説明

プロファイル作成プロファイル作成装置、プロファイルにより色変換を行う画像処理装置およびプログラム

【課題】入力色空間(入力色域)を出力手段の出力色空間(出力色域)に変換する色変換テーブル作成方法において、入力色空間の明度と彩度の階調性を維持しつつ、良好な色再現を実現することを目的とする。
【解決手段】
入力色域を出力色域に圧縮する場合に、紙白の明度と所定の色相における出力色域の最大彩度の明度との差分値から、明度差が所定の閾値を下回る場合には、出力色域の最大彩度の明度以下に圧縮収束点を設定する。これにより、入力の彩度方向の階調の低下を抑制し、良好な色再現を実現するように、出力色域に入力色域を圧縮することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロファイル作成方法、プロファイル作成装置、プロファイルにより色変換を行う画像処理装置および画像処理システムに関し、詳しくは、入力デバイスの色域を出力デバイスの色域へ変換するガマットマッピングをする色処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやイメージスキャナなどのデジタル機器が普及し、デジタル画像を手軽に得ることができるようになった。そして、これらのデジタル画像をモニタに表示して、画像の確認や加工を行い、インクジェットプリンタなどで出力する機会が増えた。しかし、一般に、モニタやプリンタなどの種々の画像機器は、色域(表現可能な色彩の範囲)が異なっている。例えば、モニタでは表現可能であるが、プリンタでは表現不可能な色彩や、その逆の色彩が存在している。このため、モニタでは表現可能であるが、プリンタでは表現不可能な色をプリンタで表現可能な色に置き換える(色域の圧縮)必要がある。同様に、スキャナやデジタルカメラにより入力される画像の色域が、モニタやプリンタにより出力される色域と相違している場合には、入力画像データの色域を、出力画像データの色域に変換する必要がある。
【0003】
この色域の圧縮は、カラー管理を行うカラープロファイルによって実施されている。一般的には、例えば、業界標準として広く普及しているInternational Color Consortium(ICC)により提唱されるカラープロファイルが有名であるが、各プリンタ会社による独自のカラープロファイル(カラー管理)においても、実施されている。また、近年、測色器内蔵プリンタの出現により、プリンタユーザが独自に色々な追記用紙に対するカラープロファイルを自動生成する技術の要求が高まっている。
【0004】
上記のカラープロファイルに使われる色域の圧縮は、CIELab空間などのデバイスに依存しない色空間内で行われるのが一般的で、明度維持型、測色的色差最小型、彩度維持型などと呼ばれる方法がある。明度維持型は、入力の明度と色相が維持されるので、画像の立体感が保たれるため、自然画像などに向いている。測色的色差最小型では、入力と出力の共通の色域はそのまま表現し、非共通の色域は、出力の色域表面に対応付けられるため、入力画像データを測色的に忠実に再現することができるので、カラープルーフに向いている。また、彩度維持型であれば、彩度が高く保たれるため、コンピュータグラフィックスやポスターなどの出力に向いている。
【0005】
しかしながら、明度維持型は、圧縮される入力色域の形状によっては彩度が著しく低下し、出力される画像が不自然だと感じてしまい、彩度重視型は、明度方向の階調性が損なわれてしまう。
【0006】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1では、入力色域と出力色域の相似度合を検出し、色域圧縮の方法を切り替える方法が提案されている。図8は、入力色域と出力色域とをCIE−L*a*b*色空間で表し、その明度−色相面を特定の色相について示した例である。色相は色差成分a*b*の比により定義され、明度軸L*に直交する成分は彩度となるので、色相面は、L*a*b*色空間において、ある特定の色相での明度L*と彩度cとの関係を示している。図8(a)に示すように、入力色域の最大彩度における明度L1と、出力色域の最大彩度における明度L2との明度差が小さい場合には、入力色域と出力色域が相似形であると判断し、明度を維持して彩度のみを圧縮する。一方、図8(b)に示すように、前記L1とL2の明度差が大きい場合には、相似形でないと判断し、明度と彩度の双方を圧縮する。このように、入力色域と出力色域の形状に合わせた色域変換を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−219062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の技術では、入力と出力の色域が相似形である場合には、明度を維持して圧縮を行っている。この場合に、出力色域の最高明度Lw(紙白)と最大彩度における明度L2との明度差があまりない場合には、最大彩度より高い明度領域では、同一明度における入出力の彩度の差が大きい。このため、図8(c)に示すように、明度を維持するためにおおむね彩度軸に沿って入力色域から出力色域へのマッピングを行うプロファイルを用いて色域変換を行うと、彩度方向の階調が低下してしまうという課題がある。
【0009】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、入力色域と出力色域が相似形であり、かつ、同一明度における出力色域の彩度と入力色域の彩度との差が大きい場合であっても、彩度の再現性を維持した良好な色域変換を行えるプロファイルを作成するプロファイル作成方法、プロファイル作成装置、当該プロファイルにより色変換を行う画像処理装置および画像処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための一手法として、本発明は以下の特徴を備える。すなわち、
第1の色空間から、該第1の色空間とは異なる第2の色空間への色変換を定義したプロファイルを作成するプロファイル作成装置であって、
前記第2の色空間を標準色空間と対応付けた第2の色域情報を取得する色域情報の取得手段と、
着目した色相ごとに、前記第2の色空間の、前記標準色空間における最大の彩度に対応する色の明度と前記第2の色空間の最大の明度との差を、所定の閾値と比較する手段と、
前記閾値の方が大きい場合、前記最大の彩度に対応する明度よりも明度の大きい前記第1の色空間における色を、前記最大の彩度に対応する明度よりも小さい明度軸上の点を焦点として前記第2の色空間に色域圧縮してプロファイルを作成するプロファイル作成手段とを備え。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、入力色域を出力色域に圧縮後も、入力色域における階調性を維持しつつ、良好な色再現を実現することが可能となる。
【0012】
加えて、カラープロファイルの自動生成に実施することによって、適切な明度維持型、彩度維持型なカラープロファイルを簡単に作成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】画像処理装置の構成例を示す図である。
【図3】印刷設定をするためのメニュー画面の一例を示した図である。
【図4】図2に示した画像処理装置においてなされる処理の概略を示すフローチャートである。
【図5】本発明の色変換テーブルの作成処理を示すフローチャートである。
【図6】出力色域をL*a*b*空間における所定の色相角θにて切断した図である。
【図7】本発明の色域圧縮方法を説明する図である。
【図8】従来の色域の圧縮方法を説明する図である。
【図9】本発明による色域の圧縮結果の概念図である。
【図10】ICCプロファイルを利用した、カラーマネージメントシステムの概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明による色域圧縮を用いたプリンタ装置及びシステムを実施形態として説明する。プリンタ装置は一例であって、出力色域を特定できさえすれば表示装置などそのほかの出力装置に対しても適用できるし、プリンタ装置についても、インクジェットや電子写真など様々な印刷方式に対して適用可能である。
【0015】
<プリンタシステムの構成>
図1は、本実施形態を説明する上での全体のシステム構成の例を示したものである。ホストコンピュータ100は、CPU101、メモリ102、外部記憶103、操作部104、インターフェース105、表示部106、画像処理部107、出力デバイス108、測色器109を備えている。CPU101は、メモリ102に格納されたデータやプログラムを用いて、後述する画像処理を行う。本実施形態に係るプロファイル作成装置を実現するプログラムや必要なデータは、外部記憶103であるハードディスク等に格納され、必要に応じてメモリ102にロードされる。画像処理部107は、本実施形態による色域圧縮を行うところであり、色圧縮を行って入力色域を出力色域に変換するためのカラープロファイル生成を生成する。そこでの処理内容については、後述する。画像処理部107は、CPU101により後述する図4、図5等に示す手順のプログラムを実行することで実現することもできる。ユーザインタフェースとなる(以下、UIと呼ぶ)操作部104は、ユーザによる指示やパラメータ等の入力を受け付ける。操作部104は、キーボードやマウス等の入力I/F機器等からなる。表示部106は、本実施形態での工程を指示する画面、処理経過や結果を表示するモニタ等の表示装置を示す。また、ホストコンピュータ100は、インターフェース105を介して、出力デバイス108、測色器109と接続されている。出力デバイス108は、インクジェットプリンタ、熱転写プリンタ、ドットプリンタ等で、画像を出力する。測色器109は、出力デバイス108で印字された、所定色のカラーパッチを配したパッチチャートの各パッチ部を測色し、その結果を外部記憶部103に設けた図2の出力色域記憶部204に管理格納する。測色された色は、デバイスに依存していない標準色空間(本実施形態ではたとえばCIE−L*a*b*色空間)で表され、各パッチの出力画像データと関連付けて格納される。これを出力色域情報(第2の色域情報)と呼ぶ。もちろん逆にデバイス依存色空間の格子点に、その色の標準色空間における値を関連付けた情報として実現することもできる。出力画像データは、通常の印刷では出力色域に変換されたRGB等の画像データであるが、プロファイル作成のためのパッチチャートについては、標準色空間における出力デバイスの出力色域を特定するため、色域変換は行われない。なお、出力デバイスごとに、用紙の種類や印刷品などの印刷設定等に応じて出力色域が変化するので、それら印刷設定に応じて出力色域情報は作成され、保存される。ホストコンピュータ100は、出力デバイス108、測色器109の制御に関して各種の情報及びデータの送受信を行なう。これらの制御は、外部記憶103に格納されたソフトウェアをメモリ102及びCPU101によって実行される。本実施形態では、測色器109が出力デバイス108と別体の構成をとっているが、出力デバイス108が測色器109を内蔵する測色器内蔵出力デバイスの構成をとっても同じ効果を得られる。
【0016】
出力デバイス108は、たとえば入力RGBデータを出力RGBデータに変換し、色剤の色データ(たとえばYMCK)に変換して、画像形成部で画像を印刷する。
【0017】
<印刷におけるカラー処理部の構成>
図2は、本実施形態での印刷におけるカラー処理部の構成を、カラープロファイルを生成する画像処理部107と共に示した図である。カラー処理部とは、出力デバイス108において色変換等のカラー処理を行う部分である。本実施形態では、カラー処理部は出力デバイスに実装されているものとして説明するが、もちろんコンピュータ100に備えられていてもよい。その場合には、出力デバイスの出力色域に圧縮されたRGBデータを出力デバイスに出力してもよいし、インク色に変換された画像データを出力デバイスに出力してもよい。図2では、RGBの輝度信号で表現されるRGB画像データがホストコンピュータ100のプリンタドライバ出力デバイス108に転送され、出力デバイス108内で色変換等の処理を行った後、印字される。本例では、出力対象の画像データは、たとえばホストコンピュータ上で所望のアプリケーションソフトで作成した画像又は文書またはスキャナやカメラで撮影された画像データであり、ユーザ等の指示に従い、アプリケーションプログラムなどから出力されてプリンタドライバを介して出力デバイス108で印刷される。
【0018】
印刷設定部201はプリンタドライバの提供する位置機能であり、印字する用紙の設定、印刷画像の目的設定、印刷画質の設定などをユーザの指定に応じて印刷設定として記憶する。用紙の種類は、例えば、光沢紙、コート紙、普通紙など印字する用紙の種類を選択する。印刷画像の目的は、ポートレート写真、風景写真、色差最小、鮮やかさ優先等の選択設定を同様に行う。印刷画像の画質設定においては、画質優先、スピード優先などの設定を行う。例えばインクジェットプリンタの例では、この設定でマルチパス印字のパス数を切り替えたり、ヘッドのキャリッジスピード、画像の解像度等を変えて制御する為の設定が行われる。これらの印刷設定は、色変換の明度優先または再度優先等の優先属性(本例では印刷目的とも呼ぶ)の指定と組み合わせて、色変換テーブルを選択するためのパラメータとなる。すなわち、色変換テーブルは、印刷設定と優先属性とに対応付けて作成され、保存されており、指定された印刷設定およ優先属性に応じた色変換テーブルが作成されて色変換に用いられる。
【0019】
画像処理部107は、本実施形態における、プロファイル作成処理、すなわち本例においては色変換を定義した色変換テーブル作成処理を含む画像処理を行う。入力色域記憶部203は、表示部106のディスプレイや入力デバイスなどの色域に関する情報を記憶している。出力色域記憶部204は、出力デバイス108の色域に関する情報を記憶している。それぞれの色域記憶部に記憶されている色域情報は、たとえば標準色空間であるL*a*b*色空間における所定の格子点に、その格子点のL*a*b*値で表される色に相当する入力色空間(第1の色空間)及び出力色空間(第2の色空間)それぞれにおける値(例えばRGB値)が、その格子点に関連付けられて格納されたテーブルで表される。格子点以外の色は、たとえば近傍4格子点の線形補間で得られる。入力色域に関しては、たとえば入出力デバイスのベンダにより提供された情報であってもよいし、予め標準色空間における値がわかっているカラーチャートを読み込んで出力される画像データから得たデータでもよい。出力色域に関しては、本例では、用紙種類や印刷品に等の印刷設定に応じて測定された出力色域情報が保存されている。出力色域情報は、出力デバイスにより所定色のパッチを含むカラーチャートを出力し、その標準色空間における色をセンサで検出することで作成できる。また、色変換テーブル作成部205は、入力色域記憶部203、出力色域記憶部204、印刷設定部201の情報に基づいて、色変換テーブル記憶部206に記憶する為の色変換テーブルを生成する。色変換テーブルは、入力画像データを出力画像データに色域変換するためのテーブルである。これらの手段からなる画像処理部107の具体的な実施例については、後述する。
【0020】
色変換テーブル記憶部206には、用紙の種類、印刷目的、印字画質の組み合わせといった印刷設定および優先属性とをパラメータとして、その値に応じた複数の色変換テーブルが格納されている。これら変換テーブルは、用紙の種類、印刷目的、印字画質の組み合わせ及び優先される属性に応じて用紙上に記録されるカラー画の色変換を行うためのテーブルである。パラメータ値に応じて、色変換テーブル記憶部206から出力デバイス108の色変換処理部207に変換テーブルが設定され、色変換に供される。
【0021】
色変換処理部207は、パラメータに応じて選択された色変換テーブルを用いて、3次元ルックアップテーブル処理によって色変換処理を行う。本実施形態では、色変換テーブルの各エントリは、入力RGB画像データに対応付けられた出力RGB各信号8ビットの画像データから構成されている。この色変換テーブルは、各色15カウント刻みの格子点数17、すなわち17×17×17の格子から構成されている。そのため色変換処理部107では、入力画像データであるRGBデータから、出力画像データであるRGBデータ(R'G'B')に変換される。一般にプリンタの出力色域は入力デバイスの入力色域により狭く、その全範囲がカバーされていないため、色域を圧縮する必要がある。
【0022】
インク色展開テーブル記憶部208は、印刷用紙の種類、印字画質の組み合わせに応じたRGBデータをCMYKのインク色に展開する為の複数のインク色展開テーブルが格納されている。印刷設定部201で設定した用紙の種類、印字画質に対応したインク色展開テーブルを、インク色展開処理209用のパラメータに変換し、インターフェース105を介して、出力デバイス108内のインク色展開処理209に設定する。インク色展開処理209も3次元ルックアップテーブル処理によって行なう。ここでも色変換処理207と同様に各色15値刻みの17格子点数からなる。RGB画像データの処理すなわち色変換処理は、たとえばプリンタ等の出力デバイス108により実施される。なお、色変換テーブルの作成は本例ではプリンタドライバで行う。また色変換処理は、出力デバイス(プリンタ)で行われるので、作成された色変換テーブルはプリンタドライバにより出力デバイスに送信される。
【0023】
プリンタに送られたRGB画像データは、色変換処理207によってカラーマッチングを行い、デバイス固有のR'G'B'データに変換され、その後インク色展開処理209によってインクに対応したCMYKデータに変換される。そしてこの後、不図示ではあるが公知技術によるハーフトーニング処理、印刷制御処理が行われ印刷される。
【0024】
またここでは説明簡単化のため、出力装置で用いる色材をCMYKの4種類としたが、もちろんこの限りではない。たとえば、そのほかのインクとして、CMの淡インクを加えた6種類のインク、更にRGBインク、グレイインク等を加えた10種類のインクによるインク色展開においても同様である。
【0025】
<印刷処理手順>
図4は、本実施形態による印刷工程を示すステップチャートであり、対象とする印刷データを印刷条件を設定する工程から印刷する工程までを表している。S401−S403はホストコンピュータによる工程であり、S404は出力デバイスにより実行される。
【0026】
ステップS401は、印刷条件情報の設定であり、図3の印刷設定30によって、印刷する為の条件を決める。図3は、印刷設定をするためのメニュー画面30の一例を示す図である。フィールド31では、入力画像データの色空間を選択する。画像から取得が選択された場合は、画像データのヘッダなどを調べることで、入力画像データの色空間を特定する。フィールド32で、ユーザは使用する記録媒体(例えば、光沢紙、普通紙、マット紙等)の種類を設定する。フィールド33で、印刷品質(例えば、最高、きれい、速い等)を設定し、フィールド34で、印刷目的(例えば、カラー写真(風景)、カラー写真(人物)、鮮やかさ優先(彩度優先)、色補正なし等)を設定する。なお本例では彩度優先でなければ明度優先とし、「色差最小」という選択肢も含まれている。 上記各条件の選択設定が完了した場合は、フィールド35のOKをクリックすることによって、入力が完了し、選択された各種設定値を保存して次の工程に進む。また不図示ではあるが前の工程に戻りたい場合は、フィールド36のキャンセルをクリックする。
【0027】
ステップS402は、印刷条件情報に基づいて、色変換テーブル生成を行う必要性を判断する工程である。印刷設定手段201において入出力条件が設定されると、設定された入出力条件をパラメータとして対応する色変換テーブルが作成済みで、変換テーブル記憶手段206に記憶されているかを判定し、作成済みであれば、色変換テーブル生成が必要ないと判断する。そしてステップS404の印刷工程に進む。一方、入出力条件に対応する色変換テーブルが未作成で色変換記憶手段201に該当する色変換テーブルが格納されていない場合は、生成の必要があると判断しステップS403に進む。
【0028】
ステップS403では、色変換テーブル生成を行う工程であり、表示部106、操作部104によって必要な情報が入力され、生成される。生成方法は、後述図5を用いて説明する。パラメータに対応した色変換テーブルおよびインク色展開テーブルは出力デバイス108に送信され、それぞれ色変換処理207、インク色展開処理209に設定される。すなわち所定の記憶箇所に記憶される。
【0029】
ステップS404は、出力デバイス108により実行される印刷工程であり、印刷設定手段201で設定されたパラメータに対応したカラー処理が実行される。その後、ハーフトーン処理、印字制御処理を介して印刷される。
【0030】
<色変換テーブルの作成手順>
ステップS403の色変換テーブル生成を行う工程の詳細を、以下に図5のステップチャートで説明する。なおこの手順ではカラーチャートを印刷して測色し、出力色域情報を生成する工程も含まれるが、予め保存されているなら、S501−S502は行わなくともよい。
【0031】
ステップS501は、出力色域情報を取得する為に複数のパッチ部からなるパッチチャートを印刷する工程である。パッチチャートは、図2の色変換処理207での格子点のRGB値に対応した15値間隔の各17諧調からなる17×17×17=4913パッチ部からなるパッチチャートである。該パッチチャートは、予め図1の外部記憶103に格納されており、ホストコンピュータ100上でのプログラムによって印刷される。図2のRGB画像データは、前記パッチチャートに該当する。色変換処理207では、入出力で値が変わらない処理がなされる。すなわちカラーマッチングの為の色変換処理207を行わず、デバイスRGB値に対する色再現情報を取得するためである。インク色展開処理208では、予め新規メディア追加作成用に作られた複数の吐出量制限インク色展開テーブルの中から適切なテーブルが選択設定される。インク色展開処理後、不図示ではあるが、ハーフトーニング処理、印刷制御処理を介して印刷される。
【0032】
ステップS502は、印刷されたパッチチャートのチャート部を図1の測色器109で測色する工程である。測色器109での測色値はI/F105を介して外部記憶部103に入力RGB値とそのパッチ部の測色値(L*a*b*)が対応された形で格納管理される。次に、格納された測色値を印刷設定手段201によって設定された入力空間に基づいて以下の2つの出力色域情報を出力色域記憶部204に記憶する。また、入力色域記憶部203には、入力空間と格子点のRGB値に対するL*a*b*値が記憶されている。第1の出力色域情報は、パッチ部の測色値そのもので、各RGB値に対する測色したL*a*b*値の情報である。第2の出力色域情報は、同様に測色値を基に公知技術により出力色域範囲を、後述のステップで判別しやすい出力色域情報として格納する。本実施例では、0から100の範囲の各L*値に関連付けてガマット境界(色域境界)領域のa*b* 値を記憶管理することにより第2の出力色域情報を記憶する。ある明度に対応する色域境界は閉じた線を形成しているので、本例では第2の出力色域情報は、適当な色相面、たとえば明度軸周りに所定の色相角おきの色相面をサンプリングして記憶する。たとえば、或る色相における色域境界は、明度に対応した一連のa*b*値により、例えば図6の色域境界601のように表される。なお、第1の出力色域情報も第2の出力色域情報も形式は相違するが、出力色域の外延をすくなくとも表しており、出力色域情報と総称する。
【0033】
ステップS503は、着目格子点すなわち対象とするRGB値に対応する標準色空間(L*a*b*色空間)上でのL*a*b*値を求める。具体的には、図2の入力色域記憶部203の入力色域情報(第1の色域情報)から対象とする格子点のRGB値のL値(L_in , a_in , b_in)を決定する。決定したL*a*b*値を、出力色域記憶部204の第2の出力色域情報から補間処理によって求められるガマット境界領域情報と比較し、出力色域の内または外を判定する。色域外の場合は、ステップ504に進み、色域内の場合は、ステップS509に進む。色域の内外は、たとえば入力画像データのL*a*b*を、図6のような第2の出力色域情報と比較して判定される。
【0034】
ステップS504は、対象とするL*a*b*の色相角θ上での出力色再現領域上での最大明度と最大彩度座標の位置関係によって、色圧縮方法の切り替え判定を行う工程である。なおここで用いられる出力色域情報は、用紙種類等の印刷設定をパラメータとして複数用意されている場合には、設定されているパラメータに対応するものが用いられる。まず、入力色域記憶部203によって定まった入力画像データのL*a*b*の色相角を算出する。L*a*b*空間で色相角は、以下の式(1)によって求められる。
θ=arctan(b*/a*) ・・・・ 式(1)
図6(a)、図6(b)は、代表的な2つの格子点について、上記式(1)によって算出された、各色相角θでの出力色再現の状態を示した図である。紙白に相当する最大明度座標を(Cw,Lw)と示す。また、、式(1)で得た色相角での出力色域の境界線601上において最大彩度点600における彩度をCout_max、対応する明度をLout_maxと表す。すなわち図6の最大彩度座標点600は(Cout_max,Lout_max)と示す。また、出力色域の最大明度Lwと、当該色相面における最大彩度に対応した明度Lout_maxとの差分を算出し、その結果をLdif(= Lw - Lout_max)と表している。
【0035】
図6(a)は、差分Ldifが閾値Lthよりも小さい場合(Ldif < Lth)を示し、図6(b)は、差分Ldifが閾値Lthよりも大きい場合(Ldif >Lth)を示している。差分Ldifによって圧縮収束点を制御することが発明の特徴である。ここでは、閾値Lth=10とする。
【0036】
上記の説明のように、ステップS504では、図6(a)のように差分Ldifが閾値Lthよりも小さい場合は、ステップS505に進み、差分Ldifが閾値Lthより大きい場合は、ステップS507に進む。
【0037】
もちろん上記判定は一例である。閾値Lthは、明度のみに基づいて決めるのではなく、当該色相面における最大彩度との兼ね合いで決めることもできる。すなわち、入力色域と出力色域それぞれにおいて同一明度に対応した彩度のかい離は、最大彩度に対応する明度と最高明度(あるいは最低明度でも同様)との差分と、最大彩度との比で判定できる、出力デバイスの場合、色相による最大彩度の大きな変化はないとみなせば、最大彩度を一定とみて、最大彩度に対応する明度と最高明度との差分Ldifが、彩度の劣化の程度を推定する指標値となりえる。そこで、本実施形態ではLdifと閾値Lthとを比較して、収束点(焦点とも呼ぶ)を制御する。なお最大彩度も考慮して、Ldif/Cout_maxを閾値と比較して収束点を制御することもできる。このようにすれば色相ごとの最大彩度の変化によらず、より彩度の再現性を高めることができよう。 ステップS505は、対象とする格子点の明度点が出力色域の最大彩度点の明度点との大小に応じて、色域圧縮方法の切り替え判定を行う工程である。ここでの処理は、図6(a)の結果を受けた後の処理となり、図7で説明する。出力色域の最大彩度座標点600の明度Lout_max以上の明度であって、かつ、出力色域外の領域を700とし、Lout_max以下の明度であって、かつ出力色域外の領域を701とする。処理対象とする格子点の座標が点702のように領域700に属する場合は、ステップS506に進み、点703のように領域701に含まれる場合は、ステップ507に進む。すなわち、着目格子点の明度が、当該画像データの色相における出力色域の最大彩度に対応した明度より低ければ、S507に進む。着目格子点の明度が、当該格子点の色相における出力色域の最大彩度に対応した明度より高ければ、S506に進む。 ステップS506は、第1の色圧縮収束点の決定であり、L軸上のLout_max以下の位置に収束点を決定することであり、本実施形態の色変換テーブル作成上の特徴である。ここで明度軸上でLout_max以下の位置に収束点を決定する場合、対象格子点の色相角θの所定範囲内は、固定点にすることも可能であるし、また色相角θ、明度Lに応じて収束点を移動しても可能である。しかし、本実施形態の特徴であるL軸上Lout_max以下の位置に収束点を決定することが必要である。このようにすることで、彩度の階調の再現性を改善できる。図7のL0は、対象とする格子点702の収束点を示すものである。
【0038】
ステップS507は、印刷目的に応じて、写真画像の再現のように立体感を重視する印刷モード時は、明度維持型の色域圧縮を用いた収束点を決定する。また、カラープルーフの様に測色的色差を重視する時は、測色的色差最小型、コンピュータグラフィックやポスターなどの鮮やかな色を重視する時は、彩度維持型の色域圧縮の収束点を決定する。図7のL1は、明度維持型の色域圧縮を行った場合の収束点を例として示している。明度維持型の収束点は、たとえば着目格子点の明度をそのまま採用してもよい。
【0039】
ステップ508は、上記S506、S507で決定された収束点に向って色域圧縮する工程を示す。図7で示すように、ステップS506での格子点702は、収束点L0方向に向かって色域圧縮され、出力色域再現の境界線601との交点704が圧縮後の値となる。また、ステップS507での格子点703は、収束点L1方向に向かって色圧縮され、出力色域再現の境界線601との交点705が圧縮後の値となる。これらの圧縮後の出力色空間における色の値は、入力色空間における着目格子点の値に関連付けて保存される。
【0040】
ステップS509は、対象とする格子点が出力色域内である場合の色変換工程である。この工程では、印刷目的に応じてそれぞれの目標値にマッピングするものである。プルーフなどの測色的色差最少型の場合は、入力L値がそのまま出力L値になるようにする。すなわち、入力色空間の着目格子点の値に関連付けて、そのL値と同じL値を持つ出力色空間における値がテーブルとして格納される。また、明度維持型、彩度維持型の色圧縮マッピングの場合は、それぞれ出力色域内の目標色になるように色変換がおこなわれる。
【0041】
ステップ510は、上記のS503からの工程を各格子点に行い、すべての格子点が処理されたことを判断する。全ての格子点に対して色域圧縮による色変換テーブルのパラメータが生成される。上記のように、ここまでの色変換パラメータは、図2の色変換処理207での3次元ルックアップテーブルの各格子点のRGB値に対する出力色域内でのL値が定まったことになる。
【0042】
図9(a)(b)は、本発明による色域圧縮結果の概念図を表したものであり、図6(a)(b)の場合に相当する色域圧縮結果の概念図である。説明上、AdobeRGB入力色再現領域の複数の格子点を表している。本来各格子点で色相角θが異なるため、出力色再現領域の境界線も異なるが説明上同じにしている。線601は、出力色再現領域の境界線を表し、線901は、入力色空間であるAdobeRGBの入力色再現領域の境界線を示している。入力色再現領域の境界線上に格子点が存在し、その色圧縮状況を示している。図9(a)では、Lout_max以上の対象とする格子点は、Lout_max以下の収束点であるL0 に収束するように色圧縮がなされている。また他の格子点については、明度維持型の色圧縮が行われている。一方図9(b)では、入力色再現領域の境界線上の格子点は、すべて明度維持型の色圧縮が行われている。
【0043】
ステップ511は、前ステップで定まった色変換テーブルを、色変換処理207で処理可能な形式に変換し、変換テーブル記憶部206に記憶する。上記例では入力色空間から出力色空間への色変換テーブルを作成したので、このテーブルを色変換処理207で扱えるのであれば特に変換は不要である。しかし、たとえばS507、S508で、標準色空間から出力色空間への色変換テーブルを作成したのであれば、入力色空間から標準色空間への入力色域情報と合成して、入力色空間から出力色空間への色変換テーブルをさくせいするな度の処理が行われる。図2の出力色域記憶部204には、第1の出力色域情報として入力RGB値に対するL*a*b*が記憶されている。また前ステップで求めたL*a*b*値は、出力色域内に色域圧縮されている。そこで第1の出力色域情報に基づいて、公知技術である逆引き補間処理により、ステップ510でのL*a*b*値に対応する出力RGB値として算出する。そして、該L*a*b*値を出力した入力RGB値と算出した出力RGB値を対応させた色変換テーブルを生成する。生成された色変換テーブルは、図2の変換テーブル記憶手段206に記憶管理され色変換処理207での処理可能な状態に設定する。
【0044】
以上のステップにより、色変換テーブル生成の工程が終了する。なお作成した色変換テーブルは入力色空間から出力色空間への色変換テーブルであるので、厳密には出力色域に対応した出力プロファイルそのものではないともいえる。しかし、出力プロファイルと入力プロファイルとを標準色空間を仲介として合成すれば、入力色空間から出力色空間への色変換テーブルが作成できるので、この色変換テーブルの作成は、実質的には出力プロファイルの作成と同様とも言い得る。
【0045】
上記の説明では、標準色空間をCIE−L色空間で説明したが、J*C*H*色空間、sRGB、AdobeRGB、PCS(プロファイルコネクションスペース)、入力デバイス、画像出力装置を製造するメーカーが独自に決めた色空間や、デバイス非依存色空間など、他の色空間を用いても同様の効果が得られる。ただし、標準色空間としては、デバイス依存の色空間を包含しているものを採用する必要がある。
【0046】
また、上記の実施例での印刷カラー処理での色変換処理をRGB値からRGB値に変換する方式で説明をしたが、図10で示すInternational Color Consortium(ICC)により提唱されるカラープロファイルを用いた処理で実施することも可能である。加えて、上記実施例では、本発明による色域圧縮を用いたプリンタ装置及びシステムでの説明を行ったが、本発明は上記の実施例に限られるものでない。例えば、カラープロファイルを生成するソフトウェアおよびシステムとして本発明を実施することは、容易であり、その要旨を逸脱しない範囲で様々な態様で実施することができる。
【0047】
本実施形態では色変換に用いるプロファイルとして変換テーブル(LUT)を用いる場合を説明した。しかし色変換はテーブルとは限らず、本実施形態のテーブルに相当する変換を実現するための関数など、その他の方法も含む。
【0048】
[その他の実施例]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色空間から、該第1の色空間とは異なる第2の色空間への色変換を定義したプロファイルを作成するプロファイル作成装置であって、
前記第2の色空間を標準色空間と対応付けた第2の色域情報を取得する色域情報の取得手段と、
着目した色相ごとに、前記第2の色空間の、前記標準色空間における最大の彩度に対応する色の明度と前記第2の色空間の最大の明度との差を、所定の閾値と比較する手段と、
前記閾値の方が大きい場合、前記最大の彩度に対応する明度よりも明度の大きい前記第1の色空間における色を、前記最大の彩度に対応する明度よりも小さい明度軸上の点を焦点として前記第2の色空間に色域圧縮してプロファイルを作成するプロファイル作成手段と
を備えることを特徴とするプロファイル作成装置。
【請求項2】
前記プロファイル作成手段は、前記閾値の方が小さい場合、前記第1の色空間における色を、当該色の明度を維持しつつ前記第2の色空間に色域圧縮してプロファイルを作成することを特徴とする請求項1に記載のプロファイル作成装置。
【請求項3】
前記プロファイル作成手段は、前記第2の色空間に相当する色が前記第1の色空間にある場合には、前記第1の色空間と前記第2の色空間における当該色を関連付けてプロファイルを作成することを特徴とする請求項1または2に記載のプロファイル作成装置。
【請求項4】
前記プロファイル作成手段は、前記第1の色空間の格子点ごとに、該格子点に相当する前記第2の色空間における色の値を格納したプロファイルを作成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプロファイル作成装置。
【請求項5】
前記取得手段は、印刷用紙の種類および印刷品質またはそのいずれかを含む印刷設定をパラメータとして、該パラメータの値に応じた第2の色域情報を取得することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプロファイル作成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のプロファイル作成装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項7】
第1の色空間から、該第1の色空間とは異なる第2の色空間への色変換を定義したプロファイルを作成するプロファイル作成装置により実行されるプロファイル作成方法であって、
前記第2の色空間を標準色空間と対応付けた第2の色域情報を取得する色域情報の取得工程と、
着目した色相ごとに、前記第2の色空間の、前記標準色空間における最大の彩度に対応する色の明度と前記第2の色空間の最大の明度との差を、所定の閾値と比較する工程と、
前記閾値の方が大きい場合、前記最大の彩度に対応する明度よりも明度の大きい前記第1の色空間における色を、前記最大の彩度に対応する明度よりも小さい明度軸上の点を焦点として前記第2の色空間に色域圧縮してプロファイルを作成するプロファイル作成工程と
を有することを特徴とするプロファイル作成方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載したプロファイル作成装置で作成されたプロファイルを出力プロファイルとして有し、
前記標準色空間における色に変換された、前記第1の色空間の入力画像データを、前記出力プロファイルを用いて前記第2の色空間の出力画像データに変換して出力することを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−178738(P2012−178738A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40842(P2011−40842)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】