説明

ベルト駆動装置及び画像形成装置

【課題】装置の大型化を従来よりも抑える。
【解決手段】無端状の中間転写ベルト61と、中間転写ベルト61のループ内側に配設された状態で中間転写ベルト61を自らの周面の一部に掛け回して張架する複数の張架ローラとを有し、複数の張架ローラにおける少なくとも何れか1つを回転駆動させて中間転写ベルト61を無端移動せしめる画像形成装置において、中間転写ベルト61のループ内周面である裏面に当接しながら中間転写ベルト61の幅方向に沿って延在する回転軸線を中心にして従動回転する従動ローラ92と、従動ローラ92をローラ支持体93とともにベルト幅方向に往復移動可能に保持する揺動支持板91と、従動ローラ92のベルト幅方向への移動量を検知する変位センサ95とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトループ内側に配設された複数の張架ローラによって張架している無端状のベルト部材を張架ローラの回転駆動によって無端移動せしめるベルト駆動装置、及びこれを用いる複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。図1は、特許文献1に記載の画像形成装置のベルト駆動装置を説明するための概略図である。同図において、ベルト部材としての中間転写ベルト901は、そのループ内側に配設された複数の張架ローラに張架されながら、張架ローラの1つである駆動ローラ902の回転駆動によって図中反時計回り方向に回転駆動される。中間転写ベルト901の上方には、Y(イエロー)トナー像、M(マゼンタ)トナー像、C(シアン)トナー像、K(ブラック)トナー像をそれぞれ個別に形成するための感光体920Y、920M、920C、920Kが配設されている。これら感光体920Y、920M、920C、920Kは、中間転写ベルト901のおもて面に当接してY、M、C、K用の1次転写ニップを形成している。周知の電子写真プロセスによって感光体920Y,M,C,Kの表面に形成されたY,M,C,Kトナー像は、Y,M,C,K用の1次転写ニップで互いに重ね合わせて中間転写ベルト901に1次転写される。
【0003】
かかる構成において、中間転写ベルト901に対して何らかの接離部材が接離したり、中間転写ベルト901に経時的な伸びが発生したりして、中間転写ベルト901にかかる負荷が変化すると、ベルト寄りやベルト傾きを発生させることがある。ベルト寄りは、図2に示すように、ベルト部材の幅方向の中心線(以下、ベルト中心線という)Lbを、ベルト進行方向Aに沿わせた状態で張架ローラの軸線方向の中心線(以下、ローラ中心線という)Lrからベルト幅方向にずらしてしまう現象である。ベルト部材が図中の一点鎖線Pで示される位置から、一点鎖線Pで示される位置まで移動する間に、図示のようなベルト寄りが発生した場合、ベルト部材はその間に図中矢印Bで示すように斜行することになる。また、ベルト傾きは、図3に示すように、ベルト中心線Lbをベルト進行方向Aから傾けてしまう現象である。図示のようなベルト傾きが発生した場合、ベルト部材は一点鎖線Pで示される位置から一点鎖線Pで示される位置まで移動する間に、図中矢印Cで示すように斜行することになる。ベルト寄りとベルト傾きとの両方が発生した場合には、それぞれに起因する斜行が重畳される。斜行が発生すると、一点鎖線P1で示される位置におけるベルト部材の幅方向の中心と、一点鎖線P2で示される位置におけるベルト部材の幅方向の中心とが、ベルト幅方向にずれることになる(以下、ベルト中心の幅方向のずれという)。そして、このようなずれが生ずると、各色のトナー像の重ね合わせズレを引き起こしてしまう。ベルト中心の幅方向のずれ量が大きくなるほど、トナー像の重ね合わせずれ量が大きくなる。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の画像形成装置においては、図4に示すように、中間転写ベルト901のローラ軸線方向における端部位置を検知する第1位置検知センサ907及び第2位置検知センサ908を設けている。第1位置検知センサ907に対しては、駆動ローラ902に対する掛け回し位置を通過した直後のベルト箇所の端部位置を検知させている。また、第2位置検知センサ908に対しては、ステアリングローラ904に対する掛け回し位置に進入する直前のベルト箇所の端部位置を検知させている。そして、次のような制御を行うことで、中間転写ベルト901の斜行に起因するトナー像の重ね合わせズレを抑えている。即ち、ベルト周方向における任意のベルト箇所について、第1位置検知センサ907の横を通過したときの端部位置の検知結果と、第2位置検知センサ908の横を通過したときの端部位置の検知結果との差分を、ベルト中心の幅方向のずれ量として算出する。そして、この算出結果に基づいて、複数の張架ローラの1つであるステアリングローラ904を他の張架ローラから傾けるように傾動させることで、ベルト中心の幅方向のずれ量を低減してトナー像の重ね合わせズレを抑えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この画像形成装置においては、図4に示すように、中間転写ベルト901の端部の横に、位置検知センサ(907、908)を配設するためのスペースSを確保する必要があることから、装置を大型化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、装置の大型化を従来よりも抑えることができるベルト駆動装置や画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、無端状のベルト部材と、前記ベルト部材のループ内側に配設された状態で前記ベルト部材を自らの周面の一部に掛け回して前記ベルト部材を張架する複数の張架ローラとを有し、前記複数の張架ローラにおける少なくとも何れか1つを回転駆動させて前記ベルト部材を無端移動せしめるベルト駆動装置において、前記ベルト部材のループ内周面である裏面に当接しながら前記ベルト部材の幅方向に沿って延在する回転軸線を中心にして従動回転する従動ローラと、前記従動ローラを前記幅方向に往復移動可能に保持する保持手段と、前記従動ローラの前記幅方向への移動量を検知する移動量検知手段とを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のベルト駆動装置において、前記従動ローラを前記幅方向の一端側から他端側に向けて直接又は間接的に付勢する第1付勢手段と、前記従動ローラを前記他端側から前記一端側に向けて付勢する第2付勢手段とを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2のベルト駆動装置において、前記従動ローラを前記ベルト部材の裏面に接離させる接離手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、複数の張架ローラによって張架している無端状のベルト部材を無端移動せしめるベルト駆動装置と、前記ベルト部材の表面、あるいは前記ベルト部材の表面に保持される記録シート、に可視像を形成する可視像形成手段とを備える画像形成装置において、前記ベルト駆動装置として、請求項1乃至3の何れかのベルト駆動装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の画像形成装置において、前記可視像形成手段として、潜像を担持する潜像担持体と、前記潜像担持体に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像を現像する現像手段と、現像によって得られた可視像を前記潜像担持体の表面から、前記ベルト部材の表面、あるいは前記ベルト部材の表面に保持される記録シート、に転写する転写手段とを有するものを用いるとともに、前記移動量検知手段による移動量の検知結果に基づいて、前記潜像担持体に対する潜像形成位置を補正する補正手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
これらの発明において、ベルト部材が従動ローラの付近で斜行せずに移動しているときには、従動ローラの付近でベルト中心の幅方向のずれが発生しない。このため、保持手段によって幅方向に往復移動可能に保持される従動ローラは、幅方向には移動せず、一定の位置でベルト部材に当接しながら従動回転する。これに対し、従動ローラの付近でベルト部材が斜行すると、従動ローラの付近でベルト中心の幅方向のずれが発生する。すると、従動ローラがそのずれに追従して幅方向に移動する。この移動量が、ベルト中心の幅方向のずれ量として移動量検知手段に検知される。従動ローラは、ベルト中心の幅方向のずれ量を検知するために設けられるものであるため、ベルト部材を張架するために設けられる張架ローラとは異なり、ベルト部材に対して幅方向の全域に渡って接触する長さである必要はなく、ベルト中央部だけに接触する短いものでよい。このような長さの短い従動ローラのベルト幅方向の移動量については、ベルト部材のループ内側に配設した小型の移動量検知手段によって検知させることが可能である。よって、ベルト部材のループ外側に特別な部材を配設することなく、ベルト中心の幅方向のずれ量を検知するので、ベルト部材のループ外側に位置検知センサを配設していた従来の装置に比べて、装置の大型化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】特許文献1に記載の画像形成装置のベルト駆動装置を説明するための概略図。
【図2】ベルト寄りを説明するための平面図。
【図3】ベルト傾きを説明するための平面図。
【図4】同画像形成装置のベルト駆動装置を示す平面図。
【図5】実施形態に係るプリンタを示す要部構成図。
【図6】同プリンタの中間転写ベルトを上方から示す平面図。
【図7】同プリンタのベルト端部位置検知器を示す拡大構成図。
【図8】同プリンタのベルト中心ずれ検知器をその周囲構成とともに示す平面図。
【図9】同ベルト中心ずれ検知器をその周囲構成とともに示す側面図。
【図10】ある時刻tにおける同中間転写ベルトと同ベルト中心ずれ検知器の従動ローラとの位置関係を示す模式図。
【図11】同従動ローラをベルト幅方向にスライド移動させないように固定したと仮定した場合における時刻tの中間転写ベルトと従動ローラとの位置関係を示す模式図。
【図12】同プリンタの時刻tにおける中間転写ベルトと従動ローラとの位置関係を示す模式図。
【図13】ベルト寄り及びベルト傾きのうち、ベルト寄りだけが発生した場合におけるベルトの挙動を説明するための模式図。
【図14】ベルト寄り及びベルト傾きの両方が発生した場合におけるベルトの挙動を説明するための模式図。
【図15】ベルト寄り及びベルト傾きの両方が発生した場合におけるベルトの挙動の第2例を説明するための模式図。
【図16】ベルト寄りだけを発生させている同中間転写ベルトを示す平面図。
【図17】ベルト傾きだけを発生させている同中間転写ベルトを示す平面図。
【図18】同プリンタでは起こり得ないベルトの挙動を説明するための平面図。
【図19】同プリンタの寄り修正ローラと、これを揺動可能に保持する保持手段としての揺動ブラケットとを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタの実施形態について説明する。
まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図5は、本プリンタを示す要部構成図である。この図は、本プリンタをその正面側から示している。図5において、本プリンタは、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット2Y,M,C,Kを備えている。また、機内で記録シートPを搬送するための複数のガイド板等からなるシート搬送路21、レジストローラ対37、定着ユニット150、光書込ユニット(不図示)、転写ユニット60、なども備えている
【0011】
図示しない潜像形成手段としての光書込ユニットは、レーザーダイオード、ポリゴンミラー、各種レンズなどを有しており、外部のパーソナルコンピュータ等から送られている画像情報に基づいて、レーザーダイオードを駆動する。そして、画像形成ユニット2Y,M,C,Kの感光体3Y,M,C,Kを光走査する。具体的には、画像形成ユニット2Y,M,C,Kの感光体3Y,M,C,Kは、図示しない駆動手段によってそれぞれ図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる。光書込ユニットは、駆動中の感光体3Y,M,C,Kに対して、レーザー光Lをそれぞれ回転軸線方向に偏向せしめながら照射することで、光走査処理を行う。これにより、潜像担持体たる感光体3Y,M,C,Kには、Y,M,C,K画像情報に基づいた静電潜像が形成される。
【0012】
本プリンタは、4つの画像形成ユニット2Y,M,C,Kを、後述する中間転写ベルト61に対してその無端移動方向に沿って並べたいわゆるタンデム型の構成になっている。各色の画像形成ユニット2Y,M,C,Kは、それぞれ、潜像担持体たる感光体3Y,M,C,Kと、その周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ部本体に対してそれらを一体的に着脱可能にしている。そして、互いに使用するトナーの色が異なる点の他が同様の構成になっている。Y用の画像形成ユニット2Yを例にすると、これは、感光体3Yの他、これの表面に形成された静電潜像をYトナー像に現像するための現像装置4Y、ドラム状の感光体3Yを一様帯電せしめるための帯電装置16Y、ドラムクリーニング装置18Y等を有している。
【0013】
帯電装置16Yは、回転駆動される感光体3Yの周面をトナーの帯電極性と同極性に一様帯電せしめる。このようにして一様帯電せしめられた感光体3Yの周面には、上述した光書込装置による光走査で静電潜像が形成される。感光体3Yとしては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
【0014】
現像装置4Yは、図示しない磁性キャリアと非磁性のYトナーとを含有する二成分現像剤(以下、単に現像剤という)を用いて、感光体3Y上の静電潜像を現像する。二成分現像剤の代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤によって現像を行うタイプのものを使用してもよい。
【0015】
現像によって感光体3Y上に形成されたYトナー像は、後述するY用の1次転写ニップで中間転写ベルト61のおもて面に転写される。このようにしてYトナー像を転写した後の感光体3Y上に付着している転写残トナーは、ドラムクリーニング装置18Yによって感光体3Y表面から除去される。このクリーニングに先立って、感光体3Yの表面は図示しない除電ランプによる光照射を受けて除電される。
【0016】
Y用の画像形成ユニット2Yについて説明したが、M,C,K用の画像形成ユニットにおいても、同様にして感光体3M,C,Kの表面にM,C,Kトナー像が形成される。
【0017】
4つの画像形成ユニット2Y,M,C,Kの下方には、転写ユニット60が配設されている。この転写ユニット60は、複数の張架ローラによって張架している像担持体たる中間転写ベルト61を、感光体3Y,M,C,Kに当接させながら、駆動ローラ67の回転駆動によって図中反時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体3Y,M,C,Kと中間転写ベルト61とが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。
【0018】
Y,M,C,K用の1次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された1次転写ローラ62Y,M,C,Kによって中間転写ベルト61を感光体3Y,M,C,Kに向けて押圧している。これら1次転写ローラ62Y,M,C,Kには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、Y,M,C,K用の1次転写ニップには、感光体3Y,M,C,K上のトナー像を中間転写ベルト61に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。
【0019】
図中時計回り方向の無端移動に伴ってY,M,C,K用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト61のおもて面には、各1次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト61のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0020】
中間転写ベルト61の図中下方には、2次転写ローラ74が配設されており、中間転写ベルト61における転写対向ローラ69に対する掛け回し箇所にベルトおもて面から当接して2次転写ニップを形成している。これにより、中間転写ベルト61のおもて面と、2次転写ローラ74とが当接する2次転写ニップが形成されている。
【0021】
ベルトループ内の転写対向ローラ69には、図示しない電源によってトナーと同極性の2次転写バイアスが印加されている。一方、ベルトループ外の2次転写ローラ74は接地されている。これにより、2次転写ニップ内に2次転写電界が形成されている。
【0022】
2次転写ニップの図中左側方には、レジストローラ対37が配設されており、ローラ間に挟み込んだ記録シートPを中間転写ベルト61上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで2次転写ニップに送り出す。2次転写ニップ内では、中間転写ベルト61上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の影響によって記録シートに一括2次転写され、記録シートの白色と相まってフルカラー画像となる。
【0023】
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト61のおもて面には、2次転写ニップで記録シートPに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト61に当接するベルトクリーニング装置73によってクリーニングされる。
【0024】
2次転写ニップを通過した記録シートPは、中間転写ベルト61から離間して、定着ユニット150に向けて送られる。定着ユニット150は、加圧ローラ4152と、発熱源を内包する定着ローラ151とを当接させて定着ニップを形成している。定着ユニット150に受け入れられた記録シートPは、この定着ニップ内で加圧されたり加熱されたりすることで、表面上のフルカラー画像が定着せしめられる。
【0025】
中間転写ベルト61に当接して2次転写ニップを形成している2次転写ローラ74は、金属製の芯金とこれの周面に被覆されたゴム等の弾性部材とを具備している。2次転写ニップでは、中間転写ベルト61における転写対向ローラ69に対する掛け回し箇所が、2次転写ローラ74の表面の弾性部材に食い込んでいる。これにより、幅広い2次転写ニップが形成されている。
【0026】
2次転写ローラ74の回転軸は、保持体としての揺動アーム76に固定された軸受けによって回転自在に受けられている。そして、この揺動アーム76は、揺動軸84を中心にして揺動するように支持されており、自らの揺動に伴って2次転写ローラ74の回転軸と、転写対向ローラ69の回転軸との距離(軸間距離)を変化させる。その距離を記録シートPの厚みに応じて変化させることで、シート厚みにかかわらず、2次転写ニップ圧を一定にすることができる。
【0027】
転写ユニット60は、ベルト部材たる中間転写ベルト61と、これのループ内側で自らの表面の一部に中間転写ベルト61を掛け回しながら中間転写ベルト61を張架する複数の張架ローラとを具備するベルトユニットを具備している。このベルトユニットにおける複数の張架ローラは、具体的には、Y,M,C,K用の1次転写ローラ62Y,M,C,K、寄り修正ローラ64、1次転写ニップ上流ローラ65、駆動上流ローラ66、駆動ローラ67、2次転写ニップ上流ローラ68、転写対向ローラ69、及びクリーニングバックアップローラ70である。これら張架ローラのうち、寄り修正ローラ64、駆動ローラ67、転写対向ローラ69に対するベルト巻き付き角がそれぞれ特に大きくなっている。即ち、本プリンタにおいて、寄り修正ローラ64、駆動ローラ67、転写対向ローラ69はそれぞれ大巻き付け角ローラとして機能している。中間転写ベルト61は、主にそれら3本のローラによって張架され、それら3本のローラ以外の張架ローラは、補助的に中間転写ベルト61をバックアップしている。なお、巻き付け角は、ローラ中心とローラ周面におけるベルト接触開始点とを結ぶ線分と、ローラ中心とローラ周面におけるベルト接触終了点とを結ぶ線分とのなす角である。
【0028】
ベルトループ外側には、バネによって中間転写ベルト61のループ内側に向けて付勢されながら中間転写ベルト61のおもて面に圧接して中間転写ベルト61に所定のテンションを付与するテンションローラ71が配設されている。
【0029】
図6は、中間転写ベルト61を上方から示す平面図である。同図において、中間転写ベルト61のループ内側であって、且つ1次転写ニップ上流ローラ65とY用の1次転写ローラ62Yとの間の位置には、中間転写ベルト61のベルト端部位置を検知するベルト端部検知器200が配設されている。このベルト端部検知器200は、特許文献1に記載の画像形成装置に搭載された位置検知センサとは異なり、ベルトの側方からベルト端部に向けて発した光の挙動を利用してベルト端部位置を検知するのではなく、ベルト端部に当接させた可動体の移動量に基づいてベルト端部位置を検知するものである。その全体の殆どの領域を図示のようにベルトループ内に存在させることが可能であるので、ベルト側方に大きな設置スペースを設ける必要はない。
【0030】
図7は、ベルト端部位置検知器200を示す拡大構成図である。L字状の断面形状になっている可動体201は、L字の折れ曲がり部分に設けられた回動軸201aを中心にして回動自在に支持されている。可動体201の一端部は、バネ203によって引っ張られることで、中間転写ベルト61の幅方向の一端に突き当てられている。中間転写ベルト61が図中左側から右側に向けて移動すると、可動体201がバネ203の力に逆らって回動軸201aを中心にしてベルト移動量に応じた角度で図中時計回り方向に回転する。また、中間転写ベルト61が図中右側から左側に向けて移動すると、可動体201がバネ203の力に従って回動軸201aを中心にしてベルト移動量に応じた角度で図中反時計回り方向に回転する。それらの回転により、可動体201の他端部と、変位センサ202との距離が変化する。変位センサ202によって検知した距離変化に基づいて、中間転写ベルト61のローラ上における端部位置が把握される。
【0031】
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。先に示した図1において、中間転写ベルト61のループ内側には、ベルト中心ずれ検知器90が配設されている。
図8は、ベルト中心ずれ検知器90をその周囲構成とともに示す平面図である。また、図9は、ベルト中心ずれ検知器90をその周囲構成とともに示す側面図である。なお、図8においては、便宜上、ベルト中心ずれ検知器90の鉛直方向上方に存在している中間転写ベルト61を点線で示している。
【0032】
図8に示すように、ベルト端部位置検知器200と、ベルト中心ずれ検知器90とはベルト幅方向に並ぶように配設されている。ベルト中心ずれ検知器90のベルト幅方向のサイズは、中間転写ベルト61の幅方向の寸法や、各種の張架ローラの軸線方向の長さよりも小さくなっている。ベルト中心ずれ検知機90は、自らのベルト幅方向の中心を、中間転写ベルト61のベルト中心線のあたりに位置させるように配設されている。そして、揺動支持板91、従動ローラ92、ローラ支持体93、変位センサ95、第1引っ張りコイルバネ96、第2引っ張りコイルバネ97、偏心カム98(図9参照)などを有している。
【0033】
揺動支持板91は、その支持面を中間転写ベルト61の裏面に対向させている。この支持面上には、従動ローラ92、ローラ支持体93、変位センサ95、第1引っ張りコイルバネ96、及び第2引っ張りコイルバネ97が固定されている。揺動支持板91は、ベルト進行方向Aの下流側端部に設けられた揺動軸91aを中心にして揺動するようになっている。揺動支持板91の自由端の下方には、偏心カム98が回転して揺動支持板91の自由端との当接位置を変化させることで、揺動支持板91を揺動させる。
【0034】
揺動支持板91には、中間転写ベルト61の幅方向に延在する長穴91bが形成されており、この長穴91bには、ローラ支持体93の底面から重力方向下方に向けて突出している雄ネジ部が貫通せしめられている。この雄ネジ部に対して揺動支持板91の裏側からナット94が螺号せしめられていることで、ローラ支持体93が長穴91bに沿ってベルト幅方向(矢印D方向)にスライド移動可能に揺動支持板91に係合している。このようにスライド移動可能なローラ支持体93に対しては、揺動支持板91に固定された第1引っ張りコイルバネ96と、第2引っ張りコイルバネ97とが接続されている。第1引っ張りコイルバネ96は、ベルト幅方向において、ローラ支持体93をベルト中心側から一端側に向けて引っ張る。また、第2引っ張りコイルバネ96は、ベルト幅方向において、ローラ支持体93をベルト中心から他端側に向けて第1引っ張りコイルバネ96とは逆方向に引っ張る。これにより、ローラ支持体93は、後述する従動ローラ92が中間転写ベルト61から離間している状態では、それら引っ張りコイルバネの引っ張り力が釣り合う位置(本例では張架ローラのローラ中心線の位置)に停止する。
【0035】
従動ローラ92は、ローラ支持体93によって回転可能に支持されている。そして、偏心カム98が所定の回転角度位置で停止してローラ支持体93が所定の揺動角度位置に係止されている状態では、従動ローラ92が中間転写ベルト61の裏面に当接する。この状態で中間転写ベルト61が走行すると、従動ローラ92が従動回転する。
【0036】
ローラ支持体93には、位置被検部93aが設けられている。そして、この位置被検部93aには、揺動支持板91の支持面に固定された変位センサ95が対向している。変位センサ95は、自らと位置被検部93aとの距離を光学的に検知する。その距離の変化量は、従動ローラ92のベルト幅方向の移動量と同じである。つまり、変位センサ95は、従動ローラ92の幅方向への移動量を検知する移動量検知手段として機能している。
【0037】
図10は、ある時刻tにおける中間転写ベルト61と従動ローラ92との位置関係を示す模式図である。この時刻tにおいては、中間転写ベルト61の全域のうち、点bで示される箇所が、従動ローラ92の全域のうち、点rで示される箇所に接触している。
【0038】
図11は、従動ローラ92をベルト幅方向にスライド移動させないように固定したと仮定した場合における時刻tの中間転写ベルト61と従動ローラ92との位置関係を示す模式図である。時刻tは、時刻tからT秒後の時点である。図10に矢印で示したように、時刻t1から時刻t2にかけて、点bで示されるベルト箇所が正規のベルト走行方向Aから傾いた状態で移動して点b’で示される位置に向かうとする。このようにして点bのベルト箇所が斜めに移動しようとする一方で、従動ローラ92の表面は、ローラの従動回転のみによって移動するので、点rで示されるローラ箇所は、ローラ回転軸線に直交する正規のベルト走行方向Aにしか移動できない。このため、中間転写ベルト61が従動ローラ92の表面上でベルト幅方向にスリップしながら、点bで示されるベルト箇所が点b’で示される位置まで移動する。
【0039】
図12は、本プリンタの時刻tにおける中間転写ベルト61と従動ローラ92との位置関係を示す模式図である。本プリンタでは、上述したように、従動ローラ92をベルト幅方向に往復移動させることが可能になっている。従動ローラ92が全体的にベルト幅方向に移動可能であるので、ローラ表面は、回転軸線に直交する正規のベルト走行方向Aだけでなく、ベルト幅方向にも移動することができる。このため、時刻tから時刻tにかけて点bで示されるベルト箇所が点b’の位置まで移動すると、従動ローラ92は、点bと点b’とのベルト幅方向のずれ量dと同じ分だけ、ベルト幅方向に移動する。このため、時刻t1において点bで示されるベルト箇所に接触していたローラ箇所(図10において点rで示されているローラ箇所)は、時刻tにおいて、点b’と対向する点r’の位置まで移動する。時刻tから時刻tにかけて、ローラ上でのベルトのスリップは発生しない。
【0040】
図13は、中間転写ベルト(61)のベルト寄り及びベルト傾きのうち、ベルト寄りだけが発生した場合におけるベルトの挙動を説明するための模式図である。同図において、点bは、中間転写ベルト(61)について、その任意のベルト箇所における時刻tでの位置を示している。また、点b’は、そのベルト箇所の時刻tにおける位置を示している。また、一点鎖線Lrは、中間転写ベルト(61)を張架している複数の張架ローラの回転軸線方向における中心線たるローラ中心線を示している。また、点線の白抜き矢印は、中間転写ベルト(61)のベルト中心線の延在方向を示している。また、矢印Aは、正規のベルト走行方向を示している。正規のベルト走行方向Aは、張架ローラの回転軸線に直交する方向に沿っている。また、(+)で示される矢印は、ローラ中心線Lrよりもプリンタ本体の正面側にずれた位置であることを示している。また、(−)で示される矢印は、ローラ中心線Lrよりもプリンタ本体の背面側にずれた位置であることを示している。
【0041】
中間転写ベルト(61)は、時刻tから時刻tまでの間に、正規のベルト走行方向に距離x[mm]だけ移動する。この過程で、ベルト幅方向に沿いつつプリンタ本体の背面側に向かう方向にベルト寄りを発生させる。そのベルト寄り量はy[mm]である。このようなベルト寄りが発生した場合、点bと点b’とはベルト幅方向にy[mm]ずれる。時刻tにおいて、点bで示される位置にあったベルト箇所は、図中の実線の白抜き矢印の方向に沿って移動する。
【0042】
図14は、ベルト寄り及びベルト傾きの両方が発生した場合におけるベルトの挙動を説明するための模式図である。図示の状態では、ベルト中心線の延在方向を示す点線の白抜き矢印からわかるように、ベルト傾きが発生している。このベルト傾きは、時刻tから時刻tまでの間に徐々に発生したものではなく、時刻t1において既に発生しているものである。また、図示の状態では、時刻tから時刻tまでの間に、図13と同様のベルト寄りが発生している。ベルト傾きだけが発生している場合には、時刻tで点bの位置にあったベルト箇所は、図中の点線の白抜き矢印の方向に進んで、時刻t2では点b’の位置に移動する。ところが、ベルト傾きの他に、ベルト寄りが発生しているので、時刻tで点bの位置にあったベルト箇所は、図中の点線の白抜き矢印で示されるベクトルと、図13の実線の白抜き矢印で示されるベクトルとが合わさった方向、即ち、図14の実線の白抜き矢印で示されるベクトルに沿って移動する。そして、時刻tでは、点b"の位置にくる。
【0043】
図14の状態では、ベルト寄り及びベルト傾きとして、何れもローラ中心線Lrからプリンタ本体の正面側に向かう方向にベルトを移動させるものが発生している。ベルト寄りによるベルトの幅方向の移動量は+y[mm]である。また、ベルト傾きによるベルトの幅方向の移動量は+k[mm]である。時刻tから時刻tまでにおけるベルトの幅方向の移動量は、「(+y)+(+k)」の解と同じ量になる。ローラ中心線Lrから本体正面側に向かう方向の移動量と、ローラ中心線Lrから本体背面側に向かう方向の移動量とをのうち、何れか一方をプラスの符号で示し、もう一方をマイナスの符号で示すことで、ベルト寄りとベルト傾きとが互いに逆方向であったとしても、両方の移動量の加算により、ベルト寄り及びベルト傾きを合わせた移動量を求めることが可能になる。例えば、図15に示す例では、ベルト寄りとして、ベルトをy[mm]だけ幅方向に沿って本体正面側に移動させるものが発生している(+y[mm])。また、ベルト傾きとして、ベルトをk[mm]だけ幅方向に沿って本体背面側に移動させるものが発生している(−k[mm])。時刻tから時刻tまでにおけるベルトの幅方向の移動量は、「(+y)+(−k)」の解と同じである。yとkとが互いに同じ数値である場合には、その解がゼロになるので、図中実線の白抜き矢印で示されるように、時刻tから時刻tにかけてベルトは正規のベルト走行方向に沿って移動して、幅方向の位置を変化させなくなる。
【0044】
図13に示したベルト寄りが発生した場合、図8に示したベルト中心ずれ検知器90の従動ローラ92は、ローラ中心線の位置からプリンタ本体背面側に向けてベルト寄り量と同じy[mm]だけ移動する。なお、第1引っ張りコイルバネ96や第2被パリコイルバネ97のバネ定数によっては、従動ローラ92の幅方向への移動量がベルト寄り量と同じにならない場合もあるが、この場合、移動量に対して所定の係数を乗ずることでベルト寄り量を求めることが可能である。以下、従動ローラ92の幅方向への移動量がベルト寄り量と同じになる場合を例にして説明する。
【0045】
図14に示した状態では、上述したように、ベルト寄り及びベルト傾きの両方が発生している。それらベルト寄り及びベルト傾きのうち、ベルト傾きだけが発生した場合には、既に述べたように、そのベルト傾きに起因する中間転写ベルト61の幅方向の移動量は+k[mm]になる。このようなベルト傾きが発生した場合、図8に示したベルト中心ずれ検知器90の従動ローラ92は、ローラ中心線の位置からプリンタ本体背面側に向けて前記移動量と同じk[mm]だけ移動する。なお、第1引っ張りコイルバネ96や第2被パリコイルバネ97のバネ定数によっては、前記移動量が従動ローラ92の幅方向の移動と同じにならない場合もあるが、この場合、従動ローラ92の移動量に対して所定の係数を乗ずることでベルト移動量を求めることが可能である。以下、従動ローラ92の幅方向への移動量がベルト移動量と同じになる場合を例にして説明する。
【0046】
図14に示したように、ベルト寄りとベルト傾きとの両方が発生した場合、従動ローラ92は、ローラ中心線の位置からプリンタ本体背面側に向けてy+k[mm]だけ移動する。
【0047】
先に示した図5において、各色の感光体3Y,M,C,Kは、中間転写ベルト61のおもて面における全域のうち、鉛直方向上方を向いている領域に当接してそれぞれ1次転写ニップを形成している。中間転写ベルト61において、おもて面を鉛直方向上方に向けているのは、寄り修正ローラ64に対する掛け回し位置を通過してから、駆動ローラ67に対する掛け回し領域に進入する前の領域である。
【0048】
寄り修正ローラ64や駆動ローラ67に対しては、中間転写ベルト61がその移動方向をほぼ反転させるほど大きな巻き付き角で巻き付いている。これに対し、寄り修正ローラ64上を通過してから、駆動ローラ67上に進入するまでのベルト領域に当接している1次転写ニップ上流ローラ65、駆動上流ローラ66、1次転写ローラ62Y,M,C,Kに対しては、中間転写ベルト61はごく僅かな巻き付き角でローラ周面のほんの一部に当接しているだけである。かかる構成では、寄り修正ローラ64に対する掛け回し位置を通過してから、駆動ローラ67に対する掛け回し領域に進入する前の領域で、ベルト寄りやベルト傾きが一律に起こる。例えば、ベルト寄りであれば、図16に示すように、前記領域が一律にベルト幅方向の一端側又は他端側に寄ることになる。また、ベルト傾きであれば、図17に示すように、前記領域のベルト中心線Lbが一律且つ同じ角度でローラ中心線Lrに対して傾く。図18に示すように、前記領域の一部区間だけにベルト寄りやベルト傾きが生ずることはない。
【0049】
本プリンタにおいては、画質優先プリントモード、通常プリントモード、速度優先プリントモードという3つの動作モードが選択可能になっている。この選択は、ユーザーがパーソナルコンピュータにインストールされたプリンタドライバを操作することによって行われる。図5において、中間転写ベルト61の線速V[mm/s]は、画質優先プリントモード、通常プリントモード、速度優先プリントモードの順で速くなる。寄り修正ローラ64に対する掛け回し位置を通過してから、ベルト中心ずれ検知器90の従動ローラ92に対する掛け回し位置に進入するまでの中間転写ベルト61の移動距離(以下、従動上流側ベルト移動距離という)はM[mm]である。また、各色の感光体は、ベルト進行方向において互いに等しいピッチ(以下、感光体配設ピッチDという)[mm]で配設されている。中間転写ベルト61が、寄り修正ローラ64に対する掛け回し位置を通過してから、従動ローラ92に対する掛け回し位置に進入するまでの期間(以下、従動上流移動期間という)に、ベルト寄り及びベルト傾きに起因して幅方向に移動してベルト中心ずれを引き起こすとする。このときの幅方向におけるベルト中心ずれ量は、従動上流移動期間における従動ローラ92の幅方向の移動量と同じであり、変位センサ95による出力に基づいて検知することが可能である(以下、ベルト中心ずれ量検出値Zという)。このようなベルト中心ずれを引き起こした中間転写ベルト61は、その後、Y用の1次転写ニップを通過してから、隣のM用の1次転写ニップに進入するまでの間、M用の1次転写ニップを通過してからC用の1次転写ニップを通過するまでの間、C用の1次転写ニップを通過してからK用の1次転写ニップを通過するまでの間にも、それぞれベルト中心ずれを引き起こす。それらベルト中心ずれ量は互いに等しくなり、「ベルト中心ずれ量検出値Z×感光体配設ピッチD/従動上流側ベルト移動距離M」という式で求めることができる。寄り修正ローラ64に対する掛け回し位置を通過してから、駆動ローラ67に対する掛け回し位置に進入するまでの期間における単位時間あたりのベルト中心ずれ増加量は一定だからである。
【0050】
本プリンタにおいて、各種の機器の駆動制御を行う補正手段たる制御部は、次のような処理を行うように構成されている。即ち、プリントジョブ中には、従動上流側ベルト移動距離M[mm]/線速V[mm/s]の解と同じ時間が経過する毎に、その間におけるベルト中心ずれ量検出値Zを変位センサ92からの出力に基づいて算出する。そして、算出結果の絶対値が所定の閾値を超えた場合には、Y,M,C,Kの各色についてそれぞれ、感光体に対する静電潜像のベルト幅方向(感光体軸線方向)における形成位置を補正する。具体的には、ベルト幅方向において、M用の感光体3Mに対する潜像の形成位置については、Y用の感光体3Yに対する潜像の形成位置よりも「Z×D/M」だけずらした位置に補正する。また、C用の感光体3Cに対する潜像の形成位置については、M用の感光体3Mに対する潜像の形成位置(補正後)よりも「Z×D/M」だけずらした位置に補正する。また、K用の感光体3Kに対する潜像の形成位置については、C用の感光体3Cに対する潜像の形成位置(補正後)よりも「Z×D/M」だけずらした位置に補正する。このような補正により、ベルト寄りやベルト傾きが発生していても、それらに起因するトナー像の重ね合わせずれをほぼ解消することができる。
【0051】
プリントジョブ中にベルト中心ずれを検知した場合、制御部は、プリントジョブの終了時にベルト寄りを次のようにして補正する。即ち、先に図6に示したベルト端部検知器200の検知結果が所定の値になるように、寄り修正ローラ64を傾動させる。図19は、寄り修正ローラ64と、これを揺動可能に保持する保持手段としての揺動ブラケット211とを示す斜視図である。同図において、寄り修正ローラ64は、揺動ブラケット211により、自らのローラ軸線方向の中央位置で延在する揺動軸線910を中心にして揺動可能に保持されている。そして、自らのローラ軸線を、他の張架ローラのローラ軸線に対して傾ける姿勢をとることで(傾動)、中間転写ベルト(図4の61)のベルト寄りを修正する。
【0052】
揺動ブラケット211は、寄り修正ローラ64の軸線方向の両端にそれぞれ存在しているローラ軸をそれぞれ回転自在に受けながら、ブラケット本体に突設せしめられた回転軸部材212が回転駆動される。この回転軸部材212の回転中心が揺動軸線910となる。つまり、回転軸部材212が回動することで、揺動軸線910を中心にして揺動して、寄り修正ローラ64を揺動させる。制御部は、ベルト端部検知器200の検知結果が所定の値になるように、寄り修正ローラ64をこのように傾動させるのである。
【0053】
以上、実施形態に係るプリンタにおいては、中間転写ベルト61の裏面に当接しながらベルトの幅方向に沿って延在する回転軸線を中心にして従動回転する従動ローラ92と、従動ローラ92を前記幅方向に往復移動可能に保持する揺動支持板91等からなる保持手段と、従動ローラ92の前記幅方向への移動量を検知する移動量検知手段たる変位センサ95とを設けている。かかる構成では、中間転写ベルト61の幅方向の横にベルト端部検知センサを設けるためのスペースを確保しなくても、ベルト中心ずれ量を検知することが可能であるので、従来に比べて装置の大型化を抑えることができる。
【0054】
また、従動ローラ92をベルト幅方向の一端側から他端側に向けて間接的に付勢する第1付勢手段たる第1引っ張るコイルバネ96と、従動ローラ92を他端側から一端側に向けて付勢する第2付勢手段たる第2引っ張りコイルバネ97とを設けている。かかる構成では、2つのコイルバネの引っ張り力(付勢力)の釣り合いにより、ベルトに当接させていない状態の従動ローラ92をベルト幅方向の所定の位置に係止することができる。
【0055】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、従動ローラ92を中間転写ベルト61の裏面に接離させる揺動軸91aや偏心カム98等からなる接離手段を設けている。かかる構成では、従動ローラ92を中間転写ベルト61から離間させることでベルト幅方向の所定の位置に戻すことができる。
【符号の説明】
【0056】
3Y,M,C,K:感光体(潜像担持体)
4Y:現像装置(現像手段)
61:中間転写ベルト(ベルト部材)
62Y,M,C,K:1次転写ローラ(転写手段)
91:揺動支持板(保持手段の一部)
91a:揺動軸(接離手段の一部)
92:従動ローラ
93:ローラ支持体(保持手段の一部)
95:変位センサ(移動量検知手段)
96:第1引っ張りコイルバネ(第1付勢手段)
97:第2引っ張りコイルバネ(第2付勢手段)
98:偏心カム(接離手段の一部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特許第3976924号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルト部材と、前記ベルト部材のループ内側に配設された状態で前記ベルト部材を自らの周面の一部に掛け回して前記ベルト部材を張架する複数の張架ローラとを有し、前記複数の張架ローラにおける少なくとも何れか1つを回転駆動させて前記ベルト部材を無端移動せしめるベルト駆動装置において、
前記ベルト部材のループ内周面である裏面に当接しながら前記ベルト部材の幅方向に沿って延在する回転軸線を中心にして従動回転する従動ローラと、前記従動ローラを前記幅方向に往復移動可能に保持する保持手段と、前記従動ローラの前記幅方向への移動量を検知する移動量検知手段とを設けたことを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項2】
請求項1のベルト駆動装置において、
前記従動ローラを前記幅方向の一端側から他端側に向けて直接又は間接的に付勢する第1付勢手段と、前記従動ローラを前記他端側から前記一端側に向けて付勢する第2付勢手段とを設けたことを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2のベルト駆動装置において、
前記従動ローラを前記ベルト部材の裏面に接離させる接離手段を設けたことを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項4】
複数の張架ローラによって張架している無端状のベルト部材を無端移動せしめるベルト駆動装置と、前記ベルト部材の表面、あるいは前記ベルト部材の表面に保持される記録シート、に可視像を形成する可視像形成手段とを備える画像形成装置において、
前記ベルト駆動装置として、請求項1乃至3の何れかのベルト駆動装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4の画像形成装置において、
前記可視像形成手段として、潜像を担持する潜像担持体と、前記潜像担持体に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像を現像する現像手段と、現像によって得られた可視像を前記潜像担持体の表面から、前記ベルト部材の表面、あるいは前記ベルト部材の表面に保持される記録シート、に転写する転写手段とを有するものを用いるとともに、
前記移動量検知手段による移動量の検知結果に基づいて、前記潜像担持体に対する潜像形成位置を補正する補正手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−159747(P2012−159747A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20147(P2011−20147)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】