説明

ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドの同定法およびそれから得られる毛髪有効薬剤

ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドを同定するための方法を記載する。ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドは、ヘアコンディショナーマトリックスから毛髪に強く結合し、ヘアコンディショナーマトリックス中で安定である。ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドに基づく、ヘアコンディショナーおよび毛髪着色料などのペプチドをベースとする有効薬剤を記載する。ペプチドをベースとするヘアコンディショナーおよび毛髪着色料は、直接的に、あるいは任意のスペーサーを介して毛髪コンディショニング剤または着色剤と結びつけられた、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドからなる。これらのペプチドをベースとするヘアコンディショナーおよび着色料を含んでなるヘアケアおよび毛髪着色製品組成物も記載する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この特許出願は、2005年3月1日に出願された米国仮特許出願第60/657496号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明はパーソナルケア製品の分野に関する。本発明は、より詳細には、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドを同定するための方法、ならびにペプチドをベースとする毛髪有効薬剤(ヘアコンディショナーおよび着色料など)におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ヘアコンディショナーおよび毛髪着色料は、よく知られている頻繁に使用されるヘアケア製品である。最新のヘアコンディショナーおよび非酸化染毛剤に関する主な課題は、これらが、持続性作用に必要とされる耐久性を欠くことである。酸化染毛剤では色が持続するが、それが含有する酸化剤によって、毛髪損傷が引き起こされる。こうした組成物の耐久性を向上させるために、ペプチドをベースとするヘアコンディショナー、毛髪着色料、および他の有効薬剤が開発されている(ホワン(Huang)ら、同時係属中の共同所有される特許文献1、および特許文献2)。ペプチドをベースとするヘアコンディショナーまたは着色料は、毛髪に対して高い結合親和性を有する特異的ペプチド配列を、それぞれコンディショニング剤または着色剤と結びつけることによって調製される。ペプチド部分は、毛髪に結合し、それによって、コンディショニング剤または着色剤は強く付着される。毛髪に対して高い結合親和性を有するペプチドは、ファージディスプレイスクリーニング技術を使用して同定されている(ホワン(Huang)ら、上記;エステル(Estell)ら、特許文献3;マレイ(Murray)ら、特許文献4;ヤンセン(Janssen)ら、特許文献5;およびヤンセン(Janssen)ら、特許文献6)。特許文献3、特許文献4、特許文献5、および特許文献6の出願は、バスジェル(bath gel)希薄溶液(すなわち2%水溶液)の存在下で毛髪サンプルとペプチドライブラリを接触させることと、ファージディスプレイスクリーニング中にバスジェル溶液でファージ−ペプチド−毛髪複合体を洗浄することを記載しているが、使用されるバスジェルの濃度は、バスジェル耐性の毛髪結合ペプチドを同定するには低過ぎる。
【0004】
毛髪結合ペプチドは、ヘアコンディショナーマトリックスが存在する場合には、結合親和性が低下するので、コンディショナーマトリックスから毛髪には強く結合しない、あるいは、ヘアコンディショナーの適用によって毛髪から洗浄される。さらに、毛髪結合ペプチドは、コンディショナーマトリックス中で長い時間安定ではなく、これによって、ヘアコンディショナー製品では、時間とともにその結合親和性が低下する。
【0005】
シャンプー耐性の毛髪結合ペプチドを同定するための方法(ホワン(Huang)ら、同時係属中の共同所有される特許文献7、およびオブライエン(O’Brien)ら、同時係属中の共同所有される特許文献8)、癜風菌(Malassezia furfur)の細胞表面タンパク質に結合するシャンプー耐性の抗体断片(ドルク(Dolk)ら非特許文献1)、およびスキンケア組成物耐性の皮膚結合ペプチド(ワン(Wang)ら、同時係属中の共同所有される特許文献9)が報告されている。しかし、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドを同定するための方法は、記載されていない。
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0050656号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0226839号明細書
【特許文献3】国際公開第0179479号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0098524号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0152976号明細書
【特許文献6】国際公開第04048399号パンフレット
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0050656号明細書
【特許文献8】米国特許出願第11/251715号明細書
【特許文献9】米国仮特許出願第60/657494号
【非特許文献1】「Appl.Environ.Microbiol.」71:442〜450(2005年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、解決されるべき課題は、ヘアコンディショナーマトリックスから毛髪に結合することが可能であり、ヘアコンディショナー中で安定である毛髪結合ペプチドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願人等は、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドを同定するための方法を発見することによって、所定の課題に対処している。同定されたヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド配列は、ヘアコンディショナーマトリックスから毛髪に結合し、コンディショナーマトリックス中での21日の期間後も、結合活性の喪失を示さない。ヘアコンディショナーマトリックスが存在する場合でも毛髪に対して高い結合親和性を有し、ヘアコンディショナー組成物中での安定性が向上された、ヘアコンディショナーおよび着色料などのペプチドをベースとする毛髪有効薬剤を調製するために、こうした毛髪結合ペプチドを使用することができる。
【0009】
本発明は、ヘアケア用組成物中でリンカーおよび接着剤として有用な、新規の毛髪コンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドの同定および単離のための方法を提供する。毛髪コンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドを、化学薬品またはペプチドスペーサーおよび有効薬剤(着色料および/またはコンディショナーなど)を場合により含んでなるジブロックまたはトリブロック構造に組み込むことができる。本発明の方法は、様々なコンディショニング剤の存在下での毛髪結合特性についての、コンビナトリアルに産生されたペプチドライブラリのスクリーニングに頼るものである。
【0010】
したがって、本発明は、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドを同定するための方法であって、
a)DNA結合型(associated)ペプチドのコンビナトリアルライブラリを提供すること;
b)(a)のライブラリを毛髪サンプルと接触させて、DNA結合型ペプチド−毛髪複合体を含んでなる反応溶液を形成させること;
c)反応溶液から、(b)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を単離すること;
d)(c)の単離されたDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を、その濃度が最大(full strength)濃度の少なくとも約10%であるヘアコンディショナーマトリックスと接触させて、コンディショニング液を形成させること;
e)コンディショニング液から(d)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を単離すること;
f)(e)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体のペプチド部分をコードするDNAを増幅させること;および
g)コンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドをコードする(f)の増幅されたDNAを配列決定すること(ここで、コンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが同定される)
を含んでなる方法を提供する。
【0011】
場合により、工程(e)の後、毛髪結合ペプチドを、溶離薬を用いて毛髪から溶離することができ、本発明の方法によって同定されたペプチドを、この方法への連続的な適用によって、さらに精製することができる。
【0012】
さらに、本発明は、
a)DNA結合型ペプチドのコンビナトリアルライブラリを提供する工程;
b)(a)のライブラリを毛髪サンプルと接触させて、DNA結合型ペプチド−毛髪複合体を含んでなる反応溶液を形成する工程;
c)反応溶液から、(b)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を単離する工程;
d)(c)の単離されたDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を、濃度が最大濃度の少なくとも約10%であるヘアコンディショナーマトリックスと接触させて、コンディショニング液を形成する工程;
e)(d)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体をコンディショニング液から単離する工程;
f)(e)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体のペプチド部分をコードするDNAを増幅させる工程;および
g)コンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドをコードする(f)の増幅されたDNAを配列決定する工程(ここで、コンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが同定される)
を含んでなるプロセスによって同定されるヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドを提供する。本発明の特異的なヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号12で示される。
【0013】
一実施形態では、本発明は、一般構造(HCP−BAで表されるジブロック型のペプチドをベースとする有効薬剤を提供する。式中、
a)HCPは、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドであり、
b)BAは、有効薬剤であり、
c)mは、1から約100までの範囲であり、
d)nは、1から約50,000までの範囲である。
【0014】
同様にして、本発明は、一般構造[(HCP−S)−BAで表されるトリブロック型のペプチドをベースとする有効薬剤を提供する。式中、
a)HCPは、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドであり、
b)BAは、有効薬剤であり、
c)Sは、スペーサーであり、
d)xは、1から約10までの範囲であり、
e)mは、1から約100までの範囲であり、
f)nは、1から約50,000までの範囲である。
【0015】
好ましい実施形態では、本発明は、ヘアコンディショナーおよび着色料を提供する。ここで、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドは、
a)DNA結合型ペプチドのコンビナトリアルライブラリを提供する工程;
b)(a)のライブラリを毛髪サンプルと接触させて、DNA結合型ペプチド−毛髪複合体を含んでなる反応溶液を形成させる工程;
c)反応溶液から(b)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を単離する工程;
d)(c)の単離されたDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を、濃度が最大濃度の少なくとも約10%であるヘアコンディショナーマトリックスと接触させて、コンディショニング液を形成する工程;
e)コンディショニング液から(d)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を単離する工程;
f)(e)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体のペプチド部分をコードするDNAを増幅させる工程;および
g)コンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドをコードする(f)の増幅されたDNAを配列決定する工程(ここで、コンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが同定される)
を含んでなるプロセスによって単離される。
【0016】
さらに、本発明は、有効な量の本発明のペプチド・ジブロックおよびトリブロック有効薬剤を含んでなるヘアケア製品組成物を提供する。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、毛髪上にペプチドをベースとするコンディショナーの保護層を形成するための方法であって、本発明の組成物を毛髪に適用することと、前記保護層を形成させることを含んでなる方法を提供する。同様に、本発明は、毛髪を着色するための方法であって、本発明の組成物を、毛髪を着色させるのに十分な時間、毛髪に適用することを含んでなる方法を提供する。あるいは、本発明は、眉または睫毛を着色するための方法であって、本発明の組成物を眉または睫毛に適用することを含んでなる方法を提供する。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、
a)
i)(HCPm)n−C;および
ii)[(HCP−S)−C
(式中、
1)HCPは、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドであり、
2)Cは、着色剤であり、
3)nは、1から約50,000までの範囲であり、
4)Sは、スペーサーであり、
5)mは、1から約100までの範囲であり、
6)xは、1から約10までの範囲であり、
ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドは、
A)DNA結合型ペプチドのコンビナトリアルライブラリを提供する工程;
B)(A)のライブラリを毛髪サンプルと接触させて、DNA結合型ペプチド−毛髪複合体を含んでなる反応溶液を形成する工程;
C)反応溶液から(B)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を単離する工程;
D)(C)の単離されたDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を、濃度が最大濃度の少なくとも約10%であるヘアコンディショナーマトリックスと接触させて、コンディショニング液を形成する工程;
E)コンディショニング液から(D)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を単離する工程;
F)(E)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体のペプチド部分をコードするDNAを増幅させる工程;および
G)ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドをコードする、(F)の増幅されたDNAを配列決定する工程(ここで、コンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが同定される)
を含んでなる方法によって選択される)
よりなる群から選択される、毛髪着色料を含んでなる毛髪着色組成物を提供する工程;ならびに
b)(a)の毛髪着色組成物を、毛髪着色料が、毛髪、眉、または睫毛に結合するのに十分な時間、毛髪、眉、または睫毛に適用する工程
を含んでなる、毛髪、眉、または睫毛を着色するための方法を提供する。
【0019】
同様に、本発明は、
a)
i)(HCP−HCA;および
ii)[(HCP−S)−HCA
(式中、
1)HCPは、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドであり、
2)HCAは、毛髪コンディショニング剤であり、
3)nは、1から約50,000までの範囲であり、
4)Sは、スペーサーであり、
5)mは、1から約100までの範囲であり、
6)xは、1から約10までの範囲であり、
ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドは、
A)DNA結合型ペプチドのコンビナトリアルライブラリを提供する工程;
B)(A)のライブラリを毛髪サンプルと接触させて、DNA結合型ペプチド−毛髪複合体を含んでなる反応溶液を形成する工程;
C)反応溶液から(B)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を単離する工程;
D)(C)の単離されたDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を、濃度が最大濃度の少なくとも約10%であるヘアコンディショナーマトリックスと接触させて、コンディショニング液を形成する工程;
E)コンディショニング液から(D)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を単離する工程;
F)(E)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体のペプチド部分をコードするDNAを増幅させる工程;
G)コンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドをコードする(F)の増幅されたDNAを配列決定する工程(ここで、コンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが同定される)
を含んでなる方法によって選択される)
よりなる群から選択される、ヘアコンディショナーを含んでなるヘアケア組成物を提供する工程;ならびに
b)(a)のヘアケア組成物を毛髪に適用して、前記保護層を形成させる工程
を含んでなる、毛髪上にペプチドをベースとするコンディショナーの保護層を形成するための方法を提供する。
【0020】
図面の簡単な説明および配列の説明
本発明は、この出願の一部をなす以下の詳細な説明、図および添付の配列説明から、より十分に理解することができる。
【0021】
以下の配列は、37 C.F.R.1.821−1.825(「Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures−the Sequence Rules」)に従い、世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998年)、およびEPOの配列リスト要件(sequence listing requirements)、およびPCT(規則5.2および49.5(a−bis)および実施細則(Administrative Instructions)の第208節および付属書C)と整合性がある。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データに使用される記号および形式は、37C.F.R.§1.822に記載される規則に準拠する。
【0022】
配列番号1〜5は、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドのアミノ酸配列である。
【0023】
配列番号6は、カスパーゼ3切断部位のアミノ酸配列である。
【0024】
配列番号7は、ファージDNAを配列決定するために使用されるオリゴヌクレオチドプライマーのヌクレオチド配列である。
【0025】
配列番号8は、実施例4において対照として使用される皮膚結合ペプチドのアミノ酸配列である。
【0026】
配列番号9は、実施例4に記載される通りに、C末端で蛍光タグ5−カルボキシフルオレセイン−アミノヘキシルアミダイトで誘導体化された、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドHCP.1(5−FAM)のアミノ酸配列である。
【0027】
配列番号10は、実施例4に記載される通りに、C末端で蛍光タグ5−カルボキシフルオレセイン−アミノヘキシルアミダイトで誘導体化された、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドHCP.6(5−FAM)のアミノ酸配列である。
【0028】
配列番号11は、実施例4に記載される通りに、C末端で蛍光5−カルボキシフルオレセイン−アミノヘキシルアミダイトで誘導体化された、対照の皮膚結合ペプチドであるスキン(Skin)1(5−FAM)のアミノ酸配列である。
【0029】
配列番号12は、実施例8に記載される、システインが付着されたHCP.1毛髪結合ペプチドのアミノ酸配列である。
【0030】
配列番号13〜15は、ペプチドスペーサーのアミノ酸配列である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、ヘアコンディショナーマトリックスが存在する場合でもヒト毛髪に高親和性で特異的に結合するヘアコンディショナー耐性のペプチド配列を同定するための方法を提供する。同定されたヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド配列は、ヘアコンディショナーマトリックスから毛髪に結合し、コンディショナーマトリックス中での21日の期間後も、結合活性の喪失を示さない。ヘアコンディショナーマトリックスが存在する場合でも毛髪に対して高い結合親和性を有し、ヘアコンディショナー組成物中の安定性が向上された、ヘアコンディショナーおよび着色料などのペプチドをベースとする毛髪有効薬剤を調製するために、こうした毛髪結合ペプチドを使用することができる。
【0032】
以下の定義は、本明細書で使用され、特許請求の範囲および本明細書の解釈のために参照されるべきである。
【0033】
「HCP」は、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドを意味する。
【0034】
「BA」は、毛髪有効薬剤を意味する。
【0035】
「HCA」は、毛髪コンディショニング剤を意味する。
【0036】
「C」は、毛髪着色剤を意味する。
【0037】
「S」は、スペーサーを意味する。
【0038】
用語「ペプチド」は、ペプチド結合または改変されたペプチド結合によって互いに連結された2つまたはそれ以上のアミノ酸を指す。
【0039】
用語「毛髪」は、本明細書では、ヒトの毛髪、眉、および睫毛を指す。
【0040】
語句「ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド」は、ヘアコンディショナーマトリックスから毛髪に強く結合し、ヘアコンディショナーマトリックス中で安定であるペプチドを指す。
【0041】
語句「ヘアコンディショナーマトリックス」は、希釈されたあるいは希釈されていない形のヘアコンディショナー製品、または少なくとも1成分のヘアコンディショナー製品、さらに、少なくとも2成分のヘアコンディショナー製品を含んでなる混合物を含んでなる媒質を指す。ヘアコンディショナー製品の成分としては、これらに限定されないが、毛髪コンディショニング剤、酸化防止剤、保存剤、フィラー、界面活性剤、UVAおよび/またはUVB日焼け防止薬、香料、増粘剤、湿潤剤、およびアニオン性、非イオン性、または両性のポリマー;および染料または顔料が含まれる。
【0042】
語句「最大濃度」は、それがヘアコンディショナー製品中で存在するような成分の濃度を指す。
【0043】
用語「有効薬剤」は、毛髪に適用するためのヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドと結びつき、美容または皮膚科学的効果を提供することができる化合物または物質を指す一般的な用語である。有効薬剤としては一般的に、コンディショナー、着色料、芳香、日焼け防止薬など、その他、パーソナルケア業界で一般に使用される他の物質が含まれる。
【0044】
用語「結びつく」および「結びつけられる」は、本明細書では、任意の化学結合を指し、共有結合的および非共有結合的な相互作用が含まれる。
【0045】
用語「ペプチド−毛髪複合体」は、ペプチド上の結合部位を介して毛髪繊維に結合されるペプチドを含んでなる構造を意味する。
【0046】
用語「DNA結合型ペプチド−毛髪複合体」は、ペプチドが、同定する核酸成分と結びつけられている、毛髪とペプチドとの複合体を指す。一般的に、DNA結合型ペプチドは、ファージディスプレイなどのディスプレイシステムの結果として生成される。このシステムでは、ペプチドは、ファージの表面に提示されるが、そのペプチドをコードするDNAは、ファージの付着された糖タンパク質コート内に含有される。ファージ内のコードDNAの結合を、ペプチドの同定のためのコード領域の増幅を容易にするために使用することができる。
【0047】
用語「非標的」は、ペプチドが結合親和性を有することが所望されない基質を指す。ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドの選択については、非標的としては、これらに限定されないが、皮膚およびプラスチックが含まれる。
【0048】
用語「ナノ粒子」は、本明細書では、平均粒子直径が1nmと100nmの間である粒子と定義される。好ましくは、粒子の平均粒子直径は、約1nmと40nmの間である。本明細書では、「粒径」と「粒子直径」は、同じ意味である。ナノ粒子としては、これらに限定されないが、金属、半導体、ポリマー、または他の有機または無機粒子が含まれる。
【0049】
用語「アミノ酸」は、タンパク質またはポリペプチドの基本化学構造単位を指す。以下の省略形は、特定のアミノ酸を同定するために本明細書で使用される。
【0050】
【表1】

【0051】
「遺伝子」は、コード配列の前にある(5’非コード配列)、およびコード配列の後にある(3’非コード配列)制御配列を含む、特定のタンパク質を発現する核酸フラグメントを指す。「天然の遺伝子」は、それ自体の制御配列を伴って天然に発見されるような遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」は、制御配列およびコード配列(ただし、どちらも天然に見られないもの)を含んでなる、天然の遺伝子でない任意の遺伝子を指す。したがって、キメラ遺伝子は、異なる供給源から得られる制御配列およびコード配列、あるいは、同じ供給源から得られるが、天然に見られるものとは異なる方式で配置された制御配列およびコード配列を含んでなる可能性がある。「外来の」遺伝子は、宿主生物中には通常見られず、遺伝子導入によって宿主生物に導入された遺伝子を指す。外来遺伝子は、天然でない生物に挿入された天然の遺伝子、またはキメラ遺伝子を含んでなる可能性がある。
【0052】
「合成の遺伝子」は、当業者に知られている手順を使用して化学的に合成されたオリゴヌクレオチド構成単位から組み立てられる可能性がある。こうした構成単位を、連結およびアニーリングさせて、遺伝子セグメントを形成し、その後、これを酵素的に組み立てて全遺伝子を構築する。「化学的に合成される」は、一連のDNAに関して、構成要素のヌクレオチドがin vitroで組み立てられることを意味する。確立されている手順を使用して、DNAの手動化学合成を成し遂げることもできるし、市販品として入手できるいくつかの機械のうちの1つを使用して自動化学合成を行うこともできる。したがって、宿主細胞のコドンバイアスを反映するように、ヌクレオチド配列の最適化に基づいて、最適な遺伝子発現のために遺伝子を調整することができる。コドン利用が、ホストによって好まれるコドンに偏る場合、当業者は、好結果の遺伝子発現の可能性を認識する。好ましいコドンの決定は、配列情報が利用可能である宿主細胞から得られる遺伝子の調査に基づくものであり得る。
【0053】
「コード配列」は、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。「適切な制御配列」は、コード配列の上流(5’非コード配列)、コード配列内、または下流(3’非コード配列)に位置し、連結されるコード配列の転写、RNAプロセシングまたは安定性、あるいは翻訳に影響を与えるヌクレオチド配列を指す。制御配列としては、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位、およびステム−ループ構造を挙げることができる。
【0054】
「プロモーター」は、コード配列または機能性RNAの発現を制御することが可能なDNA配列を指す。一般に、コード配列は、プロモーター配列に対して3’に位置する。プロモーターは、その全体が天然の遺伝子から得られる可能性もあるし、天然に見られる異なるプロモーターから得られる異なる要素からなる可能性もあるし、合成のDNA部分を含んでなる可能性もある。異なるプロモーターは、異なる組織または細胞タイプの、あるいは異なる発達段階で、あるいは異なる環境的または生理学的条件に応答して、遺伝子の発現を対象とする可能性があることを、当業者であれば理解するであろう。遺伝子を、最も多くの時間、最も多くの細胞タイプ中で発現させるプロモーターは、一般に「恒常的プロモーター」と呼ばれる。ほとんどの場合、制御配列の厳密な境界は、完全には定められないので、異なる長さのDNA断片が、同一のプロモーター活性を有する可能性もあることも、さらに理解されよう。
【0055】
用語「発現」は、本明細書では、本発明の核酸フラグメントから得られるセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を指す。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指す可能性もある。
【0056】
用語「形質転換」は、核酸フラグメントが宿主生物のゲノムへ移入し、遺伝的に安定な遺伝形質がもたらされることを指す、形質転換された核酸フラグメントを含有する宿主生物は、「トランスジェニック」または「組み換え型」または「形質転換された」生物と称される。
【0057】
用語「宿主細胞」は、形質転換されたまたは形質移入された、あるいは外因的なポリヌクレオチド配列による形質転換または形質移入が可能である細胞を指す。
【0058】
用語「プラスミド」、「ベクター」、および「カセット」は、細胞の中央代謝の一部ではなく、通常、環状二本鎖DNA分子の形の、しばしば遺伝子を運ぶ染色体外の因子を指す。こうした因子は、任意の供給源から得られる線状または環状の、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAの、自己複製配列、ゲノム組み込み配列、ファージ、またはヌクレオチド配列であり得、その中のいくつかのヌクレオチド配列は、適切な3’非翻訳配列と共に、選択された遺伝子産物のためのプロモーターフラグメントおよびDNA配列を細胞に導入することが可能である特有の構築物に連結または組み換えされている。「形質転換カセット」は、外来遺伝子を含有し、かつ外来遺伝子に加えて、特定の宿主細胞の形質転換を容易にする因子を有する特定のベクターを指す。「発現カセット」は、外来遺伝子を含有し、かつ外来遺伝子に加えて、異種宿主におけるその遺伝子の発現の増大を可能にする因子を有する特定のベクターを指す。
【0059】
用語「ファージ」または「バクテリオファージ」は、細菌を感染させるウイルスを指す。変化形を、本発明のために使用することができる。好ましいバクテリオファージは、M13と呼ばれる「野生型」ファージから得られる。M13系は、細菌内部で増殖することができるので、その結果、これは細胞を破壊せず、感染はするが、連続的に新しいファージを作らせることはない。これは、一本鎖DNAファージである。
【0060】
用語「ファージディスプレイ」は、バクテリオファージまたはファージミド粒子の表面上の、機能性の外来ペプチドまたは低分子タンパク質の提示を指す。遺伝子工学によるファージを、その天然の表面タンパク質のセグメントとしてペプチドを提示するために使用することができる。ペプチドライブラリは、異なる遺伝子配列を有するファージの集団によって産生することができる。
【0061】
「PCR」または「ポリメラーゼ連鎖反応」は、特定のDNA部分の増幅のために使用される技術である(米国特許第4,683,195号明細書および第4,800,159号明細書)。
【0062】
本明細書で使用される標準の組換えDNAおよび分子クローニング技術は、当分野でよく知られており、サムブルック,J.(Sambrook,J)、フリッチュ,E.F.(Fritsch,E.F)およびマニアティス,T.(Maniatis,T))、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版、コールドスプリングハーバー研究所出版局(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、ニューヨーク、コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor,NY)(1989年)(以下「マニアティス(Maniatis)」)によって;シルハーヴィー,T.J.(Silhavy,T.J.)、ベンアン,M.L.(Bennan,M.L.)、およびエンクヴィスト,L.W.(Enquist,L.W.)、「Experiments with Gene Fusions」、コールドスプリングハーバー研究所出版局(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、ニューヨーク、コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor,NY)(1984年)によって;また、グリーン出版協会(Greene Publishing Assoc.)およびワイリーインターサイエンス(Wiley Interscience)(1987)によって発行された、オースベル,F.M.(Ausubel,F.M.)ら、「Current Protocols in Molecular Biology」によって記載されている。
【0063】
本発明は、ヘアコンディショナーマトリックスが存在する場合にも高親和性で毛髪に特異的に結合するヘアコンディショナー耐性のペプチド配列を同定するための方法を提供する。この方法は、毛髪がコンビナトリアルに産生されたペプチドのライブラリと接触される、標準のバイオパニング技術の変形形態である。本発明の文脈内では、得られたDNA結合型ペプチド−毛髪複合体は、しばらくの間、ヘアコンディショナーマトリックスと接触される。DNA結合型ペプチド−毛髪複合体は、単離され、溶離剤と場合により接触され、溶離されたDNA結合型ペプチド、および毛髪に結合されたままであるDNA結合型ペプチドが提供される。溶離されたDNA結合型ペプチドおよび/または残留した結合されたDNA結合型ペプチドは、増幅および同定される。同定されたヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド配列は、ペプチドをベースとする毛髪有効薬剤(ヘアコンディショナーおよび着色料など)を構築するために使用することができる。
【0064】
ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドの同定
本明細書で定義する通りのヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド(HCP)は、ヘアコンディショナーマトリックスから特異的に毛髪に結合し、ヘアコンディショナーマトリックス中で安定であるペプチド配列である。本発明のヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドは、長さが約7アミノ酸から約45アミノ酸、より好ましくは長さが約7アミノ酸から約25アミノ酸、最も好ましくは長さが約12から約20アミノ酸である。本発明のペプチドは、ランダムに生成され、その後、後述する通りに、ヘアコンディショナーマトリックスの存在下で、毛髪に対するその結合親和性に基づいて、毛髪サンプルに対して選択される。
【0065】
ペプチドのランダムなライブラリの産生は、よく知られており、細菌ディスプレイ(ケンプ,D.J.(Kemp,D.J.);「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」78(7):4520〜4524(1981年)、および、ヘルフマン(Helfman)ら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」80(1):31〜35、(1983年))、酵母ディスプレイ(チェン(Chien)ら、「Proc Natl Acad Sci USA」88(21):9578〜82(1991年))、コンビナトリアル固相ペプチド合成(米国特許第5,449,754号明細書、米国特許第5,480,971号明細書、米国特許第5,585,275号明細書、米国特許第5,639,603号明細書)、およびファージディスプレイ技術(米国特許第5,223,409号明細書、米国特許第5,403,484号明細書、米国特許第5,571,698号明細書、米国特許第5,837,500号明細書)を含めた様々な技術によって達成することができる。こうした生物学的ペプチドライブラリを産生する技術は、当分野でよく知られている。例示的な方法は、ダニ,M.(Dani,M.)、「J.of Receptor&Signal Transduction Res.」21(4):447〜468(2001年)、シドゥ(Sidhu)ら、「Methods in Enzymology 328」:333〜363(2000年)、および「Phage Display of Peptides and Proteins」、「A Laboratory Manual」、ブライアンK.ケイ(Brian K.Kay)、ジルウィンター(Jill Winter)、およびジョンマッカファティ(John McCafferty)編;アカデミックプレス(Academic Press)、ニューヨーク、1996年に記載されている。さらに、ファージディスプレイライブラリは、ニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs)(マサチューセッツ州ビバリー(Beverly,MA))などの市販の供給元から購入することができる。
【0066】
一実施形態では、ある種の方式でペプチドと結合する、ペプチドをコードするDNAを有することが特に有用である。この結合によって、スクリーニングまたはバイオパニングプロセスにおける結合ペプチドの迅速な同定が容易になる。コードDNAは、PCR増幅させる、あるいは、容易な同定のためのペプチドの発現を増大させるために、複製するホストを感染させるために使用することができる。一般的に、DNA結合型ペプチドは、上述した通りの、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、および酵母ディスプレイという方法によって産生される。
【0067】
ペプチドをランダムに産生する好ましい方法は、ファージディスプレイによるものである。ファージディスプレイは、ペプチドまたはタンパク質が、バクテリオファージのコートタンパク質に遺伝的に融合され、その結果、ファージビリオンの外側に、融合されたペプチドが提示されるのに対して、融合をコードするDNAは、ビリオン内に存在するという、in vitroの選択技術である。提示されたペプチドと、それをコードするDNAとの間のこの物理的な連結は、巨大な数のペプチドのバリアント(各々が、「バイオパニング」と呼ばれる単純なin vitroの選択手順によって、相当するDNA配列に連結される)のスクリーニングを可能にする。最も簡単な形態では、バイオパニングは、ファージ提示バリアントのプールを当該の標的と共に保温すること、結合していないファージを洗い流すこと、およびファージと標的の間の相互結合作用を崩壊させることによって、特異的に結合されたファージを溶離することによって実施される。溶離されたファージを、その後、in vivoで増幅させ、このプロセスを繰り返すと、最も堅く結合する配列を好んで、ファージプールが段階的に濃縮されることとなる。3またはそれ以上のラウンドの選択/増幅後、それぞれのクローンを、DNA配列決定によって特徴づける。
【0068】
本発明のヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドは、ファージディスプレイを使用して、ヘアコンディショナーマトリックスの存在下での毛髪に対するその結合親和性に基づいて、毛髪サンプルに対してファージペプチドを選択することによって同定することができる。毛髪およびファージペプチドは、以下に詳細に記載されている通りに、コンディショニング液を形成する様々な方法で、ヘアコンディショナーマトリックスと接触させることができる。例えば、ファージペプチドライブラリは、ヘアコンディショナーマトリックス中に溶解し、その後毛髪サンプルと接触させることができる。あるいは、ファージディスプレイライブラリと毛髪サンプルを接触させることによって形成される、ファージ−ペプチド−毛髪複合体を、その後、ヘアコンディショナーマトリックスと接触させることができる。さらに、こうしたヘアコンディショナー接触方法の任意の組み合わせを使用することができる。
【0069】
DNA結合型ペプチドの適切なライブラリを産生した、あるいは、市販の供給元から購入した後、このライブラリを、適切な量の毛髪サンプルと接触させて、DNA結合型ペプチド−毛髪複合体を含んでなる反応溶液を形成させる。褐色、黒、赤、およびブロンドなどの異なる色の、また、アフリカ系アメリカ人、白色人種、およびアジア人などの様々なタイプのヒト毛髪サンプルが、例えば、インターナショナルヘアインポーターズアンドプロダクツ(International Hair Importers and Products)(ニューヨーク、ベルローズ(Bellerose,NY))から、市販品として入手できる。さらに、毛髪サンプルは、漂白された毛髪を得るために、例えば過酸化水素を使用して処理することができる。DNA結合型ペプチドのライブラリは、毛髪サンプルと接触させるために、適切な溶液に溶解される。一実施形態では、ペプチドのライブラリは、界面活性剤を含有する緩衝食塩水に溶解される。適切な溶液は、0.5%ツイーン(Tween)(登録商標)20を含むトリス緩衝生理食塩水(TBS)である。別の実施形態では、ペプチドのライブラリは、ヘアコンディショナーマトリックス(下記参照)に溶解され、その後毛髪サンプルと接触される。毛髪表面に対するペプチドの質量転送速度(mass transfer rate)を増大させ、それによって、最大の結合に到達するのに必要とされる時間を短くするために、ペプチドライブラリを含有している溶液を、任意の手段によって攪拌することができる。最大の結合に到達するために必要とされる時間は、いくつかの因子(毛髪サンプルの大きさ、ペプチドライブラリの濃度、および撹拌速度など)に応じて変動する。必要とされる時間は、ルーチン試験を使用して、当業者によって容易に決定することができる。一般的に、接触時間は、1分から1時間である。場合により、非標的と結合する所望でないDNA結合型ペプチドを除去するために、ペプチドのライブラリを、毛髪サンプルと接触させるよりも前に、あるいは接触させるのと同時に、皮膚またはプラスチックなどの非標的と接触させることができる。
【0070】
毛髪サンプルと接触すると、ランダムに産生されたいくつかのペプチドは、毛髪に結合して、DNA結合型ペプチド−毛髪複合体を形成する。いくつかのペプチドは、複合体を形成されないまま残り、また、毛髪サンプルの一部も、結合されない。複合体形成しなかったペプチドは、トリス−HCl、トリス緩衝生理食塩水、トリス−ホウ酸、トリス−酢酸、トリエチルアミン、リン酸緩衝液、およびグリシン−HClなどの任意の適切な緩衝液(ただし、トリス緩衝食塩水が好ましい)を使用する洗浄によって、場合により除去される可能性がある。洗浄溶液はまた、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、DOC(デオキシコール酸ナトリウム)、ノニデット(Nonidet)P−40、トリトン(Triton)X−100およびツイーン(Tween)(登録商標)20などの界面活性剤(ただし、0.5%の濃度のツイーン(Tween)(登録商標)20が好ましい)を含有することができる。洗浄工程は、1回もしくはそれ以上繰り返すことができる。
【0071】
複合体形成しなかった材料を除去した後、DNA結合型ペプチド−毛髪複合体を、しばらくの間、一般的に約1分から約30分、ヘアコンディショナーマトリックスと接触させて、コンディショニング液を形成する。ヘアコンディショナーマトリックスは、本明細書では、希釈されたあるいは希釈されていない形のヘアコンディショナー製品、または少なくとも1成分のヘアコンディショナー製品、さらに、少なくとも2成分のヘアコンディショナー製品を含んでなる混合物を含んでなる媒質を指す。適切なヘアコンディショナー製品組成物は、当分野でよく知られている。ヘアコンディショナー製品組成物の成分は、米国特許第6,280,747号明細書にフィリップ(Philippe)らによって、また米国特許第6,139,851明細書にオオムラ(Omura)によって、また米国特許第6,013,250号明細書にカネル(Cannell)らによって(これらをすべて、参照によって本明細書に援用する)記載されている。例えば、ヘアコンディショナー組成物は、水溶液、アルコール水溶液、および油中水型(W/O)または水中油型(O/W)エマルジョンであり得る。さらに、ヘアコンディショナー組成物は、これらに限定されないが、毛髪コンディショニング剤(例については以下を参照のこと)、酸化防止剤、保存剤、フィラー、界面活性剤、UVAおよび/またはUVB日焼け防止薬、香料、増粘剤、湿潤剤、およびアニオン性、非イオン性、または両性のポリマー、および染料または顔料を含めて、1つまたはそれ以上の従来の美容または皮膚科学的添加物または補助薬を含有する可能性がある。こうした補助薬は、美容の分野においてよく知られており、多くの刊行物中に記載されている。例えば、「Harry’s Book of Cosmeticology」、第8版、マーティンリーガー(Martin Rieger)編、ケミカルパブリッシング(Chemical Publishing)、ニューヨーク(2000年)を参照のこと。さらに、ダヴ(Dove)(登録商標)エクストラボリュームコンディショナー(Extra Volume Conditioner)(ユニリーバ(Unilever))、パンテーン・Pro V(Pantene Pro V)(プロクターアンドギャンブル(Proctor and Gamble))、ハーバルエッセンス(Herbal Essence)(クレイロール(Clairol))、フィネス(Finesse)(ヘレンカーチス(Helene Curtis))、およびトレセメ(Tresemme)(アルベルトカルバー(Alberto Culver))などの、市販品として入手できるヘアコンディショナー製品も使用することができる。ヘアコンディショナーは、地域のスーパーマーケットおよび薬局で購入することができる。好ましくは、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが最終的に用いられることとなるヘアコンディショナーマトリックスが、この方法で使用される。ヘアコンディショナー組成物は、希釈せずに使用してもよいし、特に粘着性組成物の場合には、適用を容易にするために希釈してもよい。ヘアコンディショナーマトリックスは、上述した使用可能なものなどの、水または適切な緩衝液で希釈することができる。ヘアコンディショナーマトリックスの濃度は、最大濃度の少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%である。最も好ましくは、ヘアコンディショナーマトリックスは、希釈していない形で使用される。場合によっては、DNA結合型ペプチド−毛髪複合体は、ヘアコンディショナーマトリックスと1回もしくはそれ以上接触される可能性がある。
【0072】
DNA結合型ペプチド−毛髪複合体は、コンディショニング液から単離され、場合により、上述した通りの緩衝液を使用して、1回もしくはそれ以上洗浄される。ヘアコンディショナーマトリックスを、洗浄溶液として使用することもできる。その後、DNA結合型ペプチド−毛髪複合体を、好ましくは新しい容器に移した後に、溶離剤と接触させて、毛髪からDNA結合型ペプチドを分離するが、いくらかのDNA結合型ペプチドは、この処理の後、依然として毛髪に結合されたままである可能性がある。溶離剤は、これらに限定されないが、酸(pH1.5〜3.0);塩基(pH10〜12.5);MgCl(3〜5M)およびLiCl(5〜10M)などの高い塩濃度の食塩水;水;エチレングリコール(25〜50%);ジオキサン(5〜20%);チオシアン酸塩(1〜5M);グアニジン(2〜5M);ならびに尿素(2〜8M)を含めて、任意の既知の溶離剤である可能性がある(ただし、酸を用いる処理が好ましい)。使用される溶離緩衝液が酸または塩基である場合、続いて、中和緩衝液が加えられ、溶離工程の後に、pHが中性の範囲に調節される。任意の適切な緩衝液を使用することができるが、1M トリスHCl(pH9.2)が、酸性溶離緩衝液の用途として好ましい。
【0073】
溶離されたペプチドまたは残留する結合されたペプチドをコードするDNA、あるいは、溶離されたペプチドと残留する結合されたペプチドとの両方をコードするDNAを、その後、当技術分野で知られた方法を使用して増幅させる。例えば、溶離されたペプチドおよび残留する結合されたペプチドをコードしているDNAは、ホワン(Huang)らによって記載されている通りに、所望のペプチドをコードするDNAを用いて、E.coli ER2738などの細菌の宿主細胞を感染させることによって増幅させることができる(参照により本明細書に援用される、同時係属中の共同所有される米国特許出願公開第2005/0050656号明細書)。感染させた宿主細胞を、LB(ルリア−ベルターニ(Luria−Bertani))培地などの適切な増殖培地中で増殖させ、この培養物を、IPTG(イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド)およびS−Gal(商標)(3,4−シクロヘキセノエスクレチン−β−D−ガラクトピラノシド)を含むLB培地などの適切な増殖培地を含有する寒天に塗る。増殖させた後、DNA単離および配列決定のためにプラークを採集し、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド配列をコードする配列を同定する。あるいは、溶離されたペプチドおよび残留する結合されたペプチドをコードするDNAを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの核酸増幅方法を使用して増幅させることができる。この手法では、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2003/015297明細書にヤンセン(Janssen)らによって記載される通りに、適切なプライマーを使用して、溶離されたペプチドおよび/または残留する結合されたペプチドをコードするDNAに対して、PCRが実施される。
【0074】
一実施形態では、溶離されたペプチドおよび残留する結合されたペプチドをコードするDNAを、細菌宿主細胞を感染させることによって増幅させ、増幅させたDNA結合型ペプチドを、新たな毛髪サンプルと接触させ、上述の全プロセスを、1回もしくはそれ以上繰り返して、ヘアコンディショナー耐性の毛髪−結合DNA結合型ペプチドが富化された集団を得る。所望の数のバイオパニングサイクルの後、増幅されたDNA配列が、当分野でよく知られている標準のDNA配列決定技術を使用して決定され、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド配列が同定される。
【0075】
ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドを、上の方法を使用して同定した。具体的には、ヘアコンディショナーマトリックスから通常の褐色毛髪に対して高い親和性を有し、ヘアコンディショナーマトリックス中で安定である、配列番号1〜5として示される結合ペプチドが単離された。
【0076】
ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドの生成
本発明のヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドは、当分野でよく知られている標準のペプチド合成方法を使用して調製することができる(例えば、スチュワート(Stewart)ら、「Solid Phase Peptide Synthesis」、ピアスケミカル社(Pierce Chemical Co.)、イリノイ州ロックフォード(Rockford,IL)、1984年;ボダンスキー(Bodanszky)、「Principles of Peptide Synthesis」、シュプリンガー出版(Springer−Verlag)、ニューヨーク、1984年;およびペニントン(Pennington)ら、「Peptide Synthesis Protocols」、ヒューマナプレス(Humana Press)、ニュージャージー州トトワ(Totowa,NJ)、1994年を参照のこと)。さらに、多くの会社が、カスタムメイドのペプチド合成サービスを提供している。
【0077】
あるいは、本発明のペプチドは、組換えDNAおよび分子クローニング技術を使用して調製することもできる。毛髪結合ペプチドをコードする遺伝子は、異種宿主細胞中で、特に微生物宿主細胞中で産生することができる。
【0078】
本発明の結合ペプチドの発現のための好ましい異種宿主細胞は、菌類または細菌のファミリー内に広く見られ、広範囲にわたる温度、pH値、および溶媒耐性で増殖する微生物宿主である。転写、翻訳、およびタンパク質生合成装置は、細胞の供給原料にかかわらず同じであるので、機能性の遺伝子は、細胞の生物量(biomass)を産生するために使用される炭素源に関係なく発現される。宿主株の例としては、これらに限定されないが、アスペルギルス、トリコデルマ、サッカロミセス、ピキア、カンジダ、ハンゼヌラなどの菌類または酵母種、あるいは、サルモネラ、バチルス、アシネトバクター、ロドコッカス、ストレプトマイセス、エシェリキア、シュードモナス、メチロモナス、メチロバクター、アルカリゲネス、シネコシスティス、アナベナ、チオバチルス、メタノバクテリウム、およびクレブシエラなどの細菌種が含まれる。
【0079】
本発明のペプチドを産生するために、様々な発現システムを使用することができる。こうしたベクターとしては、これらに限定されないが、染色体、エピソーム、およびウイルス由来のベクター、例えば、細菌性プラスミドから、バクテリオファージから、トランスポゾンから、挿入因子から、酵母エピソームから、ウイルス(バキュロウイルス、レトロウイルスなど)から得られるベクター、およびこれらの組み合わせから得られるベクター(コスミドおよびファージミドなどの、プラスミドおよびバクテリオファージ遺伝因子から得られるものなど)が含まれる。発現システム構築物は、発現を発生および調節する調節領域を含有する可能性がある。一般に、この点に関しては、宿主細胞においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドを維持、増殖、または発現させるのに適した任意のシステムまたはベクターを、発現のために使用することができる。微生物の発現システムおよび発現ベクターは、宿主細胞の増殖に関する外来タンパク質の高レベル発現を導く制御配列を含有する。制御配列は当業者によく知られており、その例としては、これらに限定されないが、ベクター中の調節因子の存在を含めた化学または物理的な刺激に応答して遺伝子の発現をオンまたはオフにさせるもの、例えば、エンハンサー配列が含まれる。これらのうちのいずれかが、本発明の結合ペプチドのうちのいずれかを産生するためのキメラ遺伝子を構築するために使用される可能性がある。こうしたキメラ遺伝子を、その後、ペプチドの高レベル発現を提供するために、形質転換を介して適切な微生物に導入することができる。
【0080】
適切な宿主細胞の形質転換のために有用なベクターまたはカセットは、当分野でよく知られている。一般的に、ベクターまたはカセットは、適切な遺伝子の転写および翻訳を導く配列、1つもしくはそれ以上の選択可能なマーカー、および自律複製または染色体組込みを可能にする配列を含有する。適切なベクターは、転写開始制御を担う遺伝子の領域5’、および転写終結を制御するDNA断片の領域3’を含んでなる。両方の制御領域が、形質転換された宿主細胞と同じ遺伝子から得られる場合が最も好ましいが、こうした制御領域は、産生宿主として選択される特定の種に天然に存在する遺伝子から得られる必要はないことを理解するべきである。選択可能なマーカー遺伝子は、例えばE.coliにおけるテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性などの、形質転換された宿主細胞の選択のための表現型形質を提供する。
【0081】
所望の宿主細胞のキメラ遺伝子の発現を駆動するために有用である開始制御領域またはプロモーターは、非常に多く、当業者によく知られている。これらに限定されないが、以下を含めた遺伝子を駆動することが可能な実質的に任意のプロモーターが、本発明の結合ペプチドを産生するのに適切である:CYC1、HIS3、GAL1、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TPI(サッカロミセス中での発現のために有用);AOX1(ピキア中での発現のために有用);およびlac、ara、tet、trp、lP、lP、T7、tac、およびtrc(大腸菌中での発現のために有用);ならびにバチルス中での発現のために有用なamy、apr、nprプロモーターおよび様々なファージプロモーター。
【0082】
終結制御領域はまた、好ましい宿主に天然に存在する様々な遺伝子から得られる可能性がある。場合によっては、終結部位は不必要である可能性があるが、含まれる場合が、最も好ましい。
【0083】
宿主が本発明のペプチドを発現することを可能にするために、上述した通りの適切なDNA配列を含有するベクター、ならびに適切なプロモーターまたは制御配列を用いて、適切な宿主を形質転換する。無細胞翻訳システムを用いて、本発明のDNA構築物から得られるRNAを使用して、こうしたペプチドを産生することもできる。場合により、形質転換された宿主の分泌産物として当該の遺伝子産物を産生することが所望される可能性がある。増殖培地への所望のタンパク質の分泌は、簡略化された、より低コストの精製手順という利点を有する。発現可能なタンパク質の、細胞膜を横切る能動輸送を容易にすることにおいて、分泌シグナル配列がしばしば有用であることは、当分野でよく知られている。分泌が可能な形質転換された宿主の作製は、産生宿主中で機能性である分泌シグナルをコードするDNA配列を組み込むことによって達成することができる。適切なシグナル配列を選択するための方法は、当分野でよく知られている(例えば欧州特許第546049号明細書および国際公開第9324631号パンフレットを参照のこと)。分泌シグナルDNAまたは促進因子(facilitator)は、発現制御DNAと、当該の遺伝子または遺伝子フラグメントとの間に、かつ後者と同じ読み取り枠中に位置される可能性がある。
【0084】
ペプチドをベースとする毛髪有効薬剤
本発明のペプチドをベースとする毛髪有効薬剤は、コンディショナー、着色料、芳香、日焼け防止薬などの有効薬剤(BA)とヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド(HCP)を結びつけることによって形成される。ペプチドをベースとする有効薬剤のヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド部分は、ヘアコンディショナーマトリックスから毛髪に強く結合し、有効薬剤が毛髪に付着されたままになる。効果を長持ちさせるために、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドと有効薬剤との間の結合相互作用は、共有結合または非共有結合的な相互作用である可能性があり、また、後述する通りの任意のスペーサーを介するものである可能性がある。
【0085】
ホワン(Huang)らによって記載されている通りに、ペプチドをベースとする有効薬剤と毛髪との間の相互作用を強化するために、複数のヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが有効薬剤に結びつけられることも望ましい可能性がある(同時係属中の共同所有される米国特許出願公開第2005/0050656号明細書)。これは、単一のヘアコンディショナー耐性の毛髪−結合配列の複数のコピーを有効薬剤に結びつけることによって、あるいは、直接的にまたはスペーサーを介して2つ以上のヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド配列を連結して、得られたマルチコピー毛髪−結合配列を有効薬剤に結びつけることによって行うことができる。さらに、マルチコピーヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド配列の複数のコピーを、有効薬剤に結びつけることもできる。すべてのこうしたペプチドをベースとする毛髪有効薬剤において、同じヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドの複数のコピー、または異なるヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドの組み合わせを使用することができる。
【0086】
本発明の一実施形態では、ペプチドをベースとする有効薬剤は、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド(HCP)および有効薬剤(BA)からなる、一般構造が(HCP−BAであるジブロック組成物である。式中、mは、1から約100、好ましくは1から約10までの範囲である。有効薬剤が分子種である場合、nは、1から約100、好ましくは1から約10までの範囲である。有効薬剤が、顔料などの粒子である場合、nは、1から約50,000、好ましくは1から約10,000の範囲である。
【0087】
別の実施形態では、ペプチドをベースとする有効薬剤は、有効薬剤からヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドを隔てるスペーサー(S)を含有する。ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドの複数のコピーが、単一のスペーサー分子に結びつけられる可能性がある。あるいは、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドの複数のコピーが、様々なスペーサーによって隔てられる可能性がある。この実施形態では、ペプチドをベースとする有効薬剤は、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドと、スペーサーと、有効薬剤からなる、一般構造が[(HCP−S)−BAであるトリブロック組成物である。式中、xは1から約10までの範囲、好ましくはxは1であり、mは、1から約100、好ましくは1から約10までの範囲である。有効薬剤が、染料または非粒子コンディショニング剤などの分子種である場合、nは、1から約100、好ましくは1から約10の範囲である。有効薬剤が顔料などの粒子である場合、nは、1から約50,000、好ましくは1から約10,000の範囲である。
【0088】
ここで、HCPは一般記号であり、単一のヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド配列を指すという意味ではないことを理解するべきである。上で使用される通りのm、n、またはxが、1よりも大きい場合、一連の異なる配列の毛髪結合ペプチドが、組成物の一部を形成し得るという状況が提供されることは、十分に本発明の範囲内である。さらに、Sは、一般記号であり、単一のスペーサーを指すという意味ではない。トリブロック組成物について、上で使用される通りのmまたはnが、1よりも大きい場合、一連の異なるスペーサーが、組成物の一部を形成し得るという状況が提供されることは、十分に本発明の範囲内である。こうした構造が、ペプチドと、有効薬剤と、任意のスペーサーとの間の共有結合に必ずしも相当するわけではないことも理解するべきである。後述する通り、ペプチドと、有効薬剤と、任意のスペーサーとの間の結合相互作用は、共有結合的である可能性もあるし、非共有結合的である可能性もある。
【0089】
本発明のヘアコンディショナー耐性のペプチドをベースとする有効薬剤の調製は、ヘアコンディショナーおよび毛髪着色料について、後述する。これらの方法は、他の有効薬剤にも適用することができ、また、こうした他のヘアコンディショナー耐性のペプチドをベースとする有効薬剤も、本発明の範囲内であることを理解するべきである。
【0090】
ペプチドをベースとするヘアコンディショナー
本発明のペプチドをベースとするヘアコンディショナーは、毛髪コンディショニング剤(HCA)とヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド(HCP)を結びつけることによって形成される。コンディショナーのヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド部分は、ヘアコンディショナーマトリックスから毛髪に強く結合し、したがって、コンディショニング剤が毛髪に付着されたままになる。コンディショニング効果を長持ちさせるために、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドは、上述の方法によって選択され、これらに限定されないが、配列番号1〜5および配列番号12として提供される毛髪結合ペプチド配列が含まれる。
【0091】
本明細書で定義される通りの毛髪コンディショニング剤は、毛髪の外観、手触り、および光沢を向上させる、また、毛髪のボリュームまたは柔軟性を増大させる薬剤である。毛髪コンディショニング剤としては、これらに限定されないが、スタイリング補助剤、毛髪矯正補助剤、毛髪強化補助剤、およびボリューム剤(ナノ粒子など)が含まれる。本発明のペプチドをベースとするヘアコンディショナーにおいては、任意の適切な毛髪コンディショニング剤を使用することができる。毛髪コンディショニング剤は、当分野でよく知られており(例えば、参照により本明細書に援用されるグリーン(Green)ら(国際公開第0107009号パンフレット)を参照のこと)、様々な供給元から商業的に入手できる。毛髪コンディショニング剤の適切な例としては、これらに限定されないが、カチオン性ポリマー(カチオン化グアーガム、ジアリル四級アンモニウム塩/アクリルアミドコポリマー、四級化されたポリビニルピロリドン、およびそれらの誘導体など)、ならびに様々なポリクオタニウム化合物;カチオン界面活性剤(塩化ステアラルコニウム、セトリモニウムクロリド、および塩酸セパミン(Sapamin hydrochloride)など);脂肪アルコール(ベヘニルアルコールなど);脂肪アミン(ステアリルアミンなど);ワックス;エステル;非イオン性のポリマー(ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、およびポリエチレングリコールなど);シリコーン;シロキサン(デカメチルシクロペンタシロキサンなど);ポリマーエマルジョン(アモジメチコンなど);およびナノ粒子(シリカナノ粒子およびポリマー・ナノ粒子など)が含まれる。本発明の好ましい毛髪コンディショニング剤は、後述する通りに、毛髪結合ペプチドへの結合を容易にするために、アミンまたはヒドロキシル官能基を含有する。好ましいコンディショニング剤の例は、オクチルアミン(CAS番号111−86−4)、ステアリルアミン(CAS番号124−30−1)、ベヘニルアルコール(CAS番号661−19−8、コグニス社(Cognis Corp.)、オハイオ州シンシナティ(Cincinnati,OH))、ビニル基末端シロキサン、ビニル基末端シリコーン(CAS番号68083−19−2)、ビニル基末端メチルビニルシロキサン、ビニル基末端メチルビニルシリコーン(CAS番号68951−99−5))、ヒドロキシル末端シロキサン、ヒドロキシル末端シリコーン(CAS番号80801−30−5)、アミノ修飾シリコーン誘導体、[(アミノエチル)アミノ]プロピルヒドロキシルジメチルシロキサン、[(アミノエチル)アミノ]プロピルヒドロキシルジメチルシリコーン、およびアルファ−トリデシル−オメガ−ヒドロキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)(CAS番号24938−91−8)である。
【0092】
本発明のペプチドをベースとするヘアコンディショナーは、ヘアコンディショナー耐性の特定の毛髪結合ペプチドを、毛髪コンディショニング剤に、直接的にあるいは任意のスペーサーを介して結びつけることによって調製される。結合の相互作用は、共有結合または非共有結合的な相互作用(水素結合、静電的な相互作用、疎水的相互作用、またはファンデルワールス相互作用)である可能性がある。非共有結合的な相互作用の場合には、ペプチドをベースとするヘアコンディショナーは、コンディショニング剤と(使用される場合)任意のスペーサーと該ペプチドを混合し、相互作用が起こるのに十分な時間放置することによって調製することができる。結合しなかった材料は、当技術分野で知られた方法、例えばゲル透過クロマトグラフィーを使用して、得られたペプチドをベースとするヘアコンディショナー付加物から分離することができる。
【0093】
本発明のペプチドをベースとするヘアコンディショナーはまた、ホワン(Huang)ら(同時係属中の共同所有される米国特許出願公開第2005/0050656号明細書)によって記載されている通りに、特異的なヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドを、毛髪コンディショニング剤に、直接的に、あるいはスペーサーを介して共有結合的に付着させることによって調製することができる。本発明のペプチドをベースとするヘアコンディショナーを形成するために、任意の適切な既知のペプチドまたはタンパク質の結合化学作用を使用することができる。結合化学作用は、当分野でよく知られている(例えば、ハーマンソン(Hermanson)、「Bioconjugate Techniques」、アカデミックプレス(Academic Press)、ニューヨーク(1996年)を参照のこと)。適切な結合剤としては、これらに限定されないが、カルボジイミド結合剤、酸塩化物、イソシアネート、エポキシド、マレイミド、ならびに末端アミンおよび/またはカルボン酸基、およびペプチド上のスルフヒドリル基に対して反応性である他の機能性の結合試薬が含まれる。さらに、ペプチドをベースとするコンディショナーのための所望の構造を作り出すために、ペプチド上の反応性のアミンまたはカルボン酸基を保護することが必要である可能性がある。アミノ酸に対する保護基(t−ブチロキシカルボニル(t−Boc)など)の使用が、当分野でよく知られている(例えばスチュワート(Stewart)ら、上記;ボダンスキー(Bodanszky)、上記;およびペニントン(Pennington)ら、上記を参照のこと)。場合によっては、毛髪結合ペプチドとの結合のために、コンディショニング剤上に、カルボン酸、アルコール、アミン、イソシアネート、またはアルデヒド基などの反応性の基を導入することが必要である可能性がある。こうした修飾は、当分野でよく知られている、酸化、還元、ホスゲン化などの通常の化学作用を使用して行うことができる。
【0094】
また、スペーサーを介して、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドを、毛髪コンディショニング剤に結びつけることが望ましい可能性もある。スペーサーは、薬剤が毛髪へのペプチドの結合を妨げないことを確実にするために、ペプチドからコンディショニング剤を隔てるために働く。スペーサーは、アルキル鎖、フェニル化合物、エチレングリコール、アミド、エステルなどの様々な分子のいずれかである可能性がある。好ましいスペーサーは、親水性であり、鎖長が1から約100原子、より好ましくは2から約30原子である。好ましいスペーサーの例としては、これらに限定されないが、エタノールアミン、エチレングリコール、鎖長が6炭素原子であるポリエチレン、3〜6の繰返し単位を有するポリエチレングリコール、フェノキシエタノール、プロパノールアミド、ブチレングリコール、ブチレングリコールアミド、プロピルフェニル、ならびにエチル、プロピル、ヘキシル、ステリル、セチル、およびパルミトイルアルキル鎖が含まれる。スペーサーは、上述した結合化学作用のいずれかを使用して、ペプチドおよび毛髪コンディショニング剤に共有結合的に付着させることができる。スペーサーの組み込みを容易にするために、ペプチドとコンディショニング剤との結合のために、両方の末端にスペーサーと反応性の基を含有する二官能性の架橋剤を使用することができる。適切な二官能性架橋剤は、当分野でよく知られており、これらに限定されないが、ジアミン、例えば1,6−ジアミノヘキサン;ジアルデヒド、例えばグルタルアルデヒド;ビスN−ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えばエチレングリコール−ビス(コハク酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)、グルタル酸ジスクシニミヂル、スベリン酸ジスクシニミヂル、およびエチレングリコール−ビス(スクシンイミジルスクシナート);ジイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート;ビスオキシラン、例えば1,4ブタンジイルジグリシジルエーテル;ジカルボン酸、例えばジサリチル酸スクシニル;などが挙げられる。各末端に異なる反応性の基を含有するヘテロ二官能性架橋剤も、使用することができる。ヘテロ二官能性架橋薬剤の例には、これらに限定されないが、以下の構造を有する化合物が含まれる。
【0095】
【化1】

【0096】
式中、Rは、Hまたは置換基(−SONa、−NO、または−Brなど)であり、Rは、−CHCH(エチル)、−(CH(プロピル)、または−(CH(プロピルフェニル)などのスペーサーである。こうしたヘテロ二官能性架橋剤の例は、3−マレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルである。こうした試薬のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル基は、コンディショナー上のアミンまたはアルコール基と反応するのに対して、マレイミド基は、ペプチド上に存在するチオール基と反応する。チオール基は、結合ペプチド配列の少なくとも1つの末端、すなわちC末端またはN末端に、少なくとも1つのシステイン残基を加えることによって、ペプチドに組み込むことができる。反応するチオール基を結合配列から隔てるために、いくつかのスペーサーアミノ酸残基(例えばグリシン)を、結合ペプチド配列と末端システインとの間に組み込むことができる。さらに、結合のためのアミン基を提供するために、少なくとも1つのリジン残基を、結合ペプチド配列の少なくとも1つの末端、すなわちC末端またはN末端に加えることができる。
【0097】
さらに、スペーサーは、任意のアミノ酸を含んでなるペプチドおよびその混合物である可能性がある。好ましいペプチドスペーサーは、アミノ酸プロリン、リジン、グリシン、アラニン、およびセリン、ならびにそれらの混合物を含んでなる。さらに、ペプチドスペーサーは、特定の酵素切断部位(例えば、配列番号6によって示されるプロテアーゼ・カスパーゼ3部位)を含んでなる可能性があり、これによって、毛髪からのコンディショニング剤の酵素的除去が可能になる。ペプチドスペーサーは、長さが1から約50アミノ酸、好ましくは1から約20アミノ酸であり得る。ペプチドスペーサーの例としては、配列番号13〜15が挙げられるが、これに限定されるものではない。こうしたペプチドスペーサーは、当技術分野で知られた任意の方法によって結合ペプチド配列に連結することができる。例えば、結合ペプチド−ペプチドスペーサー−ジブロック完全体は、上述した標準のペプチド合成方法を使用して調製することができる。さらに、結合ペプチドとペプチドスペーサーブロックは、カルボジイミド結合剤(例えば、ハーマンソン(Hermanson)、「Bioconjugate Techniques」、アカデミックプレス(Academic Press)、ニューヨーク(1996年)を参照のこと)、二酸塩化物、ジイソシアネート、ならびにペプチド上の末端のアミンおよび/またはカルボン酸基に対して反応性である他の二官能性結合試薬を使用して組み合わせることができる。あるいは、結合ペプチド−ペプチドスペーサー−ジブロック完全体は、上述した組換えDNAおよび分子クローニング技術を使用して調製することができる。スペーサーはまた、上述した方法を使用して調製することができる、ペプチドスペーサーと有機スペーサー分子の組み合わせである可能性がある。
【0098】
また、ペプチドをベースとするヘアコンディショナーと毛髪との間の相互作用を増強するために、毛髪コンディショニング剤に複数のヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが結びつけられることが望ましい可能性がある。同じ毛髪結合ペプチドの複数のコピー、または異なる毛髪結合ペプチドの組み合わせを使用することができる。例えば、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドとシャンプー耐性の毛髪結合ペプチドの組み合わせを使用することができる。シャンプー耐性の毛髪結合ペプチドは、ホワン(Huang)ら(同時係属中の共同所有される米国特許出願公開第2005/0050656号明細書)によって、また、オブライエンら(同時係属中の共同所有される米国特許出願第11/251715号明細書)によって記載されている。マルチコピーヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが、上述した通りの、様々なスペーサーを含んでなる可能性がある。大きなコンディショニング粒子(例えば粒子エマルジョンまたはナノ粒子)の場合、多数の毛髪結合ペプチド(すなわち約50,000まで)が、コンディショニング剤と結びつけられる可能性がある。より少ない数(すなわち約100まで)の毛髪結合ペプチドは、より小さいコンディショナー分子と結びつけられる可能性がある。さらに、複数の毛髪結合ペプチド配列が、共に連結されて、コンディショニング剤と付着される可能性がある。したがって、本発明の一実施形態では、ペプチドをベースとするヘアコンディショナーは、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド(HCP)と毛髪コンディショニング剤(HCA)からなる、一般構造が(HCP−HCA(式中、mは1から約100、好ましくは1から約10の範囲である)であるジブロック組成物である。毛髪コンディショニング剤が分子種、すなわち非粒子コンディショニング剤である場合、nは、1から約100、好ましくは1から約10までの範囲である。毛髪コンディショニング剤が粒子である場合、nは、1から約50,000、好ましくは1から約10,000までの範囲である。
【0099】
別の実施形態では、ペプチドをベースとするヘアコンディショナーは、上述した通りの、毛髪コンディショニング剤からヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドを隔てるスペーサー(S)を含有する。毛髪結合ペプチドの複数のコピーが、単一のスペーサー分子に結びつけられる可能性がある。さらに、ペプチドの複数のコピーが、スペーサーを介して共に連結され、スペーサーを介して毛髪コンディショニング剤に結びつけられる可能性がある。この実施形態では、ペプチドをベースとするヘアコンディショナーは、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドと、スペーサーと、毛髪コンディショニング剤からなる、一般構造が[(HCP−S)−HCA(式中、xは、1から約10までの範囲であり、好ましくはxは1であり、mは、1から約100までの範囲であり、好ましくは1から約10である)であるトリブロック組成物である。毛髪コンディショニング剤が分子種、すなわち非粒子コンディショニング剤である場合、nは、1から約100、好ましくは1から約10までの範囲である。毛髪コンディショニング剤が粒子である場合、nは、1から約50,000、好ましくは1から約10,000までの範囲である。
【0100】
ここで、HCPは一般記号であり、単一の毛髪結合ペプチド配列を指すという意味ではないことを理解するべきである。上で使用される通りのm、n,またはxが、1よりも大きい場合、一連の異なる配列の毛髪結合ペプチドが、組成物の一部を形成し得るという状況が提供されることは、十分に本発明の範囲内である。さらに、Sは、一般記号であり、単一のスペーサーを指すという意味ではない。トリブロック組成物について、上で使用される通りのmまたはnが、1よりも大きい場合、一連の異なるスペーサーが、組成物の一部を形成し得るという状況が提供することは、十分に本発明の範囲内である。こうした構造が、ペプチドと、毛髪コンディショニング剤と、任意のスペーサーとの間の共有結合に必ずしも相当するわけではないことも理解するべきである。上述した通り、ペプチドと、毛髪コンディショニング剤と、任意のスペーサーとの間の結合相互作用は、共有結合的である可能性もあるし、非共有結合的である可能性もある。
【0101】
本発明のペプチドをベースとするヘアコンディショナーは、ヘアケアのための製品中で使用することができる。ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド自体が、毛髪のトリートメントのためのコンディショニング剤として働く可能性があることも認識するべきである。ヘアケア製品組成物は、本明細書では、これらに限定されないが、コンディショナー、ローション、エアロゾル、ゲル、ムース、および毛髪着色料を含めた毛髪のトリートメントのための組成物と定義される。一実施形態では、ヘアケア製品組成物は、毛髪コンディショニング製品である。別の実施形態では、ヘアケア製品組成物は、毛髪着色製品である。
【0102】
本発明のヘアケア製品組成物は、化粧品として許容される媒質中に、有効な量の、ペプチドをベースとするヘアコンディショナー、または異なるペプチドをベースとするヘアコンディショナーの混合物を含んでなる。ヘアケア製品組成物中で使用するためのペプチドをベースとするヘアコンディショナーまたは毛髪結合ペプチドの有効な量は、本明細書では、組成物の総重量を基準にして約0.01重量%から約10重量%、好ましくは約0.01重量%から約5重量%と定義される。ヘアケア製品組成物のための化粧品として許容される媒質の成分は、当分野でよく知られており、その例は、フィリップ(Philippe)らによって米国特許第6,280,747号明細書に、オオムラ(Omura)らによって米国特許第6,139,851号明細書に、また、カネル(Cannell)によって米国特許第6,013,250号明細書に記載されている。
【0103】
ペプチドをベースとする毛髪着色料
本発明のペプチドをベースとする毛髪着色料は、着色剤(C)とヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド(HCP)を結びつけることによって形成される。ペプチドをベースとする毛髪着色料のヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド部分は、毛髪に強く結合し、ヘアコンディショナーの適用によって除去されないので、着色剤は、長い時間毛髪に付着されたままとなり、毛髪着色効果が長続きする。ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドは、記載した方法によって選択され、これらに限定されないが、配列番号1〜5および配列番号12として示される毛髪結合ペプチド配列が含まれる。
【0104】
本明細書で定義されるものとしての着色剤は、任意の染料、顔料、および毛髪の色を変化させるために使用することができるものなどである。本発明のペプチドをベースとする毛髪着色料において、任意の適切な着色剤を使用することができる。毛髪着色剤は、当分野でよく知られており(例えば、グリーン(Green)ら、上記、「CFTA International Color Handbook」、第2版、ミセルプレス(Micelle Press)、イギリス(England)(1992年)、および「Cosmetic Handbook」、US食品医薬品局(US Food and Drug Administration)、「FDA/IAS Booklet」(1992年)を参照のこと)、様々な供給元(例えば、バイエル(Bayer)、ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh,PA);チバ−ガイギー(Ciba−Geigy)、ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,NY);ICI、ニュージャージー州ブリッジウォーター(Bridgewater,NJ);サンド(Sandoz)、オーストリア、ウィーン(Vienna,Austria);BASF、ニュージャージー州マウントオリーブ(Mount Olive,NJ);およびヘキスト(Hoechst)、ドイツ、フランクフルト(Frankfurt,Germany))から商業的に入手できる。適切な毛髪着色剤としては、これらに限定されないが、染料、例えば、4−ヒドロキシプロピルアミノ−3−ニトロフェノール、4−アミノ−3−ニトロフェノール、2−アミノ−6−クロロ−4−ニトロフェノール、2−ニトロ−パラフェニレンジアミン、N,N−ヒドロキシエチル−2−ニトロ−フェニレンジアミン、4−ニトロ−インドール、ヘナ、HCブルー1(HC Blue 1)、HCブルー2(HC Blue 2)、HCイエロー4(HC Yellow 4)、HCレッド3(HC Red 3)、HCレッド5(HC Red 5)、ディスパースバイオレット4(Disperse Violet 4)、ディスパースブラック9(Disperse Black 9)、HCブルー7(HC Blue 7)、HCブルー12(HC Blue 12)、HCイエロー2(HC Yellow 2)、HCイエロー6(HC Yellow 6)、HCイエロー8(HC Yellow 8)、HCイエロー12(HC Yellow 12)、HCブラウン2(HC Brown 2)、D&Cイエロー1(D&C Yellow 1)、D&Cイエロー3(D&C Yellow 3)、D&Cブルー1(D&C Blue 1)、ディスパースブルー3(Disperse Blue 3)、ディスパースバイオレット1(Disperse Violet 1)、エオシン誘導体(D&Cレッド(D&C Red)No.21など)、およびハロゲン化フルオレセイン誘導体(D&Cレッド(D&C Red)No.27、D&Cレッド(D&C Red)No.21とD&Cオレンジ(D&C Orange)No.10を組み合わせたD&Cレッドオレンジ(D&C Red Orange)No.5など);および顔料、例えば、D&Cレッド(D&C Red)No.36およびD&Cオレンジ(D&C Orange)No.17、D&Cレッド(D&C Red)No.7、11、31、および34のカルシウムレーキ、D&Cレッド(D&C Red)No.12のバリウムレーキ、D&Cレッド(D&C Red)No.13のストロンチウムレーキ、FD&Cイエロー(FD&C Yellow)No.5の、FD&Cイエロー(FD&C Yellow)No.6の、D&Cレッド(D&C Red)No.27の、D&Cレッド(D&C Red)No.21の、およびFD&Cブルー(FD&C Blue)No.1のアルミニウムレーキ、酸化鉄、マンガンバイオレット、酸化クロム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化バリウム、ウルトラマリンブルー、クエン酸ビスマス、およびカーボンブラック粒子が挙げられる。ホワン(Huang)らによって、同時係属中の共同所有される米国特許出願公開第2005/0229334号明細書および第2005/0229335号明細書(これらをどちらも、参照により本明細書に援用する)に記載されている通りに、カーボンナノチューブも、毛髪を染色するための黒色顔料として使用することができる。本発明の好ましい染料および顔料としては、D&Cイエロー(D&C Yellow)1および3、HCイエロー(HC Yellow)6および8、D&Cブルー1(D&C Blue 1)、HCブルー1(HC Blue 1)、HCブラウン2(HC Brown 2)、HCレッド5(HC Red 5)、2−ニトロ−パラフェニレンジアミン、N,N−ヒドロキシエチル−2−ニトロ−フェニレンジアミン、二酸化チタン、4−ニトロ−インドール、酸化鉄、カーボンブラック、およびカーボンナノチューブが挙げられる。
【0105】
金属および半導体ナノ粒子も、その強い光の放射に起因して、毛髪着色剤に使用することができる(ビック(Vic)ら、米国特許出願公開第2004/0010864号明細書)。金属ナノ粒子としては、これらに限定されないが、金、銀、プラチナ、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、鉄、銅、コバルトの粒子、およびこうした金属からなる合金が挙げられる。「合金」は、本明細書では、2つまたはそれ以上の金属の均質混合物と定義される。「半導体ナノ粒子」としては、これらに限定されないが、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、硫化銀、硫化カドミウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化鉛、ヒ化ガリウム、シリコン、酸化スズ、酸化鉄、およびリン化インジウムの粒子が挙げられる。ナノ粒子は、適切な有機コーティングまたは単分子層を用いることによって安定化され、水溶性となる。本明細書では、単分子層で保護されたナノ粒子は、安定化されたナノ粒子の1つのタイプである。安定化された水溶性の金属および半導体ナノ粒子の調製のための方法は、当技術分野で知られており、ホワン(Huang)らによって、出願中の米国特許出願公開第2004/0115345号明細書(これを、参照により本明細書に援用する)に記載されている。ナノ粒子の色は、粒子の大きさによって決まる。したがって、ナノ粒子の大きさを制御することによって、異なる色が得られる可能性がある。例えば、ZnSコートされたCdSeナノ粒子は、2〜6nmの、粒子サイズ範囲にわたる全可視スペクトルをカバーする。具体的には、2.3、4.2、4.8、および5.5nmのコアサイズを有するCdSeナノ粒子は、それぞれ、485、565、590、および625nmに集中する波長の光を発する。異なるサイズの水溶性ナノ粒子は、ホワン(Huang)らによって記載されているサイズ分別方法を使用して、広いサイズ分布のナノ粒子から得ることができる(米国特許出願公開第2004/0115345号明細書)。その中に記載されている方法は、電解質の存在下でのナノ粒子の溶液への水溶性有機溶媒の調節された添加を含んでなる。水溶性有機溶媒の添加を増大させることによって、サイズが低下されたナノ粒子の沈殿がもたらされる。金属および半導体ナノ粒子はまた、上述した通りに、薬剤をボリュームアップするものとして働くことができる。
【0106】
さらに、染料が付着、吸着、または吸収された有機および無機ナノ粒子を、毛髪着色剤として使用することができる。例えば、毛髪着色剤は、有色のポリマー・ナノ粒子である可能性がある。例示的なポリマー・ナノ粒子としては、これらに限定されないが、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルトルエン、スチレン/ブタジエンコポリマー、およびラテックスなどの材料からなるマイクロスフィアが含まれる。本発明で使用するためには、マイクロスフィアは、直径が約10ナノメートルから約2ミクロンである。マイクロスフィアは、マイクロスフィアに任意の適切な染料(上述したものなど)を結びつけることによって色をつけることができる。染料は、マイクロスフィアの表面に結びつけることもできるし、多孔性マイクロスフィアの多孔質構造体内に吸着させることもできる。共有結合を可能にするために官能性をもたせられた、染色されたおよび染色されていないマイクロスフィアを含めた適切なマイクロスフィアは、バンラボラトリーズ(Bang Laboratories)(インディアナ州フィッシャーズ(Fishers,IN))などの会社から入手できる。
【0107】
本発明のペプチドをベースとする毛髪着色料は、特異的なヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドを着色剤に、直接的に、あるいはスペーサーを介して結びつけることによって調製される。上述した結合方法のいずれかを使用することができる。毛髪結合ペプチドに結合させるために、着色剤上にカルボン酸、アルコール、アミン、アルデヒド、またはイソシアネート基などの反応性の基を導入することが必要である可能性がある。こうした変形形態は、当分野でよく知られている、酸化、還元、およびホスゲン化などの通常の化学作用を使用して行うことができる。例えば、カーボンブラック粒子の表面を、官能基を生み出すために、硝酸、過酸化水素などの過酸化物、または過硫酸アンモニウムなどの無機イニシエーターを使用して酸化することができる。カラスコ−マリン(Carrasco−Marin)ら(「J.Chem.Soc.」、「Faraday Trans.」93:2211〜2215(1997年))によって記載されている通り、カーボンブラック表面は、過硫酸アンモニウムを使用して酸化させることが好ましい。2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)−ジヒドロクロリドなどの有機イニシエーターを使用して、カーボンブラックの表面にアミノ官能基を導入することができる。無機顔料およびナノ粒子は、同様の方式で、カルボン酸またはアミノ官能基を導入するために誘導体化することができる。
【0108】
また、ペプチドをベースとする毛髪着色料と毛髪との間の相互作用を増強するために、着色剤に複数のヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが結びつけられることが望ましい可能性がある。同じ毛髪結合ペプチドの複数のコピー、または異なる毛髪結合ペプチドの組み合わせを使用することができる。例えば、上述した通りに、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドとシャンプー耐性の毛髪結合ペプチドの組み合わせを使用することができる。大きな顔料粒子の場合、多数の毛髪結合ペプチド(すなわち約50,000まで)が、顔料と結びつけられる可能性がある。より少ない数(すなわち約100まで)の毛髪結合ペプチドは、より小さい染料分子と結びつけられる可能性がある。さらに、複数の毛髪結合ペプチド配列が、共に連結されて、上述した通りの着色剤と結びつけられる可能性がある。したがって、本発明の一実施形態では、ペプチドをベースとする毛髪着色料は、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド(HCP)と着色剤(C)からなる、一般構造が(HCP−C(式中、mは1から約100、好ましくはmは1から約10である)であるジブロック組成物である。着色剤が、染料などの分子種である場合、nは、1から約100、好ましくは1から約10までの範囲である。着色剤が顔料またはナノ粒子などの粒子である場合、nは、1から約50,000、好ましくは1から約10,000までの範囲である。
【0109】
別の実施形態では、ペプチドをベースとする毛髪着色料は、上述した通りの、毛髪着色剤から結合ペプチドを隔てるスペーサー(S)を含有する。ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドの複数のコピーが、単一のスペーサー分子に結びつけられる可能性がある。さらに、ペプチドの複数のコピーが、スペーサーを介して共に連結され、スペーサーを介して着色剤に結びつけられる可能性がある。この実施形態では、ペプチドをベースとする毛髪着色料は、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドと、スペーサーと、着色剤からなる、一般構造が[(HCP−S)−C(式中、xは、1から約10までの範囲であり、好ましくはxは1であり、mは、1から約100までの範囲であり、好ましくは1から約10である)であるトリブロック組成物である。着色剤が染料などの分子種である場合、nは、1から約100、好ましくは1から約10までの範囲である。着色剤が顔料またはナノ粒子などの粒子である場合、nは、1から約50,000、好ましくは1から約10,000までの範囲である。
【0110】
ここで、HCPは一般記号であり、単一の毛髪結合ペプチド配列を指すという意味ではないことを理解するべきである。上で使用される通りのm、n,またはxが、1よりも大きい場合、一連の異なる配列の毛髪結合ペプチドが、組成物の一部を形成し得るという状況が提供することは、十分に本発明の範囲内である。さらに、Sは、一般記号であり、単一のスペーサーを指すという意味ではない。ここで、トリブロック組成物について、上で使用される通りのmまたはnが、1よりも大きい場合、一連の異なるスペーサーが、組成物の一部を形成し得るという状況が提供されることは、十分に本発明の範囲内である。こうした構造が、ペプチドと、着色剤と、任意のスペーサーとの間の共有結合に必ずしも相当するわけではないことも理解するべきである。上述した通り、ペプチドと、着色剤と、任意のスペーサーとの間の結合相互作用は、共有結合的である可能性もあるし、非共有結合的である可能性もある。
【0111】
本発明のペプチドをベースとする毛髪着色料は、毛髪を染色するための毛髪着色製品中で使用することができる。毛髪着色製品組成物は、本明細書では、化粧品として許容される媒質中に、有効量の、ペプチドをベースとする毛髪着色料、または異なるペプチドをベースとする毛髪着色料の混合物を含んでなる、毛髪の着色、染色、または脱色のための組成物と定義される。毛髪着色製品組成物中で使用するための、ペプチドをベースとする毛髪着色料の有効な量は、本明細書では、組成物の総重量を基準にして約0.001重量%から約20重量%の割合と定義される。毛髪着色製品組成物のための、化粧品として許容される媒質の成分は、ディアシュ(Dias)らによって、米国特許第6,398,821号明細書に、また、ドゥーツ(Deutz)らによって、米国特許第6,129,770号明細書(これらをどちらも、参照により本明細書に援用する)に記載されている。例えば、毛髪着色製品組成物は、金属イオン封鎖剤、安定剤、増粘剤、緩衝液、担体、界面活性剤、溶媒、酸化防止剤、ポリマー、およびコンディショナーを含有することができる。コンディショナーは、毛髪着色組成物の総重量を基準にして約0.01重量%から約10重量%、好ましくは約0.01重量%から約5重量%の割合で、本発明のペプチドをベースとするヘアコンディショナーおよびヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドを含むことができる。
【0112】
本発明のペプチドをベースとする毛髪着色料はまた、これらに限定されないが、マスカラおよびペンシル型まゆずみを含めて、睫毛または眉に適用される化粧品組成物中で着色剤として使用することができる。これらは、一般に、組成物の総重量を基準にして約10重量%から約90重量%の割合で、脂肪物質を含有する化粧品として許容される媒質を含んでなる、無水のメイクアップ製品である(ただし、脂肪相が、少なくとも1つの液体、固体、または半固体脂肪物質を含有する)可能性がある。脂肪物質としては、これらに限定されないが、油、ワックス、ガム、およびいわゆるペースト状の脂肪物質が挙げられる。あるいは、上述した通り、こうした組成物は、油中水型または水中油型エマルジョンなどの、安定な分散液の形であり得る。こうした組成物中では、ペプチドをベースとする毛髪着色料の割合は、一般に、組成物の総重量を基準にして約0.001重量%から約20重量%である。
【0113】
毛髪を処理するための方法
別の実施形態では、本発明のペプチドをベースとするコンディショナーおよび着色料を用いて毛髪を処理するための方法が提供される。詳細には、本発明はまた、有効な量のペプチドをベースとするヘアコンディショナーを含んでなる、上述した組成物のうちの1種を毛髪に適用し、保護膜を形成させることによって、毛髪上にペプチドをベースとするコンディショナーの保護膜を形成するための方法を含んでなる。本発明の組成物は、これらに限定されないが、噴霧、はけ塗り、および手による適用を含めて、様々な手段によって毛髪に適用することができる。ペプチドをベースとするコンディショナー組成物は、保護膜を形成するのに十分な時間、好ましくは少なくとも約0.1から60分間、毛髪と接触したままにされる。
【0114】
本発明はまた、上述した手段によって、有効な量のペプチドをベースとする毛髪着色料を含んでなる毛髪着色組成物を毛髪に適用することによって、毛髪を着色するための方法を提供する。毛髪着色組成物を、毛髪を着色させるのに十分な時間、好ましくは約5から約50分間毛髪と接触させ、その後、毛髪着色組成物を、毛髪から洗い落とすことができる。
【0115】
本発明はまた、上述した手段によって、有効な量のペプチドをベースとする毛髪着色料を含んでなる化粧品組成物を眉および睫毛に適用することによって、眉および睫毛を着色するための方法を提供する。
【実施例】
【0116】
本発明を、以下の実施例でさらに定義する。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示す一方、実例として示されるに過ぎないことを理解するべきである。上記説明およびこれらの実施例から、当業者であれば、この発明の本質的な特性を確認することができ、その趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な用途および条件にそれを適合させるために、本発明の様々な改変および変形形態を作製することができる。
【0117】
使用される省略形の意味は、以下の通りである:「min」は、分を意味し、「sec」は秒を意味し、「h」は時間を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「ml」は、ミリリットルを意味し、「L」は、リットルを意味し、「nm」は、ナノメートルを意味し、「mm」は、ミリメートルを意味し、「cm」は、センチメートルを意味し、「μm」は、マイクロメートルを意味し、「mM」は、ミリモルを意味し、「M」は、モルを意味し、「mmol」は、ミリモルを意味し、「μmole」は、マイクロモルを意味し、「g」は、グラムを意味し、「μg」は、マイクログラムを意味し、「mg」は、ミリグラムを意味し、「pfu」は、プラーク形成単位を意味し、「BSA」は、ウシ血清アルブミンを意味し、「ELISA」は、酵素結合免疫測定法を意味し、「A」は、吸光度を意味し、「A450」は、450nmの波長で測定される吸光度を意味し、「TBS」は、トリス(Tris)緩衝生理食塩水を意味し、「TBST−X」は、ツイーン(Tween)(登録商標)20を含有するトリス緩衝生理食塩水を意味し(ここで、「X」は、ツイーン(Tween)(登録商標)20の重量パーセントであり)、「SEM」は、平均値の標準誤差を意味し、「MALDI」は、マトリクス支援レーザー脱離イオン化を意味し、「NMR」は、核磁気共鳴分光法を意味する。
【0118】
一般方法:
これらの実施例で使用される標準の組換えDNAおよび分子クローニング技術は、当分野でよく知られており、サムブルック,J.(Sambrook,J.)、フリッチュ,E.F.(Fritsch,E.F.)およびマニアティス,T.(Maniatis,T.)、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、コールドスプリングハーバー研究所出版局(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、ニューヨーク、コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor,N.Y.)、1989年によって、シルハーヴィー,T.J.(Silhavy,T.J.)、M.L.ベンアン(M.L.Bennan)、およびL.W.エンクヴィスト(L.W.Enquist)「Experiments with Gene Fusions」、コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor)研究所、ニューヨーク、コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor,NY)、1984年によって、また、オースベル,F.M.(Ausubel,F.M.)ら、「Current Protocols in Molecular Biology」、グリーン出版協会(Greene Publishing Assoc.)およびワイリーインターサイエンス(Wiley Interscience)、ニューヨーク(N.Y.)、1987年によって記載されている。
【0119】
細菌培養物の維持および増殖に適した材料および方法も、当分野でよく知られている。以下の実施例で使用するのに適した技術は、「Manual of Methods for General Bacteriology」、フィリップゲルハルト(Phillipp Gerhardt)、R.G.E.マレイ(R.G.E.Murray)、ラルフN.コスティロ(Ralph N.Costilow)、ユージンW.ネスター(Eugene W.Nester)、ウィリスA.ウッド(Willis A.Wood)、ノエルR.クレイグ(Noel R.Krieg)、およびG.ブリッグスフィリップス(G.Briggs Phillips)編、米国微生物学会(American Society for Microbiology)、ワシントン(Washington,DC.)、1994年に、あるいは、トーマスD.ブロック(Thomas D.Brock)による「Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology」第2版、シノエールアソシエーツインコーポレイティッド(Sinauer Associates,Inc.)、マサチューセッツ州サンダーランド(Sunderland,MA)、1989年に記載されている。特に明記しない限り、細菌細胞の増殖および維持のために使用される試薬および材料はすべて、アルドリッチケミカル(Aldrich Chemicals)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI))、BDダイアグノスティックシステムズ(BD Diagnostic Systems)(メリーランド州スパークス(Sparks,MD))、ライフテクノロジーズ(Life Technologies)(メリーランド州ロックビル(Rockville,MD))、またはシグマケミカルカンパニー(Sigma Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO))から得られた。
【0120】
ファージディスプレイペプチドライブラリ:
以下の実施例では、3つのファージディスプレイペプチドライブラリを使用した。Ph.D.−12(商標)ファージディスプレイペプチドライブラリは、ニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs)(マサチューセッツ州ビバリー(Beverly,MA))から購入した。このキットは、M13ファージのマイナーコートタンパク質(pIII)に融合されるランダムペプチド12merのコンビナトリアルライブラリに基づくものである。提示されたペプチドは、pIIIのN末端で発現され、その結果、シグナルペプチドが切断された後、コートタンパク質の第1の残基が、提示されたペプチドの第1の残基となる。Ph.D.−12(商標)ライブラリは、約2.7×10配列からなる。
【0121】
2つのファージディスプレイペプチドライブラリは、15merランダムペプチド配列を含有するものであり、20merのランダムなペプチド配列を含有する他のものは、ケイ(Kay)ら(「Combinatorial Chemistry&High Throughput Screening」、第8巻:545〜551(2005年))によって記載されている方法を使用して調製した。この方法は、シドゥ(Sidhu)ら(「Methods in Enzymology」328:333〜363(2000年))によって報告される方法(ここで、E.coli株CJ236(dutung)が、ウリジン含有一本鎖ファージミドDNA(U−ssDNA)を産生するために使用される)の変形形態である。このDNAは、オリゴヌクレオチドを使用する第2のストランド合成のための鋳型として、また第2のストランドのプライマーとしてだけでなく、ランダムなアミノ酸をコードするインサートのために使用される。第2のストランド合成終了後、二本鎖DNAを、野生株に形質転換させる。任意のU−ssDNAは、宿主細胞によって分解され、それによって、ファージ粒子を産生するための組換えストランドだけが残る。この方法は、M13コートタンパク質に対するペプチド融合または変異をもたらすために利用することができる。ケイ(Kay)らの方法は、遺伝子IIIの最初に、アンバー終止コドンを使用する。DNA配列のランダム化された伸長部を含有するオリゴヌクレオチドを、ランダム化された領域が終止コドンと並ぶように、一本鎖ファージゲノムにアニーリングさせる。ssDNAは、酵素的に転換されて、共有結合的に閉じられた環状のdsDNAになり、その後、E.coliの非サプレッサー株に電気穿孔される。新しく合成されたDNAストランド(マイナスストランド)は、宿主細胞中でプラスストランドの産生のための鋳型として働き、これは、ウイルスの遺伝子の転写/翻訳のために利用され、ウイルス粒子に包埋される。
【0122】
得られた15merおよび20merライブラリについての力価はそれぞれ、4.1×1012pfu/mLおよび4.2×1012pfu/mLであった。
【0123】
当該のライブラリ由来の約4×1010pfuのファージを含有するサンプルを、各実験において使用した。ファージライブラリのサンプルを、最初に前処理して、皮膚およびプラスチック結合クローンを除去した。皮膚結合クローンを除去するために、ファージライブラリのサンプルを、独自のブタ皮膚底の96ウェル装置(これは、ミニフォールドIドット−ブロットシステム(Minifold I Dot−Blot System)の96ウェルブロック(シュライヒャー・アンド・シュル・インコーポレイティッド(Schleicher&Schuell,Inc.)、ニューハンプシャー州キーン(Keene,NH))の下に、一層のパラフィルム(Parafilm)(登録商標)を適用し、パラフィルム(Parafilm)(登録商標)カバーの上に無毛のブタ皮膚の層を加え、その後、装置を固定することによって作製された)中で、ブタ皮膚のサンプルと共に、室温で1時間保温した。ブタ皮膚は、地元のスーパーマーケットで購入し、−80℃で貯蔵した。使用する前に、皮膚を脱イオン水に入れて解凍し、その後、ペーパータオルを使用して吸収乾燥させた。皮膚の表面を、90%イソプロパノールで拭き、その後、脱イオン水で洗い落とした。ブタ皮膚への暴露の後、ファージサンプルを、ポリスチレン製の6ウェル細胞培養クラスター(コーニングインコーポレイティッド(Corning Inc.)、マサチューセッツ州アクトン(Acton,MA);カタログ番号3526)に移し、室温で1時間保温して、プラスチック結合クローンを除去した。
【0124】
実施例1〜3
ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドの同定
これらの実施例の目的は、3つのランダムなファージディスプレイペプチドライブラリから、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドを同定する方法を実証することであった。
【0125】
使用される毛髪サンプルは、インターナショナルヘアインポーターズアンドプロダクツ(International Hair Importers and Products)(ニューヨーク、ベルローズ(Bellerose,NY))から入手できる、ミディアムブラウンのヒト毛髪の長さ6インチ(15cm)の断片であった。毛髪を、室温で30分間、90%イソプロパノールの中に入れ、その後、脱イオン水で5回(各10分間)洗浄した。毛髪は、室温で、終夜風乾した。毛髪を1cmの長さに切断し、10〜20の毛髪をマイクロ遠心チューブに入れた。
【0126】
皮膚およびプラスチック結合クローンを除去するために、上述した通りに前処理したファージサンプルを、毛髪サンプルを含有する管に加え、混合物を、1時間室温で保温した。ファージ溶液を除去し、毛髪サンプルを、希釈していないヘアコンディショナー(地元のスーパーマーケットで入手した、ダヴ(Dove)(登録商標)エクストラボリュームコンディショナー(Extra Volume Conditioner);ユニリーバ(Unilever))中で、室温で5分間保温した。その後、毛髪をTBST−0.5%緩衝液で6回洗浄した。洗浄後、毛髪を新しい管に移し、1mg/mL BSAの0.2Mのグリシン−HCl(pH2.2)溶液からなる溶離緩衝液を加え、毛髪を10分間保温した。その後、この管に、1M トリスHCl(pH9.2)からなる中和緩衝液を加えた。溶離後も依然として毛髪に結合されたファージを、新たな宿主細胞(E.coli ER2338)を加えることによって増幅させた。増幅および単離されたファージを、新たな毛髪サンプルと接触させ、バイオパニング手順を、各ライブラリについてさらに2回繰り返した。
【0127】
第3のバイオパニング・ラウンドの後、ランダムな単一のファージクローンを選択し、単一のプラーク溶解物を、製造者(ニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs))の指示書に従って調製し、QIAprepスピンM13キット(キアゲン(Qiagen);カリフォルニア州バレンシア(Valencia,CA))を使用して一本鎖ファージゲノムDNAを精製し、配列番号7として示される−96 gIII配列決定プライマー(5’−CCCTCATAGTTAGCGTAACG−3’)を使用して、デュポンシークエンシングファシリティ(DuPont Sequencing Facility)で配列決定した。提示されたペプチドは、遺伝子IIIのシグナルペプチドの直後に位置される。3つのバイオパニング・ラウンドの後の、3つのファージライブラリから同定されるヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ファージ−ペプチドのアミノ酸配列を、表1に示す。
【0128】
【表2】

【0129】
実施例4
ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドの特異性
この実施例の目的は、ELISA手順を使用して、実施例1〜3中で同定されたヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドの特異性を実証することであった。
【0130】
この実施例では、対照ペプチドである無関係の皮膚結合ペプチド、すなわち配列番号8として示されるスキン(Skin)1(ホワン(Huang)ら、米国特許出願公開第2005/0050656号明細書)とともに、毛髪結合ペプチドHCP.1(配列番号1)およびHCP.6(配列番号4)が使用された、ペプチドはすべて、リジン残基を付加して合成され、シンペップ(SynPep)(カリフォルニア州ダブリン(Dublin,CA)))による蛍光タグ5−カルボキシフルオレスセイン−アミノヘキシルアミダイト(5−FAM)を用いてC末端で誘導体化された。誘導体化された毛髪結合ペプチドHCP.1(5−FAM)およびHCP.6(5−FAM)の配列はそれぞれ、配列番号9および10として示される。誘導体化された皮膚結合ペプチドの対照スキン(Skin)1(5−FAM)の配列は、配列番号11として示される。
【0131】
このアッセイについては、ミニフォールドIドット−ブロットシステム(Minifold I Dot−Blot System)の96ウェルブロック(シュライヒャー・アンド・シュル・インコーポレイティッド(Schleicher&Schuell,Inc.)、ニューハンプシャー州キーン(Keene,NH))の下に、一層のパラフィルム(Parafilm)(登録商標)を適用し、パラフィルム(Parafilm)(登録商標)カバーの上に無毛のブタ皮膚の層を加え、その後、装置を固定することによって、独自のブタ皮膚底の96ウェル装置が作製された。96ウェル装置中の毛髪または皮膚サンプルは、スーパーブロック(SuperBlock)(登録商標)ブロッキング緩衝液(トリス緩衝;ピアスバイオテクノロジー(Pierce Biotechnology)、イリノイ州ロックフォード(Rockford,IL))を用いて、室温で1時間サンプルを保温することによって最初にブロックした。次いで、毛髪または皮膚サンプルを、洗浄緩衝液(TBST−0.5%)で6回洗浄した。1.0mlの結合緩衝液(1mg/ml BSAを含有するTBST−0.5%)中の20μMの濃度のフルオレセイン標識されたペプチドを、各ウェルに加え、37℃で30分間保温した。毛髪または皮膚サンプルを、TBST−0.5%で6回洗浄し、次いで、1.0mlの抗フルオレセイン/マウスIgG(モレキュラープローブスインコーポレイティッド(Molecular Probes,Inc.)、オレゴン州ユージン(Eugene,OR))溶液(ブロッキング緩衝液で1:1000希釈)を、ウェルごとに加えた。サンプルは、室温で1時間保温し、次いで、緩衝液で6回洗浄した。その後、1.0mlの抗マウスIgG−HRP結合体(ピアスバイオテクノロジー(Pierce Biotechnology))溶液(ブロッキング緩衝液で1:1000希釈)を、各ウェルに加え、これらのサンプルを、室温で1時間保温した。これらのサンプルを、洗浄緩衝液で6回洗浄し、300μLのTMB基質(ピアスバイオテクノロジー(Pierce Biotechnology))を各ウェルに加えた。サンプルを、室温で10分間保温し、次いで、各ウェルから100μLサンプルを取り出し、新しいマイクロタイタープレート中のウェルに加えた。その後、100μLの停止液(2M 硫酸溶液)を各ウェルに加え、各サンプルの吸光度を、450nmの波長で測定した。
【0132】
結果を、二重の独立した実験(それぞれが、少なくとも3つの重複測定からなる)の平均±平均値の標準誤差(SEM)として、表2に示す。表中のデータからわかる通り、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドHCP.1およびHCP.6は、毛髪に結合するが、皮膚には結合せず、毛髪に対するその結合特異性が実証される。予想通り、陽性の皮膚結合対照として使用されたスキン(Skin)1ペプチドは、高い皮膚結合活性と、低い毛髪結合活性を有した。
【0133】
【表3】

【0134】
実施例5
ヘアコンディショナーマトリックスから毛髪へのヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドの結合
この実施例の目的は、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが、ヘアコンディショナーマトリックスから毛髪に結合することを実証することであった。
【0135】
96ウェル装置におけるウェルとしての役割り当てをせず、毛髪サンプルが束に集められたこと以外は、実施例4に記載したのと同じELISA方法を使用した。毛髪サンプルの束を調製するために、1cm長さの毛髪100断片を集め、片方の末端を、幅の狭いテープ(スリーエム(3M)、ミネソタ州セントポール(St.Paul,MN))で巻いた。毛髪は、実施例1〜3に記載した通りに調製し、平底ブロック(flat−bottom block)(キアゲンサイエンス(Qiagen Science)、メリーランド州ジャーマンタウン(Germantown,MD);カタログ番号19579)に入れた。
【0136】
HCP.1(5−FAM)およびHCP.6(5−FAM)毛髪結合ペプチドを、高剪断ミキサー(high−shear mixer)(シルバーソン(Silverson)モデルL4R7A;シルバーソンマシーンズ(Silverson Machines)、マサチューセッツ州イーストロングメドー(East Longmeadow,MA))を6分間使用して、実施例4に記載した通りに、希釈していないヘアコンディショナー(ダヴ(Dove)(登録商標)エクストラボリュームコンディショナー(Extra Volume Conditioner);ユニリーバ(Unilever))と別々に混合して、20μMの最終ペプチド濃度を得た。この毛髪サンプルを、実施例4に記載した通りにブロックし、次いで37℃で30分間、ペプチド−コンディショナー混合物中で保温した。毛髪サンプルを、その後洗浄し、実施例4に記載した通りに処理した。抗マウスIgG−HRP結合体の添加の後の最終の洗浄工程後、毛髪の束を新しい管に移し、TMB基質を加えた。毛髪の束を、室温で10分間保温し、次いで各管から100μLのサンプルを取り出し、マイクロタイタープレート中のウェルに加えた。その後、100μLの停止液(2Mの硫酸溶液)を各ウェルに加え、各サンプルの吸光度を、450nmの波長で測定した。
【0137】
緩衝液から毛髪へのHCP.1(5−FAM)およびHCP.6(5−FAM)毛髪結合ペプチドの結合を、同じ手順を使用して決定した。さらに、ヘアコンディショナーおよび緩衝液中に、いずれの毛髪結合ペプチドも含ませずに、同じ手順を使用して、対照実験を行った。
【0138】
結果は、二重の独立した実験(それぞれが、少なくとも3つの重複測定からなる)の平均±平均値の標準誤差(SEM)として、表3に示す。これらの結果は、緩衝液と比較した場合の、ヘアコンディショナーマトリックスからのヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドHCP.1とHCP.6の毛髪結合活性には、有意な差は存在しないことを実証する。
【0139】
【表4】

【0140】
ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドがまた、シャンプー耐性でもあるかどうか決定するために、実験を行った。これらの実験については、毛髪結合ペプチド(HCP.1またはHCP.6)と接触させた後の毛髪を、30%シャンプー(パンテーン・Pro−V(Pantene Pro−V)、シアーボリューム(Sheer Volume)、プロクターアンドギャンブル(Proctor&Gamble)、オハイオ州シンシナティ(Cincinnati,OH))を含有する溶液で洗浄し、上述したELISA方法を使用して、結合活性を決定し、緩衝液洗浄を用いて、得られたものと比較した。シャンプー洗浄によって、結合活性がほとんど喪失され、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドは、シャンプー耐性ではないことが示された。
【0141】
実施例6
ヘアコンディショナーマトリックス中のヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドの安定性
この実施例の目的は、ヘアコンディショナーマトリックス中のヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドの安定性を実証することであった。
【0142】
毛髪結合ペプチドHCP.1およびHCP.6をヘアコンディショナーに入れた別々の混合物を、実施例5に記載した通りに調製した。比較の目的で、毛髪結合ペプチドを緩衝液中に入れた溶液を使用した。すべての溶液を、室温で保管し、異なる時間で取り出されたサンプルを使用して、実施例5に記載したELISA手順を使用して、ペプチドの結合活性を決定した。毛髪結合ペプチドを含有しない緩衝液およびヘアコンディショナーを用いて対照実験も行った。
【0143】
ペプチドHCP.1およびHCP.6について得られる結果を、それぞれ図1および2に示す。この図の結果は、ヘアコンディショナーマトリックス中の21日後の2つのヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドの毛髪結合活性には有意な低下がなかったことを示す。
【0144】
実施例7(机上実験)
ペプチドをベースとするヘアコンディショナーの調製
この予測的な実施例の目的は、ヘテロ二官能性架橋薬剤である3−マレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを使用して、配列番号12として示される、ヘアコンディショナー耐性の、毛髪に結合する、システインが付着されたHCP.1ペプチドを、オクチルアミンと結びつけることによって、ペプチドをベースとするヘアコンディショナーを調製する方法を説明することである。
【0145】
オクチルアミン(アルドリッチ(Aldrich)由来)を、0.3mlのDMFに対して11.6mgを加えることによって希釈する。この希釈された溶液を、5mlの丸底フラスコ中の0.2mlのDMFに入れた、25mgの3−マレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(アルドリッチ(Aldrich))および5mgのジイソプロピルエチルアミン(アルドリッチ(Aldrich))を含有する撹拌された溶液に加える。反応混合物は、直ちに混濁し、数分後に透明になる。溶液を、さらに4時間撹拌する。その後、溶液を、高真空下で乾燥させる。生成物、すなわちオクチルアミンが結びつけられたマレイミドプロピオン酸塩を、シリカゲル60(EMDケミカルズ(EMD Chemicals)(かつてのEMサイエンス(EM Science))、ニュージャージー州ギブスタウン(Gibbstown,NJ))カラムおよび溶離液としてのDMF/エーテルを使用するカラムクロマトグラフィによって精製する。
【0146】
上の生成物のうちの約12mgを、5mLの丸底フラスコに入れ、配列番号12として示される、システインが付着された85mgのHCP.1ペプチド(シンペップ(SynPep)、カリフォルニア州ダブリン(Dublin,CA))、およびpH7.2の0.5mLの0.1M リン酸緩衝液を加える。システインが付着されたHCP.1ペプチドは、毛髪結合HCP.1ペプチド(配列番号1)のペプチド配列のC末端にシステインが付着されている。この混合物を、室温で6時間撹拌する。水/エーテルを用いる抽出によって、最終生成物を精製する。生成物を、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)を使用して分析する。
【0147】
実施例8(机上実験)
ペプチドをベースとするヘアコンディショナーの調製
この予測的な実施例の目的は、オクタデシルアルキル鎖にヘアコンディショナー−毛髪結合ペプチドHCP.1を結びつけることによって、ペプチドをベースとするヘアコンディショナーを調製することである。
【0148】
オクタデシルイソシアネート(70mg、アルドリッチ(Aldrich)、CAS番号112−96−9)を、5mlのN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、10mlのDMFに溶解された(150mg)、配列番号12として示される、C末端上にシステイン残基が付加された、保護されていないHCP.1ペプチド(シンペップ(SynPep)由来)の溶液に加える。反応を触媒するために、トリエチルアミン(30mg)を加える。この溶液を、室温で120時間撹拌する。溶媒を蒸発させて、オフホワイトの結晶性の粉末生成物を生ずる。生成物を、液体クロマトグラフィーおよびMALDI質量分析によって分析する。
【0149】
実施例9(机上実験)
ペプチドをベースとする毛髪着色料の調製
この予測的な実施例の目的は、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドHCP.1(配列番号1)をディスパースオレンジ3(Disperse Orange 3)染料に共有結合的に付着させることによって、ペプチドをベースとする毛髪着色料を調製することである。この染料に、最初にイソシアネートを用いて官能性をもたせ、続いて、HCP.1ペプチドと反応させる。
【0150】
ディスパースオレンジ3(Disperse Orange 3)の官能化:
ドライボックス中で、14.25gのディスパースオレンジ3(Disperse Orange 3)(アルドリッチ(Aldrich))を、滴下漏斗で400mlの乾燥THFに懸濁させる。磁気攪拌棒を含有する2リットルの4頸反応フラスコ(コーニングインコーポレイティッド(Corning Inc.)、ニューヨーク州コーニング(Corning,NY);パートナンバー(part no.)1533−12)に、200mlの乾燥トルエンを装入する。このフラスコに、コールドフィンガーコンデンサー(コーニングインコーポレイティッド(Corning Inc.)(パートナンバー(part no.)1209−04))、および滴下漏斗を備えた第2のコールドフィンガーコンデンサーを装着し、フード中で油浴に入れる。
【0151】
ホスゲン(25.4ml)を、室温で、反応フラスコに濃縮させる。ホスゲン添加が完了した後、油浴の温度を、80℃に上げ、反応温度およびスクラバーからのガス放電をモニタリングしながら、ディスパースオレンジ3(Disperse Orange 3)懸濁液を、2時間かけて100mlの増分で、液滴として反応フラスコに加える。温度は、添加の間中64℃以下に維持する。添加が完了した後、反応物を、64℃で1時間加熱し、その後、終夜撹拌しながら室温に冷却させる。
【0152】
反応溶媒を、中身を40℃以下に維持しながら、真空蒸留して乾燥させ、さらなる時間真空を維持する。反応フラスコを、ドライボックスに移し、生成物を収集して終夜乾燥させる。所望の生成物を、陽子NMRによって確認する。
【0153】
イソシアネート官能化された染料のHCP.1毛髪結合ペプチドとの結合:
上述した通りに調製したイソシアネート官能化されたディスパースオレンジ3(Disperse Orange 3)[(2−(4−イソシアントフェニル(isocyantophenyl))−1−(4−ニトロフェニル)ジアゼン](16mg)を、5mLのDMFに溶解し、10mlのDMFに溶解したシンペップ(SynPep)からの75mgの非保護HCP.1ペプチド(配列番号1)を含有する溶液に加える。反応を触媒するために、トリエチルアミン(30mg)を加える。この溶液を、室温で24時間撹拌する。溶媒を蒸発させると、濃い赤褐色の粉末生成物が生じる。この生成物を、付加物形成を確認するために、MALDI質量分析によって分析する。
【0154】
実施例10(机上実験)
ヘアコンディショナーマトリックス中のペプチドをベースとする毛髪着色料を使用する毛髪の着色
この予測的な実施例の目的は、ヘアコンディショナーマトリックス中のペプチドをベースとする毛髪着色料を使用して、天然の白色の毛髪のサンプルの着色を試験する方法を説明することである。
【0155】
毛髪着色組成物は、実施例9に記載した通りに調製されるペプチドをベースとする毛髪着色料を、ヘアコンディショナーと混合することによって調製される。ペプチドをベースとする毛髪着色料(100mg)を、高剪断ミキサーを使用して、10mLのダヴ(Dove)(登録商標)エクストラボリュームコンディショナー(Extra Volume Conditioner)と混合する。天然の白色毛髪の束(約100〜1000本の毛髪)(インターナショナルヘアインポーターズアンドプロダクツインコーポレイティッド(International Hair Importers and Products Inc.)由来)を、ペプチドをベースとする毛髪着色料−コンディショナー混合物に、撹拌しながら10分間浸す。その後、毛髪を、10mLの50% パンテーン・Pro V(Pantene Pro V)シャンプーと5分間混合し、次いでシャンプーを除去するために蒸留水で洗い落とすことによって洗浄する。毛髪を室温で乾燥させ、蒸留水で少なくとも5回すすぐ。毛髪の色は、オレンジとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドHCP.1(配列番号1)のヘアコンディショナーマトリックス中での安定性を示す。
【図2】ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドHCP.6(配列番号4)のヘアコンディショナーマトリックス中での安定性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドを同定するための方法であって、
a)DNA結合型ペプチドのコンビナトリアルライブラリを提供すること、
b)(a)のライブラリを毛髪サンプルと接触させること(ここで、毛髪が、DNA結合型ペプチドと複合体を形成して、DNA結合型ペプチド−毛髪複合体を含んでなる反応溶液が形成される)、
c)(b)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を反応溶液から単離すること、
d)(c)の単離されたDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を、濃度が最大濃度の少なくとも約10%であるヘアコンディショナーマトリックスと接触させて、コンディショニング液を形成させること、
e)(d)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体をコンディショニング液から単離すること、
f)(e)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体のペプチド部分をコードするDNAを増幅させること、および
g)コンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドをコードする(f)の増幅されたDNAを配列決定すること(ここで、コンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが同定される)
を含んでなる方法。
【請求項2】
工程(e)の後、
i)DNA結合型ペプチド−毛髪複合体のペプチドが、溶離剤と接触され(それによって、一部のDNA結合型ペプチドは、毛髪から溶離され、一部のDNA結合型ペプチドは、複合体形成されたままとなる)、
ii)(ii)の溶離または複合体形成されたDNA結合型ペプチドが、工程(f)および(g)にかけられる
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ペプチドをコードするDNAが、
a)ポリメラーゼ連鎖反応によって、ペプチドコード領域を含んでなるDNAを増幅させること、および
b)当該ペプチドをコードするDNAを含んでなるファージで宿主細胞を感染させて、適切な増殖培地中で前記宿主細胞を増殖させること
よりなる群から選択されるプロセスによって増幅される請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
工程(f)の増幅されたDNAによってコードされるペプチドが、新たな毛髪サンプルと接触され、工程(b)から(f)が、1回もしくはそれ以上繰り返される請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(d)が1回もしくはそれ以上繰り返される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
DNA結合型ペプチドのコンビナトリアルライブラリが、濃度が最大濃度の少なくとも約10%であるヘアコンディショナーマトリックス中に提供され、毛髪サンプルと接触されて、DNA結合型ペプチド−毛髪複合体を含んでなる反応溶液が形成される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
DNA結合型ペプチドのコンビナトリアルライブラリが、濃度が最大濃度の少なくとも約10%であるヘアコンディショナーマトリックス中に提供され、毛髪サンプルと接触されて、DNA結合型ペプチド−毛髪複合体を含んでなる反応溶液が形成されるが、工程(d)および(e)は、場合により省略される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
DNA結合型ペプチドのコンビナトリアルライブラリが、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、および酵母ディスプレイよりなる群から選択される方法によって産生される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
DNA結合型ペプチドのコンビナトリアルライブラリが、毛髪サンプルを接触させるよりも前に、あるいは同時に、非標的と場合により接触され、非標的と結合したペプチドが除去される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ヘアコンディショナーマトリックスの濃度が、最大濃度の少なくとも約20%である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ヘアコンディショナーマトリックスの濃度が、最大濃度の少なくとも約50%である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ヘアコンディショナーマトリックスの濃度が、最大濃度の少なくとも約75%である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ヘアコンディショナーマトリックスが希釈されない請求項1に記載の方法。
【請求項14】
溶離剤が、酸、塩基、食塩水、水、エチレングリコール、ジオキサン、チオシアン酸塩、グアニジン、および尿素よりなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項15】
a)DNA結合型ペプチドのコンビナトリアルライブラリを提供する工程、
b)(a)のライブラリを毛髪サンプルと接触させる工程(ここで、毛髪は、DNA結合型ペプチドと複合体を形成して、DNA結合型ペプチド−毛髪複合体を含んでなる反応溶液が形成される)、
c)反応溶液から(b)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を単離する工程、
d)(c)の単離されたDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を、濃度が最大濃度の少なくとも約10%であるヘアコンディショナーマトリックスと接触させて、コンディショニング液を形成する工程、
e)(d)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を、コンディショニング液から単離する工程、
f)(e)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体ペプチド部分をコードするDNAを増幅させる工程、および
g)コンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドをコードする(f)の増幅されたDNAを配列決定する工程(ここで、コンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが同定される)
を含んでなるプロセスによって同定されるヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド。
【請求項16】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号12よりなる群から選択されるヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチド。
【請求項17】
一般構造(HCP−BA(式中、
a)HCPは、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドであり、
b)BAは、有効薬剤であり、
c)mは、1から約100までの範囲であり、
d)nは、1から約50,000までの範囲である)
で表される、ジブロック型のペプチドをベースとする毛髪有効薬剤。
【請求項18】
一般構造[(HCP−S)−BA
(式中、
a)HCPは、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドであり、
b)BAは、有効薬剤であり、
c)Sは、スペーサーであり、
d)xは、1から約10までの範囲であり、
e)mは、1から約100までの範囲であり、
f)nは、1から約50,000までの範囲である)
で表される、トリブロック型のペプチドをベースとする毛髪有効薬剤。
【請求項19】
有効薬剤が毛髪コンディショニング剤である、請求項17に記載のジブロック型のペプチドをベースとする有効薬剤。
【請求項20】
有効薬剤が毛髪コンディショニング剤である、請求項18に記載のトリブロック型のペプチドをベースとする有効薬剤。
【請求項21】
有効薬剤が着色剤である、請求項17に記載のジブロック型のペプチドをベースとする有効薬剤。
【請求項22】
有効薬剤が着色剤である、請求項18に記載のトリブロック型のペプチドをベースとする有効薬剤。
【請求項23】
ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが、
a)DNA結合型ペプチドのコンビナトリアルライブラリを提供する工程、
b)(a)のライブラリを毛髪サンプルと接触させる工程(ここで、毛髪は、DNA結合型ペプチドと複合体を形成し、DNA結合型ペプチド−毛髪複合体を含んでなる反応溶液が形成される)、
c)反応溶液から(b)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を単離する工程、
d)(c)の単離されたDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を、濃度が最大濃度の少なくとも約10%であるヘアコンディショナーマトリックスと接触させて、コンディショニング液を形成する工程、
e)コンディショニング液から(d)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を単離する工程、
f)(e)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体のペプチド部分をコードするDNAを増幅させる工程、および
g)ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドをコードする(f)の増幅されたDNAを配列決定する工程(ここで、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが同定される)
を含んでなるプロセスによって単離される請求項17〜22のいずれか一項に記載のペプチドをベースとする有効薬剤。
【請求項24】
ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが、約7アミノ酸から約25アミノ酸の長さである請求項17〜22のいずれか一項に記載のペプチドをベースとする有効薬剤。
【請求項25】
ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが、約12アミノ酸から約20アミノ酸の長さである請求項17〜22のいずれか一項に記載のペプチドをベースとする有効薬剤。
【請求項26】
ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが、
a)N末端、および
b)C末端
よりなる群から選択されるペプチドの少なくとも1つの末端上に、少なくとも1つのシステイン残基をさらに含んでなる請求項17〜22のいずれか一項に記載のペプチドをベースとする有効薬剤。
【請求項27】
ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが、
a)N末端、および
b)C末端
よりなる群から選択されるペプチドの少なくとも1つの末端上に、少なくとも1つのリジン残基をさらに含んでなる請求項17〜22のいずれか一項に記載のペプチドをベースとする有効薬剤。
【請求項28】
ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号12よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項17〜22のいずれか一項に記載のペプチドをベースとする有効薬剤。
【請求項29】
毛髪コンディショニング剤が、オクチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアルコール、ビニル基末端シロキサン、ビニル基末端シリコーン、ビニル基末端メチルビニルシロキサン、ビニル基末端メチルビニルシリコーン、ヒドロキシル末端シロキサン、ヒドロキシル末端シリコーン、アミノ修飾シリコーン誘導体、[(アミノエチル)アミノ]プロピルヒドロキシルジメチルシロキサン、[(アミノエチル)アミノ]プロピルヒドロキシルジメチルシリコーン、アルファ−トリデシル−オメガ−ヒドロキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、アモジメチコン、およびナノ粒子よりなる群から選択される請求項19または20に記載のペプチドをベースとする有効薬剤。
【請求項30】
着色剤が、D&Cイエロー(D&C Yellow)1、D&Cイエロー(D&C Yellow)3、HCイエロー(HC Yellow)6、HCイエロー(HC Yellow)8、D&Cブルー(D&C Blue)1、HCブルー(HC Blue)1、HCブラウン(HC Brown)2、HCレッド(HC Red)5、2−ニトロ−パラフェニレンジアミン、N,N−ヒドロキシエチル−2−ニトロ−フェニレンジアミン、4−ニトロ−インドール、酸化鉄、二酸化チタン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属ナノ粒子、半導体ナノ粒子、および有色のマイクロスフィアよりなる群から選択される請求項21または22に記載のペプチドをベースとする有効薬剤。
【請求項31】
有色のマイクロスフィアが、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルトルエン、スチレン/ブタジエンコポリマー、およびラテックスよりなる群から選択される材料を含んでなり、その直径が、約10ナノメートから約2ミクロンである請求項30に記載のペプチドをベースとする有効薬剤。
【請求項32】
スペーサーが、エタノールアミン、エチレングリコール、鎖長が6炭素原子であるポリエチレン、3から6の繰返し単位を有するポリエチレングリコール、フェノキシエタノール、プロパノールアミド、ブチレングリコール、ブチレングリコールアミド、プロピルフェニル、エチルアルキル鎖、プロピルアルキル鎖、ヘキシルアルキル鎖、ステリルアルキル鎖、セチルアルキル鎖、およびパルミトイルアルキル鎖よりなる群から選択される請求項18、20、または22のいずれか一項に記載のペプチドをベースとする有効薬剤。
【請求項33】
スペーサーが、プロリン、リジン、グリシン、アラニン、セリン、およびそれらの混合物よりなる群から選択されるアミノ酸を含んでなるペプチドである請求項18、20、または22のいずれか一項に記載のペプチドをベースとする有効薬剤。
【請求項34】
スペーサーが、配列番号6、配列番号13、配列番号14、および配列番号15よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるペプチドである請求項18、20、または22のいずれか一項に記載のペプチドをベースとする有効薬剤。
【請求項35】
請求項17または18の有効な量のペプチドをベースとする有効薬剤を含んでなるヘアケア製品組成物。
【請求項36】
請求項21または22の有効な量のペプチドをベースとする有効薬剤を含んでなる毛髪着色製品組成物。
【請求項37】
請求項21または22の有効な量のペプチドをベースとする有効薬剤を含んでなる化粧品組成物。
【請求項38】
請求項19または20の有効な量のペプチドをベースとする有効薬剤を含んでなる毛髪着色製品組成物。
【請求項39】
請求項19または20の有効な量のペプチドをベースとする有効薬剤を含んでなる毛髪コンディショニング製品組成物。
【請求項40】
請求項39の組成物を毛髪に適用することと、前記保護層を形成させることを含んでなる、毛髪上にペプチドをベースとするコンディショナーの保護層を形成するための方法。
【請求項41】
毛髪を着色するのに十分な時間、請求項38の組成物を毛髪に適用することを含んでなる、毛髪を着色するための方法。
【請求項42】
眉または睫毛に請求項37の組成物を適用することを含んでなる、眉または睫毛を着色するための方法。
【請求項43】
毛髪、眉、または睫毛を着色するための方法であって、
a)
i)(HCP−C、および
ii)[(HCP−S)−C
(式中、
1)HCPは、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドであり、
2)Cは、着色剤であり、
3)nは、1から約50,000までの範囲であり、
4)Sは、スペーサーであり、
5)mは、1から約100までの範囲であり、
6)xは、1から約10までの範囲であり、
ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドは、
A)DNA結合型ペプチドのコンビナトリアルライブラリを提供する工程、
B)(A)のライブラリを毛髪サンプルと接触させて(ここで、毛髪は、DNA結合型ペプチドと複合体を形成する)、DNA結合型ペプチド−毛髪複合体を含んでなる反応溶液を形成する工程、
C)反応溶液から(B)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を単離する工程、
D)(C)の単離されたDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を、濃度が最大濃度の少なくとも約10%であるヘアコンディショナーマトリックスと接触させて、コンディショニング液を形成する工程、
E)このコンディショニング液から(D)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を単離する工程、
F)(E)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体のペプチド部分をコードするDNAを増幅させる工程、
G)ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドをコードする(F)の増幅されたDNAを配列決定する工程(ここで、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが同定される)
を含んでなる方法によって選択される)
よりなる群から選択される毛髪着色料を含んでなる毛髪着色組成物を提供する工程、ならびに
b)毛髪着色料が毛髪、眉、または睫毛に結合するのに十分な時間、毛髪、眉、または睫毛に(a)の毛髪着色組成物を適用する工程
を含んでなる方法。
【請求項44】
毛髪上にペプチドをベースとするコンディショナーの保護層を形成するための方法であって、
a)
i)(HCP−HCA、および
ii)[(HCP−S)−HCA
(式中、
1)HCPは、ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドであり、
2)HCAは、毛髪コンディショニング剤であり、
3)nは、1から約50,000までの範囲であり、
4)Sは、スペーサーであり、
5)mは、1から約100までの範囲であり、
6)xは、1から約10までの範囲であり、
ヘアコンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドは、
A)DNA結合型ペプチドのコンビナトリアルライブラリを提供する工程、
B)(A)のライブラリを毛髪サンプルと接触させて(ここで、毛髪は、DNA結合型ペプチドと複合体を形成する)、DNA結合型ペプチド−毛髪複合体を含んでなる反応溶液を形成する工程、
C)反応溶液から(B)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を単離する工程、
D)(C)の単離されたDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を、濃度が最大濃度の少なくとも約10%であるヘアコンディショナーマトリックスと接触させて、コンディショニング液を形成する工程、
E)このコンディショニング液から(D)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体を単離する工程、
F)(E)のDNA結合型ペプチド−毛髪複合体のペプチド部分をコードするDNAを増幅させる工程、
G)コンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドをコードする(F)の増幅されたDNAを配列決定する工程(ここで、コンディショナー耐性の毛髪結合ペプチドが同定される)
を含んでなる方法によって選択される)
よりなる群から選択されるヘアコンディショナーを含んでなるヘアケア組成物を提供する工程、ならびに
b)(a)のヘアケア組成物を毛髪に適用して、前記保護層を形成させる工程
を含んでなる方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−500003(P2009−500003A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558196(P2007−558196)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/007364
【国際公開番号】WO2006/094094
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】