説明

プロセス装置

【課題】外的作用による被処理物の粘弾性特性の変化に応じて最適な処理を実行するプロセス装置を提供する。
【解決手段】センサ部30は、遅延部材32と密着して配置され、測定制御部1からの放射指令に応じて、遅延部材32を介して、混練容器40の内部へ入射音波を放射する。そして、センサ部30は、入射音波が被処理物48と遅延部材32との境界において反射されて生じる反射音波を受信し、その時間波形を測定制御部1へ出力する。測定制御部1は、センサ部30において受信される反射音波の時間波形に基づいて、被処理物48の粘弾性特性を測定する。さらに、測定制御部1は、その測定した被処理物48の粘弾性特性に基づいて、モータ44へ与える運転指令を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は被処理物が所望の粘弾性特性となるように、被処理物に外的作用を与えるプロセス装置に関し、特に被処理物の粘弾性特性を測定しながら処理を行なうプロセス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物質の物性を評価する指標の1つに粘弾性特性がある。粘弾性とは、与えられる応力に比例してひずみを生じる弾性、および与える応力を受けて粘性流動を生じる粘性を併せ持つ物性である。
【0003】
このような粘弾性特性を測定する方法として、主として固体に用いられる動的粘弾性試験方法(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)や、主として流動体に用いられる回転式粘度測定装置(回転式レオメータ)が知られている。
【0004】
たとえば、非特許文献1に開示されるように、動的粘弾性試験方法は、被処理物に周期的な応力を与え、そのときの被処理物の歪み応答を測定する方法である。また、回転式粘度測定装置は、平面形状をもつプレートと円錐形状をもつコーンとの間に被処理物を介在させ、コーンを駆動して被処理物へ所定の周期のずれ変位を与え、そのときにプレートで生じる応力を測定する装置である。
【0005】
このような物質の粘弾性特性は、製造プロセスにおける品質管理上、非常に重要である。たとえば、原材料や半製品などの被処理物に攪拌などの外的作用を与えて所望の製品を得るようなプロセスにおいては、攪拌により被処理物の粘弾性特性が変化するため、その変化する粘弾性特性に応じて、停止タイミングや攪拌速度などを最適化することが望まれる。
【非特許文献1】「分析機器の手引き(第12版)」,社団法人日本分析機器工業会,pp.105,平成16年9月1日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の測定手段においては、粘弾性特性を測定するためのサンプルを必要とするために、製造中の被処理物からサンプルを抽出する必要があった。また、従来の測定手段では、特定の周期をもつ応力またはずれ変位を与えることで、その周期(周波数)における粘弾性特性を測定する。そのため、広い周波数領域にわたる粘弾性特性を得るためには、複数の周期に対して測定を繰返す必要があり、非常に時間および手間がかかるという問題があった。
【0007】
そのため、プロセスにおいて、被処理物の粘弾性特性を連続的に測定し、その測定した粘弾性特性に応じてプロセスを最適化することは困難であり、粘弾性特性の測定は、プロセスの終了後などに限られていた。
【0008】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、外的作用による被処理物の粘弾性特性の変化に応じて最適な処理を実行するプロセス装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によれば、被処理物に対して外的作用を与え、被処理物の粘弾性特性を変化させる作用部と、被処理物へ第1の音波を放射し、かつ、第1の音波が被処理物において反射または被処理物を透過して生じる第2の音波を受信するセンサ部と、センサ部において受信される第2の音波に基づいて、被処理物の粘弾性特性を測定する測定制御部とを備え、測定制御部は、被処理物の粘弾性特性の測定結果に基づいて、作用部を制御する、プロセス装置である。
【0010】
好ましくは、センサ部は、被処理物へ第1の音波を放射し、かつ、第1の音波が被処理物において反射されて生じる第2の音波を受信する、放射受信部を含み、プロセス装置は、第1の音波および第2の音波を伝搬させることで、放射受信部において第1の音波が放射された後、放射受信部において第2の音波が受信されるまでの間に遅延時間を生じさせる遅延部材をさらに備え、遅延部材は、センサ部と被処理物との間に配置され、第2の音波は、第1の音波が遅延部材と被処理物との境界において反射されて生じる。
【0011】
また、好ましくは、センサ部は、被処理物へ第1の音波を放射し、かつ、第1の音波が被処理物において反射されて生じる第2の音波を受信する、放射受信部を含み、プロセス装置は、第1の音波および第2の音波を伝搬させることで、放射受信部において第1の音波が放射された後、放射受信部において第2の音波が受信されるまでの間に遅延時間を生じさせる遅延部材と、第1の音波を反射させる反射部材とをさらに備え、遅延部材は、センサ部と被処理物との間に配置され、反射部材は、センサ部と被処理物との境界と対向する面において、被処理物と密着し、第2の音波は、第1の音波が遅延部材と被処理物との境界において反射されて生じる音波と、第1の音波が被処理物と反射部材との境界において反射されて生じる音波とを含む。
【0012】
また、好ましくは、センサ部は、被処理物へ第1の音波を放射する放射部と、第1の音波が被処理物を透過して生じる第2の音波を受信する受信部とを含む。
【0013】
さらに好ましくは、被処理物は、作用部からの外的作用を受けて、センサ部との距離または/およびセンサ部と接する面積が変化し、第2の音波は、センサ部と被処理物との距離または/およびセンサ部と接する面積の変化に伴い、その強度が変動し、測定制御部は、センサ部から放射される複数の第1の音波にそれぞれ対応する複数の第2の音波のうち、その強度に基づいて、センサ部と被処理物との距離が最短または/およびセンサ部と接する面積が最大となる第2の音波を選択し、かつ、当該選択した第2の音波を粘弾性特性の測定に用いる。
【0014】
好ましくは、測定制御部は、粘弾性特性として、貯蔵弾性率、損失弾性率、損失正接のうち、少なくともいずれか1つを測定する。
【0015】
好ましくは、測定制御部は、測定した粘弾性特性と1または2以上のしきい値との比較結果に基づいて、作用部を制御する。
【0016】
また好ましくは、測定制御部は、測定した粘弾性特性の時間的変化率を算出し、当該時間的変化率と1または2以上のしきい値との比較結果に基づいて、作用部を制御する。
【0017】
また好ましくは、測定制御部は、測定した粘弾性特性の時間的変化率を算出し、当該時間的変化率に基づいて所定のしきい値への到達時間を予測し、当該予測した到達時間に基づいて、作用部を制御する。
【0018】
また好ましくは、センサ部は、複数の周波数成分を含む第1の音波を放射し、測定制御部は、第1の音波に含まれる複数の周波数成分毎に粘弾性特性を測定する。
【0019】
さらに好ましくは、測定制御部は、被処理物における周波数成分毎の粘弾性特性に基づいて、作用部を制御する。
【0020】
さらに好ましくは、測定制御部は、測定した粘弾性特性と所定の目標値との偏差に基づいて、作用部を制御する。
【0021】
好ましくは、測定制御部は、粘弾性特性として、貯蔵弾性率、損失弾性率、損失正接のうち、少なくともいずれか2つを測定し、測定される粘弾性特性に含まれる少なくとも2つの値で規定される座標が所定のしきい領域に含まれるか否かに基づいて、作用部を制御する。
【0022】
好ましくは、測定制御部において測定された粘弾性特性を表示する表示出力部をさらに備える。
【0023】
さらに好ましくは、表示出力部は、粘弾性特性の時間的変化、測定される粘弾性特性に含まれる少なくとも2つの値により規定される座標、周波数領域における粘弾性特性、周波数領域における粘弾性特性の時間的変化のうち、1または2以上を表示する。
【0024】
さらに好ましくは、表示出力部は、作用部を制御するための指令情報を表示する。
好ましくは、作用部は、被処理物を混合、混練、攪拌のうち少なくともいずれかにより被処理物の粘弾性特性を変化させる。
【0025】
また好ましくは、作用部は、被処理物を加熱することにより被処理物の粘弾性特性を変化させる。
【0026】
また好ましくは、作用部は、被処理物を圧延することにより被処理物の粘弾性特性を変化させる。
【0027】
好ましくは、被処理物は、作用部からの外的作用を受け、分子間の相互作用または/および化学的な結合状態が変化することで、粘弾性特性を変化させる。
【0028】
好ましくは、被処理物は、紛体と液体とを含む混合物または複数の液体を含む混合物である。
【0029】
さらに好ましくは、被処理物は、穀物の紛体と水とを含む混合物である。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、センサ部から被処理物へ第1の音波を放射し、かつ、被処理物により生じた第2の音波を受信することで、被処理物の粘弾性特性を測定する。そして、測定された粘弾性特性の測定結果に基づいて作用部を制御する。よって、被処理物の粘弾性特性が所望の値となるように作用部を制御できるので、外的作用による被処理物の粘弾性特性の変化に応じて最適な処理を実行するプロセス装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0032】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に従うプロセス装置101の概略構成図である。
【0033】
図1を参照して、プロセス装置101は、測定制御部1と、センサ部30と、遅延部材32と、混練容器40と、インペラ42と、モータ44と、駆動軸46とからなる。そして、プロセス装置101は、インペラ42を回転させることで、混練容器40に投入された被処理物48を混合作用や攪拌作用を与えて混練しながら、同時にセンサ部30から被処理物48へ入射音波を放射して、その入射音波により生じる反射音波に基づいて、被処理物48の粘弾性特性を測定する。さらに、プロセス装置101は、被処理物48の粘弾性特性が所望の値に到達すると、被処理物48の混練を終了する。一例として、プロセス装置101は、被処理物48として小麦、そば粉、米粉などの穀物の紛体と、水との混合物を受入れ、パン(小麦と水)、うどん(小麦と水)、そば(そば粉と水)、だんご(米粉と水)などの生地を製造する。以下では、主として、パン生地を製造する場合について詳細に説明する。
【0034】
なお、本明細書において、粘弾性特性とは、貯蔵弾性率、損失弾性率および損失正接のうち少なくとも1つ以上で規定される物質の特性の総称である。ここで、貯蔵弾性率は、弾性を示す値であり、損失弾性率は、粘性を示す値であり、損失正接は、損失弾性率と貯蔵弾性率との比を示す値である。
【0035】
混練容器40は、その上部に開口部をもつボウル状の形状であり、その開口部から原材料である被処理物48を受入れる。
【0036】
インペラ42は、その回転軸が水平方向となるように、混練容器40の中央部に配置され、モータ44からの駆動力を受けて回転する。そして、インペラ42は、自身の回転により被処理物48にせん断力を与え、被処理物48を混練する。
【0037】
駆動軸46は、モータ44により生じる駆動力をインペラ42に伝達する。この発明の実施の形態1においては、駆動軸46は、モータ44の回転軸に対する回転運動を図示しないギアを介してインペラ42の回転軸に対する回転運動に変換する。
【0038】
モータ44は、駆動軸46と機械的に結合され、駆動軸46を介して自身が発生する回転運動をインペラ42に与える。そして、モータ44は、測定制御部1からの運転指令に応じて、運転または停止する。
【0039】
測定制御部1は、センサ部30へ放射指令を与え、センサ部30から被処理物48へ入射音波を放射させ、かつ、センサ部30において受信される反射音波の時間波形に基づいて、被処理物48の粘弾性特性を測定する。さらに、測定制御部1は、その測定した被処理物48の粘弾性特性に基づいて、モータ44へ与える運転指令を制御する。
【0040】
センサ部30は、遅延部材32と密着して配置され、測定制御部1からの放射指令に応じて、遅延部材32を介して、混練容器40の内部へ入射音波を放射する。そして、センサ部30は、入射音波が被処理物48と遅延部材32との境界において反射されて生じる反射音波を受信し、その時間波形を測定制御部1へ出力する。なお、センサ部30が放射する入射音波は、被処理物48において振動を生じさせる音波であり、超音波が好ましい。
【0041】
遅延部材32は、その一方面が混練容器40の内面と一体化するように配置され、かつ、他方面においてセンサ部30と密着する。
【0042】
図2は、測定制御部1、センサ部30および遅延部材32のより詳細な概略構成図である。
【0043】
図2を参照して、測定制御部1は、たとえば、コンピュータなどで構成され、入力部18と、時間データメモリ部12と、記憶部14と、演算部10と、表示出力部16とからなる。
【0044】
入力部18は、ユーザなどからの外部指令を受け、その外部指令を演算部10へ出力する。一例として、入力部18は、操作ボタン、キーボード、マウス、タッチパネルなどからなる。
【0045】
時間データメモリ部12は、センサ部30で受信される反射音波の時間波形データを所定の周期で格納する。なお、時間データメモリ部12は、演算部10からの要求に応じて、時間波形データを格納する周期を変更する。
【0046】
記憶部14は、演算部10を介して取得された基準値を格納し、演算部10からの要求に応じて、その格納する基準値を読出す。そして、記憶部14は、演算部10で測定される粘弾性特性を順次格納する。
【0047】
演算部10は、入力部18を介して、外部からプロセス開始指令を受けると、センサ部30へ放射指令を与え、被処理物48へ入射音波を放射させる。そして、演算部10は、時間データメモリ部12に格納される反射音波の時間波形データを読出し、一例として、フーリエ処理(FFT処理:Fast Fourier Transform;以下、FFT処理と称す)のような周波数解析処理を行ない、各周波数における振幅値および位相を取得する。続いて、演算部10は、記憶部14に格納されている基準値を読出し、その基準値と取得した反射音波の各周波数における振幅値および位相とを比較することで、被処理物48の粘弾性特性を測定する。さらに、演算部10は、その測定した被処理物48の粘弾性特性を表示出力部16または/および記憶部14へ出力する。したがって、センサ部30から1回の入射音波の放射により、演算部10は、その放射音波に含まれる周波数帯域の各周波数における被処理物48の粘弾性特性を測定できる。
【0048】
また、演算部10は、測定した被処理物48の粘弾性特性と1または2以上のしきい値を比較し、その比較結果に基づいて、モータ44へ出力する運転指令を変更する。この発明の実施の形態1においては、演算部10は、測定した被処理物48の粘弾性特性が一のしきい値を超過するか否かに応じて、モータ44を運転または停止する。すなわち、演算部10は、測定した被処理物48の粘弾性特性が所定のしきい値を超過するまでは、モータ44を運転しインペラ42を回転させ、所定のしきい値を超過した後には、モータ44を停止させる。
【0049】
また、演算部10は、入力部18を介して、外部から基準値取得指令を受けると、センサ部30へ放射指令を与え、基準となる被処理物へ入射音波を放射させる。そして、演算部10は、時間データメモリ部12に格納される反射音波の時間波形データを読出し、FFT処理を行ない、各周波数における振幅値および位相を取得する。続いて、演算部10は、取得した各周波数における振幅値および位相を基準値として記憶部14に格納する。
【0050】
表示出力部16は、演算部10において測定される被処理物48の粘弾性特性、演算部10から出力される各指令情報、モータ44の運転状態などを表示または/およびそのデータを外部へ出力する。表示出力部16が表示を行なう場合には、一例として、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの表示装置からなる。また、表示出力部16がデータを外部へ出力を行なう場合には、一例として、USB(Universal Serial Bus)、RS−232C(Recommended Standard 232 version C)、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)1394、SCSI(Small Computer System Interface)、イーサネット(登録商標)、IEEE1284(パラレルポート)などの規格に対応するインターフェイスなどからなる。
【0051】
一方、センサ部30は、送信制御回路22と、送信回路24と、方向整合器25と、トランスデューサ20と、受信回路26と、信号処理回路28とからなる。
【0052】
送信制御回路22は、測定制御部1からの放射指令を受けると、放射する入射音波を生成するための生成信号を送信回路24へ出力する。たとえば、送信制御回路22は、パルス状の入射音波を生成するためのパルス信号や、特定の周波数成分を含む入射音波を生成するための正弦波信号などを出力する。また、送信制御回路22は、生成信号の出力タイミングを通知するトリガ信号を受信回路26へ出力する。
【0053】
送信回路24は、送信制御回路22から受ける生成信号に応じた電気信号を方向整合器25へ出力する。
【0054】
方向整合器25は、送信回路24、トランスデューサ20および受信回路26とそれぞれ接続され、送信回路24から出力された電気信号をトランスデューサ20へ伝送し、かつ、トランスデューサ20から受けた電気信号を受信回路26へ出力する。すなわち、方向整合器25は、送信回路24から出力された電気信号が受信回路26へ出力されないように信号の伝送方向を制限する。
【0055】
トランスデューサ20は、方向整合器25を介して送信回路24および受信回路26と接続され、方向整合器25を介して送信回路24から受けた電気信号を音波に変換して被処理物48へ放射し、かつ、被処理物48から受けた音波を電気信号に変換して方向整合器25を介して受信回路26へ出力する。一例として、トランスデューサ20は、チタン酸ジルコン酸鉛などの圧電素子などからなる。
【0056】
受信回路26は、方向整合器25から受ける電気信号を受け、所定の増幅をした後に信号処理回路28へ出力する。また、受信回路26は、送信制御回路22からトリガ信号を受信すると、トランスデューサ20から出力される電気信号の受信を開始する。
【0057】
信号処理回路28は、受信回路26から電気信号を受け、アナログ・デジタル処理などを行ない、トランスデューサ20で受信される音波の瞬間的な振幅値を順次出力する。
【0058】
遅延部材32は、センサ部30のトランスデューサ20と密着するように配置され、センサ部30から放射された入射音波を低損失で伝搬させ、かつ、入射音波と逆方向に進行する反射音波を低損失で伝搬させる。そのため、遅延部材32は、センサ部30から放射された入射音波および被処理物48において生じる反射音波を減衰させることなく伝搬させる。その結果、センサ部30が入射音波を放射するタイミングに対して、反射音波がセンサ部30に到達するタイミングが遅延する。したがって、送信回路24が入射音波を生成する期間、すなわち、受信回路26が受信を中断する期間と受信回路26が反射音波の電気信号を受信する期間との重複を回避して、測定誤差を抑制できる。
【0059】
(表面反射法)
この発明の実施の形態1においては、入射音波を被処理物48へ放射し、その入射音波が被処理物48と遅延部材32との境界において反射されて生じる反射音波に基づいて粘弾性特性を測定する、表面反射法を用いる。
【0060】
図3は、表面反射法を説明するための図である。
図3(a)は、基準値を取得する場合である。
【0061】
図3(b)は、被処理物48の粘弾性特性を取得する場合である。
まず、センサ部30から放射される入射音波の伝搬特性を表すため、遅延部材32および被処理物48の音響インピーダンスを導入する。
【0062】
図3(a)を参照して、測定制御部1は、基準値を取得する場合において、被処理物48が存在しない状態、すなわち、空気中を測定基準として、センサ部30から入射音波を放射させる。
【0063】
ここで、入射音波および反射音波の周波数をfとすると、周波数fに依存する遅延部材32の音響インピーダンスはZ(f)と表すことができる。また、空気中の音響インピーダンスはZ(f)と表すことができる。但し、音響インピーダンスZ(f)およびZ(f)は、いずれも複素数である。さらに、遅延部材32と空気中との境界における入射音波の反射率R01(f)は、式(1)で表すことができる。
【0064】
反射率R01(f)=(Z(f)−Z(f))/(Z(f)+Z(f))・・・(1)
ここで、空気中の音響インピーダンスZ(f)は、遅延部材32および被処理物48に比較して十分小さいため、周波数fに関わらず0<Z(f)≪Z(f)とみなすことができるため、反射率R01(f)=−1となる。すなわち、遅延部材32と空気中との境界において、入射音波は全反射するとみなすことができる。
【0065】
さらに、センサ部30に入射する反射音波をA(f)exp(iθ(f))と表す。但し、iは虚数単位であり、A(f)は各周波数における振幅値(実数値)であり、θ(f)は各周波数における位相(0≦θ(f)<∞)である。すると、遅延部材32と空気中との境界において入射音波は全反射するので、センサ部30から遅延部材32を介して被処理物48へ放射される入射音波は、式(2)で表される。
【0066】
(f)exp(iθ(f))×R01(f)=−A(f)exp(iθ(f))・・・(2)
すなわち、測定制御部1は、式(2)で表される入射音波が被処理物48へ照射されるとみなし、式(2)を構成するA(f)およびθ(f)を基準値として格納する。
【0067】
一方、図3(b)を参照して、被処理物48の粘弾性特性を測定する場合には、被処理物48と遅延部材32とを密着させ、センサ部30から図3(a)の場合と同一の入射音波を放射する。そして、遅延部材32と被処理物48との境界において反射される反射音波を格納した前記の基準値と比較することで、被処理物48の粘弾性特性を測定する。
【0068】
被処理物48の音響インピーダンスをZ(f)とすると、遅延部材32と被処理物48との境界における入射音波の反射率R12(f)は、式(3)で表すことができる。但し、音響インピーダンスZ(f)は、複素数である。
【0069】
反射率R12(f)=(Z(f)−Z(f))/(Z(f)+Z(f))・・・(3)
さらに、式(3)を変形すると、式(4)が導出される。
【0070】
(f)=Z(f)×(1+R12(f))/(1−R12(f))・・・(4)
ここで、センサ部30に入射する反射音波をA(f)exp(iθ(f))と表す。但し、iは虚数単位であり、A(f)は各周波数における振幅値(実数値)であり、θは各周波数における位相(0≦θ<∞)である。すると、式(2)で示される基準値を用いて、式(5)が成立する。
【0071】
A(f)exp(iθ(f))=−A(f)exp(iθ(f))×R12(f)・・・(5)
さらに、式(5)を変形して、式(6)が導出される。
【0072】
12(f)=−A(f)/A(f)×exp(i(θ(f)−θ(f))・・・(6)
式(6)を式(4)に代入すると、式(7)が導出される。
【0073】
(f)=Z(f)×(1−A(f)/A(f)×exp(i(θ(f)−θ(f)))/(1+A(f)/A(f)×exp(i(θ(f)−θ(f)))・・・(7)
ここで、被処理物48の貯蔵弾性率L’(f)および損失弾性率L”(f)は、被処理物48の音響インピーダンスZ(f)および密度ρとの間に式(8)で示す関係が成立する。
【0074】
L’+iL”(f)=Z(f)/ρ・・・(8)
(7)式を(8)式に代入し、実数成分と虚数成分とを分離することにより、貯蔵弾性率L’(f)、損失弾性率L”(f)および損失正接tanδ(f)は、それぞれ(9)式、(10)式および(11)式となる。
【0075】
L’(f)=Re[Z(f)/ρ]=(Z(f)/ρ)×{(1−(A(f)/A(f))−4(A(f)/A(f))×sin(θ(f)−θ(f))}/{1+2(A(f)/A(f))cos(θ(f)−θ(f))+(A(f)/A(f))・・・(9)
L”(f)=Im[Z(f)/ρ]=Z(f)/ρ)×{4(A(f)/A(f))×(1−(A(f)/A(f)))sin(θ(f)−θ(f))}/{1+2(A(f)/A(f))cos(θ(f)−θ(f))+(A(f)/A(f))
・・・(10)
tanδ(f)=L”/L’={4×(A(f)/A(f))×(1−(A(f)/A(f)))×sin(θ(f)−θ(f))}/{(1−(A(f)/A(f))−4×(A(f)/A(f))×sin(θ(f)−θ(f))}・・・(11)
(9)〜(11)式に示されるように、貯蔵弾性率L’(f)、損失弾性率L”(f)および損失正接tanδ(f)は、いずれもA(f),θ(f)を基準値とする{A(f)/A(f)},{θ(f)−θ(f)}で定義される。すなわち、被処理物48の反射音波を予め格納した基準値と比較することで、被処理物48の粘弾性特性を測定できる。また、上述したように、被処理物48の粘弾性特性は、周波数に依存するので、プロセス装置101は、周波数成分毎に貯蔵弾性率、損失弾性率および損失正接を測定することができる。
【0076】
(測定制御部における制御)
この発明の実施の形態1に従うプロセス装置101が被処理物48として小麦粉と水との混合物を用いてパン生地を製造する場合における、粘弾性特性の時間変化について説明する。なお、粘弾性特性として、貯蔵弾性率(弾性)について着目する。
【0077】
小麦粉には、グルテンと呼ばれるたんぱく質が含まれており、このグルテンが互いに架橋結合して、長い鎖状分子を形成することで貯蔵弾性率を増加させる。この際、グルテンは、インペラ42からの混合作用および混練作用を受けることで、その架橋結合が生じる度合を増す。そのため、インペラ42により小麦粉と水との混合物である被処理物48を混練すると、被処理物48の貯蔵弾性率が増加する。その後、被処理物48をさらに混練すると、逆に架橋結合の切断が生じる。そのため、被処理物48の貯蔵弾性率は減少に転じる。すなわち、インペラ42により混練することで、小麦粉と水との混合物である被処理物48は、その貯蔵弾性率を所定の極大値まで単調に増加させた後、その貯蔵弾性率を減少させる。
【0078】
図4は、小麦粉と水との混合物である被処理物48に対する貯蔵弾性率(弾性)の時間変化の一例である。なお、インペラ42の回転速度は一定であり、貯蔵弾性率は、2.5MHzにおける値である。
【0079】
図4を参照して、被処理物48の貯蔵弾性率は、極大点に到達するまでの時間において単調に増加する。そして、極大点に到達すると、被処理物48の貯蔵弾性率は、減少に転じる。
【0080】
一般に、焼き上げ後の食感および風味を最も良くするのは、パン生地をその貯蔵弾性率が図4に示す極大点付近まで混練した場合であると言われている。そこで、この発明の実施の形態1に従う測定制御部1は、粘弾性特性のうち貯蔵弾性率を測定し、原材料を投入した後、その測定した貯蔵弾性率が所定のしきい値に到達するまでインペラ42により混練を行なう。そして、測定制御部1は、貯蔵弾性率が所定のしきい値に到達すると、インペラ42による混練を停止する。
【0081】
また、表示出力部16は、図4に示す貯蔵弾性率の時間変化を随時表示または/およびそのデータを外部へ出力する。さらに、表示出力部16は、モータ44に与える運転指令や停止指令などの指令情報を表示または/およびそのデータを外部へ出力する。
【0082】
なお、上述の特性は、同様のタンパク質を含む穀物にも見られ、同様の制御方法は、パン生地以外にもうどん、そばおよびだんご生地などの製造において適用できる。
【0083】
(フローチャート)
図5は、測定制御部1におけるプロセス制御のフローチャートである。なお、測定制御部1は、後述する基準値取得の処理に従い、予め基準値を記憶部14に格納しているとする。
【0084】
図2および図5を参照して、演算部10は、入力部18を介してプロセス開始指令を受けたか否かを判断する(ステップS100)。一方、ユーザは、混練容器40に原料を投入した後、プロセス開始指令を与える。
【0085】
プロセス開始指令を受けていない場合(ステップS100においてNOの場合)には、演算部10は、プロセス開始指令を受けるまで待つ(ステップS100)。
【0086】
プロセス開始指令を受けた場合(ステップS100においてYESの場合)には、演算部10は、モータ44に運転指令を与える(ステップS102)。すると、モータ44の運転に応じて、インペラ42が被処理物48の混練を開始する。そして、演算部10は、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS104)。
【0087】
その後、演算部10は、時間データメモリ部12からトランスデューサ20が受信する反射音波の時間波形データを読出す(ステップS106)。そして、演算部10は、読出した反射音波の時間波形データに対してFFT処理を行ない、反射音波の特定の周波数における振幅値および位相を取得する(ステップS108)。さらに、演算部10は、記憶部14から基準値の振幅値および位相を読出し、取得した振幅値および位相との比較により、特定の周波数における貯蔵弾性率を測定する(ステップS110)。
【0088】
そして、演算部10は、測定した貯蔵弾性率が予め設定されるしきい値を超過しているか否かを判断する(ステップS112)。なお、上述したように、パン生地を製造する場合には、演算部10は、貯蔵弾性率のうち貯蔵弾性率を所定のしきい値と比較する。
【0089】
貯蔵弾性率がしきい値を超過していない場合(ステップS112においてNOの場合)には、演算部10は、再度、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS104)。以下、ステップS106〜ステップS112を繰返す。
【0090】
貯蔵弾性率がしきい値を超過している場合(ステップS112においてYESの場合)には、演算部10は、モータ44に停止指令を与える(ステップS114)。すると、モータ44の停止に応じて、インペラ42による混練が終了する。そして、演算部10は、処理を終了する。
【0091】
なお、上述したように、複数の周波数成分を含む入射音波が放射される場合においては、その複数の周波数成分毎の粘弾性特性を測定できるが、特定の単一周波数からなる入射音波を放射し、当該単一周波数における粘弾性特性のみを測定するようにしてもよい。パン生地の製造においては、一例として、入射音波として2.5MHzの単一周波数の正弦波を用いてもよい。
【0092】
図6は、測定制御部1における基準値取得のフローチャートである。
図2および図6を参照して、演算部10は、入力部18を介して基準取得指令を受けたか否かを判断する(ステップS150)。一方、ユーザは、混練容器40が空の状態、すなわち遅延部材32が被処理物48および他の部材に接しておらず、空気にのみ接する状態にした後、基準取得指令を与える。
【0093】
基準取得指令を受けていない場合(ステップS150においてNOの場合)には、演算部10は、基準取得指令を受けるまで待つ(ステップS150)。基準取得指令を受けた場合(ステップS150においてYESの場合)には、演算部10は、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS152)。
【0094】
続いて、演算部10は、時間データメモリ部12からトランスデューサ20が受信する反射音波の時間波形データを読出す(ステップS154)。そして、演算部10は、読出した反射音波の時間波形データに対してFFT処理を行ない、反射音波の各周波数における振幅値および位相を取得する(ステップS156)。さらに、演算部10は、取得した反射音波の各周波数における振幅値および位相を基準値として記憶部14へ格納する(ステップS158)。そして、演算部10は、処理を終了する。
【0095】
なお、図5に示す処理において、図6に示す基準値を取得する処理を測定毎に行なうようにしてもよい。また、複数の基準値を予め記憶部14へ格納しておき、測定毎に、ユーザがいずれの基準値を採用するかを設定できる構成としてもよい。
【0096】
さらに、センサ部30および遅延部材32と同一の特性を有する、基準値取得用のセンサ部および遅延部材を空気にのみ接するように配置し、センサ部30と同一の入射音波を追加のセンサ部から放射し、センサ部30および基準値取得用のセンサ部のそれぞれにおいて受信される反射音波を比較するようにしてもよい。すなわち、基準値取得用のセンサ部において受信される反射音波が基準値となるため、予め基準値を取得しておく必要がなく、かつ、測定時点における基準値が取得できるため、温度変動などの外乱に対して、より測定精度を高めることができる。
【0097】
(変形例1)
上述したこの発明の実施の形態1においては、測定した貯蔵弾性率と所定のしきい値との比較結果に基づいて、混練の開始および終了を制御する構成について説明したが、貯蔵弾性率の極大点を検出して混練の開始および終了を制御してもよい。
【0098】
図7は、図4に示す貯蔵弾性率の時間変化に対して、この発明の実施の形態1の変形例1に従うプロセス装置における制御を説明するための図である。
【0099】
図7を参照して、測定制御部1は、プロセス開始指令を受け、モータ44に運転指令を与えて混練を開始すると、それに伴い、連続的または所定の時間間隔毎に被処理物48の粘弾性特性の測定を繰返す。そして、測定制御部1は、その測定した粘弾性特性の時間的変化率、すなわち一定時間内の変化量を算出し、その算出した粘弾性特性の時間的変化率が正値であるか負値であるかを判断する。さらに、測定制御部1は、粘弾性特性の時間的変化率が正値から負値に変化したタイミング、すなわち、粘弾性特性の極大点を検出する。粘弾性特性の極大点を検出すると、測定制御部1は、モータ44に停止指令を与えて混練を停止する。
【0100】
また、表示出力部16は、図7に示す貯蔵弾性率の時間変化を随時表示または/およびそのデータを外部へ出力する。さらに、表示出力部16は、モータ44に与える運転指令や停止指令などの指令情報を表示または/およびそのデータを外部へ出力する。
【0101】
上述のように、測定制御部1は、被処理物48に対する混練を開始した後、粘弾性特性が極大点をとるまで混練を継続する。
【0102】
図8は、この発明の実施の形態1の変形例1に従う測定制御部1におけるプロセス制御のフローチャートである。なお、測定制御部1は、図6に示す基準値取得のフローチャートに従い、記憶部14に基準値を予め取得しているものとする。
【0103】
図2および図8を参照して、演算部10は、入力部18を介してプロセス開始指令を受けたか否かを判断する(ステップS200)。一方、ユーザは、混練容器40に原料を投入した後、プロセス開始指令を与える。
【0104】
プロセス開始指令を受けていない場合(ステップS200においてNOの場合)には、演算部10は、プロセス開始指令を受けるまで待つ(ステップS200)。
【0105】
プロセス開始指令を受けた場合(ステップS200においてYESの場合)には、演算部10は、記憶部14に格納される前回測定値に初期値を入力し(ステップS202)、モータ44に運転指令を与える(ステップS204)。すると、モータ44の運転に応じて、インペラ42が被処理物48の混練を開始する。そして、演算部10は、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS206)。
【0106】
その後、演算部10は、時間データメモリ部12からトランスデューサ20が受信する反射音波の時間波形データを読出す(ステップS208)。そして、演算部10は、読出した反射音波の時間波形データに対してFFT処理を行ない、反射音波の特定の周波数における振幅値および位相を取得する(ステップS210)。さらに、演算部10は、記憶部14から基準値の振幅値および位相を読出し、取得した振幅値および位相との比較により、特定の周波数における貯蔵弾性率を測定する(ステップS212)。
【0107】
そして、演算部10は、測定した貯蔵弾性率を記憶部14に格納される今回測定値に入力(ステップS214)し、前回測定値と今回測定値との差分を算出する(ステップS216)。そして、演算部10は、算出した前回測定値と今回測定値との差分が負値であるか否かを判断する(ステップS218)。
【0108】
算出した前回測定値と今回測定値との差分が負値でない場合(ステップS218においてNOの場合)には、演算部10は、記憶部14に格納される今回測定値を前回測定値に更新(ステップS220)した後、再度、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS206)。以下、ステップS208〜ステップS218を繰返す。
【0109】
算出した前回測定値と今回測定値との差分が負値である場合(ステップS218においてYESの場合)には、演算部10は、モータ44に停止指令を与える(ステップS222)。すると、モータ44の停止に応じて、インペラ42による混練が終了する。そして、演算部10は、処理を終了する。
【0110】
このように、測定制御部1は、貯蔵弾性率の極大点を検出して、インペラ42による混練を終了することで、最適な状態に混練された被処理物48を得ることができる。
【0111】
(変形例2)
上述したこの発明の実施の形態1の変形例2においては、測定した貯蔵弾性率の極大点、すなわち貯蔵弾性率の時間的変化率の符号が反転する点を検出して混練を停止する構成について説明したが、貯蔵弾性率の時間的変化率の値に基づいて、混練の開始および終了を制御してもよい。
【0112】
図9は、図4に示す貯蔵弾性率の時間変化に対して、この発明の実施の形態1の変形例2に従うプロセス装置における制御を説明するための図である。
【0113】
図9を参照して、測定制御部1は、プロセス開始指令を受け、モータ44に運転指令を与えて混練を開始すると、それに伴い、連続的または所定の時間間隔毎に被処理物48の粘弾性特性の測定を繰返す。そして、測定制御部1は、その測定した粘弾性特性の時間的変化率、すなわち一定時間内の変化量を算出し、その算出した粘弾性特性の時間的変化率が所定のしきい範囲(α1〜α2)であるか否を判断する。さらに、測定制御部1は、粘弾性特性の時間的変化率が所定のしきい範囲を逸脱した時点を検出し、その逸脱した時点においてモータ44に停止指令を与えて混練を停止する。
【0114】
また、表示出力部16は、図9に示す貯蔵弾性率の時間変化を随時表示または/およびそのデータを外部へ出力する。さらに、表示出力部16は、モータ44に与える運転指令や停止指令などの指令情報を表示または/およびそのデータを外部へ出力する。
【0115】
上述のように、測定制御部1は、被処理物48に対する混練を開始した後、粘弾性特性の時間的変化率が所定のしきい範囲に存在する間だけ混練を継続する。
【0116】
図10は、この発明の実施の形態1の変形例2に従う測定制御部1におけるプロセス制御のフローチャートである。なお、測定制御部1は、図6に示す基準値取得のフローチャートに従い、記憶部14に基準値を予め取得しているものとする。
【0117】
図2および図10を参照して、演算部10は、入力部18を介してプロセス開始指令を受けたか否かを判断する(ステップS250)。一方、ユーザは、混練容器40に原料を投入した後、プロセス開始指令を与える。
【0118】
プロセス開始指令を受けていない場合(ステップS250においてNOの場合)には、演算部10は、プロセス開始指令を受けるまで待つ(ステップS250)。
【0119】
プロセス開始指令を受けた場合(ステップS250においてYESの場合)には、演算部10は、記憶部14に格納される前回測定値に初期値を入力し(ステップS252)、モータ44に運転指令を与える(ステップS254)。すると、モータ44の運転に応じて、インペラ42が被処理物48の混練を開始する。そして、演算部10は、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS256)。
【0120】
その後、演算部10は、時間データメモリ部12からトランスデューサ20が受信する反射音波の時間波形データを読出す(ステップS258)。そして、演算部10は、読出した反射音波の時間波形データに対してFFT処理を行ない、反射音波の特定の周波数における振幅値および位相を取得する(ステップS260)。さらに、演算部10は、記憶部14から基準値の振幅値および位相を読出し、取得した振幅値および位相との比較により、特定の周波数における貯蔵弾性率を測定する(ステップS262)。
【0121】
そして、演算部10は、測定した貯蔵弾性率を記憶部14に格納される今回測定値に入力(ステップS264)し、前回測定値と今回測定値との差分を算出する(ステップS266)。そして、演算部10は、算出した前回測定値と今回測定値との差分が所定のしきい範囲内に存在するか否かを判断する(ステップS268)。
【0122】
算出した前回測定値と今回測定値との差分が所定のしきい範囲内に存在しない場合(ステップS268においてNOの場合)には、演算部10は、記憶部14に格納される今回測定値を前回測定値に入力(ステップS270)した後、再度、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS256)。以下、ステップS258〜ステップS268を繰返す。
【0123】
算出した前回測定値と今回測定値との差分が所定のしきい範囲内に存在しない場合(ステップS268においてNOの場合)には、演算部10は、モータ44に停止指令を与える(ステップS272)。すると、モータ44の停止に応じて、インペラ42による混練が終了する。そして、演算部10は、処理を終了する。
【0124】
このように、貯蔵弾性率の時間的変化率が所定の範囲外になると、インペラ42による混練を終了させるので、最適な状態に混練された被処理物48を得ることができる。
【0125】
(変形例3)
上述したこの発明の実施の形態1の変形例1および変形例2においては、測定した貯蔵弾性率の時間的変化率がしきい値またはしきい範囲外となった後に混練を停止する構成について説明したが、貯蔵弾性率の時間的変化率から予め混練停止タイミングを予測して制御してもよい。
【0126】
図11は、図4に示す貯蔵弾性率の時間変化に対して、この発明の実施の形態1の変形例3に従うプロセス装置における制御を説明するための図である。
【0127】
図11を参照して、測定制御部1は、プロセス開始指令を受け、モータ44に運転指令を与えて混練を開始すると、それに伴い、連続的または所定の時間間隔毎に被処理物48の粘弾性特性を測定する。所定の期間だけ粘弾性特性の測定を行なった後、測定制御部1は、測定した複数の粘弾性特性の測定値から補間式を導出する。さらに、測定制御部1は、導出した補間式から粘弾性特性の将来的な予測値を算出し、粘弾性特定がしきい値に到達する時間を予測する。そして、測定制御部1は、予測した到達時間になるまでモータ44を運転し、それ以降は、モータ44に停止指令を与えて混練を停止する。
【0128】
また、表示出力部16は、図11に示す貯蔵弾性率の時間変化を随時表示または/およびそのデータを外部へ出力する。さらに、表示出力部16は、モータ44に与える運転指令や停止指令などの指令情報を表示または/およびそのデータを外部へ出力する。
【0129】
上述のように、測定制御部1は、被処理物48に対する混練を開始した後、所定の期間だけ粘弾性特性を測定して将来的な粘弾性特性の変化を予測し、その予測した粘弾性特性に基づいて、混練を停止すべきタイミングを予め取得する。
【0130】
なお、測定した粘弾性特性から将来的な変化を予測する補間式としては、一例として、線形近似、多項式近似、指数近似、対数近似、累乗近似および移動平均近似などがある。
【0131】
図12は、この発明の実施の形態1の変形例3に従う測定制御部1におけるプロセス制御のフローチャートである。なお、測定制御部1は、図6に示す基準値取得のフローチャートに従い、記憶部14に基準値を予め取得しているものとする。
【0132】
図2および図12を参照して、演算部10は、入力部18を介してプロセス開始指令を受けたか否かを判断する(ステップS300)。一方、ユーザは、混練容器40に原料を投入した後、プロセス開始指令を与える。
【0133】
プロセス開始指令を受けていない場合(ステップS300においてNOの場合)には、演算部10は、プロセス開始指令を受けるまで待つ(ステップS300)。
【0134】
プロセス開始指令を受けた場合(ステップS300においてYESの場合)には、演算部10は、モータ44に運転指令を与える(ステップS302)。すると、モータ44の運転に応じて、インペラ42が被処理物48の混練を開始する。そして、演算部10は、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS304)。
【0135】
その後、演算部10は、時間データメモリ部12からトランスデューサ20が受信する反射音波の時間波形データを読出す(ステップS306)。そして、演算部10は、読出した反射音波の時間波形データに対してFFT処理を行ない、反射音波の特定の周波数における振幅値および位相を取得する(ステップS308)。さらに、演算部10は、記憶部14から基準値の振幅値および位相を読出し、取得した振幅値および位相との比較により、特定の周波数における貯蔵弾性率を測定(ステップS310)し、その測定した貯蔵弾性率を記憶部14に格納する(ステップS312)。
【0136】
続いて、演算部10は、プロセス開始から所定の測定期間が経過したか否かを判断する(ステップS314)。
【0137】
プロセス開始から所定の測定期間が経過していない場合(ステップS314においてNOの場合)には、演算部10は、再度、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS304)。以下、ステップS306〜ステップS314を繰返す。
【0138】
プロセス開始から所定の測定期間が経過している場合(ステップS314においてYESの場合)には、演算部10は、記憶部14から格納した複数の貯蔵弾性率を読出し、読出した貯蔵弾性率との相間値が高くなるように補間式を決定する(ステップS316)。そして、演算部10は、決定した補間式により規定される貯蔵弾性率が所定のしきい値に到達する時間を予測する(ステップS318)。
【0139】
その後、演算部10は、プロセス開始から予測した到達時間が経過したか否かを判断する(ステップS320)。プロセス開始から予測した到達時間が経過していない場合(ステップS320においてNOの場合)には、演算部10は、プロセス開始から予測した到達時間が経過するまで待つ(ステップS320)。プロセス開始から予測した到達時間が経過している場合(ステップS320においてYESの場合)には、演算部10は、モータ44に停止指令を与える(ステップS322)。すると、モータ44の停止に応じて、インペラ42による混練が終了する。そして、演算部10は、処理を終了する。
【0140】
このように、貯蔵弾性率の時間的変化率から、予め終了時間を予測して、インペラ42による混練を終了させるので、最適な状態に混練された被処理物48を得ることができる。
【0141】
(変形例4)
上述したこの発明の実施の形態1においては、被処理物がいわゆる縦方向に攪拌されるプロセス装置について説明したが、このようなプロセス装置において被処理物の粘性が高くなると、被処理物は一体化して混練容器内を回転移動する。そのため、一体化した被処理物の場合には、混練容器の側面に配置されたセンサ部から放射された入射音波が必ずしも被処理物に入射するとは限らない。そこで、センサ部に入射する反射音波のうち、被処理物で反射されたものを選択的に処理することが望ましい。
【0142】
図13は、図1に示す混練容器40における被処理物48の位置と反射音波との関係を示す図である。
【0143】
図13(a)は、被処理物48とセンサ部30との位置関係である。
図13(b)は、センサ部30において受信される反射音波の時間波形である。
【0144】
図13(a)を参照して、インペラ42の回転に伴い、被処理物48は、混練容器40内を回転移動する。そのため、一回転中の所定の期間において、被処理物48は遅延部材32と密着することができる。具体的には、状態ST10においては、被処理物48は、遅延部材32と密着することができず、その結果、センサ部30から放射された入射音波は、遅延部材32と空気中との境界で反射する。一方、状態ST12においては、被処理物48は、インペラ42の回転力により圧力を受け、遅延部材32と密着する。その結果、センサ部30から放射された入射音波は、遅延部材32と被処理物48との境界で反射する。また、状態ST14においては、被処理物48は、遅延部材32の一部と密着するだけで、遅延部材32の全面と密着することはできない。そのため、センサ部30から放射された入射音波の一部は、被処理物48との境界で反射され、残りの入射音波は、空気中との境界で反射される。なお、センサ部30が混練容器40の底部に配置される場合には、被処理物48の自重により遅延部材32と密着するが、そのような場合においても、被処理物48が底部に移動した場合においてのみ遅延部材32と密着できる。
【0145】
ところで、空気中の音響インピーダンスは、被処理物48に比較して十分小さいため、入射音波が遅延部材32と被処理物48との境界で反射する割合に比較して、入射音波が遅延部材32と空気中との境界で反射する割合は高い。
【0146】
図13(b)を参照して、センサ部30から見ると、遅延部材32と空気中との境界で反射される反射音波の受信強度は、遅延部材32と被処理物48との境界で反射される反射音波の受信強度より高い。
【0147】
そのため、時間経過に伴いセンサ部30で受信される複数の反射音波のうち、遅延部材32と被処理物48との間で反射されたものを選択的に抽出することで、被処理物48の正確な粘弾性特性を測定できる。すなわち、図13(b)において、状態ST10、ST12およびST14のそれぞれにおける受信波形のうち、そのピーク振幅値が最も低い受信波形を抽出することを意味する。
【0148】
具体的には、測定制御部1は、所定の時間波形をもつ入射音波を所定の時間間隔で放射する。そして、測定制御部1は、入射音波の放射タイミングと同期して、各入射音波に対応する反射音波の最大強度を検出する。すなわち、測定制御部1は、図13(b)におけるピーク振幅値A1,A2,A3をそれぞれ検出する。そして、測定制御部1は、検出したピーク振幅値のうち、その値が最も小さい時間間隔を特定し、その区間における受信音波の時間波形データを用いて、粘弾性特性を測定する。
【0149】
なお、インペラ42の回転周期(インペラ42が1回転するのに要する時間)に比較して、入射音波の放射時間が極めて短い場合には、センサ部30は、インペラ42が1回転する期間において、多数の反射音波を受信できる。したがって、1回転毎に受信したそれぞれの反射音波に対して、ピーク振幅値を検出し、その中から最小のピーク振幅値および対応する区間を特定することができる。一方、インペラ42の回転周期に比較して、入射音波の放射時間が比較的長い場合には、インペラ42が複数回転する毎に最小のピーク振幅を特定してもよい。
【0150】
図14は、この発明の実施の形態1の変形例4に従う測定制御部1におけるプロセス制御のフローチャートである。なお、測定制御部1は、図6に示す基準値取得のフローチャートに従い、記憶部14に基準値を予め取得しているものとする。
【0151】
図2および図14を参照して、演算部10は、入力部18を介してプロセス開始指令を受けたか否かを判断する(ステップS350)。一方、ユーザは、混練容器40に原料を投入した後、プロセス開始指令を与える。
【0152】
プロセス開始指令を受けていない場合(ステップS350においてNOの場合)には、演算部10は、プロセス開始指令を受けるまで待つ(ステップS350)。
【0153】
プロセス開始指令を受けた場合(ステップS350においてYESの場合)には、演算部10は、モータ44に運転指令を与える(ステップS352)。すると、モータ44の運転に応じて、インペラ42が被処理物48の混練を開始する。そして、演算部10は、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS354)。
【0154】
その後、演算部10は、時間データメモリ部12からトランスデューサ20が所定の期間に受信した反射音波の時間波形データを読出す(ステップS356)。そして、演算部10は、読出した反射音波の時間波形データの中からピーク振幅値を取得し(ステップS358)、その取得したピーク振幅値とその期間を指定するためのデータとを対応付けて記憶部14に格納する(ステップS360)。
【0155】
そして、演算部10は、所定の数のピーク振幅値を取得したか否かを判断する(ステップS362)。所定の数のピーク振幅値を取得していない場合(ステップS362においてNOの場合)には、演算部10は、再度、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS354)。以下、ステップS356〜ステップS362を繰返す。
【0156】
一方、所定の数のピーク振幅値を取得している場合(ステップS362においてYESの場合)には、演算部10は、記憶部14に格納したピーク振幅値のうち、最小のものを抽出し、その抽出したピーク振幅値に対応する期間を特定する(ステップS364)。そして、演算部10は、その特定した期間における反射音波の時間波形データに対してFFT処理を行ない、反射音波の特定の周波数における振幅値および位相を取得する(ステップS366)。さらに、演算部10は、記憶部14から基準値の振幅値および位相を読出し、取得した振幅値および位相との比較により、特定の周波数における貯蔵弾性率を測定し(ステップS368)、その測定した貯蔵弾性率を記憶部14に格納する(ステップS370)。
【0157】
続いて、演算部10は、測定した貯蔵弾性率がしきい値を超過しているか否かを判断する(ステップS372)。貯蔵弾性率がしきい値を超過していない場合(ステップS372においてNOの場合)には、演算部10は、再度、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS354)。以下、ステップS356〜ステップS372を繰返す。
【0158】
粘弾性特性がしきい値を超過している場合(ステップS372においてYESの場合)には、演算部10は、モータ44に停止指令を与える(ステップS374)。すると、モータ44の停止に応じて、インペラ42による混練が終了する。そして、演算部10は、処理を終了する。
【0159】
このように、センサ部30において受信された複数の反射音波のうち、被処理物において反射された反射音波だけを選択的に抽出するので、より高い精度で貯蔵弾性率を測定できる。
【0160】
なお、上述のこの発明の実施の形態1における説明においては、粘弾性特性の一例として、貯蔵弾性率を測定する構成について例示したが、損失弾性率および損失正接を測定する構成についても同様に適用できることは言うまでもない。
【0161】
この発明の実施の形態1によれば、センサ部は、混練容器の内面と一体化して配置された遅延部材を介して入射音波を被処理物へ放射し、かつ、被処理物と遅延部材との境界で入射音波が反射されて生じる反射音波を受信する。そして、測定制御部は、センサ部で受信された反射音波に基づいて、被処理物の粘弾性特性の1つである貯蔵弾性率を測定し、かつ、その測定結果に基づいてインペラの運転または停止を制御する。そのため、インペラの運転に伴う混練作用を受けて、粘弾性特性が変化する被処理物に対して、所望の粘弾性特性が得られるように制御することができる。よって、たとえば、パン生地などのように、混練作用を受けて粘弾性特性が増加から減少に転じる極大点を有する被処理物などに対しても、その粘弾性特性の変化に応じて最適な処理を実行するプロセス装置を実現できる。
【0162】
また、この発明の実施の形態1によれば、測定制御部は、測定した粘弾性特性が予め定められてしきい値を超過すると、インペラを停止させるので、被処理物の粘弾性特性をしきい値以上とすることができる。
【0163】
また、この発明の実施の形態1によれば、測定した粘弾性特性の時間的変化率の符号に基づいてインペラを停止させるので、極大点などの変極点を有する被処理物に対して、その粘弾性特性を変極点における値とすることができる。よって、パン生地などのように、極大点が最良のタイミングであるような被処理物に対して、最適な処理を実行するプロセス装置を実現できる。
【0164】
また、この発明の実施の形態1によれば、測定した粘弾性特性の時間的変化率が予め定められたしきい範囲内であるか否かに基づいてインペラを停止させる。よって、外的作用に対する粘弾性特性の変化率が大幅に低下する前に処理を終了させることができるため、より効率的な処理を実行するプロセス装置を実現できる。
【0165】
また、この発明の実施の形態1によれば、過去に測定された粘弾性特性を用いて、将来的な粘弾性特性の変化を予測して、その予測した粘弾性特性に基づいてインペラを停止させる。よって、パン生地などのように、極大点が最良のタイミングであるような被処理物に対して、インペラの停止タイミングが極大点に遅れることがないように、最適な処理を実行するプロセス装置を実現できる。
【0166】
また、この発明の実施の形態1によれば、インペラの回転に伴い被処理物が混練容器内を移動するような場合においても、センサ部で受信される反射音波の強度に応じて、最も正確な位置における反射音波を選択的に抽出して粘弾性特性を測定するので、測定誤差を抑制して、最適な処理を実行するプロセス装置を実現できる。
【0167】
[実施の形態2]
上述のこの発明の実施の形態1においては、被処理物を混練することで粘弾性特性を変化させる構成について説明した。一方、この発明の実施の形態2においては、被処理物を圧延することで粘弾性特性を変化させる構成について説明する。
【0168】
図15は、この発明の実施の形態2に従うプロセス装置102の概略構成図である。
図15を参照して、プロセス装置102は、測定制御部2と、回転台94と、ローラ96と、モータ98および110と、センサ部30と、遅延部材32とからなる。そして、プロセス装置102は、回転台94上に配置された被処理物48を回転台94の回転およびローラ96の回転により圧延することで、その粘弾性特性を変化させる。
【0169】
このようなプロセス装置102により製造される製品としては、一例として素麺があり、被処理物48としては小麦粉および塩と水との混合物を用いる。また、同様にして、そばなどの麺類についても同様に製造が可能である。以下では、主として、素麺を製造する場合について詳細に説明する。
【0170】
回転台94は、その回転軸が垂直方向となるように配置され、その上面とローラ96との間に被処理物48を受入れる。そして、回転台94は、モータ98からの駆動力を受けて自身が回転することで、被処理物48をローラ96との間に圧入する。また、回転台94は、その内部に配置されるセンサ部30および遅延部材32が一体化して回転する。
【0171】
モータ98は、回転台94と機械的に結合され、発生する回転運動を回転台94に伝達する。そして、モータ98は、測定制御部2からの運転指令に応じて、運転または停止する。
【0172】
ローラ96は、回転角度に関わらずその外径面が常に回転台94の上面と接するように配置され、モータ110からの駆動力を受けて回転する。そして、ローラ96は、自身の回転と、回転台94の回転に伴う引き込み力を発生し、被処理物48を圧延する。
【0173】
モータ110は、ローラ96と機械的に結合され、発生する回転運動をローラ96に伝達する。そして、モータ110は、測定制御部2からの運転指令に応じて、運転または停止する。
【0174】
遅延部材32は、その一方面が回転台94の上面の一部を形成するように配置され、かつ、他方面においてセンサ部30と密着する。その他については、上述したこの発明の実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0175】
センサ部30は、遅延部材32と密着して配置され、測定制御部2からの放射指令に応じて、遅延部材32を介して、被処理物48へ入射音波を放射する。そして、センサ部30は、入射音波が被処理物48と遅延部材32との境界において反射されて生じる反射音波を受信し、その時間波形を測定制御部2へ出力する。その他については、上述したこの発明の実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0176】
なお、測定制御部2、センサ部30および遅延部材32のより詳細な構成は、図2に示すこの発明の実施の形態1に従う測定制御部1、センサ部30および遅延部材32と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
【0177】
図16は、素麺を製造する原料の混合物である被処理物48に対する貯蔵弾性率(弾性)の時間変化の一例である。なお、回転台94およびローラ96の運転中における回転速度は一定とする。
【0178】
図16を参照して、この発明の実施の形態2に従う測定制御部2は、被処理物48の粘弾性特性として貯蔵弾性率を測定する。
【0179】
一方、被処理物48は、回転台94とローラ96とによる圧延作用を受けると、その応力により化学的な結合状態を変化させ、貯蔵弾性率は単調に増加する。一般的に、素麺を製造する場合においては、原料である被処理物48が所定の貯蔵弾性率となるまで圧延することで、いわゆる「コシ」のある高品質な素麺を製造できる。
【0180】
そこで、測定制御部2は、プロセス開始指令を受けると、モータ98および110にそれぞれ運転指令を与える。すると、回転台94とローラ96とによる圧延が開始される。
【0181】
その後、被処理物48の貯蔵弾性率が所定のしきい値に到達すると、測定制御部2は、モータ98および110にそれぞれ停止指令を与え、回転台94とローラ96とによる圧延を停止する。
【0182】
また、表示出力部16は、図16に示す貯蔵弾性率の時間変化を随時表示または/およびそのデータを外部へ出力する。さらに、表示出力部16は、モータ98および110に与える運転指令や停止指令などの指令情報を表示または/およびそのデータを外部へ出力する。
【0183】
測定制御部2における処理フローは、図5に示すこの発明の実施の形態1に従う測定制御部1におけるプロセス制御のフローチャートと同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0184】
この発明の実施の形態2によれば、センサ部は、回転台の上面と一体化して配置された遅延部材を介して入射音波を被処理物へ放射し、かつ、被処理物と遅延部材との境界で入射音波が反射されて生じる反射音波を受信する。そして、測定制御部は、センサ部で受信された反射音波に基づいて、被処理物の粘弾性特性の1つである貯蔵弾性率を測定し、かつ、その測定結果に基づいて回転台およびローラの運転または停止を制御する。そのため、回転台とローラとによる圧延作用を受けて、粘弾性特性が変化する被処理物に対して、所望の粘弾性特性が得られるように制御することができる。よって、たとえば、素麺などのように、混練作用を受けて粘弾性特性が単調増加する被処理物などに対しても、所定の粘弾性特性を得るように、その粘弾性特性の変化に応じて最適な処理を実行するプロセス装置を実現できる。
【0185】
[実施の形態3]
上述のこの発明の実施の形態1および2においては、特定の周波数における粘弾性特性(一例として貯蔵弾性率)の時間的な変化を検出して制御を行なう構成について説明した。一方、この発明の実施の形態3においては、複数の周波数に対する粘弾性特性、すなわち周波数領域における粘弾性特性の時間的な変化を検出して制御を行なう構成について説明する。
【0186】
図17は、この発明の実施の形態3に従うプロセス装置103の概略構成図である。
図17を参照して、プロセス装置103は、測定制御部3と、混練容器114と、センサ部30と、遅延部材32と、モータ118.1,118.2と、シャフト116.1,116.2と、翼部120.1,120.2とからなる。そして、プロセス装置103は、シャフト116.1および116.2を互いに逆方向に同期して回転させることで、それぞれに取り付けられた翼部120.1および120.2により、投入された被処理物48を混合および混練するとともに、センサ部30から被処理物48へ入射音波を放射し、その入射音波で生じる反射音波に基づいて、被処理物48の粘弾性特性を測定する。さらに、プロセス装置103は、被処理物48が所望の粘弾性特性になると、被処理物48の混練を終了する。一例として、プロセス装置103は、被処理物48として魚介類のすり身および卵白の混合物を受入れてかまぼこを製造する。同様にして、プロセス装置103は、ちくわなどの練り製品、チョコレート、パイ生地、マカロニ、ケーキ生地、麺生地などの製造も可能である。
【0187】
混練容器114は、その上部に開口部をもつ箱形状であり、その上部から原材料である被処理物48を受入れる。
【0188】
シャフト116.1および116.2は、その回転軸が互いに平行となるように配置され、それぞれモータ118.1および118.2からの駆動力を受けて互いに逆方向に回転する。
【0189】
翼部120.1および120.2は、その形状がらせん状に形成され、回転角度に関わらず互いの間隔が一定となるように、それぞれシャフト116.1および116.2に取り付けられる。そして、翼部120.1および120.2は、シャフト116.1および116.2から互いに逆方向の回転を与えられ、翼部120.1と翼部120.2との間に存在する被処理物48に対して、シャフト116.1および116.2の軸方向に移動させるような力を発生する。すなわち、翼部120.1および120.2の各々は、スクリューのように機能する。
【0190】
モータ118.1および118.2は、それぞれシャフト116.1および116.2と機械的に結合され、それぞれが発生する回転運動をシャフト116.1および116.2に伝達する。そして、モータ118.1および118.2は、測定制御部3からの運転指令に応じて、同期して運転または停止する。
【0191】
測定制御部3は、センサ部30へ放射指令を与え、センサ部30から被処理物48へ入射音波を放射させ、かつ、センサ部30において受信される反射音波の時間波形に基づいて、被処理物48の粘弾性特性を測定する。さらに、測定制御部3は、その測定した被処理物48の粘弾性特性に基づいて、モータ118.1および118.2へ与える運転指令を変更する。
【0192】
センサ部30は、遅延部材32と密着して配置され、測定制御部3からの放射指令に応じて、遅延部材32を介して、混練容器114の内部へ入射音波を放射する。そして、センサ部30は、入射音波が被処理物48と遅延部材32との境界において反射されて生じる反射音波を受信し、その時間波形を測定制御部3へ出力する。その他については、上述したこの発明の実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0193】
遅延部材32は、その一方面が混練容器114の内面と一体化するように配置され、かつ、他方面においてセンサ部30と密着する。
【0194】
なお、測定制御部3、センサ部30および遅延部材32のより詳細な構成は、図2に示すこの発明の実施の形態1に従う測定制御部1、センサ部30および遅延部材32と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
【0195】
図18は、かまぼこを製造する原料の混合物である被処理物48に対する損失弾性率の周波数特性の一例である。なお、シャフト116.1および116.2の運転中の回転速度は一定とする。
【0196】
図18を参照して、この発明の実施の形態3に従う測定制御部3は、被処理物48の粘弾性特性として損失弾性率(粘性)を測定する。
【0197】
一方、被処理物48は、翼部120.1および120.2の回転に伴い生じる攪拌力により、初期状態においては粉砕や破砕などを伴う混合作用を生じ、十分に混合された後には、混練作用を生じる。その結果、被処理物48の周波数領域における損失弾性率は、全体的に高周波数領域に移動し、かつ、その周波数分布頻度が広がる。そのため、かまぼこなどを製造する場合においては、その後に連続する成形工程や加熱工程などにおける加工性を向上させるため、周波数領域において損失弾性率が最大となる周波数が所定の所定のしきい範囲内となるように、混合および混練することが望ましい。
【0198】
そこで、測定制御部3は、プロセス開始指令を受けると、モータ118.1および118.2にそれぞれ運転指令を与え、被処理物48に対する損失弾性率の周波数特性を測定し、測定した損失弾性率が最大となる周波数が所定のしきい範囲内になるまで運転を継続する。
【0199】
また、表示出力部16は、図18に示す損失弾性率の周波数特性およびその時間変化を随時表示または/およびそのデータを外部へ出力する。さらに、表示出力部16は、モータ118.1および118.2に与える運転指令や停止指令などの指令情報を表示または/およびそのデータを外部へ出力する。
【0200】
(フローチャート)
図19は、この発明の実施の形態3に従う測定制御部3におけるプロセス制御のフローチャートである。なお、測定制御部3は、図6に示す基準値取得のフローチャートに従い、記憶部14に基準値を予め取得しているものとする。
【0201】
図2および図19を参照して、演算部10は、入力部18を介してプロセス開始指令を受けたか否かを判断する(ステップS400)。一方、ユーザは、混練容器40に原料を投入した後、プロセス開始指令を与える。
【0202】
プロセス開始指令を受けていない場合(ステップS400においてNOの場合)には、演算部10は、プロセス開始指令を受けるまで待つ(ステップS400)。
【0203】
プロセス開始指令を受けた場合(ステップS400においてYESの場合)には、モータ118.1および118.2に運転指令を与える(ステップS402)。すると、モータ118.1および118.2の運転に応じて、翼部120.1および120.2が被処理物48の混練を開始する。そして、演算部10は、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS404)。
【0204】
その後、演算部10は、時間データメモリ部12からトランスデューサ20が受信する反射音波の時間波形データを読出す(ステップS406)。そして、演算部10は、読出した反射音波の時間波形データに対してFFT処理を行ない、反射音波の各周波数における振幅値および位相を取得する(ステップS408)。さらに、演算部10は、記憶部14から基準値の振幅値および位相を読出し、取得した振幅値および位相と比較して、各周波数における損失弾性率を順次測定する(ステップS410)。
【0205】
そして、演算部10は、測定した各周波数における損失弾性率のうち、最大値をとる周波数を特定する(ステップS412)。さらに、演算部10は、特定した周波数が予め設定されるしきい範囲内に存在するか否かを判断する(ステップS414)。
【0206】
特定した周波数が予め設定されるしきい範囲内に存在しない場合(ステップS414においてNOの場合)には、演算部10は、再度、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS404)。以下、ステップS406〜ステップS414を繰返す。
【0207】
特定した周波数が予め設定されるしきい範囲内に存在する場合(ステップS414においてYESの場合)には、演算部10は、モータ118.1および118.2に停止指令を与える(ステップS416)。すると、モータ118.1および118.2の停止に応じて、翼部120.1および120.2による混練が終了する。そして、演算部10は、処理を終了する。
【0208】
なお、上述の処理フローにおいては、周波数領域における損失弾性率が最大値をとる周波数に基づいて判断する場合について説明したが、周波数領域における損失弾性率の最大値に基づいて判断する構成や、所定のしきい値以上となる周波数の範囲に基づいて判断する構成としてもよい。
【0209】
この発明の実施の形態3によれば、センサ部は、混練容器の内面と一体化して配置された遅延部材を介して入射音波を被処理物へ放射し、かつ、被処理物と遅延部材との境界で入射音波が反射されて生じる反射音波を受信する。そして、測定制御部は、センサ部で受信された反射音波に基づいて、被処理物の粘弾性特性の1つである損失弾性を各周波数成分に対して測定し、かつ、その測定結果に基づいて翼部の回転または停止を制御する。そのため、2つの翼部による混合作用および混練作用を受けて、粘弾性特性が変化する被処理物に対して、所望の粘弾性特性が得られるように制御することができる。よって、たとえば、かまぼこなどのように、混合作用および混練作用を受けて粘弾性特性の周波数特性が変化する被処理物などに対しても、所定の粘弾性特性を得るように、その粘弾性特性の変化に応じて最適な処理を実行するプロセス装置を実現できる。
【0210】
また、この発明の実施の形態3によれば、単一周波数における粘弾性特性に加えて、複数の周波数成分に対する粘弾性特性を測定する。そのため、単一周波数における粘弾性特性の時間的変化に代えて、粘弾性特性の周波数特性、すなわち全体特性の変化に基づいて、最適な処理を実行するプロセス装置を実現できる。
【0211】
[実施の形態4]
上述のこの発明の実施の形態4においては、被処理物を圧延することで粘弾性特性を変化させる構成について説明した。一方、この発明の実施の形態4においては、被処理物を圧延し、かつ、加熱することで粘弾性特性を変化させる構成について説明する。
【0212】
図20は、この発明の実施の形態4に従うプロセス装置104の概略構成図である。
図20を参照して、プロセス装置104は、測定制御部4と、ブロック部60と、センサ部30と、遅延部材32と、モータ50と、ローラ52と、スクレパ54と、電源装置56と、発熱部58とからなる。そして、プロセス装置104は、ローラ52からの回転圧力を受け、ブロック部60との間に存在する被処理物48を圧延し、並行して、ブロック部60に内蔵された発熱部58からの発生熱を被処理物48に与える。このように、プロセス装置104は、被処理物48に圧延作用および加熱作用を与えることで、被処理物48の粘弾性特性を変化させる。
【0213】
このようなプロセス装置104により製造される製品としては、一例としてゴムがある。たとえば、タイヤ用のゴムを製造する場合には、被処理物48として、天然ゴム、合成ゴム、硫黄、カーボンブラック、二酸化ケイ素および顔料などの混合物が用いられる。以下では、主として、タイヤ用のゴムを製造する場合について詳細に説明する。
【0214】
ブロック部60は、その一面においてローラ52からの圧力を受けるように配置される。そして、ローラ52と接する面の内部には、センサ部30および遅延部材32、ならびに電源装置56および発熱部58が配置される。
【0215】
ローラ52は、回転角度に関わらずその外径面が常にブロック部60と接するように配置され、モータ50からの駆動力を受けて回転する。そして、ローラ52は、自身の回転により被処理物48に圧力を与えながら、被処理物48を引伸ばす。
【0216】
モータ50は、ローラ52と機械的に結合され、自身が発生する回転運動をローラ52に伝達する。そして、モータ50は、測定制御部2からの運転指令に応じて、運転および停止し、または運転中の回転速度を変更する。
【0217】
スクレパ54は、その一端がローラ52の表面に接するように配置され、ローラ52に貼着して回転する被処理物48をローラ52から分離させる。すなわち、スクレパ54は、ローラ52の表面に付着する被処理物48を取除き、ローラ52による連続的な圧延を実現する。
【0218】
発熱部58は、電源装置56から受けた供給電力を熱エネルギーに変換し、ブロック部60とローラ52との接触面を介して、その熱エネルギーを被処理物48に与える。一例として、発熱部58は、電熱線や誘導加熱装置(IH:Induction Heating)などからなる。
【0219】
電源装置56は、測定制御部4からの指令に応じて、発熱部58に供給する電力を調整する。なお、電源装置56は、発熱部58の構成に応じた電力を供給し、一例として、発熱部58が電熱線からなる場合には、直流または商用の交流電力を供給し、発熱部58が誘導加熱装置からなる場合には、高周波の交流電力を供給する。
【0220】
遅延部材32は、その一方面がブロック部60と被処理物48との接触面と一体化するように配置され、かつ、他方面においてセンサ部30と密着する。その他については、上述したこの発明の実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0221】
センサ部30は、遅延部材32と密着して配置され、測定制御部2からの放射指令に応じて、遅延部材32を介して、被処理物48へ入射音波を放射する。そして、センサ部30は、入射音波が被処理物48と遅延部材32との境界において反射されて生じる反射音波を受信し、その時間波形を測定制御部2へ出力する。その他については、上述したこの発明の実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0222】
なお、測定制御部2、センサ部30および遅延部材32のより詳細な構成は、図2に示すこの発明の実施の形態1に従う測定制御部1、センサ部30および遅延部材32と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
【0223】
図21は、タイヤ用のゴムを製造する原料の混合物である被処理物48に対する損失弾性率(粘性)の時間変化の一例である。なお、ローラ52の運転中の回転速度は一定であり、かつ、発熱部58から通電中に与えられる単位時間あたりの熱エネルギーも一定とする。
【0224】
図21を参照して、この発明の実施の形態4に従う測定制御部4は、被処理物48の粘弾性特性として損失弾性率を測定する。
【0225】
一方、被処理物48は、ローラ52による圧延作用および発熱部58からの加熱作用を受けると、その成分が拡散して、損失弾性率は単調に増加する。一般的に、タイヤ用のゴムを製造する場合においては、原料である被処理物48が所定の損失弾性率となるまで圧延作用および加熱作用を与え、その後は、加熱作用を停止し、圧延作用のみを所定の時間だけ与えることで、良質なタイヤ用のゴムが製造できることが知られている。
【0226】
そこで、測定制御部2は、プロセス開始指令を受けると、モータ50に運転指令を与えるとともに、電源装置56に通電指令を与える。すると、ローラ52による圧延および発熱部58による加熱が開始される。
【0227】
その後、被処理物48の損失弾性率が所定のしきい値に到達すると、測定制御部2は、まず、電源装置56へ遮断指令を与え、電源装置56からの電源供給を遮断することで、発熱部58による加熱を停止する。そして、測定制御部2は、電源装置56へ遮断指令を与えた後、所定の期間経過すると、モータ50に停止指令を与え、ローラ52による圧延を停止する。
【0228】
また、表示出力部16は、図21に示す損失弾性率の時間変化を随時表示または/およびそのデータを外部へ出力する。さらに、表示出力部16は、モータ50に与える運転指令や停止指令、および電源装置56に与える通電指令や遮断指令などの指令情報を表示または/およびそのデータを外部へ出力する。
【0229】
(フローチャート)
図22は、測定制御部4におけるプロセス制御のフローチャートである。なお、測定制御部4は、図6に示す基準値取得のフローチャートに従い、記憶部14に基準値を予め取得しているものとする。
【0230】
図2および図22を参照して、演算部10は、入力部18を介してプロセス開始指令を受けたか否かを判断する(ステップS450)。一方、ユーザは、ブロック部60とローラ52との間に原料を投入した後、プロセス開始指令を与える。
【0231】
プロセス開始指令を受けていない場合(ステップS450においてNOの場合)には、演算部10は、プロセス開始指令を受けるまで待つ(ステップS450)。
【0232】
プロセス開始指令を受けた場合(ステップS450においてYESの場合)には、演算部10は、モータ50に運転指令および電源装置56に通電指令をそれぞれ与える(ステップS452)。すると、モータ50の運転に応じて、ローラ52が被処理物48の圧延を開始し、かつ、電源装置56の電源供給に応じて、発熱部58が被処理物48の加熱を開始する。そして、演算部10は、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS454)。
【0233】
その後、演算部10は、時間データメモリ部12からトランスデューサ20が受信する反射音波の時間波形データを読出す(ステップS456)。そして、演算部10は、読出した反射音波の時間波形データに対してFFT処理を行ない、反射音波の特定の周波数における振幅値および位相を取得する(ステップS458)。さらに、演算部10は、記憶部14から基準値の振幅値および位相を読出し、取得した振幅値および位相との比較により、特定の周波数における損失弾性率を測定する(ステップS460)。
【0234】
そして、演算部10は、測定した損失弾性率がしきい値を超過しているか否かを判断する(ステップS462)。
【0235】
損失弾性率がしきい値を超過していない場合(ステップS462においてNOの場合)には、演算部10は、再度、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS454)。以下、ステップS456〜ステップS462を繰返す。
【0236】
損失弾性率がしきい値を超過している場合(ステップS462においてYESの場合)には、演算部10は、電源装置56に遮断指令を与える(ステップS464)。すると、電源装置56からの電源供給の遮断に伴い、発熱部58による加熱が終了する。
【0237】
さらに、演算部10は、所定の時間だけ経過するのを待つ(ステップS466)。その後、演算部10は、モータ50に停止指令を与える(ステップS468)。すると、モータ50の停止に応じて、ローラ52による圧延が停止する。そして、演算部10は、処理を終了する。
【0238】
この発明の実施の形態4によれば、センサ部は、その一方面がブロック部と被処理物との接触面と一体化して配置された遅延部材を介して入射音波を被処理物へ放射し、かつ、被処理物と遅延部材との境界で入射音波が反射されて生じる反射音波を受信する。そして、測定制御部は、センサ部で受信された反射音波に基づいて、被処理物の粘弾性特性の1つである損失弾性率を測定し、かつ、その測定結果に基づいてローラの運転または停止、ならびに、発熱部の加熱または停止を制御する。そのため、ブロック部とローラとの圧延作用、および、発熱部からの加熱作用を受けて、粘弾性特性が変化する被処理物に対して、所望の粘弾性特性が得られるように制御することができる。よって、たとえば、タイヤ用ゴムなどのように、圧延作用および加熱作用を受けて粘弾性特性が単調増加する被処理物などに対しても、所定の粘弾性特性を得るように、ローラの停止タイミングおよび発熱体の停止タイミングをそれぞれ独立に制御することで、その粘弾性特性の変化に応じて最適な処理を実行するプロセス装置を実現できる。
【0239】
[実施の形態5]
上述のこの発明の実施の形態1〜4においては、主として、固形物または半固形物の被処理物に対して外的作用を与え、粘弾性特性を変化させる構成について説明した。一方、この発明の実施の形態5においては、主として流動性を有する被処理物に対して外的作用を与え、粘弾性特性を変化させる構成について説明する。
【0240】
図23は、この発明の実施の形態5に従うプロセス装置105の概略構成図である。
図23を参照して、プロセス装置105は、測定制御部5と、攪拌容器70と、センサ部30と、遅延部材32と、モータ72と、駆動軸74と、インペラ76とからなる。そして、プロセス装置105は、インペラ76を回転させることで、攪拌容器70に投入された被処理物48を攪拌しつつ、センサ部30から被処理物48へ入射音波を放射し、その入射音波で生じる反射音波に基づいて、被処理物48の粘弾性特性を測定する。さらに、プロセス装置105は、被処理物48が所望の粘弾性特性になると、被処理物48の攪拌を終了する。一例として、プロセス装置105は、被処理物48として生卵、油および酢の混合物を受入れてマヨネーズを製造する。同様にして、プロセス装置105は、生卵、小麦粉、砂糖および香料の混合物からケーキ生地、パイ生地、バームクーヘン生地などを製造することもできる。さらに、チョコレート、パスタ生地、マカロニ生地、麺生地などの製造も可能である。以下では、主として、マヨネーズを製造する場合について詳細に説明する。
【0241】
攪拌容器70は、その上部に開口部をもつカップ状の形状であり、その上部の開口部から原材料である被処理物48を受入れる。
【0242】
インペラ76は、その回転軸が垂直方向となるように、攪拌容器70の中央部に配置され、モータ72からの駆動力を受けて回転する。そして、インペラ76は、自身の回転により被処理物48内に旋回力を与え、被処理物48を攪拌する。
【0243】
駆動軸74は、モータ72により生じる駆動力をインペラ76に与える。なお、モータ72の回転速度が、被処理物48に適したインペラ76の回転速度と大きく離れている場合には、モータ72とインペラ76との間に中間ギアを介挿してもよい。
【0244】
モータ72は、駆動軸74と機械的に結合され、駆動軸74を介して自身が発生する回転運動をインペラ76に伝達する。そして、モータ72は、測定制御部5からの運転指令に応じて、運転または停止し、または運転中の回転速度を変更する。
【0245】
測定制御部5は、センサ部30へ放射指令を与え、センサ部30から被処理物48へ入射音波を放射させ、かつ、センサ部30において受信される反射音波の時間波形に基づいて、被処理物48の粘弾性特性を測定する。さらに、測定制御部5は、その測定した被処理物48の粘弾性特性に基づいて、モータ72へ与える運転指令を変更する。
【0246】
センサ部30は、遅延部材32と密着して配置され、測定制御部5からの放射指令に応じて、遅延部材32を介して、攪拌容器70の内部へ入射音波を放射する。そして、センサ部30は、入射音波が被処理物48と遅延部材32との境界において反射されて生じる反射音波を受信し、その時間波形を測定制御部5へ出力する。その他については、上述したこの発明の実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0247】
遅延部材32は、その一方面が攪拌容器70の内面と一体化するように配置され、かつ、他方面においてセンサ部30と密着する。
【0248】
なお、測定制御部5、センサ部30および遅延部材32のより詳細な構成は、図2に示すこの発明の実施の形態1に従う測定制御部1、センサ部30および遅延部材32と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
【0249】
図24は、マヨネーズを製造する原料の混合物である被処理物48に対する貯蔵弾性率と損失弾性率との時間変化の一例である。なお、インペラ76の運転中の回転速度は一定とする。
【0250】
図24を参照して、この発明の実施の形態5に従う測定制御部5は、被処理物48の粘弾性特性として貯蔵弾性率および損失弾性率を同時に測定する。
【0251】
一方、被処理物48は、インペラ76の回転に伴う攪拌作用により、物質中の分子間における相互作用が変化し、いわゆる乳化が生じる。そのため、インペラ76の回転時間に応じて、被処理物48の貯蔵弾性率および損失弾性率はともに変化する。一般に、マヨネーズを製造する場合においては、貯蔵弾性率および損失弾性率のいずれもが所定のしきい範囲内となることが望ましい。
【0252】
そこで、測定制御部5は、同一の二次元座標上に示される貯蔵弾性率および損失弾性率が所定のしきい領域78内に到達したか否かを判定し、しきい領域78内に到達した時点でインペラ76による攪拌を停止する。
【0253】
また、表示出力部16は、図24に示す貯蔵弾性率と損失弾性率との関係の時間変化を随時表示または/およびそのデータを外部へ出力する。さらに、表示出力部16は、モータ72に与える運転指令や停止指令などの指令情報を表示または/およびそのデータを外部へ出力する。
【0254】
(フローチャート)
図25は、測定制御部5におけるプロセス制御のフローチャートである。なお、測定制御部5は、図6に示す基準値取得のフローチャートに従い、記憶部14に基準値を予め取得しているものとする。
【0255】
図2および図25を参照して、演算部10は、入力部18を介してプロセス開始指令を受けたか否かを判断する(ステップS500)。一方、ユーザは、攪拌容器70内に原料を投入した後、プロセス開始指令を与える。
【0256】
プロセス開始指令を受けていない場合(ステップS500においてNOの場合)には、演算部10は、プロセス開始指令を受けるまで待つ(ステップS500)。
【0257】
プロセス開始指令を受けた場合(ステップS500においてYESの場合)には、演算部10は、モータ72に運転指令を与える(ステップS502)。すると、モータ72の運転に応じて、インペラ76が被処理物48の攪拌を開始する。そして、演算部10は、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS504)。
【0258】
その後、演算部10は、時間データメモリ部12からトランスデューサ20が受信する反射音波の時間波形データを読出す(ステップS506)。そして、演算部10は、読出した反射音波の時間波形データに対してFFT処理を行ない、反射音波の特定の周波数における振幅値および位相を取得する(ステップS508)。さらに、演算部10は、記憶部14から基準値の振幅値および位相を読出し、取得した振幅値および位相との比較により、特定の周波数における貯蔵弾性率および損失弾性率を測定する(ステップS510)。
【0259】
そして、演算部10は、測定した貯蔵弾性率および損失弾性率のいずれもがそれぞれのしきい範囲内であるか否かを判断する(ステップS512)。
【0260】
貯蔵弾性率または損失弾性率のいずれかがそれぞれのしきい範囲内にない場合(ステップS512においてNOの場合)には、演算部10は、再度、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS504)。以下、ステップS506〜ステップS512を繰返す。
【0261】
貯蔵弾性率および損失弾性率のいずれもがそれぞれのしきい範囲内である場合(ステップS512においてYESの場合)には、演算部10は、モータ72に停止指令を与える(ステップS514)。すると、モータ72の停止に伴い、インペラ76による攪拌が終了する。そして、演算部10は、処理を終了する。
【0262】
なお、上述の処理は、マヨネーズ以外にも、ケーキ生地、パイ生地、バームクーヘン生地、チョコレート、パスタ生地、マカロニ生地、麺生地などにも同様に適用できる。
【0263】
なお、上述の説明においては、貯蔵弾性率および損失弾性率を同時に測定する構成について説明したが、貯蔵弾性率および損失弾性率に代えて、損失弾性率と貯蔵弾性率との比である損失正接だけを測定してもよい。この場合には、貯蔵弾性率および損失弾性率の絶対値を取得することはできないが、損失弾性率と貯蔵弾性率との相対的な関係に基づいて判断できる被処理物に対しては、1種類の値を測定および判断をすれば済むので、より構成を簡素化できる。
【0264】
この発明の実施の形態5によれば、センサ部は、攪拌容器の内面と一体化して配置された遅延部材を介して入射音波を被処理物へ放射し、かつ、被処理物と遅延部材との境界で入射音波が反射されて生じる反射音波を受信する。そして、測定制御部は、センサ部で受信された反射音波に基づいて、被処理物の粘弾性特性である貯蔵弾性率および損失弾性率を同時に測定し、かつ、その測定結果に基づいてインペラの回転または停止を制御する。そのため、インペラの回転による攪拌作用を受けて、貯蔵弾性率および損失弾性率のいずれもが変化する被処理物に対して、所望の粘弾性特性が得られるように制御することができる。よって、たとえば、マヨネーズなどのように、攪拌作用を受けて貯蔵弾性率および損失弾性率のいずれもが変化する被処理物などに対しても、粘弾性特性が所定のしきい範囲内になるように、その粘弾性特性の変化に応じて最適な処理を実行するプロセス装置を実現できる。
【0265】
[実施の形態6]
上述のこの発明の実施の形態5においては、圧延作用および加熱作用を併用して粘弾性特性を変化させる構成について説明した。一方、この発明の実施の形態6においては、加熱作用により粘弾性特性を一定に保つように制御しながら、目標値から変動した粘弾性特性にも適応できるように制御する構成について説明する。
【0266】
図26は、この発明の実施の形態6に従うプロセス装置106の概略構成図である。
図26を参照して、プロセス装置106は、測定制御部6と、保持容器80と、滴下配管84と、センサ部30と、遅延部材32と、発熱部82.1,82.2と、電源装置86と、モータ88と、回転台90とからなる。そして、プロセス装置106は、保持容器80の側面に配置された発熱部82.1,82.2からの発生熱を流動体である被処理物48に与える。また、プロセス装置106は、滴下配管84を通じて、回転台90上に配置されるワーク92の表面に被処理物48を滴下し、回転台90の回転に伴いワーク92に生じる遠心力を利用して、ワーク92の表面全体に被処理物48を均一に塗布する。なお、このような遠心力を利用して被処理物48を均一に塗布する手法は、スピンコートとも称される。また、プロセス装置106は、被処理物48が所望の粘弾性特性をもつように、発熱部82.1および82.2からの発生熱を制御し、かつ、被処理物48の粘弾性特性に応じて、ワーク92に生じる遠心力、すなわち回転台90の回転数を制御して、ワーク92の表面に形成される膜厚を最適化する。一例として、プロセス装置106は、被処理物48として感光剤(フォトレジスト)を用い、ワーク92として半導体ウェハを用いることで、半導体回路の製造における露光工程の一部を実現する。また、プロセス装置106は、被処理物48として有機色素を用い、ワーク92としてポリカーボネイト基板を用いることで、CD−R,CD−RW,DVD−R,DVD+R,DVD−RW,DVD+RW,DVD−RAMなどの書込可能な光ディスクを製造できる。以下では、主として、半導体回路の製造における露光工程の一部を実現する場合について詳細に説明する。
【0267】
保持容器80は、その上部に開口部をもつカップ状の形状であり、その上部の開口部から感光剤などの被処理物48を受入れる。
【0268】
滴下配管84は、保持容器80の底部と連結され、保持容器80内の被処理物48を回転台90の回転軸の延長線上から回転台90に向けて滴下する。
【0269】
回転台90は、その回転軸が垂直方向となるように滴下配管84の下側に配置され、その上面と滴下配管84との間にワーク92を受入れる。そして、回転台90は、モータ88からの駆動力を受けて自身が回転することで、ワーク92を回転させ、ワーク92に遠心力を生じさせる。
【0270】
モータ88は、回転台90と機械的に結合され、発生する回転運動を回転台90に伝達する。そして、モータ88は、測定制御部6からの回転速度指令に応じて、その回転速度を自在に変化させる。
【0271】
発熱部82.1および82.2は、保持容器80の側面に配置され、電源装置86から受けた供給電力を熱エネルギーに変換し、保持容器80の側壁を介して、その熱エネルギーを被処理物48に与える。その他については、この発明の実施の形態2に従う発熱部58と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0272】
電源装置86は、測定制御部6からの指令に応じて、発熱部82.1および82.2に供給する電力を調整する。その他については、この発明の実施の形態4に従う電源装置56と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0273】
測定制御部6は、センサ部30へ放射指令を与え、センサ部30から被処理物48へ入射音波を放射させ、かつ、センサ部30において受信される反射音波の時間波形に基づいて、被処理物48の粘弾性特性を測定する。そして、測定制御部6は、その測定した被処理物48の粘弾性特性に基づいて、電源装置56に通電指令または遮断指令を与え、かつ、モータ88に回転速度指令を与える。
【0274】
センサ部30は、遅延部材32と密着して配置され、測定制御部6からの放射指令に応じて、遅延部材32を介して、保持容器80の内部へ入射音波を放射する。そして、センサ部30は、入射音波が被処理物48と遅延部材32との境界において反射されて生じる反射音波を受信し、その時間波形を測定制御部6へ出力する。その他については、上述したこの発明の実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0275】
遅延部材32は、その一方面が保持容器80の底面と一体化するように配置され、かつ、他方面においてセンサ部30と密着する。
【0276】
なお、測定制御部6、センサ部30および遅延部材32のより詳細な構成は、図2に示すこの発明の実施の形態1に従う測定制御部1、センサ部30および遅延部材32と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
【0277】
図27は、感光剤である被処理物48に対する損失弾性率の時間変化の一例である。
図27を参照して、この発明の実施の形態6に従う測定制御部6は、被処理物48の粘弾性特性として損失弾性率(粘性)を測定する。
【0278】
一方、被処理物48は、温度上昇により分子運動が活発化して損失弾性率(粘性)が低下し、逆に、温度低下により損失弾性率が増加する。そのため、外部からの熱供給がない場合には、被処理物48の熱が保持容器80を介して放散されてしまい、被処理物48の損失弾性率は低下する。
【0279】
そこで、測定制御部6は、測定した損失弾性率が上限しきい値を上回ると電源装置86に通電指令を与え、発熱部82.1および82.2からの加熱を開始し、測定した損失弾性率が下限しきい値を下回ると電源装置86に遮断指令を与え、発熱部82.1および82.2による加熱を停止する。このように、測定制御部6は、被処理物48の損失弾性率が目標値を維持するように、発熱部82.1および82.2からの加熱期間を制御する。
【0280】
さらに、測定制御部6は、発熱部82.1および82.2に対する加熱制御では抑制しきれない損失弾性率の変動による影響を回避するため、回転台90の回転速度を制御する。すなわち、被処理物48の損失弾性率が低い状態においては、拡散度合が相対的に低くなるので、回転台90の回転速度を高くして遠心力を増大させる必要があり、逆に、被処理物48の損失弾性率が高い状態においては、拡散度合が相対的に高くなるので、回転台90の回転速度を低くして遠心を低減させる必要がある。そこで、測定制御部6は、測定された損失弾性率と目標値との偏差ΔL”を算出し、基準となる回転速度からその偏差ΔL”に応じた回転速度だけ増減させるように、モータ88へ回転速度指令を与える。たとえば、遠心力は、回転速度(角速度)の2乗に比例するため、偏差ΔL”の平方根に所定の換算係数を乗じた値を、基準となる回転速度に加算または減算することで、被処理物48の損失弾性率に応じた回転速度を実現できる。なお、偏差ΔL”に応じた回転速度を得る方法としては、上述した方法以外にも、PID制御やファジー制御などにより実現することもできる。
【0281】
また、表示出力部16は、図27に示す損失弾性率の時間変化を随時表示または/およびそのデータを外部へ出力する。さらに、表示出力部16は、モータ88に与える回転速度指令、および電源装置86に与える通電指令や遮断指令などの指令情報を表示または/およびそのデータを外部へ出力する。
【0282】
(フローチャート)
図28は、測定制御部6における処理のフローチャートである。なお、測定制御部6は、図6に示す基準値取得のフローチャートに従い、記憶部14に基準値を予め取得しているものとする。
【0283】
図2および図28を参照して、演算部10は、入力部18を介してプロセス開始指令を受けたか否かを判断する(ステップS550)。一方、ユーザは、保持容器80に原料を投入した後、プロセス開始指令を与える。
【0284】
プロセス開始指令を受けていない場合(ステップS550においてNOの場合)には、演算部10は、プロセス開始指令を受けるまで待つ(ステップS550)。
【0285】
プロセス開始指令を受けた場合(ステップS550においてYESの場合)には、演算部10は、モータ88に基準の回転速度指令を与える(ステップS552)。すると、モータ88の回転に応じて、回転台90およびワーク92が回転を開始する。そして、演算部10は、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS554)。
【0286】
その後、演算部10は、時間データメモリ部12からトランスデューサ20が受信する反射音波の時間波形データを読出す(ステップS556)。そして、演算部10は、読出した反射音波の時間波形データに対してFFT処理を行ない、反射音波の特定の周波数における振幅値および位相を取得する(ステップS558)。さらに、演算部10は、記憶部14から基準値の振幅値および位相を読出し、取得した振幅値および位相との比較により、特定の周波数における損失弾性率を測定する(ステップS560)。
【0287】
そして、演算部10は、測定した損失弾性率が上限しきい値を上回っているか否かを判断する(ステップS562)。
【0288】
損失弾性率が上限しきい値を上回っている場合(ステップS562においてYESの場合)には、演算部10は、電源装置86に通電指令を与える(ステップS564)。すると、電源装置86の電源供給に応じて、発熱部82.1および82.2が被処理物48の加熱を開始する。
【0289】
損失弾性率が上限しきい値を上回っていない場合(ステップS562においてNOの場合)には、演算部10は、測定した損失弾性率が下限しきい値を下回っているか否かを判断する(ステップS566)。
【0290】
損失弾性率が下限しきい値を下回っている場合(ステップS566においてYESの場合)には、演算部10は、電源装置86に遮断指令を与える(ステップS568)。すると、電源装置86からの電源供給が遮断し、発熱部82.1および82.2からの加熱が停止する。
【0291】
損失弾性率が下限しきい値を下回っていない場合(ステップS566においてNOの場合)、または、ステップS564またはS568の後には、演算部10は、測定した損失弾性率と目標値との偏差ΔL”を算出する(ステップS570)。そして、演算部10は、算出した偏差ΔL”に基づいて回転数補正値を算出し、新たな回転速度指令として、モータ88に与える(ステップS572)。
【0292】
その後、演算部10は、入力部18を介してプロセス終了指令を受けたか否かを判断する(ステップS574)。
【0293】
プロセス終了指令を受けていない場合(ステップS574においてNOの場合)には、演算部10は、再度、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS554)。以下、ステップS556〜ステップS574を繰返す。
【0294】
プロセス終了指令を受けた場合(ステップS570においてYESの場合)には、処理を終了する。
【0295】
この発明の実施の形態6によれば、センサ部は、保持容器の底面と一体化して配置された遅延部材を介して入射音波を被処理物へ放射し、かつ、被処理物と遅延部材との境界で入射音波が反射されて生じる反射音波を受信する。そして、測定制御部は、センサ部で受信された反射音波に基づいて、被処理物の粘弾性特性のうち損失弾性率を測定し、かつ、その測定結果に基づいて発熱部の加熱または停止を制御する。さらに、センサ部は、その測定結果に基づいて、被処理物が滴下されるワークが配置された回転台の回転速度を制御する。
【0296】
そのため、加熱部からの加熱作用を受けて、粘弾性特性が変化する被処理物に対して、所望の粘弾性特性が得られるように制御することができる。さらに、粘弾性特性の基準値からのずれによる被処理物の挙動を補償するように制御することができる。よって、たとえば、感光剤などのように、加熱作用を受けて損失弾性率が変化し、かつ、遠心力による拡散作用が損失弾性率に応じて変化する被処理物に対しても、ワークに対して均一に塗布されるように、最適な処理を実行するプロセス装置を実現できる。
【0297】
[実施の形態7]
上述のこの発明の実施の形態6においては、被処理物48の粘弾性特性に基づいて、回転数を補償する構成について説明した。一方、この発明の実施の形態7においては、被処理物48の粘弾性特性に基づいて制御する別の構成について説明する。
【0298】
図29は、この発明の実施の形態7に従うプロセス装置107の概略構成図である。
図29を参照して、プロセス装置107は、図24に示すこの発明の実施の形態6に従うプロセス装置106において、測定制御部6と、滴下配管84と、モータ88と、回転台90とに代えて、測定制御部7と、ガス供給部124と、圧力調整弁126と、射出部128とを設けたものである。そして、プロセス装置107は、射出部128を通じて、図示しないワークに対して被処理物48を射出し、ワークの表面に被処理物48を塗布する。また、プロセス装置107は、被処理物48が所望の粘弾性特性をもつように、発熱部82.1および82.2からの発生熱を制御し、かつ、被処理物48の粘弾性特性に応じて、ガス供給部124から射出部128へ供給される、被処理物48を射出するために用いるガス圧を最適化する。
【0299】
一例として、プロセス装置107は、被処理物48としてインクを用いることで、インク塗布装置を実現する。
【0300】
ガス供給部124は、圧力調整弁126を介して、射出部128と連結され、射出部128から被処理物48を射出するために用いるガスを供給する。一例として、ガス供給部124は、ガスボンベなどからなる。
【0301】
圧力調整弁126は、測定制御部7からの圧力調整指令を受け、ガス供給部124から供給されるガス圧を調整する。
【0302】
射出部128は、筒状の形状を有し、保持容器80の底部と連結された配管を介して、被処理物48をその内部に導く。そして、射出部128は、側面からガスを受けて内部の圧力を上昇させ、被処理物48を受けた側と反対側に配置される射出口から被処理物48を射出する。
【0303】
測定制御部7は、センサ部30へ放射指令を与え、センサ部30から被処理物48へ入射音波を放射させ、かつ、センサ部30において受信される反射音波の時間波形に基づいて、被処理物48の粘弾性特性を測定する。そして、測定制御部7は、その測定した被処理物48の粘弾性特性に基づいて、電源装置86に通電指令または遮断指令を与え、かつ、圧力調整弁126に圧力調整指令を与える。すなわち、測定制御部7は、この発明の実施の形態6に従う測定制御部6と同様に、発熱部82.1および82.2に対する加熱制御では抑制しきれない損失弾性率の変動による影響を回避するため、射出部128に与えるガス圧を最適化する。
【0304】
具体的には、被処理物48の損失弾性率が低い状態においては、射出部128から射出される被処理物48の拡散度合が相対的に低くなるので、供給するガス圧を高くして拡散度合を増大させる必要があり、逆に、被処理物48の損失弾性率が高い状態においては、拡散度合が相対的に高くなるので、供給するガス圧を低くして拡散度合を低減させる必要がある。そこで、測定制御部7は、粘弾性特性として損失弾性率を測定し、測定された損失弾性率と目標値との偏差を算出する。そして、測定制御部7は、基準となる供給圧からその偏差に応じた圧力だけ補償するように、圧力調整弁126へ圧力調整指令を与える。
【0305】
その他については、この発明の実施の形態6に従うプロセス装置106と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0306】
この発明の実施の形態7によれば、センサ部は、保持容器の底面と一体化して配置された遅延部材を介して入射音波を被処理物へ放射し、かつ、被処理物と遅延部材との境界で入射音波が反射されて生じる反射音波を受信する。そして、測定制御部は、センサ部で受信された反射音波に基づいて、被処理物の粘弾性特性のうち損失弾性率を測定し、かつ、その測定結果に基づいて発熱部の加熱または停止を制御する。さらに、センサ部は、その測定結果に基づいて、被処理物を射出するためのガス圧を制御する。
【0307】
そのため、加熱部からの加熱作用を受けて、粘弾性特性が変化する被処理物に対して、所望の粘弾性特性が得られるように制御することができる。さらに、粘弾性特性の基準値からのずれによる被処理物の挙動を補償するように制御することができる。よって、たとえば、インク剤などのように、加熱作用を受けて損失弾性率が変化し、かつ、ガス圧に対する射出範囲が損失弾性率に応じて変化する被処理物に対しても、均一に射出されるように、最適な処理を実行するプロセス装置を実現できる。
【0308】
[実施の形態8]
上述のこの発明の実施の形態1〜7においては、表面反射法により粘弾性特定を測定する構成について説明した。一方、この発明の実施の形態8においては、底面反射法により粘弾性特性を測定する構成について説明する。
【0309】
図30は、この発明の実施の形態8に従うプロセス装置108の概略構成図である。
図30を参照して、プロセス装置108は、図26に示すこの発明の実施の形態6に従うプロセス装置106において、測定制御部6を測定制御部8に代え、センサ部30と、遅延部材32との位置を変更したものである。そして、プロセス装置108は、滴下配管84の配管の途中に配置されたセンサ部30から被処理物48へ入射音波を放射し、その入射音波が遅延部材32と被処理物48との境界で反射して生じる反射波と、その入射音波が被処理物48を透過した後、被処理物48と滴下配管84との境界で反射して生じる反射波とに基づいて、被処理物48の粘弾性特性を測定する。その他については、この発明の実施の形態6に従うプロセス装置106と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0310】
図31は、センサ部30および遅延部材32のより詳細な配置図である。
図31を参照して、遅延部材32は、その一方面が滴下配管84の内面と一体化するように配置され、かつ、他方面においてセンサ部30と密着する。
【0311】
センサ部30は、遅延部材32と密着して配置され、測定制御部8からの放射指令に応じて、遅延部材32を介して、滴下配管84の内部へ入射音波を放射する。そして、センサ部30は、放射された入射音波が遅延部材32と被処理物48との境界において反射されて生じる反射音波を受信する。さらに、センサ部30は、遅延部材32と被処理物48との境界において反射されずに滴下配管84の内部を透過し遅延部材32の反対側に到達した後、被処理物48と滴下配管84との境界において反射されて生じる反射音波を受信する。すなわち、センサ部30は、1つの入射音波に対して、互いの異なる境界において反射された2つの反射音波を受信し、その時間波形を測定制御部8へ出力する。この発明の実施の形態8においては、滴下配管84が反射部材を構成する。
【0312】
なお、測定制御部8、センサ部30および遅延部材32のより詳細な構成は、図2に示すこの発明の実施の形態1に従う測定制御部1、センサ部30および遅延部材32と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
【0313】
(底面反射法)
この発明の実施の形態8においては、入射音波を被処理物48へ放射し、その入射音波が遅延部材32と被処理物48との境界において反射されて生じる反射音波と、被処理物48と滴下配管84との境界において反射されて生じる反射音波とに基づいて粘弾性特性を測定する、底面反射法を用いる。
【0314】
図32は、底面反射法による粘弾性特性を測定する方法を説明するための図である。
図32(a)は、基準値を取得する場合である。
【0315】
図32(b)は、滴下配管84の群速度を取得する場合である。
図32(c)は、被処理物48の粘弾性特性を導出する場合である。
【0316】
図33は、図32(a)、図32(b)、図32(c)のそれぞれにおける時間波形である。
【0317】
図33(a)は、図32(a)における時間波形である。
図33(b)は、図32(b)における時間波形である。
【0318】
図33(c)は、図32(c)における時間波形である。
図32(a)を参照して、ユーザは、遅延部材32の初期誤差を取除くため、センサ部30から遅延部材32を介して放射される入射音波を基準値として予め取得する。遅延部材32が滴下配管84および被処理物48のいずれとも密着していない状態において、センサ部30から入射音波を照射させる。すると、図33(a)を参照して、センサ部30は、遅延部材32と空気中との境界において生じる反射音波(A波)を受信する。
【0319】
図3(a)において説明したように、空気中の音響インピーダンスは、遅延部材32および被処理物48に比較して十分小さいため、センサ部30から放射された入射音波は、遅延部材32と空気中との境界において全反射する。
【0320】
ここで、センサ部30で受信されるA波をA(f)exp(iθ(f))と表す。但し、iは虚数単位であり、A(f)は各周波数における振幅値(実数値)であり、θ(f)は各周波数における位相(0≦θ(f)<∞)である。そして、演算部10は、センサ部30で受信された反射音波の時間波形をFFT処理して、各周波数における振幅値A(f)および位相θ(f)を取得する。
【0321】
図32(b)を参照して、次に、遅延部材32と滴下配管84とを密着した状態において、センサ部30から入射音波を放射させると、遅延部材32と滴下配管84との境界において反射されて生じる反射音波(A波)、および滴下配管84と空気中との境界において反射されて生じる反射音波(B波)が生じる。そこで、測定制御部8は、A波とB波との時間遅延を検出する。すなわち、図33(b)を参照して、センサ部30は、遅延時間ΔTの遅延時間をあけて、A波およびA波を受信する。そして、測定制御部8は、センサ部30からの時間波形に基づいて、A波とA波との遅延時間ΔTを測定する。
【0322】
ここで、滴下配管84の厚さhおよび滴下配管84の密度ρが既知であるとすると、滴下配管84の音響インピーダンスZは、滴下配管84における群速度をVgとして、Z=ρ×Vgと表される。さらに、群速度Vgは、Vg=2h/ΔTであるので、結局、滴下配管84の音響インピーダンスZrは、Zr=2hρ/ΔTとなる。
【0323】
よって、測定制御部8は、滴下配管84の厚さhおよび滴下配管84の密度ρに基づいて、その受付けた値および測定した遅延時間ΔTから滴下配管84の音響インピーダンスZを取得する。
【0324】
上述の過程により、測定制御部8は、粘弾性特性を導出するための基準値を取得できる。
【0325】
図32(c)を参照して、被処理物48の粘弾性特性を導出する場合には、遅延部材32と滴下配管84との間に密着されるように被処理物48を配置する。そして、センサ部30が入射音波を放射すると、遅延部材32と被処理物48との境界において反射されて生じる反射音波(A波)、および被処理物48と滴下配管84との境界において反射されて生じる反射音波(B波)が生じる。そこで、測定制御部8は、A波とB波との時間遅延を検出し、かつ、A波およびB波の各周波数における振幅値および位相を取得する。
【0326】
すなわち、図33(c)を参照して、センサ部30は、遅延時間ΔTの遅延時間をあけて、A波およびB波を受信する。そして、測定制御部8は、センサ部30からの時間波形に基づいて、A波とB波との遅延時間ΔTを測定する。
【0327】
ここで、被処理物48の厚さhおよび被処理物48の密度ρが予め与えられるので、被処理物48の音響インピーダンスZは、被処理物48における群速度をVgとして、Z=ρ×Vgと表される。さらに、群速度Vgは、Vg=2h/ΔTであるので、結局、被処理物48の音響インピーダンスZは、Z=2hρ/ΔTとなる。
【0328】
すると、被処理物48と滴下配管84との境界における入射音波の反射率Rは、R=(Z−Z)/(Z+Z)=(2hρ/ΔT−Z)/(2hρ/ΔT+Z)となる。
【0329】
したがって、演算部10は、予め被処理物48の厚さhおよび被処理物48の密度ρを受付け、その受付けた値、測定した遅延時間ΔTおよび予め取得する滴下配管84の音響インピーダンスZから、被処理物48と滴下配管84との境界における入射音波の反射率Rを導出する。
【0330】
また、センサ部30で受信されるA波をA(f)exp(iθ(f))と表し、B波をB(f)exp(iθ(f))と表す。但し、iは虚数単位であり、A(f),B(f)はそれぞれA波およびB波の各周波数における振幅値(実数値)であり、θ(f),θ(f)はそれぞれA波およびB波の各周波数における位相(0≦θ(f)<∞,0≦θ(f)<∞)である。
【0331】
そして、測定制御部8は、センサ部30で受信されたA波の時間波形をFFT処理して、A波の各周波数における振幅値A(f)および位相θ(f)を取得し、B波の時間波形をFFT処理して、B波の各周波数における振幅値B(f)および位相θ(f)を取得する。
【0332】
さらに、A波、A波およびB波の各周波数における振幅値ならびに導出される反射率Rを用いて、入射音波の減衰係数α(f)は、(12)式となる。
【0333】
α(f)=(1/2h)ln(R(A(f)−A(f))/A(f)B(f)))・・・(12)
また、A波およびB波の各周波数における振幅値および位相を用いて、入射音波の位相速度V(f)は、(13)式となる。
【0334】
(f)=2h×2πf/(θ−θ+2πfΔT+2Nπ)・・・(13)
但し、Nは任意の正数である。
【0335】
そして、(12)式および(13)式によって導出される減衰係数α(f)および位相速度V(f)を用いて、貯蔵弾性率L’(f)、損失弾性率L”(f)、および損失正接tanδ(f)は、それぞれ(14)式、(15)式および(16)式となる。
【0336】
L’(f)=ρV(f)・・・(14)
L”(f)=2αρV(f)/ω=αV(f)L’(f)/πf・・・(15)
tanδ(f)=α(f)×V(f)/πf・・・(16)
したがって、測定制御部8は、(14)式〜(16)式の演算を実行し、被処理物48の粘弾性特性を特性する。
【0337】
(フローチャート)
図34は、測定制御部8におけるプロセス制御のフローチャートである。なお、測定制御部8は、後述する基準値取得の処理に従い、予め基準値を記憶部14に格納しているとする。
【0338】
図2および図34を参照して、演算部10は、入力部18を介してプロセス開始指令を受けたか否かを判断する(ステップS600)。一方、ユーザは、保持容器80に原料を投入した後、プロセス開始指令を与える。
【0339】
プロセス開始指令を受けていない場合(ステップS600においてNOの場合)には、演算部10は、プロセス開始指令を受けるまで待つ(ステップS600)。
【0340】
プロセス開始指令を受けた場合(ステップS600においてYESの場合)には、演算部10は、モータ88に基準の回転速度指令を与える(ステップS602)。すると、モータ88の回転に応じて、回転台90およびワーク92が回転を開始する。そして、演算部10は、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS604)。
【0341】
その後、演算部10は、時間データメモリ部12からトランスデューサ20が受信する反射音波(A波およびB波)の時間波形データを読出す(ステップS606)。そして、演算部10は、読出した反射音波(A波およびB波)の時間波形データに基づいて、遅延時間を計測する(ステップS608)。さらに、演算部10は、被処理物48の厚さおよび密度、滴下配管84の音響インピーダンス、計測した遅延時間から、被処理物48と滴下配管84との境界における入射音波の反射率を導出する(ステップS610)。
【0342】
また、演算部10は、それぞれの反射音波(A波およびB波)の時間波形データに対してFFT処理を行ない、それぞれの反射音波(A波およびB波)の各周波数における振幅値および位相を取得する(ステップS612)。そして、演算部10は、記憶部14から読出した基準値の各周波数における振幅値、導出した被処理物48と滴下配管84との境界における入射音波の反射率、およびそれぞれの反射音波(A波およびB波)の各周波数における振幅値から、入射音波の減衰係数を導出する(ステップS614)。さらに、演算部10は、それぞれの反射音波(A波およびB波)の各周波数における振幅値および位相から、位相速度を導出する(ステップS616)。
【0343】
演算部10は、導出した減衰係数および移動速度から、各周波数における損失弾性率を測定する(ステップS618)。
【0344】
以下、演算部10は、図28に示すステップS562〜S574と同様の処理を実行する(ステップS620)。そして、ステップS620の実行が完了すると、演算部10は、処理を終了する。
【0345】
なお、上述のフローチャートにおいては、損失弾性率を測定する構成について説明したが、同様の処理により貯蔵弾性率および損失正接が測定できることは言うまでもない。
【0346】
図35は、測定制御部8における基準値取得のフローチャートである。
図2および図35を参照して、演算部10は、入力部18を介して基準取得指令を受けたか否かを判断する(ステップS650)。基準取得指令を受けていない場合(ステップS650においてNOの場合)には、演算部10は、基準取得指令を受けるまで待つ(ステップS650)。一方、ユーザは、遅延部材32が被処理物48および滴下配管84のいずれとも密着しないように配置した後、基準取得指令を与える。
【0347】
基準取得指令を受けた場合(ステップS650においてYESの場合)には、演算部10は、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS652)。
【0348】
続いて、演算部10は、時間データメモリ部12からトランスデューサ20が受信する反射音波(A波)の時間波形データを読出す(ステップS654)。そして、演算部10は、読出した反射音波(A波)の時間波形データに対してFFT処理を行ない、反射音波(A波)の各周波数における振幅値を取得する(ステップS656)。さらに、演算部10は、取得した反射音波(A波)の各周波数における振幅値を基準値として記憶部14へ格納する(ステップS658)。
【0349】
次に、演算部10は、入力部18を介して反射部材参照指令を受けたか否かを判断する(ステップS660)。反射部材参照指令を受けていない場合(ステップS660においてNOの場合)には、演算部10は、反射部材参照指令を受けるまで待つ(ステップS660)。一方、ユーザは、遅延部材32が滴下配管84と密着するように配置した後、反射部材参照指令を与え、続いて、滴下配管84の厚さおよび密度を与える。
【0350】
反射部材参照指令を受けた場合(ステップS660においてYESの場合)には、演算部10は、入力部18を介して滴下配管84の厚さおよび密度を受付ける(ステップS662)。そして、演算部10は、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS664)。続いて、演算部10は、時間データメモリ部12からトランスデューサ20が受信する反射音波(A波およびB波)の時間波形データを読出す(ステップS666)。そして、演算部10は、読出した反射音波(A波およびB波)の時間波形データに基づいて、遅延時間を計測する(ステップS668)。さらに、演算部10は、滴下配管84の厚さおよび密度、ならびに測定した遅延時間から滴下配管84の音響インピーダンスを取得する(ステップS670)。さらに、演算部10は、取得した音響インピーダンスを記憶部14へ格納する(ステップS672)。そして、演算部10は、処理を終了する。
【0351】
この発明の実施の形態8によれば、上述したこの発明の実施の形態6における効果に加えて、センサ部から放射される入射音波の到達距離に比較して被処理物が薄い場合において、生じ得る誤差を抑制することができる。すなわち、センサ部から放射された入射音波が被処理物を透過した後、遅延部材の反対側に配置される反射部材で反射されて反射音波が生じる。そこで、測定制御部は、センサ部で受信される遅延部材と被処理物との境界で生じる反射音波および被処理物と反射部材との境界で生じる反射音波に基づいて、被処理物の粘弾性特性を測定する。よって、被処理物が少ない場合においても、精度よく粘弾性特性を測定できるので、粘弾性測定に要するスペースを小さくできる。
【0352】
[実施の形態9]
上述のこの発明の実施の形態1〜7においては、表面反射法により粘弾性特定を測定する構成について説明した。一方、この発明の実施の形態9においては、透過法により粘弾性特性を測定する構成について説明する。
【0353】
図36は、この発明の実施の形態9に従うプロセス装置109の概略構成図である。
図36を参照して、プロセス装置109は、図26に示すこの発明の実施の形態6に従うプロセス装置106において、測定制御部6と、センサ部30と、遅延部材32とに代えて、送信部30.1と、受信部30.2と、遅延部材32.1および32.2とを設けたものである。そして、プロセス装置109は、滴下配管84の配管の途中に配置された送信部30.1から被処理物48へ入射音波を放射し、その入射音波が被処理物48を透過した後の透過音波を受信部30.2で受信し、その反射に基づいて、被処理物48の粘弾性特性を測定する。その他については、この発明の実施の形態6に従うプロセス装置106と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0354】
図37は、送信部30.1、受信部30.2および遅延部材32.1,32.2のより詳細な配置図である。
【0355】
図37を参照して、送信部30.1および遅延部材32.1と、受信部30.2および遅延部材32.2とは、滴下配管84の径方向において対向するように配置される。
【0356】
遅延部材32.1は、その一方面が滴下配管84の内面と一体化するように配置され、かつ、他方面において送信部30.1と密着する。
【0357】
送信部30.1は、遅延部材32.1と密着して配置され、測定制御部1からの放射指令に応じて、遅延部材32.1を介して、滴下配管84の内部へ入射音波を放射する。
【0358】
遅延部材32.2は、その一方面が滴下配管84の内面と一体化するように、滴下配管84の径方向において遅延部材32.1と同一直線上に配置され、かつ、他方面において送信部30.2と密着する。
【0359】
受信部30.2は、遅延部材32.2と密着して配置され、送信部30.1から放射された入射音波が、遅延部材32.1、滴下配管84の内部に充填される被処理物48、遅延部材32.2の順で透過した後の透過音波を受信する。そして、受信部30.2は、受信した透過音波の時間波形を測定制御部9へ出力する。
【0360】
なお、この発明の実施の形態9においては、送信部30.1および受信部30.2がセンサ部を構成する。
【0361】
図38は、測定制御部9、送信部30.1、受信部30.2および遅延部材32.1,32.2のより詳細な概略構成図である。
【0362】
図38を参照して、測定制御部9は、図2に示すこの発明の実施の形態1に従う測定制御部1において、演算部10を演算部11に代え、時間データメモリ部12を時間データメモリ部12.1および12.2に代えたものである。
【0363】
演算部11は、入力部18を介して、外部から測定指令を受けると、送信部30.1へ放射指令を与え、被処理物48へ入射音波を放射させる。そして、演算部11は、時間データメモリ部12.1に格納される入射音波の時間波形データを読出し、かつ、時間データメモリ部12.2に格納される透過音波の時間波形データを読出す。さらに、演算部11は、それぞれ読出した時間波形データのFFT処理を行ない、特定の周波数における振幅値および位相を取得する。続いて、演算部11は、入射音波と透過音波との特定の周波数における振幅値および位相を比較し、被処理物48の粘弾性特性を測定する。
【0364】
演算部11のその他については、この発明の実施の形態1に従うプロセス装置101の演算部10と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0365】
時間データメモリ部12.1は、送信部30.1から放射される入射音波の時間波形を所定の周期で格納する。
【0366】
時間データメモリ部12.2は、受信部30.2で受信される透過音波の時間波形を所定の周期で格納する。
【0367】
時間データメモリ部12.1,12.2のその他については、この発明の実施の形態1に従うプロセス装置101の時間データメモリ部12と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0368】
送信部30.1は、この発明の実施の形態1に従うプロセス装置101のセンサ部30を構成する部位のうち入射音波の放射に係る送信制御回路22および送信回路24、ならびに、信号処理回路28.1およびトランスデューサ20.1からなる。さらに、信号処理回路28.1およびトランスデューサ20.1は、この発明の実施の形態1に従うプロセス装置101のセンサ部30を構成する信号処理回路28およびトランスデューサ20と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0369】
一方、受信部30.2は、この発明の実施の形態1に従うプロセス装置101のセンサ部30を構成する部位のうち反射音波の受信に係る受信回路26、ならびに、トランスデューサ20.2および信号処理回路28.2からなる。さらに、トランスデューサ20.2および信号処理回路28.2は、この発明の実施の形態1に従うプロセス装置101のセンサ部30を構成するトランスデューサ20および信号処理回路28と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0370】
遅延部材32.1および32.2は、この発明の実施の形態1に従うプロセス装置101の遅延部材32と同様である。
【0371】
なお、この発明の実施の形態9においては、送信部30.1および受信部30.2のそれぞれに遅延部材32.1および32.2が配置される構成について例示したが、信号処理回路における処理が高速であれば、必ずしも遅延部材32.1および32.2を設ける必要はない。
【0372】
(透過法)
再度、図37を参照して、送信部30.1から放射される入射音波(A波)は、遅延部材32.1、被処理物48および遅延部材32.2を順に伝搬して、その透過音波(A波)が受信部30.2へ入射する。ここで、透過音波は、被処理物48の粘弾性特性に応じて、その振幅値および位相が変化する。そこで、演算部11は、入射音波および透過音波の時間波形をFFT処理し、各周波数における振幅値および位相をそれぞれ比較して、その粘弾性特定を測定する。
【0373】
図39は、測定制御部9におけるプロセス制御のフローチャートである。
図38および図39を参照して、演算部11は、入力部18を介してプロセス開始指令を受けたか否かを判断する(ステップS700)。一方、ユーザは、保持容器80に原料を投入した後、プロセス開始指令を与える。
【0374】
プロセス開始指令を受けていない場合(ステップS700においてNOの場合)には、演算部11は、プロセス開始指令を受けるまで待つ(ステップS700)。
【0375】
プロセス開始指令を受けた場合(ステップS700においてYESの場合)には、演算部11は、モータ88に基準の回転速度指令を与える(ステップS702)。すると、モータ88の回転に応じて、回転台90およびワーク92が回転を開始する。そして、演算部11は、放射指令を送信部30.1へ与え、トランスデューサ20.1から入射音波を放射する(ステップS704)。
【0376】
その後、演算部11は、送信部30.1の時間データメモリ部12.1からトランスデューサ20.1が放射した入射音波(A波)の時間波形データを読出す(ステップS706)。同時に、演算部11は、受信部30.2の時間データメモリ部12.2からトランスデューサ20.2が受信した透過音波(A波)の時間波形データを読出す(ステップS708)。
【0377】
そして、演算部11は、読出した入射音波(A波)および透過音波(A波)の時間波形データに対してFFT処理を行ない、それぞれ入射音波および透過音波の特定の周波数における振幅値および位相を取得する(ステップS710)。そして、演算部11は、取得した入射音波の振幅値および位相と、透過音波の振幅値および位相をそれぞれ比較し、特定の周波数における損失弾性率を測定する(ステップS712)。
【0378】
以下、演算部11は、図28に示すステップS562〜S574と同様の処理を実行する(ステップS714)。そして、ステップS716の実行が完了すると、演算部11は、処理を終了する。
【0379】
なお、上述のフローチャートにおいては、損失弾性率を測定する構成について説明したが、同様の処理により貯蔵弾性率および損失正接が測定できることは言うまでもない。
【0380】
この発明の実施の形態9によれば、上述したこの発明の実施の形態6における効果に加えて、センサ部から放射した入射音波と、センサ部で受信された透過音波とに基づいて被処理物の粘弾性特性を測定するので、反射音波を用いる場合に比較して、センサ部における受信効率がよい。よって、被処理物の音響インピーダンスの値が遅延部材の音響インピーダンスの値と近似している場合などのように、入射音波の反射率が低い場合には、高い透過率で被処理物を透過する透過音波を用いることで、精度よく粘弾性特性を測定できる。
【0381】
[実施の形態10]
上述のこの発明の実施の形態1〜4においては、測定された粘弾性特性と所定のしきい値との比較結果に基づいて、制御を行なう構成について説明した。一方、この発明の実施の形態10においては、測定された粘弾性特性と所定の目標値との偏差に応じて、連続的に制御を行なう構成について説明する。
【0382】
図40は、この発明の実施の形態10に従うプロセス装置110の概略構成図である。
図40を参照して、プロセス装置110は、測定制御部201と、混練容器130と、センサ部30と、遅延部材32と、モータ136と、インペラ132とからなる。そして、プロセス装置110は、インペラ132を回転させることで、投入された被処理物48を混合および混練するとともに、図示しない混練容器130の所定の開口部から被処理物48を押出して、連続的に所定の形状を有する成形物138を製造する。また、プロセス装置110は、センサ部30から被処理物48へ入射音波を放射し、その入射音波で生じる反射音波に基づいて、被処理物48の粘弾性特性を測定する。さらに、プロセス装置110は、被処理物48の粘弾性特性に応じてモータ136に与える回転速度指令を調整し、インペラ132の回転速度を制御することで、混練容器130から押出される被処理物48の単位時間当たりの量、すなわち成形物138の成形速度を最適化する。一例として、プロセス装置110は、被処理物48として炭酸バリウム(BaCO)、酸化チタン(TiO)および結合材などの混合物を受入れてセラミックス材料を製造する。同様にして、プロセス装置110は、陶器の成形やプラスチックの成形なども可能である。
【0383】
混練容器130は、その上部に開口部をもつ箱形状であり、その上部から原材料である被処理物48を受入れる。
【0384】
インペラ132は、その回転軸が水平方向となるように、混練容器110の内部に配置され、モータ136からの駆動力を受けて回転する。そして、インペラ132は、自身の回転により被処理物48に攪拌力を与える。
【0385】
モータ136は、インペラ132と機械的に結合され、発生する回転運動をインペラ132に伝達する。そして、モータ136は、測定制御部201からの回転速度指令に応じて、その回転速度を自在に変化させる。一例として、モータ136は、図示しないインバータなどのVVVF(Variable Voltage Variable Frequency)装置などを含み、回転速度を自在に変化させる。
【0386】
測定制御部201は、センサ部30へ放射指令を与え、センサ部30から被処理物48へ入射音波を放射させ、かつ、センサ部30において受信される反射音波の時間波形に基づいて、被処理物48の粘弾性特性を測定する。さらに、測定制御部201は、その測定した被処理物48の粘弾性特性に基づいて、モータ136へ与える回転速度指令を制御する。
【0387】
センサ部30は、遅延部材32と密着して配置され、測定制御部201からの放射指令に応じて、遅延部材32を介して、混練容器130の内部へ入射音波を放射する。そして、センサ部30は、入射音波が被処理物48と遅延部材32との境界において反射されて生じる反射音波を受信し、その時間波形を測定制御部201へ出力する。その他については、上述したこの発明の実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0388】
遅延部材32は、その一方面が混練容器130の内面と一体化するように配置され、かつ、他方面においてセンサ部30と密着する。
【0389】
なお、測定制御部201、センサ部30および遅延部材32のより詳細な構成は、図2に示すこの発明の実施の形態1に従う測定制御部1、センサ部30および遅延部材32と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
【0390】
図41は、セラミックスの原料である被処理物48に対する損失弾性率の時間変化の一例である。なお、ここでの貯蔵弾性率は、所定の周波数におけるピーク値である。
【0391】
図41を参照して、この発明の実施の形態10に従う測定制御部201は、被処理物48の粘弾性特性として損失弾性率(粘性)を測定する。
【0392】
セラミックスの原料である被処理物48は、外部温度、混練容器温度、含有水分量、バインダー添加量などに起因してその損失弾性率を変化させる。そのため、損失弾性率が低い、すなわち粘性が低い場合には、固形化し難くなるため、成形速度を抑制する必要がある。一方、損失弾性率が高い、すなわち粘性が高い場合には、固形化し易くなるため、成形速度を上昇させ、生産効率を高めることができる。
【0393】
そこで、測定制御部201は、被処理物48の損失弾性率が高い場合には、成形速度を相対的に増加させ、逆に、被処理物48の損失弾性率が低い場合には、成形速度を相対的に低下させる。
【0394】
具体的には、測定制御部201は、予め損失弾性率の目標値およびその目標値に対応する基準の成形速度を規定する。そして、測定制御部201は、測定された損失弾性率と目標値との偏差ΔL”を算出し、基準の成形速度に対して偏差ΔL”に応じた補正値を増減させるように、モータ136へ回転速度指令を与える。たとえば、被処理物48の固形化の度合は、損失弾性率に略比例するものと考えると、偏差ΔL”に所定の換算係数を乗じた補正値を、基準の成形速度に加算または減算することで、被処理物48の損失弾性率に応じた成形速度の最適化を実現できる。なお、偏差ΔL”に応じた回転速度を得る方法としては、上述した方法以外にも、PID制御やファジー制御などにより実現することもできる。
【0395】
また、表示出力部16は、図41に示す損失弾性率の時間変化を随時表示または/およびそのデータを外部へ出力する。さらに、表示出力部16は、モータ136に与える回転速度指令などの指令情報を表示または/およびそのデータを外部へ出力する。
【0396】
(フローチャート)
図42は、測定制御部201における処理のフローチャートである。なお、測定制御部201は、図6に示す基準値取得のフローチャートに従い、記憶部14に基準値を予め取得しているものとする。
【0397】
図2および図42を参照して、演算部10は、入力部18を介してプロセス開始指令を受けたか否かを判断する(ステップS750)。一方、ユーザは、混練容器130に原料を投入した後、プロセス開始指令を与える。
【0398】
プロセス開始指令を受けていない場合(ステップS750においてNOの場合)には、演算部10は、プロセス開始指令を受けるまで待つ(ステップS750)。
【0399】
プロセス開始指令を受けた場合(ステップS750においてYESの場合)には、演算部10は、モータ136に基準の回転速度指令を与える(ステップS752)。すると、モータ136の回転に応じて、インペラ132が回転し、成形物138の製造が開始される。そして、演算部10は、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS754)。
【0400】
その後、演算部10は、時間データメモリ部12からトランスデューサ20が受信する反射音波の時間波形データを読出す(ステップS756)。そして、演算部10は、読出した反射音波の時間波形データに対してFFT処理を行ない、反射音波の特定の周波数における振幅値および位相を取得する(ステップS758)。さらに、演算部10は、記憶部14から基準値の振幅値および位相を読出し、取得した振幅値および位相との比較により、特定の周波数における損失弾性率を測定する(ステップS760)。
【0401】
そして、演算部10は、測定した損失弾性率と目標値との偏差ΔL”を算出する(ステップS762)。そして、演算部10は、算出した偏差ΔL”に基づいて成形速度の補正値を算出し、新たな回転速度指令として、モータ136に与える(ステップS764)。
【0402】
その後、演算部10は、入力部18を介してプロセス終了指令を受けたか否かを判断する(ステップS766)。
【0403】
プロセス終了指令を受けていない場合(ステップS766においてNOの場合)には、演算部10は、再度、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS754)。以下、ステップS756〜ステップS766を繰返す。
【0404】
プロセス終了指令を受けた場合(ステップS766においてYESの場合)には、処理を終了する。
【0405】
上述したこの発明の実施の形態10においては、成形速度を調整する構成について説明したが、これ以外にも、被処理物48の混練時間の調整、バインダー添加量の調整、容器温度の調整のうち、いずれかまたはすべてを適宜組合せて、被処理物48の損失弾性率が目標値となるように調整するように構成してもよい。
【0406】
この発明の実施の形態10によれば、センサ部は、混練容器の側面と一体化して配置された遅延部材を介して入射音波を被処理物へ放射し、かつ、被処理物と遅延部材との境界で入射音波が反射されて生じる反射音波を受信する。そして、測定制御部は、センサ部で受信された反射音波に基づいて、被処理物の粘弾性特性のうち損失弾性率を測定し、かつ、その測定結果に基づいて成形物の成形速度を制御する。
【0407】
そのため、被処理物の損失弾性率が目標値から外れる場合であっても、型崩れなどを抑制できる。よって、さまざまな要因により損失弾性率が変動する被処理物に対しても、最適な処理を実行するプロセス装置を実現できる。
【0408】
[実施の形態11]
上述のこの発明の実施の形態1〜4においては、測定された粘弾性特性と1つのしきい値との比較結果に基づいて、制御を行なう構成について説明した。一方、この発明の実施の形態11においては、測定された粘弾性特性と複数のしきい値との比較結果に基づいて、制御を行なう構成について説明する。
【0409】
図43は、この発明の実施の形態11に従うプロセス装置111の概略構成図である。
図43を参照して、プロセス装置111は、測定制御部202と、乾燥炉142と、受入テーブルローラ140と、搬出テーブルローラ150と、センサ部30と、遅延部材32とからなる。そして、プロセス装置111は、受入テーブルローラ140で受入れた被処理物48に対して、センサ部30から入射音波を放射し、その入射音波で生じる反射音波に基づいて、被処理物48の粘弾性特性を測定する。そして、測定制御部202は、測定した被処理物48の粘弾性特性に応じて、乾燥炉142内の乾燥温度を決定するとともに、乾燥炉142内を移動させることにより被処理物48を乾燥させる。さらに、乾燥炉142内で乾燥された被処理物48は、搬出テーブルローラ150で搬出される。
【0410】
このように、測定制御部202は、受入れた被処理物48の粘弾性特性に応じて、乾燥炉142内の温度を変更し、被処理物48の乾燥の度合を最適化する。一例として、プロセス装置111は、上述のこの発明の実施の形態10において説明したような成形されたセラミックス材料などを被処理物48として受入れて乾燥する。同様にして、プロセス装置111は、成形された陶器となる成形された粘土などを乾燥する。
【0411】
受入テーブルローラ140は、図示しない搬送手段により搬送される被処理物48を受入れて、乾燥炉142へ搬送する。
【0412】
乾燥炉142は、バーナー144と、温度検出部148と、移動テーブルローラ146とからなる。バーナー144は、被処理物48の搬送経路の上方に配置され、測定制御部202からの燃焼指令に応じて、所定の熱量を発生する。一例として、バーナー144は、燃料ガスと空気との混合気体を燃焼させるが、これに代えて、誘導加熱、マイクロ波加熱、抵抗加熱などを用いてもよい。温度検出部148は、被処理物48の搬送経路付近の炉内温度を検出し、測定制御部202へその検出した温度を出力する。移動テーブルローラ146は、紙面左側から受入れた被処理物48を所定の速度で、紙面右側へ搬送する。
【0413】
搬出テーブルローラ150は、乾燥炉142から搬送された被処理物48を図示しない外部の装置または機構へ搬出する。
【0414】
センサ部30は、遅延部材32と密着して配置され、受入テーブルローラ140上に被処理物48が搬送されると、図示しない昇降機構により遅延部材32を介して被処理物48の上面に配置される。このとき、遅延部材32の自重または上方からの押付圧により、遅延部材32は被処理物48と密着する。そして、センサ部30は、測定制御部202からの放射指令に応じて、遅延部材32を介して、被処理物48へ入射音波を放射する。そして、センサ部30は、入射音波が被処理物48と遅延部材32との境界において反射されて生じる反射音波を受信し、その時間波形を測定制御部202へ出力する。その他については、上述したこの発明の実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0415】
測定制御部202は、被処理物48が受入テーブルローラ140に存在すると、センサ部30へ放射指令を与え、センサ部30から被処理物48へ入射音波を放射させ、かつ、センサ部30において受信される反射音波の時間波形に基づいて、被処理物48の粘弾性特性を測定する。そして、測定制御部202は、その測定した被処理物48の粘弾性特性に基づいて、乾燥炉142内の乾燥温度を決定し、温度検出部148が検出する温度が当該乾燥温度と一致するように、バーナー144に燃焼指令を与える。なお、バーナー144からの熱量発生と、乾燥炉142内の温度上昇とは、むだ時間および遅れ時間を含む系となるので、測定制御部202は、決定した乾燥温度と、温度検出部148において検出された温度とに基づいて、PID制御などにより燃焼指令を調整する。
【0416】
なお、測定制御部202、センサ部30および遅延部材32のより詳細な構成は、図2に示すこの発明の実施の形態1に従う測定制御部1、センサ部30および遅延部材32と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
【0417】
図44は、セラミックスの成形物である被処理物48に対する損失弾性率の時間変化の一例である。なお、ここでの貯蔵弾性率は、所定の周波数におけるピーク値である。
【0418】
図44を参照して、この発明の実施の形態11に従う測定制御部202は、被処理物48の粘弾性特性として損失弾性率(粘性)を測定する。
【0419】
上述したように、セラミックスの原料は、外部温度、混練容器温度、含有水分量、バインダー添加量などの変動に応じてその損失弾性率が変化する。そのため、損失弾性率が低い、すなわち粘性が低い場合には、過剰な乾燥によるひび割れなどの発生確率を低減するため乾燥温度を抑制する必要がある。一方、損失弾性率が高い、すなわち粘性が高い場合には、より強固な固化状態を形成するため、乾燥温度を高める必要がある。
【0420】
そこで、測定制御部202は、被処理物48の損失弾性率が高い場合には、乾燥温度を相対的に高くし、逆に、被処理物48の損失弾性率が低い場合には、乾燥温度を相対的に低くする。
【0421】
具体的には、測定制御部202は、測定される被処理物48の損失弾性率に対して、予め複数のしきい値を規定する。そして、測定制御部202は、それらのしきい値に対して、測定された損失弾性率がいずれの範囲に存在するかに基づいて、乾燥温度を決定する。
【0422】
一例として、この発明の実施の形態11においては、測定制御部202は、3つのしきい値(第1のしきい値、第2のしきい値、第3のしきい値)を規定し、いずれのしきい値の範囲に存在するかに基づいて、4つの乾燥温度(T1,T2,T3,T4)のうち、1つを選択する。すなわち、測定制御部202は、被処理物48の損失弾性率が、第1のしきい値以下であれば、乾燥温度T1を選択し、第1のしきい値を超過し、かつ、第2のしきい値以下であれば、乾燥温度T2を選択し、第2のしきい値を超過し、かつ、第3のしきい値以下であれば、乾燥温度T3を選択し、第3のしきい値を超過すれば、乾燥温度T4を選択する。
【0423】
このように、測定制御部202は、被処理物48の損失弾性率に応じて乾燥温度を最適化する。なお、乾燥温度を変更する構成に代えて、被処理物48が乾燥炉142内で乾燥される時間、すなわち移動テーブルローラ146の速度を制御するようにしてもよい。
【0424】
また、表示出力部16は、図44に示す損失弾性率の時間変化を随時表示または/およびそのデータを外部へ出力する。さらに、表示出力部16は、選択する燃焼温度、およびバーナー144に与える燃焼指令などの指令情報を表示または/およびそのデータを外部へ出力する。
【0425】
(フローチャート)
図45は、測定制御部202における処理のフローチャートである。なお、測定制御部202は、図6に示す基準値取得のフローチャートに従い、記憶部14に基準値を予め取得しているものとする。
【0426】
図2および図45を参照して、演算部10は、受入テーブルローラ140に被処理物48が受入れられたか否かを判断する(ステップS800)。被処理物48が受入れられていない場合(ステップS800においてNOの場合)には、演算部10は、被処理物48が受入れられるまで待つ(ステップS800)。
【0427】
被処理物48が受入れられた場合(ステップS800においてYESの場合)には、演算部10は、図示しない昇降機構によりセンサ部30および遅延部材32を被処理物48の上面に配置する(ステップS802)。そして、演算部10は、放射指令を送信制御回路22へ与え、トランスデューサ20から入射音波を放射する(ステップS804)。
【0428】
その後、演算部10は、時間データメモリ部12からトランスデューサ20が受信する反射音波の時間波形データを読出す(ステップS806)。そして、演算部10は、読出した反射音波の時間波形データに対してFFT処理を行ない、反射音波の特定の周波数における振幅値および位相を取得する(ステップS808)。さらに、演算部10は、記憶部14から基準値の振幅値および位相を読出し、取得した振幅値および位相との比較により、特定の周波数における損失弾性率を測定する(ステップS810)。
【0429】
そして、演算部10は、測定した損失弾性率が第1しきい値を超過しているか否かを判断する(ステップS812)。測定した損失弾性率が第1しきい値を超過していない場合(ステップS812においてNOの場合)には、演算部10は、乾燥温度T1を選択する(ステップS814)。
【0430】
測定した損失弾性率が第1しきい値を超過している場合(ステップS812においてYESの場合)には、演算部10は、測定した損失弾性率が第2しきい値を超過しているか否かを判断する(ステップS816)。測定した損失弾性率が第2しきい値を超過していない場合(ステップS816においてNOの場合)には、演算部10は、乾燥温度T2を選択する(ステップS818)。
【0431】
測定した損失弾性率が第2しきい値を超過している場合(ステップS816においてYESの場合)には、演算部10は、測定した損失弾性率が第3しきい値を超過しているか否かを判断する(ステップS820)。測定した損失弾性率が第3しきい値を超過していない場合(ステップS820においてNOの場合)には、演算部10は、乾燥温度T3を選択する(ステップS822)。
【0432】
測定した損失弾性率が第3しきい値を超過している場合(ステップS820においてYESの場合)には、演算部10は、乾燥温度T4を選択する(ステップS824)。
【0433】
乾燥温度を選択した後(ステップS814,S818,S822,S824)、演算部10は、選択した乾燥温度となるようにバーナー144へ燃焼指令を与える(ステップS826)。そして、演算部10は、被処理物48が乾燥炉142から搬出テーブルローラ150へ搬出されたか否かを判断する(ステップS828)。搬出テーブルローラ150へ搬出されていない場合(ステップS828においてNOの場合)には、演算部10は、ステップS826における処理を繰返し実行する。
【0434】
搬出テーブルローラ150へ搬出されている場合(ステップS828においてYESの場合)には、演算部10は処理を終了する。
【0435】
上述したこの発明の実施の形態11においては、測定した損失弾性率と複数のしきい値とを比較して、乾燥温度を離散的に変化させる構成について説明したが、測定した損失弾性率と目標値との偏差に基づいて、乾燥温度を連続的に変化させるように構成してもよい。
【0436】
この発明の実施の形態11によれば、センサ部は、搬入される被処理物の上面に配置される遅延部材を介して入射音波を被処理物へ放射し、かつ、被処理物と遅延部材との境界で入射音波が反射されて生じる反射音波を受信する。そして、測定制御部は、センサ部で受信された反射音波に基づいて、被処理物の粘弾性特性のうち損失弾性率を測定し、かつ、その測定結果に基づいて最適な乾燥温度を選択する。
【0437】
そのため、さまざまな外乱により被処理物の損失弾性率がばらつく場合であっても、被処理物を最適に乾燥することができる。よって、さまざまな要因により損失弾性率が変動する被処理物に対しても、最適な処理を実行するプロセス装置を実現できる。
【0438】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0439】
【図1】この発明の実施の形態1に従うプロセス装置の概略構成図である。
【図2】測定制御部1、センサ部および遅延部材のより詳細な概略構成図である。
【図3】表面反射法を説明するための図である。
【図4】小麦粉と水との混合物である被処理物に対する貯蔵弾性率(粘性)の時間変化の一例である。
【図5】測定制御部におけるプロセス制御のフローチャートである。
【図6】測定制御部における基準値取得のフローチャートである。
【図7】図4に示す貯蔵弾性率の時間変化に対して、この発明の実施の形態1の変形例1に従うプロセス装置における制御を説明するための図である。
【図8】この発明の実施の形態1の変形例1に従う測定制御部におけるプロセス制御のフローチャートである。
【図9】図4に示す貯蔵弾性率の時間変化に対して、この発明の実施の形態1の変形例2に従うプロセス装置における制御を説明するための図である。
【図10】この発明の実施の形態1の変形例2に従う測定制御部におけるプロセス制御のフローチャートである。
【図11】図4に示す貯蔵弾性率の時間変化に対して、この発明の実施の形態1の変形例3に従うプロセス装置における制御を説明するための図である。
【図12】この発明の実施の形態1の変形例3に従う測定制御部におけるプロセス制御のフローチャートである。
【図13】図1に示す混練容器における被処理物の位置と反射音波との関係を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態1の変形例4に従う測定制御部におけるプロセス制御のフローチャートである。
【図15】この発明の実施の形態2に従うプロセス装置の概略構成図である。
【図16】素麺を製造する原料の混合物である被処理物に対する貯蔵弾性率(弾性)の時間変化の一例である。
【図17】この発明の実施の形態3に従うプロセス装置の概略構成図である。
【図18】かまぼこを製造する原料の混合物である被処理物に対する損失弾性率の周波数特性の一例である。
【図19】この発明の実施の形態3に従う測定制御部におけるプロセス制御のフローチャートである。
【図20】この発明の実施の形態4に従うプロセス装置の概略構成図である。
【図21】タイヤ用のゴムを製造する原料の混合物である被処理物に対する損失弾性率(粘性)の時間変化の一例である。
【図22】測定制御部4におけるプロセス制御のフローチャートである。
【図23】この発明の実施の形態5に従うプロセス装置の概略構成図である。
【図24】マヨネーズを製造する原料の混合物である被処理物に対する貯蔵弾性率と損失弾性率との時間変化の一例である。
【図25】測定制御部におけるプロセス制御のフローチャートである。
【図26】この発明の実施の形態6に従うプロセス装置の概略構成図である。
【図27】感光剤である被処理物に対する損失弾性率の時間変化の一例である。
【図28】測定制御部における処理のフローチャートである。
【図29】この発明の実施の形態7に従うプロセス装置の概略構成図である。
【図30】この発明の実施の形態8に従うプロセス装置の概略構成図である。
【図31】センサ部および遅延部材のより詳細な配置図である。
【図32】底面反射法による粘弾性特性を測定する方法を説明するための図である。
【図33】図32(a)、図32(b)、図32(c)のそれぞれにおける時間波形である。
【図34】測定制御部におけるプロセス制御のフローチャートである。
【図35】測定制御部における基準値取得のフローチャートである。
【図36】この発明の実施の形態9に従うプロセス装置の概略構成図である。
【図37】送信部、受信部および遅延部材のより詳細な配置図である。
【図38】測定制御部、送信部、受信部および遅延部材のより詳細な概略構成図である。
【図39】測定制御部におけるプロセス制御のフローチャートである。
【図40】この発明の実施の形態10に従うプロセス装置の概略構成図である。
【図41】セラミックスの原料である被処理物に対する損失弾性率の時間変化の一例である。
【図42】測定制御部における処理のフローチャートである。
【図43】この発明の実施の形態11に従うプロセス装置の概略構成図である。
【図44】セラミックスの成形物である被処理物に対する損失弾性率の時間変化の一例である。
【図45】測定制御部における処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0440】
1,2,3,4,5,6,7,8,9,201,202 測定制御部、10,11 演算部、12,12.1,12.2 時間データメモリ部、14 記憶部、16 表示出力部、18 入力部、20,20.1,20.2 トランスデューサ、22 送信制御回路、24 送信回路、25 方向整合器、26 受信回路、28,28.1,28.2 信号処理回路、30 センサ部、30.1 送信部、30.2 受信部、32,32.1,32.2 遅延部材、40,114,110,130 混練容器、42,76,132 インペラ、44,50,72,88,98,110,118,136 モータ、46,74 駆動軸、48 被処理物、52,96 ローラ、54 スクレパ、56,86 電源装置、58,82.1,82.2 発熱部、60 ブロック部、70 攪拌容器、78 しきい領域、80 保持容器、84 滴下配管、90,94 回転台、92 ワーク、101,102,103,104,105,106,107,108,109,110,111 プロセス装置、116 シャフト、120 翼部、124 ガス供給部、126 圧力調整弁、128 射出部、138 成形物、140 受入テーブルローラ、142 乾燥炉、144 バーナー、146 移動テーブルローラ、148 温度検出部、150 搬出テーブルローラ、L’ 貯蔵弾性率(弾性)、L” 損失弾性率(粘性)、tanδ 損失正接。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物に対して外的作用を与え、前記被処理物の粘弾性特性を変化させる作用部と、
前記被処理物へ第1の音波を放射し、かつ、前記第1の音波が前記被処理物において反射または前記被処理物を透過して生じる第2の音波を受信するセンサ部と、
前記センサ部において受信される前記第2の音波に基づいて、前記被処理物の粘弾性特性を測定する測定制御部とを備え、
前記測定制御部は、前記被処理物の粘弾性特性の測定結果に基づいて、前記作用部を制御する、プロセス装置。
【請求項2】
前記センサ部は、前記被処理物へ前記第1の音波を放射し、かつ、前記第1の音波が前記被処理物において反射されて生じる前記第2の音波を受信する、放射受信部を含み、
前記プロセス装置は、前記第1の音波および前記第2の音波を伝搬させることで、前記放射受信部において前記第1の音波が放射された後、前記放射受信部において前記第2の音波が受信されるまでの間に遅延時間を生じさせる遅延部材をさらに備え、
前記遅延部材は、前記センサ部と前記被処理物との間に配置され、
前記第2の音波は、前記第1の音波が前記遅延部材と前記被処理物との境界において反射されて生じる、請求項1に記載のプロセス装置。
【請求項3】
前記センサ部は、前記被処理物へ前記第1の音波を放射し、かつ、前記第1の音波が前記被処理物において反射されて生じる前記第2の音波を受信する、放射受信部を含み、
前記プロセス装置は、
前記第1の音波および前記第2の音波を伝搬させることで、前記放射受信部において前記第1の音波が放射された後、前記放射受信部において前記第2の音波が受信されるまでの間に遅延時間を生じさせる遅延部材と、
前記第1の音波を反射させる反射部材とをさらに備え、
前記遅延部材は、前記センサ部と前記被処理物との間に配置され、
前記反射部材は、前記センサ部と前記被処理物との境界と対向する面において、前記被処理物と密着し、
前記第2の音波は、前記第1の音波が前記遅延部材と前記被処理物との境界において反射されて生じる音波と、前記第1の音波が前記被処理物と前記反射部材との境界において反射されて生じる音波とを含む、請求項1に記載のプロセス装置。
【請求項4】
前記センサ部は、
前記被処理物へ前記第1の音波を放射する放射部と、
前記第1の音波が前記被処理物を透過して生じる前記第2の音波を受信する受信部とを含む、請求項1に記載のプロセス装置。
【請求項5】
前記被処理物は、前記作用部からの外的作用を受けて、前記センサ部との距離または/および前記センサ部と接する面積が変化し、
前記第2の音波は、前記センサ部と前記被処理物との距離または/および前記センサ部と接する面積の変化に伴い、その強度が変動し、
前記測定制御部は、前記センサ部から放射される複数の前記第1の音波にそれぞれ対応する複数の前記第2の音波のうち、その強度に基づいて、前記センサ部と前記被処理物との距離が最短または/および前記センサ部と接する面積が最大となる第2の音波を選択し、かつ、当該選択した第2の音波を粘弾性特性の測定に用いる、請求項2に記載のプロセス装置。
【請求項6】
前記測定制御部は、粘弾性特性として、貯蔵弾性率、損失弾性率、損失正接のうち、少なくともいずれか1つを測定する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項7】
前記測定制御部は、測定した粘弾性特性と1または2以上のしきい値との比較結果に基づいて、前記作用部を制御する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項8】
前記測定制御部は、測定した粘弾性特性の時間的変化率を算出し、当該時間的変化率と1または2以上のしきい値との比較結果に基づいて、前記作用部を制御する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項9】
前記測定制御部は、測定した粘弾性特性の時間的変化率を算出し、当該時間的変化率に基づいて所定のしきい値への到達時間を予測し、当該予測した到達時間に基づいて、前記作用部を制御する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項10】
前記センサ部は、複数の周波数成分を含む前記第1の音波を放射し、
前記測定制御部は、前記第1の音波に含まれる複数の周波数成分毎に粘弾性特性を測定する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項11】
前記測定制御部は、被処理物における周波数成分毎の粘弾性特性に基づいて、前記作用部を制御する、請求項10に記載のプロセス装置。
【請求項12】
前記測定制御部は、測定した粘弾性特性と所定の目標値との偏差に基づいて、前記作用部を制御する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項13】
前記測定制御部は、
粘弾性特性として、貯蔵弾性率、損失弾性率、損失正接のうち、少なくともいずれか2つを測定し、
測定される粘弾性特性に含まれる少なくとも2つの値で規定される座標が所定のしきい領域に含まれるか否かに基づいて、前記作用部を制御する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項14】
前記測定制御部において測定された粘弾性特性を表示する表示出力部をさらに備える、請求項1〜13のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項15】
前記表示出力部は、粘弾性特性の時間的変化、測定される粘弾性特性に含まれる少なくとも2つの値により規定される座標、周波数領域における粘弾性特性、周波数領域における粘弾性特性の時間的変化のうち、1または2以上を表示する、請求項14に記載のプロセス装置。
【請求項16】
前記表示出力部は、前記作用部を制御するための指令情報を表示する、請求項14または15に記載のプロセス装置。
【請求項17】
前記作用部は、前記被処理物を混合、混練、攪拌のうち少なくともいずれかにより前記被処理物の粘弾性特性を変化させる、請求項1〜16のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項18】
前記作用部は、前記被処理物を加熱することにより前記被処理物の粘弾性特性を変化させる、請求項1〜17のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項19】
前記作用部は、前記被処理物を圧延することにより前記被処理物の粘弾性特性を変化させる、請求項1〜18のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項20】
前記被処理物は、前記作用部からの外的作用を受け、分子間の相互作用または/および化学的な結合状態が変化することで、粘弾性特性を変化させる、請求項1〜19のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項21】
前記被処理物は、紛体と液体とを含む混合物または複数の液体を含む混合物である、請求項1〜20のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項22】
前記被処理物は、穀物の紛体と水とを含む混合物である、請求項21に記載のプロセス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公開番号】特開2007−155589(P2007−155589A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353414(P2005−353414)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】