説明

プロトン伝導性膜およびその使用

本発明は、ポリマーの芳香族環に共有結合したスルホン酸基を有し、さらにその優れた化学及び熱特性により、様々な目的に使用できる芳香族ポリアゾールを用いた新規なプロトン伝導性ポリマー膜に関するものである。このような材料は、ポリマー電解質膜(PEM)燃料電池のPEMの生産に特に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン酸基を有し、該スルホン酸基がポリマーの芳香族環に共有結合しており、さらにその優れた化学及び熱特性により、様々な目的に使用できる芳香族ポリアゾールを用いた新規なプロトン伝導性ポリマー膜に関するものである。このような材料は、ポリマー電解質膜(PEM)燃料電池のPEMの生産に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリマー電解質膜燃料電池(PEMFC)は、電解質としてのプロトン伝導性ポリマー膜、即ち、ポリマー電解質膜を用いるものである。このような場合の燃料電池は、複数のそれぞれの膜電極ユニット(MEU)が直列に連結されてなる。このMEUは、双方の側が電極で被覆されるPEMを有し、この際、膜及び電極の界面は貴金属触媒、一般的には白金を含む。燃料の電気化学的反応は、3相の境界(燃料ガス/触媒/ポリマー電解質)でこの触媒で起こる。水素、メタノールまたは天然ガス等の水素を多く含む燃料がアノード側の燃料として使用される。酸素を多く含む燃料、一般的に空気が反対側のカソード側に供給される。燃料の化学的エネルギーは、このようにして、直接、電気エネルギー及び熱に変換される。水が反応産物として形成する。このような構造において、PEMは、本質的な機能を果たす。ゆえに、セパレーターとして作用するように2つの燃料に対して低い浸透性を有する必要があり、電解質として高いプロトン導電性を有する必要があると同時に、欠陥を生じずに強酸媒質中で200℃以下の温度で長期間使用できるように高い機械的、化学的及び熱的安定性を有する必要がある。したがって、電池性能及び安定性は、膜性能と密接に関連する。
【0003】
燃料電池に使用される電解質は、ポリマー電解質膜、セラミック酸化物、熔融炭酸塩などの固体、またはリン酸若しくは水酸化カリウム溶液などの液体である。近年、ポリマー電解質膜は、燃料電池用の電解質として、興味が持たれている。原則として、ポリマー電解質膜は2つのカテゴリーで識別できる。
【0004】
第1のカテゴリーは、共有結合した酸基、好ましくはスルホン酸基を有するポリマーフレームワークを有するカチオン交換膜に関するものである。スルホン酸基は、水素イオンを放出してアニオンに変換するため、プロトンを伝導する。プロトンの移動度、ゆえにプロトン伝導性は、水分含量に直接関連する。膜が、例えば、高温の結果、乾燥すると、膜の伝導性、その結果、燃料電池のパワーは劇的に減少する。ゆえに、このようなカチオン交換膜を有する燃料電池の作動温度は、水の沸点までに限定される。したがって、ポリマー電解質膜に使用される材料としては、例えば、パーフルオロスルホン酸ポリマーがある。このパーフルオロスルホン酸ポリマー(例えば、ナフィオン)は、通常、テトラフルオロエチレン及びトリフルオロビニルからなりかつスルホン酸基を有する側鎖、例えば、スルホン酸基がパーフルオロアルキル基に結合した側鎖を有する共重合体等のパーフッ素化炭水化物骨格を有する。燃料の湿潤化は、ナフィオン等の従来のスルホン化膜が使用されるポリマー電解質膜燃料電池(PEMFC)を使用するにあたっては、大きな問題となる。
【0005】
開発された第2のカテゴリーは、塩基性ポリマー及び強酸の複合体を含むポリマー電解質膜に関するものである。ゆえに、WO 96/13872号及び相当する米国特許第5,525,436号には、塩基性ポリマー、例えば、ポリアゾールを、リン酸、硫酸等の強酸で処理した、プロトン伝導性ポリマー電解質膜を製造する方法が記載される。
【0006】
ポリベンズイミダゾール(Celazole)等のポリアゾールは、長い間知られていた。このようなポリベンズイミダゾール(PBI)は、一般的に、3,3’−4,4’−テトラアミノビフェニルを、イソフタル酸若しくはジフェニルイソフタル酸またはこれらのエステルと溶融物中で反応させることによって調製される。形成されるプレポリマーは反応器中で固化させた後、機械的に粉砕される。次に、粉末状のプレポリマーは、所望のポリベンズイミダゾールが得られるように、400℃以下の温度で固体状態で最終的な重合を行なう。
【0007】
ポリマー膜を製造するために、PBIを、別の段階で、ジメチルアセトアミド(DMAc)等の極性のある非プロトン性溶媒中に溶解して、膜を従来の方法によって製造する。
【0008】
別の段階では、塩基性ポリマーまたはポリマーブレンドの膜を、強酸、好ましくは鉱酸に浸漬するまたは強酸でドープする。これを目的として、塩基性ポリマーまたはポリマーブレンドの膜を、膜が強酸に浸漬されてプロトン伝導性膜になれるように、強酸、好ましくはリン酸中に漬ける。
【0009】
J. Electrochem. Soc. Volume 142, No. 7, 1995, pp. L121-L123には、リン酸中にポリベンズイミダゾールをドープすることが記載されている。
【0010】
したがって、PEM燃料電池に使用されるプロトン伝導性、即ち、酸ドープされた、ポリアゾール膜は、既に知られている。さらに、ドープされた塩基性ポリアゾール膜は、ポリマー電解質膜燃料電池(PEM燃料電池)においてプロトン伝導体及びセパレーターとして作用する。
【0011】
ポリアゾールポリマーの優れた特性により、このようなポリマー電解質膜は、膜−電極ユニット(MEU)に変換されると、100℃を超える、特に120℃を超える長期間作動温度で燃料電池に使用できる。このような高い長期間作動温度により、膜−電極ユニット(MEU)中に存在する貴金属を使用した触媒の活性が向上できる。特に炭化水素の改質による生成物を使用する際には、かなりの量の一酸化炭素が改質ガス中に存在するので、一般的に、複雑なガス加工またはガス精製段階によって除去する必要がある。作動温度を上昇できると、有意により高濃度のCO不純物が長期間にわたって許容できる。
【0012】
ポリアゾールポリマーを用いたポリマー電解質膜の使用により、第一に、場合によっては、複雑なガス加工またはガス精製段階を中止することができ、さらに、第二に、膜−電極ユニットへの触媒の積載量を減らすことができる。そうしなければPEM燃料電池システムのコストが高くなりすぎるので、双方ともPEM燃料電池の大量使用には絶対必要な条件である。
【0013】
従来知られているポリアゾールを用いた酸ドープ型のポリマー膜は、好ましい特性プロフィールを示す。しかしながら、PEM燃料電池に望まれる用途によっては、特に自動車分野では及び分散力や熱発生(静止分野((stationary sector)))では、これらは全体的に改善される必要がある。さらに、従来知られているポリマー膜は、既知の乾燥方法によっては除去できない、ジメチルアセトアミド(DMAc)を高含量含んでいる。ドイツ特許出願第10109829.4号には、ポリアゾールを用い、DMAcの混入を排除したポリマー膜が記載されている。このようなポリマー膜は機械特性は改善されたものの、比導電率が0.1S/cm(140℃で)以下である。
【0014】
リン酸でドープされたこのような膜の顕著な利点としては、このシステムがそれ以外では必要である燃料の湿潤化を伴うことなく100℃を超える温度で作動できることがある。これは、「グロッタスメカニズム(Grotthus mechanism)」(K.-D. Kreuer, Chem. Mater. 1996, 8, 610-641)によって水を添加することなくリン酸がプロトンを輸送できることによる。このような水を含まない輸送メカニズムは、直接メタノール燃料電池の使用では特に有益である。ここで、使用される燃料はメタノールであり、メタノールは改質段階を先行して行なう必要なく直接酸化できる。水を含まないプロトン輸送を可能にするためには、メタノールを、「ベヒクル」メカニズム(K.-D. Kreuer, Chem. Mater. 1996, 8, 610-641)では一般的な水和シェルの形態で移動するプロトンと一緒には運ばない。直接メタノール燃料電池のパワー及び変換効率は、このメタノールの「クロスオーバー」を抑制することによって改善できる。
【0015】
100℃を超える温度で作動できることによって、燃料電池システムでの利点がさらにある。第一に、ガスにおける不純物、特にCOに対するPt触媒の感受性が、非常に抑制され、触媒活性が向上する。COは、炭化水素化合物を含む水素を多量に含むガス、例えば、天然ガス、メタノール若しくはペトロリウムスピリットの改質における副産物としてまたはメタノールの直接酸化における中間体として形成される。燃料のCO含量は、一般的に、100℃未満の温度で100ppm未満でなければならない。しかしながら、150〜200℃の温度では、10,000ppm以上のCOもまた許容できる(N.J. Bjerrum et al., Journal of Applied Electrochemistry, 2001, 31, 773-779)。これによって、上流の改質プロセスを有意に簡略化でき、これにより、全燃料電池システムのコストを下げることができる。
【0016】
集中的な方法によって製造される上記酸ドープ型のポリマー膜に加えて、塩基性ポリマーを含むポリマー電解質膜もまた、ポリリン酸から直接製造できる。これを目的としては、ドイツ特許出願第10117686.4号に記載される出発モノマーまたはドイツ特許出願第10144815.5号に記載されるプレポリマーまたはドイツ特許出願第10117687.2号に記載される不溶性の出発ポリマーを、ポリリン酸に溶解した後、乾燥、洗浄及びドープ等の次の処理を必要とせずにプロトン伝導性膜としてドクターブレードによって直接広げられる。この方法な主な利点としては、プロセスの簡略化がある。加えて、新しいタイプのポリマー電解質膜が目的とするモノマーを選択することによって良好に作製(tailor-made)できる。
【0017】
上述した材料とは別に、相当するポリマーのスルホン化方法もまた従来技術で知られている。スルホン化ポリエーテルケトン(PEK)からPEMを製造するために、PEKポリマーを、まず、適当な溶剤、例えば、濃硫酸に溶解した後、発煙硫酸またはクロロスルホン酸等の活性の高い(aggressive)スルホン化剤を添加する。このスルホン化ポリマーを、次の処理段階でスルホン化溶液から分離する。さらに処理するために、次に、次の段階で塩基性溶液によって中性塩の形態に変換しなければならない。さらに、このポリマーを溶液に戻して、次の処理段階で、ドクターブレードによってフィルム流延するまたは広げることによって、ポリマー膜を製造する。溶剤、好ましくはN−メチルピロリドンまたはN−ジメチルアセトアミドを乾燥によって蒸発させる。次に、膜は、再度酸で処理されなければならず、さらに中性になるまで洗浄する。別法としては、押し出しまたはフィルム流延によって予め製造した後、放射線グラフティングすることによって修飾したポリマー膜、例えば、スチレン修飾した部分フッ素化膜を、クロロスルホン酸及び無水溶剤、例えば、テトラクロロエタンを含むスルホン化溶液で処理してもよい(EP−A−667983、DE−A−19844645)。
【0018】
非常に強いスルホン化剤を用いたこれらのスルホン化方法では、ポリマー上の多くの場所で制御できないスルホン化が起こる。また、スルホン化によって、鎖が破断するため、機械的特性が損なわれ、その結果、燃料電池の欠損が早期に生じる。
【0019】
スルホン化ポリベンズイミダゾールもまた、既に文献で知られている。ゆえに、US−A−4634530には、100℃以下の温度範囲で硫酸または発煙硫酸等のスルホン化剤によってドープされていないポリベンズイミダゾール膜をスルホン化することが記載される。
【0020】
さらに、Staiti et al.(P. Staiti in J. Membr. Sci. 188 (2001) 71)は、スルホン化ポリベンズイミダゾールの調製及び特性を記載している。この場合、溶液中でポリマーのスルホン化は実施できなかった。PBI/DMAc溶液にスルホン化剤を添加すると、ポリマーが沈殿する。スルホン化を行なうためには、PBI膜をまず製造して、これを希硫酸に漬ける。次に、これを約475℃の温度で2分間処理して、スルホン化を行なう。スルホン化されたPBI膜は、160℃の温度での伝導性が最大でも7.5×10−5S/cmしかない。最大イオン交換能は0.12−meq/gである。このようなスルホン化PBI膜は燃料電池に使用するのには適さないことが同様に示された。
【0021】
ヒドロキシエチルで修飾されたPBIをスルトンと反応させることによるスルホアルキル化PBI膜の製造がUS−A−4997892に記載される。この技術によると、スルホプロピル化PBI膜が製造できる(Sanui et al. in Polym. Adv. Techn. 11 (2000) 544)。このような膜のプロトン伝導性は、10−3S/cmであるため、これは、0.1S/cmが求められている燃料電池に使用するには低すぎる。
【発明の開示】
【0022】
本発明の目的は、高い作動温度でさえ高い伝導性を有する高温でも安定したスルホン化ポリマー膜を提供することである。この目的は、リン酸でドープしたスルホン化ポリアゾールを有するポリマー電解質膜を提供することによって達成される。ポリアゾールのスルホン化は、ポリアゾールを製造するための重合中にまたは重合直後に適当なスルホン化剤を添加することによって行なわれる。
【0023】
本発明は、スルホン化ポリアゾールを用いたものであり、かつ
A)ポリリン酸/スルホン化剤混合物において、一以上の芳香族テトラアミノ化合物を、1つのカルボン酸モノマー当たり少なくとも2個の酸基を有する一以上の芳香族カルボン酸またはそのエステルと混合して、または一以上の芳香族および/または複素環式芳香族ジアミノカルボン酸を混合して、溶液および/または分散液を形成し、
B)段階A)の混合物を用いた層を支持体または電極に塗布し、
C)350℃以下、好ましくは280℃以下の温度で不活性ガス下で段階B)で得られるシート状構造物/層を加熱して、ポリアゾールポリマーを形成し、
D)好ましくは自立するまで、段階C)で形成した膜を処理する段階
を有する方法によって得られるプロトン伝導性ポリマー膜を提供するものである。
【0024】
本発明により使用される使用される芳香族及び複素環式芳香族テトラアミノ化合物は、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル、2,3,5,6−テトラアミノピリジン、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−テトラアミノベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルメタン及び3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルジメチルメタンならびにこれらの塩、特にこれらの一塩酸塩、二塩酸塩、三塩酸塩及び四塩酸塩誘導体である。
【0025】
段階A)で使用される芳香族カルボン酸は、特に、ジカルボン酸、トリカルボン酸及びテトラカルボン酸またはこれらのエステルまたは酸無水物である。
【0026】
同様にして、「芳香族カルボン酸」ということばは、複素環式芳香族カルボン酸を包含する。芳香族ジカルボン酸は、好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸、5−アミノイソフタル酸、5−N,N−ジメチルアミノイソフタル酸、5−N,N−ジエチルアミノイソフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、2,6−ジヒドロキシイソフタル酸、4,6−ジヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシ-フタル酸、2,4−ジヒドロキシフタル酸、3,4−ジヒドロキシフタル酸、3−フルオロフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、テトラフルオロフタル酸、テトラフルオロイソフタル酸、テトラフルオロテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン、4,4’−スチルベンジカルボン酸、4−カルボキシ桂皮酸,またはこれらのC1−C20−アルキルエステル若しくはC5−C12−アリールエステル、またはこれらの酸無水物若しくは酸塩化物である。芳香族トリカルボン酸、テトラカルボン酸またはこれらのC1−C20−アルキルエステル若しくはC5−C12−アリールエステルまたはこれらの酸無水物またはこれらの酸塩化物は、好ましくは、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、(2−カルボキシフェニル)イミノ2酢酸、3,5,3’−ビフェニルトリカルボン酸、3,5,4’−ビフェニルトリカルボン酸である。
【0027】
芳香族テトラカルボン酸またはこれらのC1−C20−アルキルエステル若しくはC5−C12−アリールエステルまたはこれらの酸無水物またはこれらの酸塩化物は、好ましくは、3,5,3’,5’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸である。
【0028】
本発明に従って使用される複素環式芳香族カルボン酸は、複素環式芳香族ジカルボン酸及びトリカルボン酸及びテトラカルボン酸またはこれらのエステルまたはこれらの無水物である。本発明を目的として、複素環式芳香族カルボン酸は、少なくとも1個の窒素、酸素、硫黄またはリン原子が芳香環に存在する芳香環システムである。ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピラジンジカルボン酸、2,4,6−ピリジントリカルボン酸、ベンズイミダゾール−5,6−ジカルボン酸、およびこれらのC1−C20−アルキルエステル若しくはC5−C12−アリールエステル、またはこれらの酸無水物またはこれらの酸塩化物が好ましい。
【0029】
(使用されるジカルボン酸に対する)トリカルボン酸またはテトラカルボン酸の含量は、0〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、特に0.5〜10モル%である。
【0030】
少なくとも2種の異なる芳香族カルボン酸の混合物が段階A)で使用されることが好ましい。芳香族カルボン酸のみでなく複素環式芳香族カルボン酸をも含む混合物を使用することが特に好ましい。複素環式芳香族カルボン酸に対する芳香族カルボン酸の混合比は、1:99〜99:1、好ましくは1:50〜50:1である。
【0031】
これらの混合物は、特に、N−複素環式芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の混合物である。下記に制限されるものではないが、例としては、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、2,6−ジヒドロキシイソフタル酸、4,6−ジヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシフタル酸、2,4−ジヒドロキシフタル酸、3,4−ジヒドロキシフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピラジンジカルボン酸がある。
【0032】
本発明に従って使用される芳香族及び複素環式芳香族ジアミノカルボン酸は、好ましくは、ジアミノ安息香酸ならびにこれらの一塩酸塩及び二塩酸塩誘導体である。
【0033】
段階A)で使用されるポリリン酸は、例えば、Riedel-de Haenから得られるような市販のポリリン酸である。ポリリン酸、Hn+23n+1(n>1)は、一般的に、P(酸定量)で算出されたアッセイが少なくとも83%である。モノマーの溶液に代えて、分散液/懸濁液を製造することも可能である。段階A)で製造された混合物は、全モノマーの合計に対するポリリン酸の重量比が、1:10,000〜10,000:1、好ましくは1:1000〜1000:1、特に1:100〜100:1である。
【0034】
段階A)で使用されるスルホン化剤は、i)濃硫酸(>95%)、ii)クロロスルホン酸、iii)SOとルイス塩基または他の有機成分との複合体、iv)アシルまたはアルキル硫酸塩、v)有機スルホン酸及びvi)i)〜v)の混合物であってもよい。
【0035】
スルホン化剤の使用量は、ポリリン酸に対して、1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%及び特に好ましくは5〜10重量%である。
【0036】
段階B)での層の形成は、ポリマー膜の製造について従来それ自体が既知の方法(キャスティング、スプレイ、ドクターブレードによる塗布)によって行なわれる。支持体としては、上記条件で不活性である全ての支持体が使用できる。粘度を調節するために、必要であれば、溶液を、リン酸(濃リン酸、85%)と混合してもよい。このようにして、粘度は、所望の値に調節でき、膜の形成がより容易に行なわれる。段階B)で製造される層は、20〜4000μm、好ましくは30〜1500μm、特に50〜500μmの厚みを有する。
【0037】
段階C)で形成されたポリアゾール系ポリマーは、一般式(I)および/または(II)および/または(III)および/または(IV)および/または(V)および/または(VI)および/または(VII)および/または(VIII)および/または(IX)および/または(X)および/または(XI)および/または(XII)および/または(XIII)および/または(XIV)および/または(XV)および/または(XVI)および/または(XVI)および/または(XVII)および/または(XVIII)および/または(XIX)および/または(XX)および/または(XXI)および/または(XXII):
【0038】
【化1】

【0039】
【化2】

【0040】
【化3】

【0041】
ただし、基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい4価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価若しくは3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい4価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価若しくは3価若しくは4価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Ar10は、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価若しくは3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Ar11は、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Xは、同一または異なるものであり、それぞれ、水素原子、1〜20炭素原子を有する基、好ましくは分岐鎖または枝なし鎖のアルキル若しくはアルコキシ基、またはアリール基を追加の基として有する酸素、硫黄またはアミノ基であり、
基Rは、同一または異なるものであり、それぞれ、水素、アルキル基または芳香族基であり、ならびに
n、mは、それぞれ、10以上、好ましくは100以上の整数である、
の繰り返しアゾール単位を有し、硫黄含量(元素分析によって測定)が2〜20重量%、特に4〜10重量%である。
【0042】
好ましい芳香族または複素環式芳香族基は、置換基を有していてもよい、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン(bisphenone)、ジフェニルスルホン、キノリン、ピリジン、ビピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ピロール、ピラゾール、アントラセン、ベンゾピロール、ベンゾトリアゾール、ベンゾキサチアジアゾール、ベンゾキサジアゾール、ベンゾピリジン、ベンゾピラジン、ベンゾピラジジン、ベンゾピリミジン、ベンゾピラジン、ベンゾトリアジン、インドリジン、キノリジン、ピリドピリジン、イミダゾピリミジン、ピラジノピリミジン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、フェノキサジン、フェントチアジン(phentothiazine)、アクリジジン(acridizine)、ベンゾプテリジン(benzopteridine)、フェナントロリン及びフェナントレン由来である。
【0043】
Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar10、Ar11は、いずれの置換パターンを有していてもよい;フェニレンの場合には、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar10、Ar11は、例えば、オルト−、メタ−またはパラ−フェニレンであってもよい。特に好ましい基は、置換基を有していてもよい、ベンゼン及びビフェニレン由来である。
【0044】
好ましいアルキル基は、1〜4炭素原子を有する短鎖のアルキル基、例えば、メチル、エチル、n−またはi−プロピル及びt−ブチル基である。
【0045】
好ましい芳香族基は、フェニルまたはナフチル基である。アルキル基及び芳香族基は、置換されていてもよい。
【0046】
好ましい置換基は、フッ素等のハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基またはメチル若しくはエチル基等の短鎖のアルキル基である。
【0047】
1つの繰り返し単位内の基Xが同一である式(I)の繰り返し単位を有するポリアゾールが好ましい。
【0048】
ポリアゾールはまた、原則として、例えば、基Xが違う異なる繰り返し単位を有するものであってもよい。しかしながら、1つの同じ基Xのみが繰り返し単位中に存在することが好ましい。
【0049】
さらに、好ましいポリアゾールポリマーとしては、ポリイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキノキサリン、ポリチアジアゾール、ポリ(ピリジン)、ポリ(ピリミジン)及びポリ(テトラアザピレン)がある。
【0050】
本発明のさらなる実施態様においては、繰り返しアゾール単位を有するポリマーは、互いに異なる式(I)〜(XXII)の少なくとも2個の繰り返し単位を有する共重合体またはブレンドである。このポリマーは、ブロック共重合体(ジブロック、トリブロック)、ランダム共重合体、周期的共重合体(periodic copolymer)、および/または交互重合体の形態を有していてもよい。
【0051】
本発明の特に好ましい実施態様においては、繰り返しアゾール単位を有するポリマーは、式(I)および/または(II)の単位のみを有するポリアゾールである。
【0052】
ポリマー中の繰り返しアゾール単位の数は、好ましくは10以上である。特に好ましいポリマーは、少なくとも100個の繰り返しアゾール単位を有する。
【0053】
本発明を目的として、繰り返しベンズイミダゾール単位を有するポリマーが好ましい。繰り返しベンズイミダゾール単位を有する非常に好ましいポリマーの例としては、下記式で表わされるものがある。
【0054】
【化4】

【0055】
【化5】

【0056】
【化6】

【0057】
ただし、n及びmは、それぞれ、10以、好ましくは100以上の整数である。
【0058】
本方法によって得られるポリアゾール、特にポリベンズイミダゾールは、高分子量を有する。固有粘度で測定した場合には、少なくとも1.4dl/gであり、ゆえに、市販のポリベンズイミダゾール(IV<1.1dl/g)より有意に高い。
【0059】
トリカルボン酸および/またはテトラカルボン酸が段階A)で得られる混合物中に存在する場合には、これらは形成されるポリマーの分枝形成/架橋を行なう。これによって、機械的特性が向上する。段階C)で製造されたポリマー層は、燃料電池に使用されるのに十分な強度を有するのに十分な温度及び時間、湿分の存在下で処理される。当該処理は、膜が、損傷を受けることなく支持体から脱離できるように自立するまで行なわれてもよい。
【0060】
本方法の一形態においては、段階A)の混合物を350℃以下、好ましくは280℃以下の温度まで加熱することによって、オリゴマーおよび/またはポリマーの形成が行なわれてもよい。選択された温度及び時間によっては、段階C)の加熱は、部分的にあるいは完全に省略されてもよい。この形態もまた本発明によって提供される。
【0061】
さらに、イソフタル酸、テレフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、4,6−ジヒドロキシイソフタル酸、2,6−ジヒドロキシイソフタル酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピラジンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸(または複素環式芳香族ジカルボン酸)を使用する際には、またはオリゴマーおよび/またはポリマーの形成を段階A)のなるべく早期にすることが望ましい場合には、段階C)における温度は、300℃以下、好ましくは100〜250℃の範囲であることが好ましいことが見出された。
【0062】
段階D)の膜の処理は、湿分または水および/または水蒸気の存在下で、0℃を超えて150℃未満の温度で、好ましくは10℃〜120℃の温度で、特に室温(20℃)〜90℃で、行なわれる。当該処理は、大気圧下で行なわれることが好ましいが、超大気圧(superatmospheric pressure)下で行なわれてもよい。処理が十分な湿分の存在下で行なわれ、その結果、存在するポリリン酸が、部分的な加水分解によって低分子量のポリリン酸および/またはリン酸を形成することによって、膜の強化に寄与することが重要である。
【0063】
段階D)でのポリリン酸の部分的な加水分解によって、膜が強化され、層の厚みが薄くなり、15〜3000μm、好ましくは20〜2000μm、特に20〜1500μmの厚みであるが、自立している層が形成できる。段階B)で形成されるポリリン酸層中に存在する分子内及び分子間構造により、段階C)で規則的な膜が形成でき、これは、形成される膜の特定の特性に関与する。
【0064】
段階D)の処理での温度の上限は、通常、150℃である。例えば、超加熱水蒸気(superheated steam)による、湿分の作用が非常に短い場合には、水蒸気は150℃より熱くてもよい。処理の時間は、温度の上限を決定する上で重要である。
【0065】
部分的な加水分解(段階D)はまた、温度及び湿度が制御されたチャンバー内で行なわれてもよく、この場合には、加水分解は所定量の湿分の存在下で所望するように制御できる。湿度は、膜と接触する環境、例えば、空気、窒素、二酸化炭素または他の適当なガス若しくは水蒸気等のガス、の温度または飽和度によって特定の値に設定してもよい。処理時間は上記選択されたパラメーターによって異なる。
【0066】
処理時間はまた、膜の厚みによっても異なる。
【0067】
通常、処理時間は、例えば、超加熱水蒸気の存在下で、数秒から数分の範囲であり、例えば、室温で比較的低い大気湿度の空気中で、丸一日以下である。処理時間は、好ましくは、10秒〜300時間、特に1分〜200時間である。
【0068】
部分的な加水分解を相対大気湿度が40〜80%である大気によって室温(20℃)で行なう場合には、処理時間は1〜200時間の範囲である。
【0069】
段階D)での水による処理はまた、リン酸が膜から完全に除去される程度まで行なわれてもよい。
【0070】
段階D)に従って得られる膜は、自立できる、即ち、損傷を受けることなく支持体から脱離でき、その後、必要であればさらに直接使用されてもよい。
【0071】
リン酸の濃度、ゆえに本発明のポリマー膜の伝導性は、加水分解の度合い、即ち、時間、温度及び大気湿度によって設定できる。本発明によると、リン酸の濃度は、ポリマーの繰り返し単位1モル当たりの酸のモルとして記載される。本発明を目的として、10〜25、特に12〜20の濃度(式(III)、即ち、ポリベンズイミダゾールの繰り返し単位1モル当たりのリン酸のモル)が好ましい。このような高いドーピング度(濃度)が、市販のオルトリン酸でポリアゾールをドープすることによって、たとえそうであるにしても、かなりの困難をもって得られる。
【0072】
段階D)による処理の後に、膜を、大気酸素の存在下での熱の作用によって表面をさらに架橋してもよい。このような膜表面の硬化によって、膜の特性がさらに改善される。
【0073】
架橋はまた、IRまたはNIR(IRは、赤外線、即ち、700nm超の波長を有する光である;NIRは、近赤外線、即ち、約700〜2000nmの波長または約0.6〜1.75eVのエネルギーを有する光である)の作用によって行なわれてもよい。別の方法としては、β−線の照射がある。照射量は、5〜200kGyの範囲である。
【0074】
本発明のポリマー膜は、従来知られているドープ型のポリマー膜に比べて、材料特性が改善されている。特に、既知のドープ型のポリマー膜に比べて、パワーの向上が示される。これは、特に、膜を湿潤化させることなく、100℃前後の温度でのプロトン伝導性が向上することによるものである。室温及び120℃での比導電率は双方とも、少なくとも0.06S/cm、好ましくは少なくとも0.08S/cm、特に少なくとも0.09S/cmである。
【0075】
用途特性をさらに改善するために、充填剤、特にプロトン伝導性充填剤、及び追加の酸をまた膜に添加してもよい。この添加は、段階A)中あるいは重合後に行なわれうる。
【0076】
下記に制限されないが、プロトン伝導性充填剤の例としては、下記がある。
【0077】
CsHSO、Fe(SO、(NHH(SO、LiHSO、NaHSO、KHSO、RbSO、LiNSO、NHHSO等の硫酸塩、
Zr(PO、Zr(HPO、HZr(PO、UOPO・3HO、HUOPO、Ce(HPO、Ti(HPO、KHPO、NaHPO、LiHPO、NHPO、CsHPO、CaHPO、MgHPO、HSbP、HSb14、HSb20等のリン酸塩、
PW1240・nHO(n=21〜29)、HSiW1240・nHO(n=21〜29)、HWO、HSbWO、HPMo1240、HSb11、HTaWO、HNbO、HTiNbO、HTiTaO、HSbTeO、HTi、HSbO、HMoO等のポリ酸、
(NHH(SeO、UOAsO、(NHH(SeO、KHAsO、CsH(SeO、RbH(SeO等の亜セレン酸塩及びヒ化物、
Al、Sb、ThO、SnO、ZrO、MoO等の酸化物、
ゼオライト、ゼオライト(NH+)、層状珪酸塩、立体網状珪酸塩、H−ソーダ沸石、H−モルデン沸石、NH−アナルシン(analcine)、NH−方ソーダ石、NH−没食子酸塩、H−モンモリロナイト等のケイ酸塩、
HClO、SbF等の酸、
カーバイド、特にSiC、Si、繊維、特にガラスファイバー、ガラス粉末および/またはポリマー繊維、好ましくはポリアゾールを用いた繊維等の充填剤。
【0078】
加えて、本膜は、パーフッ素化(perfluorinated)スルホン酸添加剤(0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜15重量%、特に好ましくは0.2〜10重量%)をさらに含んでもよい。これらの添加剤によって、カソード付近でのパワーが増加し、溶存酸素量及び酸素拡散量が増加し、さらに白金へのリン酸及びリン酸塩の吸着が抑制できる。(Electrolyte additives for phosphoric acid fuel cells. Gang, Xiao; Hjuler, H.A.; Olsen, C.; Berg, R.W.; Bjerrum, N.J. Chem. Dep. A, Tech. Univ. Denmark, Lyngby, Den. J. Electrochem. Soc. (1993), 140(4), 896-902 and Perfluorosulfonimide as an additive in phosphoric acid fuel cell. Razaq, M.; Razaq, A.; Yeager, E.; DesMarteau, Darryl, D.; Singh, S. Case Cent. Electrochem. Sci., Case West, Reserve Univ., Cleveland, OH, USA. J. Electrochem. Soc. (1989), 136(2), 385-90.)。
【0079】
下記に制限されないが、パースルホン化添加剤(persulfonated additive)の例としては、下記がある。
【0080】
トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸カリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸リチウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸アンモニウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸カリウム、ノナフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、ノナフルオロブタンスルホン酸リチウム、ノナフルオロブタンスルホン酸アンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸セシウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸トリエチルアンモニウム、パーフルオロスルホンイミド及びナフィオン(Nafion)。
【0081】
さらに、膜は、JP 2001 118591 A2に記載されるように、作動中に酸素の還元で生じる遊離パーオキシドラジカルを除去する(scavenge)(一次抗酸化剤)及び破壊する(二次抗酸化剤)ことにより、膜及び膜−電極ユニットの寿命及び安定性を向上する添加剤をさらに含むものであってもよい。このような添加剤の作用形式及び分子構造は、F. Gugumus in Plastics Additives, Hanser Verlag, 1990; N.S. Allen, M. Edge Fundamentals of Polymer Degradation and Stability, Elsevier, 1992; or H. Zweifel, Stabilization of Polymeric Materials, Springer, 1998に記載される。
【0082】
下記に制限されないが、このような添加剤の例としては、下記がある。
【0083】
ビス(トリフルオロメチル)ニトロキシド、2,2,−ジフェニル−1−ピクリニルヒドラジル、フェノール、アルキルフェノール、イルガノックス(Irganox)等の立体障害アルキルフェノール、芳香族アミン、チマソルブ(Chimassorb)等の立体障害アミン;立体障害ヒドロキシルアミン、立体障害アルキルアミン、立体障害ヒドロキシルアミン、立体障害ヒドロキシルアミンエーテル、イルガフォス(Irgafos)等のホスファイト、ニトロソベンゼン、メチル−2−ニトロソプロパン、ベンゾフェノン、ベンズアルデヒドtert−ブチルニトロン、システアミン、メラニン、酸化鉛、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト。
【0084】
本発明のドープ型のポリマー膜の使用が可能な分野としては、特に、燃料電池、電気分解、キャパシター及びバッテリーシステムでの使用がある。その性能プロフィールによって、ドープ型のポリマー膜は、燃料電池に使用されるのが好ましい。
【0085】
本発明はまた、本発明による少なくとも一のポリマー膜を有する膜−電極ユニットを提供するものである。膜−電極ユニットに関する追加の情報に関しては、専門の文献、特に特許US−A−4,191,618、US−A−4,212,714及びUS−A−4,333,805が引用されてもよい。膜−電極ユニットの構造及び製造ならびに所定の電極、ガス拡散層及び触媒に関する上記引用文献[US−A−4,191,618、US−A−4,212,714及びUS−A−4,333,805]の開示は、本明細書中に参考によって引用される。
【0086】
本発明の一つの態様としては、膜形成を、支持体ではなく電極上で直接行なえることがある。膜はもはや自立する必要がないので、段階D)による処理は、このようにして相応して短縮できる。このような膜または被覆電極がまた、本発明によって提供される。
【0087】
オリゴマーの重合/形成もまた、段階A)で起こってもよく、溶液をドクターブレートによって電極に塗布することができる。次に、段階C)は、一部または完全に省略できる。
【0088】
上記形態及び好ましい実施態様はまたこの場合にも適用できるため、ここでは繰り返し説明しない。
【0089】
段階D)で得られるコーティングの厚さは、2〜3000μm、好ましくは3〜2000μm、特に5〜1500μmである。
【0090】
このようにして被覆された電極は、必要であれば、本発明によるポリマー膜を少なくとも一つ有する膜−電極ユニット中に組み込まれてもよい。
【0091】
一般的な測定方法:
IECの測定方法
膜の伝導性は、イオン交換能(IEC)として表わされる酸基の含量によってかなり異なる。イオン交換能を測定するために、3cm直径の試料を打ち抜いて、100mlの水の入ったガラス製のビーカーに入れる。遊離した酸を、0.1M NaOHで滴定する。次に、この試料を取り出して、過剰の水を軽くたたいて除き、試料を160℃で4時間乾燥する。さらに、乾燥重量、m、を、0.1mgの精度で重量測定法で測定する。次に、イオン交換能を、下記式によって、最初の滴定の終点までの0.1M NaOHの消費量、V(ml)、及び乾燥重量、m(mg)から算出する。
【0092】
【数1】

【0093】
比導電率の測定方法
比導電率は、白金電極(ワイヤ、0.25mm直径)を用いた低電圧方式で4ポール配置した(in a 4-pole arrangement)インピーダンス分光分析(impedance spectroscopy)によって測定する。集電電極間の距離は2cmである。得られるスペクトルを、オーム抵抗及びキャパシターを平行に配置してなる簡単なモデルを用いて評価する。リン酸でドープした膜の試料断面を、試料を載せる直前に測定する。温度依存性を測定するために、測定セルをオーブン中で所望の温度にし、さらに試料のすぐそばに位置したPt−100抵抗温度計によって温度を調節する。温度が到達したら、試料をこの温度に10分間維持した後、測定を開始する。
【0094】
実施例:
in situでスルホン化されたPBI膜の調製用のストック溶液
938.6gのポリリン酸(83.4±0.5%のP)を、窒素導入口及び排出口ならびに機械的スターラーを備えた1.5Lのフラスコ内の26.948gのイソフタル酸及び34.74gの3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニルの混合物に添加した。この混合物を、120℃で2時間、150℃で3時間及び180℃で2時間、加熱した。次に、この反応溶液を、220℃に加熱して、14時間攪拌した。得られたPPAにおける5%濃度のPBI溶液(5% strength PBI solution in PPA)を、室温まで冷却し、以下のスルホン化PBI膜を製造するのに使用した。
【0095】
少量の上記溶液を、水で沈殿させた。沈殿した樹脂を濾別し、HOで3回洗浄し、水酸化アンモニウムで中和した後、HOで洗浄して、100℃で0.001バールで16時間乾燥した。固有粘度ηinhを、100mlの96%濃度のHSOにおける0.4%濃度のPBI溶液で測定したところ、1.52dl/gの値を示した。
【0096】
試料1:(PPA/1sPBI膜)
22.34gの85%濃度のリン酸及び1.66gの96%濃度の硫酸を、30分かけて220℃で、113.6%のPPAにおける上記5%濃度のPBIストック溶液100gに添加した。この溶液を220℃でさらに4時間攪拌した。得られたPPAにおけるスルホン化PBI溶液を、予め加熱しておいたドクターブレードによって220℃でガラス板に塗布した(381μm)。透明な膜が得られた。次に、この膜を室温で1日放置して、自立した膜を得た。
【0097】
試料2:(PPA/2sPBI膜)
17.24gの85%濃度のリン酸及び3.314gの96%濃度の硫酸を、30分かけて220℃で、113.6%のPPAにおける上記5%濃度のPBIストック溶液100gに添加した。この溶液を220℃でさらに4時間攪拌した。得られたPPAにおけるスルホン化PBI溶液を、予め加熱しておいたドクターブレードによって220℃でガラス板に塗布した(381μm)。透明な膜が得られた。次に、この膜を室温で1日放置した。
【0098】
試料3:(PPA/3sPBI膜)
24.76gの85%濃度のリン酸及び4.97gの96%濃度の硫酸を、30分かけて220℃で、113.6%のPPAにおける上記5%濃度のPBIストック溶液100gに添加した。この溶液を220℃でさらに4時間攪拌した。得られたPPAにおけるスルホン化PBI溶液を、予め加熱しておいたドクターブレードによって220℃でガラス板に塗布した(381μm)。透明な膜が得られた。次に、この膜を室温で1日放置した。
【0099】
試料4:(PPA/4sPBI膜)
38.89gの85%濃度のリン酸及び6.6288gの96%濃度の硫酸を、30分かけて220℃で、113.6%のPPAにおける上記5%濃度のPBIストック溶液100gに添加した。この溶液を220℃でさらに4時間攪拌した。得られた105.1%濃度のPPAにおけるスルホン化PBI溶液を、予め加熱しておいたドクターブレードによって220℃でガラス板に塗布した(381μm)。透明な膜が得られた。次に、この膜を室温で1日放置した。
【0100】
試料5:(PPA/6sPBI膜)
41.22gの85%濃度のリン酸、19.333gの115%濃度のポリリン酸及び9.943gの96%濃度の硫酸を、30分かけて220℃で、113.6%のPPAにおける上記5%濃度のPBIストック溶液100gに添加した。この溶液を220℃でさらに4時間攪拌した。得られたPPAにおけるスルホン化PBI溶液を、予め加熱しておいたドクターブレードによって220℃でガラス板に塗布した(381μm)。透明な膜が得られた。次に、この膜を室温で1日放置した。
【0101】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン化ポリアゾールを用いたものであり、かつ
A)ポリリン酸/スルホン化剤混合物において、一以上の芳香族テトラアミノ化合物を、1つのカルボン酸モノマー当たり少なくとも2個の酸基を有する一以上の芳香族カルボン酸またはそのエステルと混合して、または一以上の芳香族および/または複素環式芳香族ジアミノカルボン酸を混合して、溶液および/または分散液を形成し、
B)段階A)の混合物を用いた層を支持体または電極に塗布し、
C)350℃以下、好ましくは280℃以下の温度で不活性ガス下で段階B)で得られるシート状構造物/層を加熱して、ポリアゾールポリマーを形成し、
D)段階C)で形成した膜を処理する段階
を有する方法によって得られるプロトン伝導性ポリマー膜。
【請求項2】
使用される芳香族テトラアミノ化合物は、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル、2,3,5,6−テトラアミノピリジン、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−テトラアミノベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルメタン及び3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルジメチルメタンである、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
使用される芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸、5−アミノイソフタル酸、5−N,N−ジメチルアミノイソフタル酸、5−N,N−ジエチルアミノイソフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、2,5−ジヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシフタル酸、2,4−ジヒドロキシフタル酸、3,4−ジヒドロキシ-フタル酸、3−フルオロフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、テトラフルオロフタル酸、テトラフルオロイソフタル酸、テトラフルオロテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−スチルベンジカルボン酸、4−カルボキシ桂皮酸、またはこれらのC1−C20−アルキルエステル若しくはC5−C12−アリールエステル、またはこれらの酸無水物若しくは酸塩化物である、請求項1に記載の膜。
【請求項4】
使用される芳香族カルボン酸は、トリカルボン酸、テトラカルボン酸またはこれらのC1−C20−アルキルエステル若しくはC5−C12−アリールエステルまたはこれらの酸無水物またはこれらの酸塩化物、好ましくは1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸);1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸);(2−カルボキシフェニル)イミノ2酢酸、3,5,3’−ビフェニルトリカルボン酸;3,5,4’−ビフェニルトリカルボン酸および/または2,4,6−ピリジントリカルボン酸である、請求項1に記載の膜。
【請求項5】
使用される芳香族カルボン酸は、テトラカルボン酸、これらのC1−C20−アルキルエステル若しくはC5−C12−アリールエステルまたはこれらの酸無水物またはこれらの酸塩化物、好ましくはベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸;ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、3,5,3’,5’−ビフェニルテトラカルボン酸;ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸である、請求項1に記載の膜。
【請求項6】
(使用されるジカルボン酸に対する)トリカルボン酸またはテトラカルボン酸の含量が、0〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、特に0.5〜10モル%である、請求項4に記載の膜。
【請求項7】
使用される複素環式芳香族カルボン酸は、少なくとも1個の窒素、酸素、硫黄またはリン原子が芳香族環中に存在する複素環式芳香族ジカルボン酸及びトリカルボン酸及びテトラカルボン酸、好ましくはピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピラジンジカルボン酸、2,4,6−ピリジントリカルボン酸、ベンズイミダゾール−5,6−ジカルボン酸、及びこれらのC1−C20−アルキルエステル若しくはC5−C12−アリールエステル、またはこれらの酸無水物またはこれらの酸塩化物である、請求項1に記載の膜。
【請求項8】
段階A)で使用されるスルホン化剤は、i)濃硫酸(>95%)、ii)クロロスルホン酸、iii)SOとルイス塩基または他の有機成分との複合体、iv)アシルまたはアルキル硫酸塩、v)有機スルホン酸及びvi)i)〜v)の混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の膜。
【請求項9】
使用される芳香族及び複素環式芳香族ジアミノカルボン酸は、ジアミノ安息香酸ならびにこれの一塩酸塩及び二塩酸塩誘導体である、請求項1に記載の膜。
【請求項10】
(酸定量)で算出されたアッセイが少なくとも83%であるポリリン酸が段階A)で使用される、請求項1に記載の膜。
【請求項11】
一般式(I)および/または(II)および/または(III)および/または(IV)および/または(V)および/または(VI)および/または(VII)および/または(VIII)および/または(IX)および/または(X)および/または(XI)および/または(XII)および/または(XIII)および/または(XIV)および/または(XV)および/または(XVI)および/または(XVI)および/または(XVII)および/または(XVIII)および/または(XIX)および/または(XX)および/または(XXI)および/または(XXII):
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

ただし、基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい4価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価若しくは3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい4価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価若しくは3価若しくは4価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Ar10は、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価若しくは3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Ar11は、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Xは、同一または異なるものであり、それぞれ、水素原子、1〜20炭素原子を有する基、好ましくは分岐鎖または枝なし鎖のアルキル若しくはアルコキシ基、またはアリール基を追加の基として有する酸素、硫黄またはアミノ基であり、
基Rは、同一または異なるものであり、それぞれ、水素、アルキル基または芳香族基であり、ならびに
n、mは、それぞれ、10以上、好ましくは100以上の整数である、
の繰り返しアゾール単位を有し、硫黄含量(元素分析によって測定)が2〜20重量%であるポリマーが、段階C)で形成される、請求項1に記載の膜。
【請求項12】
粘度が段階A)の後であってかつ段階B)の前にリン酸の添加によって調節される、請求項1に記載の膜。
【請求項13】
段階C)に従って製造される膜が、該膜が自立して(self-support)おり、損傷を受けることなく支持体から脱離できるまでの温度及び時間、湿分の存在下で処理される、請求項1に記載の膜。
【請求項14】
段階D)における膜の処理が、湿分または水および/または水蒸気の存在下で、0℃を超えて150℃以下の温度で、好ましくは10℃〜120℃の温度で、特に室温(20℃)〜90℃で、行なわれる、請求項1に記載の膜。
【請求項15】
電極が段階B)での支持体として選択され、段階D)による処理が形成される膜がもはや自立できないような処理である、請求項1に記載の膜。
【請求項16】
スルホン化ポリアゾールを用いたものであり、かつ
A)ポリリン酸において、一以上の芳香族テトラアミノ化合物を、1つのカルボン酸モノマー当たり少なくとも2個のカルボン酸基及び1個スルホン酸基を有する一以上の芳香族スルホカルボン酸またはそのエステルと混合して、または一以上の芳香族および/または複素環式芳香族スルホン化ジアミノカルボン酸を混合して、溶液および/または分散液を形成し、
B)段階A)の混合物を用いた層を電極に塗布し、
C)350℃以下、好ましくは280℃以下の温度で不活性ガス下で段階B)に従って得られるシート状構造物/層を加熱して、ポリアゾールポリマーを形成し、
D)段階C)で形成した膜を処理する段階
を有する方法によって得られるプロトン伝導性ポリマー被膜を用いて提供される電極。
【請求項17】
少なくとも1つの電極及び請求項1〜15のいずれかに記載の少なくとも1つの膜を有する膜−電極ユニット。
【請求項18】
請求項17に記載の少なくとも1つの電極及び請求項1〜15のいずれかに記載の少なくとも1つの膜を有する膜−電極ユニット。
【請求項19】
請求項17または18に記載の1以上の膜−電極ユニットを有する燃料電池。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンズイミダゾール繰り返し単位を有するポリマーに基づくスルホン化ポリマーを用いたものであり、かつ
A)ポリリン酸/スルホン化剤混合物において、一以上の芳香族テトラアミノ化合物を、1つのカルボン酸モノマー当たり少なくとも2個の酸基を有する一以上の芳香族カルボン酸またはそのエステルと混合して、または一以上の芳香族および/または複素環式芳香族ジアミノカルボン酸を混合して、溶液および/または分散液を形成し、
B)段階A)の混合物を用いた層を支持体または電極に塗布し、
C)350℃以下、好ましくは280℃以下の温度で不活性ガス下で段階B)で得られたシート状構造物/層を加熱して、ポリアゾールポリマーを形成し、
D)段階C)で形成したポリマー層を、膜が自立し、損傷を受けることなく支持体から脱離できるまでの温度及び時間、湿分の存在下で処理する段階
を有する方法によって得られるプロトン伝導性ポリマー膜。
【請求項2】
使用される芳香族テトラアミノ化合物は、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル、2,3,5,6−テトラアミノピリジン、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−テトラアミノベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルメタン及び3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルジメチルメタンである、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
使用される芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸、5−アミノイソフタル酸、5−N,N−ジメチルアミノイソフタル酸、5−N,N−ジエチルアミノイソフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、2,5−ジヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシフタル酸、2,4−ジヒドロキシフタル酸、3,4−ジヒドロキシ-フタル酸、3−フルオロフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、テトラフルオロフタル酸、テトラフルオロイソフタル酸、テトラフルオロテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−スチルベンジカルボン酸、4−カルボキシ桂皮酸、またはこれらのC1−C20−アルキルエステル若しくはC5−C12−アリールエステル、またはこれらの酸無水物若しくは酸塩化物である、請求項1に記載の膜。
【請求項4】
使用される芳香族カルボン酸は、トリカルボン酸、テトラカルボン酸またはこれらのC1−C20−アルキルエステル若しくはC5−C12−アリールエステルまたはこれらの酸無水物またはこれらの酸塩化物、好ましくは1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸);1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸);(2−カルボキシフェニル)イミノ2酢酸、3,5,3’−ビフェニルトリカルボン酸;3,5,4’−ビフェニルトリカルボン酸および/または2,4,6−ピリジントリカルボン酸である、請求項1に記載の膜。
【請求項5】
使用される芳香族カルボン酸は、テトラカルボン酸、これらのC1−C20−アルキルエステル若しくはC5−C12−アリールエステルまたはこれらの酸無水物またはこれらの酸塩化物、好ましくはベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸;ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、3,5,3’,5’−ビフェニルテトラカルボン酸;ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸である、請求項1に記載の膜。
【請求項6】
(使用されるジカルボン酸に対する)トリカルボン酸またはテトラカルボン酸の含量が、0〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、特に0.5〜10モル%である、請求項4に記載の膜。
【請求項7】
使用される複素環式芳香族カルボン酸は、少なくとも1個の窒素、酸素、硫黄またはリン原子が芳香族環中に存在する複素環式芳香族ジカルボン酸及びトリカルボン酸及びテトラカルボン酸、好ましくはピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピラジンジカルボン酸、2,4,6−ピリジントリカルボン酸、ベンズイミダゾール−5,6−ジカルボン酸、及びこれらのC1−C20−アルキルエステル若しくはC5−C12−アリールエステル、またはこれらの酸無水物またはこれらの酸塩化物である、請求項1に記載の膜。
【請求項8】
段階A)で使用されるスルホン化剤は、i)濃硫酸(>95%)、ii)クロロスルホン酸、iii)SOとルイス塩基または他の有機成分との複合体、iv)アシルまたはアルキル硫酸塩、v)有機スルホン酸及びvi)i)〜v)の混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の膜。
【請求項9】
使用される芳香族及び複素環式芳香族ジアミノカルボン酸は、ジアミノ安息香酸ならびにこれの一塩酸塩及び二塩酸塩誘導体である、請求項1に記載の膜。
【請求項10】
(酸定量)で算出されたアッセイが少なくとも83%であるポリリン酸が段階A)で使用される、請求項1に記載の膜。
【請求項11】
一般式(I)および/または(II)および/または(III)および/または(IV)および/または(V)および/または(VI)および/または(VII)および/または(VIII)および/または(IX)および/または(X)および/または(XI)および/または(XII)および/または(XIII)および/または(XIV)および/または(XV)および/または(XVI)および/または(XVI)および/または(XVII)および/または(XVIII)および/または(XIX)および/または(XX)および/または(XXI)および/または(XXII):
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

ただし、基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい4価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価若しくは3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい4価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Arは、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価若しくは3価若しくは4価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Ar10は、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価若しくは3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Ar11は、同一または異なるものであり、それぞれ、単環若しくは多環であってもよい2価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
基Xは、同一または異なるものであり、それぞれ、水素原子、1〜20炭素原子を有する基、好ましくは分岐鎖または枝なし鎖のアルキル若しくはアルコキシ基、またはアリール基を追加の基として有する酸素、硫黄またはアミノ基であり、
基Rは、同一または異なるものであり、それぞれ、水素、アルキル基または芳香族基であり、ならびに
n、mは、それぞれ、10以上、好ましくは100以上の整数である、
【化5】

ただし、基Rは、同一または異なるものであり、それぞれ、アルキル基または芳香族基であり、ならびに
nは、10以上、好ましくは100以上の整数である、
の繰り返しベンズイミダゾール繰り返し単位を有するポリマーに基づき、硫黄含量(元素分析によって測定)が2〜20重量%であるポリマーが、段階C)で形成される、請求項1に記載の膜。
【請求項12】
粘度が段階A)の後であってかつ段階B)の前にリン酸の添加によって調節される、請求項1に記載の膜。
【請求項13】
段階D)における膜の処理が、湿分または水および/または水蒸気の存在下で、0℃を超えて150℃以下の温度で、好ましくは10℃〜120℃の温度で、特に室温(20℃)〜90℃で、行なわれる、請求項1に記載の膜。
【請求項14】
電極が段階B)での支持体として選択され、段階D)による処理が形成される膜がもはや自立できないような処理である、請求項1に記載の膜。
【請求項15】
ベンズイミダゾール繰り返し単位を有するポリマーを用いたものであり、かつ
A)ポリリン酸において、一以上の芳香族テトラアミノ化合物を、1つのカルボン酸モノマー当たり少なくとも2個のカルボン酸基及び1個スルホン酸基を有する一以上の芳香族スルホカルボン酸またはそのエステルと混合して、または一以上の芳香族および/または複素環式芳香族スルホン化ジアミノカルボン酸を混合して、溶液および/または分散液を形成し、
B)段階A)の混合物を用いた層を電極に塗布し、
C)350℃以下、好ましくは280℃以下の温度で不活性ガス下で段階B)に従って得られたシート状構造物/層を加熱して、ポリアゾールポリマーを形成し、
D)段階C)で形成したポリマー層を、燃料電池に使用するのに十分な強度を有するのに十分な温度及び時間、湿分の存在下で処理する段階
を有する方法によって得られるプロトン伝導性ポリマー被膜を用いて提供される電極。
【請求項16】
少なくとも1つの電極及び請求項1〜14のいずれかに記載の少なくとも1つの膜を有する膜−電極ユニット。
【請求項17】
請求項16に記載の少なくとも1つの電極及び請求項1〜14のいずれかに記載の少なくとも1つの膜を有する膜−電極ユニット。
【請求項18】
請求項16または17に記載の1以上の膜−電極ユニットを有する燃料電池。

【公表番号】特表2006−507372(P2006−507372A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−516602(P2004−516602)
【出願日】平成15年6月14日(2003.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2003/006308
【国際公開番号】WO2004/003061
【国際公開日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(505009737)ピーイーエムイーエーエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】