説明

ベルトループ付けミシン

【課題】 フォーク部材をベルトループから外す際にドッグイヤーを形成してしまうことを抑え、品質不良を抑制する。
【解決手段】 ベルトループ付けミシンは、ベルトループを挟持し且つ解放可能なループクランプと、ループクランプで挟持されたベルトループを挟んで回転することによりベルトループの端部を中央側に折り返すフォーク部材と、フォーク部材を回転させるとともに、ベルトループの端部を折り返す位置にフォーク部材を進退させるフォーク部材駆動部と、ベルトループがベルトループ形状となるように折り返された端部を縫い針により生地に縫い付ける針上下動機構とを備えている。フォーク部材によりベルトループの端部を挟んで回転させて当該端部を折り返した後に、ベルトループの端部及び生地に縫い針を貫通させた状態で、ベルトループの端部を折り返した位置からフォーク部材を退避させてから、ベルトループの端部を縫い針により生地に縫い付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトループ付けミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンツやスカートなどの縫製物の腰部に、ベルトを挿通するためのベルトループを縫い付けるベルトループ付けミシンが知られている。
このようなベルトループ付けミシンで、ベルトループを縫製する場合には、ベルトループの端部を当該ベルトループの中央側に折り返した部分を生地に縫い付ける。図12に示すように、ベルトループB100の端部B101の折り返し時においてはフォーク部材100でベルトループB100の端部B101を挟んでから、フォーク部材100を回転させることで、端部B101の折り返しを行っている(図12(a)参照)。そして、折り返し後には、ベルトループB100の端部B101からフォーク部材100を抜いてから、当該端部B101の縫製をするようになっている(図12(b)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−75386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図13に示すように、フォーク部材100をベルトループB100の端部B101から抜く際に、生地とベルトループB100との摩擦によって、端部B101が他の部分からはみ出してしまう場合があった。このままの状態で縫製が行われるとドッグイヤーが生じてしまい、品質不良となってしまう。
本発明の課題は、フォーク部材をベルトループから外す際にドッグイヤーを形成してしまうことを抑え、品質不良を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係るベルトループ付けミシンは、
長手方向が所定方向に向けられた状態のベルトループを挟持し且つ解放可能なループクランプと、
前記ループクランプで挟持された前記ベルトループを挟んで回転することにより前記ベルトループの端部をそのベルトループの中央側に折り返すフォーク部材と、
前記フォーク部材を回転させるとともに、前記ベルトループの端部を折り返す位置に前記フォーク部材を進退させるフォーク部材駆動部と、
前記ベルトループが所定のベルトループ形状となるように折り返された前記端部を縫い針により生地に縫い付ける針上下動機構と、
前記フォーク部材退避部及び前記針上下動機構を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記フォーク部材駆動部を制御して、前記フォーク部材を回転させ、前記ベルトループの端部を挟んで回転させて当該端部を折り返した後に、
前記針上下動機構を制御して、前記ベルトループの前記端部及び前記生地に前記縫い針を貫通させた状態で、
前記フォーク部材駆動部を制御して、前記ベルトループの前記端部を折り返した位置から前記フォーク部材を退避させてから、
前記針上下動機構を制御して、前記ベルトループの前記端部を前記縫い針により前記生地に縫い付けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、ベルトループの端部を折り返した後に、当該ベルトループの端部及び生地に縫い針を貫通させた状態で、ベルトループの端部を折り返した位置からフォーク部材を退避させてから、ベルトループの端部を縫い針により生地に縫い付けるので、退避動作によってフォーク部材がベルトループの端部を引き出そうとしても、縫い針によって規制することができる。したがって、フォーク部材をベルトループから外す際にドッグイヤーを形成してしまうことを抑え、品質不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係るベルトループ付けミシンの全体を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るベルトループ付けミシンのミシン本体側を示す斜視図である。
【図3】本実施形態に係るベルトループ付けミシンの制御系を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係るベルトループ付けミシンにおける針板周辺の斜視図である。
【図5】本実施形態に係るベルトループの縫着形状の一例を示す説明図であり、基本形状(a)と、その応用形状(b)である。
【図6】本実施形態に係るベルトループ付けミシンにおける縫着動作の流れを示すフローチャートである。
【図7】本実施形態に係るベルトループ付けミシンにおける縫着動作の各部の動作を示す説明図である。
【図8】本実施形態に係るベルトループ付けミシンにおける縫着動作の各部の動作を示す説明図である。
【図9】本実施形態に係るベルトループ付けミシンにおける縫着動作の各部の動作を示す説明図である。
【図10】本実施形態に係るベルトループ付けミシンにおける縫着動作の各部の動作を示す説明図である。
【図11】本実施形態に係るベルトループ付けミシンにおける縫着動作の各部の動作を示す説明図である。
【図12】ベルトループの端部を縫製する際の状態を示す説明図である。
【図13】ベルトループの端部を縫製したことで発生するドッグイヤーを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0009】
(縫製装置の概要)
図1は本実施の形態に係るベルトループ付けミシン10の全体を示す斜視図、図2はベルトループ付けミシン10のミシン本体側を示す斜視図、図3は制御系を示すブロック図、図4は針板周辺の斜視図である。
ベルトループ付けミシン10は、縫い針11を上下動させる図示しない針上下動機構と、所定方向に向けられたベルトループBを挟持するループクランプ31を備えるクランプ機構30と、ベルトループBをクランプ機構30に供給するループ供給機構60と、ベルトループBの縫着が行われる生地が載置される針板3上に支持された身頃送り下板51と当該身頃送り下板51への下降動作によりベルトループBを押さえつけるループ押さえ52とを備えるループ押さえ機構50と、生地を保持する布押さえ71を備える布押さえ機構70と、ミシンフレーム2と、図示しない釜機構と、上記各構成を制御する制御手段80とを備えている。
【0010】
(ミシンフレーム)
ミシンフレーム2は、ミシンベッド部2aと、ミシンベッド部2aから水平に延在し釜機構を内蔵したシリンダーベッド部2dと、ミシンベッド部2aから立設した縦胴部2bと、縦胴部2bから延在し針上下動機構を内蔵したミシンアーム部2cとを備えている。ミシンアーム部2cはシリンダーベッド部2dと同じ方向に延出されている。
以下の説明において、水平であってシリンダーベッド部2d及びミシンアーム部2cの長手方向に平行な方向をY軸方向、水平であってY軸方向に直交する方向をX軸方向、鉛直上下方向をZ軸方向とし、説明の必要に応じて、Y軸方向における一端部側であってミシンアーム部2cの面部側を「手前側」、Y軸方向における他端部側であって縦胴部2b側を「奥側」というものとする。
【0011】
(針上下動機構及び釜機構)
針上下動機構は、ミシンアーム部2cの手前側端部の内部で上下動可能に支持されると共に縫い針11を下端部に保持する針棒と、針棒の上下動の駆動源となるミシンモータ13と、ミシンモータ13により回転駆動を行う主軸と、主軸の回転駆動を上下動に変換して針棒に伝えるクランク機構とから構成されており、周知のものと同様である。
釜機構は、いわゆる半回転釜を用いた釜機構であり、シリンダーベッド部2dの手前側端部の内側であって針落ち位置下部において回転可能に支持された半回転釜と、主軸に設けられた偏心カムと、偏心カムを一端部で支持するクランクロッドと、クランクロッドの他端部に連結されたアーム部により往復回動が付与される釜軸と、釜軸に支持されたドライバとを備え、周知のものと同様である。
【0012】
(ループ供給機構)
ループ供給機構60は、クランプ機構30の手前側に配置されたループ繰り出し部60aと、クランプ機構30より奥側に配置されたループ引き込み部60bとを備えている。
ループ繰り出し部60aは、その手前側端部に無端ベルト状の未切断ベルトループの取り込み口(図示略)を有しており、その取り込み口から取り込まれた無端のベルトループを奥側に設けられた繰り出し口まで搬送する搬送ローラ61を回転駆動する繰り出しモータ62と、所定の長さで無端のベルトループを切断するカッタ63を駆動する切断用エアシリンダ64とを備えている。
ループ引き込み部60bは、ベルトループBを挟んで保持するループ保持爪66と、ループ保持爪66を先端に備えるロッド65をY軸方向に進退させるY軸モータ68と、ループ保持爪66の挟持状態と解放状態とを切り換える爪用エアシリンダ67とを備えている。このループ保持爪66は、ロッド65の進退に伴い、クランプ機構30の奥側の待機位置とループ繰り出し部60aの繰り出し口との間を進退する。
そして、ループ供給機構60は、ループ繰り出し部60aの繰り出し口から繰り出したベルトループBの先端を、ループ保持部として機能するループ引き込み部60bのループ保持爪66で保持してクランプ機構30側へ引き込み、そのベルトループBをクランプ機構30に供給して、ループクランプ31に受け渡すようになっている。
なお、無端のベルトループが切り分けられてなる個々のベルトループBの長さは、繰り出しモータ62の駆動量およびループ保持爪66の移動量を制御手段80が制御することにより決定される。
【0013】
(クランプ機構)
クランプ機構30は、ミシンフレーム2に対して手前側(面部側)から奥側を向いた状態で見て右側に配置されている。以下の説明において、「右」というときには、X軸方向に平行な方向であって手前側(面部側)から奥側を向いた状態で見て右となる方向を示すものとし、単に「左」というときには、X軸方向に平行な方向であって手前側(面部側)から奥側を向いた状態で見て左となる方向を示すものとする。
クランプ機構30は、ベルトループBを挟持する上側クランプ31a及び下側クランプ31bからなるループクランプ31と、ループクランプ31を保持する保持ブロック32と、上側クランプ31aに昇降動作を付与してベルトループBの挟持状態と解放状態とを切り換えるクランプ用エアシリンダ33と、保持ブロック32をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向について移動可能に支持する支持台34と、保持ブロック32にX軸方向に沿った移動動作を付与するクランプ用X軸モータ35と、保持ブロック32にY軸方向に沿った移動動作を付与するクランプ用Y軸モータ36と、保持ブロック32にZ軸方向に沿った移動動作を付与するクランプ用Z軸エアシリンダ37とを備えている。
【0014】
図4に示すように、ループクランプ31は、保持ブロック32の左端に設けられ、下側クランプ31bは保持ブロック32に固定装備され、上側クランプ31aは下側クランプ31bの真上において上下動可能に支持されている。また、上側クランプ31aはその先端部下面に凹状の保持部が形成されており、この保持部に嵌合するようにベルトループBの保持が行われる。ベルトループBは、保持部に嵌合保持されることにより、その長手方向をY軸方向に沿わせた状態で保持が行われる。
クランプ用エアシリンダ33は、保持ブロック32に装備されており、そのプランジャの進退動作により上側クランプ31aの上昇解放動作と下降保持動作とを切り換えることを可能としている。なお、クランプ用エアシリンダ33によるベルトループBの保持圧は、ベルトループBがY軸方向に沿ったある程度の張力を受けると引き抜くことが可能な程度に調節されている。
【0015】
保持ブロック32は、例えば、X、Y、Z軸方向の各方向に沿った滑動を可能とするスライドガイドを組み合わせて支持台34に支持されており、これらの方向への移動を可能としている。そして、クランプ用X、Y軸モータ35,36及びクランプ用Z軸エアシリンダ37の協働により、保持ブロック32とともにループクランプ31をX−Y平面に沿った任意の位置及びZ軸方向に沿う任意の高さに移動させることができる。
例えば、ループクランプ31を移動させることで、ベルトループBをループ供給機構60による供給位置から縫製の実行位置へ搬送することや、ベルトループBの複数箇所に縫着縫製が行われる場合に各縫着箇所に応じてベルトループBを移動させることや、ベルトループBが所定のベルトループ形状となるようにベルトループBの向きや配置を調整することなどが行われる。
【0016】
また、保持ブロック32には、ループクランプ31に対してY軸方向の奥側に隣接するフォーク部材38が併設されている。
フォーク部材38は、X軸方向に沿って延出された基部の先端部(左端部)からさらに二本の棒状体が左方に延出された二叉状に形成されており、その二本の棒状体の間にベルトループBを通して基部をX軸回りに回転させることにより、ベルトループBの端部を当該ベルトループBの中央側に折り返すことを可能としている。かかるフォーク部材38は、X軸方向に沿って進退移動可能に保持ブロック32に支持されており、前進時にループクランプ31と並ぶ位置となり、後退時にはループクランプ31より右方に退避するようにフォーク用エアシリンダ40によって進退動作が付与される。また、フォーク部材38のX軸回りの回転動作はロータリーアクチュエータ41により付与される。これらフォーク用エアシリンダ40及びロータリーアクチュエータ41が本発明に係るフォーク部材駆動部である。
【0017】
(ループ押さえ機構)
ループ押さえ機構50の身頃送り下板51は、布送り台59に支持されており、シリンダーベッド部2dの針板3上でX軸方向及びY軸方向に移動可能に支持されている。そして、縫製時には身頃送り下板51の上面に生地が載置される。また、針板3はX−Y平面に平行な水平面であり、その針板3上の針落ち位置には縫い針11が挿入される針穴が形成されている。
このループ押さえ機構50は、布送り台59をX軸方向に任意に移動させる生地用X軸モータ53と、布送り台59をY軸方向に任意に移動させる生地用Y軸モータ54とを備えている。生地用X軸モータ53と生地用Y軸モータ54はいずれもパルスモータであり、各々の出力軸にはエンコーダ55,56が装備されている。生地用X軸モータ53及びY軸モータ54は、毎針の針落ちに同期して、縫製パターンに定められた所定の針落ち位置に針落ちが行われるようにベルトループB及び生地の位置決めを行うために、各エンコーダ55,56の出力に基づくフィードバック制御が行われる。
【0018】
布送り台59は、シリンダーベッド部2d上に備えられ、針板3の奥側からシリンダーベッド部2dと同じ方向に延在している。布送り台59の作業者側先端には、ループ押さえ52を上下動可能に支持する押さえ足取付台58が設けられており、その押さえ足取付台58を介してループ押さえ52が布送り台59に支持されている。
また、身頃送り下板51は、布送り台59に取り付けられた支持体72に連結板51aを介して連結されており、身頃送り下板51は生地用X軸モータ53及びY軸モータ54によって移動される布送り台59と一体的にX−Y方向に移動する。それにより、布送り台59に支持された身頃送り下板51とループ押さえ52は、生地用X軸モータ53及びY軸モータ54による布送り台59の移動によって、布送り台59と一体的にX−Y方向の移動を行うこととなる。
また、ループ押さえ52の昇降は、ループ押さえ用パルスモータ57により行われ、下降によりベルトループB及び生地を上方から下方に押圧保持し、上昇によりベルトループB及び生地を解放する。
ループ押さえ52は、その下部には一般的なベルトループBの幅より若干幅の広い略矩形状の枠体52aを備えている。ベルトループ付けミシン10では、ベルトループBの縫着縫製において、ベルトループBの幅方向に沿った縫いが一乃至複数回実施されるので、ループ押さえ52の枠体52aは、ベルトループBの幅方向に沿った一回分の縫いが網羅できる大きさに設定されている。
ループ押さえ機構50は、上記構成により、布送り台59をX―Y方向に移動することにより、身頃送り下板51上でループ押さえ52が保持したベルトループB及び生地をX−Y平面に沿った任意の位置に移動位置決めすることができる。
【0019】
(布押さえ機構)
布押さえ機構70の布押さえ71は、支持体72を介して布送り台59に備えられている。布押さえ71を支持する支持体72は、布送り台59にY軸方向に移動可能に取り付けられている。なお、支持体72には連結板51aを介して身頃送り下板51が連結している。
布押さえ71は、平面視略C字状の枠体であり、針板3より小さく、ループ押さえ52の枠体52aよりも大きく設定されている。この布押さえ71は、身頃送り下板51の上面においてループ押さえ52の枠体52aの周囲を囲むように配置されている。
この布押さえ71は、支持体72を介して布送り台59に取り付けられているため、生地用X軸モータ53と生地用Y軸モータ54による布送り台59のX軸及びY軸方向への移動によって、布送り台59と一体的に移動を行うこととなる。
また、布押さえ71は、生地用Y軸モータ54による布送り台59のY軸方向への移動とは別に、支持体72とともにY軸方向に移動可能且つ布押さえ71単独でZ軸方向に昇降可能に支持されている。
布押さえ71のZ軸方向の昇降動作は、布押さえ用エアシリンダ73により行われ、下降により生地を上方から下方に押圧保持し、上昇により生地を解放する。
また、支持体72のY軸方向移動は、第2の生地用Y軸モータ74を駆動源として行われる。第2の生地用Y軸モータ74による支持体72のY軸方向移動により、支持体72に支持された布押さえ71はY軸方向に移動するとともに、支持体72に連結板51aを介して連結された身頃送り下板51も一体的にY軸方向に移動する。この第二の生地用Y軸モータ74は、パルスモータであり、布押さえ71による生地のY軸方向移動量は任意に制御することが可能である。
布押さえ機構70は、上記構成により、身頃送り下板51上で布押さえ71が押圧保持した生地をベルトループBの向けられた方向(Y軸方向)に沿った任意の位置に移動位置決めすることができる。
【0020】
(ベルトループ付けミシンの制御系)
制御手段80は、各種の処理及び制御を行うCPU81と、ベルトループ付けミシン10の動作制御を実行する動作制御プログラム及び設定情報が書き込まれているROM82と、CPU81の処理において各種データを格納するワークエリアとしてのRAM83と、各種の設定データを記録するEEPROM84とを備えている。
また、制御手段80は、各種の制御対象及びエンコーダ55,56とCPU81とを接続するためのI/Oインターフェイス85を備えている。即ち、かかるI/Oインターフェイス85を介してミシンモータ13,クランプ用エアシリンダ33,クランプ用X軸モータ35,クランプ用Y軸モータ36,クランプ用Z軸エアシリンダ37,ロータリーアクチュエータ41,フォーク用エアシリンダ40,爪用エアシリンダ67,爪用Y軸モータ68,布押さえ用エアシリンダ73,第二の生地用Y軸モータ74,切断用エアシリンダ64,繰り出しモータ62,生地用X軸モータ53,生地用Y軸モータ54,ループ押さえ用パルスモータ57,エンコーダ55及び56がCPU81に接続される。なお、各エアシリンダ33,37,40,64,67,73は、いずれも当該各エアシリンダに対する吸排気を行う図示しない電磁バルブを介してその作動が制御されている。
また、CPU81には、パルスモータ91の移動位置により緩め量を調整し、シリンダ92の駆動により緩め棒を動作させることにより、ベルトループBに所望の緩め量を確保可能とされたループ緩め手段93が接続されている。
この制御手段80は、ミシンの各部を制御して、縫製に関する各種動作を実行させる。
また、制御手段80には、各種の設定を入力するためのタッチパネル87と設定情報の表示を行う表示パネル88を備える操作手段86と、縫製の開始を入力するスタートスイッチ89とがI/Oインターフェイス85を介して接続されている。
【0021】
このベルトループ付けミシン10で縫着縫製するベルトループBの縫着形状として、両端部を互いに内側に折り返す最も基本的な縫着形状(図5(a)参照)の他に、ベルトループBの一端部を略Z字状に折りたたんで縫いつける縫着形状(図5(b)参照)がある。
このような縫着形状のベルトループBの縫い付けを行う場合には、図5(a)(b)に示すように、複数のパラメータを設定する必要があり、操作手段86のタッチパネル87によりその設定入力が行われる。
例えば、図5(a)に示す基本的な縫着形状の場合、縫い目L1、L2の順に縫着が行われる。これに対するパラメータとして、縫い目L1からベルトループBの一端の縁までの距離Ma、縫い目L1から縫い目L2までの距離Mb、縫い目L1からベルトループBの一端の折り返しまでの距離Md、縫い目L2からベルトループBの他端の折り返しまでの距離Me、縫い目L2からベルトループBの他端の縁までの距離Mf、などの値が操作手段86により設定される。
また、図5(b)に示す略Z字状を呈する縫着形状の場合、縫い目L1、L2、L3の順に縫着が行われる。これに対するパラメータとして、縫い目L1からベルトループBの一端の縁までの距離Ma、縫い目L2から縫い目L3までの距離Mb、縫い目L1から縫い目L2までの距離Mc、縫い目L2からベルトループBの一端の折り返しまでの距離Md、縫い目L3からベルトループBの他端の折り返しまでの距離Me、縫い目L3からベルトループBの他端の縁までの距離Mf、などの値が操作手段86により設定される。
これらのパラメータの設定内容は、EEPROM84に記録され、縫製制御の際に参照される。なお、選択された各縫い目の縫いパターンを形成するために必要となる制御パラメータ(閂止め縫いやしつけ縫いを行うために必要となる一針ごと動作量や動作の順番等)は規定のパラメータとして予めROM82又はEEPROM84に設定されており、その値が参照されることとなる。
【0022】
また、生地に縫い付けるベルトループBが所定のベルトループ形状となるようにベルトループBの端部を折り返す際に、そのベルトループBの端部がベルトループBの中央側に折り重なるように、ベルトループBの向きや配置を調整するためのパラメータの入力が操作手段86のタッチパネル87により行われる。例えば、ベルトループBの向きや配置を調整するために、ベルトループBを挟持したループクランプ31を、ベルトループBの長手方向と交差する方向に移動させる移動量および移動方向を操作手段86により入力する。その設定入力されたパラメータは、EEPROM84に記録され、後述するループクランプ移動制御の際に参照される。
【0023】
次に、生地に縫い付けるベルトループBが所定のベルトループ形状となるように、そのベルトループBの端部を折り返す際に実行するループクランプ移動制御と折り重ね制御とについて説明する。
ここでは、図5(b)に示したベルトループBの縫着形状における縫着を行う場合のループクランプ移動制御と折り重ね制御について、図6〜図11に基づいて説明する。図6は縫着動作の流れを示すフローチャートであり、図7〜図11は縫着動作の各部の動作を示す説明図である。
【0024】
まず、縫着動作の前には、ステップS1として、身頃送り下板51に対して生地Cがセットされてから、スタートスイッチ89が押される(図7(a)参照)。
次いでステップS2では、制御手段80は、布押さえ用エアシリンダ73を制御して、布押さえ71を下降させ生地Cを押さえる(図7(b)参照)。
ステップS3では、制御手段80は、クランプ用X軸モータ35を制御して、ループクランプ31をX方向に前進させ、縫い目L1に対応する縫製位置へベルトループBを供給する(図7(c)参照)。
この供給前においては、ループ繰り出し部60aの繰り出し口から繰り出されたベルトループBの一端部b1をループ引き込み部60bのループ保持爪66で保持し、保持したベルトループBをクランプ機構30側へ引き込み、その引き込んだベルトループBをクランプ機構30のループクランプ31で挟持する。ループクランプ31が挟持したベルトループBはカッタ63によって所定の長さに切断されている。
ステップS4では、制御手段80は、クランプ用Z軸エアシリンダ37を制御して、ループクランプ31を下降させる(図7(d)参照)。
【0025】
ステップS5では、制御手段80は、ループ押さえ用パルスモータ57を制御して、ループ押さえ52を下降させることで、ループ押さえ52で生地CとベルトループBを押さえる(図8(a)参照)。
ステップS6では、制御手段80は、クランプ用Z軸エアシリンダ37及びクランプ用Y軸モータ36を制御して、ループクランプ31を上昇させるとともに当該ループクランプ31をY方向に前進させる(図8(b)参照)。
ステップS7では、制御手段80は、ミシンモータ13を制御して、針上下動機構を駆動することで、縫い針11によりベルトループBの縫い目L1を縫製する。縫製が終了すると制御手段80は、ループ押さえ用パルスモータ57を制御してループ押さえ52を上昇させる(図8(c)参照)。
ステップS8では、制御手段80は、クランプ用Y軸モータ36を制御して、ループクランプ31を、ループ押さえ52の下を通過するように奥に移動させることで、ベルトループBを折り曲げる。そして、制御手段80は、生地用X軸モータ53及び生地用Y軸モータ54を制御して、身頃送り下板51を縫い目L2に対応する位置に移動させる(図8(d)参照)。
【0026】
ステップS9では、制御手段80は、ループ押さえ用パルスモータ57を制御して、ループ押さえ52を下降させる(図9(a)参照)。
ステップS10では、制御手段80は、ミシンモータ13を制御して、針上下動機構を駆動することで、縫い針11によりベルトループBの縫い目L2を縫製する。縫製が終了すると制御手段80は、ループ押さえ用パルスモータ57を制御してループ押さえ52を上昇させる(図9(b)参照)。
ステップS11では、制御手段80は、パルスモータ91及びシリンダ92を制御して、ループ緩め手段93をベルトループBにおける縫い目L2近傍の上方にセットする(図9(c)参照)。
ステップS12では、制御手段80は、クランプ用Y軸モータ36を制御して、ループクランプ31をY方向に前進させるとともに、生地用X軸モータ53及び生地用Y軸モータ54を制御して、身頃送り下板51を縫い目L3に対応する位置に後退させる。この後退動作に追従するように、制御手段80は、パルスモータ91及びシリンダ92を制御して、ループ緩め手段93も後退させている(図9(d)参照)。
【0027】
ステップS13では、制御手段80は、フォーク用エアシリンダ40を制御して、フォーク部材38を前進させ、フォーク部材38の先端の二叉部にベルトループBを挿通させた状態とする(図10(a)参照)。
ステップS14では、制御手段80は、ロータリーアクチュエータ41を制御して、フォーク部材38を回転させ、ベルトループBの端部を挟んで回転させて当該端部を折り返す(図10(b)参照)。
ステップS15では、制御手段80は、クランプ用Z軸エアシリンダ37を制御して、ループクランプ31及びフォーク部材38を下降させる(図10(c)参照)。
ステップS16では、制御手段80は、ループ押さえ用パルスモータ57を制御して、ループ押さえ52を下降させる(図10(d)参照)。これにより、折り返されているベルトループBの端部と生地Cとが押圧保持される。
【0028】
ステップS17では、制御手段80は、ミシンモータ13を制御して、針上下動機構を駆動することで、縫い針11を下降させ、ベルトループBの端部及び生地Cに縫い針11を貫通させた状態とする(図11(a)参照)。このとき、フォーク部材38に干渉しない位置に縫い針11が落とされる。
ステップS18では、制御手段80は、フォーク用エアシリンダ40を制御して、フォーク部材38を後退させることで、ベルトループBの端部を折り返した位置から退避させる。この退避時においては、縫い針11がベルトループBの端部及び生地Cを貫通した状態のままであるので、ベルトループBの端部がフォーク部材38の退避に引きずられて位置ズレを起こすことが防止されている。
また、制御手段80は、クランプ用X軸モータ35を制御して、ループクランプ31をX方向に後退させ初期位置へと退避させる(図11(b)参照)。
ステップS19では、制御手段80は、ミシンモータ13を制御して、針上下動機構を駆動することで、縫い針11によりベルトループBの縫い目L3を縫製する。このとき、ステップS17,S18で縫い針11が下降した際の縫いを縫い目L3の第一針としている。縫製が終了すると制御手段80は、ループ押さえ用パルスモータ57を制御してループ押さえ52を上昇させる(図11(c)参照)。
ステップS20では、制御手段80は、布押さえ用エアシリンダ73を制御して、布押さえ71を上昇させ生地Cに対する押さえを解除する(図11(d)参照)。
【0029】
以上のように、本実施形態によれば、ベルトループBの端部を折り返した後に、当該ベルトループBの端部及び生地Cに縫い針11を貫通させた状態で、ベルトループBの端部を折り返した位置からフォーク部材38を退避させてから、ベルトループBの端部を縫い針11により生地に縫い付けるので、退避動作によってフォーク部材38がベルトループBの端部を引き出そうとしても、縫い針11によって規制することができる。したがって、フォーク部材38をベルトループBから外す際にドッグイヤーを形成してしまうことを抑え、品質不良を抑制することができる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、ベルトループBの一方の端部のみをフォーク部材38で折り返す場合を例示したが、両端部をフォーク部材38で折り返すようにしてもよい。この場合、折り返す際の動作は上述した手順と同じ手順となるために、両端部をそれぞれ折り返した後に、縫い針11をベルトループBの端部及び生地Cに貫通させた状態で、当該ベルトループBの端部を折り返した位置からフォーク部材38を退避させれば、ベルトループBの両端部でのドックイヤーの発生を抑制することができる。
また、図5(a)に示した基本的な縫着形状においても適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
2 ミシンフレーム
2a ミシンベッド部
2b 縦胴部
2c ミシンアーム部
2d シリンダーベッド部
3 針板
10 ベルトループ付けミシン
11 縫い針(針上下動機構)
13 ミシンモータ(針上下動機構)
30 クランプ機構
31 ループクランプ
32 保持ブロック
34 支持台
38 フォーク部材
40 フォーク用エアシリンダ(フォーク部材駆動部)
41 ロータリーアクチュエータ(フォーク部材駆動部)
50 ループ押さえ機構
51 身頃送り下板
58 足取付台
59 布送り台
60 ループ供給機構
61 搬送ローラ
62 繰り出しモータ
63 カッタ
70 布押さえ機構
72 支持体
80 制御手段
93 ループ緩め手段
B ベルトループ
C 生地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向が所定方向に向けられた状態のベルトループを挟持し且つ解放可能なループクランプと、
前記ループクランプで挟持された前記ベルトループを挟んで回転することにより前記ベルトループの端部をそのベルトループの中央側に折り返すフォーク部材と、
前記フォーク部材を回転させるとともに、前記ベルトループの端部を折り返す位置に前記フォーク部材を進退させるフォーク部材駆動部と、
前記ベルトループが所定のベルトループ形状となるように折り返された前記端部を縫い針により生地に縫い付ける針上下動機構と、
前記フォーク部材退避部及び前記針上下動機構を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記フォーク部材駆動部を制御して、前記フォーク部材を回転させ、前記ベルトループの端部を挟んで回転させて当該端部を折り返した後に、
前記針上下動機構を制御して、前記ベルトループの前記端部及び前記生地に前記縫い針を貫通させた状態で、
前記フォーク部材駆動部を制御して、前記ベルトループの前記端部を折り返した位置から前記フォーク部材を退避させてから、
前記針上下動機構を制御して、前記ベルトループの前記端部を前記縫い針により前記生地に縫い付けることを特徴とするベルトループ付けミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−22042(P2013−22042A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156344(P2011−156344)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】