説明

プローブシステム

【課題】 カメラを搭載したプローブカーを用いて不特定多数の地点の道路状況を撮影し配信するプローブシステムにおいて、撮影した画像のプライバシーを保ちつつ、画像のクオリティを確保することができるプローブシステムを提供する。
【解決手段】 プローブカーは、画像の画像データに車両ID情報を添付して送信する。一方、画像変換部は、画像においてプライバシー情報を含む領域に画像処理を行うためのぼかしパラメータαを有している。そして、ぼかしパラメータαは車両IDに応じて設定されており、画像の縦方向の長さをLとしたとき、画像を、縦方向の長さLに応じて画像上部がαLで区画される領域と、画像下部が(1−α)Lで区画される領域と、で表し、画像下部の領域に画像処理を行うようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路上を走行するプローブカーにて撮影された画像中のプライバシー情報に画像処理を施すプローブシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、道路脇に固定カメラを設置し、この固定カメラで定点観測した画像や動画をネットワーク上にアップロードして一般に公開するサービスが行われている。しかしながら、公衆の状況を撮影して配信することになるため、プライバシーの問題が顕在化し得る。
【0003】
そこで、上記公衆のプライバシーを保護するため、固定カメラで撮影した画像に加工処理を加えて配信する交通状況画像提供システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシステムは、道路脇に設置される固定カメラと、固定カメラで撮影した画像をインターネットに送信する無線基地局と、インターネットを介して無線基地局から送信された画像を受信し、その画像を加工するwebサーバと、webサーバにて加工された画像を閲覧するための携帯端末と、を備えて構成される。
【0004】
このようなシステムにおいて、webサーバでは、画像を歪ませるエンボス加工、エッジを強調させる加工、区画ごとに平均色表示させるモザイク加工等のいずれかの画像加工が元画像全体に対して施される。そして、加工されプライバシー保護された画像が携帯端末に送信される。なお、例えば渋滞度に応じてカラーバランスを変える加工も行えるようになっている。
【0005】
上記の画像加工とは異なり、固定カメラを用いて連続画像から人や車両の情報を抽出し、これらをあらかじめ用意しておいたテンプレート画像に置き換え配信する自動車通行監視・管理装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
この自動車通行監視・管理装置は、道路脇に固定され道路状況を動画として撮影する(つまり画像を連続撮影する)TVカメラと、TVカメラで撮影した動画に映る車両をテンプレート画像に置き換える処理を行うデータ処理装置と、を備えて構成されている。
【0007】
このような自動車通行監視・管理装置では、データ処理装置において、TVカメラで連続撮影された画像から、動きのある物体(すなわち車両)を検出し、画像中の車両の部分をテンプレート画像に置き換える。このようにして画像の中の車両をテンプレート画像に置き換えた画像をデータ伝送系を介して外部に送信する。このようにして、撮影された画像中の車両をテンプレート画像に置き換えて、車両のプライバシーを保護している。
【特許文献1】特開2002−150483号公報
【特許文献2】特開2000−231693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、車両自体をセンサ(プローブカー)として利用するプローブシステムの検討が行われている。このプローブシステムにおいては、プローブカーにカメラを搭載し、撮影時の情報(位置、時刻、速度等)を利用して、サーバで地図と連携して再配信することとなる。これにより、ユーザは、さまざまな場所の画像をリアルタイムに取得することができる。
【0009】
しかし、このプローブシステムにおいても、公共の場所を撮影した画像を発信することになるため、上記従来の技術と同様にプライバシーを保護する必要がある。そこで、発明者らは、上記従来の技術によって、プローブカーで撮影された画像の中のプライバシーを保護できるかについて検討した。
【0010】
まず、特許文献1に示される交通状況画像提供システムについてであるが、このシステムでは、撮影した元画像全体に対して画像加工処理を行っているため、プライバシーを保つことは可能である。しかしながら、画像全体に処理をすることが前提となっているため、画像において一定のプライバシーを保とうとすると、画像の内容自体(クオリティ)を犠牲にしてしまうこととなる。
【0011】
一方、特許文献2に示される自動車通行監視・管理装置では、動画を撮影して必要な部分、すなわち車両だけを処理するため、画像内容のクオリティを保つことは可能である。しかしながら、TVカメラは道路脇に設置されており、一定の場所のみの動画像を撮影している。このため、道路上を移動するプローブカーによって、多地点の不連続な静止画像が撮影される場合、撮影された画像の動きを検出することは困難である。また、大量の連続画像すべてに処理を行う必要があるため、画像を配信するマシンの負荷は高く、配信するまでに一定の時間を要する。これでは、道路状況をリアルタイムで配信できるとは言えない。
【0012】
本発明は、上記点に鑑み、カメラを搭載したプローブカーを用いて不特定多数の地点の道路状況を撮影し配信するプローブシステムにおいて、撮影した画像のプライバシーを保ちつつ、画像のクオリティを確保することができるプローブシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、サーバ(30)には、プローブカー(10)から受信した画像のうちの一部分をプライバシー情報が含まれる場所として特定し、この一部分に関してプライバシー情報を保護するための画像処理を行う画像変換部(32)が備えられていることを特徴としている。
【0014】
このように、プローブシステムにおいて、プローブカーで撮影された画像のプライバシー情報が写っている領域のみを選択的に画像処理する。これにより、プライバシー情報が写された領域のみを画像処理し、画像全体に画像処理を行わないので、画像全体としてのクオリティを保ちつつ、プライバシー情報のみを保護するようにすることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、プローブカーは、画像の画像データに車両ID情報を添付して送信するようになっており、画像変換部は、画像においてプライバシー情報を含む領域に画像処理を行うための画像処理パラメータαを有し、画像処理パラメータαは車両IDに応じて設定されており、画像の縦方向の長さをLとしたとき、画像を、縦方向の長さLに応じて画像上部がαLで区画される領域と、画像下部が(1−α)Lで区画される領域と、で表し、画像下部の領域に画像処理を行うようになっていることを特徴としている。
【0016】
画像において、画像下部はカメラから近い場所、画像上部においてはカメラから遠い場所が撮影される。したがって、車両ID情報、例えば車種に応じた画像処理パラメータαによって画像処理する領域((1−α)L)を決めて画像処理する。このように、撮影地点から近い画像下部のみを画像処理するため、画像全体のクオリティを確保できる。また、画像下部に頻繁に撮影されると予測される例えばナンバープレートのプライバシー情報を保護できる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、画像処理パラメータαは、プローブカーの速度が任意の速度よりも大きい場合には任意の速度に応じた画像処理パラメータの値よりも大きい値に設定され、プローブカーの速度が任意の速度よりも小さい場合には任意の速度に応じた画像処理パラメータの値よりも小さい値に設定されることを特徴としている。
【0018】
このように、速度に応じて画像処理パラメータαの値を設定する。これにより、プローブカーの速度が速い場合にはプローブカーの近くの対象物はぶれて撮影されるのでαを大きく設定することで画像処理する領域を小さくできる。つまり、画像処理されない領域を確保でき、画像のクオリティを十分確保できる。一方、プローブカーの速度が遅い場合には前方が鮮明に撮影されると考えられるので、αの値を小さくし、画像処理する領域を広げることでプライバシー情報を保護することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明では、プローブカーは、画像の画像データに画像を撮影した位置情報を添付して送信するようになっており、サーバは、地図データが記憶された地図データベース(36)を有し、ユーザから広域ネットワークを介して目的地(LM)を含む画像のリクエストを受信すると、画像変換部は、位置情報および地図データに基づくプローブカーと目的地との位置関係から、画像において目的地を除く領域に画像処理を行うようになっていることを特徴としている。
【0020】
このように、地図データを用いる。これにより、画像において、プローブカーと目的とする対象物との位置関係から、目的とする対象物以外の領域を画像処理する領域として選択することができる。これにより、目的地以外のプライバシー情報を保護することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明では、プローブカーは、前方を撮影するカメラを複数搭載しており、各カメラによって視差画像を撮影し、視差画像の画像データを送信するようになっており、広域ネットワークを介して視差画像の画像データがサーバで受信されると、画像変換部は、視差画像に基づき、プローブカーと視差画像に写る対象物との間の距離を求め、距離が画像のプライバシー情報が写ると予測される距離を超える場合、対象物に対して画像処理を行うようになっていることを特徴としている。
【0022】
このように、視差画像を利用して、前方の対象物との距離を測定し、その距離が画像のプライバシー情報が写ると予測される距離を超えると、その部分のみを画像処理する。これにより、画像においてプライバシー情報が鮮明に写ってしまうと考えられる一部分のみを選択的に画像処理することができ、画像のクオリティを確保しつつ、プライバシー情報を保護することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明では、サーバは、優先的に画像に画像処理を行うための優先ルールが格納された優先ルールテーブル(38)に基づいて画像処理を行うか否かを判定し、画像処理を行うと判定するとその画像の名前を優先的に画像処理する優先処理テーブル(39)に格納する優先処理決定部(37)を有しており、画像変換部は、優先処理テーブルに格納された画像の名前を参照し、この画像の画像処理を行うようになっていることを特徴としている。
【0024】
このように、画像処理を行う優先ルールに従って、画像処理すべきか否かを判定する。これにより、プローブカーから送信される多数の画像の中から画像処理すべき画像を優先的に選択および画像処理することができる。
【0025】
請求項7に記載の発明では、プローブカーに搭載されるカメラのレンズは、その焦点が遠方に合わされていることを特徴としている。
【0026】
このように、遠方にピントが合ったレンズをカメラに採用する。これにより、プライバシー情報が撮影されてしまうプローブカーから近い場所をぼかして撮影することができる。
【0027】
請求項8に記載の発明では、プローブカー(10)に搭載されたカメラで撮影された画像の画像データを、広域ネットワーク(20)を介して受信すると共に、受信した画像のうちの一部分をプライバシー情報が含まれる場所として特定し、この一部分に関して前記プライバシー情報を保護するための画像処理を行う画像変換部(32)を有しており、広域ネットワークを介してユーザが操作する端末(40)から所望の画像がリクエストされると、リクエストの情報を受信すると共に、リクエストに応じて画像変換部で画像処理された画像を端末に配信するようになっていることを特徴としている。
【0028】
このようなサーバを用いることで、プローブシステムにおいてユーザに配信するための画像にプライバシー情報を隠すように画像処理することができる。
【0029】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。
【0031】
図1は、本発明の第1実施形態に係るプローブシステムのシステム構成図である。図1に示されるように、プローブシステムは、プローブカー10と、広域ネットワーク20と、サーバ30と、端末40と、を備えて構成されている。
【0032】
プローブカー10は、カメラを搭載すると共に、このカメラで道路状況を撮影する車両である。このようなプローブカー10に、例えばバス、タクシー、パトロールカーが採用され、各プローブカー10には各車両を識別できる車両IDが設定されている。プローブカー10に搭載されるカメラは、車両前方を撮影できるように車両に固定され、例えば10秒ごと、ウィンカ作動時、車両の発進または停車時に道路状況を撮影するようになっている。さらに、プローブカー10は、GPSを搭載しており、撮影場所の位置や時刻等を検出できるようになっている。
【0033】
このようなプローブカー10においては、カメラにて道路状況が撮影されると、その画像に車両ID、画像ファイル名、撮影位置、撮影時刻、撮影時速度、撮影時方向、ウィンカ情報、等の車両情報が添付された画像データがサーバ30に送信される。
【0034】
広域ネットワーク20は、プローブカー10から送信された画像データをサーバ30に送信する周知のインターネットである。
【0035】
サーバ30は、プローブカー10から受信した画像のうちの一部分をプライバシー情報が含まれる場所として特定し、この一部分に関してプライバシー情報を保護するための画像処理(プライバシー保護処理)を行い、画像処理した画像データをユーザに配信するものである。このようなサーバ30は、CPUやメモリ、ハードディスク等を備えた周知の計算機である。
【0036】
図2は、サーバ30のブロック構成図である。図2に示されるように、サーバ30は、プローブ情報受信部31と、画像変換部32と、データベース管理部33と、画像データベース34と、プローブ情報配信部35と、を備えて構成される。
【0037】
プローブ情報受信部31は、広域ネットワーク20を介してプローブカー10から画像データを受信するインターフェースである。プローブ情報受信部31は、インターネットを経由して受信した画像データを画像変換部32に出力する。
【0038】
画像変換部32は、プローブ情報受信部31から入力される画像に対してプライバシー保護処理を行うものである。画像変換部32は、このプライバシー保護処理を行うためのぼかしパラメータαを有している。なお、ぼかしパラメータαは、本発明の画像処理パラメータαに相当する。この画像変換部32が行う画像処理については、本システムの作動において詳しく説明する。画像変換部32で画像処理された画像データは、データベース管理部33に出力される。
【0039】
データベース管理部33は、画像処理された画像データを管理するものである。具体的に、データベース管理部33は、後述する画像データベース34に画像データを保存する、後述する端末40からのリクエストに応じて画像データベース34から画像データを読み出してプローブ情報配信部35に出力する、ということを行う。
【0040】
画像データベース34は、画像変換部32にて画像変換された画像データが保存されるものである。この画像データベース34には、1枚の画像の画像データと共に、その画像の画像情報である車両ID、撮影時刻、撮影位置、車両速度、撮影方向、画像ファイル名が共に記憶される。
【0041】
プローブ情報配信部35は、画像処理された画像の画像データを広域ネットワーク20に出力するインターフェースである。つまり、プローブ情報配信部35は、データベース管理部33から入力される画像データをインターネットに送信する。
【0042】
そして、図1に示される端末40は、配信される画像データを受信する受信機である。このような端末40として、例えばPC41、車両42、携帯電話43がある。ユーザはこれら端末40を用いてサーバ30に画像をリクエストし、サーバ30から送信される画像データを受信することで、ユーザが確認したい場所の道路状況を知ることができる。
【0043】
なお、車両42自体が端末40というわけではなく、例えば車両42に搭載されたカーナビゲーションシステムが端末40として機能するのである。
【0044】
次に、上記プローブシステムの作動について、図3〜図7を参照して説明する。なお、以下では、任意のプローブカー10が撮影した1枚の画像の画像データを追うことで、システム全体の作動を説明する。
【0045】
まず、道路上のプローブカー10に搭載されたカメラにて道路状況が撮影される。こうしてプローブカー10で撮影された画像の画像データは、車両ID、撮影時刻、撮影位置、車両速度、撮影方向、画像ファイル名の各情報と共に広域ネットワーク20を介してサーバ30に送信される。
【0046】
以下、サーバ30内の処理について、図3を参照して説明する。図3は、プローブシステムのサーバ30で実行される処理内容を示した図である。この処理は、サーバ30に記憶された処理プログラムをCPUが実行することによりなされる。
【0047】
図3に示されるように、まず、ステップ100では、プローブカー10からの画像データが取得される。つまり、広域ネットワーク20を介してプローブカー10から画像データがサーバ30のプローブ情報受信部31に入力される。
【0048】
この後のステップにおいて、画像に対してプライバシー保護処理が行われることとなる。ここで、画像をどのように処理するのかについて、図4を参照して説明する。本実施形態では、画像全体に処理を施すのではなく、画像においてプライバシーを保護すべき領域のみに処理を施し、画像のクオリティを保つようにしている。
【0049】
図4は、撮影された画像に対する画像処理領域を説明するための図である。図4に示されるように、プローブカー10のカメラにて車両前方が撮影されると、前方に車両が存在した場合、その車両の後部が撮影される。その際、車両のナンバープレートも撮影されることとなる。
【0050】
本実施形態では、図4に示されるように、撮影された画像において、ナンバープレートなどのプライバシー情報を保護するように、ナンバープレートが写された領域を画像処理するようになっている。具体的には、撮影された画像の縦方向の長さをLとし、その長さLに対してぼかしパラメータαの重みを考慮した領域のみを画像処理する。
【0051】
すなわち、画像を、画像の縦方向の長さLをαLとしたときに形成される領域(無加工領域)と、長さLを(1−α)Lとしたときに形成される領域(加工領域)と、に分ける。図4に示されるように、αの値が大きいほど加工領域は狭まり、αの値が小さいほど加工領域は広がる。このぼかしパラメータαの具体的な値を図5に示す。
【0052】
図5は、車両IDに対応したぼかしパラメータαを表で示した図である。図5に示されるように、車両IDに対して、ぼかしパラメータαが割り振られている。プローブカー10に搭載されるカメラの位置(道路からの高さ)により、例えば前方車両のナンバープレートが画像のどの位置に写るのかが変わってくる。例えばプローブカー10がバスの場合、カメラは路面から離れた高い場所に設置されるため、画像の中央付近に車両のナンバープレートが写ることが考えられる。したがって、画像のより広範囲を加工する必要がある。このため、例えばバスの車両IDを0001とすると、そのぼかしパラメータαは0.5、つまり画像の下半分の領域を加工処理することとなる。
【0053】
また、プローブカー10がタクシーのように、バスと比較して車高が低い車両の場合においては、カメラで前方車両を撮影したとしても、ナンバープレートは画像の下部に写ると考えられる。したがって、画像の下部範囲を加工すればよいので、例えばタクシーの車両IDを0002とすると、そのぼかしパラメータαは0.7、つまり画像の縦方向の長さの30%分の領域を加工処理することとなる。このように、カメラを搭載したプローブカー10の車種に応じてぼかしパラメータαを設定しておき、このぼかしパラメータαに基づき画像にプライバシー保護処理を行うのである。
【0054】
したがって、ステップ110では、車両IDからαの値が検索される。すなわち、画像データに付加された車両IDから、その車両IDに応じたぼかしパラメータαが画像変換部32から検索される。
【0055】
ステップ120では、画像変換部32にて画像変換処理がなされる。この画像変換処理について、図6を参照して説明する。図6は、画像変換処理の内容を示した図である。まず、図6(a)に示されるように、画像処理範囲が検出される。つまり、ステップ110にて検索されたぼかしパラメータαに基づき、画像処理を施す加工領域が決定される。
【0056】
続いて、画像において、加工領域の減階調処理がなされる。減階調処理とは、図6(b)に示されるように、例えば256色をそれよりも色数が少なくなるように減色する処理である。この減階調処理により、画像において加工領域の色数を減らす。なお、図6において、色の濃さを示すグラデーションを、点ハッチングの密度によって表現してある。
【0057】
この後、選択処理がなされる。この選択処理とは、図6(c)に示されるように、減階調処理された領域において、任意のドットの色の階調を、そのドットの周囲のドットのうちもっとも数の多い階調に合わせる処理である。この処理を、M行N列の加工領域においてすべてのドットに対して行う。この処理を行うことで、画像のうち加工領域をぼかすのである。
【0058】
図7は、プライバシー保護処理前および処理後の画像を示した図である。この図に示されるように、処理前の画像に対して、処理後の車両のナンバープレートの数字はぼやけて見えなくなっている。しかしながら、その画像に撮影された道路状況の様子はよくわかり、
画像全体としてのクオリティは保たれている。このようにして、画像においてプライバシーを保護すべき領域のみが処理される。こうして処理された画像の画像データは、画像変換部32からデータベース管理部33に出力される。
【0059】
続いて、図3に示されるステップ130では、データベース登録がなされる。これは、上記ステップ120にてプライバシー保護処理された画像の画像データがデータベース管理部33に入力されると、データベース管理部33によってプライバシー保護処理後の画像の画像データが画像データベース34に保存される。
【0060】
このように画像の画像データがプライバシー保護処理および保存されることに対して、ユーザは、例えば目的地付近の道路状況を知るため、その目的地付近の画像をサーバ30にリクエストする。このように、ユーザからサーバ30に対して画像のリクエストがあった場合、以下のようにして画像がユーザに送信される。
【0061】
まず、ユーザが端末40を用いて閲覧したい場所の画像をサーバ30にリクエストする。これにより、端末40から広域ネットワーク20を介してリクエスト情報がサーバ30のプローブ情報配信部35に送信される。プローブ情報配信部35は、リクエスト情報を受信すると、そのリクエスト情報をデータベース管理部33に出力する。
【0062】
データベース管理部33は、リクエスト情報に基づき、画像データベース34にアクセスして該当する画像の画像データを読み出し、その画像データをプローブ情報配信部35に出力する。なお、リクエスト情報には、ユーザが閲覧したい場所、時刻等が含まれており、データベース管理部33はこれらのリクエスト情報に合った画像の画像データを画像データベース34から読み出すのである。
【0063】
プローブ情報配信部35は、データベース管理部33から入力された画像の画像データを、広域ネットワーク20を介してリクエスト情報を送信した端末40に配信する。そして、ユーザがリクエストした場所の道路状況が撮影された画像の画像データが端末40で受信される。これにより、ユーザはリクエストした場所の道路状況を確認することができる。このとき、端末40に配信される画像は、プライバシー保護処理がなされている。このため、画像において公衆のプライバシーが保たれていると共に、上述のように画像においてプライバシーを保護すべき領域のみを画像処理していることから画像のクオリティも確保されている。
【0064】
以上説明したように、本実施形態では、プローブカー10で撮影された画像のプライバシー情報が写っている領域のみを選択的に画像処理する。これにより、プライバシー情報が写された領域のみを画像処理し、画像全体に画像処理を行わないので、画像全体としてのクオリティを保ちつつ、プライバシー情報のみを保護するようにすることができる。
【0065】
また、画像において、画像下部はプローブカー10のカメラから近い場所、画像上部においてはカメラから遠い場所が撮影される。したがって、ぼかしパラメータαを車両IDに応じて設定し、このぼかしパラメータαによって画像処理する領域((1−α)L)を決めて画像処理する。このように、撮影地点から近い画像下部のみを画像処理するため、画像全体のクオリティを確保できる。
【0066】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、プローブカー10が走行中に撮影した画像において、プライバシー保護処理がなされる際、プローブカー10の速度に応じて加工領域が決定されることが第1実施形態と異なる。つまり、本実施形態では、例えば歩行者(の顔)等のプライバシーを保つことに適している。以下、第2実施形態におけるプローブシステムについて説明する。
【0067】
上述のように、プローブカー10の速度に応じて画像の加工領域が決定される。このため、本実施形態で用いられるサーバ30の画像変換部32は、プローブカー10の速度に応じてぼかしパラメータαを決定する機能を有している。
【0068】
本実施形態では、ぼかしパラメータαは、プローブカー10の速度が任意の速度よりも大きい場合には任意の速度に応じたぼかしパラメータの値よりも大きい値に設定され、プローブカー10の速度が任意の速度よりも小さい場合には任意の速度に応じたぼかしパラメータの値よりも小さい値に設定される。以下、具体的に説明する。
【0069】
図8は、プローブカー10の速度とぼかしパラメータαとの関係を示した図である。図8に示されるように、プローブカー10の速度が0から速度vまで一定のぼかしパラメータαになっており、速度vから速度vまでは一定の勾配でぼかしパラメータαは増加し、速度vを超えると一定のぼかしパラメータαとなる。
【0070】
プローブカー10の速度が速度vから速度vまでの間のぼかしパラメータαは、以下の数式1で求めることができる。プローブカー10の速度をvとすると、
(数式1)
α={(α―α)/(v−v)}v+{(vα―vα)/(v−v)}
プローブカー10の速度が速度vと速度vとの間の値である場合、画像変換部32は上記数式1に基づき、ぼかしパラメータαを算出する。なお、α、α、v、v、の各値は、サーバ30の管理者が任意に設定できるようになっている。
【0071】
以上のように、本実施形態では、プローブカー10の速度が速い場合であって、道路状況の撮影時において、プローブカー10とその付近は相対的な速度の差が大きいので撮影される画像のブレが大きいと予測される。このため、ぼかしパラメータαの値を大きくしてプライバシー保護処理を行う領域を小さくできる。また、カメラにて歩行者の顔が撮影される場合があるが、走行しているプローブカー10が歩行者に近づくためプローブカー10の速度による撮影画像にブレが生じる。したがって、歩行者の顔は詳細に撮影されずに歩行者のプライバシー情報が保護される。
【0072】
次に、本実施形態に係るプローブシステムの作動について、図9を参照して説明する。図9は、本実施形態に係るプローブシステムのサーバ30にて実行される処理内容を示した図である。まず、ステップ200で、第1実施形態のステップ100と同様の処理が行われる。
【0073】
そして、ステップ210では、プローブカー10の速度からぼかしパラメータαが算出される。すなわち、画像変換部32において、ステップ210で取得された画像データに添付されたプローブカー10の速度が参照され、上述のように、速度に応じたぼかしパラメータαが決定される。
【0074】
そして、ステップ220、230で、第1実施形態のステップ120、130と同様の処理が行われる。
【0075】
このように、本実施形態では、撮影時のプローブカー10の速度を利用して画像のプライバシー保護処理を行う領域を自動的に決定している。
【0076】
以上説明したように、プローブカー10の速度に応じてぼかしパラメータαの値を設定する。これにより、プローブカー10の速度が速い場合にはプローブカー10の近くの対象物はぶれて撮影されるのでαを大きく設定することで画像処理する領域を小さくできる。一方、プローブカー10の速度が遅い場合には前方が鮮明に撮影されると考えられるので、αの値を小さくし、画像処理する領域を広げることでプライバシー情報を保護することができる。
【0077】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態で示されるプローブシステムでは、プローブカー10のカメラにて撮影された画像において、例えばランドマークが撮影された画像中のランドマーク以外のプライバシー情報を減らすようにしている。つまり、本実施形態では、例えばユーザがリクエストの目的としているランドマーク以外の情報に対してプライバシー保護処理を行う。以下、第3実施形態におけるプローブシステムについて説明する。なお、ランドマークとは、すなわち目的地を指す。
【0078】
図10は、第3実施形態に係るサーバ30のブロック構成図である。本実施形態で用いられるサーバ30の各構成要素は、第1、第2実施形態で用いられるサーバ30と同じであるが、画像データの入出力経路が異なっている。また、本実施形態では、サーバ30に地図データベース36が備えられている。この地図データベース36は、例えばDVDやハードディスクに記憶された周知の地図データである。
【0079】
本実施形態では、上述のように、ユーザからリクエストがあった画像の画像データにプライバシー保護処理を行い、処理を行った画像データをユーザに配信するようにしている。つまり、本実施形態のサーバ30の画像変換部32は、画像中のランドマーク以外のプライバシー情報を減らす機能を有している。
【0080】
以下、本実施形態に係るプローブシステムの作動について、図10、図11を参照して説明する。
【0081】
まず、プローブカー10から画像データが送信されると、その画像データは広域ネットワーク20を介してサーバ30のプローブ情報受信部31で受信される。そして、画像データはプローブ情報受信部31からデータベース管理部33に入力される。データベース管理部31に入力された画像データは、画像データベース34に出力され、画像データベース34に保存される。
【0082】
一方、ユーザが端末40を用いてサーバ30にランドマーク情報をリクエストすると、そのリクエスト情報が広域ネットワーク20を介してサーバ30のプローブ情報配信部35で受信され、データベース管理部33に出力される。
【0083】
そして、リクエスト情報を受け取ったデータベース管理部33は、リクエストの場所(位置)が撮影された画像を画像データベース34から読み出し、読み出した画像の画像データを画像変換部32に出力する。また、データベース管理部33は、リクエストの場所(位置)の地図データを地図データベース36から読み出し、その地図データを画像変換部32に出力する。
【0084】
次に、画像変換部32において、画像中のランドマーク以外のプライバシー情報を保護する処理が行われる。図11は、画像変換部32が行うプライバシー保護処理の内容を示した図である。図11(a)はプローブカー10とランドマークLMとの位置関係を示した図、図11(b)はプローブカー10とランドマークLMとの位置関係から画像においてプライバシー保護処理を行う領域を示した図、図11(c)はプライバシー保護処理された画像の一例を示した図である。
【0085】
図11(a)に示されるように、プローブカー10の画像撮影位置および地図データから、プローブカー10とランドマークLMとの位置関係が、プローブカー10の進行方向におけるプローブカー10とランドマークLMとの距離x、プローブカー10の進行方向に対して垂直方向おけるプローブカー10とランドマークLMとの距離y、ランドマークLMの店舗の幅wで表される。
【0086】
このようなプローブカー10およびランドマークLMの位置関係において、図11(b)に示されるように、カメラの視野角γでランドマークLMを含む景色が撮影される。ランドマークLMは、カメラの視野角αの範囲に撮影される。つまり、画像においてランドマークLMが撮影された視野角α以外の領域にプライバシー保護処理を行うこととなる。また、本実施形態では、プローブカー10の進行方向を軸とし、その軸から視野角αで定義される領域の境界までの視野角をβとしている。これら視野角α、βは、三角関数の関係から、α=tan―1((x+w)/y)、β=tan―1(x/y)と表される。
【0087】
これらαおよびβを定義することで、図11(b)に示されるように、画像の横方向の長さTに対してランドマークLMが表示されてプライバシー保護処理が行われない長さはαT/γとなる。なお、画像の横方向の長さTに対して視野角βを含むプライバシー保護処理が行われる長さは(T/2)+(βT/γ)となる。
【0088】
画像変換部32は、画像においてランドマークLMを含む領域以外の領域を第1実施形態と同様の方法でプライバシー保護処理する。こうしてプライバシー保護処理がなされると、図11(c)に示されるように、画像においてランドマークLMが写った領域以外の領域のプライバシーが保護される。
【0089】
こうして画像変換部32にてプライバシー保護処理がなされると、保護処理された画像の画像データがプローブ情報配信部35に出力され、広域ネットワーク20を介して端末40に配信される。これにより、ユーザは端末40にてランドマークLMの様子を閲覧することができる。このとき、画像においてランドマークLM以外の領域はプライバシー保護されているため、画像中のプライバシー情報をユーザに知られずに済む。
【0090】
以上説明したように、本実施形態では、地図データを用いている。これにより、画像において、プローブカー10と目的とする対象物との位置関係から、目的とする対象物以外の領域を画像処理する領域として選択することができる。これにより、目的地以外のプライバシー情報を保護することができる。
【0091】
(第4実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態で示されるプローブシステムでは、プローブカー10に2台のカメラが搭載され、各カメラの視差を利用してプライバシー保護処理を決定するようにしている。このように視差画像を用いることで、撮影された画像においてプローブカー10から近い場所のみを限定してプライバシー保護処理を行うことが可能となる。以下、第4実施形態におけるプローブシステムについて説明する。
【0092】
上述のように、本実施形態では、プローブカー10に2台のカメラが搭載されている。それぞれのカメラで撮影された画像に視差が生じるように、各カメラは離されてプローブカー10に搭載される。そして、プローブカー10は、広域ネットワーク20を介して、各カメラで撮影した画像の画像データと、前方車両および自車との間の距離と、をサーバ30に送信する。
【0093】
以下、本実施形態に係るプローブシステムの作動について、図12を参照して説明する。図12は、本実施形態に係るプローブシステムのサーバ30にて実行される処理内容を示した図である。
【0094】
まず、ステップ300で、第1実施形態のステップ100と同様の処理が行われる。
【0095】
そして、ステップ310では、視差画像による距離測定がなされる。具体的には、図2において画像変換部32に各カメラで撮影された画像の画像データが入力されると、各画像の視差に基づき、前方車両とプローブカー10との間の距離が求められる。
【0096】
ステップ320では、ステップ310で得られた距離が所定距離Zを超えるか否かが判定される。所定距離Zとは、画像にプライバシー処理保護を施すか否かを判定するための基準パラメータであり、サーバ30の管理者が自由に設定できるようになっている。そして、ステップ310で得られた距離が所定距離Zを上回る場合、ステップ340に進む。一方、ステップ310で得られた距離が所定距離Zを下回る場合、ステップ330に進む。
【0097】
ステップ330では、所定距離Zよりも近い部分にプライバシー保護処理が施される。これは、第1実施形態と同様の方法によりなされる。図13は、車両前方において所定距離Zを下回る部分、すなわち前方車両のみにプライバシー保護処理を施した一例を示した図である。図13(a)はプライバシー保護処理前の画像の図、図13(b)はプライバシー保護処理後の画像の図である。
【0098】
図13(a)に示されるように、例えば、プローブカー10の前方に車両が走行しており、その様子が撮影され、その車両とプローブカー10との間の距離が所定距離Zよりも短いとする。したがって、図13(b)に示されるように画像において前方車両の部分のみがプライバシー保護処理される。
【0099】
ステップ340では、第1実施形態のステップ130と同様の処理が行われる。
【0100】
以上説明したように、複数のカメラで撮影した視差画像を利用して、前方の対象物との距離を測定する。そして、その距離が画像のプライバシー情報が写ると予測される距離を超えると、その部分のみを画像処理する。これにより、画像においてプライバシー情報が鮮明に写ってしまうと考えられる一部分のみを選択的に画像処理することができ、画像のクオリティを確保しつつ、プライバシー情報を保護することができる。
【0101】
(第5実施形態)
本実施形態では、第1〜4実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態で示されるプローブシステムでは、プローブカー10に搭載されるカメラのレンズが遠距離にピントが合わされたものを用いるようにしている。以下、第5実施形態におけるプローブシステムについて説明する。
【0102】
本実施形態に係るプローブシステムの構成は、例えば第1実施形態のサーバ30において画像変換部32を無くした構成となっている。つまり、プローブ情報受信部31で受信された画像データは、直接データベース管理部33に入力される。
【0103】
上述のように、本実施形態では、プローブカー10に搭載されるカメラのレンズのピントが遠方に合わされている。これにより、遠くのものをはっきりと撮影できると共に、近くのものをはっきり写さないようにすることができる。すなわち、近くのもの、例えば前方車両のナンバープレートや歩行者等、プライバシーを保護すべき対象をぼかして撮影することができるのである。
【0104】
図14は、第5実施形態の内容を説明する図であり、(a)はプローブカー10に搭載されたカメラの撮影範囲を示した図、(b)は撮影された画像の一例を示した図である。図14(a)に示されるように、プローブカー10を中心に半径d0の範囲においては、カメラのレンズではピントが合わない範囲になっており、撮影される画像において、この範囲内に存在するものはぼやけて撮影される。つまり、撮影すること自体がプライバシー保護処理となるのである。一方、プローブカー10から遠く離れた位置においては、カメラのピントが合っているため、例えば建物や看板等が鮮明に撮影される。
【0105】
また、図14(b)に示されるように、画像において下部はプローブカー10から近い場所が写る。このため、カメラのピントが合っておらず、撮影画像がぼやけており、プライバシー情報が保護される。画像において上部はプローブカー10から遠い場所が写るためカメラのピントが合っているが、プライバシーを保護すべき対象物の撮影サイズが小さいため、画像ではプライバシー情報を確認できないのでプライバシー保護処理を施す必要がない。
【0106】
以上説明したように、本実施形態では、遠方にピントが合ったレンズをカメラに採用している。これにより、プライバシー情報が撮影されてしまうプローブカー10から近い場所をぼかして撮影することができる。
【0107】
(第6実施形態)
本実施形態では、第1〜3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、プライバシーに関する情報を優先的に検出し、プライバシー保護処理するようにしている。以下、第6実施形態におけるプローブシステムについて説明する。
【0108】
図15は、第6実施形態に係るサーバ30のブロック構成図である。図15に示されるように、本実施形態のサーバ30は、第1実施形態のサーバ30に対して、優先処理決定部37、優先ルールテーブル38、優先処理テーブル39が備えられた構成となっている。
【0109】
優先処理決定部37は、後述する優先ルールテーブル38にあらかじめ設定された優先ルールに従い、画像に対してプライバシー保護処理を行うか否かを判定する機能を有するものである。この優先処理決定部37は、プローブ情報受信部31から画像の画像データを受け取ると、優先ルールテーブル38にアクセスして画像に添付された情報(撮影位置や速度等)が優先ルールに該当するか否かを判定する。そして、画像情報が優先ルールに該当する場合、その画像を後述する優先処理テーブル39にストックさせ、画像データをデータベース管理部33に出力する。
【0110】
優先ルールテーブル38は、画像においてプライバシー保護処理を施す判定材料となる優先ルールが設定されたテーブルであり、優先度の高い順番で優先ルールが設定されている。この優先ルールとは、プローブカー10のカメラで撮影された画像にプライバシー情報がより鮮明に撮影される確率が高い場合を想定して、そういう場合に撮影された画像にプライバシー保護処理を行うための判定基準となるものである。
【0111】
例えば、プローブカー10が停車中に前方を撮影する場合、プローブカー10の前方に位置する車両のナンバープレートを鮮明に撮影する可能性が高い。したがって、プローブカー10の車速が0の場合、優先的にプライバシー保護処理を行う。また、プローブカー10の車種がバスである場合、カメラが道路から高い位置に設置されるため、広範囲を鮮明に撮影する可能性が高い。したがって、プローブカー10がバスである場合、優先的にプライバシー保護処理を行う。このように、プライバシー情報を鮮明に撮影してしまうような状況に合わせて優先ルールを設定し、その優先ルールに該当する画像に対して積極的にプライバシー保護処理を行うようにする。なお、この優先ルールは、サーバ30の管理者によって設定される。
【0112】
優先処理テーブル39は、上記優先処理決定部37にてプライバシー保護処理を施すと判定された画像を優先順にテーブル化したものである。ここで優先順とは、この優先処理テーブルに39に記憶された順である。
【0113】
次に、本実施形態に係るプローブシステムのサーバ30の作動について、図16を参照して説明する。図16は、本実施形態に係るサーバ30にて実行される処理内容を示した図である。本実施形態では、プローブカー10から送信される画像においてプライバシー保護処理を行う画像を優先的にピックアップする処理(画像ピックアップ処理)と、ピックアップされた画像のプライバシー保護処理と、が非同期、すなわちそれぞれ独立になされるようになっている。
【0114】
まず、画像においてプライバシー保護処理を行う画像を優先的にピックアップする処理について説明する。図16において、ステップ400では、第1実施形態のステップ100と同様の処理がなされる。
【0115】
ステップ410では、画像の画像情報が優先ルールに該当するか否かが判定される。具体的には、プローブ情報受信部31から画像の画像データが優先処理決定部37に入力されると、優先処理決定部37が優先ルールテーブル38にアクセスし、画像の画像情報が優先ルールに該当するか否かを優先度が高い優先ルールから判定していく。
【0116】
そして、画像の画像情報が優先ルールに該当しない場合、ステップ430に進む。一方、画像情報が優先ルールのうち、少なくとも1つの優先ルールに該当する場合、その画像に対してプライバシー保護処理を行うため、ステップ420に進む。
【0117】
ステップ430では、優先処理テーブル登録がなされる。すなわち、ステップ420にて優先的にプライバシー保護処理を行うと判定された画像が優先度に応じて画像ファイル名と共に優先処理テーブル39に記憶される。こうして画像においてプライバシー保護処理を行う画像を優先的にピックアップする処理は終了する。
【0118】
また、ステップ410にて優先的にプライバシー保護処理を行わないと判定されると、ステップ430が実行される。なお、ステップ430では、第1実施形態130と同様の処理がなされる。
【0119】
一方、画像変換部32によって優先処理テーブル39に記憶された画像に対してプライバシー保護処理が行われる。図16のステップ500では、画像処理プロセス初期化がなされる。これは、前回行った画像処理内容を消去し、新たに画像処理できるようにするための処理である。
【0120】
ステップ510では、優先処理テーブル39が参照される。つまり、画像変換部32が優先処理テーブル39にアクセスして、プライバシー保護処理すべき優先度の高い画像ファイル名を参照するのである。さらに、画像変換部32は、参照した画像ファイル名を画像データベース34から読み出すようにデータベース管理部33に指示し、画像の画像データを取得する。
【0121】
ステップ520、530では、第1実施形態のステップ120、130と同様の処理がなされる。
【0122】
そして、ステップ540では、優先処理テーブル39のレコード削除がなされる。すなわち、上記ステップ510で参照された画像ファイル名が画像変換部32によって優先処理テーブル39から削除される。この後、再びステップ500に戻り、順次、優先処理テーブル39に記憶された画像に対してプライバシー保護処理が行われる。
【0123】
以上説明したように、画像処理を行う優先ルールに従って、画像処理すべきか否かを判定する。これにより、プローブカー10から送信される多数の画像の中から画像処理すべき画像を優先的に選択および画像処理することができる。
【0124】
(他の実施形態)
上記第1〜第6実施形態では、プローブシステムにおいて画像データの送受信に広域ネットワーク20、すなわちインターネットを介していたが、例えばプローブカー10にPHSを搭載して電話回線を用いて画像データをサーバ30に送信するようにしても良い。また、リアルタイム性は劣るが、1日に一回、フラッシュメモリや携帯型ハードディスクなどを利用して、サーバ30にデータを直接コピーするなどにしても良い。
【0125】
第4実施形態では、2枚の視差画像に基づき、前方車両とプローブカー10との間の距離を測定しているが、例えばレーザレーダ等のセンサにより、前方車両とプローブカー10との間の距離を測定するようにしても良い。
【0126】
上記第1〜4、第6実施形態において、サーバ30の画像変換部32が行うプライバシー保護処理は、画像をぼかすことのみに限らず、色調変更等によってプライバシー保護情報を隠すようにしても構わない。
【0127】
なお、各図中に示したステップは、各種処理を実行する手段に対応するものである。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプローブシステムのシステム構成図である。
【図2】図1に示されるサーバのブロック構成図である。
【図3】第1実施形態で示されるプローブシステムのサーバにて実行される処理内容を示した図である。
【図4】撮影された画像に対する画像処理領域を説明するための図である。
【図5】車両IDに対応したぼかしパラメータαを表で示した図である。
【図6】第1実施形態に係る画像変換処理の内容を示した図である。
【図7】プライバシー保護処理前および処理後の画像を示した図である。
【図8】プローブカーの速度とぼかしパラメータαとの関係を示した図である。
【図9】第2実施形態に係るプローブシステムのサーバにて実行される処理内容を示した図である。
【図10】第3実施形態に係るサーバのブロック構成図である。
【図11】第3実施形態に係る画像変換部が行うプライバシー保護処理の内容を示した図であり、(a)はプローブカーとランドマークとの位置関係を示した図、(b)はプローブカーとランドマークとの位置関係から画像においてプライバシー保護処理を行う領域を示した図、(c)はプライバシー保護処理された画像の一例を示した図である。
【図12】第4実施形態に係るプローブシステムのサーバにて実行される処理内容を示した図である。
【図13】車両前方において所定距離Zを下回る部分のみにプライバシー保護処理を施した一例を示した図であり、(a)はプライバシー保護処理前の図、(b)はプライバシー保護処理後の図である。
【図14】第5実施形態の内容を説明する図であり、(a)はプローブカーに搭載されたカメラの撮影範囲を示した図、(b)は画像処理結果を示した図である。
【図15】第6実施形態に係るサーバのブロック構成図である。
【図16】第6実施形態に係るプローブシステムのサーバにて実行される処理内容を示した図である。
【符号の説明】
【0129】
10…プローブカー、20…広域ネットワーク、30…サーバ、
32…画像変換部、36…地図データベース、37…優先処理決定部、
38…優先ルールテーブル、39…優先処理テーブル、40…端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラで前方もしくはその周囲を撮影すると共に、撮影した画像の画像データを送信するプローブカー(10)と、
広域ネットワーク(20)を介して、前記プローブカーから前記画像の画像データおよび前記車両情報を受信すると共に、前記画像に撮影されたプライバシー情報を隠す処理を行い、前記広域ネットワークを介してユーザのリクエストに応じてプライバシー保護処理を行った画像を配信するサーバ(30)と、
前記広域ネットワークを介して、前記プローブカーで撮影された画像の中から所望の画像をリクエストすると共に、前記サーバから前記リクエストした画像を受信する端末(40)と、を備えるプローブシステムにおいて、
前記サーバは、前記プローブカーから受信した画像のうちの一部分をプライバシー情報が含まれる場所として特定し、この一部分に関して前記プライバシー情報を保護するための画像処理を行う画像変換部(32)を有していることを特徴とするプローブシステム。
【請求項2】
前記プローブカーは、前記画像の画像データに車両ID情報を添付して送信するようになっており、
前記画像変換部は、前記画像において前記プライバシー情報を含む領域に画像処理を行うための画像処理パラメータαを有し、前記画像処理パラメータαは前記車両IDに応じて設定されており、前記画像の縦方向の長さをLとしたとき、前記画像を、前記縦方向の長さLに応じて画像上部がαLで区画される領域と、画像下部が(1−α)Lで区画される領域と、で表し、前記画像下部の領域に画像処理を行うようになっていることを特徴とする請求項1に記載のプローブシステム。
【請求項3】
前記画像処理パラメータαは、前記プローブカーの速度が任意の速度よりも大きい場合には前記任意の速度に応じた画像処理パラメータの値よりも大きい値に設定され、前記プローブカーの速度が前記任意の速度よりも小さい場合には前記任意の速度に応じた画像処理パラメータの値よりも小さい値に設定されることを特徴とする請求項2に記載のプローブシステム。
【請求項4】
前記プローブカーは、前記画像の画像データに前記画像を撮影した位置情報を添付して送信するようになっており、
前記サーバは、地図データが記憶された地図データベース(36)を有し、前記ユーザから前記広域ネットワークを介して目的地(LM)を含む画像のリクエストを受信すると、前記画像変換部は、前記位置情報および前記地図データに基づく前記プローブカーと前記目的地との位置関係から、前記画像において前記目的地を除く領域に画像処理を行うようになっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のプローブシステム。
【請求項5】
前記プローブカーは、前方を撮影するカメラを複数搭載しており、各カメラによって視差画像を撮影し、前記視差画像の画像データを送信するようになっており、
前記広域ネットワークを介して前記視差画像の画像データが前記サーバで受信されると、前記画像変換部は、前記視差画像に基づき、前記プローブカーと前記視差画像に写る対象物との間の距離を求め、前記距離が前記画像のプライバシー情報が写ると予測される距離を超える場合、前記対象物に対して画像処理を行うようになっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のプローブシステム。
【請求項6】
前記サーバは、優先的に前記画像に画像処理を行うための優先ルールが格納された優先ルールテーブル(38)に基づいて画像処理を行うか否かを判定し、画像処理を行うと判定するとその画像の名前を優先的に画像処理する優先処理テーブル(39)に格納する優先処理決定部(37)を有しており、
前記画像変換部は、前記優先処理テーブルに格納された画像の名前を参照し、この画像の画像処理を行うようになっていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のプローブシステム。
【請求項7】
前記プローブカーに搭載されるカメラのレンズは、その焦点が遠方に合わされていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のプローブシステム。
【請求項8】
プローブカー(10)に搭載されたカメラで撮影された画像の画像データを、広域ネットワーク(20)を介して受信すると共に、受信した画像のうちの一部分をプライバシー情報が含まれる場所として特定し、この一部分に関して前記プライバシー情報を保護するための画像処理を行う画像変換部(32)を有しており、
前記広域ネットワークを介してユーザが操作する端末(40)から所望の画像がリクエストされると、
前記リクエストの情報を受信すると共に、前記リクエストに応じて前記画像変換部で画像処理された画像を前記端末に配信するようになっていることを特徴とするサーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−178825(P2006−178825A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372942(P2004−372942)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】