説明

ヘッドアップディスプレイ装置

【課題】
夜間の暗い環境下でも表示を眩しく感じないような低輝度の表示を安定的に実現し、さらに輝度変化が連続的で車両運転者に違和感を与えず、全表示輝度範囲でホワイトバランスも良好なヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】
外光の照度を検出する外光強度検出部70を備え、この外光強度検出部70により測定された外光照度Pに基づき表示する画像の表示輝度Bを調整するヘッドアップディスプレイ装置1において、表示画像を所定の輝度より低い低輝度領域で表示する場合、偏光制御素子11の偏光角度を制御し、偏光部14におけるレーザー光RGBの透過率Zを調整することにより、表示画像の表示輝度Bを低く調整する表示輝度調整手段81aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置に関するものであり、特に、レーザー光源から出た光を光走査によって画像として表示するヘッドアップディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の運転手が運転中に視線をほとんど動かさずに車両情報(速度、走行距離等)を読み取れるようにするため、フロントガラスの前方に情報を表示させるヘッドアップディスプレイ装置が、例えば特許文献1に提案されている。
【0003】
車両用のヘッドアップディスプレイ装置1は、図1に示すように車両2のダッシュボード内に配置されており、この車両用のヘッドアップディスプレイ装置1が投射する表示光Jはウインドシールド3により反射され、車両運転者3は虚像Xを風景と重畳させて視認させることができる。
【0004】
このような車両用ヘッドアップディスプレイ装置1では、半導体レーザーを光源としたものが提案されており、例えば特許文献2に開示されている。斯かるヘッドアップディスプレイ装置1は、半導体レーザーと走査系とスクリーンとを備え、半導体レーザーが出射したレーザー光を走査系でスクリーンに向け走査して表示画像を生成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−193400号公報
【特許文献2】特開平7−270711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヘッドアップディスプレイ装置1では、運転手が昼間の明るい環境から夜間の暗い環境であっても、明瞭且つ、適切な輝度の表示を見ることができる必要がある。そのため、ヘッドアップディスプレイ装置1の外部の明るさ(外部照度)に合わせて表示画像の表示輝度を大きく変化させる必要がある。
昼間の明るい環境下でも表示が見えるためにヘッドアップディスプレイ装置1の表示する表示画像の輝度は、最大輝度で数千〜数万cd/m以上が要求され、夜間の暗い環境下では、表示の眩しさが運転の妨げにならないような最小輝度として数cd/mが要求される。
【0007】
このような最小輝度を達成するためには、レーザーの光強度を低く制御する必要がある。具体的に、上記のような数cd/mの最小輝度を実現する場合、図4に示すように半導体レーザーがレーザー発振し始める駆動電流値である閾値電流値Ith時の光強度閾値Athよりも低い光強度が必要である。
【0008】
しかしながら、レーザー光源を閾値電流値Ith未満で制御する場合、駆動電流−レーザー光強度特性が閾値電流値Ithを境に変化するため、制御が複雑化する問題があった。また、閾値電流値Ith付近では、レーザーの光強度が不安定になり、表示品位に悪影響を及ぼすといった問題があった。
【0009】
そこで本発明は、前述の課題を鑑みて、レーザー光源を用いるヘッドアップディスプレイ装置において、夜間の暗い環境下でも表示を眩しく感じないような低輝度の表示を安定的に実現し、さらに輝度変化が連続的で車両運転者に違和感を与えず、全表示輝度範囲でホワイトバランスも良好なヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
すなわち、本発明は、外光強度検出部により外光の照度を検出し、この外光の照度に基づき、表示の輝度を調整するヘッドアップディスプレイ装置において、表示画像を所定の輝度より低い低輝度領域で表示する場合、偏光制御素子の偏光角度を制御し、偏光部におけるレーザー光の透過率を調整することにより、表示画像の表示輝度を低く調整する表示輝度調整手段を設けたことを、その要旨とする。
【0011】
本発明は、前述した課題を解決するため、請求項1では、レーザー光を出射するレーザー光源と、前記レーザー光の光強度を制御するレーザー光制御部と、
前記レーザー光を偏光する偏光制御素子と、前記偏光制御素子における前記レーザー光の偏光角度を任意に制御する偏光制御部と、
特定の偏光成分を透過する偏光部と、
前記レーザー光源から出射したレーザー光の光路上に位置し、到達したレーザー光を走査し、所望の表示画像を投影する走査部と、
前記レーザー光の光強度を検出するレーザー光検出部と、
外光の照度を検出する外光検出部と、
前記外光検出部により測定された外部照度測定値に基づき、前記表示画像の表示される輝度目標値を算出し、前記表示画像が前記輝度目標値で表示されるように前記レーザー光制御部と前記偏光制御部とを制御する表示輝度調整手段と、
を備えるヘッドアップディスプレイ装置において、
前記表示輝度調整手段は、
前記外部照度測定値が所定の境界外部照度以上の場合、
前記偏光制御部を介し、前記偏光制御素子の偏光角度を前記レーザー光が前記偏光部にて減光されない偏光角度になるように制御し、
前記外部照度測定値が前記境界外部照度未満の場合、
前記偏光制御部を介し、前記偏光制御素子の偏光角度を前記レーザー光が前記偏光部にて減光される偏光角度になるように制御するものであり、
斯かる構成により、夜間の暗い環境下でも表示を眩しく感じない低輝度の表示を安定的に実現し、昼間の明るい環境や夜間の暗い環境等の幅広い照度環境下において、明瞭且つ、適切な輝度の表示を見ることができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【0012】
また、請求項2では、レーザー光を出射するレーザー光源と、前記レーザー光の光強度を制御するレーザー光制御部と、
前記レーザー光を偏光する偏光制御素子と、前記偏光制御素子における前記レーザー光の偏光角度を任意に制御する偏光制御部と、
特定の偏光成分を透過する偏光部と、
前記レーザー光源から出射したレーザー光の光路上に位置し、到達したレーザー光を走査し、所望の表示画像を投影する走査部と、
前記レーザー光の光強度を検出するレーザー光検出部と、
外光の照度を検出する外光検出部と、
前記外光検出部により測定された外部照度測定値に基づき、前記表示画像の表示される輝度目標値を算出し、前記表示画像が前記輝度目標値で表示されるように前記レーザー光制御部と前記偏光制御部とを制御する表示輝度調整手段と、
を備えるヘッドアップディスプレイ装置において、
前記表示輝度調整手段は、
前記外部照度測定値が所定の境界外部照度以上の場合、
前記レーザー光制御部を介し、前記レーザー光源のレーザー光強度を制御することで、前記表示画像の輝度を前記輝度目標値に調整する高輝度制御モードと、
前記外部照度測定値が前記境界外部照度未満の場合、
前記偏光制御部を介し、前記偏光制御素子の偏光角度を制御することで、前記表示画像の輝度を前記輝度目標値に調整する低輝度制御モードとを備えるものであり、斯かる構成により、夜間の暗い環境下でも表示を眩しく感じない低輝度の表示を安定的に実現し、昼間の明るい環境や夜間の暗い環境等の幅広い照度環境下において、明瞭且つ、適切な輝度の表示を見ることができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【0013】
また、請求項3では、前記表示画像のホワイトバランスの補正処理を行う画質補正手段をさらに備えてなるものであり、斯かる構成により、ホワイトバランスが良好なヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【0014】
また、請求項4では、前記画質補正手段は、前記レーザー光制御部を介し、前記レーザー光源の光強度を制御することで、前記表示画像のホワイトバランスを補正するものであり、斯かる構成により、ホワイトバランスが良好なヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【0015】
また、請求項5では、前記画質補正手段は、前記偏光制御部を介し、前記偏光制御素子の偏光角度を制御することで、前記表示画像のホワイトバランスを補正するものであり、斯かる構成により、ホワイトバランスが良好なヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【0016】
また、請求項6では、前記レーザー光源の駆動電流値は、前記レーザー光源の閾値電流値より大きい値に設定されるものであり、斯かる構成により、低輝度領域もしくは高輝度領域の全ての領域で、レーザー光源は、レーザー発振する閾値電流値以上で駆動され、容易に安定した光出力制御をすることができる。
【0017】
また、請求項7では、前記レーザー光制御部は、前記レーザー光源をPAM駆動またはPWM駆動により、緩やかに所望の光強度になるように制御するものである。
【0018】
また、請求項8では、前記偏光制御部は、前記偏光制御素子の印加電圧の大きさを緩やかに変化させるものであり、上記請求項7または請求項8の発明により、外部照度測定値に合わせた所望の表示輝度に調整する際の表示画像の輝度変化が連続的で車両運転者に違和感を与えないヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【0019】
また、請求項9では、前記レーザー光源は、波長の異なる複数のレーザー光源を備えるものであり、斯かる構成のように波長の異なる複数のレーザー光源を用いることで、カラー表示をすることができる。
【0020】
また、請求項10では、前記偏光制御素子は、独立して制御可能な複数の偏光制御可能領域を備えてなるものであり、斯かる構成により、RGB等の異なる波長及びレーザー光源の個体差による偏光制御素子の偏光度や可視光線透過率を考慮し、レーザー光源毎に偏光制御素子の偏光角度を制御し、偏光部の透過率を調整することで、所望のホワイトバランスの調整を行うことができる。
【0021】
また、請求項11では、前記偏光制御素子と前記偏光部は、前記複数のレーザー光源の各々に対して備えられているものであり、斯かる構成により、請求項8の発明に対して、より確実にレーザー光源毎のレーザー光強度やホワイトバランスの調整を行うことができる。
【0022】
また、請求項12では、前記偏光制御素子と前記偏光部は、前記波長の異なる複数のレーザー光源から発せられたレーザー光が合成された合成レーザー光の光路上に備えられてなるものであり、斯かる構成により、複数のレーザー光源において、偏光制御素子と偏光部とを共有化でき、請求項10,11の発明に対し、コストを低く抑えたヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【0023】
また、請求項13では、前記合成レーザー光は、フレームを時間分割したサブフレーム毎に波長の異なるレーザー光源を発光させてなるものであり、前記偏光制御部は、前記サブフレーム毎に、前記偏光制御素子の偏光角度を制御するものであり、斯かる構成により、複数のレーザー光源で偏光制御素子と偏光部とを共有化し、コストを低く抑えつつも、RGB等の異なる波長及びレーザー光源の個体差による偏光制御素子の偏光度や可視光線透過率を考慮し、レーザー光源毎に偏光制御素子の偏光角度を制御し、偏光部の透過率を調整することで、ホワイトバランスが良好なヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、レーザー光源を用いるヘッドアップディスプレイ装置において、夜間の暗い環境下でも表示を眩しく感じなような低輝度の表示を安定的に実現し、さらに輝度変化が連続的で車両運転者に違和感を与えず、全表示輝度範囲でホワイトバランスも良好なヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ヘッドアップディスプレイ装置を示す概観図である。
【図2】本発明に係るHUD装置の構成図である。
【図3】合成レーザー光発生装置の構成図である。
【図4】レーザー光源の駆動電流−レーザー光強度特性特性図である。
【図5】偏光制御素子における偏光について説明する図であり、(a)レーザー光RGBが透過されない場合と、(b)レーザー光RGBが透過される場合とを示した図である。
【図6】走査部により投影された表示画像の説明図である。
【図7】本発明に係る制御系統のブロック図である。
【図8】上記発明に係る制御部における低輝度モード/高輝度モードの振り分けフロー図である。
【図9】上記発明に係る高輝度モードにおける表示画像の表示輝度・ホワイトバランス調整のフロー図である。
【図10】上記発明に係る外部照度Pから目標電流値、目標光源デューティー比、目標電圧を算出するための特性テーブル例であり、(a)は外部照度−表示輝度のデータテーブルO1の例であり、(b)は表示輝度−レーザー光強度のデータテーブルO2の例であり、(c)は駆動電流−レーザー光強度のデータテーブルO3の例であり、(d)は光源デューティー比−レーザー光強度のデータテーブルO4の例であり、(e)は表示輝度−透過率のデータテーブルO5の例であり、(f)は印加電圧−透過率のデータテーブルO6の例である。
【図11】上記発明に係る低輝度モードにおける表示画像の表示輝度・ホワイトバランス調整のフロー図である。
【図12】上記発明に係る外部照度の変化に基づく高輝度モード・低輝度モードとの切り替わりにおけるヒステリシスを表した図である。
【図13】上記発明に係るレーザー光源の温度特性を示した図であり、(a)は駆動電流−レーザー光強度の温度特性を表す図であり、(b)は光源デューティー比−レーザー光強度の温度特性を表す図である。
【図14】本発明の第二実施形態におけるフレーム毎の偏光制御素子の印加電圧、透過率の推移を表した図であり、(a)はフレーム毎の印加電圧の推移を表す図であり、(b)はフレーム毎の偏光部の透過率の推移を表す図であり、(c)はフレーム毎に印加電圧を反転させた際のフレーム毎の印加電圧の推移を表す図である。
【図15】本発明の第三実施形態における合成レーザー光発生装置の構成図である。
【図16】本発明の第四実施形態における合成レーザー光発生装置の構成図である。
【図17】本発明の第五実施形態における偏光制御素子とレーザー光源の印加電圧の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面に基づいて、本発明をヘッドアップディスプレイ装置に適用した一実施形態について説明する。
【0027】
(HUD装置の構造)
本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置(HUD装置)1を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係るHUD装置1は、図1に示すように、車両2のダッシュボード内に設けられ、生成した表示画像D(図2,6参照)を表す表示光Jをウインドシールド3で反射させることにより、車両運転者4に車両情報を表す表示画像Dの虚像Xを視認させる装置である。これにより、車両運転者4は、運転中に前方から視線を逸らさずに車両情報を視認できる。
【0028】
図2は、本発明に係るHUD装置1の構成図であり、HUD装置1は、合成レーザー光発生装置10と、MEMSスキャナ20と、カラーセンサ30と、透過スクリーン40と、反射部50と、ハウジング60と、ライトセンサ70と、HUD装置1の電気的な制御を行う制御部80と、を備える。
【0029】
合成レーザー光発生装置10は、RGBの三原色のレーザー光を合波して1本の合成レーザー光Cを出射する装置であり、図3に示すように、レーザーダイオード(レーザー光源)11と、集光光学系12と、液晶パネル(偏光制御素子)13と、偏光板(偏光部)14と、ダイクロイックミラー15と、を備える。
【0030】
レーザーダイオード11は、半導体レーザー(Laser Diode)であり、赤色のレーザー光Rを発するレーザーダイオード11r,と、緑色のレーザー光Gを発する緑色レーザーダイオード11gと、青色のレーザー光Bを発する青色レーザーダイオード11bと、から構成されている。
【0031】
一般的に半導体レーザーの電流−光強度特性は、図4に示すように、閾値電流値Ith以上と閾値電流値Ith未満の各領域において、特性が異なっている。閾値電流値Ith以上では誘導放出によるレーザー光が発振されるが、閾値電流値Ith未満では自然放出による非レーザー光が出射される。
【0032】
閾値電流値Ithを境にして電流−光強度特性が異なることから、レーザー光強度Aを、閾値電流値Ithをまたぐように制御する場合、制御方法が複雑になるなどの問題が生じる。
【0033】
レーザーダイオード11r,11g,11bは、後述するレーザー光制御部82からの駆動データに基づき、集光光学系12の方向へレーザー光RGBをそれぞれ出射する。
【0034】
集光光学系12は、レーザーダイオード11r,11g,11bの各々に対応する集光レンズ12r,12g,12bを備える。
集光レンズ12rは、レーザーダイオード11r,が出射するレーザー光Rの光路上に配置され、レーザー光Rを収束光にする。集光レンズ12gと緑色レーザーダイオード11g、集光レンズ12bと青色レーザーダイオード11bの対応関係についても同様である。
【0035】
液晶パネル(偏光制御素子)13は、後述する偏光制御部83からの制御データに基づき、印加電圧が制御され、レーザー光RGBの偏光角度を任意に変化させる。
液晶パネル13は、各波長のレーザー光RGBに対応する液晶セル(偏光制御可能領域)131r,131g,131bを有しており、液晶セル131r,131g,131bは各々独立に制御することが可能である。
斯かる構成により、RGB等の異なる波長及びレーザーダイオード11の個体差による偏光制御素子13の偏光度や可視光線透過率を考慮し、レーザーダイオード11毎に偏光制御素子13の偏光角度を制御することができる。
また、本実施例において制御液晶パネル13は、例えば、TN(Twisted Nematic)液晶を用いる。以下、液晶パネル13をTN液晶と仮定して説明する。
【0036】
偏光板(偏光部)14は、レーザー光RGBが液晶パネル13透過後の光路上に配置され、特定の偏光角度の光のみを透過させ、それ以外は反射、あるいは吸収する。偏光板14の透過軸の向きは、ウインドシールド3の反射率の偏光依存性を考慮して決定される。また、本実施例において偏光板14は液晶パネル13密着するように配置されているが、密着しないように配置してもよい。
【0037】
これより、図5を用いて、液晶パネル(偏光制御素子)13と偏光板(偏光部)14によるレーザー光RGBの偏光について説明する。
図5は、液晶パネル13と偏光板14とを介し、レーザー光RGBが(a)透過されない場合と、(b)透過される場合とを表した図である。
【0038】
(レーザー光不透過時)
図6(a)に示すように、レーザー光RGBの偏光角度は、液晶セル131r,131g,131b入射時と同様の偏光角度を維持したまま液晶セル131r,131g,131bを出射する。
出射したレーザー光RGBは、偏光板14に入射するが、このとき、レーザー光RGBの偏光角度は、偏光板14の透過軸に対し直交した状態のため、レーザー光RGBは、偏光板14を透過できない。即ち、液晶パネル13と偏光板14との組み合わせによって、レーザー光RGBの光強度は著しく低下する。
上記のように液晶パネル13を透過したレーザー光RGBの偏光角度が変化しないのは、液晶パネル13に電圧を印加し、液晶分子が完全に立ち上がった状態の場合である。
【0039】
(レーザー光透過時)
一方、図6(b)に示すように、レーザー光RGBの偏光角度は、液晶セル131r,131g,131b入射時に対して90°回転し液晶セル131r,131g,131bを出射する。
出射したレーザー光RGBは、偏光板14に入射するが、このとき、レーザー光RGBの偏光角度は、偏光板14の透過軸と一致するため、減光されることなく偏光板14を出射する。
上記のように液晶パネル13を透過したレーザー光RGBの偏光角度が90°回転するのは、液晶パネル13に電圧を印加していない、もしくは液晶分子の配列が変化しない程度の低電圧を印加した場合である。
図6において、液晶セル131r,131g,131bによる偏光角度を同様にしているが、液晶セル131r,131g,131bはそれぞれ独立して偏光角度を制御できる。
【0040】
上記の例は、液晶パネル13を出射したレーザー光が完全に透過あるいは遮断される場合であるが、実際にはこの限りではない。
液晶パネル13の印加電圧の大きさVを制御することで、レーザー光の偏光角度を0〜90°の範囲で任意に制御でき、偏光部14におけるレーザー光の透過率Zを制御する。これにより、偏光板14を出射するレーザー光強度Aを任意に決定できる。(印加電圧の大きさVを制御した際の偏光部14の透過率Zの推移を図10(f)に表す。)
また、本実施例では、液晶パネル13の印加電圧VをOFF状態で使用した際にレーザー光が透過し、ON状態で使用した際にレーザー光が遮光されるNormally Whiteの液晶を例に説明したが、Normally Black液晶でもよい。
【0041】
再び、図3を参照すると、ダイクロイックミラー15は、誘電体の多層膜等の薄膜が鏡面に形成された鏡で構成され、レーザー光RGBのそれぞれの光路上に配置されたダイクロイックミラー15r、15g、15bで構成される。レーザーダイオード11r,11g,11bの各々が出射したレーザー光RGBを反射又は透過させ、レーザー光RGBを1本のレーザー光に合波する。
【0042】
具体的に説明すると、ダイクロイックミラー15rは、集光レンズ12rからのレーザー光Rの進行方向に位置し、光の進行方向に対して所定の角度をもって配設される。これにより、レーザー光Rを反射する。
また、ダイクロイックミラー15gは、集光レンズ12gとダイクロイックミラー15rからの光の進行方向に位置し、各々の光の進行方向に対して所定の角度をもって配設される。これにより、レーザー光Rを透過し、レーザー光Gを反射する。即ち、ダイクロイックミラー15gは、レーザー光RとGを合波する。
また、ダイクロイックミラー15bは、集光レンズ12bとダイクロイックミラー15gからの光の進行方向に位置し、各々の光の進行方向に対して所定の角度をもって配設される。これにより、合波されたレーザー光R,Gを透過し、レーザー光Bを反射する。即ち、ダイクロイックミラー15bは、レーザー光R,Gとレーザー光Bをさらに合波する。
【0043】
このように、レーザー光RGBは1本の合成レーザー光Cに合波される。なお、レーザーダイオード11r,11g,11bの各々が調整して配設されることにより、合波されたレーザー光RGBの各々の偏光角度は一致しており、ウインドシールド3の反射率の偏光依存性を考慮して決定される。合波された合成レーザー光Cは合成レーザー光発生装置10を出射し、MEMSスキャナ20へ向かう。
【0044】
図6は、スクリーン40をMEMSスキャナ20側から見た説明図であり、MEMS(Micro Electro Mechanical System)スキャナ20は、合成レーザー光発生装置10が出射した合成レーザー光Cを走査して、透過スクリーン40に表示画像Dを生成する。
【0045】
MEMSスキャナ20で描画される表示画像Dは一般的に、走査可能範囲Enよりも小さくなる。特に、水平方向では、共振で反射面を振らせることになるため、走査の往復の切り替わりポイント付近では反射面の動作速度が遅くなる、あるいは完全に停止し、表示画像Dに歪みが生じたり、解像度の低下を生じたりする。よって、走査の往復の切り替わりポイント付近は、表示エリアEpとして使用しない。
【0046】
カラーセンサ30は、レーザー光RGBそれぞれのレーザー光強度Aを検出し、レーザー光強度Aのアナログデータをマイコン81に出力する。カラーセンサ30は、透過スクリーン40の下面の走査可能範囲En且つ表示エリアEp外の非表示エリアにカラーセンサ30を配置され、これにより表示画像Dに影響を及ぼすことなく、レーザー光RGBのレーザー光強度Aが検出可能である。
また、本実施形態では、カラーセンサ30は、透過スクリーン40の下面に設置されているが、設置場所は任意である。
【0047】
透過スクリーン40は、拡散板、ホログラフィックディフューザ、マイクロレンズアレイ等から構成され、MEMSスキャナ20で走査されたレーザー光RGBを下面で受光して上面に表示画像Dを表示する。
【0048】
反射部50は、透過スクリーン40の上面に表示された表示画像Dが、所望の位置に、所望の大きさで、虚像Xとして結ばれるように、透過スクリーン40とウインドシールド3の光路間に設けられる光学系である。
本実施形態では、反射部50は、平面ミラー51と拡大ミラー52の2枚の鏡から構成されるが、その構成は任意である。
【0049】
平面ミラー51は、平面状の全反射ミラー等であり、透過スクリーン40を透過した表示光Jを受ける位置に配置され、表示光Jを拡大ミラー52に向かって反射させる。
【0050】
拡大ミラー52は、凹面鏡等であり、平面ミラー51で反射された表示光Jを凹面で反射させることで、表示光Jをウインドシールド3に向かって出射する。これにより、結ばれる虚像Xの大きさは、表示画像Dが拡大された大きさのものになる。
【0051】
ハウジング60は、硬質樹脂等から箱状に形成され、上方に所定の大きさの窓部61を備え、上記の各部10〜50を所定の位置に収納する。
【0052】
窓部61は、アクリル等の透光性樹脂から湾曲形状に形成されており、ハウジング60の開口部に溶着等により取り付けられる。また、窓部61は、拡大ミラー52で反射された光を透過させる。また窓部61は、その下面に、後述するライトセンサ70を備える。
本実施形態では、ライトセンサ70は、窓部61の下面に設置されているが、設置場所は、外部照度測定値が所定値以上検出可能な範囲であれば任意である。
【0053】
次に、図7を参照して、HUD装置1が有する制御系統について説明する。
【0054】
(HUD装置の制御系統)
図7は、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置のブロック図である。
本発明におけるHUD装置1の制御系統は、合成レーザー光発生装置10と、MEMSスキャナ20と、カラーセンサ30と、ライトセンサ70と、制御部80と、から構成されている。
【0055】
カラーセンサ30は、レーザー光RGBそれぞれのレーザー光強度Aを検出し、レーザー光強度Aのアナログデータである光強度測定値Mを制御部80に出力する。
【0056】
ライトセンサ70は、HUD装置1の外部照度Pを検出し、照度のアナログデータである外部照度測定値P1を制御部80に出力する。
【0057】
制御部80は、マイコン81と、レーザー光制御部82と、偏光制御部83と、MEMSドライバ90と、を備える。
【0058】
マイコン81は、車両ECU5から表示画像Dを表示するための画像データをLVDS(Low Voltage Differential Signal)通信等によって供給され、この画像データに従い、レーザー光制御部82を介してレーザーダイオード11を制御し、さらにMEMSドライバ90を介してMEMSスキャナ20を制御することにより、所望の表示画像Dを透過スクリーン40に投影させる。
また、マイコン81は、MEMSスキャナ20の同期信号から合成レーザー光Cの走査位置を特定し、あらかじめ設置されているカラーセンサ30の位置情報をメモリしておき、カラーセンサ30の位置と走査位置が重なったタイミングでレーザー光制御部82を介してレーザーダイオード11r,11g,11bを駆動する。
また、マイコン81は、表示画像Dの表示輝度Bを調整する表示輝度調整手段81aと、表示画像Dのホワイトバランスを調整する画質補正手段81bと、を備える。
表示輝度調整手段81aは、ライトセンサ70から出力された外部照度測定値P1から適した表示画像の輝度である輝度目標値B1を算出し、その算出結果に基づき、レーザー光制御部82を介しレーザーダイオード11のレーザー光強度Aを制御するまたは、算出された輝度目標値B1に基づき、偏光制御部83を介し液晶パネル13の偏光角度を調整し、偏光板14の透過率Zを制御することにより、表示画像Dの表示輝度Bを調整する。
【0059】
画質補正手段81bは、カラーセンサ30から出力されたレーザー光RGBのそれぞれの光強度測定値Mr、Mg,Mbをもとに所望のホワイトバランスになるように、レーザーダイオード11r,11g,11bそれぞれのレーザー光強度Aを調整する。
または、画質補正手段81bは、液晶セル131r,131g,131bそれぞれの偏光角度を調整し、偏光板14の透過率Zを制御することにより、表示画像Dのホワイトバランスの補正を行う。
【0060】
レーザー光制御部82は、マイコン81からのレーザー光源制御データに基づき、レーザーダイオード11を駆動する。
【0061】
偏光制御部83は、マイコン81からの偏光制御データに基づき、液晶パネル13を駆動する。
【0062】
次に、HUD装置1が表示する表示画像Dを高輝度領域Lで表示させる場合と、低輝度領域Lで表示させる場合の表示輝度調整部81aによる表示輝度Bの調整方法について図8乃至11を用いて説明する。
【0063】
まず、図8に示すように、ステップS0では、ライトセンサ70は、HUD装置1の外部の照度である外部照度Pを測定し、測定データをマイコン81へ出力する。
ステップS1において、表示輝度調整手段81aは、ライトセンサ70が検出する外部照度Pが、メモリされている所定の境界外部照度Pm以上となった場合、高輝度モード(S1a)へ推移し、境界外部照度Pm未満となった場合、低輝度モード(S1b)へ推移する。
境界外部照度Pmは、あらかじめ定められた境界電流値Imから算出される値であり、レーザーダイオード11r,緑色レーザーダイオード11g,青色レーザーダイオード11bのいずれかがレーザー発振しなくなる閾値電流値Ithを基準に算出される外部照度閾値Pth以上の値である。
【0064】
(高輝度領域)
高輝度モードS1aは、図9のフロー図に沿って行われる。外部照度Pの測定データを外部照度測定値P1として、以下の説明を行う。
ステップS2において、表示輝度調整手段81aは、図10(a)に示すようにマイコン81にメモリされた外部照度−表示輝度テーブルO1に基づき、入力した外部照度測定値P1に適した表示画像の輝度である輝度目標値B1を算出し、
次に、図10(b)に示すように表示輝度−レーザー光強度データテーブルO2に基づき、輝度目標値B1に応じたレーザー光源11の光強度目標値A1を算出する。
【0065】
ステップS3において、表示輝度調整手段81aは、マイコン81にメモリされている
(1)駆動電流−レーザー光強度特性データテーブルO3(図10(c))に基づき、光強度目標値A1に応じたレーザー光源11の目標電流値I1を算出する。または、
(2)光源デューティー比−レーザー光強度特性データテーブルO4(図10(d))に基づき、上記で算出された光強度目標値A1に応じたレーザー光源11の目標光源デューティー比Q1を算出する。
【0066】
ステップS4において、表示輝度調整手段81aは、レーザー光制御部82を介し、それぞれのレーザー光源11r、11g、11bを(1)上記で算出された目標電流値I1に基づいてPAM(Pulse Amplitude Modulation)制御する。(2)または、上記で算出された目標光源デューティー比Z1に基づいてPWM(Pulse Width Modulation)制御する。
このようにして駆動されたそれぞれのレーザー光源11r、11g、11bのレーザー光RGBは合成され、合成レーザー光発生装置10から合成レーザー光Cが出射し、この合成レーザー光Cは走査部20により走査され、スクリーン40側に投射される。
【0067】
ステップS5において、カラーセンサ30は、レーザー光RGBそれぞれの光強度である光強度測定値Mを測定し、この光強度測定値Mはアナログデータとしてマイコン81へ出力される。
【0068】
ステップS6において、表示輝度調整手段81aは、外部照度測定値P1に基づき算出された光強度目標値A1と、カラーセンサ30により測定された合成レーザー光Cの光強度の実測値である光強度測定値Mとを比較する。
【0069】
ステップS7において、上記のステップS6で比較された結果、光強度目標値A1と、光強度測定値Mとに差異がある場合、光強度測定値Mが光強度目標値A1に略一致するようにレーザー光源11の目標電流値I1または目標光源デューティー比Q1を調整する。
【0070】
ステップS8において、画質補正手段84は、レーザー光RGBのそれぞれの光強度測定値Mをもとに、表示画像Dが所望のホワイトバランスになるように、レーザーダイオード11r,11g,11bそれぞれのレーザー光強度Aを調整することでホワイトバランスの補正を行う。
【0071】
ステップS9において、光強度測定値Mが光強度目標値A1に近づくように、フィードバック制御(ステップS4乃至S9)を繰り返す。
【0072】
上記の制御方法を具体的に、表示画像Dのフレームレートが60fps(1秒間に処理されるフレームが60回)の場合を想定して説明すると、
1フレーム目において、表示輝度調整手段81aは、ライトセンサ70により測定された外部照度測定値P1より算出された光強度目標値A1になるように、目標電流値I1もしくは目標光源デューティー比Q1を算出する。(ステップS0、S2、S3)
これら目標電流値I1もしくは目標光源デューティー比Q1でレーザー光源11を駆動し、カラーセンサ30により測定された光強度測定値Mと光強度目標値A1が略一致するように、ホワイトバランスを考慮しつつ、前記目標電流値I1または目標光源デューティー比Q1を調整するフィードバック制御を行う。(ステップS4乃至S8)
2フレーム目において、上記1フレーム目で調整された目標電流値I1または目標光源デューティー比Q1でレーザー光源11を駆動し、走査部20にて走査し、2フレーム目の表示画像Dを投射し、カラーセンサ30により測定された光強度測定値Mと光強度目標値A1が略一致するように、レーザー光源11の目標電流値I1または目標光源デューティー比Q1を再び調整するフィードバック制御を行う。(ステップS4乃至S8)
60フレーム目まで、2フレーム目と同様に、カラーセンサ30に測定された光強度測定値Mと光強度目標値A1が略一致するように、レーザー光源11の目標電流値I1または目標光源デューティー比Q1を調整するフィードバック制御(ステップS4乃至S8)を繰り返す。
61フレーム目は、再び1フレーム目と同様にライトセンサ70により測定された外部照度測定値P1に基づき、光強度目標値A1を再度算出し、この算出された光強度目標値A1に応じた目標電流値I1または目標光源デューティー比Q1を算出する。
以下同様に、ステップS4乃至S8のフィードバック制御を繰り返す。
【0073】
また、上記の実施形態のようにフィードバック制御(ステップS4乃至S8)を1フレーム毎に行うのではなく、具体的に例えば1フレーム目〜5フレーム目までのみフィードバック制御を行ってもよい。この場合、6フレーム目から60フレーム目までは、5フレーム目のフィードバック結果を反映したレーザーダイオード11r,緑色レーザーダイオード11g,青色レーザーダイオード11bの目標電流値I1で駆動し続ける。斯かる構成のように、頻繁にフィードバック制御を行わないことで、制御を簡素化することができる。
上記制御方法は本発明における一実施例であり、外部照度Pの読み込みタイミングやフィードバック制御の回数等は任意に決定してよい。
【0074】
(低輝度領域)
低輝度モードS1bは、図11のフロー図に沿って行われる。外部照度Pの測定データを外部照度測定値P2として、以下の説明を行う。
ステップS11において、表示輝度調整手段81aは、図10(a)に示すようにマイコン81にメモリされた外部照度−表示輝度テーブルO1に基づき、入力した外部照度測定値P2に適した表示画像の輝度である輝度目標値B2を算出し、図10(b)に示すように表示輝度−レーザー光強度データテーブルO2に基づき、輝度目標値B2に応じたレーザー光源11の光強度目標値A2を算出する。
【0075】
ステップS12において、表示輝度調整手段81aは、レーザー光源11の駆動条件を、あらかじめ定められた境界電流値Imまたは境界光源デューティー比Qmに設定する。
【0076】
ステップS13において、表示輝度調整手段81aは、あらかじめメモリされている図10(e)の表示輝度−透過率特性データテーブルO4に基づき、上記で算出された光強度目標値A2に応じた偏光板14におけるレーザー光RGBの目標透過率Z2を算出し、印加電圧−透過率特性データテーブルO6(図10(f))に基づき、上記で算出された目標透過率Z2に応じた偏光制御可能領域131r,131g,131bそれぞれの目標電圧V2を算出する。
【0077】
ステップS14において、表示輝度調整手段81aは、レーザー光源11を上記の境界電流値Imまたは境界光源デューティー比Qmで駆動する。偏光制御可能領域131r,131g,131bは、上記の目標電圧V2で駆動され、レーザー光RGBを所望の偏光角度に偏光し、これらの偏光されたレーザー光RGBは偏光板14にて所望の光強度目標値A2まで減光される。これらの減光されたレーザー光RGBは合成され、合成レーザー光発生装置10から合成レーザー光Cが出力され、出力された合成レーザー光Cは走査部20により走査され、スクリーン40側に投射される。
【0078】
ステップS15において、カラーセンサ30はレーザー光RGBそれぞれの光強度である光強度測定値Mを測定し、この光強度測定値Mはアナログデータとしてマイコン81へ出力される。
【0079】
ステップS16において、表示輝度調整手段81aは、外部照度測定値P2に基づき算出された光強度目標値A2と、カラーセンサ30により測定された合成レーザー光Cの光強度の実測値である光強度測定値Mとを比較する。
【0080】
ステップS17において、上記のステップS16で比較された結果、光強度目標値A2と、光強度測定値Mとに差異がある場合、光強度測定値Mが光強度目標値A2に略一致するように液晶セル131r,131g,131bの目標電圧V2を調整する。
【0081】
ステップS18において、画質補正手段81bは、液晶セル131r,131g,131bそれぞれの目標電圧V2を補正する、またはレーザー光源11r,11g,11bそれぞれの境界電流値Imまたは境界光源デューティー比Qmを補正する、またはその双方によりホワイトバランスの補正処理を行う。
【0082】
ステップS19において、光強度測定値Mが光強度目標値A2に近づくように、フィードバック制御(ステップS14乃至S19)を繰り返す
【0083】
斯かる構成により、境界外部照度Pmを境に表示輝度Bの調整方法を切り替えることで、レーザー光源11の制御が安定する閾値電流値Ith以上で駆動しつつも、外部照度Pに応じた幅広い表示輝度で表示画像を表示することが可能であり、全表示輝度範囲でホワイトバランスも良好なヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【0084】
本実施例ではレーザー光強度Aの検出にカラーセンサ30を用いたが、フォトダイオードを用いても良い。この場合、フォトダイオード上を合成レーザー光Cが走査する際にフレーム毎にフォトダイオード上を走査するレーザー光RGBを切り替えることで、レーザー光R,G,Bそれぞれの光強度測定値Mを検出することが可能である。
【0085】
また、図12に示すように、高輝度モードS1aと低輝度モードS1bとの振り分けと外部照度Pの関係でヒステリシスを持たせてもよい。外部照度Pが高い方から低い方へ移った場合、高輝度モードS1aから低輝度モードS1bへ切り替わるのは境界外部照度Pmであるが、外部照度Pが低い方から高い方へ移った場合、低輝度モードS1bから高輝度モードS1aへ切り替わるのは境界外部照度Pm‘としてもよい。斯かる構成により、外部照度Pが境界外部照度Pm付近で振れる場合において、高輝度モードS1aと低輝度モードS1bとの切り替わりが煩雑になるのを防ぐことができる。
【0086】
また、図13(a)に示すように、複数の温度に対する駆動電流−レーザー光強度特性データテーブルをメモリしておき、レーザーダイオード11r,11g,11bそれぞれの温度をサーミスタ等で検出し、検出した温度に近いデータテーブルを読み出してもよい。斯かる構成により、所望の表示輝度で表示画像を表示するためにレーザー光源11の電流境界値ImをImA,ImB,ImC,ImDのように温度に合わせ、精度良く調整することができる。
また、図13(b)に示すように、複数の温度に対する光源デューティー比−レーザー光強度特性データテーブルを用いてもよい。
【0087】
以下、本実施形態の変形例について、図14乃至図17を参照して説明する。
【0088】
(第二実施形態)
図14は、液晶セル131r,131g,131bの印加電圧Vを1フレーム辺りに5ステップの割合で緩やかに変化させた例である。図14(a)は、各フレームF毎の液晶セル131r,131g,131bの印加電圧Vの推移を表しており、1フレームあたりの印加電圧Vの変化量を5Vth/256に設定し、偏光板14の透過率Zが、目標透過率Z2になるための目標電圧値V2になるまで、連続的に変調する。目標電圧値V2に達した次のフレーム(図14の30フレーム目)以降で、カラーセンサ30に入力されるレーザーダイオード11の光強度測定値Mを測定し、フィードバック制御を行い、目標電圧値V2を修正する。
図14(b)は、図14(a)のように印加電圧Vを推移させた場合のフレームF毎の偏光板14のレーザー光RGBの透過率Zの推移を表している。本実施例のように偏光制御素子13として液晶パネルを用いた場合、分極現象が起こらないように、図14(c)に表すように、各フレーム毎に印加電圧Vを正負反転し、交流的に駆動する。
【0089】
上記第二実施形態では、印加電圧Vを緩やかに変化させる例であったが、レーザー光源11をPAM制御またはPWM制御することにより、駆動電流Iまたは光源デューティー比Qを緩やかに変化させ、所望のレーザー光強度Aになるように制御してもよい。
斯かる構成により、複数のステップで段階的に変化させると、運転手にとって違和感を生むような、急激な輝度変化を生じない。
【0090】
(第三実施形態)
本実施例では、液晶パネル13をレーザー光RGB用に3つの液晶セル(偏光制御可能領域)131r,131g,131bに分割し、各々のセルを制御したが、図15のように、液晶パネル13をレーザーダイオード11毎に設けてもよい。このように、レーザーダイオード毎に液晶パネルを独立して設けることにより、他のレーザーダイオードからの光の干渉を抑制し、より確実にレーザー光源毎のレーザー光強度やホワイトバランスの調整を行うことができる。
【0091】
(第四実施形態)
また、図16に示すように、レーザー光RGBをダイクロイックミラー15r,15g,15bで合成した合成レーザー光Cの光路上に偏光制御素子13を設ける構成としてもよい。斯かる構成により、複数のレーザー光源において、偏光制御素子と偏光部とを共有化でき、上記実施形態に対し、コストを低く抑えたヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【0092】
(第五実施形態)
また、上記第四実施形態のHUD装置1の構成において、図17に示すように1フレームを時間分割したサブフレームSF毎にレーザーダイオード11r,、11g、11bをそれぞれ駆動し、偏光制御素子は、入射してくるレーザーダイオード11r,、11g、11b毎に偏光角度を調整するような構成にしてもよい。
斯かる構成により、複数のレーザー光源に対し、1つの液晶制御素子を用い、レーザー光源の波長ごとまたは個体誤差に応じて偏光角度を調整することで、外部照度に適した表示輝度で画像表示でき、良好なホワイトバランスの制御をしつつも、コストを抑えたHUD装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 ヘッドアップディスプレイ装置(HUD装置)
2 車両
3 ウインドシールド
4 車両運転者
5 車両ECU
10 合成レーザー光発生装置
11 レーザー光源(レーザーダイオード)
11r 赤色レーザーダイオード
11g 緑色レーザーダイオード
11b 赤色レーザーダイオード
12 集光光学系
12r 集光レンズ
12g 集光レンズ
12b 集光レンズ
13 偏光制御素子(液晶パネル)
131r 偏光制御可能領域(液晶セル)
131g 偏光制御可能領域(液晶セル)
131b 偏光制御可能領域(液晶セル)
14 偏光部(偏光板)
15 ダイクロイックミラー
20 走査手段(MEMSスキャナ)
30 レーザー光検出部(カラーセンサ)
40 透過スクリーン
50 反射部
51 平面ミラー
52 拡大ミラー
60 ハウジング
61 窓部
70 外光検出部(ライトセンサ)
80 制御部
81 マイコン
81a 表示輝度調整手段
81b 画質補正手段
82 レーザー光制御部
83 偏光制御部
90 MEMSドライバ
R 赤色レーザー光
G 緑色レーザー光
B 青色レーザー光
C 合成レーザー光
D 表示画像
J 表示光
X 虚像
En 走査可能範囲
Ep 表示エリア
高輝度領域
低輝度領域

A レーザー光強度
A1 光強度目標値
Am 境界光強度
Ath 光強度閾値

B 表示輝度
B1 輝度目標値(高輝度領域)
B2 輝度目標値(低輝度領域)
Bm 境界表示輝度

I 駆動電流値
I1 目標電流値(高輝度領域)
Im 境界電流値
Ith 閾値電流値

M 光強度測定値

P 外部照度
P1 外部照度測定値(高輝度領域)
P2 外部照度測定値(低輝度領域)
Pm 境界外部照度
Pth 外部照度閾値

Q 光源デューティー比
Q1 目標光源デューティー比(高輝度領域)
Qm 境界光源デューティー比

V 印加電圧
V2 目標電圧

Z 透過率
Z2 目標透過率(低輝度領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を出射するレーザー光源と、
前記レーザー光の光強度を制御するレーザー光制御部と、
前記レーザー光を偏光する偏光制御素子と、前記偏光制御素子における前記レーザー光の偏光角度を任意に制御する偏光制御部と、
特定の偏光成分を透過する偏光部と、
前記レーザー光源から出射したレーザー光の光路上に位置し、到達したレーザー光を走査し、所望の表示画像を投影する走査部と、
前記レーザー光の光強度を検出するレーザー光検出部と、
外光の照度を検出する外光検出部と、
前記外光検出部により測定された外部照度測定値に基づき、前記表示画像の表示される輝度目標値を算出し、前記表示画像が前記輝度目標値で表示されるように前記レーザー光制御部と前記偏光制御部とを制御する表示輝度調整手段と、
を備えるヘッドアップディスプレイ装置において、
前記表示輝度調整手段は、
前記外部照度測定値が所定の境界外部照度以上の場合、
前記偏光制御部を介し、前記偏光制御素子の偏光角度を前記レーザー光が前記偏光部にて減光されない偏光角度になるように制御し、
前記外部照度測定値が前記境界外部照度未満の場合、
前記偏光制御部を介し、前記偏光制御素子の偏光角度を前記レーザー光が前記偏光部にて減光される偏光角度になるように制御すること、を特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
レーザー光を出射するレーザー光源と、前記レーザー光の光強度を制御するレーザー光制御部と、
前記レーザー光を偏光する偏光制御素子と、前記偏光制御素子における前記レーザー光の偏光角度を任意に制御する偏光制御部と、
特定の偏光成分を透過する偏光部と、
前記レーザー光源から出射したレーザー光の光路上に位置し、到達したレーザー光を走査し、所望の表示画像を投影する走査部と、
前記レーザー光の光強度を検出するレーザー光検出部と、
外光の照度を検出する外光検出部と、
前記外光検出部により測定された外部照度測定値に基づき、前記表示画像の表示される輝度目標値を算出し、前記表示画像が前記輝度目標値で表示されるように前記レーザー光制御部と前記偏光制御部とを制御する表示輝度調整手段と、
を備えるヘッドアップディスプレイ装置において、
前記表示輝度調整手段は、
前記外部照度測定値が所定の境界外部照度以上の場合、
前記レーザー光制御部を介し、前記レーザー光源のレーザー光強度を制御することで、前記表示画像の輝度を前記輝度目標値に調整する高輝度制御モードと、
前記外部照度測定値が前記境界外部照度未満の場合、
前記偏光制御部を介し、前記偏光制御素子の偏光角度を制御することで、前記表示画像の輝度を前記輝度目標値に調整する低輝度制御モードとを備えること、を特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記表示画像のホワイトバランスの補正処理を行う画質補正手段をさらに備えてなること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記画質補正手段は、前記レーザー光制御部を介し、前記レーザー光源の光強度を制御することで、前記表示画像のホワイトバランスを補正すること、を特徴とする請求項3に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記画質補正手段は、前記偏光制御部を介し、前記偏光制御素子の偏光角度を制御することで、前記表示画像のホワイトバランスを補正すること、を特徴とする請求項3または請求項4に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記レーザー光源の駆動電流値は、前記レーザー光源の閾値電流値より大きい値に設定されてなること、を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
前記レーザー光制御部は、前記レーザー光源をPAM駆動またはPWM駆動により、緩やかに所望の光強度になるように制御すること、を特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項8】
前記偏光制御部は、前記偏光制御素子の印加電圧の大きさを緩やかに変化させること、を特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項9】
前記レーザー光源は、波長の異なる複数のレーザー光源を備えること、を特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項10】
前記偏光制御素子は、独立して制御可能な複数の偏光制御可能領域を備えてなること、を特徴とする請求項9に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項11】
前記偏光制御素子と前記偏光部は、前記複数のレーザー光源の各々に対して備えられていること、を特徴とする請求項9に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項12】
前記偏光制御素子と前記偏光部は、前記波長の異なる複数のレーザー光源から発せられたレーザー光が合成された合成レーザー光の光路上に備えられてなること、を特徴とする請求項9に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項13】
前記合成レーザー光は、フレームを時間分割したサブフレーム毎に波長の異なるレーザー光源を発光させてなるものであり、前記偏光制御部は、前記サブフレーム毎に、前記偏光制御素子の偏光角度を制御すること、を特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−15738(P2013−15738A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149632(P2011−149632)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】