説明

プリント配線板用銅箔又は銅層と絶縁基板との積層体、プリント配線板、及び、回路基板の形成方法

【課題】ファインピッチ化に適した配線板用銅箔又は銅層と絶縁基板との積層体及びそれを用いたプリント配線板、さらには、銅箔または銅層のエッチング性を向上させてファインパターンの回路を形成することができる回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】回路が形成された銅箔又は銅層と絶縁基板との積層体であって、回路厚さ方向でくびれを有し、回路幅が、回路上部から少なくとも回路厚さ1μmまで、回路厚さ方向に向かって減少し、回路トップ幅L(μm)と回路ボトム幅l(μm)との差の絶対値|L−l|が5μm以下であり、くびれの幅w(μm)と回路トップ幅Lとの比w/L(%)が70%以上であり、くびれの回路ボトムからの高さh(μm)と回路厚さt(μm)との比h/tが50%以上である積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板用銅箔又は銅層と絶縁基板との積層体、特にフレキシブルプリント配線板用のプリント配線板用銅箔又は銅層と絶縁基板との積層体、それを用いたプリント配線板、及び、回路基板の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板はここ半世紀に亘って大きな進展を遂げ、今日ではほぼすべての電子機器に使用されるまでに至っている。近年の電子機器の小型化、高性能化ニーズの増大に伴い搭載部品の高密度実装化や信号の高周波化が進展し、プリント配線板に対して導体パターンの微細化(ファインピッチ化)や高周波対応等が求められている。
【0003】
プリント配線板は、銅箔に絶縁基板を接着、もしくは絶縁基板上にNi合金等を蒸着させた後に電気めっきで銅層を形成させて積層体とした後に、エッチングにより銅箔または銅層面に導体パターンを形成するという工程を経て製造されるのが一般的である。そのため、プリント配線板用の銅箔または銅層には良好なエッチング性が要求される。
【0004】
銅箔は、樹脂との非接着面に表面処理を施さないと、エッチング後の銅箔回路の銅部分が、銅箔の表面から下に向かって、すなわち樹脂層に向かって、末広がりにエッチングされる(ダレを発生する)。通常は、回路側面の角度が小さい「ダレ」となり、特に大きな「ダレ」が発生した場合には、樹脂基板近傍で銅回路が短絡し、不良品となる場合もある。ここで、図5に、銅回路形成時に「ダレ」を生じて樹脂基板近傍で銅回路が短絡した例を示す回路表面の拡大写真を示す。
【0005】
このような「ダレ」は極力小さくすることが必要であるが、このような末広がりのエッチング不良を防止するために、エッチング時間を延長して、エッチングをより多くして、この「ダレ」を減少させることも考えられる。しかし、この場合は、すでに所定の幅寸法に至っている箇所があると、そこがさらにエッチングされることになるので、その銅箔部分の回路幅がそれだけ狭くなり、回路設計上目的とする均一な線幅(回路幅)が得られず、特にその部分(細線化された部分)で発熱し、場合によっては断線するという問題が発生する。電子回路のファインパターン化がさらに進行する中で、現在もなお、このようなエッチング不良による問題がより強く現れ、回路形成上で、大きな問題となっている。
【0006】
一般にエッチング性を向上させる手段としては、銅箔または銅層のエッチング面の表面処理、銅箔または銅層の薄肉化、エッチング液組成物の成分の工夫等が挙げられる。
【0007】
銅箔または銅層のエッチング面の表面処理として、エッチング面側の銅箔に銅よりもエッチング速度が遅い金属又は合金層を形成した表面処理が特許文献1に開示されている。この場合の金属又は合金は、Ni、Co及びこれらの合金である。回路設計に際しては、レジスト塗布側、すなわち銅箔の表面からエッチング液が浸透するため、レジスト直下にエッチング速度が遅い金属又は合金層があれば、その近傍の銅箔部分のエッチングが抑制され、他の銅箔部分のエッチングが進行するので、「ダレ」が減少し、より均一な幅の回路が形成できるという効果をもたらすという、従来技術と比較して急峻な回路形成が可能となり、大きな進歩があったと言える。
【0008】
銅箔または銅層の薄肉化として、特許文献2では、厚さ1000〜10000ÅのCu薄膜を形成し、該Cu薄膜の上に厚さ10〜300Åの銅よりもエッチング速度が遅いNi薄膜を形成している。
【0009】
また、エッチング時間を短くするために、厚みが薄い銅箔を採用したり、樹脂との積層前もしくは積層後に、ソフトエッチングにより銅箔を減肉する方法がある。
【0010】
特許文献3、4、5及び6では、エッチング液組成物の成分を工夫することによってエッチング性を向上させている。
【0011】
また、図6に示すように、非特許文献1には、予め絶縁基板にレジストパターンを形成し、開口部にめっきで導体を形成するセミアディティブ、アディティブ工法でも、断面が矩形の回路を得ることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−176242号公報
【特許文献2】特開2000−269619号公報
【特許文献3】特開2003−138389号公報
【特許文献4】特開2004−256901号公報
【特許文献5】特開2005−330572号公報
【特許文献6】特開2009−167459号公報
【非特許文献1】第11回プリント配線板EXPO配布資料(2010年1月20〜22日開催:於東京ビッグサイト)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
近年、回路の微細化、高密度化がさらに進行し、より急峻に傾斜する側面を有する回路が求められている。しかしながら、特許文献1に記載される技術ではこれらには対応できない。
【0014】
また、特許文献1、2に記載される表面処理層はソフトエッチングにより除去する必要がある。さらには樹脂との非接着面表面処理銅箔は、積層体に加工される工程で、樹脂の貼付け等の高温処理が施される。これは表面処理層の酸化を引き起こし、結果として銅箔のエッチング性は劣化する。
【0015】
前者については、エッチング除去の時間をなるべく短縮し、きれいに除去するためには、表面処理層の厚さを極力薄くすることが必要であること、また後者の場合には、熱を受けるために、下地の銅層が酸化され(変色するので、通称「ヤケ」と言われている。)、レジストの塗布性(均一性、密着性)の不良やエッチング時の界面酸化物の過剰エッチングなどにより、パターンエッチングでのエッチング性、ショート、回路パターンの幅の制御性などの不良が発生するという問題があるので、改良が必要か又は他の材料に置換することが要求されている。
【0016】
エッチング時間を短くするために極薄の銅箔を採用することは、製造ライン内での取り扱いが困難なため、歩留まりが低くなるという問題を抱える。また、銅箔をエッチングにより減肉する方法は多量の銅を廃棄することになるため、コスト面で不利である。
【0017】
エッチング液組成物によりエッチング性を向上させようとする場合、エッチング性が大幅に向上する。しかしながら、有機物をエッチング液に添加する場合が多く、実用面で濃度管理を適正に行わないとエッチング不良が生じる。
【0018】
セミアディティブ又はアディティブ工法で形成した回路は、レジスト露光時に絶縁基板表面付近で照射光が散乱するため、回路断面は完全な矩形にならず、絶縁基板との近傍で回路幅が細くなる(図6参照)。
【0019】
そこで、本発明は、ファインピッチ化に適した配線板用銅箔又は銅層と絶縁基板との積層体及びそれを用いたプリント配線板、さらには、銅箔または銅層のエッチング性を向上させ、エッチング液組成物に有機物等の添加物を採用しなくても、ファインパターンの電子回路が得られる回路基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは鋭意検討の結果、銅箔のエッチング面にエッチング液に対して酸化されない金属である白金族金属、金及び/又は銀を微量に付着させた場合に、レジストの裏側に付着金属が残存し、サイドエッチングが抑制されることを見出した。サイドエッチングが抑制される機構は明らかではないが、実験事実から、レジストの裏側に白金族金属、金及び/又は銀が残存することで、これらがエッチング液中の酸化剤の還元を促進し、レジスト直下(もしくは回路上方部)でサイドエッチングが抑制されるものと考えられる。このようにして形成された回路は、銅箔の厚みが薄くなくても裾引きが小さくなる。このように、銅箔又は銅層の回路を裾引きを小さくした所定形状に形成することによって、回路のファインピッチ化が可能となり、高密度実装基板の形成が可能となる。
【0021】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、回路が形成された銅箔又は銅層と絶縁基板との積層体であって、回路厚さ方向でくびれを有し、回路幅が、回路上部から少なくとも回路厚さ1μmまで、回路厚さ方向に向かって減少し、回路トップ幅L(μm)と回路ボトム幅l(μm)との差の絶対値|L−l|が5μm以下であり、くびれの幅w(μm)と回路トップ幅Lとの比w/L(%)が70%以上であり、くびれの回路ボトムからの高さh(μm)と回路厚さt(μm)との比h/tが50%以上である積層体である。
【0022】
本発明に係る積層体の一実施形態においては、くびれの幅wと回路トップ幅Lとの比w/L(%)が80%以上である。
【0023】
本発明に係る積層体の別の一実施形態においては、エッチングにより、くびれより上部の一部又は全てを取り除かれている。
【0024】
本発明に係る積層体の更に別の一実施形態においては、くびれより上部の一部又は全ての除去面にめっきを形成している。
【0025】
本発明に係る積層体の更に別の一実施形態においては、回路厚さtが6μm以上であるである。
【0026】
本発明に係る積層体の更に別の一実施形態においては、回路厚さtが8μm以上である。
【0027】
本発明に係る積層体の更に別の一実施形態においては、銅箔又は銅層の表面の少なくとも一部には貴金属層が形成されている
【0028】
本発明に係る積層体の更に別の一実施形態においては、貴金属層がPt、Pd、及び、Auのいずれか1種以上を含む。
【0029】
本発明に係る積層体の更に別の一実施形態においては、Ptの付着量が1050μg/dm2以下、Pdの付着量が600μg/dm2以下、Auの付着量が1000μg/dm2以下である。
【0030】
本発明に係る積層体の更に別の一実施形態においては、貴金属層と銅箔又は銅層との間、又は、貴金属層上に、貴金属と銅との中間の腐食性を有する層をさらに備える。
【0031】
本発明に係る積層体の更に別の一実施形態においては、貴金属と銅との中間の腐食性を有する層がNi又はNi合金層である。
【0032】
本発明に係る積層体の更に別の一実施形態においては、Ni合金が、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び1100μg/dm2以下のZnからなるNi−Zn合金、被覆量が1500μg/dm2以下のNiを含むNi−Cu合金、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び1100μg/dm2以下のZnを含むNi−Zn−Cu合金、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のSnからなるNi−Sn合金、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のVからなるNi−V合金、又は、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のMnからなるNi−Mn合金である。
【0033】
本発明は別の一側面において、本発明に係る積層体を材料としたプリント配線板である。
【0034】
本発明は更に別の一側面において、銅箔または銅層のエッチング面に貴金属層を形成した後、該貴金属層上にレジストパターンを形成し、エッチング液で不要部を除去して本発明の積層体を得る回路基板の形成方法である。
【0035】
本発明に係る回路基板の形成方法の一実施形態においては、貴金属層と、銅箔または銅層との間に、貴金属と銅との中間の腐食性を有する層を形成した後、レジストパターンを形成し、エッチング液で不要部を除去する。
【0036】
本発明に係る回路基板の形成方法の別の一実施形態においては、貴金属と銅との中間の腐食性を有する層が、Ni又はNi合金層である。
【0037】
本発明に係る回路基板の形成方法の更に別の一実施形態においては、エッチング液で不要部を除去した後に、さらに回路上面の貴金属層を取り除く。
【0038】
本発明に係る回路基板の形成方法の更に別の一実施形態においては、エッチング液で不要部を除去した後に、さらに回路上面の貴金属と銅との中間の腐食性を有する層、及び、貴金属層を取り除く。
【0039】
本発明に係る回路基板の形成方法の更に別の一実施形態においては、貴金属層を取り除く工程によって貴金属層直下の銅箔又は銅層の一部を取り除く、又は、貴金属層を取り除く工程の後に貴金属層直下の銅箔又は銅層の一部を取り除く。
【0040】
本発明に係る回路基板の形成方法の更に別の一実施形態においては、貴金属層直下の銅箔又は銅層の一部を取り除いた後に、さらに銅箔又は銅層の除去面にめっきを形成する。
【0041】
本発明に係る回路基板の形成方法の更に別の一実施形態においては、エッチング前にエッチング面に形成された貴金属層に熱処理を施す。
【0042】
本発明に係る回路基板の形成方法の更に別の一実施形態においては、エッチング前にエッチング面に形成された貴金属層、及び、貴金属と銅との中間の腐食性を有する層に熱処理を施す。
【0043】
本発明に係る回路基板の形成方法の更に別の一実施形態においては、エッチング液に有機物が含まれていない。
【0044】
本発明に係る回路基板の形成方法の更に別の一実施形態においては、エッチング液が1.5〜4.0mol/LのCuCl2及び2.2〜5.0mol/LのHClを含む。
【0045】
本発明に係る回路基板の形成方法の更に別の一実施形態においては、エッチング液が1.5〜4.1mol/LのFeCl3及び2.0mol/L以下のHClを含む。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、ファインピッチ化に適した配線板用銅箔又は銅層と絶縁基板との積層体及びそれを用いたプリント配線板、さらには、銅箔または銅層のエッチング性を向上させ、エッチング液組成物に有機物等の添加物を採用しなくても、ファインパターンの電子回路が得られる回路基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の積層体に形成された回路断面の模式図である。
【図2】実施例19の回路断面写真である。
【図3】実施例25の回路断面写真である。
【図4】比較例1の回路断面写真である。
【図5】銅回路形成時に「ダレ」を生じて樹脂基板近傍で銅回路が短絡した例を示す回路表面の拡大写真である。
【図6】非特許文献1に係る第11回プリント配線板EXPO配布資料である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(銅箔基材)
本発明に用いることのできる銅箔基材の形態に特に制限はないが、典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で用いることができる。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。屈曲性が要求される用途には圧延銅箔を適用することが多い。
銅箔基材の材料としてはプリント配線板の導体パターンとして通常使用されるタフピッチ銅や無酸素銅といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
【0049】
本発明に用いることのできる銅箔基材の厚さについても特に制限はなく、プリント配線板用に適した厚さに適宜調節すればよい。例えば、5〜100μm程度とすることができる。但し、ファインパターン形成を目的とする場合には30μm以下、好ましくは20μm以下であり、典型的には5〜20μm程度である。
【0050】
本発明に使用する銅箔基材は、特に限定されないが、例えば、粗化処理をしないものを用いても良い。従来は特殊めっきで表面にμmオーダーの凹凸を付けて表面粗化処理を施し、物理的なアンカー効果によって樹脂との接着性を持たせるケースが一般的であるが、一方でファインピッチや高周波電気特性は平滑な箔が良いとされ、粗化箔では不利な方向に働くことがある。また、粗化処理をしないものであると、粗化処理工程が省略されるので、経済性・生産性向上の効果がある。
【0051】
(1)貴金属層の構成
銅箔基材の絶縁基板との接着面の反対側(回路形成予定面側)の表面の少なくとも一部には、貴金属層形成されている。貴金属層に含まれる金属は、好ましくは、Pt、Pd、及び、Auのいずれか1種以上である。また、この場合、Ptの付着量が1050μg/dm2以下、Pdの付着量が600μg/dm2以下、Auの付着量が1000μg/dm2以下であるのが好ましい。これらの値を超えると、それぞれ初期エッチング性に悪影響を及ぼすためである。さらに、Ptの付着量が20〜400μg/dm2、Pdの付着量が20〜250μg/dm2、Auの付着量が20〜400μg/dm2であるのがより好ましい。のPtの付着量が20μg/dm2以上、のPdの付着量が20μg/dm2以上、及び、Auの付着量が20μg/dm2以上であると、それぞれ効果がより良好となる。なお、Ptの付着量が50〜300μg/dm2、Pdの付着量が30〜180μg/dm2、Auの付着量が50〜300μg/dm2であるのが更により好ましい。
なお、銅箔基材の絶縁基板との接着面側には、絶縁基板との接着性向上のために、例えば銅箔基材表面から順に積層した中間層及び表層を形成してもよい。この場合、中間層は、例えば、Ni、Mo、Ti、Zn、Co、V、Sn、Mn、Nb、Ta及びCrの少なくともいずれか1種を含むのが好ましい。中間層は、金属の単体で構成されていてもよく、例えば、Ni、Mo、Ti、Zn、Co、Nb及びTaのいずれか1種で構成されるのが好ましい。中間層は、合金で構成されていてもよく、例えば、Ni、Zn、V、Sn、Mn、Cr及びCuの少なくともいずれか2種の合金で構成されるのが好ましい。
【0052】
(2)貴金属と銅との中間の腐食性を有する層の構成
貴金属層と銅箔基材との間、又は、貴金属層上に、貴金属と銅との中間の腐食性を有する層をさらに設けても良い。貴金属層はエッチングされ難いという問題があるため、このように貴金属と銅との中間の腐食性を有する層を設けることで、回路上部でのサイドエッチが抑制され、初期エッチング性が良好となる。貴金属と銅との中間の腐食性を有する層としては、特に限定されないが、例えば、Ni又はNi合金層が好ましい。この場合、Ni合金が、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び1100μg/dm2以下のZnからなるNi−Zn合金、被覆量が1500μg/dm2以下のNiを含むNi−Cu合金、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び1100μg/dm2以下のZnを含むNi−Zn−Cu合金、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のSnからなるNi−Sn合金、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のVからなるNi−V合金、又は、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のMnからなるNi−Mn合金であってもよい。各金属の付着量が上述の数値範囲未満であると初期エッチング性や耐変色性に悪影響を及ぼし、上述の数値範囲を超えると、回路のダレが大きくなり直線性が不良となる。
【0053】
また、防錆効果を高めるために、最表層上にさらにクロム層若しくはクロメート層及び又はシラン処理層を形成することができる。
【0054】
(銅箔の製造方法)
プリント配線板用銅箔は、スパッタリング法により形成することができる。すなわち、スパッタリング法によって銅箔基材の表面の少なくとも一部を、貴金属層により被覆する。場合によっては、貴金属層の形成前に、銅箔基材上に貴金属と銅との中間の腐食性を有する層を形成しておいてもよい。貴金属と銅との中間の腐食性を有する層、及び、貴金属層は、スパッタリング法に限らず、例えば、電気めっき、無電解めっき等の湿式めっき法で形成してもよい。
【0055】
(プリント配線板の製造方法)
上述の銅箔を用いてプリント配線板(PWB)を常法に従って製造することができる。以下に、プリント配線板の製造方法の例を示す。
【0056】
まず、銅箔と絶縁基板とを貼り合わせて積層体を製造する。銅箔が積層される絶縁基板はプリント配線板に適用可能な特性を有するものであれば特に制限を受けないが、例えば、リジッドPWB用に紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂等を使用し、FPC用にポリエステルフィルムやポリイミドフィルム等を使用する事ができる。
【0057】
貼り合わせの方法は、リジッドPWB用の場合、ガラス布などの基材に樹脂を含浸させ、樹脂を半硬化状態まで硬化させたプリプレグを用意する。銅箔を貴金属層の反対側の面からプリプレグに重ねて加熱加圧させることにより行うことができる。
【0058】
フレキシブルプリント配線板(FPC)用の場合、ポリイミドフィルム又はポリエステルフィルムと銅箔とをエポキシ系やアクリル系の接着剤を使って接着することができる(3層構造)。また、接着剤を使用しない方法(2層構造)としては、ポリイミドの前駆体であるポリイミドワニス(ポリアミック酸ワニス)を銅箔に塗布し、加熱することでイミド化するキャスティング法や、ポリイミドフィルム上に熱可塑性のポリイミドを塗布し、その上に銅箔を重ね合わせ、加熱加圧するラミネート法が挙げられる。キャスティング法においては、ポリイミドワニスを塗布する前に熱可塑性ポリイミド等のアンカーコート材を予め塗布しておくことも有効である。
【0059】
本発明に係る積層体は各種のプリント配線板(PWB)に使用可能であり、特に制限されるものではないが、例えば、導体パターンの層数の観点からは片面PWB、両面PWB、多層PWB(3層以上)に適用可能であり、絶縁基板材料の種類の観点からはリジッドPWB、フレキシブルPWB(FPC)、リジッド・フレックスPWBに適用可能である。また、本発明に係る積層体は、銅箔を樹脂に貼り付けてなる上述のような銅張積層板に限定されず、樹脂上にスパッタリング、めっきで銅層を形成したメタライジング材であってもよい。
【0060】
上述のように作製した積層体の銅箔上に形成された貴金属層表面にレジストを塗布し、マスクによりパターンを露光し、現像することによりレジストパターンを形成したものをエッチング液に浸漬する。このとき、エッチングを抑制する貴金属で構成された貴金属層は、銅箔上のレジスト部分に近い位置にあり、レジスト側の銅箔のエッチングは、この貴金属層近傍がエッチングされていく速度よりも速い速度で、貴金属層から離れた部位の銅のエッチングが進行することにより、銅の回路パターンのエッチングがほぼ垂直に進行する。これにより銅の不必要部分を除去されて、次いでエッチングレジストを剥離・除去して回路パターンを露出することができる。
【0061】
エッチング液には、管理の困難な有機物が含まれていない。エッチング液としては、CuCl2の濃度が1.5〜4.0mol/Lで、HClの濃度が2.2〜5.0mol/Lである塩化第二銅水溶液を用いることができる。CuCl2の濃度が1.5mol/L未満であると、エッチングを十分に行うことが困難となる。CuCl2の濃度が4.0mol/L超であると、CuCl2の溶解度を上回るので、沈殿物が生成するという問題が生じる。HClは、エッチングの際の反応により生成する難溶性の塩化第一銅を溶解するために添加される。HClの濃度が2.2mol/L未満であると、難溶性の塩化第一銅を良好に溶解するためには不十分である。HClの濃度が5.0mol/L超であると、エッチング時の回路表面部のサイドエッチングが促進され、「ダレ」を引き起こし易くなる。さらに、銅箔又は銅層とレジストパターンとの界面が酸によって破壊され、エッチングの途中でレジストが剥離し、エッチング不良が生じる可能性が高まる。
【0062】
さらに、エッチング液としては、FeCl3の濃度が1.5〜4.1mol/Lで、HClの濃度が2.0mol/L以下である塩化第二鉄水溶液を用いることができる。FeCl3の濃度が1.5mol/L未満であると、エッチングを十分に行うことが困難となる。FeCl3の濃度が4.1mol/L超であると、液の粘度が高くなるので、エッチングサイトへのエッチング液の供給が不十分になる可能性が生じる。HClは、エッチングの際の反応による水酸化第二鉄の生成を抑制するために添加されているが、必須の成分ではない。HClの濃度が2.0mol/L超であると、エッチング時の回路表面部のサイドエッチングが促進され、「ダレ」を引き起こし易くなる。さらに、銅箔または銅層とレジストパターンとの界面が酸によって破壊され、エッチングの途中でレジストが剥離し、エッチング不良が生じる可能性が高まる。
【0063】
また、エッチング前に、貴金属層、場合によってはさらに貴金属と銅との中間の腐食性を有する層に、熱処理を行っても良い。エッチング前にこのように熱処理を施すことで、Pd層と貴金属と銅との中間の腐食性を有する層とが適度に拡散しあい、均一なエッチングが促進されるため、回路の直線性が増すという効果が得られる。この場合の熱処理とは、上述のポリイミドの硬化(キャスティング法)をはじめとしたCCL(銅張積層板)製造工程のあらゆる熱履歴を含む。
【0064】
(プリント配線板の銅箔表面の回路形状)
被覆層が形成された銅箔に対し、その被覆層側からエッチングされて形成されたプリント配線板の銅箔表面の回路は、その長尺状の2つの側面が絶縁基板上に垂直に形成されるのではなく、通常、銅箔の表面から下に向かって、すなわち樹脂層に向かって、末広がりに形成されるのが一般的である(ダレの発生)。現在要求されている回路パターンの微細化(ファインピッチ化)のためには、回路のピッチをなるべく狭くすることが重要であるが、このようなダレが大きいと、回路のピッチが広くなってしまう。また、ダレの大きさは、通常、各回路及び回路内で完全に一定ではない。このようなダレの大きさのばらつきが大きいと、回路の品質に悪影響を及ぼすおそれがある。これに対し、本発明の積層体に形成された回路は、図1に示すように、回路厚さ方向でくびれを有し、回路幅が、回路上部から少なくとも回路厚さ1μmまで、回路厚さ方向に向かって減少している。このため、回路を狭ピッチに形成することができる。また、回路トップ幅L(μm)と回路ボトム幅l(μm)との差の絶対値|L−l|が5μm以下に形成されており、さらにくびれの幅w(μm)と回路トップ幅Lとの比w/L(%)が70%以上である。このため、回路断面矩形に近い形状となり、回路の品質が良好となる。|L−l|はさらに3μm以下であれば、また、w/Lはさらに80%以上であれば、回路断面がより矩形に近づくため好ましい。また、くびれの回路ボトムからの高さh(μm)と回路厚さt(μm)との比h/tが50%以上である。このため、回路の細くなる部分(くびれ)が回路ボトムから高い位置にあり、回路の安定性が良好となる。h/tは、60%以上であればより回路が安定するため好ましい。
【0065】
本発明では、回路断面形状の改善を特別な銅箔表面処理手段で行っているため、ある程度の厚さの銅箔を用いて回路を形成することができる。具体的には、回路厚さtが6μm以上や8μm以上のものも形成することができる。
【0066】
図1では、くびれを構成する回路側面の凹部が左右の側面で同じ高さに形成されているが、これに限らず、基板と平行とならない位置、すなわち左右の側面で異なった高さに形成されていてもよい。この場合、回路には、異なった高さにくびれが2つ形成されることとなる(くびれの幅がw1のものと、w2のもの)が、本発明の上記規定は同様にあてはまる。具体的には、この場合であっても、回路トップ幅Lと回路ボトム幅lとの差の絶対値|L−l|が5μm以下であり、くびれの幅w1及びw2と回路トップ幅Lとの比w1/L及びw2/Lがそれぞれ70%以上である。また、くびれの回路ボトムからの高さhと回路厚さtとの比h/tについては、より低い位置にあるくびれの回路ボトムからの高さに関して、50%以上である。また、wをw1とw2との平均値として算出し、この平均値が上記規定に当てはまるような回路であってもよい。
【0067】
本発明の積層体は、表面の薄い層のみを除去するようなソフトエッチング等のエッチングによって、回路上面の貴金属層、及び/又は、貴金属と銅との中間の腐食性を有する層を取り除いても良い。また、このとき、さらにくびれより上部の一部又は全てを取り除いてもよい。くびれより上部の全てが取り除かれた場合は、回路断面形状からくびれが無くなり、回路トップから回路の厚さ方向にかけて回路幅が増加する回路断面形状となる。また、このときのエッチングの種類は特に限定されず、ウェットエッチングであってもドライエッチングであってもよい。さらに、本発明の積層体は、上述のようにくびれより上部の一部又は全てを取り除いた後に、その除去面にめっきを形成して回路に厚みをもたせてもよい。
【0068】
上述のように、本発明では、回路断面形状の改善を特別な銅箔表面処理手段で行っており、メタライジング材、キャリア付き極薄銅箔を使わなくても、銅箔を使用したサブトラクティブ法で回路のファインパターン化が可能となり、回路基板をより高密度に形成することができる。また、本発明ではエッチング液に有機物等の特殊な添加物を加える必要がないため、工程管理が容易である。さらに、本発明によれば従来のサブトラクティブ法よりも減肉量が減るため製造効率が良好となる。また、本発明では銅箔の厚みが薄くなくてもよいので、工程中での取り扱いが容易になり、製品歩留まりが向上する。
また、本発明の回路は、回路厚さ方向でくびれを有することにより、回路基板のスペースが増加し、ファインパターンでも回路の放熱特性が良好となることが期待される。また、セミアディティブ、アディティブ工法と比較した場合、回路ボトム近傍で回路幅が細くなっていない。このため、回路の安定性が優れているといえる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の実施例を示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0070】
(例1:実施例1〜27及び29〜31)
(銅箔への被覆層の形成)
実施例1〜27及び29〜31の銅箔基材として、厚さ8μm及び12μmの圧延銅箔(日鉱金属製C1100)を用意した。圧延銅箔の表面粗さ(Rz)はそれぞれ0.15μm、0.10μmであった。
【0071】
銅箔の表面に付着している薄い酸化膜を逆スパッタにより取り除き、下記の各種ターゲットを以下の装置及び条件でスパッタリングすることにより、被覆層を形成した。被覆層の厚さは成膜時間を調整することにより変化させた。スパッタリングに使用した各種金属の単体は純度が3Nのものを用いた。
・装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
・到達真空度:1.0×10-5Pa
・スパッタリング圧:0.2Pa
・逆スパッタ電力:100W
・スパッタリング電力:50W
・ターゲット:エッチング面用
Au、Pd、Pt、Ni(3N)
Ni−20wt%Sn
・ターゲット:接着面用
Ni、Cr(3N)
・成膜速度:各ターゲットについて一定時間約0.2μm成膜し、3次元測定器で厚さを測定し、単位時間当たりのスパッタレートを算出した。
【0072】
被覆層を設けた銅箔に対して、被覆層と反対側の表面にあらかじめ付着している薄い酸化被膜を逆スパッタリングによって取り除き、Ni層及びCr層を順に成膜し、接着剤付ポリイミドフィルム(ニッカン工業製、CISV1215)を7kgf/cm2の圧力、160℃で40分間の加熱プレスで積層させた。一部の銅箔は、窒素雰囲気下で350℃で2時間保持した後に、上記手順でポリイミドフィルムと積層させた。
【0073】
<付着量の測定>
被覆層のAu、Pd、Ptの付着量測定は、王水で表面処理銅箔サンプルを溶解させ、その溶解液を希釈し、原子吸光分析法で行った。これ以外の元素の定量はサンプルをHNO3(2重量%)とHCl(5重量%)を混合した溶液に溶解し、その溶液中の金属濃度をICP発光分光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、SFC−3100)にて定量し、単位面積当たりの金属量(μg/dm2)を算出した。
【0074】
(エッチングによる回路形成)
上記手順で作製した積層体の銅箔エッチング面をアセトンで脱脂し、硫酸(100g/L)に30秒浸漬させて、表面の汚れ及び酸化層を取り除いた。次にスピンコーターを用いて液体レジスト(東京応化工業製、OFPR−800LB)を積層体エッチング面に滴下し、乾燥させた。乾燥後のレジスト厚みは1μmとなるように調整した。その後、露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を以下の条件で実施した。
【0075】
<エッチング条件(塩化第二鉄系)>
FeCl3濃度とHCl濃度とを適宜調製し、500mLのビーカーに溶液を450mL入れ、液温を50℃に保ち、200rpmで回転させた。回路は冶具に固定し、ビーカーの底から35mm、壁面から10mmの位置に固定して、液流方向を回路方向に合わせてエッチングした。
(30μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=25μm/5μm
・仕上がり回路ボトム(底部)またはトップ(上部)幅:15μm(これらは、回路上方から観察して確認できる方を選択した。具体的には、L≧lの場合はボトム幅、L≦lの場合はトップ幅を選択した。)
(40μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=35μm/5μm
・仕上がり回路ボトム(底部)またはトップ(上部)幅:20μm(これらは、回路上方から観察して確認できる方を選択した。具体的には、L≧lの場合はボトム幅、L≦lの場合はトップ幅を選択した。)
エッチング後、45℃のNaOH水溶液(100g/L)に1分間浸漬させてレジストを剥離した。
【0076】
<エッチング条件(塩化第二銅系)>
CuCl2濃度とHCl濃度とを適宜調製し、500mLのビーカーに溶液を450mL入れ、液温を50℃に保ち、200rpmで回転させた。回路は冶具に固定し、ビーカーの底から35mm、壁面から10mmの位置に固定して、液流方向を回路方向に合わせてエッチングした。
(30μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=25μm/5μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:15μm
(40μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=35μm/5μm
・仕上がり回路ボトム(底部)またはトップ(上部)幅:20μm(これらは、回路上方から観察して確認できる方を選択した。具体的には、L≧lの場合はボトム幅、L≦lの場合はトップ幅を選択した。)
エッチング後、45℃のNaOH水溶液(100g/L)に1分間浸漬させてレジストを剥離した。
【0077】
<回路断面形状の測定>
上記手順で形成した回路の断面を、日本電子株式会社製の断面試料作製装置SM−09010で加工した。この回路断面のSEM写真を1000倍の倍率で撮影し、40μmピッチの場合は3本の回路の断面、30μmピッチの場合は4本の回路の断面の回路トップ幅L(μm)、ボトム幅l(μm)、くびれ幅w(μm)、くびれ高さh(μm)を測定し、平均値を算出した。くびれは必ずしも基板と平行ではなかったため、回路断面の左右の平均値とした。
【0078】
(例2:実施例28)
例1と同様の手順で回路を作製した後、硫酸10vol%、過酸化水素5vol%の酸で回路をソフトエッチングした。回路の評価は例1の手順で行った。
【0079】
(例3:比較例1)
例1の手順でエッチング面に表面処理を行わない積層体を作製した後に回路を形成し、同様の手順で評価した。
【0080】
(例4:比較例2〜12)
例1と同様の手順で回路を作製し、評価した。
例1〜4の各条件及び測定結果を表1〜2に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
<評価>
実施例1〜12は裾引きが小さい回路が得られた。
Ni系の下地層を形成した実施例13〜18でも裾引きが小さい回路が得られた。特に実施例13、15、17、18は貴金属の付着量が同程度である実施例2、6、10と比べると回路トップ幅の標準偏差が小さく、直線性が増したといえる。
銅箔に熱処理を加えた実施例19〜21は表面処理の付着量が同程度の実施例15、17、18と比較すると、回路トップ幅とボトム幅の差が小さくなっており、回路断面がより矩形に近づいた。図2に、実施例19の回路断面写真を示す。
塩化第二鉄系のエッチング液で回路を形成した実施例22〜24及び29〜31でも、矩形に近い断面の回路が得られた。
銅箔の厚みを厚くした実施例25〜27でもほぼ矩形の回路が得られた。図3に、実施例25の回路断面写真を示す。
回路形成後にソフトエッチングした実施例28では、くびれよりも上の一部が除去され、回路断面はより矩形に近づいた。
比較例1は裾引きが大きい回路となった。図4に、比較例1の回路断面写真を示す。
比較例2〜7は初期エッチング性が劣化し、回路を形成できなかった。
エッチング液組成を変化させた比較例8〜12では、回路の裾引きが大きくなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路が形成された銅箔又は銅層と絶縁基板との積層体であって、
回路厚さ方向でくびれを有し、
回路幅が、回路上部から少なくとも回路厚さ1μmまで、回路厚さ方向に向かって減少し、
回路トップ幅L(μm)と回路ボトム幅l(μm)との差の絶対値|L−l|が5μm以下であり、
くびれの幅w(μm)と回路トップ幅Lとの比w/L(%)が70%以上であり、
くびれの回路ボトムからの高さh(μm)と回路厚さt(μm)との比h/tが50%以上である積層体。
【請求項2】
くびれの幅wと回路トップ幅Lとの比w/L(%)が80%以上である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
エッチングにより、くびれより上部の一部又は全てを取り除いた請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記くびれより上部の一部又は全ての除去面にめっきを形成した請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
回路厚さtが6μm以上である請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
回路厚さtが8μm以上である請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記銅箔又は銅層の表面の少なくとも一部には貴金属層が形成されている請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
前記貴金属層がPt、Pd、及び、Auのいずれか1種以上を含む請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
Ptの付着量が1050μg/dm2以下、Pdの付着量が600μg/dm2以下、Auの付着量が1000μg/dm2以下である請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
前記貴金属層と前記銅箔又は銅層との間、又は、前記貴金属層上に、前記貴金属と銅との中間の腐食性を有する層をさらに備える請求項8又は9に記載の積層体。
【請求項11】
前記貴金属と銅との中間の腐食性を有する層が、Ni又はNi合金層である請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
前記Ni合金が、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び1100μg/dm2以下のZnからなるNi−Zn合金、被覆量が1500μg/dm2以下のNiを含むNi−Cu合金、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び1100μg/dm2以下のZnを含むNi−Zn−Cu合金、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のSnからなるNi−Sn合金、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のVからなるNi−V合金、又は、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のMnからなるNi−Mn合金である請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の積層体を材料としたプリント配線板。
【請求項14】
銅箔または銅層のエッチング面に貴金属層を形成した後、該貴金属層上にレジストパターンを形成し、エッチング液で不要部を除去して請求項1〜12の何れかに記載の積層体を得る回路基板の形成方法。
【請求項15】
前記貴金属層と、前記銅箔または銅層との間に、貴金属と銅との中間の腐食性を有する層を形成した後、レジストパターンを形成し、エッチング液で不要部を除去する請求項14に記載の回路基板の形成方法。
【請求項16】
前記貴金属と銅との中間の腐食性を有する層が、Ni又はNi合金層である請求項15に記載の回路基板の形成方法。
【請求項17】
前記エッチング液で不要部を除去した後に、さらに回路上面の貴金属層を取り除く請求項14に記載の回路基板の形成方法。
【請求項18】
前記エッチング液で不要部を除去した後に、さらに回路上面の貴金属と銅との中間の腐食性を有する層、及び、貴金属層を取り除く請求項15又は16に記載の回路基板の形成方法。
【請求項19】
前記貴金属層を取り除く工程によって該貴金属層直下の銅箔又は銅層の一部を取り除く、又は、該貴金属層を取り除く工程の後に該貴金属層直下の銅箔又は銅層の一部を取り除く請求項17又は18に記載の回路基板の形成方法。
【請求項20】
前記貴金属層直下の銅箔又は銅層の一部を取り除いた後に、さらに該銅箔又は銅層の除去面にめっきを形成する請求項19に記載の回路基板の形成方法。
【請求項21】
エッチング前にエッチング面に形成された前記貴金属層に熱処理を施す請求項14又は17に記載の回路基板の形成方法。
【請求項22】
エッチング前にエッチング面に形成された前記貴金属層、及び、貴金属と銅との中間の腐食性を有する層に熱処理を施す請求項15、16又は18に記載の回路基板の形成方法。
【請求項23】
前記エッチング液に有機物が含まれていない請求項14〜22のいずれかに記載の回路基板の形成方法。
【請求項24】
前記エッチング液が1.5〜4.0mol/LのCuCl2及び2.2〜5.0mol/LのHClを含む請求項14〜23のいずれかに記載の回路基板の形成方法。
【請求項25】
前記エッチング液が1.5〜4.1mol/LのFeCl3及び2.0mol/L以下のHClを含む請求項14〜23のいずれかに記載の回路基板の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−253855(P2011−253855A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125039(P2010−125039)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】