説明

プレス成形品

【課題】本発明は、ガラス素材の風合いを有する透明性に優れる大型の浴室あるいは洗面カウンターを提供することである。
【解決手段】本発明は、(A)重合性不飽和単量体、(B)分子中に水酸基及びエチレン性不飽和二重結合を有する熱硬化性樹脂及び(C)ポリイソシアネート化合物を含有する透明なゴム状のラジカル硬化系成形材料をプレス機械で加熱加圧成形してなる成形品であって、前記熱硬化性樹脂(B)がビニルエステル樹脂であり、その水酸基価/酸価が10以上であること、前記(C)の量が前記(B)の活性水素の0.3〜0.7倍量のイソシアネート基に相当する量であること、(C)成分がヘキサメチレンジイソシアネートであること、及び当該ラジカル硬化系成形材料中の(A)(B)及び(C)の合計の含有率が80重量%以上であることを特徴とするガラス風の透明な平板形状もしくは三次元一体形状の浴室あるいは洗面カウンタープレス成形品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明性に優れるガラス風の透明な平板形状もしくは三次元一体形状の浴室あるいは洗面カウンタープレス成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化熱硬化性樹脂(以下、FRPという)は、金属に比べ軽量で強度、耐食性に優れる等多くの特徴を有しており、浴槽、浄化槽等の住宅用部材、パイプ等の工業用部材、各種電気部品等、多岐に亘って使用されている。
【0003】
このようなFRPの成形方法には多くの種類があるが、その一つにプレス成形法がある。このプレス成形法は、所定の温度に加熱された金型内にFRP成形材料を投入し、プレス機械で加圧・加熱硬化させる方法であり、材料ロスが少ない、生産性が高い、作業環境が良い等、他のFRP成形法に比べ多くの長所を有し、FRP製品の生産に広く用いられている。
【0004】
かかるFRP成形材料としては、一般的にシートモールディングコンパウンド(以下、SMCという)、バルクモールディングコンパウンド(以下、BMCという)等が用いられている。これらのなかでも、BMCは、外観意匠性に優れているため、バスタブ、洗面化粧台、台所カウンター、等の人造大理石関係の用途にも広く利用されており、また高級化、多様化のニーズに対応するため、色・柄等について様々な種類の製品が開発されている。こうしたBMCの色・柄としては、砂岩調、御影石調等の石目模様調の人造大理石が主流であるが、どれも似たり寄ったりの外観意匠で斬新性が乏しくなっている。
【0005】
一方、外観意匠面では、近年、家電製品やインテリアなどで透明素材をコーディネートした意匠が人気を博している。
その透明素材の材質としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂やガラス等が代表的なものとして挙げられる。
【0006】
しかしながら、かかる熱可塑性樹脂は、一般的に高温や熱水に弱く、大きいサイズの成形が困難である等の問題があるため、バスタブ、洗面化粧台、台所カウンター等の人造大理石関連用途の材質としては不適切である。
【0007】
またガラスの場合は、大型形状部品の成形が困難で平板形状しか対応できない、穴あけ、接着等の後加工がし難い、重くて取扱い難い、等の問題を有している。また、上述のSMC、BMCで透明な成形品を得ることは相当困難であり、未だ実用化されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、成形材料をプレス成形することによりガラス素材の風合いを有する透明性に優れる大型のガラス風の透明な平板形状もしくは三次元一体形状の浴室あるいは洗面カウンター成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させるに到った。
すなわち、本発明は、(A)重合性不飽和単量体、(B)分子中に水酸基及びエチレン性不飽和二重結合を有する熱硬化性樹脂及び(C)ポリイソシアネート化合物を含有する透明なゴム状のラジカル硬化系成形材料をプレス機械で加熱加圧成形してなる成形品であって、前記分子中に水酸基及びエチレン性不飽和二重結合を有する熱硬化性樹脂(B)がビニルエステル樹脂であり、その水酸基価/酸価が10以上であること(C)ポリイソシアネート化合物の量が前記熱硬化性樹脂(B)の活性水素の0.3〜0.7倍量のイソシアネート基に相当する量であること、(C)ポリイソシアネート化合物がヘキサメチレンジイソシアネートであること、及び当該ラジカル硬化系成形材料中の(A)、(B)及び(C)の合計の含有率が80重量%以上であることを特徴とするガラス風の透明な平板形状もしくは三次元一体形状の浴室あるいは洗面カウンタープレス成形品を提供するものである。
発明の効果
本発明のプレス成形品は、透明性に優れ、大型の形状に成形することができ、加えて当該成形品の裏面側に着色層を形成したり、製品面側を艶消し処理したりすることにより、ガラス素材の重厚な風合いを付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明をさらに詳しく説明する。
本発明に使用する(A)重合性不飽和単量体としては、例えばスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0011】
また本発明に使用する(B)分子中に水酸基及びエチレン性不飽和二重結合を有する熱硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。これらのうち、酸価に対する水酸基の比、すなわち水酸基価/酸価が10以上のビニルエステル樹脂(エポキシアクリレート、不飽和ポリエステルアクリレート等)が好ましい。
【0012】
本発明に使用する(C)ポリイソシアネート化合物とはヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。さらには、前述各種のイソシアネート化合物と活性水素化合物との反応生成物たる末端イソシアネートのプレポリマーが挙げられる。
【0013】
(B)分子中に水酸基及びエチレン性不飽和二重結合を有する熱硬化性樹脂と(C)ポリイソシアネート化合物の配合比率については特に制限はないが、(B)熱硬化性樹脂中の水酸基の活性水素の量に見合う量が、当該活性水素の0.3〜0.7倍量のイソシアネート基に相当する量(NCO/OH)の(C)ポリイソシアネート化合物を使用する
【0014】
本発明に使用するラジカル硬化系成形材料は、当該成形材料中の(A)重合性不飽和単量体及び(B)分子中に水酸基及びエチレン性不飽和二重結合を有する熱硬化性樹脂及び(C)ポリイソシアネート化合物の合計の含有率が80重量%以上である当該合計含有率が80重量%に満たない場合は、透明度がかなり低下するため本発明の目的を達成することができない。
【0015】
本発明に使用するラジカル硬化系成形材料には、過酸化物系硬化剤が好ましく添加される。その他必要によりその他公知の添加剤、例えば、ジブチル錫ジラウレート等のウレタン化触媒、ステアリン酸亜鉛等の内部離型剤、水酸化アルミニウム等の無機質充填剤、ガラス繊維等の補強材、柄材、紫外線吸収剤、顔料、減粘剤、低収縮化剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、安定剤等を添加することができる。
【0016】
本発明に使用するラジカル硬化系成形材料は、上記の (A)重合性不飽和単量体、(B)分子中に水酸基及びエチレン性不飽和二重結合を有する熱硬化性樹脂、(C)ポリイソシアネート化合物及び添加剤等を混合することにより、ゴム状の成形材料としたものである。
【0017】
本発明のプレス成形品は、上記の成形材料をプレス機械で加熱、加圧成形することにより得ることができる。
プレス成形の条件は、一般的なSMC、BMCのプレス成形条件と同様に、成形温度は好ましくは40〜180℃、成形圧力は好ましくは1〜20MPa、加圧時間は好ましくは1〜60分の範囲であるが、使用する成形材料の組成内容、成形品の形状や大きさ等により、適宜条件を選択すればよい。
前記プレス成形の操作により、平板形状はもとより三次元一体形状のものでも、簡単かつ安定的に、商品価値の高い透明性に優れるプレス成形品を得ることができる。
【0018】
本発明のプレス成形品は、意匠性を向上させるため、成形品の裏面側に着色層を設けることが好ましい。
かかる着色層を形成するには、例えば、上述のプレス成形品の裏面側に着色した塗料を塗布する方法、着色したシート状のものを貼りつける方法、あるいは着色した補強材料でバックアップする方法等が挙げられる。
【0019】
これらのうち、プレス成形品の裏面側に着色した塗料を塗布する方法が好ましく、さらに具体的には、プレス成形品の裏面側の金型表面に着色塗料を塗布する等して着色層を予め形成しておいて上述の成形材料をプレス機械で加熱、加圧して着色層を同時一体成形したものであることが好ましい。
【0020】
本発明のプレス成形品は、意匠性の点で、製品面が60度鏡面光沢度(JIS K-7105)0〜50%の艶消し処理したものであることが更に好ましい。
艶消し処理の方法は、艶消し処理した金型を用いて成形する方法、またはサンディング等の後加工を施す方法等が挙げられる。
上記の60度鏡面光沢度とは、JIS規格K−7105(1998)で規定されている光沢度を意味する。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。文中の「部」、「%」は断りのない限り重量基準である。
【0022】
[実施例1]
ディックライトUE−3505[ビニルエステル樹脂(エポキシアクリレート・スチレンモノマー溶液)、水酸基価/酸価=16、大日本インキ化学工業(株)製品]100部、ヘキサメチレンジイソシアネート10部(NCO/OH=0.57)、DABCO T−9[ウレタン化触媒、エアープロダクツジャパン(株)製品]0.03部、トリゴノックス121−50[硬化剤、化薬アクゾ(株)製品]0.5部を撹拌機で十分に混合し、重合性不飽和単量体、熱硬化性樹脂及びポリイソシアネート化合物の合計の含有率が99.5%のコンパウンドを作製した。このコンパウンドを室温で24時間放置し、淡黄色透明なゴム状の成形材料を得た。
【0023】
上記で得られた成形材料を、概寸が間口900mm×奥行き300mm×板厚8mmの前垂れ及びバックガード付き浴室カウンター成形用金型(製品面は鏡面光沢仕上げ)を用いてプレス成形を行い、前垂れ及びバックガード付き浴室カウンター成形品を得た。プレス成形条件は上型(製品面)120℃、下型(裏面)100℃、成形圧力9.8MPa、加圧時間8分間とした。
得られた成形品は、淡黄色透明な光沢ガラス製品の趣を有する上品なものであった。
【0024】
[実施例2]
先ず、ディックライトUE−3505 100部、ポリトン レッドJ−407A[赤色顔料、大日本インキ化学工業(株)製品]5部、パーカドックス16[硬化剤、化薬アクゾ(株)製品]1部を撹拌機で十分に混合して赤色塗料を作製した。
次に、艶消し(#200程度のサンドブラスト)仕上げ処理を施した概寸が間口2700mm×奥行き600mm×板厚10mmの前垂れ及びバックガード付き洗面カウンター成形用金型の下型表面に上述の赤色塗料を塗布した。5分間放置して
塗料を硬化させた後、この金型にて実施例1の成形材料を用いて実施例1と同様の成形条件でプレス成形して、成形品裏面側に着色層が同時一体成形された前垂れ及びバックガード付き洗面カウンター成形品を得た。
得られた成形品は、赤色透明の艶消しガラス風の重厚な外観を呈するもので、商品価値の高いものであった。
【0025】
[実施例3]
ディックライトUE−3505 100部、ヘキサメチレンジイソシアネート10部、DABCO T−9 0.03部(NCO/OH=0.57)、トリゴノックス121−50 0.5部、繊維強化材(ガラスミルドファイバー、平均繊維長0.1mm)10部を撹拌機で十分に混合し、重合性不飽和単量体、熱硬化性樹脂及びポリイソシアネート化合物の合計含有率が91.3%のコンパウンドを作製した。このコンパウンドを室温で24時間放置し、淡黄色透明なゴム状の成形材料を得た。
【0026】
この成形材料を実施例2と同様に成形して、成形品裏面側に着色層が同時一体成形された前垂れ及びバックガード付き洗面カウンター成形品を得た。
得られた成形品は、赤色透明の艶消しガラス風の重厚な外観を呈するもので、商品価値の高いものであった。
【0027】
[比較例1]
ポリライトPS−520[不飽和ポリエステル樹脂、大日本インキ化学工業(株)製品]90部、ポリライトPB−956[低収縮化剤、大日本インキ化学工業(株)製品]10部、水酸化アルミニウム240部、離型剤(ステアリン酸亜鉛)4部、硬化剤(t−ブチルパーオキシベンゾエート)1部、増粘剤(酸化マグネシウム)1部、繊維強化材(チョップドストランドガラス、平均繊維長6mm)22部をニーダーで混練し、一般的なBMCを作製した。
【0028】
このBMCを、プレス成形条件を上型(製品面)145℃、下型(裏面)130℃に変更する以外は実施例2と同様に成形して、成形品の裏面側に着色層が同時一体成形された前垂れ及びバックガード付き洗面カウンター成形品を得た。 得られた成形品は、白色不透明なものであり、上述の一般的なBMCを単独で成形したものと何ら変わらないものであった。
【0029】
[比較例2]
ポリライトPS−520 90部、ポリライトPB−956 10部、硬化剤(t−ブチルパーオキシベンゾエート)1部、増粘剤(酸化マグネシウム)2部、繊維強化材(チョップドストランドガラス、平均繊維長6mm)5部をニーダーで混練し、樹脂成分(不飽和ポリエステル樹脂、及び低収縮化剤の合計)の含有率が92.6%のBMCを作製した。
このBMCを比較例1と同様にして、成形品裏面側に着色層が同時一体成形された前垂れ及びバックガード付き洗面カウンターを成形したが、金型を開けた時点で、既に成形品全体に亘って大きな割れとひび割れが多数発生しており、成形品を得ることができなかった。
【0030】
[比較例3]
ディックライトUE−3505 100部、ヘキサメチレンジイソシアネート10部(NCO/OH=0.57)、DABCO T−9 0.03部、トリゴノックス121−50 0.5部、水酸化アルミニウム40部を撹拌機などで十分に混合し、重合性不飽和単量体、熱硬化性樹脂及びポリイソシアネート化合物の合計含有率が73.1%のコンパウンドを作製した。このコンパウンドを室温で24時間放置してゴム状の成形材料を得たが、その外観は、不透明がかったものであった。
【0031】
この成形材料を実施例2と同様にして、成形品裏面側に着色層が同時一体成形された前垂れ及びバックガード付き洗面カウンターを成形したが、金型を開けた時点で、成形品端部で多数のひび割れが発生していた。また、得られた成形品は、淡い乳白色の不透明な外観を呈しており、製品面側からは裏面の着色層の存在が認識できず、商品価値のないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性不飽和単量体、(B)分子中に水酸基及びエチレン性不飽和二重結合を有する熱硬化性樹脂及び(C)ポリイソシアネート化合物を含有する透明なゴム状のラジカル硬化系成形材料をプレス機械で加熱加圧成形してなる成形品であって、前記分子中に水酸基及びエチレン性不飽和二重結合を有する熱硬化性樹脂(B)がビニルエステル樹脂であり、その水酸基価/酸価が10以上であること(C)ポリイソシアネート化合物の量が前記熱硬化性樹脂(B)の活性水素の0.3〜0.7倍量のイソシアネート基に相当する量であること、(C)ポリイソシアネート化合物がヘキサメチレンジイソシアネートであること、及び当該ラジカル硬化系成形材料中の(A)、(B)及び(C)の合計の含有率が80重量%以上であることを特徴とするガラス風の透明な平板形状もしくは三次元一体形状の浴室あるいは洗面カウンタープレス成形品。
【請求項2】
当該プレス成形品の裏面側に、更に着色層を設けてなる請求項1記載のガラス風の透明な平板形状もしくは三次元一体形状の浴室あるいは洗面カウンタープレス成形品。
【請求項3】
ラジカル硬化系成形材料と着色層とがプレス同時一体成形されている請求項2記載のガラス風の透明な平板形状もしくは三次元一体形状の浴室あるいは洗面カウンタープレス成形品。
【請求項4】
当該プレス成形品の製品面が、60度鏡面光沢度(JIS K−7105)0〜50%の艶消し処理されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス風の透明な平板形状もしくは三次元一体形状の浴室あるいは洗面カウンタープレス成形品。

【公開番号】特開2007−113009(P2007−113009A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297741(P2006−297741)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【分割の表示】特願2003−67941(P2003−67941)の分割
【原出願日】平成15年3月13日(2003.3.13)
【出願人】(596005920)新ディック化工株式会社 (14)
【Fターム(参考)】