プレートの表面との付着接触装置、および、該装置を備えるプレートの把持システム
本発明に係る、ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレート(3)の表面(2)に付着接触する装置(1)は、該プレート表面(2)に、吸着力により付着する付着接触面(5)を備えた可撓性材料(4)を含むベース(10)と、可撓性材料(4)からなる付着接触面(5)とプレート(3)の表面(2)との間の分離抵抗を、付着接触面(5)に垂直な方向(7)および平行な方向(8)において、異ならせる手段(6)とを備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレートを把持し、操作する分野に関し、具体的には、これらのプレートを製造する工程、特に、これらのプレートを把持および/または搬送するロボットの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な把持技術を用いて、ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレートを把持するロボットが開発されている。
【0003】
具体的には、真空生成システムをプレートの裏面に係合させて、吸引力によりプレートを保持する技術が知られている。
【0004】
また、重力により、プレート端部に係合する方法も知られている。
【0005】
さらに、プレート端部に圧力をかける可動フィンガーと固定ベアリング間で、プレート端部を強制的に把持するシステムも知られている。
【0006】
これらのシステムは、完ぺきに機能してはいるものの、いくつかの欠点がある。最も重大な問題は、プレートの汚染である。
【0007】
たとえば、ポリマーのような柔軟性材料で作られたパッド上に、プレートの裏面を接触、支持、吸着することによりにより、プレートを把持するシステムも存在する。これは、ファンデルワールス力により得られる乾式吸着による完全な弾性結合を利用して、プレートを把持するものであり、汚染の危険性を大幅に軽減する。しかし、この技術は、プレートを把持した後、保持アームからプレートを外すためのパッドの引き離しが困難であるという欠点を有する。
【特許文献1】特開平10−294348号公報
【特許文献2】国際公開WO03/049157号公報
【特許文献3】米国出願公開2004/246459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、これらの不都合を解消し、さらなる利便性を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
より具体的には、本発明は、ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレート表面への付着接触装置に係り、該装置は、
− 付着接触面を備え、前記プレート表面に吸着により付着する可撓性材料を含むベースと、
− 前記可撓性材料の前記付着接触面と前記プレート表面との間の分離抵抗を、該付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる手段と、を備える。
【0010】
出願人の考察によれば、ロボットアームによってプレートを把持し動かす場合のプレートの主要な動きまたは加速は、ロボットとプレートとの間の接触面に、かなりのバイアスを生じさせるものであり、かつ、本質的にプレートの平面に対して平行である。このため、プレートを動かして解放するまでの間、せん断力により、可撓性材料がこの平面内において良好に吸着していることが要求される。一方、分離はプレート平面に垂直な方向において発生する。従って、分離作業を容易にするためには、垂直方向における吸着力を小さくする必要がある。このような観察および分析に基づき、出願人は次のような知見を得た。すなわち、可撓性材料で作られた、単一で厚みのある接触パッドを改良して、所定の方向において変化する吸着性を付与するということである。可撓性材料の付着接触面とプレート表面との間の分離抵抗を、付着接触面に対して垂直な方向および平行方向(すなわち接線方向)において、異ならせる手段により、可撓性材料と平面とは完全吸着(この吸着は、接触材の可撓性のおかげで、弾性である)で付着しつつも、プレートを可撓性材料から解放する場合の困難を回避するという特性が、可撓性材料に与えられる。このように、分離抵抗(力で表される)は、所定の同一接触面について、垂直方向および平行方向に従って、異なった数値を有する。なお、本発明において、「可撓性材料」とは、たとえば可撓性ポリマーのような、本来的に可撓性を具備するあらゆる材料、もしくは、半導体やスチール材のように、その形状により可撓性を付与できるあらゆる物質、を意味する。後者の場合、たとえば非常に薄い層に形成することにより、可撓性を得ることができるが、その表面にファイバーまたはラミネートなどの微細構造を備えるようにしてもよい。
【0011】
本発明の装置における有利な特徴の1つによれば、可撓性材料の付着接触面とプレート表面との間の分離抵抗を、付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる手段は、
− 付着接触面に垂直な方向における剛性または伸縮性を、幅方向において異ならせて、ベースに付与する手段を備える。
【0012】
この特徴により、吸着している付着面を漸次的に分離させることが可能となる。このような分離は、接触面のごく小さな部分で始まるため、ほとんど力を必要とせず、その後、同様にあまり力を必要とせずに、分離が漸次的に表面全体に広がっていく。これは、接触面を垂直方向に分離させるようとする力の効果によるものであり、この効果は接触面の分離が続いている間中ずっと維持される。
【0013】
本発明の装置における有利な特徴の1つによれば、付着接触面とプレート表面との間の垂直方向における分離抵抗は、付着接触面とプレート表面との間の平行方向における分離抵抗よりも小さい。
【0014】
本発明の特徴は、1つの方向、すなわち、付着接触面に対して垂直方向に優先的に備えられ、プレートと可撓性材料との分離を容易にしている。しかしながら、必要に応じて、他の方向、より具体的には、本発明の接触装置を用いたロボットによるプレートの運動方向および加速方向についても備えられるようにしてもよい。
【0015】
本発明の装置における有利な特徴の1つによれば、可撓性材料の付着接触面とプレート表面との間の分離抵抗を、この付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる手段は、
− 可撓性材料に固定された剛性材料を備え、剛性材料と可撓性材料とにより均一もしくは実質的に均一な厚さのベースが形成され、可撓性材料の厚みをベースの全幅あるいは少なくともその一部において異ならせるようにしている。
【0016】
ベースを剛性および可撓性の二材料構造とし、可撓性材料の厚みを、特にベースの幅方向において異ならせることにより、ベースの各部位において垂直方向の剛性を異ならせることが可能となる。可撓性材料とプレート表面の接触面間の分離は、最も剛性のある部位、すなわち、可撓性材料の厚みが最も小さく、従ってベースの伸縮性が最小である部位で開始される。このように、接触面の分離は漸次的に起こる。分離はまず、小さな部分で始まり、その後、漸次的に表面全体に広がる。従って、同時に全面を分離させようとする場合に必要とされる程の大きな力は要求されない。分離は、微少な力を発生させる「剥離(ピーリング)」効果によって、達成される。プレートに付着させる可撓性材料の表面積は、所定のせん断力の下、必要とされる表面の吸着抵抗により定められる。なお、このせん断力は、吸着結合がなされる最大の表面上の接線分力により定まる。また、接触面に垂直な方向の分離抵抗を決定する可撓性および剛性材料の配分は、吸着面に必要とされる垂直方向の吸着抵抗により決定される。
【0017】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、可撓性材料の厚さは、ベースの幅全体にわたって、あるいは少なくともベースの一部において、漸次的かつ連続的に増加する。
【0018】
この特徴により、ベース表面とプレートとの分離を、連続的かつ規則的に進行することが可能となる。
【0019】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、剛性材料は、端部がバイアス状の円柱形であり、このバイアス状の端部に、相補的な形状の可撓性材料が取り付けられ、全体で直円柱形のベースを構成する。
【0020】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、剛性材料は、円錐形状で、可撓性材料の中に組み込まれて一体化される。
【0021】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、剛性材料は、円錐形状の凹部を形成し、その凹部の中に、相補的な円錐形状をした可撓性材料が組み込まれて一体化される。
【0022】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、可撓性材料がベース全体を構成し、この場合、可撓性材料の付着接触面とプレート表面との間の分離抵抗を、付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる手段は、可撓性材料の断面の少なくとも一部に入れられた、1つ以上の横断スロットを備える。
【0023】
この特徴は、前述した二材料によるベース構造の代替例を示しており、ベースを構成する可撓性材料の幅方向において、伸縮性を変化させる。ベース表面は、断面にスリットが形成されていない部分(すなわち、ベースの中で最も伸縮性のない位置)からプレートと分離し始め、最終的には、この断面にスリットが入っていないゾーンから最も遠い位置(スロットにより分断された材料の部位の中で、最も引き伸ばすことができる位置)が分離する。
【0024】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、前記1つ以上の横断スロットは、可撓性材料の横断面の少なくとも一部を伸長し、ベースにU型構造を与えている。
【0025】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、ベースは、可撓性材料の横断面の少なくとも一部を、異なる高さで伸長する2つの対向する横断スロットを備え、可撓性のZ型構造を有する。
【0026】
このようなベース構造により、可撓性材料の接触面に対する垂直方向の結合に、ある程度の自由度をもたせることが可能となる。ここでは、プレートからの分離が開始する前に、可撓性Z型材料を広げることが可能となっており、ひとたびZ型を広げれば、プレートからの分離は、まず最も伸縮性の少ない部分、すなわち、Zの上のバーがZの横断バーと結合する位置で発生する。
【0027】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、ベースは、らせん状断面のスロットが形成されている可撓性材料の層からなる形状を有し、らせん状の可撓性材料層の中心を支持部に取り付けている。
【0028】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、可撓性材料の付着接触面とプレート表面との間の分離抵抗を、付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる手段は、
− ガラス板または半導体板(ウエハ)等を支持する剛性支持部に取り付けられた可撓性プレートを備える。この場合、支持部の一端部寄りの一方の表面に、可撓性材料が取り付けられる。この可撓性材料は、一方の端部が付着接触面を構成し、反対側の他方の端部が剛性支持部との接合面を構成する。
【0029】
この特徴により、スリットを入れた可撓性材料と同じ程度の「剥離」効果を、分離中に得ることが可能となる。本例においては、スロットと同様の機能が、たとえば、硬質材料からなる可撓性プレートの弾力的な運動により達成される。このような可撓性プレートによってもたらされる利点は、可撓性接触材料の特性とは別に要求に応じて決定され、十分な大きな力である、安静位における表面の弾性的な戻り力により、完全な吸着が提供されること、および、伸縮長さが可撓性材料よりも大きいことからも、完全な吸着が提供されることである。
【0030】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、付着接触面とプレート表面との間の分離抵抗を、付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる手段は、
− ガラス板または半導体板(ウエハ)等を支持することが可能な剛性支持部を備え、この支持部表面の一端部寄りの一方の表面に、可撓性材料が取り付けられ、この可撓性材料がベースを形成し、ベースの一方の端部は付着接触面を構成し、反対側の他端部は剛性支持部と連結する環状の連結面を備えており、
− 可撓性材料は、変形可能な弾性の膜形状であり、
− 剛性支持部は、環状連結面に加圧流体を供給するラインを備え、
− ラインに加圧流体を供給する手段は、少なくとも2つの異なるポジションを、変形可能膜に付与し、
− 第1のいわゆる吸着ポジションは、変形可能膜に加圧流体の供給がない場合であり、このポジションにおいて、付着接触面とプレート表面との間の、接触面に平行な方向における分離抵抗は最大となり、
− 第2のいわゆる分離ポジションは、変形可能膜に加圧流体の供給がある場合であり、このポジションにおいて、付着接触面とプレート表面との間の、接触面に垂直な方向における分離抵抗は最小となる。
【0031】
この特徴によれば、単一の可撓性膜および加圧流体(たとえば、圧縮空気)の供給により、(接触面の接線分力に応じて定まる)せん断力による優れた吸着、および接触面に垂直な方向における優れた吸着を得ることができる一方、プレートの分離も容易に行うことが可能となる。実際、流体を注入して単純に可撓性膜を変形させるだけで、可撓性膜は、付着接触面の面積を減少させ、その結果、プレートを付着接触面から分離するために要する力も減少する。さらに、吸着の分離を容易にするための膜の変形は、同時に、プレートを少し動かすことにもなり、これにより、この小さな動作に対応するロボット(本発明による接触装置を備えたアームでプレートを把持する)の動作を代替できる。可撓性膜の変形により生じるこうした小さな動作は、たとえば、膜の片面への流体注入を制御することにより、制御可能である。
【0032】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、可撓性材料で作られた付着接触面は、ファイバーまたはラミネートの微細構造を含み、吸着力を増加させる。
【0033】
このような仕様の接触面は、ファンデルワールス力の強度を高め、吸着力を向上させる。この公知の技術は、滑らかな垂直面上を、留まったり動いたりすることが可能な動物であるヤモリの吸着力の分析に基づく。さらに、このような仕様の接触面は、ガラス板または半導体板(ウエハ)等が接触により汚染される危険を軽減することができ、また、その表面上への塵の蓄積も軽減する。
【0034】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、付着接触面は、多孔性または微細孔性材料からなり、これにより、ガス状流体が付着接触面を通過することを可能にする。
【0035】
この特徴によれば、ガス状流体は、可撓性材料(少なくともその付着接触面)を通過することができ、可撓性材料を通して流体吸引を行い、可撓性材料と半導体板(ウエハ)の接触領域に存在しうる汚染粒子を吸引することが可能である。なお吸引は、可撓性材料とプレートの接触前に行うことが好ましい。このように、本発明の付着接触装置によれば、ガラス板または半導体板が汚染される危険性を軽減することができる。
【0036】
また、本発明は、ガラス板または半導体板(ウエハ)等を把持するためのシステムに係り、該システムは、
− ガラス板または半導体板(ウエハ)等を把持するための複数の運動自由度を有する剛性アームと、
− この把持アームと連結された、ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレート表面に付着接触する、上記に記載したいずれかの特徴を備える本発明に係る少なくとも3つの装置と、を備える。
【0037】
この特徴によれば、半導体板を動かす公知のロボットシステムを用いて、たとえば、空間自由度6の把持アームを備えたロボットシステムに、前述した本発明の接触装置を少なくとも3つ連結することにより、少なくともプレートを平衡に保持できる。また、このような本発明のシステムに、プレート平面に垂直な軸の回りを、プレートが回転するための手段を備えた把持アームを含めることも可能である。この場合、プレートとシステムの接合は、本発明の接触装置により提供される。
【0038】
ガラス板または半導体板(ウエハ)等と付着接触する本発明の装置、および、ガラス板または半導体板(ウエハ)等を把持する本発明のシステムは、以下に記載するいくつかの実施例、および添付図面により、その他の特徴および利点も含めて、より明確に理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレート(3)の表面(2)に付着接触する装置は、
− 前記表面(2)に吸着により付着する付着接触面(5)を備えた可撓性材料(4)を含むベース(10)と、
− 可撓性材料(4)からなる付着接触面(5)とプレート(3)の表面(2)間の分離抵抗を、付着接触面(5)に垂直な方向(7)および平行な方向(8)において、異ならせる手段(6)とを備え、
ここで、前記手段(6)は、可撓性材料(4)に固定された剛性材料(9)を含み、剛性材料(9)と可撓性材料(4)とで均一もしくは実質的に均一な厚さのベース(10)を形成し、可撓性材料(4)の厚みを、ベース(10)の全幅(L)において、もしくは少なくともその一部において異ならせている。
【0040】
ベース(10)は、たとえば、均一な厚みの直円柱形状であり、ここで可撓性材料(4)の厚みは、ベースの幅全体にわたって、あるいは少なくともベースの一部において、漸次的かつ連続的に増加する。剛性材料(9)は、概ねウェッジ形状、たとえばバイアス端部(11)を有する円柱形であり、このバイアス端部(11)において、相補的な形状をした可撓性材料(4)は剛性材料(9)と連結し、均一な厚みの直円柱形状のベース(10)を構成する。
【0041】
剛性材料(9)としては、半導体板との適合性・親和性を考慮し、シリコン、シリコン酸化物、ステンレススチール、またはアルミニウムを使用する。可撓性、好ましくは高可撓性材料(4)としては、ポリウレタン、またはPDMS(ポリジメチルシロキサン)シリコーンのようなシリコーンタイプのポリマーを使用する。可撓性/高可撓性材料と剛性材料との連結は、吸着、接合など、公知の技術を用いて行う。
【0042】
図1に示す実施例において、剛性材料(9)は、プレート(3)の表面(2)と接触しないことが好ましい。このため、図1における、剛性材料(9)の最も高い部分の上、すなわち最もプレートに近接する部分の上に、比較的薄い可撓性材料(4)を配するようにする。
【0043】
このように形成されるベース(10)の2つの端面、すなわち、プレート(3)と接触する面(5)と支持部(12)に連結する面(13)は、平行であることが好ましい。これにより、プレートを把持および/または空間を移動させるためのロボットアーム等の支持部(12)に対して、ベース(10)を、プレート(3)の平面と平行に結合固定することが可能となる。プレート(3)は、一般的に、ディスクまたはプレート形状の、外縁(14)が円形のシリコン板であるが、これに限定はされない。
【0044】
このように、図1に示す実施例において、付着接触面(5)の面積は、ベースの横断面に等しいが、可撓性材料の厚さは、ベース(10)の幅(円形の断面を有するベースの場合は、直径に相当する)の一方側から他方側へと漸次的に厚くなる。このため、プレート(3)に垂直な方向(7)におけるベース(10)の伸縮性は、可撓性材料(4)に基づいて、その直径の一端側から他端側へと徐々に増加する。なぜなら、剛性材料(9)の伸縮性は、可撓性材料(4)の伸縮性と比較すると些少であるからである。従って、プレート表面(2)から付着接触面(5)を分離する力を、垂直方向(7)にかけた場合、まず、伸縮性の最も少ない部分が分離する。すなわち、最初に分離する領域を小さな範囲にまで減少させることができる。その後、分離力を維持して、可撓性材料(4)の厚さが最大である範囲まで分離を漸次的に進行させる。このように、分離は漸次的に完了するので、接触面全体を同時に分離する場合と比べて、より小さな力しか必要としない。
【0045】
手段(6)は、ベース(10)に、付着接触面(5)に対して垂直方向(7)の剛性または伸縮性を付与し、これをベース全幅にわたって異ならせている。これにより、この方向における付着接触面(5)とプレート(3)の分離は、漸次的に遂行され、容易になる。
【0046】
このように、本発明によれば、ベース全幅、もしくは少なくともその一部において、伸縮性を異ならせることにより、付着接触面(5)とプレート(3)の表面(2)との間の垂直方向(7)への分離抵抗を、付着接触面(5)とプレート(3)間の平行方向への分離抵抗と異ならせることが可能となるが、前者を後者よりも低くすることが好ましい。
【0047】
図2は、図1の代替例であり、機能的に同一の要素には、図1と同じ符号を付している。図2の装置は、以下の点で、図1の装置と異なる。すなわち、可撓性材料(4)は、円柱形または角柱形であり、たとえば、平行して対向する2つの面(5、13)を備え、剛性材料(9)は、円錐形または角錐形で、可撓性材料(4)の中に組み込まれ、剛性材料(9)の底面は、支持部(12)への連結面(13)の一部をなし、連結面(13)の残りの部分は、可撓性材料(4)で構成される。可撓性材料(4)と剛性材料(9)の回転(対称)軸は、たとえば図2に示すように、垂直方向(7)において一線に重なる。この場合、付着接触面(5)の分離は、ベース(10)の中央、すなわち円錐形ないしは角錐形の剛性材料(9)の頂点を通る垂直線上の部分から始まり、その後、漸次的に外縁部へと、半径方向に広がっていく。
【0048】
図3は、図2の代替例であり、機能的に同一の要素には、図2と同じ符号を付している。図3の装置は、以下の点で、図2の装置と異なる。すなわち、可撓性材料(4)は、たとえば円形の底面を有する円錐形または角柱形であり、その底面は付着接触面(5)を構成し、剛性材料(9)は、凹みのある形状で、一方の端部は、可撓性材料(4)の形状と相補的な例えば円錐形状の凹みを形成し、この凹みに可撓性材料(4)を収容するようになっており、もう一方の端部は、支持部(12)との連結面(13)を構成する。可撓性材料(4)と剛性材料(9)の回転(対称)軸は、必要に応じて、たとえば図3に示すように、垂直方向(7)において一線に重なる。この場合、図2の実施例とは反対に、付着接触面(5)の分離は、まずベース(10)外縁の、可撓性材料の厚みが最も薄い部分から始まり、その後、漸次的にベース(10)の中央、すなわち可撓性円錐部の頂点を通る垂直線上の部分へと、半径方向に広がっていく。付着接触面(5)と連結面(13)は、平行であることが好ましく、可撓性材料(4)は、吸着、接合といった公知の技術を用いて、剛性材料(9)と連結される。
【0049】
図4は、図1の代替例であり、機能的に同一の要素には、図1と同じ符号を付している。図4の装置は、以下の点で、図1の装置と異なる。本例の装置は、剛性支持部(12)に取り付けられた可撓性プレート(15)を含んでおり、その一端部(17)側の表面(16)に、可撓性材料(4)が取り付けられ、ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレート(3)を支持するようになっている。ベース(10)は、可撓性材料(4)で形成されており、その一方の端部は、付着接触面(5)を構成し、これに対向するもう一方の端部は、可撓性プレート(15)と連結する連結面(18)を構成する。図に示されるように、装置は、可撓性プレート(15)のもう一方の面(13)で剛性支持部(12)に取り付けられる。この例において、ベース(10)は、可撓性材料だけで構成されており、対向する二面(5、18)は、たとえば平行である。ベース(10)の幅方向にわたって剛性を異ならせる効果は、プレート(15)の可撓性によって得られる。このプレート(15)の一端部には、ベース(10)が取り付けられ、もう一方の端部には、支持部(12)が取り付けられている。プレート(15)の可撓性、およびこれに起因する曲げ変形は、支持部(12)がプレート(3)の表面(2)および弾性プレート(15)の平面に対して垂直方向に移動する場合に、装置に以下のような剛性を与える。すなわち、ベース(10)の一端が位置し、支持部(12)とプレート(15)との連結部に最も近接する側のゾーンにおける剛性は、ベース(10)の反対側の端部が位置するプレート(15)の端部ゾーンにおける剛性よりも大きくなる。これにより得られる効果は、図1〜図3の実施例と同様であるが、第4の実施例の場合、プレート(15)の弾力性により、支持部(12)に対するプレート(3)の相対的な弾性運動が、図1〜図3の実施例におけるよりも大きく許容されるという効果があり、同時に、その運動中においても、良好な吸着が提供される。こうした弾力性は、たとえば、プレートが移動する際に、付着接触面(5)に垂直にかかる慣性力を相殺するために利用される。
【0050】
図5の装置は、本発明のもう1つの実施例を示しており、機能的に同一の要素には、図1と同じ符号を付している。
【0051】
図5に示す装置は、可撓性材料(4)からなるベース(10)を備え、ベース(10)は、一定もしくは実質的に一定の厚さを有している。手段(6)は、可撓性材料の横断面の少なくとも一部を、異なる高さで伸長する2つの対向する横断スロット(26、27)を有し、このため、図5に示すように、ベースはZ型構造となっている。ベース(10)は、たとえば、平面的で平行な上面(5)と下面(13)を備えた直円柱形で、2つのスロット(26、27)により、ベース(10)は、高さ方向に分割され、実質的に等しい厚さを有する3つの積層部(21、22、23)から構成される。ここで、2つの連続する部分は、図5に示すように、可撓性材料のスロットの入っていない断面で相互に接続されている。ベース(10)の一方の上縁部(24)(すなわち接触面(5)の一縁部)の伸縮性は、直径方向に対向する他方の上縁部(25)の伸縮性よりも低いため、接触面(5)に垂直方向(7)の分離力が掛けられた場合に、分離がまず上縁部(24)で起こり、その後、漸次的に接触面(5)全体に広がり、ベース(10)が最大限に伸長した状態において、支持部(12)から最も遠い位置となっている上縁部(25)へと至るという剥離効果が得られる。ベース(10)が最大限に伸長した状態(図示せず)において、接触面(5)の支持部(12)からの分離は、まず上縁部(24)から始まり、直径的に対向する上縁部(25)へと、連続的かつ規則的に進行することになる。
【0052】
図6は、図5の代替例であり、機能的に図5と同一の要素には、図5と同じ符号を付している。ただし、図6の装置は、以下の点で、図5の装置と異なる。図6の実施例において、ベース(10)は、可撓性材料の断面の少なくとも一部を伸長する単一の横断スロット(26)を有し、U型構造となっている。得られる効果は、図5の装置と同じであるが、ベース(10)の伸縮性は、図6の装置の方が低い。
【0053】
図5および6と同様の発想により、ベース(10)を、たとえばディスク状の可撓性材料の層により形成することも可能である。この場合、らせん状の横断スロット(図示せず)を形成して、らせん状の可撓性材料層を得る。そして、このらせん状の可撓性材料層の中心(らせんの内端)を、たとえば前述した剛性支持部(12)のような支持体に取り付ける。従って、ベースがプレート(ウエハ)から分離する際、最初にらせん層の中心が分離し、続いて残りの部分が漸次的に分離する。これは、プレート上にらせん状に巻かれたコードが、「剥離」効果により、徐々にプレートから分離していき、最終的に反対側のフリーな末端が分離するのと同様である。分離が完了すれば、可撓性材料の弾力性により、ベースは最初のらせん形状となって剛性支持部上に戻る。
【0054】
図7のA〜Dの装置は、本発明のもう1つの実施例を示しており、機能的に図1と同一の要素には、同じ符号を付している。
【0055】
図7の装置において、付着接触面(5)とプレート(3)表面(2)の間の分離抵抗を、付着接触面(5)に対して、垂直方向および平行方向において異ならせる手段は、
− ガラス板または半導体板(ウエハ)等(3)を支持することが可能な剛性支持部(12)と、剛性支持部(12)の一方の表面(31)の一端(32)側に取り付けられた可撓性材料(4)とを備え、可撓性材料(4)はベース(10)を形成し、ベース(10)は、一端側に付着接触面(5)を備え、他端側に前記剛性支持部(12)に接合される環状面(13)を備えており、
− 可撓性材料(4)は、変形可能な弾性の膜形状を有しており、
− 剛性支持部(12)は、環状接合面(13)に加圧流体を供給するライン(35)を備え、
− ライン(35)に前記加圧流体を供給する手段(図示せず)は、図7のAおよびB、またはCおよぼDに、それぞれ示されるような、少なくとも2つの異なるポジションを、変形可能膜(4)に付与し、
− 第1のいわゆる吸着ポジション(図7のAまたはC)は、変形可能膜(4)に前記加圧流体の供給がない場合、あるいは、ライン(35)を通じて変形可能膜(4)の吸引、すなわち減圧がなされる場合であり、このポジションにおいて、付着接触面(5)とプレート(3)の表面(2)間の、接触面(5)の平行方向における分離抵抗は最大となり、
− 第2のいわゆる分離ポジション(図7のBまたはD)は、変形可能膜(4)に前記加圧流体の供給がある場合であり、このポジションにおいて、付着接触面(5)とプレート(3)の表面(2)間の、接触面(5)の垂直方向における分離抵抗は最小となる。
【0056】
変形可能膜(4)は、たとえばディスク形状であり、その接合面(13)の周囲は、公知の吸着ないしは接合手段により、加圧流体を通さないように、剛性支持部(12)に結合され、接合面の中央部はフリーになっており、図7Bまたは7Dに示されるように、加圧流体が供給される。ライン(35)から導入される加圧流体は、図7Bまたは7Dに示されるように、変形可能弾性膜を、ドーム型になるまで膨張させ、これによりプレート(3)と付着接触面(5)との接触を制限する。膜および圧力は、可撓性材料(4)の弾性域において、適正な変形を得ることができ、ドーム形成が可能となるよう選択される。ここで、適正な変形とは、プレート(3)とベース(10)が接触状態にある場合に、付着接触面(5)の漸次的な分離を可能とする変形を意味する。すなわち、伸縮性の最も低い、支持部(12)に結合された膜(4)の周縁部から分離を開始させ、これを漸次的に進行させる変形である。加圧流体がライン(35)を通じて送り込まれた場合に、支持部(12)から最も遠位となる、ディスク状膜の中心部において、伸縮性が最大となる。
【0057】
すなわち、
− ライン(35)から加圧流体の導入がない場合、ディスク(4)は剛性支持部(12)に対して扁平であり、ディスク(4)の上側表面(5)全体がプレート(3)と接触し、この状態において、吸着力は(8)の方向においても、(7)の方向においても最大であり、
− ライン(35)から加圧流体が送り込まれると、付着接触面(5)は漸次的に分離を開始し、これにより、プレート(3)から付着接触面(5)を分離するために必要な力を低減させることが可能となる。
【0058】
本発明の装置の第7の実施例においては、流体が最大圧力で送り込まれた場合でも、接触部の中央がドームの頂点で維持され、接触部の表面を、注入する加圧流体の圧力値によって制御可能である。これにより、(7)の方向および(8)の方向に対する最小限の吸着力が提供されるので、たとえば、プレートを支持しているアーム(12)を小さく動かすことが可能となる。
【0059】
さらに、本発明の装置の第7の実施例においては、膜の膨張によりプレートを動かすことが可能となるため、プレートを支持している支持部(12)を(7)の方向に動かす代わりに、このような膨張による小さな動きを利用できる。
【0060】
図7の装置は、たとえば以下のように機能する。
【0061】
− プレート(3)を静的に支えるために配置された、たとえば3つのベース(ここに加圧流体が供給される)を備える支持部(12)は、ベース(10)に流体を全く注入しない状態で、把持し動かすべきプレート(3)の裏面(2)に接近し、
− プレートと接触する前に、必要に応じて、プレートの周囲圧力よりも大きい所定の圧力で、流体をベースに注入し、各ベースをドーム型にして、接触緩衝機能を与え、
− 接触面が小さな状態で、プレートがベースに把持され、大きな吸着力を必要としないプレートの小さな動きが可能となり、
− プレートがベース(10)上の所定位置に配されたところで、ベースの下から圧力を取り除き、膜がその弾性により最初の接合形状に戻り、接触面が増大し、よって接合力も増加し、支持部(12)の高度な加速や急速な動きに対応可能となり、
− プレートをベース(10)、すなわち支持部(12)から分離する場合には、再び加圧流体をライン(35)に注入して、膜(4)の変形により漸次的に付着接触面(5)を分離させるので、付着接触面の最小限の減少によって、支持部(12)に対して(7)の方向に最低限の力をかけるだけで、分離が完全に行われる。
【0062】
膜と支持部(12)との連結部分を環形状とし、膜を形成する材料が弾力性を有するので、ライン(35)に加圧流体の供給がない状態で、膜は、ディスク中央部において、支持部(12)と連結したディスク周縁部におけるよりも、高い伸縮性を有することになる。このように、加圧流体の供給がない場合でも、膜の取付け形状により、付着接触面の垂直方向におけるベースの剛性または伸縮性を、ベースの幅方向において異ならせることができる。加圧流体の供給により、プレートとの接触面を案内したり、制御することが可能となる。
【0063】
図1〜16に示される可撓性材料(4)として、多孔性または微細孔性のものを使用することもでき、この場合、ガス状流体が付着接触面(5)を通過できるようになり、汚染粒子を吸引することが可能となる。特に、可撓性材料(4)と接触する前に、プレートの付着接触面(5)から汚染粒子を取り除く目的で、吸引を行うことが有益である。この目的のために使用する吸引装置は、図7のA〜Dにおいて言及したものと同様であり、この装置は、本明細書に図示される本発明のすべての実施態様において、適用可能である。ここで、重要な特徴は、付着接触面(5)が、その全面において微細孔性であって、プレートと接触するその全面に、吸引作用を付与していることであり、付着接触面(5)の周辺領域にも吸引作用を付与することがさらに有益である。可撓性材料(4)からの流体吸引は、たとえば、接触前に、汚染粒子の吸引に十分なある一定の時間だけ行い、その後、たとえば接触後または接触中にストップする。多孔性または微細孔性の可撓性材料は、公知のいかなる技術を用いて得てもよく、たとえば、本来的に多孔性または微細孔性の可撓性材料を用いたり、可撓性材料にレーザー処理を施したり、あるいは、その成形過程において多孔性または微細孔性とするなど、様々な方法を用いることが可能である。多孔性または微細孔性の可撓性材料は、前述したポリマーであってもよく、また、後述するシリコンであってもよい。
【0064】
図8は、ベース(10)を形成する可撓性材料(4)上の所定位置にある(あるいは可撓性材料によって作られる)付着接触面(5)の改良例であり、ここでは、図4の可撓性プレート(15)にベースを取り付けた例を示しているが、図1〜7に示す全て実施例に応用可能である。この改良型付着接触面(5)は、ファイバーまたはラミネートの微細構造(40)を備えることで、吸着力を増加させている。
【0065】
微細構造(40)は、表面に微細ラメラまたは微細ピンを備え、これにより、接触面(5)がプレート(3)の表面(2)に吸着する際に作用するファンデルワールス力の強度を高めている。微細ピンの直径は、0.1μm〜数10μmである。微細ラメラの厚みも同様である。微細ラメラまたは微細ピンの高さは、1〜200μmである。このような形状は、公知のいかなる方法を用いて得てもよく、たとえば、リソグラフィー法やナノインプリント法を用いる。微細構造(40)を構成する材料としては、たとえば、シリコン(半導体板との接触に相性がよい)のように本来的に硬質な物質を使用することができ、可撓性材料(4)の全面もしくは一部に、重合してもよいし、貼り付けてもよい。これにより、ベース(10)の吸着性が向上する。可撓性材料(4)は、モノマーまたはポリマータイプのものでよく、PU(ポリウレタン)やPMMA(ポリメタクリル酸メチル)のような有機タイプのもの、あるいは、PDMS(ポリジメチルシロキサン)シリコーンは、本件に使用される半導体板の材料と相性がよい。また、代替的に、ベースを構成する可撓性材料で、ベース表面に微細構造(40)を形成することも可能である。
【0066】
図9は、均一な厚みの層として具体化した本来的な可撓性材料(4)を、厚さ方向で示す断面である。図10および11は、その代替例であり、図9の本体的な可撓性材料(4)の層に、シリコンタイプなどの本来的に硬質な材料を重合し、前述したような微細構造を形成させて、この硬質材料に、半導体板またはウエハと接触するための可撓性を付与している。微細構造(40)を形成する本来的な硬質材料は、多数の分離したパーツで構成され、それぞれのパーツが小さな表面を形成し、隣り合う2つのパーツ同士は不連続に配置される。この不連続性により、ユニットとして構成された可撓性材料に、十分な伸縮性が確保される。これは、特に、図7のA〜Dに示す第7の実施例のように、たとえば、使用する可撓性材料を変形させる必要が生じる場合を考慮したものである。一般的には、硬質材料で作られた微細構造は、十分な伸縮性を備えていないため、第7の実施例を示す図7のAからBへの変形のような、たとえば平面型からドーム型へと著しく変形する可撓性材料(4)の伸縮性に追従することは不能であるが、微細構造(40)が本来的に硬質な材料で形成されていても、その配置により、全体として、かなりの可撓性を示すことになる。
【0067】
図12〜16は、本発明の接触装置の代替例であり、剛性支持部(12)上に設置され、ガラス板または半導体板(ウエハ)等と接触するための可撓性材料(4)を備えてる。これらの実施例は、可撓性材料(4)の付着接触面(5)と、この接触面(5)と接触するプレート(3)の表面の一部との間の平行度を改善するものである。実際、時として、平行度不良は、吸着力を減少させ、および/または、微細構造(40)を有する場合は、その早期の摩滅を誘発する。以下に示す実施例においては、前述のような微細構造(40)を必ずしも用いる必要はなく、微細構造が用いられない場合においても、吸着力が改善されることになる。
【0068】
図12において、可撓性材料(4)は、本来的に可撓性な材料のブロック(4)であり、カーブ形状または凸形状の付着接触面(5)を備えるが、この付着接触面は、微細構造を備える場合も、備えない場合もある。ここでは、ベース(10)の幅方向において異なる可撓性材料(4)の高さによって、付着接触面(5)の垂直方向におけるベースの伸縮性を、ベースの幅方向において異ならせている。
【0069】
図13において、可撓性材料(4)は、図に示すように、回り継ぎ手(50)を介して剛性支持部(12)に取り付けられている。回り継ぎ手の雌部は、可撓性材料で作り、雄部は、剛性材料で作ることが好ましい。接触面は、本実施例が示すように凸形状でもよいし、平面であってもよい。付着接触面(5)は、剛性支持部(12)に対して、2または3の回転自由度を有する。ここでは、本質的に、可撓性材料の回転(可撓性材料の傾斜角度に応じて、可撓性材料と剛性支持部との距離を異ならせる)によって、付着接触面(5)の垂直方向におけるベースの伸縮性を、ベースの幅方向において異ならせている。
【0070】
図14において、可撓性材料(4)は、可撓性膜(55)を介して剛性支持部(12)に取り付けられており、膜(55)の可撓性に応じて、可撓性材料(4)の付着接触面(5)も、剛性支持部(12)に対してある程度動くようになっている。可撓性膜(55)は、ポリマーで作ると有益であり、特にポリウレタンが好ましい。可撓性膜(55)は、可撓性膜と剛性支持部との間に間隔ができるよう、たとえば剛性ピン(58)を介して剛性支持部(12)に固定してもよいし、その他の手段を用いてもよい。すなわち、剛性支持部(12)に対して垂直方向の動きを可撓性膜(55)に付与する手段、あるいは、上述の「間隔」を確立できるような手段、例えば、合成支持部に形成された孔など、いかなる手段も用いうる。剛性材料(9)は、付着接触面(5)を備えるが、この付着接触面は、微細構造を備える場合も、備えない場合もある。この場合、本質的に、可撓性膜(55)の可逆的に変形性により、付着接触面(5)の垂直方向におけるベースの伸縮性を、ベースの幅方向において異ならせている。
【0071】
図15において、可撓性材料(4)は、たとえばポリマーで作られた、可撓性密閉ケーシング(57)で構成され、剛性支持部(12)に固定されている。この可撓性ケーシング(57)の内部には、ゲルなどの流体(56)が封入されている。内部流体(56)およびケーシング(57)の可撓性により、付着接触面(5)が可逆的に変形可能となり、特に、図示のようにプレート(3)の表面に折れが存在したり、その表面が粗い場合でも、プレート(3)との良好な接触がなされる。可撓性ケーシング(57)は、微細構造(40)を備えた付着接触面(5)を有することが好ましい。ここでは、本質的に、可撓性ケーシング(57)および内部ゲル(56)の可逆的な変形性によって、付着接触面(5)に垂直な方向におけるベースの伸縮性を、ベースの幅方向において異ならせている。
【0072】
図16のAおよびBにおいて、可撓性材料(4)は、たとえばポリマーで作られた、バッグ(59)を形成する可撓性密閉ケーシングで構成される。このバッグ(59)の内部には、気体(たとえば空気)、液体またはゲルなどの流体(60)が封入されている。バッグ(59)の下部は、図16Aに示されるように、好ましくは剛性の中央ポッド(61)を介して、剛性支持部(12)に固定されている。バッグ(59)は、図16Bに示すように、プレート(3)等の重みで変形することが好ましく、これにより、より大きな接触面を提供することが可能となり、また、微細構造を備える場合は、負荷の分配が可能となる。ここでは、本質的に、バッグ(59)および内部の流体(60)の可逆的な変形性によって、付着接触面(5)に垂直な方向におけるベースの伸縮性を、ベースの幅方向において異ならせている。
【0073】
また、本発明は、ガラス板または半導体板(ウエハ)(3)等を把持するためのシステムに係り、該システムは、
− ガラス板または半導体板(ウエハ)等を把持するための、複数の自由度を有する剛性アーム(12)と、
− この把持アーム(12)と連結され、ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレートの表面に付着接触する、図1〜図16に示すいずれかの実施例による、少なくとも3つの装置と、を備える。
【0074】
ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレートを把持するための剛性アーム(12)は、公知のいずれのタイプであってもよい。たとえば、実質的に平坦な表面上に、本発明による装置が3つ、プレートの静的平衡、およびプレートがアームとともに動く場合には動的平衡が確保されるように配置されている、いずれのタイプの平面プレート状のエレメントを採用できる。プレート状エレメントは、ロボットに連結され、必要に応じて、適切な自由度(たとえば、自由度6)が付与される。プレート状エレメントをロボットで動かしてプレート表面に接近させ、次に、プレート状エレメントの表面を、接触装置のそれぞれのベース接触面がプレートに吸着するよう動かして、プレートを把持し、その後、プレート状エレメントの自由度により、プレートを搬送する。本発明の装置によれば、プレートに対して重力のかかる方向であっても、ベースの接触面に平行な方向におけるプレートの急速な動作および高度な加速が可能である。また、本発明の実施例によれば、本発明の装置は、付着接触面に対して垂直方向においても、たとえば、図7に示した例のように、最大限の吸着力を付与することが可能である。その他の実施例もまた、この垂直方向において、優れた吸着力を提供し、どの例においても、要求に応える適切な吸着力を提供することが可能である。たとえば、アームが加速される間、その最大加速度に対応させて、接触面を大きくすることにより、適切な乾式吸着抵抗を得ることができる。図8に示した改良型の接触面も、この要求に応えることができる。
【0075】
単一の剛性アーム上に配される装置は、その位置および配置等に応じて、同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の接触装置の第1の実施態様を示す断面図である。
【図2】本発明の接触装置の第2の実施態様を示す断面図である。
【図3】本発明の接触装置の第3の実施態様を示す断面図である。
【図4】本発明の接触装置の第4の実施態様を示す断面図である。
【図5】本発明の接触装置の第5の実施態様を示す断面図である。
【図6】本発明の接触装置の第6の実施態様を示す断面図である。
【図7】本発明の接触装置の第7の実施態様を、様々な位置(A〜D)において示す断面図である。
【図8】本発明の接触装置の第8の実施態様を示す断面図である。
【図9】可撓性材料の実施態様の1つを示す断面図である。
【図10】可撓性材料の別の実施態様を示す断面図である。
【図11】図10の実施態様について、別の作動位置において示す断面図である。
【図12】本発明の接触装置の第9の実施形態を示す断面図である。
【図13】本発明の接触装置の第10の実施形態を示す断面図である。
【図14】本発明の接触装置の第11の実施形態を示す断面図である。
【図15】本発明の接触装置の第12の実施形態を示す断面図である。
【図16】本発明の接触装置の第13の実施形態を、2つの異なる作動位置(AおよびB)において示す断面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレートを把持し、操作する分野に関し、具体的には、これらのプレートを製造する工程、特に、これらのプレートを把持および/または搬送するロボットの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な把持技術を用いて、ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレートを把持するロボットが開発されている。
【0003】
具体的には、真空生成システムをプレートの裏面に係合させて、吸引力によりプレートを保持する技術が知られている。
【0004】
また、重力により、プレート端部に係合する方法も知られている。
【0005】
さらに、プレート端部に圧力をかける可動フィンガーと固定ベアリング間で、プレート端部を強制的に把持するシステムも知られている。
【0006】
これらのシステムは、完ぺきに機能してはいるものの、いくつかの欠点がある。最も重大な問題は、プレートの汚染である。
【0007】
たとえば、ポリマーのような柔軟性材料で作られたパッド上に、プレートの裏面を接触、支持、吸着することによりにより、プレートを把持するシステムも存在する。これは、ファンデルワールス力により得られる乾式吸着による完全な弾性結合を利用して、プレートを把持するものであり、汚染の危険性を大幅に軽減する。しかし、この技術は、プレートを把持した後、保持アームからプレートを外すためのパッドの引き離しが困難であるという欠点を有する。
【特許文献1】特開平10−294348号公報
【特許文献2】国際公開WO03/049157号公報
【特許文献3】米国出願公開2004/246459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、これらの不都合を解消し、さらなる利便性を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
より具体的には、本発明は、ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレート表面への付着接触装置に係り、該装置は、
− 付着接触面を備え、前記プレート表面に吸着により付着する可撓性材料を含むベースと、
− 前記可撓性材料の前記付着接触面と前記プレート表面との間の分離抵抗を、該付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる手段と、を備える。
【0010】
出願人の考察によれば、ロボットアームによってプレートを把持し動かす場合のプレートの主要な動きまたは加速は、ロボットとプレートとの間の接触面に、かなりのバイアスを生じさせるものであり、かつ、本質的にプレートの平面に対して平行である。このため、プレートを動かして解放するまでの間、せん断力により、可撓性材料がこの平面内において良好に吸着していることが要求される。一方、分離はプレート平面に垂直な方向において発生する。従って、分離作業を容易にするためには、垂直方向における吸着力を小さくする必要がある。このような観察および分析に基づき、出願人は次のような知見を得た。すなわち、可撓性材料で作られた、単一で厚みのある接触パッドを改良して、所定の方向において変化する吸着性を付与するということである。可撓性材料の付着接触面とプレート表面との間の分離抵抗を、付着接触面に対して垂直な方向および平行方向(すなわち接線方向)において、異ならせる手段により、可撓性材料と平面とは完全吸着(この吸着は、接触材の可撓性のおかげで、弾性である)で付着しつつも、プレートを可撓性材料から解放する場合の困難を回避するという特性が、可撓性材料に与えられる。このように、分離抵抗(力で表される)は、所定の同一接触面について、垂直方向および平行方向に従って、異なった数値を有する。なお、本発明において、「可撓性材料」とは、たとえば可撓性ポリマーのような、本来的に可撓性を具備するあらゆる材料、もしくは、半導体やスチール材のように、その形状により可撓性を付与できるあらゆる物質、を意味する。後者の場合、たとえば非常に薄い層に形成することにより、可撓性を得ることができるが、その表面にファイバーまたはラミネートなどの微細構造を備えるようにしてもよい。
【0011】
本発明の装置における有利な特徴の1つによれば、可撓性材料の付着接触面とプレート表面との間の分離抵抗を、付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる手段は、
− 付着接触面に垂直な方向における剛性または伸縮性を、幅方向において異ならせて、ベースに付与する手段を備える。
【0012】
この特徴により、吸着している付着面を漸次的に分離させることが可能となる。このような分離は、接触面のごく小さな部分で始まるため、ほとんど力を必要とせず、その後、同様にあまり力を必要とせずに、分離が漸次的に表面全体に広がっていく。これは、接触面を垂直方向に分離させるようとする力の効果によるものであり、この効果は接触面の分離が続いている間中ずっと維持される。
【0013】
本発明の装置における有利な特徴の1つによれば、付着接触面とプレート表面との間の垂直方向における分離抵抗は、付着接触面とプレート表面との間の平行方向における分離抵抗よりも小さい。
【0014】
本発明の特徴は、1つの方向、すなわち、付着接触面に対して垂直方向に優先的に備えられ、プレートと可撓性材料との分離を容易にしている。しかしながら、必要に応じて、他の方向、より具体的には、本発明の接触装置を用いたロボットによるプレートの運動方向および加速方向についても備えられるようにしてもよい。
【0015】
本発明の装置における有利な特徴の1つによれば、可撓性材料の付着接触面とプレート表面との間の分離抵抗を、この付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる手段は、
− 可撓性材料に固定された剛性材料を備え、剛性材料と可撓性材料とにより均一もしくは実質的に均一な厚さのベースが形成され、可撓性材料の厚みをベースの全幅あるいは少なくともその一部において異ならせるようにしている。
【0016】
ベースを剛性および可撓性の二材料構造とし、可撓性材料の厚みを、特にベースの幅方向において異ならせることにより、ベースの各部位において垂直方向の剛性を異ならせることが可能となる。可撓性材料とプレート表面の接触面間の分離は、最も剛性のある部位、すなわち、可撓性材料の厚みが最も小さく、従ってベースの伸縮性が最小である部位で開始される。このように、接触面の分離は漸次的に起こる。分離はまず、小さな部分で始まり、その後、漸次的に表面全体に広がる。従って、同時に全面を分離させようとする場合に必要とされる程の大きな力は要求されない。分離は、微少な力を発生させる「剥離(ピーリング)」効果によって、達成される。プレートに付着させる可撓性材料の表面積は、所定のせん断力の下、必要とされる表面の吸着抵抗により定められる。なお、このせん断力は、吸着結合がなされる最大の表面上の接線分力により定まる。また、接触面に垂直な方向の分離抵抗を決定する可撓性および剛性材料の配分は、吸着面に必要とされる垂直方向の吸着抵抗により決定される。
【0017】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、可撓性材料の厚さは、ベースの幅全体にわたって、あるいは少なくともベースの一部において、漸次的かつ連続的に増加する。
【0018】
この特徴により、ベース表面とプレートとの分離を、連続的かつ規則的に進行することが可能となる。
【0019】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、剛性材料は、端部がバイアス状の円柱形であり、このバイアス状の端部に、相補的な形状の可撓性材料が取り付けられ、全体で直円柱形のベースを構成する。
【0020】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、剛性材料は、円錐形状で、可撓性材料の中に組み込まれて一体化される。
【0021】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、剛性材料は、円錐形状の凹部を形成し、その凹部の中に、相補的な円錐形状をした可撓性材料が組み込まれて一体化される。
【0022】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、可撓性材料がベース全体を構成し、この場合、可撓性材料の付着接触面とプレート表面との間の分離抵抗を、付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる手段は、可撓性材料の断面の少なくとも一部に入れられた、1つ以上の横断スロットを備える。
【0023】
この特徴は、前述した二材料によるベース構造の代替例を示しており、ベースを構成する可撓性材料の幅方向において、伸縮性を変化させる。ベース表面は、断面にスリットが形成されていない部分(すなわち、ベースの中で最も伸縮性のない位置)からプレートと分離し始め、最終的には、この断面にスリットが入っていないゾーンから最も遠い位置(スロットにより分断された材料の部位の中で、最も引き伸ばすことができる位置)が分離する。
【0024】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、前記1つ以上の横断スロットは、可撓性材料の横断面の少なくとも一部を伸長し、ベースにU型構造を与えている。
【0025】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、ベースは、可撓性材料の横断面の少なくとも一部を、異なる高さで伸長する2つの対向する横断スロットを備え、可撓性のZ型構造を有する。
【0026】
このようなベース構造により、可撓性材料の接触面に対する垂直方向の結合に、ある程度の自由度をもたせることが可能となる。ここでは、プレートからの分離が開始する前に、可撓性Z型材料を広げることが可能となっており、ひとたびZ型を広げれば、プレートからの分離は、まず最も伸縮性の少ない部分、すなわち、Zの上のバーがZの横断バーと結合する位置で発生する。
【0027】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、ベースは、らせん状断面のスロットが形成されている可撓性材料の層からなる形状を有し、らせん状の可撓性材料層の中心を支持部に取り付けている。
【0028】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、可撓性材料の付着接触面とプレート表面との間の分離抵抗を、付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる手段は、
− ガラス板または半導体板(ウエハ)等を支持する剛性支持部に取り付けられた可撓性プレートを備える。この場合、支持部の一端部寄りの一方の表面に、可撓性材料が取り付けられる。この可撓性材料は、一方の端部が付着接触面を構成し、反対側の他方の端部が剛性支持部との接合面を構成する。
【0029】
この特徴により、スリットを入れた可撓性材料と同じ程度の「剥離」効果を、分離中に得ることが可能となる。本例においては、スロットと同様の機能が、たとえば、硬質材料からなる可撓性プレートの弾力的な運動により達成される。このような可撓性プレートによってもたらされる利点は、可撓性接触材料の特性とは別に要求に応じて決定され、十分な大きな力である、安静位における表面の弾性的な戻り力により、完全な吸着が提供されること、および、伸縮長さが可撓性材料よりも大きいことからも、完全な吸着が提供されることである。
【0030】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、付着接触面とプレート表面との間の分離抵抗を、付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる手段は、
− ガラス板または半導体板(ウエハ)等を支持することが可能な剛性支持部を備え、この支持部表面の一端部寄りの一方の表面に、可撓性材料が取り付けられ、この可撓性材料がベースを形成し、ベースの一方の端部は付着接触面を構成し、反対側の他端部は剛性支持部と連結する環状の連結面を備えており、
− 可撓性材料は、変形可能な弾性の膜形状であり、
− 剛性支持部は、環状連結面に加圧流体を供給するラインを備え、
− ラインに加圧流体を供給する手段は、少なくとも2つの異なるポジションを、変形可能膜に付与し、
− 第1のいわゆる吸着ポジションは、変形可能膜に加圧流体の供給がない場合であり、このポジションにおいて、付着接触面とプレート表面との間の、接触面に平行な方向における分離抵抗は最大となり、
− 第2のいわゆる分離ポジションは、変形可能膜に加圧流体の供給がある場合であり、このポジションにおいて、付着接触面とプレート表面との間の、接触面に垂直な方向における分離抵抗は最小となる。
【0031】
この特徴によれば、単一の可撓性膜および加圧流体(たとえば、圧縮空気)の供給により、(接触面の接線分力に応じて定まる)せん断力による優れた吸着、および接触面に垂直な方向における優れた吸着を得ることができる一方、プレートの分離も容易に行うことが可能となる。実際、流体を注入して単純に可撓性膜を変形させるだけで、可撓性膜は、付着接触面の面積を減少させ、その結果、プレートを付着接触面から分離するために要する力も減少する。さらに、吸着の分離を容易にするための膜の変形は、同時に、プレートを少し動かすことにもなり、これにより、この小さな動作に対応するロボット(本発明による接触装置を備えたアームでプレートを把持する)の動作を代替できる。可撓性膜の変形により生じるこうした小さな動作は、たとえば、膜の片面への流体注入を制御することにより、制御可能である。
【0032】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、可撓性材料で作られた付着接触面は、ファイバーまたはラミネートの微細構造を含み、吸着力を増加させる。
【0033】
このような仕様の接触面は、ファンデルワールス力の強度を高め、吸着力を向上させる。この公知の技術は、滑らかな垂直面上を、留まったり動いたりすることが可能な動物であるヤモリの吸着力の分析に基づく。さらに、このような仕様の接触面は、ガラス板または半導体板(ウエハ)等が接触により汚染される危険を軽減することができ、また、その表面上への塵の蓄積も軽減する。
【0034】
本発明の装置の有益な特徴の1つによれば、付着接触面は、多孔性または微細孔性材料からなり、これにより、ガス状流体が付着接触面を通過することを可能にする。
【0035】
この特徴によれば、ガス状流体は、可撓性材料(少なくともその付着接触面)を通過することができ、可撓性材料を通して流体吸引を行い、可撓性材料と半導体板(ウエハ)の接触領域に存在しうる汚染粒子を吸引することが可能である。なお吸引は、可撓性材料とプレートの接触前に行うことが好ましい。このように、本発明の付着接触装置によれば、ガラス板または半導体板が汚染される危険性を軽減することができる。
【0036】
また、本発明は、ガラス板または半導体板(ウエハ)等を把持するためのシステムに係り、該システムは、
− ガラス板または半導体板(ウエハ)等を把持するための複数の運動自由度を有する剛性アームと、
− この把持アームと連結された、ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレート表面に付着接触する、上記に記載したいずれかの特徴を備える本発明に係る少なくとも3つの装置と、を備える。
【0037】
この特徴によれば、半導体板を動かす公知のロボットシステムを用いて、たとえば、空間自由度6の把持アームを備えたロボットシステムに、前述した本発明の接触装置を少なくとも3つ連結することにより、少なくともプレートを平衡に保持できる。また、このような本発明のシステムに、プレート平面に垂直な軸の回りを、プレートが回転するための手段を備えた把持アームを含めることも可能である。この場合、プレートとシステムの接合は、本発明の接触装置により提供される。
【0038】
ガラス板または半導体板(ウエハ)等と付着接触する本発明の装置、および、ガラス板または半導体板(ウエハ)等を把持する本発明のシステムは、以下に記載するいくつかの実施例、および添付図面により、その他の特徴および利点も含めて、より明確に理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレート(3)の表面(2)に付着接触する装置は、
− 前記表面(2)に吸着により付着する付着接触面(5)を備えた可撓性材料(4)を含むベース(10)と、
− 可撓性材料(4)からなる付着接触面(5)とプレート(3)の表面(2)間の分離抵抗を、付着接触面(5)に垂直な方向(7)および平行な方向(8)において、異ならせる手段(6)とを備え、
ここで、前記手段(6)は、可撓性材料(4)に固定された剛性材料(9)を含み、剛性材料(9)と可撓性材料(4)とで均一もしくは実質的に均一な厚さのベース(10)を形成し、可撓性材料(4)の厚みを、ベース(10)の全幅(L)において、もしくは少なくともその一部において異ならせている。
【0040】
ベース(10)は、たとえば、均一な厚みの直円柱形状であり、ここで可撓性材料(4)の厚みは、ベースの幅全体にわたって、あるいは少なくともベースの一部において、漸次的かつ連続的に増加する。剛性材料(9)は、概ねウェッジ形状、たとえばバイアス端部(11)を有する円柱形であり、このバイアス端部(11)において、相補的な形状をした可撓性材料(4)は剛性材料(9)と連結し、均一な厚みの直円柱形状のベース(10)を構成する。
【0041】
剛性材料(9)としては、半導体板との適合性・親和性を考慮し、シリコン、シリコン酸化物、ステンレススチール、またはアルミニウムを使用する。可撓性、好ましくは高可撓性材料(4)としては、ポリウレタン、またはPDMS(ポリジメチルシロキサン)シリコーンのようなシリコーンタイプのポリマーを使用する。可撓性/高可撓性材料と剛性材料との連結は、吸着、接合など、公知の技術を用いて行う。
【0042】
図1に示す実施例において、剛性材料(9)は、プレート(3)の表面(2)と接触しないことが好ましい。このため、図1における、剛性材料(9)の最も高い部分の上、すなわち最もプレートに近接する部分の上に、比較的薄い可撓性材料(4)を配するようにする。
【0043】
このように形成されるベース(10)の2つの端面、すなわち、プレート(3)と接触する面(5)と支持部(12)に連結する面(13)は、平行であることが好ましい。これにより、プレートを把持および/または空間を移動させるためのロボットアーム等の支持部(12)に対して、ベース(10)を、プレート(3)の平面と平行に結合固定することが可能となる。プレート(3)は、一般的に、ディスクまたはプレート形状の、外縁(14)が円形のシリコン板であるが、これに限定はされない。
【0044】
このように、図1に示す実施例において、付着接触面(5)の面積は、ベースの横断面に等しいが、可撓性材料の厚さは、ベース(10)の幅(円形の断面を有するベースの場合は、直径に相当する)の一方側から他方側へと漸次的に厚くなる。このため、プレート(3)に垂直な方向(7)におけるベース(10)の伸縮性は、可撓性材料(4)に基づいて、その直径の一端側から他端側へと徐々に増加する。なぜなら、剛性材料(9)の伸縮性は、可撓性材料(4)の伸縮性と比較すると些少であるからである。従って、プレート表面(2)から付着接触面(5)を分離する力を、垂直方向(7)にかけた場合、まず、伸縮性の最も少ない部分が分離する。すなわち、最初に分離する領域を小さな範囲にまで減少させることができる。その後、分離力を維持して、可撓性材料(4)の厚さが最大である範囲まで分離を漸次的に進行させる。このように、分離は漸次的に完了するので、接触面全体を同時に分離する場合と比べて、より小さな力しか必要としない。
【0045】
手段(6)は、ベース(10)に、付着接触面(5)に対して垂直方向(7)の剛性または伸縮性を付与し、これをベース全幅にわたって異ならせている。これにより、この方向における付着接触面(5)とプレート(3)の分離は、漸次的に遂行され、容易になる。
【0046】
このように、本発明によれば、ベース全幅、もしくは少なくともその一部において、伸縮性を異ならせることにより、付着接触面(5)とプレート(3)の表面(2)との間の垂直方向(7)への分離抵抗を、付着接触面(5)とプレート(3)間の平行方向への分離抵抗と異ならせることが可能となるが、前者を後者よりも低くすることが好ましい。
【0047】
図2は、図1の代替例であり、機能的に同一の要素には、図1と同じ符号を付している。図2の装置は、以下の点で、図1の装置と異なる。すなわち、可撓性材料(4)は、円柱形または角柱形であり、たとえば、平行して対向する2つの面(5、13)を備え、剛性材料(9)は、円錐形または角錐形で、可撓性材料(4)の中に組み込まれ、剛性材料(9)の底面は、支持部(12)への連結面(13)の一部をなし、連結面(13)の残りの部分は、可撓性材料(4)で構成される。可撓性材料(4)と剛性材料(9)の回転(対称)軸は、たとえば図2に示すように、垂直方向(7)において一線に重なる。この場合、付着接触面(5)の分離は、ベース(10)の中央、すなわち円錐形ないしは角錐形の剛性材料(9)の頂点を通る垂直線上の部分から始まり、その後、漸次的に外縁部へと、半径方向に広がっていく。
【0048】
図3は、図2の代替例であり、機能的に同一の要素には、図2と同じ符号を付している。図3の装置は、以下の点で、図2の装置と異なる。すなわち、可撓性材料(4)は、たとえば円形の底面を有する円錐形または角柱形であり、その底面は付着接触面(5)を構成し、剛性材料(9)は、凹みのある形状で、一方の端部は、可撓性材料(4)の形状と相補的な例えば円錐形状の凹みを形成し、この凹みに可撓性材料(4)を収容するようになっており、もう一方の端部は、支持部(12)との連結面(13)を構成する。可撓性材料(4)と剛性材料(9)の回転(対称)軸は、必要に応じて、たとえば図3に示すように、垂直方向(7)において一線に重なる。この場合、図2の実施例とは反対に、付着接触面(5)の分離は、まずベース(10)外縁の、可撓性材料の厚みが最も薄い部分から始まり、その後、漸次的にベース(10)の中央、すなわち可撓性円錐部の頂点を通る垂直線上の部分へと、半径方向に広がっていく。付着接触面(5)と連結面(13)は、平行であることが好ましく、可撓性材料(4)は、吸着、接合といった公知の技術を用いて、剛性材料(9)と連結される。
【0049】
図4は、図1の代替例であり、機能的に同一の要素には、図1と同じ符号を付している。図4の装置は、以下の点で、図1の装置と異なる。本例の装置は、剛性支持部(12)に取り付けられた可撓性プレート(15)を含んでおり、その一端部(17)側の表面(16)に、可撓性材料(4)が取り付けられ、ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレート(3)を支持するようになっている。ベース(10)は、可撓性材料(4)で形成されており、その一方の端部は、付着接触面(5)を構成し、これに対向するもう一方の端部は、可撓性プレート(15)と連結する連結面(18)を構成する。図に示されるように、装置は、可撓性プレート(15)のもう一方の面(13)で剛性支持部(12)に取り付けられる。この例において、ベース(10)は、可撓性材料だけで構成されており、対向する二面(5、18)は、たとえば平行である。ベース(10)の幅方向にわたって剛性を異ならせる効果は、プレート(15)の可撓性によって得られる。このプレート(15)の一端部には、ベース(10)が取り付けられ、もう一方の端部には、支持部(12)が取り付けられている。プレート(15)の可撓性、およびこれに起因する曲げ変形は、支持部(12)がプレート(3)の表面(2)および弾性プレート(15)の平面に対して垂直方向に移動する場合に、装置に以下のような剛性を与える。すなわち、ベース(10)の一端が位置し、支持部(12)とプレート(15)との連結部に最も近接する側のゾーンにおける剛性は、ベース(10)の反対側の端部が位置するプレート(15)の端部ゾーンにおける剛性よりも大きくなる。これにより得られる効果は、図1〜図3の実施例と同様であるが、第4の実施例の場合、プレート(15)の弾力性により、支持部(12)に対するプレート(3)の相対的な弾性運動が、図1〜図3の実施例におけるよりも大きく許容されるという効果があり、同時に、その運動中においても、良好な吸着が提供される。こうした弾力性は、たとえば、プレートが移動する際に、付着接触面(5)に垂直にかかる慣性力を相殺するために利用される。
【0050】
図5の装置は、本発明のもう1つの実施例を示しており、機能的に同一の要素には、図1と同じ符号を付している。
【0051】
図5に示す装置は、可撓性材料(4)からなるベース(10)を備え、ベース(10)は、一定もしくは実質的に一定の厚さを有している。手段(6)は、可撓性材料の横断面の少なくとも一部を、異なる高さで伸長する2つの対向する横断スロット(26、27)を有し、このため、図5に示すように、ベースはZ型構造となっている。ベース(10)は、たとえば、平面的で平行な上面(5)と下面(13)を備えた直円柱形で、2つのスロット(26、27)により、ベース(10)は、高さ方向に分割され、実質的に等しい厚さを有する3つの積層部(21、22、23)から構成される。ここで、2つの連続する部分は、図5に示すように、可撓性材料のスロットの入っていない断面で相互に接続されている。ベース(10)の一方の上縁部(24)(すなわち接触面(5)の一縁部)の伸縮性は、直径方向に対向する他方の上縁部(25)の伸縮性よりも低いため、接触面(5)に垂直方向(7)の分離力が掛けられた場合に、分離がまず上縁部(24)で起こり、その後、漸次的に接触面(5)全体に広がり、ベース(10)が最大限に伸長した状態において、支持部(12)から最も遠い位置となっている上縁部(25)へと至るという剥離効果が得られる。ベース(10)が最大限に伸長した状態(図示せず)において、接触面(5)の支持部(12)からの分離は、まず上縁部(24)から始まり、直径的に対向する上縁部(25)へと、連続的かつ規則的に進行することになる。
【0052】
図6は、図5の代替例であり、機能的に図5と同一の要素には、図5と同じ符号を付している。ただし、図6の装置は、以下の点で、図5の装置と異なる。図6の実施例において、ベース(10)は、可撓性材料の断面の少なくとも一部を伸長する単一の横断スロット(26)を有し、U型構造となっている。得られる効果は、図5の装置と同じであるが、ベース(10)の伸縮性は、図6の装置の方が低い。
【0053】
図5および6と同様の発想により、ベース(10)を、たとえばディスク状の可撓性材料の層により形成することも可能である。この場合、らせん状の横断スロット(図示せず)を形成して、らせん状の可撓性材料層を得る。そして、このらせん状の可撓性材料層の中心(らせんの内端)を、たとえば前述した剛性支持部(12)のような支持体に取り付ける。従って、ベースがプレート(ウエハ)から分離する際、最初にらせん層の中心が分離し、続いて残りの部分が漸次的に分離する。これは、プレート上にらせん状に巻かれたコードが、「剥離」効果により、徐々にプレートから分離していき、最終的に反対側のフリーな末端が分離するのと同様である。分離が完了すれば、可撓性材料の弾力性により、ベースは最初のらせん形状となって剛性支持部上に戻る。
【0054】
図7のA〜Dの装置は、本発明のもう1つの実施例を示しており、機能的に図1と同一の要素には、同じ符号を付している。
【0055】
図7の装置において、付着接触面(5)とプレート(3)表面(2)の間の分離抵抗を、付着接触面(5)に対して、垂直方向および平行方向において異ならせる手段は、
− ガラス板または半導体板(ウエハ)等(3)を支持することが可能な剛性支持部(12)と、剛性支持部(12)の一方の表面(31)の一端(32)側に取り付けられた可撓性材料(4)とを備え、可撓性材料(4)はベース(10)を形成し、ベース(10)は、一端側に付着接触面(5)を備え、他端側に前記剛性支持部(12)に接合される環状面(13)を備えており、
− 可撓性材料(4)は、変形可能な弾性の膜形状を有しており、
− 剛性支持部(12)は、環状接合面(13)に加圧流体を供給するライン(35)を備え、
− ライン(35)に前記加圧流体を供給する手段(図示せず)は、図7のAおよびB、またはCおよぼDに、それぞれ示されるような、少なくとも2つの異なるポジションを、変形可能膜(4)に付与し、
− 第1のいわゆる吸着ポジション(図7のAまたはC)は、変形可能膜(4)に前記加圧流体の供給がない場合、あるいは、ライン(35)を通じて変形可能膜(4)の吸引、すなわち減圧がなされる場合であり、このポジションにおいて、付着接触面(5)とプレート(3)の表面(2)間の、接触面(5)の平行方向における分離抵抗は最大となり、
− 第2のいわゆる分離ポジション(図7のBまたはD)は、変形可能膜(4)に前記加圧流体の供給がある場合であり、このポジションにおいて、付着接触面(5)とプレート(3)の表面(2)間の、接触面(5)の垂直方向における分離抵抗は最小となる。
【0056】
変形可能膜(4)は、たとえばディスク形状であり、その接合面(13)の周囲は、公知の吸着ないしは接合手段により、加圧流体を通さないように、剛性支持部(12)に結合され、接合面の中央部はフリーになっており、図7Bまたは7Dに示されるように、加圧流体が供給される。ライン(35)から導入される加圧流体は、図7Bまたは7Dに示されるように、変形可能弾性膜を、ドーム型になるまで膨張させ、これによりプレート(3)と付着接触面(5)との接触を制限する。膜および圧力は、可撓性材料(4)の弾性域において、適正な変形を得ることができ、ドーム形成が可能となるよう選択される。ここで、適正な変形とは、プレート(3)とベース(10)が接触状態にある場合に、付着接触面(5)の漸次的な分離を可能とする変形を意味する。すなわち、伸縮性の最も低い、支持部(12)に結合された膜(4)の周縁部から分離を開始させ、これを漸次的に進行させる変形である。加圧流体がライン(35)を通じて送り込まれた場合に、支持部(12)から最も遠位となる、ディスク状膜の中心部において、伸縮性が最大となる。
【0057】
すなわち、
− ライン(35)から加圧流体の導入がない場合、ディスク(4)は剛性支持部(12)に対して扁平であり、ディスク(4)の上側表面(5)全体がプレート(3)と接触し、この状態において、吸着力は(8)の方向においても、(7)の方向においても最大であり、
− ライン(35)から加圧流体が送り込まれると、付着接触面(5)は漸次的に分離を開始し、これにより、プレート(3)から付着接触面(5)を分離するために必要な力を低減させることが可能となる。
【0058】
本発明の装置の第7の実施例においては、流体が最大圧力で送り込まれた場合でも、接触部の中央がドームの頂点で維持され、接触部の表面を、注入する加圧流体の圧力値によって制御可能である。これにより、(7)の方向および(8)の方向に対する最小限の吸着力が提供されるので、たとえば、プレートを支持しているアーム(12)を小さく動かすことが可能となる。
【0059】
さらに、本発明の装置の第7の実施例においては、膜の膨張によりプレートを動かすことが可能となるため、プレートを支持している支持部(12)を(7)の方向に動かす代わりに、このような膨張による小さな動きを利用できる。
【0060】
図7の装置は、たとえば以下のように機能する。
【0061】
− プレート(3)を静的に支えるために配置された、たとえば3つのベース(ここに加圧流体が供給される)を備える支持部(12)は、ベース(10)に流体を全く注入しない状態で、把持し動かすべきプレート(3)の裏面(2)に接近し、
− プレートと接触する前に、必要に応じて、プレートの周囲圧力よりも大きい所定の圧力で、流体をベースに注入し、各ベースをドーム型にして、接触緩衝機能を与え、
− 接触面が小さな状態で、プレートがベースに把持され、大きな吸着力を必要としないプレートの小さな動きが可能となり、
− プレートがベース(10)上の所定位置に配されたところで、ベースの下から圧力を取り除き、膜がその弾性により最初の接合形状に戻り、接触面が増大し、よって接合力も増加し、支持部(12)の高度な加速や急速な動きに対応可能となり、
− プレートをベース(10)、すなわち支持部(12)から分離する場合には、再び加圧流体をライン(35)に注入して、膜(4)の変形により漸次的に付着接触面(5)を分離させるので、付着接触面の最小限の減少によって、支持部(12)に対して(7)の方向に最低限の力をかけるだけで、分離が完全に行われる。
【0062】
膜と支持部(12)との連結部分を環形状とし、膜を形成する材料が弾力性を有するので、ライン(35)に加圧流体の供給がない状態で、膜は、ディスク中央部において、支持部(12)と連結したディスク周縁部におけるよりも、高い伸縮性を有することになる。このように、加圧流体の供給がない場合でも、膜の取付け形状により、付着接触面の垂直方向におけるベースの剛性または伸縮性を、ベースの幅方向において異ならせることができる。加圧流体の供給により、プレートとの接触面を案内したり、制御することが可能となる。
【0063】
図1〜16に示される可撓性材料(4)として、多孔性または微細孔性のものを使用することもでき、この場合、ガス状流体が付着接触面(5)を通過できるようになり、汚染粒子を吸引することが可能となる。特に、可撓性材料(4)と接触する前に、プレートの付着接触面(5)から汚染粒子を取り除く目的で、吸引を行うことが有益である。この目的のために使用する吸引装置は、図7のA〜Dにおいて言及したものと同様であり、この装置は、本明細書に図示される本発明のすべての実施態様において、適用可能である。ここで、重要な特徴は、付着接触面(5)が、その全面において微細孔性であって、プレートと接触するその全面に、吸引作用を付与していることであり、付着接触面(5)の周辺領域にも吸引作用を付与することがさらに有益である。可撓性材料(4)からの流体吸引は、たとえば、接触前に、汚染粒子の吸引に十分なある一定の時間だけ行い、その後、たとえば接触後または接触中にストップする。多孔性または微細孔性の可撓性材料は、公知のいかなる技術を用いて得てもよく、たとえば、本来的に多孔性または微細孔性の可撓性材料を用いたり、可撓性材料にレーザー処理を施したり、あるいは、その成形過程において多孔性または微細孔性とするなど、様々な方法を用いることが可能である。多孔性または微細孔性の可撓性材料は、前述したポリマーであってもよく、また、後述するシリコンであってもよい。
【0064】
図8は、ベース(10)を形成する可撓性材料(4)上の所定位置にある(あるいは可撓性材料によって作られる)付着接触面(5)の改良例であり、ここでは、図4の可撓性プレート(15)にベースを取り付けた例を示しているが、図1〜7に示す全て実施例に応用可能である。この改良型付着接触面(5)は、ファイバーまたはラミネートの微細構造(40)を備えることで、吸着力を増加させている。
【0065】
微細構造(40)は、表面に微細ラメラまたは微細ピンを備え、これにより、接触面(5)がプレート(3)の表面(2)に吸着する際に作用するファンデルワールス力の強度を高めている。微細ピンの直径は、0.1μm〜数10μmである。微細ラメラの厚みも同様である。微細ラメラまたは微細ピンの高さは、1〜200μmである。このような形状は、公知のいかなる方法を用いて得てもよく、たとえば、リソグラフィー法やナノインプリント法を用いる。微細構造(40)を構成する材料としては、たとえば、シリコン(半導体板との接触に相性がよい)のように本来的に硬質な物質を使用することができ、可撓性材料(4)の全面もしくは一部に、重合してもよいし、貼り付けてもよい。これにより、ベース(10)の吸着性が向上する。可撓性材料(4)は、モノマーまたはポリマータイプのものでよく、PU(ポリウレタン)やPMMA(ポリメタクリル酸メチル)のような有機タイプのもの、あるいは、PDMS(ポリジメチルシロキサン)シリコーンは、本件に使用される半導体板の材料と相性がよい。また、代替的に、ベースを構成する可撓性材料で、ベース表面に微細構造(40)を形成することも可能である。
【0066】
図9は、均一な厚みの層として具体化した本来的な可撓性材料(4)を、厚さ方向で示す断面である。図10および11は、その代替例であり、図9の本体的な可撓性材料(4)の層に、シリコンタイプなどの本来的に硬質な材料を重合し、前述したような微細構造を形成させて、この硬質材料に、半導体板またはウエハと接触するための可撓性を付与している。微細構造(40)を形成する本来的な硬質材料は、多数の分離したパーツで構成され、それぞれのパーツが小さな表面を形成し、隣り合う2つのパーツ同士は不連続に配置される。この不連続性により、ユニットとして構成された可撓性材料に、十分な伸縮性が確保される。これは、特に、図7のA〜Dに示す第7の実施例のように、たとえば、使用する可撓性材料を変形させる必要が生じる場合を考慮したものである。一般的には、硬質材料で作られた微細構造は、十分な伸縮性を備えていないため、第7の実施例を示す図7のAからBへの変形のような、たとえば平面型からドーム型へと著しく変形する可撓性材料(4)の伸縮性に追従することは不能であるが、微細構造(40)が本来的に硬質な材料で形成されていても、その配置により、全体として、かなりの可撓性を示すことになる。
【0067】
図12〜16は、本発明の接触装置の代替例であり、剛性支持部(12)上に設置され、ガラス板または半導体板(ウエハ)等と接触するための可撓性材料(4)を備えてる。これらの実施例は、可撓性材料(4)の付着接触面(5)と、この接触面(5)と接触するプレート(3)の表面の一部との間の平行度を改善するものである。実際、時として、平行度不良は、吸着力を減少させ、および/または、微細構造(40)を有する場合は、その早期の摩滅を誘発する。以下に示す実施例においては、前述のような微細構造(40)を必ずしも用いる必要はなく、微細構造が用いられない場合においても、吸着力が改善されることになる。
【0068】
図12において、可撓性材料(4)は、本来的に可撓性な材料のブロック(4)であり、カーブ形状または凸形状の付着接触面(5)を備えるが、この付着接触面は、微細構造を備える場合も、備えない場合もある。ここでは、ベース(10)の幅方向において異なる可撓性材料(4)の高さによって、付着接触面(5)の垂直方向におけるベースの伸縮性を、ベースの幅方向において異ならせている。
【0069】
図13において、可撓性材料(4)は、図に示すように、回り継ぎ手(50)を介して剛性支持部(12)に取り付けられている。回り継ぎ手の雌部は、可撓性材料で作り、雄部は、剛性材料で作ることが好ましい。接触面は、本実施例が示すように凸形状でもよいし、平面であってもよい。付着接触面(5)は、剛性支持部(12)に対して、2または3の回転自由度を有する。ここでは、本質的に、可撓性材料の回転(可撓性材料の傾斜角度に応じて、可撓性材料と剛性支持部との距離を異ならせる)によって、付着接触面(5)の垂直方向におけるベースの伸縮性を、ベースの幅方向において異ならせている。
【0070】
図14において、可撓性材料(4)は、可撓性膜(55)を介して剛性支持部(12)に取り付けられており、膜(55)の可撓性に応じて、可撓性材料(4)の付着接触面(5)も、剛性支持部(12)に対してある程度動くようになっている。可撓性膜(55)は、ポリマーで作ると有益であり、特にポリウレタンが好ましい。可撓性膜(55)は、可撓性膜と剛性支持部との間に間隔ができるよう、たとえば剛性ピン(58)を介して剛性支持部(12)に固定してもよいし、その他の手段を用いてもよい。すなわち、剛性支持部(12)に対して垂直方向の動きを可撓性膜(55)に付与する手段、あるいは、上述の「間隔」を確立できるような手段、例えば、合成支持部に形成された孔など、いかなる手段も用いうる。剛性材料(9)は、付着接触面(5)を備えるが、この付着接触面は、微細構造を備える場合も、備えない場合もある。この場合、本質的に、可撓性膜(55)の可逆的に変形性により、付着接触面(5)の垂直方向におけるベースの伸縮性を、ベースの幅方向において異ならせている。
【0071】
図15において、可撓性材料(4)は、たとえばポリマーで作られた、可撓性密閉ケーシング(57)で構成され、剛性支持部(12)に固定されている。この可撓性ケーシング(57)の内部には、ゲルなどの流体(56)が封入されている。内部流体(56)およびケーシング(57)の可撓性により、付着接触面(5)が可逆的に変形可能となり、特に、図示のようにプレート(3)の表面に折れが存在したり、その表面が粗い場合でも、プレート(3)との良好な接触がなされる。可撓性ケーシング(57)は、微細構造(40)を備えた付着接触面(5)を有することが好ましい。ここでは、本質的に、可撓性ケーシング(57)および内部ゲル(56)の可逆的な変形性によって、付着接触面(5)に垂直な方向におけるベースの伸縮性を、ベースの幅方向において異ならせている。
【0072】
図16のAおよびBにおいて、可撓性材料(4)は、たとえばポリマーで作られた、バッグ(59)を形成する可撓性密閉ケーシングで構成される。このバッグ(59)の内部には、気体(たとえば空気)、液体またはゲルなどの流体(60)が封入されている。バッグ(59)の下部は、図16Aに示されるように、好ましくは剛性の中央ポッド(61)を介して、剛性支持部(12)に固定されている。バッグ(59)は、図16Bに示すように、プレート(3)等の重みで変形することが好ましく、これにより、より大きな接触面を提供することが可能となり、また、微細構造を備える場合は、負荷の分配が可能となる。ここでは、本質的に、バッグ(59)および内部の流体(60)の可逆的な変形性によって、付着接触面(5)に垂直な方向におけるベースの伸縮性を、ベースの幅方向において異ならせている。
【0073】
また、本発明は、ガラス板または半導体板(ウエハ)(3)等を把持するためのシステムに係り、該システムは、
− ガラス板または半導体板(ウエハ)等を把持するための、複数の自由度を有する剛性アーム(12)と、
− この把持アーム(12)と連結され、ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレートの表面に付着接触する、図1〜図16に示すいずれかの実施例による、少なくとも3つの装置と、を備える。
【0074】
ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレートを把持するための剛性アーム(12)は、公知のいずれのタイプであってもよい。たとえば、実質的に平坦な表面上に、本発明による装置が3つ、プレートの静的平衡、およびプレートがアームとともに動く場合には動的平衡が確保されるように配置されている、いずれのタイプの平面プレート状のエレメントを採用できる。プレート状エレメントは、ロボットに連結され、必要に応じて、適切な自由度(たとえば、自由度6)が付与される。プレート状エレメントをロボットで動かしてプレート表面に接近させ、次に、プレート状エレメントの表面を、接触装置のそれぞれのベース接触面がプレートに吸着するよう動かして、プレートを把持し、その後、プレート状エレメントの自由度により、プレートを搬送する。本発明の装置によれば、プレートに対して重力のかかる方向であっても、ベースの接触面に平行な方向におけるプレートの急速な動作および高度な加速が可能である。また、本発明の実施例によれば、本発明の装置は、付着接触面に対して垂直方向においても、たとえば、図7に示した例のように、最大限の吸着力を付与することが可能である。その他の実施例もまた、この垂直方向において、優れた吸着力を提供し、どの例においても、要求に応える適切な吸着力を提供することが可能である。たとえば、アームが加速される間、その最大加速度に対応させて、接触面を大きくすることにより、適切な乾式吸着抵抗を得ることができる。図8に示した改良型の接触面も、この要求に応えることができる。
【0075】
単一の剛性アーム上に配される装置は、その位置および配置等に応じて、同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の接触装置の第1の実施態様を示す断面図である。
【図2】本発明の接触装置の第2の実施態様を示す断面図である。
【図3】本発明の接触装置の第3の実施態様を示す断面図である。
【図4】本発明の接触装置の第4の実施態様を示す断面図である。
【図5】本発明の接触装置の第5の実施態様を示す断面図である。
【図6】本発明の接触装置の第6の実施態様を示す断面図である。
【図7】本発明の接触装置の第7の実施態様を、様々な位置(A〜D)において示す断面図である。
【図8】本発明の接触装置の第8の実施態様を示す断面図である。
【図9】可撓性材料の実施態様の1つを示す断面図である。
【図10】可撓性材料の別の実施態様を示す断面図である。
【図11】図10の実施態様について、別の作動位置において示す断面図である。
【図12】本発明の接触装置の第9の実施形態を示す断面図である。
【図13】本発明の接触装置の第10の実施形態を示す断面図である。
【図14】本発明の接触装置の第11の実施形態を示す断面図である。
【図15】本発明の接触装置の第12の実施形態を示す断面図である。
【図16】本発明の接触装置の第13の実施形態を、2つの異なる作動位置(AおよびB)において示す断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレートの表面に付着接触する装置であって、
− ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレート表面に、吸着により付着する付着接触面を備えた可撓性材料を含むベースと、
− 前記可撓性材料で作られた付着接触面と前記プレート表面との間の分離抵抗を、前記付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる手段と、
を備える、プレート表面との付着接触装置。
【請求項2】
前記可撓性材料で作られた付着接触面とプレート表面との間の分離抵抗を、前記付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる前記手段は、該付着接触面に垂直な方向における剛性または伸縮性を、前記ベースの幅方向にわたって異なるように、該ベースに付与する手段を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記付着接触面と前記プレート表面との間の前記垂直方向における分離抵抗が、前記付着接触面と前記プレート表面との間の前記平行方向における分離抵抗よりも低くなっている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記付着接触面と前記プレート表面との間の分離抵抗を、該付着接触面に垂直な方向および平行な方向において異ならせる前記手段は、前記可撓性材料に固定された剛性材料を含み、該剛性材料と前記可撓性材料とにより、一定または実質的に一定の厚さを有する前記ベースが形成され、該可撓性材料の厚みを、該ベースの幅方向にわたって、あるいは少なくともその一部において、異ならせている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記可撓性材料の厚さが、前記ベースの幅方向にわたって、あるいは少なくともその一部において、漸次的かつ連続的に増加するようになっている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記剛性材料は、バイアス状の端部を有する円柱形状を有し、前記可撓性材料は、該剛性材料と相補的な形状を有し、該可撓性材料が、該バイアス状の端部において該剛性材料に結合されることにより、前記ベースが直円柱形状に形成されている、請求項4または5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記剛性材料は、円錐形状を有し、前記可撓性材料と一体化されている、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記剛性材料は、円錐形の凹みを備える形状を有し、該凹みの中に相補的な円錐形状を有する前記可撓性材料が収容されている、請求項4に記載の装置。
【請求項9】
前記可撓性材料が前記ベースを形成しており、前記付着接触面と前記プレート表面との間の分離抵抗を、前記付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる前記手段は、該可撓性材料の横断面の少なくとも一部を伸長する1つ以上の横断スロットを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記1つ以上の横断スロットが、前記可撓性材料の横断面の少なくとも一部を伸長して、該ベースをU型構造としている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ベースは、前記可撓性材料の横断面の少なくとも一部を、異なる高さで伸長する2つの対向する前記横断スロットを有し、Z型構造となっている、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記ベースは、らせん状の横断スロットが形成されている可撓性材料からなるらせん状の層構造を有し、該らせん状の層構造の中心が支持体に取り付けられている、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記付着接触面と前記プレート表面との間の分離抵抗を、該付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる前記手段は、
− ガラス板または半導体板(ウエハ)等を支持することが可能な剛性支持部に取り付けられた可撓性プレートを備え、
該可撓性プレートの一方の表面で一端側には、前記可撓性材料が取り付けられ、該可撓性材料が前記ベースを形成しており、該ベースの一方の端部は、前記付着接触面を構成し、該一方の端部と反対側にある他方の端部は、該可撓性プレートと結合する連結面を構成している、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記付着接触面と前記プレート表面との間の分離抵抗を、該付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる前記手段は、
− ガラス板または半導体板(ウエハ)等を支持することが可能な剛性支持部を備え、
該剛性支持部の一方の表面で一端側には、前記可撓性材料が取り付けられ、該可撓性材料が前記ベースを形成しており、該ベースの一方の端部は、前記付着接触面を構成し、該一方の端部と反対側にある他方の端部は、該剛性支持部と結合する環状の連結面を備えており、
− 該可撓性材料は、変形可能な弾性を備える膜形状を有し、
− 該剛性支持部は、前記環状の連結面に加圧流体を供給するラインを備え、
− 該ラインに加圧流体を供給する手段は、少なくとも2つの異なるポジションを、前記変形可能膜に付与し、
− 第1のいわゆる吸着ポジションは、前記変形可能膜に加圧流体の供給がない場合であり、このポジションにおいて、前記付着接触面と前記プレート表面との間の、該接触面に平行な方向における分離抵抗は最大となり、
− 第2のいわゆる分離ポジションは、前記変形可能膜に加圧流体の供給がある場合であり、このポジションにおいて、前記付着接触面と前記プレート表面との間の、該接触面に垂直な方向における分離抵抗は最小となる、
請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記可撓性材料からなる前記付着接触面が、ファイバーまたはラミネートの微細構造を備え、吸着力を増加させるようになっている、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記付着接触面が、多孔性または微細孔性の物質で構成され、ガス状流体が該付着接触面を通過するようになっている、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
ガラス板または半導体板(ウエハ)等を把持するためのシステムであって、
− 複数の運動自由度を有する、ガラス板または半導体板(ウエハ)等を把持するための剛性アームと、
− 該把持アームと連結され、ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレートの表面に付着接触する、請求項1〜12のいずれかに記載された少なくとも3つの装置と、
を備える、プレートの把持システム。
【請求項1】
ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレートの表面に付着接触する装置であって、
− ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレート表面に、吸着により付着する付着接触面を備えた可撓性材料を含むベースと、
− 前記可撓性材料で作られた付着接触面と前記プレート表面との間の分離抵抗を、前記付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる手段と、
を備える、プレート表面との付着接触装置。
【請求項2】
前記可撓性材料で作られた付着接触面とプレート表面との間の分離抵抗を、前記付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる前記手段は、該付着接触面に垂直な方向における剛性または伸縮性を、前記ベースの幅方向にわたって異なるように、該ベースに付与する手段を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記付着接触面と前記プレート表面との間の前記垂直方向における分離抵抗が、前記付着接触面と前記プレート表面との間の前記平行方向における分離抵抗よりも低くなっている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記付着接触面と前記プレート表面との間の分離抵抗を、該付着接触面に垂直な方向および平行な方向において異ならせる前記手段は、前記可撓性材料に固定された剛性材料を含み、該剛性材料と前記可撓性材料とにより、一定または実質的に一定の厚さを有する前記ベースが形成され、該可撓性材料の厚みを、該ベースの幅方向にわたって、あるいは少なくともその一部において、異ならせている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記可撓性材料の厚さが、前記ベースの幅方向にわたって、あるいは少なくともその一部において、漸次的かつ連続的に増加するようになっている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記剛性材料は、バイアス状の端部を有する円柱形状を有し、前記可撓性材料は、該剛性材料と相補的な形状を有し、該可撓性材料が、該バイアス状の端部において該剛性材料に結合されることにより、前記ベースが直円柱形状に形成されている、請求項4または5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記剛性材料は、円錐形状を有し、前記可撓性材料と一体化されている、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記剛性材料は、円錐形の凹みを備える形状を有し、該凹みの中に相補的な円錐形状を有する前記可撓性材料が収容されている、請求項4に記載の装置。
【請求項9】
前記可撓性材料が前記ベースを形成しており、前記付着接触面と前記プレート表面との間の分離抵抗を、前記付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる前記手段は、該可撓性材料の横断面の少なくとも一部を伸長する1つ以上の横断スロットを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記1つ以上の横断スロットが、前記可撓性材料の横断面の少なくとも一部を伸長して、該ベースをU型構造としている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ベースは、前記可撓性材料の横断面の少なくとも一部を、異なる高さで伸長する2つの対向する前記横断スロットを有し、Z型構造となっている、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記ベースは、らせん状の横断スロットが形成されている可撓性材料からなるらせん状の層構造を有し、該らせん状の層構造の中心が支持体に取り付けられている、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記付着接触面と前記プレート表面との間の分離抵抗を、該付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる前記手段は、
− ガラス板または半導体板(ウエハ)等を支持することが可能な剛性支持部に取り付けられた可撓性プレートを備え、
該可撓性プレートの一方の表面で一端側には、前記可撓性材料が取り付けられ、該可撓性材料が前記ベースを形成しており、該ベースの一方の端部は、前記付着接触面を構成し、該一方の端部と反対側にある他方の端部は、該可撓性プレートと結合する連結面を構成している、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記付着接触面と前記プレート表面との間の分離抵抗を、該付着接触面に垂直な方向および平行な方向において、異ならせる前記手段は、
− ガラス板または半導体板(ウエハ)等を支持することが可能な剛性支持部を備え、
該剛性支持部の一方の表面で一端側には、前記可撓性材料が取り付けられ、該可撓性材料が前記ベースを形成しており、該ベースの一方の端部は、前記付着接触面を構成し、該一方の端部と反対側にある他方の端部は、該剛性支持部と結合する環状の連結面を備えており、
− 該可撓性材料は、変形可能な弾性を備える膜形状を有し、
− 該剛性支持部は、前記環状の連結面に加圧流体を供給するラインを備え、
− 該ラインに加圧流体を供給する手段は、少なくとも2つの異なるポジションを、前記変形可能膜に付与し、
− 第1のいわゆる吸着ポジションは、前記変形可能膜に加圧流体の供給がない場合であり、このポジションにおいて、前記付着接触面と前記プレート表面との間の、該接触面に平行な方向における分離抵抗は最大となり、
− 第2のいわゆる分離ポジションは、前記変形可能膜に加圧流体の供給がある場合であり、このポジションにおいて、前記付着接触面と前記プレート表面との間の、該接触面に垂直な方向における分離抵抗は最小となる、
請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記可撓性材料からなる前記付着接触面が、ファイバーまたはラミネートの微細構造を備え、吸着力を増加させるようになっている、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記付着接触面が、多孔性または微細孔性の物質で構成され、ガス状流体が該付着接触面を通過するようになっている、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
ガラス板または半導体板(ウエハ)等を把持するためのシステムであって、
− 複数の運動自由度を有する、ガラス板または半導体板(ウエハ)等を把持するための剛性アームと、
− 該把持アームと連結され、ガラス板または半導体板(ウエハ)等のプレートの表面に付着接触する、請求項1〜12のいずれかに記載された少なくとも3つの装置と、
を備える、プレートの把持システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【公表番号】特表2009−530838(P2009−530838A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500962(P2009−500962)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001667
【国際公開番号】WO2007/107885
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(508285374)ルシフ テクノロジ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001667
【国際公開番号】WO2007/107885
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(508285374)ルシフ テクノロジ (1)
【Fターム(参考)】
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