説明

ベシキュリン

本発明は一般に、ベシキュリンペプチド及びベシキュリンペプチド鎖及びその断片、変異体及び誘導体、関連する組成物及び処方物及びそれらの調製及び使用、かかるベシキュリンペプチド及びベシキュリンペプチド鎖及びその断片、変異体及び誘導体をコードする核酸、及び関連するベクター及び宿主細胞、ハイブリドーマ及び抗体、並びにグルコース代謝疾患を含む(ただしこれらに制限されるわけではない)、該発明の組成物の投与により改善、緩解又は軽減されると思われる身体条件、疾病及び障害の予防及び治療のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、グルコース代謝疾患及び障害ならびにインスリン及びその他の血糖降下薬で治療されているか又は治療可能である疾病及び障害を含む(ただしこれらに制限されるわけではない)、該発明の組成物の投与により改善、緩解又は軽減されると思われる身体条件、疾病及び障害の予防及び治療のための、ペプチド及びタンパク質及び関連する組成物及び処方物ならびにその調製及び使用、かかるペプチド及びタンパク質をコードする核酸及び関連するベクター及び宿主細胞ならびに方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下には、本発明を理解する上で有用であると考えられる情報が含まれている。ただし、本書で提供されている情報のいずれかが、ここで記述されている又は請求されている発明に先行する技術であること又はそれに関連していること、或いは、特定的に又は暗示的に参照指示されているあらゆる刊行物又は文書が先行技術であることが、了解事項とされるわけではない。
【0003】
インスリン様成長因子II(IGF−II)は、広範囲の細胞型の増殖を刺激するポリペプチド成長因子である。当初ヒト血清から報告されたヒトIGF−IIは、67個のアミノ酸残基を含む7.5kDaの1本鎖ポリペプチドである。Rinder knecht, E.及びHumbel, R. Proc. Natl. Acad. Sci, USA 73:4379-4381 (1976年)。IGF−IIの一般的概念については、例えばBinoux. M., Diabete et Metabolisme, 「代謝調節におけるIGF系」21 (5); 330-7 (1995年)を参照のこと。
【0004】
IGF−IIは、アミノ酸挿入(Jansen, M., et al., FEBS Lett. 179:243 (1985年);Hampton, B., et al., Journal of Biological Chemistry 264:19155-19160 (1989年))、翻訳後グリコシル化(Hudgins, W., et al., J. Biol. Chem. 267:8153 (1992年); Daughaday, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5823-5827 (1993年)、COOH−末端E−ドメインペプチド(Hudgins, et al., J. Biol. Chem. 267:8153 (1992年); Zumstein, P, et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 82:3169-3172 (1985年); Gowan, et al., Endocrinol. 121:449 (1987年); Haselbacher及びHumbel, Endocrinol. 110:1822 (1982年); Haselbacher et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:2153-2157 (1985年); Daughaday, W., et al., N. Engl. J. Med. 319:1434 (1988年); Shapiro., J. Clin. Invest. 85:1672 (1990年); Hoekman, et al., Annals in Oncology 5:277 (1994年)、細胞内タンパク質分解(Ser29とArg30の間で発生する天然発生の一点分割の結果としてもたらされるものとして提案されているIGF−IIの2種類分子について報告するJansen, J., et al., Biochem. J. 266:513-520 (1990年)を参照のこと)の結果としてさまざまな形で存在し得る。
【0005】
例えば、[Leu27]−、[Glu27]−、及び[Glu48]IGF−II(Burgisser, D., et al., J. Biol. Chem. 266:1029-1033 (1991年))、及び[Ser26]−、[Leu27]−、[Leu43]−、[Thr48、Ser49、Ile50]−、及び[Arg54、Arg55]IGF−II(Sakano, K., et al., J. Biol. Chem. 266:20626-20635 (1991年))といったように、改変されたIGF−IIが報告されてきた。又、例えば(7−67)−及び(9−67)IGF−II(Luthi, C., et al., Eur. J. Biochem. 205:483-490 (1992年))及びdes(37−40)[Arg33]IGF−II(Zarn et al., Eur. J. Biochem. 210:665-669 (1992年))といったように、IGF−II欠失突然変異体も同様に報告されてきた。同じく、Roth, B., et al., 「ヒトインスリン様成長因子II:TYR27の置換及び/又は残基62〜67の欠失を伴う類似体の発現及び特徴づけ」Biochem Biophys Res Commun. 181:907-14 (1991年)も参照のこと。
【0006】
高血糖症及び改変されたβ−細胞機能を特徴とする真性糖尿病は、何百万人ものアメリカ人が罹患している一般的な障害である。米国糖尿病協会(ADA)が提供した統計によると、米国には1820万人つまり人口の6.3%にあたる糖尿病患者がいる。2002年における糖尿病に起因する直接的医療支出及び間接的支出は1320億ドルと推定された。
【0007】
1型及び2型糖尿病は両方共、高血糖症を特徴とする膵臓の疾患である。1型糖尿病においては、グリコース代謝に対して深遠な効果を及ぼすペプチドホルモンであるインスリンとアミリンの両方を分泌する膵島β細胞が破壊される。2型糖尿病では、これらの細胞は徐々に機能を失ない、往々にしてこの疾病の末期には機能しなくなる。予想される通り、糖尿病の重症度及びそれに付随する問題点を考えると、生理学において膵島β−細胞は主要な役割を果たしている。
【0008】
インスリン及びアミリンの機能に置換わる治療的投薬計画が存在するものの、糖尿病を患う個体は、生活の質及び量の両方にとって主たる脅威である合併症を起こす傾向にある。数多くの糖尿病患者が、心臓血管又は腎臓の合併症の結果として早期に死亡しており、これらの合併症には長年にわたる重篤な衰弱性疾病がすでに先行していることが多い。糖尿病を患う個体は、失明のリスクが25倍、腎不全のリスクが20倍、壊疽の結果としての切断リスクが40倍、冠状動脈性心臓病及び虚血性脳損傷のリスクが2〜6倍増大すると推定されている。Klein R., et al., Diabetes Care 8:311-5 (1985年)参照。ADAは、糖尿病をもつ人の3人に2人が心臓病及び卒中で死亡すること、糖尿病は20〜74才の人の新たな失明症例の主要原因であること(12000人〜24000人が糖尿病のために失明している)、糖尿病は末期腎疾患(腎不全)の主要原因であって、新規症例の約43パーセントを占めていること(2000年度に糖尿病をもつ約41,046人の人が末期腎疾患の治療を開始し、129183人が透析又は腎移植を受けている)、米国における非外傷性の下肢切断術の60パーセント超が糖尿病をもつ人の間で行なわれていること(糖尿病をもつ人の間で82,000件超の切断術が実施されている)、糖尿病をもつ人が、卒中を患う確率は2〜4倍高いこと(そしてひとたび卒中になると、再発の確率が2〜4倍高くなる)、糖尿病をもつ女性における心臓病による死亡は(糖尿病をもたない女性における27パーセントの減少に比べ)過去30年間で23パーセント増大していること、そして糖尿病をもつ男性における心臓病による死亡は、(糖尿病をもたない男性における36パーセントの減少に比べ)わずか13パーセントしか減少しなかったこと、を報告している。
【0009】
1型糖尿病は、膵島β細胞の自己免疫破壊に起因する膵臓内の分泌機能の早期喪失とその結果としての低インスリン血症、低アミノ酸血症及び高血糖症を特徴とする。2型糖尿病は、遺伝因子と環境的影響の結果としての多遺伝子不均一疾患である。例えばKecha-Kamoun et al., Diabetes Metab Res Rev 17:146-152 (2001年)を参照のこと。
【0010】
2型糖尿病は当初高インスリン血により特徴づけされるものの、末梢インスリン耐性及び結果としての高血糖症も2型糖尿病を特徴づけする。β細胞は往々にして、インスリン分泌能力及びβ細胞質量の両方の増加によりこのインスリン耐性を補償する。β細胞機能及び最終的なβ細胞障害の結果として、インスリンレベルは最終的に低下する。かくして、正常な耐糖能から、耐糖能障害、2型糖尿病そして末期2型糖尿病へと進行し、これにβ細胞機能の改変、β細胞損失そして最終的にはインスリン分泌の減少が付随する。例えばDickson et al., J. Biol. Chem. 276:21110-21120 (2001年)、を参照のこと。換言すると、高血糖症は、β細胞が増加するインスリン耐性を克服するのに充分なインスリン産出レベルを持続できなくなるにつれて悪化する。Kaytor, et al., J Biol Chem. 16:16 (2001年)、を参照のこと。最終的なβ細胞障害は、主として機能障害であるが、後に1型糖尿病に見られるもののようなβ細胞損失まで進行する。最も特筆すべき機能的β細胞欠陥は、急性グルコース誘発型インスリン分泌(GIIS)の損失である。β細胞は当初、増大したインスリン需要に適応するが、その後2型糖尿病の悪化につれて代償機能を失う。1つの仮説は、β細胞が脱分化状態となり、GIISといったような専門化された機能の損失を導く、というものである。Weir et al., Diabetes, 50 Supplement 1, S154-S159 (2001年)。
【0011】
シグナル伝達事象の集積ネットワークが、インスリン需要に対するβ−細胞質量の適応を制御するために一斉に作用することがわかっており、β細胞成長の増大が一部には循環する成長因子に起因し得ることを示唆するいくつかの証拠が存在する。例えば、インスリン耐性マウスの膵臓又は腎臓被膜内への正常な膵島の移植がβ細胞質量の著しい増加を導くということを報告したFlier et al. (2001年) Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 98:7475-7480、を参照のこと。
【0012】
糖尿病及びその原因についての何十年もの研究にも関わらず、β細胞自体及びそれらが産生するタンパク質についての莫大な研究にも関わらず、又1型及び2型糖尿病をもつ人の治療用の療法の存在及び使用にも関わらず、重大な問題が残っている。
【0013】
糖尿病及び膵臓に関係するその他の関連タンパク質例えばβ細胞タンパク質の同定は、例えばβ細胞質量を増大させβ細胞破壊の結果としての循環するタンパク質の損失及び糖尿病の長期合併症及び高血糖症に関係する問題に対処するタンパク質を含め、糖尿病をもつ人の生活をさらに改善するための絶えまない努力において多大な利益をもたらすものと思われる。
【0014】
新しいβ細胞ペプチドホルモンが発見されており、これが本書で記述され請求される。該ペプチドは、グルコース摂取を増大させることを含め生物活性を有するものである。
【発明の開示】
【0015】
本書で記述され請求されている発明は、この簡単な説明において記述され参照指示されているものを含め(ただしこれらに制限されるわけではない)、数多くの属性、態様及び実施形態を有する。包括性が意図されているわけではないが、本書に記述され請求されている発明は、例示のみを目的として制限的意味なく内含されているこの要約中で識別されている特長又は実施形態に限定されず又はこれらによって制限されるものでもない。
【0016】
本書で記述され請求されている発明は、ベシキュリンと呼ばれるこれまで未知であったペプチドの発見に関するものである。該ペプチドは、ヒトβ−細胞分泌顆粒を含めた膵臓β細胞分泌顆粒の中に存在する。
【0017】
第1の態様では、単離されたベシキュリンが提供されている。同様に提供されているのは、ベシキュリン核酸配列である。ベシキュリン及びベシキュリンポリヌクレオチドは組換え型、単離型、純粋又は精製済み、又は実質的に純粋であり得る。
【0018】
もう1つの態様においては、例えばヒトベシキュリンA鎖ポリペプチド及びポリヌクレオチドといったようなベシキュリンA鎖ポリペプチド及びポリヌクレオチドが提供されている。同じくA鎖断片も提供されている。
【0019】
さらにもう1つの態様においては、例えばヒトベシキュリンB鎖ポリペプチド及びポリヌクレオチドといったようなベシキュリンB鎖ポリペプチド及びポリヌクレオチドが提供されている。同じくB鎖断片も提供されている。
【0020】
ベシキュリンA及びB鎖ポリペプチド及び断片及びそれについてコードするポリヌクレオチドは、組換え型、単離型、純粋又は精製済み又は実質的に純粋であり得る。
【0021】
さらにもう1つの態様においては、ベシキュリン変異体、ベシキュリン誘導体、及びベシキュリンの活性断片が提供されている。
【0022】
本書で使用されているように「ベシキュリン」というのは、62又は63個のアミノ酸を有する2鎖ペプチドを含むポリペプチドを意味する。ヒト配列は以下のように表わすことができる(配列番号1);
【化1】

なお式中Ala1は存在するか又は不在である。
【0023】
ベシキュリン変異体も同様に提供されており、例えば、次のものを含む;
【化2】

なお式中、Ala1は存在するか又は不在であり;R1はGly又はArgであり;R2はGly又はSerであり;R3はGly又はSerであり;R4はSer又はAlaであり;R5はIle又はVal又はAlaのいずれかであり;R6はAsn又はSerであり;R7はThr又はAlaである。さらにもう1つの実施形態においては、Ala1は存在するか又は不在であり;R1はGly又はArgであるか又はそのいずれかの保存的変異体であり;R2はGly又はSer又はそのいずれかの保存的変異体であり;R3はGly又はSer、又はそのいずれかの保存的変異体であり;R4はSer又はAla又はそのいずれかの保存的変異体であり;R5はIle又はVal又はAla又はそのいずれかの保存的変異体であり;R6はAsn又はSer、又はそのいずれかの保存的変異体であり;R7はThr又はAla又はそのいずれかの保存的変異体である。
【0024】
さらなるベシキュリン変異体には、例えば
【化3】

が含まれ、ここでR1はAla、Asn、又はLeuであり;R2はLeu又はIleであり;R3はThr又はGlnであり;R4はThr、Ala、Lys又はValであり;R5はPro又はSerであり;R6はAla、Val又はProであり;R7はLys又はGluであり;R8はSer又はAlaであり;R9はGlu又はAlaであり;R10は不在であるか又はAla、Glu又はAspであり;R11がTyr、Ala又はValであり;R12はArg、Gly又はAlaであり;R13はPro、Thr、Ser、又はLeuであり;R14はSer、Gly、Ala又はGluであり;R15はThr又はAlaであり;R16は、Val又はIleであり;R17はGly、Ser、Glu又はAlaであり;R18はAsp又はGluであり;R19はSer又はValであり;R20はArg、Leu又はSerであり;R21はPro又はLyrであり;R22は、Ala、Ser、Gly、Val又はThrであり;R23はSer、Gly又はValであり;R24はArg、Pro又はGlyであり;R25はAla、Arg、Val、Ile、Leu、Asn、Ser又はGlyであり;R26はSer、Asn又はArgであり;R27は不在であるか又はArg、Ser、Asnであり;R28は不在であるかValであり;R29は不在であるか又はSerである。一部の実施形態においては、R1−R29は、上述のアミノ酸について保存的アミノ酸変異体を内含する。かくして、R1はAla、Asn、Leu又はそのいずれかの保存的変異体であり;R2はLeu、Ile、又はそのいずれかの保存的変異体であり;R3はThr、Gln又はそのいずれかの保存的変異体であり;R4はThr、Ala、Lys、Val又はそのいずれかの保存的変異体であり;R5はPro、Ser、又はそのいずれかの保存的変異体であり;R6はAla、Val、Pro又はそのいずれかの保存的変異体であり;R7はLys、Glu又はそのいずれかの保存的変異体であり;R8は、Ser、Ala又はそのいずれかの保存的変異体であり;R9はGlu、Ala又はそのいずれかの保存的変異体であり;R10は不在であるか又はAla、Glu、Asp又はその保存的変異体であり;R11はTyr、Ala、Val又はそのいずれかの保存的変異体であり;R12はArg、Gly、Ala又はその保存的変異体であり;R13はPro、Thr、Ser、Leu又はその保存的変異体であり;R14はSer、Gly、Ala、Glu又はその保存的変異体であり;R15はThr、Tyr、Ala又はその保存的変異体であり;R16はVal、Ile又はその保存的変異体であり;R17はGly、Ser、Glu、Ala又はその保存的変異体であり;R18はAsp、Glu又はそのいずれかの保存的変異体であり;R19はSer、Val又はそのいずれかの保存的変異体であり;R20はArg、Leu、Ser又はその保存的変異体であり;R21はPro、Lys又はそのいずれかの保存的変異体であり;R22は、Ala、Ser、Gly、Val、Thr又はその保存的変異体であり;R23はSer、Gly、Val又はその保存的変異体であり;R24はArg、Pro、Gly又はその保存的変異体であり;R25はAla、Arg、Val、Ile、Leu、Asn、Ser、Gly又はその保存的変異体であり;R26はSer、Asn、Arg又はその保存的変異体であり;R27は不在であるか又はArg、Ser、Asn又はその保存的変異体であり;R28は不在であるか又はValであるか又はその保存的変異体であり;R29は不在であるか又はSerであるか又はその保存的変異体である。
【0025】
1つの実施形態においては、ベシキュリンは、少なくとも1つの鎖間ジスルフィド結合によって接合されているA及びB鎖を含んでいる。例えばベシキュリンは、Cys1、Cys2、Cys3、Cys4、Cys5及びCys6残基のうちのいずれか1つの間に形成されたジスルフィド結合を含み得る。
【0026】
もう1つの実施形態においては、ベシキュリンは2つの鎖間ジスルフィド結合によって接合されているA及びB鎖を含んでいる。例えば、1実施形態においては、ベシキュリンは残基Cys1とCys4及びCys2とCys6の間に形成されたジスルフィド結合を内含している。
【0027】
もう1つの実施形態においては、ベシキュリンは残基Cys3とCys5の間の鎖A内の鎖間ジスルフィド結合を含む。
【0028】
もう1つの実施形態においては、ベシキュリンは単数又は複数の鎖間ジスルフィド結合及びA鎖鎖間ジスルフィド結合により接合されたA及びB鎖を含んでいる。例えば、1実施形態においては、ベシキュリンは、残基Cys1とCys4、及びCys2とCys6、及びCys3とCys5の間に形成されたジスルフィド結合を含んでいる。
【0029】
同様に提供されているのは、任意の種(例えばヒト、ラット、マウスなど)由来のベシキュリンB鎖及び
【化4】

で表される配列をもつベシキュリンA鎖を有するベシキュリン変異体、誘導体又は活性断片である。
【0030】
活性ベシキュリン断片には、1〜6個のC末端アミノ酸残渣欠失(又は活性断片をコードするポリヌクレオチドの場合における対応するヌクレオチド欠失)を有するA鎖を伴うものが含まれる。活性ベシキュリン断片内に含まれるヒトA鎖断片は、例えば、以下のポリペプチド(及び対応するポリヌクレオチド)を含む;
【化5】

その他の種由来の対応するA鎖断片及びこれらの断片を取込んだその他の種由来のベシキュリンも同様に該発明により提供されている。
【0031】
活性ベシキュリン断片には、1〜4個のC末端アミノ酸残渣欠失(又は活性断片をコードするポリヌクレオチドの場合における対応するヌクレオチド欠失)を有するB鎖を伴うものが含まれる。活性ベシキュリン断片内に含まれるヒトB鎖断片は、例えば、以下のポリペプチド(及び対応するポリヌクレオチド)を含む;
【化6】

その他の種からの対応するB鎖断片及びこれらの断片を取込んだその他の種からのベシキュリンも同様に該発明により提供されている。
【0032】
活性ベシキュリン断片は同様に、1〜6個のC末端アミノ酸残基欠失を伴うA鎖及び1〜4個のC末端アミノ酸残基欠失(及び対応するポリヌクレオチド)を伴うB鎖を有するものをも含む。これらには、A鎖断片及びB鎖断片を含む活性ヒトベシキュリン断片ならびにA鎖断片及びB鎖断片を含むその他のベシキュリン種の活性断片が含まれる。これらには又、もう1つの種からのB鎖断片と組合わされた1つの種からのA鎖断片を有するベシキュリン断片も含まれる。
【0033】
活性ベシキュリン断片は同様に、1〜6個のC末端アミノ酸残基欠失を伴うA鎖及び全長B鎖(及び対応するポリヌクレオチド)を有するものをも含む。これらには、A鎖断片及び全長B鎖を伴う活性ヒトベシキュリン断片ならびにその他のベシキュリン種からの類似の分子が含まれる。これらには又、もう1つの種からの全長B鎖と組合わせた1つの種からのA鎖断片を有するベシキュリン断片も含まれる。
【0034】
活性ベシキュリン断片は同様に、全長A鎖及び1〜4個のC末端アミノ酸残基欠失を伴うB鎖(及び対応するポリヌクレオチド)を有するものをも含む。これらには、全長A鎖及びB鎖断片を伴う活性ヒトベシキュリン断片ならびにその他のベシキュリン種からの類似の分子が含まれる。これらには同様に、もう1つの種からのB鎖断片と組合わされた1つの種からの全長A鎖を有するベシキュリン断片も含まれる。
【0035】
その他の実施形態は、例えばヒトベシキュリンなどのベシキュリンと少なくとも約60%の同一性をもつアミノ酸配列を有するベシキュリン変異体を含んでいる。その他の実施形態においては、ベシキュリン変異体は、例えばヒトベシキュリンなどのベシキュリンと少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約98.5%、又は少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0036】
1実施形態においては、ベシキュリンポリペプチド又はその変異体又は誘導体又は活性断片は、B鎖の33位にセリンを有する。その他の実施形態では、該ベシキュリンポリペプチド又はその変異体又は誘導体又は活性断片は、B鎖の33位にアルギニン以外のアミノ酸を有する。もう1つの実施形態においては、該ベシキュリンポリペプチド又はその変異体又は誘導体又は活性断片はB鎖の36位にセリンを有する。その他の実施形態においては、該ベシキュリンポリペプチド又はその変異体又は誘導体又は活性断片はB鎖の36位にリジン以外のアミノ酸を有する。その他の実施形態においては、該ベシキュリンポリペプチド又はその変異体又は誘導体又は活性断片はB鎖の33位及び36位にセリン残基を有する。その他の実施形態においては、該ベシキュリンポリペプチド又はその変異体又は誘導体又は活性断片はB鎖の33位にアルギニン以外のアミノ酸を有し、さらにB鎖の36位にリジン以外のアミノ酸を有する(位置付番は、ヒトベシキュリンのものに対応している)。
【0037】
もう1つの態様においては、該発明は、対象の体内で血糖値を変調させる方法に関する。該方法には、必要としている対象に対し、ベシキュリン又はベシキュリン変異体、誘導体又は活性断片又はそれらのいずれかの塩のうちの単数又は複数のものを有効量だけ投与することが含まれている。
【0038】
該発明は、例えば耐糖能障害;空腹時血糖障害;前糖尿病;1型及び2型糖尿病とその合併症を含めた糖尿病及びその合併症;インスリン耐性;X症候群;肥満及びその他の体重関連障害;非アルコール性及び/又はアルコール性脂肪肝疾患を含む脂肪肝疾患;グルコース代謝疾患及び障害;インスリン治療されている又は治療可能である疾病、障害又は身体条件;血糖降下薬で治療されている又は治療可能である疾病、障害又は身体条件;少なくとも一部には高血糖症を特徴とする疾病、障害又は身体条件;少なくとも一部には低インスリン血症を特徴とする疾病、障害又は身体条件及び/又は少なくとも一部には高インスリン血症を特徴とする疾病、障害及び身体条件を含むさまざまな疾病、障害及び身体条件を全て又は一部治療及び/又は予防するための方法を含んでいる。
【0039】
該発明は、例えば、高血糖症、インスリン耐性、耐糖能障害及び/又は空腹時血糖障害を全体的又は部分的特徴とするあらゆる疾病、障害及び/又は身体条件を有する又はそれを有する疑いのある又はその素因を有する又はそのリスクがある対象を治療する方法において、ベシキュリン、ベシキュリンA鎖ベシキュリンB鎖、ベシキュリン変異体、ベシキュリン誘導体及び/又はベシキュリン断片又はその塩を含む組成物を投与する段階を含む方法を内含している。かかる疾病、障害及び/又は身体条件には本書で記述されているか又は参照指示されているものが含まれるが、これらに制限されるわけではない。かかる化合物は、(1)血清グルコースを低下させ、(2)血糖を低下させ、(3)尿中グルコースを低下させ、(4)フルコサミンを低下させ、(5)グリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)レベルを低下させ、(6)食後血糖を低下させ、(7)耐糖能障害を改善し、(8)空腹時血糖障害を改善し、かつ/又は(9)重症の低血糖事象を含めた低血糖事象の速度及び/又は重症度を低減させるために有効である量で投与可能である。かかる組成物には例えば、注入、経皮パッチ、吸入及びその他の非経口送達方法による送達のための処方物が含まれる。
【0040】
該発明は、例えば、高血糖症、インスリン耐性、耐糖能障害及び/又は空腹時血糖障害を全体的又は部分的特徴とする疾病、障害及び/又は身体条件を有する又はそれを有する疑いのある又はその素因を有する対象において血糖症を調節するための方法において、ベシキュリン、ベシキュリンA鎖ベシキュリンB鎖、ベシキュリン変異体、ベシキュリン誘導体及び/又はベシキュリン断片又はその塩を含む組成物を投与する段階を含む方法を内含している。かかる疾病、障害及び/又は身体条件には本書で記述されているか又は参照指示されているものが含まれるが、これらに制限されるわけではない。かかる化合物は、(1)血清グルコースを低下させ、(2)血糖を低下させ、(3)尿中グルコースを低下させ、(4)フルコサミンを低下させ、(5)グリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)レベルを低下させ、(6)食後血糖を低下させ、(7)耐糖能障害を改善し、(8)空腹時血糖障害を改善し、かつ/又は(9)重症の低血糖事象を含めた低血糖事象の速度及び/又は重症度を低減させるために有効である量で投与可能である。かかる組成物には例えば、注入、経皮パッチ、吸入及びその他の非経口送達方法による送達のための処方物が含まれる。
【0041】
もう1つの態様においては、該発明は、対象の体内の血糖値を変調させるための薬剤を含めた1つの薬剤の調製におけるベシキュリン、又はベシキュリン変異体、誘導体又は活性断片又はそれらのうちのいずれかの塩のうちの単数又は複数のものの使用に関する。
【0042】
もう1つの態様においては、該発明は、対象の体内のグリコーゲンの中へのグルコースの取込みを変調させる方法に関する。該発明は、それを必要とする対象に対してベシキュリン又はベシキュリン変異体、その誘導体又は活性断片のうちの単数又は複数のものを有効量投与する段階を含んで成る。
【0043】
もう1つの態様においては、該発明は、該発明の方法で使用するのに有効な投薬量単位を(例えば賦形剤、希釈剤といった及び/又は投薬量単位を画定する容器内に入った形の)その他の薬学的に受容可能な材料を伴って又は伴わず製造する上での、又は本書で記述された又は提供されたいずれかの目的のための、有効量のベシキュリン又はベシキュリン変異体、その誘導体又は活性断片、又はそのいずれかの塩のうちの単数又は複数のものの使用に向けられている。
【0044】
該発明は同様に、例えば本書で開示されているような組換え型発現及びタンパク質合成技術とそれに続く単離及び/又は精製によって、又は当該技術分野において既知の方法によって産生されられたベシキュリン、ベシキュリン変異体、誘導体又は活性断片をも内含している。ベシキュリン及びベシキュリン変異体、誘導体及び活性断片をコードするポリヌクレオチドも同様に提供されている。
【0045】
さまざまな実施形態において、ベシキュリンA鎖及びベシキュリンB鎖ポリヌクレオチド、及びベシキュリン変異体及び誘導体、ベシキュリンA鎖変異体及び誘導体及びベシキュリンB鎖変異体及び誘導体は、配列番号1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又は本書で列挙されている任意のベシキュリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも約60%又は少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は少なくとも約99.5%の同一性を有する。
【0046】
同様に提供されているのは、ベシキュリンA鎖、ベシキュリンB鎖又はベシキュリン、ベシキュリンA鎖又はベシキュリンB鎖の変異体又は誘導体、又はその活性断片をコードする及び発現する能力をもつポリヌクレオチドを含む、クローニングベクター及び発現ベクターを含めたベクターである。同様に提供されているのは、前記ベクターのうちの単数又は複数のものを含む宿主細胞ならびにベシキュリン、ベシキュリンA鎖、ベシキュリンB鎖又はベシキュリン、ベシキュリンA鎖、及び/又はベシキュリンB鎖変異体又は誘導体又はその活性断片をコードする異種ポリヌクレオチドを含む組換え型宿主細胞である。
【0047】
該発明はさらに、ベシキュリン、ベシキュリンA鎖、ベシキュリンB鎖又はベシキュリン、ベシキュリンA鎖又はベシキュリンB鎖の変異体又は誘導体、又はその活性断片、又は上述のものの塩又は誘導体を含む医薬組成物を内含している。
【0048】
該発明は、ベシキュリン、又はその変異体、誘導体又は断片を免疫原として動物に投与する段階及び前記動物から抗体を収獲する段階を含む、ベシキュリンに対する反応性をもつ抗体を生成するための方法を内含している。
【0049】
該発明は、ベシキュリン、ベシキュリンA鎖及び/又はベシキュリンB鎖を結合させる抗体及びベシキュリン変異体、ベシキュリンA鎖変異体、及び/又はベシキュリンB鎖変異体又はベシキュリン、ベシキュリンA鎖又はベシキュリンB鎖の誘導体又は断片を結合させる抗体、モノクローナル抗体ベースのサンドイッチ検定及びRIAを含めたかかる抗体を利用する検定、及びかかる抗体を収納する検定キットを内含する。
【0050】
該発明の方法において使用するためのベシキュリン、ベシキュリンA及びB鎖及びその変異体及び誘導体及び断片は、例えばヒトといった対象に対する投与のために適した要領で処方可能である。投与は、好ましくは、皮下(s.c.)、皮内(i.d.)、静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)又は経皮といったような経路を介した非経口投与であるが、経口、鼻腔内、肺内などを含めたその他の送達形態も想定される。
【0051】
この簡単な説明中の情報に限定されず又はそれによって制限されることのない発明のこれらの及びその他の特長、目的及び利点は、図面及びクレームを含めた本書に提供されているさらなる記述から明らかになるものであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
発明の詳細な説明
本発明は、1つの態様においてベシキュリン、ベシキュリンA鎖、ベシキュリンB鎖、ベシキュリン変異体、ベシキュリンA鎖及びベシキュリンB鎖の変異体及びベシキュリン、ベシキュリンA鎖及びベシキュリンB鎖の誘導体及びその塩のうちの単数又は複数のものに関する。
【0053】
マウス、ヒト及びラットベシキュリンのためのアミノ酸配列には以下のものが含まれる:
【化7】

【0054】
ベシキュリンは以下のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドによってコードされ得る。
【化8】

【0055】
その他の実施形態には、以下のものが含まれる:
【化9】

【化10】

【0056】
以上で広く定義されているように、ベシキュリンは、βTC6−F7β−細胞顆粒から精製されてきた。
【0057】
同様に提供されているのは、例えば任意の種(例えばヒト、ラット、マウスなど)由来のベシキュリンB鎖及び
【化11】

で表される配列をもつベシキュリンA鎖を有するベシキュリン変異体、誘導体及び活性断片を含めたベシキュリン変異体、誘導体及び活性断片である。
【0058】
活性ベシキュリン断片には、1〜6個のC末端アミノ酸残渣欠失(又は活性断片をコードするポリヌクレオチドの場合における対応するヌクレオチド欠失)を有するA鎖を伴うものが含まれる。活性ベシキュリン断片内に含まれるヒトA鎖断片は、例えば、以下のポリペプチド(及び対応するポリヌクレオチド)を含む;
【化12】

その他の種由来の対応するA鎖断片及びこれらの断片を取込んだその他の種由来のベシキュリンも同様に該発明により提供されている。
【0059】
活性ベシキュリン断片には、1〜4個のC末端アミノ酸残渣欠失(又は活性断片をコードするポリヌクレオチドの場合における対応するヌクレオチド欠失)を有するB鎖を伴うものが含まれる。活性ベシキュリン断片内に含まれるヒトB鎖断片は、例えば、以下のポリペプチド(及び対応するポリヌクレオチド)を含む;
【化13】

その他の種からの対応するB鎖断片及びこれらの断片を取込んだその他の種からのベシキュリンも同様に該発明により提供されている。
【0060】
活性ベシキュリン断片は同様に、1〜6個のC末端アミノ酸残基欠失を伴うA鎖及び1〜4個のC末端アミノ酸残基欠失(及び対応するポリヌクレオチド)を伴うB鎖を有するものをも含む。これらには、A鎖断片及びB鎖断片を含む活性ヒトベシキュリン断片ならびにA鎖断片及びB鎖断片を含むその他のベシキュリン種の活性断片が含まれる。これらには又、もう1つの種からのB鎖断片と組合わされた1つの種からのA鎖断片を有するベシキュリン断片も含まれる。
【0061】
活性ベシキュリン断片は同様に、1〜6個のC末端アミノ酸残基欠失を伴うA鎖及び全長B鎖(及び対応するポリヌクレオチド)を有するものをも含む。これらには、A鎖断片及び全長B鎖を伴う活性ヒトベシキュリン断片ならびにその他のベシキュリン種からの類似の分子が含まれる。これらには又、もう1つの種からの全長B鎖と組合わせた1つの種からのA鎖断片を有するベシキュリン断片も含まれる。
【0062】
活性ベシキュリン断片は同様に、全長A鎖及び1〜4個のC末端アミノ酸残基欠失を伴うB鎖(及び対応するポリヌクレオチド)を有するものをも含む。これらには、全長A鎖及びB鎖断片を伴う活性ヒトベシキュリン断片ならびにその他のベシキュリン種からの類似の分子が含まれる。これらには同様に、もう1つの種からのB鎖断片と組合わされた1つの種からの全長A鎖を有するベシキュリン断片も含まれる。
【0063】
本発明の実践には、相反する指示のないかぎり、当業者の技術範囲内に入る分子生物学(組換え型技術)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来の技術が利用されることになる。かかる技術については、分子クローニング;実験室マニュアル、第2版(Sambrook et al., 1989年); オリゴヌクレオチド合成(M. J. Gait, ed., 1984年); 動物細胞培養(R.I. Freshney, ed., 1987年); 実験免疫学便覧(D.M. Weir & C. C. Blackwell, eds.); 哺乳動物細胞用遺伝子導入ベクター(J.M. Miller & M. P. Calos, eds., 1987年); 分子生物学における現行プロトコル(F. M. Ausubel et al., eds., 1987年); PCR: ポリメラーゼ連鎖反応(Mullis et al., eds., 1994); 免疫学における現行プロトコル(J. E. Coligan et al., eds., 1991); 免疫検定便覧(David Wild, ed., Stockton Press NY, 1994); 抗体;実験室マニュアル(Harlow et al., eds., 1987年); 及び免疫学的分析方法(R. Masseyeff, W. H. Albert, 及びN. A. Staines, eds., Weinheim: VCH Verlags gesellschaft mbH, 1993年)、といったような文献中で充分に説明されている。
【0064】
「抗体」(複数形態でも互換的に用いられる)というのは、ポリヌクレオチド及びポリペプチドを含む標的に対して、免疫グロブリン分子の可変領域内に位置設定された少なくとも1つの抗原認識部位を通して結合する能力をもつ免疫グロブリン分子である。本書で使用されている通り、該用語は、無傷の抗体のみならず、抗体の断片(例えばFab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、1本鎖(ScFv)、その突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体及び所望の特異性の抗体認識部位を含む免疫グロブリン分子のその他のあらゆる修飾済み立体配置をも包含する。好ましい抗体は、IGF−IIと交差反応しないか、又は望ましくないことに交差反応する。
【0065】
「保存的アミノ酸置換」というのは、アミノ酸残基が化学的に類似の又は誘導体化された側鎖を有するもう1つの残基と交換されているものである。例えば類似の側鎖をもつアミノ酸残基のファミリーが当該技術分野において定義されてきている。これらのファミリーには例えば、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ有枝側鎖(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を伴うアミノ酸が含まれる。本発明においては、D−アミノ酸、βアミノ酸及びγアミノ酸を含む(ただしこれらに制限されるわけではない)非天然発生アミノ酸と置換されたペプチドがそうであるように、アミノ酸類似体(例えばリン酸化アミノ酸)も考慮されている。
【0066】
本書で使用する「精製(された)」という用語は、絶対的純度を要求するものではない。むしろこれは、対象タンパク質又はその他の物質が、製造環境といったような細胞内又はその他の環境の内部でその天然の環境よりもさらに純粋であるような相対的用語として意図されている。実際には、該材料は標準的には、例えば、さまざまなその他の構成要素を除去するべくすでに分画に付されており、結果として得られた材料は、実質的にその所望の生物活性(単複)を保持していた。「実質的に精製された」という用語は、その少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約75%、そして最も好ましくは少なくとも約90%、少なくとも95%、少なくとも約98%又はそれ以上が天然に又は製造中に会合し得るその他の構成要素を含んでいないペプチドを意味する。
【0067】
同様に本発明の範囲内に入るのは、有効量のベシキュリン、ベシキュリンA鎖、ベシキュリンB鎖、ベシキュリン変異体、ベシキュリンA鎖及びベシキュリンB鎖の変異体及びベシキュリン、ベシキュリンA及びベシキュリンB鎖の誘導体及びその活性断片、及びそれらのいずれかの塩のうちの単数又は複数のもの及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物である。
【0068】
「薬学的に許容される担体」というのは、ベシキュリン、ベシキュリンA鎖、ベシキュリンB鎖、ベシキュリン変異体、ベシキュリンA鎖及びベシキュリンB鎖変異体及びベシキュリン、ベシキュリンA鎖及びベシキュリンB鎖の誘導体、及びそれらのいずれかの塩のうちの単数又は複数のものと共に対象に投与することのできる担体(アジュバント又はビヒクル)を意味する。
【0069】
上述の医薬組成物の中で使用可能であり得る薬学的に許容される担体には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、自己乳化性薬物送達系(SEDDS)例えばd−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシナート、薬学的剤形内で使用される界面活性剤例えばツイーン又はその他の類似の重合体送達マトリックス、血清タンパク質例えばヒト血清アルブミン、バッファ物質例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸1水素2ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、ポリアクリラート、ろう、ポリエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロック重合体、ポリエチレングリコール及び羊毛脂肪が含まれるが、これらに制限されるわけではない。シクロデキストリン例えばα、β及びγ−シクロデキストリン又は化学的に修飾された誘導体例えば2−及び3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含めたヒドロキシアルキルシクロデキストリン又はその他の可溶化された誘導体も同様に、本書で記述されている処方の化合物の送達を増強させるために有利に使用可能である。油溶液又は懸濁液には同様に、エマルジョン及び/又は懸濁液といったような薬学的に許容される剤形の処方において一般的に用いられる長鎖アルコール希釈剤又は分散剤又はカルボキシルメチルセルロース又は類似の分散剤も含有され得る。
【0070】
「有効量」というのは、臨床結果を含めた有益な又は所望の結果をもたらすのに充分な量である。有効量は、さまざまな投与経路により単数又は複数回の投与にて投与可能である。
【0071】
「生物学的試料」は、個体から得られるさまざまな試料タイプを包含し、診断又は監視検定において使用可能である。該定義には、生物起源の血液及びその他の液体試料、生検供試体といったような固体組織試料又は組織培養又はそこから誘導された細胞及びその後代が包含される。該定義には同様に、試薬での処理、可溶化又はタンパク質又はポリヌクレオチドといった一部の構成要素についての富化などによる、調達後の何らかの形での操作を受けた試料も含まれる。「生物学的試料」という用語は、臨床試料を包含し、同様に培養中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生体液及び組織試料をも内含する。
【0072】
本書で使用される「治療」というのは、臨床的結果を含めた有益な又は所望の結果を得るためのアプローチであるが、予防的及び/又は治療的処置も包含する。
【0073】
「ポリペプチド」及び「ペプチド」などという用語は、任意の長さのアミノ酸残基のあらゆる重合体を意味するべく互換的に使用される。重合体は、線形又は非線形(例えば有枝)であり得、これは、修飾されたアミノ酸又はアミノ酸類似体を含むことができ、かつアミノ酸以外の化学部分により中断され得る。該用語は、天然に又は例えばスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又はその他のあらゆる操作又は修飾、例えば標識又は生物活性構成要素との共役などの介入により修飾されたアミノ酸重合体をも包含している。
【0074】
ポリペプチドの「活性断片」というのは、生物活性に必要とされる1つの機能を果たしポリペプチドの3次元構造を提供するポリペプチドのサブ配列のことである。この用語は特に変調グルコースに関して本書に記述された方法のうちのいずれか1つ又は複数のものを実施する能力をもつポリペプチド、2量体又はその他の多量体といったようなポリペプチドの集合体、融合ポリペプチド、ポリペプチド断片、ポリペプチド変異体又はその誘導体を意味し得る。
【0075】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、本書で互換的に使用されており、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかの任意の長さのヌクレオチドの重合体形状を意味する。これらの用語には、1本鎖、2本鎖又は3本鎖DNA、ゲノミックDNA、cDNA、RNA、DNA−RNAハイブリッド、又はプリン及びピリミジン塩基又はその他の天然の、化学的に、生化学的に修飾された、非天然の又は誘導体化されたヌクレオチド塩基を含む重合体をも内含する。本書で記述されている2本鎖ポリヌクレオチド配列が本書で記述されている修飾も同様に含むことがわかっている。ポリヌクレオチドの主鎖は、糖及びリン酸塩基(RNA又はDNA中に標準的に見い出すことができるようなもの)又は修飾又は置換された糖又はリン酸塩基を含むことができる。代替的には、ポリヌクレオチドの主鎖は、ホスホルアミダートといったような合成サブユニットの重合体を含むことができ、かくして、オリゴデオキシヌクレオシドホスホルアミダート(P−NH2)又は混合ホスホルアミダート−ホスホジエステルオリゴマであり得る。ホスホロチオアート連結をホスホジエステル連結の代りに使用することができる。さらに、相補的ストランドを合成し、適切な条件下でストランドをアニールすることによってか又は適切なプライマと共にDNAポリメラーゼを用いて新たに相補的ストランドを合成することによって、化学合成の1本鎖ポリヌクレオチド産物から2本鎖ポリヌクレオチドを得ることができる。以下に記すのは、ポリヌクレオチドの制限的意味のない例である:遺伝子又は遺伝子断片、エクソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組換え型ポリヌクレオチド、有枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ及びプライマ。
【0076】
本書で提供されているポリヌクレオチド配列の「断片」というのは、例えば、長さが少なくとも約15ヌクレオチドの配列である問題の標的に対する特異的ハイブリダイゼーションの能力をもつ隣接するヌクレオチドの1サブ配列である。該発明のポリヌクレオチド断片は、該発明のポリヌクレオチドの隣接するヌクレオチドのうち、約15個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約20個、より好ましくは少なくとも約30個、より好ましくは少なくとも約40個、より好ましくは少なくとも約50個、少なくとも約60個、少なくとも約70個、少なくとも約80個、少なくとも約90個、少なくとも約100個、少なくとも約110個、少なくとも約120個そして最も好ましくは少なくとも約130個のヌクレオチドを含む。1ポリヌクレオチド配列の1断片を、アンチセンス、遺伝子サイレンシング、3重らせん又はリボザイム技術において、又はマイクロアレイ内に内含されたプローブ、プライマとして使用することができ、そうでなければ、該発明のポリヌクレオチドベースの選択方法において使用することができる。
【0077】
本書で使用されている「変異体」という用語は、単数又は複数のヌクレオチド又はアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されている、特異的に同定された配列とは異なるポリヌクレオチド又はポリペプチドを意味する。変異体は、天然発生の対立遺伝子変異体又は非天然発生変異体であり得る。変異体は、同じ種に由来してもその他の種に由来していてもよく、相同体、パラログ及びオルソログを包含し得る。一部の実施形態においては、該発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドの変異体は、該発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドのものと同じ又は類似の生物活性を有する。ポリヌクレオチド及びポリペプチドに関する「変異体」という用語は、本書で定義づけされているような全ての形態のポリヌクレオチド及びポリペプチドを包含する。かくして、「ベシキュリン変異体(単複)」は、例えば、単数又は複数の生物活性が全体的に又は部分的に保持されている、保存的アミノ酸置換を含めたアミノ酸の欠失又は置換を有するベシキュリンを内含する。
【0078】
変異体ポリヌクレオチド配列は好ましくは、特定されたポリヌクレオチドに対して少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%、そして最も好ましくは少なくとも約99%の同一性を示す。本発明のポリヌクレオチドの全長のうちの少なくとも約20のヌクレオチド位置、好ましくは少なくとも約50のヌクレオチド位置、より好ましくは少なくとも約100のヌクレオチド位置又はそれ以上の位置の比較ウインドウ全体にわたって、同一性が発見される。
【0079】
配列データベース内で変異体を同定するために有用であるプログラムのファミリー例として、(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)から又は全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)、国立医学図書館、38A棟、第8N805室、Bethesda、メリーランド州、20894USAから公開されているBLASTN、BLASTP、BLASTX、tBLASTX、tBLASTN及びtBLASTXを含むBLASTプログラムパッケージソフト(バージョン2,2,5[2002年11月])がある。NCBIサーバーは同様に、一定数の公開されている配列データベースをスクリーニングするためにプログラムを使用するべく便宜を提供している。BLASTNは、1つのタンパク質配列データベースに対して1つのアミノ酸クエリー配列を比較する。BLASTXは、1つのタンパク質配列データベースに対して全ての読取り枠内で翻訳された1つのヌクレオチドクエリー配列を比較する。tBLASTNは、全ての読取り枠内で動的に翻訳された1つのヌクレオチド配列データベースに対して1つのタンパク質クエリー配列を比較する。tBLASTXは、ヌクレオチド配列データベースの6枠翻訳に対して1つのヌクレオチドクエリー配列の6枠翻訳を比較する。BLASTプログラムは、デフォルトパラメータで使用することができ、そうでなければ、スクリーンを絞り込むのに必要とされるようにパラメータを改変することができる。BLASTN、BLASTP及びBLASTXを含むアルゴリズムのBLASTファミリーの使用については、Altschul et al.,の刊行物Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (1997年)の中で記述されている。
【0080】
BLASTN、BLASTP、BLASTX、tBLASTN、tBLASTX又は類似のアルゴリズムにより生成されるクエリー配列による単数又は複数のデータベース配列に対する「ヒット」は、配列の類似の部分を整列させ同定する。ヒットは、類似性度及び配列重複長の順に配置される。データベース配列に対するヒットは一般に、クエリー配列の配列長の1フラクションのみにわたっての重複を表わす。
【0081】
ポリヌクレオチド配列の同一性は、以下の要領で決定され得る。すなわち、NCBI(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)から公開されているbl2seqの中の(BLASTプログラムパッケージソフト、バージョン2.2.5[2002年11月]からの)BLASTNを用いて(Tatiana A. Tatusova, Thomas L. Madden (1999年)、「Blast 2 配列−タンパク質とヌクレオチド配列を比較するための新しい手段」、FEMS Microbial Lett (74:247-250)、候補ポリヌクレオチド配列に対し対象ポリヌクレオチド配列を比較する。低複雑性部分のろ過をオフ切換えすべきであるという点を除いて、bl2seqのデフォルトパラメータを利用する。
【0082】
ポリヌクレオチド配列の同一性は、以下のUNIX(登録商標)コマンドラインパラメータを用いて検査可能である:
bl2seq-i nucleotideseql-j nucleotideseq 2-FF-pblast
【0083】
パラメータ−FFは、低複雑性区分のろ過をオフ切換えする。パラメータ−pは、配列対のための適切なアルゴリズムを選択する。B12seqプログラムは、ライン「Identities=」内の同一のヌクレオチドの数及び百分率の両方として配列同一性を報告する。
【0084】
ポリヌクレオチド配列の同一性を同様に、包括的配列整列プログラムを用いて、候補と対象ポリヌクレオチド配列の間の重複の長さ全体にわたり計算することができる(例えばNeedleman, S. B. 及びWunsch, C. D. (1970年) J. Mol. Biol. 48, 443-453)。http://www.hgmp.mrc.ac.uk/Software/EMBOSSから得ることのできるEMBOSSパッケージ(Rice, P. Longden, I. 及びBleasby, A. EMBOSS; 欧州分子生物学オープンソフトウェアパッケージソフト、遺伝学における潮流、第16巻、第6号、p276〜277)内のニードルプログラム中に、Needleman - Wunsch包括的整列アルゴリズムの完全な実装が見い出される。欧州バイオインフォマティクス研究所サーバーも又、http:/www.ebi.ac.uk/emboss/align/でオンラインで2つの配列間のEMBOSS−ニードル包括的整列を実施するための便宜を提供している。
【0085】
代替的には、末端空隙に不利益をもたらすことなく2つの配列の最適な包括的整列を計算するGAPプログラムを使用することができる。GAPについては、Huang, X. (1994年)包括的配列整列について(生物科学におけるコンピュータアプリケーションズ10号、p227−235)という論文の中で記述されている。
【0086】
上述の通りのBLASTNの使用は、本発明に従ったポリヌクレオチド変異体のための配列同一性を決定する上での使用にとって好ましい。
【0087】
ポリヌクレオチド変異体は同様に、偶然に起こっていることが合理的に期待できない、特異的に同定された配列の機能的等価性を保つ確率が高いこれらの配列のうちの単数又は複数のものに対する類似性を示す変異体をも包括する。ポリヌクレオチドとの関係におけるこのような配列類似性は、NCBI(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)からのBLASTプログラムパッケージソフト(バージョン2.2.5[2002年11月])からの公開されているbl2seqプログラムを用いて決定可能である。
【0088】
ポリヌクレオチド配列の類似性は、
bl2seq-i nucleotideseq1-j nucleotideseq 2-FF-p tblastx
というUNIX(登録商標)コマンドラインパラメータを用いて検査できる。
【0089】
パラメータ−FFは、低複雑性区分のろ過をオフ切換えする。パラメータ−Pは、配列対のための適切なアルゴリズムを選択する。BLASTN、BLASTP、BLASTX、tBLASTN及びtBLASTXアルゴリズムは同様に、整列のための「期待」値をも生成する。これらのプログラムは、配列間の類似性領域を見い出し、無作為配列を含む固定された基準サイズのデータベース内に偶然このような整合を見受けることが期待できる予測回数である期待値(E値)を、かかる領域の各々について報告する。E値は、データベースに対するヒットが真の類似性を表わすか否かを決定するための有意性閾値として使用される。このデータベースのサイズは、bl2seqプログラムの中でデフォルトにより設定される。1よりもはるかに小さい小E値について、このE値はおおよそかかる無作為整合の確率である。例えば、ポリヌクレオチドヒットに割当てられた0.1というE値は、スクリーニング対象のデータベースのサイズの1つのデータベース内では単に偶然により類似のスコアをもつ配列の整列された部分全体にわたり0.1の整合が見られることを期待し得るということを意味するものと解釈される。整列され整合した部分全体にわたり0.01以下のE値を有する配列については、そのデータベース内に偶然に1つの整合を発見する確率は、BLASTN、BLASTP、BLASTX、tBLASTN又はtBLASTXアルゴリズムを用いて1%以下である。
【0090】
変異体ポリヌクレオチド配列は好ましくは、特定的に同定された配列のうちのいずれか1つと比較した場合、約1×10-5未満、より好ましくは約1×10-6未満、より好ましくは約1×10-9未満、より好ましくは約1×10-12未満、より好ましくは約1×10-15未満、より好ましくは約1×10-18未満及び最も好ましくは約1×10-21未満のE値を示す。
【0091】
代替的には、変異体ポリヌクレオチドは、ストリンジェント条件下で、特定されたポリヌクレオチド配列又はその補体に対してハイブリッド形成する。「ストリンジェント条件下でハイブリッド形成する」という用語及びその文法的等価物は、定義された温度及び塩濃度条件下で(サザンブロット又はノーザンブロットといったようなDNA又はRNAブロット上で固定化された標的ポリヌクレオチド分子といったような)標的ポリヌクレオチド分子に対しハイブリッド形成するポリヌクレオチド分子の能力を意味する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリッド形成する能力は、比較的低いストリンジェント条件下で最初ハイブリッド形成し次にストリンジェンシーを所望のストリンジェンシーまで増大させることによって決定可能である。
【0092】
長さ約100塩基を上回るポリヌクレオチド分子に関しては、標準的ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、未変性2重鎖の融解温度(Tm)よりも25〜30℃以下(例えば10℃)だけ低いものである(一般的に、Sambrook et al., Eds, 1987年, 分子クローニング、実験室マニュアル、第2版、Cold Spring Harbor Press; Ausubel et al., 1987年, 分子生物学における現行プロトコル、Greene Publishing, を参照のこと)。約100塩基を超えるポリヌクレオチド分子についてのTmは、公式Tm=81.5+0.41%(G+C_log(Na+)により計算することができる、(Sambrook et al., Eds, 1987年, 分子クローニング、実験室マニュアル、第2版、Cold Spring Harbor Press; Bolton and McCarthy, 1962年, PNAS 84:1390))。長さ100塩基を超えるポリヌクレオチドのための標準的なストリンジェント条件は、6×SSC、0.2%SDSの溶液中での予備洗浄;一晩65℃、6×SSC、0.2%SDSでのハイブリダイゼーションそしてそれに続く65℃で1×SSC、0.1%SDS中の各30分の2回の洗浄及び65℃で0.2×SSC、0.2%SDS中の各30分の2回の洗浄といったようなハイブリダイゼーション条件となる。
【0093】
100塩基未満の長さを有するポリヌクレオチド分子に関しては、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件の例は、Tmよりも5〜10℃低い。平均して、100bp未満の長さのポリヌクレオチド分子のTmは、約(500/オリゴヌクレオチド長)℃だけ低くなる。
【0094】
ペプチド核酸(PNA)として知られているDNA模倣体に関しては、(Nielsen et al., Science 254 (5037): 1497-500 (1991年))、Tm値はDNA−DNA又はDNA−RNAハイブリッドについてのものよりも高く、Giesen et al., Nucleic Acids Res. 26 (21): 5004-6 (1998年)内で記述されている公式を用いて計算可能である。100塩基未満の長さをもつDNA−PNAハイブリッドのためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、Tmよりも5〜10℃低いものである。
【0095】
変異体ポリヌクレオチドには同様に、該発明の配列とは異なるものの遺伝子コードの縮重の結果として本発明のポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドと類似の活性をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも包含されている。ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させない配列改変が、「サイレント変異」である。ATG(メチオニン)及びTGG(トリプトファン)を除いて、例えば特に宿主体内でのコドン発現を最適化するべく、当該技術分野で認められた技術によって同じアミノ酸のためのその他のコドンを変化させることが可能である。
【0096】
生物活性を著しく改変することなくコードされたポリペプチド配列内の1つの又は複数のアミノ酸の保存的置換を結果としてもたらすポリヌクレオチド配列の改変も同様に該発明の中に含まれる。当業者であれば、表現型上サイレントなアミノ酸置換を作るための方法を承知していることであろう(例えばBowie et al., Science 247: 1306 (1990年)を参照のこと)
【0097】
コードされたポリペプチド配列内のサイレント変異及び保存的変異に起因する変異体ポリヌクレオチドは、前述の通りtblastxアルゴリズムを介してNCBI(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)からBLASTプログラムパッケージソフト(バージョン2.2.5[2002年11月])からの公開bl2seqプログラムを用いて決定可能である。
【0098】
ポリペプチド配列の同一性も同様に、以下の要領で決定され得る。すなわち、NCBI(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)から公開されているbl2seqの中の(BLASTプログラムパッケージソフト、バージョン2.2.5[2002年11月]からの)BLASTPを用いて、候補ポリペプチド配列に対し対象ポリペプチド配列を比較する。低複雑性領域のろ過をオフ切換えすべきであるという点を除いて、bl2seqのデフォルトパラメータを利用する。
【0099】
ポリペプチド配列の同一性を同様に、包括的配列整列プログラムを用いて、候補と対象ポリヌクレオチド配列の間の重複の長さ全体にわたり計算することができる。上述のとおりのEMBOSS−ニードル(http:/www.ebi.ac.uk/emboss/align/で入手可)及びGAP(Huang, X. (1994年)「包括的配列整列について」、生物科学におけるコンピュータアプリケーションズ10,227−235(1994年))も同様に、ポリペプチド配列の同一性を計算するために適した包括的配列整列プログラムである。
【0100】
上述の通りのBLASTPの使用は、本発明に従ったポリペプチド変異体を決定する上での使用にとって好ましい。
【0101】
ポリペプチド変異体は同様に、偶然に起こっていることが合理的に期待できない、特異的に同定された配列の機能的等価性を保つ確率が高いこれらの配列のうちの単数又は複数のものに対する類似性を示す変異体をも包括する。ポリペプチドとの関係におけるこのような配列類似性は、NCBI(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)からのBLASTプログラムパッケージソフト(バージョン2.2.5[2002年11月])からの公開bl2seqプログラムを用いて決定可能である。ポリペプチド配列の類似性は、以下のUNIX(登録商標)コマンドラインパラメータを用いて検査できる:
bl2seq-I peptideseq1-j peptideseq2-FF-p blastp
【0102】
変異体ポリヌクレオチド配列は好ましくは、特定的に同定された配列のうちのいずれか1つと比較した場合、1×10-5未満、より好ましくは1×10-6未満、より好ましくは1×10-9未満、より好ましくは約1×10-12未満、より好ましくは1×10-15未満、より好ましくは1×10-18未満及び最も好ましくは1×10-21未満のE値を示す。
【0103】
パラメータ−FFは、低複雑性区分のろ過をオフ切換えする。パラメータ−Pは、配列対のための適切なアルゴリズムを選択する。このプログラムは、配列間の類似性領域を見い出し、無作為配列を含む固定された基準サイズのデータベース内に偶然このような整合を見受けることが期待できる予測回数である「E値」を、かかる領域の各々について報告する。1よりもはるかに小さい小E値について、このE値はおおよそかかる無作為整合の確率である。
【0104】
その生物活性を著しく改変することのない記述されたポリペプチド配列の単数又は複数のアミノ酸保存的置換も同様に該発明の中に内含されている。当業者であれば、表現型上サイレントなアミノ酸置換を作るための方法を承知していることであろう(例えばBowie et al., 1990年, Science 247, 1306を参照のこと)。
【0105】
「ベクター」というのは、挿入された核酸分子を宿主細胞内へ及び/又は宿主細胞間に移送する自己複製核酸分子である。この用語は、主として細胞内への核酸分子の挿入のために機能するベクター、主として核酸の複製のために機能する複製ベクター及びDNA又はRNAの転写及び/又は翻訳のために機能する発現ベクターを内含する。同様に含まれているのは、上述の機能のうちの2つ以上のものを提供するベクターである。該ベクターは、E. coliといったような少なくとも1つの付加的な宿主系の中で複製する能力を有し得る。
【0106】
「発現構成体」という用語は、宿主内部のポリヌクレオチド分子の転写を可能にし、任意には写しをポリペプチドへと翻訳する必要な要素を内含する遺伝的構成体を意味している。「発現ベクター」が、発現構成体の一例である。発現構成体は、標準的に5’から3’への方向で、以下のものを含む:
a) 該構成体が形質転換される宿主細胞の中で機能的なプロモータ;
b) 発現されるべきポリヌクレオチド、及び
c) 構成体が形質転換されることになる宿主細胞内で機能的なターミネータ。
【0107】
「コーディング領域」又は「読取り枠(オープンリーディングフレーム)」(ORF)という用語は、適切な調節配列の制御下で転写産物及び/又はポリペプチドを産生する能力をもつcDNA配列又はゲノミックDNA配列のセンスストランドを意味する。コーディング配列は、5’翻訳開始コドンと3’翻訳停止コドンの存在により同定される。遺伝的構成体内に挿入された場合、「コーディング配列」は、それがプロモータ及びターミネータ配列に操作可能な形で連結された時点で発現され得る。
【0108】
「(作用)操作可能な(状態)形で連結された」というのは、発現されるべき配列が、プロモータ、組織特異的調節要素、時間的調節要素、エンハンサ、リプレッサー及び/又はターミネータを含めた調節要素の制御下に置かれることを意味する。
【0109】
「非コーディング領域」というのは、翻訳開始部位の上流側及び翻訳停止部位の下流側にある未翻訳配列を意味する。これらの配列は、同様にそれぞれ5’UTR及び3’UTRとも呼ばれる。これらの領域は、転写開始及び終結そして翻訳効率の調節のために有用である。
【0110】
ターミネータというのは、転写を終結させかつ翻訳された配列の下流側で遺伝子の3’未翻訳末端内で標準的に見られる配列である。ターミネータは、mRNA安定性の重要な決定因子であり、一部のケースでは、空間的調節機能をもつことが発見されている。
【0111】
「プロモータ」という用語は、遺伝子転写を調節するコーディング領域の上流側の非転写シス調節要素を意味する。プロモータは、TATAボックスといったような保存されたボックス及び転写開始部位を特定するシス−開始要素、ならびに転写因子により結合されるモチーフを含む。
【0112】
「対象」というのは、哺乳動物例えばヒトである脊椎動物を意味する。哺乳動物には、ヒト、家畜、スポーツ動物、ペット、霊長類、マウス及びラットが含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0113】
例えばベシキュリン及びその変異体を含めた該発明のペプチドは、合成又は組換え型手段(すなわち単一の又は融合ポリペプチド)により生成可能である。ポリペプチド、特に最高約50アミノ酸のさらに短かいポリペプチドは化学的合成によって適切に作られる。例えば、Atherton及びSheppardの「固相ペプチド合成;実践的アプローチ」New York; IRLPress, 1989年;Stewart及びYoung;「固相ペプチド合成第2版」Rockford, Illinois; Pierce Chemical Co., 1984年;及びJones、「ペプチドの化学合成」、Oxford; Clarendon Press, 1994年を参照のこと。例えば、ベシキュリンを合成的に調製するためには、固相技術(例えば、固相ペプチド合成、WH Freeman Co, San Francisco, California中、Stewart et al., 1969年)或いは、成長するアミノ酸鎖にアミノ酸が逐次的に付加されるMerrifield固相合成方法といった市販の固相技術(例えばMerrifield, J. Am. Soc. 85:2146-2149 (1963年); Marglin, A.及びMerrifield, R. B. Annu. Rev. Biochem. 39:841-66 (1970年);及びMerrifield R. B. JAMA. 210(7):1247-54 (1969年)を参照)のうちのいずれかを用いた直接的ペプチド合成といったような当該技術分野において周知のペプチド合成方法を用いてこれを合成することができる。Merrifield固相合成の変形形態、例えばFmocを用いてベシキュリン、ベシキュリン鎖及びベシキュリンならびにベシキュリン鎖変異体、誘導体及び活性断片を化学合成することも可能である。ペプチド又はポリペプチドの自動合成用の機器も又、Perkin Elmer/Applied Biosystems (Foster City, CA)といったような供給業者から市販されており、メーカーの指示事項に従って、これを作動させることができる。かかる合成中に、ポリペプチドの突然変異形態又は変異体形態を産生することもできる。新たに合成されたベシキュリンペプチド及びベシキュリン変異体の同一性の確認は、アミノ酸分析、質量分析、エドマン分解又は生物学的機能の査定(すなわちグリコーゲン内へのグルコース取込み又はβ細胞有糸分裂誘発の刺激)によって達成できる。
【0114】
ベシキュリン変異体は同様に、ベシキュリン変異体の生物活性を実質的に改変しないアミノ酸を置換することによっても作ることができる(保存的置換)。置換のためのアミノ酸の選択は、サイズ、構造、電荷により左右され得、自然界に発見されるアミノ酸か又は合成アミノ酸のいずれでもあり得る。一般に、類似の電荷(例えば疎水性に対する疎水性)又は類似のサイズ(例えばロイシンに対するイソロイシン)をもつアミノ酸を置換のために選択することができる。段階的に又は同時に単数又は複数の置換を行なうことが可能である。ペプチドの中に内含される残基中の変異も可能でありかつ考慮対象となっている。例えば、従来の技術を用いて、1つの配列内のアミノ酸を等価のアミノ酸で置換することが可能である。通常等価であるとして知られているアミノ酸の群は、以下の通りである:
(a) Ala、Ser、Thr、Pro及びGly;
(b) Asn、Asp、Glu及びGln;
(c) His、Arg及びLys;
(d) Met、Glu、Ile及びVal;及び
(e) Phe、Tyr及びTrp。
【0115】
以上で示されている通りの同じ群の中での1つのアミノ酸ともう1つのアミノ酸の置換は、本書で使用されている通りの保存的アミノ酸置換の一例である。単数又は複数の保存的アミノ酸置換によって産生されるベシキュリン変異体は、ここでは「保存的変異体」と呼ばれる。
【0116】
単数又は複数のアミノ酸を置換することによって、数多くのベシキュリン変異体を達成できるということがわかる。例えば、インビボ又はインビトロのいずれであれグリコーゲン内へのグルコースの取込みを刺激するための生物学的機能について、該ベシキュリン変異体をテストすることができる。ベシキュリン変異体の生物学的活性は、一般に、ベシキュリンの少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約35%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%、及びより好ましくは少なくとも約95%である。
【0117】
該発明は同様に、ベシキュリン生物活性官能基を伴う活性断片をも包含する。かかる活性断片は、全長ベシキュリンの単数又は複数のアミノ酸残基の欠失により得ることができる。ベシキュリンの活性断片又は部分を、N末端端部又はC末端端部から又はベシキュリンペプチド内部からのアミノ酸残基の段階的欠失により確認することが可能である。アミノ酸が欠失されベシキュリンの生物活性が実質的に低減されない場合には、該アミノ酸は活性断片の一部分を含まない可能性がある。さらに、ベシキュリン又はベシキュリン変異体(単複)の活性断片を含むポリペプチドも該発明の中に包含されている。例えば、ベシキュリンの活性断片は、ベシキュリンのA鎖及び/又はB鎖のいずれか又は両方のアミノ酸配列のアミノ酸のうちの約10個の隣接するアミノ酸、より好ましくは約15個の隣接するアミノ酸、より好ましくは約20個の隣接するアミノ酸、より好ましくは約25個の隣接するアミノ酸、より好ましくは約30個の隣接するアミノ酸、約40個の隣接するアミノ酸、約50個の隣接するアミノ酸、約60個の隣接するアミノ酸、又より好ましくは61個の隣接するアミノ酸を含み得る。
【0118】
結果としてのペプチドがベシキュリンと免疫学的に交叉反応しかつ/又は実質的にベシキュリンと同じ機能(単複)を有するかぎりにおいて、アミノ酸の付加及び/又は欠失も同様に行なうことができる。該発明は同様に、ベシキュリンについてコードするポリヌクレオチド又はベシキュリンの活性断片をも包含する。ベシキュリン変異体又はベシキュリン変異体の活性断片についてコードするポリヌクレオチドも同様に、該発明の範囲内に包含される。
【0119】
当該技術分野において周知であるさまざまな技術を用いて、ポリペプチド及び変異体ポリペプチドを天然供給源から単離又は精製することも可能である(例えばDeutscher, 1990年, Ed, Methods in Enzymology, 第182巻、タンパク質精製の指針)。
【0120】
発現ベクターの中にタンパク質をコードするポリヌクレオチド(通常DNA)配列を挿入し適切な宿主内でペプチドを発現させることによって組換えによりベシキュリン、その連鎖、断片及び変異体を産生させることもできる。所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、融合形態又は成熟形態のいずれであれ、又分泌を可能にするためのシグナル配列を含有しているか否かに関わらず、使いやすいあらゆる宿主のために適した発現ベクター内にライゲートされ得る。当業者にとっては既知であるさまざまな発現ベクター(真核又は原核生物)のいずれでも利用可能である。発現は、組換え型ペプチドをコードするDNA分子を含有する発現ベクターで形質転換された又はトランスフェクトされた適切なあらゆる宿主細胞の中で、発現を達成することが可能である。適切な宿主細胞としては、原核生物、酵母及び真核生物細胞が含まれる。原核生物宿主細胞の例は、当該技術分野において既知であり、例えばE. coli及びB, subtilisを含む。真核宿主細胞の例は、当該技術分野において既知であり、酵母、鳥類、昆虫、植物、及び動物細胞例えばCOS7、HeLa、CHO及びその他の哺乳動物細胞が含まれる。組換え型産生のための標準的技術は、Maniatis et al.分子クローニング−実験室マニュアル、Cold Spring Harbour Laboratories, Cold Spring Harbour New York (1989年)の中で記述されている。
【0121】
ポリペプチドはその後、溶解された細胞から又は培地から単離され、その意図された用途に必要とされる程度まで精製される。宿主系の中で発現されたポリペプチドの精製又は単離は、当該技術分野において既知のあらゆる方法によって達成可能である。例えば、無傷の状態でポリペプチドをコードするcDNA又はその断片は、適切なプロモータに操作可能な形で連結され、発現ベクター内に挿入され、かつ適切な宿主細胞内にトランスフェクトされ得る。その後、宿主細胞は、転写及び翻訳が発生できるようにする条件下で培養され、所望のポリペプチドが回収される。(例えば分泌のための)特定の細胞区画に該ポリペプチドを導くシグナル配列といったようなその他の制御用転写又は翻訳セグメントも同様に利用可能である。
【0122】
精製を容易にする融合タンパク質も同様に構築可能である。これらの融合タンパク質のための構成要素の例としては、myc、HA、FLAG、His−6、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質又は免疫グロブリンのFc部分が含まれるが、これらに制限されるわけではない。これらの方法は、当該技術分野において既知である。例えば、Redd et al., J. Biol. Chem. 272:11193-11197 (1997年)を参照のこと。
【0123】
診断目的で使用される場合、該ポリペプチドは、その他の細胞成分から少なくとも実質的に精製又は単離される。ポリペプチドは好ましくは少なくとも約80%純粋であり、発熱物質及びその他の汚染物質を含まない。タンパク質精製方法は、当該技術分野において既知であり、本書では詳細に記述されない。
【0124】
ベシキュリンポリヌクレオチドを含む宿主細胞
本発明のもう1つの実施形態は、ベシキュリン、ベシキュリンA鎖、ベシキュリンB鎖、ベシキュリン変異体、ベシキュリン誘導体及び/又はベシキュリン活性断片についてコードするポリヌクレオチド、かかるポリヌクレオチドを含むベクター、又は上述の通りのその他のベクターで形質転換された又はそれでトランスフェクトされた(すなわちそれを含む)宿主細胞にある。原核生物及び真核生物の両方の宿主細胞を使用することができる。原核生物宿主としては、細菌細胞、例えばE. coli及びB. subtilisが含まれる。真核宿主の中には、酵母、昆虫、鳥類、植物及び哺乳動物細胞がある。哺乳動物宿主細胞の1例は、欧州細胞培養収集機関(イギリス)から得ることのできるNS0である。例えばサイトメガロウイルス(CMV)プロモータによって駆動されるプラスミドでのNS0細胞のトランスフェクションとそれに続くこのプラスミドの増幅により、タンパク質の産生にとって有用な系が得られる。Cockett et al., Bio/Technology 8: 662-667 (1990年)。
【0125】
本発明の宿主細胞は、なかんづく、ベシキュリンポリヌクレオチドの貯蔵場所として及び/又は上述の通りのベシキュリンポリヌクレオチド及びポリペプチドの産生のためのビヒクルとして使用可能である。これらは又ベシキュリンポリペプチドのインビボ送達用のビヒクルとしても使用できる。
【0126】
ベシキュリンポリヌクレオチドの単離
ベシキュリンポリヌクレオチドは、ベシキュリンを発現する発現ベクターで形質転換(又はトランスフェクション)された宿主細胞、生物学的試料又は流体、組織試料(例えば膵臓を含む(ただしこれらに制限されるわけではない)さまざまな供給源から又はクローニングベクターから単離可能である。細胞からのヌクレオチドの単離は、当業者にとって日常的な作業であり、例えばQiagen (Valencia, CA)又はPromega (Madison, WI)製の任意の数の市販のヌクレオチド単離キットを用いて、又はPCRベースの方法(Mullis et al., Eds. 1994年 The Polymerase Chain Reaction, Birkhauser)を用いて達成可能である。標準的には、PCRによりポリヌクレオチド分子の変異体を増幅するのに有用であるプライマのポリヌクレオチド配列は、対応するアミノ酸配列の保存された領域をコードする配列に基づくものであり得る。ベシキュリン及びベシキュリン関連ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、DNA、RNA、DNA類似体、RNA類似体又はDNA−RNAのハイブリッドの形をしていてよい。ポリヌクレオチドは1本鎖又は2本鎖のものであり得る。
【0127】
等価のポリヌクレオチドには、上述のとおりベシキュリンなどと等価のタンパク質をコードする核酸配列が含まれる。等価のポリヌクレオチドには同様に、核酸コードの縮重に起因して、対応するアミノ酸配列に影響を及ぼさない形で未変性ポリヌクレオチドと異なっている核酸配列が含まれる。
【0128】
特定のポリヌクレオチド又はポリペプチドが以上で示されたものと等価であるか又はその1変異体であるかの予測は、相同性に基づくものであり得る。ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列は整列され得、特定された領域内の同一のヌクレオチドの百分率を、上述の通りの公開されているコンピュータアルゴリズムを用いてもう1つの配列と比べて、又は配列データベースを探索するための公開ドメイン配列整列アルゴリズム及び配列類似性探索手段を用いて(公開ドメインデータベースにはGenbank、EMBL、Swiss-Prot、PIRその他が含まれる)当業者にとって周知のコンピュータベースの方法によって、決定することができる。オンラインリソースの例としては、例えばNucleic Acids Res. 29: 1-10; 11-16 (2001年)を参照のこと。類似性探索は、分析すべき配列(すなわちクエリー配列)との比較のために標的配列を検索及び整列させる。配列比較アルゴリズムは、整列の各々に全体的スコアを割当てるため、評定マトリクスを使用する。
【0129】
関連する配列の一群の多重配列整列は、CLUSTALW (Thompson, J. D., Higgins, D. G. 及び Gibson, T. J. (1994年) CLUSTALW配列重みづけ、位置特異的ギャップペナルティ及び重みマトリクス選択を通して漸進的多重配列整列の感度を改善させる:Nucleic Acids Research 22:4673-4680, http://www-igbmc.u-strasbg.fr/BioInfo/ClustalW/Top.html)又はT-COFFEE (Cedric Notredame, Desmond G. Higgins, Jaap Heringa, T-Coffee: 高速で正確な多重配列整列の新しい方法、J. Mol. Biol. (2000年) 302: 205-217))又は漸進的対様整列を使用するPILEUP (Feng and Doolittle, 1987年, J. Mol. Evol. 25, 351)で実施可能である。
【0130】
モチーフ又はシグニチャ配列を見つけるためにパターン認識ソフトウェアアプリケーションが利用可能である。例えば、MEME(Multiple Em for Motif Elicitation)は、配列セットの中のモチーフ及びシグニチャ配列を発見し、MAST(Motif Alignment and Search Tool)は、これらのモチーフを用いてクエリー配列中の類似の又は同じモチーフを同定する。MAST結果は、発見されたモチーフの視覚的概観及び適切な統計データとの一連の整列として提供される。MEME及びMASTは、San Diegoのカリフォルニア大学において開発された。
【0131】
PROSITE (Bairoch and Bucher, 1994年, Nucleic Acids Res. 22, 3583; Hofmann et al., 1999年, Nucleic Acids Res. 27, 215)は、ゲノミック又はcDNA配列から翻訳された特徴づけされていないタンパク質の機能を同定する方法である。PROSITEデータベース(www.expasy.org/prosite)は、生物学的に有意なパターン及びプロファイルを収納し、既知のタンパク質ファミリーに対して新しい配列を割当てるか又は配列中にどの既知のドメイン(単複)が存在するかを見極めるための適切な計算手段と共に使用できるように設計されている(Falquet et al., 2002年, Nucleic Acids Res. 30, 235)。Prosearchは、一定の与えられた配列パターン又はシグニチャでSWISS-PROT及びEMBLデータベースを探索できる手段である。
【0132】
タンパク質は同じゲノム(パラログ)又は異なるゲノム(オルソログ)の中のその他のタンパク質に対するその配列関連性に従って分類可能である。オルトログ遺伝子は、共通の先阻遺伝子からのスペシエーションにより進化し、通常進化するにつれて同じ機能を保持する遺伝子である。パラロガス遺伝子は、1つのゲノム内で複製される遺伝子であり、遺伝子はもとのものと関連したものであり得る修飾された機能又は新たな特異性を獲得し得る。系統発生解析方法は、Tatsuov, et al., 1997年, Science 278, 631-637,の中で再考されている。
【0133】
上述のコンピュータ/データベース方法に加えて、ポリペプチド変異体は、例えば該発明のポリペプチドに対して発生させられた抗体を用いて発現ライブラリをスクリーニングする(Sambrook, et al., 分子クローニング;実験室マニュアル、第2版、Cold Spring Harbor Press, 1987年)か又はかかる抗体を用いて天然の供給源からポリペプチドを同定することによって、物理的方法により同定可能である。
【0134】
変異体ポリペプチドを含むポリペプチドは、上述の通り当該技術分野において周知のペプチド合成方法を用いて調製可能である。ポリペプチド及び変異体ポリペプチドは同様に、上述の通り、当該技術分野において既知のあらゆる方法により精製可能である。代替的には、ポリペプチド及び変異体ポリペプチドは、適切な宿主細胞内で組換え技術によって発現され、上述の通り該細胞から分離され得る。
【0135】
該発明に従った変異体は同様に、ヒト、ラット又はマウス以外の種からのベシキュリンの相同体を内含する。かかる相同体は、ヒト、ラット及びマウスベシキュリンをコードするポリヌクレオチドの保存された領域に基づいて、例えば核酸プローブを用いて容易に同定可能である。
【0136】
本発明のポリヌクレオチドには複数の用途がある。ベシキュリンポリヌクレオチドは例えば、ベシキュリン又はベシキュリン断片の組換え型産生のための発現構成体及び系において有用である。これらは又、当業者にとっては周知の方法を用いて試料内のベシキュリンポリヌクレオチド(又は関連)配列の存在について検定するためのハイブリダイゼーションプローブとしても有用である。さらにベシキュリンポリヌクレオチドは、所望のポリヌクレオチドの増幅をもたらすためのプライマとしても有用である。本発明のポリヌクレオチドは同様に、ワクチンとして及び遺伝子療法のためにも有用であり得る。
【0137】
本発明のベシキュリンポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)といったようにベシキュリン又はその断片をコードするポリヌクレオチドの増幅のためのプライマとして使用することができる。さらに、ベシキュリンポリヌクレオチドは、ベシキュリンに付随するその他の遺伝子又は、同じくベシキュリンに付随する疾病又は疾病状態に関係する遺伝子についてスクリーニングするか又はそれらを検出するためのPCRプライマとしても使用可能である。PCR反応を実施するための条件は、それ自体使用されるプライマ及び反応条件により調整可能である所望の特異性によって左右される。かかる調整は、当該技術分野において既知であり、ここで詳述する必要はない。
【0138】
ベシキュリンポリヌクレオチドは同様に、例えば細胞内のベシキュリンポリヌクレオチドの存在を検出するためのハイブリダイゼーションプローブとしても使用可能である。例えば、遺伝子療法で使用される細胞内でのベシキュリンポリヌクレオチド配列の存在を見極めるためのプローブとしても使用することができた。これらの方法のためには、(そのいずれかがベシキュリンポリヌクレオチド配列を含有する疑いのある)細胞から誘導された試料又は生体試料からの適切な細胞を獲得し、該試料からのポリヌクレオチドとベシキュリンポリヌクレオチドプローブを接触させることによってベシキュリンポリヌクレオチドの存在についてこれをテストする。該方法は、問題のベシキュリンポリヌクレオチドとベシキュリンプローブの間でハイブリダイゼーションが発生できるように行なわれ、(場合により)結果として得られるハイブリッド形成された複合体が検出される。かかる方法は、細胞培養、ポリヌクレオチド調製、ハイブリダイゼーション及び(場合によっては)形成されたハイブリッド複合体の検出といったような当該技術分野において周知の手順を必要とする。例えば、ニトロセルロースフィルタ又はナイロン膜といったような固体支持体上で固定化されたポリヌクレオチドに対して標識されたポリヌクレオチドプローブをハイブリッド形成させる技術を用いて、例えばゲノミック又はcDNAライブラリをスクリーニングすることができる。ハイブリダイゼーション及び洗浄条件の例は、以下の通りである;すなわち、5.0×SSC、0.5%のドデジル硫酸ナトリウム、1×デンハルト溶液中で65℃、20時間のハイブリダイゼーション;1.0×SSC、1%(w/v)のドデジル硫酸ナトリウム中での洗浄(各々55℃で20分の洗浄3回);及び任意には60℃で0.5×SSC、1%(w/v)のドデジル硫酸ナトリウム中の1回の洗浄(20分間)。類似の方法を用いて、それ自体ベシキュリンポリペプチド、無傷のベシキュリン、又はベシキュリンの組換え型、変異体形態を産生させるために使用されるベクターを検出するために該プローブを使用することも可能である。
【0139】
本発明のベシキュリンポリヌクレオチドは、ベシキュリンポリペプチド、無傷のベシキュリン、又は、増強された、等価の又は異なる所望の特性を有する無傷のベシキュリンを含めたベシキュリンの組換え型形態を産生させるために発現構成体及び系の中で使用可能である。これらの組換え型形態は、以上で開示された方法又は当該技術分野におけるその他の日常的方法を用いることによって作られる。ベシキュリン及びベシキュリンポリペプチドの組換え型形態の例としては、ハイブリッド、キメラ、1本鎖変異体及びサイトカインといったようなその他の成分を含有する融合タンパク質が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0140】
ベシキュリンポリヌクレオチドのもう1つの用途は、遺伝子療法にある。1つの一般的原理は、内部でコードされるポリペプチドの発現を促進するか又は減衰させるような形でポリヌクレオチドを投与することにある。かくして、本発明は、血糖値を変調させる方法及び個体に対してベシキュリンポリヌクレオチド(単複)を有効量投与することを含む治療方法を含む。これらの方法においては、ベシキュリンポリペプチドをコードするベシキュリンポリヌクレオチドが、ベシキュリンポリヌクレオチド(単複)でのトランスフェクションを受けた細胞を介してか又は直接的に個体に対して投与される。1つの実施形態においては、ベシキュリンポリヌクレオチドは1つの細胞内で複製される。かくして、ベシキュリンポリヌクレオチド(単複)は、標的組織型の細胞内で本質的に活性である非相同プロモータといったような適切なプロモータに対して操作可能な形で連結される。細胞内への該ポリヌクレオチドの進入は、ウイルス発現ベクター例えばワクチニア又はアデノウイルスベクタを介してか又はポリヌクレオチドとカチオンリポゾームの会合を介してといったような当該技術分野において既知の技術により達成される。ベシキュリンポリヌクレオチド(単複)は、円形プラスミドの形で又はスーパーコイル形態をしていてよい。ひとたび細胞核内に入ると、プラスミドは円形非複製エピゾーム分子として存続する。ベシキュリンポリペプチドの発現の減衰又は阻害は、ベシキュリンポリペプチドの発現を阻害するか又はそれに拮抗する核酸の投与といったような当該技術分野の既知の方法により達成可能である。ベシキュリンポリペプチドの発現を破断させるアンチセンスオリゴヌクレオチド、SiRNA又はリボザイムが全て、発現の阻害のために使用可能である。
【0141】
ベシキュリンのヌクレオチド配列のいずれかに対応するアンチセンス−オリゴヌクレオチドを使用して、ベシキュリンの発現レベルを低減させることができる。特定的には、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ベシキュリン又はそれに対応するmRNAによりコードされたポリペプチドのうちのいずれかに結合し、かくしてベシキュリンポリペプチドの転写又は翻訳を阻害し、mRNAの分解を促進しかつ/又はベシキュリンヌクレオチドによりコードされたタンパク質の発現を阻害し、最終的にタンパク質の機能を阻害することによって作用し得る。本書で使用される「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドが標的配列に特異的にハイブリッド形成できるかぎりにおいて、標的配列に対し完全に相補的であるヌクレオチド及び単数又は複数のヌクレオチドの不整合を有するヌクレオチドの両方を包含している。例えば、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ベシキュリンのヌクレオチド配列のいずれかに対して少なくとも約15連続ヌクレオチドの範囲にわたり、少なくとも約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに一層好ましくは約95%以上の同一性を有するポリヌクレオチドを内含する。上述の通りの当該技術分野において既知のアルゴリズムを用いて同一性を決定することができる。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体又は修飾された産物を本発明においてアンチセンスオリゴヌクレオチドとして使用することもできる。かかる修飾済み産物の例としては、メチルホスホナートタイプ又はエチルホスホナートタイプといったような低級アルキルホスホナート修飾、ホスホロチオアート修飾及びホスホルアミダート修飾が含まれる。
【0142】
アンチセンスオリゴヌクレオチド及びその誘導体は、タンパク質をコードするDNA又はmRNAに対し結合し、その転写又は翻訳を阻害し、mRNAの分解を促進し、タンパク質の発現を阻害し、かくしてタンパク質機能の阻害を結果としてもたらすことにより、ベシキュリンによりコードされたタンパク質を産生する細胞に作用する。
【0143】
遺伝子発現を減衰又は阻害する核酸は同様に、ベシキュリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のセンスストランド核酸及びアンチセンスストランド核酸の組合せを含む小さな干渉RNA(siRNA)をも内含している。「siRNA」という用語は、標的mRNAの翻訳を妨げる2本鎖RNA分子を意味する。DNAがRNAを転写する元となる鋳型である技術を含めて、細胞内にsiRNAを導入する標準的な技術を本発明の治療又は予防において使用することができる。siRNAは、単一の写しが例えばヘヤピンといった標的遺伝子からのセンス配列と相補的アンチセンス配列の両方を有するような形で構築される。
【0144】
該方法は、ベシキュリンポリペプチドのアップレギュレートされた発現により細胞の遺伝子発現を抑制するために使用される。標的内のベシキュリンマーカー写しに対するSsiRNAの結合の結果として、該細胞によるベシキュリンポリペプチド産生は減少する。オリゴヌクレオチドの長さは少なくとも約10個のヌクレオチドであり、天然発生の写しと同じ位の長さであり得る。好ましくは、オリゴヌクレオチドの長さは約19〜25ヌクレオチドである。より好ましくは、オリゴヌクレオチドの長さは約75ヌクレオチド未満、約50ヌクレオチド未満又は約25ヌクレオチド未満である。
【0145】
siRNAのヌクレオチド配列は、Ambionのウェブサイト(http:/Iwww.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)から入手できるsiRNA設計コンピュータプログラムを用いて設計可能である。\siRNAのためのヌクレオチド配列は、以下のプロトコルに基づいてコンピュータにより選択される:
【0146】
siRNA標的部位の選択
1. 写しのAUG開始コドンから始めて、ジヌクレオチド配列について下流側を走査する。潜在的なsiRNA標的部位としての3’の隣接する19個のヌクレオチドと各々のAAの発生を記録する。Tusehi et al.は、調節タンパク質結合部位がさらに豊富であり得、かつそれらの領域に対抗して設計されたsiRNAとエンドヌクレアーゼの複合体はUTR結合タンパク質及び/又は翻訳開始複合体の結合と干渉し得ることを理由として5’及び3’未翻訳領域(UTR)及び開始コドン近くの領域(75塩基未満)に対してsiRNAを設計しないように推奨している。
2. ヒトゲノムデータベースに対して潜在的標的部位を比較し、その他のコーディング配列に対する有意な相同性をもつ標的配列があればそれを考慮から除外する。NCBI上でwww.ncbi.nlm.nih.govIBLAST/で見い出すことのできるBLASTを用いて相同性探索を実施することができる。
3. 合成のための有資格標的配列を選択する。Ambionのウェブサイト上では、評価のために遺伝子の長さに沿って複数の好ましい標的配列を選択することができる。
【0147】
siRNAはベシキュリンポリペプチドの発現を阻害し、かくしてタンパク質の生物活性を抑制するために有用である。従って、siRNAは、ベシキュリンの活性が関与している身体条件を治療又は予防する上で有用である。
【0148】
過剰発現された遺伝子の単数又は複数の遺伝子産物を阻害する核酸には、過剰発現されたマーカーに対するリボザイムも含まれている。
【0149】
リボザイムは、ベシキュリンポリペプチドの発現を阻害し、かくしてタンパク質の生物活性を抑制するために有用である。従って、リボザイムを含む組成物が、ベシキュリンの活性が関与している身体条件を治療又は予防する上で有用である。
【0150】
一般に、リボザイムは、大型リボザイム及び小型リボザイムに分類される。大型リボザイムは、核酸のリン酸エステル結合を分割する酵素として知られている。大型リボザイムとの反応の後、反応した部位は、5’−ホスファート及び3’−ヒドロキシル基から成る。大型リボザイムはさらに、(1)グアノシンによる5’−スプライス部位でのエステル交換の触媒として作用するI群イントロンRNA;(2)ラリアート構造を介した2段階反応を適した自己スプライシングの触媒として作用するII群イントロンRNA;及び(3)加水分解を通して5’部位でtRNA前駆体を分割するリボヌクレアーゼPのRNA構成要素へ分類される。一方で、小型リボザイムは大型リボザイムに比べて小さなサイズ(約40bp)を有し、RNAを分割して5’−ヒドロキシ基及び2’−3’環状ホスファートを生成する。ハンマーヘッドリボザイム(Koizumi, et al., FEBS Lett. 228: 225 (1998年))及びヘヤピン型リボザイム(Buzayan, Nature 323: 349 (1986年); Kikuchi及びSasaki, Nucleic Acids Res, 19: 6751 (1992年))が小型リボザイムの中に含まれる。リボザイムを設計し構築する方法が、当該技術分野において既知であり(Koizumi, et al.,上掲、Koizumi, et al., Nucleic Acids Res. 17:7059 (1989年); Kikuchi及びSasaki,上掲)、リボザイムを産生するための従来の方法に従ってベシキュリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の配列情報に基づいて、ベシキュリンポリペプチドの発現を阻害するリボザイム構築することができる。
【0151】
リボザイムは、ベシキュリンポリペプチドの発現を阻害し、かくしてタンパク質の生物活性を抑制するために有用である。従って、リボザイムを含む組成物が、ベシキュリンの活性が関与している身体条件を治療又は予防する上で有用である。
【0152】
代替的には、過剰発現された遺伝子の単数又は複数の遺伝子産物の機能は、遺伝子産物に結合するか又はその他の形で遺伝子産物の機能を阻害する化合物を投与することにより阻害される。例えば、化合物は、過剰発現されたマーカー産物(単複)に結合する抗体である。
【0153】
ベシキュリンの投与
該発明は、例えば耐糖能障害;空腹時血糖障害;前糖尿病;1型及び2型糖尿病とその合併症を含めた糖尿病及びその合併症;インスリン耐性;X症候群;肥満及びその他の体重関連障害;非アルコール性アルコール性脂肪肝疾患を含む脂肪肝疾患;グルコース代謝疾患及び障害;インスリン治療されている又は治療可能である疾病、障害又は身体条件;血糖降下薬で治療されている又は治療可能である疾病、障害又は身体条件;少なくとも一部には高血糖症を特徴とする疾病、障害又は身体条件;少なくとも一部には低インスリン血症を特徴とする疾病、障害又は身体条件及び/又は少なくとも一部には高インスリン血症を特徴とする疾病、障害及び身体条件を含むさまざまな疾病、障害及び身体条件を全て又は一部治療及び/又は予防するための方法を含んでいる。
【0154】
該発明は、例えば、高血糖症、インスリン耐性、耐糖能障害及び/又は空腹時血糖障害を全体的又は部分的特徴とするあらゆる疾病、障害及び/又は身体条件を有する又はそれを有する疑いのある又はその素因を有する又はそのリスクがある対象を治療する方法において、ベシキュリン、ベシキュリンA鎖ベシキュリンB鎖、ベシキュリン変異体、ベシキュリン誘導体及び/又はベシキュリン断片又はその塩を含む組成物を投与する段階を含む方法を内含している。かかる疾病、障害及び/又は身体条件には本書で記述されているか又は参照指示されているものが含まれるが、これらに制限されるわけではない。かかる化合物は、(1)血清グルコースを低下させ、(2)血糖を低下させ、(3)尿中グルコースを低下させ、(4)フルコサミンを低下させ、(5)グリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)レベルを低下させ、(6)食後血糖を低下させ、(7)耐糖能障害を改善し、(8)空腹時血糖障害を改善し、(9)重症の低血糖事象を含めた低血糖事象の速度及び/又は重症度を低減させ、かつ/又は(10)糖処理を刺激するために有効である量で投与可能である。かかる組成物には例えば、注入、経皮パッチ、吸入及びその他の非経口送達方法による送達のための処方物が含まれる。
【0155】
該発明は、例えば、高血糖症、インスリン耐性、耐糖能障害及び/又は空腹時血糖障害を全体的又は部分的特徴とする疾病、障害及び/又は身体条件を有する又はそれを有する疑いのある又はその素因を有する対象において血糖症を調節するための方法において、ベシキュリン、ベシキュリンA鎖ベシキュリンB鎖、ベシキュリン変異体、ベシキュリン誘導体及び/又はベシキュリン断片又はその塩を含む組成物を投与する段階を含む方法を内含している。かかる疾病、障害及び/又は身体条件には本書で記述されているか又は参照指示されているものが含まれるが、これらに制限されるわけではない。かかる化合物は、(1)血清グルコースを低下させ、(2)血糖を低下させ、(3)尿中グルコースを低下させ、(4)フルコサミンを低下させ、(5)グリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)レベルを低下させ、(6)食後血糖を低下させ、(7)耐糖能障害を改善し、(8)空腹時血糖障害を改善し、(9)重症の低血糖事象を含めた低血糖事象の速度及び/又は重症度を低減させる[かつ/又は(10)糖処理を刺激する]ために有効である量で投与可能である。かかる組成物には例えば、注入、経皮パッチ、吸入及びその他の非経口送達方法による送達のための処方物が含まれる。
【0156】
患者に対する投与のために、ベシキュリン、ベシキュリンA鎖、ベシキュリンB鎖、ベシキュリン変異体、ベシキュリン誘導体及び/又はベシキュリン活性断片又はその塩を、純粋な又は実質的に純粋な形で使用することができる。ベシキュリン、ベシキュリンA鎖、ベシキュリンB鎖、ベシキュリン変異体、ベシキュリン誘導体及び/又はベシキュリン活性断片又はその塩は、医薬組成物の体裁をとることもできる。かかる組成物は、例えば単数又は複数の薬学的に許容される担体と、そして任意には望ましい場合にはその他の成分と併せて、ベシキュリン、ベシキュリンA鎖、ベシキュリンB鎖、ベシキュリン変異体、ベシキュリン誘導体及び/又はベシキュリン活性断片又はその塩のうちの単数又は複数のものを含み得る。非経口及び非経口以外の薬物送達(ドラッグデリバリー)のための処方が、当該技術において既知であり、例えば:Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing (1990年)の中で記述されている。
【0157】
担体は、投与中のペプチドと相容性があり治療すべき対象にとってあからさまに有害でないという意味で許容される。望ましくは、該組成物は、ペプチドと相容性がないものとして知られている物質を内含しているべきではない。固体組成物については、従来の非毒性担体としては例えば、マンニトール、ラクトース、でんぷん、ステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、ペクチン、デキストリン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどが含まれる。上述の通りの活性化合物は、例えば担体としてプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールを用いて座薬として処方することができる。
【0158】
個体担体は、希釈剤、着香剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤又は錠剤崩壊剤として作用することもできる単数又は複数の物質であり得る。それは又、封入材料でもあり得る。類似の要領で、カシェ剤又は経皮系も内含される。粉末では、担体は、微粉化した活性構成要素と混合した状態にある微粉化した固体である。錠剤では、活性構成要素は、適切な割合で必要な結合特性を有する担体と混合され、所望の形状及びサイズに圧密される。
【0159】
液体形態調製物には、例えば非経口投与に適した溶液、懸濁液又はエマルジョンが含まれる。非経口投与のための水溶液は、水中に対象のペプチドを溶解させ、望ましい場合にはその他の適切な作用物質、バッファなどを添加することによって調製可能である。かかる剤形を調製する実際の方法は、既知であるか又は、当業者にとっては明らかとなろう。例えばRemington's Pharmaceutical Sciencesを参照のこと。
【0160】
投与されるべき組成物又は処方物は、好ましくは、(1)血清グルコースを低下させ、(2)血糖を低下させ、(3)尿中グルコースを低下させ、(4)フルコサミンを低下させ、(5)グリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)レベルを低下させ、(6)食後血糖を低下させ、(7)耐糖能障害を改善し、(8)空腹時血糖障害を改善し、(9)重症の低血糖事象を含めた低血糖事象の速度及び/又は重症度を低減させかつ/又は(10)糖処理を刺激するために有効な量で多数の活性化合物を含有することになる。ベシキュリン、ベシキュリンA鎖ベシキュリンB鎖、ベシキュリン変異体、ベシキュリン誘導体及び/又はベシキュリン断片又はその塩の有効量としては、例えば約0.01nmol/kg/日〜約100nmol/kg/日、約0.02nmol/kg/日〜約75nmol/kg/日、約0.025nmol/kg/日〜約50nmol/kg/日、約0.03nmol/kg/日〜約40nmol/kg/日、約0.04nmol/kg/日〜約30nmol/kg/日、約0.05nmol/kg/日〜約25nmol/kg/日、約0.07nmol/kg/日〜約20nmol/kg/日、約0.08nmol/kg/日〜約15nmol/kg/日、約0.1nmol/kg/日〜約10nmol/kg/日、約0.2nmol/kg/日〜約5nmol/kg/日が含まれる。
【0161】
ベシキュリン、ベシキュリンA鎖ベシキュリンB鎖、ベシキュリン変異体、ベシキュリン誘導体及び/又はベシキュリン断片又はその塩の有効量には同様に、約120ng/kg/日〜約1.2mg/kg/日、約240ng/kg/日〜約900μg/kg/日、約300ng/kg/日〜約600μg/kg/日、約360ng/kg/日〜約480μg/kg/日、約480ng/kg/日〜約400μg/kg/日、約600ng/kg/日〜約300μg/kg/日、約840ng/kg/日〜約240μg/kg/日、約960ng/kg/日〜約180μg/kg/日、約1.2μg/kg/日〜約120μg/kg/日及び約2.4μg/kg/日〜約60μg/kg/日も含まれる。
【0162】
当然のこととして、投与される投薬量は、個体毎に変動し得る。同様に当然のこととして、該投薬量は、一回用量又は任意には複数回用量(例えば一日に2、3又は4回の用量)で投与され得る。臨床医又は医師が、個体に必要な投薬量を決定することになる。臨床医又は医師は、血糖値、ベシキュリンレベル(組織内常在又は循環のいずれか)、インシュリンレベル(組織内常在又は循環のいずれか)、膵臓β細胞の枯渇レベル、多渇症の有無、多食症の有無、ポリ尿素の有無、糖化ヘモグロビンレベル、糖化アルブミンレベル及びフルクトサミンレベルを含む(ただしこれらに制限されるわけではない)因子を監視し得る。
【0163】
組成物は、都合よく単位剤形の体裁をとることもでき、薬学技術分野で周知のいずれの方法によっても調製可能である。全ての方法に、活性成分を単数又は複数の副成分を構成する担体と会合した状態にする段階が含まれている。
【0164】
組成物がとることになる精確な形態は、選択される投与経路に大きく左右されることになる。例えば、ベシキュリン、ベシキュリンA鎖、ベシキュリンB鎖、ベシキュリン変異体、ベシキュリン誘導体及び/又はベシキュリン活性断片を非経口的に例えば治療対象患者の血流中に静脈内に注入することが可能である。しかしながら、当業者であれば、経路が変動し得ることそして、静脈内、皮下、経皮、筋内、皮内、関節内、クモ膜下、腹腔内、腸内、経皮、経粘膜、持続放出重合体組成物(例えば、ラクチド重合体又は共重合体微小粒子又はインプラント)、かん流、肺(例えば吸入)、鼻腔内、経口などであり得ることを容易に認識するだろう。注入物質は、従来の形態で液体溶液又は懸濁液として、注入に先立ち液体内に溶解又は懸濁させるのに適した固体形態、又はエマルジョンとして調製可能である。適切な賦形剤としては、例えば水、生理食塩水、含水デキストロース、グリセロール、エタノールなどが含まれる。さらに、望ましい場合、薬学組成物は同様に、例えば酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンなどの湿潤剤又は乳化剤、補助的pH緩衝剤などといった非毒性物質を少量含有することもできる。非経口特に皮下投与に適した組成物が好ましい。その他の適切な投与経路は、静脈内投与及び筋内投与である。かかる組成物は、好都合には、ベシキュリン、ベシキュリンA鎖ベシキュリンB鎖、ベシキュリン変異体、ベシキュリン誘導体及び/又はベシキュリン断片又はその塩の無菌水溶液を含む。該溶液は治療すべき患者の血液と当張であり得る。かかる組成物は、ベシキュリン、ベシキュリンA鎖ベシキュリンB鎖、ベシキュリン変異体、ベシキュリン誘導体及び/又はベシキュリン断片又はその塩を水中に溶解させて水溶液を生成しこの溶液を無菌にすることによって都合良く調製可能である。このとき組成物は、例えば密封したアンプル又はバイアルといった単位又は多数回用量の容器の体裁をとることができる。1つの特に好ましい組成物は、注入に適した生理的緩衝溶液中のベシキュリン例えばヒトベシキュリンである。
【0165】
持続放出非経口投与に適した組成物(例えば生分解性重合体処方物)も同様に当該技術分野において周知である。例えば米国特許第3,773,919号及び4,767,628号及びPCT公報第WO94/15587号を参照のこと。
【0166】
経口送達形態も同等に許容され、経口送達形態の一例は錠剤、カプセル、トローチ剤又はそれに類した形態、又は例えば経口剤形の場合消化器官内で1つの効果を惹起する前に分解しないよう治療用タンパク質を保護する能力をもつシロップ、水溶液、エマルジョンなどのあらゆる液体形態である。経皮送達用剤形の例としては、経皮パッチ、経皮包帯などが含まれる。
【0167】
局所用剤形内に含まれるのは、皮膚に直接塗布されるか又はパッド、パッチなどといったような媒体を介して塗布されるかに関わらず、あらゆるローション、スティック、スプレー、軟こう、ペースト、クリーム、ジェルなどである。
【0168】
座薬送達用の剤形の例としては、身体開口部内に挿入されるべきあらゆる固体又はその他の剤形(特に直腸、膣及び尿道に挿入されるもの)が含まれる。
【0169】
経粘膜送達用の剤形の例としては、当該技術分野において適切であるものとして知られているような担体を活性成分に加えて含有しているデポー剤、かん腸用溶液、ペッサリ、タンポン、クリーム、ジェル、ペースト、フォーム、霧状溶液、粉末及び類似の処方物が含まれる。
【0170】
デポー剤投与のための投薬量単位の例としては、生分解性重合体のマトリクス、マイクロエマルジョン、リポゾームの中に活性作用物質が取込まれているか又はマイクロカプセル化されている固体形態又は活性作用物質のペレット又は小さなシリンダが含まれる。
【0171】
移植可能な輸液デバイスの例としては、生分解性重合体又はシリコーン、シリコーンゴム、シラスティック又は類似の重合体といったような合成重合体の中に封入されているか又はその全体を通して分散されているあらゆる固体形態が含まれる。代替的には、輸液デバイス用の剤形は、リポソーム送達系を利用し得る。
【0172】
ボーラスを介した送達のための投薬量単位の例としては、静脈内注入、皮下、真皮下及び筋内投与及び経口投与による、一回又は多数回投与が含まれる。
【0173】
吸入又は吹送のための投薬量単位の例としては、薬学的に許容される水性又は有機溶剤中の溶液及び/又は懸濁液、又はその混合物及び/又は粉末を含む組成物が含まれる。
【0174】
ベシキュリンを塩の形となるように転換させることも又都合が良い。かかる塩は一般に生理学的に受容可能となり、当該技術分野において周知のあらゆる方法を用いて形成させることができる。薬学的に許容される塩には、薬学的に許容される非毒性無機及び有機酸及び塩基から誘導されるものが含まれる。適切な酸性塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸−、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸−、グルタミン酸−、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキエタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、リンゴ酸−、マンデル酸−、メタンスルホン酸塩、粘液酸−、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パルモ酸塩、パントテン酸、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、サリチル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩などが含まれる。それ自体薬学的に許容されるものではないもののシュウ酸といったその他の酸も、該発明の化合物及びその薬学的に許容される酸付加塩を得る上で中間体として有用な塩の調製において利用可能である。適切な塩基から誘導される塩としては、アルカリ金属(例えばナトリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム)、アンモニウム及びN−(アルキル)4+塩が含まれる。本発明は同様に、本書で開示されている化合物のあらゆる塩基性窒素含有基の四級化も想定している。水又は油溶性又は分散性産物もかかる四級化により得ることができる。塩酸塩及び酢酸塩が好ましい。
【0175】
有機酸のアニオンとベシキュリンの組合せにより形成されるベシキュリン塩が特に好ましい。かかる塩には、リンゴ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、オキサロ酢酸塩、クエン酸塩、イソクエン酸塩、α−ケトグルタン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩及びトリフルオロ酢酸塩が含まれるがこれらに制限されるわけではない。このように形成された塩は同様に、望まれる場合治療用投与のため医薬組成物の形に処方することもできる。
【0176】
ベシキュリンポリヌクレオチドの使用方法
上述の通り、本発明は、ベシキュリン及びベシキュリンA及びB鎖(そのヒト、ラット及びマウス形態を含めるがこれらに制限されるわけではない)、ベシキュリン変異体又はベシキュリン誘導体又はその活性断片を提供する。ベシキュリンは、例えばグリコーゲン内へのグルコースの取込みの刺激において1つの役割を果たすことが本書内で示されている。
【0177】
従って、該発明は同様に、グリコーゲンへのグルコースの取込みを変調できる方法をも提供する。かかる変調には通常、本書で記述されている通りのベシキュリン又はベシキュリン関連ポリペプチドの投与が関与することになる。
【0178】
ベシキュリンアゴニストは、例えば、グリコーゲン内へのグルコースの取込みに対するベシキュリンの効果を促進又は強化することのできる化合物である。これとは対照的に、ベシキュリンアンタゴニストは、ベシキュリンと競合するか又はその他の形でベシキュリンと相互作用して例えばグリコーゲン内へのグルコースの取込みに対するベシキュリンの効果を遮断又は低減させる化合物である。ベシキュリンアゴニスト及びアンタゴニストは、テスト化合物の存在下及び不在下でグリコーゲン内へのグルコースの取込みに対してベシキュリンが有する効果を測定するヒラメ筋検定を含めた検定システムによって同定可能である。
【0179】
例えばグリコーゲン中へのグルコースの取込み(ただしこれに制限されるわけではない)を変調させる上でベシキュリンアゴニスト又はベシキュリンアンタゴニストが利用されることが望まれる場合、アゴニスト/アンタゴニストを実質的に純粋な化合物として投与するか又はベシキュリンについて上述した通りの薬学組成物として処方することができる。
【0180】
ベシキュリンポリペプチドについてのその他の用途としては、ワクチン内での使用及びモノクローナル抗体を含む抗体の生成のための使用が含まれる。ベシキュリンポリペプチドは、マウスを免疫化するために、免疫原として用いられる。(リンパ球を含む)脾細胞は、免疫化されたマウスから得られる。ハイブリドーマは、Kohler, B及びMilstein, C, Nature 256: 495-497 (1975年)の一般的体細胞ハイブリダイゼーション技術を用いてリンパ球及び不死化骨髄腫細胞から調製される。例えばBuck, D. W., et al., In Vitro 18: 377-381 (1982年)、といったような、その他の修正された方法も使用することができる。利用可能な骨髄腫系列にはX63−Ag8.653が含まれ(ただしこれに制限されるわけではない)、米国カリフォルニア州San DiegoのSalk Institute, Cell Distribution Centerからのものをハイブリダイゼーションにおいて使用することができる。該技術には、ポリエチレングリコールといったような融合因子を用いて又は当業者にとって周知の電気的手段により骨髄腫細胞及びリンパ球様細胞を融合させることが関与する。融合後、細胞を融合培地から分離し、HAT培地といったような選択成長培地内で成長させて、ハイブリッド形成していない親細胞を除去する。血清が補足された又は血清を含まない本書で記述された培地のいずれかを、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマの培養のために使用することができる。細胞融合技術のもう1つの代替案として、本発明のモノクローナル抗体を産生するためにEBV不死化B細胞が使用される。望ましい場合、ハイブリドーマが拡張されサブクローニングされ、従来の免疫検定手順(例えば放射免疫検定、酵素免疫検定又は螢光免疫検定)により抗免疫原活性について上清が検定される。
【0181】
かかる抗体を生成するハイブリドーマは、既知の手順を用いてインビトロ又はインビボで成長させることができる。モノクローナル抗体は、望まれる場合硫酸アンモニウム沈降、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィ及び限外ろ過といったような従来の免疫グロブリン精製手順により、培地又は体液から単離され得る。望ましくない活性が存在する場合、固相に付着された免疫原から成る吸着剤全体にわたって調製物を走行させ、望ましい抗体を免疫原から離れるように溶離又は放出させることによって、それを除去することができる。
【0182】
ポリクローナル抗体を生成させるべくその他の動物(例えばラット及びウサギ)を免疫化するための免疫原としてベシキュリン断片を含めたベシキュリン及びベシキュリン関連ポリペプチドを使用することもできる。ポリクローナル抗体の産生方法及びその後のその単離及び精製は、当該技術分野において周知である。例えば上記Harlow et al.を参照のこと。抗体を調製するためのその他の適切な技術には、抗原に対する又は代替的にはファージ又は類似のベクター内の抗体ライブラリセレクションに対するリンパ球のインビトロ露呈が関与する。同様に、当該技術分野において既知の手順を用いて、組換え型抗体を産生させることができる。例えば米国特許第4,816,567号を参照のこと。
【0183】
該抗体は、修飾を伴って又は修飾無しで使用することができる。往々にして、抗体は、検出可能なシグナルを提供する物質を共有結合的に又は非共有結合的に接合させることによって標識されるものである。多様な標識及び共役技術が知られており、文献中で広く報告されている。
【0184】
患者の体内又はベシキュリン定量化検定においてベシキュリンの存在を監視するために、抗体を用いることができる。さらに、例えば1つの定められた時点においてか又は循環するベシキュリンレベルの変動を監視するべくベシキュリンのレベルを測定するために一定の時間にわたり、個体内のベシキュリンのレベルを測定するのに、抗ベシキュリン抗体を使用することができる。薬物が投与された個体の体内のベシキュリンレベルを測定するためにも、抗ベシキュリン抗体を使用することができる。このような検定においては、任意の便利な免疫学的形式を利用することができる。かかる形式には、免疫組織化学検定、RIA、IRMA及びELISA検定が含まれる。
【0185】
検定は、ベシキュリンを正に含有しているか又は含有しているはずであるあらゆる体液に関して実施可能である。かかる体液としては、血液、血清、血漿、尿及び脳脊髄液が含まれる。
【0186】
診断のため又は治療目的のため、ベシキュリンに対するモノクローナル又はポリクローナル抗体を使用することが可能である。抗体は、それだけで使用することもできるし、又はカラム又はプレートといったような固体基板に付着されていてもよい。固体基板に付着されている抗体を、例えばELISAといった検定のために又はその他の検定における標準として使用することができる。ベシキュリンに対する抗体は同様に、ベシキュリン単離、ベシキュリン精製及びベシキュリン定量のためにも有用である。
【0187】
抗体は同様に、検定キットの中に含まれ得る。かかるキットはさらに、一定数の任意のただし従来の構成要素を収納することができ、かかる構成要素の選択は当業者にとって日常的なものである。ただし、かかる付加的構成要素は一般に、ベシキュリン自体又は変異体(例えば断片)であり得るベシキュリン参照基準を含むものである。
【0188】
同様に、ベシキュリンに結合すること及びベシキュリン活性を部分的又は完全に妨害することによりベシキュリンアンタゴニストとして上述の通りの抗体を使用することができるということもわかるだろう。
【0189】
上述の通り、ベシキュリンに関する本書中の発見事実は同様に診断的意味合いも有し得る。例えば、ベシキュリン産生がグリコーゲン内へのグルコースの取込みなどを惹起するのに必要とされるものよりも少ない個体又はより活性の低い又は不活性な(突然変異体)形態でベシキュリンを産生する個体は、治療的介入を必要とすることになる。従って診断又は予後診断方法が該発明の範囲内に入る。
【0190】
1つの実施形態においては、診断又は予後診断方法には、ベシキュリン分泌機序及び/又はベシキュリンについてコードする遺伝子内の突然変異の検出が関与することになる。検出は、欧州特許出願公報第0332435号内に開示されている通りの増幅不応性突然変異系(ARMS)又は1本鎖確認分析(Orita et al. (1989))を含む当該技術分野の数多くの標準的技術のうちのいずれか1つを用いて行なわれ得る。
【0191】
突然変異が検出される場合、補正的アプローチが可能となる。これには、代償療法及び遺伝子療法が含まれるがそれらに制限されるわけではない。
【0192】
該発明において有用な組成物は、一般に許容される手順に従って成分を混合することによって調製される。例えば、選択された構成要素を、ミキサー又はその他の標準的デバイスの中で混合して濃縮した混合物を生成し、これを次に水及び増粘剤そして場合によってはpHを制御するためのバッファ又は緊張力を制御するための付加的な溶質を添加することによって最終的濃度及び粘度まで調整することが可能である。ベシキュリンの発見に関係するその他の利用分野は、当業者にとっては明白であり、当業者であれば、以上の記述が一例として提供されているにすぎず又該発明がこれに制限されることはない、ということを認識するであろう。
【0193】
該発明の一例であり該発明又はそのクレームをいかなる形であれ制限するべく意図されていない以下の制限的意味のない実験の部を参照することによって、該発明をよりよく理解することができる。
【実施例】
【0194】
実施例1
この実施例においては、βTC6−F7細胞を含めた以下の材料を用いてベシキュリンを単離した。Axis-Shield製品についてのニュージーランドの代理店であるTotal Lab SystemsからOptiprepTMを得た。使用したアセトニトリルは、BDHからのHiper Solvグレード又はMallinckrodtからのUltim ARグレードのいずれかであった。トリフルオロ酢酸(タンパク質シーケンサーグレードTFA)は、Applied Biosystemsから得た。5μmのJupiter C18カラム、250×2.0mmをPhenomenexから購入した。質量分析標準は、インシュリン(Actrapid(登録商標)組換え型ヒトインシュリン[Novo Nordisk Pharmaceuticals]から精製したRP−HPLC)及びBachemから購入した合成ソマトスタチン(H−2260)で構成されていた。使用されたMSマトリクスはα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(α−CHC)であり、Hewlett Packard社から入手した。グアニジンHCl、ヨード酢酸、修正RPMI(R1383)、及びダルベッコの修正イーグル培地(DMEM;D5523)をSigmaから購入し、一方ウシ胎児血清はInvitrogenから調達した。ジチオスレイトールをBoehringerから、配列決定グレードのエンドプロティナーゼAsp−NをRoche (1420488)から購入した。14C−グルコースはAmerican Radio labeled Chemicals製のものであり、使用されたシンチラントはPackard製のStarscintであった。使用されたその他の化学物質は全て分析グレードのものであった。
【0195】
ベシキュリンを単離するために利用される方法は、以下のものを含んでいた:
β−細胞分泌顆粒の単離: 以下の通りComplete(登録商標)プロテアーゼ阻害物質(Roche)で補足されたOpti PrepTM勾配上の超遠心分離法によりマウスβTC6−F7細胞から分泌顆粒を単離させ、−80℃で保管した。
【0196】
βTC6−F7細胞(15%の熱不活性化ウマ血清及び2.5%のFBSを伴うnDMEM中で培養した継代55〜60)からの分泌顆粒を精製するため、一段階勾配度密度遠心分離方法を用いて、ベシキュリンを同定した。該細胞をトリプシン処理により収獲し(2.5〜4.0mlの細胞)、洗浄し、均一化培地中で懸濁させ(Hutton J., et al., Diabetalogia 2: 365-373 (1982年))、氷上で均一化させ(24ストローク、ボールベアリングホモジナイザ(Martin T., Methodsin Enzymology 68: 225-233 (1989年))その後遠心分離に付した(400g、10分、4℃)。上清を予め形成された連続勾配(均質化培地中13〜31%のOptiPrepTM (Nycomed) v/v)で、重層させ、超遠心分離に付した(SW40Ti;160,000g;16時間;4℃)。勾配管を上部分画(top-fractionated)し(Hakke Buchler Auto Densi Flow II)、顆粒を含むフラクションを組合わせた(浮遊密度1.10−1.11)。タンパク質/酵素マーカー検定により純度を確認した[すなわち、アリール硫酸化酵素(リソソーム)(Chang, et al., Anal. Biochem. 117: 382-389 (1981年)); クエン酸合成酵素(ミトコンドリア)(Srere, Methods in Enzymology 13: 3-5 (1969年));インスリン(顆粒)]。顆粒−コアの精製を追跡するためにはインスリンを用い、一方、顆粒の無欠性を確認するためには、顆粒−マトリクス内に存在するアミリン(Johnson, et al., Am. J. Pathol. 130: 1-8 (1988年))を測定した。インシュリン(顆粒−コア)及びアミリン(顆粒−マトリクス)についてRIAを用いて顆粒の無欠性も確認した。図1Aを参照のこと。
【0197】
単離後の顆粒タンパク質の精製−β細胞顆粒を解凍し、3分間16000gで遠心分離に付した後、上清を逆相HPLC(RP−HPLC)により半精製した。HPLCシステムは、140B Solvent Delivery System, 785A Programmable Absorbance Detector及び214nmに設定した112A、Jupiter C18カラムを伴う37℃に設定したOven / Injector (Applied Biosystems)で構成されていた。10%のバッファBで15分のアイソクラティック期間の後ペプチドを溶出した(バッファA;H2O中の0.08%v/vのTFA;バッファB;20%のAを伴う80%のアセトニトリル;250μl・min-1)。溶離条件には、25分間にわたり10〜60%のバッファBの勾配を利用した。アセトニトリルを除去するために同時溶離ピークをスピードバック濃縮し、その後再び注入し、きわめて平坦な勾配(0.5%のバッファB/分)でのさらなるRP−HPLC分離により分解した。
【0198】
実施例2
この実施例は、ベシキュリンの同定及び特徴づけに関する。
顆粒タンパク質の同定: RP−HPLCから溶離させたペプチドを、メーカー(Applied Biosystems)により供給された化学物質を用いてApplied Biosystems ProciseTM 492タンパク質シーケンサー上でのN末端配列決定に付した。
【0199】
分子量の決定: MALDI−TOF質量分析法(Hewlett Packard G 2025 A)により、精製済みタンパク質の分子量を決定した。試料及び外部標準(10μMのインスリン及びソマトスタチン)をα−CHC(アセトニトリル;1.33%のTFAの1:2の混合物中で33mM)と1:1の割合で混合し、真空乾燥の後同時結晶化した(Hewlett Packard G 2024 A Sample prep accessory)。50レーザーショットからのデータを蓄積することにより未知のタンパク質の質量/電荷比(m/z)が生成された(表1)。この要領でC−ペプチドI及びII断片、アミリン、ユビキチン、プレプチン、IGF−II様ペプチド、インシュリンI及びII、神経ペプチドY、クロモグラニンA及びカルレチキュリン(図1B及び表1)の存在を確認した。ユビキチン、神経ペプチドY、クロモグラニンA及びカルレチキュリンを除く全てのペプチドについて質量が得られたが、これはこれらのタンパク質の富有度が低く、分子量が高かったせいであったと思われる。エドマン配列決定により、これらのタンパク質について得られた配列が全てN末端に由来していたことが証明されたが、観察されたその他の結果からみて、C末端のトランケーションを排除することはできない。2−DEによるβTC6−F7顆粒のその後の分析は、共に総タンパクについて予測されたMWにおいて移動するタンパク質であるユビキチン及びカルレチキュリンの存在を確認した(データ示さず)。MALDI−TOFMS及びN末端配列決定の組合せは、残りの全てのペプチドの明確な同定を可能にした(表1)。最も有利であるのは、本書でベシキュリンと呼ぶペプチドである。
【0200】
表1
分泌顆粒が富化されたフラクションから誘導されたタンパク質の同定
表1は、主要RP−HPLCピークのMALDI−TOF質量分析及びN末端配列決定の結果を示している(註:Xは、未同定残基を表わし、HPLCフラクション番号は、図1B中のピークを意味し、全てのMALDI−TOF質量データは線形モードで生成されている)。
【0201】
【表1】

【0202】
β細胞分泌顆粒から単離されたIGF−II変異体−インスリンI(図1B中の斜線ピーク)の直前に溶離した主要ピークをさらなるRP−HPLC(図2A)に付し、これが2つの密接に溶離するピークから成ることがわかった。第1のピークを、プロIGF−IIのE−ペプチドから誘導された新規ペプチドであるプレプチンとして同定した。第2の斜線入りピークをMALDI−TOFMS及びN末端配列決定に付し、これは、6852.1及び6783.5Daという分子質量(M+H+)をもつ2つの密接に関係するIGF−II変異体から成ることがわかった(図2A及び表1)。これらの変異体は、1つの分子内のN末端アラニンの不在という点でのみ異なっており、これは、ラットIGF−II配列について観察された一般的な現象であった(Yang, et al., J. Biol. Chem. 260: 2578-2582(1985年))。これら2つの部分はきわめて密接に関係していたため、クロマトグラフィ手段によりさらにこれらを分離することは不可能であり(データ示さず)、その後の全ての調査は、タンパク質対について行なわれた。単純さを期して、N末端が無傷である分子についての情報に関する報告のみが記されている。N末端配列決定は、2重配列を生み出し、このことは、これらの分子が2つの連鎖から成る確率が最も高いということを示唆していた。精製されたタンパク質を還元し、アルキル化し、結果としてのペプチドを、MALDI−TOFMSに先立ちRP−HPLC(図2B)により分離した。
【0203】
ベシキュリンの還元及びアルキル化−ベシキュリンピークを、スピードバック濃縮により乾燥させ、100μlのトリス緩衝GnHCl(300mMのトリス/2mM EDTA、pH8.8で緩衝された6Mのグアニジン−HCl)中に溶解させてから、10%のジチオスレイトール(DTT)を2μl添加した。37℃で3時間暗所にてインキュベートする(水浴)前に、エッペンドルフ管をアルゴンでパージした。還元生成物を次に、室温でさらに45分間暗所でインキュベートした3μlのヨード酢酸(1MのNaOH中の1.44Mのヨード酢酸)を添加することによってアルキル化した。18μlの10%DTTを添加することにより、アルキル化反応を停止させた。還元させアルキル化したベシキュリンをRP−HPLC精製及びMALDI−TOF−MS分析に付した。
【0204】
ピークA及びB(図2B)は、それぞれ、3181.7Da及び4014.5Daの分子質量を生み出し、これは(それぞれ3180.3及び4015.3の予測分子質量で)IGF−II残基G41−E67及びA1−N36についてのカルボキシメチル化分子量に密接に対応していた。分離した連鎖を次にアスパラギン特異的プロテアーゼで消化し、結果として得たペプチドを、完全なN末端タンパク質配列決定に先立ち(表2)、RP−HPLC(図2C及びD)により分離させた。
【0205】
還元ベシキュリンのAsp−Nタンパク質分解: スピードバック濃縮によりおよそ2μlまでベシキュリンA及びB鎖の体積を減少させてから、50mMのリン酸バッファ100μl(pH8.0)を添加した。供給業者の指示事項に従ってエンドプロティナーゼAsp−Nを再構築してから、各エッペンドルフ管に対して6.25μl(0.25μgの酵素)を添加し、37℃で2時間インキュベートした(水浴)。ペプチドをRP−HPLCにより分離し、MALDI−TOFMSに付した。
【0206】
【表2】

【0207】
完全配列により、B、A及びDドメインが無傷の状態にとどまっている一方で、IGF−IIのCドメインのCOOH末端から残基R37−R38−S39−R40が除去された成熟マウスIGF−IIに対応する2重鎖分子の同一性が確認された(図3)。類似性及び質量スペクトル分析により、B及びA鎖が、C46−C51の間のさらなる鎖内ジスルフィド結合を伴って、C9−C49及びC21−C60間のジスルフィド結合によって(アミノ酸はIGF−IIポリペプチド内のその位置により番号づけされている)合わせて保持されていることが見極められた(図3)。これらのジスルフィド結合は同様に、成熟ベシキュリンペプチド内のその位置に従って番号づけされた場合、それぞれC9−C43、C21−C56及びC42−C47の間にあるものとして指定することもできる。
【0208】
このペプチド、ベシキュリンの一次構造及びIGF−IIに対するその配列間系は図3に例示されている。
【0209】
実施例3
この実施例は、ベシキュリンの生物活性、すなわちここでは筋肉グリコーゲン内へのグルコースの取込みを実証する実験について記述している。麻酔した雄の絶食Wistarラット(200g±20g)からヒラメ筋を切除した。各々の筋肉を次に最終半径約1.5mmの3つの等しい細片に長手方向に裂いた。平均6枚の筋肉細片を、0.71nM〜237nMの範囲内の濃度で10mlのカルボゲン飽和したnDMEM及びペプチド(ベシキュリン、インスリン−II又は市販のヒトIGF−II(GroPep))の入ったフラスコ内に移し、その後10μlの(0.5μCi)D−[14C(U)]−グルコースを添加した。その後フラスコを、カルボゲン流の下にて30℃で120分間振とう水浴中でインキュベートした。
【0210】
インキュベーションの後、筋肉細片を除去し、乾燥状態でブロッティングしてから液体窒素内で瞬間的に凍結させ24時間凍結乾燥させる。筋肉細片の乾燥済み重量を記録してから、筋肉細片を250μlの60%KOH中で可溶化させた(45分間70℃の水浴)。次に750μlの氷冷エタノールを添加し、−20℃で一晩管を放置し、グリコーゲンの沈降を促進した。管を次に15分間0℃で9000gで遠心分離し、上清を吸引し、グリコーゲンペレットを750μlの氷冷エタノール中に再懸濁させた。遠心分離、吸引及び再懸濁をさらに2回くり返した後、上清を最終的に吸引し、グリコーゲンペレットを2時間70℃でオーブン乾燥した。その後グリコーゲンペレットを200μlのMilli Q水の中で溶解させ、シンチレーション管に移してから、1.8mlのStarscint シンチラント(Hewlett Packard)を添加した。管を徹底的に混合し、その後Beckman LS3801β−計数器を用いて計数した。乾燥筋肉重量でcpm値を除すことで筋肉グリコーゲン内へのD−[14C(U)]−グルコースの取込み量を計算した。
【0211】
この生理学的調査を行なうために、我々は、手持ちのRP−HPLC精製手順を機能増強して、分取量のベシキュリンを単離した。我々は又、分取対照としてインスリン−IIを同時精製し、さらなる正の対照として市販のヒトIGF−IIを使用した。筋肉細片を各ペプチド及び放射性標識されたグルコースの存在下でインキュベートしてから、グリコーゲン内へのグルコースの取込みを測定した。
【0212】
図4に例示した通り、マウスベシキュリンは効果をもたらし、放射性グルコースの摂取及び取込みを刺激した(EC50;227nM、図4)。マウスインシュリンII及びヒトIGF−IIの正の対照は、この検定システムにおいてさらに効果的であった(EC50;それぞれ27nM及び48nM)。
【0213】
実施例4
この実施例は、ヒトベシキュリンの組換え生産について記述している。その他のベシキュリンも同様にこれらの方法を用いて調製可能である。当該技術分野において既知である技術を使用して、B鎖−Asn−Gly−A鎖(BAGA)という順序でベシキュリンのA鎖及びB鎖についてコードするヌクレオチド配列を接合させるAsn−Glyを有する単一のポリヌクレオチドが調製される。代替的には、メーカーの指示事項に従いSculptorインビトロ突然変異誘発システム(Amersham)を用いて部位特異的突然変異誘発によりベシキュリンを生産するための1本鎖ポリヌクレオチドを調製する目的で出発材料として、ポリヌクレオチドをコードするIGF−IIを使用することができる。この手順においては、IGF−II残基37〜40(Arg−Arg−Ser−Arg(配列番号55))の代りにAsn−Gly部位を導入してBAGA配列を生み出すために、インビトロ突然変異誘発が使用される。
【0214】
酵母内での組換え発現に適したAsn−Gly工学処理済みのベシキュリンベクター(pBAGA)が、調節要素との適切な読取り枠内でベクター内にAsn−GlyベシキュリンBAGAポリヌクレオチド配列を導入するために当該技術分野において既知の技術を用いて調製される。適切なベクターとしては、ATCCから入手可能なpRS400発現ベクター及びStratagene, Inc (San Diego, CA)から入手可能なpESCベクターが含まれる。例えば、Geiser, J., 「Saccharomyces cerevisiaeにおける調節された発現のための組換えクローニングベクター」、Biotechniques, 38(3): 378, 382 (2005年)を参照のこと。pESCベクターは各々、相対する配向でGAL1及びGAL10酵母プロモータを含有し、かくして抑制可能なプロモータの制御下で酵母宿主菌株内で同時発現するためベクターの中にベシキュリンA鎖及びベシキュリンB鎖についてコードする別々のポリヌクレオチドを導入することによってベシキュリンを調製するためにも使用可能である。2つのポリヌクレオチドが同時発現される場合、ベシキュリンの生産を、例えば免疫沈降分析といった当該技術分野において既知の方法により確認することができる。
【0215】
pBAGAベクタは、1本鎖分子の組換え発現のためSaccharomyces cerevisiaeの中にトランスフェクトされる。発現の後、1本鎖分子は単離され、当該技術分野において既知の方法を用いて精製可能である。例えばGill, R., et al., Protein Eng. 11; 1011-1019 (1996年)を参照のこと。その後、ヒドロキシルアミン分割によってAsn−Glyリンカーを除去することにより、2鎖ベシキュリン分子を調製する。pH9.2の0.2Mのトリス−HCl、2Mのヒドロキシルアミンの中で4時間45℃で標的タンパク質をインキュベートすることにより、ヒドロキシルアミンAsn−Glyリンカー分割を実施する。濃HClでpHを<6.0に調整することにより反応を終結させる。その後タンパク質を脱塩する。A鎖及びB鎖の接合部における分割を、N末端配列決定により確認することができる。
***
【0216】
上述のことから、本書では例示を目的として該発明の特定の実施形態について記述されてきたものの、該発明の本質及び範囲から逸脱することなくさまざまな修正を行なうことができるということがわかるだろう。以上の記述は該発明を例示するように意図されたものであって、該発明の範囲を制限するように意図されたものではない。従って、本発明は、添付のクレームによってのみ制限される。
【0217】
本書中で参照指示又は言及されている全ての特許、特許出願、刊行物、科学論文、ウェブサイト及びその他の文書及び資料は、該発明が関係する技術分野の当業者の技術レベルを表わし、かかる参照指示された文書及び資料の各々は、その全体が個別に参考として内含されたか又はその全体が本書に記されていた場合と同一程度で参考として本書に内含されている。本発明の記述部分には全てのクレームが含まれる。さらに、当初のクレーム全て、ならびにいずれかの及び全ての優先権文書からの全てのクレームの全体がここで明細書の記述部分に参考として内含され、出願人は、かかるクレームのいずれか及び全てを該出願の記述部分又はその他のいずれかの部分の中に物理的に内含させる権利を留保する者である。かくして例えば、いかなる状況の下であれ、そのクレームの精確な文言が該特許の記述部分の中で、このような文言で(in haec verba)記されていないという主張に基づき1クレームについての記述を提供していないものとして該特許を解釈することはできない。出願人は、いずれかのかかる特許、出願、刊行物、科学論文、ウェブサイト、電子的に入手可能な情報及びその他の参照指示された資料又は文書からのいずれかの及び全ての資料及び情報を本明細書内に物理的に内含させる権利を留保する者である。
【0218】
本書に記述されている特定の方法及び組成物は、好ましい実施形態を代表しており、一例であって該発明の範囲に対する制限として意図されていない。本明細書を考慮した上で当業者は、その他の目的、態様及び実施形態を着想するであろうが、これらは、クレームの範囲により定義される通りの該発明の精神の中に包含される。該発明の範囲及び本質から逸脱することなく本書中に開示されている該発明に対しさまざまな置換及び修正を加えることが可能であるということは、当業者には容易に明らかとなると思われる。本書に例示的に記述されている該発明は、適切にも、不可欠なものとして本書に特定的に開示されていない何らかの要素(単複)又は制限(単複)の不在下で実践できるものである。かくして例えば、本書中の各ケースにおいて、本発明の実施形態又は実施例の中で、「〜を含む(comprising)」「基本的に〜から成る(consisting essentially of)」及び「〜から成る(〜で構成されている)(consisting of)」という用語はいずれも、該明細書中の他の2つの用語のいずれとでも置き換え得るものである。同様に、「〜を含む(comprising)」、「〜を内含する(including)」、「〜を含有する(containing)」などという用語は、拡張的にかつ制限的意味なく読みとられるべきものである。本書で例示的に記述されている方法及びプロセスは、異なる段階順序で実践され得、これらは必ずしも本書又はクレーム中で指示された段階順序に制限される必要がない。同様に、本書及び添付クレーム内で使用されている単数形「a」、「an」及び「the」には、明らかに文脈から他の指示がなされているのでないかぎり、複数への言及も含まれる。かくして例えば、「宿主細胞(a host cell)」に対する言及は、複数のかかる宿主細胞(host cells)(例えばその培養又は集団)をも内含する、等々。いかなる状況下であれ、本書で特定的に又はその他の形で明示的に開示されている特定の例又は実施形態又は方法に制限されるものとして該特許を解釈することはできない。いかなる状況下であれ、その供述が限定なく無条件で明示的かつ特定的に出願人による回答文書中に採用されるのでないかぎり、いずれかの審査官又は特許及び商標権局のその他のいずれかの関係者又は被雇用者によりなされた何らかの供述によって制限されるものとして該発明を解釈することはできない。
【0219】
利用されてきた用語及び表現は、記述用語として用いられ、制限用語として用いられておらず、かかる用語及び表現の使用には、図示され記述された特長又はその一部分の何らかの等価物を排除する意図は全く含まれておらず、請求されている通りの該発明の範囲内でさまざまな修正が可能であることが認識されている。かくして、本発明は、好ましい実施形態により特定的に開示されてきたものの、本書で開示された概念の任意の特長、修正及び変形形態も当業者により用いられる可能性があること、そしてかかる修正及び変形形態は、添付クレームにより定義された通りの本発明の範囲内に入るとみなされること、がわかるだろう。
【0220】
該発明は、本書で広く包括的に記述されてきた。包括的開示の中に入るさらに狭い種及び亜属分類の各々も同様に本発明の一部を成している。従って、各々は、切除された材料が本書に特定的に列挙されているかいないかに関わらず、その属からいずれかの対象物質を除去するただし書きの又は負の制限を伴って、該発明の包括的記述を内含するものとして読み取られるべきである。さらに、該発明の特長又は態様がマルクーシュ群の観点で記述されている場合、当業者であれば該発明が同様に、同じく記述部の一部を成すマルクーシュ群のいずれかの個々の成員又は成員の下位群の観点でそれにより記述されるということを認識するであろう。同様に、本書及び添付クレーム内で使用されている通り、単数形「a」、「an」及び「the」には、文脈が明らかに相反する指示を行なっているのでないかぎり、複数への言及も含まれており、「X及び/又はY」という用語は、「X」又は「Y」又は「X」と「Y」の両方を意味し、1つの名詞に続く「S」という文字はその名詞の単数と複数の両方を指すことも理解すべきである。
【0221】
クレームは、法律に従って解釈されることになる。ただし、いずれかのクレーム又はその一部分を解釈することの容易さ又はむずかしさが主張又は感知されている場合であっても、いかなる状況下であれ、本特許へと導く該出願(単複)の手続き中における1クレーム又はそのいずれかの部分のあらゆる調整又は補正が、先行技術の一部を成していないそのいずれかの及び全ての等価物に対する何らかの権利剥奪として解釈されることはあり得ない。
【0222】
本明細書で開示されている特長は全て、任意の組合せの形に組合わせることができる。かくして、明示的に相反する供述のないかぎり、開示された各特長は、包括的な一連の等価の又は類似の特長の一例にすぎない。
【0223】
該発明は、その詳細な説明と併せて記述されてきたが、以上の記述は、添付のクレームの範囲によって定義づけられる該発明の範囲を制限するのではなく例示するように意図されたものである。かくして、以上のことから、該発明の特定的実施形態が例示を目的として本書で記述されてきたものの、該発明の本質及び範囲から逸脱することなくさまざまな修正を行なうことが可能である、ということが認識されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0224】
【図1A−B】図1Aは、顆粒コア(インスリン)、顆粒基質(アミリン)、リソソーム(アリール硫酸化酵素)、ミトコンドリア(クエン酸合成酵素)を含めた連続Opti Prep勾配内でβTC6−F7細胞由来のオルガネラの局在化を標示するマーカータンパク質についての検定を示す。図1Bは、逆相高性能液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)による顆粒タンパク質の精製を示す。
【図2A−B】図2Aは、図1Bからの斜線ピークのRP−HPLC精製を示す。さらなるRP−HPLC精製が2つの主要ピークを生み出しており、第2のピークは飛行時間型マトリクス援用レーザー脱離/イオン化(MALDI−TOF)質量分析法により分析され、IGF−IIの処理済み形態を表わす分子量を有することが見極められた(表1参照)。このピークを収集し、還元及びアルキル化に付した。図2Bは、還元及びアルキル化されたベシキュリンのRP−HPLCプロファイルを示す。これらのピークを収集し、プロテアーゼAsp−Nによるタンパク質分解消化に付した。
【図2C−D】図2Cは、精製されたベシキュリンA鎖のAsp−N消化物からのRP−HPLCプロファイルを示す。A1−A3とマーキングされたピークをMALDI−TOF質量分析法により分析した。ピークA2はC41−C51に類似した分子量を生み出した(表1参照)。ピークA1−A3は同様に、NH2末端配列決定にも付され、その結果は表2に提供されている。図2Dは、精製済みベシキュリンB鎖のAsp−N消化物に従ったRP−HPLCプロファイルを示す。B1−B3とマーキングしたピークをMALDI−TOF質量分析法により分析した。ピークB1及びB3は、それぞれD23−N36及びA1−V14に類似した分子量を生み出した(表1参照)。ピークB1−B3も同様に、NH2−末端配列決定に付し、その結果は表2に提供されている。
【図3A】IGF−II(67個のアミノ酸、IGF−IIドメインB、C、A、D、E及びベシキュリンから成る1本鎖ポリペプチド)の一次構造を示す。
【図3B】IGF−II及びベシキュリンのポリペプチド構造を示す。
【図4】ラットヒラメ筋検定における筋肉グリコーゲン内へのグルコースの取込みに対するさまざまな濃度のベシキュリンの効果を示す。(□白四角)マウス−ベシキュリン、(●黒丸)マウスインスリンII及び(○白丸)ヒトIGF−IIについての用量応答曲線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に純粋なベシキュリン(vesiculin)。
【請求項2】
ヒトベシキュリンである、請求項1に記載のベシキュリン。
【請求項3】
ラットベシキュリンである、請求項1に記載のベシキュリン。
【請求項4】
前記ベシキュリンが、マウスベシキュリン、ウマベシキュリン、ウシベシキュリン、ヒツジベシキュリン及びニワトリベシキュリンから成る群の中から選択される、請求項1に記載のベシキュリン。
【請求項5】
前記ベシキュリンが、サケベシキュリン、ウナギベシキュリン、ブリームベシキュリン及びサメベシキュリンから成る群の中から選択される、請求項1に記載のベシキュリン。
【請求項6】
前記ベシキュリンがカンガルーベシキュリンである、請求項1に記載のベシキュリン。
【請求項7】
前記ベシキュリンが62個のアミノ酸を有する、請求項1、2又は3のいずれか1項に記載のベシキュリン。
【請求項8】
前記ベシキュリンが63個のアミノ酸を有する、請求項1、2又は3のいずれか1項に記載のベシキュリン。
【請求項9】
前記ベシキュリンが少なくとも約90%の純度を有する、請求項1〜5又は6のいずれか1項に記載のベシキュリン。
【請求項10】
前記ベシキュリンが少なくとも約95%の純度を有する、請求項2に記載のベシキュリン。
【請求項11】
ベシキュリンをコードする単離ポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記ベシキュリンがヒトベシキュリンである、請求項11に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項13】
前記ベシキュリンがラットベシキュリンである、請求項11に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項14】
前記ベシキュリンが、マウスベシキュリン、ウマベシキュリン、ウシベシキュリン、ヒツジベシキュリン、カルガルーベシキュリン、及びニワトリベシキュリンから成る群の中から選択される、請求項11に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項15】
前記ベシキュリンが、サケベシキュリン、ウナギベシキュリン、ブリームベシキュリン及びサメベシキュリンから成る群の中から選択される、請求項11に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項11〜14又は15のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項17】
請求項16に記載の発現ベクターを含む組換え型宿主細胞。
【請求項18】
前記宿主細胞が哺乳動物細胞である、請求項17に記載の組換え型宿主細胞。
【請求項19】
前記哺乳動物細胞がCHO細胞である、請求項18に記載の宿主細胞。
【請求項20】
前記宿主細胞が細菌細胞である、請求項17に記載の組換え型宿主細胞。
【請求項21】
前記細胞が大腸菌(E.coli)である、請求項20に記載の宿主細胞。
【請求項22】
【化1】

で表されるアミノ酸配列を有する第1鎖及び
【化2】

で表されるアミノ酸配列を有する第2鎖を含む単離ポリペプチドにおいて、
Ala1は存在するか又は不在であり;R1はGly又はArgであるか又はそのいずれかの保存的変異体であり;R2はGly又はSer又はそのいずれかの保存的変異体であり;R3はGly又はSer、又はそのいずれかの保存的変異体であり;R4はSer又はAla又はそのいずれかの保存的変異体であり;R5はIle又はVal又はAla又はそのいずれかの保存的変異体であり;R6はAsn又はSer又はそのいずれかの保存的変異体であり;R7はThr又はAla又はそのいずれかの保存的変異体である、単離ポリペプチド。
【請求項23】
【化3】

で表されるアミノ酸配列を有する第1鎖及び
【化4】

で表されるアミノ酸配列を有する第2鎖を含む単離ポリペプチドにおいて、
1はAla、Asn、Leu又はそのいずれかの保存的変異体であり;R2はLeu、Ile、又はそのいずれかの保存的変異体であり;R3はThr、Gln又はそのいずれかの保存的変異体であり;R4はThr、Ala、Lys、Val又はそのいずれかの保存的変異体であり;R5はPro、Ser又はそのいずれかの保存的変異体であり;R6はAla、Val、Pro又はそのいずれかの保存的変異体であり;R7はLys、Glu又はそのいずれかの保存的変異体であり;R8は、Ser、Ala又はそのいずれかの保存的変異体であり;R9はGlu、Ala又はそのいずれかの保存的変異体であり;R10は不在であるか又はAla、Glu、Asp又はその保存的変異体であり;R11はTyr、Ala、Val又はそのいずれかの保存的変異体であり;R12はArg、Gly、Ala又はその保存的変異体であり;R13はPro、Thr、Ser、Leu又はその保存的変異体であり;R14はSer、Gly、Ala、Glu又はその保存的変異体であり;R15はThr、Tyr、Ala又はその保存的変異体であり;R16は、Val、Ile又はその保存的変異体であり;R17はGly、Ser、Glu、Ala又はその保存的変異体であり;R18はAsp、Glu又はそのいずれかの保存的変異体であり;R19はSer、Val又はそのいずれかの保存的変異体であり;R20はArg、Leu、Ser又はその保存的変異体であり;R21はPro、Lys又はそのいずれかの保存的変異体であり;R22は、Ala、Ser、Gly、Val、Thr又はその保存的変異体であり;R23はSer、Gly、Val又はその保存的変異体であり;R24はArg、Pro、Gly又はその保存的変異体であり;R25はAla、Arg、Val、Ile、Leu、Asn、Ser、Gly又はその保存的変異体であり;R26はSer、Asn、Arg又はその保存的変異体であり;R27は不在であるか又はArg、Ser、Asn又はその保存的変異体であり;R28は不在であるか又はValであるか又はその保存的変異体であり;R29は不在であるか又はSerであるか又はその保存的変異体である単離ポリペプチド。
【請求項24】
第1及び第2鎖が単数又は複数のジスルフィド結合により接合されている、請求項22又は23に記載の単離ポリペプチド。
【請求項25】
第1及び第2鎖が2つのジスルフィド結合により接合されている、請求項24に記載の単離ポリペプチド。
【請求項26】
薬学的に許容される担体及び請求項1に記載のポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項27】
薬学的に許容される担体及び請求項2に記載のポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項28】
薬学的に許容される担体及び請求項22又は23に記載のポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項29】
薬学的に許容される担体及び請求項24に記載のポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項30】
薬学的に許容される担体及び請求項25に記載のポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項31】
A鎖及びB鎖を有する組換え型ベシキュリンを産生させる方法であって、i)ベシキュリンB鎖−Asn−Gly−ベシキュリンA鎖という配列を有するポリヌクレオチド配列を調製するステップ;ii)前記ポリヌクレオチド配列を酵母内での発現に適したベクター内に導入するステップ;iii)ベクターを酵母内にトランスフェクトし前記ベクターをその内部で発現させるステップ;iv)ベシキュリンB鎖−Asn−Gly−ベシキュリンA鎖ポリペプチドを単離するステップ;及びv)Asn−Glyリンカーを除去し前記ベシキュリンを形成するステップを含む方法。
【請求項32】
前記ベクターがpRS400又はpESC発現ベクターである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
A鎖及びB鎖を有するベシキュリンを合成する方法であって、i)固相又は溶液相合成によってか又はその変形形態を用いることによってベシキュリンA鎖を合成するステップ;(ii)固相又は溶液相合成によりベシキュリンB鎖を合成するステップ;iii)ジスルフィド結合の形成に有利に作用する条件下で前記ベシキュリンA鎖とベシキュリンB鎖を合わせるステップを含む方法。

【図1A−B】
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【図2A−B】
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【図2C−D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−538501(P2008−538501A)
【公表日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507584(P2008−507584)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際出願番号】PCT/NZ2006/000078
【国際公開番号】WO2006/112737
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(501410698)オークランド ユニサービシーズ リミティド (4)
【Fターム(参考)】