ヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法
【課題】外光が明るい条件下でも虚像に対して視認性が良いヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法を提供する。
【解決手段】外部からの画像信号に基づいて照明光源12から射出した光から1次像を生成し、1次画像光として射出する画像表示17と、1次画像光を拡大するリレーレンズ18と、入射した1次画像光の結像により2次像を生成し、2次画像光として反射する反射ミラー20と、入射した2次画像光に基づいて2次像の虚像を生成し、虚像光として反射して拡大投影する凹面鏡21とを備える。
【解決手段】外部からの画像信号に基づいて照明光源12から射出した光から1次像を生成し、1次画像光として射出する画像表示17と、1次画像光を拡大するリレーレンズ18と、入射した1次画像光の結像により2次像を生成し、2次画像光として反射する反射ミラー20と、入射した2次画像光に基づいて2次像の虚像を生成し、虚像光として反射して拡大投影する凹面鏡21とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認性が良いヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両においては、運転席の前方に運転情報を表示するための各種の表示装置が取り付けられているが、この他に、最近、例えば自動車内でフロントガラス越しに速度情報などの運転情報や、ナビ情報とか、無線を介して送信された道路混雑情報などを虚像で表示できるヘッドアップディスプレイが提案されている。
【0003】
この種のヘッドアップディスプレイは各種の構造形態があるが、従来例の一例として、運転者の好みに応じて虚像の表示サイズを調節することができるヘッドアップディスプレイがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図14は従来のヘッドアップディスプレイを示した構成図である。
【0005】
図14に示した従来のヘッドアップディスプレイ100は、特許文献1に開示されているものであり、ここでは特許文献1を参照して簡略に説明する。
【0006】
図14に示した如く、従来のヘッドアップディスプレイ100は、ケーシング101内に、移動自在な液晶パネル102と、反射鏡103と、凹面鏡104とを備えている。
【0007】
この際、運転者がスイッチ105を縮小(A)する方向又は拡大(B)する方向に操作すると、コントローラ106からの指令により液晶パネル102が反射鏡103に対して前後に移動可能になっている。
【0008】
また、画像処理回路107からの画像信号によって液晶パネル102に表示された画像は、反射鏡103で反射されて光路の方向を変えて凹面鏡104に入射され、この後、凹面鏡104で反射された画像が光路の方向を更に変えて不図示のフロントウインドシールの視界領域部の裏面に入射されるので、運転者はフロントウインドシールの前方に表示情報を虚像108として視認でき、且つ、液晶パネル102を前後に移動させることにより、運転者の好みに応じて虚像108の表示サイズを調節することができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−175744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、従来のヘッドアップディスプレイ100によれば、液晶パネル102の移動位置に応じてフロントウインドシールの前方に表示された虚像108の表示サイズを調節することができるが、液晶パネル102を移動させるための移動機構及びこの移動機構を駆動するための駆動源が必要となり、ヘッドアップディスプレイ100が高価になるという問題がある。
【0011】
また、従来のヘッドアップディスプレイ100では、フロントウインドシール上での虚像108の表示位置が反射鏡103及び凹面鏡104の配置関係により固定されているために、運転者の目Eの高さ位置のバラツキに対して対応することが困難であるという問題がある。
【0012】
更に、従来のヘッドアップディスプレイ100において、フロントウインドシールから運転者の目Eの高さ位置までに十分な距離と視野角を確保するためには、凹面鏡104の曲率半径を大きくし、倍率を低く抑える必要がある。
【0013】
一方、フロントウインドシール越しに見える虚像108の視認性を良くし、且つ、虚像108を大きく表示するには、凹面鏡104の曲率半径を小さくして拡大倍率を高くしなければならず、このときに凹面鏡104の曲率半径が小さくなると、視点を少し動かすだけで急激に画像の歪が増大すると共に、視野が狭いので虚像108が見えにくくなるという問題が生じるので、凹面鏡104としては相反するこれらの要求を同時に満足できない。
【0014】
従って、従来のヘッドアップディスプレイ100では、虚像108の表示サイズを大きくする場合に、液晶パネル102を拡大(B)する方向に移動させることで解決できるが、前述したように、コストアップを招いている。また、虚像108を大きく拡大表示すると暗くなるため、晴天時などでは虚像108の視認性に問題が生じる。
【0015】
そこで、画像を表示する画像表示素子(例えば、液晶パネル)を移動させずに、例えば自動車のフロントガラスに形成した投射面上に虚像を大きく表示でき、且つ、観察者(運転者)の目の高さ位置のバラツキに対しても虚像108を視認することができると共に、外光が明るい条件下でも虚像に対して視認性が良いヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、第1の発明は、光源(12)と、
前記光源(12)から射出した光(Lw)が画素領域(17a)に入射した際に、外部からの画像信号(22a)に基づいて1次像(G1)を生成し、生成された前記1次像(G1)を含む1次画像光(Lg1)として射出する画像表示素子(17)と、
前記画像表示素子(17)から射出した前記1次画像光(Lg1)を拡大する変倍光学系(18)と、
前記変倍光学系(18)で拡大された前記1次画像光(Lg1)の結像位置に配設され、入射した前記1次画像光(Lg1)が結像することにより2次像(G2)を生成し、前記2次像(G2)を含む2次画像光(Lg2)として反射する反射ミラー(20)と、
前記反射ミラー(20)で反射した前記2次画像光(Lg2)の光路上に配設され、入射した前記2次画像光(Lg2)に基づいて前記2次像(G2)の虚像を生成し、前記虚像を含む虚像光(Lvi)として反射して拡大投影する凹面鏡(21)と、
を備えることを特徴とするヘッドアップディスプレイ(10A又は10B)である。
【0017】
また、第2の発明は、上記した第1の発明のヘッドアップディスプレイ(10A又は10B)において、
前記反射ミラー(20)に入射した前記1次画像光(Lg1)が前記2次画像光(Lg2)として反射する際に、前記2次画像光(Lg2)が所定の指向性を有して拡散することを特徴とするヘッドアップディスプレイ(10A又は10B)である。
【0018】
また、第3の発明は、上記した第1又は第2の発明のヘッドアップディスプレイ(10A又は10B)において、
前記反射ミラー(20)は、前記1次画像光(Lg1)の入射面側に、基板(20a)上に形成された反射層(20b)と、前記反射層(20b)上に積層された拡散層(20c)とを備えることを特徴とするヘッドアップディスプレイ(10A又は10B)である。
【0019】
また、第4の発明は、上記した第2又は第3の発明のヘッドアップディスプレイ(10A又は10B)において、
前記反射ミラー(20)から反射した光の反射強度が最大値となる位置を0度とし、前記反射強度が前記最大値(e)の半分となる角度を半値角(α)とした際に、前記半値角(α)の絶対値が5°以上10°以下であることを特徴とするヘッドアップディスプレイ(10A又は10B)である。
【0020】
また、第5の発明は、上記した第1〜第4のいずれかの発明のヘッドアップディスプレイ(10C)において、
前記変倍光学系(18)と前記反射ミラー(20)との間に前記反射ミラー(20)の前方に密着又は接近してフィールドレンズ(30)を設置したことを特徴とするヘッドアップディスプレイである。
【0021】
また、第6の発明は、上記した第1〜第4のいずれかの発明のヘッドアップディスプレイ(10D)において、
前記変倍光学系(18)と前記反射ミラー(20)との間に前記反射ミラー(20)の前方に密着又は接近してフィールドレンズ(30)を設置すると共に、前記フィールドレンズ(30)をこのフールドレンズ(30)の中心軸(J)と直交した方向に移動可能に構成したことを特徴とするヘッドアップディスプレイである。
【0022】
更に、第7の発明は、画素領域(17a)に光が入射した際に、外部からの画像信号(22a)に基づいて1次像(G1)を生成し、生成された前記1次像(G1)を含む1次画像光(Lg1)として射出する1次画像光射出ステップと、
前記1次画像光射出ステップで射出した前記1次画像光(Lg1)を拡大する1次画像光拡大ステップと、
前記1次画像光拡大ステップで拡大した前記1次画像光(Lg1)が結像することにより2次像(G2)を生成し、生成した前記2次像(G2)を含む2次画像光(Lg2)として指向性を有して拡散反射する拡散反射ステップと、
前記拡散反射ステップで反射した前記2次画像光(Lg2)を凹状反射面(21a)で更に反射させて、前記2次像の虚像を含む虚像光(Lvi)を投影面(1a)上に投影する虚像投影ステップと、
を有することを特徴とする画像表示方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、小さな画像表示素子を用いても観察者に対し大きな虚像を表示することができると共に、観察者は投影された虚像を歪みなく良好に視認できる。
【0024】
また、視点をずらしても観察者は虚像を良好に視認することができ、且つ、外光が明るい条件下でも虚像を良好に視認できる。
【0025】
また、体格の異なる別の観察者が投影された虚像を観察する場合にも、投影された虚像を良好に視認できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る実施例のヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法を説明するために模式的に示した図である。
【図2】図1に示した2次像結像用の反射ミラーを拡大して示した図である。
【図3】(a),(b)は図2に示した2次像結像用の反射ミラーに形成した拡散層の反射指向性を説明するために模式的に示した図である。
【図4】本発明に係る実施例のヘッドアップディスプレイにおいて、2次像結像用の反射ミラーに反射指向性を持たせた場合に、観察者が目を動かしても虚像をフロントガラス越しに見ることができる様子を模式的に示した光線図である。
【図5】本発明に係る実施例のヘッドアップディスプレイを例えば自動車に適用したときの具体的な設計例を説明するための図である。
【図6】本発明に係る実施例のヘッドアップディスプレイにおいて、2次像結像用の反射ミラーに形成した拡散層の半値角に対する明るさと視野半径との関係をシミュレーションしたときの結果を説明するための図である。
【図7】実施例を一部変形させた変形例1のヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法を説明するために模式的に示した図である。
【図8】実施例を一部変形させた変形例2のヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法を説明するために模式的に示した図である。
【図9】実施例を一部変形させた変形例2のヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法に対する比較例を説明するために模式的に示した図である。
【図10】(a),(b)は実施例を一部変形させた変形例2のヘッドアップディスプレイにおいて、2次像結像用の反射ミラーの前方に密着又は接近してフィールドレンズを設置した場合に、観察者が目を動かしても虚像をフロントガラス越しに見ることができる様子を模式的に示した光線図である。
【図11】(a),(b)は実施例及び変形例2を一部変形させた変形例3のヘッドアップディスプレイにおいて、2次像結像用の反射ミラー及びフィールドレンズをフィールドレンズの中心軸と直交させて移動可能に構成した場合に、観察者が目を動かしても虚像をフロントガラス越しに見ることができる様子を模式的に示した光線図である。
【図12】(a),(b)は実施例及び変形例2を一部変形させた変形例3のヘッドアップディスプレイにおいて、図10に示した状態と図11に示した状態とを合わせて観察者が目を動かしても虚像をフロントガラス越しに見ることができる様子を模式的に示した光線図である。
【図13】(a),(b)は変形例2及び変形例3に用いられるフィールドレンズ及び反射ミラーを拡大して示した断面図である。
【図14】従来のヘッドアップディスプレイを示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明に係るヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法の一実施例について図1〜図13を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0028】
図1に示した如く、本発明に係る実施例のヘッドアップディスプレイ10Aは、箱状に形成された筐体11A内に、照明用光源12と、コリメータレンズ13と、フィールドレンズ14と、偏光板15と、偏光ビームスプリッタ16と、画像表示素子17と、変倍光学系となるリレーレンズ18と、光路方向を変更する光路転換用のミラー19と、2次像の結像及び結像した2次像を反射する反射ミラー20と、凹面鏡21とを備えている。更に、反射型液晶パネル17に対して画像信号を送る画像信号発生器22を備えている。画像信号発生器22は、筐体11A内に配置してもよい。
【0029】
ここで、画像表示素子17として、反射型液晶パネルや、透過型液晶パネルとか、DMD(Digital Micromirror Device)などが適用可能であるが、以下の説明では、画像表示素子17として高精細な画像を表示することが容易な反射型液晶パネルを適用した例について説明する。
【0030】
この際、画像信号発生器22は、自動車内に設けたスピードメータ,各種計器類からの運転情報や、ナビゲーション装置からのナビ情報とか、無線を介して送信された道路混雑情報などを基にして画像信号22aを生成している。この画像信号22aに基づいて反射型液晶パネル(画像表示素子)17が駆動されることにより、入射した光が反射型液晶パネル17で変調され、反射型液晶パネル17の画素領域17aに1次像(1次画像)G1が表示されるようになっている。
【0031】
ここで、実施例のヘッドアップディスプレイ10Aについて具体的に説明する。照明用光源12は、メタルハライドランプ,キセノンランプ,ハロゲンランプ,LED(発光ダイオード)などを用いることができ、筐体11Aの右下方に配置されている。この照明用12から射出された無偏光の白色光Lwは、コリメータレンズ13で平行光に変換された後にフィールドレンズ14を介して偏光板15に入射する。入射した無偏光の白色光Lwは、この偏光板15で一方向の偏光成分である直線偏光、例えばS偏光(又はP偏光)のみが分離されて透過する。
【0032】
偏光板15を透過したS偏光(又はP偏光)は、偏光ビームスプリッタ16に入射して、この内部に形成された偏光分離膜16aで反射される。反射されたS偏光(又はP偏光)は、光路の向きを反射型液晶パネル17の方向に90°変えられて、フィールドレンズ14を透過することによって反射型液晶パネル17の画素領域17aを照明している。
【0033】
尚、偏光板15を設けない構成も可能であり、この場合には偏光ビームスプリッタ16の偏光分離16aによって無偏光の白色光から一方向の直線偏光を分離すれば良い。
【0034】
この後、反射型液晶パネル17では、画像信号発生器22から送られた画像信号22aに基づいて入射した光の偏光状態が変調される。具体的には、入射した光の偏光成分であるS偏光(又はP偏光)は、画像信号22aに基づいて異なる他方向の偏光成分であるP偏光(又はS偏光)に変換され、1次像G1が形成される。形成された1次像G1を含む1次画像光Lg1は、反射型液晶パネル17で反射されて射出される。
【0035】
そして、反射型液晶パネル17から射出された1次画像光Lg1は、偏光ビームスプリッタ16に再び入射する。偏光ビームスプリッタ16では、1次画像光Lg1のうち反射型液晶パネル17で変調された成分として例えばP偏光(又はS偏光)が、偏光分離16aを透過して射出する。射出したP偏光(又はS偏光)は、リレーレンズ18に入射して、リレーレンズ18によって拡大されて、この拡大された1次画像光Lg1’がミラー19に入射して光路の方向が2次像結像用の反射ミラー20の方向に変更されて反射して射出される。光路転換用のミラー19から射出されて反射ミラー20に入射したP偏光(又はS偏光)であり且つ拡大された1次画像光Lg1’は、反射ミラー20上に結像して2次像(2次画像)G2を生成して反射ミラー20で反射される。
【0036】
この際、光路転換用のミラー19は2次像G2を結像する機能は有してなく、リレーレンズ18と2次像結像用の反射ミラー20との配置関係により光路を転換する機能を有しているにすぎないものである。
【0037】
ここで、上記した2次像結像用の反射ミラー20は、この実施例の要部を構成する光学部材であり、光を単に反射する通常のミラー(図示せず)を用いてリレーレンズ18から射出された光で2次像G2を結像させる構成もあるが、この実施例における2次像結像用の反射ミラー20では、光が入出射する面に反射指向性を有する反射指向性面20bcが形成されている。
【0038】
即ち、2次像結像用の反射ミラー20は、図2に拡大して示した如く、光学ガラス基板20a上に鏡面状の反射層20bが例えば金属膜により形成され、更に、反射層20b上に入射した光に対して反射指向性を有して拡散させる拡散層20cが積層されている。
【0039】
この際、拡散層20cは、光透過性を有しており、入射した光を下方の反射層20bに入射させ、反射層20bで反射させるものであり、表面に微細な凹凸加工を施されたポリマーや、パール素材、微細な粒子を並べたものなどを用いて形成されている。
【0040】
従って、2次像結像用の反射ミラー20は、光学ガラス基板20a上に反射層20bと拡散層20cとが積層されることにより、前述したように、光学ガラス基板20a上に反射指向性を有する反射指向性面20bcが形成されているものとして以下説明する。
【0041】
尚、光学ガラス基板20a上に形成した反射層20bは、必ずしも金属膜でなくとも入射した光に対して高い反射率を有すれば良いものであり、反射層20b上に拡散層20cを積層しないで通常のミラーとして用いることも可能である。
【0042】
尚また、拡散層20cは、上記した各素材に限ることなく、例えば、Luminit社製の拡散制御フィルム(DCF:Dffusion Contorol Film)などを透明接着剤により反射層20b上に接着しても良い。この拡散制御フィルムは高透過率であり、複数種類の拡散角度が予め用意されているので、所望の拡散角度のものを選択することができ、好適である。
【0043】
この際、図3(a),(b)に示した如く、拡散層20cの拡散角度θに対して反射強度eはガウス分布特性を有している。拡散層20cの反射指向性は、半値角±αを用いて評価することができる。
【0044】
この半値角±αは、拡散層20cに垂直入射した光線が反射したときに最大反射強度eとなる角度を0度とし、反射強度が最大反射強度eに対して半分の値e/2に低下するときの角度のことであり、入射した光線を中心としてプラス側とマイナス側とに現れる。
【0045】
この実施例では拡散層20cの半値角±αとして、その絶対値を5゜以上10°以下に設定しているが、この設定理由については後で詳述する。
【0046】
ここで再び図1に戻り、2次像結像用の反射ミラー20上に結像された2次像G2を含む2次画像光Lg2について説明する。反射ミラー20上に結像された2次像(2次画像)G2は、2次画像光Lg2となって反射ミラー20で反射され、この反射ミラー20で反射された2次画像光Lg2の光路上に設置された凹面鏡21に向けて射出する。
【0047】
更に、凹面鏡21に入射した2次像G2を含む2次画像光Lg2は、2次像の虚像VIを生成し、凹面鏡21の凹状反射面21aで反射されて、2次像の虚像VIを含む虚像光Lviが筐体11Aの上方に開口した開口部11aを通って例えば自動車に設けられた光透過性を有するフロントガラス1上で観察者(運転者)側に形成した投影面1a上に投影される。
【0048】
この際、フロントガラス1に形成した投影面1aの領域は、「コンバイナ」とも呼ばれている。このコンバイナは、例えば、光透過性を有する金属膜や誘電多層膜またはホログラムフィルムより形成され、一部を透過し一部を反射する特性を有する。またコンバイナはフロントガラス1の一部の領域に形成しても良いし、又は、フロントガラス全体に形成しても良い。
【0049】
この後、フロントガラス1に形成した投影面1a上に投影された2次像の虚像VIを含む虚像光Lviの一部は、投影面1aで観察者(運転者)側に反射されて観察者の目Eに入るので、観察者はフロントガラス越しに2次像の虚像光Lvi、即ち、3次像を観察することができる。
【0050】
従って、本発明に係る画像表示方法では、画素領域17aに表示された1次像G1を含む1次画像光Lg1を射出するステップと、1次像G1を含む1次画像光Lg1を拡大して2次像G2を含む2次画像光Lg2を得るステップと、2次像G2を含む2次画像光Lg2を、反射指向性を有する反射指向性面20bc上に結像して反射させるステップと、反射指向性面20bcで反射した2次像G2を含む2次画像光Lg2を凹状反射面21aで反射させて、2次像の虚像VIを含む虚像光Lviを投影面1a上に投影するステップと、を有している。
【0051】
この際、実施例の比較例として2次像結像用に単純なミラー(図示せず)を用いた場合には、2次像G2を含む2次像光Lg2が単純なミラー(図示せず)で反射したときの反射光が直進するために観察者(運転者)の目Eが設計高さ位置にある場合は虚像VIを観察できるが、少しでも目Eの高さ位置がずれると光が届かなくなるために虚像VIを観察できにくくなるという傾向がある。
【0052】
そこで、上記に対してこの実施例では、2次像G2を含む2次像光Lg2が2次像結像用の反射ミラー20上に形成した反射指向性面20bcで拡散しながら反射するときの半値角±α(図3)を適宜設定することにより、観察者の目Eの高さ位置の移動に対応して虚像VIを十分に視認することができるように改善されている。
【0053】
尚、反射指向性面20bcを仮に完全拡散面のように拡散性を広く持たせすぎると、実際に反射した光線のうち観察者の目Eに届く光は極わずかとなって、2次像G2の明るさのほとんどを捨てることになり、観察される虚像VIが非常に暗い画像になってしまう。
【0054】
即ち、図4は、本発明に係る実施例のヘッドアップディスプレイ10Aにおいて、2次像結像用の反射ミラー20に反射指向性を持たせた場合に、観察者が目Eを動かしても虚像VIをフロントガラス越しに見ることができる様子を光線図で模式的に表したものである。
【0055】
図4において、観察者の目Eの高さ位置Aが虚像VI−aを観察する本来の設計位置であるが、観察者の目Eの高さを位置Bあるいは位置Cに動かした場合でも、2次像光Lg2の反射光が指向性を有して拡散されているので、観察者は虚像VI−b,VI−cをそれぞれの位置で視認することができる。
【0056】
この際、2次像結像用の反射ミラー20に形成した拡散層20cの半値角±αの絶対値は、後述する理由により5°以上10°以下に設定しているが、拡散層20cの半値角±αの絶対値を例えば10°に設定した場合に、観察者の目Eの高さ位置を図中に視野半径で表示した上下(位置Aから位置B方向あるいは位置C方向)にそれぞれ約100mm程度動かしても、明るさがほとんど低下しないようにすることができる。ここで、視野半径は、観察者の目Eの高さ位置を設計位置である位置Aから上(位置B)方向、下(位置C)方向に移動させた際の、目Eの高さ位置の移動範囲の半分の値のことである。
【0057】
尚、上記した視野半径は、凹面鏡21の曲率を変えることで調整可能であり、曲率を小さく、言い換えると、曲率半径を大きくすれば、視野半径値を大きく設定できるが、ヘッドアップディスプレイ10Aが大型化してしまう。そこで、具体的な設計例を下記する。
【0058】
次に、実施例のヘッドアップディスプレイ10Aを例えば自動車に適用したときの具体的な設計例について図5を用いて説明する。
【0059】
図5に示した如く、実施例のヘッドアップディスプレイ10Aにおいて、反射型液晶パネル17は矩形状の画素領域17aの外形サイズが対角18mmであり、この画素領域17aに表示された1次像G1をリレーレンズ18により拡大して2倍の対角36mmの2次像G2を反射ミラー20の反射指向性面20bc上に結像させる。
【0060】
また、凹面鏡21の凹状反射面21aの曲率半径は500mmである。
【0061】
ここで、観察者の目Eの高さ位置からフロントガラス1の投影面1aの中心位置までの長さをa、フロントガラス1の投影面1aの中心位置から虚像VIの位置までの長さをb、凹面鏡21の凹状反射面21aの中心位置からフロントガラス1の投影面1aの中心位置までの長さをc、2次像結像用の反射ミラー20の反射指向性面20bcから凹面鏡21の凹状反射面21aの中心位置までの長さをdとする。
【0062】
そして、上記したa,c,dの各寸法を、a=450mm,c=300mm,d=200mmに設定すると、bの寸法はb=1550mmとなる。
【0063】
つまり、フロントガラス1の投影面1aから1550mm先の位置に虚像VIが形成される。即ち、これは観察者の目Eの高さ位置から2メートル先に縦112mm、横140mmの虚像V1が形成されることであり、フロントガラス1から観察者までは450mmと十分な距離を確保することができる。
【0064】
また、虚像V1のサイズは、反射型液晶パネル17の画素領域17aに表示された1次像G1に対して約10倍に拡大されて投影されることになる。
【0065】
ここで、上記したように実施例のヘッドアップディスプレイ10Aを設計した際に、先に図1及び図2を用いて示した2次像結像用の反射ミラー20に形成した拡散層20cの半値角に対する明るさと視野半径との関係をシミュレーションしたときの結果について図6を用いて説明する。
【0066】
図6中において、横軸は拡散層20cの半値角±αの絶対値α[°]を示し、縦軸の左側は明るさ[cd/m2:カンデラ/平方メートル]を示し、縦軸の右側は視野半径[mm]を示している。
【0067】
この際、光源12(図1)に50ワットのランプを用いている。この図6が示すように、2次像結像用の反射ミラー20に形成した拡散層20cの拡散性を広げることで視野すなわち、虚像VI(図1)を視認できる範囲の半径は広がるが、半値角αが10°で視野半径(■印)が飽和することがわかる。
【0068】
一方、明るさ(○印)は、半値角αの二乗で減衰していくので、指向性を広げると急激に明るさが低下することがわかる。昼の明るいときでも虚像VI(図1)を視認できるためには5000cd/m2以上、望ましくは10000cd/m2の輝度が必要とされる。
【0069】
また、運転時に頭を動かすことを考えると、視野半径は50mm以上、望ましくは100mm以上を確保することが望ましい。これらを勘案すると半値角±αの絶対値は5°以上10°以下が望ましく、これにより輝度と視野の広さを両立することができる。
【0070】
これにより、2次像結像用の反射ミラー20に形成した拡散層20cの半値角±αの絶対値を5°以上10°以下に設定することで、虚像VIの視認範囲を広げることが可能となるので、観察者の目Eの高さ位置のバラツキに対応できると共に、当然、観察者の身長の違いなどにも対応できる。
【0071】
この際、明るさは、光源12(図1)のパワーを上げることによっても調整可能であるが、車内での利用や環境対応を考えると省電力化が重要であり、消費電力を低減することが必要である。そのため、実施例では2次像結像用の反射ミラー20上に反射指向性を有する反射指向性面20bcを形成して明るさを確保することで、外光が明るい条件下でも虚像VIに対して視認性が良いヘッドアップディスプレイ10Aを提供可能としている。
【0072】
上記したように、実施例のヘッドアップディスプレイ10A及び画像表示方法によれば、反射型液晶パネル17の画素領域17aに表示された1次像G1を含む1次画像光Lg1をリレーレンズ18により拡大して2次像結像用の反射ミラー20上に2次像G2を形成して2次像G2を含む2次画像光Lg2として反射させた後に、2次像G2を含む2次画像光Lg2を凹面鏡21の凹状反射面21aで反射させて2次像の虚像VIを含む虚像光Lviをフロントガラス1の投影面1a上に投影している。
【0073】
この結果、1次像G1を拡大した2次像G2を形成することによって、小さな反射型液晶パネル(画像表示素子)17を用いても最終的に観察者に対し大きな虚像VIを表示することができると共に、凹面鏡21による拡大倍率を低く抑えることができる。そのため、観察者からフロントガラス1の投影面1aまでの間に十分な距離を取ることができるので、観察者は投影された虚像VIを歪みなく良好に視認できる。
【0074】
この際、2次像結像用の反射ミラー20の反射指向性面20bcは反射指向性を有し、2次像G2を含む2次画像光Lg2を拡散しながら指向性を持って凹面鏡21側に反射させるので、観察者が視点を多少ずらしても凹面鏡21を介して投影された虚像VIを良好に視認することができる。更に、虚像VIを効率的に観察者の目に届けることができるので、外光が明るい条件下でも虚像VIに対して視認性が良いヘッドアップディスプレイ10Aを提供することができる。
【0075】
次に、実施例を一部変形させた変形例1のヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法について、図7を用いて実施例に対して異なる点についてのみ説明する。
【0076】
尚、図7中で実施例と同一構成部材に対しては同一の符号を付して図示し、詳述を省略する。
【0077】
図7に示した如く、実施例を一部変形させた変形例1のヘッドアップディスプレイ10B及び画像表示方法では、箱状に形成した筐体11B内の図7における右下方に、反射型液晶パネル(画像表示素子)17が配置されており、反射型液晶パネル17の画素領域17aに表示された1次像G1を含む1次画像光Lg1をリレーレンズ18により拡大する。拡大された1次画像光Lg1’は、このリレーレンズ18と対向して筐体11B内の右上方に配置した2次像結像用の反射ミラー20に入射して反射ミラー20上に2次像G2が結像される。
【0078】
そのため、実施例で説明した光路転換用のミラー19を設ける必要がないので、変形例1のヘッドアップディスプレイ10Bを簡素化及び小型化できる点が実施例に対して異なっている。
【0079】
従って、この変形例1でも実施例と同様に、変形例1のヘッドアップディスプレイ10Bを用いてフロントガラス越しに虚像VIを表示する場合には、反射型液晶パネル17の画素領域17aに表示された1次像G1を含む1次画像光Lg1をリレーレンズ18により拡大して反射ミラー20上に2次像G2を形成し、反射ミラー20で反射された2次像G2を含む2次画像光Lg2を凹面鏡21の凹状反射面21aで反射させて2次像の虚像VIを含む虚像光Lviをフロントガラス1の投影面1a上に投影しているので、実施例と同様の効果を得ることができる。
【0080】
次に、実施例を一部変形させた変形例2のヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法について、図8〜図10を用いて実施例に対して異なる点についてのみ説明する。
【0081】
尚、図8〜図10中で実施例と同一構成部材に対しては同一の符号を付して図示し、詳述を省略する。
【0082】
図8に示した如く、実施例を一部変形させた変形例2のヘッドアップディスプレイ10C及び画像表示方法では、反射型液晶パネル(画像表示素子)17の前方に設置した変倍光学系となるリレーレンズ18と、光学ガラス基板20a上に反射層20b及び拡散層20cを積層して2次像の結像及び結像した2次像を反射する反射ミラー20との間に、フィールドレンズ30が反射ミラー20の反射指向性面20bcに密着又は接近して設置されている点が実施例に対して異なっている。
【0083】
一方、変形例2の比較例として、図9に示したように光学ガラス基板20a上に反射層20b及び拡散層20cを積層した反射ミラー20の前方にフィールドレンズを設置しない場合には、先の実施例及び実施例を一部変形させた変形例1に相当するものである。
【0084】
即ち、図9に示した如く、反射型液晶パネル17の画素領域17aに表示された1次像G1を含む1次画像光Lg1がリレーレンズ18により拡大され、この拡大された1次画像光Lg1’は2次像結像用の反射ミラー20の反射指向性面20bc上に2次像G2として結像される。2次像G2を含む2次画像光Lg2は反射ミラー20の反射指向性面20bcで拡散光として反射された後に、拡散光である2次画像光Lg2が凹面鏡21の凹状反射面21aに入射する。この際、反射ミラー20の前方にフィールドレンズがないと、反射ミラー20の反射指向性面20bcで反射される2次画像光Lg2の反射角が広いため、2次画像光Lg2の光束の周辺の一部が凹面鏡21に到達せず、凹面鏡21での反射光が暗くなってしまうために、輝度むらが生じることがある。
【0085】
そこで、先に図8を用いて説明したように、反射ミラー20の前方に密着又は接近してフィールドレンズ30を設置する。この構成とすることで、1次画像光Lg1’はフィールドレンズ30の中心軸Jよりも一方側に入射された後にフィールドレンズ30内を通過することにより、2次画像光Lg2が拡散光とならず反射角が狭まり2次画像光Lg2の光束の全てが2次像結像用の反射ミラー20の反射指向性面20bc上に到達し、凹面鏡21での反射光を明るくし、輝度むらの発生を防ぐことができる。この後、凹面鏡21の凹状反射面21aで2次像の虚像VI(図1)を含む虚像光Lviがフロントガラス1へ向けて反射される。
【0086】
具体的には、図10(a),(b)に示したように、変形例2のヘッドアップディスプレイ10C及び画像表示方法において、反射ミラー20の前方に密着又は接近してフィールドレンズ30を設置した際に、反射型液晶パネル17から射出した1次画像光Lg1がリレーレンズ18により拡大される。この拡大された1次画像光Lg1’はフィールドレンズ30の中心軸Jよりも一方側で且つ中心軸Jとレンズ外周部位との間の中間部位に入射されてフィールドレンズ30内を通過して、2次像結像用の反射ミラー20で反射される。反射された2次画像光Lg2はフィールドレンズ30から射出されるが、このときにフィールドレンズ30の中心軸Jとレンズ外周部位との間の中間部位から射出されて凹面鏡21に向かう反射光の向きは曲がりが小さいので、凹面鏡21に全て入射される。
【0087】
この後、凹面鏡21の凹状反射面21aで反射された虚像光Lviがフロントガラス1で観察者に向けて反射されるが、このときに観察者の目Eの高さを位置F又は位置Gもしくは位置Hに動かしても虚像VIをフロントガラス越しに見ることができるので、観察者が姿勢を大きく変えて投影された虚像VIを観察する場合や、体格の異なる別の観察者が投影された虚像VIを観察する場合にも、投影された虚像VIを良好に視認できる。
【0088】
次に、実施例及び変形例2を一部変形させた変形例3のヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法について、図11及び図12を用いて実施例及び変形例2に対して異なる点についてのみ説明する。
【0089】
尚、図11及び図12中で実施例及び変形例2と同一構成部材に対しては同一の符号を付して図示し、詳述を省略する。
【0090】
図11及び図12に示した如く、実施例及び変形例2を一部変形させた変形例3のヘッドアップディスプレイ10D及び画像表示方法では、反射型液晶パネル(画像表示素子)17の前方に設置した変倍光学系となるリレーレンズ18と、2次像の結像及び結像した2次像を反射する反射ミラー20との間に、フィールドレンズ30が反射ミラー20の前方に密着して設置されていると共に、反射ミラー20及びフィールドレンズ30をラック31に固着させて、このラック31に噛合した歯車32の回転により、反射ミラー20及びフィールドレンズ30をフィールドレンズ30の中心軸Jと直交する方向に移動可能に構成している点が実施例及び変形例2に対して異なっている。
【0091】
尚、変形例3では、反射ミラー20の前方に密着してフィールドレンズ30を設置した場合について以下説明するが、反射ミラー20の前方に接近してフィールドレンズ30を設置しても良く、この場合には少なくともフィールドレンズ30をこのフィールドレンズ30の中心軸Jと直交して移動可能となるようにフィールドレンズ30をラック31に取り付ければ良いものである。
【0092】
即ち、図11(a),(b)に示した如く、ラック31に噛合した歯車32を回転駆動して、反射ミラー20及びフィールドレンズ30をフィールドレンズ30の中心軸Jと直交して矢印方向に移動したときに、1次画像光Lg1’はフィールドレンズ30の中心軸Jよりも一方側で且つ中心軸Jよりも離れたレンズ外周部位に入射する。この入射位置は、変形例2の図10(b)に示すフィールドレンズ30上の入射位置に対して、よりレンズ外周部位である。フィールドレンズ30に入射した1次画像光Lg1は、2次像結像用の反射ミラー20で反射され2次画像光Lg2としてフィールドレンズ30から射出される。この際、フィールドレンズ30から射出されて凹面鏡21に向かう反射光の向きは先に説明した図10(a),(b)の場合よりも曲がりが大きい。
【0093】
この後、凹面鏡21の凹状反射面21aで反射された虚像光Lviがフロントガラス1で観察者に向けて反射されるが、このときに観察者の目Eの高さを位置M又は位置Nもしくは位置Oに動かしても虚像VIをフロントガラス越しに見ることができる。ここで、位置M又は位置Nもしくは位置Oは、先の図10(a)に示した位置F又は位置Gもしくは位置Hよりも矢印方向となる上方の位置である。
【0094】
更に、図12(a),(b)に示した如く、フィールドレンズ30を図12(b)の実線で示す位置に移動した場合は、図10(b)同様の位置となるため、観察者の目Eの高さ位置をF又は位置Gもしくは位置Hに移動した場合でも投影された虚像VIを良好に視認できる。また、フィールドレンズ30を図12(b)の実線で示す位置に移動した場合は、図11(b)と同様の位置となるため、観察者の目Eの高さ位置をM又は位置Nもしくは位置Oに移動した場合でも投影された虚像VIを良好に視認できる
上記した変形例2及び変形例3から、反射ミラー20の前方に密着又は接近して設置したフィールドレンズ30は、画像光に対して明るさを均一にする機能と、観察者の目Eの高さ位置を大きく変化させた場合でも投影された虚像VIを良好に視認できる機能とを合わせ持つことになる。
【0095】
この際、フィールドレンズ30は、図13(a)に示したように、中心軸Jを中心に円形に形成されており、凸曲面30aが画像光の入出射面となる一方、凸曲面30aと反対側の平坦面30bが反射ミラー20の反射指向性面20bcに密着又は接近した面となっている。
【0096】
また、フィールドレンズ30は、前述したように、画像光の入出射が中心軸Jよりも
一方側であるので、必ずしも円形である必要がなく、図13(a)に示したフィールドレンズ30に代えて図13(b)に示したような半円形のフィールドレンズ30’でも良く、このフィールドレンズ30’の形状に合わせて反射ミラー20’を形成しても良いものである。
【0097】
以上詳述した実施例及び変形例1〜3では、画像表示素子に反射型液晶パネル17を用いた場合を説明したが、画像表示素子に不図示の透過型液晶パネルを用いた場合には、この透過型液晶パネルの画素領域に表示された1次像をリレーレンズにより拡大して2次像を得れば良く、また、画像表示素子に不図示のDMDを用いた場合には多数のミラーによって表示された1次像をリレーレンズにより拡大して2次像を得れば良いものである。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係るヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法は、自動車,航空機,電車,工事用車両,その他遊戯装置などにおいて、利用可能性がある。
【符号の説明】
【0099】
1…フロントガラス、1a…投影面(コンバイナ)、
10A…実施例のヘッドアップディスプレイ、
10B…変形例1のヘッドアップディスプレイ、
10C…変形例2のヘッドアップディスプレイ、
10D…変形例3のヘッドアップディスプレイ、
11A,11B…筐体、11a…開口部、
12…照明用光源、13…コリメータレンズ、14…フィールドレンズ、
15…偏光板、16…偏光ビームスプリッタ、
17…画像表示素子(反射型液晶パネル)、17a…画素領域、
18…変倍光学系(リレーレンズ)、19…光路転換用のミラー、
20…2次像結像用の反射ミラー、20a…光学ガラス基板、20b…反射層、
20c…拡散層、20bc…反射指向性面、
21…凹面鏡、21a…凹状反射面、22…画像信号発生器、22a…画像信号、
30,30’…フィールドレンズ、30a…凸曲面、30b…平坦面、
31…ラック、32…歯車、
E…目、G1…1次像(1次画像)、G2…2次像(2次画像)、VI…2次像の虚像、
Lw…白色光、Lg1…1次画像光、Lg1’…変倍光学系で拡大された1次画像光、
Lg2…2次画像光、Lvi…虚像光、
e…2次像結像用の反射ミラーの拡散層に垂直入射した光線が反射したときの最大反
射強度、θ…拡散角度、±α…半値角、
J…フィールドレンズ30又は30’の中心軸。
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認性が良いヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両においては、運転席の前方に運転情報を表示するための各種の表示装置が取り付けられているが、この他に、最近、例えば自動車内でフロントガラス越しに速度情報などの運転情報や、ナビ情報とか、無線を介して送信された道路混雑情報などを虚像で表示できるヘッドアップディスプレイが提案されている。
【0003】
この種のヘッドアップディスプレイは各種の構造形態があるが、従来例の一例として、運転者の好みに応じて虚像の表示サイズを調節することができるヘッドアップディスプレイがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図14は従来のヘッドアップディスプレイを示した構成図である。
【0005】
図14に示した従来のヘッドアップディスプレイ100は、特許文献1に開示されているものであり、ここでは特許文献1を参照して簡略に説明する。
【0006】
図14に示した如く、従来のヘッドアップディスプレイ100は、ケーシング101内に、移動自在な液晶パネル102と、反射鏡103と、凹面鏡104とを備えている。
【0007】
この際、運転者がスイッチ105を縮小(A)する方向又は拡大(B)する方向に操作すると、コントローラ106からの指令により液晶パネル102が反射鏡103に対して前後に移動可能になっている。
【0008】
また、画像処理回路107からの画像信号によって液晶パネル102に表示された画像は、反射鏡103で反射されて光路の方向を変えて凹面鏡104に入射され、この後、凹面鏡104で反射された画像が光路の方向を更に変えて不図示のフロントウインドシールの視界領域部の裏面に入射されるので、運転者はフロントウインドシールの前方に表示情報を虚像108として視認でき、且つ、液晶パネル102を前後に移動させることにより、運転者の好みに応じて虚像108の表示サイズを調節することができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−175744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、従来のヘッドアップディスプレイ100によれば、液晶パネル102の移動位置に応じてフロントウインドシールの前方に表示された虚像108の表示サイズを調節することができるが、液晶パネル102を移動させるための移動機構及びこの移動機構を駆動するための駆動源が必要となり、ヘッドアップディスプレイ100が高価になるという問題がある。
【0011】
また、従来のヘッドアップディスプレイ100では、フロントウインドシール上での虚像108の表示位置が反射鏡103及び凹面鏡104の配置関係により固定されているために、運転者の目Eの高さ位置のバラツキに対して対応することが困難であるという問題がある。
【0012】
更に、従来のヘッドアップディスプレイ100において、フロントウインドシールから運転者の目Eの高さ位置までに十分な距離と視野角を確保するためには、凹面鏡104の曲率半径を大きくし、倍率を低く抑える必要がある。
【0013】
一方、フロントウインドシール越しに見える虚像108の視認性を良くし、且つ、虚像108を大きく表示するには、凹面鏡104の曲率半径を小さくして拡大倍率を高くしなければならず、このときに凹面鏡104の曲率半径が小さくなると、視点を少し動かすだけで急激に画像の歪が増大すると共に、視野が狭いので虚像108が見えにくくなるという問題が生じるので、凹面鏡104としては相反するこれらの要求を同時に満足できない。
【0014】
従って、従来のヘッドアップディスプレイ100では、虚像108の表示サイズを大きくする場合に、液晶パネル102を拡大(B)する方向に移動させることで解決できるが、前述したように、コストアップを招いている。また、虚像108を大きく拡大表示すると暗くなるため、晴天時などでは虚像108の視認性に問題が生じる。
【0015】
そこで、画像を表示する画像表示素子(例えば、液晶パネル)を移動させずに、例えば自動車のフロントガラスに形成した投射面上に虚像を大きく表示でき、且つ、観察者(運転者)の目の高さ位置のバラツキに対しても虚像108を視認することができると共に、外光が明るい条件下でも虚像に対して視認性が良いヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、第1の発明は、光源(12)と、
前記光源(12)から射出した光(Lw)が画素領域(17a)に入射した際に、外部からの画像信号(22a)に基づいて1次像(G1)を生成し、生成された前記1次像(G1)を含む1次画像光(Lg1)として射出する画像表示素子(17)と、
前記画像表示素子(17)から射出した前記1次画像光(Lg1)を拡大する変倍光学系(18)と、
前記変倍光学系(18)で拡大された前記1次画像光(Lg1)の結像位置に配設され、入射した前記1次画像光(Lg1)が結像することにより2次像(G2)を生成し、前記2次像(G2)を含む2次画像光(Lg2)として反射する反射ミラー(20)と、
前記反射ミラー(20)で反射した前記2次画像光(Lg2)の光路上に配設され、入射した前記2次画像光(Lg2)に基づいて前記2次像(G2)の虚像を生成し、前記虚像を含む虚像光(Lvi)として反射して拡大投影する凹面鏡(21)と、
を備えることを特徴とするヘッドアップディスプレイ(10A又は10B)である。
【0017】
また、第2の発明は、上記した第1の発明のヘッドアップディスプレイ(10A又は10B)において、
前記反射ミラー(20)に入射した前記1次画像光(Lg1)が前記2次画像光(Lg2)として反射する際に、前記2次画像光(Lg2)が所定の指向性を有して拡散することを特徴とするヘッドアップディスプレイ(10A又は10B)である。
【0018】
また、第3の発明は、上記した第1又は第2の発明のヘッドアップディスプレイ(10A又は10B)において、
前記反射ミラー(20)は、前記1次画像光(Lg1)の入射面側に、基板(20a)上に形成された反射層(20b)と、前記反射層(20b)上に積層された拡散層(20c)とを備えることを特徴とするヘッドアップディスプレイ(10A又は10B)である。
【0019】
また、第4の発明は、上記した第2又は第3の発明のヘッドアップディスプレイ(10A又は10B)において、
前記反射ミラー(20)から反射した光の反射強度が最大値となる位置を0度とし、前記反射強度が前記最大値(e)の半分となる角度を半値角(α)とした際に、前記半値角(α)の絶対値が5°以上10°以下であることを特徴とするヘッドアップディスプレイ(10A又は10B)である。
【0020】
また、第5の発明は、上記した第1〜第4のいずれかの発明のヘッドアップディスプレイ(10C)において、
前記変倍光学系(18)と前記反射ミラー(20)との間に前記反射ミラー(20)の前方に密着又は接近してフィールドレンズ(30)を設置したことを特徴とするヘッドアップディスプレイである。
【0021】
また、第6の発明は、上記した第1〜第4のいずれかの発明のヘッドアップディスプレイ(10D)において、
前記変倍光学系(18)と前記反射ミラー(20)との間に前記反射ミラー(20)の前方に密着又は接近してフィールドレンズ(30)を設置すると共に、前記フィールドレンズ(30)をこのフールドレンズ(30)の中心軸(J)と直交した方向に移動可能に構成したことを特徴とするヘッドアップディスプレイである。
【0022】
更に、第7の発明は、画素領域(17a)に光が入射した際に、外部からの画像信号(22a)に基づいて1次像(G1)を生成し、生成された前記1次像(G1)を含む1次画像光(Lg1)として射出する1次画像光射出ステップと、
前記1次画像光射出ステップで射出した前記1次画像光(Lg1)を拡大する1次画像光拡大ステップと、
前記1次画像光拡大ステップで拡大した前記1次画像光(Lg1)が結像することにより2次像(G2)を生成し、生成した前記2次像(G2)を含む2次画像光(Lg2)として指向性を有して拡散反射する拡散反射ステップと、
前記拡散反射ステップで反射した前記2次画像光(Lg2)を凹状反射面(21a)で更に反射させて、前記2次像の虚像を含む虚像光(Lvi)を投影面(1a)上に投影する虚像投影ステップと、
を有することを特徴とする画像表示方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、小さな画像表示素子を用いても観察者に対し大きな虚像を表示することができると共に、観察者は投影された虚像を歪みなく良好に視認できる。
【0024】
また、視点をずらしても観察者は虚像を良好に視認することができ、且つ、外光が明るい条件下でも虚像を良好に視認できる。
【0025】
また、体格の異なる別の観察者が投影された虚像を観察する場合にも、投影された虚像を良好に視認できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る実施例のヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法を説明するために模式的に示した図である。
【図2】図1に示した2次像結像用の反射ミラーを拡大して示した図である。
【図3】(a),(b)は図2に示した2次像結像用の反射ミラーに形成した拡散層の反射指向性を説明するために模式的に示した図である。
【図4】本発明に係る実施例のヘッドアップディスプレイにおいて、2次像結像用の反射ミラーに反射指向性を持たせた場合に、観察者が目を動かしても虚像をフロントガラス越しに見ることができる様子を模式的に示した光線図である。
【図5】本発明に係る実施例のヘッドアップディスプレイを例えば自動車に適用したときの具体的な設計例を説明するための図である。
【図6】本発明に係る実施例のヘッドアップディスプレイにおいて、2次像結像用の反射ミラーに形成した拡散層の半値角に対する明るさと視野半径との関係をシミュレーションしたときの結果を説明するための図である。
【図7】実施例を一部変形させた変形例1のヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法を説明するために模式的に示した図である。
【図8】実施例を一部変形させた変形例2のヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法を説明するために模式的に示した図である。
【図9】実施例を一部変形させた変形例2のヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法に対する比較例を説明するために模式的に示した図である。
【図10】(a),(b)は実施例を一部変形させた変形例2のヘッドアップディスプレイにおいて、2次像結像用の反射ミラーの前方に密着又は接近してフィールドレンズを設置した場合に、観察者が目を動かしても虚像をフロントガラス越しに見ることができる様子を模式的に示した光線図である。
【図11】(a),(b)は実施例及び変形例2を一部変形させた変形例3のヘッドアップディスプレイにおいて、2次像結像用の反射ミラー及びフィールドレンズをフィールドレンズの中心軸と直交させて移動可能に構成した場合に、観察者が目を動かしても虚像をフロントガラス越しに見ることができる様子を模式的に示した光線図である。
【図12】(a),(b)は実施例及び変形例2を一部変形させた変形例3のヘッドアップディスプレイにおいて、図10に示した状態と図11に示した状態とを合わせて観察者が目を動かしても虚像をフロントガラス越しに見ることができる様子を模式的に示した光線図である。
【図13】(a),(b)は変形例2及び変形例3に用いられるフィールドレンズ及び反射ミラーを拡大して示した断面図である。
【図14】従来のヘッドアップディスプレイを示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明に係るヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法の一実施例について図1〜図13を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0028】
図1に示した如く、本発明に係る実施例のヘッドアップディスプレイ10Aは、箱状に形成された筐体11A内に、照明用光源12と、コリメータレンズ13と、フィールドレンズ14と、偏光板15と、偏光ビームスプリッタ16と、画像表示素子17と、変倍光学系となるリレーレンズ18と、光路方向を変更する光路転換用のミラー19と、2次像の結像及び結像した2次像を反射する反射ミラー20と、凹面鏡21とを備えている。更に、反射型液晶パネル17に対して画像信号を送る画像信号発生器22を備えている。画像信号発生器22は、筐体11A内に配置してもよい。
【0029】
ここで、画像表示素子17として、反射型液晶パネルや、透過型液晶パネルとか、DMD(Digital Micromirror Device)などが適用可能であるが、以下の説明では、画像表示素子17として高精細な画像を表示することが容易な反射型液晶パネルを適用した例について説明する。
【0030】
この際、画像信号発生器22は、自動車内に設けたスピードメータ,各種計器類からの運転情報や、ナビゲーション装置からのナビ情報とか、無線を介して送信された道路混雑情報などを基にして画像信号22aを生成している。この画像信号22aに基づいて反射型液晶パネル(画像表示素子)17が駆動されることにより、入射した光が反射型液晶パネル17で変調され、反射型液晶パネル17の画素領域17aに1次像(1次画像)G1が表示されるようになっている。
【0031】
ここで、実施例のヘッドアップディスプレイ10Aについて具体的に説明する。照明用光源12は、メタルハライドランプ,キセノンランプ,ハロゲンランプ,LED(発光ダイオード)などを用いることができ、筐体11Aの右下方に配置されている。この照明用12から射出された無偏光の白色光Lwは、コリメータレンズ13で平行光に変換された後にフィールドレンズ14を介して偏光板15に入射する。入射した無偏光の白色光Lwは、この偏光板15で一方向の偏光成分である直線偏光、例えばS偏光(又はP偏光)のみが分離されて透過する。
【0032】
偏光板15を透過したS偏光(又はP偏光)は、偏光ビームスプリッタ16に入射して、この内部に形成された偏光分離膜16aで反射される。反射されたS偏光(又はP偏光)は、光路の向きを反射型液晶パネル17の方向に90°変えられて、フィールドレンズ14を透過することによって反射型液晶パネル17の画素領域17aを照明している。
【0033】
尚、偏光板15を設けない構成も可能であり、この場合には偏光ビームスプリッタ16の偏光分離16aによって無偏光の白色光から一方向の直線偏光を分離すれば良い。
【0034】
この後、反射型液晶パネル17では、画像信号発生器22から送られた画像信号22aに基づいて入射した光の偏光状態が変調される。具体的には、入射した光の偏光成分であるS偏光(又はP偏光)は、画像信号22aに基づいて異なる他方向の偏光成分であるP偏光(又はS偏光)に変換され、1次像G1が形成される。形成された1次像G1を含む1次画像光Lg1は、反射型液晶パネル17で反射されて射出される。
【0035】
そして、反射型液晶パネル17から射出された1次画像光Lg1は、偏光ビームスプリッタ16に再び入射する。偏光ビームスプリッタ16では、1次画像光Lg1のうち反射型液晶パネル17で変調された成分として例えばP偏光(又はS偏光)が、偏光分離16aを透過して射出する。射出したP偏光(又はS偏光)は、リレーレンズ18に入射して、リレーレンズ18によって拡大されて、この拡大された1次画像光Lg1’がミラー19に入射して光路の方向が2次像結像用の反射ミラー20の方向に変更されて反射して射出される。光路転換用のミラー19から射出されて反射ミラー20に入射したP偏光(又はS偏光)であり且つ拡大された1次画像光Lg1’は、反射ミラー20上に結像して2次像(2次画像)G2を生成して反射ミラー20で反射される。
【0036】
この際、光路転換用のミラー19は2次像G2を結像する機能は有してなく、リレーレンズ18と2次像結像用の反射ミラー20との配置関係により光路を転換する機能を有しているにすぎないものである。
【0037】
ここで、上記した2次像結像用の反射ミラー20は、この実施例の要部を構成する光学部材であり、光を単に反射する通常のミラー(図示せず)を用いてリレーレンズ18から射出された光で2次像G2を結像させる構成もあるが、この実施例における2次像結像用の反射ミラー20では、光が入出射する面に反射指向性を有する反射指向性面20bcが形成されている。
【0038】
即ち、2次像結像用の反射ミラー20は、図2に拡大して示した如く、光学ガラス基板20a上に鏡面状の反射層20bが例えば金属膜により形成され、更に、反射層20b上に入射した光に対して反射指向性を有して拡散させる拡散層20cが積層されている。
【0039】
この際、拡散層20cは、光透過性を有しており、入射した光を下方の反射層20bに入射させ、反射層20bで反射させるものであり、表面に微細な凹凸加工を施されたポリマーや、パール素材、微細な粒子を並べたものなどを用いて形成されている。
【0040】
従って、2次像結像用の反射ミラー20は、光学ガラス基板20a上に反射層20bと拡散層20cとが積層されることにより、前述したように、光学ガラス基板20a上に反射指向性を有する反射指向性面20bcが形成されているものとして以下説明する。
【0041】
尚、光学ガラス基板20a上に形成した反射層20bは、必ずしも金属膜でなくとも入射した光に対して高い反射率を有すれば良いものであり、反射層20b上に拡散層20cを積層しないで通常のミラーとして用いることも可能である。
【0042】
尚また、拡散層20cは、上記した各素材に限ることなく、例えば、Luminit社製の拡散制御フィルム(DCF:Dffusion Contorol Film)などを透明接着剤により反射層20b上に接着しても良い。この拡散制御フィルムは高透過率であり、複数種類の拡散角度が予め用意されているので、所望の拡散角度のものを選択することができ、好適である。
【0043】
この際、図3(a),(b)に示した如く、拡散層20cの拡散角度θに対して反射強度eはガウス分布特性を有している。拡散層20cの反射指向性は、半値角±αを用いて評価することができる。
【0044】
この半値角±αは、拡散層20cに垂直入射した光線が反射したときに最大反射強度eとなる角度を0度とし、反射強度が最大反射強度eに対して半分の値e/2に低下するときの角度のことであり、入射した光線を中心としてプラス側とマイナス側とに現れる。
【0045】
この実施例では拡散層20cの半値角±αとして、その絶対値を5゜以上10°以下に設定しているが、この設定理由については後で詳述する。
【0046】
ここで再び図1に戻り、2次像結像用の反射ミラー20上に結像された2次像G2を含む2次画像光Lg2について説明する。反射ミラー20上に結像された2次像(2次画像)G2は、2次画像光Lg2となって反射ミラー20で反射され、この反射ミラー20で反射された2次画像光Lg2の光路上に設置された凹面鏡21に向けて射出する。
【0047】
更に、凹面鏡21に入射した2次像G2を含む2次画像光Lg2は、2次像の虚像VIを生成し、凹面鏡21の凹状反射面21aで反射されて、2次像の虚像VIを含む虚像光Lviが筐体11Aの上方に開口した開口部11aを通って例えば自動車に設けられた光透過性を有するフロントガラス1上で観察者(運転者)側に形成した投影面1a上に投影される。
【0048】
この際、フロントガラス1に形成した投影面1aの領域は、「コンバイナ」とも呼ばれている。このコンバイナは、例えば、光透過性を有する金属膜や誘電多層膜またはホログラムフィルムより形成され、一部を透過し一部を反射する特性を有する。またコンバイナはフロントガラス1の一部の領域に形成しても良いし、又は、フロントガラス全体に形成しても良い。
【0049】
この後、フロントガラス1に形成した投影面1a上に投影された2次像の虚像VIを含む虚像光Lviの一部は、投影面1aで観察者(運転者)側に反射されて観察者の目Eに入るので、観察者はフロントガラス越しに2次像の虚像光Lvi、即ち、3次像を観察することができる。
【0050】
従って、本発明に係る画像表示方法では、画素領域17aに表示された1次像G1を含む1次画像光Lg1を射出するステップと、1次像G1を含む1次画像光Lg1を拡大して2次像G2を含む2次画像光Lg2を得るステップと、2次像G2を含む2次画像光Lg2を、反射指向性を有する反射指向性面20bc上に結像して反射させるステップと、反射指向性面20bcで反射した2次像G2を含む2次画像光Lg2を凹状反射面21aで反射させて、2次像の虚像VIを含む虚像光Lviを投影面1a上に投影するステップと、を有している。
【0051】
この際、実施例の比較例として2次像結像用に単純なミラー(図示せず)を用いた場合には、2次像G2を含む2次像光Lg2が単純なミラー(図示せず)で反射したときの反射光が直進するために観察者(運転者)の目Eが設計高さ位置にある場合は虚像VIを観察できるが、少しでも目Eの高さ位置がずれると光が届かなくなるために虚像VIを観察できにくくなるという傾向がある。
【0052】
そこで、上記に対してこの実施例では、2次像G2を含む2次像光Lg2が2次像結像用の反射ミラー20上に形成した反射指向性面20bcで拡散しながら反射するときの半値角±α(図3)を適宜設定することにより、観察者の目Eの高さ位置の移動に対応して虚像VIを十分に視認することができるように改善されている。
【0053】
尚、反射指向性面20bcを仮に完全拡散面のように拡散性を広く持たせすぎると、実際に反射した光線のうち観察者の目Eに届く光は極わずかとなって、2次像G2の明るさのほとんどを捨てることになり、観察される虚像VIが非常に暗い画像になってしまう。
【0054】
即ち、図4は、本発明に係る実施例のヘッドアップディスプレイ10Aにおいて、2次像結像用の反射ミラー20に反射指向性を持たせた場合に、観察者が目Eを動かしても虚像VIをフロントガラス越しに見ることができる様子を光線図で模式的に表したものである。
【0055】
図4において、観察者の目Eの高さ位置Aが虚像VI−aを観察する本来の設計位置であるが、観察者の目Eの高さを位置Bあるいは位置Cに動かした場合でも、2次像光Lg2の反射光が指向性を有して拡散されているので、観察者は虚像VI−b,VI−cをそれぞれの位置で視認することができる。
【0056】
この際、2次像結像用の反射ミラー20に形成した拡散層20cの半値角±αの絶対値は、後述する理由により5°以上10°以下に設定しているが、拡散層20cの半値角±αの絶対値を例えば10°に設定した場合に、観察者の目Eの高さ位置を図中に視野半径で表示した上下(位置Aから位置B方向あるいは位置C方向)にそれぞれ約100mm程度動かしても、明るさがほとんど低下しないようにすることができる。ここで、視野半径は、観察者の目Eの高さ位置を設計位置である位置Aから上(位置B)方向、下(位置C)方向に移動させた際の、目Eの高さ位置の移動範囲の半分の値のことである。
【0057】
尚、上記した視野半径は、凹面鏡21の曲率を変えることで調整可能であり、曲率を小さく、言い換えると、曲率半径を大きくすれば、視野半径値を大きく設定できるが、ヘッドアップディスプレイ10Aが大型化してしまう。そこで、具体的な設計例を下記する。
【0058】
次に、実施例のヘッドアップディスプレイ10Aを例えば自動車に適用したときの具体的な設計例について図5を用いて説明する。
【0059】
図5に示した如く、実施例のヘッドアップディスプレイ10Aにおいて、反射型液晶パネル17は矩形状の画素領域17aの外形サイズが対角18mmであり、この画素領域17aに表示された1次像G1をリレーレンズ18により拡大して2倍の対角36mmの2次像G2を反射ミラー20の反射指向性面20bc上に結像させる。
【0060】
また、凹面鏡21の凹状反射面21aの曲率半径は500mmである。
【0061】
ここで、観察者の目Eの高さ位置からフロントガラス1の投影面1aの中心位置までの長さをa、フロントガラス1の投影面1aの中心位置から虚像VIの位置までの長さをb、凹面鏡21の凹状反射面21aの中心位置からフロントガラス1の投影面1aの中心位置までの長さをc、2次像結像用の反射ミラー20の反射指向性面20bcから凹面鏡21の凹状反射面21aの中心位置までの長さをdとする。
【0062】
そして、上記したa,c,dの各寸法を、a=450mm,c=300mm,d=200mmに設定すると、bの寸法はb=1550mmとなる。
【0063】
つまり、フロントガラス1の投影面1aから1550mm先の位置に虚像VIが形成される。即ち、これは観察者の目Eの高さ位置から2メートル先に縦112mm、横140mmの虚像V1が形成されることであり、フロントガラス1から観察者までは450mmと十分な距離を確保することができる。
【0064】
また、虚像V1のサイズは、反射型液晶パネル17の画素領域17aに表示された1次像G1に対して約10倍に拡大されて投影されることになる。
【0065】
ここで、上記したように実施例のヘッドアップディスプレイ10Aを設計した際に、先に図1及び図2を用いて示した2次像結像用の反射ミラー20に形成した拡散層20cの半値角に対する明るさと視野半径との関係をシミュレーションしたときの結果について図6を用いて説明する。
【0066】
図6中において、横軸は拡散層20cの半値角±αの絶対値α[°]を示し、縦軸の左側は明るさ[cd/m2:カンデラ/平方メートル]を示し、縦軸の右側は視野半径[mm]を示している。
【0067】
この際、光源12(図1)に50ワットのランプを用いている。この図6が示すように、2次像結像用の反射ミラー20に形成した拡散層20cの拡散性を広げることで視野すなわち、虚像VI(図1)を視認できる範囲の半径は広がるが、半値角αが10°で視野半径(■印)が飽和することがわかる。
【0068】
一方、明るさ(○印)は、半値角αの二乗で減衰していくので、指向性を広げると急激に明るさが低下することがわかる。昼の明るいときでも虚像VI(図1)を視認できるためには5000cd/m2以上、望ましくは10000cd/m2の輝度が必要とされる。
【0069】
また、運転時に頭を動かすことを考えると、視野半径は50mm以上、望ましくは100mm以上を確保することが望ましい。これらを勘案すると半値角±αの絶対値は5°以上10°以下が望ましく、これにより輝度と視野の広さを両立することができる。
【0070】
これにより、2次像結像用の反射ミラー20に形成した拡散層20cの半値角±αの絶対値を5°以上10°以下に設定することで、虚像VIの視認範囲を広げることが可能となるので、観察者の目Eの高さ位置のバラツキに対応できると共に、当然、観察者の身長の違いなどにも対応できる。
【0071】
この際、明るさは、光源12(図1)のパワーを上げることによっても調整可能であるが、車内での利用や環境対応を考えると省電力化が重要であり、消費電力を低減することが必要である。そのため、実施例では2次像結像用の反射ミラー20上に反射指向性を有する反射指向性面20bcを形成して明るさを確保することで、外光が明るい条件下でも虚像VIに対して視認性が良いヘッドアップディスプレイ10Aを提供可能としている。
【0072】
上記したように、実施例のヘッドアップディスプレイ10A及び画像表示方法によれば、反射型液晶パネル17の画素領域17aに表示された1次像G1を含む1次画像光Lg1をリレーレンズ18により拡大して2次像結像用の反射ミラー20上に2次像G2を形成して2次像G2を含む2次画像光Lg2として反射させた後に、2次像G2を含む2次画像光Lg2を凹面鏡21の凹状反射面21aで反射させて2次像の虚像VIを含む虚像光Lviをフロントガラス1の投影面1a上に投影している。
【0073】
この結果、1次像G1を拡大した2次像G2を形成することによって、小さな反射型液晶パネル(画像表示素子)17を用いても最終的に観察者に対し大きな虚像VIを表示することができると共に、凹面鏡21による拡大倍率を低く抑えることができる。そのため、観察者からフロントガラス1の投影面1aまでの間に十分な距離を取ることができるので、観察者は投影された虚像VIを歪みなく良好に視認できる。
【0074】
この際、2次像結像用の反射ミラー20の反射指向性面20bcは反射指向性を有し、2次像G2を含む2次画像光Lg2を拡散しながら指向性を持って凹面鏡21側に反射させるので、観察者が視点を多少ずらしても凹面鏡21を介して投影された虚像VIを良好に視認することができる。更に、虚像VIを効率的に観察者の目に届けることができるので、外光が明るい条件下でも虚像VIに対して視認性が良いヘッドアップディスプレイ10Aを提供することができる。
【0075】
次に、実施例を一部変形させた変形例1のヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法について、図7を用いて実施例に対して異なる点についてのみ説明する。
【0076】
尚、図7中で実施例と同一構成部材に対しては同一の符号を付して図示し、詳述を省略する。
【0077】
図7に示した如く、実施例を一部変形させた変形例1のヘッドアップディスプレイ10B及び画像表示方法では、箱状に形成した筐体11B内の図7における右下方に、反射型液晶パネル(画像表示素子)17が配置されており、反射型液晶パネル17の画素領域17aに表示された1次像G1を含む1次画像光Lg1をリレーレンズ18により拡大する。拡大された1次画像光Lg1’は、このリレーレンズ18と対向して筐体11B内の右上方に配置した2次像結像用の反射ミラー20に入射して反射ミラー20上に2次像G2が結像される。
【0078】
そのため、実施例で説明した光路転換用のミラー19を設ける必要がないので、変形例1のヘッドアップディスプレイ10Bを簡素化及び小型化できる点が実施例に対して異なっている。
【0079】
従って、この変形例1でも実施例と同様に、変形例1のヘッドアップディスプレイ10Bを用いてフロントガラス越しに虚像VIを表示する場合には、反射型液晶パネル17の画素領域17aに表示された1次像G1を含む1次画像光Lg1をリレーレンズ18により拡大して反射ミラー20上に2次像G2を形成し、反射ミラー20で反射された2次像G2を含む2次画像光Lg2を凹面鏡21の凹状反射面21aで反射させて2次像の虚像VIを含む虚像光Lviをフロントガラス1の投影面1a上に投影しているので、実施例と同様の効果を得ることができる。
【0080】
次に、実施例を一部変形させた変形例2のヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法について、図8〜図10を用いて実施例に対して異なる点についてのみ説明する。
【0081】
尚、図8〜図10中で実施例と同一構成部材に対しては同一の符号を付して図示し、詳述を省略する。
【0082】
図8に示した如く、実施例を一部変形させた変形例2のヘッドアップディスプレイ10C及び画像表示方法では、反射型液晶パネル(画像表示素子)17の前方に設置した変倍光学系となるリレーレンズ18と、光学ガラス基板20a上に反射層20b及び拡散層20cを積層して2次像の結像及び結像した2次像を反射する反射ミラー20との間に、フィールドレンズ30が反射ミラー20の反射指向性面20bcに密着又は接近して設置されている点が実施例に対して異なっている。
【0083】
一方、変形例2の比較例として、図9に示したように光学ガラス基板20a上に反射層20b及び拡散層20cを積層した反射ミラー20の前方にフィールドレンズを設置しない場合には、先の実施例及び実施例を一部変形させた変形例1に相当するものである。
【0084】
即ち、図9に示した如く、反射型液晶パネル17の画素領域17aに表示された1次像G1を含む1次画像光Lg1がリレーレンズ18により拡大され、この拡大された1次画像光Lg1’は2次像結像用の反射ミラー20の反射指向性面20bc上に2次像G2として結像される。2次像G2を含む2次画像光Lg2は反射ミラー20の反射指向性面20bcで拡散光として反射された後に、拡散光である2次画像光Lg2が凹面鏡21の凹状反射面21aに入射する。この際、反射ミラー20の前方にフィールドレンズがないと、反射ミラー20の反射指向性面20bcで反射される2次画像光Lg2の反射角が広いため、2次画像光Lg2の光束の周辺の一部が凹面鏡21に到達せず、凹面鏡21での反射光が暗くなってしまうために、輝度むらが生じることがある。
【0085】
そこで、先に図8を用いて説明したように、反射ミラー20の前方に密着又は接近してフィールドレンズ30を設置する。この構成とすることで、1次画像光Lg1’はフィールドレンズ30の中心軸Jよりも一方側に入射された後にフィールドレンズ30内を通過することにより、2次画像光Lg2が拡散光とならず反射角が狭まり2次画像光Lg2の光束の全てが2次像結像用の反射ミラー20の反射指向性面20bc上に到達し、凹面鏡21での反射光を明るくし、輝度むらの発生を防ぐことができる。この後、凹面鏡21の凹状反射面21aで2次像の虚像VI(図1)を含む虚像光Lviがフロントガラス1へ向けて反射される。
【0086】
具体的には、図10(a),(b)に示したように、変形例2のヘッドアップディスプレイ10C及び画像表示方法において、反射ミラー20の前方に密着又は接近してフィールドレンズ30を設置した際に、反射型液晶パネル17から射出した1次画像光Lg1がリレーレンズ18により拡大される。この拡大された1次画像光Lg1’はフィールドレンズ30の中心軸Jよりも一方側で且つ中心軸Jとレンズ外周部位との間の中間部位に入射されてフィールドレンズ30内を通過して、2次像結像用の反射ミラー20で反射される。反射された2次画像光Lg2はフィールドレンズ30から射出されるが、このときにフィールドレンズ30の中心軸Jとレンズ外周部位との間の中間部位から射出されて凹面鏡21に向かう反射光の向きは曲がりが小さいので、凹面鏡21に全て入射される。
【0087】
この後、凹面鏡21の凹状反射面21aで反射された虚像光Lviがフロントガラス1で観察者に向けて反射されるが、このときに観察者の目Eの高さを位置F又は位置Gもしくは位置Hに動かしても虚像VIをフロントガラス越しに見ることができるので、観察者が姿勢を大きく変えて投影された虚像VIを観察する場合や、体格の異なる別の観察者が投影された虚像VIを観察する場合にも、投影された虚像VIを良好に視認できる。
【0088】
次に、実施例及び変形例2を一部変形させた変形例3のヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法について、図11及び図12を用いて実施例及び変形例2に対して異なる点についてのみ説明する。
【0089】
尚、図11及び図12中で実施例及び変形例2と同一構成部材に対しては同一の符号を付して図示し、詳述を省略する。
【0090】
図11及び図12に示した如く、実施例及び変形例2を一部変形させた変形例3のヘッドアップディスプレイ10D及び画像表示方法では、反射型液晶パネル(画像表示素子)17の前方に設置した変倍光学系となるリレーレンズ18と、2次像の結像及び結像した2次像を反射する反射ミラー20との間に、フィールドレンズ30が反射ミラー20の前方に密着して設置されていると共に、反射ミラー20及びフィールドレンズ30をラック31に固着させて、このラック31に噛合した歯車32の回転により、反射ミラー20及びフィールドレンズ30をフィールドレンズ30の中心軸Jと直交する方向に移動可能に構成している点が実施例及び変形例2に対して異なっている。
【0091】
尚、変形例3では、反射ミラー20の前方に密着してフィールドレンズ30を設置した場合について以下説明するが、反射ミラー20の前方に接近してフィールドレンズ30を設置しても良く、この場合には少なくともフィールドレンズ30をこのフィールドレンズ30の中心軸Jと直交して移動可能となるようにフィールドレンズ30をラック31に取り付ければ良いものである。
【0092】
即ち、図11(a),(b)に示した如く、ラック31に噛合した歯車32を回転駆動して、反射ミラー20及びフィールドレンズ30をフィールドレンズ30の中心軸Jと直交して矢印方向に移動したときに、1次画像光Lg1’はフィールドレンズ30の中心軸Jよりも一方側で且つ中心軸Jよりも離れたレンズ外周部位に入射する。この入射位置は、変形例2の図10(b)に示すフィールドレンズ30上の入射位置に対して、よりレンズ外周部位である。フィールドレンズ30に入射した1次画像光Lg1は、2次像結像用の反射ミラー20で反射され2次画像光Lg2としてフィールドレンズ30から射出される。この際、フィールドレンズ30から射出されて凹面鏡21に向かう反射光の向きは先に説明した図10(a),(b)の場合よりも曲がりが大きい。
【0093】
この後、凹面鏡21の凹状反射面21aで反射された虚像光Lviがフロントガラス1で観察者に向けて反射されるが、このときに観察者の目Eの高さを位置M又は位置Nもしくは位置Oに動かしても虚像VIをフロントガラス越しに見ることができる。ここで、位置M又は位置Nもしくは位置Oは、先の図10(a)に示した位置F又は位置Gもしくは位置Hよりも矢印方向となる上方の位置である。
【0094】
更に、図12(a),(b)に示した如く、フィールドレンズ30を図12(b)の実線で示す位置に移動した場合は、図10(b)同様の位置となるため、観察者の目Eの高さ位置をF又は位置Gもしくは位置Hに移動した場合でも投影された虚像VIを良好に視認できる。また、フィールドレンズ30を図12(b)の実線で示す位置に移動した場合は、図11(b)と同様の位置となるため、観察者の目Eの高さ位置をM又は位置Nもしくは位置Oに移動した場合でも投影された虚像VIを良好に視認できる
上記した変形例2及び変形例3から、反射ミラー20の前方に密着又は接近して設置したフィールドレンズ30は、画像光に対して明るさを均一にする機能と、観察者の目Eの高さ位置を大きく変化させた場合でも投影された虚像VIを良好に視認できる機能とを合わせ持つことになる。
【0095】
この際、フィールドレンズ30は、図13(a)に示したように、中心軸Jを中心に円形に形成されており、凸曲面30aが画像光の入出射面となる一方、凸曲面30aと反対側の平坦面30bが反射ミラー20の反射指向性面20bcに密着又は接近した面となっている。
【0096】
また、フィールドレンズ30は、前述したように、画像光の入出射が中心軸Jよりも
一方側であるので、必ずしも円形である必要がなく、図13(a)に示したフィールドレンズ30に代えて図13(b)に示したような半円形のフィールドレンズ30’でも良く、このフィールドレンズ30’の形状に合わせて反射ミラー20’を形成しても良いものである。
【0097】
以上詳述した実施例及び変形例1〜3では、画像表示素子に反射型液晶パネル17を用いた場合を説明したが、画像表示素子に不図示の透過型液晶パネルを用いた場合には、この透過型液晶パネルの画素領域に表示された1次像をリレーレンズにより拡大して2次像を得れば良く、また、画像表示素子に不図示のDMDを用いた場合には多数のミラーによって表示された1次像をリレーレンズにより拡大して2次像を得れば良いものである。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係るヘッドアップディスプレイ及び画像表示方法は、自動車,航空機,電車,工事用車両,その他遊戯装置などにおいて、利用可能性がある。
【符号の説明】
【0099】
1…フロントガラス、1a…投影面(コンバイナ)、
10A…実施例のヘッドアップディスプレイ、
10B…変形例1のヘッドアップディスプレイ、
10C…変形例2のヘッドアップディスプレイ、
10D…変形例3のヘッドアップディスプレイ、
11A,11B…筐体、11a…開口部、
12…照明用光源、13…コリメータレンズ、14…フィールドレンズ、
15…偏光板、16…偏光ビームスプリッタ、
17…画像表示素子(反射型液晶パネル)、17a…画素領域、
18…変倍光学系(リレーレンズ)、19…光路転換用のミラー、
20…2次像結像用の反射ミラー、20a…光学ガラス基板、20b…反射層、
20c…拡散層、20bc…反射指向性面、
21…凹面鏡、21a…凹状反射面、22…画像信号発生器、22a…画像信号、
30,30’…フィールドレンズ、30a…凸曲面、30b…平坦面、
31…ラック、32…歯車、
E…目、G1…1次像(1次画像)、G2…2次像(2次画像)、VI…2次像の虚像、
Lw…白色光、Lg1…1次画像光、Lg1’…変倍光学系で拡大された1次画像光、
Lg2…2次画像光、Lvi…虚像光、
e…2次像結像用の反射ミラーの拡散層に垂直入射した光線が反射したときの最大反
射強度、θ…拡散角度、±α…半値角、
J…フィールドレンズ30又は30’の中心軸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から射出した光が画素領域に入射した際に、外部からの画像信号に基づいて1次像を生成し、生成された前記1次像を含む1次画像光として射出する画像表示素子と、
前記画像表示素子から射出した前記1次画像光を拡大する変倍光学系と、
前記変倍光学系で拡大された前記1次画像光の結像位置に配設され、入射した前記1次画像光が結像することにより2次像を生成し、前記2次像を含む2次画像光として反射する反射ミラーと、
前記反射ミラーで反射した前記2次画像光の光路上に配設され、入射した前記2次画像光に基づいて前記2次像の虚像を生成し、前記虚像を含む虚像光として反射して拡大投影する凹面鏡と、
を備えることを特徴とするヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記反射ミラーに入射した前記1次画像光が前記2次画像光として反射する際に、前記2次画像光が所定の指向性を有して拡散することを特徴とする請求項1記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記反射ミラーは、前記1次画像光の入射面側に、基板上に形成された反射層と、前記反射層上に積層された拡散層とを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項4】
前記反射ミラーから反射した光の反射強度が最大値となる位置を0度とし、前記反射強度が前記最大値の半分となる角度を半値角とした際に、前記半値角の絶対値が5°以上10°以下であることを特徴とする請求項2又は請求項3記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項5】
前記変倍光学系と前記反射ミラーとの間に前記反射ミラーの前方に密着又は接近してフィールドレンズを設置したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項6】
前記変倍光学系と前記反射ミラーとの間に前記反射ミラーの前方に密着又は接近してフィールドレンズを設置すると共に、前記フィールドレンズをこのフールドレンズの中心軸と直交した方向に移動可能に構成したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項7】
画素領域に光が入射した際に、外部からの画像信号に基づいて1次像を生成し、生成された前記1次像を含む1次画像光として射出する1次画像光射出ステップと、
前記1次画像光射出ステップで射出した前記1次画像光を拡大する1次画像光拡大ステップと、
前記1次画像光拡大ステップで拡大した前記1次画像光が結像することにより2次像を生成し、生成した前記2次像を含む2次画像光として指向性を有して拡散反射する拡散反射ステップと、
前記拡散反射ステップで反射した前記2次画像光を凹状反射面で更に反射させて、前記2次像の虚像を含む虚像光を投影面上に投影する虚像投影ステップと、
を有することを特徴とする画像表示方法。
【請求項1】
光源と、
前記光源から射出した光が画素領域に入射した際に、外部からの画像信号に基づいて1次像を生成し、生成された前記1次像を含む1次画像光として射出する画像表示素子と、
前記画像表示素子から射出した前記1次画像光を拡大する変倍光学系と、
前記変倍光学系で拡大された前記1次画像光の結像位置に配設され、入射した前記1次画像光が結像することにより2次像を生成し、前記2次像を含む2次画像光として反射する反射ミラーと、
前記反射ミラーで反射した前記2次画像光の光路上に配設され、入射した前記2次画像光に基づいて前記2次像の虚像を生成し、前記虚像を含む虚像光として反射して拡大投影する凹面鏡と、
を備えることを特徴とするヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記反射ミラーに入射した前記1次画像光が前記2次画像光として反射する際に、前記2次画像光が所定の指向性を有して拡散することを特徴とする請求項1記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記反射ミラーは、前記1次画像光の入射面側に、基板上に形成された反射層と、前記反射層上に積層された拡散層とを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項4】
前記反射ミラーから反射した光の反射強度が最大値となる位置を0度とし、前記反射強度が前記最大値の半分となる角度を半値角とした際に、前記半値角の絶対値が5°以上10°以下であることを特徴とする請求項2又は請求項3記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項5】
前記変倍光学系と前記反射ミラーとの間に前記反射ミラーの前方に密着又は接近してフィールドレンズを設置したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項6】
前記変倍光学系と前記反射ミラーとの間に前記反射ミラーの前方に密着又は接近してフィールドレンズを設置すると共に、前記フィールドレンズをこのフールドレンズの中心軸と直交した方向に移動可能に構成したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項7】
画素領域に光が入射した際に、外部からの画像信号に基づいて1次像を生成し、生成された前記1次像を含む1次画像光として射出する1次画像光射出ステップと、
前記1次画像光射出ステップで射出した前記1次画像光を拡大する1次画像光拡大ステップと、
前記1次画像光拡大ステップで拡大した前記1次画像光が結像することにより2次像を生成し、生成した前記2次像を含む2次画像光として指向性を有して拡散反射する拡散反射ステップと、
前記拡散反射ステップで反射した前記2次画像光を凹状反射面で更に反射させて、前記2次像の虚像を含む虚像光を投影面上に投影する虚像投影ステップと、
を有することを特徴とする画像表示方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−256867(P2010−256867A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49215(P2010−49215)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]