説明

プレコート鋼板の切断端面防食方法

【課題】 プレコート鋼板の切断端面6を被覆する補修塗膜8に、下塗り塗膜2から溶け出した防錆イオンを含む水溶液を留め置く機能を付与することにより、簡便な方法で切断端面を防食する。
【解決手段】 塗装原板1に下塗り塗膜2,上塗り塗膜3,裏面塗膜4を設けたプレコート鋼板から切り出された切板の切断端面6に、表面積の大きな粗粒又は二次粒子7を骨材として配合した補修塗料で補修塗膜8を形成する。下塗り塗膜2から滲み出る防錆イオン含有水溶液が粗粒又は二次粒子7で案内され補修塗膜8に保持されるので、塗膜2〜4で被覆されていない切断端面6も効果的に腐食防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的簡単な方法でプレコート鋼板の切断端面を塗装し、下地鋼が露出した切断端面を起点とする腐食の成長を抑えた防食方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外装材,内装材,表装材等に使用される塗装鋼板は、目標形状に成形した後で塗装するポストコートからユーザ側での塗装が省略可能なプレコート鋼板への切替えが進められている。プレコート鋼板は、ポストコートに比較して格段に生産性が高く、耐食性,表面性状,外観等に優れている点でも有利な素材である。
プレコート鋼板は、コイル状又は切板状でユーザに供給され、ユーザ側で切断,打抜き,絞り等によって目標形状に成形される。切断で生じるプレコート鋼板の端面ではめっき層や下地鋼が露出するため、健全な塗膜のある平坦部に比べ切断端面に錆が発生しやすい。クロム酸カルシウム又はクロム酸ストロンチウムをエポキシ樹脂に配合した裏面塗料を使用すると、裏面塗膜からのクロム溶出によって切断端面の耐食性が向上すると特許文献1〔0010〕で紹介されている。
【特許文献1】特開平7-185452号公報
【0003】
裏面塗膜から溶出するクロムは、薄いプレコート鋼板にあっては切断端面の全域に行き渡ることもあるが、プレコート鋼板が厚板になるに従い溶出クロムと接触することなく下地鋼が裸の状態に放置されやすい。たとえば、0.8mmを超える厚板のプレコート鋼板を外装建材に使用する場合、切断端面における下地鋼の露出度が大きく、露出した下地鋼に発生した赤錆を起点として腐食が進行することがある。
端面の防食には、最終製品時に露出する切断端面を補修塗料で予め塗装する方法が有効である。たとえば、特許文献2では、スポンジや不織布に塗料を含浸させた塗装パッドを切断端面に押し付けることにより、切断端面に防錆塗膜を施している。しかし、一般的な補修塗料では低い防錆能のため補修部が先行腐食しやすく、長期にわたる切断端面の腐食抑制を期待できない。
【特許文献2】特開平9-285758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補修塗料の防錆能は、クロム酸イオンとなって溶出するクロム酸カルシウム又はクロム酸ストロンチウム等の防錆顔料の配合により改善される。クロム酸イオンの溶出は切断端面の防錆には有効であるものの、補修塗膜が雨水で濡れると防錆顔料が溶け出し、防錆能が低下する。二度塗りによって低下した防錆能を回復できるが、コストや手数のかかる保管,取扱いを余儀なくされる。
本発明は、かかる問題を解消すべく案出されたものであり、下塗り塗膜に分散している防錆顔料を切断端面の防食に使用することにより、簡便な方法で且つ長期にわたって切断端面の腐食を抑制し、高品質のプレコート鋼板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、溶出可能な防錆顔料を含む下塗り塗膜,色調付与のための上塗り塗膜を原板の一面又は両面に設けたプレコート鋼板を対象とし、防錆顔料を含まない塗膜(サービスコート)を裏面に設ける場合もある。プレコート鋼板を所定サイズの切板に切り出し、複数の切板を積み重ねた後、プレコート鋼板の切断端面に補修塗料を塗布・乾燥する。
【0006】
補修塗料としては、表面積の大きな粗粒又は二次粒子を骨材として含む有機溶剤系塗料が使用される。表面に凹凸のある骨材が使用され、粉末の比表面積で粗さを定義できるが、比表面積:10m2/g以上の粗粒又は二次粒子が好ましい。
粗粒には凹凸が表面にあるゼオライト、二次粒子には,微細な一次粒子が凝集したシリカ二次粒子,アルミナ二次粒子等がある。粗粒又は二次粒子は、塗料への配合に先立ち、シランカップリング剤,水溶性高分子,界面活性剤等で親水化処理することが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
切断端面の補修に用いられる塗料に防錆顔料を配合しても、補修塗膜からの防錆顔料溶出に起因する防錆能の低下が避けられない。そこで、本発明者等は、プレコート鋼板の下塗り塗膜に分散させた防錆顔料を切断端面の防食に利用することを検討した。防錆顔料は、湿潤環境下で溶出し防食皮膜となって基材を保護する。たとえば、クロム系防錆顔料では、溶出したクロム酸イオンとめっき成分,鋼成分,腐食性因子との反応生成物であるクロム酸塩が基材表面に析出することにより耐食性が付与される。
【0008】
下塗り塗膜に配合されている防錆顔料は、下塗り塗膜と接する鋼板表面だけでなく、溶出金属イオンを含む水溶液が面内方向に流動して切断端面にも送られるため切断端面の防食にも働く。しかし、下塗り塗膜から遠く離れた切断端面には溶出金属イオンが供給されず、プレコート鋼板が厚くなるほど溶出金属イオンの供給不足が生じる。また、単に流出した防錆顔料では、雨水との接触によって切断端面から流し出され、防食に働くことなく消費される割合が多くなる。
【0009】
切断端面に流出した防錆顔料を切断端面に留め置き、且つ切断端面の面内方向に沿った防錆顔料の流動が可能になると、下塗り塗膜に配合した防錆顔料を効率よく切断端面の防食に利用できる。かかる観点から、切断端面に設けられる補修塗膜の要求特性を調査・検討した結果、表面積の大きな粗粒又は二次粒子を骨材として分散させることが有効であることを見出した。粗粒又は二次粒子の分散により防錆顔料が切断端面に適正分布されることは次のように説明できる。
【0010】
下地鋼1aにめっき層1bを設けた塗装原板1を用いたプレコート鋼板は、製品外面となる表面に下塗り塗膜2,上塗り塗膜3を設け、製品内面となる裏面に裏面塗膜(サービスコート)4を設けている(図1)。裏面塗膜4に代え、下塗り塗膜2,上塗り塗膜3を裏面側に設ける場合もある。防錆顔料5は、上塗り塗膜3や裏面塗膜4には通常分散されず、下塗り塗膜2にのみ分散される。
プレコート鋼板は所定サイズに裁断された切板として保管、運送、取り扱われるが、塗膜2〜4のない切断端面6では下地鋼が露出し、錆びやすい状態にある。そこで、表面積の大きな粗粒(図2a)又は二次粒子(図2b)を骨材7として配合した補修塗料を切断端面に塗布・乾燥することにより、粗粒又は二次粒子が分散した補修塗膜8で切断端面6を被覆する。
【0011】
ゼオライト,シリカ二次粒子,アルミナ二次粒子等の粗粒又は二次粒子は、表面が平滑な通常の骨材と異なり、塗料のバインダー樹脂で表面が覆われてしまうことがない。バインダー樹脂で覆われていない骨材7の表面部分は、下塗り塗膜2から面内方向に流動して切断端面6に至った防錆イオン含有水溶液の流動を可能にする。すなわち、骨材7の未被覆表面部分と防錆イオン含有水溶液との間の表面張力により防錆イオン含有水溶液が一粒の骨材7から隣接骨材7に順次移動する。
補修塗膜8に分散している骨材7で防錆イオン含有水溶液の優先流路が補修塗膜8内に形成されるため、厚い塗装原板1を用いたプレコート鋼板でも切断端面6の全域にわたって防錆イオン含有水溶液が供給され、防錆顔料溶出層9が形成される。防錆イオンが腐食性因子と反応し、腐食抑制作用のある反応生成物が切断端面に析出するので、切断端面の防食が図られる。他方、骨材7のない塗膜部では補修塗膜8のバインダー樹脂によって防錆イオン含有水溶液がはじかれるので、雨水と接触した補修塗膜8から防錆イオン含有水溶液が流れ出す割合も少なくなり、切断端面6に対する防食持続性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
塗装原板1には、各種のめっき鋼板,ステンレス鋼板,普通鋼板,低合金鋼板等が使用される。なかでも、ステンレス鋼板,Zn-Al-Mg合金めっき鋼板は、長期耐久性,端面耐食性,強度,コスト等から好適な塗装原板である。塗装原板の種類に応じて脱脂,表面調整,化成処理等の塗装前処理が施される。化成処理には、クロメート処理,リン酸塩処理の他に、環境負荷の小さなチタン系,ジルコニウム形,シリカ系等の化成皮膜を形成するクロムフリー処理も採用可能である。
【0013】
塗装前処理した原板1に下塗り塗料を塗布・乾燥し、下塗り塗膜2を形成する。下塗り塗料は、エポキシ,ポリエステル等のベース樹脂にクロム系又は非クロム系防錆顔料を配合することにより用意される。必要に応じて、体質顔料,骨材等を添加しても良い。水溶液に溶出する限り種々の防錆顔料を使用でき、防錆顔料を微粒化することで切断端面からの防錆イオンの溶出性が向上するため平均粒径:0.01〜10μmの防錆顔料が好ましい。
【0014】
クロム系防錆顔料にはクロム酸亜鉛,クロム酸ストロンチウム,クロム酸バリウム,クロム酸カルシウム等があり、非クロム系防錆顔料にはリン酸マグネシウム,リン酸亜鉛,リン酸カルシウム,ポリリン酸アルミニウム,変性シリカ,炭酸カルシウム,酸化チタン等があり、必要に応じて複数種類の防錆顔料を塗料に複合添加する。防錆顔料の添加量は、乾燥した下塗り塗膜2に5〜70質量%(好ましくは、20〜60質量%)の割合で防錆顔料5が分散するように調整される。5質量%未満の分散量では切断端面6の防食に必要な量の防錆顔料5が不足し、逆に70質量%を超える分散量では成膜性に悪影響が出てくる。
【0015】
下塗り塗料は、塗装前処理した原板1に塗布され、下塗り塗膜の硬化開始温度以上、たとえば表面到達温度:200℃で加熱・乾燥することにより焼き付けられる。具体的には、190〜380℃×15〜90秒の加熱・乾燥条件が採用される。下塗り塗料の塗布量は、乾燥膜厚:2〜15μmの下塗り塗膜2が形成される量に調整される。2μm未満の膜厚では成膜性,防錆効果の低下が懸念され、逆に15μmを超える厚膜では成形加工性が劣りコストアップになる場合がある。
【0016】
上塗り塗料は、ポリエステル,エポキシ変性ポリエステル,フッ素,アクリル,ウレタン等のベース樹脂に着色顔料又は染料を配合することにより調整される。着色顔料又は染料には酸化チタン,カーボンブラック,シアニンブルー,シアニングリーン,酸化鉄等があり、アルミニウム粉末,光輝粉末等のメタリック顔料も使用可能である。必要に応じ,抗菌剤,防かび剤,防虫剤,非粘着剤,潤滑剤,汚れ防止剤,艶消し材,紫外線吸収剤等、種々の添加剤や骨材,体質顔料,粉末等を添加しても良い。
【0017】
上塗り塗料は、下塗り塗膜2上に塗布され、上塗り塗膜の硬化開始温度以上,たとえば表面到達温度:230℃で加熱・乾燥することにより焼き付けられる。具体的には、220〜450℃×15〜90秒の加熱・乾燥条件が採用される。上塗り塗料の塗布量は、乾燥膜厚:5〜30μmの上塗り塗膜3が形成される量に調整される。5μm未満の膜厚では隠蔽性,耐久性に劣る場合があり、逆に30μmを超える厚膜では成形加工性の低下,コストアップの原因になる。
【0018】
裏面塗料は、塗装前処理した塗装原板1の裏面側に塗布される。裏面塗料は,表面側の下塗り塗料又は上塗り塗料と同時に塗布できる。焼付け温度は裏面塗膜の硬化開始温度以上とし、下塗り塗料又は上塗り塗料の焼付け温度で加熱・乾燥することにより焼き付けられる。裏面塗料の塗布量は、乾燥膜厚:1〜10μmの裏面塗膜4が形成される量に調整される。1μm未満の膜厚では成膜性の低下が懸念され、10μmを超える厚膜ではコストアップの原因になりやすい。
【0019】
連続塗装ラインから送り出されるプレコート鋼板は、コイル状に巻き取られて次工程に搬送され、次工程で所定サイズの切板に裁断される。或いは、連続塗装ラインから出てくるプレコート鋼板を切板に走間切断する場合もある。複数の切板を互いに重ね合わせ、保管,搬送等が可能なパイルとする。
パイルの側面には、塗膜2〜4がなく下地鋼が露出した切断端面6が臨んでいる。そこで、パイル側面に補修塗料を塗布し焼成することにより、切断端面6を補修塗膜8で被覆する。
【0020】
補修塗料は、アルキッド,変性アルキッド,アクリル,ウレタン等のベース樹脂に骨材,着色顔料,溶剤を配合することにより調整される。
骨材7には,表面積の大きな粗粒又は二次粒子が使用される。粗粒(図2a)には比表面積:10m2/g以上の合成ゼオライト,活性アルミナ,活性炭等があり、二次粒子(図2b)にはシリカ,アルミナ等が凝集した比表面積:10m2/g以上の粒子がある。二次粒子を使用する場合、塗料分散の過程で二次粒子がある程度の凝集状態を維持する必要があるため、塗料中における平均粒径が1μm以上の二次粒子が好ましい。粒径が1μm未満の二次粒子では、ベース樹脂に対する骨材の分散性が高くなり、防錆イオン含有水溶液の骨材間流動が抑制されるので好ましくない。
【0021】
補修塗料に配合される骨材の量は、樹脂固形分に対して20〜120質量%の範囲で定められる。20質量%未満の配合量では、防錆イオン含有水溶液の骨材間流動が抑えられるので好ましくない。しかし、120質量%を超える過剰配合はベース樹脂や溶剤の添加量減少を意味し、塗料が不安定化しやすい。防錆イオン含有水溶液が骨材間を流動しやすくするためには、粗粒又は二次粒子の表面をシランカップリング剤,水溶性高分子,界面活性剤等で親水化処理することが好ましい。
【0022】
補修塗料に配合される着色剤には、酸化チタン,カーボンブラック,シアニンブルー,シアニングリーン,酸化鉄,アルミニウム粉末等がある。必要に応じ、体質顔料等を補修塗料に配合しても良い。
補修塗料は切断端面6にスプレー等で塗布され、常温乾燥によって補修塗膜8が成膜される。補修塗料の塗布量は、乾燥膜厚:5〜300μmの補修塗膜8が形成される量に調整される。5μm未満の膜厚では耐食性が不足し、300μmを超える厚膜ではコストアップが懸念される。
【実施例1】
【0023】
板厚:1.6mmの冷延鋼板を素材とする片面当り亜鉛付着量:70g/m2の溶融亜鉛めっき鋼板を塗装原板に使用した。塗装原板1の表裏両面に脱脂,塗布型クロメート処理を施し、エポキシ樹脂又はポリエステル樹脂をベースとし、比表面積:10m2/g以上の粗粒又は二次粒子を配合した下塗り塗料を塗布し、乾燥膜厚:7μmの下塗り塗膜2を形成した。粗粒としては合成ゼオライト,活性アルミナ,活性炭を、二次粒子としてはシリカ粉末,アルミナ粉末を用い、配合に先立ってシランカップリング処理した。
【0024】
下塗り塗装と同時に塗装原板1の裏面に裏面塗料を塗布し、乾燥膜厚:5μmの裏面塗膜4を形成した。下塗り塗膜2,裏面塗膜4の形成には、350℃×90秒の加熱・乾燥条件を採用した。
次いで、下塗り塗膜2上に上塗り塗料を塗布し、380℃×90秒の加熱・乾燥により乾燥膜厚:15μmの上塗り塗膜3を形成した。
【0025】
得られた塗装鋼板をメカニカルシャーで65mm×150mmのサイズに裁断し、切断端面に補修塗料をスプレー塗布し、常温乾燥させることにより乾燥膜厚:5〜300μmの補修塗膜8を形成した。なお、補修塗料は、アルキッド樹脂をベースとし、骨材:20〜120質量%,着色顔料:100〜0質量%,体質顔料:8質量%,溶剤:20質量%を配合することにより調製した。
補修塗装後、JIS K5600に準拠した塩水噴霧試験で切断端面の耐食性を調査した。塩水噴霧を500時間継続した後で切断端面を観察し、腐食が軽度に止まっていた試験片を耐食性優良(○),腐食が著しく進行した試験片を耐食性不良(×)と評価した。
表1の試験結果にみられるように、本発明で規定した粗粒又は二次粒子が分散した補修塗膜を設けることにより、切断端面が効果的に防食されていることが判る。他方、薄すぎる補修塗膜や骨材配合量が少なすぎる比較例では、切断端面にかなりの腐食が発生していた。
【0026】

【実施例2】
【0027】
補修塗料のベースに変性アルキッド樹脂,アクリル樹脂又はウレタン樹脂を用い、シリカ粉末の二次粒子を骨材として配合することにより補修塗料を調製した。この補修塗料を実施例1と同様に切断端面に塗布して補修塗膜を形成した後、同じ腐食試験により切断端面の耐食性を調査した。表2の調査結果にみられるように、何れのベース樹脂を用いて成膜した補修塗膜であっても、骨材の分散によって切断端面の耐食性が改善されていることが判る。
【0028】

【実施例3】
【0029】
冷延鋼板を素材とする溶融亜鉛めっき鋼板,溶融Zn-5%Al合金めっき鋼板,溶融Zn-55%Al合金めっき鋼板,Zn-Al-Mg合金めっき鋼板,溶融アルミニウムめっき鋼板及び電気亜鉛めっき鋼板(何れのめっき鋼板も片面当りめっき付着量が70g/m2)を塗装原板に用い、合成ゼオライトを骨材として変性アルキッド樹脂に配合した補修塗料で実施例1と同様に補修塗膜を切断端面に形成した。
補修塗装後の塗装鋼板の切断端面耐食性を実施例1と同じ塩水噴霧試験で調査した。表3の調査結果にみられるように、塗装原板として使用しためっき鋼板の種類に拘わらず、本発明に従った補修塗膜を切断端面に設けることにより切断端面の耐食性が改善されていることが確認された。
【0030】

【産業上の利用可能性】
【0031】
以上に説明したように、表面積の大きな粗粒又は二次粒子7を骨材として配合した補修塗料をプレコート鋼板の切断端面6に塗布・乾燥すると、下塗り塗膜2から溶け出した防錆イオンを含む水溶液を切断端面6に留め置くことが可能な補修塗膜8が形成される。補修塗膜8に分散している粗粒又は二次粒子7は、防錆イオン含有水溶液の優先流路を補修塗膜8内に形成し、切断端面6の全域に防錆イオン含有水溶液を行き渡らせると共に、補修塗膜8から雨水に防錆イオン含有水溶液が流れ出ることを抑制する。このようにして切断端面が防食されたプレコート鋼板は、美麗な表面を活用した外装材,内装材,表装材等として広範な分野で使用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】補修塗膜で被覆したプレコート鋼板の切断端面を示す模式図
【図2】粗粒(a)又は二次粒子(b)を骨材として配合した補修塗料の模式図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶出可能な防錆顔料を含む下塗り塗膜を介して設けられた上塗り塗膜で色調が付与されているプレコート鋼板を所定サイズの切板に切り出して積み重ね、
積み重ねられたプレコート鋼板の切断端面に、表面積の大きな粗粒又は二次粒子を骨材として含む有機溶剤系の補修塗料を塗布し、粗粒又は二次粒子が分散した補修塗膜で切断端面を覆うことを特徴とするプレコート鋼板の切断端面防食方法。
【請求項2】
比表面積:10m2/g以上の骨材を配合した補修塗料を使用する請求項1記載の切断端面防食方法。
【請求項3】
親水化処理したゼオライト,シリカ二次粒子及び/又はアルミナ二次粒子を骨材として配合した補修塗料を使用する請求項1記載の切断端面防食方法。
【請求項4】
プレコート鋼板の下塗り塗膜に含まれる防錆顔料がクロム系防錆顔料,非クロム系防錆顔料の一種又は二種以上である請求項1記載の切断端面防食方法。
【請求項5】
亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板を塗装原板に使用する請求項1記載の切断端面防食方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−263597(P2006−263597A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85945(P2005−85945)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】