ベルト装置及び画像形成装置
【課題】従来よりも良好に中間転写ベルト8をクリーニングする。
【解決手段】ベルト移動方向におけるクリーニングニップ(点F〜点C)の中心(中心線L1)を、ベルト移動方向におけるベルト掛け回し領域(点B〜点G)の中心(中心線L2)よりもベルト移動方向の上流側に位置させ、且つ、少なくとも、中間転写ベルト8における前記掛け回し領域からそれよりもベルト移動方向上流側のベルト展張領域に至るまでの範囲にクリーニングブラシ102を当接させて前記クリーニングニップを形成した。
【解決手段】ベルト移動方向におけるクリーニングニップ(点F〜点C)の中心(中心線L1)を、ベルト移動方向におけるベルト掛け回し領域(点B〜点G)の中心(中心線L2)よりもベルト移動方向の上流側に位置させ、且つ、少なくとも、中間転写ベルト8における前記掛け回し領域からそれよりもベルト移動方向上流側のベルト展張領域に至るまでの範囲にクリーニングブラシ102を当接させて前記クリーニングニップを形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状のベルト部材を無端移動せしめながら、そのベルト部材のおもて面に付着しているトナーをクリーニング回転体によってクリーニングするベルト装置、及びこれを用いる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成に用いられるトナーは、近年の高画質化に伴い、粉砕法によるものよりも、重合法によるものが主流になってきている。重合法によるトナー粒子は、粉砕法によるトナー粒子に比べて球形に近く、且つ小径であることから、高解像度に対応する小さなドットでも優れた再現性を発揮することができる。反面、クリーニングブレードでの掻き取りによるブレードクリーニング方式では、クリーニング不良を引き起こし易いという不具合がある。球形に近く且つ小径であることから、クリーニングブレードと、被クリーニング体との間に形成される僅かな隙間をすり抜けてしまうからである。
【0003】
特許文献1に記載のクリーニング装置のように、静電クリーニング方式を採用すれば、重合法によるトナーであっても良好にクリーニングすることができる。具体的には、特許文献1に記載のクリーニング装置は、被クリーニング体としてのドラム状の感光体に当接しながら回転するクリーニングブラシローラと、これに当接しながら回転する回収ローラと、回収ローラに当接する掻き取りブレードとを備えている。そして、クリーニングブラシローラは、回転自在に支持された回転軸部材と、これの周面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシローラ部とを具備している。このクリーニングブラシローラには、トナーの正規帯電極性とは逆極性のクリーニング電圧を印加している。また、回収ローラには、クリーニング電圧と同極性で且つクリーニング電圧よりも値の大きな回収電圧を印加している。転写工程を経た後の感光体の表面上に残留してしまった転写残トナーは、回転するクリーニングブラシローラのブラシローラ部によって引っ掻かれながら、感光体とブラシローラ部との間の電界によってブラシローラ部内に静電転移する。そして、ブラシローラ部内から回収ローラ更に静電転移した後、掻き取りブレードによって回収ローラ表面から掻き落とされる。このような静電クリーニング方式では、ブレードクリーニング方式に比べて、重合法によるトナーを良好にクリーニングすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、静電クリーニング方式において、中間転写ベルトなどのベルト部材をクリーニング対象とする場合には、ローラなどの回転体をクリーニング対象にする場合に比べて、良好なクリーニング性を得ることが困難になるという問題があった。そこで、本発明者らは、その原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことを見出した。即ち、複数の張架ローラに掛け回した状態で無端移動させるベルト部材に対しては、クリーニングブラシローラを比較的強い圧力で当接させつつ、ローラとの摺擦に伴う波打ちをできるだけ抑える必要がある。このため、クリーニングブラシローラなどのクリーニング回転体については、ベルト部材における移動方向の全領域のうち、自由に波打つことができない領域であるローラに対する掛け回し領域に当接させてクリーニングニップを形成するのが一般的である。一方、画像形成装置においては、ある程度の転写性や用紙吸着性などを実現する狙いから、ベルト部材として電気的に中抵抗のものを用いるのが一般的である。このようなベルト部材を良好にクリーニングするためには、クリーニングブラシローラからベルト部材を介して張架ローラに至るまでの経路に、ある程度の量のクリーニング電流を流す必要があることが知られている。ところが、クリーニングニップ内において、このクリーニング電流がベルト上のトナーの周囲に過剰に流れると、トナーに対して正規極性とは逆極性の電荷注入が起こって、トナーを逆帯電させてしまうことがある。ベルト部材をクリーニング対象とする場合には、そのようなトナーの逆帯電が起こることで、クリーニング性を悪化させてしまうことがわかった。
【0005】
かかるトナーの逆帯電について、より詳しく説明する。図1は、従来のクリーニング装置におけるクリーニングニップの周囲構成の一例を示す拡大構成図である。同図において、ベルト部材としての中間転写ベルト901は、図示のクリーニング対向ローラ902や、図示しない複数のローラに張架された状態で無端移動せしめられている。中間転写ベルト901のループ内側では、クリーニング対向ローラ902が、その周面の全域のうち、図示の掛け回し幅W1の範囲において中間転写ベルト901を掛け回している。一方、中間転写ベルト901のループ外側では、クリーニングブラシローラ903がベルトおもて面に当接してクリーニングニップを形成している。クリーニングブラシローラ903は、図示しない駆動手段により、自らの表面をクリーニングニップ内でベルトとは逆方向に移動させるカウンター方向に回転駆動しながら、自らの複数の起毛からなるブラシを中間転写ベルト901のおもて面に摺擦させている。中間転写ベルト901のおもて面に付着している転写残トナーは、トナーとは逆極性のクリーニングバイアスが印加されるクリーニングブラシローラに掻き取られる。この掻き取りが行われるクリーニングニップのベルト移動方向の長さであるニップ幅W2は、上述の掛け回し幅W1よりも大きくなっている。そして、ベルト移動方向におけるクリーニングニップの上流側端部や下流側端部では、ローラに掛け回されていないベルト展張領域に対してクリーニングブラシローラ903が当接している。以下、クリーニングニップのうち、ベルト移動方向の上流側でクリーニングブラシローラ903がベルト展張領域に当接している領域を「上流側ベルト展張ニップ領域」という。この上流側ベルト展張ニップ領域においては、ベルトおもて面にクリーニングブラシローラ903が当接しているものの、ベルト裏面にクリーニング対向ローラ902が当接していないため、クリーニング電流はそれほど流れない。これに対し、クリーニング対向ローラ902が中間転写ベルト901に接触しているベルト掛け回し領域(掛け回し幅W1で示される領域)では、クリーニング電流が良好に流れる。特に、ニップ圧が最も強くなるベルト掛け回し領域中央部付近では、ベルト駆け回し領域の両端部に比べて多くのクリーニング電流が良好に流れる。このため、ベルト掛け回し領域中央部付近にトナーが進入すると、トナーの逆帯電が起こり易くなるのである。
【0006】
よって、良好なクリーニング性を得るためには、クリーニングニップにおけるベルト移動方向の全領域のうち、次のような領域で殆どの転写残トナーをクリーニングブラシローラに転移させておく必要がある。即ち、クリーニング電流量が過剰になり難い、上流側ベルト展張ニップ領域(幅W3で示される領域)や、ベルト駆け回し領域(掛け回し幅W1で示される領域)の入口付近である。しかしながら、幅W3で示される上流側ベルト展張ニップ領域の入口付近では、図示のようにブラシを構成している起毛がその先端だけをベルトに接触させている状態になっている。このような状態の起毛に対して転写残トナーが転移するのは困難である。転写残トナーの良好な転移が起こるのは、起毛が大きく撓みながらその側面をベルトに当接させている状態のときである。幅W3で示される上流側ベルト展張ニップ領域のうち、起毛がそのような状態になるのは入口付近から比較的離れたごく僅かな領域に限られる。また、駆け回し幅W1で示されるベルト掛け回し領域のうち、クリーニング電流によるトナーの逆帯電がそれほど発生しない領域は、入口付近のごく僅かな領域に限られる。これらの結果、従来のクリーニング装置では、クリーニングブラシに転移しないままに、ベルト掛け回し領域中央部に進入してしまう転写残トナーがどうしても発生して、クリーニング不良を引き起こしていたことがわかった。
【0007】
なお、クリーニング回転体として、クリーニングブラシローラを用いる場合を例にして説明したが、クリーニングローラのようなブラシを具備しないものを用いる場合でも、クリーニングニップにおけるベルト掛け回し領域では比較的多量のクリーニング電流が流れる。そして、クリーニングニップ内において、上流側ベルト展張ニップ領域で除去し切れなかったトナーがベルト掛け回し領域に進入して、クリーニング不良を引き起こすおそれがある。
【0008】
また、クリーニングブラシローラに対して、トナーの正規帯電極性とは逆極性のクリーニングバイスを印加しながら、正規極性に帯電したトナーをベルトから除去する構成を例にして説明したが、次のような構成においても、同様の問題が生じ得る。即ち、クリーニングブラシローラ等のクリーニング回転体に対して、トナーの正規帯電極性と同極性のクリーニングバイアスを印加しながら、逆帯電トナーをベルトから除去する構成である。
【0009】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来よりも良好にベルト部材をクリーニングすることができるベルト装置や画像形成装置を提供することである。
を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、自らのループ内側に配設された複数の張架ローラによって張架された状態で無端移動せしめられる無端状のベルト部材と、前記複数の張架ローラの1つであるクリーニング対向ローラに対する前記ベルト部材の掛け回し領域に対してベルトおもて面側から当接して、自らとベルトおもて面とが当接するクリーニングニップを形成した状態で、自らの表面を前記クリーニングニップ内でベルト移動方向とは逆方向に移動させるように回転しながら、ベルトおもて面に付着しているトナーを自らに転移させてクリーニングするクリーニング回転体と、前記クリーニング回転体に対してクリーニング電圧を印加する電圧印加手段とを備えるベルト装置において、ベルト移動方向における前記クリーニングニップの中心を、ベルト移動方向における前記掛け回し領域の中心よりもベルト移動方向の上流側に位置させ、且つ、少なくとも、前記ベルト部材における前記掛け回し領域からそれよりもベルト移動方向上流側のベルト展張領域に至るまでの範囲に前記クリーニング回転体を当接させて前記クリーニングニップを形成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のベルト装置において、ベルト移動方向における前記クリーニングニップの中心を、前記掛け回し領域よりも上流側の前記ベルト展張領域に位置させたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2のベルト装置において、ベルト移動方向における前記クリーニングニップの下流側端部を、前記掛け回し領域に位置させたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2又は3のベルト装置において、前記複数の張架ローラのうち、前記クリーニング対向ローラに対してベルト移動方向上流側で隣り合っている張架ローラであるクリーニング上流張架ローラにより、該クリーニング上流張架ローラと前記クリーニング対向ローラとの間のベルト展張領域を前記クリーニング回転体に向けて押圧するようにしたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4のベルト装置において、前記クリーニング上流張架ローラとして、少なくともローラ部の表面を絶縁体で構成したものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかのベルト装置において、前記クリーニング回転体として、回転可能な回転軸部材、及びその周面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部を具備するクリーニングブラシローラを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、無端状のベルト部材のおもて面に担持されているトナー像、あるいは、前記ベルト部材のおもて面に保持された記録部材に担持されているトナー像を、前記ベルト部材の無端移動に伴って搬送するベルト装置と、前記ベルト部材のおもて面、あるいは記録部材にトナー像を形成するトナー像形成手段とを備える画像形成装置において、前記ベルト装置として、請求項1乃至6の何れかのベルト装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7の画像形成装置において、上記トナーとして、体積平均粒径が3[μm]以上、6[μm]以下であり、且つ、体積平均粒径を個数平均粒径で除算した値が1.00以上、1.40以下であるもの、を用いることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項7又は8の画像形成装置において、上記トナーとして、形状係数SF−1が100以上、180以下であり、且つ、形状係数SF−2が100以上、180以下であるもの、を用いることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項7乃至9の何れかの画像形成装置において、上記ベルト部材として、少なくとも基材が弾性材料からなるものを用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
これらの発明では、ベルト移動方向において、クリーニングニップの中心を、クリーニング対向ローラに対するベルト掛け回し領域の中心よりも上流側に位置させることで、それら中心を同じところに位置させていた従来に比べて、上流側ベルト展張ニップ領域を増大させる。例えば、図2は、クリーニング回転体としてクリーニングブラシローラ903を用いた例を示しているが、図示のように、クリーニングニップのベルト移動方向の中心線であるニップ中心線L1を、クリーニングローラ902に対するベルト掛け回し領域の中心線である掛け回し中心線L2よりも上流側に位置させている。このようにすることで、従来例を示す図1との比較から明らかなように、幅W3で示される上流側ベルト展張ニップ領域を従来よりも増大させるのである。すると、トナーの逆帯電を引き起こし易い、クリーニング対向ローラに対するベルト掛け回し領域の中央部よりも上流側で、ベルト上のトナーをクリーニングブラシローラに良好に転移させ得る領域を従来よりも増大させるので、従来よりも良好にベルト部材をクリーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来のクリーニング装置におけるクリーニングニップの周囲構成の一例を示す拡大構成図。
【図2】本発明を適用したクリーニング装置におけるクリーニングニップの周囲構成の一例を示す拡大構成図。
【図3】実施形態に係るプリンタの要部を示す概略構成図。
【図4】同プリンタのベルトクリーニング装置とその周囲とを拡大して示す拡大構成図。
【図5】(a)、(b)、(c)は、1次転写ニップ通過後の感光体表面に残留した転写残トナーの帯電量分布と、極性制御ブレードとの接触位置を通過した後の転写残トナーの帯電量分布との関係の第1例、第2例、第3例を示すグラフ。
【図6】No1、No2の極性制御ブレードにおけるおける環境と電気抵抗との関係を示すグラフ。
【図7】No3、No4の極性制御ブレードにおけるおける環境と電気抵抗との関係を示すグラフ。
【図8】極性制御ブレードとの接触位置を通過する前後における転写残トナーの電荷量分布の変化を示すグラフ。
【図9】電気抵抗が、1×105Ω・cm、1×107Ω・cm、1×109Ω・cmであるクリーニングブラシローラのクリーニング性を示すグラフ。
【図10】同プリンタにおけるクリーニング対向ローラと中間転写ベルトとを示す拡大構成図。
【図11】同プリンタにおけるクリーニング対向ローラと中間転写ベルトとクリーニングブラシローラとを示す拡大構成図。
【図12】同プリンタにおける中間転写ベルトとクリーニングブラシローラとを示す拡大構成図。
【図13】従来例と実施形態に係るプリンタとにおける中間転写ベルトのトナークリーニング性の違いを示すグラフ。
【図14】同プリンタの回収ローラにおける電気抵抗と環境との関係を示すグラフ。
【図15】実施形態に係るプリンタの第1変形例におけるベルトクリーニング装置とその周囲とを示す拡大構成図。
【図16】実施形態に係るプリンタの第2変形例におけるベルトクリーニング装置とその周囲とを示す拡大構成図。
【図17】実施形態に係るプリンタの第3変形例における要部を示す概略構成図。
【図18】実施例に係るプリンタにおけるクリーニングニップとどの周囲とを示す拡大構成図。
【図19】トナー粒子の2次元平面に対する投影像の最大径MXLNGと平面積AREAとを説明する模式図。
【図20】トナー粒子の2次元平面に対する投影像の周長PERIと平面積AREAとを説明する模式図。
【図21】(a)、(b)、(c)はそれぞれトナーの形状を模式的に示す図。
【図22】クリーニングブラシの位置と、クリーニング残トナー量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した画像形成装置の実施形態として、いわゆるタンデム型中間転写方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)について説明する。まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図3は、本プリンタの要部を示す概略構成図である。本プリンタは、イエロー,マゼンタ,シアン,黒(以下、Y,M,C,Kと記す)のトナー像を生成するための4つのプロセスユニット6Y,M,C,Kを備えている。4つのプロセスユニット6Y,M,C,Kは、ドラム状の感光体1Y,M,C,Kをそれぞれ有している。感光体1Y,M,C,Kの回りにはそれぞれ帯電装置2Y,M,C,K、現像装置5Y,C,M,K、ドラムクリーニング装置4Y,M,C,K、除電装置(不図示)等を有している。プロセスユニット6Y,M,C,Kは、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。プロセスユニット6Y,M,C,Kの上方には、感光体1Y,M,C,Kの表面に対してレーザー光Lを照射して静電潜像を書き込むための図示しない光書込ユニットが配設されている。
【0014】
プロセスユニット6Y,M,C,Kの下方には、ベルト部材たる無端状の中間転写ベルト8を具備するベルト装置としての転写ユニット7が配設されている。中間転写ベルト8の他、そのループ内側に配設された複数の張架ローラや、ループ外側に配設された2次転写ローラ15、押圧ローラ16、ベルトクリーニング装置100などを有している。
【0015】
中間転写ベルト8のループ内側には、4つの1次転写ローラ9Y,M,C,Kと、テンションローラ10と、1次転写後ローラ11と、2次転写対向ローラ12と、極性制御対向ローラ13と、クリーニング対向ローラ14とが配設されている。これらローラは何れも、自らの周面の一部に中間転写ベルト8を掛け回してベルト張架を行う張架ローラとして機能している。中間転写ベルト8は、図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動される駆動ローラ12の回転により、図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。
【0016】
ベルトループ内側に配設された4つの1次転写ローラ9Y,M,C,Kは、感光体1Y,M,C,Kとの間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8のおもて面と、感光体1Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。なお、1次転写ローラ9Y,M,C,Kには、それぞれ図示しない電源によってトナーとは逆極性の1次転写バイアスが印加される。
【0017】
また、ベルトループ内側に配設された2次転写対向ローラ12は、ベルトループ外側に配設された2次転写ローラ12との間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8のおもて面と、2次転写ローラ12とが当接する2次転写ニップが形成されている。なお、2次転写ローラ12には、図示しない電源によってトナーとは逆極性の2次転写バイアスが印加される。
【0018】
また、ベルトループ内側に配設されたクリーニング対向ローラ14は、ベルトループ外側に配設されたベルトクリーニング装置100のクリーニングブラシローラ102との間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8のおもて面と、クリーニングブラシローラ102とが当接するクリーニングニップが形成されている。ベルトクリーニング装置100は中間転写ベルト8と一体的に交換可能になっているが、ベルトクリーニング装置100と中間転写ベルト8とで寿命設定が異なる場合には、ベルトクリーニング装置100を中間転写ベルトとは独立してプリンタ本体に着脱可能としてもよい。クリーニングブラシローラ103には、電圧印加手段たる図示しない電源によってトナーとは逆極性のクリーニングバイアスが印加される。
【0019】
本プリンタは、記録紙Pを収容する給紙カセットや、給紙カセットから記録紙Pを給紙路に給紙する給紙ローラなどを有する図示しない給紙部を備えている。また、給紙部から送られてきた記録紙を受け入れて2次転写ニップに向けて所定のタイミングで送り出す図示しないレジストローラ対を、上述した2次転写ニップの図中右側方に備えている。また、2次転写ニップから送り出される記録紙Pを受け入れてその記録紙Pに対してトナー像の定着処理を施す図示しない定着装置を、上述した2次転写ニップの図中左側方に備えている。また、必要に応じて、現像装置5Y,M,C,Kに対してY,M,C,Kトナーを補給する図示しないY,M,C,K用のトナー補給装置も備えている。
【0020】
近年、記録紙として従来広く用いられてきた普通紙に加え、デザインとして表面に凹凸を有する特殊紙やアイロンプリントなどの熱転写に用いる特殊な記録紙が用いられることが増えている。このような特殊紙を用いると、従来の普通紙の場合よりもカラートナーを重ね合わせた中間転写ベルト8上のトナー像を紙に2次転写する際に転写不良が発生し易くなる。そこで、本プリンタでは、中間転写ベルト8に弾性をもたせることにより、記録紙との接触性を高めている。
【0021】
中間転写ベルト8としては、多層構造のものが用いられる。ベース層としては、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン等の合成樹脂又は各種のゴムに、カーボンブラック等の導電剤を適当量含有させて、その体積抵抗率が106〜1014Ω・cmとなるものが用いられている。また、弾性を持たせたベルトにする場合には、その導電性弾性層の主基材として、シリコーンゴム、NBR、H−NBR、CR、EPDM、ウレタンゴム等が用いられる。また、導電性保護層の材料は、摩擦抵抗の低減、電気特性の環境に対する安定性、表面粗さ低減による残留トナークリーニング性能の向上といった目的を達成できるものであれば、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、PVDFなどのフッ素樹脂系ポリマーを、アルコール可溶性ナイロン系、シリコーン樹脂系、シランカプラー、ウレタン樹脂系のエマルジョンや有機溶媒に、溶解・分散した塗料を使用することができる。これら保護層は、上記の塗料をディップコート、スプレーコート、静電塗装、ロールコートなどにより設けることができる。さらに、保護層に表面処理または研磨を施すことにより離型性、導電性、耐磨耗性、表面クリーニング性等を改善することができる。弾性を有する中間転写ベルト8とドラム状の感光体1とは比較的広い接触領域にて接触配置されており、しかも、中間転写ベルト8により弾性押圧されているため、ドラム状の感光体1と中間転写8との間のタック面圧はそれほど高くなく、しかも、中間転写ベルト8によるトナー像の包み込み動作が行われ、感光体1Y,M,C,K上のトナー像が中間転写ベルト8側に一次転写される。このとき、中間転写ベルト8への転写画像には、大きなタック面圧によるホロキャラクタなどの画像欠陥はなく、高い転写効率で転写されるため、記録材(特に凹凸を有する特殊紙など)上のカラー画像品質はきわめて良好に保たれる。
【0022】
パーソナルコンピュータ等から画像情報が送られてくると、本プリンタは、駆動ローラ12を回転駆動して、中間転写ベルト8を無端移動させる。駆動ローラ12以外の張架ローラについては、ベルトに従動回転させる。同時に、プロセスユニット6Y,M,C,Kの感光体1Y,M,C,Kを回転駆動する。また、感光体1Y,M,C,Kの表面を帯電ローラ2Y,M,C,Kによって一様に帯電させながら、帯電後の表面に対してレーザー光Lの照射によって静電潜像を形成する。そして、感光体1Y,M,C,Kの表面に形成した静電潜像を現像装置5Y,M,C,Kすることで、感光体1Y,M,C,K上にY,M,C,Kトナー像を得る。Y,M,C,Kトナー像は、上述したY,M,C,K用の1次転写ニップにて、中間転写ベルト8のおもて面に重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト8のおもて面には4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0023】
一方、給紙部では、給紙ローラ27によって給紙カセットから記録紙Pを1枚づつ送り出してレジストローラ対まで搬送する。そして、中間転写ベルト8上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで、レジストローラ対を駆動して記録紙Pを2次転写ニップに送り込んで、ベルト上の4色重ね合わせトナー像を記録紙Pに一括2次転写する。これにより、記録紙Pの表面にフルカラー画像を形成する。フルカラー画像形成後の記録紙Pについては、2次転写ニップから定着装置に搬送してトナー像の定着処理を施す。
【0024】
Y,M,C,Kトナー像を中間転写ベルト8に1次転写した後の感光体1Y,M,C,Kについては、ドラムクリーニング装置4Y,M,C,Kによって転写残トナーのクリーニング処理を施す。その後、図示しない除電ランプで除電した後、耐電装置2Y,M,C,Kで一様に帯電せしめて、次の画像形成に備える。
【0025】
ここで、従来のブレードクリーニング方式の問題点について説明する。上述のように、近年、高画質化の要望が高まり、トナーは小粒径化の傾向にある。また、トナー製造コスト低減および転写率向上の要望から粉砕トナーではなく重合法等により球形化トナーを採用する傾向にある。小粒径化や球形化の進んだトナーの使用に伴い、像担持体上に残留したトナーを除去する手段として主に用いられてきたブレードクリーニング方式では、ブレードと像担持体表面の密着の精度が低いとトナーがすり抜けてしまいクリーニング性が低下しやすい。これを防ぐため、ブレードを強い当接圧で押しつけると、ブレードのめくれが発生し、いわゆるスジ状あるいは帯状のクリーニング不良を引き起こす原因となり、安定したクリーニング性能を保ちつづけることが困難である。また、球形トナーでも線圧を極端に高くすれば(具体的には、線圧100gf/cm以上)クリーニングできるが、その分クリーニングブレードの磨耗やベルトのキズ等により寿命が極端に短くなる。通常の線圧20gf/cmでのクリーニングブレード寿命(削れてクリーニング不良が発生する時の寿命)は、約120K枚である。線圧100gf/cmの時は、クリーニングブレードの寿命は約20K枚程度である。また、転写性が良いとされている球形トナーに対して、ブレードクリーニング性は、粉砕(異型)トナーに対するクリーニング性より劣ることは良く知られていることである。
【0026】
そこで、本プリンタでは、ブレードクリーニング方式よりも良好に球形化トナーをクリーニングすることが可能な静電クリーニング方式のベルトクリーニング装置10を採用している。
【0027】
図4は、本プリンタのベルトクリーニング装置100とその周囲とを拡大して示す拡大構成図である。同図において、ベルトクリーニング装置100は、中間転写ベルト8上から転写残トナーを除去するクリーニング部材としてのクリーニングブラシローラ102を有している。また、クリーニングブラシローラ102に付着したトナーを回収する回収部材としての回収ローラ103、回収ローラ103に当接してローラ表面からトナーを掻き取る掻き取り部材としての掻き取りブレード104、トナー搬送スクリュウ105なども有している。トナー搬送スクリュウ105は、回収ローラ103の表面から掻き取られたトナーを、装置ケーシングの一端部に向けて搬送して装置ケーシングの外に排出するものである。排出されたトナーは、プリンタ本体に備えられた図示しない廃トナータンク(不図示)内に落下する。
【0028】
クリーニングブラシローラ102は、回転自在に支持される金属製の回転軸部材と、これの周面に立設せしめられた複数の起毛(導電性繊維)からなるブラシローラ部とを具備している。
【0029】
掻き取りブレード104は、回収ローラ103表面からトナーを掻き取る掻き取り部材としての機能と、回収ローラ103表面に電荷を付与する電荷供給手段としての機能を兼ね備えている。また、クリーニングブラシローラ521は、回転自在に支持される金属製の回転軸部材と、これの周面に立設せしめられた複数の起毛(導電性繊維)からなるブラシローラ部とを具備しており、図示しないブラシ用電源によってトナーとは逆極性のクリーニングバイアスが印加される。また、回収ローラ522には、図示しない回収電源より、トナーとは逆極性で且つクリーニングバイアスよりも大きな値の回収バイアスが印加される。
【0030】
中間転写ベルト8のおもて面と、クリーニングブラシローラ102とが当接するクリーニングニップよりもベルト移動方向上流側では、2次転写ニップ通過後の転写残トナーの帯電極性を制御する極性制御部材たる極性制御ブレード101がベルトおもて面に当接している。この極性制御ブレード101には、トナーの正規帯電極性と同極性の極性制御バイアスが印加される。
【0031】
中間転写ベルト8の表面には、極性制御ブレード101が常時摺擦するベルト表面を保護するために、潤滑剤を塗布してもよい。この場合、ステアリン酸亜鉛塊などの固形潤滑剤をクリーニングブラシローラ102のブラシローラ部に当接させ、回転によって固形潤滑剤から掻き取って得た潤滑剤粉末を中間転写ベルト8表面に塗布する。また、中間転写ベルト8表面に塗布した潤滑剤粉末を均して均一にするための均しブレード(不図示)を設けてもよい。
【0032】
本プリンタのベルトクリーニング装置100では、次の4つの工程で中間転写ベルト8上のトナーを除去する。
1.極性制御ブレード101で中間転写ベルト8上のトナーの極性を正規帯電極性(本例では負極性)に揃える。
2.クリーニングブラシローラ102にトナーとは逆極性(本例では正極性)のクリーニングバイアスを印加して、中間転写ベルト8上のトナーを静電的にクリーニングブラシローラ102上に転移させる。
3.回収ローラ103にクリーニングバイアスと同極性で且つ絶対値が大きい回収バイアスを印加して、クリーニングブラシローラ102上のトナーを回収ローラ103上に転移させる。
4.掻き取りブレード104で回収ローラ103上のトナーを掻き落とす。
【0033】
以下、これらの工程について詳しく説明する。
まず、2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト8に付着している転写残トナーの帯電量と、極性制御ブレード102との接触位置を通過した後(以下、極性制御ブレード通過後という)のトナーの帯電量とについて説明する。感光体の表面上では、殆どのトナー粒子が正規極性である負極性に帯電している。これに対し、中間転写ベルト8の表面上に付着している転写残トナーには、正規極性とは逆極性に帯電している逆帯電トナー粒子が多く存在している。1次転写ニップや2次転写ニップ内で転写残トナー粒子に対して逆極性の電荷注入などが起こるからである。
【0034】
このことを分かり易くするために、ベルトクリーニング装置100の代わりに、ドラムクリーニング装置(図1の4Y,M,C,K)を例にして説明する。図5(a)、(b)、(c)は、1次転写ニップ通過後の感光体表面に残留した転写残トナーの帯電量分布と、極性制御ブレードとの接触位置を通過した後の転写残トナーの帯電量分布との関係の第1例、第2例、第3例を示すグラフである。なお、ここで言う極性制御ブレードは、図4に示したベルトクリーニング装置100の極性制御ブレード101とは異なるものである。1次転写ニップを通過した後の感光体表面に当接するように各色のドラムクリーニング装置4Y,M,C,K(図1参照)内にそれぞれ配設されたものであり、図4の極性制御ブレード101と同様に、トナーの正規帯電極性と同極性の極性制御バイアスが印加される。また、トナー帯電量分布については、次のようにして測定した。即ち、ホソカワミクロン製 E−スパートアナライザ(EST−3)によってトナー1個ずつの電荷量Qとそのトナーの粒径dとを測定したデータをもとに、本プリンタで作像した時の感光体1上の転写残トナー数百個をサンプリングした時のQ/d(単位はfc/μm)分布を帯電量分布とした。
【0035】
図5(a)に示した第1例は、正極性のトナーと負極性のトナーとが半分づつの状態で混在したブロードな分布(以下、転写残トナーAという)になっている。また、図5(b)に示した第2例は、正極性のトナーが負極性トナーよりも多い状態で混在したブロードな分布(以下、転写残トナーBという)である。また、図5(c)に示した第3例は、プロセスコントロール時等の未転写トナーであり、ほとんどが負極性トナーでシャープな分布になっている。
【0036】
1次転写ニップを通過した後の感光体表面に残留している転写残トナーA、転写残トナーBが感光体の回転に伴って極性制御ブレードの位置まで達すると、ほとんどの転写残トナーが極性制御ブレードによって機械的に掻き落される。しかし、いわゆるスティックスリップが発生することで、一部の転写残トナーが極性制御ブレードをすり抜けて行く。この際、転写残トナーが正規の帯電極性(負極性)に帯電する。図5(a)、(b)に示したように、極性制御ブレードの当接位置を通過する前のトナーの帯電量分布により、通過後の帯電量分布も異なってくるが、ブレード通過後にはどちらも殆どのトナー粒子が負極性に帯電している。図5(c)に示される未転写トナーは、ほとんど変化しないか、あるいはやや負極性よりになる。
【0037】
各色のプロセスユニットに配設される極性制御ブレードは、例えばポリウレタン等からなる弾性体からなり、素材にカーボンブラックやイオン系の導電剤が混練されていることで導電性を発揮する。その電気抵抗は、2×106Ω・cm〜5×107Ω・cmが好ましい。また、厚みは1〜3mmの範囲内とするのが良い。厚さが薄すぎると、感光体表面及び極性制御ブレード自体のうねり等によって感光体への押しつけ量が確保しにくくなる。硬度はJIS−A硬度計で40〜85の範囲内であれば良い。極性制御ブレードに対しては、感光体上の転写残トナーの全量を確実にクリーニングすることは要求されず、多少のトナーのすり抜けを許容しても問題ない。
【0038】
本発明者らが実験に使用した極性制御ブレード(プロセスユニット内)の諸条件は次の通りである。
・電気抵抗:1×106Ω・cm、又は1×108Ω・cm
・厚み:2.4、又は2.8mm
・自由長:7、又は9mm
・硬度:JIS−A硬度で60〜80
・ブレード反発弾性係数:45%
【0039】
かかる諸条件を具備する極性制御ブレードの電気抵抗は、環境によって変化する。参考までに、No1〜No4の4種類の極性制御ブレード420について、設置条件の例を次の表1に示す。また、それらブレードにおけるおける環境と電気抵抗との関係を図6、図7に示す。
【表1】
【0040】
このような極性制御ブレードと、感光体との間にトナーが挟まれた時、極性制御ブレードに印加された極性制御バイアスによってトナーに電流が流れ込む。そして、トナーは、印加電圧と同極性に帯電して極性制御ブレードとの当接位置を通過する。また、感光体と極性制御ブレードとで形成された当接部の入口や出口における感光体〜ブレード間の微小ギャップでの放電あるいは電荷注入によっても、トナーは印加電圧と同極性に帯電する。この結果、トナーは図5(a)、(b)の「ブレード通過後」に示すような負極性の帯電量分布となる。図8は、極性制御ブレードとの当接位置を通過する前後における転写残トナーの電荷量分布の変化を示すグラフである。
【0041】
ドラムクリーニング装置4Y,M,C,Kにおいて、ブレード通過後のトナーは、感光体に当接しながら回転するクリーニングブラシローラによってドラム表面から除去される。図9に、電気抵抗が、1×105Ω・cm、1×107Ω・cm、1×109Ω・cmであるクリーニングブラシローラのドラムクリーニング性を示す。電気抵抗が1×109Ω・cmの時は、印加電圧が大きいため、電源コストがアップする。一方、電気抵抗が1×105Ω・cmの時は感光体1に電流を流し易いことにより、1×107Ω・cmのときよりも低い電圧でトナーが正極性に帯電して感光体1に再付着する。このため、クリーニング性の余裕度が小さい。したがって、1×107Ω・cmの条件がもっとも適している。但し、ブラシ抵抗は直径10mmのSUSローラにクリーニングブラシローラを1mm食い込ませて当接させて200mm/secで両方を回転させ、ブラシ芯金に電圧を印加して電流測定し抵抗を算出したものである。繊維はナイロン、ポリエステル、アクリル等の絶縁材が一般的で何れの材料の場合も同じ効果である。また、芯鞘構造の代表的な繊維は特開平10−310974号公報、特開平10−131035、特開平01−292116号公報、特公平07−033637号公報、特公平07−033606号公報、特公平03−064604号公報に開示されている。
【0042】
ドラムクリーニング装置4Y,M,C,Kを例について説明したが、図2に示したベルトクリーニング装置100においても、ドラムクリーニング装置4Y,M,C,Kと同様の現象が生ずる。つまり、ベルトクリーニング装置100において、極性制御ブレード101は、転写残トナーをベルト表面から掻き取ったり、ブレード通過後の転写残トナーの極性を正規帯電極性に揃えたりすることができる。なお、極性制御ブレード101の代わりに、コロナチャージャによって転写残トナーの極性を正規極性に揃えるようにしてもよい。この場合、コロナチャージャに対して−800μA程度の電流を供給すればよい。
【0043】
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
図10は、本プリンタにおけるクリーニング対向ローラ14と中間転写ベルト8とを示す拡大構成図である。同図において、クリーニング対向ローラ14は、直径22mmのアルミ製のローラからなり、中間転写ベルト8の無端移動に伴って図中時計回り方向に従動回転する。このクリーニング対向ローラ14の全周のうち、図中の点Bから点Cに至る弧状の領域に対して、中間転写ベルト8が掛け回されている。そのベルト掛け回し領域のベルト移動方向の長さである掛け回し幅は、図中の符号W1で示されている。なお、同図において、符号L2で示される二点差線は、ベルト掛け回し領域(弧BC)のベルト移動方向の長さである掛け回し中心線を示している。また、符号L3で示される二点差線は、点Bに進入する直前のベルト移動方向をそのまま延長した延長線を示している。
【0044】
図11は、本プリンタにおけるクリーニング対向ローラ14と中間転写ベルト8とクリーニングブラシローラ102とを示す拡大構成図である。同図において、クリーニングブラシローラ102は、中間転写ベルト8のおもて面に対して、ニップ入口点Fからニップ出口点Gまでの領域(ニップ幅W2で示される領域)で当接してクリーニングニップを形成している。そして、クリーニングニップ内において、自らの表面を中間転写ベルト8とは逆方向に移動させるように、カウンター方向(同図で時計回り方向)に回転する。
【0045】
同図に符号L1で示される二点差線は、クリーニングニップにおけるベルト移動方向の中心に位置するニップ中心線である。本プリンタにおいては、図示のように、ニップ中心線L1を掛け回し中心線L2よりもベルト移動方向の上流側に位置させ、且つ、ニップ入口点Fからニップ出口点Gまでのクリーニングニップにおけるベルト移動方向上流側の端部を、ブラシがベルト展張領域に当接する上流側ベルト展張ニップ領域としている。かかる構成では、ニップ中心線L1と掛け回し中心線L2とを同じ場所に位置させていた従来装置に比べて、幅W3で示される上流側ベルト展張ニップ領域(ニップ入口点Fから掛け回し入口点Bまでの領域)を増大させる。これにより、トナーの逆帯電を引き起こし易い、ベルト掛け回し領域の中央部よりも上流側で、ベルト上のトナーをクリーニングブラシローラ102に良好に転移させ得る領域を従来よりも増大させて、従来よりも良好に中間転写ベルト8をクリーニングすることができる。
【0046】
図12は、本プリンタにおける中間転写ベルト8とクリーニングブラシローラ102とを示す拡大構成図である。同図において、クリーニングブラシローラ102の回転軸部材102と中間転写ベルト8とが最も近づく位置は、ニップ中心線L1の位置である。このため、このニップ中心線L1の位置では、ニップ圧が最も高くなって、ベルトからのトナーの掻き取り力が最も強くなって、物理的にはベルト上のトナーを最もブラシに転移させ易くなる。本プリンタでは、このように物理的にトナーを最もブラシに転移させ易くなるニップ中心線L1を、先に図11に示したように、ベルト掛け回し領域(弧BC)よりもベルト移動方向上流側に位置させている。つまり、ニップ中心線L1をクリーニング対向ローラ14に対する巻き付きがない上流側ベルト展張ニップ領域の場所に位置させている。上流側ベルト展張ニップ領域では、クリーニング電流の量がベルト掛け回し領域よりも大幅に少なくなる。このような上流側ベルト展張ニップ領域の場所に、物理的にトナーを最もブラシに転移させ易くなるニップ中心線L1を位置させることで、ベルト上の殆どの転写残トナーをクリーニング電流によって逆帯電させる前にクリーニングブラシローラ102のブラシ内に転移させることができる。
【0047】
図11に示すように、ニップ入口点Fからニップ出口点Gまでに至るクリーニングニップにおけるベルト移動方向下流側では、ニップ出口点Gをベルト掛け回し領域(弧BC)の出口点Cよりも上流側に位置させている。これは次に説明する理由による。即ち、本プリンタのように、クリーニングブラシローラ102を中間転写ベルト8に対してカウンター方向に回転させる構成では、クリーニングブラシローラ102が回転に伴ってブラシ先端を中間転写ベルト8に接触させ始める位置が、ニップ出口点Gとなる。このニップ出口点Gでは、ブラシを構成する複数の起毛をベルトに突き当てる際に、ベルトに対して大きな応力を付与することになる。このようなニップ出口点Gにおいて、中間転写ベルト8がクリーニング対向ローラ14に掛け回されておらず、自由に波打つことが可能なベルト展張領域が位置していると、前述の大きな応力によってベルトを大きく波打たせてしまう。そこで、本プリンタでは、ニップ出口点Gをベルト掛け回し領域の出口点Cよりも上流側のベルト掛け回し領域に位置させている。ベルト掛け回し領域は、自由に波打つことができないため、ブラシをニップ出口点Gでベルト展張領域に突き当てることによるベルトの波打ちの発生を回避することができる。
【0048】
図13は、ニップ中心線L1と掛け回し中心線L2とを同じ場所に位置させた従来例と、実施形態に係るプリンタとにおける中間転写ベルト8のトナーのクリーニング性の違いを示すグラフである。従来例と本プリンタとを比較すると、本プリンタ(実施形態)では、クリーニングバイアスの良好なクリーニング性を発揮し得る適正値範囲が従来例に比べて大幅に広くなっていることが解る。
【0049】
本プリンタのベルトクリーニング装置100における具体的な構成条件の一例は、通常環境(高温高湿環境以外)で以下のとおりである。
<クリーニングブラシローラ102の条件>
ブラシ材質:導電性ポリエステル(繊維内部に導電性カーボンを内包し、繊維表面はポリエステル、いわゆる芯鞘構造)
ブラシ抵抗:1×105Ω(1000Vの電圧印加条件で軸線方向全域測定)
ブラシ軸印加電圧(クリーニングバイアス):+800V
ブラシ植毛密度:10万本/inch2、繊維径約25〜35μm、ブラシ先端の毛倒れ処理あり
ブラシ直径:16mm
中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量:1mm
回転方向:ベルトに対してカウンター方向
【0050】
クリーニングブラシローラ102は、ブラシロール状に形成後、一方向に毛を倒す斜毛処理を施すと、繊維断面に露出している導電剤を中間転写ベルト8に接触させ難くなる。これにより、トナーへの電荷注入性が低減され、クリーニング性の余裕度が向上する。繊維はナイロン、ポリエステル、アクリル等の絶縁材が一般的で何れの材料の場合も同じ効果である。また、芯鞘構造の代表的な繊維は特開平10−310974号公報、特開平10−131035、特開平01−292116号公報、特公平07−033637号公報、特公平07−033606号公報、特公平03−064604号公報に開示されている。
【0051】
<回収ローラ103の条件>
回収ローラ芯金材質:SUS(ステンレス)
回収ローラ表面材質:PVDF(厚み100μm)の表層にアクリル系UV硬化樹脂層(厚み3〜5μm)
ローラ直径:14mm
回収ローラへのブラシ繊維食い込み量:1.5mm
回収ローラ芯金印加電圧(回収バイアス):+1400V
回転方向:クリーニングブラシローラ102に対してカウンター方向
【0052】
回収ローラ103はステンレスからなる芯金の表面にPVDFを100μmの厚みで有し、さらにその表面にアクリル系のUV硬化樹脂層を有するもの(高抵抗ローラ)を用いた。回収ローラ103の電気抵抗は、低温低湿環境下(LL)、中温中湿環境下(MM)、高温高湿環境下(HH)でそれぞれ図14に示す通りである。本実施形態で用いた回収ローラ103のみならず、導電性芯金に数μm〜100μm程度の高抵抗弾性チューブを被せたもの、あるいはさらに絶縁コーティングしたものでも同じ性能を得られる。回収ローラ103の表面の材料としては、PVDFチューブ、PFAチューブ、PIチューブ、アクリルコート、シリコーンコート(例えばシリコーン粒子を含有したPC(ポリカーボネート)をコート)、セラミックス、フッ素コーティングなどがある。
【0053】
なお、クリーニングブラシローラ102の起毛として、繊維の内部が導電性の材料からなり、且つ繊維外面が絶縁性のポリエステルからなる芯鞘構造のものを用いた例について説明したが、導電性と絶縁性との関係がその逆になっているものを採用していもよい。即ち、繊維の内部がポリエステル等の絶縁性の材料からなり、且つ繊維顔面が導電性の材料からなる外側導電構造のものである。本発明者らの実験によれば、クリーニングニップに流れるクリーニング電流を安定化させるという点については、芯鞘構造の起毛を用いる構成よりも外側導電構造のものを用いる方が優れた結果になった。しかし、図1に示したような従来構成を採用していると、クリーニング電流によってクリーニングニップ内でトナーを逆帯電させてブラシ内からベルト表面にトナーを吐き出してしまうという現象を、外側導電構造の方が芯鞘構造よりも顕著に発生させてしまった。かかる現象については、既に述べたように、図11に示した構成を採用することで、その発生を効果的に抑えることができる。つまり、ニップ中心線L1を掛け回し中心線L2よりもベルト移動方向の上流側に位置させ、且つ、ニップ入口点Fからニップ出口点Gまでのクリーニングニップにおけるベルト移動方向上流側の端部を、ブラシがベルト展張領域に当接する上流側ベルト展張ニップ領域とする構成を採用すれば、外側導電構造の欠点を克服することができる。そして、欠点を克服するだけでなく、クリーニング電流をより安定化させるという外側導電構造の利点を得ることも可能になる。
【0054】
また、回収ローラ103として、高抵抗層を表面に被覆したものを用いた例について説明したが、表面を低抵抗層で被覆したものや、無垢の金属ローラを用いてもよい。回収効率を重視する場合には、無垢の金属ローラを用いる方が有利である。
【0055】
<掻き取りブレード104の条件>
材質:SUS
厚み:100μm
ブレード当接角度:20°
回収ローラ103へのブレード食い込み量:0.6mm
掻き取りブレードへの印加電圧(掻き取りバイアス):+2000V
【0056】
回収ローラ103には芯金に回収バイアスが印加され、その表面電位を測定すると回収バイアスとほぼ同電位になっているのであるが、クリーニング動作中、多くのトナーが入力されると、回収ローラ103の表面電位はトナーの入力とともに低下していく。すると、回収ローラ103とクリーニングブラシローラ102との電位差(回収電位差)が必要な値だけ確保できなくなり、クリーニングブラシローラ102からトナーを回収する能力が低下する。このため、例えば、A4サイズ1枚分のプリントであれば必要な大きさの回収電位差が確保できるが、連続プリント動作で且つブラシへの入力トナー量が多い場合には回収電位差が確保できなくなるといった事態を引き起こすことがある。すると、クリーニングブラシローラ102内にトナーが溜まった状態となり、ブラシからベルトにトナーを吐き出してしまうといった問題がある。このため、導電性の掻き取りブレード104に掻き取り電圧を印加して、回収ローラ103の表面に電荷を与えることで、回収電位差を大きくして回収性能を向上させるようになっている。
【0057】
極性制御ブレード101の劣化があまり進行しておらず極性制御ブレード101との当接位置でのトナーのすり抜けがそれほど起こらないときには、掻き取りブレード104への掻き取り電圧の印加の必要性は少ない。しかし、極性制御ブレード101の劣化の進行によって極性制御ブレード101との当接位置におけるトナーのすり抜け量が比較的多くなった場合や、低温低湿環境下において高温高湿環境下よりもすり抜け量が多くなる場合に、掻き取りバイアスの印加が特に有効である。
【0058】
本発明者らは、図11に示した構成を採用することで、図1に示した構成に比べて、良好なクリーニング性を得ることができることを立証する実験を行った。具体的には、実施形態に係るプリンタと、ほぼ同じ構成のプリント試験機を用意した。なお、このプリント試験機は、次に列記する点が、実施形態のプリンタと異なっているが、図11に示した構成を有するという点では、実施形態に係るプリンタと共通している。
<プリント試験機のクリーニングブラシローラ102>
ブラシ材質:導電性ポリエステル
繊維内部が絶縁性で且つ繊維外面が導電性の外側導電構造のもの。
ブラシ抵抗:1×107Ω(1600Vの電圧印加条件で軸線方向全域測定)
ブラシ軸印加電圧(クリーニングバイアス):+1600V
ブラシ植毛密度:7万本/inch2、繊維径約25〜35μm、ブラシ先端の毛倒れ処理あり
繊維太さ:6[デニール]
ブラシ直径:15mm
中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量やブラシ回転方向は実施形態と同じ。
【0059】
<プリント試験機の回収ローラ103>
回収ローラ芯金材質:SUS(ステンレス)
回収ローラ表面材質:本体と同じ無垢のステンレス
ローラ直径:15mm
回収ローラ芯金印加電圧(回収バイアス):+2000V
【0060】
<プリント試験機の掻き取りブレード104>
掻き取りブレードへの印加電圧(掻き取りバイアス):+2000V(回収バイアスと同じ)
なお、掻き取りバイアスとして0Vを採用してもよい。プリント試験機のように、回収ローラ103としてローラ表面が無垢の金属であるものを用いる場合には、掻き取りバイアスを回収バイアスと同じ値に設定するか、あるいは0V(フロート)にする必要がある。また、回収ローラ表面が導電性の非金属材料からなる場合であっても、その電気抵抗が比較的低い場合には、実施形態のプリンタのように掻き取りバイアスを回収バイアスよりも大きくするのではなく、プリント試験機のように掻き取りバイアスを回収バイアスと同じ値にするか、0V(フロート)にすることが望ましい。
【0061】
実験において、2次転写工程では、中間転写ベルト8のおもて面に当接して2次転写ニップを形成している2次転写ローラ15を接地する一方で、中間転写ベルト31のループ内側に配設されている2次転写対向ローラ12に対して、トナーの帯電極性と同じマイナス極性の2次転写バイアスを印加した。2次転写バイアスについては、電源からの出力電流が−63[μA]になるように、出力電流値を定電流制御した。このような定電流制御の条件に設定すると、2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト8の表面に、比較的多量のプラス極性の2次転写残トナーが発生することを、予めの実験によって確かめたからである。つまり、2次転写残トナーが比較的多量に発生する条件に意図的に設定して、実験を行ったのである。
【0062】
クリーニングブラシローラ102の位置については、次の6通りの条件をそれぞれ個別に採用した。
(1)クリーニングブラシローラ102ローラ軸心を、クリーニング対向ローラ14の軸心よりもベルト移動方向上流側に5[mm]ずらした位置。
(2)クリーニングブラシローラ102ローラ軸心を、クリーニング対向ローラ14の軸心よりもベルト移動方向上流側に3[mm]ずらした位置。
(3)クリーニングブラシローラ102ローラ軸心を、クリーニング対向ローラ14の軸心よりもベルト移動方向上流側に2[mm]ずらした位置。
(4)クリーニングブラシローラ102ローラ軸心を、クリーニング対向ローラ14の軸心よりもベルト移動方向上流側に1[mm]ずらした位置。
(5)クリーニングブラシローラ102ローラ軸心を、クリーニング対向ローラ14の軸心の真下にした位置(従来構成)。
(6)クリーニングブラシローラ102ローラ軸心を、クリーニング対向ローラ14の軸心よりもベルト移動方向下流側に3[mm]ずらした位置(本発明とは逆の構成)。
【0063】
これら6通りの条件で、それぞれA3サイズ紙に全面黒ベタ画像を出力して、ベルトクリーニング装置100を通過した後の中間転写ベルト8上に残留してしまうクリーニング残トナー量を測定した。この実験の結果を、図22にグラフで示す。同図において、ブラシ位置の極性がマイナスになっている条件は、クリーニングブラシローラ102の軸心がクリーニング対向ローラ14の軸心よりもベルト移動方向の上流側にずれていることを示している。即ち、同図において、ブラシ位置が−5、−3、−2、−1、0、3である条件は、上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)の条件であることを示している。図示のように、クリーニング対向ローラ14の軸心をクリーニング対向ローラ14の軸心に対してベルト移動方向上流側に適度にずらした構成では、ずらしていない構成((5))や、ベルト移動方向下流側にずらした構成よりも、クリーニング残トナーの発生を抑えることができている。
【0064】
図15は、実施形態に係るプリンタの第1変形例におけるベルトクリーニング装置100と、その周囲とを示す拡大構成図である。第1変形例においては、ベルトクリーニング装置100が、クリーニングブラシローラ102のベルト移動方向下流側で中間転写ベルト8をクリーニングする第2クリーニングブラシローラ106を有している点が、実施形態と異なっている。第2クリーニングブラシローラ106は、中間転写ベルト8をそのループ内側で掛け回している第2クリーニング対向ローラ17との間に、中間転写ベルト8を挟み込むように配設されている。より詳しくは、クリーニングブラシローラ102と同様に、第2クリーニングブラシローラ106に対するベルト掛け回し領域のベルト移動方向の中心線よりも、クリーニングニップのベルト移動方向の中心線をベルト移動方向上流側に位置させるように、中間転写ベルト8に当接している。これにより、第2クリーニングブラシローラ106においても、従来よりも良好に転写残トナーをクリーニングすることができる。
【0065】
極性制御ブレード101、クリーニングブラシローラ102、回収ローラ103、掻き取りブレード104におけるそれぞれの条件は、実施形態と同様である。
【0066】
実施形態のプリンタであっても、クリーニングブラシローラ102を通過した後のベルト表面を完全にトナーのないものにすることは不可能である。どうしても、ごく僅かのトナーを残してしまう。そのトナーの殆どは、正規極性とは逆極性に帯電している逆帯電トナーである。この逆帯電トナーが発生する原因は、ベルトクリーニング装置100よりも、むしろトナー粒子そのものにあることが多い。トナー粒子そのものが、正常なものではなく、逆帯電し易い性質のものになっているのである。
【0067】
第1変形例においては、そのような逆帯電トナーをクリーニングする目的で、第2クリーニングブラシローラ102を設けている。第2クリーニングブラシローラ102に印加する第2クリーニングバイアスは、トナーの正規帯電極性と同極性(本例では負極性)のものである。
【0068】
中間転写ベルト8から第2クリーニングブラシローラ102に転移した逆帯電トナーは、第2クリーニングブラシローラ102に当接しながら回転する第2回収ローラ107の表面に転移する。この第2回収ローラには、トナーの正規帯電極性と同極性で、且つ絶対値が第2クリーニングバイアスよりも大きな第2回収バイアスが印加される。
【0069】
第2回収ローラ107の表面上に回収された逆帯電トナーは、第2回収ローラ107に当接している第2掻き取りブレード108によってローラ表面から掻き落とされる。この第2掻き取りブレード108には、トナーの正規帯電極性と同極性で、且つ絶対値が第2回収バイアス以上の第2掻き取りバイアスが印加される。
【0070】
第2クリーニングブラシローラ106などの具体的条件の一例は次の通りである。
<第2クリーニングブラシローラ106の条件>
ブラシ材質:導電性ポリエステル(繊維内部に導電性カーボンを内包し、繊維表面はポリエステル、いわゆる芯鞘構造)
ブラシ抵抗:1×107Ω(1000の電圧印加条件で軸線方向全域測定)
ブラシ軸印加電圧(第2クリーニングバイアス):−800V
ブラシ植毛密度:10万本/inch2、繊維径約25〜35μm、ブラシ先端の毛倒れ処理あり
ブラシ直径:16mm
中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量:1mm
回転方向:ベルトに対してカウンター方向
【0071】
<第2回収ローラ107の条件>
回収ローラ芯金材質:SUS(ステンレス)
回収ローラ表面材質:PVDF(厚み100μm)の表層にアクリル系UV硬化樹脂層(厚み3〜5μm)
ローラ直径:14mm
第2回収ローラへのブラシ繊維食い込み量:1.5mm
回収ローラ芯金印加電圧(第2回収バイアス):−1200V
回転方向:第2クリーニングブラシローラ106に対してカウンター方向
【0072】
<第2掻き取りブレード108の条件>
材質:SUS
厚み:100μm
ブレード当接角度:20°
第2回収ローラ107へのブレード食い込み量:0.6mm
第2掻き取りブレードへの印加電圧(第2掻き取りバイアス):−1200V
【0073】
図16は、実施形態に係るプリンタの第2変形例におけるベルトクリーニング装置100と、その周囲とを示す拡大構成図である。第2変形例では、ベルトクリーニング装置100が第2クリーニングブラシローラ106を有している点と、極性制御ブレードを有していない点とが、実施形態と異なっている。
【0074】
クリーニングブラシローラ102によってクリーニングされる前の転写残トナーの極性を正規帯電極性に揃える極性制御ブレードを設けていないので、クリーニングブラシローラ102によるクリーニングニップを通過した後のベルト表面には多くのトナーが残留している。それら残留トナーの殆どは逆帯電トナー粒子である。このような残留トナーは、第2クリーニングブラシローラ106によって中間転写ベルト8表面から除去される。第2クリーニングブラシローラ106に印加される第2クリーニングバイアスは、トナーの正規帯電極性と同極性のバイアスである。
【0075】
第2変形例における各種部材の条件は以下の通りである。
<クリーニングブラシローラ102の条件>
ブラシ材質:導電性ポリエステル(繊維内部に導電性カーボンを内包し、繊維表面はポリエステル、いわゆる芯鞘構造)
ブラシ抵抗:1×107Ω(1000の電圧印加条件で軸線方向全域測定)
ブラシ軸印加電圧(クリーニングバイアス):+1000V
ブラシ植毛密度:10万本/inch2、繊維径約25〜35μm、ブラシ先端の毛倒れ処理あり
ブラシ直径:16mm
中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量:1mm
回転方向:ベルトに対してカウンター方向
【0076】
<回収ローラ103の条件>
回収ローラ芯金材質:SUS(ステンレス)
回収ローラ表面材質:PVDF(厚み100μm)の表層にアクリル系UV硬化樹脂層(厚み3〜5μm)
ローラ直径:14mm
回収ローラへのブラシ繊維食い込み量:1.5mm
回収ローラ芯金印加電圧(回収バイアス):+1600V
回転方向:クリーニングブラシローラ102に対してカウンター方向
【0077】
<掻き取りブレード104の条件>
材質:SUS
厚み:100μm
ブレード当接角度:20°
第2回収ローラ107へのブレード食い込み量:0.6mm
第2掻き取りブレードへの印加電圧(第2掻き取りバイアス):+1600V
【0078】
<第2クリーニングブラシローラ106の条件>
ブラシ材質:導電性ポリエステル(繊維内部に導電性カーボンを内包し、繊維表面はポリエステル、いわゆる芯鞘構造)
ブラシ抵抗:1×107Ω(1000の電圧印加条件で軸線方向全域測定)
ブラシ軸印加電圧(第2クリーニングバイアス):−800V
ブラシ植毛密度:10万本/inch2、繊維径約25〜35μm、ブラシ先端の毛倒れ処理あり
ブラシ直径:16mm
中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量:1mm
回転方向:ベルトに対してカウンター方向
【0079】
<第2回収ローラ107の条件>
回収ローラ芯金材質:SUS(ステンレス)
回収ローラ表面材質:PVDF(厚み100μm)の表層にアクリル系UV硬化樹脂層(厚み3〜5μm)
ローラ直径:14mm
第2回収ローラへのブラシ繊維食い込み量:1.5mm
回収ローラ芯金印加電圧(第2回収バイアス):−1200V
回転方向:第2クリーニングブラシローラ106に対してカウンター方向
【0080】
<第2掻き取りブレード108の条件>
材質:SUS
厚み:100μm
ブレード当接角度:20°
第2回収ローラ107へのブレード食い込み量:0.6mm
第2掻き取りブレードへの印加電圧(第2掻き取りバイアス):−1200V
【0081】
図17は、実施形態に係るプリンタの第3変形例における要部を示す概略構成図である。第3変形例では、転写ユニット50の構成が実施形態と異なっている。具体的には、ベルト装置としての転写ユニット50は、中間転写ベルトではなく、転写搬送ベルト51を無端移動させている。この転写搬送ベルト51のループ内側には、Y,M,C,K用の転写ローラ59Y,M,C,Kが配設されており、ループ外側の感光体1Y,M,C,Kとの間に中間転写ベルト8を挟み込んでY,M,C,K用の転写ニップを形成している。
【0082】
転写ユニット50の図中左側方に配設されたレジストローラ対は、所定のタイミングで記録紙Pを転写搬送ベルト51の上部張架面に向けて送り出す。送り出された記録紙Pは、ベルト表面に吸着されながら、ベルトの移動に伴って上述したY,M,C,K用の転写ニップを順次通過する。この際、感光体1Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像が記録紙Pの表面に順次重ね合わせて転写される。
【0083】
最下流のK用の1次転写ニップを通過した後の記録紙Pは、転写搬送ベルト51の表面から分離して図示しない定着装置に送られる。記録紙Pを分離した後のベルト表面に付着しているトナーは、ベルトクリーニング装置100によって除去される。このベルトクリーニング装置100は、中間転写ベルトではなく、転写搬送ベルト51をクリーニングするものであるが、それ以外の点が実施形態のベルトクリーニング装置と同様の構成になっている。
【0084】
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した実施例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、実施例に係るプリンタの構成は実施形態と同様である。
【0085】
図18は、実施例に係るプリンタにおけるクリーニングニップとどの周囲とを示す拡大構成図である。実施例に係るプリンタの転写ユニットにおいては、クリーニング対向ローラ14に対してベルト移動方向の上流側で隣り合う位置で中間転写ベルト8を掛け回して張架するクリーニング上流張架ローラ19を設けている。このクリーニング上流張架ローラ19は、直径14mmの中空のアルミローラからなり、自らとクリーニング対向ローラ14との間のベルト展張領域をクリーニングブラシローラ102に向けて押圧している。この押圧により、クリーニングニップ内の領域であり、且つ幅W3で示される領域である上流側ベルト展張ニップ領域(ニップ入口点Fから掛け回し入口点Bまでの領域)の波打ちによるクリーニング対向ローラ14への接触を防止する。これにより、前記接触に起因して上流側ベルト展張ニップ領域に多くのクリーニング電流を流してしまうことによるクリーニング不良の発生を回避することができる。
【0086】
クリーニング上流張架ローラ19としては、少なくともローラ部の表面を絶縁体で構成したものを用いている。具体的には、そのローラ部には、厚み100μmの絶縁性ナイロンチューブ(抵抗=1E14Ω・cm)からなる絶縁性表面層を設けている。ローラ部の絶縁性表面層の下に存在するローラ基体としては、ABS、PP、POMなどの趣旨からなるものを用いている。このように、クリーニング上流張架ローラ19のローラ部に絶縁性表面層を設けることで、クリーニングブラシローラ102からベルトを介したクリーニング上流張架ローラ19への電流のリークを回避することができる。
【0087】
クリーニング上流張架ローラ19は、そのローラ部の全周のうち、図中の掛け回し開始点Iから掛け回し終了点Jに至るまでの掛け回し領域に対して、中間転写ベルト8を掛け回している。上流側ベルト展張ニップ領域(ニップ入口点Fから掛け回し入口点Bまでの領域)の波打ちをより確実に防止すべく、その掛け回し終了点Jを、クリーニングニップの入口点Fよりもベルト移動方向の下流側に位置させてもよい。このようにしても、クリーニングニップからクリーニング上流張架ローラ19への電流のリークを発生させることはない。
【0088】
次に、実施形態、各変形例、実施例に係るプリンタにそれぞれ好適に用いられるトナーについて説明する。それらプリンタで600dpi以上の微少ドットを再現するために、トナーの体積平均粒径は3〜6μmが好ましい。また、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)は1.00〜1.40の範囲にあることが好ましい。(Dv/Dn)が1.00に近いほど粒径分布がシャープであることを示す。このような小粒径で粒径分布の狭いトナーでは、トナーの帯電量分布が均一になり、地肌かぶりの少ない高品位な画像を得ることができ、静電転写方式では転写率を高くすることができる。
【0089】
トナーの形状係数SF−1は100〜180、形状係数SF−2は100〜180の範囲にあることが好ましい。図19は、トナー粒子の2次元平面に対する投影像の最大径MXLNGと平面積AREAとを説明する模式図である。形状係数SF−1は、トナー形状の丸さの割合を示すものであり、「SF−1={(MXLNG)2/AREA}×(100π)/4」という式で求められる。トナー粒子の2次元平面に対する投影像の最大径MXLNGの二乗を平面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。SF−1の値が100の場合トナーの形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。
【0090】
図20は、トナー粒子の2次元平面に対する投影像の周長PERIと平面積AREAとを説明する模式図である。形状係数SF−2は、トナー粒子の形状の凹凸の割合を示すものであり、「SF−2={(PERI)2/AREA}×100/(4π)」という式で求められる。トナー粒子を2次元平面に投影してできる図形の周長PERIの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。SF−2の値が100の場合トナー表面に凹凸が存在しなくなり、SF−2の値が大きくなるほどトナー表面の凹凸が顕著になる。
【0091】
形状係数の測定は、具体的には、トナーの中から100個のトナー粒子を無作為に選出してその写真を走査型電子顕微鏡(S−800:日立製作所製)で撮影し、その撮影像を画像解析装置(LUSEX3:ニレコ社製)に導入し、個々のトナー粒子の形状係数を解析した後、それらの平均値を最終的な形状係数とした。トナーの形状が球形に近くなると、トナーとトナーあるいはトナーと感光体との接触状態が点接触になるために、トナー同士の吸着力は弱くなり従って流動性が高くなり、また、トナーと感光体との吸着力も弱くなって、転写率は高くなる。形状係数SF−1、SF−2のいずれかが180を超えると、転写率が低下するため好ましくない。
【0092】
また、トナーは少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマーと、ポリエステルと、着色剤と、離型剤とを有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系溶媒中で架橋及び/又は伸長反応させて得られるトナーである。以下に、トナーの構成材料及び製造方法について説明する。
【0093】
(ポリエステル)
ポリエステルは、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物との重縮合反応によって得られる。多価アルコール化合物(PO)としては、2価アルコール(DIO)および3価以上の多価アルコール(TO)が挙げられ、(DIO)単独、または(DIO)と少量の(TO)との混合物が好ましい。2価アルコール(DIO)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上の多価アルコール(TO)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0094】
多価カルボン酸(PC)としては、2価カルボン酸(DIC)および3価以上の多価カルボン酸(TC)が挙げられ、(DIC)単独、および(DIC)と少量の(TC)との混合物が好ましい。2価カルボン酸(DIC)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上の多価カルボン酸(TC)としては、炭素数9〜20の芳香族多価カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、多価カルボン酸(PC)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いて多価アルコール(PO)と反応させてもよい。
【0095】
多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の重縮合反応は、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。ポリエステルの水酸基価は5以上であることが好ましく、ポリエステルの酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすく、さらには記録紙への定着時、記録紙とトナーの親和性がよく低温定着性が向上する。しかし、酸価が30を超えると帯電の安定性、特に環境変動に対し悪化傾向がある。また、重量平均分子量1万〜40万、好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量が1万未満では、耐オフセット性が悪化するため好ましくない。また、40万を超えると低温定着性が悪化するため好ましくない。
【0096】
ポリエステルには、上記の重縮合反応で得られる未変性ポリエステルの他に、ウレア変性のポリエステルが好ましく含有される。ウレア変性のポリエステルは、上記の重縮合反応で得られるポリエステルの末端のカルボキシル基や水酸基等と多価イソシアネート化合物(PIC)とを反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得、これとアミン類との反応により分子鎖が架橋及び/又は伸長されて得られるものである。多価イソシアネート化合物(PIC)としては、脂肪族多価イソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−イソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアネート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。多価イソシアネート化合物(PIC)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、ウレア変性ポリエステルを用いる場合、そのエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の多価イソシアネート化合物(PIC)構成成分の含有量は、通常0.5〜40wt%、好ましくは1〜30wt%、さらに好ましくは2〜20wt%である。0.5wt%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40wt%を超えると低温定着性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有されるイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0097】
次に、ポリエステルプレポリマー(A)と反応させるアミン類(B)としては、2価アミン化合物(B1)、3価以上の多価アミン化合物(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。2価アミン化合物(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上の多価アミン化合物(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリジン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0098】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2や、1/2未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。また、ウレア変性ポリエステル中には、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0099】
ウレア変性ポリエステルは、ワンショット法、などにより製造される。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これに多価イソシアネート(PIC)を反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得る。さらにこの(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア変性ポリエステルを得る。
【0100】
(PIC)を反応させる際、及び(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(PIC)に対して不活性なものが挙げられる。また、ポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との架橋及び/又は伸長反応には、必要により反応停止剤を用い、得られるウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0101】
ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステル等の数平均分子量は、先の未変性ポリエステルを用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。ウレア変性ポリエステルを単独で使用する場合は、その数平均分子量は、通常2000〜15000、好ましくは2000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0102】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを併用することで、低温定着性およびフルカラー画像形成装置100に用いた場合の光沢性が向上するので、ウレア変性ポリエステルを単独で使用するよりも好ましい。尚、未変性ポリエステルはウレア結合以外の化学結合で変性されたポリエステルを含んでも良い。未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは、少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは類似の組成であることが好ましい。
【0103】
また、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとの重量比は、通常20/80〜95/5、好ましくは70/30〜95/5、さらに好ましくは75/25〜95/5、特に好ましくは80/20〜93/7である。ウレア変性ポリエステルの重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0104】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを含むバインダー樹脂のガラス転移点(Tg)は、通常45〜65℃、好ましくは45〜60℃である。45℃未満ではトナーの耐熱性が悪化し、65℃を超えると低温定着性が不十分となる。また、ウレア変性ポリエステルは、得られるトナー母体粒子の表面に存在しやすいため、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
【0105】
(着色剤)
着色剤としては、公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
【0106】
着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造、またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体、あるいはこれらとビニル化合物との共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
【0107】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては公知のものが使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSYVP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージNEG VP2036、コピーチャージNX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。このうち、特にトナーを負極性に制御する物質が好ましく使用される。
【0108】
荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を超える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、荷電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。
【0109】
(離型剤)
離型剤としては、融点が50〜120℃の低融点のワックスが、バインダー樹脂との分散の中でより離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これにより定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布することなく高温オフセットに対し効果を示す。このようなワックス成分としては、以下のものが挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス、及びおよびパラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス等が挙げられる。また、これら天然ワックスの外に、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス等が挙げられる。さらに、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド及び、低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子等も用いることができる。
【0110】
荷電制御剤、離型剤はマスターバッチ、バインダー樹脂とともに溶融混練することもできるし、もちろん有機溶剤に溶解、分散する際に加えても良い。
【0111】
(外添剤)
トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤として、無機微粒子が好ましく用いられる。この無機微粒子の一次粒子径は、5×10−3〜2μmであることが好ましく、特に5×10−3〜0.5μmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5wt%であることが好ましく、特に0.01〜2.0wt%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。中でも、流動性付与剤としては、疎水性シリカ微粒子と疎水性酸化チタン微粒子を併用するのが好ましい。特に両微粒子の平均粒径が5×10−4μm以下のものを使用して攪拌混合を行った場合、トナーとの静電力、ファンデルワールス力は格段に向上することより、所望の帯電レベルを得るために行われる現像装置内部の攪拌混合によっても、トナーから流動性付与剤が脱離することなく、ホタルなどが発生しない良好な画像品質が得られて、さらに転写残トナーの低減が図られる。酸化チタン微粒子は、環境安定性、画像濃度安定性に優れている反面、帯電立ち上がり特性の悪化傾向にあることより、酸化チタン微粒子添加量がシリカ微粒子添加量よりも多くなると、この副作用の影響が大きくなることが考えられる。しかし、疎水性シリカ微粒子及び疎水性酸化チタン微粒子の添加量が0.3〜1.5wt%の範囲では、帯電立ち上がり特性が大きく損なわれず、所望の帯電立ち上がり特性が得られ、すなわち、コピーの繰り返しを行っても、安定した画像品質が得られる。
【0112】
次に、トナーの製造方法について説明する。ここでは、好ましい製造方法について示すが、これに限られるものではない。
【0113】
(トナーの製造方法)
1)着色剤、未変性ポリエステル、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー、離型剤を有機溶媒中に分散させトナー材料液を作る。
有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、トナー母体粒子形成後の除去が容易である点から好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。有機溶媒の使用量は、ポリエステルプレポリマー100重量部に対し、通常0〜300重量部、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは25〜70重量部である。
【0114】
2)トナー材料液を界面活性剤、樹脂微粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる。
水系媒体は、水単独でも良いし、アルコール(メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などの有機溶媒を含むものであってもよい。
トナー材料液100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー材料液の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。
【0115】
また、水系媒体中の分散を良好にするために、界面活性剤、樹脂微粒子等の分散剤を適宜加える。界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0116】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0117】
また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級もしくは2級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0118】
樹脂微粒子は、水系媒体中で形成されるトナー母体粒子を安定化させるために加えられる。このために、トナー母体粒子の表面上に存在する被覆率が10〜90%の範囲になるように加えられることが好ましい。例えば、ポリメタクリル酸メチル微粒子1μm、及び3μm、ポリスチレン微粒子0.5μm、及び、2μm、ポリ(スチレン―アクリロニトリル)微粒子1μm、商品名では、PB−200H(花王社製)、SGP(総研社製)、テクノポリマーSB(積水化成品工業社製)、SGP−3G(総研社製)、ミクロパール(積水ファインケミカル社製)等がある。また、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等の無機化合物分散剤も用いることができる。
【0119】
上記樹脂微粒子や無機化合物分散剤などと併用可能な分散剤として、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸−β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−β−ヒドロキシエチル、アクリル酸−β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの含窒素化合物、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0120】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。この中でも、分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。
【0121】
3)乳化液の作製と同時に、アミン類(B)を添加し、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)との反応を行わせる。この反応は、分子鎖の架橋及び/又は伸長を伴う。反応時間は、ポリエステルプレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)との反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0122】
4)反応終了後、乳化分散体(反応物)から有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得る。有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に層流の攪拌状態で昇温し、一定の温度域で強い攪拌を与えた後、脱溶媒を行うことで紡錘形のトナー母体粒子が作製できる。また、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、トナー母体粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
【0123】
5)上記で得られたトナー母体粒子に、荷電制御剤を打ち込み、ついで、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子等の無機微粒子を外添させ、トナーを得る。荷電制御剤の打ち込み、及び無機微粒子の外添は、ミキサー等を用いた公知の方法によって行われる。これにより、小粒径であって、粒径分布のシャープなトナーを容易に得ることができる。さらに、有機溶媒を除去する工程で強い攪拌を与えることで、真球状からラクビーボール状の間の形状を制御することができ、さらに、表面のモフォロジーも滑らかなものから梅干形状の間で制御することができる。
【0124】
またトナーの形状は略球形状であり、以下の形状規定によって表すことができる。即ち、図21(a)、(b)、(c)に示すように、略球形状のトナーを長軸r1、短軸r2、厚さr3(但し、r1≧r2≧r3とする。)で規定する。そして、トナーは、長軸と短軸との比(r2/r1)(図21(b)参照)が0.5〜1.0で、厚さと短軸との比(r3/r2)(図21(c)参照)が0.7〜1.0の範囲にあることが好ましい。長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5未満では、真球形状から離れるためにドット再現性及び転写効率が劣り、高品位な画質が得られなくなる。また、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7未満では、扁平形状に近くなり、球形トナーのような高転写率は得られなくなる。特に、厚さと短軸との比(r3/r2)が1.0では、長軸を回転軸とする回転体となり、トナーの流動性を向上させることができる。なお、r1、r2、r3は、走査型電子顕微鏡(SEM)で、視野の角度を変えて写真を撮り、観察しながら測定した。
【0125】
なお、トナーQ/M(トナーの単位重量あたりの電荷量)、トナー帯電量分布の測定方法は以下のとおりである。また、極性制御率は以下で定義した。
【0126】
<トナーQ/M>
トナーパッチパターンを感光体上に作像し、現像、転写、極性制御後などの各プロセス終了後に複写機本体のメインスイッチを強制的にOFFにし、作像途中で機械を止める。感光体や転写ベルト上に形成されたトナー像を吸引治具を用いてエアーポンプで吸引しながら、そのトナーのクーロン量をクーロンメータ(ケスレー製エレクトロメータ617)により測定し、吸引治具により吸引したトナーの重量とクーロン量から単位重量あたりのトナー電荷量(μC/g)を算出する。
【0127】
<トナー帯電量分布>
ホソカワミクロン製 E−SPARTアナライザで測定する。感光体上に付着したトナーをエアーで吹き飛ばして測定部に落下させ、トナー1個ずつの粒径と電荷量を測定し、X軸に「電荷量/トナー粒径」、Y軸に「頻度(%)=予め設定した「電荷量/トナー粒径」のヒストグラムの帯の範囲にある数(個)/サンプル全数(個)×100」を算出しグラフ化した。
【0128】
<極性制御率>
上述のトナー帯電量分布の測定データをもとに算出する。極性制御率[%]=制御したい極性のトナーの数(個)/サンプル全数(個)×100。なお、制御したい極性とは、感光体表面電位を比較対象としたときの、極性制御部材に印加している電圧の相対的な極性である。例えば、感光体表面電位が−100Vで、極性制御部材印加電圧がー700Vの場合は、「トナーを−極性に制御したい」とする。本方式のようなトナー極性制御+単一極性印加ブラシによる静電クリーニング方式では、クリーニングブラシローラに入力するトナーの極性が揃っていることが重要になる。言い換えると、極性制御率が高いことが重要となる。
【0129】
以上、実施形態に係るプリンタにおいては、クリーニングニップにおけるベルト移動方向の中心であるニップ中心線L1を、中間転写ベルト8におけるクリーニング対向ローラ14に対する掛け回し領域(弧BC)よりもベルト移動方向上流側に位置させている。かかる構成では、既に説明したように、ベルト上の殆どの転写残トナーをクリーニング電流によって逆帯電させる前にクリーニングブラシローラ102のブラシ内に転移させることができる。
【0130】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、クリーニングニップにおけるベルト移動方向の下流側端部にて、クリーニングブラシローラ102を掛け回し領域(弧BC)に当接させている。かかる構成においては、既に説明したように、クリーニングブラシローラ102をニップ出口点Gでベルト展張領域に突き当てることによるベルトの波打ちの発生を回避することができる。
【0131】
また、実施例に係るプリンタにおいては、クリーニング上流張架ローラ19により、クリーニング上流張架ローラ19とクリーニング対向ローラ14との間のベルト展張領域をクリーニングブラシローラ102に向けて押圧している。かかる構成では、既に説明したように、上流側ベルト展張ニップ領域(ニップ入口点Fから掛け回し入口点Bまでの領域)の波打ちによるクリーニング対向ローラ14への接触を防止して、それに起因する上流側ベルト展張ニップ領域でのクリーニング電流の増大化を回避することができる。
【0132】
また、実施例に係るプリンタにおいては、クリーニング上流張架ローラ19として、少なくともローラ部の表面を絶縁体で構成したものを用いているので、既に説明したように、クリーニングブラシローラ102からベルトを介したクリーニング上流張架ローラ19への電流のリークを回避することができる。
【符号の説明】
【0133】
1:感光体(像担持体)
7:転写ユニット(ベルト装置)
8:中間転写ベルト(ベルト部材)
19:クリーニング上流張架ローラ
14:クリーニング対向ローラ
51:転写搬送ベルト(ベルト部材)
102:クリーニングブラシローラ(クリーニング回転体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0134】
【特許文献1】特開2009−20249号公報
【特許文献2】特開2007−72411号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状のベルト部材を無端移動せしめながら、そのベルト部材のおもて面に付着しているトナーをクリーニング回転体によってクリーニングするベルト装置、及びこれを用いる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成に用いられるトナーは、近年の高画質化に伴い、粉砕法によるものよりも、重合法によるものが主流になってきている。重合法によるトナー粒子は、粉砕法によるトナー粒子に比べて球形に近く、且つ小径であることから、高解像度に対応する小さなドットでも優れた再現性を発揮することができる。反面、クリーニングブレードでの掻き取りによるブレードクリーニング方式では、クリーニング不良を引き起こし易いという不具合がある。球形に近く且つ小径であることから、クリーニングブレードと、被クリーニング体との間に形成される僅かな隙間をすり抜けてしまうからである。
【0003】
特許文献1に記載のクリーニング装置のように、静電クリーニング方式を採用すれば、重合法によるトナーであっても良好にクリーニングすることができる。具体的には、特許文献1に記載のクリーニング装置は、被クリーニング体としてのドラム状の感光体に当接しながら回転するクリーニングブラシローラと、これに当接しながら回転する回収ローラと、回収ローラに当接する掻き取りブレードとを備えている。そして、クリーニングブラシローラは、回転自在に支持された回転軸部材と、これの周面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシローラ部とを具備している。このクリーニングブラシローラには、トナーの正規帯電極性とは逆極性のクリーニング電圧を印加している。また、回収ローラには、クリーニング電圧と同極性で且つクリーニング電圧よりも値の大きな回収電圧を印加している。転写工程を経た後の感光体の表面上に残留してしまった転写残トナーは、回転するクリーニングブラシローラのブラシローラ部によって引っ掻かれながら、感光体とブラシローラ部との間の電界によってブラシローラ部内に静電転移する。そして、ブラシローラ部内から回収ローラ更に静電転移した後、掻き取りブレードによって回収ローラ表面から掻き落とされる。このような静電クリーニング方式では、ブレードクリーニング方式に比べて、重合法によるトナーを良好にクリーニングすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、静電クリーニング方式において、中間転写ベルトなどのベルト部材をクリーニング対象とする場合には、ローラなどの回転体をクリーニング対象にする場合に比べて、良好なクリーニング性を得ることが困難になるという問題があった。そこで、本発明者らは、その原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことを見出した。即ち、複数の張架ローラに掛け回した状態で無端移動させるベルト部材に対しては、クリーニングブラシローラを比較的強い圧力で当接させつつ、ローラとの摺擦に伴う波打ちをできるだけ抑える必要がある。このため、クリーニングブラシローラなどのクリーニング回転体については、ベルト部材における移動方向の全領域のうち、自由に波打つことができない領域であるローラに対する掛け回し領域に当接させてクリーニングニップを形成するのが一般的である。一方、画像形成装置においては、ある程度の転写性や用紙吸着性などを実現する狙いから、ベルト部材として電気的に中抵抗のものを用いるのが一般的である。このようなベルト部材を良好にクリーニングするためには、クリーニングブラシローラからベルト部材を介して張架ローラに至るまでの経路に、ある程度の量のクリーニング電流を流す必要があることが知られている。ところが、クリーニングニップ内において、このクリーニング電流がベルト上のトナーの周囲に過剰に流れると、トナーに対して正規極性とは逆極性の電荷注入が起こって、トナーを逆帯電させてしまうことがある。ベルト部材をクリーニング対象とする場合には、そのようなトナーの逆帯電が起こることで、クリーニング性を悪化させてしまうことがわかった。
【0005】
かかるトナーの逆帯電について、より詳しく説明する。図1は、従来のクリーニング装置におけるクリーニングニップの周囲構成の一例を示す拡大構成図である。同図において、ベルト部材としての中間転写ベルト901は、図示のクリーニング対向ローラ902や、図示しない複数のローラに張架された状態で無端移動せしめられている。中間転写ベルト901のループ内側では、クリーニング対向ローラ902が、その周面の全域のうち、図示の掛け回し幅W1の範囲において中間転写ベルト901を掛け回している。一方、中間転写ベルト901のループ外側では、クリーニングブラシローラ903がベルトおもて面に当接してクリーニングニップを形成している。クリーニングブラシローラ903は、図示しない駆動手段により、自らの表面をクリーニングニップ内でベルトとは逆方向に移動させるカウンター方向に回転駆動しながら、自らの複数の起毛からなるブラシを中間転写ベルト901のおもて面に摺擦させている。中間転写ベルト901のおもて面に付着している転写残トナーは、トナーとは逆極性のクリーニングバイアスが印加されるクリーニングブラシローラに掻き取られる。この掻き取りが行われるクリーニングニップのベルト移動方向の長さであるニップ幅W2は、上述の掛け回し幅W1よりも大きくなっている。そして、ベルト移動方向におけるクリーニングニップの上流側端部や下流側端部では、ローラに掛け回されていないベルト展張領域に対してクリーニングブラシローラ903が当接している。以下、クリーニングニップのうち、ベルト移動方向の上流側でクリーニングブラシローラ903がベルト展張領域に当接している領域を「上流側ベルト展張ニップ領域」という。この上流側ベルト展張ニップ領域においては、ベルトおもて面にクリーニングブラシローラ903が当接しているものの、ベルト裏面にクリーニング対向ローラ902が当接していないため、クリーニング電流はそれほど流れない。これに対し、クリーニング対向ローラ902が中間転写ベルト901に接触しているベルト掛け回し領域(掛け回し幅W1で示される領域)では、クリーニング電流が良好に流れる。特に、ニップ圧が最も強くなるベルト掛け回し領域中央部付近では、ベルト駆け回し領域の両端部に比べて多くのクリーニング電流が良好に流れる。このため、ベルト掛け回し領域中央部付近にトナーが進入すると、トナーの逆帯電が起こり易くなるのである。
【0006】
よって、良好なクリーニング性を得るためには、クリーニングニップにおけるベルト移動方向の全領域のうち、次のような領域で殆どの転写残トナーをクリーニングブラシローラに転移させておく必要がある。即ち、クリーニング電流量が過剰になり難い、上流側ベルト展張ニップ領域(幅W3で示される領域)や、ベルト駆け回し領域(掛け回し幅W1で示される領域)の入口付近である。しかしながら、幅W3で示される上流側ベルト展張ニップ領域の入口付近では、図示のようにブラシを構成している起毛がその先端だけをベルトに接触させている状態になっている。このような状態の起毛に対して転写残トナーが転移するのは困難である。転写残トナーの良好な転移が起こるのは、起毛が大きく撓みながらその側面をベルトに当接させている状態のときである。幅W3で示される上流側ベルト展張ニップ領域のうち、起毛がそのような状態になるのは入口付近から比較的離れたごく僅かな領域に限られる。また、駆け回し幅W1で示されるベルト掛け回し領域のうち、クリーニング電流によるトナーの逆帯電がそれほど発生しない領域は、入口付近のごく僅かな領域に限られる。これらの結果、従来のクリーニング装置では、クリーニングブラシに転移しないままに、ベルト掛け回し領域中央部に進入してしまう転写残トナーがどうしても発生して、クリーニング不良を引き起こしていたことがわかった。
【0007】
なお、クリーニング回転体として、クリーニングブラシローラを用いる場合を例にして説明したが、クリーニングローラのようなブラシを具備しないものを用いる場合でも、クリーニングニップにおけるベルト掛け回し領域では比較的多量のクリーニング電流が流れる。そして、クリーニングニップ内において、上流側ベルト展張ニップ領域で除去し切れなかったトナーがベルト掛け回し領域に進入して、クリーニング不良を引き起こすおそれがある。
【0008】
また、クリーニングブラシローラに対して、トナーの正規帯電極性とは逆極性のクリーニングバイスを印加しながら、正規極性に帯電したトナーをベルトから除去する構成を例にして説明したが、次のような構成においても、同様の問題が生じ得る。即ち、クリーニングブラシローラ等のクリーニング回転体に対して、トナーの正規帯電極性と同極性のクリーニングバイアスを印加しながら、逆帯電トナーをベルトから除去する構成である。
【0009】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来よりも良好にベルト部材をクリーニングすることができるベルト装置や画像形成装置を提供することである。
を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、自らのループ内側に配設された複数の張架ローラによって張架された状態で無端移動せしめられる無端状のベルト部材と、前記複数の張架ローラの1つであるクリーニング対向ローラに対する前記ベルト部材の掛け回し領域に対してベルトおもて面側から当接して、自らとベルトおもて面とが当接するクリーニングニップを形成した状態で、自らの表面を前記クリーニングニップ内でベルト移動方向とは逆方向に移動させるように回転しながら、ベルトおもて面に付着しているトナーを自らに転移させてクリーニングするクリーニング回転体と、前記クリーニング回転体に対してクリーニング電圧を印加する電圧印加手段とを備えるベルト装置において、ベルト移動方向における前記クリーニングニップの中心を、ベルト移動方向における前記掛け回し領域の中心よりもベルト移動方向の上流側に位置させ、且つ、少なくとも、前記ベルト部材における前記掛け回し領域からそれよりもベルト移動方向上流側のベルト展張領域に至るまでの範囲に前記クリーニング回転体を当接させて前記クリーニングニップを形成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のベルト装置において、ベルト移動方向における前記クリーニングニップの中心を、前記掛け回し領域よりも上流側の前記ベルト展張領域に位置させたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2のベルト装置において、ベルト移動方向における前記クリーニングニップの下流側端部を、前記掛け回し領域に位置させたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2又は3のベルト装置において、前記複数の張架ローラのうち、前記クリーニング対向ローラに対してベルト移動方向上流側で隣り合っている張架ローラであるクリーニング上流張架ローラにより、該クリーニング上流張架ローラと前記クリーニング対向ローラとの間のベルト展張領域を前記クリーニング回転体に向けて押圧するようにしたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4のベルト装置において、前記クリーニング上流張架ローラとして、少なくともローラ部の表面を絶縁体で構成したものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかのベルト装置において、前記クリーニング回転体として、回転可能な回転軸部材、及びその周面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部を具備するクリーニングブラシローラを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、無端状のベルト部材のおもて面に担持されているトナー像、あるいは、前記ベルト部材のおもて面に保持された記録部材に担持されているトナー像を、前記ベルト部材の無端移動に伴って搬送するベルト装置と、前記ベルト部材のおもて面、あるいは記録部材にトナー像を形成するトナー像形成手段とを備える画像形成装置において、前記ベルト装置として、請求項1乃至6の何れかのベルト装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7の画像形成装置において、上記トナーとして、体積平均粒径が3[μm]以上、6[μm]以下であり、且つ、体積平均粒径を個数平均粒径で除算した値が1.00以上、1.40以下であるもの、を用いることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項7又は8の画像形成装置において、上記トナーとして、形状係数SF−1が100以上、180以下であり、且つ、形状係数SF−2が100以上、180以下であるもの、を用いることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項7乃至9の何れかの画像形成装置において、上記ベルト部材として、少なくとも基材が弾性材料からなるものを用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
これらの発明では、ベルト移動方向において、クリーニングニップの中心を、クリーニング対向ローラに対するベルト掛け回し領域の中心よりも上流側に位置させることで、それら中心を同じところに位置させていた従来に比べて、上流側ベルト展張ニップ領域を増大させる。例えば、図2は、クリーニング回転体としてクリーニングブラシローラ903を用いた例を示しているが、図示のように、クリーニングニップのベルト移動方向の中心線であるニップ中心線L1を、クリーニングローラ902に対するベルト掛け回し領域の中心線である掛け回し中心線L2よりも上流側に位置させている。このようにすることで、従来例を示す図1との比較から明らかなように、幅W3で示される上流側ベルト展張ニップ領域を従来よりも増大させるのである。すると、トナーの逆帯電を引き起こし易い、クリーニング対向ローラに対するベルト掛け回し領域の中央部よりも上流側で、ベルト上のトナーをクリーニングブラシローラに良好に転移させ得る領域を従来よりも増大させるので、従来よりも良好にベルト部材をクリーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来のクリーニング装置におけるクリーニングニップの周囲構成の一例を示す拡大構成図。
【図2】本発明を適用したクリーニング装置におけるクリーニングニップの周囲構成の一例を示す拡大構成図。
【図3】実施形態に係るプリンタの要部を示す概略構成図。
【図4】同プリンタのベルトクリーニング装置とその周囲とを拡大して示す拡大構成図。
【図5】(a)、(b)、(c)は、1次転写ニップ通過後の感光体表面に残留した転写残トナーの帯電量分布と、極性制御ブレードとの接触位置を通過した後の転写残トナーの帯電量分布との関係の第1例、第2例、第3例を示すグラフ。
【図6】No1、No2の極性制御ブレードにおけるおける環境と電気抵抗との関係を示すグラフ。
【図7】No3、No4の極性制御ブレードにおけるおける環境と電気抵抗との関係を示すグラフ。
【図8】極性制御ブレードとの接触位置を通過する前後における転写残トナーの電荷量分布の変化を示すグラフ。
【図9】電気抵抗が、1×105Ω・cm、1×107Ω・cm、1×109Ω・cmであるクリーニングブラシローラのクリーニング性を示すグラフ。
【図10】同プリンタにおけるクリーニング対向ローラと中間転写ベルトとを示す拡大構成図。
【図11】同プリンタにおけるクリーニング対向ローラと中間転写ベルトとクリーニングブラシローラとを示す拡大構成図。
【図12】同プリンタにおける中間転写ベルトとクリーニングブラシローラとを示す拡大構成図。
【図13】従来例と実施形態に係るプリンタとにおける中間転写ベルトのトナークリーニング性の違いを示すグラフ。
【図14】同プリンタの回収ローラにおける電気抵抗と環境との関係を示すグラフ。
【図15】実施形態に係るプリンタの第1変形例におけるベルトクリーニング装置とその周囲とを示す拡大構成図。
【図16】実施形態に係るプリンタの第2変形例におけるベルトクリーニング装置とその周囲とを示す拡大構成図。
【図17】実施形態に係るプリンタの第3変形例における要部を示す概略構成図。
【図18】実施例に係るプリンタにおけるクリーニングニップとどの周囲とを示す拡大構成図。
【図19】トナー粒子の2次元平面に対する投影像の最大径MXLNGと平面積AREAとを説明する模式図。
【図20】トナー粒子の2次元平面に対する投影像の周長PERIと平面積AREAとを説明する模式図。
【図21】(a)、(b)、(c)はそれぞれトナーの形状を模式的に示す図。
【図22】クリーニングブラシの位置と、クリーニング残トナー量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した画像形成装置の実施形態として、いわゆるタンデム型中間転写方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)について説明する。まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図3は、本プリンタの要部を示す概略構成図である。本プリンタは、イエロー,マゼンタ,シアン,黒(以下、Y,M,C,Kと記す)のトナー像を生成するための4つのプロセスユニット6Y,M,C,Kを備えている。4つのプロセスユニット6Y,M,C,Kは、ドラム状の感光体1Y,M,C,Kをそれぞれ有している。感光体1Y,M,C,Kの回りにはそれぞれ帯電装置2Y,M,C,K、現像装置5Y,C,M,K、ドラムクリーニング装置4Y,M,C,K、除電装置(不図示)等を有している。プロセスユニット6Y,M,C,Kは、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。プロセスユニット6Y,M,C,Kの上方には、感光体1Y,M,C,Kの表面に対してレーザー光Lを照射して静電潜像を書き込むための図示しない光書込ユニットが配設されている。
【0014】
プロセスユニット6Y,M,C,Kの下方には、ベルト部材たる無端状の中間転写ベルト8を具備するベルト装置としての転写ユニット7が配設されている。中間転写ベルト8の他、そのループ内側に配設された複数の張架ローラや、ループ外側に配設された2次転写ローラ15、押圧ローラ16、ベルトクリーニング装置100などを有している。
【0015】
中間転写ベルト8のループ内側には、4つの1次転写ローラ9Y,M,C,Kと、テンションローラ10と、1次転写後ローラ11と、2次転写対向ローラ12と、極性制御対向ローラ13と、クリーニング対向ローラ14とが配設されている。これらローラは何れも、自らの周面の一部に中間転写ベルト8を掛け回してベルト張架を行う張架ローラとして機能している。中間転写ベルト8は、図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動される駆動ローラ12の回転により、図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。
【0016】
ベルトループ内側に配設された4つの1次転写ローラ9Y,M,C,Kは、感光体1Y,M,C,Kとの間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8のおもて面と、感光体1Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。なお、1次転写ローラ9Y,M,C,Kには、それぞれ図示しない電源によってトナーとは逆極性の1次転写バイアスが印加される。
【0017】
また、ベルトループ内側に配設された2次転写対向ローラ12は、ベルトループ外側に配設された2次転写ローラ12との間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8のおもて面と、2次転写ローラ12とが当接する2次転写ニップが形成されている。なお、2次転写ローラ12には、図示しない電源によってトナーとは逆極性の2次転写バイアスが印加される。
【0018】
また、ベルトループ内側に配設されたクリーニング対向ローラ14は、ベルトループ外側に配設されたベルトクリーニング装置100のクリーニングブラシローラ102との間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8のおもて面と、クリーニングブラシローラ102とが当接するクリーニングニップが形成されている。ベルトクリーニング装置100は中間転写ベルト8と一体的に交換可能になっているが、ベルトクリーニング装置100と中間転写ベルト8とで寿命設定が異なる場合には、ベルトクリーニング装置100を中間転写ベルトとは独立してプリンタ本体に着脱可能としてもよい。クリーニングブラシローラ103には、電圧印加手段たる図示しない電源によってトナーとは逆極性のクリーニングバイアスが印加される。
【0019】
本プリンタは、記録紙Pを収容する給紙カセットや、給紙カセットから記録紙Pを給紙路に給紙する給紙ローラなどを有する図示しない給紙部を備えている。また、給紙部から送られてきた記録紙を受け入れて2次転写ニップに向けて所定のタイミングで送り出す図示しないレジストローラ対を、上述した2次転写ニップの図中右側方に備えている。また、2次転写ニップから送り出される記録紙Pを受け入れてその記録紙Pに対してトナー像の定着処理を施す図示しない定着装置を、上述した2次転写ニップの図中左側方に備えている。また、必要に応じて、現像装置5Y,M,C,Kに対してY,M,C,Kトナーを補給する図示しないY,M,C,K用のトナー補給装置も備えている。
【0020】
近年、記録紙として従来広く用いられてきた普通紙に加え、デザインとして表面に凹凸を有する特殊紙やアイロンプリントなどの熱転写に用いる特殊な記録紙が用いられることが増えている。このような特殊紙を用いると、従来の普通紙の場合よりもカラートナーを重ね合わせた中間転写ベルト8上のトナー像を紙に2次転写する際に転写不良が発生し易くなる。そこで、本プリンタでは、中間転写ベルト8に弾性をもたせることにより、記録紙との接触性を高めている。
【0021】
中間転写ベルト8としては、多層構造のものが用いられる。ベース層としては、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン等の合成樹脂又は各種のゴムに、カーボンブラック等の導電剤を適当量含有させて、その体積抵抗率が106〜1014Ω・cmとなるものが用いられている。また、弾性を持たせたベルトにする場合には、その導電性弾性層の主基材として、シリコーンゴム、NBR、H−NBR、CR、EPDM、ウレタンゴム等が用いられる。また、導電性保護層の材料は、摩擦抵抗の低減、電気特性の環境に対する安定性、表面粗さ低減による残留トナークリーニング性能の向上といった目的を達成できるものであれば、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、PVDFなどのフッ素樹脂系ポリマーを、アルコール可溶性ナイロン系、シリコーン樹脂系、シランカプラー、ウレタン樹脂系のエマルジョンや有機溶媒に、溶解・分散した塗料を使用することができる。これら保護層は、上記の塗料をディップコート、スプレーコート、静電塗装、ロールコートなどにより設けることができる。さらに、保護層に表面処理または研磨を施すことにより離型性、導電性、耐磨耗性、表面クリーニング性等を改善することができる。弾性を有する中間転写ベルト8とドラム状の感光体1とは比較的広い接触領域にて接触配置されており、しかも、中間転写ベルト8により弾性押圧されているため、ドラム状の感光体1と中間転写8との間のタック面圧はそれほど高くなく、しかも、中間転写ベルト8によるトナー像の包み込み動作が行われ、感光体1Y,M,C,K上のトナー像が中間転写ベルト8側に一次転写される。このとき、中間転写ベルト8への転写画像には、大きなタック面圧によるホロキャラクタなどの画像欠陥はなく、高い転写効率で転写されるため、記録材(特に凹凸を有する特殊紙など)上のカラー画像品質はきわめて良好に保たれる。
【0022】
パーソナルコンピュータ等から画像情報が送られてくると、本プリンタは、駆動ローラ12を回転駆動して、中間転写ベルト8を無端移動させる。駆動ローラ12以外の張架ローラについては、ベルトに従動回転させる。同時に、プロセスユニット6Y,M,C,Kの感光体1Y,M,C,Kを回転駆動する。また、感光体1Y,M,C,Kの表面を帯電ローラ2Y,M,C,Kによって一様に帯電させながら、帯電後の表面に対してレーザー光Lの照射によって静電潜像を形成する。そして、感光体1Y,M,C,Kの表面に形成した静電潜像を現像装置5Y,M,C,Kすることで、感光体1Y,M,C,K上にY,M,C,Kトナー像を得る。Y,M,C,Kトナー像は、上述したY,M,C,K用の1次転写ニップにて、中間転写ベルト8のおもて面に重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト8のおもて面には4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0023】
一方、給紙部では、給紙ローラ27によって給紙カセットから記録紙Pを1枚づつ送り出してレジストローラ対まで搬送する。そして、中間転写ベルト8上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで、レジストローラ対を駆動して記録紙Pを2次転写ニップに送り込んで、ベルト上の4色重ね合わせトナー像を記録紙Pに一括2次転写する。これにより、記録紙Pの表面にフルカラー画像を形成する。フルカラー画像形成後の記録紙Pについては、2次転写ニップから定着装置に搬送してトナー像の定着処理を施す。
【0024】
Y,M,C,Kトナー像を中間転写ベルト8に1次転写した後の感光体1Y,M,C,Kについては、ドラムクリーニング装置4Y,M,C,Kによって転写残トナーのクリーニング処理を施す。その後、図示しない除電ランプで除電した後、耐電装置2Y,M,C,Kで一様に帯電せしめて、次の画像形成に備える。
【0025】
ここで、従来のブレードクリーニング方式の問題点について説明する。上述のように、近年、高画質化の要望が高まり、トナーは小粒径化の傾向にある。また、トナー製造コスト低減および転写率向上の要望から粉砕トナーではなく重合法等により球形化トナーを採用する傾向にある。小粒径化や球形化の進んだトナーの使用に伴い、像担持体上に残留したトナーを除去する手段として主に用いられてきたブレードクリーニング方式では、ブレードと像担持体表面の密着の精度が低いとトナーがすり抜けてしまいクリーニング性が低下しやすい。これを防ぐため、ブレードを強い当接圧で押しつけると、ブレードのめくれが発生し、いわゆるスジ状あるいは帯状のクリーニング不良を引き起こす原因となり、安定したクリーニング性能を保ちつづけることが困難である。また、球形トナーでも線圧を極端に高くすれば(具体的には、線圧100gf/cm以上)クリーニングできるが、その分クリーニングブレードの磨耗やベルトのキズ等により寿命が極端に短くなる。通常の線圧20gf/cmでのクリーニングブレード寿命(削れてクリーニング不良が発生する時の寿命)は、約120K枚である。線圧100gf/cmの時は、クリーニングブレードの寿命は約20K枚程度である。また、転写性が良いとされている球形トナーに対して、ブレードクリーニング性は、粉砕(異型)トナーに対するクリーニング性より劣ることは良く知られていることである。
【0026】
そこで、本プリンタでは、ブレードクリーニング方式よりも良好に球形化トナーをクリーニングすることが可能な静電クリーニング方式のベルトクリーニング装置10を採用している。
【0027】
図4は、本プリンタのベルトクリーニング装置100とその周囲とを拡大して示す拡大構成図である。同図において、ベルトクリーニング装置100は、中間転写ベルト8上から転写残トナーを除去するクリーニング部材としてのクリーニングブラシローラ102を有している。また、クリーニングブラシローラ102に付着したトナーを回収する回収部材としての回収ローラ103、回収ローラ103に当接してローラ表面からトナーを掻き取る掻き取り部材としての掻き取りブレード104、トナー搬送スクリュウ105なども有している。トナー搬送スクリュウ105は、回収ローラ103の表面から掻き取られたトナーを、装置ケーシングの一端部に向けて搬送して装置ケーシングの外に排出するものである。排出されたトナーは、プリンタ本体に備えられた図示しない廃トナータンク(不図示)内に落下する。
【0028】
クリーニングブラシローラ102は、回転自在に支持される金属製の回転軸部材と、これの周面に立設せしめられた複数の起毛(導電性繊維)からなるブラシローラ部とを具備している。
【0029】
掻き取りブレード104は、回収ローラ103表面からトナーを掻き取る掻き取り部材としての機能と、回収ローラ103表面に電荷を付与する電荷供給手段としての機能を兼ね備えている。また、クリーニングブラシローラ521は、回転自在に支持される金属製の回転軸部材と、これの周面に立設せしめられた複数の起毛(導電性繊維)からなるブラシローラ部とを具備しており、図示しないブラシ用電源によってトナーとは逆極性のクリーニングバイアスが印加される。また、回収ローラ522には、図示しない回収電源より、トナーとは逆極性で且つクリーニングバイアスよりも大きな値の回収バイアスが印加される。
【0030】
中間転写ベルト8のおもて面と、クリーニングブラシローラ102とが当接するクリーニングニップよりもベルト移動方向上流側では、2次転写ニップ通過後の転写残トナーの帯電極性を制御する極性制御部材たる極性制御ブレード101がベルトおもて面に当接している。この極性制御ブレード101には、トナーの正規帯電極性と同極性の極性制御バイアスが印加される。
【0031】
中間転写ベルト8の表面には、極性制御ブレード101が常時摺擦するベルト表面を保護するために、潤滑剤を塗布してもよい。この場合、ステアリン酸亜鉛塊などの固形潤滑剤をクリーニングブラシローラ102のブラシローラ部に当接させ、回転によって固形潤滑剤から掻き取って得た潤滑剤粉末を中間転写ベルト8表面に塗布する。また、中間転写ベルト8表面に塗布した潤滑剤粉末を均して均一にするための均しブレード(不図示)を設けてもよい。
【0032】
本プリンタのベルトクリーニング装置100では、次の4つの工程で中間転写ベルト8上のトナーを除去する。
1.極性制御ブレード101で中間転写ベルト8上のトナーの極性を正規帯電極性(本例では負極性)に揃える。
2.クリーニングブラシローラ102にトナーとは逆極性(本例では正極性)のクリーニングバイアスを印加して、中間転写ベルト8上のトナーを静電的にクリーニングブラシローラ102上に転移させる。
3.回収ローラ103にクリーニングバイアスと同極性で且つ絶対値が大きい回収バイアスを印加して、クリーニングブラシローラ102上のトナーを回収ローラ103上に転移させる。
4.掻き取りブレード104で回収ローラ103上のトナーを掻き落とす。
【0033】
以下、これらの工程について詳しく説明する。
まず、2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト8に付着している転写残トナーの帯電量と、極性制御ブレード102との接触位置を通過した後(以下、極性制御ブレード通過後という)のトナーの帯電量とについて説明する。感光体の表面上では、殆どのトナー粒子が正規極性である負極性に帯電している。これに対し、中間転写ベルト8の表面上に付着している転写残トナーには、正規極性とは逆極性に帯電している逆帯電トナー粒子が多く存在している。1次転写ニップや2次転写ニップ内で転写残トナー粒子に対して逆極性の電荷注入などが起こるからである。
【0034】
このことを分かり易くするために、ベルトクリーニング装置100の代わりに、ドラムクリーニング装置(図1の4Y,M,C,K)を例にして説明する。図5(a)、(b)、(c)は、1次転写ニップ通過後の感光体表面に残留した転写残トナーの帯電量分布と、極性制御ブレードとの接触位置を通過した後の転写残トナーの帯電量分布との関係の第1例、第2例、第3例を示すグラフである。なお、ここで言う極性制御ブレードは、図4に示したベルトクリーニング装置100の極性制御ブレード101とは異なるものである。1次転写ニップを通過した後の感光体表面に当接するように各色のドラムクリーニング装置4Y,M,C,K(図1参照)内にそれぞれ配設されたものであり、図4の極性制御ブレード101と同様に、トナーの正規帯電極性と同極性の極性制御バイアスが印加される。また、トナー帯電量分布については、次のようにして測定した。即ち、ホソカワミクロン製 E−スパートアナライザ(EST−3)によってトナー1個ずつの電荷量Qとそのトナーの粒径dとを測定したデータをもとに、本プリンタで作像した時の感光体1上の転写残トナー数百個をサンプリングした時のQ/d(単位はfc/μm)分布を帯電量分布とした。
【0035】
図5(a)に示した第1例は、正極性のトナーと負極性のトナーとが半分づつの状態で混在したブロードな分布(以下、転写残トナーAという)になっている。また、図5(b)に示した第2例は、正極性のトナーが負極性トナーよりも多い状態で混在したブロードな分布(以下、転写残トナーBという)である。また、図5(c)に示した第3例は、プロセスコントロール時等の未転写トナーであり、ほとんどが負極性トナーでシャープな分布になっている。
【0036】
1次転写ニップを通過した後の感光体表面に残留している転写残トナーA、転写残トナーBが感光体の回転に伴って極性制御ブレードの位置まで達すると、ほとんどの転写残トナーが極性制御ブレードによって機械的に掻き落される。しかし、いわゆるスティックスリップが発生することで、一部の転写残トナーが極性制御ブレードをすり抜けて行く。この際、転写残トナーが正規の帯電極性(負極性)に帯電する。図5(a)、(b)に示したように、極性制御ブレードの当接位置を通過する前のトナーの帯電量分布により、通過後の帯電量分布も異なってくるが、ブレード通過後にはどちらも殆どのトナー粒子が負極性に帯電している。図5(c)に示される未転写トナーは、ほとんど変化しないか、あるいはやや負極性よりになる。
【0037】
各色のプロセスユニットに配設される極性制御ブレードは、例えばポリウレタン等からなる弾性体からなり、素材にカーボンブラックやイオン系の導電剤が混練されていることで導電性を発揮する。その電気抵抗は、2×106Ω・cm〜5×107Ω・cmが好ましい。また、厚みは1〜3mmの範囲内とするのが良い。厚さが薄すぎると、感光体表面及び極性制御ブレード自体のうねり等によって感光体への押しつけ量が確保しにくくなる。硬度はJIS−A硬度計で40〜85の範囲内であれば良い。極性制御ブレードに対しては、感光体上の転写残トナーの全量を確実にクリーニングすることは要求されず、多少のトナーのすり抜けを許容しても問題ない。
【0038】
本発明者らが実験に使用した極性制御ブレード(プロセスユニット内)の諸条件は次の通りである。
・電気抵抗:1×106Ω・cm、又は1×108Ω・cm
・厚み:2.4、又は2.8mm
・自由長:7、又は9mm
・硬度:JIS−A硬度で60〜80
・ブレード反発弾性係数:45%
【0039】
かかる諸条件を具備する極性制御ブレードの電気抵抗は、環境によって変化する。参考までに、No1〜No4の4種類の極性制御ブレード420について、設置条件の例を次の表1に示す。また、それらブレードにおけるおける環境と電気抵抗との関係を図6、図7に示す。
【表1】
【0040】
このような極性制御ブレードと、感光体との間にトナーが挟まれた時、極性制御ブレードに印加された極性制御バイアスによってトナーに電流が流れ込む。そして、トナーは、印加電圧と同極性に帯電して極性制御ブレードとの当接位置を通過する。また、感光体と極性制御ブレードとで形成された当接部の入口や出口における感光体〜ブレード間の微小ギャップでの放電あるいは電荷注入によっても、トナーは印加電圧と同極性に帯電する。この結果、トナーは図5(a)、(b)の「ブレード通過後」に示すような負極性の帯電量分布となる。図8は、極性制御ブレードとの当接位置を通過する前後における転写残トナーの電荷量分布の変化を示すグラフである。
【0041】
ドラムクリーニング装置4Y,M,C,Kにおいて、ブレード通過後のトナーは、感光体に当接しながら回転するクリーニングブラシローラによってドラム表面から除去される。図9に、電気抵抗が、1×105Ω・cm、1×107Ω・cm、1×109Ω・cmであるクリーニングブラシローラのドラムクリーニング性を示す。電気抵抗が1×109Ω・cmの時は、印加電圧が大きいため、電源コストがアップする。一方、電気抵抗が1×105Ω・cmの時は感光体1に電流を流し易いことにより、1×107Ω・cmのときよりも低い電圧でトナーが正極性に帯電して感光体1に再付着する。このため、クリーニング性の余裕度が小さい。したがって、1×107Ω・cmの条件がもっとも適している。但し、ブラシ抵抗は直径10mmのSUSローラにクリーニングブラシローラを1mm食い込ませて当接させて200mm/secで両方を回転させ、ブラシ芯金に電圧を印加して電流測定し抵抗を算出したものである。繊維はナイロン、ポリエステル、アクリル等の絶縁材が一般的で何れの材料の場合も同じ効果である。また、芯鞘構造の代表的な繊維は特開平10−310974号公報、特開平10−131035、特開平01−292116号公報、特公平07−033637号公報、特公平07−033606号公報、特公平03−064604号公報に開示されている。
【0042】
ドラムクリーニング装置4Y,M,C,Kを例について説明したが、図2に示したベルトクリーニング装置100においても、ドラムクリーニング装置4Y,M,C,Kと同様の現象が生ずる。つまり、ベルトクリーニング装置100において、極性制御ブレード101は、転写残トナーをベルト表面から掻き取ったり、ブレード通過後の転写残トナーの極性を正規帯電極性に揃えたりすることができる。なお、極性制御ブレード101の代わりに、コロナチャージャによって転写残トナーの極性を正規極性に揃えるようにしてもよい。この場合、コロナチャージャに対して−800μA程度の電流を供給すればよい。
【0043】
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
図10は、本プリンタにおけるクリーニング対向ローラ14と中間転写ベルト8とを示す拡大構成図である。同図において、クリーニング対向ローラ14は、直径22mmのアルミ製のローラからなり、中間転写ベルト8の無端移動に伴って図中時計回り方向に従動回転する。このクリーニング対向ローラ14の全周のうち、図中の点Bから点Cに至る弧状の領域に対して、中間転写ベルト8が掛け回されている。そのベルト掛け回し領域のベルト移動方向の長さである掛け回し幅は、図中の符号W1で示されている。なお、同図において、符号L2で示される二点差線は、ベルト掛け回し領域(弧BC)のベルト移動方向の長さである掛け回し中心線を示している。また、符号L3で示される二点差線は、点Bに進入する直前のベルト移動方向をそのまま延長した延長線を示している。
【0044】
図11は、本プリンタにおけるクリーニング対向ローラ14と中間転写ベルト8とクリーニングブラシローラ102とを示す拡大構成図である。同図において、クリーニングブラシローラ102は、中間転写ベルト8のおもて面に対して、ニップ入口点Fからニップ出口点Gまでの領域(ニップ幅W2で示される領域)で当接してクリーニングニップを形成している。そして、クリーニングニップ内において、自らの表面を中間転写ベルト8とは逆方向に移動させるように、カウンター方向(同図で時計回り方向)に回転する。
【0045】
同図に符号L1で示される二点差線は、クリーニングニップにおけるベルト移動方向の中心に位置するニップ中心線である。本プリンタにおいては、図示のように、ニップ中心線L1を掛け回し中心線L2よりもベルト移動方向の上流側に位置させ、且つ、ニップ入口点Fからニップ出口点Gまでのクリーニングニップにおけるベルト移動方向上流側の端部を、ブラシがベルト展張領域に当接する上流側ベルト展張ニップ領域としている。かかる構成では、ニップ中心線L1と掛け回し中心線L2とを同じ場所に位置させていた従来装置に比べて、幅W3で示される上流側ベルト展張ニップ領域(ニップ入口点Fから掛け回し入口点Bまでの領域)を増大させる。これにより、トナーの逆帯電を引き起こし易い、ベルト掛け回し領域の中央部よりも上流側で、ベルト上のトナーをクリーニングブラシローラ102に良好に転移させ得る領域を従来よりも増大させて、従来よりも良好に中間転写ベルト8をクリーニングすることができる。
【0046】
図12は、本プリンタにおける中間転写ベルト8とクリーニングブラシローラ102とを示す拡大構成図である。同図において、クリーニングブラシローラ102の回転軸部材102と中間転写ベルト8とが最も近づく位置は、ニップ中心線L1の位置である。このため、このニップ中心線L1の位置では、ニップ圧が最も高くなって、ベルトからのトナーの掻き取り力が最も強くなって、物理的にはベルト上のトナーを最もブラシに転移させ易くなる。本プリンタでは、このように物理的にトナーを最もブラシに転移させ易くなるニップ中心線L1を、先に図11に示したように、ベルト掛け回し領域(弧BC)よりもベルト移動方向上流側に位置させている。つまり、ニップ中心線L1をクリーニング対向ローラ14に対する巻き付きがない上流側ベルト展張ニップ領域の場所に位置させている。上流側ベルト展張ニップ領域では、クリーニング電流の量がベルト掛け回し領域よりも大幅に少なくなる。このような上流側ベルト展張ニップ領域の場所に、物理的にトナーを最もブラシに転移させ易くなるニップ中心線L1を位置させることで、ベルト上の殆どの転写残トナーをクリーニング電流によって逆帯電させる前にクリーニングブラシローラ102のブラシ内に転移させることができる。
【0047】
図11に示すように、ニップ入口点Fからニップ出口点Gまでに至るクリーニングニップにおけるベルト移動方向下流側では、ニップ出口点Gをベルト掛け回し領域(弧BC)の出口点Cよりも上流側に位置させている。これは次に説明する理由による。即ち、本プリンタのように、クリーニングブラシローラ102を中間転写ベルト8に対してカウンター方向に回転させる構成では、クリーニングブラシローラ102が回転に伴ってブラシ先端を中間転写ベルト8に接触させ始める位置が、ニップ出口点Gとなる。このニップ出口点Gでは、ブラシを構成する複数の起毛をベルトに突き当てる際に、ベルトに対して大きな応力を付与することになる。このようなニップ出口点Gにおいて、中間転写ベルト8がクリーニング対向ローラ14に掛け回されておらず、自由に波打つことが可能なベルト展張領域が位置していると、前述の大きな応力によってベルトを大きく波打たせてしまう。そこで、本プリンタでは、ニップ出口点Gをベルト掛け回し領域の出口点Cよりも上流側のベルト掛け回し領域に位置させている。ベルト掛け回し領域は、自由に波打つことができないため、ブラシをニップ出口点Gでベルト展張領域に突き当てることによるベルトの波打ちの発生を回避することができる。
【0048】
図13は、ニップ中心線L1と掛け回し中心線L2とを同じ場所に位置させた従来例と、実施形態に係るプリンタとにおける中間転写ベルト8のトナーのクリーニング性の違いを示すグラフである。従来例と本プリンタとを比較すると、本プリンタ(実施形態)では、クリーニングバイアスの良好なクリーニング性を発揮し得る適正値範囲が従来例に比べて大幅に広くなっていることが解る。
【0049】
本プリンタのベルトクリーニング装置100における具体的な構成条件の一例は、通常環境(高温高湿環境以外)で以下のとおりである。
<クリーニングブラシローラ102の条件>
ブラシ材質:導電性ポリエステル(繊維内部に導電性カーボンを内包し、繊維表面はポリエステル、いわゆる芯鞘構造)
ブラシ抵抗:1×105Ω(1000Vの電圧印加条件で軸線方向全域測定)
ブラシ軸印加電圧(クリーニングバイアス):+800V
ブラシ植毛密度:10万本/inch2、繊維径約25〜35μm、ブラシ先端の毛倒れ処理あり
ブラシ直径:16mm
中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量:1mm
回転方向:ベルトに対してカウンター方向
【0050】
クリーニングブラシローラ102は、ブラシロール状に形成後、一方向に毛を倒す斜毛処理を施すと、繊維断面に露出している導電剤を中間転写ベルト8に接触させ難くなる。これにより、トナーへの電荷注入性が低減され、クリーニング性の余裕度が向上する。繊維はナイロン、ポリエステル、アクリル等の絶縁材が一般的で何れの材料の場合も同じ効果である。また、芯鞘構造の代表的な繊維は特開平10−310974号公報、特開平10−131035、特開平01−292116号公報、特公平07−033637号公報、特公平07−033606号公報、特公平03−064604号公報に開示されている。
【0051】
<回収ローラ103の条件>
回収ローラ芯金材質:SUS(ステンレス)
回収ローラ表面材質:PVDF(厚み100μm)の表層にアクリル系UV硬化樹脂層(厚み3〜5μm)
ローラ直径:14mm
回収ローラへのブラシ繊維食い込み量:1.5mm
回収ローラ芯金印加電圧(回収バイアス):+1400V
回転方向:クリーニングブラシローラ102に対してカウンター方向
【0052】
回収ローラ103はステンレスからなる芯金の表面にPVDFを100μmの厚みで有し、さらにその表面にアクリル系のUV硬化樹脂層を有するもの(高抵抗ローラ)を用いた。回収ローラ103の電気抵抗は、低温低湿環境下(LL)、中温中湿環境下(MM)、高温高湿環境下(HH)でそれぞれ図14に示す通りである。本実施形態で用いた回収ローラ103のみならず、導電性芯金に数μm〜100μm程度の高抵抗弾性チューブを被せたもの、あるいはさらに絶縁コーティングしたものでも同じ性能を得られる。回収ローラ103の表面の材料としては、PVDFチューブ、PFAチューブ、PIチューブ、アクリルコート、シリコーンコート(例えばシリコーン粒子を含有したPC(ポリカーボネート)をコート)、セラミックス、フッ素コーティングなどがある。
【0053】
なお、クリーニングブラシローラ102の起毛として、繊維の内部が導電性の材料からなり、且つ繊維外面が絶縁性のポリエステルからなる芯鞘構造のものを用いた例について説明したが、導電性と絶縁性との関係がその逆になっているものを採用していもよい。即ち、繊維の内部がポリエステル等の絶縁性の材料からなり、且つ繊維顔面が導電性の材料からなる外側導電構造のものである。本発明者らの実験によれば、クリーニングニップに流れるクリーニング電流を安定化させるという点については、芯鞘構造の起毛を用いる構成よりも外側導電構造のものを用いる方が優れた結果になった。しかし、図1に示したような従来構成を採用していると、クリーニング電流によってクリーニングニップ内でトナーを逆帯電させてブラシ内からベルト表面にトナーを吐き出してしまうという現象を、外側導電構造の方が芯鞘構造よりも顕著に発生させてしまった。かかる現象については、既に述べたように、図11に示した構成を採用することで、その発生を効果的に抑えることができる。つまり、ニップ中心線L1を掛け回し中心線L2よりもベルト移動方向の上流側に位置させ、且つ、ニップ入口点Fからニップ出口点Gまでのクリーニングニップにおけるベルト移動方向上流側の端部を、ブラシがベルト展張領域に当接する上流側ベルト展張ニップ領域とする構成を採用すれば、外側導電構造の欠点を克服することができる。そして、欠点を克服するだけでなく、クリーニング電流をより安定化させるという外側導電構造の利点を得ることも可能になる。
【0054】
また、回収ローラ103として、高抵抗層を表面に被覆したものを用いた例について説明したが、表面を低抵抗層で被覆したものや、無垢の金属ローラを用いてもよい。回収効率を重視する場合には、無垢の金属ローラを用いる方が有利である。
【0055】
<掻き取りブレード104の条件>
材質:SUS
厚み:100μm
ブレード当接角度:20°
回収ローラ103へのブレード食い込み量:0.6mm
掻き取りブレードへの印加電圧(掻き取りバイアス):+2000V
【0056】
回収ローラ103には芯金に回収バイアスが印加され、その表面電位を測定すると回収バイアスとほぼ同電位になっているのであるが、クリーニング動作中、多くのトナーが入力されると、回収ローラ103の表面電位はトナーの入力とともに低下していく。すると、回収ローラ103とクリーニングブラシローラ102との電位差(回収電位差)が必要な値だけ確保できなくなり、クリーニングブラシローラ102からトナーを回収する能力が低下する。このため、例えば、A4サイズ1枚分のプリントであれば必要な大きさの回収電位差が確保できるが、連続プリント動作で且つブラシへの入力トナー量が多い場合には回収電位差が確保できなくなるといった事態を引き起こすことがある。すると、クリーニングブラシローラ102内にトナーが溜まった状態となり、ブラシからベルトにトナーを吐き出してしまうといった問題がある。このため、導電性の掻き取りブレード104に掻き取り電圧を印加して、回収ローラ103の表面に電荷を与えることで、回収電位差を大きくして回収性能を向上させるようになっている。
【0057】
極性制御ブレード101の劣化があまり進行しておらず極性制御ブレード101との当接位置でのトナーのすり抜けがそれほど起こらないときには、掻き取りブレード104への掻き取り電圧の印加の必要性は少ない。しかし、極性制御ブレード101の劣化の進行によって極性制御ブレード101との当接位置におけるトナーのすり抜け量が比較的多くなった場合や、低温低湿環境下において高温高湿環境下よりもすり抜け量が多くなる場合に、掻き取りバイアスの印加が特に有効である。
【0058】
本発明者らは、図11に示した構成を採用することで、図1に示した構成に比べて、良好なクリーニング性を得ることができることを立証する実験を行った。具体的には、実施形態に係るプリンタと、ほぼ同じ構成のプリント試験機を用意した。なお、このプリント試験機は、次に列記する点が、実施形態のプリンタと異なっているが、図11に示した構成を有するという点では、実施形態に係るプリンタと共通している。
<プリント試験機のクリーニングブラシローラ102>
ブラシ材質:導電性ポリエステル
繊維内部が絶縁性で且つ繊維外面が導電性の外側導電構造のもの。
ブラシ抵抗:1×107Ω(1600Vの電圧印加条件で軸線方向全域測定)
ブラシ軸印加電圧(クリーニングバイアス):+1600V
ブラシ植毛密度:7万本/inch2、繊維径約25〜35μm、ブラシ先端の毛倒れ処理あり
繊維太さ:6[デニール]
ブラシ直径:15mm
中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量やブラシ回転方向は実施形態と同じ。
【0059】
<プリント試験機の回収ローラ103>
回収ローラ芯金材質:SUS(ステンレス)
回収ローラ表面材質:本体と同じ無垢のステンレス
ローラ直径:15mm
回収ローラ芯金印加電圧(回収バイアス):+2000V
【0060】
<プリント試験機の掻き取りブレード104>
掻き取りブレードへの印加電圧(掻き取りバイアス):+2000V(回収バイアスと同じ)
なお、掻き取りバイアスとして0Vを採用してもよい。プリント試験機のように、回収ローラ103としてローラ表面が無垢の金属であるものを用いる場合には、掻き取りバイアスを回収バイアスと同じ値に設定するか、あるいは0V(フロート)にする必要がある。また、回収ローラ表面が導電性の非金属材料からなる場合であっても、その電気抵抗が比較的低い場合には、実施形態のプリンタのように掻き取りバイアスを回収バイアスよりも大きくするのではなく、プリント試験機のように掻き取りバイアスを回収バイアスと同じ値にするか、0V(フロート)にすることが望ましい。
【0061】
実験において、2次転写工程では、中間転写ベルト8のおもて面に当接して2次転写ニップを形成している2次転写ローラ15を接地する一方で、中間転写ベルト31のループ内側に配設されている2次転写対向ローラ12に対して、トナーの帯電極性と同じマイナス極性の2次転写バイアスを印加した。2次転写バイアスについては、電源からの出力電流が−63[μA]になるように、出力電流値を定電流制御した。このような定電流制御の条件に設定すると、2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト8の表面に、比較的多量のプラス極性の2次転写残トナーが発生することを、予めの実験によって確かめたからである。つまり、2次転写残トナーが比較的多量に発生する条件に意図的に設定して、実験を行ったのである。
【0062】
クリーニングブラシローラ102の位置については、次の6通りの条件をそれぞれ個別に採用した。
(1)クリーニングブラシローラ102ローラ軸心を、クリーニング対向ローラ14の軸心よりもベルト移動方向上流側に5[mm]ずらした位置。
(2)クリーニングブラシローラ102ローラ軸心を、クリーニング対向ローラ14の軸心よりもベルト移動方向上流側に3[mm]ずらした位置。
(3)クリーニングブラシローラ102ローラ軸心を、クリーニング対向ローラ14の軸心よりもベルト移動方向上流側に2[mm]ずらした位置。
(4)クリーニングブラシローラ102ローラ軸心を、クリーニング対向ローラ14の軸心よりもベルト移動方向上流側に1[mm]ずらした位置。
(5)クリーニングブラシローラ102ローラ軸心を、クリーニング対向ローラ14の軸心の真下にした位置(従来構成)。
(6)クリーニングブラシローラ102ローラ軸心を、クリーニング対向ローラ14の軸心よりもベルト移動方向下流側に3[mm]ずらした位置(本発明とは逆の構成)。
【0063】
これら6通りの条件で、それぞれA3サイズ紙に全面黒ベタ画像を出力して、ベルトクリーニング装置100を通過した後の中間転写ベルト8上に残留してしまうクリーニング残トナー量を測定した。この実験の結果を、図22にグラフで示す。同図において、ブラシ位置の極性がマイナスになっている条件は、クリーニングブラシローラ102の軸心がクリーニング対向ローラ14の軸心よりもベルト移動方向の上流側にずれていることを示している。即ち、同図において、ブラシ位置が−5、−3、−2、−1、0、3である条件は、上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)の条件であることを示している。図示のように、クリーニング対向ローラ14の軸心をクリーニング対向ローラ14の軸心に対してベルト移動方向上流側に適度にずらした構成では、ずらしていない構成((5))や、ベルト移動方向下流側にずらした構成よりも、クリーニング残トナーの発生を抑えることができている。
【0064】
図15は、実施形態に係るプリンタの第1変形例におけるベルトクリーニング装置100と、その周囲とを示す拡大構成図である。第1変形例においては、ベルトクリーニング装置100が、クリーニングブラシローラ102のベルト移動方向下流側で中間転写ベルト8をクリーニングする第2クリーニングブラシローラ106を有している点が、実施形態と異なっている。第2クリーニングブラシローラ106は、中間転写ベルト8をそのループ内側で掛け回している第2クリーニング対向ローラ17との間に、中間転写ベルト8を挟み込むように配設されている。より詳しくは、クリーニングブラシローラ102と同様に、第2クリーニングブラシローラ106に対するベルト掛け回し領域のベルト移動方向の中心線よりも、クリーニングニップのベルト移動方向の中心線をベルト移動方向上流側に位置させるように、中間転写ベルト8に当接している。これにより、第2クリーニングブラシローラ106においても、従来よりも良好に転写残トナーをクリーニングすることができる。
【0065】
極性制御ブレード101、クリーニングブラシローラ102、回収ローラ103、掻き取りブレード104におけるそれぞれの条件は、実施形態と同様である。
【0066】
実施形態のプリンタであっても、クリーニングブラシローラ102を通過した後のベルト表面を完全にトナーのないものにすることは不可能である。どうしても、ごく僅かのトナーを残してしまう。そのトナーの殆どは、正規極性とは逆極性に帯電している逆帯電トナーである。この逆帯電トナーが発生する原因は、ベルトクリーニング装置100よりも、むしろトナー粒子そのものにあることが多い。トナー粒子そのものが、正常なものではなく、逆帯電し易い性質のものになっているのである。
【0067】
第1変形例においては、そのような逆帯電トナーをクリーニングする目的で、第2クリーニングブラシローラ102を設けている。第2クリーニングブラシローラ102に印加する第2クリーニングバイアスは、トナーの正規帯電極性と同極性(本例では負極性)のものである。
【0068】
中間転写ベルト8から第2クリーニングブラシローラ102に転移した逆帯電トナーは、第2クリーニングブラシローラ102に当接しながら回転する第2回収ローラ107の表面に転移する。この第2回収ローラには、トナーの正規帯電極性と同極性で、且つ絶対値が第2クリーニングバイアスよりも大きな第2回収バイアスが印加される。
【0069】
第2回収ローラ107の表面上に回収された逆帯電トナーは、第2回収ローラ107に当接している第2掻き取りブレード108によってローラ表面から掻き落とされる。この第2掻き取りブレード108には、トナーの正規帯電極性と同極性で、且つ絶対値が第2回収バイアス以上の第2掻き取りバイアスが印加される。
【0070】
第2クリーニングブラシローラ106などの具体的条件の一例は次の通りである。
<第2クリーニングブラシローラ106の条件>
ブラシ材質:導電性ポリエステル(繊維内部に導電性カーボンを内包し、繊維表面はポリエステル、いわゆる芯鞘構造)
ブラシ抵抗:1×107Ω(1000の電圧印加条件で軸線方向全域測定)
ブラシ軸印加電圧(第2クリーニングバイアス):−800V
ブラシ植毛密度:10万本/inch2、繊維径約25〜35μm、ブラシ先端の毛倒れ処理あり
ブラシ直径:16mm
中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量:1mm
回転方向:ベルトに対してカウンター方向
【0071】
<第2回収ローラ107の条件>
回収ローラ芯金材質:SUS(ステンレス)
回収ローラ表面材質:PVDF(厚み100μm)の表層にアクリル系UV硬化樹脂層(厚み3〜5μm)
ローラ直径:14mm
第2回収ローラへのブラシ繊維食い込み量:1.5mm
回収ローラ芯金印加電圧(第2回収バイアス):−1200V
回転方向:第2クリーニングブラシローラ106に対してカウンター方向
【0072】
<第2掻き取りブレード108の条件>
材質:SUS
厚み:100μm
ブレード当接角度:20°
第2回収ローラ107へのブレード食い込み量:0.6mm
第2掻き取りブレードへの印加電圧(第2掻き取りバイアス):−1200V
【0073】
図16は、実施形態に係るプリンタの第2変形例におけるベルトクリーニング装置100と、その周囲とを示す拡大構成図である。第2変形例では、ベルトクリーニング装置100が第2クリーニングブラシローラ106を有している点と、極性制御ブレードを有していない点とが、実施形態と異なっている。
【0074】
クリーニングブラシローラ102によってクリーニングされる前の転写残トナーの極性を正規帯電極性に揃える極性制御ブレードを設けていないので、クリーニングブラシローラ102によるクリーニングニップを通過した後のベルト表面には多くのトナーが残留している。それら残留トナーの殆どは逆帯電トナー粒子である。このような残留トナーは、第2クリーニングブラシローラ106によって中間転写ベルト8表面から除去される。第2クリーニングブラシローラ106に印加される第2クリーニングバイアスは、トナーの正規帯電極性と同極性のバイアスである。
【0075】
第2変形例における各種部材の条件は以下の通りである。
<クリーニングブラシローラ102の条件>
ブラシ材質:導電性ポリエステル(繊維内部に導電性カーボンを内包し、繊維表面はポリエステル、いわゆる芯鞘構造)
ブラシ抵抗:1×107Ω(1000の電圧印加条件で軸線方向全域測定)
ブラシ軸印加電圧(クリーニングバイアス):+1000V
ブラシ植毛密度:10万本/inch2、繊維径約25〜35μm、ブラシ先端の毛倒れ処理あり
ブラシ直径:16mm
中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量:1mm
回転方向:ベルトに対してカウンター方向
【0076】
<回収ローラ103の条件>
回収ローラ芯金材質:SUS(ステンレス)
回収ローラ表面材質:PVDF(厚み100μm)の表層にアクリル系UV硬化樹脂層(厚み3〜5μm)
ローラ直径:14mm
回収ローラへのブラシ繊維食い込み量:1.5mm
回収ローラ芯金印加電圧(回収バイアス):+1600V
回転方向:クリーニングブラシローラ102に対してカウンター方向
【0077】
<掻き取りブレード104の条件>
材質:SUS
厚み:100μm
ブレード当接角度:20°
第2回収ローラ107へのブレード食い込み量:0.6mm
第2掻き取りブレードへの印加電圧(第2掻き取りバイアス):+1600V
【0078】
<第2クリーニングブラシローラ106の条件>
ブラシ材質:導電性ポリエステル(繊維内部に導電性カーボンを内包し、繊維表面はポリエステル、いわゆる芯鞘構造)
ブラシ抵抗:1×107Ω(1000の電圧印加条件で軸線方向全域測定)
ブラシ軸印加電圧(第2クリーニングバイアス):−800V
ブラシ植毛密度:10万本/inch2、繊維径約25〜35μm、ブラシ先端の毛倒れ処理あり
ブラシ直径:16mm
中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量:1mm
回転方向:ベルトに対してカウンター方向
【0079】
<第2回収ローラ107の条件>
回収ローラ芯金材質:SUS(ステンレス)
回収ローラ表面材質:PVDF(厚み100μm)の表層にアクリル系UV硬化樹脂層(厚み3〜5μm)
ローラ直径:14mm
第2回収ローラへのブラシ繊維食い込み量:1.5mm
回収ローラ芯金印加電圧(第2回収バイアス):−1200V
回転方向:第2クリーニングブラシローラ106に対してカウンター方向
【0080】
<第2掻き取りブレード108の条件>
材質:SUS
厚み:100μm
ブレード当接角度:20°
第2回収ローラ107へのブレード食い込み量:0.6mm
第2掻き取りブレードへの印加電圧(第2掻き取りバイアス):−1200V
【0081】
図17は、実施形態に係るプリンタの第3変形例における要部を示す概略構成図である。第3変形例では、転写ユニット50の構成が実施形態と異なっている。具体的には、ベルト装置としての転写ユニット50は、中間転写ベルトではなく、転写搬送ベルト51を無端移動させている。この転写搬送ベルト51のループ内側には、Y,M,C,K用の転写ローラ59Y,M,C,Kが配設されており、ループ外側の感光体1Y,M,C,Kとの間に中間転写ベルト8を挟み込んでY,M,C,K用の転写ニップを形成している。
【0082】
転写ユニット50の図中左側方に配設されたレジストローラ対は、所定のタイミングで記録紙Pを転写搬送ベルト51の上部張架面に向けて送り出す。送り出された記録紙Pは、ベルト表面に吸着されながら、ベルトの移動に伴って上述したY,M,C,K用の転写ニップを順次通過する。この際、感光体1Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像が記録紙Pの表面に順次重ね合わせて転写される。
【0083】
最下流のK用の1次転写ニップを通過した後の記録紙Pは、転写搬送ベルト51の表面から分離して図示しない定着装置に送られる。記録紙Pを分離した後のベルト表面に付着しているトナーは、ベルトクリーニング装置100によって除去される。このベルトクリーニング装置100は、中間転写ベルトではなく、転写搬送ベルト51をクリーニングするものであるが、それ以外の点が実施形態のベルトクリーニング装置と同様の構成になっている。
【0084】
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した実施例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、実施例に係るプリンタの構成は実施形態と同様である。
【0085】
図18は、実施例に係るプリンタにおけるクリーニングニップとどの周囲とを示す拡大構成図である。実施例に係るプリンタの転写ユニットにおいては、クリーニング対向ローラ14に対してベルト移動方向の上流側で隣り合う位置で中間転写ベルト8を掛け回して張架するクリーニング上流張架ローラ19を設けている。このクリーニング上流張架ローラ19は、直径14mmの中空のアルミローラからなり、自らとクリーニング対向ローラ14との間のベルト展張領域をクリーニングブラシローラ102に向けて押圧している。この押圧により、クリーニングニップ内の領域であり、且つ幅W3で示される領域である上流側ベルト展張ニップ領域(ニップ入口点Fから掛け回し入口点Bまでの領域)の波打ちによるクリーニング対向ローラ14への接触を防止する。これにより、前記接触に起因して上流側ベルト展張ニップ領域に多くのクリーニング電流を流してしまうことによるクリーニング不良の発生を回避することができる。
【0086】
クリーニング上流張架ローラ19としては、少なくともローラ部の表面を絶縁体で構成したものを用いている。具体的には、そのローラ部には、厚み100μmの絶縁性ナイロンチューブ(抵抗=1E14Ω・cm)からなる絶縁性表面層を設けている。ローラ部の絶縁性表面層の下に存在するローラ基体としては、ABS、PP、POMなどの趣旨からなるものを用いている。このように、クリーニング上流張架ローラ19のローラ部に絶縁性表面層を設けることで、クリーニングブラシローラ102からベルトを介したクリーニング上流張架ローラ19への電流のリークを回避することができる。
【0087】
クリーニング上流張架ローラ19は、そのローラ部の全周のうち、図中の掛け回し開始点Iから掛け回し終了点Jに至るまでの掛け回し領域に対して、中間転写ベルト8を掛け回している。上流側ベルト展張ニップ領域(ニップ入口点Fから掛け回し入口点Bまでの領域)の波打ちをより確実に防止すべく、その掛け回し終了点Jを、クリーニングニップの入口点Fよりもベルト移動方向の下流側に位置させてもよい。このようにしても、クリーニングニップからクリーニング上流張架ローラ19への電流のリークを発生させることはない。
【0088】
次に、実施形態、各変形例、実施例に係るプリンタにそれぞれ好適に用いられるトナーについて説明する。それらプリンタで600dpi以上の微少ドットを再現するために、トナーの体積平均粒径は3〜6μmが好ましい。また、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)は1.00〜1.40の範囲にあることが好ましい。(Dv/Dn)が1.00に近いほど粒径分布がシャープであることを示す。このような小粒径で粒径分布の狭いトナーでは、トナーの帯電量分布が均一になり、地肌かぶりの少ない高品位な画像を得ることができ、静電転写方式では転写率を高くすることができる。
【0089】
トナーの形状係数SF−1は100〜180、形状係数SF−2は100〜180の範囲にあることが好ましい。図19は、トナー粒子の2次元平面に対する投影像の最大径MXLNGと平面積AREAとを説明する模式図である。形状係数SF−1は、トナー形状の丸さの割合を示すものであり、「SF−1={(MXLNG)2/AREA}×(100π)/4」という式で求められる。トナー粒子の2次元平面に対する投影像の最大径MXLNGの二乗を平面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。SF−1の値が100の場合トナーの形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。
【0090】
図20は、トナー粒子の2次元平面に対する投影像の周長PERIと平面積AREAとを説明する模式図である。形状係数SF−2は、トナー粒子の形状の凹凸の割合を示すものであり、「SF−2={(PERI)2/AREA}×100/(4π)」という式で求められる。トナー粒子を2次元平面に投影してできる図形の周長PERIの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。SF−2の値が100の場合トナー表面に凹凸が存在しなくなり、SF−2の値が大きくなるほどトナー表面の凹凸が顕著になる。
【0091】
形状係数の測定は、具体的には、トナーの中から100個のトナー粒子を無作為に選出してその写真を走査型電子顕微鏡(S−800:日立製作所製)で撮影し、その撮影像を画像解析装置(LUSEX3:ニレコ社製)に導入し、個々のトナー粒子の形状係数を解析した後、それらの平均値を最終的な形状係数とした。トナーの形状が球形に近くなると、トナーとトナーあるいはトナーと感光体との接触状態が点接触になるために、トナー同士の吸着力は弱くなり従って流動性が高くなり、また、トナーと感光体との吸着力も弱くなって、転写率は高くなる。形状係数SF−1、SF−2のいずれかが180を超えると、転写率が低下するため好ましくない。
【0092】
また、トナーは少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマーと、ポリエステルと、着色剤と、離型剤とを有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系溶媒中で架橋及び/又は伸長反応させて得られるトナーである。以下に、トナーの構成材料及び製造方法について説明する。
【0093】
(ポリエステル)
ポリエステルは、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物との重縮合反応によって得られる。多価アルコール化合物(PO)としては、2価アルコール(DIO)および3価以上の多価アルコール(TO)が挙げられ、(DIO)単独、または(DIO)と少量の(TO)との混合物が好ましい。2価アルコール(DIO)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上の多価アルコール(TO)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0094】
多価カルボン酸(PC)としては、2価カルボン酸(DIC)および3価以上の多価カルボン酸(TC)が挙げられ、(DIC)単独、および(DIC)と少量の(TC)との混合物が好ましい。2価カルボン酸(DIC)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上の多価カルボン酸(TC)としては、炭素数9〜20の芳香族多価カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、多価カルボン酸(PC)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いて多価アルコール(PO)と反応させてもよい。
【0095】
多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の重縮合反応は、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。ポリエステルの水酸基価は5以上であることが好ましく、ポリエステルの酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすく、さらには記録紙への定着時、記録紙とトナーの親和性がよく低温定着性が向上する。しかし、酸価が30を超えると帯電の安定性、特に環境変動に対し悪化傾向がある。また、重量平均分子量1万〜40万、好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量が1万未満では、耐オフセット性が悪化するため好ましくない。また、40万を超えると低温定着性が悪化するため好ましくない。
【0096】
ポリエステルには、上記の重縮合反応で得られる未変性ポリエステルの他に、ウレア変性のポリエステルが好ましく含有される。ウレア変性のポリエステルは、上記の重縮合反応で得られるポリエステルの末端のカルボキシル基や水酸基等と多価イソシアネート化合物(PIC)とを反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得、これとアミン類との反応により分子鎖が架橋及び/又は伸長されて得られるものである。多価イソシアネート化合物(PIC)としては、脂肪族多価イソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−イソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアネート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。多価イソシアネート化合物(PIC)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、ウレア変性ポリエステルを用いる場合、そのエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の多価イソシアネート化合物(PIC)構成成分の含有量は、通常0.5〜40wt%、好ましくは1〜30wt%、さらに好ましくは2〜20wt%である。0.5wt%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40wt%を超えると低温定着性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有されるイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0097】
次に、ポリエステルプレポリマー(A)と反応させるアミン類(B)としては、2価アミン化合物(B1)、3価以上の多価アミン化合物(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。2価アミン化合物(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上の多価アミン化合物(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリジン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0098】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2や、1/2未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。また、ウレア変性ポリエステル中には、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0099】
ウレア変性ポリエステルは、ワンショット法、などにより製造される。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これに多価イソシアネート(PIC)を反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得る。さらにこの(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア変性ポリエステルを得る。
【0100】
(PIC)を反応させる際、及び(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(PIC)に対して不活性なものが挙げられる。また、ポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との架橋及び/又は伸長反応には、必要により反応停止剤を用い、得られるウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0101】
ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステル等の数平均分子量は、先の未変性ポリエステルを用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。ウレア変性ポリエステルを単独で使用する場合は、その数平均分子量は、通常2000〜15000、好ましくは2000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0102】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを併用することで、低温定着性およびフルカラー画像形成装置100に用いた場合の光沢性が向上するので、ウレア変性ポリエステルを単独で使用するよりも好ましい。尚、未変性ポリエステルはウレア結合以外の化学結合で変性されたポリエステルを含んでも良い。未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは、少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは類似の組成であることが好ましい。
【0103】
また、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとの重量比は、通常20/80〜95/5、好ましくは70/30〜95/5、さらに好ましくは75/25〜95/5、特に好ましくは80/20〜93/7である。ウレア変性ポリエステルの重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0104】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを含むバインダー樹脂のガラス転移点(Tg)は、通常45〜65℃、好ましくは45〜60℃である。45℃未満ではトナーの耐熱性が悪化し、65℃を超えると低温定着性が不十分となる。また、ウレア変性ポリエステルは、得られるトナー母体粒子の表面に存在しやすいため、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
【0105】
(着色剤)
着色剤としては、公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
【0106】
着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造、またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体、あるいはこれらとビニル化合物との共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
【0107】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては公知のものが使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSYVP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージNEG VP2036、コピーチャージNX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。このうち、特にトナーを負極性に制御する物質が好ましく使用される。
【0108】
荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を超える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、荷電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。
【0109】
(離型剤)
離型剤としては、融点が50〜120℃の低融点のワックスが、バインダー樹脂との分散の中でより離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これにより定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布することなく高温オフセットに対し効果を示す。このようなワックス成分としては、以下のものが挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス、及びおよびパラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス等が挙げられる。また、これら天然ワックスの外に、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス等が挙げられる。さらに、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド及び、低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子等も用いることができる。
【0110】
荷電制御剤、離型剤はマスターバッチ、バインダー樹脂とともに溶融混練することもできるし、もちろん有機溶剤に溶解、分散する際に加えても良い。
【0111】
(外添剤)
トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤として、無機微粒子が好ましく用いられる。この無機微粒子の一次粒子径は、5×10−3〜2μmであることが好ましく、特に5×10−3〜0.5μmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5wt%であることが好ましく、特に0.01〜2.0wt%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。中でも、流動性付与剤としては、疎水性シリカ微粒子と疎水性酸化チタン微粒子を併用するのが好ましい。特に両微粒子の平均粒径が5×10−4μm以下のものを使用して攪拌混合を行った場合、トナーとの静電力、ファンデルワールス力は格段に向上することより、所望の帯電レベルを得るために行われる現像装置内部の攪拌混合によっても、トナーから流動性付与剤が脱離することなく、ホタルなどが発生しない良好な画像品質が得られて、さらに転写残トナーの低減が図られる。酸化チタン微粒子は、環境安定性、画像濃度安定性に優れている反面、帯電立ち上がり特性の悪化傾向にあることより、酸化チタン微粒子添加量がシリカ微粒子添加量よりも多くなると、この副作用の影響が大きくなることが考えられる。しかし、疎水性シリカ微粒子及び疎水性酸化チタン微粒子の添加量が0.3〜1.5wt%の範囲では、帯電立ち上がり特性が大きく損なわれず、所望の帯電立ち上がり特性が得られ、すなわち、コピーの繰り返しを行っても、安定した画像品質が得られる。
【0112】
次に、トナーの製造方法について説明する。ここでは、好ましい製造方法について示すが、これに限られるものではない。
【0113】
(トナーの製造方法)
1)着色剤、未変性ポリエステル、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー、離型剤を有機溶媒中に分散させトナー材料液を作る。
有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、トナー母体粒子形成後の除去が容易である点から好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。有機溶媒の使用量は、ポリエステルプレポリマー100重量部に対し、通常0〜300重量部、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは25〜70重量部である。
【0114】
2)トナー材料液を界面活性剤、樹脂微粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる。
水系媒体は、水単独でも良いし、アルコール(メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などの有機溶媒を含むものであってもよい。
トナー材料液100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー材料液の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。
【0115】
また、水系媒体中の分散を良好にするために、界面活性剤、樹脂微粒子等の分散剤を適宜加える。界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0116】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0117】
また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級もしくは2級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0118】
樹脂微粒子は、水系媒体中で形成されるトナー母体粒子を安定化させるために加えられる。このために、トナー母体粒子の表面上に存在する被覆率が10〜90%の範囲になるように加えられることが好ましい。例えば、ポリメタクリル酸メチル微粒子1μm、及び3μm、ポリスチレン微粒子0.5μm、及び、2μm、ポリ(スチレン―アクリロニトリル)微粒子1μm、商品名では、PB−200H(花王社製)、SGP(総研社製)、テクノポリマーSB(積水化成品工業社製)、SGP−3G(総研社製)、ミクロパール(積水ファインケミカル社製)等がある。また、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等の無機化合物分散剤も用いることができる。
【0119】
上記樹脂微粒子や無機化合物分散剤などと併用可能な分散剤として、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸−β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−β−ヒドロキシエチル、アクリル酸−β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの含窒素化合物、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0120】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。この中でも、分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。
【0121】
3)乳化液の作製と同時に、アミン類(B)を添加し、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)との反応を行わせる。この反応は、分子鎖の架橋及び/又は伸長を伴う。反応時間は、ポリエステルプレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)との反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0122】
4)反応終了後、乳化分散体(反応物)から有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得る。有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に層流の攪拌状態で昇温し、一定の温度域で強い攪拌を与えた後、脱溶媒を行うことで紡錘形のトナー母体粒子が作製できる。また、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、トナー母体粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
【0123】
5)上記で得られたトナー母体粒子に、荷電制御剤を打ち込み、ついで、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子等の無機微粒子を外添させ、トナーを得る。荷電制御剤の打ち込み、及び無機微粒子の外添は、ミキサー等を用いた公知の方法によって行われる。これにより、小粒径であって、粒径分布のシャープなトナーを容易に得ることができる。さらに、有機溶媒を除去する工程で強い攪拌を与えることで、真球状からラクビーボール状の間の形状を制御することができ、さらに、表面のモフォロジーも滑らかなものから梅干形状の間で制御することができる。
【0124】
またトナーの形状は略球形状であり、以下の形状規定によって表すことができる。即ち、図21(a)、(b)、(c)に示すように、略球形状のトナーを長軸r1、短軸r2、厚さr3(但し、r1≧r2≧r3とする。)で規定する。そして、トナーは、長軸と短軸との比(r2/r1)(図21(b)参照)が0.5〜1.0で、厚さと短軸との比(r3/r2)(図21(c)参照)が0.7〜1.0の範囲にあることが好ましい。長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5未満では、真球形状から離れるためにドット再現性及び転写効率が劣り、高品位な画質が得られなくなる。また、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7未満では、扁平形状に近くなり、球形トナーのような高転写率は得られなくなる。特に、厚さと短軸との比(r3/r2)が1.0では、長軸を回転軸とする回転体となり、トナーの流動性を向上させることができる。なお、r1、r2、r3は、走査型電子顕微鏡(SEM)で、視野の角度を変えて写真を撮り、観察しながら測定した。
【0125】
なお、トナーQ/M(トナーの単位重量あたりの電荷量)、トナー帯電量分布の測定方法は以下のとおりである。また、極性制御率は以下で定義した。
【0126】
<トナーQ/M>
トナーパッチパターンを感光体上に作像し、現像、転写、極性制御後などの各プロセス終了後に複写機本体のメインスイッチを強制的にOFFにし、作像途中で機械を止める。感光体や転写ベルト上に形成されたトナー像を吸引治具を用いてエアーポンプで吸引しながら、そのトナーのクーロン量をクーロンメータ(ケスレー製エレクトロメータ617)により測定し、吸引治具により吸引したトナーの重量とクーロン量から単位重量あたりのトナー電荷量(μC/g)を算出する。
【0127】
<トナー帯電量分布>
ホソカワミクロン製 E−SPARTアナライザで測定する。感光体上に付着したトナーをエアーで吹き飛ばして測定部に落下させ、トナー1個ずつの粒径と電荷量を測定し、X軸に「電荷量/トナー粒径」、Y軸に「頻度(%)=予め設定した「電荷量/トナー粒径」のヒストグラムの帯の範囲にある数(個)/サンプル全数(個)×100」を算出しグラフ化した。
【0128】
<極性制御率>
上述のトナー帯電量分布の測定データをもとに算出する。極性制御率[%]=制御したい極性のトナーの数(個)/サンプル全数(個)×100。なお、制御したい極性とは、感光体表面電位を比較対象としたときの、極性制御部材に印加している電圧の相対的な極性である。例えば、感光体表面電位が−100Vで、極性制御部材印加電圧がー700Vの場合は、「トナーを−極性に制御したい」とする。本方式のようなトナー極性制御+単一極性印加ブラシによる静電クリーニング方式では、クリーニングブラシローラに入力するトナーの極性が揃っていることが重要になる。言い換えると、極性制御率が高いことが重要となる。
【0129】
以上、実施形態に係るプリンタにおいては、クリーニングニップにおけるベルト移動方向の中心であるニップ中心線L1を、中間転写ベルト8におけるクリーニング対向ローラ14に対する掛け回し領域(弧BC)よりもベルト移動方向上流側に位置させている。かかる構成では、既に説明したように、ベルト上の殆どの転写残トナーをクリーニング電流によって逆帯電させる前にクリーニングブラシローラ102のブラシ内に転移させることができる。
【0130】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、クリーニングニップにおけるベルト移動方向の下流側端部にて、クリーニングブラシローラ102を掛け回し領域(弧BC)に当接させている。かかる構成においては、既に説明したように、クリーニングブラシローラ102をニップ出口点Gでベルト展張領域に突き当てることによるベルトの波打ちの発生を回避することができる。
【0131】
また、実施例に係るプリンタにおいては、クリーニング上流張架ローラ19により、クリーニング上流張架ローラ19とクリーニング対向ローラ14との間のベルト展張領域をクリーニングブラシローラ102に向けて押圧している。かかる構成では、既に説明したように、上流側ベルト展張ニップ領域(ニップ入口点Fから掛け回し入口点Bまでの領域)の波打ちによるクリーニング対向ローラ14への接触を防止して、それに起因する上流側ベルト展張ニップ領域でのクリーニング電流の増大化を回避することができる。
【0132】
また、実施例に係るプリンタにおいては、クリーニング上流張架ローラ19として、少なくともローラ部の表面を絶縁体で構成したものを用いているので、既に説明したように、クリーニングブラシローラ102からベルトを介したクリーニング上流張架ローラ19への電流のリークを回避することができる。
【符号の説明】
【0133】
1:感光体(像担持体)
7:転写ユニット(ベルト装置)
8:中間転写ベルト(ベルト部材)
19:クリーニング上流張架ローラ
14:クリーニング対向ローラ
51:転写搬送ベルト(ベルト部材)
102:クリーニングブラシローラ(クリーニング回転体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0134】
【特許文献1】特開2009−20249号公報
【特許文献2】特開2007−72411号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自らのループ内側に配設された複数の張架ローラによって張架された状態で無端移動せしめられる無端状のベルト部材と、前記複数の張架ローラの1つであるクリーニング対向ローラに対する前記ベルト部材の掛け回し領域に対してベルトおもて面側から当接して、自らとベルトおもて面とが当接するクリーニングニップを形成した状態で、自らの表面を前記クリーニングニップ内でベルト移動方向とは逆方向に移動させるように回転しながら、ベルトおもて面に付着しているトナーを自らに転移させてクリーニングするクリーニング回転体と、前記クリーニング回転体に対してクリーニング電圧を印加する電圧印加手段とを備えるベルト装置において、
ベルト移動方向における前記クリーニングニップの中心を、ベルト移動方向における前記掛け回し領域の中心よりもベルト移動方向の上流側に位置させ、且つ、少なくとも、前記ベルト部材における前記掛け回し領域からそれよりもベルト移動方向上流側のベルト展張領域に至るまでの範囲に前記クリーニング回転体を当接させて前記クリーニングニップを形成したことを特徴とするベルト装置。
【請求項2】
請求項1のベルト装置において、
ベルト移動方向における前記クリーニングニップの中心を、前記掛け回し領域よりも上流側の前記ベルト展張領域に位置させたことを特徴とするベルト装置。
【請求項3】
請求項2のベルト装置において、
ベルト移動方向における前記クリーニングニップの下流側端部を、前記掛け回し領域に位置させたことを特徴とするベルト装置。
【請求項4】
請求項2又は3のベルト装置において、
前記複数の張架ローラのうち、前記クリーニング対向ローラに対してベルト移動方向上流側で隣り合っている張架ローラであるクリーニング上流張架ローラにより、該クリーニング上流張架ローラと前記クリーニング対向ローラとの間のベルト展張領域を前記クリーニング回転体に向けて押圧するようにしたことを特徴とするベルト装置。
【請求項5】
請求項4のベルト装置において、
前記クリーニング上流張架ローラとして、少なくともローラ部の表面を絶縁体で構成したものを用いたことを特徴とするベルト装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかのベルト装置において、
前記クリーニング回転体として、回転可能な回転軸部材、及びその周面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部を具備するクリーニングブラシローラを用いたことを特徴とするベルト装置。
【請求項7】
無端状のベルト部材のおもて面に担持されているトナー像、あるいは、前記ベルト部材のおもて面に保持された記録部材に担持されているトナー像を、前記ベルト部材の無端移動に伴って搬送するベルト装置と、前記ベルト部材のおもて面、あるいは記録部材にトナー像を形成するトナー像形成手段とを備える画像形成装置において、
前記ベルト装置として、請求項1乃至6の何れかのベルト装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7の画像形成装置において、
上記トナーとして、体積平均粒径が3[μm]以上、6[μm]以下であり、且つ、体積平均粒径を個数平均粒径で除算した値が1.00以上、1.40以下であるもの、を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項7又は8の画像形成装置において、
上記トナーとして、形状係数SF−1が100以上、180以下であり、且つ、形状係数SF−2が100以上、180以下であるもの、を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項7乃至9の何れかの画像形成装置において、
上記ベルト部材として、少なくとも基材が弾性材料からなるものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
自らのループ内側に配設された複数の張架ローラによって張架された状態で無端移動せしめられる無端状のベルト部材と、前記複数の張架ローラの1つであるクリーニング対向ローラに対する前記ベルト部材の掛け回し領域に対してベルトおもて面側から当接して、自らとベルトおもて面とが当接するクリーニングニップを形成した状態で、自らの表面を前記クリーニングニップ内でベルト移動方向とは逆方向に移動させるように回転しながら、ベルトおもて面に付着しているトナーを自らに転移させてクリーニングするクリーニング回転体と、前記クリーニング回転体に対してクリーニング電圧を印加する電圧印加手段とを備えるベルト装置において、
ベルト移動方向における前記クリーニングニップの中心を、ベルト移動方向における前記掛け回し領域の中心よりもベルト移動方向の上流側に位置させ、且つ、少なくとも、前記ベルト部材における前記掛け回し領域からそれよりもベルト移動方向上流側のベルト展張領域に至るまでの範囲に前記クリーニング回転体を当接させて前記クリーニングニップを形成したことを特徴とするベルト装置。
【請求項2】
請求項1のベルト装置において、
ベルト移動方向における前記クリーニングニップの中心を、前記掛け回し領域よりも上流側の前記ベルト展張領域に位置させたことを特徴とするベルト装置。
【請求項3】
請求項2のベルト装置において、
ベルト移動方向における前記クリーニングニップの下流側端部を、前記掛け回し領域に位置させたことを特徴とするベルト装置。
【請求項4】
請求項2又は3のベルト装置において、
前記複数の張架ローラのうち、前記クリーニング対向ローラに対してベルト移動方向上流側で隣り合っている張架ローラであるクリーニング上流張架ローラにより、該クリーニング上流張架ローラと前記クリーニング対向ローラとの間のベルト展張領域を前記クリーニング回転体に向けて押圧するようにしたことを特徴とするベルト装置。
【請求項5】
請求項4のベルト装置において、
前記クリーニング上流張架ローラとして、少なくともローラ部の表面を絶縁体で構成したものを用いたことを特徴とするベルト装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかのベルト装置において、
前記クリーニング回転体として、回転可能な回転軸部材、及びその周面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部を具備するクリーニングブラシローラを用いたことを特徴とするベルト装置。
【請求項7】
無端状のベルト部材のおもて面に担持されているトナー像、あるいは、前記ベルト部材のおもて面に保持された記録部材に担持されているトナー像を、前記ベルト部材の無端移動に伴って搬送するベルト装置と、前記ベルト部材のおもて面、あるいは記録部材にトナー像を形成するトナー像形成手段とを備える画像形成装置において、
前記ベルト装置として、請求項1乃至6の何れかのベルト装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7の画像形成装置において、
上記トナーとして、体積平均粒径が3[μm]以上、6[μm]以下であり、且つ、体積平均粒径を個数平均粒径で除算した値が1.00以上、1.40以下であるもの、を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項7又は8の画像形成装置において、
上記トナーとして、形状係数SF−1が100以上、180以下であり、且つ、形状係数SF−2が100以上、180以下であるもの、を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項7乃至9の何れかの画像形成装置において、
上記ベルト部材として、少なくとも基材が弾性材料からなるものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−118355(P2011−118355A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189096(P2010−189096)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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