説明

プロテインキナーゼ阻害剤としての置換シアノピリジン

本教示は、式1の化合物、およびその薬学的に許容される塩、水和物、およびエステルを提供し、式中、R、R、およびXは本明細書で定義される通りである。本教示は、式Iの化合物を作製する方法、ならびに治療有効量の式Iの1つの化合物または複数の化合物を、ヒトを含む哺乳動物に投与することにより自己免疫疾患および炎症性疾患を治療する方法も提供する。いくつかの実施形態では、本教示は自己免疫疾患および炎症性疾患、例えば喘息、大腸炎、多発性硬化症、乾癬、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、および関節の炎症の治療方法を提供し、本方法は治療有効量の1つ以上の式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル)を、ヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本教示は、プロテインキナーゼを阻害し得る置換3−シアノピリジン(ニコチノニトリルとしても知られる)に関する。本教示は、置換シアノピリジンの調製方法ならびにその使用方法にも関する。例えば、本教示の化合物は、自己免疫疾患や炎症性疾患、例えば喘息および関節炎の治療に有用な可能性がある。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは、アデノシン三リン酸(ATP)のリン酸基の、タンパク質上のアミノ酸残基(例えばチロシン、セリン、スレオニン、またはヒスチジン)への移動を触媒する酵素である。こうしたプロテインキナーゼの調節は、細胞増殖や細胞移動のような様々な細胞的事象の制御に不可欠である。喘息、大腸炎、多発性硬化症、乾癬、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、関節の炎症のような各種の炎症性疾患および自己免疫疾患を含む数多くの疾患は、これらのキナーゼによって媒介される異常な細胞的事象と関連がある。例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、Anderson,K.ら、(2006),Autoimmunity,39(6):469−78、Healy,A.ら、(2006),J.Immunology,177(3):1886−93、Sun,Z.ら、(2000),Nature,404:402−7、およびPfeifhofer,C.ら、(2003),J.Exp.Med.,197(11):1525−35を参照されたい。
【0003】
セリン/スレオニンキナーゼのクラスの1つは、プロテインキナーゼC(PKC)ファミリーである。このキナーゼのグループは、配列および構造的相同性を共有する10のメンバーからなる。PKCは3つのグループに分類され、在来型、新型、および非典型なアイソフォームが含まれる。シータ型アイソフォーム(PKCθ)は、PKCのうちカルシウム非依存性の新型クラスのメンバーである(Baier,G.ら、(1993),J.Biol.Chem.,268:4997−5004)。PKCθはT細胞に高度に発現しており(Mischak,H.ら、(1993),FEBS Lett.,326:51−5)、肥満細胞(Liu,Y.ら、(2001),J.Leukoc.Biol.,69:831−40)、内皮細胞(Mattila,P.ら、(1994),Life Sci.,55:1253−60)、および骨格筋(Baier,G.ら、(1994),Eur.J.Biochem.,225:195−203)においてもある程度の発現が報告されている。T細胞受容体(TCR)媒介シグナル伝達においてPKCθが重要な役割を果たすことが示されている(Tan,S.L.ら、(2003),Biochem.J.,376:545−52)。具体的には、2つの独立したPKCθノックアウトマウス系統で示されたように、PKCθのシグナル伝達が阻害されるとT細胞の活性化およびインターロイキン−2(IL−2)の産生の障害の原因となることが観察されている(Sun,Z.ら、(2000),Nature,404:402−7、Pfeifhofer,C.ら、(2003),J.Exp.Med.,197:1525−35)。PKCθ欠損マウスが、Th2−依存性マウス喘息モデルにおける肺炎や気道過敏症(AHR)の抑制を示し、ウイルス排除やTh1−依存性細胞傷害性T細胞の機能には障害を示さない事実も示されている(Berg−Brown,N.N.ら、(2004),J.Exp.Med.,199:743−52、Marsland,B.J.ら、(2004),J.Exp.Med.,200:181−9)。Th2細胞応答の障害はインターロイキン−4(IL−4)および免疫グロブリンE(IgE)のレベルの低下につながり、これがAHRおよび炎症性病態の一因となる。
【0004】
肥満細胞のIgE受容体(FceRI)媒介型応答に関与するというエビデンスも存在する(Liu,Y.ら、(2001),J.Leukoc.Biol.,69:831−840)。培養ヒト肥満細胞(HCMC)において、FceRIの架橋後にPKCキナーゼの活性が膜にすばやく局在する(5分未満で)ことが示されている(Kimata,M.ら、(1999),Biochem.Biophys.Res.Commun.,257(3):895−900)。野生型およびPKCθ欠損マウス由来の骨髄肥満細胞(BMMC)のin vitroでの活性化を検討した最近の研究は、野生型マウス由来のBMMCと比較すると、FceRIの架橋の際にPKCθ欠損マウス由来のBMMCによるインターロイキン−6(IL−6)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、およびインターロイキン−13(IL−13)の産生レベルが低いことを示しており、これはPKCθが、T細胞の活性化に加えて肥満細胞のサイトカイン産生に役割を果たす可能性を示唆するものである(Ciarletta,A.B.ら、(2005)、2005年度American Thorasic Society International Conferenceでのポスター発表)。
【0005】
その他のセリン/スレオニンキナーゼには、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路を構成するものが含まれ、これにはMAPキナーゼ(MAPK)、(例えばerk)およびMAPKキナーゼ(MAPKK)(例えばmekおよびその基質)で構成される。キナーゼのrafファミリーのメンバーはmek上の残基をリン酸化する。cdc2/サイクリンB、cdk2/サイクリンA、cdk2/サイクリンE、およびcdk4/サイクリンDならびにその他を含むサイクリン依存性キナーゼ(cdk)は、哺乳動物の細胞分割を調節するセリン/スレオニンキナーゼである。セリン/スレオニンキナーゼにはさらに、プロテインキナーゼAおよびBが含まれる。PKAすなわちサイクリックAMP依存性プロテインキナーゼおよびPKB(Akt)として知られるこれらのキナーゼは、シグナル伝達経路において重要な役割を担う。
【0006】
チロシンキナーゼ(TK)は、非膜貫通型TKおよび膜貫通型増殖因子受容体TK(RTK)の2つのクラスに分類される。増殖因子、例えば上皮細胞増殖因子(EGF)は、細胞表面上に存在する対応するRTKの細胞外ドメインと結合してRTKを活性化し、これにより多種多様な細胞応答を制御するシグナル伝達カスケードが始まる。EGFに加えて、FGFR(線維芽細胞増殖因子(FGF)に対する受容体)flk−1(KDRとしても知られる)、およびflt−1(血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に対する受容体)、およびPDGFR(血小板由来増殖因子(PDGF)に対する受容体)を含むその他のRTKが存在する。その他のRTKには、tie−1およびtie−2、コロニー刺激因子受容体、神経成長因子受容体、インスリン様増殖因子受容体が含まれる。RTKに加えて、細胞質タンパク質または非受容体TKと呼ばれるTKの別のファミリーが存在する。細胞質タンパク質TKは内因性のキナーゼ活性を有し、細胞質と核に存在し、多様なシグナル伝達経路に関与する。Abl、Jak、Fak、Syk、Zap−70、およびCskを含む多数の非受容体型TK、ならびにSrc、Lck、Lyn、Fyn、その他を含むキナーゼのSrcファミリー(SFK)が存在する。
【非特許文献1】Salek−Ardakami,S.ら、J.Immunology(2004),173(10):6440−47
【非特許文献2】Marsland,B.ら、J.Exp.Med.(2004)200(2):181−89
【非特許文献3】Tan,S.ら、J.Immunology(2006)176:2872−79
【非特許文献4】Salek−Ardakami,S.ら、J.Immunology(2005)175(11):7635−41
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特定のピリジンおよびピリミジン誘導体はキナーゼ阻害物質として知られる。本教示の化合物と比べると、これらの化合物は各種位置で置換基の性質と配置の両方において異なっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本教示は式Iの置換3−シアノピリジン、
【0009】
【化5】

およびその薬学的に許容される塩、水和物、およびエステルに関し、式中、R、R、およびXは本明細書で説明されるように定義される。
【0010】
本教示は、薬学的有効量の1つ以上の式Iの化合物(その薬学的に許容される塩、水和物、およびエステルを含む)を含む医薬組成物、ならびに薬学的に許容される担体または賦形剤にも関する。本教示の別の態様は、式Iの化合物およびその薬学的に許容される塩、水和物、およびエステルの調製方法に関する。本教示は、式Iの化合物およびその薬学的に許容される塩、水和物、およびエステルの使用方法も提供する。いくつかの実施形態では、本教示は自己免疫疾患および炎症性疾患、例えば喘息、大腸炎、多発性硬化症、乾癬、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、および関節の炎症の治療方法を提供し、本方法は治療有効量の1つ以上の式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル)を、ヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本教示は式Iの化合物、
【0012】
【化6】

およびその薬学的に許容される塩、水和物、およびエステルに関し、式中、
Xは、a)−NR−Y−、b)−O−Y−、c)−S(O)−Y−、d)−S(O)NR−Y−、e)NRS(O)−Y−、f)−C(O)NR−Y−、g)−C(S)NR−Y−、h)−NRC(O)−Y−、i)−NRC(S)−Y−、j)−C(O)O−Y−、k)−OC(O)−Y−、およびl)共有結合から選択され、
Yは、それぞれ存在する場合に、a)二価のC1〜10アルキル基、b)二価のC2〜10アルケニル基、c)二価のC2〜10アルキニル基、d)二価のC1〜10ハロアルキル基、およびe)共有結合から独立して選択され、
は、1〜4個の−Y−R基で場合により置換されたフェニル基であり、
は、C6〜14アリール基または5〜14員のヘテロアリール基であり、それぞれの基は−Y−Rおよび−O−Y−Rから独立して選択される1〜4個の基で場合により置換されており、
は、a)H、b)C1〜10アルキル基、c)C2〜10アルケニル基、d)C2〜10アルキニル基、およびe)C1〜10ハロアルキル基から選択され、
は、それぞれ存在する場合に、a)ハロゲン、b)−CN、c)−NO、d)オキソ、e)−O−Y−R、f)−NR−Y−R、g)−N(O)R−Y−R、h)−S(O)−Y−R、i)−S(O)O−Y−R、j)−S(O)NR−Y−R、k)−C(O)−Y−R、l)−C(O)O−Y−R、m)−C(O)NR−Y−R、n)−C(S)NR−Y−R、o)C1〜10アルキル基、p)C2〜10アルケニル基、q)C2〜10アルキニル基、r)C1〜10ハロアルキル基、s)C3〜14シクロアルキル基、t)C6〜14アリール基、u)3〜14員のシクロへテロアルキル基、およびv)5〜14員のヘテロアリール基から独立して選択され、o)〜v)のそれぞれは1〜4個の−Y−R基で場合により置換されており、
は、それぞれ存在する場合に、a)H、b)−C(O)R、c)−C(O)OR、d)C1〜10アルキル基、e)C2〜10アルケニル基、f)C2〜10アルキニル基、g)C1〜10ハロアルキル基、h)C3〜14シクロアルキル基、i)C6〜14アリール基、j)3〜14員のシクロへテロアルキル基、およびk)5〜14員のヘテロアリール基から独立して選択され、d)〜k)のそれぞれは1〜4個の−Y−R基で場合により置換されており、
およびRは、それぞれ存在する場合に、a)H、b)−O−Y−R、c)−S(O)−Y−R、d)−S(O)O−Y−R、e)−C(O)−Y−R、f)−C(O)O−Y−R、g)−C(O)NR10−Y−R11、h)−C(S)NR10−Y−R11、i)C1〜10アルキル基、j)C2〜10アルケニル基、k)C2〜10アルキニル基、l)C1〜10ハロアルキル基、m)C3〜14シクロアルキル基、n)C6〜14アリール基、o)3〜14員のシクロへテロアルキル基、およびp)5〜14員のヘテロアリール基から独立して選択され、i)〜p)のそれぞれは1〜4個の−Y−R基で場合により置換されており、
は、それぞれ存在する場合に、a)ハロゲン、b)−CN、c)−NO、d)オキソ、e)−O−Y−R、f)−NR10−Y−R11、g)−N(O)R10−Y−R11、h)−S(O)−Y−R、i)−S(O)O−Y−R、j)−S(O)NR10−Y−R11、k)−C(O)−Y−R、l)−C(O)O−Y−R、m)−C(O)NR10−Y−R11、n)−C(S)NR10−Y−R11、o)C1〜10アルキル基、p)C2〜10アルケニル基、q)C2〜10アルキニル基、r)C1〜10ハロアルキル基、s)C3〜14シクロアルキル基、t)C6〜14アリール基、u)3〜14員のシクロへテロアルキル基、およびv)5〜14員のヘテロアリール基から独立して選択され、o)〜v)のそれぞれは1〜4個の−Y−R12基で場合により置換されており、
は、それぞれ存在する場合に、a)H、b)−C(O)−C1〜10アルキル、c)−C(O)OH、d)−C(O)O−C1〜10アルキル、e)C1〜10アルキル基、f)C2〜10アルケニル基、g)C2〜10アルキニル基、h)C1〜10ハロアルキル基、i)C3〜14シクロアルキル基、j)C6〜14アリール基、k)3〜14員のシクロへテロアルキル基、およびl)5〜14員のヘテロアリール基から独立して選択され、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C1〜10ハロアルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基のそれぞれは1〜4個の−Y−R12基で場合により置換されており、
10およびR11は、それぞれ存在する場合に、a)H、b)−OH、c)−SH、d)−NH、e)−NH−C1〜10アルキル、f)−N(C1〜10アルキル)、g)−S(O)−C1〜10アルキル、h)−S(O)OH、i)−S(O)−OC1〜10アルキル、j)−C(O)−C1〜10アルキル、k)−C(O)OH、l)−C(O)−OC1〜10アルキル、m)−C(O)NH、n)−C(O)NH−C1〜10アルキル、o)−C(O)N(C1〜10アルキル)、p)−C(S)NH、q)−C(S)NH−C1〜10アルキル、r)−C(S)N(C1〜10アルキル)、s)C1〜10アルキル基、t)C2〜10アルケニル基、u)C2〜10アルキニル基、v)C1〜10アルコキシ基、w)C1〜10ハロアルキル基、x)C3〜14シクロアルキル基、y)C6〜14アリール基、z)3〜14員のシクロへテロアルキル基、およびaa)5〜14員のヘテロアリール基から独立して選択され、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C1〜10アルコキシ基、C1〜10ハロアルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基のそれぞれは1〜4個の−Y−R12基で場合により置換されており、
12は、それぞれ存在する場合に、a)ハロゲン、b)−CN、c)−NO、d)オキソ、e)−OH、f)−NH、g)−NH(C1〜10アルキル)、h)−N(C1〜10アルキル)、i)−SH、j)−S(O)−C1〜10アルキル、k)−S(O)OH、l)−S(O)−OC1〜10アルキル、m)−C(O)−C1〜10アルキル、n)−C(O)OH、o)−C(O)−OC1〜10アルキル、p)−C(O)NH、q)−C(O)NH−C1〜10アルキル、r)−C(O)N(C1〜10アルキル)、s)−C(S)NH、t)−C(S)NH−C1〜10アルキル、u)−C(S)N(C1〜10アルキル)、v)C1〜10アルキル基、w)C2〜10アルケニル基、x)C2〜10アルキニル基、y)C1〜10アルコキシ基、z)C1〜10ハロアルキル基、aa)C3〜14シクロアルキル基、ab)C6〜14アリール基、ac)3〜14員のシクロへテロアルキル基、およびad)5〜14員のヘテロアリール基から独立して選択され、
mは0、1、または2である。
【0013】
いくつかの実施形態では、式I’を有する対応する窒素酸化物を提供するために、ピリジン環は窒素原子上で酸化されていてもよく、
【0014】
【化7】

式中、R、R、およびXは本明細書で定義する通りである。
【0015】
いくつかの実施形態では、Xは、−NR−Y−、−O−Y−、および共有結合から選択され得る。例えば、Xは、−NH−、−N(CH)−、−NH−CH−、−NH−CHCH−、−NH−CHCHCH−、−O−、および共有結合から選択され得る。特定の実施形態では、Xは−NH−であり得る。
【0016】
ある実施形態では、Rは、
【0017】
【化8】

から選択されてもよく、
式中、Rは本明細書で定義する通りである。特定の実施形態では、Rは、それぞれ存在する場合に、−F、−Cl、−Br、−CN、−NO、−O−Y−R、−C(O)−Y−R、−C(O)O−Y−R、−NR−Y−R、およびC1−6アルキル基から独立して選択され得る。例えば、Rは、それぞれ存在する場合に、−F、−Cl、−Br、−O−C1−3アルキル、−O−フェニル、およびC1−3アルキル基から独立して選択され得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、Rは、フェニル基、C8〜14アリール基、および5〜14員のヘテロアリール基から選択されてもよく、これらの基のそれぞれは−Y−Rおよび−O−Y−Rから独立して選択される1〜4個の基で場合により置換されていてもよく、YおよびRは本明細書で定義する通りである。例えば、Rは、フェニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、フリル基、チエニル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ベンゾジオキシニル基、ベンゾジオキソリル基、ベンゾジオキサニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ベンゾインドリル基、インダニル基、インデニル基、イソチアゾリル基、ピリダジニル基、ピラゾリル基、テトラヒドロナフチル基、イソオキサゾリル基、キノリニル基、ナフチル基、イミダゾリル基、およびピロリル基から選択されてもよく、これらの基のそれぞれは−Y−Rまたは−O−Y−Rから独立して選択される1〜4個の基で場合により置換されていてもよく、YおよびRは本明細書で定義する通りである。
【0019】
ある実施形態では、Rは、
【0020】
【化9】

であってよく、
式中、D、D、およびDは、独立してH、−Y−R基、または−O−Y−R基であってよく、YおよびRは本明細書で定義する通りである。
【0021】
例えば、D、D、およびDの少なくとも1つは、−Y−R基または−O−Y−R基であってよく、Yは、それぞれ存在する場合に、独立して二価のC1〜4アルキル基または共有結合であってよく、Rは、それぞれ存在する場合に、ハロゲン、−CN、−NO、−O−Y−R、−NR−Y−R、−S(O)−Y−R、−S(O)NR−Y−R、−C(O)−Y−R、−C(O)O−Y−R、−C(O)NR−Y−R、C1〜10アルキル基、C1〜10ハロアルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基から独立して選択されてもよく、C1〜10アルキル基、C1〜10ハロアルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基のそれぞれは1〜4個の−Y−R基で場合により置換されていてよく、Y、R、R、R、およびRは本明細書で定義する通りである。
【0022】
ある実施形態では、D、D、およびDの少なくとも1つは、−O−(CH−R基であってよく、nはそれぞれ存在する場合に、独立して0、1、2、3、または4であってよく、Rは、それぞれ存在する場合に、F、Cl、Br、−NO、−O−Y−R、−NR−Y−R、−S(O)−Y−R、−S(O)NR−Y−R、−C(O)NR−Y−R、C1〜10アルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基から独立して選択されてもよく、C1〜10アルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基のそれぞれは1〜4個の−Y−R基で場合により置換されていてよく、Y、R、R、R、およびRは本明細書で定義する通りである。特定の実施形態では、D、D、およびDの少なくとも1つは、−O−(CHNR−Y−Rまたは−O−(CH−3〜14員のシクロへテロアルキル基であってよく、3〜14員のシクロへテロアルキル基は1〜4個の−Y−R基で場合により置換されていてよく、Y、R、R、およびRは本明細書で定義する通りであり、nはそれぞれ存在する場合に独立して0、1、2、3、または4であってよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、D、D、およびDの少なくとも1つは、−(CHNR−Y−Rまたは−(CH−3〜14員のシクロへテロアルキル基であってよく、3〜14員のシクロへテロアルキル基は1〜4個の−Y−R基で場合により置換されていてよく、Y、R、R、およびRは本明細書で定義する通りであり、nはそれぞれ存在する場合に独立して0、1、2、3、または4であってよい。
【0024】
、D、およびDの少なくとも1つが、−O−(CHNR−Y−R基または−(CHNR−Y−R基であってよい実施形態では、−O−(CHNR−Y−R基および−(CHNR−Y−R基はそれぞれ、−O−(CHNH−Y−Rまたは−O−(CHN(CH)−Y−R、および−(CHNH−Y−Rまたは−(CHN(CH)−Y−Rであってよく、Yはそれぞれ存在する場合に、独立して二価のC1〜4アルキル基または共有結合であってよく、Rはそれぞれ存在する場合に、−O−Y−R、−C(O)−Y−R、−C(O)O−Y−R、−C(O)NR10−Y−R11、C1〜10アルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基から独立して選択されてもよく、C1〜10アルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基のそれぞれは1〜4個の−Y−R12基で場合により置換されていてよく、YおよびR12は本明細書で定義する通りである。例えば、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基は、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ピロリジニル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、ピペリジニル基、アゼパニル基(azepanyl group)、ジアゼパニル基(diazepanyl group)、チオモルホリニル基、フリル基、イミダゾリル基、およびピリジニル基から選択されてもよく、これらの基のそれぞれは1〜4個の−Y−R12基で場合により置換されていてよく、YおよびR12は本明細書で定義する通りである。
【0025】
、D、およびDの少なくとも1つが、−O−(CH−3〜14員のシクロへテロアルキル基または−(CH−3〜14員のシクロへテロアルキル基であってよい実施形態では、3〜14員のシクロへテロアルキル基は、ピロリジニル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、ピペリジニル基、アゼパニル基(azepanyl group)、ジアゼパニル基(diazepanyl group)、およびチオモルホリニル基から選択されてよく、これらの基のそれぞれは1〜4個の−Y−R基で場合により置換されていてよく、YおよびRは本明細書で定義する通りである。例えば、Yは、それぞれ存在する場合に、独立して二価のC1〜4アルキル基または共有結合であってよく、Rは、それぞれ存在する場合に、独立してオキソ基、−O−Y−R、−NR10−Y−R11、−S(O)−Y−R、−C(O)O−Y−R、C1〜10アルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基であってよく、C1〜10アルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基は1〜4個の−Y−R12基で場合により置換されていてよく、YおよびR12は本明細書で定義する通りである。例えば、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基は、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ピロリジニル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、ピペリジニル基、アゼパニル基(azepanyl group)、ジアゼパニル基(diazepanyl group)、チオモルホリニル基、フリル基、イミダゾリル基、およびピリジニル基から選択されてもよく、これらの基のそれぞれは1〜4個の−Y−R12基で場合により置換されていてよく、YおよびR12は本明細書で定義する通りである。
【0026】
あるいは、または同時に、D、D、およびDの少なくとも1つは、ハロゲン、−CN、−NO、−S(O)−Y−R、−S(O)NR−Y−R、−C(O)O−Y−R、−C(O)NR−Y−R、C1〜10アルキル基、C1〜10ハロアルキル基から選択されてもよく、Y、R、R、およびRは本明細書で定義する通りである。
【0027】
いくつかの実施形態では、D、D、およびDの少なくとも2つは、−O−(CH−R基であってよく、nはそれぞれ存在する場合に、独立して0、1、2、3、または4であってよく、Rは、それぞれ存在する場合に、F、Cl、Br、−NO、−O−Y−R、−NR−Y−R、−S(O)−Y−R、−S(O)NR−Y−R、−C(O)NR−Y−R、C1〜10アルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基から独立して選択されてもよく、C1〜10アルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基のそれぞれは1〜4個の−Y−R基で場合により置換されていてよく、Y、R、R、R、およびRは本明細書で定義する通りである。
【0028】
ある実施形態では、D、D、およびDの少なくとも2つは、独立して−O−CH基または−O−(CH−O−Y−R基であってよく、YおよびRは本明細書で定義する通りであり、nはそれぞれ存在する場合に、独立して0、1、2、3、または4であってよい。ある実施形態では、D、D、およびDの2つは−O−CH基であってよい。他の実施形態では、D、D、およびDの2つは−O−(CH−O−Y−R基または代わりに、−O−CH基および−O−(CH−O−Y−R基であってよく、YおよびRは本明細書で定義する通りであり、nはそれぞれ存在する場合に、独立して0、1、2、3、または4であってよい。
【0029】
ある実施形態では、D、D、およびDの少なくとも1つは−O−CH基であってよく、D、D、およびDの少なくとも1つは−O−(CH−NR−Y−R基または−O−(CH−3〜14員のシクロへテロアルキル基であってよく、3〜14員のシクロへテロアルキル基は1〜4個の−Y−R基で場合により置換されていてよく、Y、R、R、およびRは本明細書で定義する通りであり、nはそれぞれ存在する場合に独立して0、1、2、3、または4であってよい
いくつかの実施形態では、D、D、およびDの内の1つは
【0030】
【化10】

であり、式中、Rは、それぞれ存在する場合に、−O−Y−R、−NR10−Y−R11、C6〜14アリール基、および5〜14員のヘテロアリール基から独立して選択されてもよく、C6〜14アリール基および5〜14員のヘテロアリール基のそれぞれは1〜4個の−Y−R12基で場合により置換されていてよく、Y、R、R10、R11、およびR12は本明細書で定義する通りであり、nはそれぞれ存在する場合に独立して0、1、2、3、または4であってよい。
【0031】
ある実施形態では、D、D、およびDの少なくとも1つはC6〜14アリール基または5〜14員のヘテロアリール基であってよく、これらの基のそれぞれは1〜4個の−Y−R基で場合により置換されていてよく、YおよびRは本明細書で定義する通りである。例えば、D、D、およびDの少なくとも1つは、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、フリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピロリル基、およびチエニル基から選択されてよく、これらの基のそれぞれは1〜4個の−Y−R基で場合により置換されていてよく、YおよびRは本明細書で定義する通りである。特定の実施形態では、Yは、それぞれ存在する場合に、独立してC1〜4アルキル基または共有結合であってよく、Rは、ハロゲン、−CN、−NO、−O−Y−R、−NR10−Y−R11、−C(O)−Y−R、−C(O)NR10−Y−R11、−S(O)−Y−R、−S(O)NR10−Y−R11、およびC1〜4アルキル基で場合により置換された3〜14員のシクロへテロアルキル基から独立して選択されてもよく、Y、R、R10、およびR11は本明細書で定義する通りである。
【0032】
他の実施形態では、RはC8〜14の二環式アリール基または5〜14員のヘテロアリール基であってよく、これらの基のそれぞれは、−Y−R基および−O−Y−R基から独立して選択される1〜4個の基で場合により置換されていてよく、YおよびRは本明細書で定義する通りである。
【0033】
特定の実施形態では、Rは、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、フリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、チエニル基、イミダゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、インドリル基、ベンゾジオキソリル基、ベンゾジオキサニル基、およびジベンゾフラニル基から選択されてもよく、これらの基のそれぞれは、−(CH−R基および−O−(CH−R基から独立して選択される1〜4個の基で場合により置換されていてよく、nはそれぞれ存在する場合に独立して0、1、2、3、または4であってよく、Rはそれぞれ存在する場合に独立して、−NR−Y−Rまたは1〜4個の−Y−R基で場合により置換された3〜14員のシクロへテロアルキル基であってよく、Y、R、R、およびRは本明細書で定義する通りである。
【0034】
例えば、Rは、−O−(CHNH−Y−R、−O−(CHN(CH)−Y−R、−(CHNH−Y−R、または−(CHN(CH)−Y−Rであってよく、Yはそれぞれ存在する場合に、独立して二価のC1〜4アルキル基または共有結合であってよく、Rはそれぞれ存在する場合に、−O−Y−R、−C(O)−Y−R、−C(O)O−Y−R、−C(O)NR10−Y−R11、C1〜10アルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基から独立して選択されてもよく、C1〜10アルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基のそれぞれは1〜4個の−Y−R12基で場合により置換されていてよく、YおよびR12は本明細書で定義する通りである。特定の実施形態では、Rは、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基であってよく、又は5〜14員のヘテロアリール基は、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ピロリジニル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、ピペリジニル基、アゼパニル基(azepanyl group)、ジアゼパニル基(diazepanyl group)、チオモルホリニル基、フリル基、イミダゾリル基、およびピリジニル基から選択されてもよく、これらの基のそれぞれは1〜4個の−Y−R12基で場合により置換されていてよく、YおよびR12は本明細書で定義する通りである。
【0035】
あるいは、Rは、−O−(CH−3〜14員のシクロへテロアルキル基または−(CH−3〜14員のシクロへテロアルキル基であってよく、3〜14員のシクロへテロアルキル基は、ピロリジニル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、ピペリジニル基、アゼパニル基(azepanyl group)、ジアゼパニル基(diazepanyl group)、およびチオモルホリニル基から選択されてよく、これらの基のそれぞれは1〜4個の−Y−R基で場合により置換されていてよく、YおよびRは本明細書で定義する通りである。例えば、Yは、それぞれ存在する場合に、独立して二価のC1〜4アルキル基または共有結合であってよく、Rは、それぞれ存在する場合に、独立してオキソ基、−O−Y−R、−NR10−Y−R11、−S(O)−Y−R、−C(O)O−Y−R、C1〜10アルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基であってよく、C1〜10アルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基のそれぞれは1〜4個の−Y−R12基で場合により置換されていてよく、YおよびR12は本明細書で定義する通りである。例えば、Rは、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ピロリジニル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、ピペリジニル基、アゼパニル基(azepanyl group)、ジアゼパニル基(diazepanyl group)、チオモルホリニル基、フリル基、イミダゾリル基、およびピリジニル基から選択されるC3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリール基であってよく、これらの基のそれぞれは1〜4個の−Y−R12基で場合により置換されていてよく、YおよびR12は本明細書で定義する通りである。
【0036】
本教示は、式Iによって特定される化合物の種類に含まれる化合物のある実施形態を除外し得ることを理解すべきである。例えば、Rが3−クロロ−4−フルオロフェニル基の場合、Rが2−[(1H−イミダゾル−5−イルメチル)アミノ]フェニル基である化合物を本教示は除外する。
【0037】
本教示の化合物は下記の表1に示される化合物を含む。
【0038】
【表1−1】

【0039】
【表1−2】

【0040】
【表1−3】

【0041】
【表1−4】

酸性部分を有し得る式Iの化合物の薬学的に許容される塩を、有機塩基および無機塩基を使用して形成することができる。脱プロトン化に利用可能な酸性水素の数に応じて、一価および多価陰イオンの塩の両方が意図される。塩基を使用して形成される適切な塩には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩のような金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、またはマグネシウム塩、アンモニア塩および有機アミン塩、例えばモルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ−、ジ−、またはトリ−低級アルキルアミン(例えばエチル−tert−ブチル−、ジエチル−、ジイソプロピル−、トリエチル−、トリブチル−、またはジメチルプロピルアミン)、またはモノ−、ジ−、またはトリヒドロキシ低級アルキルアミン(例えばモノ−、ジ−、またはトリエタノールアミン)を使用して形成されるものが含まれる。限定されないが、無機塩基の具体的な例には、NaHCO、NaCO、KHCO、KCO、CsCO、LiOH、NaOH、KOH、NaHPO、NaHPO、およびNaPOが含まれる。内部塩も形成可能である。同様に、本明細書で開示される化合物が塩基性部分を含む場合は、有機酸および無機酸を使用して塩を形成することができる。例えば、以下の酸から塩が形成可能である:酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、ジクロロ酢酸、エテンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、硝酸、シュウ酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、フタル酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸およびトルエンスルホン酸、ならびにその他既知の薬学的に許容される酸。
【0042】
式Iの化合物のエステルは、哺乳動物において遊離酸の形態(例えば遊離カルボン酸の形態)に代謝され得る、当業界で既知の様々な薬学的に許容されるエステルを含み得る。そのようなエステルの例には、アルキルエステル(例えば1〜10個の炭素原子からなるもの)、シクロアルキルエステル(例えば3〜10個の炭素原子からなるもの)、アリールエステル(例えば6〜14個の炭素原子からなるもの、6〜10個の炭素原子からなるものを含む)、およびこれらのヘテロ環のアナログ(例えば3〜14個の環原子からなるもの、そのうちの1〜3個は酸素、窒素、および硫黄のへテロ原子から選択され得る)が含まれ、アルコール残基はさらなる置換基を含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される化合物のエステルは、C1〜10アルキルエステル、例えばメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ネオペンチルエステル、およびヘキシルエステル、C3−10シクロアルキルエステル、例えばシクロプロピルエステル、シクロプロピルメチルエステル、シクロブチルエステル、シクロペンチルエステル、およびシクロヘキシルエステル、またはアリールエステル、例えばフェニルエステル、ベンジルエステル、およびトリルエステルであってよい。
【0043】
本教示に従ってさらに提供されるのは、本明細書で開示される化合物のプロドラッグである。本明細書で用いる場合“プロドラッグ”は、哺乳動物の対象に投与された場合に、本教示の化合物を産生する、生成する、または放出する部分を意味する。修飾が、通常の操作またはin vivoで親化合物から開裂される方法で、本化合物中に存在する官能基を修飾することによりプロドラッグを調製することができる。プロドラッグの例には、化合物の水酸基、アミノ基、スルフヒドリル基、またはカルボキシル基に付加された1つ以上の分子部分を含み、哺乳動物の対象に投与された場合に、in vivoで切断されて遊離水酸基、アミノ基、スルフヒドリル基、またはカルボキシル基をそれぞれ形成する、本明細書で説明するような化合物が含まれる。プロドラッグの例には、本教示の化合物中のアルコールおよびアミン官能基のアセテート、ホルメート、およびベンゾエート誘導体が含まれてもよい。プロドラッグの調製と使用は、T.Higuchi and V.Stella,“Pro−drugs as Novel Delivery Systems,”Vol.14 of the A.C.S.Symposium SeriesおよびBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987で説明されており、これらの開示内容全体が、参考として本明細書で援用される。
【0044】
本教示は、本明細書で説明する少なくとも1つの化合物と、1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む医薬組成物も提供する。そのような担体の例は当業者に周知であり、例えば、参考として開示内容全体が本明細書で援用される、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th edition,ed.Alfonso R.Gennaro,Lippincott Williams&Wilkins,Baltimore,MD(2000)に説明されているような許容可能な製剤手順に従って調製可能である。本明細書で用いる場合、“薬学的に許容される”は、毒物学的観点から医薬上の応用への使用が適切であり、有効成分と有害な相互作用を起こさない物質を意味する。従って、薬学的に許容される担体は、製剤中の他の成分と適合し、生物学的に許容される担体である。補助有効成分も医薬組成物に加えられてもよい。
【0045】
本教示の化合物は、哺乳動物、例えばヒトに発生する病態または疾患の治療に有用であり得る。本明細書で用いる場合、“治療”は、病態および/またはその症状を部分的にまたは完全に軽減するおよび/または改善することを意味する。従って本教示は、本教示の化合物を含む医薬組成物を、薬学的に許容される担体と併用してまたは共同で哺乳動物に与える方法を含む。本教示の化合物は、単独で、または病態または疾患の治療のための他の治療有効化合物または治療法と併用して投与されてもよい。本明細書で用いる場合、“治療有効”は、所望の生物活性または効果を引き起こす物質または量を意味する。
【0046】
本教示は、プロテインキナーゼC(PKC)およびそのθアイソフォーム(PKCθ)のようなプロテインキナーゼによって媒介される病態または疾患の治療のための、本明細書で開示される化合物の治療用活性物質としての使用も含む。病態または疾患には、炎症性疾患および自己免疫疾患、例えば喘息、大腸炎、多発性硬化症、乾癬、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、および関節の炎症が含まれてもよい。従って、本教示は、本明細書で説明される化合物を使用してこれらの病態および疾患を治療する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、方法は、PKCおよびPKCθのようなプロテインキナーゼによって媒介される病態または疾患を有する哺乳動物を特定する工程と、本明細書で説明される有効量の化合物をその哺乳動物に与える工程とを含む。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書で開示される化合物を含む医薬組成物を、薬学的に許容される担体と併用して、または共同で哺乳動物に投与する工程を含む。
【0047】
本教示は、上記の病態または疾患の予防および/または抑制のための、本明細書で開示される化合物の治療用活性物質としての使用をさらに含む。従って、本教示は、本明細書で説明される化合物を使用してこれらの病態および疾患を予防および/または抑制する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、方法は、PKCおよびPKCθのようなプロテインキナーゼによって媒介される病態または疾患を有する哺乳動物を特定する工程と、本明細書で説明される有効量の化合物をその哺乳動物に与える工程とを含む。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書で開示される化合物を含む医薬組成物を、薬学的に許容される担体と併用して、または共同で哺乳動物に投与する工程を含む。
【0048】
本教示の化合物は、そのままで、または従来の医薬用担体と組み合わせて経口的または非経口的に投与されてもよい。適用可能な固体担体には、香味剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁化剤、充てん剤、流動促進剤、圧縮補助剤、結合剤または錠剤用崩壊剤、またはカプセル化材としての役割も果たす、1つ以上の物質が含まれてもよい。化合物は従来の手法、例えば既知の抗炎症薬に使用される手法と同様の手法での調製が可能である。本明細書で開示される活性化合物を含有する経口用製剤には、従来用いられる任意の経口用剤形、例えば錠剤、カプセル剤、バッカル剤、トローチ剤、薬用ドロップ、経口用液剤、懸濁剤、または液剤が含まれてよい。散剤中では、担体は、微細に粉砕された活性化合物との混合物である、微細に粉砕された固体であってよい。錠剤中では、活性化合物は、必要な圧縮特性を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形状および大きさに成形されてよい。散剤および錠剤は、最大99%の活性化合物を含有してもよい。
【0049】
カプセル剤は、活性化合物(1種または複数種)と不活性充てん剤(1種または複数種)および/または希釈剤(1種または複数種)、例えば薬学的に許容されるデンプン(例えばトウモロコシ、ジャガイモ、またはタピオカデンプン)、糖類、人工甘味料、粉末セルロース(例えば結晶性および微結晶性セルロース)、小麦粉、ゼラチン、ゴムなどとの混合物を含んでもよい。
【0050】
有用な錠剤型製剤は、従来の圧縮、湿式造粒法または乾式造粒法によって作製可能であり、薬学的に許容される希釈剤、結合剤、潤沢剤、崩壊剤、表面改質剤(界面活性剤を含む)、懸濁化剤または安定剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、糖類、乳糖、デキストリン、スターチ、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボキシルメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、アルギン酸、アカシアガム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、珪酸塩錯体(complex silicates)、炭酸カルシウム、グリシン、スクロース、ソルビトール、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、乳糖、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、低融点ワックス、およびイオン交換樹脂を利用する。好ましい表面改質剤には、非イオン性およびアニオン性の表面改質剤が含まれる。表面改質剤の代表例には、poloxamer188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、およびトリエタノールアミンが含まれる。本明細書の経口用製剤は、活性化合物(1種または複数種)の吸収を変化させるために標準的な遅延作用型または持続放出型製剤を利用可能である。経口用製剤は、本明細書で説明する化合物を、必要であれば適切な可溶化剤または乳化剤を含有する水または果汁中に含んでもよい。
【0051】
液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤の調製および吸入送達用に液体担体を使用してよい。本明細書で説明する化合物を、薬学的に許容される液体担体、例えば水、有機溶媒、または両者の混合物、または薬学的に許容される油または脂に溶解または懸濁してもよい。液体担体は、その他の適切な医薬品用添加物、例えば可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、甘味剤、香味剤、懸濁化剤、増粘剤、着色剤、粘性調節剤、安定剤、および浸透圧調節剤を含有してよい。経口および非経口投与用の液体担体の例には、水(特に上述の添加物、例えばセルロース誘導体、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム溶液を含有するもの)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えばグリコールを含む)およびそれらの誘導体、ならびに油(例えばココナッツ油およびラッカセイ油)が含まれる。非経口用投与には、担体はオレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルのような油脂エステルであってよい。非経口投与では、滅菌液状組成物には滅菌液体担体が使用される。圧縮組成物用の液体担体は、ハロゲン化炭化水素またはその他の薬学的に許容される高圧ガスであってよい。
【0052】
滅菌された液剤または懸濁剤である液体医薬組成物を、例えば筋肉内、腹腔内、または皮下注射によって利用してもよい。静脈内投与によって滅菌液剤を投与してもよい。経口投与用の組成物は、液状または固体状のいずれであってもよい。
【0053】
好ましくは、医薬組成物は単位剤形、例えば錠剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、または坐剤である。そのような剤形では、医薬組成物は、適切な量の活性化合物を含有する単位用量(1つまたは複数)に細分されてもよい。単位剤形は、包装された組成物、例えば分包散剤、バイアル、アンプル、プレフィルドシリンジ、または液剤が入ったサシェ(sachets)であってもよい。あるいは、単位剤形はカプセル剤または錠剤そのものであってよく、または適切な数のそのような任意の組成物が包装された形態であってもよい。そのような単位剤形は、約1mg/kgの活性化合物から約500mg/kgの活性化合物を含有してもよく、単回投与または2回以上の投与で与えられてもよい。そのような用量は、活性化合物(1種または複数種)を受容者の血流に送達するのに有用な任意の手法で投与されてよく、経口的、埋め込み型製剤による投与、非経口的(静脈内、腹腔内、および皮下注射を含む)、経直腸的、経膣的、および経皮的投与が含まれる。そのような投与は、その薬学的に許容される塩を含む本教示の化合物が含まれるローション剤、クリーム剤、フォーム剤(forms)、パッチ剤、懸濁剤、液剤、および坐剤(直腸および膣用)使用して実施可能である。
【0054】
特定の病状または疾患の治療または抑制の目的で投与される場合、多くの因子、例えば利用される特定の化合物、投与方式、治療される病態の重篤度、ならびに治療される個体に関連する各種の生理学的因子に応じて効果的な投与量が変化することを理解すべきである。治療上の応用では、すでに疾患を発症している患者に、その疾患の症状およびその合併症の治癒に、または少なくとも部分的な改善に十分な量で本教示の化合物が与えられてもよい。通常は、特定の個体の治療に使用される投与量は担当医によって主観的に決定されなければならない。関連する変量には、特定の病態とその症状、ならびに患者の体格、年齢、および反応パターンが含まれる。
【0055】
例えば肺が標的臓器であるような一部の例では、定量噴霧式吸入器、呼吸連動式吸入器、マルチドーズドライパウダー吸入器、ポンプ、スクイーズ式噴霧スプレーディスペンサー、エアゾールディスペンサー、およびエアゾールネブライザーのような器具を使用して化合物を患者の気道に直接投与するのが望ましい場合がある。鼻腔内または気管支内吸入による投与用に、本教示の化合物を液体組成物、固体組成物、またはエアゾール組成物に製剤化してもよい。液体組成物には、1例として、1つ以上の薬学的に許容される溶媒に溶解された、部分的に溶解された、または懸濁された本教示の1つ以上の化合物が含まれてよく、例えばポンプまたはスクイーズ式噴霧スプレーディスペンサーを使用して投与されてよい。溶媒は、例えば等張食塩水または滅菌水であってよい。固体組成物は、1例として、乳糖または気管支内での使用に適切なその他の不活性パウダーと混合された本教示の1つ以上の組成物を含む散剤製剤であってよく、例えば、エアゾールディスペンサーまたは固体組成物を封入するカプセルを破砕または穿刺し、吸入用に固体組成物を送達する器具によって投与されてよい。エアゾール組成物には、1例として、本教示の1つ以上の化合物、高圧ガス、界面活性剤、および共溶媒が含まれてよく、例えば、定量式器具によって投与されてよい。高圧ガスは、クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロフルオロアルカン(HFA)、または生理学的および環境的に許容されるその他の高圧ガスであってよい
本明細書で説明される化合物は、非経口経路または腹腔内経路で投与されてよい。これらの活性化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物、またはエステルの液剤または懸濁剤を、ヒドロキシル−プロピルセルロースのような界面活性剤と適切に混合した水中で調製してよい。分散液も、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物を含む油中で調製されてもよい。通常の保存および使用条件下では、一般的にこれらの製剤は微生物の増殖を抑制するために保存剤を含有する。
【0056】
注射に適した医薬形態には、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射液または分散液の用時調製用の滅菌散剤が含まれてよい。好ましい実施形態では、形態は滅菌済みであり、その粘度によってシリンジ内を流動することができる。好ましくは、製造および保存条件下で形態は安定であり、細菌および真菌のような微生物の汚染活動を抑制するように保存が可能である。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、それらの適切な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒であってよい。
【0057】
本明細書で説明される化合物は経皮的に、すなわち、体表面から体内経路の内層、例えば上皮組織および粘膜組織に投与されてよい。そのような投与は、その薬学的に許容される塩、水和物、およびエステルを含む本教示の化合物を含むローション剤、クリーム剤、フォーム剤、パッチ剤、懸濁剤、液剤、および坐剤(直腸用および膣用)を使用して実施可能である。表皮を通して活性化合物(1種または複数種)を送達する局所製剤は、炎症および関節炎の局所治療に有用であり得る。
【0058】
経皮的投与は、活性化合物と、活性化合物に対して不活性であり、皮膚に対する毒性を示さず、皮膚を介して活性化合物が全身から血流中に吸収される送達を可能にする担体を含有する経皮吸収型貼布剤を用いて行われてもよい。担体は、例えばクリーム剤および軟膏剤、パスタ剤、ゲル、および密閉デバイスなど任意の数の形態をとることができる。クリーム剤および軟膏剤は、粘調液、または水中油型または油中水型のいずれかの半固形乳剤であってもよい。活性化合物を含有するワセリンまたは親水性ワセリンに分散させた吸収性パウダーを含むパスタ剤も適している。活性化合物を血流中に放出させる目的で、様々な密閉デバイス、例えば担体とともに、あるいは担体なしで活性化合物を含有するリザーバー(貯蔵層)を覆う半透膜、または活性化合物を含有するマトリックスを使用することができる。その他の密閉デバイスは文献で知られている。
【0059】
本明細書で説明する化合物を、従来の坐剤の形態で経直腸的または経膣的に投与してよい。坐剤の融点を変化させるためにワックスを添加する、またはしないカカオ脂、およびグリセリンを含む伝統的な材料から坐剤製剤が作製可能である。水溶性の坐剤用基剤、例えば各種分子量のポリエチレングリコールも使用できる。
【0060】
in vitroまたはin vivoのいずれかで本教示の化合物を宿主細胞に導入するために脂質製剤またはナノカプセルを使用できる。当業界で既知の方法によって脂質製剤およびナノカプセルが調製可能である。
【0061】
本教示の化合物の有効性を高めるため、標的疾患の治療に有効な他の物質と化合物を組み合わせるのが望ましいことがある。炎症性疾患には、そうした炎症性疾患の治療に、特に喘息および関節炎の治療に有効なその他の活性化合物(すなわちその他の有効成分または物質)を、本教示の活性化合物とともに投与してもよい。本明細書で開示される化合物と同時に、または別の時間にその他の物質を投与できる。
【0062】
説明全体を通して、組成物が特定の成分を有する、含む、または備えると説明される場合、またはプロセスが特定のプロセス工程を有する、含む、または備えると説明される場合、本教示の組成物はまた、列挙される成分のみから実質的になる、またはそれらからなること、また本教示のプロセスはまた、列挙されるプロセス工程のみから実質的になる、またはそれらからなることも意図するものである。
【0063】
本出願において、要素または成分が、列挙される要素または成分のリストに含まれる、および/またはリストから選択されるとされる場合、その要素または成分は、列挙された任意の要素または成分であってよいこと、また2つ以上の列挙された要素または成分からなる群から選択されてよいことを理解すべきである。語句“含む”の使用は、具体的な別段の記載がない限り、通常は制限がなく、限定されないものとして理解されるものである。
【0064】
具体的な別段の記載がない限り、本明細書における単数形の使用は複数形を含む(逆もまた同様である)。さらに、語句“約”が量に関する値の前で使用される場合、具体的な別段の記載がない限り、本教示は具体的な量に関する値そのものも含む。
【0065】
本教示が実施可能である限りは、工程の順番、またはある行為を実施する順番は重要ではないことを理解すべきである。さらに、2つ以上の工程または行為を同時に実施してもよい。
【0066】
本明細書で用いる場合、説明の文脈から別に理解される、または化合物の特定の1つの形態、すなわち化合物自体、またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステルに明確に限定される場合を除いて、“化合物”は、化合物自体と、その薬学的に許容される塩、水和物、およびエステルを意味する。
【0067】
本明細書で用いる場合、“ハロ”または“ハロゲン”は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを意味する。
【0068】
本明細書で用いる場合、“オキソ”は、二重結合した酸素(すなわち=O)を意味する。
【0069】
本明細書で、部分または部分の一部として用いる場合、“アルキル”は、直鎖または分岐飽和炭化水素基を意味する。いくつかの実施形態では、1つのアルキル基は、1〜10個の炭素原子(例えば1〜6個の炭素原子)を有し得る。アルキル基の例には、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えばn−プロピルおよびイソプロピル)、ブチル(例えばn−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル)、ペンチル基(例えばn−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)などが含まれる。いくつかの実施形態では、アルキル基は最大4個の独立して選択される−Y−R、−Y−R、またはR12基で置換されてよく、Y、R、R、およびR12は本明細書で定義される通りである。低級アルキル基は、通常最大6個の炭素原子、すなわち1〜6個の炭素原子を有する。低級アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル(例えばn−プロピルおよびイソプロピル)、およびブチル基(例えばn−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル)が含まれる。
【0070】
本明細書で、部分または部分の一部として用いる場合、“アルケニル”は1つ以上の炭素−炭素の二重結合を有する直鎖または分岐アルキル基を意味する。いくつかの実施形態では、1つのアルケニル基は、2〜10個の炭素原子(例えば2〜6個の炭素原子)を有し得る。アルケニル基の例には、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル基などが含まれる。1つ以上の炭素−炭素の二重結合は、内部(2−ブテンに含まれるような)または末端(1−ブテンに含まれるような)にあってよい。いくつかの実施形態では、アルケニル基は最大4個の独立して選択される−Y−RまたはR12基で置換されてよく、Y、R、およびR12は本明細書で定義される通りである。
【0071】
本明細書で用いる場合、“アルキニル”は、部分または部分の一部として、1つ以上の炭素−炭素の三重結合を有する直鎖または分岐アルキル基を意味する。いくつかの実施形態では、1つのアルキニル基は、2〜10個の炭素原子(例えば2〜6個の炭素原子)を有し得る。アルキニル基の例には、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルなどが含まれる。1つ以上の炭素−炭素の三重結合は、内部(2−ブチンに含まれるような)または末端(1−ブチンに含まれるような)にあってよい。いくつかの実施形態では、アルキニル基は最大4個の独立して選択される−Y−RまたはR12基で置換されてよく、Y、R、およびR12は本明細書で定義される。
【0072】
本明細書で用いる場合、“アルコキシ”は、−O−アルキル基を意味する。いくつかの実施形態では、1つのアルコキシ基は、1〜10個の炭素原子(例えば1〜6個の炭素原子)を有し得る。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(例えばn−プロポキシおよびイソプロポキシ)、t−ブトキシ基などが含まれる。
【0073】
本明細書で用いる場合、“アルキルチオ”は、−S−アルキル基を意味する。アルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ(例えばn−プロピルチオおよびイソプロピルチオ)、t−ブチルチオ基などが含まれる。
【0074】
本明細書で用いる場合、“ハロアルキル”は、1つ以上のハロゲン置換基を有するアルキル基を意味する。いくつかの実施形態では、1つのハロアルキル基は、1〜10個の炭素原子(例えば1〜6個の炭素原子)を有し得る。ハロアルキル基の例には、CF、C、CHF、CHF、CCl、CHCl、CHCl、CClなどが含まれる。パーハロアルキル基、すなわち全ての水素原子がハロゲン原子で置換されたアルキル基(例えばCFおよびC)は、“ハロアルキル”の定義に含まれる。
【0075】
本明細書で用いる場合、“シクロアルキル”は、環化アルキル、アルケニル、およびアルキニル基を含む非芳香族炭素環基を意味する。シクロアルキル基は、単環式(例えばシクロヘキシル)または多環式(例えば縮合、架橋、および/またはスピロ環系を含む)であってよく、炭素原子は環系の内側または外側に位置する。1つのシクロアルキル基は全体として、3〜14個の環原子(例えば、単環式シクロアルキル基では3〜8個の炭素原子、多環式シクロアルキル基では7〜14個の炭素原子)を有し得る。シクロアルキル基の任意適切な環の位置は、決まった化学構造に共有結合し得る。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタトリエニル、ノルボルニル、ノルピニル、ノルカリル、アダマンチル、およびスピロ[4.5]デカニル基、ならびにこれらの同族体、異性体などが含まれる。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は最大4個の独立して選択される−Y−R、−Y−R、またはR12基で置換されてよく、Y、R、R、およびR12は本明細書で定義される通りである。例えば、シクロアルキル基は、1つ以上のオキソ基の置換を含み得る。
【0076】
本明細書で用いる場合、“ヘテロ原子”は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味し、例えば窒素、酸素、硫黄、リン、およびセレンを含む。
【0077】
本明細書で用いる場合、“シクロへテロアルキル”は、同一であるか異なっていてもよいO、N、およびSから選択される少なくとも1つのへテロ環原子を含み、1つ以上の二重または三重結合を場合により含む非芳香族シクロアルキル基を意味する。1つのシクロへテロアルキル基は全体として、例えば3〜14個の環原子を有してよく、また1〜5個のへテロ環原子(例えば単環シクロへテロアルキル基では3〜7個の環原子、多環シクロへテロアルキル基では7〜14個の環原子)を含む。シクロへテロアルキル環中の1つ以上のNまたはS原子は酸化されてよい(例えばモルホリンN−オキシド、チオモルホリンS−オキシド、チオモルホリンS,S−ジオキシド)。いくつかの実施形態では、シクロへテロアルキル基の窒素原子は置換基、例えば−Y−R基またはR12基を有してもよく、Y、R、およびR12は本明細書で定義される通りである。シクロへテロアルキル基は、1つ以上のオキソ基、例えばピペリドン、オキサゾリジノン、ピリミジン−2,4(1H,3H)−ジオン、ピリジン−2(1H)−オンなども含んでよい。数ある中でシクロへテロアルキル基の例には、モルホリン、チオモルホリン、ピラン、イミダゾリジン、イミダゾリン、オキサゾリジン、ピラゾリジン、ピラゾリン、ピロリジン、ピロリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピペリジン、ピペラジンなどが含まれる。いくつかの実施形態では、シクロへテロアルキル基は最大4個の独立して選択される−Y−R、−Y−R、またはR12基で場合により置換されていてよく、Y、R、R、およびR12は本明細書で定義される通りである。
【0078】
本明細書で用いる場合、“アリール”は、芳香族単環炭化水素環系、または2つ以上の芳香族炭化水素環が縮合した(すなわち共通の結合を有する)または少なくとも1つの芳香族単環式炭化水素環が1つ以上のシクロアルキルおよび/またはシクロへテロアルキル環と縮合した多環系を意味する。1つのアリール基は6〜14個の炭素原子をその環系に有してもよく、複数の縮合環を含み得る。いくつかの実施形態では、多環アリール基は8〜14個の炭素原子を有し得る。アリール基の任意適切な環の位置は、決まった化学構造に共有結合し得る。芳香族炭素環(1つまたは複数)のみを有するアリール基の例には、フェニル、1−ナフチル(二環)、2−ナフチル(二環)、アントラセニル(三環)、フェナントレニル(三環)などの基が含まれる。少なくとも1つの芳香族炭素環が1つ以上のシクロアルキルおよび/またはシクロへテロアルキル環と縮合した多環系の例には、数ある中で、シクロペンタンのベンゾ誘導体(すなわち、5,6−二環式シクロアルキル/芳香族環系であるインダニル基)、シクロヘキサン(すなわち、6,6−二環式シクロアルキル/芳香族環系であるテトラヒドロナフチル基)、イミダゾリン(すなわち、5,6−二環式シクロへテロアルキル/芳香族環系であるベンズイミダゾリニル基)、およびピラン(すなわち、6,6−二環式シクロへテロアルキル/芳香族環系であるクロメニル基)が含まれる。アリール基の他の例には、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキソリル、クロマニル、インドリニル基などが含まれる。いくつかの実施形態では、アリール基は最大4個の独立して選択されるR、−Y−R、−O−Y−R、−Y−R、またはR12基を場合により含んでよく、Y、R、R、およびR12は本明細書で説明される通りである。
【0079】
本明細書で用いる場合、“ヘテロアリール”は、酸素(O)、窒素(N)、および硫黄(S)から選択される少なくとも1個のへテロ環原子を含む芳香族単環系、または環系中に存在する環の少なくとも1つが芳香族であり、少なくとも1個のへテロ環原子を含む多環系を意味する。2つ以上のへテロ環原子が存在する場合、それらは同一であるか異なっていてもよい。多環ヘテロアリール基は、互いに縮合した2つ以上のヘテロアリール環、および1つ以上の芳香族炭素環、非芳香族炭素環、および/または非芳香族シクロへテロアルキル環に縮合した単環ヘテロアリール基を含む。1つのヘテロアリール基は全体として、例えば5〜14個の環原子を有してよく、1〜5個のへテロ環原子を含んでよい。ヘテロアリール基は、安定した結合をもたらす任意のヘテロ原子または炭素原子の位置で決まった化学構造と結合してよい。通常、ヘテロアリール環はO−O、S−S、またはS−O結合を含まない。しかし、ヘテロアリール基中の1つ以上のNまたはS原子は酸化されてよい(例えばピリジンN−オキシド、チオフェンS−オキシド、チオフェンS,S−ジオキシド)。ヘテロアリール基の例には、例えば以下に示す5員の単環および5〜6員の二環系が含まれ、
【0080】
【化11】

式中、TはO、S、NH、N−Y−R、N−Y−R、またはNR12であり、Y、R、R、およびR12は本明細書で説明される通りである。そのようなヘテロアリール環の例には、ピロリル、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、キノリル、2−メチルキノリル、イソキノリル、キノキサリル、キナゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンズオキサゾリル、シノリニル(cinnolynyl)、1H−インダゾリル、2H−インダゾリル、インドリジニル、イソベンゾフイル(isobenzofuyl)、ナフチリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、フロピリジニル(furopyridinyl)、チエノピリジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、ピリドピリダジニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル基などが含まれる。ヘテロアリール基のさらなる例には、4,5,6,7−テトラヒドロインドリル、テトラヒドロキノリニル、ベンゾチエノピリジニル、ベンゾフロピリジニル(benzofuropyridinyl)基などが含まれる。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、R、−Y−R、−O−Y−R、−Y−R、またはR12基から独立して選択される最大4個の置換基で場合により置換されていてよく、Y、R、R、およびR12は本明細書で説明される通りである。
【0081】
本教示の化合物は、2つの他の部分と共有結合を形成し得る結合基として本明細書で定義される“二価の基”を含んでもよい。例えば、本明細書で説明される化合物は、二価のC1〜10アルキル基、例えばメチレン基を含んでよい。
【0082】
本明細書の様々な箇所において、化合物の置換基がグループで、または範囲で開示される。そうしたグループおよび範囲の、おのおのの、またはあらゆる個々のサブコンビネーションを説明が含むことを具体的に意図している。例えば、語句“C1〜10アルキル”は、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C1〜10、C1〜9、C1〜8、C1〜7、C1〜6、C1〜5、C1〜4、C1〜3、C1〜2、C2〜10、C2〜9、C2〜8、C2〜7、C2〜6、C2〜5、C2〜4、C2〜3、C3〜10、C3〜9、C3〜8、C3〜7、C3〜6、C3〜5、C3〜4、C4〜10、C4〜9、C4〜8、C4〜7、C4〜6、C4〜5、C5〜10、C5〜9、C5〜8、C5〜7、C5〜6、C6〜10、C6〜9、C6〜8、C6〜7、C7〜10、C7〜9、C7〜8、C8〜10、C8〜9、およびC9〜10アルキルを個別に開示することを具体的に意図している。その他の例として、語句“5〜14員のヘテロアリール基”は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、5〜14、5〜13、5〜12、5〜11、5〜10、5〜9、5〜8、5〜7、5〜6、6〜14、6〜13、6〜12、6〜11、6〜10、6〜9、6〜8、6〜7、7〜14、7〜13、7〜12、7〜11、7〜10、7〜9、7〜8、8〜14、8〜13、8〜12、8〜11、8〜10、8〜9、9〜14、9〜13、9〜12、9〜11、9〜10、10〜14、10〜13、10〜12、10〜11、11〜14、11〜13、11〜12、12〜14、12〜13、および13〜14の環原子を有するヘテロアリール基を個別に開示することを具体的に意図し、語句“1〜4個の置換基で場合により置換された”は、0、1、2、3、4、0〜4、0〜3、0〜2、0〜1、1〜4、1〜3、1〜2、2〜4、2〜3、および3〜4個の置換基を含み得る化学基を個々に開示することを具体的に意図する。
【0083】
本明細書で説明する化合物は、不斉原子(キラル中心とも呼ばれる)を含んでもよく、化合物のいくつかは1つ以上の不斉原子または中心を含んでよく、故に光学異性体(エナンチオマー)およびジアステレオマーをもたらし得る。本教示および本明細書で開示される化合物は、そのような光学異性体(エナンチオマー)およびジアステレオイソマー(幾何異性体)だけでなく、ラセミ体の、分解した、および鏡像異性体的に純粋な立体異性体、ならびにRおよびSの立体異性体のその他の混合物およびその薬学的に許容される塩を含む。当業者に既知の標準的な手順によって光学異性体を純粋な形で得ることが可能であり、これには、ジアステレオマー塩の形成、速度論的分割、および不斉合成が含まれる。本教示は、アルケニル部分(例えばアルケンおよびイミン)を含む化合物のシスおよびトランス異性体も包含する。カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、および高速液体クロマトグラフィーを含む当業者に既知の標準的な分離手順によって純粋な形で得ることができる、全ての起こり得る位置異性体、およびその混合物を本教示が包含することも理解される。
【0084】
本明細書の全体を通して、構造は化学名とともに提示される場合もあれば、そうでない場合もある。命名法に関して疑問が生じた場合は構造が優先される。
【0085】
本教示の一態様は、本明細書で開示される化合物の調製方法に関する。本教示の化合物は、下記のスキームにおいて概説される手順に従い、当業者に既知の標準的な合成方法および手順を使用することで、商業的に入手可能な出発物質、文献的に既知の化合物、または容易に調製される中間体から調製可能である。有機分子の生成および官能基変換および操作に用いられる標準的な合成方法および手順は、関連科学文献から、または当分野の標準的なテキストブックから容易に入手可能である。一般的な、または好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物質のモル比、溶媒、圧力、他)が与えられる場合、別段の記載がない限り、その他のプロセス条件も使用可能であることが理解されるであろう。最適な反応条件は、使用する特定の反応物質または溶媒によって変化する場合があるが、そのような条件は通常の最適化手順を使用して当業者によって決定され得る。提示される合成工程の種類や順番は、本明細書で説明する化合物の形成を最適化する目的で変化してもよいことを有機合成業者は理解するであろう。
【0086】
本明細書で説明されるプロセスは、当業界で既知の任意適切な方法に従ってモニタリングが可能である。例えば、生成物の形成は分光学的手段、例えば核磁気共鳴分光法(例えばHまたは13C)、赤外分光光度法、分光光度法(例えば紫外線可視分光法)、または質量分析法、および/またはクロマトグラフィー、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または薄層クロマトグラフィーによってモニタリングが可能である。
【0087】
化合物の調製は、各種の化学基の保護と脱保護を伴ってよい。保護および脱保護の必要性、および適切な保護基の選択は当業者によって容易に決定され得る。保護基の化学は、例えば、その開示全体を参照することにより本明細書に引用したものとするGreene,et al.Protective Groups in Organic Synthesis,4th Ed.,Wiley&Sons,2006に認められる。
【0088】
本明細書で説明されるプロセスの反応は、有機合成業者によって容易に選択され得る適切な溶媒中で実施可能である。適切な溶媒は一般的に、反応が行われる温度、すなわち溶媒の凍結温度から溶媒の沸点において、反応物質、中間体、および/または生成物と実質的に反応しない。ある反応は1つの溶媒または2つ以上の溶媒の混合物中で実施可能である。特定の反応工程に応じて、特定の反応工程に適切な溶媒が選択可能である。
【0089】
下記のスキーム1は、式Iの化合物の中間体の調製のための典型的な合成経路を示す。
スキーム1
【0090】
【化12】

THFのような溶媒中で、アセトニトリル(CHCN)と強塩基、例えばn−ブチルリチウム(n−BuLi)を反応させることで調製されるアセトニトリルの陰イオンとの反応によって、酢酸エステルiが3−オキソ−ブチロニトリルiiに変換される。DMFのような溶媒中で、オキソ−ブチロニトリルiiとジメチルホルムアミド−ジメチルアセタール(DMF−DMA)を高温(例えば122℃)で反応させると、ビスジメチルアミノメチレン中間体iiiが形成され、これをエタノールのような溶媒中で還流しながらアンモニア(NH)または酢酸アンモニウム(NHOAc)と反応させると、4−ヒドロキシニコチノニトリルivに変換される。DMFを触媒として添加して、または添加しないで、ヒドロキシピリジンにオキシ塩化リン(POCl)を還流しながら2〜6時間反応させると、4−クロロ−ニコチノニトリルvに変換される。
【0091】
下記のスキーム2は、3−オキソ−ブチロニトリルiiの別の調製手順を示す。この別手順は、塩化チオニル(SOCl)のような塩素化剤との反応によって酢酸viを対応する酸塩化物に変換した後、THFのような溶媒中で、tert−ブチルシアノアセテートと水素化ナトリウム(NaH)のような塩基を反応させて調製されるtert−ブチルシアノアセテートの陰イオンによる反応を行い、2−シアノ−3−オキソ−ブタン酸tertブチルエステルviiを形成し、これをトリフルオロ酢酸(TFA)のような酸との反応によってエステルの脱保護と脱炭酸反応を行い、3−オキソ−ブチロニトリルiiをもたらす工程を伴う。
スキーム2
【0092】
【化13】

別の方法として、下記のスキーム3に示すように、3−オキソ−ブチロニトリルiiとDMF−DMAとの反応によって得られたビスジメチルアミンメチレン中間体Icを、還流しながらトルエンのような溶媒中で3,4−ジメトキシベンジルアミンと反応させて、1−(3,4−ジメトキシベンジル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリルviiiを得てもよい。POCl中で還流しながら過剰量のLiClとviiiを反応させると、ジメトキシベンジル基が除去され、対応する4−クロロ−ニコチノニトリルvに変換される。
スキーム3
【0093】
【化14】

下記のスキーム4は、式Iの化合物の調製のための典型的な合成経路を示す。
スキーム4
【0094】
【化15】

Xが−NR−(CH−、−NR(CO)−、−O−、または−S−であり、nが0〜10である式Iの化合物を調製するために、1)60〜180℃の高温でエタノール(EtOH)、プロパノール、ブタノール、2−エトキシエタノール(EtEtOH)、2−メトキシエタノール、または2−ブトキシエタノールのような溶媒中で、任意でピリジンハイドロクロリド(Pyr.HCl)の存在下での条件、2)60〜120℃の高温でテトラヒドロフラン(THF)またはジメチルホルムアミド(DMF)のような溶媒中で水素化ナトリウム(NaH)のようなアルカリ塩基を使用する条件、3)80〜150℃の高温でリン酸カリウム(KPO)またはカリウム−t−ブトキシドのような塩基の存在下で、トリス(ジベンジリデン)アセトンジパラジウム(Pd(dba))のようなパラジウム触媒と2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル(DavePhos)またはトリブチルホスフィンのようなホスフィン配位子を使用する条件、4)80〜150℃の高温でDMF、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)またはEtEtOHのような溶媒中でトリエチルアミン(TEA)、ピリジン、またはジイソプロピルエチルアミン(DIEA)のような有機塩基を使用する条件、5)80〜150℃の高温でアセトニトリル(CHCN)またはDMFのような溶媒中で炭酸セシウム(CsCO)のような無機塩基を使用する条件のうちの1つの反応条件下でC−5置換4−クロロ−3−シアノピリジンvをRXHと反応させてよい。
【0095】
Xが共有結合の場合、ジメトキシエタン(DME)と重炭酸ナトリウム水溶液(aq.NaHCO)または炭酸ナトリウム水溶液(aq.NaCO)の混合液のような溶媒中で、場合によりトリフェニルホスフィン(PhP)のようなホスフィン配位子の存在下で、テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)[(PhP)Pd]またはパラジウム(II)アセテート(Pd(OAc))のようなパラジウム触媒によって媒介されるC−5置換4−クロロ−3−シアノピリジンvと、Rがアルキル基(例えば低級アルキル基)である式RB(OH)のボロン酸、または式RB(OR)のボロン酸エステルとのカップリング反応によって式Iの化合物が調製可能である。別の方法として、4−クロロ−3−シアノピリジンvを、Rがアルキル基(例えば低級アルキル基)であるスタンナンRSnRで処理し、式Iの化合物を得てもよい。
【0096】
下記のスキーム5を参照すると、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、およびアルキニル基から選択されるR基でRが置換された、さらなる式Iの化合物(式Ib)を、臭化物(Br)、ヨウ化物(I)、塩化物(Cl)またはトリフルオロメタンスルホネート(OTf)のような離脱基(LG)でRが置換された式Iの化合物(式Ia)から下記のスキーム5で説明するように調製可能である。
スキーム5
【0097】
【化16】

より具体的には、DMEとNaHCO水溶液またはNaCO水溶液との混合液のような溶媒中で、場合によりPhPのようなホスフィン配位子の存在下で、パラジウム触媒(例えば(PhP)PdまたはPd(OAc))によって媒介される式Iaの化合物とボロン酸(RB(OH))、ボロン酸エステル(Rが低級アルキル基であるRB(OR))、または有機スタンナン試薬(例えばRSnBu)との処理によって、Rがアリール基またはヘテロアリール基である式Ibの化合物が調製可能である。
【0098】
同様に、DMF、NMP、ジオキサン、またはDMEのような溶媒中で、PhPまたはトリ−o−トリルホスフィンのような配位子および塩基(例えば炭酸カリウム(KCO)または(NaCO)の存在下で、場合によりTEAのような有機塩基を添加して、パラジウム触媒(例えば(PhP)Pd、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、またはPd(OAc))の存在下で、式Iaの化合物を、式R−Hのアルケンまたはアルキン、またはボロン酸またはエステル、または有機スタンナン試薬で処理することで、Rがアルケニル基またはアルキニル基である式Ibの化合物が調製可能である。触媒量のヨウ化銅(I)を本カップリング反応に場合により使用してもよい。
【0099】
スキーム6は、RとRが両方ともアリール基またはヘテロアリール基であり、Rはさらにアミドで置換される式Iのさらなる化合物(式Id)の調製のための合成経路を示す。
スキーム6
【0100】
【化17】

カルボン酸で置換されたアリールまたはヘテロアリール基でRが置換された式Iの化合物(式Ic)を、MeOHまたはEtOHのような溶媒中で、触媒(例えばベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP))および有機アミン(例えばTEA、DIEA、またはピリジン)の存在下で、環境温度から50〜80℃の高温にて式NHR1011のアミンで処理し、上述のように式Idの化合物を得てもよい。
【0101】
下記のスキーム7に示すように、Rが−O−Y−LGで置換され、LGがCl、Br、メタンスルホニル(メシル、OM)、またはp−トルエンスルホニル(トシル、OT)である式Iの化合物(式Ie)をEtOH、DME、またはDMFのような溶媒中で、場合によりNaIまたはKCOのような塩基の存在下で、式NHRのアミンで処理することで、Rが−O−Y−NRで置換された式Iのさらなる化合物(式If)が調製可能である。
スキーム7
【0102】
【化18】

スキーム8に示すように、還元剤(例えば水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(Na(OAc)BH)または水素化シアノホウ素ナトリウム)の存在下で、ジクロロメタン(CHCl)またはTHFのような溶媒中で、DMFまたはNMPを任意で添加し、好ましくは酢酸の存在下で、Rがアルデヒド官能基を含む式Iの化合物(式Ig)を式HNRYRのアミンで処理することで、Rが−CH−NRYRで置換された式Iのさらなる化合物(式Ih)が調製可能である。Rが−CH−OHで置換された式Iの化合物(式Ii)は、この還元的アミノ化反応の副産物として形成可能である。
スキーム8
【0103】
【化19】

スキーム9に示すように、Rがヒドロキシル官能基を含む式Iの化合物(式Ij)を光延条件下で式RYOHのアルコールで処理することで、Rが−OYRで置換された式Iの化合物(式Ik)が調製可能である。本反応は、THFのような溶媒中で、PhPと、ジエチルアゾジカルボキシレートまたはジ−t−ブチルアゾジカルボキシレートのいずれかの存在下で実施可能である。
スキーム9
【0104】
【化20】

Xが化学結合ではない式Iのさらなる化合物を下記のスキーム10、スキーム11、およびスキーム12に示すように調製可能である。
スキーム10
【0105】
【化21】

3−アミノブタ−2−エンニトリルixの混合物を、酸(例えばHCl溶液)中で加熱し、アセトアセトニトリルxを得る。アセトアセトニトリルxを、高温でt−ブトキシビス(ジメチルアミノ)メタンおよびDMF−DMAで処理し、5−(ジメチルアミノ)−2−[(ジメチルアミノ)メチレン]−3−オキソペンタ−4−エンニトリルxiを生成し、次にこれを還流しながらEtOH中で酢酸アンモニウムで処理し、4−ヒドロキシニコチノニトリルxiiを得る。(4−ヒドロキシニコチノニトリルの他の合成法は、文献:Broekman,F.W.et al.,Recueil des Travaux Chimiques des Pays−Bas,81:792−796(1962)に報告されている)。4−ヒドロキシニコチノニトリルxii、ヨウ素、およびNaOHの混合物を水中で一晩加熱し、4−ヒドロキシ−5−ヨードニコチノニトリルxiiiを生成し、次にこれを高温でPOClで処理し、4−クロロ−5−ヨードニコチノニトリルxivを得る。次に、中間体xivを、Xが化学結合ではないRXH(例えばRNH、ROH、RSH、他)で処理し、4−置換5−ヨード−ニコチノニトリルxvが生成可能である。ボロン酸RB(OH)、ボロン酸エステルRB(OR)、またはスタンナンRSnR(それぞれの場合においてRは低級アルキル基である)でさらに処理すると、式Iの化合物が得られる。他の方法として、中間体xivをボロン酸RB(OH)、ボロン酸エステルRB(OR)、またはスタンナンRSnR(それぞれの場合においてRは低級アルキル基である)で処理し、その後RXHと反応させて式Iの化合物を得てもよい。
スキーム11
【0106】
【化22】

スキーム11に示すように、0〜50℃の温度で、トリフルオロ酢酸中で4−クロロ−5−ヨードニコチノニトリルxivを酸化剤、好ましくは過酸化水素で処理すると、4−クロロ−5−ヨード−1−オキシ−ニコチノニトリルxiv’が得られる。前述の条件下でRXHを添加すると、式xv’の化合物が得られる。ボロン酸、エステル、または有機スタンナン(それぞれの場合においてRは低級アルキル基である)を前述の条件下で添加すると式I’の化合物が得られる。
スキーム12
【0107】
【化23】

スキーム12に示すように、式vの化合物をDMFのような溶媒中でCsFで処理すると、4−フルオロ同族体xviが得られる。続いて、DMSOのような溶媒中で4−フルオロ基をRXHで置換すると式Iの化合物が得られる。
【0108】
本教示の態様は、本教示の範囲を限定するものとみなされるべきでない以下の実施例を参照することによりさらに理解されてもよい。
【0109】
より具体的には、以下の実施例は式Iの化合物の調製に使用可能な様々な合成経路を説明する。
【実施例】
【0110】
実施例1:4−[(3−クロロフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル101の調製
メタノール(MeOH、100mL)中の3,4−ジメトキシフェニル酢酸(50mM)と濃硫酸(HSO、1mL)または濃塩酸(HCl)を一晩還流加熱した。ロータリーエバポレーターおよび高真空ポンプで一晩乾燥濃縮し、3,4−ジメトキシ−フェニル)酢酸メチルエステルを油として得て、これを次の工程で直接使用した。
【0111】
1.0Lの三つ口丸底フラスコに50mLのTHFを加え、反応混合物を−78℃に冷却した。ブチルリチウム(1.6M、14.4mL、23ミリモル)を、温度を−70℃に保ちながら滴下して加えた。攪拌および冷却しながら、30mLのTHF中のアセトニトリル(1.3mL、25ミリモル)をフラスコに滴下して加えた。2時間の攪拌後、フラスコに得られた白色コロイド状混合物に3,4−ジメトキシ−フェニル)酢酸メチルエステル(2.3g、11ミリモル)を加えた。反応混合物をさらに2時間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム溶液(75mL)を−78℃で加えた。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤を除去するために濾過し、蒸発乾固して粗生成物を得た。この粗生成物を、30〜70%の酢酸エチルを含むヘキサンで溶出してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、4−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−オキソ−ブチロニトリルを1.8g(75%)の凝固琥珀油として得た。
【0112】
DMF(12mL)に4−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−オキソ−ブチロニトリル(5.0g、23ミリモル)を含む溶液に、DMF−DMA(13.5mL、101ミリモル)を加え、溶液を122℃で一晩加熱した。高真空下、ロータリーエバポレーターで濃縮すると橙〜赤色の固体が得られた。EtOH(100mL)中にこの固体を溶解し、過剰量のNHOAcを添加し、反応混合物を85℃で1時間加熱した。反応混合物を室温まで1時間放冷(室温)後、濾過によって固体を回収し、EtOH(冷)で洗浄して5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−ヒドロキシニコチノニトリルを褐色固体として得た(4.1g、69%)。ロータリーエバポレーター上でろ液を濃縮し、残渣をシリカゲル上で0〜25%のMeOHを含む塩化メチレン(CHCl)で精製し、5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−ヒドロキシニコチノニトリルをさらに得た。
【0113】
POCl(25mL)に5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−ヒドロキシニコチノニトリル(4g、15.7ミリモル)を含む溶液を125℃で1.5時間加熱した後、室温まで冷却し、氷/3Nの水酸化ナトリウム/酢酸エチルミクスチャーに注いだ。ミクスチャーを攪拌し層を分離した。有機層を硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥し、濾過、濃縮して4−クロロ−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリルを褐色固体として得た(3.9g、91%)。
【0114】
EtOEtOH(2mL)に4−クロロ−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル(55mg、0.2ミリモル)、3−クロロアニリン(25mg、0.2ミリモル)、およびPyr.HCl(23mg、0.2ミリモル)を含む溶液を8時間還流加熱した後、室温まで冷却し濃縮した。逆相HPLCで残渣を精製し、5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−[(3−クロロフェニル)アミノ]ニコチノニトリル101(3.4mg)を得た。MS:367[M+H]
化合物101の調製について説明した手順と同様の手順に従い、最後の工程において適切なアニリンを使用して、表2の化合物を調製した。表2、ならびに下記の実施例2〜22に記載したHPLCの保持時間は、下記に定める条件を使用して得た。
【0115】
(a)機器−Agilent1100、カラム:Thermo Fisher Scientific,Inc社(マサチューセッツ州ウォルサム)製Keystone Aquasil C18、移動相A:10mM NHOAcを含む95%水/5%CHCN中、移動相B:10mM NHOAcを含む5%水/95%CHCN、流量:0.800ml/分、カラム温度:40℃。
【0116】
(b)株式会社ワイエムシィ(日本、京都)製カラムYMC C18、4.6×500mm、5ミクロン、移動相A:90%水+10%MeOH+0.02%HPO、移動相B:90%MeOH+10%水+0.02%HPO、2分で1〜100%B、最大10分。100%Bの後、1分で100〜1%B。
【0117】
(c)カラム:Phenomenex社(カリフォルニア州トーランス)製Prodigy ODS3、4.6×150mm、移動相A:0.02%TFAを含む水、移動相B:0.02%TFAを含むCHCN、20分で10〜95%、流量1.0mL/分、カラム温度:40℃、検出波長:215nm。
【0118】
(d)カラム:Thermo Fisher Scientific,Inc.(マサチューセッツ州ウォルサム)製Aquasil C18、50×2.1mm、移動相A:0.1%ギ酸を含む水、移動相B:0.1%ギ酸を含むアセトニトリル、2.5分で0〜100%B、流量0.8mL/分、カラム温度:40℃、検出波長:254nm。
【0119】
【表2−1】

【0120】
【表2−2】

【0121】
【表2−3】

実施例2:4−[(3−ブロモフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル135の調製
8mlのEtOEtOH中に4−クロロ−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル(0.5g、1.82ミリモル)、3−ブロモアニリン(0.313g、1.82ミリモル)、および0.05gのPyr.HClを含む混合液を、8時間還流加熱した。固体を回収し、飽和重炭酸ナトリウム(NaHCO)とCHClの混合液に溶解した。層を分離し、有機層をMgSOで乾燥し、Magnesol(商標)パッドで濾過した。溶媒を除去し、イソプロパノール/ヘキサンから残渣を再結晶させ、0.43gの4−[(3−ブロモフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル135を得た。HPLC保持時間(a):2.72分、MS:410.2m/e(M+H)。
実施例3:4−{[3−(ベンジルオキシ)−4−クロロフェニル]アミノ}−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル136の調製
実施例2で説明した手順と類似の手順に従い、4−クロロ−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリルと3−ベンジルオキシ−4−クロロアニリンからこの化合物を調製した。HPLC保持時間(a):2.90分、MS:470.2m/e(M+H)。
実施例4:4−[(2,4−ジクロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル137の調製
10mlのDMEに4−クロロ−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル(0.5g、1.82ミリモル)、2,4−ジクロロ−5−メトキシアニリン(0.402g、2.1ミリモル)、Pd(dba)(0.167g、0.18ミリモル)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル(0.22g、0.56ミリモル)、およびKPO(0.58g、2.73ミリモル)を含む混合物を、還流しながら45分間加熱した。高温の混合物を濾過し、固体をエーテルで洗浄した。集めた濾液を飽和NaHCOで洗浄し、乾燥し(MgSO)、Magnesol(商標)パッドで濾過した。溶媒を除去し、残渣についてシリカゲル上でクロマトグラフィーを行った。生成物をCHCl−エーテルで溶出した後、イソプロパノール/ヘキサンから再結晶させ、0.21gの4−[(2,4−ジクロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル137を得た。HPLC保持時間(a):0.86分、MS:430.2m/e(M+H)。
【0122】
化合物137の調製について説明した手順と類似の手順に従い、適切なアニリンを使用して、表3の化合物を調製した。
【0123】
【表3】

実施例5:4−{[4−(ベンジルオキシ)−3−クロロフェニル]アミノ}−5−(3−ニトロフェニル)ニコチノニトリル142の調製
3−ニトロフェニル酢酸(9.5g、52ミリモル)およびSOClを室温で一晩攪拌した後、蒸発乾固した。別のフラスコで、NaH(油に60%分散させたもの、5.5g、1.4ミリモル)をTHF(100mL)に懸濁した。混合液を0℃まで冷却し、tert−ブチルシアノアセテート(8.8g、62ミリモル)を添加した。15分後、THF中に上記で得た3−ニトロフェニルアセチルクロリドを含む溶液を滴下して加えた。冷却槽を取り除き、混合物を室温まで昇温させ、4時間攪拌した。食塩水を添加して反応溶液をクエンチし、酢酸エチル(EtOAc、2×200mL)で抽出した。集めた有機抽出液をMgSOで乾燥し濃縮した。粗生成物である2−シアノ−4−(3−ニトロフェニル)−3−オキソ−酪酸tert−ブチルエステルをそれ以上精製せずに次の工程で使用した。
【0124】
トルエン(40mL)に2−シアノ−4−(3−ニトロ−フェニル)−3−オキソ−酪酸tert−ブチルエステル(9.5g、31ミリモル)を含む溶液にTFA(4mL)を加え、溶液を2時間還流加熱した後、溶媒を真空中で蒸発させた。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで残渣を精製し、4−(3−ニトロフェニル)−3−オキソ−ブチロニトリル(2工程で4.0g、37%)を得た。
【0125】
実施例1で説明した手順と類似の手順に従い、4−(3−ニトロフェニル)−3−オキソ−ブチロニトリルを4−ヒドロキシ−5−(3−ニトロフェニル)ニコチノニトリルに変換し、その後、これを4−クロロ−5−(3−ニトロフェニル)ニコチノニトリルに変換した。
【0126】
50mlのEtOEtOHに4−クロロ−5−(3−ニトロフェニル)ニコチノニトリル(2.1g、8.1ミリモル)と4−ベンジルオキシ−3−クロロアニリン(1.89g、8.1ミリモル)を含む溶液を6.5時間還流加熱した。混合液を冷却し、450mlのエーテルで希釈した。HClを含む10mlのエーテル溶液を添加した。濾過によって固体を回収し、エーテルで洗浄した。飽和NaHCOに固体を懸濁し、固体が溶解するまでEtOAcとともに混合液を攪拌した。有機層を乾燥し(MgSO)、Magnesol(商標)パッドで濾過した。溶媒を除去し、EtOHから残渣を再結晶させ、2.15gの4−{[4−(ベンジルオキシ)−3−クロロフェニル]アミノ}−5−(3−ニトロフェニル)ニコチノニトリル142を得た。HPLC保持時間(a):3.06分、MS:456.8m/e(M+H)。
【0127】
化合物142の調製について説明した手順と類似の手順に従い、適切なアニリンを使用して、表4の化合物を調製した。
【0128】
【表4】

実施例6:5−(3−アミノフェニル)−4−{[4−(ベンジルオキシ)−3−クロロフェニル]アミノ}ニコチノニトリル145の調製
90mLのMeOHに4−{[4−(ベンジルオキシ)−3−クロロフェニル]アミノ}−5−(3−ニトロフェニル)ニコチノニトリル142(2.0g、4.38ミリモル)、鉄(1.47g、26.3ミリモル)、および酢酸(AcOH、1.58g、26.3ミリモル)を含む混合物を、還流しながら3時間攪拌した。高温の混合物を濾過し、回収した固体を高温のTHDで洗浄した。集めた有機溶液を濃縮した後、高温のTHF−酢酸エチル混合液に再溶解した。懸濁液を濾過し、食塩水/飽和NaHCOで洗浄した。有機層を乾燥し(MgSO)、Magnesol(商標)パッドで濾過した。溶媒を除去し、1.81gの5−(3−アミノフェニル)−4−{[4−(ベンジルオキシ)−3−クロロフェニル]アミノ}ニコチノニトリル145を得た。HPLC保持時間(a):2.74分、MS:426.8m/e(M+H)。
実施例7:4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−5−(2−ニトロフェニル)ニコチノニトリル146の調製
実施例5での4−クロロ−5−(3−ニトロフェニル)ニコチノニトリルの調製について説明した手順と類似の手順を使用して、2−ニトロフェニル酢酸から4−クロロ−5−(2−ニトロフェニル)ニコチノニトリルを調製した。MS:260.1m/e(M+H)。
【0129】
15mlのジグリム中に4−クロロ−5−(2−ニトロフェニル)ニコチノニトリル(4g、15.41ミリモル)、Pry.HCl(0.89g、7.7ミリモル)、および3−クロロ−4−フルオロアニリン(2.8g、19.26ミリモル)を含む混合液を、130℃で27時間加熱した。混合液を冷却し、イーサリアル塩酸(ethereal HCl)を添加し、固体を回収した。飽和NaHCOとCHClとともに、固体を溶解するまで攪拌した。食塩水で溶液を洗浄し、乾燥し(MgSO)、Magnesol(商標)パッドで濾過し、濃縮した。残渣についてシリカゲル上でクロマトグラフィーを行い、2.3gの4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−5−(2−ニトロフェニル)ニコチノニトリル146を得た。HPLC保持時間(a):3.58分、MS:369.1m/e(M+H)。
実施例8:5−(2−アミノフェニル)−4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]ニコチノニトリル147の調製
実施例6で上述したように、4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−5−(2−ニトロフェニル)ニコチノニトリル146を還元することにより、5−(2−アミノフェニル)−4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]ニコチノニトリル147を調製した。HPLC保持時間(a):2.06分、MS:339.2m/e(M+H)。
実施例9:4−[(2,4−ジクロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]−5−[4−メトキシ−3−(2−メトキシエトキシ)フェニル]ニコチノニトリル148の調製
0.2LのMeOH中に3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル酢酸(24.84g、136ミリモル)を含む攪拌溶液に1mLのHSOを加え、一晩還流加熱した。メタノールを真空中で蒸発させ、残渣を飽和NaHCO溶液に注ぎ、EtOAcで抽出した(3×150mL)。その後集めた有機抽出液を食塩水で洗浄し、無水MgSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して23.94g(90%)の(3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−酢酸メチルエステルを黄色の油として得た。
【0130】
150mLのアセトン中に3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル酢酸メチルエステル(5g、25.48ミリモル)、テトラブチルアンモニウムヨウ化物(0.941g、2.5ミリモル)、および2−ブロモエチルメチルエーテル(4.6mL、50.9ミリモル)を含む攪拌溶液に炭酸セシウム(17.4g)を加えた。混合液を還流しながら21.5時間攪拌した。混合液を濃縮し、残渣をEtOAcとともに水から抽出した。その後、集めた有機抽出液を無水硫酸ナトリウム(NaSO)で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して8.15gの橙色の油を得た。この油を、10〜50%EtOAcを含むヘキサンを溶離液として使用してシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製した。生成物を含有する画分を集め、これを濃縮して5.33g(82%)の[4−メトキシ−3−(2−メトキシエトキシ)フェニル]酢酸メチルエステルを淡黄色の油として得た。
【0131】
250mL容量の三つ口丸底フラスコに10mLの無水THFを加え、−78℃まで冷却した。n−ブチルリチウム(ヘキサンに2.5Mを含む、8.06mL、12.9ミリモル)をフラスコに加え5分間攪拌した。無水アセトニトリル(0.696mL、13.3ミリモル)を含む5mLの無水THFを、攪拌しながら、また−78℃に冷却しながらフラスコに滴下して加えた。1時間の攪拌後、10mLの無水THFに[4−メトキシ−3−(2−メトキシエトキシ)フェニル]酢酸メチルエステル(1.095g、4.3ミリモル)を含む溶液を、フラスコ内に得られた白色コロイド状混合物に滴下して加えた。反応混合物をさらに2時間攪拌した後、飽和NHCl溶液を−78℃で加えた。溶液を室温まで昇温し、100mLの水で希釈し、EtOAcで抽出した(3×100mL)。有機層を分離し、食塩水で洗浄し、無水MgSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。30〜60%のEtOAcを含むヘキサンで溶離して、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、769.4g(68%)の4−[4−メトキシ−3−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニル]−3−オキソ−ブチロニトリルを無色の油として得た。
【0132】
20mLの無水DMF中に4−[4−メトキシ−3−(2−メトキシエトキシ)フェニル]−3−オキソ−ブチロニトリル(9.91g、34.5ミリモル)を含む攪拌溶液にDMF/DMA(20.2mL、152ミリモル)を添加し、溶液を100℃で15時間加熱した。反応物を真空中で濃縮した後、3,4−ジメトキシ−ベンジルアミン(0.687mL、41.4ミリモル)を含む20mLの無水トルエンとともに粗生成物を還流しながら2時間攪拌した。反応物を冷却し、真空中で濃縮し、50〜100%のEtOAc/ヘキサンで溶離してシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、8.5g(55%)の1−(3,4−ジメトキシベンジル)−5−[4−メトキシ−3−(2−メトキシエトキシ)フェニル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリルを黄色/橙色の泡状物質として得た。
【0133】
2.5mLのPOCl中に1−(3,4−ジメトキシベンジル)−5−[4−メトキシ−3−(2−メトキシエトキシ)フェニル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(300mg、0.666ミリモル)と塩化リチウム(LiCl、254mg、6ミリモル)を含む溶液を2.5時間還流加熱した。真空中で濃縮して過剰なPOClを除去し、残渣をトルエンと共に蒸発させた。残渣を100mLのEtOAcに溶解し氷冷した1NのNaOH水溶液で洗浄した。有機層を分離し、無水MgSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮し、得られた固体をイソプロピルアルコールでトリチュレートして165.6mgの4−クロロ−5−[4−メトキシ−3−(2−メトキシエトキシ)フェニル]ニコチノニトリルを灰白色の固体として得た(78%)。
【0134】
4mLの無水エチレングリコールジメチルエーテル中に4−クロロ−5−[4−メトキシ−3−(2−メトキシエトキシ)フェニル]ニコチノニトリル(100mg、0.313ミリモル)、2,4−ジクロロ−5−メトキシアニリン(90mg、0.47ミリモル)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル(37mg、0.094ミリモル)、およびKPO(99.8mg、0.47ミリモル)を含む攪拌溶液に、Pd(dba)(28.7mg、0.031ミリモル)を加えた。混合物を90℃で2時間加熱した後冷却し、セライト(商標)濾過し、真空中で濃縮し、エーテル/ヘキサンでトリチュレートして精製して19mg(13%)の4−[(2,4−ジクロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]−5−[4−メトキシ−3−(2−メトキシエトキシ)フェニル]ニコチノニトリル148を得た。HPLC保持時間(c):11.99分、MS[M+H]:474.1。
実施例10:4−(2,4−ジクロロ−5−メトキシ−フェニルアミノ)−5−[3−メトキシ−4−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニル]−ニコチノニトリル149の調製
250mLのアセトン中にホモバニリン酸エチル(16.2g、77.05ミリモル)、テトラブチルアンモニウムヨウ化物(TBAI、1.42g、3.85ミリモル)、および2−ブロモエチルメチルエーテル(10.4mL、115.5ミリモル)を含む攪拌溶液に、炭酸セシウム(CsCO、40.16g、123.2ミリモル)を加えた。還流しながら混合物を21.5時間攪拌した。混合物を濃縮し、残渣をEtOAcとともに水から抽出した。その後、集めた有機抽出液をNaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して27gの橙色の油を得た。この油を、シリカゲルおよび10〜60%のEtOAc/ヘキサンを使用してフラッシュクロマトグラフィーで精製した。集めた画分を濃縮して、20.67g(100%)の[3−メトキシ−4−(2−メトキシエトキシ)フェニル]酢酸エチルエステルを無色の油として得た。
【0135】
500mL容量の三つ口丸底フラスコに100mLの無水THFを加え、−78℃まで冷却した。n−ブチルリチウム(ヘキサンに1.6Mを含む、69.8mL、111.8ミリモル)をフラスコに加え5分間攪拌した。50mLの無水THFに無水CHCN(6.02mL、115.3ミリモル)を含む溶液を攪拌しながら、また−78℃に冷却しながらフラスコに滴下して加えた。1時間の攪拌後、60mLの無水THFに[3−メトキシ−4−(2−メトキシエトキシ)フェニル]酢酸エチルエステル(10g、37.2ミリモル)を含む溶液を、フラスコ内に得られた白色コロイド状混合物に滴下して加えた。反応混合物をさらに2時間攪拌した後、飽和NHCl水溶液を−78℃で加えた。溶液を室温まで昇温し、200mLの水で希釈し、EtOAcで抽出した(3×200mL)。有機層を分離し、食塩水で洗浄し、無水MgSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。20〜80%のEtOAcを含むヘキサンで溶離して粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、7.39mg(75%)の4−[3−メトキシ−4−(2−メトキシエトキシ)フェニル]−3−オキソ−ブチロニトリルを黄色の固体として得た。
【0136】
16mLの無水DMF中に4−[3−メトキシ−4−(2−メトキシエトキシ)フェニル]−3−オキソ−ブチロニトリル(7.22g、27.4ミリモル)を含む攪拌溶液にDMF−DMA(16mL、120.6ミリモル)を添加し、溶液を100℃で15時間加熱した。反応物を真空中で濃縮した後、3,4−ジメトキシベンジルアミン(4.95mL、32.8ミリモル)を含む20mLの無水トルエンとともに還流しながら粗生成物を2時間攪拌した。反応物を冷却し、真空中で濃縮し、50〜100%のEtOAc/ヘキサンで溶離してシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、8.26g(67%)の1−(3,4−ジメトキシ−ベンジル)−5−[3−メトキシ−4−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリルを黄色の固体として得た。
【0137】
65mLのPOCl中に1−(3,4−ジメトキシベンジル)−5−[3−メトキシ−4−(2−メトキシエトキシ)フェニル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(8.13g、18ミリモル)とLiCl(6.8g、162.4ミリモル)を含む溶液を2.5時間還流加熱した。真空中で濃縮して過剰なPOClを除去し、残渣をトルエンで共に蒸発させた。残渣を100mLの酢酸エチルに溶解し氷冷した1NのNaOH溶液で洗浄した。有機層を分離し、無水MgSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮し、得られた固体をイソプロピルアルコールでトリチュレートして4.49gの4−クロロ−5−[3−メトキシ−4−(2−メトキシエトキシ)フェニル]ニコチノニトリルを灰白色の固体として得た(78%)。
【0138】
実施例9で化合物148の調製について説明した手順と同様の手順に従い、4−(2,4−ジクロロ−5−メトキシフェニルアミノ)−5−[3−メトキシ−4−(2−メトキシエトキシ)フェニル]ニコチノニトリル149を灰白色の固体として27mg(18%)調製した。MS:474.1m/z、HPLC保持時間(c):12.0分。
実施例11:5−[3−(2−クロロエトキシ)フェニル]−4−[(2,4−ジクロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]ニコチノニトリル150および4−[(2,4−ジクロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]−5−[3−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]ニコチノニトリル151の調製。
【0139】
0.9Lのアセトン中に3−ヒドロキシフェニル酢酸メチルエステル(22.6g、136ミリモル)および2−クロロエチルp−トルエンスルホネート(40g)を含む攪拌溶液に、CsCO(88.8g)を加え、還流しながら3時間加熱した。その後混合物を冷却し、濾過し、真空中で濃縮した。0〜7%のEtOAcを含むヘキサンで溶離して残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、28.9g(90%)の[3−(2−クロロエトキシ)フェニル]酢酸メチルエステルを無色の油として得た。
【0140】
1.0L容量の三つ口丸底フラスコに150mLの無水THFを加え、−78℃まで冷却した。n−ブチルリチウム(ヘキサンに2.5Mを含む、52.5mL、131ミリモル)をフラスコの内容物に滴下して加えた。150mLの無水THFに無水CHCN(7.2mL、138ミリモル)を含む溶液を攪拌しながら、また冷却しながらフラスコに滴下して加えた。1時間の攪拌後、20mLの無水THFに15gの[3−(2−クロロエトキシ)フェニル]酢酸メチルエステル(66ミリモル)を含む溶液を、フラスコ内に得られた白色コロイド状混合物に滴下して加えた。反応混合物をさらに2時間攪拌した後、MeOH:AcOHの4:1の割合の混合液を−78℃で加えた。溶液を500mLの水で希釈し、EtOAcで抽出した(4×150mL)。有機層を分離し、無水MgSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。残りのAcOHは真空中でトルエンとともに濃縮して除去した。CHClを使用して残渣をシリカゲルに通し、16g(99%)の4−[3−(2−クロロエトキシ)フェニル]−3−オキソ−ブチロニトリルを灰白色の固体として得た。
【0141】
100mLの無水DMF中に4−[3−(2−クロロエトキシ)フェニル]−3−オキソ−ブチロニトリル(16g、67ミリモル)を含む攪拌溶液にDMF−DMA(17.6g、19.74mL、148ミリモル)、トリエチルアミン(9.4mL、67ミリモル)、を添加し、溶液を100℃で2.5時間加熱した。反応物を真空中で濃縮した後、CHClに溶解し、Magnesol(商標)で濾過した。3,4−ジメトキシベンジルアミン(11mL、74ミリモル)を含む100mLの無水トルエンとともに粗生成物を還流しながら2時間攪拌した。反応物を冷却し、真空中で濃縮し、EtOAcで溶離してシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、11.8g(41%)の5−[3−(2−クロロエトキシ)フェニル]−1−(3,4−ジメトキシベンジル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリルを灰白色の固体として得た。
【0142】
22mLのPOCl中に5−[3−(2−クロロエトキシ)フェニル]−1−(3,4−ジメトキシベンジル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル52(2.5g、5.9ミリモル)とLiCl(2.3g、53ミリモル)を含む溶液を還流しながら2.5時間加熱した。真空中で濃縮して過剰なPOClを除去した。残渣を100mLのCHClに溶解し、氷冷した3NのNaOHで洗浄した。有機層を分離し、無水MgSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮し、30%のEtOAcを含むヘキサンで溶離してシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、1.3gの4−クロロ−5−[3−(2−クロロエトキシ)フェニル]ニコチノニトリルを灰白色の固体として得た(75%)。
【0143】
4mLの無水エチレングリコールジメチルエーテル中に4−クロロ−5−[3−(2−クロロエトキシ)フェニル]ニコチノニトリル(200mg、0.68ミリモル)、2,4−ジクロロ−5−メトキシアニリン(196mg、1ミリモル)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル(80mg、0,20ミリモル)、およびKPO(216mg、1ミリモル)を含む攪拌溶液に、Pd(dba)(62mg、0.07ミリモル)を加えた。混合物を90℃で2時間加熱した後冷却し、セライト(商標)濾過し、真空中で濃縮し、5〜50%のMeOHを含むCHClで溶離してシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、160mgの5−[3−(2−クロロエトキシ)フェニル]−4−[(2,4−ジクロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]ニコチノニトリル150を固体として得た(52%)。HPLC保持時間(c):14.29分、MS:448[M+H]。
【0144】
2.5mLのEtOH中に5−[3−(2−クロロエトキシ)フェニル]−4−[(2,4−ジクロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]ニコチノニトリル150(138mg、0.31ミリモル)、ピロリジン(66mg、0.93ミリモル)を含む攪拌溶液を105℃で7時間加熱した。反応物を冷却した後、25mLの水に注ぎ、0℃に冷却した。固体を濾過し、真空中で50℃で一晩乾燥し32mgの4−[(2,4−ジクロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]−5−[3−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]ニコチノニトリル151を褐色固体として得た(21%)。HPLC保持時間(c):6.21分、MS:481[M+H]。
実施例12:5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−4−[(3−ニトロフェニル)アミノ]ニコチノニトリル152の調製
実施例5で4−クロロ−5−(3−ニトロフェニル)ニコチノニトリルの調製について説明した手順と同様の手順を使用して、4−クロロ−5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]ニコチノニトリルを4−(ジメチルアミノ)フェニル酢酸から調製した。実施例5で化合物137の調製について説明した手順と同様の手順に従い、得られた4−クロロ−5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]ニコチノニトリルを3−ニトロアニリンと反応させて、5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−4−[(3−ニトロフェニル)アミノ]ニコチノニトリル152を得た。
【0145】
化合物152を以下の条件でHPLCによって解析した:カラムYMC C18、4.6×500mm、5ミクロン、移動相A:90%水+10%MeOH+0.02%HPO、移動相B:90%MeOH+10%水+0.02%HPO、2分で1〜100%B、最大10分。100%Bの後、1分で100〜1%B。HPLC保持時間(c):3.4分、MS:357.8m/e(M−H)。
【0146】
化合物147の調製について説明した手順と同様の手順を使用して、表5の化合物153〜158を3−メトキシフェニル酢酸を出発物質として調製した。
【0147】
【表5】

実施例13:5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−[(3−ヒドロキシフェニル)アミノ]ニコチノニトリル159の調製
密封したバイアル中で、4−クロロ−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリルを3−アミノフェノールとともにエタノール中で90℃で加熱することにより、本化合物を調製した。HPLC保持時間(c):6.4分、MS:348.1m/e(M−H)。
実施例14:5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−{[3−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]アミノ}ニコチノニトリル160の調製
DMF(2mL)中に5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−[(3−ヒドロキシフェニル)アミノ]ニコチノニトリル159(100mg、0.29ミリモル)と2−ブロモエタノール(55mg、0.44ミリモル)を含む混合物に、炭酸セシウム(143mg、0.44ミリモル)を添加した。得られた混合物を100℃で一晩加熱し、室温まで冷却し、逆相HPLC(1%TFAを含む95%〜5%の水/アセトニトリルによるグラジエント溶出による)で精製して、20mg(12%)の5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−{[3−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]アミノ}ニコチノニトリル160をクリーム色の固体として得た。HPLC保持時間(c):6.5分、MS:392.1m/e(M+H)。
実施例15:4−[(3−{[(2S)−2−アミノ−3−フェニルプロピル]−オキシ}−フェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル161の調製
THF(1.0mL)中に5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−[(3−ヒドロキシフェニル)アミノ]ニコチノニトリル159(100mg、0.29ミリモル)およびtert−ブチル(1S)−1−ベンジル−2−ヒドロキシエチルカルバメート(73mg、0.35ミリモル)、トリフェニルホスフィン(91mg、0.35ミリモル)を含む混合物に、室温でジエチルアゾジカルボキシレート(61mg、0.35ミリモル)を加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した。さらにトリフェニルホスフィン(91mg、0.35ミリモル)とジエチルアゾジカルボキシレート(61mg、0.35ミリモル)を加えた。室温でさらに24時間攪拌した後、得られた混合物をTFA(0.4mL)で70℃で一晩処理し、逆相HPLC(1%TFAを含む95%〜5%の水/アセトニトリルによるグラジエント溶出による)で精製して、15mg(11%)の4−[(3−{[(2S)−2−アミノ−3−フェニルプロピル]−オキシ}−フェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル161をクリーム色の固体として得た。HPLC保持時間(c):6.8分、MS:481.3m/e(M+H)。
実施例16:4−[(2−クロロ−5−ヒドロキシフェニル)アミノ]−5−(5−ホルミル−1−ベンゾチエン−2−イル)ニコチノニトリル162の調製
水(125mL)に3−アミノブト−3−エンニトリル(100g、1.22モル)と濃塩酸(125mL)を含む混合液を80℃で2時間加熱し、室温まで冷却し、固体を除去するため濾過した。ろ液を酢酸エチルで抽出し、集めた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮して半固体の残渣を得て、これを真空下で蒸留して77.4g(76%)のアセトアセトニトリルを得た(73〜77℃/3〜5mmHg)。
【0148】
アセトアセトニトリル(41g、493ミリモル)、t−ブトキシビス(ジメチルアミノ)メタン(86g、493ミリモル)およびN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(263mL、1.97モル)の混合物を100℃で一晩加熱し、揮発性成分を除去するために蒸発させた。ヘキサン/エーテル(1:1)で残渣をトリチュレートし、固体を濾過によって回収し、ヘキサン/エーテル(1:1)と最小量の酢酸エチルで洗浄し、64.3g(67%)の5−(ジメチルアミノ)−2−[(ジメチルアミノ)メチレン]−3−オキソペント−4−エンニトリルを淡黄色の固体として得て、これをそれ以上精製せずに次の工程で使用した。
【0149】
エタノール(1.8L)中に5−(ジメチルアミノ)−2−[(ジメチルアミノ)メチレン]−3−オキソペント−4−エンニトリル(64.3g、333ミリモル)と酢酸アンモニウム(126g、1.66モル)を含む混合物を60時間還流加熱し、濃縮して溶媒を除去した。得られた半固体の残渣を酢酸エチルで希釈し、濾過し、酢酸エチル、続いてCHClで洗浄した。濾液を蒸発させて量を減少させた。沈殿した固体を濾過して回収し、酢酸エチルと最小量のエタノールで洗浄して4−ヒドロキシニコチノニトリルを得た。蒸発と再結晶化のプロセスを繰り返して、固体の4−ヒドロキシニコチノニトリルを親溶液からさらに得た。集めた灰白色の固体は20.9g(53%)であった。M.p.234〜236℃。
【0150】
4−ヒドロキシニコチノニトリルの別の合成法は文献で報告されている。Broekman,F.W.et al.,Recueil des Travaux Chimiques des Pays−Bas,81:792−6(1962)。
【0151】
水(600mL)中に4−ヒドロキシニコチノニトリル(45.7g、381ミリモル)、ヨウ素(96.6g、381ミリモル)およびNaOH(19.8g、825ミリモル)を含む混合物を85℃で一晩加熱し、室温まで冷却し、水で希釈した。沈殿を濾過によって回収し、水で洗浄して57.5g(61%)の4−ヒドロキシ−5−ヨードニコチノニトリルを黄褐色の固体、mp>245℃として得た。
【0152】
4−ヒドロキシ−5−ヨードニコチノニトリル(57.5g、234ミリモル)とPOCl(200mL)の混合物を100℃で2時間加熱し、室温まで冷却し、過剰なPOClを除去するために蒸発させた。氷水槽内で残渣を冷却し、10NのNaOH水溶液でpHを8〜9に調整し、EtOAcで抽出した。集めた有機物を水と食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過、濃縮した。得られた固形残渣を最小量のMeOHとCHClで洗浄し、46.5g(75%)の4−クロロ−5−ヨードニコチノニトリルを黄褐色の固体、mp120〜122℃として得た。
【0153】
EtOH(20mL)中に4−クロロ−5−ヨードニコチノニトリル(2.0g、7.6ミリモル)と2−クロロ−5−ヒドロキシアニリン(1.09g、7.6ミリモル)を含む混合物を、密封したバイアル中で90℃で一晩加熱し、NaHCO水溶液に注ぎ、濾過した。粗生成である固体を水で洗浄し、乾燥させて3.0g(定量的収率)の4−[(2−クロロ−5−ヒドロキシフェニル)アミノ]−5−ヨードニコチノニトリルを褐色固体として得て、これをさらに精製することなく次の工程で使用した。MS(M+H):372.1。
【0154】
DME(10mL)中に4−[(2−クロロ−5−ヒドロキシフェニル)アミノ]−5−ヨードニコチノニトリル(500mg、1.35ミリモル)、2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゾ[b]チオフェン−5−カルバルデヒド(389mg、1.35ミリモル)およびPd(PPh(78mg、0.070ミリモル)を含む混合物とNaHCO(水溶液、2M、1.4mL)を80℃で一晩加熱し、室温まで冷却し、濃縮して量を減少させた。残渣をEtOAcと水の間に分離した。集めた有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して160mg(30%)の4−[(2−クロロ−5−ヒドロキシフェニル)アミノ]−5−(5−ホルミル−1−ベンゾチエン−2−イル)ニコチノニトリル162を黄色の固体として得た。MS(M+H):406.2、HPLC保持時間(c)11.7分。
実施例17:4−[(2−クロロ−5−ヒドロキシフェニル)アミノ]−5−[5−(ピペリジン−1−イルメチル)−1−ベンゾチエン−2−イル]ニコチノニトリル163の調製
THF(5.0mL)中に4−[(2−クロロ−5−ヒドロキシフェニル)アミノ]−5−(5−ホルミル−1−ベンゾチエン−2−イル)ニコチノニトリル162(130mg、0.32ミリモル)とピペリジン(82mg、0.96ミリモル)を含む混合物にAcOH(106mg、1.76ミリモル)を添加した。得られた混合物を室温で1時間攪拌し、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(203mg、0.96ミリモル)を添加した。室温で一晩攪拌した後、反応混合液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して105mg(69%)の表題化合物を黄白色の固体として得た。HPLC保持時間(c):7.8分、MS:475.1m/e(M+H)。
【0155】
実施例14で化合物160の調製について説明した手順と同様の手順に従って、表6の化合物164を調製した。実施例16で化合物162の調製について説明した手順と同様の手順に従い、中間体66を適切なアニリンでカップリングした後、2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゾ[b]チオフェン−5−カルバルデヒドで処理し、その後、実施例17の化合物163の手順に従って還元的アミノ化を行うことにより、化合物165および166を調製した。
【0156】
【表6】

実施例18:4−クロロ−5−ヨード−1−オキシ−ニコチノニトリルの調製
TFA(5mL)中に4−クロロ−5−ヨード−ニコチノニトリル(529mg、2.0ミリモル)を含む溶液にH(水に30wt%を含む、5mL)を添加した。反応混合液を室温で一晩攪拌し、50℃で8時間加熱し濃縮した。残渣に飽和NaHCO水溶液(10mL)を添加した後、EtOAc/THFで抽出した。有機抽出液を水で洗浄しNaSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(CHCl−THF=10:1)で精製し、202mg(36%)の4−クロロ−5−ヨード−1−オキシ−ニコチノニトリルを黄白色の固体として得た。
実施例19:4−フルオロ−5−[3−メトキシ−4−(2−メトキシエトキシ)フェニル]ニコチノニトリルの調製
4−クロロ−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル(7.3ミリモル、2.0g)を70mLのDMFに溶解し、CsF(14.6ミリモル、2.2g)で処理した。80℃で2時間加熱した後、さらに7ミリモル(1g)のCsFを添加し、さらに一晩加熱した。シリカゲルに懸濁液を蒸着し、生成物をクロマトグラフィー(EtOAc/Hex)で精製して、300mgの4−フルオロ−5−[3−メトキシ−4−(2−メトキシエトキシ)フェニル]ニコチノニトリルを得た。
実施例20:1−ベンゾフラン−5−カルバルデヒドの調製
窒素雰囲気下、−15〜−20℃で、CHCl中に1−ベンゾフラン−5−カルボニトリル(5.0g、34.9ミリモル)を含む溶液にDIBAL−H(41.9mL、41.9ミリモル、1M/ヘプタン)を添加し、−15℃以下に維持した。添加終了後、反応混合液をさらに10分間−15〜−20℃で攪拌した。2NのHCl水溶液を滴下して加え反応混合物をクエンチした。有機層を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して4.0g(78%)の1−ベンゾフラン−5−カルバルデヒドを黄色の油として得た。
実施例21:ジメチル−5−(ピペリジン−1−イルメチル)ベンゾフラン−2−イルボロネートの調製
標準的な還元的アミノ化の手順の下、1−ベンゾフラン−5−カルバルデヒドをピペリジン及び水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムで処理し、1−(5−ベンゾフラニルメチル)ピペリジンを得た。低温でブチルリチウムおよびトリメチルボレートで1−(5−ベンゾフラニルメチル)ピペリジンを処理して、ジメチル5−(ピペリジン−1−イルメチル)ベンゾフラン−2−イルボロネートを生成した。スキーム10で説明した手順と同様の手順に従い、ジメチル5−(ピペリジン−1−イルメチル)ベンゾフラン−2−イルボロネートとのカップリングによって、表7の化合物167〜169、171、および172を得た。
【0157】
【表7】

実施例22:4−{[3−(アミノメチル)ベンジル]アミノ}−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル170の調製
3mLのDMF中に4−クロロ−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル(74mg、0.27ミリモル)、1,3−フェニレンジメタンアミン(54mg、0.40ミリモル)およびトリエチルアミン(40mg、0.40ミリモル)を含む混合物を60℃まで一晩加熱した。室温まで冷却した後、反応物を乾燥するまで濃縮し、残渣を3mLのDMSOに溶解し、濾過し、分取用HPLCで精製して4−{[3−(アミノメチル)ベンジル]アミノ}−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリルを得た。HPLC保持時間(d):1.33分、MS:375.2m/e(M+H)。
実施例23:薬理試験
複数の標準的薬理試験手順において本教示の代表的化合物を評価したところ、本教示の化合物がPKCθの阻害剤であることが示唆された。標準的薬理試験手順において示された活性に基づくと、本教示の化合物は抗炎症剤として有用である。
【0158】
PKCθの活性キナーゼドメイン(KD)の阻害に関する放射性キナーゼアッセイ
本アッセイは、放射性標識したATP(ATPγP33)を利用した、キナーゼによるビオチン化基質のリン酸化反応に基づく。基質は、ビオチン−FARKGSLRQ−C(O)NHの配列を持つビオチン化されたペプチドであった。酵素は、全長PKCθの遺伝子組み換え精製活性キナーゼドメインであった(アミノ酸362番〜706番)。アッセイバッファーの組成は、100mMのHepes、pH7.5、2mMのMgCl、20mMのβ−グリセロホスフェート、および0.008%のTritonX100であった。ATP、ATPγP33(PerkinElmer)、DTT、および酵素からなる反応混合物をアッセイバッファー中で調製し、96ウェルのポリプロピレンプレートに添加した。反応混合物に化合物(別の96ウェルポリプロピレンプレート内でDMSOで希釈したもの)を加え、室温でインキュベートした。インキュベート後、ペプチド基質を反応混合物に加え酵素反応を開始させた。停止液(100mMのEDTA、0.2%TritonX100、および20mMのNaHPO)を添加して反応を終了させ、アッセイプレートから、洗浄したストレプトアビジンコーティング96ウェルシンチプレート(PerkinElmer)に移した。シンチプレートを室温でインキュベートし、0.1%TritonX100添加PBS中で洗浄し、1450Microbeta Trilux(Wallac,Version2.60)内で計測した。各ウェルについて、1分当たりの補正数(CCPM)として計数を記録した。機器の検出装置間の有効度とバックグラウンド差について補正する、P33標準化プロトコールに従って調整を行ったことから、計数は補正されたものとみなされた(ソフトウェアバージョン4.40.01)。
【0159】
全長(FL)PKCθ阻害物質の阻害に関する放射活性キナーゼアッセイ
本アッセイが上述のアッセイと異なる点は、使用した酵素が遺伝子組み換え精製全長PKCθ(Panvera,P2996)であることであった。
【0160】
PKCθ IMAPアッセイ
使用した材料には以下のものが含まれる:ヒトPKCθ全長酵素(Panvera Cat#P2996)、基質ペプチド:5FAM−RFARKGSLRQKNV−OH(Molecular Devices,RP7032)、ATP(Sigma Cat#A2383)、DTT(Pierce,20291)、5×キナーゼ反応バッファー(Molecular Devices,R7209)、5×結合バッファーA(Molecular Devices,R7282)、5×結合バッファーB(Molecular Devices,R7209)、IMAPビーズ(Molecular Devices,R7284)、および384ウェルプレート(Corning Costar,3710)。
【0161】
5×ストック反応バッファーを希釈し、DTTを添加して濃度を3.0mMにして反応バッファーを調製した。5×結合バッファーAを希釈して結合バッファーを調製した。2×ATP(12uM)および2×ペプチド(200nm)を含有する反応バッファーの90%希釈液を使用してマスター混合液を調製した。IC50測定用に、最大濃度が20×になるように化合物をDMSOで希釈した。各IC50曲線用の27μlのマスター混合液を384ウェルプレートの1列目に加え、3μlの20×化合物を含むDMSOを各ウェルに添加した。化合物の最終濃度は2×であり、10%DMSOであった。残りのマスター混合液にDMSO添加して濃度を10%に上昇させた。10%DMSOを含有する10μlのマスター混合液をプレートの2列目を除く残りのウェルに加えた。1列目から20μlを2列目に移した。2列目から、化合物を2:1の割合で順に希釈していった。2×(2nM)PKCθ溶液を反応バッファー中で作製した。10μlのPKCθ溶液を全てのウェルに加え、以下の最終濃度を得た:PKCθ−1nM、ATP−6μM、ペプチド−100nM、DMSO−5%。サンプルを室温で25分間インキュベートした。1×結合バッファーでビーズを800:1に希釈して結合試薬を調製した。50μlの結合試薬を全てのウェルに加え、20分間インキュベートした。Envision2100(PerkinElmer Life Sciences)を使用してFPを測定した。ATPを含まないウェルおよび酵素を含まないウェルを対照として使用した。
【0162】
得られた結果を下記の表8にまとめた。1つ以上のサンプルが検査されるとき、示したデータは平均値を表す。
【0163】
【表8−1】

【0164】
【表8−2】

本教示の精神と重要な特性から逸脱することなしに、本明細書にて説明したものの変形形態、変更形態、およびその他の実施形態が当業者によって想定されるであろう。従って、本教示の範囲は先行する例示的な説明によって定められるものではなく、代わりに以下の請求項によって定められ、請求項の意義および等価物の範囲に含まれる全ての変更はその請求項に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iまたは式I’の化合物、
【化1】

またはこれらの薬学的に許容される塩、水和物、またはエステルであって、
Xは、a)−NR−Y−、b)−O−Y−、c)−S(O)−Y−、d)−S(O)NR−Y−、e)NRS(O)−Y−、f)−C(O)NR−Y−、g)−C(S)NR−Y−、h)−NRC(O)−Y−、i)−NRC(S)−Y−、j)−C(O)O−Y−、k)−OC(O)−Y−、およびl)共有結合から選択され、
Yは、それぞれ存在する場合に、a)二価のC1〜10アルキル基、b)二価のC2〜10アルケニル基、c)二価のC2〜10アルキニル基、d)二価のC1〜10ハロアルキル基、およびe)共有結合から独立して選択され、
は、1〜4個の−Y−R基で場合により置換されたフェニル基であり、
は、C6〜14アリ−ル基または5〜14員のヘテロアリ−ル基であり、それぞれの基は−Y−Rおよび−O−Y−Rから独立して選択される1〜4個の基で場合により置換されており、
は、a)H、b)C1〜10アルキル基、c)C2〜10アルケニル基、d)C2〜10アルキニル基、およびe)C1〜10ハロアルキル基から選択され、
は、それぞれ存在する場合に、a)ハロゲン、b)−CN、c)−NO、d)オキソ、e)−O−Y−R、f)−NR−Y−R、g)−N(O)R−Y−R、h)−S(O)−Y−R、i)−S(O)O−Y−R、j)−S(O)NR−Y−R、k)−C(O)−Y−R、l)−C(O)O−Y−R、m)−C(O)NR−Y−R、n)−C(S)NR−Y−R、o)C1〜10アルキル基、p)C2〜10アルケニル基、q)C2〜10アルキニル基、r)C1〜10ハロアルキル基、s)C3〜14シクロアルキル基、t)C6〜14アリ−ル基、u)3〜14員のシクロへテロアルキル基、およびv)5〜14員のヘテロアリ−ル基から独立して選択され、o)〜v)のそれぞれは1〜4個の−Y−R基で場合により置換されており、
は、それぞれ存在する場合に、a)H、b)−C(O)R、c)−C(O)OR、d)C1〜10アルキル基、e)C2〜10アルケニル基、f)C2〜10アルキニル基、g)C1〜10ハロアルキル基、h)C3〜14シクロアルキル基、i)C6〜14アリ−ル基、j)3〜14員のシクロへテロアルキル基、およびk)5〜14員のヘテロアリ−ル基から独立して選択され、d)〜k)のそれぞれは1〜4個の−Y−R基で場合により置換されており、
およびRは、それぞれ存在する場合に、a)H、b)−O−Y−R、c)−S(O)−Y−R、d)−S(O)O−Y−R、e)−C(O)−Y−R、f)−C(O)O−Y−R、g)−C(O)NR10−Y−R11、h)−C(S)NR10−Y−R11、i)C1〜10アルキル基、j)C2〜10アルケニル基、k)C2〜10アルキニル基、l)C1〜10ハロアルキル基、m)C3〜14シクロアルキル基、n)C6〜14アリ−ル基、o)3〜14員のシクロへテロアルキル基、およびp)5〜14員のヘテロアリ−ル基から独立して選択され、i)〜p)のそれぞれは1〜4個の−Y−R基で場合により置換されており、
は、それぞれ存在する場合に、a)ハロゲン、b)−CN、c)−NO、d)オキソ、e)−O−Y−R、f)−NR10−Y−R11、g)−N(O)R10−Y−R11、h)−S(O)−Y−R、i)−S(O)O−Y−R、j)−S(O)NR10−Y−R11、k)−C(O)−Y−R、l)−C(O)O−Y−R、m)−C(O)NR10−Y−R11、n)−C(S)NR10−Y−R11、o)C1〜10アルキル基、p)C2〜10アルケニル基、q)C2〜10アルキニル基、r)C1〜10ハロアルキル基、s)C3〜14シクロアルキル基、t)C6〜14アリ−ル基、u)3〜14員のシクロへテロアルキル基、およびv)5〜14員のヘテロアリ−ル基から独立して選択され、o)〜v)のそれぞれは1〜4個の−Y−R12基で場合により置換されており、
は、それぞれ存在する場合に、a)H、b)−C(O)−C1〜10アルキル、c)−C(O)OH、d)−C(O)O−C1〜10アルキル、e)C1〜10アルキル基、f)C2〜10アルケニル基、g)C2〜10アルキニル基、h)C1〜10ハロアルキル基、i)C3〜14シクロアルキル基、j)C6〜14アリ−ル基、k)3〜14員のシクロへテロアルキル基、およびl)5〜14員のヘテロアリ−ル基から独立して選択され、該C1〜10アルキル基、該C2〜10アルケニル基、該C2〜10アルキニル基、該C1〜10ハロアルキル基、該C3〜14シクロアルキル基、該C6〜14アリ−ル基、該3〜14員のシクロへテロアルキル基、および該5〜14員のヘテロアリ−ル基のそれぞれは1〜4個の−Y−R12基で場合により置換されており、
10およびR11は、それぞれ存在する場合に、a)H、b)−OH、c)−SH、d)−NH、e)−NH−C1〜10アルキル、f)−N(C1〜10アルキル)、g)−S(O)−C1〜10アルキル、h)−S(O)OH、i)−S(O)−OC1〜10アルキル、j)−C(O)−C1〜10アルキル、k)−C(O)OH、l)−C(O)−OC1〜10アルキル、m)−C(O)NH、n)−C(O)NH−C1〜10アルキル、o)−C(O)N(C1〜10アルキル)、p)−C(S)NH、q)−C(S)NH−C1〜10アルキル、r)−C(S)N(C1〜10アルキル)、s)C1〜10アルキル基、t)C2〜10アルケニル基、u)C2〜10アルキニル基、v)C1〜10アルコキシ基、w)C1〜10ハロアルキル基、x)C3〜14シクロアルキル基、y)C6〜14アリ−ル基、z)3〜14員のシクロへテロアルキル基、およびaa)5〜14員のヘテロアリ−ル基から独立して選択され、該C1〜10アルキル基、該C2〜10アルケニル基、該C2〜10アルキニル基、該C1〜10アルコキシ基、該C1〜10ハロアルキル基、該C3〜14シクロアルキル基、該C6〜14アリ−ル基、該3〜14員のシクロへテロアルキル基、および該5〜14員のヘテロアリ−ル基のそれぞれは1〜4個の−Y−R12基で場合により置換されており、
12は、それぞれ存在する場合に、a)ハロゲン、b)−CN、c)−NO、d)オキソ、e)−OH、f)−NH、g)−NH(C1〜10アルキル)、h)−N(C1〜10アルキル)、i)−SH、j)−S(O)−C1〜10アルキル、k)−S(O)OH、l)−S(O)−OC1〜10アルキル、m)−C(O)−C1〜10アルキル、n)−C(O)OH、o)−C(O)−OC1〜10アルキル、p)−C(O)NH、q)−C(O)NH−C1〜10アルキル、r)−C(O)N(C1〜10アルキル)、s)−C(S)NH、t)−C(S)NH−C1〜10アルキル、u)−C(S)N(C1〜10アルキル)、v)C1〜10アルキル基、w)C2〜10アルケニル基、x)C2〜10アルキニル基、y)C1〜10アルコキシ基、z)C1〜10ハロアルキル基、aa)C3〜14シクロアルキル基、ab)C6〜14アリ−ル基、ac)3〜14員のシクロへテロアルキル基、およびad)5〜14員のヘテロアリ−ル基から独立して選択され、
mは0、1、または2であって、
ただし、Rが3−クロロ−4−フルオロフェニル基であるとき、Rは2−[(1H−イミダゾル−5−イルメチル)アミノ]フェニル基ではない、
式Iまたは式I’の化合物、またはこれらの薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル。
【請求項2】
Xは、−NH−、−N(CH)−、−NH−CH−、−NH−CHCH−、−NH−CHCHCH−、−O−、および共有結合から選択される、請求項1の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル。
【請求項3】
は、
【化2】

から選択される、請求項1または2の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル。
【請求項4】
は、それぞれ存在する場合に、−F、−Cl、−Br、−CN、−NO、−O−Y−R、−C(O)−Y−R、−C(O)O−Y−R、−NR−Y−R、およびC1−6アルキル基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル。
【請求項5】
は、フェニル基、C8〜14アリ−ル基、および5〜14員のヘテロアリ−ル基から選択され、それぞれの基は、−Y−Rおよび−O−Y−Rから独立して選択される1〜4個の基で場合により置換される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル。
【請求項6】
は、
【化3】

であり、
、D、およびDは、独立してH、−Y−R基、または−O−Y−R基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル。
【請求項7】
、D、およびDの少なくとも1つは、−Y−R基または−O−Y−R基であり、Yは、それぞれ存在する場合に、独立して二価のC1〜4アルキル基または共有結合であり、Rは、それぞれ存在する場合に、独立してハロゲン、−CN、NO、−O−Y−R、−NR−Y−R、−S(O)−Y−R、−S(O)NR−Y−R、−C(O)−Y−R、−C(O)O−Y−R、−C(O)NR−Y−R、C1〜10アルキル基、C1〜10ハロアルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリ−ル基、3〜14員のシクロへテロアルキル基、および5〜14員のヘテロアリ−ル基から独立して選択され、該C1〜10アルキル基、該C1〜10ハロアルキル基、該C3〜14シクロアルキル基、該C6〜14アリ−ル基、該3〜14員のシクロへテロアルキル基、および該5〜14員のヘテロアリ−ル基のそれぞれは1〜4個の−Y−R基で場合により置換される、請求項6の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル。
【請求項8】
前記−Y−R基および前記−O−Y−R基は、−O−(CHNR−Y−R、−(CHNR−Y−R、−O−(CH−3〜14員のシクロへテロアルキル基、および−(CH−3〜14員のシクロへテロアルキル基から選択され、該3〜14員のシクロへテロアルキル基のそれぞれは1〜4個の−Y−R基で場合により置換されており、nはそれぞれ存在する場合に独立して0、1、2、3、または4である、請求項7の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル。
【請求項9】
前記−O−(CH−3〜14員のシクロへテロアルキル基および前記−(CH−3〜14員のシクロへテロアルキル基の前記3〜14員のシクロへテロアルキル基は、ピロリジニル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、ピペリジニル基、アゼパニル基(azepanyl group)、ジアゼパニル基(diazepanyl group)、およびチオモルホリニル基から選択される、請求項8の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル。
【請求項10】
前記−Y−R基および前記−O−Y−R基は、
【化4】

であり、
は、それぞれ存在する場合に、−O−Y−R、−NR10−Y−R11、C6〜14アリ−ル基、および5〜14員のヘテロアリ−ル基から独立して選択され、該C6〜14アリ−ル基および該5〜14員のヘテロアリ−ル基は1〜4個の−Y−R12基で場合により置換されており、nはそれぞれ存在する場合に独立して0、1、2、3、または4である、請求項7の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル。
【請求項11】
、D、およびDの少なくとも1つは、ハロゲン、−CN、−NO、−S(O)−Y−R、−S(O)−NR−Y−R、−C(O)O−Y−R、−C(O)NR−Y−R、C1〜10アルキル基、およびC1〜10ハロアルキル基から選択される、請求項7〜10のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル。
【請求項12】
、D、およびDの少なくとも1つはC6〜14アリ−ル基または5〜14員のヘテロアリ−ル基であり、それぞれの基は1〜4個の−Y−R基で場合により置換される、請求項7〜11のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル。
【請求項13】
、D、およびDの少なくとも1つは、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、フリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピロリル基、およびチエニル基から選択され、それぞれの基は1〜4個の−Y−R基で場合により置換されており、Yは、それぞれ存在する場合に、独立してC1〜4アルキル基または共有結合であり、Rは、それぞれ存在する場合に、ハロゲン、−CN、−NO、−O−Y−R、−NR10−Y−R11、−C(O)−Y−R、−C(O)NR10−Y−R11、−S(O)−Y−R、−S(O)−NR10−Y−R11、およびC1〜4アルキル基で場合により置換された3〜14員のシクロへテロアルキル基から独立して選択される、請求項12の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル。
【請求項14】
は、C8〜14二環式アリ−ル基または5〜14員のヘテロアリ−ル基であり、前記C8〜14二環式アリ−ル基および前記5〜14員のヘテロアリ−ル基のそれぞれは、−Y−Rおよび−O−Y−Rから独立して選択される1〜4個の基で場合により置換される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル。
【請求項15】
は、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、フリル基、チエニル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ベンゾジオキシニル基、ベンゾジオキソリル基、ベンゾジオキサニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ベンゾインドリル基、インダニル基、インデニル基、イソチアゾリル基、ピリダジニル基、ピラゾリル基、テトラヒドロナフチル基、イソオキサゾリル基、キノリニル基、ナフチル基、イミダゾリル基、およびピロリル基から選択され、それぞれの基は、−(CH−Rおよび−O−(CH−Rから独立して選択される1〜4の基で場合により置換されており、nはそれぞれ存在する場合に独立して0、1、2、3、または4であり、Rはそれぞれ存在する場合に、独立して−NR−Y−RまたはY−R基で場合により置換された3〜14員のシクロへテロアルキル基である、請求項14の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル。
【請求項16】
以下の化合物、
4−[(3−クロロフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−[(3−フルオロフェニル)アミノ]ニコチノニトリル、
4−アニリノ−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−[(2,5−ジフルオロフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−[(3,4−ジメトキシフェニル)アミノ]ニコチノニトリル、
4−[(4−クロロ−2−フルオロフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−[(4−クロロフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−[(2,4−ジメチルフェニル)アミノ]ニコチノニトリル、
5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]ニコチノニトリル、
4−[(3−クロロ−4−メトキシフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−[(4−フェノキシフェニル)アミノ]ニコチノニトリル、
4−[(2,5−ジクロロフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−[(4−メトキシ−2−メチルフェニル)アミノ]ニコチノニトリル、
4−[(3,4−ジクロロフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−[(5−クロロ−2−メトキシフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−{[3−(ベンジルオキシ)フェニル]アミノ}−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−[(4−メチルフェニル)アミノ]ニコチノニトリル、
5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−[(3,4,5−トリメトキシフェニル)アミノ]ニコチノニトリル、
5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−[(3−フェノキシフェニル)アミノ]ニコチノニトリル、
4−[(2−クロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−({3−クロロ−4−[(3−シアノベンジル)オキシ]フェニル}アミノ)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−({3−クロロ−4−[(3−メチルベンジル)オキシ]フェニル}アミノ)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−[(3−クロロ−4−{[3−(ジメチルアミノ)ベンジル]オキシ}フェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−[(2,4−ジクロロフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
N−(3−{[3−シアノ−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ピリジン−4−イル]アミノ}フェニル)アセトアミド、
N−(3−{[3−シアノ−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ピリジン−4−イル]アミノ}フェニル)−N−メチルアセトアミド、
N−(3−{[3−シアノ−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ピリジン−4−イル]アミノ}フェニル)メタンスルホンアミド、
5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−4−[(3−メトキシフェニル)アミノ]ニコチノニトリル、
5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−4−[(3−フルオロフェニル)アミノ]ニコチノニトリル、
4−({3−シアノ−5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]ピリジン−4−イル}アミノ)安息香酸、
4−[(4−シアノフェニル)アミノ]−5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]ニコチノニトリル、
4−[(3,4−ジフルオロフェニル)アミノ]−5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]ニコチノニトリル、
4−[(3−ブロモフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−{[3−(ベンジルオキシ)−4−クロロフェニル]アミノ}−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−[(2,4−ジクロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−[(2,4−ジクロロ−5−エトキシフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−[(2,4−ジクロロ−5−プロポキシフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−[(5−ブトキシ−2,4−ジクロロフェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−{[2,4−ジクロロ−5−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]アミノ}−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−{[4−(ベンジルオキシ)−3−クロロフェニル]アミノ}−5−(3−ニトロフェニル)ニコチノニトリル、
4−{[3−クロロ−4−(ピリジン−2−イルメトキシ)フェニル]アミノ}−5−(3−ニトロフェニル)ニコチノニトリル、
4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−5−(3−ニトロフェニル)ニコチノニトリル、
5−(3−アミノフェニル)−4−{[4−(ベンジルオキシ)−3−クロロフェニル]アミノ}ニコチノニトリル、
4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−5−(2−ニトロフェニル)ニコチノニトリル、
5−(2−アミノフェニル)−4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]ニコチノニトリル、
4−[(2,4−ジクロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]−5−[4−メトキシ−3−(2−メトキシエトキシ)フェニル]ニコチノニトリル、
4−[(2,4−ジクロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]−5−[3−メトキシ−4−(2−メトキシエトキシ)フェニル]ニコチノニトリル、
5−[3−(2−クロロエトキシ)フェニル]−4−[(2,4−ジクロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]ニコチノニトリル、
4−[(2,4−ジクロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]−5−[3−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]ニコチノニトリル、
5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−4−[(3−ニトロフェニル)アミノ]ニコチノニトリル、
5−(3−メトキシフェニル)−4−[(3−ニトロフェニル)アミノ]ニコチノニトリル、
5−(3−メトキシフェニル)−4−[(3−メトキシフェニル)アミノ]ニコチノニトリル、
4−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−5−(3−メトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−{[3−シアノ−5−(3−メトキシフェニル)ピリジン−4−イル]アミノ}安息香酸、
4−[(4−シアノフェニル)アミノ]−5−(3−メトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−[(3,4−ジフルオロフェニル)アミノ]−5−(3−メトキシフェニル)ニコチノニトリル、
5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−[(3−ヒドロキシフェニル)アミノ]ニコチノニトリル、
5−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−{[3−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]アミノ}ニコチノニトリル、
4−[(3−{[(2S)−2−アミノ−3−フェニルプロピル]−オキシ}−フェニル)アミノ]−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−[(2−クロロ−5−ヒドロキシフェニル)アミノ]−5−(5−ホルミル−1−ベンゾチエン−2−イル)ニコチノニトリル、
4−[(2−クロロ−5−ヒドロキシフェニル)アミノ]−5−[5−(ピペリジン−1−イルメチル)−1−ベンゾチエン−2−イル]ニコチノニトリル、
4−{[2−クロロ−5−(2−ヒドロキエトキシ)フェニル]アミノ}−5−[5−(ピペリジン−1−イルメチル)−1−ベンゾチエン−2−イル]ニコチノニトリル、
4−[(4−アミノ−2,3−ジメチルフェニル)アミノ]−5−[5−(ピペリジン−1−イルメチル)−1−ベンゾチエン−2−イル]ニコチノニトリル、
4−[(4−アミノ−3−メチルフェニル)アミノ]−5−[5−(ピペリジン−1−イルメチル)−1−ベンゾチエン−2−イル]ニコチノニトリル、
4−[(2−クロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]−5−[5−(ピペリジン−1−イルメチル)−1−ベンゾフラン−2−イル]ニコチノニトリル、
4−[(2−クロロ−5−メチルフェニル)アミノ]−5−[5−(ピペリジン−1−イルメチル)−1−ベンゾフラン−2−イル]ニコチノニトリル、
4−[(5−ヒドロキシ−2−フェノキシフェニル)アミノ]−5−[5−(ピペリジン−1−イルメチル)−1−ベンゾフラン−2−イル]ニコチノニトリル、
4−{[3−(アミノメチル)ベンジル]アミノ}−5−(3,4−ジメトキシフェニル)ニコチノニトリル、
4−[(2,4−ジクロロ−5−ヒドロキシフェニル)アミノ]−5−[5−(ピペリジン−1−イルメチル)−1−ベンゾフラン−2−イル]ニコチノニトリル、および
4−[(4−メトキシ−2−メチルフェニル)アミノ]−5−[5−(ピペリジン−1−イルメチル)−1−ベンゾフラン−2−イル]ニコチノニトリル、
から選択される、請求項1の化合物。
【請求項17】
前記化合物はエナンチオマ−の形態をとる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項19】
哺乳動物において、プロテインキナ−ゼによって媒介される病態または疾患を治療または抑制する方法であって、
該哺乳動物に、有効量の請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステルを提供する工程を含む、方法。
【請求項20】
前記プロテインキナ−ゼは、プロテインキナ−ゼCである、請求項19の方法。
【請求項21】
前記病態または疾患は、喘息、大腸炎、多発性硬化症、乾癬、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、および関節の炎症から選択される炎症性疾患または自己免疫疾患である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
薬剤として使用するための、請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステル。
【請求項23】
哺乳動物において、プロテインキナ−ゼによって媒介される病態または疾患の治療または抑制に用いられる薬剤の調製における、請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、またはエステルの使用。

【公表番号】特表2009−539993(P2009−539993A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515470(P2009−515470)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/013851
【国際公開番号】WO2007/146323
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】