延在する。複数の線状凸部22は、互いに並んで配列される。そして、隣り合う線状凸部22は、互いに離れて配置される。そのため、隣り合う線状凸部22の間には、溝23が形成される。各線状凸部22は、オーバーハング部221を有する。各溝23の横断形状は、絶縁基板10の各線状凸部12の横断形状に対応する。
【0022】
金型2は、フォトリソグラフィにより製造された金型(以下、マスタ金型という)を用いて、製造される。具体的には、以下の方法により、金型2は製造される。
【0023】
初めに、フォトリソグラフィによりマスタ金型を製造する。図6に示すように、基材30を準備する。基材30はたとえば、ガラスや、Siウエハ、樹脂である。図7に示すとおり、基材30上にレジスト層31を形成する。レジスト層31は周知の素材からなる。
【0024】
次に、図8に示すとおり、レジスト層31上にマスク32を配置し、図9A及び図9Bに示すとおり、露光する。露光方法として2種類の方法がある。一方の方法は、ネガレジストを用いる方法である。この方法について図9Aで説明する。上方からの平行光は、レジスト層31の下方には届きにくい。したがって、レジスト層31の露光部33の幅は、図9Aに示すように下方に行くほど狭くなる。そのため、現像すると、図10Aに示すとおり、レジスト層31のうち、露光部33が基材30上に残り、マスタ金型3が製造される。露光方法のうち、他方の方法は、ポジレジストを用いる方法である。図9Bに示すように、上方からの光として平行光に代えて、少し分布を有する拡散光を用いる。拡散光は、斜め方向の光成分を含むため、マスク32の下方にも到達する。その結果、図10Bに示すとおり、レジスト層31のうち、露光部33以外の部分が基材30上に残り、マスタ金型3が製造される。
【0025】
図10A及び図10Bを参照して、マスタ金型3は、絶縁基板10の形状と同じ形状を有する。マスタ金型3は、線状凸部33を含む。線状凸部33の形状は、線状凸部12の形状と同じである。つまり、線状凸部33は線状であり、オーバーハング部を有する。そして、複数の線状凸部33は、互いに離れて配列される。
【0026】
以上の工程により製造されたマスタ金型3を用いて、金型2を製造する。初めに、図11を参照して、線状凸部33の上面と、基材30の表面うち、隣り合う線状凸部33の間の表面部分とに、スパッタリング等の蒸着法により、金属膜34を形成する。金属膜34にはたとえば、ニッケルが用いられるが、これに限定されない。金属膜34として、クロム等の周知の材料を用いることができる。金属膜34は、上述するめっき処理においてマスタ金型3を通電させるために形成される。
【0027】
金属膜34を形成後、マスタ金型3の表面をめっき処理して、図12に示す金型2を形成する。めっき処理は、ニッケルめっきでもよいし、クロムめっきでもよい。他の金属めっきでもよい。めっき処理により形成される金型2の厚さL2はたとえば、0.2mm〜0.5mmが望ましい。以上の工程により、金属製の金型2が形成される。金型2が形成された後、レジスト除去液により、マスタ金型3の線状凸部33は除去される。そのため、金型2をマスタ金型3から離型できる。
【0028】
上述の工程では、マスタ金型3の表面を蒸着、めっき処理することにより、金型2が形成されている。しかしながら、他の方法により金型2を形成してもよい。たとえば、未硬化の紫外線硬化樹脂をマスタ金型3の表面に塗布して未硬化層を形成する。そして、紫外線を照射して未硬化層を硬化し、金型2を形成してもよい。また、一般に型取り用に販売されている型取り用樹脂(シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂など)をマスタ金型3の表面に塗布し、その塗布された型取り用樹脂を硬化させて金型2を形成してもよい。さらに、金型2は、高分子セラミックスやガラス等で構成されてもよく、マスタ金型3を利用せずに、機械加工等により形成されてもよい。また、真空蒸着法により金型2を製造してもよい。
【0029】
図3に戻って、ステップS1で準備された金型2の表面上に、未硬化層を形成する(ステップS2)。金型2の表面上に形成された未硬化層100を図13に示す。未硬化層100は、周知の熱可塑性樹脂からなる層でもよいし、周知の熱硬化性樹脂からなる層でもよいし、周知の紫外線硬化樹脂からなる層でもよい。
【0030】
周知の熱可塑性樹脂からなる未硬化層を形成する場合、加熱された金型2(加熱温度はたとえば、150〜200℃程度)上に、熱可塑性樹脂フィルムが配置される。その後、加熱された金属板を熱可塑性樹脂フィルムの上に配置する。これにより、熱可塑性樹脂フィルムが軟化し、未硬化層が形成される。未硬化層は、金型2の各溝23に充填される。
【0031】
周知の熱硬化性樹脂からなる未硬化層を形成する場合、金型2の表面上に未硬化の熱硬化性樹脂液が塗布され、未硬化層が形成される。また、周知の紫外線硬化樹脂からなる未硬化層を形成する場合、金型2の表面上に未硬化の感光性樹脂液が塗布され、未硬化層が形成される。
【0032】
未硬化層を形成した後、未硬化層を硬化し、絶縁基板10を形成する(ステップS3)。未硬化層が熱可塑性樹脂からなる場合、未硬化層を冷却して硬化し、絶縁基板10を形成する。未硬化層が熱硬化性樹脂からなる場合、未硬化層を加熱して硬化し、絶縁基板10を形成する。未硬化層が紫外線硬化樹脂からなる場合、未硬化層に紫外線を照射して硬化し、絶縁基板10を形成する。
【0033】
ステップS3の後、図14に示すとおり、絶縁基板10を金型2から離型する(ステップS4)。このとき、絶縁基板10は可撓性を有するため、金型2から離型しやすい。また、オーバーハング部121を有するものの、線状凸部12も可撓性を有するため、溝23から容易に離型する。線状凸部12の樹脂の曲げ弾性率が30000kg/cm以下であれば、線状凸部12は溝23からさらに容易に離型しやすい。側面121Aと表面部13との間の角度θが60〜89度である場合、線状凸部12は溝23からさらに容易に離型する。
【0034】
ステップS4の後、導電膜20及び21を形成する(ステップS5)。具体的には、周知の蒸着法あるいはプラズマ溶射法、スプレー塗布法により、図2に示すとおり、絶縁基板10の表面上に導電膜20及び21を形成する。ここでいう蒸着法とは、導電性を有する物質を蒸気にして絶縁基板10の表面にその蒸気を付着させ、導電膜を形成する方法である。蒸着法はたとえば、真空蒸着法や、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法等である。
【0035】
線状凸部12はオーバーハング部121を有する。そのため、蒸着法により導電膜を形成するとき、表面部13のうち、平面視においてオーバーハング部121と重なる部分には、導電膜が形成されない。さらに、側面121Aにも導電膜は形成されない。そのため、蒸着法により、線状凸部12の頂上面に導電膜20が形成され、表面部13に、導電膜20と離れて導電膜21が形成される。隣り合う導電膜20と導電膜21とは互いに離れて形成されるため、導電膜20と21とをそれぞれ配線として利用できる。
【0036】
以上のとおり、本実施の形態によるプリント配線基板1の製造方法では、オーバーハング形状の線状凸部22を備える金型2を利用することにより、絶縁基板10を容易に製造できる。さらに、絶縁基板10は、オーバーハング形状の線状凸部12を備えるため、蒸着法により、隣り合う導電膜を互いに離れた状態で容易に形成できる。したがって、本実施の形態では、プリント配線基板1を従来よりも容易に製造できる。さらに、プリント配線基板1の製造時には、フォトリソグラフィを利用しないため、現像液やめっき液、レジスト除去液等、環境に好ましくない溶液の使用量を低減できる。
【0037】
なお、フォトリソグラフィにより形成されたマスタ金型3を利用して金型2を製造する場合であっても、製造された金型2は、複数回使用することができる。したがって、上記溶液の使用量を低減できる。
【0038】
[第2の実施の形態]
プリント配線板の形状は、図2に示す形状に限定されない。要するに、絶縁基板10がオーバーハング部を有する複数の線状凸部を備えていればよい。
【0039】
図15を参照して、第2の実施の形態によるプリント配線基板4は、絶縁基板40と、導電膜41、42とを備える。絶縁基板40は、樹脂層43と、線状凸部44とを含む。線状凸部44は、線状凸部12に対応し、オーバーハング部441を有する。線状凸部44の横断形状はT字状であり、オーバーハング部441は、線状凸部44の下部に対して階段状に横方向に張り出している。要するに、線状凸部44の横断形状において、線状凸部44は2つのオーバーハング部441を有する。
【0040】
線状凸部44がこのような構成であっても、第1の実施の形態と同様の製造方法により、プリント配線基板4を製造可能である。また、線状凸部44により、導電膜41と導電膜42とは互いに離れて形成される。そのため、導電膜41及び/又は導電膜42を配線として利用できる。
【0041】
なお、図15に示すプリント配線基板4を製造する場合、図16に示す金型4Aが利用される。金型の溝の横断形状は、線状凸部44の横断形状と同じである。
【0042】
[第3の実施の形態]
図17を参照して、第3の実施の形態によるプリント配線基板6は、絶縁基板60と、導電膜61、62とを備える。絶縁基板60は、樹脂層63と、線状凸部64とを含む。線状凸部64は、線状凸部12、44と同様に、オーバーハング部641を有する。しかしながら、オーバーハング部641は、線状凸部12、44と異なる形状を有する。具体的には、横断形状において、線状凸部64の上部の左右に配置される各オーバーハング部641は、外側に向かって斜め上方に張り出す。そして、横断形状において、線状凸部64の上面は中央で窪んでいる。
【0043】
線状凸部64がこのような形状を有していても、第1の実施の形態と同じ製造方法により、プリント配線基板6を容易に製造できる。
【0044】
[第4の実施の形態]
図18を参照して、第4の実施の形態によるプリント配線基板7は、絶縁基板70と、導電膜71、72とを備える。絶縁基板70は、樹脂層73と、線状凸部74とを含む。線状凸部74は、線状凸部12,44、64と同様に、オーバーハング部741を有する。本例では、線状凸部74の横断形状は円形状である。
【0045】
線状凸部74がこのような形状を有していても、第1の実施の形態と同じ製造方法により、プリント配線基板7を容易に製造できる。
【0046】
[第5の実施の形態]
図19を参照して、第5の実施の形態によるプリント配線基板8は、絶縁基板80と、導電膜81とを備える。絶縁基板80は、樹脂層83と、線状凸部84とを含む。線状凸部84は、線状凸部12,44、64、74と同様に、オーバーハング部841を有する。線状凸部12,44,64及び74では、横断形状において、各線状凸部の左右にそれぞれオーバーハング部を有する。つまり、線状凸部12,44,64及び74は、横断形状において、2つのオーバーハング部を有する。しかしながら、線状凸部84の横断形状では、線状凸部84に1つのオーバーハング部841のみが形成される。図19では、線状凸部84の右側にオーバーハング部841が形成される。なお、線状凸部84は、図19の横断形状において右側ではなく、左側のみに1つのオーバーハング部841を有してもよい。
【0047】
線状凸部84がこのような形状を有していても、第1の実施の形態と同じ製造方法により、プリント配線基板8を容易に製造できる。
【0048】
なお、線状凸部84は、その横断形状において片側にオーバーハング部841を有する。そのため、蒸着法により、線状凸部84の上面から隣り合う線状凸部84の間の表面部に至る範囲に、導電膜81が形成される。しかしながら、樹脂層83の表面のうち、平面視においてオーバーハング部841と重複する部分には、導電膜は形成されない。さらに、オーバーハング部841を構成する側面84Aにも導電膜は形成されない。そのため、隣り合う導電膜81は、互いに離れて形成される。
【0049】
なお、各線状凸部84のオーバーハング部841は1つであるため、プリント配線基板8の製造工程において、絶縁基板を金型から離型しやすい。
【実施例】
【0050】
線状凸部の形状が異なる種々の絶縁基板を製造し、各絶縁基板に導電膜を形成した。そして、隣り合う導電膜が離れて形成されたか否かを評価した。
【0051】
[本発明例1]
第1の実施の形態に記載の製造方法により、図2と同じ形状のプリント配線基板を製造した。具体的には、準備した金型を180℃に加熱した。そして、金型2の上に92μmの厚さを有するポリカーボネイトフィルムを置いた。さらに、ポリカーボネイトフィルムの上に180℃に加熱したステンレス板を置いて押圧した。10秒経過後、ポリカーボネイトフィルムを冷却し、絶縁基板を作製した。その後、真空蒸着法により、絶縁基板に、銅からなる金属膜(導電膜)を厚さ0.2μmの厚さで形成した。そして、金属膜を配線として、各配線がそれぞれ絶縁できているか否かをテスターで確認した。
【0052】
[本発明例2]
本発明例1と同様に、図15と同じ形状のプリント配線基板を製造した。具体的には、金型を270℃に加熱した。次に、金型の上に、100μmの厚さを有するポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルムを置いた。さらに、ポリフェニレンサルファイドフィルムの上に、270℃に加熱したステンレス板を置いて押圧した。10秒経過後、ポリフェニレンサルファイドフィルムを冷却し、絶縁基板を作製した。次に、真空蒸着法により、絶縁基板に、銅からなる金属膜(導電膜)を厚さ0.2μmの厚さで形成した。そして、金属膜を配線として、各配線がそれぞれ絶縁できているか否かをテスターで確認した。
【0053】
[本発明例3]
本発明例1と同様に、図17と同じ形状のプリント配線基板を製造した。具体的には、金型の表面に、アクリル系紫外線硬化樹脂を塗布し、未硬化層を形成した。さらに、未硬化層上にポリエチレンテレフタレート(PET)を置いた。さらに、ポリエチレンテレフタレートの上に石英ガラス製の平板を置いて押圧した。次に、紫外線を照射して未硬化層を硬化して、絶縁基板を形成した。次に、絶縁基板に、真空蒸着法により金(Au)からなる金属膜(導電膜)を厚さ0.2μmの厚さで形成した。金属膜を配線として、各配線がそれぞれ絶縁できているか否かをテスターで確認した。
【0054】
[本発明例4]
本発明例1と同様に、図18と同じ形状のプリント配線基板を製造した。具体的には、ステンレス板上に、100μmの厚さを有するポリイミドフィルムを置いた。さらに、ポリイミドフィルム上に、シリコーン系紫外線硬化樹脂を塗布して未硬化層を形成した。さらに、未硬化層上に、金型を置いて押圧した。10秒間、紫外線を照射して、絶縁基板を形成した。次に、真空蒸着法により、絶縁基板上にアルミニウム(Al)からなる金属膜(導電膜)を厚さ0.3μm形成した。金属膜を配線として、各配線がそれぞれ絶縁できているか否かをテスターで確認した。
【0055】
[本発明例5]
本発明例1と同様に、図19と同じ形状のプリント配線基板を準備した。ステンレス板上に厚さ100μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを置いた。さらに、ポリエチレンナフタレートフィルム上にシリコーン系紫外線硬化樹脂を塗布した。さらに、シリコーン系紫外線硬化樹脂上に金型を置いて押圧した。10秒間、紫外線を照射して、絶縁基板を形成した。次に、真空蒸着法により、絶縁基板上にアルミニウム(Al)からなる金属膜(導電膜)を厚さ0.3μmの厚さで形成した。金属膜を配線として、各配線がそれぞれ絶縁できているか否かをテスターで確認した。
【0056】
[比較例1]
図20に示す金型を準備して、本発明例1と同じ製造方法により、図21と同じ形状のプリント配線基板を製造した。図2に示す金型の線状凸部は、オーバーハング部を有さなかった。そのため、比較例1のプリント配線基板では、図21に示すとおり、絶縁基板90に形成された線状凸部94はオーバーハング部を有さなかった。そのため、金属膜91は、絶縁基板93の表面全体に形成された。
【0057】
[評価結果]
本発明例1〜5のプリント配線基板では、各金属膜(導電膜)同士は絶縁できていた。つまり、隣り合う金属膜(導電膜)は互いに離れた形成されており、配線として使用可能であった。一方、比較例1のプリント配線基板には、1つの金属膜(導電膜)のみ形成されたため、配線としての使用には不適切であった。
【0058】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1,4,6,7,8 プリント配線基板
10,40,60,70,80 絶縁基板
12,44,64,74,84 線状凸部
11,43,63,73,83 樹脂層
20,21,41,42,61,62,71,72,81 導電膜
121,441,641,741,841 オーバーハング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が第1のオーバーハング部を有し、互いに配列された複数の第1の線状凸部を含む金型を準備する工程と、
前記金型の表面に、未硬化の樹脂からなる未硬化層を形成する工程と、
前記未硬化層を硬化して、各々が第2のオーバーハング部を有し、互いに配列された複数の第2の線状凸部と、隣り合う第2の線状凸部の間に形成される複数の表面部とを含む絶縁基板を形成する工程と、
前記金型から前記絶縁基板を離型する工程と、
前記第2の凸部の上面と、前記表面部とに導電膜を形成する工程とを備える、プリント配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線基板の製造方法であって、
前記導電膜を形成する工程では、
蒸着法、プラズマ溶射法およびスプレー塗布法のいずれか1つの方法により、前記導電膜を形成する、プリント配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプリント配線基板の製造方法であって、
前記第1オーバーハング部では、前記第1の線状凸部の幅が、前記表面部から前記第1の凸部の上面に向かって広くなる、プリント配線基板の製造方法。
【請求項4】
樹脂層と、
前記樹脂層の表面に形成され、各々がオーバーハング部を有し、互いに配列された複数の線状凸部と、
前記各線状凸部の上面と、隣り合う線状凸部の間の表面部に形成される導電膜と備える、プリント配線基板。
【請求項5】
請求項4に記載のプリント配線基板であって、
前記線状凸部が金型成型によって形成される、プリント配線基板。
【請求項6】
請求項4または5に記載のプリント配線基板であって、
前記線状凸部と前記樹脂層とが同一の樹脂で構成される、プリント配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−60060(P2012−60060A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204331(P2010−204331)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】