説明

プローブカード用セラミック配線基板

【課題】 絶縁基体と内部電極層との間のセパレーションを防止できるプローブカード用セラミック配線基板とこれを用いたプローブカードを提供する。
【解決手段】 ムライト粒子を主結晶粒子とする焼結体からなる絶縁基体の内部に、銅を40〜60体積%と、タングステンまたはモリブデンの少なくとも一方を40〜60体積%とを含有する内部配線層を備えている配線基板であって、前記内部電極層の周囲に存在する前記主結晶粒子として、アルミナが多く含まれているムライト粒子を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハの電気特性を測定するための微細な配線を備えたプローブカード用セラミック配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Siウェハ等の半導体ウェハに多数個同時に形成される大規模集積回路を有する半導体素子には、異物の付着などに起因する電気不良等によって、ほぼ一定の割合で電気的接続および電気特性の不良品が含まれている。
【0003】
上記半導体素子の不良品を検出するものとして、半導体ウェハの状態のまま同時に多数の半導体素子の電気特性を一括して検査することができるプローブカードが知られている。
【0004】
このプローブカードは、ムライト質焼結体からなる絶縁基体の主面および内部にタングステンまたはモリブデンあるいはこれらの合金からなる微細な配線が形成されてなる配線基板と、この配線基板の表面に精度よく配置された複数のプローブピンと呼ばれる探針(測定端子)とを含んでおり、このプローブピンを多数の半導体素子の端子にあてて、電圧をかけたときの出力を測定して期待値と比較することで、多数の半導体素子の良否を一括して判定するものである(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−98049号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プローブカード用配線基板を構成する絶縁基体にムライト質焼結体を用い、配線としてタングステンまたはモリブデンあるいはこれらの合金を用いると、ムライト焼結体の熱膨張係数(3〜4ppm/℃)と、タングステンまたはモリブデンとの熱膨張係数(10ppm/℃以上)差が大きいために、焼成後において、プローブカード用配線基板の内部における絶縁基体と内部電極層との間にセパレーションが発生するという問題があった。
【0007】
従って、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、焼成後において、絶縁基体と内部電極層との間のセパレーションを防止できるプローブカード用セラミック配線基板とこれを用いたプローブカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプローブカード用セラミック配線基板は、ムライト粒子を主結晶粒子とする焼結体からなる絶縁基体の内部に、銅を40〜60体積%と、タングステンまたはモリブデンの少なくとも一方を40〜60体積%とを含有する内部配線層を備えている配線基板であって、前記内部電極層の周囲に存在する前記主結晶粒子として、アルミナが多く含まれているムライト粒子を含んでいることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のプローブカード用セラミック配線基板では、前記アルミナが多く含まれているムライト粒子が前記内部配線層の周囲を取り巻くように存在していることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、絶縁基体と内部電極層との間のセパレーションを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のプローブカード用セラミック配線基板の一実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明のプローブカード用セラミック配線基板の一実施形態の概略断面図である。図1に示すプローブカード用セラミック配線基板1は、ムライト粒子を主結晶粒子とする焼結体からなる絶縁基体11と、絶縁基体11の内部に形成された低抵抗金属および高融点金属を主成分として含む複合導体からなる内部配線層12と、絶縁基体11の表面に形成された表面配線層13とを備えており、その絶縁基体11の内部における内部配線層12同士または内部配線層12と表面配線層13とを電気的に接続するビアホール導体14とを有している。
【0014】
絶縁基体11は複数のセラミック絶縁層11a、11b、11c、11dからなるもので、それぞれのセラミック絶縁層11a、11b、11c、11dはムライトを主成分とする焼結体により形成されている。
【0015】
セラミック絶縁層11a、11b、11c、11dであるセラミック焼結体がムライト質焼結体であると、セラミック絶縁層11a、11b、11c、11dの熱膨張係数(室温〜300℃)を3.3〜4.3×10−6/℃の範囲にできる。これにより、本実施形態のプローブカード用セラミック配線基板1は、熱負荷試験時において、プローブカード用セラミック配線基板1に設けられた測定端子とSiウエハの表面に形成された測定パッドとの位置ずれが無く、電気特性の検査に好適に使用できるものとなる。
【0016】
セラミック絶縁層11a、11b、11c、11dを構成するセラミック焼結体の主成分であるムライトは粒子状または柱状の結晶として存在している。本発明においてムライトの平均粒径は特に限定されるものではないが、結晶粒径が大きくなるに従い熱伝導性が向上し、結晶粒径が小さくなるに従い強度が向上することから、高熱伝導性および高強度の両立という点から、好適なムライトの平均粒径の範囲が選ばれる。この場合、ムライトの平均粒径は1.0〜5.0μm、特に1.7〜2.5μmであることが望ましい。
【0017】
ここで、本実施形態のプローブカード用セラミック配線基板は、内部電極層12の周囲に存在する主結晶粒子として、絶縁層11a〜dの他の部分のムライト粒子11Aよりもアルミナが多く含まれているムライト粒子11Bを含んでいることを特徴とする。これに
より焼成後において、絶縁基体11と内部電極層12との間のセパレーションを防止できる。
【0018】
また、本実施形態のプローブカード用セラミック配線基板では、アルミナが多く含まれているムライト粒子11Bが前記内部電極層の周囲を取り巻くように存在していることが
望ましい。この場合、耐熱試験後においても絶縁基体11と内部電極層12との間のセパレーションを防止することができる。図1では、内部配線層12の界面部15にアルミナが多く含まれているムライト粒子11Bが存在している。内部配線層12の界面部15に
アルミナが多く含まれているムライト粒子11Bの確認は、この界面部にX線を当てて結
晶相を同定し、格子定数を算出して求める。
【0019】
また、セラミック絶縁層11a、11b、11c、11dであるムライト質焼結体は、ムライト主結晶相と、この主結晶相間に形成された粒界相とからなるが、焼結助剤としてMnを含有していることが、1380℃〜1420℃での低温でムライトを焼結させる観点から望ましい。このとき、Mnは、焼結後に粒界相に存在する残留ガラス相の中に存在してもよいが、セラミック配線基板1の耐薬品性ならびに基板強度向上の観点からMnAlSi12として存在することが好ましい。さらに、Mn以外の他の成分として、TiおよびMgの中から選ばれる少なくとも1種が、耐薬品性、基板強度、密度等の特性を損なわない程度含有されていてもよい。このとき、ムライトの(210)面のX線回
折強度を100%としたときに、MgAlSi18の(222)面のX線回折強度
が0.2〜0.7%であり、MnAlSi12の(420)面のX線回折強度が0.2〜0.7%であり、MnAl及びMgAlを実質的に含有していないセラミック焼結体からなることが望ましい。これにより耐薬品性試を向上させることができる。ここで、セラミック焼結体がMnAlおよびMgAlを含有していないというのは、X線回折を行ったときに、X線回折図上において、MnAlおよびMgAlのそれぞれのメインピークの回折強度がX線回折パターンのノイズレベル以下のものをいう。
【0020】
一方、ムライト質焼結体が焼結助剤としてSiを主成分とするガラスを用いて形成され、そのセラミック焼結体の粒界にSiを主成分とするガラス(非晶質部)が多く存在するような場合には耐薬品性が大きく低下することになる。このため本発明ではムライト質焼結体の耐薬品性を高めるために、粒界に耐薬品性に優れた結晶相を多く析出させている。
【0021】
例えば、粒界にSiを主成分とするガラスが存在するようなムライト質焼結体を40質量%水酸化カリウム水溶液に5時間浸漬したときには、ガラス成分の溶出が起こるのに対して、粒界にMnAlSi12が析出したムライト質焼結体では、水酸化カリウム水溶液に対して溶出が見られない。
【0022】
本実施形態のプローブカード用セラミック配線基板1を構成する内部配線層12は、銅が40〜60体積%、Mo、Wのうちの少なくとも1種が40〜60体積%となる組成を有する複合導体で構成されている。
【0023】
ムライト質焼結体と同時焼成可能な内部配線層12の形成材料として、高融点金属であるタングステン(W)が挙げられるが、タングステン(W)からなる内部配線層12は電気抵抗値が高い。一方、銅(Cu)などの低抵抗金属はムライトを主成分とするセラミック焼結体の焼成温度よりもかなり融点が低いため、低抵抗金属である銅のみをムライトを主成分とするセラミック焼結体と同時焼成することはできない。そこで、内部配線層12を銅およびタングステンの複合導体とすることで、銅単体に比べると電気抵抗値は多少あがってしまうものの、後述する1380℃〜1420℃の焼成温度でムライトを主成分とするセラミック焼結体との同時焼成が可能となる。
【0024】
ただし、同時焼成可能といえども、銅の融点を超える温度での焼成となるため、銅の溶融を抑制して内部配線層12の形状を保つことが必要となる。そこで、内部配線層12の低抵抗化と保形性をともに達成するうえで、低融点金属を40〜60体積%、高融点金属を40〜60体積%の割合にする。
【0025】
また、表面配線層13は、内部配線層13と同様の組成であっても異なっても良く、高融点金属であるMoあるいはWのみで形成されていても良い。
【0026】
また、ビアホール導体14は、表面配線層13と同様の組成からなることが焼成時にビ
アホール導体14からの導体成分の脱落を防止する上で望ましい。
【0027】
上述した本実施形態のプローブカード用セラミック配線基板1は、熱負荷試験時において、プローブカード用セラミック配線基板1に設けられた測定端子(プローブピン)とSiウエハの表面に形成された測定パッドとの位置ずれを抑制でき、電気特性の検査に好適に使用できる。また、ムライト質焼結体を特定の組成としたときには、耐薬品性および基板強度に優れたものになる。
【0028】
次に、上記のプローブカード用セラミック配線基板1の製造方法について説明する。
【0029】
まず、絶縁基体11を形成するために、ムライト(3Al・2SiO)粉末として、純度が99%以上、平均粒径が0.5〜2.5μmのものを用いる。ムライト粉末の平均粒径を0.5μm以上とすることでシート成形性を良好なものとし、2.5μm以下とすることで1420℃以下の温度での焼成によっても緻密化を促進させることが可能となる。
【0030】
次に、ムライト粉末100質量%に対して、Al粉末を0〜50質量%、Mn粉末を1〜10質量%、MgO粉末を1〜5質量%、TiO粉末を1〜10質量%添加して混合粉末を調製する。この場合、添加剤として用いるAl粉末は平均粒径が0.5〜1.5μm、Mn粉末は平均粒径が0.5〜3μm、MgO粉末は平均粒径が0.5〜3μm、TiO粉末は平均粒径が0.5〜3μmであるものを用いるのがよい。なお、Al粉末、Mn粉末、MgO粉末、TiO粉末の純度はともに99質量%以上であるものがよい。これにより、シート成形性を良好なものとし、Mn、MgおよびTiの拡散を向上させ、1380℃〜1420℃の温度での焼結性を高めることができるとともに、ムライトから遊離してくるAlおよびSiOと、添加剤であるMnおよびMgOから形成されるMnAlSi12およびMg
AlSi18の結晶化を高めることができる。また、Mg元素は、上記の酸化物粉末以外に焼成によって酸化物を形成しうる炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩等として添加しても良い。この場合においても、ムライト粉末100質量%に対して、MgがMgO換算で1〜10質量%となるように混合するのがよい。
【0031】
さらに、ムライト質焼結体の緻密化と内部配線層12を形成する複合金属との同時焼結性を高めるという理由から、ムライト粉末100質量%に対して、Ca、Sr、BおよびCrの群から選ばれる1種以上の酸化物粉末(CaO粉末、SrO粉末、B粉末、Cr粉末)または焼成によって酸化物を形成しうる炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩からなる粉末を、本実施形態のプローブカード用セラミック配線基板1の熱膨張係数を変化させず、また耐薬品性を劣化させない程度の割合で添加してもよい。
【0032】
次に、この混合粉末に対して有機バインダ、溶媒を添加してスラリーを調整した後、これをプレス法、ドクターブレード法、圧延法、射出法などの成形方法によってグリーンシートを作製する。あるいは、混合粉末に有機バインダを添加し、プレス成形、圧延成形等の方法により所定の厚みのグリーンシートを作製する。なお、グリーンシートの厚みはたとえば50〜300μmとすることができるが、特に限定されない。
【0033】
そして、適宜、このグリーンシートに対して、マイクロドリル、レーザー等により直径50〜250μmの貫通孔を形成する。
【0034】
このようにして作製されたグリーンシートに対して、銅(Cu)粉末とタングステン(W)粉末とを前述した比率(Cuが40〜60体積%、Wが40〜60体積%)となるように混合してビアホール用ペーストを調製し、この導体ペーストを各グリーンシートの貫
通孔内に充填する。
【0035】
次に、銅(Cu)粉末とタングステン(W)粉末またはモリブデン(Mo)粉末とを前述した比率(Cuが40〜60体積%、Wが40〜60体積%)となるように混合した複合導体粉末を主成分として、Al粉末を添加する。
【0036】
Al成分を添加することで、焼成過程において、導体ペースト中のアルミナが導体パターンに接している絶縁層11中に拡散し、アルミナが拡散した部分のムライト質焼結体がアルミナを多く含むようになり、これによって内部配線層に接している部分のムライト質焼結体の熱膨張率を大きくすることができる。この現象はAlより融点の低い複合導体中に40体積%以上含まれている銅が融点以上の温度で焼成する場合に溶融し、溶融した銅がAl粉末を内部配線層12からそれに接している絶縁層11側に押し出すためである。これは、複合導体中に銅が40体積%以上含まれている場合に起こる。なお、このAl粉末は絶縁層11側に押し出された後、前述のムライト質焼結体を形成するための焼結助剤成分により焼結するが、あらかじめ導体ペースト内に焼結助剤成分をAl粉末とともに含有させておくことで、導体パターン直近の焼結性をさらに向上させることができる。焼結助剤成分としては、Mn、Ti、Mg、Si等から用いられるが、焼結性をより効果的に向上させ、基板強度劣化の抑制、耐薬品性劣化の抑制の観点からがMnが特に好ましく用いられる。このとき、Mn、Ti、Mg、Siの成分はMn、MgO、TiO、SiOの酸化物として添加することが好ましく、それぞれの最適な添加範囲はいずれもAl100質量%に対して1〜5質量%である。これらの粉末を複合導体粉末と混合して内部配線用導体ペーストを調整し、スクリーン印刷、グラビア印刷などの方法により印刷塗布して配線パターンを形成する。
【0037】
その後、導体ペーストを印刷塗布したグリーンシートを位置合わせして積層圧着した後、この積層体を非酸化性雰囲気(窒素雰囲気あるいは窒素と水素との混合雰囲気)中で焼成する。
【0038】
ここで、この焼成中の最高温度を1380℃〜1420℃とするのがよい。焼成中の最高温度を1380℃〜1420℃とすることにより、内部配線層12から絶縁基体11側へ拡散するアルミナのほとんどを内部配線層12に接しているセラミック絶縁層11a〜dに止めておくことができ、これにより内部配線層12の周囲に、セラミック絶縁層11a〜dを構成する主結晶粒子のムライト粒子よりもアルミナを多く含むムライト粒子を存在させることができる。
【0039】
また、焼成中の最高温度を1380℃〜1420℃とすると、ムライト質焼結体の粒界相において、MnAlSi12およびMgAlSi18の結晶の核生成
を促進させつつムライト質焼結体を緻密化させることができるようになる。
【0040】
また、本実施形態のプローブカード用セラミック配線基板1を作製する場合、ムライト質焼結体の粒界相に、MgAlSi18およびMnAlSi12を析出
させて絶縁基体11の耐薬品性を高めるという理由から、1000℃から焼成最高温度までの昇温速度は50℃/hr〜150℃/hr、特に、75℃/hr〜100℃/hrにすることが望ましく、焼成最高温度から1000℃までの降温速度は、50℃/hr〜300
℃/hr、特に、50℃/hr〜100℃/hrにすることが望ましい。
【0041】
またさらに、焼成時の雰囲気は、内部配線層12中のCuの拡散を抑制するという理由から、水素および窒素を含み、その露点が+30℃以下、特に+25℃以下の非酸化性雰囲気であることが望ましい。焼成時の露点が+30℃より高いと、焼成中に酸化物セラミックスと雰囲気中の水分とが反応し酸化膜を形成し、この酸化膜と銅とが反応してしまい
、導体の低抵抗化の妨げとなるのみでなく、Cuの拡散を助長してしまうためである。なお、この雰囲気には所望によりアルゴンガス等の不活性ガスを混入してもよい。
【0042】
以上述べた方法により作製されたプローブカード用セラミック配線基板1は、銅とタングステンまたはモリブデンを主成分として含む内部配線層12を有し、絶縁基体11と内部配線層12とのセパレーションが無く、熱膨張係数が検査対象であるSiウエハの熱膨張係数に近く、耐薬品性に優れたものとなる。
【実施例】
【0043】
純度が99%で平均粒子径が2.0μmのムライト粉末100質量%に対して、純度が99%で平均粒子径が1.5μmのMn粉末を4質量%、純度が99%で平均粒子径が2.0μmのTiO粉末を2質量%の割合で混合した後、さらに成形用有機樹脂(有機バインダー)としてアクリル系バインダーと、有機溶媒としてトルエンとを混合してセラミックスラリーを調製した後、ドクターブレード法にて厚さ200μmのシート状に成形し、セラミックグリーンシートを作製した。
【0044】
得られたセラミックグリーンシートに対して、打抜き加工を施し、直径が200μmの貫通孔を形成した。そして、純度99.9%、平均粒子径1.2μmのMo粉末95質量%と純度99.9%、平均粒子径1.8μmのアルミナ粉末5質量%とを混合した粉末に対し、アクリル系バインダとアセトンを溶媒として混合し、Mo導体ペーストを調製し、この導体ペーストをスクリーン印刷法によって上記のセラミックグリーンシートの貫通孔内に充填した。
【0045】
また、最上層となるセラミックグリーンシートの表面および最下層となるセラミックグリーンシートの裏面に、上記のMo導体ペーストを用いて表面配線層をスクリーン印刷法により形成した。
【0046】
また、平均粒径2μmのCu粉末、平均粒径2μmのW粉、純度99%以上、平均粒径1.0μmのAl粉末、純度99%以上、平均粒径1.5μmのMn粉末を用い表1に示す組成比に従い、アクリル系バインダとアセトンとを溶媒として混合し、内部配線層用の導体ペーストを調製した。
【0047】
そして、内部配線層を形成するグリーンシートに対して、その一方の主面のほぼ全面を覆うようにスクリーン印刷法により内部配線層を形成した。ここで、ほぼ全面とは、グリーンシートの一方の主面の面積の99%以上のことである。
これらのグリーンシートを15層積層し、室温から600℃の温度において、露点を+25℃とした窒素水素混合雰囲気にて脱脂を行なった後、引き続き焼成を行った。焼成は、1000℃から最高温度までを40℃/時間の昇温速度で昇温し、最高温度1400℃にて露点を+25℃とした窒素水素混合雰囲気に、1時間保持した後、最高温度から1000℃までを60℃/時間降温速度で冷却して、ムライト質焼結体を得た。このような内部配線層をもつ基板の構造を構造1とした。
【0048】
また、内部配線層を形成するグリーンシートに対して、その一方の主面の70%以下の面積を占めるように所定のパターンを形成したスクリーン製版を用いて内部配線層を印刷した以外は全て構造1と同様な構造を持つ積層体を準備した。この積層体について、室温から600℃の温度において、露点を+25℃とした窒素水素混合雰囲気にて脱脂を行なった後、引き続き焼成を行った。焼成は、1000℃から最高温度までを40℃/時間の昇温速度で昇温し、最高温度1400℃にて露点を+25℃とした窒素水素混合雰囲気に、1時間保持した後、最高温度から1000℃までを60℃/時間降温速度で冷却して、ムライト質焼結体を得た。このような内部配線層をもつ基板の構造を構造2とした。構造
2の基板は、焼成後に内部配線層の周囲を取り巻くようにアルミナの含有量の多いムライト粒子が存在している基板である。
【0049】
次に、内部配線層を有する配線基板である構造1および構造2の基板の積層断面を研磨し、内部配線層12を露出させたものに対して、内部配線層と絶縁層11a〜dとの界面部と、内部配線層に挟持された絶縁層11a〜dの厚み方向の中央部(磁器部)とにX線を当てて絶縁層11a〜dに含まれるアルミナの含有量を求めた。
【0050】
また、絶縁基体中における内部配線層のセパレーションについては、焼成後および耐熱試験(350℃、10分保持)後の構造1および構造2の基板の側面を観察して評価した。
【0051】
また、耐薬品性は、その指標として、ムライト質焼結体の初期の質量および100℃の水酸化カリウム40質量%水溶液に5時間浸漬させた後のムライト質焼結体の質量を測定し、重量減少率(「ムライト質焼結体の初期質量」−「100℃の水酸化カリウム40質量%水溶液に5時間浸漬させた後のムライト質焼結体の質量」)/「ムライト質焼結体の初期質量」×100[%]を算出した。ここで、耐薬品性の判定は重量変化率が0.12質量%以下の場合合格とした。
【0052】
また、耐薬品性の指標として、ムライト質焼結体の初期の質量および100℃の水酸化カリウム40質量%水溶液に5時間浸漬させた後のムライト質焼結体の質量を測定し、重量減少率(「ムライト質焼結体の初期質量」−「100℃の水酸化カリウム40質量%水溶液に5時間浸漬させた後のムライト質焼結体の質量」)/「ムライト質焼結体の初期質量」×100[%]を算出した。ここで、耐薬品性の判定は重量変化率が0.12質量%以下の場合合格とした。作製した試料は耐薬品性がいずれも合格であった。
【0053】
配線抵抗は、測定で得られた導体の抵抗をR、測定する内部配線層の全長をL、内部配線層の幅をWとしたときに、関係式:R×W/Lで表される抵抗値(シート抵抗という。単位はmΩ/□)として求めた。電気抵抗はデジタルマルチメーターによる四端子法により測定した。このとき、配線抵抗は、シート抵抗換算で4.0mΩ/□以下を合格とした。
【0054】
絶縁基体を構成する磁器部および内部配線層と絶縁層との界面部ならびに内部配線層の熱膨張率を測定した。絶縁基体を構成する磁器部および内部配線層と絶縁層との界面部については、X線回折により得られた組成に基づきムライト質焼結体を別途作製したものを試料とした。内部配線層についてもICP分析により求めた組成を基にn別途同じ焼成条件でインゴットを作製したものを用いた。
【0055】
次に、ステージ上に載置したSiウェハの上面にプローブカードの測定端子であるプローブピンを接触させて90℃の温度に加熱した状態に保持し、プローブカードの側面から実体顕微鏡を用いて、プローブピンとSiウエハの表面に形成された測定パッドとの位置ずれを観察した。この場合、プローブカードおよびSiウエハの最外周に形成した測定端子(プローブピン)と測定パッドを観察したときに、測定端子(プローブピン)の先端が測定パッド上から横に位置ずれしている状態を位置ずれ有りとした。作製したプローブカードには位置ずれは見られなかった。
【0056】
得られた配線基板を構成する内部配線層の銅とタングステンまたはモリブデンの含有量は、ICP分析を行って各々の金属量を質量比で求めた後、各金属の密度(銅:8.9g/cm、タングステン:19.1g/cm、モリブデン:10.3g/cm)で除して求めた。これらの結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1の結果から明らかなように、本発明の試料(No.2〜13および15では、焼成後の絶縁基体中において、内部配線層とのセパレーションの発生した試料が無かった。
【0059】
特に、焼成後に内部配線層の周囲を取り巻くようにアルミナの含有量の多いムライト粒子が存在している基板の試料(No.15)では、耐熱試験後においてもセパレーションが無かった。
【0060】
一方、本発明の範囲外である試料No1、14および16については、焼成後において絶縁基体と複合導体との界面に剥離が発生した。
【符号の説明】
【0061】
1:プローブカード用セラミック配線基板
11:絶縁基体
11A:ムライト粒子
11B:アルミナが多く含まれているムライト粒子
12:内部配線層
13:表面配線層
14:ビアホール導体
2:プローブカード
21:測定端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムライト粒子を主結晶粒子とする焼結体からなる絶縁基体の内部に、銅を40〜60体積%と、タングステンまたはモリブデンの少なくとも一方を40〜60体積%とを含有する内部配線層を備えている配線基板であって、前記内部電極層の周囲に存在する前記主結晶粒子として、アルミナが多く含まれているムライト粒子を含んでいることを特徴とするプローブカード用配線基板。
【請求項2】
前記アルミナが多く含まれているムライト粒子が前記内部配線層の周囲を取り巻くように存在していることを特徴とする請求項1に記載のプローブカード用配線基板。

【図1】
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【公開番号】特開2012−54298(P2012−54298A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193899(P2010−193899)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】